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句集「雪月」

句集「雪月」
満田春日 ふらんす堂 2005・6・28

共鳴句を拾った。

真ん中の一枚揺るる青簾
裏も見て海星は海へ返しけり
泥鰌屋に靴をきちんと揃へたる
天牛を摑めば貌を振って鳴く
鈴木町のとなり大師や菊の酒
竜胆や開けば竜胆らしくなく
春の池「ホトケドジョウがおります」と
一息を一声となし牛蛙
卯の花や使うてみたき箱枕
ゆりの木の下にたためる日からかさ
鳥渡るほのあたたかきボンネット
はたはたも子の喜びも過ぎやすし
秋の草踏みて小さき蝶立たす
転びし子ややありて泣く冬日和
人送るまでの青空額の花
鳥籠の水に粟浮く今朝の秋
萩紅く錆のごときを零しけり
ざりがにの鋏のだらり秋の風
花電車となりの赤子目であやし
こめかみを雨の掠める蘆の角
あまた咲く茄子にしゃがみて何の熱
道端のおしろいならば起きて咲く
とんばうの尾のふくらむは息をして
ぺらぺらの襟ごと吹かれ赤い羽根
綿虫や鼻をかませぬ赤ん坊
菊の香のいづくへも這へ赤ん坊
いつまでも庭を掃きをる三十三才
凧揚げて凧と話してゐたりけり
花冷に焚いて暖炉のひびきかな

以上
by 575fudemakase | 2014-09-30 03:18 | 句集評など | Trackback | Comments(0)

轡虫

轡虫

例句を挙げる。

*かや尻におりて夜を鳴く轡虫 太田鴻村 穂国
かざす灯に声を落として轡虫 高橋利雄
くつわ虫ちんばなれども声精悍 滝春一
くつわ虫のメカニズムの辺を行き過ぎぬ 中村草田男
くつわ虫の激ち一夜に一生懸け 橋本多佳子
くつわ虫家賑やかに灯りゐる 工藤義夫
くつわ虫洩れ燈の幅で土工の宴 香西照雄 対話
くつわ虫激す一夜に一生懸け 橋本多佳子
くつわ虫鳴きゐる門を訪ねあて 廣瀬河太郎
城内に踏まぬ庭あり轡虫 太祗
墓碑銘をくりかえし読む轡虫 和知喜八 同齢
夕波の畳む岬や轡虫 風間 淑
大利根に一灯もなし轡虫 石井とし夫
大雨に水漬きし藪や轡虫 福田蓼汀 山火
夫と居て言葉なき夜の轡虫 浜 芳女
宵月は縦割り半月くつわ虫 百合山羽公 寒雁
小粒てふ十団子いまも轡虫 古舘曹人 能登の蛙
山荘消せば遠ちのひとつ灯くつわ蟲 及川貞 夕焼
方言は仕事の言葉くつわ虫 香西照雄 素心
月代の桑の葉揺れや轡虫 中島月笠 月笠句集
月明の赤児とびこす轡虫 福田甲子雄
松の月暗し暗しと轡虫 高濱虚子
松虫を聴きさぐりしが轡虫 加藤秋邨 沙漠の鶴
森を出て会ふ灯はまぶし轡虫 石田波郷
歓声と云ふものならむ轡虫 相生垣瓜人 明治草抄
汽罐車の走れるに似て轡虫 大橋敦子
海女の衣の吹かれ夜干しや轡虫 永方裕子
海鳴を一轡虫圧しけり 相生垣瓜人 明治草抄
渦潮のゆるみそめたる轡虫 山内弘子
牧場は夜もあをしよ轡虫 矢島 恵
秋千騎寄せくる音か轡虫 中勘助
立ちよるや鳴音かへたる轡虫 高野素十
草むらが隣家との塀くつわ虫 小林草吾
落ち方のけはしき月に轡虫 福田蓼汀 山火
言ひ過ぎしひと言悔ゆる轡虫 中沢美知子
足助塩の名に古りし町轡虫 木村蕪城 寒泉
轡虫かすかに遠き寝のやすく 富安風生
轡虫その辺の闇独り占め 近森 千句葉
轡虫たれか口火を切りし喜捨 赤松子
轡虫とらへたるらしひとつやむ 島崎秀風
轡虫売らるる馬は沓履いて 米田一穂
轡虫彼岸の月をあびながら 高橋馬相 秋山越
轡虫忘れてをれば鳴き出しぬ 五十嵐播水 播水句集
轡虫昂ぶるばかり津和野の夜 高木石子
轡虫海へ絶壁しんのやみ 福田蓼汀
轡虫目覚はいつも縷のごとし 田口満代子
轡虫雨の宵寝の耳はなれ 水原秋櫻子
轡虫雨夜重ねてこゑ遠き 水原秋桜子
逃れ得ぬ加齢夜毎の轡虫 町田しげき
閨に遠くつるしかへけり轡虫 阿部みどり女 笹鳴
雨白し思ひ出でては鳴く轡虫 林原耒井 蜩
露萩もおるるばかりに轡虫 越人 俳諧撰集「藤の実」
鳴きそめて止むけしきなし轡虫 五十嵐播水
麓野や月一色に轡虫 東洋城千句
がちゃがちゃことに避けどころなし草の宿 及川貞 夕焼
がちゃがちゃの競ふ心のある如く 後藤 トメ
がちゃがちゃを聞きつくづくと衰える 池田澄子
がちやがちやの夜もすがらなる渡舟守 高野素十
がちやがちやの奥の一つを聞きすます 渡辺桂子
がちやがちやの暴徒の声の起りけり 村岡籠月
がちやがちやの森を壊してゐたりけり 大木あまり 火のいろに
がちやがちやの湧き立つ砧町を過ぐ 原田青児
がちやがちやの見えて鳴きゐる荷を下ろす 後藤夜半
がちやがちやの高まるばかり人幽か 中村汀女
がちやがちやの鳴きさゞめかす葎かな 阿波野青畝
がちやがちややこはさぬやうに吾子の夢 満田春日
がちやがちやや壷より黒き八重葎 川端茅舎
がちやがちやや燈に足長の影法師 中拓夫 愛鷹
がちやがちやを包める闇の動かざる 石井とし夫
檐の月がちやがちやばかり覚めゐけり 林原耒井 蜩
虚無明らか歯科がちやがちやに光崩し 金子兜太
がちや~の大きな闇の別墅かな 小林都府楼
がちや~の奥の一つを聞きすます 渡辺桂子
がちや~の島の白夜を鳴きしきる 鈴鹿野風呂 浜木綿
がちや~や月まはりたる陰庇 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
がちや~や月光掬ふ芝の上 渡辺水巴
がちや~や瀬音も聞え真暗闇 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
ふと静かがちや~止んでゐたりけり 松田鬼峰
口さがなき婆のがちゃがちゃ娘のちゝろ 高澤良一 鳩信

以上
by 575fudemakase | 2014-09-30 00:38 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

馬追

馬追

例句を挙げる。

あちこちで馬追い鳴いて緑の夜 和知喜八 同齢
くすり撒くとなりきんじよの生き残り髭のそよろの馬追虫一つ 草市潤
その中の馬追の音を追ひつゞけ 田畑美穂女
ふるさとや馬追鳴ける風の中 水原秋櫻子
ほととぎす馬追船頭お乳(ち)の人 上島鬼貫
京菜解けば馬追虫いでぬ雪が降る 渡邊水巴 富士
塔にゆくときわが馬追がふといたり 阿部完市 春日朝歌
天井に青き馬追母の余生 橋本美代子
子の飼ひし籠の馬追野に放す 林 尚子
宵々に馬追虫馬頭観世音 阿波野青畝
家の隅や馬追と妻遊びをり 小林康治 玄霜
旅の爪伸び馬追が鳴きはじむ 松村蒼石 雪
更けし灯に馬追来鳴く簗桟敷 斎藤道子
眉はねて今日の馬追ひ祭笛 細谷源二 砂金帯
自家発電機止まり馬追近きより 高林アヤ子
草千里馬追ひ立てて白雨来る 岩永はるみ
蚊帳の手に馬追なくや夏の月 伊賀-裾道 俳諧撰集「有磯海」
闇を来し馬追の翅さみどりに 山田弘子
雨よ馬追と秩父鉄道員歌う 阿部完市 春日朝歌
青馬追こゑとならざる切々音 橋本多佳子
馬車過ぎて秩父馬追何と鳴く 森田ていじ
馬追がふかき闇より来て青き 上林白草居
馬追が八角堂をのぞきけり 山本洋子
馬追が来てくれるなら二泊する 市場基巳
馬追が機の縦糸切るといふ 有本銘仙
馬追が鳴くアパートの白天井 鷹羽狩行
馬追と一つ灯影を二夜かな 山根和子
馬追と向き合ってゐる旅の夜 玉澤淑子
馬追と父を残して寝にゆく子 相生垣瓜人 微茫集
馬追にかすかな月の登りけり 上村占魚 鮎
馬追に夜の神棚氷店 高橋馬相 秋山越
馬追に硬山颪し夜更けたり 小林康治 玄霜
馬追のいのち果つるもうすみどり 藤井 彰二
馬追のうしろ馬追来てゐたり 波多野爽波 『湯呑』
馬追のこゑに侵されはじめけり 相生垣瓜人 微茫集
馬追のしばらくをりし玻璃の闇 斉藤夏風
馬追のひとつはげしく夢の縁 坂巻純子
馬追の二タ夜来鳴ける雲皓し 原田種茅 径
馬追の傍にある二夜かな 後藤 良子
馬追の夜は財布に長き紐 高橋馬相 秋山越
馬追の柱越えゆく麻袴 桂樟蹊子
馬追の網戸を去らぬ胸さわぎ 伊藤 孝一
馬追の緑逆立つ萩の上 高野素十
馬追の聲ばかりなり天の川 本田あふひ句集 本田あふひ
馬追の脚を失くしてかへりゆく 原田喬
馬追の見えゐて鳴かず短編集 野澤節子 『鳳蝶』
馬追の足の先まで青かりし 岡田 玉水
馬追の身めぐり責めてすさまじや 角川源義
馬追の障子一重に母の影 長田等
馬追の髭に朝日のさす一戸 友岡子郷
馬追の鳴いて夜干のもの白し 宇津木未曾二
馬追の鳴音ひゞける壁に倚り 皆吉爽雨
馬追の黙る雨量となりてゐし 福永耕二
馬追は母きりぎりすは父ならむ 山本一歩
馬追ひが闇抜けて来し羽たたむ 廣瀬直人
馬追ひの影ひえびえとしたがへり 木下夕爾
馬追や*かやの別れをきのふにて 小杉余子 余子句選
馬追やむかしは闇も蒼かりき 小早川 恒
馬追や京の小寺は藪の中 竹川武子
馬追や停車の長きローカル線 阿部寿雄
馬追や墓洗はねばならずして 杉山岳陽 晩婚
馬追や更けてありたるひと夕立 星野立子
馬追や月をよこぎる萩一枝 水原秋櫻子
馬追や母が居眠る針箱に 柑子句集 籾山柑子
馬追や母が病み居し裏座敷 佐藤国夫
馬追や水の近江の夜は暗く 小林七歩
馬追や海より来たる夜の雨 内藤吐天
馬追や膝冷えそめしラヂオ劇 石田波郷
馬追や葬りしあとの父の部屋 長田等
馬追や闇に入口出口あり 久保美智子
馬追よ父よ日本真青なり 原田喬
馬追を如露の水にて追ひ出せる 嶋田麻紀
馬追を歩ます机わが凡て 阿部みどり女 『光陰』
馬追を聞きしは一と夜だけのこと 藤木和子
馬追虫の髪のそよろに来る秋はまなこを閉ぢて想ひ見るべし 長塚節
髭ゆする馬追の自信われになし 斎藤空華 空華句集
すいつちょんするすると男の子 永末恵子
すいつちよが鳴く粗壁の匂ひけり 清崎敏郎
すいつちよに跳ばるる闇のここからか 石田郷子
すいつちよのちよといふまでの間のありし 下田実花
すいつちよの固きむくろを掃きにけり 辻桃子
すいつちよの思ひつめたる音に鳴きぬ 西村和子 夏帽子
すいつちよの足の先まで真青かな 野村喜舟
すいつちよの酒呑童子となりにけり 平井照敏
すいつちよの髭ふりて夜のふかむらし 加藤楸邨
すいつちよは一呼吸づつ寝覚め酒 中拓夫
すいつちよや想ひ出われにのみに古り 岸風三楼 往来
すいつちよや戸よりひろがる父母の闇 金箱戈止夫
すいつちよや闇に人ゐて立去れり 池内たけし
すいつちよを追ひつめて草深まりぬ 猪俣千代子 堆 朱
すいつちよん来たり肉屋のウインドに 辻桃子
すいつちよ来て赤き帽子の砂糖壺 宮津昭彦
すいつちよ来ぬ海溝青き地図の上 冨田みのる
すいと来ぬ今宵は火蛾のみなちさく 及川貞 夕焼
すいと来る紐に吊るせし牧日誌 太田土男
みちのくの旅の灯に透く青すいと 鷹羽狩行
山の星仰ぐ身に来てすいと鳴く 太田光子
御霊水青すいつちよを踏みさうに 中山純子
朝のランプすいとがひらく翅あをし 小林黒石礁
すいっちょと云ひて足音しのばせゆく 高澤良一 鳩信

以上
by 575fudemakase | 2014-09-30 00:36 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

九月尽

九月尽

例句を挙げる。

うす霜のむぐらが門に九月尽 細谷源二 砂金帯
かんがふる一机の光九月尽 森澄雄
すり流すよき墨の香や九月盡 会津八一
まが雨の降りもつづきて九月尽 佐藤鬼房
ガラス器を磨きてしまふ九月尽 種市清子
パソコンでつける家計簿九月尽 満田春日
九月尽くポプラに風の音満ちて 林桂 ことのはひらひら 抄
九月尽まぶしきものを一日見ず 和田祥子
九月尽ゆべしをうすくうすく切り 細見綾子
九月尽日許六拝去来先生几下 高浜虚子
九月尽机の端に手紙かな 高浜虚子
九月尽深き曇りに鳥飛ばず 相馬遷子 山河
九月尽瓦漸く鋭き色に 宇佐美魚目
九月尽胸あつくなる風邪ぐすり 古沢太穂
九月尽遥に能登の岬かな 暁台
九月盡遥かに能登の岬かな 加藤暁台 (きょうたい)(1732-1792)
井の端の風露の乾き九月尽 菅裸馬
会議室海の絵も寂び九月尽 村田 脩
傾城の小哥はかなし九月尽 宝井(榎本)其角 (1661-1707)
六尺の人のけむりや九月尽 攝津幸彦
古寺に狂言会や九月尽 雁宕 五車反古
命綱すぐ手のとどく九月尽 角川源義『西行の日』以後
大の字に寝て一畳の九月尽 土生重次
妻病みて目尻の乾く九月尽 穴井太
少年の商才かなし九月尽 楠本憲吉
掌につつむ古黄瀬戸の釉九月尽 加藤耕子
日向朴の狂ひ芽しるし九月尽 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
昨日よりくらき白山九月尽 阿部完市
月影の不破にも洩らず九月尽 黒柳召波 春泥句集
白波が白波追へり九月尽 千田一路
真昼野に焚く火透きけり九月尽 富田直治
秋尽きぬ寝ぬ夜の夢の躍舟 調和 選集「板東太郎」
秋尽日童の定命を如何にせん 飯田蛇笏 椿花集
落し水滔々と秋尽るかな 増田龍雨 龍雨句集
褌に贈別の詩や九月尽 黒柳召波 春泥句集
雨降れば暮るる速さよ九月尽 杉田久女
雲表に山々ならび九月尽 福田蓼汀
頼政の月見所や九月尽 榎本其角

以上



by 575fudemakase | 2014-09-30 00:28 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

露3

露3

例句を挙げる。

霧去れば露の微塵のお花畑 羽部洞然
露あさく馬鈴薯咲ける月の頃 石原舟月
露いたり鶏頭炎あげたりや 小林康治 四季貧窮
露いちめん起きぬけの裸身ぬぐう 秋庭俊彦 果樹
露うちし膳に切子の器かな 青木月斗
露おいて楼欄月の潭を展ぶ 千代田葛彦 旅人木
露おりて四条はもとの川原哉 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
露かはくまで蜂軍のあはただし 堀口星眠 営巣期
露かわく残菊の奥宮司病む 宮武寒々 朱卓
露かわく葉の濃みどりに菊の虫 西島麦南 人音
露が散り露がふちどる乳母車 石原八束
露が朝日をうるほすやうに女の眼 松瀬青々
露が染め霧の散らせる萩ならむ 稲垣きくの 牡 丹
露きるや若菜の籠の置きどころ 井上井月
露くらく六十年の情誼絶ゆ 久保田万太郎 流寓抄以後
露くらしけさまだ退かぬ歯の疼き 久保田万太郎 流寓抄
露くらし業これをしも歯の疼き 久保田万太郎 流寓抄
露けかり木乃伊の棺の審判図 高澤良一 燕音
露けき地吾が墓に石一つ置け 三好潤子
露けき灯働けば妻荘厳す 小林康治 玄霜
露けき聖堂吾れも祷りの席につく 内藤吐天 鳴海抄
露けき身いかなる星の司どる 山口誓子
露けくてやがて涙のかはきけり 小林康治 『華髪』
露けくて壺は千古の紺青に 古舘曹人 能登の蛙
露けくて礫に当る鍬匂ふ 西村公鳳
露けくも日枝神社の竹箒 高澤良一 素抱
露けく此子のつかれたところで野草を寫す 荻原井泉水
露けさによぎる懸巣や湖畔馬車 斎藤 道子
露けさに息づき深き野中の灯 相馬 遷子
露けさに昂るはみな拓者の火 加倉井秋を
露けさに星降りあそぶ尾瀬ケ原 堀口星眠 営巣期
露けさに歩き通してこられしと 岩田公次
露けさに濡れ縁といふものあるか 稲垣きくの 黄 瀬
露けさに物音ありぬ寺修理 松本たかし
露けさに犬の起き行く垣根哉 尾崎紅葉
露けさに眠るも僧となりしより 市堀玉宗
露けさに蜥蜴のぼりゐし松の蕊 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
露けさに転居支度の急かさるる 山内山彦
露けさに道の細りてゆきにけり 八木林之介 青霞集
露けさに里降りあそぶ尾瀬ケ原 堀口星眠 営巣期
露けさに障子たてたり十三夜 高浜虚子
露けさのここに極まるカノポス壺 高澤良一 燕音
*ミイラにする際に肺胃などの臓器を取り去つて入れる壺
露けさのこの辺までは径ありて 清崎敏郎(1922-99)
露けさのぽつくり寺の祈願かな 杉村凡栽
露けさのまだいとけなき杉の青 鷲谷七菜子 花寂び
露けさのゑのころ銀に穂立ちけり 織田 耀子
露けさの一つの灯さへ消えにけり 松浜
知恵子生家、父の名は長沼今朝吉と聞けば
露けさの一歩今朝吉宅を出で 高澤良一 さざなみやっこ
露けさの一管は誰を誘はむ 斎藤梅子
露けさの丹波黒豆「どうどやす」 高澤良一 宿好
露けさの亀甲墓碑はクルス削がれ 下村ひろし 西陲集
露けさの出刃下げ南泉斬猫図 高澤良一 ももすずめ
露けさの千里を走りたく思ふ 佐藤鬼房(1919-2002)
露けさの命覚めたる咳ひとつ 岡本眸
露けさの和讃一節聞きて辞す 村越化石 山國抄
露けさの尾根連なりて暮れにけり 金尾梅の門 古志の歌
露けさの弥撒のをはりはひざまづく 水原秋櫻子
露けさの手向の芙蓉切りにけり 石飛如翠
露けさの指組む強く組みなほす 岡本 眸
露けさの木が話すとや嘆くとや 大木あまり 火球
露けさの机辺片づけをりしかな 安住敦
露けさの極みに跼むどこにても 加倉井秋を
露けさの水甕の中水重し 大岳水一路
露けさの浅茅ケ原の空匂ふ 福井啓子
露けさの猫抱き聖女くづれかな 大木あまり 火球
露けさの花をつヾけて芙蓉かな 宇津木未曾二
露けさの苺摘む玉拾ふ如し 碧雲居句集 大谷碧雲居
露けさの茶山のまろさ父母を抱け 村越化石 山國抄
露けさの萩にうもるゝ紙燭かな 比叡 野村泊月
露けさの遺影に語ること多き 館岡沙緻
露けさの金閣見んと一歩寄る 高澤良一 宿好
露けさやいのちの果の火は浄ら 斎藤空華 空華句集
露けさやうぶ毛生えたる繭瓢 杉田久女
露けさやこぼれそめたるむかご垣 久女
露けさやそばより芋の深大寺 龍岡晋
露けさや人身じろげば燭ゆらぐ 大岳水一路
露けさや今のぼり来る二十日月 小杉余子 余子句選
露けさや天の深きを知る齢 朱鳥
露けさや慕はれ黒子師に二つ 荒井正隆
露けさや旭をかくしゐる椎二本 野村喜舟 小石川
露けさや月のうつれる革蒲團 高野素十
露けさや朝のラヂオに夫の聲 石田あき子 見舞籠
露けさや母の匂の木曾の櫛 林翔 和紙
露けさや男の否は一言に 櫛原希伊子
露けさや竹林劃る多門塀 野村喜舟
露けさや薪よく燃ゆる外竈 中村汀女
露けさよ祈りの指を唇(くち)に触れ 山口誓子 青女
露けさを誰にもさとられまいとする 加倉井秋を 午後の窓
露けしとあらぬ矢向や案山子翁 阿波野青畝
露けしとおばしまに手をかけにけり 楠目橙黄子 橙圃
露けしと云ひて露けきわが身かな 岩岡中正
露けしと思ひつつここまでは来て 行方克巳
露けしと思ひ露けき齢と思ふ 鷹羽狩行 十友
露けしと時作りたり小家がち 阿波野青畝
露けしと柳鰈を焼きてをる 清水径子
露けしと水の逸れるところを見 下村槐太 天涯
露けしと海図ひらきて朱を入るる 宇佐美魚目 天地存問
露けしと皆驚いてあるきけり 阿波野青畝
露けしと言へる言葉のチラとあり 加倉井秋を 午後の窓
露けしと誰にともなく言ひにけり 加倉井秋を 午後の窓
露けしやいちにん缺けし舟の上 田中裕明 櫻姫譚
露けしやうきくさ浮けぬ野川なく 五十崎古郷句集
露けしやかすかにそれと寿命星 福田蓼汀
露けしやたとへ灰皿引き寄せても 加倉井秋を 午後の窓
露けしやひとに見らるゝ小買物 長谷川双魚 風形
露けしやぼくちの花の頬かむり 堀口星眠 営巣期
露けしやみ誓ひも主に跪き 冨田みのる
露けしやもろもろ映す堰の水 伊藤敬子
露けしや一滴麿れば墨の足り 八染藍子
露けしや吉野町字吉野山 木村緑枝
露けしや土瓶もふるき土瓶むし 車谷弘 花野
露けしや土間の固さに打つ藁も 工藤 義夫
露けしや地震の創ある石灯籠 市川典子
露けしや壁に遣りしベレー帽 横原律子
露けしや妻が着てゐる母のもの 細川加賀 生身魂
露けしや寺に線香販売機 渋谷光枝
露けしや小松の中の花芒 島村元句集
露けしや帽灯に浮くお花畑 福田蓼汀 秋風挽歌
露けしや指の先まで病人に 朝倉和江
露けしや撞木の縄の宙とんで 桂信子
露けしや明日相へだてらるる身は 下村梅子
露けしや星より暗き山家の灯 川田長邦
露けしや晩年麻のごとくにて 平井照敏 天上大風
露けしや月のうつれる革蒲団 素十
露けしや朝富士の眉刎ねあがり 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
露けしや柩に収むパスポート 下山宏子
露けしや母の遺しし墨使ふ 田川飛旅子 『山法師』
露けしや水脈たしかなる埠頭の端 小林康治 玄霜
露けしや湖の小海老を煮つめゐて 関戸靖子
露けしや父母訪ふ金をまた貯めむ 石田波郷
露けしや特攻戦記にわが名前 小出秋光
露けしや琴売ってのこる琴の爪 及川貞 夕焼
露けしや生まれし馬に山の名を 山本洋子
露けしや男手絶えし屋敷畑 西村和子 かりそめならず
露けしや白鳥座灘の空を翔け 福田蓼汀 秋風挽歌
露けしや百姓のみち湖に墜つ 米沢吾亦紅 童顔
露けしや真葛がもとの蝉塚は 小林康治 玄霜
露けしや眼鏡はじめて求めし日 井上雪
露けしや祈りの長き母を見て 下坂速穂
露けしや笠を背負ひし石仏 阿部みどり女
露けしや老美しき人去リて 角川源義
露けしや自分の家の前通る 宮崎夕美
露けしや船渠は青き火屑とび 五十嵐播水 埠頭
露けしや芋の葉陰の蟇の顔 蝶夢
露けしや芭蕉身近に学びし日 桑田青虎
露けしや葛西ばやしに送られて 稲垣きくの 牡 丹
露けしや遊行を偲ぶ蓑と笠 荘所亀子
露けしや閉ぢて日のなき白障子 西村公鳳
露けしや面影死ねばひとりの生 手塚美佐 昔の香
露けしや馬がころばす飼葉桶 奥津 良平
露けしや馬の湯浴みに刻かけて 西村和子 窓
露けしや高燈籠のひかへ綱 白雄
露けぶるむらさき捧げ紫苑立つ 松本たかし
露けぶる美男かづらの門を掃く 中村若沙
露こめて眠りの猫を白くせり 松野自得
露さだかに道ゆく我を愉しめり 飯田蛇笏 霊芝
露さへに置かぬ石つむ恨かな 立花北枝
露さむき死までの一部始終かな 倉橋弘躬
露さむき甲板に恋ふ日本の燈 近藤一鴻
露さむく人ひともして土に棲む 西島麥南
露ざむの情くれなゐに千草かな 飯田蛇笏 山廬集
露しぐれみだれたちたる箒木かな 石原舟月
露しぐれ一磴欠いて夜の戸口 石川桂郎 四温
露しぐれ子を蜜月に入らしむる 赤松[ケイ]子
露しぐれ詩より命を惜しむ日も 鍵和田釉子
露しぐれ鱈下げて手頸現はるる 齋藤玄 『狩眼』
露しげき嵯峨に住み侘ぶ一比丘尼 高岡智照
露しげき賤が伏屋を訪はれもし 上野泰 佐介
露しげくなりし焦土や菜虫とる 下村槐太 光背
露しづかに昼の寄宿に眠る男 古沢太穂 古沢太穂句集
露しとど壁へだて住む媼咳き入れり シヤツと雑草 栗林一石路
露しとゞなるも草々深き故 高木晴子 花 季
露しのぐほどの祠も宵祭 村越化石 山國抄
露じもや丘の雀もちちとよぶ 一茶
露じもや相ふれし乳房力あり 岩田昌寿 地の塩
露すずし真黒の汽車牧をきる 石原舟月
露すでに天地ねむりを合わすなり 永田耕一郎
露すゞし焦土の中の畠づくり 上村占魚 鮎
露ちりて急にみじかくなるよ哉 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
露ちるやむさい此世に用なしと 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
露ちるや桂の里の臼の音 闌更
露といふとびつくものの涼しけれ 西本一都 景色
露とくとく試みに浮世すすがばや 芭蕉
露とけて韋駄天走り葡萄蔓 普羅
露とめて軒のしのぶの廻りけり 高橋淡路女 梶の葉
露とめて青萱の地を離れけり 飯田蛇笏 椿花集
露とりに起きて目をするくもりかな 上島鬼貫
露とんで芋の葉冠ふりにけり 河野静雲 閻魔
露と彫る字の結界があるばかり 安東次男 昨
露と星胎児動けばひめ犇々と 川口重美
露と波とに蚯蚓鳴くらん芥川 才麿
露と置く野のキリストの足の釘 有馬朗人
露どきの魚の眠りに棹さして 高澤良一 随笑
露ながく釜に落ち来る筧かな 山口素堂
露ながら玉菜かゝへて童子哉 中川宋淵 詩龕
露ながら蔓ながら葡萄に溢れ 久米正雄 返り花
露なめて木琴たたけ子よ生きむ 北原白秋
露なめて白猫いよよ白くなる 能村登四郎
露にぬれし重たき笠をぬぎにけり 尾崎迷堂 孤輪
露に入るしんがりとして白絣 齋藤愼爾
露に坐す丈八尺の廬舎那佛 寺田寅彦
露に来しざんげの蹠よごれたり 横山白虹
露に濡れ貧富の墓のむきあへる 成瀬桜桃子 風色
露に睦みて馬頭観音さいのかみ 鷲谷七菜子 花寂び
露に雲蓬つむ野の朝鏡 上島鬼貫
露ぬくし蠅の飛び来る障子かな 雑草 長谷川零餘子
露ぬ間雨が洗ひし竝木かな 高木晴子
露のあさつきが四うね杏咲くなり 梅林句屑 喜谷六花
露のとかげにぶく落葉にかくれけり 阿部みどり女 笹鳴
露のなか蓼も野菊も日の出まヘ 長谷川素逝 暦日
露のふるけしきに消ゆる水泡かな 道芝 久保田万太郎
露のんで猫の白さの極まるなり 加藤楸邨
露のスラムの夜が昼となる泉の声 赤城さかえ句集
露の上にあたらしき露ながれけり 斎藤空華 空華句集
露の上月光日光とかはるかな 斎藤空華 空華句集
露の世と別れ愛犬遺したる 山田弘子
露の世にどかとすわりし目玉かな 仙田洋子 雲は王冠
露の世に削ぎ残したる言葉かな 馬場駿吉
露の世に在さば此の席此の宴 高木晴子 花 季
露の世に妊りし掌のあつさかな 上田五千石 田園
露の世に座り直して食ひにけり 前田美智子
露の世に海女の焚く火のうつくしく 清原枴童
露の世に立ちて歯もなく笑ひをる 依光陽子
露の世に行き貸もなく借もなく 平野 六角牛
露の世に赤き服着てたぢろかず 坂本宮尾
露の世に足尾の遺す足字銭 西本一都
露の世に露の身ひとつ宇宙塵 深谷雄大
露の世のもめを淋しく坐りをり 枯蘆 清原枴童
露の世のやすらぎなりや目つむるは 菖蒲あや あ や
露の世のアジアに箸を使ふなる 依光陽子
露の世の人に告ぐべき言葉あり 徳本象久
露の世の幸を守りて過去未来 池内友次郎
露の世の忘却といふ生きるすべ 川口咲子
露の世の未亡人とは淋しき名 汀子
露の世の永久の契りといふをいま 山田弘子
露の世の江分利満氏の帽子かな 星野石雀
露の世の百歳生きし骨拾ふ 橋本ふみ子
露の世の磴を登れば磴のまた 湯川雅
露の世の耳がきこえて眼が見えて 長谷川双魚 『ひとつとや』以後
露の世の螢とて掌に灯りけり 小林康治 『潺湲集』
露の世の銭湯の入口に立つ 皆吉司
露の世の長きプラットホームかな 星野 高士
露の世の間に合はざりしことばかり 星野立子
露の世の露の中にてけんくわ哉 小林一茶 (1763-1827)
露の世の風に繰らるる明月記 都筑智子
露の世は露の世ながらさりながら 一茶(さと女夭折)
露の世やもの言うときは虎になれ 内山秀隆
露の世や小蕪は人なつかしげ 清水径子
露の世や尼上人の傘の役 西本一都 景色
露の世や目覚むるたびに老いてゆく 高橋健文
露の世や露のなでしこ小なでしこ 一茶
露の世を影となるまで眠るかな 益田月石
露の中つむじ二つを子が戴く 橋本多佳子
露の中にて満載の砂利下ろす 直人
露の中万相うごく子の寝息 楸邨
露の中囚獄に似し愚の職よ 小林康治 玄霜
露の中日出でゝ少し艸いきれ 松瀬青々
露の中毛虫よろぼひ歩きけり 高浜虚子
露の中滴々享ける多生の血 成田千空 地霊
露の中萬相うごく子の寝息 加藤楸邨
露の井戸小走りの母ちひさしや 石田波郷
露の人まことのっぺらぼうなりけり 橋石 和栲
露の人仰ぐ樹令に一驚し 梅原 白吹
露の他省き尽くして銀沙灘 高澤良一 宿好
露の原すぐ湖の深さかな 東洋城千句
露の土父も教師として死にき 林翔 和紙
露の土踏んで脚透くおもひあり 飯田龍太
露の地へ五体投地の拝かな 沢木欣一 沖縄吟遊集
露の地やもう誰のでもない下駄一つ 成田千空 地霊
露の地底坑帽の光輪前へ前ヘ 西本一都 景色
露の墓おとうと兄にかしづけり 樋笠文
露の墳南無阿以外は地中の文字 加倉井秋を
露の声擁きて祝ぐばかりかな 小林康治 玄霜
露の夜に黍殻枕軋み寝る 百合山羽公 寒雁
露の夜のうちあふごとき皿と匙 福永耕二
露の夜のかなしく軽き旅鞄 石田あき子 見舞籠
露の夜の一つの言葉待たれけり 柴田白葉女 遠い橋
露の夜の人語土中にきこえけり 西島麥南
露の夜の仏に不意の蝋燭火 銀漢 吉岡禅寺洞
露の夜の枕三つや相寄せて 岸風三樓
露の夜の流木を焚き友葬ふ 岡田日郎
露の夜の消えのこりたる焔這ふ 佐野美智
露の夜の空のしらみて来りけり 久保田万太郎
露の夜の言葉尖りをおそれけり 林原耒井 蜩
露の夜の象牙の箸に儒者がいる 渋谷道
露の夜は山が隣家のごとくあり 飯田龍太 遅速
露の夜や耳そばだてて盲の児 大橋櫻坡子 雨月
露の夜を留守番電話まかせかな 辻美奈子
露の大地子の手わが手のなかに小さし 古沢太穂 古沢太穂句集
露の天眼ひらきをれば眼も濡るる 小檜山繁子
露の妻眠れり跨がずに通る 小林康治 玄霜
露の家や目覚めにいつも水の音 金箱戈止夫
露の宿掃き出す塵もなかりけり 富安風生
露の宿附箋の手紙届きけり 川端茅舎
露の寺ヨハネの日とてにぎはへり 田村了咲
露の少女祷り餘すや暮れきらず 小林康治 玄霜
露の屋根へ白猫躍り上りけり 原石鼎 花影以後
露の山みかへられたる方にゐる 岡井省二
露の山老婆生きるはかさこそと 山上樹実雄
露の山越ゆれば啓く鬼の景 沼尻巳津子
露の峰四方に信玄狼煙跡 雨宮彌紅
露の川けふはけふにてあたらしき 川島彷徨子 榛の木
露の川ときに嘆きの音もあらむ 飯田龍太
露の川小野小町の山を出づ 八木林之介 青霞集
露の幹静かに蝉の歩き居り 高浜虚子
露の庭玻璃戸あくれば身に迫る 山口波津女 良人
露の廊有髪の尼とすれ違ふ 松本澄江
露の彩動き赤富士現じけり 石原八束 雁の目隠し
露の径愁ひある瞳をかがやかす 内藤吐天 鳴海抄
露の径神の裏にてくびれけり 中村和弘
露の径行きすぎし人呼びとむる 西山泊雲 泊雲句集
露の息戻るを信じつつ看取る 安原葉
露の戸におほ母の杖のこりけり 細川加賀
露の戸に祭提灯とどきけり 龍岡晋
露の戸のがたひしとして一茶庵 四明句集 中川四明
露の戸を敲く風あり草木染 桂信子
露の戸を突き出て寂し釘の先 眞鍋呉夫(1920-)
露の戸を開けて掌にのる余呉の湖 桂信子 遠い橋
露の旅なかの二日は海を見て 長谷川双魚
露の日がかゞやく事故車高き車輪 右城暮石 声と声
露の日にみがきあげたる杉丸太 柴田白葉女 花寂び 以後
露の日に乾して大なる潜水服 右城暮石 声と声
露の日に提げてながし屠り鶏 飯田蛇笏 山廬集
露の日に銀杏大樹の炸裂す 桜井博道 海上
露の日に露の身をおき今日を生く 柴田白葉女 『夕浪』
露の日の全円ひと日全うす 大岳水一路
露の日の差しつつ大きひろがりを 岡井省二
露の日の月のごとくにのぼるあり 西本一都
露の日の畑火幽かな収穫期 飯田蛇笏 雪峡
露の日の肩あたためぬ立話 八木林之介 青霞集
露の日の顔の輪郭思はるる 高澤良一 燕音
露の日を拝みゐる手の襷かな 森川暁水
露の星急げ悲しとまたたくか 福田蓼汀 秋風挽歌
露の木々きらめく中に歩み入る 金箱戈止夫
露の木にいつもの通り日のとどく 岸田稚魚
露の木を人が讃へて樅なりし 能村登四郎 天上華
露の未明鉄路を汚し女靴 寺田京子 日の鷹
露の朱は岩菲の朱より清らかに 阿部みどり女
露の村墓域とおもふばかりなり 飯田龍太(1920-)
露の村天使の羽を彫る石工 佐野美智
露の村恋うても友のすくなしや 飯田龍太 百戸の谿
露の杖虚子の塔までよくぞ来し 阿波野青畝
露の栗神父の巨き掌より受く 鷹野 清子
露の瀬にかゝりて螻蛄のながれけり 飯田蛇笏
露の灯にまなざし深くものいへり 柴田白葉女 『月の笛』
露の灯の陽とさしかはる牛乳店 桂信子 遠い橋
露の灯をかざせば仔牛生まれをり 鈴木 元
露の燦杉の燦ともいふべかり 齋藤玄 『雁道』
露の父碧空に齢いぶかしむ 飯田龍太
露の玉いくつ持たる薄ぞや 上島鬼貫
露の玉ころがり土竜ひつこんだり 川端茅舎
露の玉ころげる刻を待ちてをり 辻桃子
露の玉つまんで見たるわらべ哉 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
露の玉ふかれてゐしがいつかなし 真下ますじ
露の玉ふたつにわれんばかりなり 藤守素檗 (そばく)(1758-1821)
露の玉より朝富士の聳えけり 粟津松彩子
露の玉一ッひとつに古郷あり 一茶
露の玉動き出したるとき歪む 小島左京
露の玉少年にして聖人位 下村ひろし 西陲集
露の玉弾きて猫の駈けて来し 稲畑廣太郎
露の玉恃めども身は慎しめや 清水基吉 寒蕭々
露の玉百千万も葎かな 川端茅舎
露の玉考へてをりふるへをり 小澤實(1956-)
露の玉艱難汝を玉にせず 鳴戸奈菜
露の玉蔓人参の蔓を下り 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
露の玉虎は加速をためらふな 糸大八
露の玉蟻たぢたぢとなりにけり 川端茅舎(1897-1941)
露の玉走りて残す小粒かな 川端茅舎
露の石寝がえりをうつこともなし 辻桃子

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by 575fudemakase | 2014-09-30 00:19 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

露2

露2

例句を挙げる。

曙や芭蕉を走る露の音 睡華
更くる灯や葡萄の疵の生める露 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
書家にして露の世あとにせられけり 高澤良一 素抱
書見してしきりに露のとぶ日かな 田中裕明 櫻姫譚
最合井に男まじれり露の朝 森川暁水 黴
月うらとなる山越や露時雨 原石鼎
月さびて露が降る夜の浅蜊汁 廣江八重櫻
月しろのしばらく間ある露葎 飯田蛇笏
月に舞ふ袖より露のこぼれけり 大場白水郎 散木集
月の出の露が溢れる妻子の屋根 飴山實 『おりいぶ』
月の荻あかるく露の萩くらく 久保田万太郎 流寓抄
月も露も涼しきとはのわかれかな 久保田万太郎 流寓抄
月光の露打のべし芭蕉かな 川端茅舎
月影に露をもちけり青簾 井上井月
月蝕の露にあてまじ白牡丹 木導 閏 月 月別句集「韻塞」
月見草爆震露を払ひけむ 林原耒井 蜩
有明や露にまぶれしちくま川 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
朝々のひえこむ露のふかさかな 久保田万太郎 流寓抄
朝々の露にもはげず菊の花 千代尼
朝の木に露の日輪とどまりて 柴田白葉女 花寂び 以後
朝の汽車すこやかに露女郎花 細見綾子
朝の蚊帳四方の露となりにけり 小杉余子 余子句選
朝の間の露を涼しと芝歩く 稲畑汀子
朝やけに染るでもなし露の玉 一茶
朝井汲む妻も木槿も露の中 麦南
朝夕に語らふものを袖の露 向井去来
朝寒の露も下りざる芒かな 石鼎
朝寒の露次出づ犬の嗅ぎ跟き来 石塚友二 方寸虚実
朝市のものを並べて露けしや 西村和子 かりそめならず
朝市の呼びこむ声も露けしや 安原葉
朝市の荷を解くほとり露けしや 栗原 政子
朝市の露の素顔の女たち 福川悠子
朝市や追荷のトマト露とどめ 前田 鶴子
朝戸出に露引きおとす鳴子かな 召波
朝焚火露が厩の香をひろげ 野澤節子 黄 炎
朝燕麦穂の露の真白なる 西山泊雲 泊雲句集
朝露か世に居るようになければぞ 広瀬惟然
朝露が目にとんで久々に笑ふ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
朝露が目玉をつたひきりぎりす 佐々木六戈 百韻反故 初學
朝露しつとり行きたい方へ行く 種田山頭火 草木塔
朝露にすすぎあげたる柳かな 広瀬惟然
朝露によごれて涼し瓜の泥 芭蕉
朝露に手をさしのべて何か摘む 大串 章
朝露に映りてゆける我らかも 石田郷子
朝露に村溺れんとしてゐたり 藤崎久を
朝露に歌の元気やふかれけむ 山口素堂
朝露に浄土参りのけいこ哉 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
朝露に濡れて熟れたるトマト*もぐ 和泉 直行
朝露に濡れて置かれし牛乳の壜 吉屋信子
朝露に酢の実の匂ふ座鋪かな 中村史邦
朝露のいちじくを半分に分け 細見綾子 花寂び
朝露のうちにと萩のつかひかな 斯波園女
朝露のうちにと萩の便ひかな 園女 俳諧撰集玉藻集
朝露のかくまで太く美しく 星野立子
朝露のまだ干ぬ内の柿もみぢ 高澤良一 鳩信
朝露の一粒のごと日浴ぶ母 斎藤空華 空華句集
朝露の乾ぬ間の盆供流しけり 石田勝彦 秋興
朝露の水車水撥ね鞍馬道 西村公鳳
朝露の無花果を食ふ寡婦となり 中山純子 沙羅
朝露は白夕露はうすみどり 白井麦生
朝露やこれも案内の不調法 雉山
朝露やまだ霜しらぬ髪の落 蕪村 秋之部 ■ 妙義山
朝露やむすびのぬくき腰袋 飯田蛇笏 山廬集
朝露や日の粒入りのぶだう売り 関森勝夫
朝露や楚々と花もつ韮の茎 吉武月二郎句集
朝露や猪の伏す芝の起上り 去来
朝露や膝より下の小松原 高井几董
朝露や菊の節句は町中も 炭 太祇 太祇句選
朝露や鬱金畠の秋の風 凡兆
朝露や鶏のつく若菜うり 舞雪
朝露よばら色の豚小走りに 上田五千石 田園
朝露をふんで秋風の墓をまいる 住宅顕信 未完成
朝顔に結びし露も分たむか 齋藤玄 『玄』
朝顔の藍澄む露にふれにけり 柴田白葉女 遠い橋
朝顔の観賞二輪露乾ぬ間 高澤良一 素抱
朝顔の露経し紺や貧久し 小林康治 『華髪』
朝顔や露もこぼさず咲ならぶ 樗良
朝風の零す旋律露しぐれ 湯川雅
朝風や菊のうなづく幾久(きく)の露 上島鬼貫
朝鵙や尚これよりの露葎 中村汀女
朧月露国遠しと思ふとき 飯田龍太(1920-)
木々に霧流れ草木に露のあり 高木晴子 花 季
木のチャペル露の匂ひの神います 上田日差子
木も石も露ふんだんに死場所ぞ 斎藤玄
木平線大きな露と思ひけり 大串章
木曽馬の貌よせて来る露の秋 穂苅富美子
木曾人の露の目覚めも簷深し 林翔 和紙
木槿にも松にも露の一夜哉 米園
木綿合羽露の舎りや昔の野路 調鶴 選集「板東太郎」
木苺を露ごと受けてすすりけり 豊田静枝
木霊ゐず霧か露かの山の鯉 岡井省二
未熟児の露吸ふほどのいのちとも 文挟夫佐恵 遠い橋
末の露もとの卜治や古木の山 雪色 選集「板東太郎」
末期来と露の泉を汲みにけり 栗生純夫 科野路
朴の葉に余りし露の落ちにけり 山崎ひさを
朴の葉の落ちざまに露あびにけり 佐野良太 樫
朴鳴らす風のにはかに青露変 福田蓼汀 秋風挽歌
杉千本大露の日を透き入れて 柴田白葉女 花寂び 以後
村営バス朝刊下ろす露の村 高澤良一 寒暑
村童の露の菊さす持佛堂 塩谷はつ枝
束の間の産声透る露の屋根 小林康治 玄霜
杣人の長身たわむ露の月 田中裕明 花間一壺
来る秋を好きけるものを袖の露 立花北枝
東京の墓城の隅の一露なる 毛塚静枝
枇杷の露涼しと窓を蔽ふ日かな 会津八一
枯山水巌顱頂に露を置き 高澤良一 宿好
染奉書うつしの露や袖の萩 調賦子 選集「板東太郎」
柚の色や起あがりたる菊の露 榎本其角
柱抱き清の王朝露景色 鳴戸奈菜
栄西の茶種育てし露の畑 高澤良一 宿好
栗育つ朝はあさ露夜は夜霧 稲垣きくの 牡 丹
栗鼠を追ひ異国の露に膝濡らす 毛塚静枝
栗鼠跳んで露の日輪森を出づ 堀口星眠 火山灰の道
根を露はさずして柳老いにけり 永田耕衣 驢鳴集
桃の花露あるうちは人の来ず 右城暮石 声と声
桔梗ならをみなへしなら露にぬれて 高井几董
桔梗に牛のふぐりの露けしや 田中午次郎
桔梗の七宝の露欠けにけり 川端茅舎
桔梗の露うしなひし青さかな 京極杞陽 くくたち下巻
桔梗の露きびきびとありにけり 川端茅舎
梅の実の子と露の子と生れ合ふ 中川宋淵 命篇
梨の木の露よりも井のあたたかき 栗生純夫 科野路
梨もぐや大露雨と降る如し 青峰集 島田青峰
棕梠竹に月させば露したたりつ 原田種茅 径
森のこゑこまごま聴ゆ露の空 須並一衛
森の中塵と銀扇露まみれ 阿部みどり女
椎の露の朝の気清し墓参 西山泊雲 泊雲句集
楡若く露けき広場ありにけり 久米正雄 返り花
楢山ヘ牛追ひ上げぬ今朝の露 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
楽々と喰ふて寝る世や秋の露 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
榧の実や赤賓頭盧も露の情 下村槐太 光背
樋にかゝる苗一束や露涼し 島村元句集
樫の木に凝りきはまりし露ひびけ 栗生純夫 科野路
樹に攀ぢし病我鬼おもふ露の秋 飯田蛇笏 雪峡
櫂泥棒に人寄る浦や露の秋 清原枴童 枴童句集
欄干に結べる露に驚けり 高澤良一 素抱
欠け落ちし径を露の祗王寺へ 岩木躑躅
此夕べぬしなき櫛の露や照 炭 太祇 太祇句選
此松の下に佇めば露の我 高浜虚子
歳月の露こそ走れ翁塚 小林康治 玄霜
歳月を語る露けき窟の彩 稲畑汀子 汀子第三句集
死と書きて消す露濡れの秋茄子 平井照敏 天上大風
死なぬ身に幾度消ゆる露の玉 立花北枝
死なば秋露の干ぬ間ぞ面白き 尾崎紅葉
死ぬるまで早起き妻か露万朶 小野 喬樹
死の妻が露の奥処に聴きすます 斎藤玄 クルーケンベルヒ氏腫瘍と妻
死を恃み露に入る身の青々と 斎藤玄 玄
死後といふ不思議にをりて露の家 鈴木湖愁
殉教(まるちる)のをさなご露と生まれけり 筑紫磐井 婆伽梵
殉教の丘の露けさ月あげて 朝倉和江
殉教者に天国さむき露のいろ 飯田蛇笏 霊芝
残り蚊のあまた居寄るも露次のゆゑ 石塚友二 方寸虚実
残る蟲露玉に貌入れてゐし 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
残菊にしとどの露や序の如く 齋藤玄 『雁道』
残鶯の狂ひ音も露深きまま 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
母がもぐ白繭黄繭露の中 石原八束 『秋風琴』
母が言ふむかしむかしの露けしや 雨宮きぬよ
母のもぐ白繭黄繭露の中 石原八束
母の裾桔梗こぼす露明し 小林康治 玄霜
母子とは馬も露けく谷に棲む 野見山朱鳥
母病みて夜毎を露や貝割菜 岡本庚子
毎日の露の白さや古簾 阿波野青畝
毛氈をかけし床几や露の中 後藤夜半 翠黛
毛皮売露人大いなる掌をひろげ 加藤楸邨
水にさす白服の翳露の秋 石原舟月 山鵲
水に浮く板子のごとく露けしや 平井照敏 天上大風
水の上露とんで夜の空光る 西村公鳳
水上に置きたる露の流れけり 前田普羅 飛騨紬
水中花まことしやかに露むすぶ 西本一都
水平線大きな露と思ひけり 大串章(1937-)
水引に滝のしぶきと深山露 大野林火
水引の紅にふれても露けしや 青邨
水打て露こしらへる門辺哉 炭 太祇 太祇句選後篇
水梨や幾秋の夜の露の味 乙州
水餅の秋夜のごとき露けさや 栗生純夫 科野路
永遠と一日に思ひを露の山 齋藤愼爾
汗や露おのが染たる柿帷子 自鶴 選集「板東太郎」
江を横に露の松原やしぐれあと 古白遺稿 藤野古白
河の空染まり来る露の青芒 柴田白葉女 牡 丹
河鹿きく我衣手の露しめり 杉田久女
浄雲浄嶺満目露に明けにけり 福田蓼汀 秋風挽歌
浜木綿の百重なす葉の露涼し 鈴鹿野風呂 浜木綿
浜風露胸に飾りて恋せんか 小林康治 『虚實』
海の旭のまろびて育つ芋の露 角川源義 『秋燕』
海照る墓夜潮眠れば露けしや 小林康治 玄霜
海陸の暗が一つに夜は露けし 右城暮石 上下
海鳴の方より露の抜菜売 百合山羽公 故園
消えてゆく露幽明の刻きざむ 滝青佳
涙しくや遊行の持てる砂の露 松尾芭蕉
涼しさは露の大玉小玉哉 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
涼しさやこぼれもやらぬ松の露 高井几董
涼しさや雨を露なる竹の月 太祇
深川の露路に虫籠釣りて棲む 吉屋信子
清けさや色さま~に露の玉 寺田寅彦
渋柿を其葉に愛でよ承露盤 尾崎紅葉
渓声の延金をなす露の中 鈴木貞雄
渡舟場へ巨樹を擁して露野かな 雑草 長谷川零餘子
温かく生理きざすや露の木椅子 井戸みづえ
温泉ありて産湯三日湯露の宿 木村蕪城 寒泉
測量の一団を入れ露の山 馬場移公子
湛慶の作とうんぬん露御坊 高澤良一 宿好
湯上りのつまさきに浴ぶ芝の露 高澤良一 素抱
湿原をよぎる鎌見え露微塵 成田千空 地霊
満園の露日に動く五月晴 正岡子規
満山の露荘厳す蛇笏の死 石塚友二
満潮の芒に露の溢れをり 西村公鳳
満目の露一粒に一太陽 山口美瑳代
満願の涼しき露をならべけり 中川宋淵
滝径やわきて露けき花薊 西島麦南 人音
漁りや真菰の露を分けて行く 青峰集 島田青峰
漂へるごとくに露の捨箒 風生
澄むと言ひて宝珠露盤を仰ぎけり 下村槐太 天涯
濡つ干つ旅やつもりて袖の露 向井去来
濡落の雫晴れけり菊の露 朱廸 九 月 月別句集「韻塞」
火と露を恋ひて火夫病む青葉木莵 齋藤愼爾
火の山の桔梗師とゐて露けしや 角川源義 『秋燕』
火の山の露の夜明の星一顆 岡田日郎
火の山の露の韻きに目覚めをり 小松崎爽青
火の島へ一帆目指すよ芋の露(三浦荒崎) 角川源義 『秋燕』
火の粉散華悼む黒部の露の天 福田蓼汀 秋風挽歌
火山老いにけり無尽の露の玉 中村雅樹
火祭の火粉露よび母を呼び 福田甲子雄
灯さず吊る露のランプの一画房 小林康治 玄霜
灯されてマリアは白し露の中 秋篠光広
灰に埋め墨乾すといふ露の町 飴山實 少長集
炉の名残一鐺の露芽匂ひけり 菅原師竹
炊ぎつつながむる山や露の音 飯田蛇笏 山廬集
炊煙の濁らしそめぬ露の空 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
炎の龍子露の茅舎や白絣 大石香代子
炭竃へのぼる一町昼の露 野澤節子 黄 炎
点滴の露のひとつぶ夕焼けたり 佐川広治
無職の父が溜息もらす露ぶすま 皆川白陀
焼帛や風のまにまに露しろき 松瀬青々
焼砂に昼顔の露潤ひけり 旅一筋 安藤和風
焼鳥や銀の髪もつ露語教師 日原傳
煙草すてゝ闇いよゝ濃し露時雨 碧雲居句集 大谷碧雲居
煙草消す露金剛の誕生日 角川源義 『西行の日』
照り昃る信濃つらぬく露軌条 桂信子 花寂び 以後
熱の身の露に泛びてたゞよふや 斎藤空華 空華句集
燭浄土露の身のまた露の刻 八牧美喜子
爆心の夜空露けきアベマリア 下村ひろし 西陲集
爐辺の楽舊獨舊露なつかしし 京極杞陽
父となり四十にちかし芋の露 杉山岳陽 晩婚
父に集ひ母に集ひて露の家 寺岡捷子
父恋ふる我を包みて露時雨 高浜虚子
爽波先生言ひたい放題露涼し 辻桃子
牛が立つ草原露けくずつと秋なる白波 人間を彫る 大橋裸木
牛の息杉菜の露にかかりけり 阿部みどり女
牛の眼が人を疑ふ露の中 福田甲子雄
牛ひき出す穂薄の露とび散る中 桂信子 花寂び 以後
牟婁の子も来て獅子に逢ふ露の秋 宮武寒々 朱卓
牡丹あはれ露に傾くうなじなり 稲垣きくの 牡 丹
牧守の髭洩るる語の露けさよ 堀口星眠 営巣期
牧師住む露けき二畳一間かな 橋本榮治 麦生
牧草地には朝露満てり金鳳華 有働亨 汐路
犬つれて稲見に出れば露の玉 上島鬼貫
犬見れば犬藁見れば藁露ぐむ日 成田千空 地霊
犬連れて稲見に出れば露の玉 鬼貫
狩倉の露におもたきうつぼ哉 蕪村 秋之部 ■ 妙義山
狩燠(かりあを)の少年の戀露まみれ 筑紫磐井 野干
狩衣の露けき袂薪能 武川明子
独活の実の露あるが降る下山かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
独語して露の星座に包まるる 相馬遷子 雪嶺
狭まりし母の視野にも露満つや 丸山哲郎
狸売る家あり露の深草路 鈴鹿野風呂 浜木綿
猪に露の事あり最晩年 永田耕衣 殺佛
猪の露折かけてをみなへし 蕪村 秋之部 ■ 永西法師はさうなきすきもの也し、世を去りてふたとせに成ければ
猪臥たる跡の露けき濃龍胆 久米正雄 返り花
猫じやらし怺へて重き露たもつ 篠田悌二郎 風雪前
猫と生れ人間と生れ露に歩す 加藤楸邨
猫の毛の濡れて出でけり菊の露 岱水 九 月 月別句集「韻塞」
猫もどりたる大露の戸口かな 大峯あきら
猫拾ひ来て長子立つ露時雨 原裕 青垣
玄関や拝観人の下駄の露 比叡 野村泊月
玉の露呼べば応へて妻そこに 清水基吉 寒蕭々
王陵の露踏むよりの気おとろヘ 文挟夫佐恵 遠い橋
珈琲や其角が露を探し居る 永田耕衣 葱室
瑞牆の崎嶇たるあかね露の日に 飯田蛇笏 雪峡
瓜蠅に露照る朝の蔬菜園 西島麥南
瓶花露をこぼす琵琶三両曲 子規句集 虚子・碧梧桐選
甘えるによき甲斐言葉露かぶり 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
甘橿の丘訪ふべくも露葎 比叡 野村泊月
生きて帰れ露の命と言ひながら 正岡子規
生き行く道難し太古の露の月 石塚友二 方寸虚実
生くる意味問ひし露の目わが娘の目 老川敏彦
生年と歿年の間露けしや 田中裕明 先生から手紙
産土神に露けき老のひと屯ろ 石田勝彦 秋興
産声や歓喜のはての露をどる 杉山岳陽 晩婚
田水満ち日いづる露に蛇苺 飯田蛇笏
畑への細き吊橋露けしや 関根きみ子
畠中や露干る笠の裏返し 飯田蛇笏 山廬集
畦塗に暾勁き薊露おびぬ 西島麦南 人音
疾くゆるく露流れ居る木膚哉 西山泊雲 泊雲句集
病とふ同伴者あり露涼し 田川飛旅子
病みて見るこの世美し露涼し 遷子
病む子遠し指頭に露を移し得て 香西照雄 対話
病む母のひらがなことば露の音 成田千空 地霊
病む父のうしろにまはり露けしや 岸田稚魚 筍流し
病む腹を馬に揺らるゝ露夜道 楠目橙黄子 橙圃
病牀の我に露ちる思ひあり 正岡子規
病穂にも露は目覚めて基地砂川 藤田湘子 雲の流域
癆咳の娘が露いとふ花壇かな 西島麦南 人音
発明の形に朝を抱いて露 塩見 恵介
白樺の大露に咲く鳥兜 飯田蛇笏
白樺を幽かに露の行く音か 水原秋桜子
白毫寺坂なる露の跫音かな 鷲谷七菜子 花寂び
白痴童女わらへり露の玉まろび 成瀬桜桃子 風色
白百合や萼の露の浅緑 寺田寅彦
白砂や露の貝殻鏤めて 石塚友二 光塵
白菊に置得たり露置得たり 嵐山
白菜を抜きて抱きし露まみれ 林原耒井 蜩
白萩のしきりに露をこぼしけり 正岡子規
白豪寺坂なる露の跫音かな 鷲谷七菜子 花寂び
白陀亡し地に秋茄子の露まみれ 村上高悦
白雲の寂花蓼の露百顆 石原八束 空の渚
白鷺の一羽のための露景色 堤高嶺
百千の露あるかぎり子守唄 萩原麦草 麦嵐
百合の露揚羽のねむる真昼時 飯田蛇笏 椿花集
百姓のよこぎつてゆく露野かな 橋本鶏二 年輪
百年の露けさ笹の朱墨にも 藤浦昭代
盆の月子は戦場の露ときゆ 飯田蛇笏
盆の鉦うおんうおんと露を呼ぶ 百合山羽公 寒雁
盛塩の露にとけゆく夜ごろかな 永井荷風
目白折々椿の露を吸ひに来る 寺田寅彦
目覚むればすぐ面影が露万朶 福田蓼汀 秋風挽歌
盲といふ一字に執し露の秋 深川正一郎
相へだつ目蓋耳蓋露けしや 齋藤玄 飛雪
相逢うてことばいらざり万の露 原 ふじ広
真ん中に露けく座り野菜売り 安田千枝子
真夜中の入谷通るや露しぐれ 白水郎句集 大場白水郎
眼ざましにみる背戸ながら今朝の露 炭 太祇 太祇句選後篇
眼を磨き上げたる露の蝗かな 石田郷子
眼鏡の露より昭和はじまれり 攝津幸彦
睡りては人をはなるる露の中 齋藤玄 『雁道』
睡蓮の芯にあそべる露童子 朝倉和江
瞬くや露は睫毛にあるごとし 秩父
短か夜や毛虫の上に露の玉 蕪村
短夜や笹の葉先にとめし露 高橋淡路女 梶の葉
石あれば石も瞠き露の中 金箱戈止夫
石ころも露けきものの一つかな 高濱虚子
石に腰かけて露けし四十過ぐ 菖蒲あや あ や
石のこゑききとめしあと露のおと 水内 鬼灯
石仏に夕星こぞる露の藪 西村公鳳
石庭の入りてはならぬ露けさよ 竹下陶子
石庭の謂れ露けき日本語に 高澤良一 宿好
石炭の露頭芒を生ひしめず 森田峠 逆瀬川
石白く粗く化野露佛 高澤良一 宿好
石菖の朝露かろしほととぎす 惟然
石鼎の薪暮しの露の土間 石田勝彦 秋興
砂洲の露響きはじめを喚く鐘 竹中宏 饕餮
砂濱も海も平らたく露日和 合浦句集満潮 原田合浦
砂町に顔洗ひをり露葎 石塚友二 光塵
砲射音空しく聞くに露ふるふ 殿村莵絲子 遠い橋
破損仏にも露の世の銭賽す 大橋敦子 手 鞠
硝子戸の外は聞こえず露の山 永田耕一郎 方途
硯かと拾ふやくぼき石の露 松尾芭蕉
明治十一年 ベルツ 昭和十年 ベルツ花 草津訪問
碑にその名露けきベルツ花 高澤良一 随笑
碑に読むは殉教戦史露の丘 下村ひろし 西陲集
碧眼も露の十五の石見据え 高澤良一 宿好
磔像に侍す明暗の露芭蕉 小林康治 玄霜
礁原に失せなむ墓や露まみれ(佐渡外海府) 岸田稚魚 『筍流し』
祗王寺はわが墓どころ露どころ 高岡智照尼
神の目のごとくに澄める露一つ 加藤霞村
神留守の露に戊辰の墓二百 橋本榮治 麦生
神祀る燈明二つ露時雨 福田蓼汀 山火
神鈴のけふ新しき露の山 鷲谷七菜子 花寂び 以後
禅門の戒の一字や露涼し 正田稲洋
秋かと思ふかけし袋に一夜露 栗生純夫 科野路
秋たつや霄の蚊遣の露じめり 高井几董
秋の空露をためたる青さかな 正岡子規
秋の螢露より薄く光りけり 麦水
秋もはや焦土の露に貝割菜 西島麥南
秋をへ(経)て蝶もなめるや菊の露 松尾芭蕉
秋を経て蝶もなめるや菊の露 松尾芭蕉
秋山やヒカゲノカヅラ露しとゞ 前田普羅 新訂普羅句集

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by 575fudemakase | 2014-09-30 00:18 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

露1

露1

例句を挙げる。

*どをあげて露の日輪滴らす 梅原黄鶴子
「母」の字の点をきつちり露けしや 片山由美子 水精 以後
「誓の涙」露も乾けば一汚点 香西照雄 対話
あかそ刈る山の童に岨の露まぶし 内藤吐天 鳴海抄
あかつきや人はしらずも桃の露 加舎白雄
あさ露や鬱金(うこん)畠の秋の風 野澤凡兆
あしたまづ露の茅蜩鳴きにけり 木津柳芽 白鷺抄
あたたかきもの牛馬のみ露葎 栗生純夫 科野路
あちこちの祠まつりや露の秋 芝不器男
あとやさき百寿も露のいのちかな 河野静雲
あなうらへ露をふれさせ生きたさよ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
あはれさは粽に露もなかりけり 正岡子規
あまた僧に逢ひて露の身透くばかり 谷悦子
あめつちの露の朝日の百姓家 長谷川素逝 村
あら古や露に千鳥をすまの躰 椎本才麿
ある露路に蜜柑の花の香の流れ 藤後左右
いくさ経し野路に露おく白桔梗 河野南畦 『花と流氷』
いくばくの余生や芋の露享けて 原俊子
いくまんの露の俳句が勲章に 山口青邨
いざゝらば露よ答よ合点か 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
いしぶみを読む間も露の流れけり 大橋櫻坡子 雨月
いそ~と栞どほりに露の径 岩木躑躅
いちじくの樹の高みまで露の領 福永耕二
いち早く経済醒める露しぐれ 鈴木六林男 後座
いつしんに露を浴びたる山路かな 田中裕明 花間一壺
いてふの露たれがちに天の河ふけぬ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
いまここにピアノの音欲し露の庭 山口波津女 良人
うき島や露に香うつる馬の腹 上島鬼貫
うしろ手に扉を閉す癖や露深し 齋藤玄 『狩眼』
うす紅に露さわやかの芙蓉かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
うつくしや黍は倒れて露の中 碓嶺
うつ蝉やあらしの露のかかるなり 乙二 選集古今句集
うづくまる兎にはとり露の中 中田 剛
うなづきて露にめつむる仏かな 飯田蛇笏 雪峡
うは露も御覧を経たり今日の菊 尾崎紅葉
おく耳に声の数など子規 露山 選集「板東太郎」
おく露は玉のやうなる小萩かな 行方妻 俳諧撰集玉藻集
おしろいが咲いて子供が育つ露路 菖蒲あや
おしろいのためたる露も源平に 小原菁々子
おしろいを咲かせおびただしき露を 山口青邨
おし並ふ野呂松が顔の露涼し 尾崎紅葉
おつるとは梢の露も哀れなり 尾崎紅葉
おのが糞ふりむき去りぬ露の犬 桜井博道 海上
おぼしめしありがたく露しろきかな 久保田万太郎 流寓抄
おもかげを児にみる露の日夜かな 飯田蛇笏 雪峡
おんこの実ここに受洗の三木露風 鈴木しげを
おん前に露の小銭よ観世音 佐野美智
お側近う囀がたし心の鳥 露言 選集「板東太郎」
お寺様守りて露の漁港かな 八木林之介 青霞集
かがんぼに跨がるゝ葉の露こぼす 高澤良一 寒暑
かくてはや露の茅舎の齢こゆ 上田五千石 森林
かさなりて死ねる蝗も露まみれ 岸風三樓
かたくりの花に重たき山の露 高澤良一 燕音
かたつむり大露の葉に沈みゆく 佐野青陽人 天の川
かたまりて露の穂絮やけふ飛ばん 石田波郷
かつがれて棺は露の空へ浮く 山上樹実雄
かまきりにひかりの国の露童子 井上鶏平
かまつかに露のいらかの雀どち 飯田龍太
からめ手の木曾川へ落つ露の径 松本たかし
から松の上の富士の上の露の天 井沢正江 湖の伝説以後
かりそめの露にも影のありにけり 倉田紘文
きくの露受て硯のいのち哉 蕪村 秋之部 ■ 山家の萩見にまかりけるに、あるじの翁、紙硯をとうでゝ、ほ句もとめければ
きくの露落ちて拾へば零余子かな 史邦 芭蕉庵小文庫
きちかうの露けかりしが逝きにけり 道芝 久保田万太郎
きちかうの露にもぬれよ鞠袴 高井几董
くづれたる露におびえて葦の蜘蛛 飯田蛇笏 霊芝
くらがりのけぢめことりと露の木戸 長谷川双魚 『ひとつとや』
くるぶしの露けき頃となつてをり 川崎展宏
くろがねの擬宝珠に露や旧城下 西本一都 景色
くろがねの蔓わたりをり露の中 橋本鶏二 年輪
くゞらせて色々にこそ萩の露 服部嵐雪
けふの晴きのふの風と露けしや 長谷川双魚 風形
こころ図面の家を歩けり露の音 安永千鶴
ことごとく詩の骸や露万朶 齋藤玄 『狩眼』
この庭の露けからざるもののなく 下村梅子
この生家露しとどなりシヨパン聴く 岩崎照子
この露に瓢箪公事も有りけるや 中村史邦
この露をまちて寝たぞや起きたぞや 上島鬼貫
この齢この夢そだつ露まみれ 篠田悌二郎 風雪前
こぼさじと葉先と露と息合はす 粟津松彩子
こぼしては結びては露このむ萩 原 柯城
こぼす露こぼさぬ露や萩と葛 正岡子規
こぼるるは露のさだめの大賀蓮 青木重行
これからぞとも余命とも露煌めく 篠田悌二郎
これやこの天台の露なりしかな 粟津松彩子
これやこの露の身の屑売り申す 川端茅舎
ころがつて一つになりし露の玉 岩田由美
こゑ立てぬ鳥の始終を露葎 鷲谷七菜子 天鼓
さそり星老けしまはりの露の星 百合山羽公 寒雁
さはがしき露の栖やくつわ虫 炭 太祇 太祇句選後篇
さびしげに書付消さん笠の露 松尾芭蕉
さびしさをこぼれて見せつ萩の露 不角 選集古今句集
さみだれや露盈つ松葉眼にあふれ 渡邊水巴 富士
さよならをいつまで露の頭骸骨 永田耕衣 闌位
さりながら袖にこぼさじ萩の露 立花北枝
しばしもとなき魂やどせ艸の露 加舎白雄
しばたたく露双眸の涙星 福田蓼汀 秋風挽歌
しめやかに灯りて露の庵かな 村上鬼城
しら露もこぼさぬ萩のうねりかな 芭蕉
しら露やあらゆる罪のきゆる程 一茶
しら露やさつ男の胸毛ぬるゝほど 蕪村 秋之部 ■ 辨慶賛
しら露や君とうねらむ萩の徑 会津八一
しら露や無分別なる置所 宗因 選集古今句集
しろがねの露の走れる黒牡丹 田畑美穂女
しろがねの露玉虫厨子の中 中田剛 珠樹以後
しんとして露をこぼすや朝桜 正岡子規
じつとりと露けき虫の新しい夜があける 橋本夢道 無禮なる妻抄
すなどりのもの置く露の藜かな 木村蕪城
すゞし江に鮗をうつ竿の露 加舎白雄
そこら掃いて寝るばかり屋根の露涼し 中島月笠 月笠句集
その中に伽藍をうつし露の玉 中田剛 珠樹以後
それぞれの聲稲の露芋の露 田中裕明 櫻姫譚
たかうなや雫もよよの篠の露 松尾芭蕉
たちよれば花卯盛りに露のおと 飯田蛇笏 霊芝
たましひを削ぐ音の露生れけり 今村俊三
たま棚は露も泪もあぶらかな 服部嵐雪
たよりもな露の足音いくにんも 田中裕明 櫻姫譚
たをたをと竹をひきゆくや露の朝 中勘助
たをるなら花やはおしむ萩の露 井原西鶴
ちがふ道歩き来し身や露の秋 下村梅子
ちぎれ雲夜の岩々に露生れぬ 石橋辰之助 山暦
ちんぐるま露りんりんとわれを待つ 杉山岳陽
ちゝはゝとまた呼ぶを得し露白光 杉山岳陽 晩婚
つかまつる紙燭露けき夜能かな 西村和子 かりそめならず
つながつて髪にとぶ露村史編む 田中裕明 櫻姫譚
つながるる犬も露けきもののうち 阿部みどり女
つぶつぶと丸む力や露の玉 正岡子規
つぶらなる汝が眼吻はなん露の秋 飯田蛇笏(1885-1962)
つまだちて草鞋新たや露の橋 飯田蛇笏 霊芝
つや~と露のおりたるやけ野哉 一茶 ■享和二年壬戌(四十歳)
つゆけき身露けき磴を登りゆく 藤本修
つらぬきしもの露ほどに脆かりき 稲垣きくの 牡 丹
とうろうのひとり消入る露の中 松瀬青々
とうろうを三たびかかげぬ露ながら 與謝蕪村
とく起きて散歩かゝさず蓼の露 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
ともしびも蚊帳も露はに西瓜小屋 八木澤高原
ともしびを数へてあとは露の山 鷲谷七菜子 天鼓
ともしびを露と数へて姉の恋 齋藤愼爾
とりとめしいのち露けきおもひかな 道芝 久保田万太郎
とんぼうの眼玉ぬるゝや竹の露 妻木 松瀬青々
どこからも見ゆる露坐仏梅探る 加藤富美子
どの露路も橋につながる良夜かな 近本 雪枝
なかんづく學窗の灯や露の中 飯田蛇笏
なつかしの大樹や露を踏み仰ぐ 阿部みどり女
なでし子にかかるなみだや楠の露 ばせを 芭蕉庵小文庫
ななかまど十三葉の露涼し 西本一都
ななくさや露の盛りを星の花 上島鬼貫
なにもかも思ひ出なりし露けしや 佐土井智津子
ならはしの朝寝に疲れ花の露路 石塚友二
なら漬桶糟残りけり新茶好 露言 選集「板東太郎」
にはとりの声あびてをり露の玉 中田剛 珠樹以後
ぬつと出る海苔干す露路の白帆かな 古白遺稿 藤野古白
のがれえぬ理をいひつめて袖の露 立花北枝
遠野
はあ、むがしはと始まる民話露けしや 高澤良一 寒暑
はしけやし露のぼりゐる糸すゝき 原石鼎
はしれ雷声はりあげて露語おしう 古沢太穂 古沢太穂句集
はじまれりおそろしき葛の露の原 和知喜八 同齢
はつ露や猪の臥芝の起あがり 向井去来
はつ露や酒中花の葉の八枚ぞ 小池文子 巴里蕭条
はら~と露の奥ゆく月夜哉 中川宋淵 詩龕
はる~と牛乳配り来ぬ露の宿 増田龍雨 龍雨句集
はろかなる露の北斗の尾の日本 加藤秋邨 沙漠の鶴
はんの木に露の日輪ひつかかり 長谷川素逝 暦日
ひかるものなべて露抱き原爆址 朝倉和江
ひさご苗露をためたるやは毛かな 山家海扇
ひざまづく仏足石も露の石 藤崎久を
ひたすらに日と露を巻く玉菜かな 阿部みどり女
ひたすらに露の世駈くる義士は此処 用名仁子
ひつそりと嵐のあとを露の置く 尾崎紅葉
ひとつずつ露をつないでゆく遊び 永末恵子 留守
ひとつ家の露の温泉富の婢もひとり 皆吉爽雨 泉声
ひととゐて露けき星をふりかぶる 橋本多佳子
ひとり旅露けき白湯をのむごとし 長谷川双魚 風形
ひとり死にひとりまた減る露の村 永田耕一郎 海絣
ひと聲は夜鷹なりけむ露の秋 石塚友二
ひょろひょろと猶露けしや女郎花 芭蕉
ひる顔やわかちて担ふ魚の露 加舎白雄
ひろびろと露曼陀羅の芭蕉かな 川端茅舎(1897-1941)
ふぐりに手載せて寝につく露の音 能村登四郎
ふだん着のおわら稽古や露踏みて 松本 美簾
ふるさとに墓も残さず露の秋 大久保橙青
ふるさとに露の一墓残すのみ 有地由紀子
ふんばりてドウガネブイブイ露吸へり 高澤良一 ももすずめ
ぶだうを皿に水露となるすこやかさ 細見綾子 花 季
ぶら下り眠れる蝶や露の中 播水
へちま引きておどろく露のつめたさに 及川貞 榧の實
ほれしより気づくしや露の玉かづら 柏原-すて 俳諧撰集玉藻集
ほろほろと朝露はらふ雉子かな 肖柏法師
ほゝゑみてすでに母なり光る露 相馬遷子 山河
ぼうふりや蓮の浮葉の露の上 炭 太祇 太祇句選後篇
またの世に露を結びぬ蝸牛 増田まさみ
また一つ露の命の葉をすべる 今泉貞鳳
また見えて露におどろく天塩川 加藤秋邨 野哭
まつ毛にも露おく秋や夜半の月 高井几董
まつ虫のまたぬ夜もなし松の露 立花北枝
みささぎに露のまなざし持ちて入る 岸田稚魚 『雪涅槃』
みじか夜や毛むしの上に露の玉 與謝蕪村
みせばやに凝る千万の露雫 富安風生
みせばやの葉先に光る露の玉 下村 秀の
みぞはぎの露にとどけり昼の鐘 細見綾子
みづうみはひるも露けし野辺送り 関戸靖子
みみづくの赤き眼や露時雨 会津八一
めてたしや葉末に露の置き心 尾崎紅葉
ものいひて言葉ありけり露の榧 岡井省二
ものゝ音秋は露さへしぐるゝか 加舎白雄
もの言ひて露けき夜と覚えたり 高浜虚子(1874-1959)
もの言へばこの露けさの消えさうに 堀恭子
もの読んで身に添はぬなり露けしや 森澄雄 四遠
もやしの手で露を食べてくたびれて 八木三日女 落葉期
もろともに露の身いとふ踊りかな 飯田蛇笏 山廬集
やまぶきの露のおもみやちる便り 立花北枝
やまぶきの露菜の花のかこち顔なるや 松尾芭蕉
ゆく秋の露すさまじきおもひかな 久保田万太郎 流寓抄
よき月の行くこと遅し芋に露 阿波野青畝
よぎる庭ひろ~のこる露ありぬ 及川貞 榧の實
よべ過ぎし崖におどろく露薊 林原耒井 蜩
よるの露さくらの幹をつたひけり 栗生純夫 科野路
わかものの妻問ひ更けぬ露の村 定本芝不器男句集
わがための露日和かな働かむ 大木あまり 火球
わが唄はわがひとりごと露の秋 久保田万太郎 流寓抄
わが声の若さおどろく露の花圃 鷲谷七菜子 黄 炎
わが胸に人ひとり棲む露凝るころ 小澤實
わが行けば露とびかかる葛の花 橋本多佳子(1899-1963)
わが裾は三河の露と交りけり 上島鬼貫
わが露路でつまづく寒に入りにけり 菖蒲あや
わさ鍋のいつ干(ひ)さらん稲の露 椎本才麿
わしづかみ国無き露人毛布売る 岡田 貞峰
われにまさるわれの刺客はあらざるを今朝桔梗のするどき露 塚本邦雄
ゑびかつら露とむる葉の染まりけり 飯田蛇笏 山廬集
をだまきに露微塵なる五月富士 富安風生
をととひのことなつかしき芋の露 山本洋子
をみな泣く源氏絵巻の露けさよ 野見山朱鳥
アセチレン灯すバザール露けかり 田中英子
アンドロメダ星の調弦露けしや 渡邊千枝子
エビネ畑番犬露の顔あげて 高井北杜
ギザギザの露を鎧ひて今年藁 竹下しづの女
コスモスの咲きて旧露の兵舎あり 五十嵐播水 埠頭
ジャズの世のジャズも露けし一と夜さは 石塚友二 光塵
長谷観音 観光
スタンディングブッダといふも露けしや 高澤良一 燕音
セロリバキバキ喰って 体内に露いっぱい 松本恭子 檸檬の街で
セロ弾きのゴーシユゐるらむ露の夜 上田日差子
ゼラニューム花露ぐもり海ぐもる 石原八束
ハマナスに別名あれば
テラスのさき露のジャパニーズ・ローズかな 高澤良一 燕音
トロ一つうごきそめたる露野かな 大橋櫻坡子 雨月
ド・ロさまのオルガン露の野にひびき 貞吉 直子
ネオン赤き露の扉にふれにけり 木下夕爾
ハライソはこの真上にて露葎 高澤良一 素抱
ハンカチを眼にあて露の芝を踏む 阿部みどり女
バイブルの一章を彫り露の墓 藤岡筑邨
ピアソラのタンゴ魂露と凝り 高澤良一 鳩信
ファシズムを憎む落書露の壁 岩崎照子
ファンフアーレにとり残されし露の紫蘇 殿村莵絲子 牡 丹
ペン休む間も芋の葉に露はしり 赤城さかえ
ラヂオよりわが声朝露かがやけり 古賀まり子 洗 禮
リス跳んでからまつの露こぼしけり 関森勝夫
ルビーてふ葡萄の房や露涼し 千本木 早苗
一つ灯を頒ちて露の二タ温泉壺 伊藤柏翠
一を知り十抜けてゆく露日和 橋石 和栲
一人に逢へば一人の別れ露野かな 宮武寒々 朱卓
一列の露の灯暁闇の岳に消ゆ 福田蓼汀 秋風挽歌
一夜には一夜のねむり露涼し 斎藤空華 空華句集
一山の要に露の千光寺 長田等
一峯を不入としたる露の山 橋田憲明
一度だけの妻の世終る露の中 能村登四郎(1911-2002)
一挺の三味線ありぬ露の宿 増田龍雨 龍雨句集
一本の薪にも凝りて道の露 西山泊雲 泊雲句集
一歩出て塵を棄てけり露の宿 芝不器男
一点の露の光芒拡大す 中村汀女
一点の露太々と迫るなり 中村汀女
一眠りして露けさの障子かな 依光陽子
一睡のあと一粒の露のこゑ 三田きえ子
一粒が二つにわかれ芋の露 土生重次
一粒の露きらめきて石蕗に朝 中村汀女
一粒の露のむすびし萩の色 野澤節子 『八朶集』
一粒も百千万も露のこと 藤崎久を
一聯の露りん~と糸芒 川端茅舎
一茎の紅露につづく曼珠沙華 百合山羽公 寒雁
一行の手紙露けく送金す 野見山ひふみ
一輪に露をあつめてもたらせし 安東次男 昨
一隅を照らして蓼も露けしや 古舘曹人
一露のみ戦慄戦趾観光者 香西照雄 素心
一露の嶋組蓬莱の秋ぞ知る 立独 選集「板東太郎」
一露もこぼさぬ菊の氷かな 松尾芭蕉
七夕や暮露よび入て笛をきく 其角
万燈の火色の空の露けしや 江口竹亭
三伏の闇はるかより露のこゑ 飯田龍太(1920-)
三十三番詠ひ納めつ露の暁 林原耒井 蜩
三太郎日記膝に重しや露の家 角川源義
三笠山町は日あたる露しぐれ 松瀬青々
三角の地所の一角露あかざ 佐野まもる
下山僧に露の深さを思ひけり 青峰集 島田青峰
下露の小はぎがもとや蓼の花 蕪村遺稿 秋
不作の田刈つてしまへば露浄土 成田千空
不知火を見る丑三の露を踏み 野見山朱鳥
中尊寺正午の露の大き玉 大峯あきら 鳥道
丸茄子朝露弾く梵天丸 高澤良一 素抱
主病む露の箒を柴垣に 橋本鶏二 年輪
久闊の友とはいへど露の墓 北見さとる
九十九谷の露ことごとく星となる 渡辺恭子
乞ふ我をその朝顔の露と見よ 尾崎紅葉
乳母車の行方は羨し露の坂 神尾久美子 掌
乾く間もなく秋くれぬ露の袖 井上井月
二三里の妹かり行くや露の中 尾崎紅葉
井の端の風露の乾き九月尽 菅裸馬
亡き父と母の足音露ふめば 井上雪
京劇の花簪も露けしや 有馬朗人 天為
人が彫り露が彫りたる磨崖仏 鷲巣ふじ子
人の世に枝折戸といふ露けさよ 大岳水一路
人の世のおほ方経しか露葎 石塚友二 方寸虚実
人声に機嫌よろしき芋の露 斎藤 都
人夫癒ゆ路地に日の唄露の唄 古賀まり子 洗 禮
人形はみな立てり露来つつあり 原田喬
人影のなきが露けし虚子之塔 松本圭二
人生の四十路俄かに露けしや 深町丘蜂
人行きし跡の無数よ露しとど 斎藤玄
人語露けし鈴虫は鈴の声 中山純子 沙 羅以後
人間の脛といふもの露こぼす 高澤良一 素抱
今は亡き子と遊べとや露月夜 根岸善雄
今年また母ありてこそ露けき灯 古賀まり子 緑の野以後
今年竹露ふりこぼす二つ星 齋藤玄 飛雪
今日よりや書付消さむ笠の露 芭蕉 (同行曾良に別るゝ時)
今日生れし牛に露けき夕べ来ぬ 大木さつき
今日白露その露も見ず入院す 浜屋刈舎
今朝ぞ置く竹の下露自在釜 鉄丸 選集「板東太郎」
今朝の青菜の露けきを云ひて母なる 人間を彫る 大橋裸木
今朝秋や露をふるひて藪からし 小林康治 玄霜
今様をつぶやくことも露の中 辻桃子
仏生会露生の土にわれの影 三島晩蝉
仔猫眼をひらきて花卉の露あさき 石原舟月 山鵲
仲見世のひるの露けき数珠屋かな 龍岡晋
伊勢の神威羽黒の霊威杉の露 河野静雲
伊子切に錆朱露けき返点 都筑智子
伏せばなほ涙や露の音すらむ 石原八束 『幻生花』
佇めば人にも結び露涼し 吉年虹二
何がうそでなにがほんとの露まろぶ 久保田万太郎 流寓抄
何の木ぞ懸巣が踏みて露こぼる 水原秋櫻子
何の目標もない露満国境へぼこぼこ倒れる夢心地の日も 橋本夢道
何失せしわれぞ今宵の露けさは 林翔 和紙
佗住めば八方の虫四方の露 清水基吉 寒蕭々
侍の身を露にして月見かな 中村史邦
侠客の駈け抜けし径露どつと 吉田銀葉
信濃路や朝は露吹く竹の色 小林康治 四季貧窮
俤のむき栗白し雨の月 露言 選集「板東太郎」
修善寺の面の由来の露けしや 河野石嶺
修復の露の一燈神楽殿 木村蕪城 寒泉
修道女露の脚絆のまま祷る 西本一都
倒れ木やのぼるになれて露の杣 飯田蛇笏 山廬集
偸盗が覗きかへすや露の玉 中田剛 珠樹以後
傅習のオラシヨが洩るる露葎 下村ひろし 西陲集
億万の仏の露の高野山 皿井旭川
儲どの程度牛市の露けさは 加倉井秋を
先づ露に心濡らすも横川ゆゑ 藤浦昭代
先立ちゆく犬の巻き尾や露峠 鷲谷七菜子 花寂び
光り出づ深き露あり八重葎 皆吉爽雨
光るほど夜は静かなり露の玉 古梁
児の毬を露に残して転居せり 田所節子
兜蟲露にまみれて睡る椎 田川飛旅子 花文字
入る月の残せし露の光かな 竹冷句鈔 角田竹冷
入墨も余生の薄さ露青光 林翔 和紙
八ヶ嶽露の御空を噛みにけり 川端茅舎
八束穂は露にみだれて曼珠沙華 西島麥南
内蔵に月もかたぶく萩の露 上島鬼貫
円空佛拝観名簿露けくて 高澤良一 素抱
円空堂鉄錠外す音露けし 高澤良一 素抱
冥府へは誰も身ひとつ露の秋 倉橋弘躬
冷えきりし電球ともる露の中 上田五千石 田園
凍港や舊露の街はありとのみ 山口誓子
凡兆の行方しらずも露しぐれ 神崎忠
凧を負ふ樹や露降らし実を降らす 津田清子
凭る柱ありて露けし何を案ず 稲垣きくの 黄 瀬
出て来たる玉の日輪露葎 茨木和生 野迫川

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by 575fudemakase | 2014-09-30 00:17 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

霧3

霧3

例句を挙げる。

霧うすくなれば日当る山のあリ 深見けん二
霧うすれ弟子屈町営飛行場 高澤良一 ぱらりとせ
霧おろす氷河を樅の空に見たり 有働亨 汐路
霧かくし切れずー碧湖を置けり 岸風三樓
霧かくす湯殿の神はいかならん 岩崎照子
霧がくる女は眠る蕎麦刈りて 金子兜太
霧がくれ男嶽がくれに女嶽かな 小川ひろ女
霧が来て松虫草の色決まる 町田しげき
霧が襞なす茂吉の歌碑を口なぞる 加藤知世子 花寂び
霧が過ぎ霧の影過ぐ吾亦紅 隈元いさむ
霧くれば手をつなぐ蘆真青なり 堀口星眠 営巣期
霧ぐるみ夜の藁塚迫る終の家 成田千空 地霊
霧けさに翔ちて黒負ふ阿蘇鴉 加倉井秋を 『真名井』
霧こむる四山や湖舟静かなり 西島麥南 金剛纂
霧こめし地下鋪に黄楊の櫛を買ふ 宮武寒々 朱卓
霧こめてなほ笹原に日のひかり 石橋辰之助 山暦
霧こめてにはかにさみし蔵王嶺は木草のかげのいまおぼろなる 丹波真人
霧こめてゐて遥かなる柿の朱顆 鈴木貞雄
霧こめて山に一人の生終る 誓子
霧こめて湖の向ふのなかりけり 嶋田一歩
霧こめて途ゆく先や馬の尻 高井几董
霧こめて道ゆく先や馬の尻 几菫 五車反古
霧ごと剪る吉野の藤のむらさきを 渋谷道
霧ごめにランプの火屋の曇りぐせ 北見さとる
霧ごめに咲くきちかうは地の星 栗生純夫 科野路
霧ごめに月の出ほめく影からまつ 野澤節子 黄 炎
霧ごめの山の駅員そばを売る 椎橋清翠
霧ごめの落鮎といふ腸苦し 山口草堂
霧ごめの雑木の骨を持ち掃る 佐藤鬼房 鳥食
霧さがる谷間に粟を摘み暮らす 臼田亞浪 定本亜浪句集
霧さぶくこずゑに禽はあらざりき 飯田蛇笏
霧さぶく屋上園の花に狆 飯田蛇笏 霊芝
霧さみしキネマがへりの足そろへ 林原耒井 蜩
霧さむき函館港に貨車動く 田川飛旅子 花文字
霧さむき岨に讃美歌澱みなし 下村ひろし 西陲集
霧さむき月山なめこ食ひ惜しむ 加藤楸邨
霧さむく列車一途に北へ北へ 岸風三楼 往来
霧さむく娼婦肩掛もて呼べる 岸風三楼 往来
霧さむく娼婦肩掛を長くせり 岸風三樓
霧さむく思ふことにも疲れけり 鈴木しづ子
霧さめのはれつゝ日さす薄かな 松瀬青々
霧さやぐ燭幾つ野の聖母像 小池文子 巴里蕭条
霧さらにうすれ天然色となる 石井とし夫
霧しぐれシユナイダー碑は火山岩 西本一都 景色
霧しぐれ冨士をみぬ日ぞおもしろき 芭蕉
霧しぐれ富士を見ぬ日ぞおもしろき 松尾芭蕉
霧しづくこぼして木曽の五木かな 木内彰志
霧しづくして林檎ことごとく紅 柴田白葉女 花寂び 以後
霧しづく柱をつたふキャンプかな 篠原鳳作
霧しづく胡桃は樹齢問はれずに 殿村菟絲子 『晩緑』
霧しづしづ迫る障子のきりぎりす 林原耒井 蜩
霧しまきそむ樹の間の禽の落ちつかず 林原耒井 蜩
霧じめりせし紫や藤袴 射場 秀太郎
霧じめりせる命綱籠渡し 松浦真青
霧すがりゆく塔上に無人部屋 和田悟朗
霧すぎて笹原わたる風の音 石橋辰之助 山暦
霧すさぶ月の簗瀬となりにけり 西島麦南 人音
霧たつや尾上の杉に翌なろう 加舎白雄
霧だちて金色しづむ樺の蝶 飯田蛇笏 椿花集
霧つつむ窓繃帯の束泰し 成田千空 地霊
霧つゝむすべてすゝけし操車場 右城暮石 上下
霧とざす火の山の奥出湯ありと 上村占魚 球磨
霧となり温泉けむり匂ふ十三夜 穐好樹菟男
霧とぶよ立枯の立つこのあたり 村越化石 山國抄
霧とべる方へ芒の靡くなり 大橋敦子 手 鞠
霧と噴煙若者の視野狭む 津田清子 礼 拝
霧と旭と戦ふ松の林かな 野村喜舟 小石川
霧ながら夜空がまろし楡落葉 堀口星眠 営巣期
霧ながら大きな町へ出でにけり 移竹
霧ながら渦巻くダムの夜をひかる 桂樟蹊子
霧ながら湖にうつりて烏瓜 佐野良太
霧ながら緬羊の細面草食みゆく 杉山岳陽 晩婚
霧ながら青空の影園にさす 川島彷徨子 榛の木
霧ながれ霧あたりゆく黄菅かな 石田郷子
霧ながれ青首鴨の流れ過ぐ 渡邊千枝子
霧なめて白猫いよよ白くなる 能村登四郎
霧にいる狐の青さ散華とや 金子兜太 詩經國風
霧にうしろすがたがはたらきにゆく 栗林一石路
霧にこゑごゑ学校の形して 山口誓子 青銅
霧にひらいてもののはじめの穴ひとつ 加藤秋邨 吹越
霧にふれ萱の白緑暁けきりぬ 下村槐太 天涯
霧にほふおもき戸障子のうちにねむる 辰之助
霧にまぎれ重工業の突き出す胃 穴井太
霧にゐて霧の深さを顧みし 阿部みどり女
霧に佇つ人あり赤き星座あり 永島靖子
霧に住みて潮入り池も構へたり 牧唄 久米三汀(正雄)
霧に住んで逝く秋のばら剪らむとす 林原耒井 蜩
霧に別れ人のかたちをなくしゆけり 近藤馬込子
霧に吐く言葉が腋にまつはりぬ 古舘曹人 能登の蛙
霧に向けしヘツドライトの楔形 田川飛旅子 花文字
霧に吹かれ霧のあかるさ飛騨乙女 桜井博道 海上
霧に呼びかく殺生河原の拡声器 高澤良一 随笑
霧に咲くさびしさ知りて水芭蕉 有働 亨
霧に咲く阿蘇谷に餅つきあふ灯 加藤知世子 花寂び
霧に噎せ猫背でおはす咳の神 櫛原希伊子
霧に寝て夢に漂ふ後の月 堀口星眠 火山灰の道
霧に影なげてもみづる桜かな 臼田亞浪 定本亜浪句集
霧に手を振る別れいつまた逢へる 稲垣きくの 黄 瀬
霧に抱く古墳を胸に女らは 稲垣きくの 牡 丹
霧に擦るマッチのばうと硫黄の香 高澤良一 随笑
霧に日が槐の花の捧げ咲き 加藤楸邨
霧に明けて軽うも軌る湯宿の戸 久米正雄 返り花
霧に暮れ霧に夜明けて畑仕事 前岡茂子
霧に汲み水甕驢馬にふりわくる 小池文子 巴里蕭条
霧に沈む笠岳岩魚焼かれゐて 及川貞 夕焼
霧に消え霧に光りて秋蛍 山田流
霧に湯気逃がす高窓共同湯 高澤良一 随笑
霧に濡れ分教場の子等あそぶ 木村蕪城 一位
霧に濡れ実も九つの九輪草 大島民郎
霧に濡れ岬の漁夫は鳥となる 大井雅人 龍岡村
霧に濡れ踊子も夜の家路なる 石原舟月
霧に灯し霧のしめりの材を鋸けり 中島斌男
霧に点す登山電車や下校どき 青木泰夫
霧に点す駅旅人は夜着くべし 大串章 朝の舟
霧に現れ霧にうするるちんぐるま 落合伊津夫
霧に白鳥白鳥に霧というべきか 金子兜太 旅次抄録
霧に窓とざすペツトの猫呼びて 及川貞 夕焼
霧に立つ人に背景何もなし 星野立子
霧に身を伏せて漕ぎくる舟のあり 京極杞陽
霧に追はれ追はれ波打つあばらぼね 稲垣きくの 牡 丹
霧に透き依然高城姫路城 山口誓子 紅日
霧に透く水晶蘭を山より得 栗生純夫 科野路
霧に逢ひ人に逢はざること愉し 菖蒲あや あ や
霧に遊ぶ雷鳥もまた一家族 橋本榮治 逆旅
霧に過ぐ香料工場灯ともりぬ 杉本寛
霧に鎮む禅林ただに只管打坐 河野南畦 湖の森
霧ぬれし肩にタオルを投げかけよ 仙田洋子 橋のあなたに
霧ぬれの飛騨山坂の蕎麦の花 鈴鹿野風呂 浜木綿
霧ぬれの髪の強ばるちんぐるま 稲生 正子
霧のあし立つてすすめり最上川 鳥居おさむ
霧のごと別れの刻の待たず来る 稲垣きくの 黄 瀬
霧のごと我に流るる月日あり 本岡 歌子
霧のつぶ百合にぶつかりゐたりけり 小川軽舟
霧のなか幹のふとさのしづかなり 長谷川素逝 暦日
霧のなか消えゆく魂を呼び呼ぶ声 赤城さかえ句集
霧のながれに水脈縋る拓地農 松澤昭 神立
霧のぼる檜山くらみを啼く蛙 臼田亜浪 旅人
霧のぼる闇深々と今年竹 阿部みどり女 『光陰』
霧のクレーン頭痛の朝をふりまわす 八木三日女 赤い地図
霧のダム花提げくれば鈴鳴りぬ 宮武寒々 朱卓
霧の中「ゐるか」と男牛を呼ぶ 星野立子
霧の中「受胎告知」の目を見たり 石原八束(1919-98)
霧の中うす~湖の鏡かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
霧の中おのが身細き吾亦紅 橋本多佳子
霧の中ことばはぐくむ翁草 青柳志解樹
霧の中こゑ澄む鳥のなにならむ 稲垣きくの 黄 瀬
霧の中たちまち霧の外の吾 稲畑汀子 汀子句集
霧の中に何やら見ゆる水車 上島鬼貫
霧の中の陽に音たてて樽作り 桜井博道 海上
霧の中ほの温き日のきりん草 村田脩
霧の中むら消えのして紅葉山 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
霧の中もの言へば影現るる如 行方克巳
霧の中よぎりて見えし尾長かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
霧の中より神神の遊ぶ笛 宮下翠舟
霧の中ガイドお釜がある筈と 高澤良一 素抱
蔵王 お釜
霧の中バスはもたもた蔵王嶺へ 高澤良一 素抱
霧の中声してロープウエイ駅 行方克巳
霧の中夜明けを泳ぐ音すなり 日比谷廣子
霧の中峰頭空にきそひつつ 臼田亞浪 定本亜浪句集
霧の中微風ながるるさ音かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
霧の中杖で漕ぎ来る十夜婆 東條素香
霧の中柚子は疎らにともりたる 中田剛 珠樹以後
霧の中海抜二千に来て返す 高浜年尾
霧の中淫らなるものゝ啼きつるゝ 久米正雄 返り花
霧の中濃きもうすきも朴若葉 佐野良太 樫
霧の中相対ふ巌の黙深し 相馬遷子 山国
霧の中籠の囮の動き見ゆ 岡本湯雨
霧の中翡翆飛んで失せにけり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
霧の中茶は俯きて咲く花と 中田剛 珠樹以後
霧の中霧がかけりて行く迅さ 行方克巳
霧の中霧に日当る一所 高澤良一 宿好
霧の中霧のかたまりとびにけり 青葉三角草
霧の中馬は葛の葉嗅ぎわけて 佐野良太 樫
霧の中黝さが勁さ日田の牛 延平いくと
霧の修羅墓るゐるゐと顔を出す 加藤知世子 花 季
霧の國来て吠ゆるもの聞く夜毎 内田百間
霧の声眉にかぶさる山もなし 臼田亜浪
霧の夜のさよなら彼に闘志もどれ 赤城さかえ句集
霧の夜のひとつ灯さげて牧舎出づ 石橋辰之助 山暦
霧の夜のわが身に近く馬歩む 金子兜太 少年/生長
霧の夜のランプ楽しくねまるなり 内藤吐天
霧の夜の林檎を病母に購ひにけり 伊東宏晃
霧の夜の水葬礼や舷かしぐ 白泉
霧の夜の汽笛は昔めきにけり 岸風三楼 往来
霧の夜の泊り水晶の谷とほし 石橋辰之助 山暦
霧の夜の湯町の上湯下湯かな 高澤良一 素抱
霧の夜の湯舟に神と二人きり 今瀬剛一
霧の夜の火を吹きそだて杉の宿 鷲谷七菜子 花寂び
霧の夜の白樺泛ぶ星まつり 太田蓁樹
霧の夜の茶碗におつる小虫かな 『定本石橋秀野句文集』
霧の夜の荒濤こふる蘇鉄の実 福田甲子雄
霧の夜の魑魅に水車の足払ひ 文挟夫佐恵 雨 月
霧の夜は女すだまに魅入られぬ 稲垣きくの 黄 瀬
霧の夜は山が隣家のごとくあり 飯田龍太
霧の夜は楡のこずゑの夜鳴鳥 稲垣きくの 黄 瀬
霧の夜は誰もだまつて帰るなり 菖蒲あや 路 地
霧の夜は門に山嶽ねしづみて 飯田蛇笏 椿花集
霧の夜へ一顔あげて血喀くなり 寺田京子
霧の夜やひかる生うに黙し食ふ 小池文子 巴里蕭条
霧の夜や皺生れ来る温め乳 都筑智子
霧の夜を古代へ誘ふ自在鈎 小泉八重子
霧の夜を身細うあれば寄る吾子よ 林原耒井 蜩
霧の夜遠くまで雑誌買ひに二人で出る 人間を彫る 大橋裸木
霧の大奈落へそんな無謀やめよ 右城暮石 上下
霧の奥からわつしよわつしよと鉈仏 原田喬
霧の奥ひかり帯びつつ電車こず 川島彷徨子 榛の木
霧の奥より母の声谿の声 裕
霧の尾を攀づ指冷ゆれつがざくら 小松崎爽青
霧の山より薪水の恵み受く 高野素十
霧の山中単飛の鳥となりゆくも 赤尾兜子
霧の山売れて荒縄張られけり 小泉八重子
霧の山小屋夕日いくたびさして暮れず 岡田日郎
霧の山発破をかけて人死にし 萩原麦草 麦嵐
霧の岩湯を胸にそそぎて何温む 山口草堂
霧の嶺々奥処に据ゑて花蜜柑 福本義人
霧の底なる湯抱の朝の温泉に 井上哲王
霧の底鴬声位置を移さざり 林原耒井 蜩
霧の御嶽にこらへ来し尿走らすよ 原裕 青垣
霧の掌に拈華微笑のとりかぶと 加藤楸邨
霧の操車場機関車の灯に箸使へり 中島斌男
霧の断崖蝶舞ふゆとり見つつ登る 加藤知世子 花寂び
霧の旅神々はみな素足にて 石崎多寿子
霧の日輪ピーナツの塩くちびるに 桜井博道 海上
霧の曙そだちてしづか馬のものは 加藤秋邨 まぼろしの鹿
霧の月湖まんなかに夜々ありぬ 増田龍雨 龍雨句集
霧の朝渡り居る鳥何やらん 高濱年尾 年尾句集
霧の杉しろがねの息旅に見ゆ 小檜山繁子
霧の村石を投(ほ)うらば父母散らん 金子兜太 蜿蜿
霧の栃五箇山乙女脚早に 小澤満佐子
霧の栗鼠胡桃噛む音をこぼすこと 小林康治 玄霜
霧の樅友をしずかにつらぬいて 北村美都子
霧の毒に二日灸を据ゑにけり 西山泊雲 泊雲句集
霧の浅間越すかりがねか声落す 小林康治 玄霜
霧の海に朝餉の塵を掃く名残り 宮武寒々 朱卓
霧の海の底なる月はくらげ哉 野々口立圃 (1595-1669)
霧の海ヘッドライトの射抜きたる 稲畑廣太郎
霧の海吾れも一樹として濡るる 今瀬剛一
霧の海大博多港の灯を蔵す 竹下しづの女
霧の湖に日輪拝む海士並ぶ 鈴鹿野風呂 浜木綿
霧の湾煙草を断ちて火を持たず 矢島房利
霧の火日茫々と影のなきおのれ 山口草堂
霧の灯に所持せるものを食べをる人 草田男
霧の灯の街底にして兵酔へり 中島斌雄
霧の田に母呼ぶや雁こたへける 佐藤 国夫
霧の田を女耕し八ケ岳の裾 西村公鳳
霧の町の右と左や別れ去る 青峰集 島田青峰
霧の石俥灯借りて徘徊す 宮武寒々 朱卓
霧の秋僧房めきし温泉に浸る(法師温泉二句) 内藤吐天
霧の空港ボスも黄色い傘さすよ 八木三日女 赤い地図
霧の粒まじまじ走る廂かな 八木林之介 青霞集
霧の置きゆく白髪太郎といふ虫あり 加藤楸邨
霧の航おのが霧笛をふりかぶる 阪上史琅
霧の色まとひし夜のマフラ解く 文挟夫佐恵 黄 瀬
霧の葛一葉二葉とひるがへる 佐藤鬼房 朝の日
霧の裾草の葉末を流れゆく 梨葉句集 上川井梨葉
霧の谷何も見えざる大いさよ 高野素十
霧の谿越えて人麻呂海に出づ 佐川広治
霧の足伸び縮みして岩伝ふ 岡田日郎
霧の路次莨すてしが娼婦なり 岸風三楼 往来
霧の車窓を広島走せ過ぐ女声を挙げ 金子兜太 少年/生長
霧の通夜農夫ランプをいくつも借りて 細谷源二 砂金帯
霧の道わづかにくだりつづけたり 照敏
霧の道現れ来るを行くばかり たかし
霧の都市葱を束ねし藁をとく 森田智子
霧の香にしんじつあかき曼珠沙華 飯田蛇笏
霧の香に桔梗すがるる山路かな 飯田蛇笏 山廬集
霧の香の熊野詣となりにけり 西上晴久
霧の香やしとしとと驢馬ゆきかよふ 小池文子 巴里蕭条
霧の香や旅にとぶらふ山毛欅の主 宮武寒々 朱卓
霧の香や松明捨る山かづら 加舎白雄
霧の駅冷凍の魚ひきずられ 中拓夫 愛鷹
霧の鳩電車の来るを感じ発つ 田川飛旅子 花文字
霧はげし絹笠草を敷き憩ふ 本田一杉
霧はげし通草したたか得てかへる 木村蕪城 一位
霧ははれゆくもう見えるものしか見えず 加藤楸邨
霧はひて林没(おぼ)るる花野かな 風生
霧はゆたかにはやし未明の杉林 柴田白葉女 花寂び 以後
霧はるる奥また霽るる山の青 佐野良太 樫
霧はるる紫苑はみづにさきだちて 宮武寒々 朱卓
霧はれてくる明るさのありそめし 石井とし夫
霧はれて地となり天となりにけり 青葉三角草
霧はれて浴女石より白かりし 佐野良太 樫
霧はれて湖におどろく寒さかな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
霧はれぬ畜舎の裸燈葱の上 桜井博道 海上
霧はれるまで注連縄の藁を打つ 福田甲子雄
霧は乳なし海山のあはひかな 金箱戈止夫
霧は大愛処々で断たれし一水輪 香西照雄 対話
霧は家族の匂ひ峠の木下闇 広嶋爽生
霧ばしらたてて御嶽の秋黴雨 遠藤正年
霧ひかる松虫草の群落に 相馬遷子 山国
霧ひくゝ夜々水晶の谷とざす 石橋辰之助 山暦
霧ひらく山径にして蔓もどき 臼田亜浪
霧ひらく赤襟巻のわが行けば 西東三鬼
霧ふいて数の増えたる螢かな 阿部みどり女
霧ふかき中夜あけの木木の雫なり シヤツと雑草 栗林一石路
霧ふかき朝の残置灯森のふち 田川飛旅子
霧ふかき水をながるる朴落葉 石原舟月 山鵲
霧ふかき積石(ケルン)に触るゝさびしさよ 石橋辰之助 山暦
霧ふかく不二は見えねど山開き 谷迪子
霧ふかく会ふ雷鳥の雛連れて 渡辺 立男
霧ふかく曲燃えいづる夜の窓 飯田龍太
霧ふかし刈干切唄恋しき夜 古賀まり子 緑の野以後
霧ふかし劇のごとくに斧ひとつ 岡田日郎
霧ふかし山の湯に親も子も裸 栗林一石路
霧ふかし野の十字路の四つのはて 大島民郎
霧ふかぶかとふるさとの手紙来る日か 林原耒井 蜩
霧ふかむ木々の軋みを血の潮に 岩間愛子
霧ふた夜三夜マルメロの病みて墜つ 千代田葛彦 旅人木
霧ふれば霧に影して風露咲く 石原八束 『風霜記』
霧ふ夜の光りて眠る秋螢 石原八束 空の渚
霧ほつれゆく雷鳥の子恋かな 橋本榮治
霧また霧一茶の土蔵とくとざせ 栗生純夫 科野路
霧また霧土蔵朽ちさせてはならず 栗生純夫 科野路
霧まみれ婆ちゃん湯の花ひさぎをり 高澤良一 随笑
霧まみれ無数無名の白い墓 対馬康子 愛国
霧も這ふ処刑者門に河の波 桂樟蹊子
霧ゆえの愛の言葉としたまふな 小寺正三
霧よせて駒草紅を失したり 河合薫泉
霧よつつめ包めひとりはさびしきぞ 臼田亜浪 旅人
霧よりも上で朝餉の菜を洗ふ 岡田史乃
霧よりも湯けむり白し十三夜 西村公鳳
霧よ不況よ起重機の鈎地を掴む 津田清子 礼 拝
霧よ包め包めひとりは淋しきぞ 臼田亞浪 定本亜浪句集
霧らふゆゑ緬羊とゐて母恋ふも 杉山岳陽 晩婚
霧らふ山下り来てホットミルクかな 高澤良一 随笑
霧をくり出す定形を否定して 津田清子
霧をゆく父子同紺の登山帽 能村登四郎
霧を噴く鶴の鋳物や青嵐 寺田寅彦

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by 575fudemakase | 2014-09-30 00:03 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

霧2

霧2

例句を挙げる。


晴れて来てまだ何となく霧の中 三村純也
晴天の霧いつ閉ぢし蕗を刈る 金尾梅の門 古志の歌
暁の霧あかるく流るる山原に少女ら冷たきからだ抱きあふ 窪田章一郎
暁の霧しづかなり中禅寺 子規句集 虚子・碧梧桐選
暮るゝゆゑ霧の深くも見ゆるかな 武藤和子
暮れてつき暁けぬにたちぬ霧の宿 五十嵐播水 埠頭
曉の霧に高飛ぶ蜻蛉こぼれ来る 高田蝶衣
曙や霧にうづまく鐘の聲 寺田寅彦
曼珠沙華霧に潰えてしまひけり 久保田万太郎 草の丈
曼珠沙華霧より疾く濡れにけり 萩原麦草 麦嵐
月を待つ悉く灯に霧にじみ 及川貞 夕焼
月下にて一〇一号ハイウェイ霧沈む 有働亨 汐路
月代に霧ながれをり菊畠 石原舟月
月前のメロンを截れば霧のぼる 太田鴻村 穂国
月夜茸育つ霧かも夜はふかき 小林黒石礁
月孤高落葉松に霧這ひのぼり 伊東宏晃
月山といへ一切を霧の中 岸風三楼
月山の霧に影置くみつがしは 橋本榮治 麦生
月山は霧籠め朝の青田の香 高澤良一 素抱
月残る霧に釈迦塔多宝塔 西村公鳳
月消していつか海霧とぶ島泊り 小原菁々子
月稚し狭霧早くも田に下りて 及川貞 榧の實
月見草別れてのちの山霧は 臼田亞浪 定本亜浪句集
月見草霧の中より波つぶて 今瀬剛一
月読の声霧の中いろいろの声 和田悟朗
月高し遠の稲城はうす霧らひ 杉田久女
有明や浅間の霧が膳をはふ 小林一茶 (1763-1827)
朝々のコーヒーぬるし霧の宿 寸七翁句集 宮部寸七翁、吉岡禪寺洞選
朝おそき日を霧はれの湖の上 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
朝な朝な霧吐き天竜禊ぐなり 岡部義男
朝の霧より牡丹の新ら蕾 原裕 青垣
朝井汲む妻も木槿も霧の中 西島麦南
朝寝する障子の間や霧の山 立花北枝
朝戸出や降りゐる霧に傘は 野村喜舟 小石川
朝日さす山田は引板も霧じめり 高橋淡路女 梶の葉
朝暗し霧の所為とは思はずに 佐上井智津子
朝湯して湯花は霧の淡さなる 高澤良一 素抱
朝立や主従と見えて霧の中 子規句集 虚子・碧梧桐選
朝霧や夕霧や干潟湖とはなんぬ 小林康治 玄霜
朝顔や静かに霧の当る音 鈴木花蓑句集
朝餉の間老鴬霧に沈みたる 林原耒井 蜩
朝餉前霧を満喫して戻る 百合山羽公 寒雁
木々に降る霧の音聞き球を追ふ 高濱年尾 年尾句集
木々に霧流れ草木に露のあり 高木晴子 花 季
木々の芽に瀧の霧とぶ神路山 下村ひろし 西陲集
木の芽山霧右往して左往して 行方克巳
木ノ芽峠雨霧赤腹湧出す 岡井省二
木曽馬の足の短き霧が抱く 古田海
木槲のべに葉できたり霧の秋 銀漢 吉岡禅寺洞
木走りや霧の胸突坂行けば 石塚友二
木霊ゐず霧か露かの山の鯉 岡井省二
朴や白恋の山霧しげきかな(湯殿山) 河野南畦 『広場』
朴若葉影絵のごとく霧の小屋 河野南畦 湖の森
机より霧の流れる小学校 高澤晶子 純愛
杉の秀に山霧の湧く送り梅雨 島田芳恵
杉の間に湖ぞ暁けくる霧ながれ 岸風三楼 往来
杉ばかり霧の世ばかり陥没湖 中島斌雄
杉より杉生れ夕霧のなかの家族 桜井博道 海上
杉千里痛めし指に霧の粒 原裕 青垣
杣が妻にしづくしやまぬ狭霧かな 前田普羅 飛騨紬
杣の戸をしめきる霧の去来かな 飯田蛇笏 山廬集
杣の言ひし怖ろしき霧となりにけり 雉子郎句集 石島雉子郎
杣の負ふものの雫や霧時雨 忍月
来る後に暮るゝ霧あり野路の秋 池内たけし
東京の日日忘れよと夜々の霧 稲垣きくの 黄 瀬
杳かなる霧や鳩笛唇にあつ 横山白虹
杵臼や霧の裏戸をひらく風 桂樟蹊子
松なれや霧えいさらえいと引くほどに 松尾芭蕉
松葉牡丹に流るる霧を見たりけり 阿部みどり女
松虫草めそめそ霧に取り囲まれ 高澤良一 素抱
松虫草霧らひながらに花明り 石塚友二 光塵
松虫草霧来る方を知れるなり 高澤良一 燕音
枯すすき風より早き霧襲ふ 足立原斗南郎
枯山毛欅をなぶりたわめて霧荒し 岸風三樓
枳殻踏む臭さ山霧さつと来し 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
柘植の庄霧に現る豊の秋 八木林之介 青霞集
柘植谷の霧すさびをる白木槿 細川加賀 生身魂
柴舟や霧に明けゆく宇治の里 竹冷句鈔 角田竹冷
栂風も添ふ山鳴りや霧の中 臼田亞浪 定本亜浪句集
栗の花斜面の村は霧降りて 有働亨 汐路
栗飯や夜は山から霧が来る 宇山薫風
桑畑に霧ふる二十三夜月 田口土之子
桑車押しゆく佝僂に霧迅し 佐野青陽人 天の川
桔梗や雨霧嶺々をかくしたる 岸風三楼 往来
梨をむく音のさびしく霧降れり 草城
梨を噛む霧に見えざる湖を前 福田蓼汀 山火
棉の実の花のごとくに霧ふくみ 中村笙川
森林浴山霧に耳洗はれぬ 市村究一郎
棹さすは女よ入江朝の霧 高濱年尾 年尾句集
棺にひそかに山霧を詰め運ぶ数人 西川徹郎 家族の肖像
椅子に坐すものなし霧の渡し船 右城暮石 上下
椋鳥の声黍原朝の霧まとふ 金尾梅の門 古志の歌
植樹祭霧もみどりに霧ケ峰 西本一都 景色
楡に濃く樺に淡く霧流れ 田中せ紀
楼門の楼上障子霧に暁け 皆吉爽雨 泉声
榊咲き霧ふる湖となりにけり 宮岡計次
榧の実の青さ掌に霧流れ来る 阿部みどり女
槻の根や霧にうたれて秋の蝶 西島麦南 人音
樒さす手からも霧は立にけり 一茶 ■文化元年甲子(四十二歳)
標高二〇〇〇霧の窓べに諍えり 中島斌雄
樵夫二人だまつて霧を現はるゝ 子規句集 虚子・碧梧桐選
樹海より湧く霧青し月夜茸 木下ふみ子
橋上に鐘ききすます霧の中 石原舟月
橡の葉を大いなるものに狭霧かな 東洋城千句
橡咲くや霧わたる音の原始林 渡邊水巴
檜の香捲く霧が暮れ端の日を見する 林原耒井 蜩
櫓拍子を「えいや」と踏めば霧分かれ 筑紫磐井 婆伽梵
櫨の木の霧にちょっぴりもみぢして 高澤良一 鳩信
武蔵野の霧のにほひにつつまるる 西村純吉
歩きゐてすなはち娼婦霧の街 岸風三楼 往来
歩みゆく霧の中よりチユーリツプ 岸本尚毅 舜
死のちかき母おはすかな旦暮に霧 下村槐太 天涯
残る灯の霧の灯となる山ホテル 岩垣子鹿
残存湖霧呼べば神いまも棲み(男鹿半島) 河野南畦 『湖の森』
残念よ無念よ湯釜は霧の中 高澤良一 随笑
母のもぐ白繭黄繭霧の中 石原八束
母娘いま霧の華厳の白き界 野澤節子 遠い橋
水は死へ摩周の影の霧がかる 臼田亜浪 旅人
水ナ上の霧の中より簗の水 保岡あい子
水掬ぶ霧の中なる灯を水に 及川貞 夕焼
水槽に魚の目があり霧の街 中拓夫 愛鷹
水爆止めよ被爆の船を都心煙霧の端に置く 橋本夢道 無類の妻
水筒のろろんと鳴りて霧の中 福田蓼汀 山火
水芭蕉遠きものより霧に消ゆ 藤崎久を
水菜さげ霧の峠のゆきだおれ 吉田さかぇ
水音のあるばかりなる霧地獄 石塚友二 光塵
水鳥や澪冴えざえと霧の中 新井声風
水鳥や霧透けてある月の浪 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
氷下魚釣る夜明けの海霧は月孕み 西東三鬼
氷柱垂る霧のアルプス展望所 小原菁々子
氷河の霧さびしき雨を落しそむ 有働亨 汐路
池底にあをき魚死ぬ霧月夜 篠田悌二郎
汲まむとす天の真井の霧ながら 草堂
汽車の窓から渡された新聞も霧に濡れて シヤツと雑草 栗林一石路
汽車の胴霧抜けくれば滴りぬ 飴山 實
沈黙へ去りし一人を霧ふかき樅の一と木のごとく思ひつ 田井安曇
沖の霧来て黍ばたけつゝむ夜々 久保田万太郎 流寓抄
沖よりの霧匂ひくる鮭料理 桂樟蹊子
河霧や舳に浮きし鳰一つ 島村元句集
油臭き男櫛あり霧の宿 殿村莵絲子 雨 月
沼の景霧に浮びてより暮るる 岡田日郎
沼の霧明けゆく樹々に流れ入る 石橋辰之助 山暦
沼容チそれとあらねど霧月夜 石井とし夫
沼明けて野しゃうぶに霧停滞す 高澤良一 素抱
沼消ゆる迅さ霧寄せくる迅さ 石井とし夫
沼舟も盗まるゝとか霧深し 石井とし夫
沼霧に包まれて寝てゐたりしか 石井とし夫
沼霧の立ちのぼるより稲架の雨 木村蕪城 一位
波二段三段海霧の陽は赤し 石原八束 空の渚
波立てて霧来る湖や女郎花 水原秋櫻子
泰山木ひらく港は霧の涯 殿村莵絲子 花 季
津軽よりうす霧曳きて林檎園 飯田蛇笏 椿花集
活字積まれし死なりき楸は霧に 八木三日女 落葉期
流れ藻を越ゆるさざなみ霧ながら 桂樟蹊子
流燈に下りくる霧の見ゆるかな 高野素十
浅草の夜を霧ふるやつぐみ焼 太田鴻村 穂国
浦島草霧をそだてて海の色 河野南畦 『広場』
海に沖あり霧時雨して見えざれど 高柳重信
海のある筈なき霧の戸を開く 北光星
海の霧れきろく蜜柑ぐるまなり 佐野まもる 海郷
海の霧精霊ばつた濡らしたる 宇佐美魚目 天地存問
海の面へ下りゆく霧の翅かな 比叡 野村泊月
海底にあをき魚死ぬ霧月夜 篠田悌二郎
海燕われも旅ゆき霧にあふ 橋本多佳子
海石榴市の霧に点れる木守柿 長谷川史郊
海越や風早の霧弥帆の浪 西望 選集「板東太郎」
海霧うすれきて撫子の吹かれどほし 清崎敏郎
海霧かこち秋烏賊干しの平戸海女 小原菁々子
海霧が来てあらぬ白藤滂沱たり 文挟夫佐恵 雨 月
海霧くれば海霧を払ひて踊りけり(利尻島にて) 石原八束 『風霜記』
海霧ごめに樺太見ゆる墓洗ふ 石田龍子
海霧ときに馬柵より低く流れゐし 稲畑汀子 汀子第二句集
海霧とざす沼波岸に寄するのみ 高濱年尾 年尾句集
海霧に耐へて人住む板屋なりしかな 長谷川かな女 雨 月
海霧のあと山きて坐る大暑かな 永田耕一郎
海霧の中漕ぎ出で鮑密漁す 水見悠々子
海霧の奥犬鳴きいでて月育つ 加藤楸邨
海霧の旅ともづな重く解かれゆく 金箱戈止夫
海霧の縞日漁港路線に貨車あらはる 石原八束 空の渚
海霧の野に放たれ駈くる親子馬 高見岳子
海霧の陸橋抛物線の情事経て 八木三日女 落葉期
海霧ふかきフィヨルドに射す曙光かな 仙田洋子 雲は王冠
海霧低き椴法華村人を見ず 文挟夫佐恵 黄 瀬
海霧充ち来ラヂオの尋ね人はじまり 田中北斗
海霧捲かる製鋼火焔の鼻つぱし 入江勉人
海霧来去り碑が「しらじらと」輝くよ 赤城さかえ
海霧残る牧の沢辺の親仔馬 高濱年尾 年尾句集
海霧沖に退き残る夕明り 高濱年尾
海霧泣いて崖にきしとき視界絶つ 石原八束 空の渚
海霧深き法華村人を見ず 文挟夫佐恵
海霧深し昼を夜につぐ銅鑼の音 道川源治郎
海霧渡るためにいくばくかのコイン 対馬康子 純情
海霧濃し首つつこんでかひば馬 安東次男 裏山
海霧迅し花あかしやの街かくす 岡本昼虹
海霧迫る小学校の万国旗 蓬田紀枝子
海霧退きて佐渡全容を現はせり 曽田ハツ
海霧透きて波の群青よみがへる 仙田洋子 雲は王冠
海霧連れて牧童牛を追ひ行けり 高岡千歌
淋しさに霧がへだてし人を呼ぶ 稲垣きくの 牡 丹
淋しさの霧へにじむや鴫の声 太無
淡き霧無月の槻をおほふらし 水原秋櫻子
深山つつじ朝々霧のおろしけむ 臼田亜浪
深山蝶霧のふところより来たる 佐藤美恵子
深山霧厠にたまる無月かな 栗生純夫 科野路
深山霧声あるものは木に執す 栗生純夫 科野路
深谷をあふるる霧や女郎花 鈴木 元
深霧の日もすがらなり御苑内 比叡 野村泊月
渓々へ霧しづもれり夕日落つ 福田蓼汀 山火
渓とざす霧にたゞよひ朴咲けり 相馬遷子 山国
渓流に出て明るめり霧の天 右城暮石 上下
渡り鳥尾上の霧にふれて迅し 内藤吐天 鳴海抄
渦潮の渦巻きをらむ霧の底 米田双葉子
湖のありとも見えず霧近江 品川鈴子
湖の朝焼けモネの女ら霧に消える 八木三日女
湖の霧に現れ鰻舟 今川 青風
湖の面を波紋細かに霧降りぬ 高濱年尾 年尾句集
湖は霧一本のマッチをすれば 富澤赤黄男
湖を去る霧の重さの帽子にて 小檜山繁子
湖心過ぎしか遊覧船に霧あつまる 横山房子
湖霧に濡れては覚めん竜の玉 飴山實 辛酉小雪
湖霧も山霧も罩むはたごかな 飯田蛇笏 山廬集
湧きしときのかたちのままに山の霧 加倉井秋を 午後の窓
湧く霧に鬼面したたる里神楽 松本幹雄
湯の名残り幾度見るや霧のもと 松尾芭蕉
湯の香濃しや散いそぐ霧のななかまど 及川貞 夕焼
湯ぼてる身花合歓霧らふなかに入る 吉野義子
湯煙か万座の霧か朝の風 磯野充伯
湯畑の霧籠め硫気鼻曲る 高澤良一 随笑
滝と見し霧かゝり岩を人登る 乙字俳句集 大須賀乙字
滝の時間女身の時間霧を生み 森黄耿
滝壺やとはの霧湧き霧降れり 相馬遷子 山國
滝近きけはひの霧に破れ傘 岡田貞峰
滝霧の*あがりて樅のこずゑまで 飯田蛇笏 霊芝
漁船の灯霧の波止の灯鰤荷役 小原菁々子
激しさのあとのやさしさ海霧雫 加倉井秋を
濃淡の霧にしづみぬ羽黒杉 山上樹実雄
瀧霧にほたる火しみてながれけり 飯田蛇笏
瀬の霧にふれて花了ふ二輪草 亀山恒子
火に仕へ火に映え霧の拓地妻 加倉井秋を 『風祝』
火の山の霧に噎びて岩桔梗 伊東宏晃
火の山の霧ふりかぶり登りゆく 上村占魚 球磨
火の色に恥甦る霧の中 中嶋秀子
火を恋ふはひと恋ふことか霧積み来 文挟夫佐恵 雨 月
火口とどろく逢魔が時を霧とざす 山口聖二
火口壁まなかひに失せて霧吹けり 水原秋櫻子
火口壁霧に沈めり洋燈ともす 中島斌男
火蛾を掃き霧を掃くなり立石寺 山本洋子
灯ともせば川霧が来て包みけり 白水郎句集 大場白水郎
灯のもとに霧のたまるや夜泣蕎麦 太田鴻村
灯の下に霧のたまるや夜鷹蕎麦 太田鴻村
灯も暈もかくるゝ霧となりにけリ 小杉余子 余子句選
灯をもたぬ塔へ脚下の木から霧 竹中碧水史
灯を離れた霧がまつ赤な岩面ゆく 竹中宏 饕餮
灯一つ霧にはじけて明るさよ 京極杞陽 くくたち上巻
灯籠にざらざら霧がながれけり 萩原麦草
炊煙より低きうごきは背戸の霧 及川貞 榧の實
炬火(まつ)照らしゆく霧原の水音かな 臼田亜浪 旅人
炭坑(やま)は灯をちりばめてをり霧の上 横山白虹
炭坑の穢のゆふべしづかに霧の中 横山白虹
点滴のこはどこの道霧すすき 松本美紗子
烏賊漁の灯がまた霧の霧天風呂 平田 薫
焚火する山役人や霧の中 雉子郎句集 石島雉子郎
煙草の火チカリと霧の夜の女 成瀬正とし 星月夜
煙霧の汀腰紐のような手紙書く 八木三日女 落葉期
煙霧濃き聖樹担がれビルに入る 殿村莵絲子 牡 丹
煤ぼけた時計のたしかさ拓地の霧 桜井博道 海上
煤煙の尼崎市を霧つゝむ 右城暮石 声と声
熊の胆の少し売らるる霧の小屋 北見さとる
熟れ稲の香のそこはかと霧は濃き 臼田亞浪 定本亜浪句集
熱燗や草叢に霧しづむまま 中田剛 珠樹以後
燈のもとに霧のたまるや夜泣蕎麦 太田鴻村 穂国
燈台がぽつんと海霧の帯のさき 高澤良一 随笑
燈台の鉄階を霧濡らし初む 高澤良一 寒暑
燈籠にざら~霧がながれけり 麦草
燈籠に夜更けて霧の逼るなり 芦田秋窓
燈籠の点れば霧の匂ひもつ 林原耒井 蜩
燦爛たる霧水の原に麺麭を食ふ 山口誓子
爆音去れ霧の向日葵輝くとき 赤城さかえ句集
父が夢の煉金薔薇霧暗し 内藤吐天 鳴海抄
父の雁母の雁啼く霧濃き夜 佐藤国夫
牛の貌はげしく霧の流れけり 大串章
牛乳屋ことと音しぬ霧の門 田村了咲
牛乳罐白樺におき霧に消ゆ 小池文子 巴里蕭条
牡丹焚きしましろき灰を霧濡らす 上野さち子
牧牛にながめられたる狭霧かな 芝不器男
牧牛の帰路なり嶺を海霧下る 長谷川かな女 雨 月
牽牛花浅間の霧の晴れず萎ゆ 深谷雄大
犇と活けて花野の花や心霧 松根東洋城
犬がゐて霧の別れを見てをりぬ 橋本美智代
狐の剃刀霧へ落として来りけり 櫛原希伊子
独立国なり海霧の貨物船 吉原文音
猪垣の霧のあたりに浮かびけり 八木林之介 青霞集
猿の声霧の香寒き泊りかな 臼田亜浪 旅人
獣肉の腑なきを吊るに霧籠る 山口誓子 七曜
琵琶の帆に煙霧も末の四月かな 飯田蛇笏 山廬集
瑠璃鳴くや樹海をはしる霧迅き 吉澤 卯一
環山の霧ひしひしと薄紅葉 鈴木しげを
甘藍の珠くもるなり霧のあと 藤原たかを
生き方も死に方もまた霧の中 東 智恵子
生まれくる蒼天咋夜へはせゆく霧 赤城さかえ
田の水の吃々と落つ霧の中 小芝潮子
由布眠る雨霧とんでゐるばかり 高濱年尾 年尾句集
甲賀びと伊賀びと霧の墓参り 中山純子 沙 羅以後
男郎花霧うすければかくれ去らぬ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
町中や別れて霧の深くなる 太田鴻村 穂国
留守の戸の外や霧おく物ばかり 炭 太祇 太祇句選
畦豆に信濃の霧の凝りにけり 草間時彦
異邦人めきてたたずむ霧の波止 永野由美子
畳這ふ深山の霧に地図案ず 鈴鹿野風呂 浜木綿
病みたへて芙蓉の霧の濃きあさも 中尾白雨 中尾白雨句集
病む色ぞ霧が看とりの濃りんどう 秋元不死男
病院の薬臭霧に層をなす 三好潤子
登る息胸にあてつつ霧暑し 桜井博道 海上
登る者に天轟々と黒霧しまく 加藤知世子 花寂び
登山バス霧がかかればゆるやかに 松本たかし
白埴の瓶こそよかれ霧ながら朝はつめたき水くみにけり 長塚節
白塊の山霧(ガス)が押し寄す山母子 高澤良一 随笑
白夜呆け醒め空港の霧に佇つ 小原菁々子
白川村夕霧すでに湖底めく 能村登四郎(1911-2002)
白描の雪渓白濁の霧の中 岡田日郎
白根のや焼石原の霧寒し 上村占魚 球磨
白樺に月照りつゝも馬柵の霧 水原秋櫻子
白樺の霧しづくして岳晴れぬ 水原秋桜子
白樺の霧しづくせり調教馬 ほんだゆき
白樺の霧にひゞける華厳かな 川端茅舎
白樺の高きが囲む霧の月 水原秋櫻子
白樺は白つらぬけり霧の中 西川五郎
白樺を幽かに霧のゆく音か 秋櫻子
白樺を浮べ火山の霧迅し 堀口星眠 火山灰の道
白樺山夜に入るごとく霧をゆく 松村蒼石 雪

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by 575fudemakase | 2014-09-30 00:02 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

霧1

霧1

例句を挙げる。

あかつきのにはかの霧や花畠 五十嵐播水 播水句集
あかつきの霧のながるるバナナ市 千代田葛彦 旅人木
あかつきの高千穂さまは腰に霧 小原菁々子
あけくれに霧降る早稲を刈りいそぐ 山口草堂
あけそめて高原の霧今やなし 高濱年尾 年尾句集
あさあさを芙蓉の霧に咳き入りぬ 中尾白雨 中尾白雨句集
あさ霧や二人起たる台所 高井几董
あしびきの山の霧降る湖施餓鬼 加倉井秋を
あら小田に霧たつ夜あり初蛙 几董
いかんともし難い霧を吸って吐く 池田澄子
い寝るべき頬杖とかむ霧のおと 稲垣きくの 牡 丹
うかゞへば霧のキヤムプに人あらず 軽部烏帽子 [しどみ]の花
うしろより霧を噴きゐる登山小屋 深見けん二
うすうすと松虫草に霧流れ 堀江多真樹
うす霧に日当る土の木の実かな 飯田蛇笏 霊芝
うす霧に苑の朝凪ぎ年惜しむ 飯田蛇笏 雪峡
うつぼぐさ川霧さりしあかるさに 川島彷徨子 榛の木
えぞにうの花の群落海霧流れ 鮫島交魚子
お神楽に四方の雨霧たもとほり 太田鴻村 穂国
かたき地が霧で滑るよ一茶の地 中村草田男
かたくりの咲きひろごるに霧あはし 新井英子
かたまりて通る霧あり霧の中 高野素十(1893-1976)
かなかなや霧に蝕まれし町庇 太田鴻村 穂国
からからと鳴子鳴るなり霧の中 吉野左衛門
からまつの落葉うながす霧の音 吉澤 卯一
からまつの落葉よ霧のごと降るは 稲垣きくの 黄 瀬
からまつの霧がくもらす握り飯 稲垣きくの 牡 丹
がまずみの実の火の色に渦なす霧 小松崎爽青
きつつきや瑠璃沼霧の底に醒む 千代田葛彦
きりぎしの囮鵜鳴かず海霧の中 町田しげき
きり~す鳴いて霧の面上りけり 金尾梅の門 古志の歌
きんぽうげ川波霧を押しひらく 飯田龍太
ぎいとただ鳴いて雷鳥霧を漕ぐ 上甲平谷
ぎぼし咲き海霧がむしばむ一墓標 金尾梅の門
くさび打つ音の高さよ霧の中 正岡子規
けさの霧蚊帳の臥床を濡るゝまで 中尾白雨 中尾白雨句集
けさはほばしらが見えないほどに隣りの屋根から霧がふかい 橋本夢道 無禮なる妻抄
けたゝまし夜蝉が霧に濡れ来たり 殿村莵絲子 花 季
けもの居る気配の霧に月夜茸 沼澤 石次
げじげじや霧にゆらぎてランプの灯 志摩芳次郎
ここは信濃唇もて霧の灯を数ふ 加倉井秋を 午後の窓
ことごとく牛となる岩霧晴れて 橋本榮治 麦生
この箱にこの夜の霧を入れたはず 櫂未知子 蒙古斑
こほろぎや霧の渚に寝入らむか 小池文子 巴里蕭条
さかやきをもむ手に深し朝の霧 沾葉 選集「板東太郎」
さきの世の霧くる螢袋かな 久保田博
ささなきも五里夢中なる霧ならめ 安東次男 裏山
さびた咲き霧の渦まく熊おとし 澤田 緑生
さやうならさやうなら霧に隔てられ 野村泊月
さるをがせ女は霧に飛ぶごとし 古舘曹人 砂の音
さるをがせ山もこゝらは霧荒く 横山圭洞
さるをがせ深山の霧の捲き来たり 矢島無月
さるをがせ雫せるのみ霧雫 福田蓼汀
ざうざうと海霧鳴る菜種刈りゐたり 宮岡計次
しぐるるや河霧の里とつくにに 小池文子
ししうどの花を霧今閉ざすところ 高澤良一 随笑
ししうどの花横なぐり霧暗転 高澤良一 随笑
しはぶきの霧にひびかひ杣居たる 木村蕪城 一位
すさぶ霧天に白銀の日を駐む 相馬遷子 山國
せんぶりの花を摘みたる旅の霧 佐野まもる
たしかに四個霧夜武器売る会議の灯 五十嵐研三
たちまちに君の姿を霧とざし或る楽章をわれは思ひき 近藤芳美
たゞ霧の深きに沼はありとのみ 石井とし夫
だしぬけに赤啄木鳥わらふ霧の中 堀口星眠 営巣期
だまなして霧の走れりゼンテイカ 高澤良一 燕音
ちぎれつゝ霧の流るゝなゝかまど 大塚千々二
ちんぐるまざわめき霧の生まるるか 伊藤いと子
ちんぐるま霧の行方になびきをり 島 汀子
つばくろの飛び迷ひをり霧の中 高浜虚子
つゆ艸や霧の中なる寺の屋根 三好達治 路上百句
とある松とは唐崎の霧しづく 宇佐美魚目 天地存問
ときじくの霧の触れゆく時計草 橋本榮治 麦生
ときに鹿現るる林道海霧塞ぎ 高澤良一 燕音
とさみづき一つ一つに霧雫 五十嵐播水
とどまりて霧の匂ひの濃きところ 行方克巳
とにかくと銃かたげ行く霧の中 尾崎紅葉
ともしび色に川魚煮つめ霧の宿 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
とりかぶと霧の奔流湖に消ゆ 堀口星眠 火山灰の道
なかなかに晴れぬ霧なり宿を出る 高濱年尾 年尾句集
ながれこむ霧に藁屋の戸を下す 上村占魚 鮎
ななかまど尾根に吹く雲霧となり 原柯城
ななかまど白根百度霧流れ 高澤良一 ぱらりとせ
なべて霧天上の月孤なりけり 福田蓼汀 山火
ぬつくりと夕霧くもる枯野かな 暁台
ねむたしや霧が持ち去る髪の艶 櫛原希伊子
ねんごろに飯食ふ齢地の霧 成田千空 地霊
のけぞつて撞く晩鐘に霧まとう 綾野道江
のこる虫葛飾の霧粗くなる 千代田葛彦 旅人木
のど下る清水いとほし霧の中 佐野良太 樫
のんのんと馬が魔羅振る霧の中 加藤楸邨
はく息の霧より白し靴固し 原田種茅 径
はこねうつぎらし霧よりも白く見ゆ 五木田告水
はつしもや湖に青藻の霧がくれ 飯田蛇笏
ばくばくと霧喰べゐしは岩手牛(みちのく三句) 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
ひぐらしや今朝は外山の霧に啼く 北原白秋
ひしひしと巌そびゆ霧の退くかぎり 相馬遷子 山国
ひとひらの残りし霧や匂ひけり 小池文子 巴里蕭条
ひとひらも残さずに散り霧の花 檜 紀代
ひとむらの霧おりきたり水際に白く息づくみぞそばの花 辺見じゅん
ひや~としばらく霧の樅さくら 渡邊水巴 富士
ひらきたる牧まだ霧のあそぶのみ 大島民郎
ひろひ読む霧の丹波のみちしるべ 米沢吾亦紅 童顔
ふみ迷ひしやみよし野の山霧に 稲畑汀子
ふらふらと草食べている父は山霧 西川徹郎 町は白緑
ほぐれゆく霧のむらたつ竹煮草 阿部みどり女
ほたるぶくろむらさきだちて霧に浮く 八木絵馬
ほととぎす野は消毒の噴霧煙 木村蕪城 寒泉
ほとゝぎす明治のサイロ霧に寂び 相馬遷子 山国
ほの明く水溜りゐる霧の中 鈴木貞雄
ほろほろ鳥啄み啄み霧となる 小池文子 巴里蕭条
まつさきに霧の消しゆく山帽子 岩田参露
まつしぐら花野は霧にもどりけり 中村汀女
まなかひに秋草のほか皆霧に 阿部みどり女
まんじゅうの湯気の淡さに町霧らふ 高澤良一 随笑
みくまのへ霧こくしづむ花馬酔木 羽田 岳水
みせばやに凝る千万の霧雫 富安風生
みゃうみゃうと霧の乗鞍スカイライン 高澤良一 素抱
むささびの夜となる霧の杉木立 岩城のり子
むささびの孔が霧吐く比叡越え 米澤吾亦紅
むささび遠し霧海は月の出づらしも 太田鴻村 穂国
めくれとぶ飯綱八湖の霧涼し 西本一都 景色
めぐり逢ひとはこのやうな霧の夜 今村青魚
めざむるや深き中世の霧の中 有馬朗人 知命
めんめんと梅雨霧らふなり恋瀬川 小松崎爽青
もう一軒山に宿あり狭霧に燈 及川貞 夕焼
もじずりの花に霧ゆく療養所 竹内水居
ものを焚く炎に霧の流れけり 椎橋清翠
もの忘れしさうに霧の立ちこめて 小田三千代
もみずるに一役買って山の霧 高澤良一 素抱
やぶさめや霧に朽ちける廊きしみ 小林黒石礁
やぶさめや霧のよどみの杉生より 木津 柳芽
ゆつくりと霧が近づく婚衣裳 鷲谷七菜子 花寂び
ゆで栗や十夜と云へば霧深く 増田龍雨 龍雨句集
ゆふいんの霧に目の慣れ梅擬 高澤良一 鳩信
ゆふべ焚く火さへ涼しく霧湧けり 石橋辰之助 山暦
よその子の歩める霧に立ちどまる 石川桂郎 含羞
よべの海霧丘にのこれり風露草 澤田 緑生
らんぷ売るひとつらんぷを霧にともし 安住敦
りんどうに霧のわいわい押し寄せぬ 高澤良一 ぱらりとせ
ろくろ首にて夕霧をかきまわす 江里昭彦 ロマンチック・ラブ・イデオ口ギー
わが一念富士山頂の霧払ふ 大立しづ
わが嚏霧の彼方に響くかな 久米正雄 返り花
わが胸を通りて行けり霧の舟 渡辺白泉
わせるなら霧もない間に誰もがな 上島鬼貫
われが霧湧かすごとくに霧をゆく 中戸川朝人
われのみの静けさ霧に妻こほし 石橋辰之助 山暦
われ濡らし霧雲海に消え去りぬ 石橋辰之助 山暦
ゐもりども浮きては沼に霧つくる 丸山海道
をだまきの霧うすうすとまとひたる 木村蕪城 一位
アポカリプス霧の一夜を動き出す 高澤晶子 純愛
オホツクの海鳴斯くも海霧冷す 桑田青虎
オホーツクの霧に駅柵いたみしよ 成瀬桜桃子 風色
オホーツクの霧歯舞消し色丹消す 津田清子
オルガンや分校とざす梅雨の霧 相馬遷子 山国
カルタの灯乳霧窗になごむ夜を 飯田蛇笏 雪峡
カルデラを一目たりとも霧の中 高澤良一 鳩信
カントリークラブは霧に遮られ 星野立子
ガタの来し下駄箱霧の共同湯 高澤良一 素抱
キヤムプの門霧ひそやかにゆきて去る 軽部烏帽子 [しどみ]の花
クレソンの咲いて山呼ぶ霧稚し 河野南畦 『元禄の夢』
クローバに降りるスリッパ海霧の這う 長谷川かな女 牡 丹
グライダー大格納庫霧閉ざす 高澤良一 随笑
ケーブルカー呑みこんでゆく梅雨の霧 亀井けい子
コイン投げ込む霧の断層料金所 対馬康子 愛国
コスモスに朝日またるゝ野霧かな 五十崎古郷句集
コーヒー代もなくなつた霧の夜である 下山英太郎
ゴンドラの霧の深きに行交ひぬ 芥川さとみ
サフランの霧がいくつも犬の霊 八木三日女
サルビアに染まりし霧の湖へ出づ 武井耕天
タンクタンク草をかぶつて霧深し 太田鴻村 穂国
チングルマ一岳霧に現れず 友岡子郷
ツンドラのはげしき霧に犬放つ 有働亨 汐路
ツンドラはむなし真昼の霧匂ふ 有働亨 汐路
テームズの船の舫ひも霧襖 大林淳男
トラノオのその先霧の粗く飛ぶ 高澤良一 宿好
トロッコや霧の警笛吹きやめず 千代田葛彦 旅人木
バルザック霧のガウンを重ね着て 樋笠文
ピカソ見る人を見てをり霧なき日 中川宋淵
ペーパーが霧に湿れる外厠 品川鈴子
ボクサーの幹打つしぐさ霧の森 皆吉司
ポケット湿める徹夜の霧を貯めすぎて 細谷源二
マッチの火肩にあふれぬ霧の中 畑耕一
マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや 寺山修司
ランプの灯霧へかざして見送られ 及川仙石
ルージュ濃く外套黒く霧はしり 三谷昭 獣身
一つ家の一本杉や霧の中 寺田寅彦
一とわたり霧たち消ゆる山路かな 飯田蛇笏 山廬集
一人づつ人を裹めり海霧の街 石原八束 空の渚
一位の実甘し遠嶺の霧を見る 野見山朱鳥
一切があるなり霧に距てられ 清子
一切を海霧が隠せり海の音 茂里正治
一堡より指呼の一堡を霧が消す 清崎敏郎
一夜ひえびえ居酒屋に霧かかりけり 川島彷徨子 榛の木
一念寺跡山がかる霧深し 高木晴子 花 季
一挙手も一投足も霧のもの 藤崎久を
一散の山霧を漕ぐ登山杖 上田日差子
一本のマッチをすれば湖は霧 富澤赤黄男
一本の樺見ゆ他は一切霧 高澤良一 随笑
一本の霧濡れ墓標女たり 文挟夫佐恵 遠い橋
一条の霧を抜けくる日の光 高澤良一 随笑
一松がまづ霧脱ぐや枝振りなり 香西照雄
一枚の霧の剥れて琵琶湖覚む 湯川雅
一瀑に一渓応ふ霧の奥 中島斌男
一燈に山蛾身を打つ荒き霧 野澤節子 黄 炎
一瞬の霧の魔性を目の当り 藤浦昭代
七夕や白粉にほふ野べの霧 松瀬青々
七夕や笹に霧吹く看護生 津田渡
七夕を昇きて堤の霧がくれ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
七月の躑躅が燃ゆる霧の中 大島民郎
万歳の顔に紐垂る煙霧都市 小川双々子
万霊の千々にさざめく霧の石塚 つじ加代子
三方を棒げ巫女舞ふ霧の中 岡田日郎
三日居りて山霧のみの葛の花 水原秋桜子
三輪山を妬しと畝火山霧隠 後藤綾子
下り簗霧明けゆくにしぶきをり 谷迪子
不作の霧を来ていきいきと農民たち 栗林一石路
且畏れ霧の湖色を愛しけり 西本一都 景色
並木頭ら霧飛べり駅に鳩鳴いて 久米正雄 返り花
中嶽の雪を踏む間も霧せまる 松村蒼石 雁
串鳥に熾す鬼火か霧ごもり 赤松[けい]子 白毫
丹波路の早稲は穂に出ぬ霧にぬれ 草堂
乗鞍の霧にトウヒのかくれんぼ 高澤良一 素抱
乗鞍の霧を糧としさるをがせ 高澤良一 素抱
乗鞍は凡そ七嶽霧月夜 松本たかし
九十九里の霧に下りいてつばくらめ 古沢太穂 古沢太穂句集
九階草霧淡くなり淡くなり 高澤良一 燕音
乳はこぶ馬に更けたる霧ゆけり 石橋辰之助 山暦
乳房でつながる仔馬にひしと霧流る(那須南ケ丘牧場にて二句) 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
乳牛の背に鴎ゐて霧の風車 石原八束 高野谿
二三日霧にあたりて泊りけり 岡本松浜 白菊
五倍子干すや伊賀の山々霧ふかく 菊山九圃
五歩十歩伸して霧の散歩道 石塚友二
人ごゑのいきなり近し霧ぶすま 稲垣きくの 牡 丹
人と牛霧の鏡に現れし 西山泊雲 泊雲
人丸の寝息や残る朝の霧 椎本才麿
人動きやまずよ海霧の甲板に 高浜虚子
人恋し杉の嬬手に霧しぐれ 加舎白雄
人抱けば木草は失せて霧湧くを 岩田昌寿 地の塩
人数読む山先達や霧の中 菅原師竹句集
仆れ木やかくて朽ちゆく山の霧 林原耒井 蜩
今宵の鱒木槌で殺す霧の底 篠田悌二郎
今日の霧べつたらの夜はすぎてゐし 木津柳芽 白鷺抄
仏法僧二声に熄む霧の奥 山本悠水
仙入の霧に隠れしあと知らず 中杉隆世
仙石の高原暮るゝ霧の音 石塚友二 光塵
仮橋の最後のひとり霧となる 小泉八重子
仮睡覚め霧か日暮か音もなし 福田蓼汀 秋風挽歌
伊那訛やさし南瓜の花に霧 大岳水一路
体育祭ある山の町霧ごめに 伊東宏晃
何も見えざるも波打つ霧の見え 石井とし夫
余呉の霧榧の実あをく育ちけり 井口 秀二
信濃路や朝は霧吹く竹の色 小林康治 『四季貧窮』
俯伏せの霧夜の遊行青ざめて 金子兜太
倒れ木も霧藻まとへり懸巣翔つ 澤田 緑生
偃松に音たて過ぐる霧荒く 福田蓼汀 山火
光蘚見んとかがむに霧沸々 栗生純夫 科野路
兜棟神のゆかしさ霧を継ぎ 河野多希女 こころの鷹
入相や霧になりゆく一つづつ 召波
六斎待つ終の家の灯は霧ごもり 茂里正治
六斎笛山々霧をふりはらひ 下田稔
兵泊めて海荘の浴室霧罩むる 宮武寒々 朱卓
兵稚く苺つぶせり霧霽れよ 沢木欣一
冥途でも主従か霧の墓十基 佐藤昌市
凄まじき霧がこの山消してゆく 河合すま子
処女らコートの白に統べられ霧の航 上野さち子
処女峯といふべき登攀霧をふむ 飯田蛇笏 椿花集
凶年や霧に傘さし神父来る 飴山實 『おりいぶ』
初霜や湖に青藻も霧がくれ 飯田蛇笏
初鮭や網代の霧の晴間より 支考
初鴨や穂高の霧に池移り 水原秋櫻子
別れ際ふいに抱かれて霧になる 長浜聰子
刻経るは病中に似て霧の中 猪俣千代子 秘 色
前山に夕霧上り猪をどし 小川芋銭
前山の霧晴れてゆくはやさかな 立子
創痛や速度音絶え未明の霧 赤城さかえ句集
勿忘草霧に咳き人行けり 堀口星眠
匂ひなき霧立ち罩めて海かくす 右城暮石 声と声
北山は良き杉育つこの霧に 板東福舎
北欧の詩より淋しや樅に霧 岡田日郎
十夜会に信濃は霧の粒粗き 東條素香
十方の霧ひといろの暗さもつ(上州草津にあそぶ中澤ヴィレッヂ泊) 上村占魚 『石の犬』
千曲江に日霧雨霧地震つづく 西本一都 景色
厚朴の実に雨やむ霧か朝雲か 飯田蛇笏 雪峡
厚朴蝕し苑囿の霧たちのぼる 飯田蛇笏 霊芝
厨房のナイフ曇らす山の霧 桂信子 黄 瀬
又やあの霧から出でん朝烏 椎本才麿
口あけて通草は泣けり霧の中 殿村莵絲子
古稀の手でみかん苗植う海霧の中 閑田 梅月
古藁塚は伏兵霧の関ヶ原 柴田奈美
可惜しや万緑とざす霧峠 川畑火川
叱りし子霧にまみれて登校す 加藤知世子 黄 炎
吊鐘人参聞きをり霧の私語(ささめごと) 高澤良一 燕音
名月に麓の霧や田の曇り 芭蕉
向う嶺の霧よりさびし山の粟 古沢太穂 古沢太穂句集
向き~に往来人や霧の中 西山泊雲 泊雲句集
吠え牛に山彦高し霧の中 西山泊雲 泊雲句集
吹きあぐる渓の奈落の霧涼し 福田蓼汀 秋風挽歌
吹きつけし霧にたちまち冷ゆる鉄 宇佐美魚目
吹きまかれ吹きまく霧や鈴鹿山 鈴鹿野風呂 浜木綿
吹き上ぐる霧に朴の葉鳴りつゞけ 鈴鹿野風呂 浜木綿
吹き上げて流るゝ霧の横川路に 浅井青陽子
吹絵籠空しらみけり霧の窓 調川子 選集「板東太郎」
吾の眼も光りてをるか霧の中 海津篤子
吾も越す霧の國境群鶫 石田あき子 見舞籠
吾亦紅折らましものを霧こばむ 阿波野青畝
吾亦紅霧が山越す音ならむ 篠田悌二郎
吾亦紅霧に色濃くありにけり 井上哲王
吾亦紅霧の冥さを帯びつゝあり 高澤良一 随笑
吾亦紅霧の奥にて陽が育つ 宮坂静生
吾亦紅霧の日輪珠となる 植山露子
吾妻嶺や霧の翼が日の中に 寺田京子 日の鷹
吾子睡る霧のにほひのあしたかな 岩上明美
咲き残りゐる*はまなすも海霧に濡れ 行方克巳
啄木鳥たたく吉野奥社の霧ごもる 白井真貫
啄木鳥や霧より上の梢の旭 東洋城千句
啓蟄の日出ずる国に天霧らう 和田悟朗 法隆寺伝承
喉ふかく鵯の鳴くなり霧の峡 石田あき子 見舞籠
喘息の胸ひようひようと霧月夜 古賀まり子 降誕歌
嘶きと思はるこゑも霧四辺 高澤良一 鳩信
嘶くや霧の熊笹喰み育ち 久米正雄 返り花
噴水の霧の射程に身を置けり 鈴木栄子
噴水の霧這ひ渡る風の樹々 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
噴火口近くて霧が霧雨が 藤後左右
噴火湾の霧へ振りたる放馬の尾 田川飛旅子 花文字

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by 575fudemakase | 2014-09-30 00:01 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)


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(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
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尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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