<   2014年 08月 ( 190 )   > この月の画像一覧

桔梗

桔梗

例句を挙げる。

あかときの桔梗とはなり死にゆけり 寺井谷子
あけすけに花ぞこ見する桔梗かな 高橋淡路女 梶の葉
あけぼのや草の中にも岩桔梗 中岡毅雄
いくさ経し野路に露おく白桔梗 河野南畦 『花と流氷』
いとけなき口を噤みぬ花桔梗 松瀬青々
うそ寒の花蝕める桔梗かな 高橋淡路女 梶の葉
うなだれて桔梗の茎とその花と 中田剛 珠樹
おほぞらは桔梗色の厄日かな 糟谷青梢
かき氷食ひ桔梗の花を見る 田中裕明 山信
かたまりて咲きし桔梗のさびしさよ 久保田万太郎
かたまりて咲きても桔梗はさびしけれ 関根黄鶴亭
かたまりて咲きて桔梗の淋しさよ 久保田万太郎 草の丈
かぼそくて地に伏す桔梗あきらかに 飯田蛇笏 春蘭
からつゆや桔梗ばかり壷に挿し 長谷川かな女
きりきりしゃんとしてさく桔梗哉 小林一茶
きりぎしや白夜に咲いて百合桔梗 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
きり~しやんとしてさく桔梗哉 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
こゝにまた家元わかき桔梗かな 久保田万太郎 流寓抄
さやけさの雨後桔梗の形あり 中田剛 珠樹
さゆらぎてゲーテハウスの白桔梗 関森勝夫
しらじらと桔梗夜に入る正秋忌 橋本榮治 麦生
せわしなや桔梗に来り菊に去る 正岡子規
ふくらみて一番花の桔梗大 野呂 ふさ江
ふくらみのきはみの蕾白桔梗 大岳水一路
ふるさとの風のち雨の桔梗かな 高橋沐石
ほの暗き京の老舗や白桔梗 岡部名保子
まだ四囲の山の名知らず萩桔梗 中村汀女
まちまちに桔梗うごく野原かな 中田剛 珠樹
みちのくの雨そゝぎゐる桔梗かな 水原秋櫻子
みづうみは朝のひかりの白桔梗 大屋達治
むらさきに違はぬ桔梗の信(まこと)かな 高澤良一 寒暑
もう桔梗咲く山國の田植かな 及川貞 夕焼
ゆふぐれの吾を離るる白桔梗 柿本多映
よべの雨いつぱいな野の桔梗見ゆ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
われにまさるわれの刺客はあらざるを今朝桔梗のするどき露 塚本邦雄
われ遂に信濃を出でず桔梗濃し 小林子
ピレネーの峠の桔梗手折りけり 加藤三七子
一度死ぬ再び桔梗となるために 中村苑子
一弁に紫を刷け白桔梗 大橋つる子
一痕の泪桔梗の花の中 金箱戈止夫
一輪の桔梗とおく教案簿 木村蕪城 一位
不肖の娘三人桔梗の芽に雪 塚本邦雄 甘露
五六本垣にくゝりし桔梗かな 冬葉第一句集 吉田冬葉
人形の肩よく泣けり白桔梗 斎藤梅子
伊香保野や桔梗に赤城けふも晴 東洋城千句
供華貧し雨の桔梗を剪る事に 中村波奈
修行者の徑にめづる桔梗かな 蕪村遺稿 秋
光秀の社も城も桔梗咲く 西田円史
光秀を祀る社の白桔梗 奥村皐月
八ヶ岳雲にうかべる野の桔梗 水原秋櫻子
八十蔭の大和の月や花桔梗 林桂 ことのはひらひら 抄
冷房の微風のトルコ桔梗かな 行方克巳
切りためて子が持つ桔梗むらさきの色を流して野の風の中 河合恒治
切株の荘門向き合ひ萩桔梗 阿部みどり女 笹鳴
前生の桔梗の朝に立ち昏らむ 苑子
十日経て山の思ひ出はかの桔梗 大島民郎
南無薬師薬の事もきく桔梗 炭 太祇 太祇句選
口移しの死が這い上り白桔梗 増田まさみ
句集「葛飾」栞りし桔梗透明に 佐野まもる 海郷
可も不可もなき白桔梗青桔梗 斎藤玄 雁道
和を以て桔梗の五瓣ととのへり 丸山海道
和紙の里桔梗丈をくらべをり 照子
咲きぞ揃ひし桔梗がみんなあち向ける 林原耒井 蜩
噴煙また丈低く澄む野の桔梗 河野多希女 こころの鷹
土冷えてゐたる桔梗を剪りにけり 草間時彦 櫻山
壺に桔梗カーテンは湖の上に吹かれ 岸風三楼 往来
夕かけて桔梗濃しと跼み寄りぬ 原田種茅 径
夕日消え岩にまぎれし岩桔梗 岡田日郎
夕焼の一瞬さめし桔梗かな 深見けん二
夕風の萩や桔梗や心細ソ 草間時彦 櫻山
夢で首相を叱り桔梗に覚めており 原子公平
大江山降り出す雨に桔梗濃し 山口青邨
天水や桔梗不意に立ちあがる 沼尻巳津子
奥美濃の月の出待たる白桔梗 伊藤京子
好きな人同じ桔梗に立ち止まる 岩田由美
姨捨の畦の一本桔梗かな 西本一都 景色
子等貧し桔梗ばかりを沢山に採り 木村蕪城 寒泉
家の集に妻が桔梗の一句哉 石井露月
家中月の足あと桔梗さらわれて 西川徹郎 家族の肖像
宿屋らしからぬ桔梗屋鱈を煮る 渡辺 池汀
寺静かに足元にあり桔梗苗 細見綾子 花寂び
山中に一夜の宿り白桔梗 野澤節子
山寺に書院を覗く桔梗かな 尾崎迷堂 孤輪
山牛蒡の猛者に媚びる桔梗かな 野村喜舟 小石川
峯々に桔梗高きもののうち 古舘曹人 樹下石上
庭桔梗剪つてくれたる志 大橋櫻坡子 雨月
御仏の炉辺に在はす桔梗花 阿部みどり女 笹鳴
憂ひなし桔梗の空に銀氷河 有働亨 汐路
我が身いとしむ日の桔梗水換ゆる 富田木歩
手拭に桔梗をしほれ水の色 大高源五
手触れなば裂けむ桔梗の蕾かな 青畝
折り取って何か聴こえる夕桔梗 折笠美秋 死出の衣は
指の間のきらめきを過ぎ桔梗売 斎藤玄
指触るるしみ~と濃き桔梗かな 秋郊 田村木國
揺さぶらる桔梗発芽の針ほどに 篠田悌二郎
撫肩は茶入にもあり白桔梗 神尾久美子 桐の木以後
故郷は高齢世帯桔梗咲く 後藤澄子
断念の力つくして桔梗枯る 平井照敏 天上大風
新涼や一輪ざしの白桔梗 阿部みどり女 笹鳴
新盆の桔梗色を尽しけり 館岡沙緻
新盆や桔梗に百合にかよふゆめ 久保田万太郎 流寓抄
日の暮は雲をゆたかに山桔梗 角川春樹
日当るや野分のあとの萩桔梗 野村喜舟 小石川
日拝の僧にそびゆる桔梗かな 森川暁水 黴
日暮とも雨けむるとも白桔梗 藤田湘子
明日よりは桔梗折るべき人もなし 正岡子規
昔麻布大山道の桔梗かな 野村喜舟 小石川
曇天のにはかに日差す桔梗の芽 米山源雄
曝涼の寺苑の桔梗稜正し 大橋敦子 勾 玉以後
月の出や画室の壺に白桔梗 柴田白葉女 花寂び 以後
月光に打たれ死にする桔梗かな 柿本多映
朝粥や桔梗ひたせる山の水 桂信子 樹影
朝露や桔梗ふくらむ草の中 小川煙村
来るかげや桔梗くもりて一本路 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
東西南北いづこも濡れる濡れ桔梗 三橋鷹女
桔梗さはに抱きゆく胸の冷ゆるほど 宮津 澪子
桔梗と分別したる芽生かな 辰生
桔梗ならをみなへしなら露にぬれて 高井几董
桔梗なら女郎花なら露に濡れて 几董
桔梗にあいまいな色なかりけり 中嶋秀子
桔梗にきのふもけふも青い空  寒暑
桔梗にはよそ事のごと灼ける空 高澤良一 寒暑
桔梗には由緒正しき横座り 仁平勝 東京物語
桔梗にもどりてゐたる昨日今日 柿本多映
桔梗に太古の空のいろを瞻る 高澤良一 寒暑
桔梗に子の笑ひごゑころころと 志摩芳次郎
桔梗に日の落ちてゆく空ありき 飴山實 少長集
桔梗に更に慰められず去る 深見けん二
桔梗に朝の山気のみなぎりぬ 稲畑汀子
桔梗に牛のふぐりの露けしや 田中午次郎
桔梗に知るよしもなき微笑かな 長谷川かな女 雨 月
桔梗に身をいとほしむ湯治かな 森川暁水 黴
桔梗のあはれを知んぬ憐れかな 達治
桔梗のいまだ開かぬ夜明かな 中川宋淵
桔梗のしのび逢ふたび色まさり 筑紫磐井 野干
桔梗のしまひの花を剪りて挿す 高濱虚子
桔梗のしをれゆく花ばかり見つ 中田剛 珠樹
桔梗のつぼみふくれて見る間にも咲かんばかりに紫の濃さ 若山喜志子
桔梗のつまめば凹む蕾かな 岩田由美
桔梗の一輪のあとほんぐもり 猪俣千代子 秘 色
桔梗の七宝の露欠けにけり 川端茅舎
桔梗の丈に風吹く山の昼 桂信子 草樹
桔梗の倒れ伏したる背丈かな 日原傳
桔梗の前空きしまま日の昏れぬ 鈴木太郎
桔梗の咲きすがれたる墓前かな 飯田蛇笏 山廬集
桔梗の喉もと突けば揺るるなり 郡山やゑ子
桔梗の庭に浅間の近さかな 上村占魚 球磨
桔梗の影が小さく膝の上 岸本尚毅 舜
桔梗の折目正しき蕾かな 久保田重之
桔梗の濃く咲き添へるさるすべり 河野静雲 閻魔
桔梗の白の切り込みくるひなく 龍男
桔梗の空のひろがる信濃なり 阿部誠文
桔梗の紫さめし思ひかな 高浜虚子
桔梗の花の中よりくもの絲 高野素十
桔梗の花咲く時ポンと言そうな 千代尼
桔梗の花終るとき色うすし 中井 文子
桔梗の花雨にぬれ暮るる日や 田中冬二 俳句拾遺
桔梗の莟の爆破遂げてをり 高澤良一 寒暑
桔梗の蕾をぽんと鳴らしけり 阿部みどり女 月下美人
桔梗の蕾祈祷の調度に似る 高澤良一 素抱
桔梗の雨にぬれつつ暮るる日や 田中冬二 俳句拾遺
桔梗の露うしなひし青さかな 京極杞陽 くくたち下巻
桔梗の露きびきびとありにけり 川端茅舎
桔梗は手折りて重き花なりし 中島斌雄
桔梗は法器の一つ安居寺 高澤良一 寒暑
桔梗は生者の好み盆切籠 文挟夫佐恵 雨 月
桔梗ぱつちり子なきもろ手は何抱かむ 鷲谷七菜子 雨 月
桔梗も痩せて喇嘛僧影の如し 臼田亞浪 定本亜浪句集
桔梗も馬の尻毛も靡く野ぞ 展宏
桔梗やいつより過去となりにけむ 油布五線
桔梗やおのれ惜しめといふことぞ 森澄雄 浮鴎
桔梗やきりりと辛き飛騨の酒 時彦
桔梗やさわやさわやと草の雨 青邨
桔梗やさわや~と草の雨 楠目橙黄子 橙圃
桔梗やちちははと時すごし過ぎ 坂巻純子
桔梗やはじめ木刀振れる音 中田剛 珠樹
桔梗やひとのすること気に入らぬ 辻田克巳
桔梗やふみまよひたる道ながら 木津柳芽 白鷺抄
桔梗やまた雨かへす峠口 飯田蛇笏 霊芝
桔梗やむかし碪の僧が妻 岡井省二
桔梗や一群過ぎし手長蝦 普羅
桔梗や余白は美とも想ひとも 大口公恵
桔梗や信こそ人の絆なれ 野見山朱鳥
桔梗や又雨かへす峠口 飯田蛇笏
桔梗や夕ベの風は地より湧く 桜井博道 海上
桔梗や子の踝をつよく拭き 山西雅子
桔梗や学びて君を通過中 中尾寿美子
桔梗や忌日忘れず妹の来る 吉武月二郎句集
桔梗や掬へる鯉の強しぶき 大岳水一路
桔梗や日雇の夢うたがはず 岩田昌寿 地の塩
桔梗や此の峻峰の遭難者 雑草 長谷川零餘子
桔梗や水のごとくに雲流れ 風三楼
桔梗や水を打つたる能稽古 森澄雄
桔梗や湖上に雨は降りいでぬ 及川貞 夕焼
桔梗や男に下野の処世あり 大石悦子
桔梗や男もすなり首かざり 澄雄
桔梗や男も汚れてはならず 石田波郷(1913-69)
桔梗や白紫のほかは無く 尾崎迷堂 孤輪
桔梗や秋の鴬籠にゐる 龍岡晋
桔梗や芙蓉がもとの明るさに 小杉余子 余子句選
桔梗や褥干すまの日南ぼこ 芝不器男
桔梗や足しなやかに仔牛来て 岡本まち子
桔梗や踏みて濁らぬにはたづみ 小川軽舟
桔梗や遊女の果の尼容チ 野村喜舟
桔梗や雨霧嶺々をかくしたる 岸風三楼 往来
桔梗や雨飛び散つて石の上 岸本尚毅 舜
桔梗や高嶺へ戻る夜明雲 望月たかし
桔梗をきちのはなとし職はげみ 森川暁水 黴
桔梗をこのめるわれの一生かな 飴山實 『花浴び』以後
桔梗をさちの花とし職はげみ 森川暁水 淀
桔梗をざつくり束ね宇陀未通女 後藤綾子
桔梗をねざめの花として旅へ 森川暁水 淀
桔梗をやゝめづるなり忌の人は 長谷川かな女 雨 月
桔梗を挿せばわが家も気も清ら 森川暁水 黴
桔梗を活ける間に来る幾夕立 島村元句集 島村元
桔梗を焚きけぶらしぬ九谷窯 楸邨
桔梗を賞で賜ひぬる母なりし 田中冬二 俳句拾遺
桔梗一輪岸をはなるるとき迅し 中田剛 珠樹
桔梗一輪役げこむ力ばかりの世に 桜井博道 海上
桔梗一輪死なばゆく手の道通る 龍太
桔梗一輪馬の匂ひの風動く 飯田龍太
桔梗一輸死なばゆく手の道通る 飯田龍太
桔梗咲いてきたばれのするいくにち 川島彷徨子 榛の木
桔梗咲き晩年といふ見えぬもの 高橋謙次郎
桔梗咲く手裏剣の青さに耐えよ 澁谷道
桔梗咲く母のいのちのあるかぎり 小檜山繁子
桔梗咲く源一つに湯の数戸 加倉井秋を
桔梗咲けば牛のからだに触るゝ 中塚一碧樓
桔梗咲て何れも花のいそぎ哉 暁台
桔梗屋を過ぎきて桜鱒揚る 吉田紫乃
桔梗折りゆくに墓参の人とあふ 木村蕪城 一位
桔梗挿す壷の暗さをのぞいてから 桂信子
桔梗摘む少女や牛を追ひながら 原 柯城
桔梗活けてしばらく仮の書斎哉 正岡子規
桔梗活けられしか依然不安にて 下村槐太 天涯
桔梗濃し水面に影を頒ちても 池田秀水
桔梗白し激しき恋は一度きり 平野周子
桔梗花上すぼみにて咲きにけり 松瀬青々
桔梗蕾みて鞍馬天狗の被りもの 高澤良一 素抱
桔梗虎の尾秋渓に沿ひ花白き 内藤吐天 鳴海抄
桔梗遠目会へざりし石野兌恋ふ 岩田昌寿 地の塩
桶に咲きし桔梗は秋や冷奴 渡邊水巴 富士
極北の天日ねむる桔梗かな 有働亨 汐路
歌膝の男は佳けれ白桔梗 北見さとる
死化粧して水色桔梗なりぬ 寺井谷子
母の裾桔梗こぼす露明し 小林康治 玄霜
母看とる月日惜しまず白桔梗 八牧美喜子
水切りの水に伏せ置く白桔梗 大岳水一路
水打つはゆうべの桔梗さめにけり 久保純夫 水渉記
水更へて桔梗のすぐ命張る 上野さち子
水無月を昨日に咲ける桔梗かな 尾崎迷堂 孤輪
波の上波のながれて桔梗蘭 吉田紫乃
活けてより咲く色あはし桔梗は 朝倉和江
流星に咲く桔梗とすれちがう 増田まさみ
海の紺巌より咲きし桔梗の紺 佐野まもる 海郷
湯の山や時なし酒の萩桔梗 石川桂郎 高蘆
満月のあしたの花の桔梗かな 増田龍雨 龍雨句集
濃りんどう桔梗花市夜更けても 及川貞 夕焼
濡るゝもの桔梗のみかは朝なさな 林原耒井 蜩
濱寺に一本咲ける桔梗かな 泉鏡花
火の山の桔梗師とゐて露けしや 角川源義 『秋燕』
火の山の霧に噎びて岩桔梗 伊東宏晃
烈日の美しかりし桔梗かな 中村汀女
熱下りて桔梗まこと鮮しき 草城
燈籠の藍は桔梗紅は萩 下村梅子
瓶の桔梗咲き次ぐは紫褪めつ 原田種茅 径
畜生の桔梗の芽を嗅ぐなかれ 長谷川かな女 牡 丹
異境かな瑠璃遍照の桔梗咲く 小林康治 四季貧窮
疳性の花と見たりし桔梗かな 大橋敦子
白桔梗いつも味方と思ふなり 中尾寿美子
白桔梗すなわちトラジ父が植え母が植え吾は髪に挿す 李正子
白桔梗一の字に置きただ泣ける 清水径子
白桔梗一蝶誘ふ水車音 河野多希女
白桔梗家居を深くしてゐたり 石崎径子
白桔梗折目のほかはやはらかし 都筑智子
白桔梗文字は縦書匂ふなり 渡邊千枝子
白桔梗晩涼に人うごき居り 岡本松浜 白菊
白桔梗校歌貞女に徹せよと 野上寛子
白桔梗百日経を写しては 寺井谷子
白桔梗窯の顱頂は火を裹む 竹中宏 饕餮
百ケ日何いぶかしむ桔梗の眼 文挟夫佐恵 黄 瀬
相連れて主治醫二人や白桔梗 石田あき子 見舞籠
睡ることに専念しをり白桔梗 石田あき子 見舞籠
睡るとはやさしきしぐさ萩若桔梗 後藤夜半
矢は尾花丸は桔梗となりけらし 寺田寅彦
石にもたれ咲く桔梗や雨に濃き 雑草 長谷川零餘子
研屋来て庖丁研ぎぬ花桔梗 田中冬二 俳句拾遺
秋成の文殻すてし桔梗かな 雑草 長谷川零餘子
空澄みて深まなざしの桔梗咲く 古賀まり子 緑の野
簾の垂りてはないろ淡き桔梗さく 飯田蛇笏 雪峡
紫に裏表ある桔梗かな 島田左久夫
紫のふつとふくらむ桔梗かな 正岡子規
紫の少しほぐれし桔梗の芽 梧桐 青吾
結界や梅雨の桔梗と一灯蛾 石塚友二
緒日のさびしや桔梗咲きかかり 清水径子
置露のこぼれてひらく桔梗かな 有橘
羽左衛門の貢が見ゆる白桔梗 渡邊水巴
船降りるわれらに桔梗りんりんと 森川暁水 淀
花の香や桔梗に映る人通り 闌更 (卯辰山麓にて)
花桔梗名のみの色を咲きにけり 樗良
花桶に頭そろへて桔梗哉 妻木 松瀬青々
若狭路や桔梗にそゝぐ雨細く 鈴鹿野風呂 浜木綿
茶人つめたき容になれて桔梗澄む 太田鴻村 穂国
草桔梗咲くや昔の院の芝 後藤夜半
草深く草の風立ち山桔梗 岩部和子
莟より花の桔梗はさびしけれ 鷹女
菊桔梗いづれか顔に似る花ぞ 松岡青蘿
萩桔梗またまぼろしの行方かな 赤尾兜子
萩桔梗屁ひり虫めの臭さかな 野村喜舟 小石川
萩桔梗撫子なんど萌えにけり 正岡子規
虚と実と桔梗終ひの花の色 河野多希女 月沙漠
虫干や母系に継ぎし桔梗紋 大和田亨子
豁然と桔梗咲きけり八ケ嶽 雑草 長谷川零餘子
買ふ供華に桔梗まじれり職ある日 森川暁水 黴
赤子眠るままに夕影桔梗白し 宮津昭彦
赤富士の日が照りいだす岩桔梗 百合山羽公 寒雁
起きよ今朝桔梗の雫ふりかけん 青峨
起よ今朝桔梗の雫ふりかけむ 青峩 五車反古
辰雄偲ぶ何に彼にすべて白桔梗 林翔 和紙
退院の姉に二度咲く白桔梗 林 民子
送行の雨となりたる桔梗かな 森 澄雄
遠き子がひらりと帰る白桔梗 赤松[けい]子 白毫
遺されしひと来て泣けり白桔梗 石田あき子 見舞籠
酒倉の裏へまはれば白桔梗 柿本多映
酔ひざめの水に差し置く白桔梗 榎本好宏
野に山に桔梗の花咲きいでぬはらわた寒きわれを知らゆな 石川不二子
雨風の桔梗ゆかねば悔のこる 三橋鷹女
雲中に径の消えたり岩桔梗 徳永山冬子
霧の香に桔梗すがるる山路かな 飯田蛇笏 山廬集
霧風の底に日の澄む桔梗かな 金尾梅の門
露晒し日晒しの石桔梗咲く 橋本多佳子
風にちるや欠を尋ぬる桔梗皿 井原西鶴
飛ばむかな桔梗の蕾風はらみ 堀口星眠 営巣期
馬に敷く褥草にも萩桔梗 富安風生
高原の曇れば黒き桔梗かな 相島虚吼
高原の桔梗にひくく雲すみぬ 川島彷徨子 榛の木
高原や桔梗ゆゝしき濃紫 高橋淡路女 梶の葉
鬼 およそ/その背後 は/桔梗 なり 折笠美秋 火傅書
鬼の護符刷る廬山寺の桔梗かな 飯田はるみ
魂まつり故人桔梗を好みけり 野村喜舟 小石川
鳥も人も母恋ふ桔梗咲きにけり 堀口星眠 営巣期
黄昏れて仄めく桔梗高きかな 柑子句集 籾山柑子
きちかうの初花の白目にたまふ 石川桂郎 高蘆
きちかうの咲くや白きに星別れ 林原耒井 蜩
きちかうの蕾むりやり咲かんでも 中原道夫
きちかうの角うしなひてなほ蕾 片山由美子
きちかうの記憶を辿る容して 高澤良一 ぱらりとせ
きちかうの野をわたり来し郵便夫 木村蕪城 寒泉
きちかうの露けかりしが逝きにけり 道芝 久保田万太郎
きちかうの露にもぬれよ鞠袴 高井几董
きちかうも見ゆる花屋が持佛堂 蕪村 秋之部 ■ 永西法師はさうなきすきもの也し、世を去りてふたとせに成ければ
きちかうや明星ヶ嶽と山の名を 尾崎迷堂 孤輪
きちかうや白に後れし濃むらさき 林原耒井 蜩
きちかうや眼汝がために青し 森鴎外
をみなへし又きちかうと折りすすむ 青邨
霧ごめに咲くきちかうは地の星 栗生純夫 科野路
痩っぽは病ひに勁し夏桔梗 高澤良一 寒暑
夏桔梗あるべきやうはを自問して 高澤良一 寒暑

以上
by 575fudemakase | 2014-08-31 04:53 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

滴り

滴り

例句を挙げる。

「生き物のやうに」日差が滴りが 田中裕明 櫻姫譚
すがり葉の霜滴りやささ鳴いて 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
つはものの跡かたもなく滴りぬ 徳田千鶴子
なき如き滴りにしてとどまらず 中田剛 珠樹
ひるすぎの筧つららを滴りにけり 室生犀星 犀星發句集
もろこしのあさつゆ滴りて機影みゆ 飯田蛇笏 雪峡
れもん滴り夜に触れし香を昇らしむ 櫛原希伊子
わく如き滴りにして苔の面 高浜年尾
オルゴールのやうに滴りをりにけり 本井英
人は酒杯へ終の一滴滴りよ 香西照雄 素心
六根清浄富士の人穴滴りて 百合山羽公 寒雁
凌霄の滴り咲きに冥き空 文挟夫佐恵 黄 瀬
厨芥車滴り長し二月尽 沢木欣一 雪白
反り身の干大根わが空滴りて 寺田京子 日の鷹
坑の滴り石の響きで鉄帽打つ 加藤知世子 花寂び
塵芥車滴り長し二月尽 沢木欣一
大人も子もキャンデーは尊敬せずに滴り食ぶ 橋本夢道 無禮なる妻抄
大岩穂八隅滴り神生るる 沢木欣一 沖縄吟遊集
天矛の滴りの山みな青嶺 山口誓子 不動
太古より滴りにけり流れけり 柿本多映
嫁取りの磴や滴り滴れる 石川桂郎 四温
嬰ら殖ゆ四月垂直に空滴りつゝ 磯貝碧蹄館 握手
岩座に神の貌あり滴りぬ 坊城俊樹
岩茸とる滴りしげき命綱 加藤知世子 花 季
崖の滴り溜めて人住む落葉焚き 林原耒井 蜩
床几あり滴りを眼の前にして 高濱年尾
戀うたの秘呪密教や 繁茂なす夏の緑に滴りて斬! 筑紫磐井 未定稿Σ
打水の滴りて居る小笹哉 太田南岳
昼さがり滴りのあと葉にみえて 中田剛 竟日
本読むにすこしさびしき滴りか 田中裕明 花間一壺
杉の暗さの崖の滴り食器置かれ 桜井博道 海上
杉山のあをき滴り吉野葛 佐川広治
杓のうなづく滴りの涼しさよ 辻田克巳
松島の松の滴り走り梅雨 吉田木魂
梅雨の月黄に熟れ切つて滴りさう 上野さち子
樹液滴り八方に霞立つ 直人
汽車の胴霧抜けくれば滴りぬ 飴山 實
洞窟の滴り髪に撫でつける 山口誓子
滴りつ零れつ石蓴干されゆく 軽部烏頭子
滴りてふたりとははじまりの数 辻美奈子
滴りて大磐石となりにけり 木倉フミヱ
滴りて山も加はる岨まつり 町田しげき
滴りて木賊嫩芽の色甘き 颯(しづの女小句) 竹下しづの女
滴りて滴りて岩を黒くしぬ 谷野予志
滴りて石に還りし仏かな 黛 執
滴りて青嶺を指せる洋傘の尖 加藤楸邨
滴りと化し人穴の富士行者 百合山羽公 寒雁
滴りに始まる流れあることを 稲畑汀子
滴りに山蟹来ては身を濡らす 竹中碧水史
滴りに横よりとべる滴あり 波多野爽波 鋪道の花
滴りに歯朶の葉先の応へをり 伊藤蘇洞
滴りに翳となるまで立尽す 沼尻巳津子
滴りに苔の巣食へる地蜘蛛かな 高濱年尾 年尾句集
滴りに見えゐし風も落ちにけり 中村汀女
滴りに集つてゐる水輪かな 高野素十
滴りに頸すじ打たれ許されず 鈴木六林男 国境
滴りの*ろうかんを踏むほとけかな 鴻司
滴りのあまたの音の一つ澄む 大橋櫻坡子
滴りのきらめき消ゆる虚空かな 富安風生
滴りのつぶやき「山は山たりし」 但馬美作
滴りのはげしく幽きところかな 日野草城
滴りのひかりは翳に従ひて 長谷川双魚 『ひとつとや』
滴りのひとすぢ光ひきにけり 高橋光栄
滴りのひとつ一つの山気かな 山口草堂
滴りのひと葉がくれとなりにけり 中田剛 竟日
滴りの一千年の一つづつ 宮崎 寒水
滴りの一打一音山ぐもり 鷲谷七菜子 花寂び
滴りの伝ひ見えたり隠れたり 染谷秀雄
滴りの光が先にしたたれり 太田寛郎
滴りの光添はざるときのあり 木全篝火
滴りの刹那のひかり手に受くる 藤井明子
滴りの力抜けたるとき落ちぬ 正木ゆう子
滴りの声尽くるなき寺の奥 中川宋淵 命篇
滴りの大音響や窟に満つ 野村喜舟
滴りの崖にゆるみし命綱 菅原文子
滴りの微かな音が集まれり 本居桃花
滴りの思ひこらせしとき光る 汀女
滴りの打ちては揺るる葉一枚 富安風生
滴りの明日を思へば遺瀬なし 林田紀音夫
滴りの水を抜けゆく巌の色 正木ゆう子
滴りの洞の佛に詣でけり 高浜虚子
滴りの消しゆくもののかたちかな 石田郷子
滴りの玉となりつつなほ落ちず 鷹羽狩行 七草
滴りの絶えぬ師の墓去り難し 深見けん二
滴りの蕗の葉をうつ音なりし 鷹女
滴りの迭(かたみ)の音の明らかに 風生
滴りの金剛力に狂ひなし 宮坂静生
滴りの間を置かずなるまくらやみ 狩行
滴りの雌雄の響や夜の厨 西山泊雲 泊雲
滴りの音の夕べとなりにけり 安住敦
滴りは木の根のことば峠みち 岩間民子
滴りは石工の岩の泣きぼくろ 静塔
滴りは石筍を打ち我を打ち 阿波野青畝
滴りも奈落の闇も涯しなし 西本一都 景色
滴りも杖つく音も杉の中 山崎房子
滴りやかつて負はれてきし山路 田中裕明 櫻姫譚
滴りや分量同じ呼気吸気 池田澄子
滴りや句に明け暮れて傘寿越ゆ 青木重行
滴りや天の松風吹きかはり 康治
滴りや山雨は晴るゝことはやし 高木晴子 花 季
滴りや己の欲を失なはず 坂本龍男
滴りや扉を固く陰の神 肥田埜勝美
滴りや東叡山に麓あり 斉藤夏風
滴りや次の滴りすぐふとり 能村登四郎 寒九
滴りや眠れる者を呼び起こし 高澤晶子 純愛
滴りをさだかに聴くはめつむりて 田中裕明 先生から手紙
滴りを受ける柄杓を持ちかへて 宮本杏圃
滴りを寝釈迦聴き澄みゐたりけり 鈴木しげを
滴りを木桶に受くる石切場 本居三太
滴りを水の鎖と見てゐたり 上田日差子
滴りを額に一条神の山 原裕 青垣
熟れ熟れてお蚕水の如滴りぬ 栗生純夫 科野路
狭庭にもみどり滴り忌に籠る 山口波津女 良人
石の景より滴りて水の景 湯川雅
砂染めて干梅の滴りやまず 松村蒼石
磨崖仏滴りに浮く眉目かな 柴田白葉女 花寂び 以後
紙漉きの紙とならざる滴りよ 塩川雄三
胸あれば胸滴りて息災に 沼尻巳津子
若田硯彫るへ滴り間の遠し 田中英子
草の芽に車の油滴りにけり 増田龍雨 龍雨句集
蛇捲きしめる棒の滴り沖の火事 安井浩司 赤内楽
蜥蜴あそぶ殉教の崖滴りつつ 前川弘明
見てゐても見てゐなくても滴りぬ 江川虹村
負ひ帰る海髪の滴り濡れついで 橋本多佳子
赤児百人滴りおちる百日紅 坪内稔典
雛菊や亡き子に母乳滴りて 柴崎左田男
雲湧いて汗滴りのごと清し 野澤節子 黄 炎
願はくは滴りこそを死水に 大木あまり
高速道路増殖しつつ滴りぬ 五島高資
したたりて一壺をみたす濃竜胆 渡邊千枝子
したたりて太陽を呼ぶ朝の芹 今瀬剛一
したたりの孤島を舟は離れゆく 佐川広治
したたりの最後の三語 Es ist gut 高澤晶子 純愛
したたりの短かき命かがやかす 成瀬桜桃子
したたりは歯朶に飛び散る清水かな 夏目漱石 明治四十年
したたりや かの石牢の 欠けた紋章 富澤赤黄男
したたりやルルドの窟の聖マリア 石塚友二
したたりや山中に老ゆ寺の鶏 秋元不死男
全身にしたたり溜めて紀元杉 高田ゑみ
刻はいま黄金の重みよ惜しむべきなごりは妻に子にしたたりて 上田三四二
巖むらのしたたりしぼり遅ざくら 栗生純夫 科野路
朝顔や芹澤染色したたりて 水原秋櫻子
棕梠竹に月させば露したたりつ 原田種茅 径
火の島の裾にしたたり天草干す 冨田美和
風くれば檜原したたり山椒喰 石田波郷
ロープウェイに赤子泣く声山滴る 八幡より子
大谷石截り出せし山滴れり 根岸善雄
姦しき旅でありても山滴る 栗林ひろゑ
山滴るみどりを浴びてひとり旅 白井よしこ
山滴る島を離れておけさ丸 高澤良一 寒暑
山滴る父の能弁唯物史観 下山田禮子
山滴る靴音軽き朝かな 中村輝峰
峰かけて父祖よりの山滴れる 高橋霜葉
弥彦山滴るを指呼稚鮎釣る 高澤良一 寒暑
新しき墓を加へて山滴る 岸洋子
頂きに神を祀りて山滴る 高橋悦男
滴れり三葉虫の潜む岩 高澤良一 寒暑
滴れり三葉虫の昔より 高澤良一 素抱

以上
by 575fudemakase | 2014-08-31 00:52 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

水中花

水中花

例句を挙げる。

あざむいて友と別れる水中花 坪内稔典
あるまじき死に逢ふことも水中花 矢野杏子
いきいきと死んでゐるなり水中花 櫂未知子 蒙古斑
いつはりの愛とも知らず水中花 市川 晴子
いつはりもいたはりのうち水中花 鷹羽狩行 第九
たそがれは光陰にじむ水中花 森沢一行
なまぬるき水に棲み飽き水中花 立川昌子
ひしひしと書棚が迫る水中花 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
まじまじと子が見てひらく水中花 桂信子 黄 瀬
ゆくすゑは子にあり水中花ひらく 中山純子 沙羅
ゆっくりと涙が耳へ水中花 対馬康子 愛国
よよと泣く人を羨しみ水中花 大石悦子 聞香
カンブリア紀の水中花を掘つてゐる 加藤郁乎
テーブルの何処に置いても水中花 岩淵喜代子 螢袋に灯をともす
一日の水のおとろへ水中花 伊藤トキノ
一灯に虚色ふかまる水中花 成田昭男
人の死の一部始終を水中花 片山由美子 風待月
作りたる色のかなしき水中花 大橋敦子
入れ直しみても傾く水中花 朝鍋住江女
口癖に安楽死言ふ水中花 平本くらら
古井戸に筋肉質の水中花 岸本マチ子
咲きつきて灯に片よりぬ水中花 渡辺水巴 白日
唇にカンパリソーダ水中花 仙田洋子 雲は王冠
器ごと揺らしてみたる水中花 岩淵喜代子 硝子の仲間
囲はれの恋の絵島か水中花 渡辺恭子
地震つづく夜も泡懐く水中花 星 水彦
埃浮き飽きられにけり水中花 下村梅子
夏場所の通りとなりぬ水中花 松山足羽
夕ぞらへひともして売る水中花 豊田都峰
夫いまも入院ぐらし水中花 石田あき子 見舞籠
夫に不満ジヨッキに水中花を咲かせ 岡本 眸
妻に供華ぽとんと咲かす水中花 細見しゆこう
妻子遠し水中花けふもそこにありて 有働亨 汐路
子が二人居れば水中花も二つ 上野章子
子心は親心なり水中花 鈴木花蓑句集
子育ての娘は他人めく水中花 北見さとる
定年へ蚕食の日日水中花 文挟夫佐恵 雨 月
帰港まづ水替へて夜の水中花 工藤義夫
徒然のものの試しに水中花 高澤良一 寒暑
想ひけり水芸太夫水中花 長谷川かな女 雨 月
投げ入れて咲くまでの夢水中花 仙田洋子 橋のあなたに
旅きめてなごむ心や水中花 影島智子
明治は存し大正は夢水中花 百合山羽公 寒雁
月さすや沈みてありし水中花 前田普羅 新訂普羅句集
母の忌や姉より届く水中花 渡辺恭子
水といふもの美しや水中花 深川正一郎
水中花いつまでも咲く子無き家 品川鈴子
水中花けふ一日の水を足す 神蔵 器
水中花すぐゐ眠をする子かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
水中花たちまち雲の光りくる 桜井博道 海上
水中花だんだんに目が嶮しくなる 岸田稚魚
水中花どこに置きても母病みぬ 渡辺恭子
水中花にも労りの水替ふる 厚海浮城
水中花にも花了りたきこころ 後藤比奈夫 金泥
水中花ねぢられしまま漂へる 仙田洋子 雲は王冠
水中花はなやかにわが顔のなか 藤岡筑邨
水中花ひとゆらぎして咲きにけり 土井視砂子
水中花ひと日のおもひ濁りそむ 鈴木 まゆ
水中花ひらく水中あますなく 井沢正江 一身
水中花ひらく激しき死別感 辻田克巳
水中花ひらく胸襟ひらくごと 樋笠文
水中花まことしやかに露むすぶ 西本一都
水中花上がりそこねし泡一つ 八幡より子
水中花亭午の水に開きけり 後藤夜半 底紅
水中花何か失ひつつひらく 森重昭
水中花八方美人なり難し 神澤久美子
水中花刻のうつろひなかりけり 山田弘子
水中花名のなき花として咲けり 内田美紗 魚眼石
水中花培ふごとく水を替ふ 石田波郷
水中花夜は紅色の濃かりけり 棚山 波朗
水中花夜空すみずみまで夜空 吉田輝二
水中花大きく咲かせ夫持たず 鷲谷七菜子
水中花女人の館時に倦む 中村明子
水中花女無慚に老いにけり 文挟夫佐恵 黄 瀬
水中花妻の妹の子を膝に 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
水中花忘じ難きも忘じけり 鈴木栄子
水中花怒りてみても独りなり 白川京子
水中花悦びありて刻知らず 成田千空 地霊
水中花愛冷ゆるときひらくべし 仙田洋子 橋のあなたに
水中花投げ入れられて槽に波 進藤一考
水中花捨てし記憶のなかりけり 竹中碧水史
水中花日暮れてくらくなりにけり 山口波津女 良人
水中花明日あるために美しく 岸風三樓
水中花昨日と同じ泡抱いて 樹生和子
水中花昨日のまゝが悲しけれ 久本 澄子
水中花母へ余命の彩放つ 中山華泉
水中花水が疲れてゐたりけり 黛まどか
水中花水との腐れ縁長し 大木あまり 火のいろに
水中花水にひびきて咲き初むる 小玉真佐子
水中花水の余白をのこしけり 那須淳男
水中花水より指を手にもどす 古舘曹人 樹下石上
水中花水押し上げてひらきけり 池田秀水
水中花水濁るれば見飽きたる 池内たけし
水中花津軽の海をおだやかに 長谷川かな女 雨 月
水中花港まつりの灯に買へり 伊藤京子
水中花玻璃のそとにも咲くごとし 井沢正江 以後
水中花病室の椅子足らざる日 朝倉和江
水中花眠り過ぎたる身の疲れ 岡部名保子
水中花紅さしひらく灯の澄みに 柴田白葉女 遠い橋
水中花置き病室の翳ふやす 織田玲子
水中花置き鏡台のくもりなく 片岡我当
水中花置く筋書のままなる日 上田日差子
水中花老婆はいろの外にあり 長谷川双魚 『ひとつとや』
水中花花に遅速のなかりけり 小島左京
水中花菊も牡丹も同じ色 長谷川かな女 花 季
水中花萍よりもあはれなり 渡辺水巴 白日
水中花蝕まれゐる一葉なし 鈴木貞雄
水中花詠へりし子が離婚さる 下村槐太 天涯
水中花誰か死ぬかも知れぬ夜も 有馬朗人
水中花調度の多き主婦の部屋 杉原竹女
水中花身じろぎ出来ぬ母見取る 村上悦美
水中花身一つ宥め宥め生く 中村苑子
水中花銀の泡つけ夜深き燈 内藤吐天 鳴海抄
水中花開きし花の天地人 品川鈴子
水中花開くは古き夢に似て 橋本炭水
水中花開く一瞬こそいのち 藤陵紫泡
水替へて清しきものに水中花 今泉貞鳳
水没やうれしはづかし水中花 櫂未知子 蒙古斑以後
泡ひとつ抱いてはなさぬ水中花 富安風生
泡一つ抱いてはなさぬ水中花 富安風生
満開のほかにすべなく水中花 長谷川満子
溜息のような泡生み水中花 名取節子
灯せば水中花にも夜の影 西村和子 窓
父と子の医学距たる水中花 吉澤卯一
生涯に看とり幾たび水中花 及川貞
男手の針あやふしや水中花 石川桂郎 四温
病人に一人の時間水中花 稲畑汀子
病気見舞の水中花包まする 石川桂郎 四温
花の名のさだかならねど水中花 関戸靖子
花も葉も水にゆだねて水中花 亀田虎童子
蛇を抜いて標本瓶に水中花 大屋達治 繍鸞
見えぬ眼の中に咲きをり水中花 日置うらら
話題なき客に倦みをり水中花 黒木 野雨
透きとほるまで水そそぐ水中花 長田等
邯鄲の夢はじまりし水中花 橋田憲明
部屋貸して生計覗かる水中花 毛塚静枝
開き切るまでのときめき水中花 横原律子
開くとき息ひとつ吐く水中花 矢嶋あきら
附添の退屈もしぬ水中花 中村汀女
難聴の眼をさとくをり水中花 朝倉和江
雨脚のはげしくなりし水中花 菅原鬨也
雨脚をあつめたりけり水中花 加藤三七子
青樓の九點下(ここのつさが)り水中花 筑紫磐井 婆伽梵
風知らず青空知らず水中花 木村日出子
麻酔醒めつつ水中花揺らぐかに 山田弘子 螢川
はつ露や酒中花の葉の八枚ぞ 小池文子 巴里蕭条
ひとつ咲く酒中花はわが恋椿 石田波郷(1913-69)
一つ咲きたる酒中花に利休忌を 田畑美穂女
一瓣にして酒中花のまぎれなし 石田勝彦 秋興
酒中花と言ひてほのぼの椿咲く 阿部ひろし
酒中花に上方文化江戸文化 成瀬正とし 星月夜
酒中花も百の椿もしぐれけり 福永耕二
云ふに窮してそこまで云ふか水中花 高澤良一 暮津
家居して大いに退屈水中花 高澤良一 暮津
水中花薬は処方箋に基づき 高澤良一 暮津

以上
by 575fudemakase | 2014-08-31 00:50 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

虫干

虫干

例句を挙げる。

お虫干し有情無情の絵図掛けて 中井 ユキ子
山の家の虫干風や棉の花 月舟俳句集 原月舟
山寺に虫干法座ありにけり 大峯あきら 宇宙塵
我が虫干の白いものならぬは鈍びたる 梅林句屑 喜谷六花
浅間山見ゆ黄檗一寺虫干し日 宮坂静生 春の鹿
灯台の虫干見学者にさらす 矢島渚男
田が見えて虫干しの大磐若経 増成栗人
虫干しに耐へぬ古さとなる遺稿 稲畑汀子
虫干しのすきまに朱雀大路みゆ 澁谷道
虫干しの一竿すずし土用干 正岡子規
虫干しの一間故人のものばかり 大場美夜子
虫干しの山家の牛に鳴かれけり 臼田亜浪
虫干しの紐蝶結び玉結び 檜紀代
虫干しの開山語録と韓櫃と 高澤良一 燕音
虫干しや亡母のたたみし袖を解き 今泉貞鳳
虫干しや人の下り来る賤ケ岳 大峯あきら
虫干しや甥の僧訪ふ東大寺 蕪村
虫干しをして良縁にめぐまれず 岬雪夫
虫干すやいのちのしみの衣ばかり 塩谷はつ枝
虫干と吹かれて鳴やきり~す 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
虫干に蕪村の偽筆掛りけり 正岡子規
虫干に金の燭台ありにけり 山本洋子
虫干のあつめし紐や一とたばね 飯田蛇笏 山廬集
虫干のこの紬着て遺影夫 塩谷はつ枝
虫干のついでに見する本尊かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
虫干のほのめく衣や草の宿 虚子
虫干の中にまぶしく数珠置かれ 岸本尚毅 舜
虫干の中に匂ふやさくら餅 岡本松浜 白菊
虫干の吹毛九尺薪寺 松瀬青々
虫干の四S遠くなりにけり 三村純也
虫干の塵や百年二百年 正岡子規
虫干の寺宝に遊女苦役の図 松藤夏山 夏山句集
虫干の振袖纏ふたはむれて 品川鈴子
虫干の木偶たはむれに泣かせけり 西村 梛子
虫干の母の信玄袋かな 柳下良尾
虫干の母の貧しき金銭簿 丸田余志子
虫干の用意の網の抜げ出され 波多野爽波 『一筆』以後
虫干の箱あけまじき鼠かな 佐藤紅緑
虫干の蔵にかすかに滝音あり 平井久美子
虫干の衣の乏しさこれにてよし 山口波津女 良人
虫干の衣の香にゐて客主 銀漢 吉岡禅寺洞
虫干の青き袖口たゝまれし 高野素十
虫干は風吹き通す座敷かな 河東碧梧桐
虫干やかつぎ出されし大般若 池上浩山人
虫干やつなぎ合はせし紐の数 杉田久女
虫干やひらひら時間舞ひあがり 小檜山繁子
虫干や二階に来れば近き山 大峯あきら
虫干や具足櫃から転(まろ)び出る 遊女-小原 俳諧撰集玉藻集
虫干や古の経巻き返し 尾崎迷堂 孤輪
虫干や吉野初瀬を二度の雲 鉄丸 選集「板東太郎」
虫干や家といふ箱くつがへし 井沢正江 湖の伝説
虫干や寺世話人の古袴 渡辺香墨
虫干や庵に久しき松ふぐり 加舎白雄
虫干や形見の着物また増えて 原島悦子
虫干や形見ばかりが華やぎて 斎藤節子
虫干や手畳敷を大般若 古白遺稿 藤野古白
虫干や捲き癖つきし鹿の皮 柑子句集 籾山柑子
虫干や散らぬ三十六歌仙 野村喜舟 小石川
虫干や旅に出でゐて夫遠く 山口波津女
虫干や明王足をはねたまふ 阿波野青畝
虫干や東寺の鐘に遠き縁 飯田蛇笏 山廬集
虫干や母系に継ぎし桔梗紋 大和田亨子
虫干や父の結城の我似合ふ 茅舎
虫干や甘んじてなる保守の人 森鴎外
虫干や白粉の花さきこぼれ 村上鬼城
虫干や絵巻ほどけば姫の髪 中村堯子
虫干や縞ばかりなる祖母のもの 草間時彦 櫻山
虫干や若きあるじの世となり居 尾崎迷堂 孤輪
虫干や裏の竹きる薪寺 妻木 松瀬青々
虫干や襟より父の爪楊枝 川端茅舎
虫干や触れて冷たき紅絹の裏 館岡沙緻
虫干や質屋の通ひ竿の先 尾崎紅葉
虫干や返す人亡き書一函 河東碧梧桐
虫干や遺影の兄は椰子に凭り 轡田 進
虫干や野口英世の姉の刀自 西本一都 景色
虫干や金沢文庫経ばかり 野村喜舟 小石川
虫干をして誰もゐぬ百姓家 山口波津女 良人
虫干をせねばせねばと日雀かな 石川桂郎 四温
虫干家に子供なくて打たれざる太鼓も 安斎櫻[カイ]子
蜑が戸の虫干見ゆる澳辺かな 誓子
袖通しては虫干のはかどらず 岡田 和子
騒動記虫干す中に読まれけり 飯田蛇笏 山廬集
鴆毒の壷も曝すやお虫干 芥川龍之介
あぶな絵もまじり医の土用干 加古 宗也
いさゝかな料理出来たり土用干 蕪村
うたゝ寝や揚屋に似たる土用干 其角
かけたらぬ女心や土用干 千代女
さらさらと又落衣や土用干 皆吉爽雨
それぢやあがり昔恥けん土用干 昌夏 選集「板東太郎」
なき人の小袖も今や土用干 芭蕉
わが好む色褪せやすき土用干 渡邊千枝子
わが物も昔になりぬ土用干 子規句集 虚子・碧梧桐選
ジプシーの大地に拡げ土用干 東中式子
一束の古き寫眞や土用干 会津八一
一竿は死装束や土用干し 許六
二郎雨三郎風や土用干 菅原師竹句集
亡き人の小袖も今や土用干 芭蕉
亡き母の帯しめてみる土用干 高野清美
京学の医書今反古や土用干 菅原師竹句集
内張の銭の暑さや土用干 許六亡父-理性軒 六 月 月別句集「韻塞」
勲章を跨ぐためらひ土用干 吉田静二
古代文様日蔭のごとく土用干 田中裕明 櫻姫譚
土用干うその鎧もならびけり 子規句集 虚子・碧梧桐選
土用干し紺糸威は美男の具 伊藤敬子
土用干もみ裏古れどおん形見 荻阪伊せ女
土用干や袖から出たる巻鯣 横井也有 蘿葉集
土用干や軍書虫ばみて煙草の葉 正岡子規
土用干千人針の捨て切れず 橋本蝸角
土用干父の形身の支那鞄 朝山義高
土用干瓢もつとも軽かりき 佐野青陽人
土用干茂吉のカンカン帽あらず 茨木和生 往馬
娘より派手な帯あり土用干 田畑三千女
嫁ぎ来て紋はかたばみ土用干 長谷川ふみ子
子なきもの我ればかりかは土用干 臼田亜浪 旅人
家じゅうが思ひ出の函土用干 西村 澪
山を見る二階なりけり土用干 涼菟
山人の衣裳持なり土用干し 河野静雲
山姫や鹿の子白無垢土用干 山口素堂
崩れ居る懐爐の灰や土用干 会津八一
戊辰頃の父の日記や土用干 黒風
手を通しみては畳みぬ土用干 伊藤たけ
拝領のもの一竿や土用干 高浜虚子
政宗の眼もあらん土用干 正岡子規
明るみに恥もさらすや土用干 巌谷小波 さゝら波
本陣の語りぐさにと土用干 阿波野青畝
栃の実を砕きし臼か土用干し 沢木欣一
槻かげに主憩へり土用干 西山泊雲 泊雲句集
母の世の縮緬おもき土用干 白澤よし子
母の刀自この世にありて土用干 長谷川櫂 蓬莱
母縫ひし褄くづれざる土用干 白澤よし子
法體の先祖の像や土用干 会津八一
海女が住む埴生の小屋も土用干 高橋淡路女 梶の葉
港より見えて廓の土用干 篠原鳳作
無き人の小袖も今や土用干 芭蕉
獅子頭八方にらむ土用干 加藤一智
白無垢の一竿すずし土用干 正岡子規
百姓の衣黒かりし土用干 山口波津女 良人
真贋はともかく一茶土用干 高橋秋郊
着すぐれぬ伯母の小袖や土用干 高井几董
絶対に着ぬ軍服の土用干し 田野井一夫
罪ふかき女めでたし土用干 鬼貫
胴ぬきの黄ばめる絹や土用干 石川桂郎 高蘆
臍の緒の箱におぼえや土用干 伊藤敬子
虚子のもの二日に分けて土用干 波多野二美
虫干しの一竿すずし土用干 正岡子規
袖通す筈なきものも土用干 山田弘子 こぶし坂
裏愛宕とはこのあたり土用干 大峯あきら 宇宙塵
読むこともなきものばかり土用干 大塚正路
身のほとりそろそろ軽く土用干 長谷川富佐子
野暮の出る江戸研究や土用干 加藤郁乎 江戸桜
鎧着てつかれためさん土用干 向井去来
黄表紙の糸のほつれや土用干 紅緑
龍宮も今日の潮路や土用干 松尾芭蕉
ことごとく挫折の書なり曝す 小林康治 『存念』
さむきまで書を曝したり怠れり 萩原麦草 麦嵐
なつかしく遺書の曝書に参りけり 河東碧梧桐
ひとたびは水をかぶりし書も曝す 鈴木玉斗
ひと日夫の看護休みし書を曝す 石田あき子 見舞籠
わがいのち惜しみつづけし書を曝す 木村蕪城 寒泉
をんなとていささかの書を曝しけり 大石悦子 聞香
バイブルとわが呼ぶ俳書曝しけり 阿部慧月
一冊を拾ひ読みして書を曝す 鷹羽狩行
人の家の曝書の活字圧倒す 能村登四郎
先住の曝書のなかの耶蘇退治 河野静雲 閻魔
古書持たずされど曝書や子の日記 及川貞 榧の實
固く封じてレーニン全集曝書せず 原田喬
大学の隷書の印や書を曝す 小林理
学友の頃なる夫の書を曝す 山田弘子 初期作品
山門に童の声や書を曝す 大橋櫻坡子 雨月
我が生母となりし一書を曝しけり 加藤三七子
晩年を曝せるごとく書を曝す 市川彳水
曝したる一書残して夜を読まむ 皆吉爽雨 泉声
曝しつつわれと戦を避けたる書 皆吉爽雨 泉声
曝す書となりたる『されど我らが日々』 片山由美子
曝す書のかたへに加ふ舞扇 渡邊千枝子
曝す書の唐詩もなべて忘れけり 細川加賀 生身魂
曝す書の朱線は父のつけしもの 今瀬剛一
曝す書の薄し戦没学徒集 岩崎照子
曝す書は持たず恋文ばかり溜め 樋笠文
曝書して丸き師の文字たどりけり 伊藤京子
曝書して太平洋を明日越えん 大峯あきら(1929-)
曝書して心の飢ゑてきたりけり 秋元不死男
曝書して浦の白波攻めつづく 中拓夫
曝書して祖父なつかしく父こはし 後藤比奈夫
曝書して職長き身も曝しけり 禰寝雅子
曝書して色鯉の水明りのみ 大峯あきら 宇宙塵
曝書しばし雲遠く見て休らひぬ 青峰集 島田青峰
曝書などせんとて一念発起の日 高澤良一 宿好
曝書なほおのれに今日の忙事あり 飯田蛇笏 山廬集
曝書にほふ性に眼覚めし頃のにほひ 山口誓子
曝書の日腓返りを致しけり 波多野爽波 『一筆』
曝書まぶし百日紅の花よりも 星野立子
曝書人の或は疎み見る書かな 青峰集 島田青峰
曝書人年若くして官高し 池上浩山人
曝書絶句す 栄 秋水 寒村伝 尾村馬人
書き込みし青春の檄書を曝す 川端 実
書を曝しわが生涯をかへり見る 深川正一郎
書を曝し寂莫の一日終へむとす 軽部烏頭子
書を曝し少年の日を曝したり 辻田克巳
書を曝し我が青春をさらしけり 小島隆保
書を曝し文を裂く天の青きこと 渡邊水巴 富士
書を曝す中に紅惨戦絵図 橋本多佳子
書を曝す征きて還らぬ人のもの 高本時子
書を曝す母若き日のバイブルも 肥田埜勝美
書を曝す父に教へ子多きかな ふけとしこ 鎌の刃
朱線みなわれを育てし書を曝す 神野青鬼灯
来合せて曝書手伝ふ娘あり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
東風渡る書に曝す眼よ蘇れ 青峰集 島田青峰
松を摶つ芭蕉広葉や書を曝す 河野静雲 閻魔
松風のこよなき日なり書を曝す 大峯あきら 宇宙塵
母の文出で来て曝書進まざる 伊東宏晃
清貧という語うべなひ書を曝す 浅井青陽子
父の忌の曝書にまじる亡母の文 吉野義子
父在さば訊きたき一事書を曝す 藤崎美枝子
百千の指紋の躍る書を曝す 竹下しづの女句文集 昭和十年
笏載せて縁起十巻書を曝す 木田素子
経行のごとく巡れる曝書の辺 高澤良一 さざなみやっこ
縁に腰して曝書の人と語り去る 温亭句集 篠原温亭
背の崩る温知叢書を曝しけり 高澤良一 ももすずめ
色鯉も曝書もしづか午後一時 大峯あきら 宇宙塵
芭蕉葉のひるがへるあり曝書楼 田村了咲
若きころ捨てたる芸の書も曝す 出口巴郎
蘭学と呼ばれし頃の書を曝す 三村純也
見おぼえの父の印ある書を曝す 佐藤信子
親鸞の御ン八十の書を曝す 大橋櫻坡子
青春はあまりに暗く書を曝す 新谷ひろし
鶏頭のめぐる曝書のむしろ敷く 皆吉爽雨 泉声
お風入れ丸山応挙は虎が得手 高澤良一 随笑
お風入れ墨に佳き香のもどりしと 大石悦子 百花
お風入れ慧可のぎょろ目に立ちすくむ 高澤良一 燕音
お風入れ涅槃図ごわと畳まるる 高澤良一 さざなみやっこ
お風入れ道隆さまの洗面具 高澤良一 燕音
ぐぐぐいと引ける渇筆お風入れ 高澤良一 燕音
その続き見たき絵巻やお風入 山岡和子
一祖二祖六祖祖師像お風入れ 高澤良一 ぱらりとせ
伝牧渓伝何くれとお風入れ 高澤良一 さざなみやっこ
地獄絵の飯の炎となるお風入れ 高澤良一 さざなみやっこ
寺縁起三十丈のお風入 渡辺俊子
打敷に小袖の名残お風入 山敷恵三
方丈を大きく使ひお風入れ 高澤良一 随笑
時頼公強(こわ)装束のお風入れ 高澤良一 ぱらりとせ
柏槇の拱手突つ立つお風入れ 中戸川朝人 星辰
桐の花母の葛籠に風入れて 古賀まり子 緑の野以後
点字本なる喜寿艶やお風入れ 波出石品女
白描の三つ目の白沢(はくたく)お風入れ 高澤良一 燕音
祥啓の耳毛の達磨お風入れ 高澤良一 鳩信
秀吉の書状短しお風入 森田峠 三角屋根
経櫃の参之内参お風入れ 高澤良一 さざなみやっこ
経箪笥きざはしびらきお風入 大橋敦子 勾 玉以後
背合せに吊らる軸物お風入れ 高澤良一 さざなみやっこ
芭蕉堂あけあり像のお風入 波多野惇子
風入のはづれに兄のハーモニカ 鳥居美智子
風入や五位の司の奈良下り 正岡子規
風入や家紋散らばる刀自の膝 綾部仁喜
風入や軸物入れの箱いろいろ 高澤良一 さざなみやっこ
風入れの外陣内陣あからさま 今村泗水
風入れの寺宝絵巻や文化の日 冨樫藤予
風入れの役僧舟を漕いでをり 高澤良一 さざなみやっこ
風入れの案内当山方丈にて 高澤良一 さざなみやっこ
風入れの涅槃図六畳領しけり 関森勝夫
風入れの絵図の地獄の責め道具 高澤良一 随笑
風入れの釣竿の穂に結ひし糸 宇佐美魚目 天地存問
風入れや父が彫りたる蔵書印 下村ひろし 西陲集
けし咲くや雛の小袖の虫払ひ 可南 俳諧撰集玉藻集
元禄の長者番附虫払 小松月尚
寺に生れ寺に育ちて虫払 能美丹詠
涅槃衣も衣箪笥や虫払 喜谷六花
筆のもの忌日ながらや虫払 召波
経櫃に虫払せし日を誌す 下村梅子
虫払鼠の糞の大いなる 飯田蛇笏 山廬集
贋物のいく代めでたし虫払 高井几董
長持の奈落の衣や虫払 柑子句集 籾山柑子
飽足らぬ女心や虫払 鷺喬
古地図
曝されて龍の取り巻く秋津島 高澤良一 ももすずめ

以上
by 575fudemakase | 2014-08-31 00:48 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

晒井

晒井

例句を挙げる。

あかあかと底にさす日や晒井 会津八一
人変り晒井も世に亡びけり 有働 亨
屋根葺の世話焼顔や晒井 会津八一
庭木戸や晒井すみし開け放し 小杉余子 余子句選
昼寄席に晒井の声きこえけり 渡辺水巴 白日
晒井にたかき樗の落花かな 飯田蛇笏 山廬集
晒井に和尚の尻の白さかな 会津八一
晒井に蝙蝠安といふすがた 松藤夏山 夏山句集
晒井のたとへば暗峠越え 岡井省二
晒井のたらりと落す縄梯子 北村仁子
晒井の夜の賑へる山家かな 茨木和生 往馬
晒井の底より見たる揚羽蝶 加藤かけい
晒井の水を童女は渡り行く 前田普羅 新訂普羅句集
晒井の水深く汲み深くこぼす 榎本冬一郎
晒井の泥水蕗にさゞめけり 松藤夏山 夏山句集
晒井の綱長々と濡れにけり 野村喜舟 小石川
晒井や二タ杓三杓迎へ水 大森積翠
晒井や水屋の神の朝灯 岩谷山梔子
晒井や簾しづかに二三軒 増田龍雨 龍雨句集
晒井や虹出てあがる昼の雨 太田暁水
晒井を一本の声透き通る 田和大私
晝寄席に晒井の聲きこえけり 渡邊水巴
井戸替のをはりし井戸を覗きけり 日野草城
井戸替の水芭蕉へと流れけり 温亭句集 篠原温亭
井戸替の痩鯉を投げ上げにけり 茨木和生 往馬
井戸替の綱を引きつゝ仰ぐ雁 吉屋信子
井戸替の綱庭を抜け表まで 松葉登女
井戸替の綱曳きに出る長屋哉 星野麦人
井戸替への水流れきし落花かな 永井龍男
井戸替へを見てをり鶏の歩きをり 鈴木智子
井戸替や漁を休みし人ばかり 吉本伊智朗
井戸替を見てゐる群のなかにゐる 桂信子 緑夜
井戸浚して星清き夜なりけり 後藤是山
井戸浚へ地下百尺の土青し 岸霜蔭
井戸浚へ後ろ髪にはべつとり血 筑紫磐井 婆伽梵
井戸浚まづ電球を下ろしたる 永方裕子
井戸浚爆音の今鮮しき 宮坂静生 樹下
井浚ひの始まる萩を束ねけり 前田普羅 新訂普羅句集
人間の水は井戸替星は空 宗因
凌霄に井戸替すみし夕日影 西島麦南 人音
父に跟(つ)いて習いしことの井戸浚 大林信爾

以上



by 575fudemakase | 2014-08-31 00:29 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

水機関

水機関

例句を挙げる。

あさましき顔して水からくりを見る 小川双々子
どこまでが後方支援水からくり 鈴木淑生
嫁ぐ子と水からくりを見てゐたり 関戸靖子
暮れてより水たけなわの水からくり 永末恵子
水からくり人の欠伸のうつりけり 龍岡晋
水からくり人生おもに取の役 後藤綾子
水からくり兵住みし街昼さびれ 宮坂静生 青胡桃
水からくり和尚が水を足してをり 脇本千鶴子
水からくり己れの音に昼深まる 長岐靖朗
水からくり水の機嫌に逆はず 大久保橙青
水からくり燈下に鳴るを見て通る 西村公鳳
水からくり猫が三味線ひきにけり 龍岡晋
水からくり群鳥天を暗うせり 五味一枝
砂ぼこり吹きつけ吹きつけ水からくり 榎本冬一郎 眼光

以上



by 575fudemakase | 2014-08-31 00:28 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

清水

清水

例句を挙げる。

あとさまに小魚流るゝ清水哉 高井几董
いかほどを生きしや桂清水掬む 佐藤鬼房
いつも身近に眞清水涌くを感じをり 眞鍋呉夫(1920-)
うつくしき人なほ結ぶ清水かな 備前-晩翠 元禄百人一句
うつくしや榎の花のちる清水 加舎白雄
おくつきに近くは湧ける清水かな 尾崎迷堂 孤輪
おくらばや清水に影の見ゆるまで 千代尼
お岩木の手水の真清水手に痛し 高澤良一 寒暑
お岩木の真清水大き柄杓に受け 高澤良一 寒暑
お岩木の真清水引きて御神水 高澤良一 寒暑
かけ出の髭をしぼりて清水哉 召波
かりそめの清水なりしが祀らるる 忍月
くちすすぎ月光残す山清水 柴田白葉女 花寂び 以後
このあたり金出るといふ清水かな 成瀬正とし 星月夜
この清水濁せば曇る御山かな 比叡 野村泊月
ころころと清水あそばせ芭蕉の道 原 裕
さざれ蟹足這ひのぼる清水哉 松尾芭蕉
ざざ洩りの柄杓とりあぐ清水かな 阿部みどり女 笹鳴
したたりは歯朶に飛び散る清水かな 夏目漱石 明治四十年
しんしんと鈴振るごとし清水湧く 村越化石 山國抄
すさまじく清水湧くなり雨の中 増田龍雨 龍雨句集
すたる音嬉しき夜の清水かな 井月の句集 井上井月
すみにけり巌下清水神代より 幸田露伴 江東集
ただ頼め内井の清水湧くかぎり 臼田亜浪 旅人
てのひらに清水の重さ妹はるけし 蓮田双川
とくとくの清水の末のふきのたう 吉野義子
とくとくの清水の甘し山ざくら 関森勝夫
とくとくの清水はいかに花の雲 宇佐美魚目 天地存問
とくとくの真清水化けるまで生きな 後藤綾子
ところてんの叩かれてゐる清水かな 夏目漱石 明治四十年
ならはしの二文づつとる清水哉 会津八一
ぬけたりな清水が本の片草履 服部嵐雪
ねぶたくと清水な呑みそ横田山 斯波園女
のどかさは泥の中行く清水かな 古白遺稿 藤野古白
のど下る清水いとほし霧の中 佐野良太 樫
はきながら草履を洗ふ清水かな 立花北枝
はんざきに真清水今も湧き流れ 臼田亜浪
ひとり言いふて立さる清水哉 炭 太祇 太祇句選後篇
ふく清水に砂の負け居る汀かな 高田蝶衣
ほら穴に清水の湧くをうやまへり 細見綾子 黄 瀬
みな清水ならざるはなし奥の院 井上井月
むく~とものいふさまの清水哉 竹冷句鈔 角田竹冷
むすぶ手の濁り流るゝ清水哉 妻木 松瀬青々
もてなしの鯨はほめて清水かな 幸田露伴 拾遺
チャグチャグ鈴清水にひびき橋渡る 八牧美喜子
ハンカチを清水に絞る泣きしあと 津田清子
一言はかヘじ清水の如きあり 松瀬青々
七月や真清水の音葉がくれに 神尾久美子 桐の木
丈六のそびら音して苔清水 飴山實 『花浴び』以後
三ケ月〔の〕清水守りておはしけり 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
上蔟や真清水は崖つたひつつ 神尾久美子
下駄もぬがず足を入れたる清水哉 寺田寅彦
二タ蟹の爪たゝかへる清水かな 東洋城千句
二人してむすべば濁る清水哉 蕪村 夏之部 ■ 丸山主水が、ちいさき龜を寫したるに賛せよとのぞみければ、任官縣命の地に榮利をもとめむよりハ、しかじ尾を泥中に曳んには
二人して片足づつの清水かな 夏目漱石 明治四十年
五合目の富士の清水を掬ひのむ 星野椿
人の世の銭にされけり苔清水 一茶 ■文化十二年乙亥(五十三歳)
人去て夕山に鳴る清水かな 四明句集 中川四明
人死ねば豆腐を浸す清水かな 萩原麦草 麦嵐
仙人の鬚洗ひ居る清水哉 寺田寅彦
伏し重つて清水掬ぶや生徒達 竹下しづの女 [はやて]
伏姫の御祓せしとふ清水ありや 寺田寅彦
住かねて道まで出る歟山清水 服部嵐雪
先き騎馬のあと待合す清水かな 井月の句集 井上井月
先達の大声に呼ふ清水かな 尾崎紅葉
先馬の沓しめし行く清水かな 猿雌 俳諧撰集「有磯海」
光る風のすぢ明らかに清水かな 中村汀女
其底に木葉年ふる清水哉 正岡子規
円空(く)さんにどすんどすんと山清水 中戸川朝人
冷し瓜富士の真清水戸々に湧き 勝亦年男
凍て解けて筆に汲み干す清水哉 松尾芭蕉
初蝶や木曾の真清水樋あふれ 下田稔
剣客と袂を分つ清水かな 露月句集 石井露月
十本の指しみじみと山清水 原石鼎
半腹の路分れたる清水かな 会津八一
厨ぬけ一渓となる清水かな 西本一都 景色
去るに決まる家の清水を日々愛す 及川貞 夕焼
口やれば波たゝみ来る清水哉 西山泊雲 泊雲句集
古沼の藻の花に湧く清水かな 月舟俳句集 原月舟
古郷や厠の尻もわく清水 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
唇に薬つめたき清水かな 阪本四方太
土間足駄かりかりひびき井戸清水 中村草田男
坑内鼠清水湧く場所知りて来る 戸沢寒子房
城跡や古井の清水まづ訪はん 松尾芭蕉
塔頭の一寺の湧ける清水かな 尾崎迷堂 孤輪
塩浜に清水流るゝ雪解かな 古白遺稿 藤野古白
夕立のあがりし清水蟹あそぶ 清原枴童 枴童句集
夜に入ればせい出してわく清水哉 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
夜をこめて越ゆる山路や清水茶屋 青峰集 島田青峰
夜出てしけものゝ跡や草清水 石井露月
夜清水を汲む傘に飛ぶ螢かな 吉武月二郎句集
大峰を日わたりて幽き清水かな 飯田蛇笏 山廬集
大巌のふるきにほひや清水吸ふ 大橋櫻坡子 雨月
大徳の縁起かしこき清水かな 会津八一
姨捨のくらき中より清水かな 一茶
子の西瓜清水に冷えてゐて日射す 中山純子 沙羅
孑孑の水や清水のどんづまり 柑子句集 籾山柑子
宝丹(ほうたん)のふたのみ光る清水かな 夏目漱石 明治四十年
宝舟の葢沈み居る清水かな 会津八一
客ありて汲みに行くなる清水かな 松藤夏山 夏山句集
寺清水もつれ流れて末濁らず 中村草田男
山だちもともに舌打つ清水かな 中勘助
山のすそ野の裾むすぶ清水かな 千代尼
山内の一院に湧く清水かな 高濱年尾 年尾句集
山清水かき濁らせて旅人われ 相馬 黄枝
山清水ささやくままに聞入りぬ 松本たかし
山清水さびしき指の揃ひをり 鎌倉佐弓 潤
山清水掌にあふれつつふくみけり 上野泰 佐介
山清水汚せしことのすぐに澄む 橋本多佳子
山清水汲みに木花咲耶姫 上野澄江
山清水注ぎて吹けり習ひ笛 宮田富昭
山清水石鹸もて寺僮何洗ふ 楠目橙黄子 橙圃
山清水翁の杖を拝しけり 佐藤美恵子
山清水豆腐の角を削りけり 林原耒井 蜩
山清水靭左りへまはりけり 雁宕
山清水魂冷ゆるまで掬びけり 臼田亜浪
山清水鳴れり朽葉を潜り出て 高澤良一 鳩信
山里や清水うれしき理髪床 尾崎紅葉
山鳥の影うつしたる清水かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
岩が根に湧く音かろき清水かな 井上井月(1822-86)
岩燕紫陽花に居る清水かな 柑子句集 籾山柑子
崖下の清水に屋根の出来にけり 比叡 野村泊月
巌清水渇く咽喉をつらぬけり 山口草堂
市に入る花売憩ふ清水かな 夏目漱石 明治四十年
底の石ほと動き湧く清水かな 高浜虚子(1874-1959)
底の石動いて見ゆる清水哉 夏目漱石 明治四十年
底清水心の塵ぞしづみつく 服部嵐雪
庭清水団扇を置いて掬びけり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
庭清水藤原村の七番戸 子規句集 虚子・碧梧桐選
延命の清水汲み合ひ那智詣 有原静子
弱法師ほゝけた濡す清水かな 阿波野青畝
強力の毛脛にあたら清水哉 森鴎外
強清水母は一日影育て 原裕 青垣
悪僧の天窓(あたま)冷せし清水哉 吉分大魯 (たいろ)(1730-1778)
我があとへ兎唇立よる清水かな 許六 俳諧撰集「有磯海」
戸を閉めて人すぐ座る山清水 田中裕明 山信
戸隠の家根から落る清水哉 一茶 ■文政八年乙酉(六十三歳)
手あぐれば結びめのなき清水かな 千代尼
手のひらにゆるる清水をのみにけり 上野泰 佐介
抜たりなあはれ清水の片草履 服部嵐雪
拝ん松弘法清水湧くほとり 八牧美喜子
掌に支へる岩や清水吸ふ 楠目橙黄子 橙圃
握叡の揆込んである清水哉 寺田寅彦
摘草や清水がもとの鬼の面 井上井月
放牛の牧やカムイの清水引き 沼澤 石次
断崖をおろかに長き清水かな 尾崎紅葉
旅なれや牛が飲みたる清水掬む 石田波郷
日ざかりの岩よりしぼる清水かな 京-常牧 元禄百人一句
日の当る大岩しぼる清水かな 野村喜舟 小石川
日の筋へとく~落つる清水かな 小杉余子 余子句選
旧仮名遣は本仮名遣清水の音 草田男
早紅葉やその真清水を汲むとせん 高木晴子 花 季
月かげや清水したたる岩の鼻 井上井月
朝夕や恋る清水の蜷むすび 加舎白雄
朝顔の大輪清水湛ふごと 高澤良一 燕音
村の子の草くぐりゆく清水かな 石井露月
杓のべてたまる清水をまちにけり 山本京童
杓入れて山驚かす清水かな 尾崎迷堂 孤輪
杣が子に日中さみしき清水かな 原石鼎
来る風のすぢ明らかに清水かな 汀女
柴門に清水に執し住みにけり 尾崎迷堂 孤輪
棲む魚の砂走りせる清水かな 中村汀女
極楽や清水の中に蓮の花 正岡子規
榾ひらききって清水に手を浸す 右城暮石 上下
樟の香の去年を栞の清水かな 加舎白雄
樟の香や村のはづれの苔清水 夏目漱石 明治四十年
橋立の磯清水とて葭の中 西山泊雲 泊雲句集
櫛つけて清水にさつと薄油 阿部みどり女 笹鳴
正宗が刃をわたる清水哉 正巳
此松も柳にしたき清水かな 横井也有 蘿葉集
母馬が番して呑す清水哉 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
比叡と云へば横川を挙ぐる清水かな 尾崎迷堂 孤輪
水晶の山路ふけ行清水かな 蕪村遺稿 夏
水筒に清水しづかに入りのぼる 篠原梵 雨
水風呂へ流し込だる清水哉 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
法印の法螺に蟹入る清水かな 夏目漱石 明治四十年
洗面の清水拓地を貫流す 津田清子 礼 拝
流れ入るや清水鼓虫よりも舞ふ 中村草田男
浸けてある根まがり竹に鳴る清水 西本一都 景色
涼しさや清水につけしつぼの籠 中勘助
涼しさよ字の名にして土清水 高橋睦郎 金澤百句
淋しさの故に清水に名をもつけ 高浜虚子
淋し寒し出羽の清水後の月 河東碧梧桐
混浴の肌叩き出て清水のむ 高澤良一 素抱
清水ある家の施薬や健胃散 内藤鳴雪
清水かければ石室不動目を瞠く(京都岩船寺不動明王) 石原八束 『断腸花』
清水には裏も表もなかりけり 千代尼
清水によき人こもる後の月 松瀬青々
清水のむかたはら地図を拡げをり 高野素十
清水のむつつがの胸の板ぬらし 山口誓子
清水のむ底まで透るさびしさに 柴田白葉女 遠い橋
清水のやうな沈黙地震の山耕す 加藤知世子 花寂び
清水のんで立つ白ズボン草の中 大橋櫻坡子 雨月
清水の小雪おっとり店構 高澤良一 燕音
清水の早紅葉の辺の茶店かな 高濱年尾 年尾句集
清水の灯は暗うして鉢叩 藤野古白
清水の碗ゆすぎて伏せて追ひのぼる 中島斌男
清水の音繭かき次第に早くなる 加藤知世子
清水より濡れつゞきたる山路かな 村家
清水を仰ぐ宿屋の若葉かな 柑子句集 籾山柑子
清水入り清水出づる岩の窪哉 森鴎外
清水吸うて歯白く嶮を笑ひたり 原石鼎
清水弧にめぐり寨(とりで)は村となる 竹中宏 句集未収録
清水得つ笠で押し分け叢かな 比叡 野村泊月
清水得て手足を洗ひ草だんご 中山純子 沙 羅以後
清水掬むや犇と岩に倚る繊そ腕 竹下しづの女 [はやて]
清水汲みに渓へ下りし今のぼりけり 尾崎迷堂 孤輪
清水汲む影のそとなる水の碧 原裕 青垣
清水汲む心はるばる来つるかな 池内たけし(1889-1974)
清水汲む神に祈りし両の手で 樋口 玄海児
清水淋し提灯花はうつむきに 尾崎迷堂 孤輪
清水湧くいづこともなきひゞきかな 比叡 野村泊月
清水湧くところを知りて草刈女 萩原麦草 麦嵐
清水湧く地の骨のごと大樹の根 関口成生
清水湧く岩のさざれや山椒魚 島田雅山
清水湧く青き千曲となるために 藤田湘子(1926-)
清水諸白涼しきゆへに其の名をうる 吉林 選集「板東太郎」
清水踏み鹿のおびえとつながるか 竹中宏 句集未収録
清水遂に流れ出でたる日南哉 篠崎霞山
清水飲むつゝがの胸の板濡らし 山口誓子 遠星
清水飲む神代のごとく髪束ね 永島理江子
清水飲んで頬つたふを雫拭かで立つ 原石鼎
清水鳴る高原野菜「プッチーニ」 吉原文音
湛へ満つ槽の夕にも湧く清水 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
湯をむすぶ誓ひも同じ石清水 松尾芭蕉
湯治場のとば口に湧く山清水 高澤良一 素抱
湯治場の天下一品山清水 高澤良一 寒暑
湯治宿つと山清水引き込んで 高澤良一 素抱
滝道や根笹熊笹清水湧く 野田別天楼
漂泊は跡をとどめず湧く清水 野見山朱鳥
澄みかかる清水や小き足の跡 夏目漱石 明治四十年
無住小屋に道標あり山清水 大谷恵教
無佛寺の蕎麦につめたき清水かな 中勘助
爪紅の濡色動く清水かな 長サキ-卯七 六 月 月別句集「韻塞」
父と子の清水黄色き瓜食ひて 細見綾子
父の父の父の鉱脈清水つたう 八木三日女 落葉期
片手桶傾き移る清水かな 比叡 野村泊月
片髭の鯰をはなつ清水かな 安東次男 昨
獨すむ友よ朧の糒雪清水 榎本其角
玉あらば玉あらひたき清水哉 江涯
玲瓏と玉を噴き居る清水かな 星野麦人
珊瑚珠のごと蟹沈む清水かな 下村梅子
瓜わりの清水と申し観世音 鈴鹿野風呂 浜木綿
生き死にを清水のふちに蟹赤し 川崎展宏
生き物の如く掌に触れ湧く清水 内藤吐天 鳴海抄
生れて初めて会いし清水と花ごぼう 寺田京子
田村麻呂祀れる山の清水かな 鈴木しげを
男女の川落ちて流るゝ清水かな 高橋淡路女 梶の葉
町なかを真清水走り朱欒の実 木村里風子
白山の清水に白し堅豆腐 熊田鹿石
百里来し人の如くに清水見る 綾子
目にむすぶ谷間々々の清水かな 千代尼
目洗へば目明かに清水かな 高浜虚子
眞清水の杓の寄附まで山長者 原石鼎
眞清水や眞金の鋺を越ゆるほど 高橋睦郎
真清水に口痺らして孤独癖 内藤吐天 鳴海抄
真清水に日は衰へて杉小苗 赤尾兜子
真清水に早苗浸してありにけり 沢木欣一
真清水に蕨の塩抜き湯治宿 高澤良一 素抱
真清水の極みは黒き鮴のうを 高橋睦郎 金澤百句
真清水の泡立ちいそぐ年の暮 飯田龍太
真清水の雲より傅ふ飛桟かな 高田蝶衣
真清水も並木も神のしらしけり 高田蝶衣
真清水も病みて野をゆく初夏よ 沼尻巳津子
真清水や世に小峠の忘れられ 野村喜舟 小石川
真清水や天より落ちし白き蝶(箱根) 河野南畦 『花と流氷』以前
真清水や梶の御紋の荒み魂 荒井正隆
真清水や棟が下に昔より 野村喜舟 小石川
真清水や真金の鋺(まり)を越ゆるほど 高橋睦郎 稽古飲食
真清水呑み若き己れに逢ふごとし 塘柊風
石工(いしきり)の鑿冷したる清水かな 與謝蕪村
石工の鑿冷し置く清水かな 蕪村
石工の飛火流るる清水哉 與謝蕪村
石槽に清水を落す筧かな 岩木木外
石橋に歯朶が生えゐる清水かな 野村喜舟 小石川
石菖へ片寄り深き清水かな 比叡 野村泊月
礒清水旅だんすほしき木陰哉 一茶 ■寛政七年乙卯(三十三歳)
神奈川の岱の清水に先すゝめ 服部嵐雪
穢多むらのうらを流るゝ清水哉 高井几董
空壜に清水をいれてはまきちらす 岡田史乃
立山の清水のかもす酒と聞く 稲畑汀子
笠の端の清水に廻ぐる田植かな 浜田酒堂
筧して絶えずの清水洗ひ飯 小澤碧童 碧童句集
筧にも道にも副流村へ清水 香西照雄 素心
結びさる清水かるゝな柳沢 松岡青蘿
結ぶ手にあつさをほどく清水かな 千代尼
絶壁に眉つけて飲む清水かな 松根東洋城(1878-1964)
絶壁の巌をしぼる清水かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
縞蛭に日のうつくしき清水かな 松根東洋城
老鴬や歯朶に湧き澄む山清水 碧雲居句集 大谷碧雲居
聖霊は清水に見えし影ぢや迄 立花北枝
脚照らすひかりとなりぬ草清水 鳥居おさむ
膝もとに清水あふるるさくらかな 鈴木貞雄
苔のなき石を踏場の清水哉 正岡子規
苔の香のしるき清水を化粧室にひき 竹下しづの女 [はやて]
苔清水のぞけばうつる笠の裏 寺田寅彦
苔清水不動の滝と落つるかな 野村喜舟 小石川
苔清水天下の胸を冷やしけり 夏目漱石 明治四十年
苔清水掬ふに杖を岩に立つ 岸風三樓
苔清水落花一ひら又一ひら 内田園生
苔清水霊芝など生ひて土かほる 寺田寅彦
苔清水馬の口籠をはづしけり 子規句集 虚子・碧梧桐選
草に滲みる清水一縷の宿りかな 成田千空 地霊
草刈の足をつけたる清水哉 寺田寅彦
草清水たれかれと世をへだてたる 中林美恵子
草清水塔影映るところかな 永田青嵐
草清水太陽珠と冷されて 斎藤正
草清水湧くこの村に通夜ありぬ 中田剛 珠樹
草清水草にもつるる涼しさよ 西本一都 景色
草鞋買へば問はぬ清水をも教へけり 会津八一
落ちさうな岩の下なり苔清水 井月の句集 井上井月
落ちも敢へず朽葉流れ去る清水かな 会津八一
落合ふて音なくなれる清水哉 蕪村 夏之部 ■ 馬南剃髪、三本樹にて
葉先揺る小草よ清水くすぐりて 香西照雄 素心
葛を得て清水に遠きうらみ哉 蕪村 夏之部 ■ 探題寄扇武者
蔓這うて清水ひたりや葛の花 四明句集 中川四明
蔵六の清水をむすぶうしろがみ 田中裕明 花間一壺
薬師経読み果てぬいざ清水汲まん 尾崎迷堂 孤輪
蘭ふんでうへの清水へゆきにけり 永田耕衣 真風
蠅散りて馬よく眠る清水かな 水田正秀
行さきでまた我に逢ふ清水かな 千代尼
補陀落の径写し出す苔清水 渡辺恭子
西行の掬みたる清水掬めど澄む 森田峠 避暑散歩
西行の清水を引きて蓬の香 大木あまり 火のいろに
西行の詠みたる清水掬めど澄む 森田峠 避暑散歩
誰が恩の杓あたらしき草清水 森澄雄
谷杉に蝶舞ひ上る清水かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
貧しき死診し手をひたす山清水 相馬遷子 雪嶺
赤松の影あきらかや夕清水 比叡 野村泊月
走り井の真清水あふれ蝉丸忌 瀬木清子
踏みわたる石のゆるぎの清水かな 小杉余子 余子句選
車椅子の足先清水へあそばせる 奈良文夫
軍曹の清水見にくる露営哉 会津八一
輪飾の井桁あふるる清水かな 会津八一
近道によき事ふたつ清水かな 千代尼
近道を来て日の足らぬ清水かな 千代尼
透く清水一尾の鱒も飢ゑしめず 津田清子 礼 拝
遊人眠て犬之を守る清水かな 比叡 野村泊月
道くさも手のうつくしき清水かな 千代尼
道のべの清水に杓のありにけり 清原枴童 枴童句集
遺書抱へ来てこの旅の清水かな 中塚一碧樓
那須の野の清水か出湯かとぞ寄る 皆吉爽雨 泉声
金時も熊も来てのむ清水哉 正岡子規
金銀の気を吹く山の清水哉 露月句集 石井露月
錢龜や青砥もしらぬ山清水 蕪村 夏之部 ■ 丸山主水が、ちいさき龜を寫したるに賛せよとのぞみければ、任官縣命の地に榮利をもとめむよりハ、しかじ尾を泥中に曳んには
鎧てふ重かりしもの草清水 波多野爽波 『骰子』
関の清水古里恋し生鰹 青雲 選集「板東太郎」
関所跡いまもいのちの清水湧く 藤岡筑邨
雛つれて鵙の来てゐる清水かな 軽部烏頭子
雲母搗く家のほとりの清水かな 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
霊芝あり苔香る所清水わく 寺田寅彦
霍乱や関の清水は草の中 増田龍雨 龍雨句集
霧捲いて夜明の清水匂ふなり 佐野良太 樫
霧降るに清水掬むなり皆旅人 林翔 和紙
露凍てて筆に汲み干す清水哉 松尾芭蕉
青々と見えて根のある清水かな 千代尼
静さや清水ふみわたる武者草鞋 蕪村遺稿 夏
音たてゝ清水あふれをり瓜をどる 及川貞 榧の實
顔あげよ清水を流す髪の長 榎本其角
顔ふって水のうまさの山清水 河野南畦
顔寄せて底の穢を見し清水かな 比叡 野村泊月
風幽らく我が眉を吹く清水かな 楠目橙黄子 橙圃
食ひこぼす握飯白き清水哉 寺田寅彦
食器清水に浸し一山の昼寝僧 楠目橙黄子 橙圃
館めぐる清水の動脈呱々の声 成田千空 地霊
馬と蚕を飼ふ厨暗くて山清水 森 澄雄
馬柄杓を岩に割込む清水かな 野径 俳諧撰集「有磯海」
驚きの過ぎしに汲むや家清水 中塚一碧樓
高清水閣一睡の時雨かな 青木重行
鮎鮓の駅の山北清水かな 野村喜舟 小石川
鮠棲みて戸毎の溝も清水なす 山野邊としを
鳴り鳴りて堰洩る清水目高迎へ 香西照雄 対話
鶴首の爺来て清水すこし飲む 嶋田麻紀
鶺鴒の黄の滴れり山清水 堀口星眠
鷹匠のはしりつぎたる清水かな 徐寅 六 月 月別句集「韻塞」
黒き手に紺屋の掬ぶ清水哉 山本洒石


以上



by 575fudemakase | 2014-08-31 00:26 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

夜濯

夜濯

例句を挙げる。

これよりの吾れに子育て夜濯す 高城美枝子
こんな夜の夜濯ぎ一茶も惟然もや 高澤良一 寒暑
それぞれの夜濯ぎおへて旅にあり 小川濤美子
はや寝落つ夜濯の手のシャボンの香 森澄雄
みごもれば身重になれて夜濯ぎす 本宮夏嶺男
デモの万灯消えし夜濯ぎ川深し 寺田京子 日の鷹
一つ井戸囲む夜濯ぎ島の海女 高田菲路
入院待つ日々夜濯ぎを怠らず 中野 弘
南国の旅に夜濯欠かすなく 河野石嶺
喪の妻や夜濯の歌おのづから 石田波郷
夜濯ぎになほ汚れたる蚕飼妻 萩原麦草 麦嵐
夜濯ぎにわけのわからぬ涙出て 八染藍子
夜濯ぎに賑はふコインランドリイ 松沢満里子
夜濯ぎのしぼりし水の美しく 中村汀女
夜濯ぎのひとりの音をたつるなり 清崎敏郎
夜濯ぎのシャツに近寄る牧の馬 岩淵喜代子
夜濯ぎの女身触るゝは闇ばかり 藤紗月
夜濯ぎの心やすさよ飛ぶ蛍 水巴
夜濯ぎの水に涙ははばからず 文挟夫佐恵 黄 瀬
夜濯ぎの水をながしてをはりけり 加藤覚範
夜濯ぎの水を捨てたる音らしや 小林景峰
夜濯ぎの白ばかりなる手くらがり 井上雪
夜濯ぎの白泡家を流れ出づ 右城暮石 上下
夜濯ぎの肘まで濡らしゐて訪はる 殿村莵絲子 花 季
夜濯ぎの裸形吾が家の娘たち 瀧 春一
夜濯ぎや富めるは知らぬ星の愛 磯貝碧蹄館 握手
夜濯ぎや水無きくらしありしこと 田中あかね
夜濯ぎや育児休暇の父若き 鳥羽碧香
夜濯ぎをせる音水を流す音 右城暮石 上下
夜濯にありあふものをまとひけり 森川暁水 黴
夜濯にしてはいさゝか嵩高に 中島よし絵
夜濯につきくる猫の目が二つ 村山一棹
夜濯にみどりの蟲のとびきたる 田中裕明 花間一壺
夜濯に大きな舟のとほりけり 岩崎緑雲
夜濯に戎克のつくる波すこし 原田青児
夜濯に煩悩一つをさまりぬ 福屋千穂美
夜濯のあとを悲しき話出づ 下村槐太 天涯
夜濯のさみしき顔をさらしたり 鈴木真砂女 夕螢
夜濯のざあざあ水をつかひけり 森川暁水 黴
夜濯のしぼりし水の美しく 中村汀女
夜濯のひとりの音をたつるなり 清崎敏郎
夜濯の婢女唄ふローレライ 吉屋信子
夜濯の手を休めつゝきゝ耳を 佐藤裸人
夜濯の母へ星座は手をつなぎ 鈴木しげを
夜濯の肘まで濡らしゐて訪はる 殿村菟絲子 『繪硝子』
夜濯の背に声かくる人は無し 樋笠文
夜濯の蟹の門川あふれつつ 森川暁水
夜濯の音いつまでも島の宿 本岡 歌子
夜濯の音きこえくる旅寝かな 成瀬桜桃子 風色
夜濯の音絶えて又はじまりぬ 高濱虚子
夜濯の音荒々しすぐ静か 上野泰 佐介
夜濯もひとり暮しの日課とて 鈴木すすむ
夜濯やシャンソンも好きジャズも好き 篠原 穂積
夜濯や今日振り返ることもなく 堀恭子
夜濯や働らく母となりてより 下山宏子
夜濯や島に一つの門徒寺 大峯あきら 鳥道
夜濯や生かされてゐる楽しさに 嶋田麻紀
夜濯や病癒えきし母のもの 浅見さよ
夜濯や軒のなかまで火山灰降りて 邊見京子
夜濯や逆光の母漂へり 藤村多加夫
夜濯や避暑の第一日終る 西村和子 夏帽子
夜濯をしてゐるうちに気が変り 神田敏子
夜濯をなかなかやめぬ妻を呼ぶ 波多野爽波 鋪道の花
夜濯をひとりたのしくはじめけり 森川暁水 黴
夜濯を干す音楽のある部屋に 能村研三 鷹の木
新入患者として夜濯の端にあり 岸田稚魚 筍流し
旅の湯の陰夜濯にさも似たり 清水基吉 寒蕭々
明日ありと思ふ夜濯はじめけり 橋本榮治 越在
暗きまゝ処女の夜濯ぎなほつゞく 右城暮石 声と声
気がかりな空を気にして夜濯ぐ 鈴木真砂女 生簀籠
白のみの夜濯ぎことば家に置く 寺田京子 日の鷹
砂漠来て崑崙の水に夜濯ぎす 田中英子
第二楽章夜濯の時間かな 折井紀衣
舟の上の夜濯ぎ妻に鸚鵡啼く 石原八束
舟住みの夜濯ぎ妻に鸚鵡啼く 石原八束 空の渚
芽木長屋夜濯ぎに鳴るポンプいくつ 飴山實 『おりいぶ』
若者の夜濯ぎロック流しつつ 武田光子
話したきことあり母と夜濯に 田中三水
追剥ぎのやうに夜濯もの集め 須川洋子
惣領に生まれて今更夜濯ぎなど 高澤良一 暮津
濯ぐべきものくらがりの一隅に 高澤良一 暮津

以上
by 575fudemakase | 2014-08-30 00:52 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

田村草

田村草

例句を挙げる。

堰落つる水の光りて田村草 吉岡桂六
山に来て穂田を見下ろす田村草 森 澄雄
山の気を集めて咲けり田村草 満田玲子
田村草兵火に耐へし堂ひとつ 大島民郎
田村草触れて棘なきこと確か 稲畑汀子
田村草風は二手に岐れゆく 高澤良一 燕音
睫まで雲下りてくる田村草 満田春日
花の名をそこそこ覚え田村草 高澤良一 ももすずめ


以上


by 575fudemakase | 2014-08-30 00:20 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

八月尽

八月尽

例句を挙げる。


うたかたの海辺の恋や八月盡 吉屋信子
かさぶたを掻きこはす癖八月尽 高澤良一 石鏡
かざし見る眼鏡の塵や八月盡 高澤良一 寒暑
とめどなく八月尽の滝の音 百合山羽公
メモ帖に八月盡の鉛筆書き 高澤良一 素抱
八月尽の赤い夕日と白い月 中村草田男
八月尽悲喜のいづれや河馬の眼や 磯貝碧蹄館 握手
八月尽昔に似たる梨の疵 百合山羽公 寒雁
八月尽穀倉ひとつ火まみれに 友岡子郷 遠方
八月尽芥たゆたふ橋の下 藤田初巳
八月尽蟹を踊らすテレビ見て 百合山羽公 寒雁
八月盡おいてきぼりの蝉が鳴く 高澤良一 素抱
八月盡つまめる梨の口当り 高澤良一 素抱
大鴉どきんと八月尽を識る 攝津幸彦 鹿々集
夫あらぬに帰路急く慣ひ八月尽 山田千代 『淡墨』
小遣いの前借りなどして八月盡 高澤良一 暮津
屑籠の屑仕分けして八月尽 高澤良一 暮津
年金の手続き終へて八月尽 沢辺幸一
手すさびの手のゆく腋毛八月尽 高澤良一 暮津
揚げものの蒜肴に八月尽 高澤良一 暮津
海坂の八月尽の暗みけり 綾部仁喜 樸簡
煮浸しの鮃を返す八月尽 高澤良一 石鏡
白樺の八月尽の幹の傷 岩島妙子
頭の赤く八月盡の醤油壜 高澤良一 寒暑


以上


by 575fudemakase | 2014-08-30 00:19 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)


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らくらく例句検索

インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
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表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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