<   2014年 10月 ( 315 )   > この月の画像一覧

雑誌より

雑誌より

句集小特集より共鳴句を拾った。

黛執句集「煤柱」より

秋風に流されてゐる夕日かな
雪くるぞ来るぞくるぞと火が真っ赤
跳ねまはるさまに月夜の藁ぼっち
川上へ春が上ってゆきにけり
年寄をずらりと咲かせ冬日向

星野恒彦句集「寒晴」より

窓に来て大きさ見せるぼたん雪
電車ごと春一番を感じけり
抜け来たる杜へ一礼椎の花
蜩や森はしりぞくばかりなり
冬川の早瀬日蔭に力つけ
寒晴の笑へるやうな鳥の声
蜥蜴出てときに敏感ときに鈍
(2014 俳句7月号)

今瀬剛一句集「地力」より

蛇を見るときも一番前に立つ
大枯野暦の中にまで続く
明日の句は明日湧く筈春の星
ふるさとや飛び付いてくる牛膝
鯉沈みきって広がる冬の水
時折はくすぐるしぐさ梅落とす
大笊へ実梅流るるごと移す
前方に墓あるばかり蜷進む

依田明倫句集「農場」より

黍焼酎売れずば飲んで減らしけり
冬の木が立ちをり駅があったっけ
冬の足音の三人目は僕さ
がったんと年越す寝台車の中で
ラッセル車母の霊柩車がつづく
石炭の暖はベットの芯にまで
星全部はだかで光りダリアの上
鴨猟や僕には襤褸ニング銃

(2014 俳句6月号)

以上
by 575fudemakase | 2014-10-31 11:33 | 句集評など | Trackback | Comments(0)

晩稲

晩稲

例句を挙げる。

あらしくる夜の人ごゑは晩稲刈 加藤楸邨
くわんのんを裏より拝み晩稲刈る 中村風信子
こゝよりや備中にして晩稲刈る 青戸暁天
さっぱりと晩稲も刈られ残る畦 及川貞 夕焼
ひとつ家を出でしが晩稲刈となる 皆吉爽雨
ひと夜さに鴨のつきたる晩稲刈る 西川柚黄翁
みちのくや何処も晩稲のまだ青し 細木芒角星
ルオーの王のごとき農夫や晩稲刈 草間時彦 櫻山
一ところ照る曇り日や晩稲刈 及川貞 夕焼
下校子も加へ一家の晩稲刈 羽吹利夫
刈るほどに山風のたつ晩稲かな 飯田蛇笏 山廬集
刈る程に山風のたつ晩稲かな 飯田蛇笏
夕されば馬帰り来る晩稲かな 角川春樹
夕空に身を倒し刈る晩稲かな 零余子
大屋根を風の楯とし晩稲刈 橋本榮治 麦生
大山の雪も間なけむ晩稲刈 石塚友二 光塵
姨捨に晩稲を刈りて畳みおく 古舘曹人 樹下石上
山に火の見えて晩稲の孕む闇 西村公鳳
山の空夕澄む晩稲刈り急ぐ 金子伊昔紅
山よりの風の硬さや晩稲刈る 飯村周子
山川の淋しき国や晩稲刈 村山古郷
山風にゆられゆらるゝ晩稲かな 飯田蛇笏 霊芝
峠ゆく雲が晩稲の黄に馴染む 田中青濤
巌あれば巌に手をつき晩稲刈 宇佐美魚目 秋収冬蔵
念仏にはげまされつゝ晩稲刈る 林 正之
愛鷹の裾ひき映ゆれ晩稲刈 長谷川かな女 雨 月
憩ふなる鎌稲架に刺し晩稲刈 皆吉爽雨 泉声
早稲は黄に晩稲は青し能登に入る 森澄雄
晩稲かぜ蝕月の雨頬に落つ 宮武寒々 朱卓
晩稲の黄と瀬音見おろす朝日とわれ 古沢太穂 古沢太穂句集
晩稲刈かたへに雀あそばせつ 加藤楸邨
晩稲刈り急ぐ宵々の星あまた 山名菅村
晩稲刈るかたへを河の急ぎをり 長谷岳
晩稲刈るひとりを峡の雨景色 草間時彦 櫻山
晩稲刈る一人が低き日に泛ぶ 千代田葛彦 旅人木
晩稲刈る一隅つよき火を焚けり 成田千空 地霊
晩稲刈る思ひがけなき日和かな 山本洋子
晩稲刈る新婦の頭上あたたかし 飯田龍太
晩稲刈る日は雲上に在りとのみ 木下夕爾
晩稲刈る誰も齢に追はれゐて 本多静江
晩稲刈る颪のつのる田一枚 石原舟月
晩稲刈真赤なものを置きにけり 大峯あきら 鳥道
晩稲刈雲の端々夕焼けて 橋本榮治 麦生
晩稲扱く心胆あつき老ならん 成田千空 地霊
晩稲架けて風雨の秋をつくしけり 石原舟月 山鵲
晩稲田に垂れて信濃の鉛空 草間時彦 櫻山
晩稲田に音のかそけき夜の雨 五十崎古郷句集
晩稲田の色濃き雨に故郷あり 宮津昭彦
晩稲田や畦間の水の澄みきりて 飯田蛇笏 山廬集
晩稲苅るこつくりとした日影中 久米正雄 返り花
暴風雨くる夜の人ごゑは晩稲刈 加藤楸邨
月いでて早稲も晩稲もなくなりぬ 彷徨子
月照らす勤め了へての晩稲刈 沼澤石次
枯山の影の来てゐる晩稲刈 草間時彦
榛の木に晩稲掛けたり道の端 正岡子規
横降りの木曾の晩稲は人も来ず 大峯あきら 鳥道
橋に架け木にかけ晩稲刈りいそぐ 篠田悌二郎
水底を風吹いてゐる晩稲刈 岡本高明
泥と血で結ばる晩稲田の兄弟 齋藤愼爾
浪白き日や晩稲刈はかどれる 宮津昭彦
湿田の晩稲未だに青かりし 河野 伸子
片頬なる日のやはらかに晩稲刈 軽部烏帽子 [しどみ]の花
牙立ちて暗き沖見ゆ晩稲刈 皆川白陀
狼のこの比はやる晩稲かな 支考 俳諧撰集「有磯海」
田の端の芦も晩稲も刈られけり 水谷晴光
百姓に停年はなし晩稲刈る 中川正太
細りつつ日ぐれ晩稲田薬師みち 古沢太穂
耶馬渓の岩に干しある晩稲かな 杉田久女
脛に立つ水田の晩稲刈る日かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
草の戸に晩稲の日波よするなり 吉武月二郎句集
蒼き魚喰ひ晩稲を刈りにゆく 本宮哲郎
藁傷の皸となりつゝ晩稲刈る 立川史朗
蝗飛んで日に~稔る晩稲かな 高浜虚子
陰暦八月虹うち仰ぐ晩稲守 飯田蛇笏 霊芝
雨吸ひし築地にそヘる晩稲刈 下村槐太 天涯
電燈を一人が持ちて晩稲刈 堤 京子
霧卍木曾の谷間の晩稲刈り 加藤知世子 花 季
風の音ばかり峡田の晩稲刈 柴崎久太郎
鵙鳴くや晩稲掛けたる大師道 子規句集 虚子・碧梧桐選
鶴来ると早稲も晩稲も熟れいそぐ 邊見京子

以上


by 575fudemakase | 2014-10-31 00:55 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)



例句を挙げる。

かかし傘の月夜のかげや稲の上 飯田蛇笏 山廬集
かぐはし水うごく國原稲穣りたり 中塚一碧樓
けふの菊中稲の飯のうまみかな 才麿
ことごとく稲の倒るる日和かな 大木あまり 火球
この国のまさをき空や二番稲 金子 九九
ごぼりとかんじき手束の稲をくくりては 古沢太穂 古沢太穂句集
さざなみの滋賀の子まとふ美稲(みしね)の香 加倉井秋を 『風祝』
ざりがにの稲掴みゐる落し水 白岩 三郎
しんしんと空あをく左右の稲匂ふ 川島彷徨子 榛の木
せんもなや家には鼠あり稲の虫 寺田寅彦
それぞれの聲稲の露芋の露 田中裕明 櫻姫譚
それ程に稲もあらさぬ螽かな 牧 童
たそがれて馬おとなしや稲を積む 石鼎
たたずめば稲が鳴るなり夜見の国 夏石番矢 神々のフーガ
つとめ日々はかどり愉し稲は穂に 岸風三楼 往来
つゝましや旅降りいでし稲の音 中村草田男
ぬきんでて稲よりも濃く稗熟れぬ 篠原梵 雨
ひき水の野路よこぎりて稲みのる 飯田蛇笏 春蘭
ふんばつて稲杭を押す女かな 高濱年尾 年尾句集
みやま霽れて黄色むや稲の陽のたまり 日夏耿之介 婆羅門俳諧
むつかしき牛の眉間や稲の秋 山口誓子
ゆふぐれの溝をつたへり稲の香は 静塔
よき色にあがりて稲のかなしけれ 阿部みどり女
わがこころ稲の穂波にただよへり 山口青邨
ジパングは黄金の国稲稔る 佐藤知敏
ホリドールの赤旗 稲は 日蝕のようにひつそりと 吉岡禅寺洞
ロックコンサート稲の実らぬ田の見えて 田口彌生
一里行けば一里吹くなり稲の風 夏目漱石 明治二十八年
上気多の段々畑の稲の株 お 素抱
中学生朝の眼鏡の稲に澄み 草田男
乳房もて稲押し進む稗抜女 本間 一萍
人買に蝦夷路の秋の稲すゞめ 麦南
今ぞしる稲を手ぼしの袖の恩 立花北枝
伊賀の子の受ければ弾む稲の束 殿村莵絲子 牡 丹
低山も雲居て伊豆の稲の雨 皆吉爽雨 泉声
何の音もなし稲うちくふ螽哉 服部嵐雪
倒れし稲茎の枯色重ね曇る 古沢太穂 古沢太穂句集
倒伏の稲をくぐれる落し水 岡安紀元
八月の行方や稲に波走り 米澤吾亦紅
凶作田焼く棒立ちに稲と人 太田土男
出の温泉へ中稲の畦を通りゆく 上川井梨葉
出揃ふや稲の田づらのざんざぶり 尾州-露川 俳諧撰集「有磯海」
初とんぼ吹かれて稲へ落ちにけり 柏
初髪にたりほの稲の小かんざし 高橋淡路女 梶の葉
利根川や稲から出て稲に入 小林一茶
動かざる雲ゐて稲の伸ぶるなり 中川宋淵
北緯四十一度に近し稲の秋 寺田寅彦
名月やうつむくものは稲ばかり 宗専
吹く風や稲の香匂ふ具足櫃 上島鬼貫
咳しつゝ歩き来る子や稲埃 高野素十
国東の二十八谷稲の秋 豊東 蘇人
垂り稲の地平に唸り哨戒機 高井北杜
城見えて朝日に嬉し稲の中 支考 (岩瀬に遊ぶ)
墓一基また一基稲稔りけり 池田秀水
夏の日の淡さ矮き稲も穂に 岸風三楼 往来
夕山や稲積の一つにありし母 金箱戈止夫
夕映えて不作の稲に空やさし 相馬遷子 山国
夜念仏すり足とどめ稲匂ふ 井沢正江
大時化の稲佐の浜の神送り 筒井満枝
大演習出水の稲を踏渡り 増田龍雨 龍雨句集
大竃あかあかと稲はこばれぬ 柴田白葉女 遠い橋
夫婦ひややか新しき縄稲に垂れ 飯田龍太
奔牛の性をわすれて稲はこぶ 百合山羽公 故園
奥出羽のよき日の入りや稲の秋 名和三幹竹
奥津城も稲の香ぞするふるさとは 石塚友二
子が追うて忙しき母や稲埃 中田みづほ
宵々や簾にかぎる稲の波 金尾梅の門 古志の歌
家霊みな嫗のかほや稲の秋 河原枇杷男 蝶座 以後
家高低稲段々に山の裾 正岡子規
寂として畔の夕かげ稲稔る 飯田蛇笏 雪峡
寺とても稲つくりけり人出入 小杉余子 余子句選
小作争議にかゝはりもなく稲となる 竹下しづの女句文集 昭和十一年
居眠りに稲投げつけて夜業せり 成海 静
山の温泉へ中稲の畦を通りゆく 上川井梨葉
山四方中を十里の稲莚 夏目漱石 明治二十八年
山峡に稲の音あり秋まぼろし 金子兜太
山峡の稲をいぢめに山背風(やませ)くる 高澤良一 素抱
山陰や草穂まじりに稲の出来 飯田蛇笏 山廬集
川地蔵供養稲の香むせるなか 高澤良一 ぱらりとせ
左右より架けゆく稲の襖かな 橋本鶏二 年輪
巨いなるうねりに入りて稲稔る 中村和弘
帰省子やばつたり出逢ふ稲かつぎ 飯田蛇笏 山廬集
庄屋殿の棺行くなり稲の中 正岡子規
建ちてまだ住まぬ一棟稲の秋 草城
引きまはす襖の外も稲屏風 立花北枝
後朝や袖に飛付く稲の虫 寺田寅彦
徒食の手触れて鋭き稲の葉よ 馬場移公子
御陵や御垣の外トの稲垂り穂 尾崎迷堂 孤輪
志賀の里妹子の村の稲実る 西村雅苑
悉く稲倒れ伏す野分哉 寺田寅彦
愛宕よりおりくる靄や稲かくる 比叡 野村泊月
持ち直す稲に雷三日かな 太田土男
振り照す松明や乱るゝ稲の虫 寺田寅彦
斎田の稔りし稲に鎌入るゝ 竹崎 紫泉
新米や土佐はよい国二番稲 浜田波静
日ちりちり櫟葉かゝる稲の上 右城暮石 声と声
日盛りを走つていたり稲と犬 永末恵子 発色
春風も揃へて麦も稲むしろ 中村史邦
時雨来む風に稲屑火どんと燃ゆ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
曳き水の野路よこぎりて稲みのる 飯田蛇笏
月の田にあすの用意の稲はこび 長谷川素逝 村
月白の稲にぬくもりありにけり 東野照子
朝すでに露天湯にこゑ稲熟るる 井沢正江
本合海渡しの向う稲の海 高澤良一 随笑
本草を調べて見るや稲の虫 寺田寅彦
来かかりし人ひきかへす稲埃 高野素十
来かゝりし人引き返す稲埃 高野素十
架け稲に大原は霜の厳しさよ 美甘一洒
架け稲のむかふの山のしぐれをり 橋本鶏二 年輪
架稲もさしわたる日も温泉の香ざ 銀漢 吉岡禅寺洞
株間四寸畝間一尺豊の稲 西本一都 景色
桑名より雲くる稲の実りけり 藤田あけ烏 赤松
棟上や家猫稲へしのび入る 池上樵人
標本や稲を添へたる稲の虫 寺田寅彦
水のみちまたわかれをり稲の中 大橋櫻坡子 雨月
水流に青草浸り稲の秋 林順子
水門の閉ぢ季稲の水濁す 石川桂郎 四温
汗涌くや夕凪の稲すく~と 佐野青陽人 天の川
汽笛遠し稲の香をわれにもたらしぬ 栗生純夫 科野路
泥の稲泥の豆木と見分くのみ 西本一都 景色
泥稲をかかへ田下駄をひきずれり 大野林火
流れ者のやうに踊りぬ稲孕む 鳥居美智子
海にそふ北に山なし稲百里 立花北枝
海老稲も実入り頃とや放生会 中村史邦
渋柿の下に稲こく夫婦かな 夏目漱石 明治二十八年
渋柿の馬鹿なりをして稲不作 原田青児
湖北いま稲の稔りの重き刻 田川飛旅子
澤々から稲熱病おこしの水の風 廣江八重櫻
濁水の稲に太陽照りいだす 百合山羽公 故園
瀬音より離り影なき稲実る 阿部みどり女
炎天のうすきまなざし稲の穂や 中拓夫 愛鷹
熟れ稲の香のそこはかと霧は濃き 臼田亞浪 定本亜浪句集
熱燗やきん稲にこの宵のほど 道芝 久保田万太郎
熱燗やきん稲のこの宵のほど 久保田万太郎 草の丈
犬つれて稲見に出れば露の玉 上島鬼貫
犬の尾に稲が実るぞ弟よ 夏石番矢 神々のフーガ
犬連れて稲見に出れば露の玉 鬼貫
生徒らがゆきすぎしあとの土ぼこり稲の穂づらをなびき流れつ 安田青風
畦を来る人に旭尊と稲の秋 楠目橙黄子 橙圃
痩稲も垂穂そろひぬ日照り雨 鷲谷七菜子
白鷺の稲にかくるる愁かな 太田鴻村 穂国
白鷺も稲分けゐるよ釣歩るき 滝井孝作 浮寝鳥
百姓が凶作の稲を噛みしめつ 山田佐人
百姓は力稲を束ねる女の息 栗林一石路
盆すぎの稲が目を突く田草取 白岩 三郎
盆月夜稲よりも顔あきらかに 森 澄雄
短足の胴長稲の束かつぐ 今瀬剛一
石手寺の築地くづれて稲の波 山口青邨
神松や稲も荒穂の冬日和 上島鬼貫
秋出水稲の穂首をとらへたり 鈴木玉[きう]
秋晴や蔵持つ農家稲の中 大谷句佛 我は我
稀にゆく山辺は稲の霜きびし 太田鴻村 穂国
稔る稲電線はいづちへゆくらん 佐野良太 樫
稗の穂の吹かれ穂稲の波のよ 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
稗の穂は垂り稲はツンツンと 竹下しづの女句文集 昭和十年
稲こす水に祠浮きたつ 山店 芭蕉庵小文庫
稲そして山美しき出羽の国 森澄雄
稲つけて馬が行くなり稲の中 正岡子規
稲つむや痩馬あはれふんばりぬ 村上鬼城
稲つるみ全幅を見す最上川 高澤良一 随笑
稲といふ名もきがゝりやいもが門(かど) 中村史邦
稲と稲触れ合ふ音の暮れて来し 山内山彦
稲なべて短かく湖も北に果つ 岸風三楼 往来
稲の丈引ずりながら舁にけり 温亭句集 篠原温亭
稲の上にはかに星を落しける 山口誓子
稲の上を低くわたれる烏かな 西山泊雲 泊雲句集
稲の世を巨人は三歩で踏み越える 安井浩司(1936-)
稲の中に手をあげて野分防ぐなり 冬の土宮林菫哉
稲の中のそちこちの顔がふるさと シヤツと雑草 栗林一石路
稲の中水の音して日和かな 野田別天楼
稲の山にひそめるを刀で引き出だす 長谷川素逝
稲の日のいまだ暑くて寺普請 大峯あきら 鳥道
稲の日や子につき歩くぬくくと 長谷川かな女 雨 月
稲の束うしろに投げて吉備の国 金田瑞穂
稲の根にすてし布あり藍の濃し 長谷川零余子
稲の波はる~と来て枕元 梅室
稲の波案山子も少し動きをり 高浜虚子
稲の熱月山空に坐りけり 宇佐美魚目
稲の秋のむしろにすわりたり女なり 中塚一碧樓
稲の秋の風吹き流れ二つ並びの山 中塚一碧樓
稲の秋命拾ふて戻りけり 正岡子規
稲の秋山山進み向ひくる 池内友次郎
稲の穂かしぎゆく寝とぼけ空かな 冬の土宮林菫哉
稲の穂のすつくすつくと丹波口 松尾隆信
稲の穂のふれるさやぎとみれば止む 川島彷徨子 榛の木
稲の穂のりりとひびかふたなごころ 赤城さかえ
稲の穂の日々垂れわが家整へり 林翔 和紙
稲の穂の胎蔵界は雨の中 角川春樹
稲の穂や南に凌雲閣低し 子規句集 虚子・碧梧桐選
稲の穂を露ながれたる嵐かな 萩原麦草 麦嵐
稲の葉の青かりしより案山子哉 月渓
稲の葉や風左右裏おもて 尾崎紅葉
稲の虫せん方もなく殖えてけり 寺田寅彦
稲の虫川向ひへも拡がりぬ 寺田寅彦
稲の雨斑鳩寺にまうでけり 子規句集 虚子・碧梧桐選
稲の青しづかに穂より去りつつあり 篠原梵 雨
稲の香が町をつつみて筆まつり 亀井朝子
稲の香にむせぶ佛の野に立てり 水原秋櫻子
稲の香に溺れたき眼を瞑るべし 耕二
稲の香に面吹かるる震災忌 阿部みどり女
稲の香に顔なぶられて奥会津 高澤良一 鳩信
稲の香のねざめて近し五位の声 暁台
稲の香の満るを今宵月の雲 松岡青蘿
稲の香の澄みて流るゝ美濃路かな 冬の土宮林菫哉
稲の香は大き安らぎ豊の秋 山下美典
稲の香やカサイ平のばか一里 一茶 ■文化七年庚午(四十八歳)
稲の香や明日香童の埴輪顔 米沢吾亦紅 童顔
稲の香や月改まる病心地 漱石
稲の香や束ねて落つる水の音 蓼太
稲の香や父母ありし日の山と川 石塚友二
稲の香や鉄鍋に煮る芭蕉絲 沢木欣一
稲の香や関東平野の数人に 鈴木六林男
稲の香や闇に一すぢ野の小道 正岡子規
稲の香や鱒ずしを買ふ七尾線 冨田みのる
稲の香をまとひし婚の使者迎ふ 野上 一枝
稲の馬女が曳いておとなしき 吉武月二郎句集
稲の黄に出てすぐねむる赤子かな 六角文夫
稲の黄の日があたるより爛熟す 川島彷徨子 榛の木
稲は穂に明るき西日鏡面に 柴田白葉女 遠い橋
稲は穂に海やはらかくなりしかな 橋本榮治 麦生
稲ぶさや誰がむすび置く宮柱 黒柳召波 春泥句集
稲みのる暑さや膝を立てもして 大木あまり 火球
稲むらの上や夜寒の星垂るる 芥川龍之介
稲もはや苅りしほなれや衣装畑 中村史邦
稲も蝗ももの狂ふかな卑弥呼の国 高柳重信
稲わけて月のそひくる田路かな 中勘助
稲を守る神の別れや落し水 広江八重桜
稲不作うったふ婆の冷夏の眼 高澤良一 素抱
稲不作日とたはむるゝ鴉かも 清水基吉 寒蕭々
稲主に啄(はみ)をかくすや小田の雁 毛* 九 月 月別句集「韻塞」
稲倒れ用捨なく雨日々続く 鈴木玉[きう]
稲入るゝ提灯つけて一家かな 比叡 野村泊月
稲分けて鶏探す夕かな 福田把栗
稲匂ひ潟の民話に溺れをり 河野南畦 湖の森
稲匂ふ風のゆたかにローカル線 田山諷子
稲原に良夜の濤はきくべかり 石田波郷
稲原の吹きしらけゐる墓参かな 芝不器男
稲原の白き匂ひの夜なりけり 臼田亜浪 旅人
稲原や鉄塔霧をはなれゐる 太田鴻村 穂国
稲垂れて産土神道をせばめけり 五十崎古郷句集
稲埃とても大方火山灰埃 中園七歩才
稲埃ふるまひ酒に酔ひにけり 橋本榮治 越在
稲埃まとひて独り石地蔵 小池龍渓子
稲塚にしばしもたれて旅悲し 高浜虚子
稲塚のそこはかとなく暮れそめぬ 五十崎古郷句集
稲塚の影おどろ並む衣川 松村蒼石
稲塚の戸塚につゞく田守かな 其角
稲太る月夜の手足盆踊 飴山實 『おりいぶ』
稲孕みつつあり夜間飛行の灯 西東三鬼
稲懸ける音ほそ~と月夜かな 渡辺水巴 白日
稲明りさし込む中や湯葉造り 高澤良一 寒暑
稲束をかついでずるずると沈み 今瀬剛一
稲束を投げし宙より跳ぶ蝗 鷹野清子
稲枯れて往来もあらず星月夜 中島月笠 月笠句集
稲株の殖えて盆来る父も来る 影島智子
稲梨かげに唖ん坊と二人遊びけり 木歩句集 富田木歩
稲淵の梟よ日の柞(ははそ)山 藤田あけ烏 赤松
稲滓火(いなしび)や天竜夜へいそぎをり 中澤康人
稲滓火(しび)の関東平野雪もよひ 角川春樹
稲滓火の関東平野雪もよひ 角川源義
稲無限不意に涙の堰を切る 渡辺白泉
稲熟るるあまき匂ひの夜の雨 郷原弘治
稲熟れて深大寺道牛臭き 西村公鳳
稲熱田の一枚昏るゝ風の中 星野麦丘人
稲牛を見おくりて又雲をみる 百合山羽公 故園
稲田ゆくまぢかの稲の一つづつ 石川 桂郎
稲秋の夕日の壁のとなり村 長谷川素逝 村
稲秋や近江は恒の三上山 尾崎迷堂 孤輪
稲稔りゆくしづかさに村はあり 長谷川素逝 村
稲稔りゆつくり曇る山の国 廣瀬直人
稲終る腰抜けるまで踊るべし 羽部洞然
稲育つ風ちりちりと鳴るやうに 福永鳴風
稲茎に青草のこす冬田哉 宗因
稲藁を積むふくらみの二階まで 猪俣千代子 秘 色
稲虫のむつつりとをる筑波かな 大石悦子
稲豊穣父を呼ぶ声野に呑まれる 成田千空 地霊
稲雨蔽ふ雲冷やかに暮れてゆく 臼田亞浪 定本亜浪句集
稲青し窓枠額として絵なり(香里病院に西東三鬼氏を訪ふ) 河野南畦 『黒い夏』
稲馬のつゞいて帰る夕かな 温亭句集 篠原温亭
稲高く架けて若狭の海かくす 畠山譲二
稲黄ばむ頃よ聞きしむ音ありて 右城暮石 声と声
穂に出でて献供の稲の三鉢かな 皆川白陀
積む稲の重さに牛よ蹄ひらき 羽部洞然
美しき稲の穂波の朝日かな 路通
群稲棒一揆のごとく雨に佇つ(福島) 角川源義 『口ダンの首』
翳もなみ耳成山は稲の中 佐野良太 樫
肥効いて稲くろぐろと田水沸く 市村究一郎
育種以後も稲の葉みどり黒き遺髪 香西照雄 対話
葉巻蟲楚々とかくれぬ稲の露 西山泊雲
葬列の人ら稲の穂たわめて見る 萩原麦草 麦嵐
蓮一葉抽く稲原の朝涼し 金尾梅の門 古志の歌
虫のこゑじいんじいんと稲稔る 高澤良一 宿好
虫送りすみたる稲のそよぎかな 三村純也
蛭痩せの見ゆ泥稲の分蘗に 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
蜷のゐる上を流れて稲埃 岸本尚毅 舜
蜻蜒や実り伏す稲まだの稲 寺田寅彦
裂帛の旭にうちけぶり稲の露 西山泊雲 泊雲
誰逝くや稲にさびしき稲穂波 河原枇杷男 蝶座 以後
谿の稲バスの玻璃刷くみのりかな 林原耒井 蜩
豊の稲をいだきて蝗人を怖づ 山口青邨
豊作の稲の香浄瑠璃寺に入りても 大野林火
豊稲や大黒さまの道祖神 西本一都 景色
豊饒の稲抱くしぐさ金の獅子 吉原文音
踊の足稲の出穂よりなほ揃うた 高澤良一 素抱
踏切の警報を浴び稲青つ 田川飛旅子 花文字
追憶は過稲要らざる炉火明り 吉村ひさ志
遅月やありあり見ゆる稲の露 西島麦南 人音
過疎村と云はれ豊かに稲実る 小野三子
道問ひし少年稲の香をもてり 町田美知子
道道の稲の出来見て山の湯ヘ 上村占魚 球磨
遠山の晴れつづく夜の中稲かな 塩谷半僊
酒になり餅になる稲の穂並哉 呉逸
里人に稲瘠せたりと言はず去る 藤後左右
里人は稲に歌詠む都かな 松尾芭蕉
重味ある稲騒にふとたちどまる 川島彷徨子 榛の木
野に出でて目路にぎつしり稲の色 瀧井孝作
野の家の箪笥見えてる稲の秋 臼田亜浪 旅人
野は風のまほろば稲の色づくも 北原志満子
関外は霜降る稲や去ぬ燕 菅原師竹句集
陰々と男ばかりの稲じまひ 平畑静塔
隅々や稲虫除の護符 寺田寅彦
雨雲の夕栄すなり稲筵 子規句集 虚子・碧梧桐選
霊棚の稲も大豆も色づきて 高野素十
霍乱を起して倒る稲あらん 高澤良一 燕音
露冷や谷戸へ絞りて風の稲 石川桂郎 高蘆
青々と稲のかたちになり垂るる 阿部みどり女
青き穂に千鳥啼くなりひつぢ稲 史邦 芭蕉庵小文庫
青立の稲に眼を慣らしけり 斎藤玄 雁道
音楽は終りぬ稲を見にゆかん 原田喬
風の盆中稲もすでに穂を垂らし 三村 純也
風向きの変りて吾に稲埃り 片倉 志津惠
風禍とは稲のみならず杉山も 吉持鶴城
風鈴や雨さらさらと稲の葉に 岸本尚毅 鶏頭
颱風はもう来ぬといふ稲の秋 高濱年尾 年尾句集
首出して稲付馬の通りけり 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
首都圏ニュース稲の作柄やや良と 高澤良一 随笑
鳥威あらたに土佐の二番稲 西川雅文
黒とんぼ稲の葉末にとまりけり 増田龍雨 龍雨句集
黒部川わたりて稲の高襖 阿波野青畝
かそけしや垂穂を垂穂うてる音 高澤良一 ももすずめ
稲穂波そぞろ打ち合ふ神楽の里 高澤良一 鳩信
いちめんの稲穂明りに目の馴るる 高澤良一 随笑
途方もなき稲穂の寄する小学校 高澤良一 随笑
磐越西線稲の睡気が移りさう 高澤良一 石鏡
観世寺 黒塚
稲積みのもしや狸の化け損ね 高澤良一 石鏡

以上
by 575fudemakase | 2014-10-31 00:27 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

刈萱

刈萱

例句を挙げる。

一群れの雀刈萱昏れにけり 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
冬近み乱礁の茅萱刈られたる 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
凩の棲む刈萱を背負ひあぐ 羽部洞然
刈萱にいくたびかふれ手折らざる 横山白虹
刈萱に二人早立ちしたさうな 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
刈萱に少し風ある屋島かな 大野青沙
刈萱に風の追討ちありにけり 湯浅康右
刈萱のたへにも白し草泊り 銀漢 吉岡禅寺洞
刈萱の二三穂なびく花茶かな 吉武月二郎句集
刈萱の共乱れして枯れ急ぐ 牛島六
刈萱の少なき絮を浚ふ風 山崎一角
刈萱の沈めしままや鷭の鳥 石川桂郎 四温
刈萱の秋の捨蚕にほかならぬ 古舘曹人 樹下石上
刈萱の靡くともなく穂に出でぬ 河野柏樹子
刈萱の風より雨を待つふぜい 川崎展宏
刈萱の高さにものを考ふる 岩岡 中正
刈萱もまぬがれがたく紅葉して 後藤夜半 底紅
刈萱や湖に流れのあるといふ 山本洋子
刈萱や雲通ふ尾根を吾も行く 岸田幸池
刈萱よりも髪吹きすさぶ今生は 佃 悦夫
刈萱を活けて寂しさ澱となる 横山房子
国引のむかし刈萱よきいろに 宇佐美魚目
山刀伐の雲の乱るる萱刈れり 大網信行
新月に刈萱活けて茶漬かな 渡辺水巴 白日
梅鉢草髪にぞ挿して萱刈女 田中はつを
椨山の萱刈りし跡大いなる 八木林之介 青霞集
疾く起きよ起きよと女刈萱の声 佐藤鬼房
萱刈が下り来て佐渡が見ゆるてう 前田普羅
萱刈つて墓に立てかけありにけり 松藤夏山 夏山句集
萱刈つて岳麓の冬見えはじむ 岡本 眸
萱刈つて村人歌舞伎演じをり 加藤三七子
萱刈つて阿蘇の裾野に束ねけり 佐川広治
萱刈とわが見るのみに虹立ちし 宮下翠舟
萱刈にぶらさがりたる通草かな 松藤夏山 夏山句集
萱刈のここにも山を深めゐし 栗生純夫
萱刈のゐて麓路に山でにけり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
萱刈のをるところまで登りけり 富安風生
萱刈の地色広げて刈進む 篠原温亭
萱刈の声とばしけり富士颪 酒井絹代
萱刈の尾根に出てゐる日和かな 松藤夏山 夏山句集
萱刈の脊を越え鴉力声 村越化石
萱刈の茣蓙臑当のいでたちや 松藤夏山 夏山句集
萱刈の萱に沈める眼かな 原田喬
萱刈の遠くへ行つてしまひけり 米澤吾亦紅
萱刈や午前も午後も日がひとつ 矢島渚男 木蘭
萱刈や咲きつゞけつゝ長煙管 松藤夏山 夏山句集
萱刈りが下り来て佐渡が見ゆるてう 前田普羅 新訂普羅句集
萱刈りのかくて日暮らす山小春 臼田亞浪 定本亜浪句集
萱刈りの真向ひもまた風の山 村越化石
萱刈るやきのふにまさる山日和 植地芳煌
萱刈るやひつぱる葛を切り放ち 松藤夏山 夏山句集
萱刈るや出雲石見と山わかち 飴山實 『次の花』
萱刈るや鬼の炊ぎし巖のこる 西本一都 景色
萱刈を了へて遊べる馬をよぶ 加藤楸邨
萱刈女鎌をかざしてこちを見る 松藤夏山 夏山句集
落ち切らぬ入日を沖に萱刈女 塩谷はつ枝
野にも寐よ宿刈萱に女郎花 支考
鹿小屋を葺く刈萱をたばねけり 古川芋蔓
萱刈の廃る日そこに見えてをり 高澤良一 石鏡

以上
by 575fudemakase | 2014-10-31 00:25 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

末枯

末枯

例句を挙げる。

おほばこの葉は末枯れずありにけり 立子
からげられ末枯はやき唐沙滲 八木林之介 青霞集
きちきちの密々として末枯るる 木津柳芽 白鷺抄
ことごとく顔に匂へり末枯は 裕
この一路幻住庵へ末枯るゝ 菅裸馬
この杖の末枯野行き枯野行く 高浜虚子
せゝらぎは母の唄めく野は末枯 岩田昌寿 地の塩
たまきはる生きの炉明り末枯るゝ 林原耒井 蜩
つり橋まで来て戻るなり末枯るゝ 及川貞 榧の實
にび色の浦より低く末枯るる 文子
のぼりつめ風船かづら末枯し 葛籠 貴好子
ひかり飛ぶものあまたゐて末枯るゝ 秋櫻子
ひつじ草はなればなれに末枯れし 倉田紘文
ひとり身やどの道行くも末枯れて 菖蒲あや
ふるさとに近づく心末枯るゝ 高野素十
まぼろしでありたき城を末枯に 篠田悌二郎
みちのくは稲刈終へて末枯れて 高濱年尾 年尾句集
ものゝ情濃く薄く芝末枯れぬ 楸邨
わが書斎末枯色のあかるさに 瀧春一 菜園
イエス立つ野はことごとく末枯るる 有馬朗人
ダムたぎつ末枯そめし多摩川原 及川貞 榧の實
ビル空へ伸びて名城末枯るる 山田弘子
一世すきとほる末枯朴の丈 殿村莵絲子 雨 月
一山の蝉の木末枯れ立つ シヤツと雑草 栗林一石路
一行之書即一瓶之花卉末枯 中塚一碧樓
下総へ馬を運びて末枯るる 斉藤夏風
何の木々いぶかるのみに末枯れて 及川貞 榧の實
何を見てもドラム罐見ても末枯るる 加倉井秋を 午後の窓
何草の末枯草ぞ花一つ 暁台
使はざる指よりしびれ末枯れぬ 朝倉和江
傘もたで来て末枯の雨に濡る 成瀬桜桃子 風色
全山が鳴り末枯の一葉が鳴る 加藤秋邨 野哭
力草力失ひ末枯るる 大橋敦子 勾 玉以後
北門のころげ礎石や末枯るゝ 野村喜舟
南国の熔岩に末枯れゆくものと 稲畑汀子
地震の禍を留め六甲末枯るる 稲畑廣太郎
城壁の石に育ちて末枯るゝ 稲畑汀子
塔を背に末枯の野に立つも旅 五十嵐播水 埠頭
壁の絵は鳥か獣か末枯るる 皆吉司
壷に挿す末枯どきのものばかり 奥田智久
夕方は近所賑やか末枯るる 爽波
外科病棟何かが軋み末枯るる 中村明子
大潟村末枯道を切り結び 岸田稚魚
子の家の末枯れしバラ見つ別れ 高木晴子 花 季
子規庵の末枯すすむ糸瓜棚 伊藤いと子
家うちも末枯いそぐ屋敷神 河野南畦 湖の森
家郷末枯れ旅人として山見をり 小松崎爽青
密々と夕雲満たす末枯野 斎藤道子
密漁の鮭末枯に落しけり 大串 章
富士まとも簷の葡萄の末枯に 木村蕪城 一位
山の湯に男が白し末枯れて 久保田博
川端のさだまりて末枯れにけり 加藤賞範
己が色失せしものより末枯るゝ 藤崎久を
悉く十二町潟末枯るゝ 素十
振り返るわが家日当り末枯れぬ 岡本 眸
捨猫とゐて末枯るる野は寧し 原 裕
旅びとも海女の濡れ身も末枯れぬ 稲垣きくの 黄 瀬
日は力落して穂高末枯るる 雨宮抱星
曽良の墓末枯を見し目もて見る 有働 亨
朝顔の搦む力も末枯れぬ 京極杞陽 くくたち下巻
末枯といふはじまりのありにけり 神尾季羊
末枯といふ始まつてゐたるもの 蔦三郎
末枯といふ色ひとつのみならず 松岡ひでたか
末枯に一とき囲む燐寸の火 沢木欣一
末枯に一樹の松のありてよし 池内友次郎 結婚まで
末枯に一茶の国を通りけり 矢田挿雲
末枯に下ろされ立てる子供かな 中村草田男
末枯に人を恐れぬ狐かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
末枯に佇みて人やりすごす 西村和子 窓
末枯に吾子眼をとめて何思ふ 阿部みどり女
末枯に子供を置けば走りけり 岸本尚毅(1961-)
末枯に屈みゐる人大きな穴 田中裕明 山信
末枯に抱きたる児の頬ぬくく 福田蓼汀 山火
末枯に漂ひをりし蜘蛛の糸 波多野爽波 鋪道の花
末枯に転がり笑い測量士 徳弘純 麦のほとり 以後
末枯に遊ぶ原爆以後の子等 山本歩禅
末枯に錦木立てる門辺かな 河東碧梧桐
末枯のあかあかと新幹線通過駅 一ノ瀬タカ子
末枯のいろ集つて杭となり 上野泰 春潮
末枯のお稲荷様の電話鳴る 岸本尚毅 鶏頭
末枯のけぶらふ涯を想ひみる 林翔 和紙
末枯のころのよき月上りけり 久保田万太郎 草の丈
末枯のそよぎ始めを狼火山 伊藤京子
末枯のどこかに土管がきつとある 加倉井秋を 午後の窓
末枯のはじまつてゐる厨口 飴山實
末枯のひかりを妻と頒ちけり 本宮鼎三
末枯のゆきわたりたる園広し 牧野春駒
末枯の一枝むらさきしきぶの実 山口青邨
末枯の中より歩み起こしたる 大木格次郎
末枯の原をちこちの水たまり 高浜虚子
末枯の地の涯よりの声ともふ 野澤節子 黄 炎
末枯の地震の空間みて病めり 阿部みどり女
末枯の夕日むさぼるごとくあり 松村蒼石 雪
末枯の夕焼うつる布団かな 増田龍雨 龍雨句集
末枯の多摩の流れは垣の上を 阿部みどり女
末枯の家鴨の池も歌まくら 遠藤梧逸
末枯の小川に蝦の跳ねし音 瀧澤伊代次
末枯の山見しよりの一睡り 高野素十
末枯の広きに出づや虫聴きぬ 原田種茅 径
末枯の庭からつゝく勝手かな 尾崎紅葉
末枯の影おもしろし苔を踏む 『定本石橋秀野句文集』
末枯の径虫の音に近づくことなき 原田種茅 径
末枯の戸を押し妻の灯に戻る 五十嵐哲也
末枯の明るさありぬ善丁村 中村やす子
末枯の景より旅のはじまりし 阿部みどり女
末枯の朝皃小さし葉も花も 青々
末枯の桑の果なる町灯る 松本たかし
末枯の榕樹の気根崖に垂れ 高浜年尾
末枯の歩むにつれて小径現れ 高浜虚子
末枯の水たゝへある瓶二つ 阿部みどり女 笹鳴
末枯の汚斑大いなる襖かな 金尾梅の門 古志の歌
末枯の海へ足垂れ殉教像 有馬朗人 知命
末枯の狭庭風雨の朝くらく 瀧春一 菜園
末枯の舞台のあとにいつまでも 銀漢 吉岡禅寺洞
末枯の芝に日もなしちゝろ鳴く 雑草 長谷川零餘子
末枯の芝山道や龍膽花 寺田寅彦
末枯の花奉る涙かな 尾崎紅葉
末枯の萩に風出ぬ昼さがり 日野墓域
末枯の葛の葉畳土手をなす 高木晴子 花 季
末枯の蝶にふれしや如露の水 木津柳芽 白鷺抄
末枯の行く手金色仏おはす 澤井我来
末枯の近江に枕重ねつつ 柿本多映
末枯の野に立ちいまだなすことあり 野見山朱鳥
末枯の野に落日の力なく 浅野右橘
末枯の野の果て海を濃く刷けり 米沢吾亦紅 童顔
末枯の野路遠く人いつか無し 高浜年尾
末枯の陽よりも濃くてマッチの火 林火
末枯の頃の目につくいぼむしり 井上哲王
末枯の馬の眼に逢ふ草千里 加藤安希子
末枯の駅や顔なき人の数 馬場和子
末枯の黄昏の子を負いゆくのみ 昭
末枯は潮来芸者は土手を来る 峠
末枯は照らされ海はまつくらな 岸本尚毅 舜
末枯へ真白な兎走り出す 瀧澤伊代次
末枯も置くわが影も日のぬくみ 林翔 和紙
末枯やおどろに秋のみだれ髪 尾崎紅葉
末枯やねむらずなりしねむり草 鷹女
末枯やねむりの中に生理くる 寺田京子
末枯やはや落ちかゝる山の影 相馬遷子 山国
末枯やふざけゐし子も今本気 星野立子
末枯やをんなは常に胸を抱く 井沢正江 湖の伝説以後
末枯やサイロの見えてからの径 中田佳都美
末枯や一丁づつの仏さま 阿波野青畝
末枯や人の行手の野は淋し 正岡子規
末枯や人間の木は頭から 高澤晶子 純愛
末枯や何匹もゐる犬にあふ 五十崎古郷句集
末枯や動かぬものに石の影 島田芳恵
末枯や北指す牧の風向器 吉澤卯一
末枯や北風強く當る山 石井露月
末枯や十二人とは使徒の数 井沢正江 湖の伝説
末枯や単線海とわかれゆく 佐野良太 樫
末枯や吊革を手に騙しをり 石田波郷
末枯や四十路に急ぐわが月日 林翔 和紙
末枯や地鳴りしづかに電解炉 有働亨 汐路
末枯や坪前栽も世のごとく 白雄
末枯や墓に石置く石の音 岡本 眸
末枯や声どこまでも星鴉 堀口星眠 営巣期
末枯や女負ひ立つ米六斗 相馬遷子 雪嶺
末枯や小紙鳶上れる手古奈道 松藤夏山 夏山句集
末枯や少年すこし声変り 加藤あけみ
末枯や屈託の胸詩が亡び 猿橋統流子
末枯や帆綱干したる須磨の里 正岡子規
末枯や影をもつもの持たぬもの 高木晴子
末枯や御空は雲の意図に満つ 草田男
末枯や徳女の茶屋を尋ねゆく 松藤夏山 夏山句集
末枯や心事他人に言ふを得ず 風三楼
末枯や怒濤あびしか梧桐林 渡辺水巴 白日
末枯や掘り出し人形まつ白し 龍胆 長谷川かな女
末枯や日当れば水流れ居る 温亭句集 篠原温亭
末枯や暮雲平かに奥州路 露月句集 石井露月
末枯や根からも枯れる虫の声 也有
末枯や流雲の端ささくれて 高橋沐石
末枯や海へ投げ込むもの持たず 対馬康子 吾亦紅
末枯や潮来芸者は土手を来る 森田峠 避暑散歩
末枯や真青にせまる空一つ 井沢正江 一身
末枯や石に錆置く忘れ鎌 馬場移公子
末枯や砂丘に命零しつつ 河野美奇
末枯や羽織又着て句をつくる 龍胆 長谷川かな女
末枯や胸に灯ともる二三言 田川飛旅子 花文字
末枯や舞踏は膝に顎うづめ 中田剛 珠樹以後
末枯や舟は下るぞ面白き 成美
末枯や茶滓こぼるゝ草の垣 北枝
末枯や行きつゝ猫の走り出す 中村草田男
末枯や襟かき合す扇折 井上井月
末枯や諸勧化出さぬ小制札 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
末枯や身に百千の注射痕 日野草城
末枯や配線多彩な捨てテレビ 奈良文夫
末枯や野水に映る梅嫌 菅原師竹句集
末枯や障子にかゝる雨の音 金尾梅の門 古志の歌
末枯や雨の降り澄む茶の木原 吉武月二郎句集
末枯や鞄の皮の匂ひして 和田耕三郎
末枯や馬も餅くふ宇都の山 其角
末枯や高熱なるときうら若し 野澤節子 黄 瀬
末枯や鯉田の中に魚の影 岸田稚魚
末枯るるもののこすのみ地獄谷 不破 幸夫
末枯るるもの皆光れ夕日落つ 西田孤影
末枯るる人差指は星指し指 池田澄子
末枯るる今日何の日の昼花火 宮津昭彦
末枯るる歯朶に素足の聖母像 堀口星眠 営巣期
末枯るる空家まだゐる牛の顔 加藤知世子 花寂び
末枯るる草に沈みて鳴けるもの 石塚友二
末枯るる菊のごとくに城残り 成瀬正とし 星月夜
末枯るゝものとしてまた美しく 村上三良
末枯るゝものばかり溶岩原の景 高濱年尾
末枯るゝ事の早さよ茄子売 桃隣
末枯るゝ杉の下道歯朶薊 正岡子規
末枯れつつもその性愛しおじぎ草 阿部みどり女
末枯れてしまへば心易かりし 倉田紘文
末枯れてしまへば思ふこともなし 加藤楸邨
末枯れてなほ女郎花なりしかな 稲畑汀子 ホトトギス汀子句帖
末枯れてまた廃坑の現れる 穴井 太
末枯れてゆきて機屋に遠浅間 古舘曹人 樹下石上
末枯れてよりを剛たるねこじやらし 依光陽子
末枯れてゐることしるく月の道 波多野爽波 鋪道の花
末枯れて人の心の見えくるも 藤原たかを
末枯れて余呉川のよく曲りけり 細川加賀 生身魂
末枯れて國のためとは誰も言はぬ 田中 裕明
末枯れて家また朝夜おちつきぬ 及川貞 夕焼
末枯れて新らたなる声野に喚べり 斎藤空華 空華句集
末枯れて朱焔の日ありルオー展 水原秋櫻子
末枯れて河骨風にさときかな 春子
末枯れて流水は影とどめざる 鷲谷七菜子
末枯れて療園の峰地を歩む 有働亨 汐路
末枯れて真赤な富士を見つけたり 内藤鳴雪
末枯れて石にもどりし石舞台 つじ加代子
末枯れて翼なきもの地に潜む 有働亨 汐路
末枯れて花挿さぬ壺恥ぢゐたり 朝倉和江
末枯れて行くものばかりとは言へず 稲畑廣太郎
末枯れて野の落日のゆたかさよ 岡部名保子
末枯れて雨の煤煙みな低し 千代田葛彦 旅人木
末枯れぬどこまでも己れ紛れずに 千代田葛彦 旅人木
末枯れぬ丹生大前の磧草 石田勝彦 秋興
末枯れのひとつの裸形かくれなし 照敏
末枯れの多摩の流れは垣の上を 阿部みどり女 笹鳴
末枯れの天より吊られるごと出歩く 北光星
末枯れの漁村真澄の絵図の色 武藤鉦二
末枯れの空地の奥に富士を置き 阿部みどり女
末枯れの道あつまつて橋わたる 篠原梵
末枯れの顔燃ゆ病ひ変あるや 斎藤空華 空華句集
末枯れやカレー南蛮鴨南蛮 田中裕明
末枯れや国によこたふ最上川 蓼太
末枯れや子は描きなぐる金と銀 対馬康子 純情
末枯れや諸勧化出さぬ小制札 一茶
末枯れや鮠ひとすぢに蒼を刷く 河野南畦 『花と流氷』
末枯れをり谷は明るき松見せて 清水基吉 寒蕭々
末枯をきて寿司だねの光りもの 波多野爽波 『湯呑』
末枯を見はるかしゐて見てゐしや 篠田悌二郎 風雪前
末枯を誘ふ雨の日もすがら 畑紫星
末枯径吾妻よ胸をはり帰れ 石田波郷
末枯野佇てばゆきどのあるごとし 山田みづえ 忘
末枯野何か忘れてきし思ひ 中村苑子
杜若咲きて末枯肯んぜず 青畝
桑畑も末枯るゝ野のたぐひかな 尾崎迷堂 孤輪
水引の紅を尽して末枯るゝ 高木石子
水盤の石菖きたなく末枯れぬ 寺田寅彦
沼見えてより末枯るる香を纏ふ 加倉井秋を 午後の窓
津軽野の末枯ふかし母と佇つ 小松崎爽青
海底のごとくうつくし末枯るゝ 青邨
涸れ池へ生えおりし草も末枯るゝ 内田百間
溝蕎麦の末枯れもせで温泉の流れ 高濱年尾 年尾句集
潮いたみして末枯をいそぐなり 五十嵐播水 埠頭
熱すこしある末枯の日に酔ひぬ 稲垣きくの 牡 丹
牛の目のうつろにひかり末枯るゝ 成毛亀満
病めばもののはかなき草も末枯るる 日野草城
白樺にもたれて萩の末枯るゝ 阿部みどり女 笹鳴
砂丘にも末枯色といふがあり 谷口 君子
破船塊釘もろともに末枯るる 野見山ひふみ
空港や大末枯をいそぐなり 鈴木楢谷
籍けといふ末枯草を籍きにけり 石田勝彦 秋興
米洗ふそを末枯が囲みだす 森澄雄 雪櫟
紙漉く唄のよなあらぬよな末枯れに 内田百間 新輯百鬼園俳句帖
紫のもの紅に末枯るる 風生
腋はさむ鞄ことりと末枯るる 能村登四郎
舟揚げてあり末枯るるものばかり 浅倉里水
草の戸や末枯知らぬ水の味 乙二
草枕して末枯れは旅の匂ひ 野見山朱鳥
萩の葉の眠らずなりて末枯るる 阿部みどり女
蓼の花草末枯れて水白し 河東碧梧桐
薬草園くすりも毒も末枯れて 坂田栄三
蝦夷にうの岬にぽつんと末枯れて 星野椿
行きずりの音楽熱し末枯るる 堀口星眠 営巣期
行く方を何か忘れぬ末枯るる 中村汀女
言葉ありまた末枯をさずかりし 鈴木六林男 *か賊
踏み入りて末枯るるものすだくもの 境 雅秋
遊び鵜のまはり末枯初めにけり 岸田稚魚 『萩供養』
遠しとは旅末枯に跼むとき 稲垣きくの 黄 瀬
金魚一鱗末枯の庭わが愛す 山口青邨
鉄線の葉の末枯もその一つ 高浜虚子
門に立ち末枯明り鶏*むしる 福田蓼汀 山火
頂上の末枯いそぐ穂草かな 福田蓼汀 山火
風に立ち向ひつゝ末枯れしもの 高木晴子 花 季
風の日は千鳥のみをり末枯れて 秋光泉児
飛行機を出て末枯にもどりけり 飴山實 少長集
鵙鳴くや末枯の野に煙多し 加藤楸邨
鵜は蛇の如く泳ぎて末枯るる 岸本尚毅 舜
うらがれのたそがれの子を負いゆくのみ 三谷昭 獣身
うらがれのはるか遮断機ひかりけり 木下夕爾
うらがれの野の雨風をそへにけり 木下夕爾
うらがれの黄昏の子を負ひゆくのみ 三谷昭
うらがれや火の舌見せて瓦窯 木下夕爾
うらがれや遠樹は夕日うちかむり 木下夕爾
うらがれや馬も餅くふ宇都の山 其角
うら枯におはす穴太の仏かな 宮武寒々 朱卓
うら枯も親しからずやうす日さし 三溝沙美
うら枯やからきぬ見つる漆の樹 蕪村 秋之部 ■ 三井の山上より三上山を望て
うら枯や咲くつゆ草の瑠璃の雨 渡辺水巴
うら枯や田川もあぐる地震しぶき 西本一都 景色
うら枯や芥のやうな蜆蝶 細見綾子 花寂び
うら枯や茶かすこぼるゝ草の垣 立花北枝
うら枯るゝ蟋蟀夜も日もあらず 篠田悌二郎 風雪前
うら枯れていよいよ赤し烏瓜 太祇
うら枯れて浅草寺の銀杏かな 太田鴻村 穂国
うら枯れて雲の行衛や山の墓 飯田蛇笏 霊芝
うら枯れの野をゆく人や水の臭(かざ) 柿本多映
うら枯れや家をめぐりて醍醐道 蕪村
毒あるも無きも薬草うらがるる(東京薬用植物園) 上村占魚 『かのえさる』
犬にさへ逢はぬまで徑うらがるる 上村占魚 『方眼』
竹藪の鵯上戸うらがれて 史邦 芭蕉庵小文庫
末枯れの百草を刺す野路の雨 高澤良一 暮津

以上
by 575fudemakase | 2014-10-31 00:22 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

下り簗

下り簗

例句を挙げる。

この村に雨の日続く下り簗 尾石 ゑい
その後の下り簗知るすべもなし 菖蒲あや あ や
つくろひて水を濁せる下り簗 伊藤敬子
ぬめり来る一枚の水下り簗 大橋敦子
ひきしまる山の容チよ下り簗 中村若沙
ひとうねりごぼりと消えて下り簗 加藤知世子
ほどほどの濁りたのもし下り簗 上村占魚
またしても狐見舞ひぬ下り簗 召波
ものの葉に魚のまとふや下り簗 大祗
一蝶のときたま飛べり下り簗 成瀬正俊
下り簗さして径あり石の上 前田普羅 飛騨紬
下り簗つぎつぎ車窓又トンネル 高濱年尾 年尾句集
下り簗はびこる葛の下に見ゆ 水原秋櫻子
下り簗一奔流のたのもしき 高野素十
下り簗四方の山々雲の中 京極杜藻
下り簗外れたる稚魚の群れ泳ぐ 大塚とめ子
下り簗守る一枚の障子かな 清崎敏郎
下り簗山の木の実を溜めてをり 中根美保
下り簗川蟹くろき甲羅着て 野澤節子
下り簗抜けたる水の大人しく 辻桃子
下り簗時々蝶のきては去る 星野立子
下り簗淙々雨をまじへけり 荒井正隆
下り簗煽り越えして増水す 茨木和生 丹生
下り簗白々月の磧かな 松根東洋城
下り簗蟹現れて鮎を喰ふ 花島一歩
下り簗見てその辺の真葛見て 大峯あきら
下り簗見に行かんさして遠からねば 高濱年尾 年尾句集
下り簗走り過ぎゆく山の雨 椎橋清翠
下り簗越えゆく髪のごとき水 今瀬剛一
下り簗霧明けゆくにしぶきをり 谷迪子
今をふと見まじく下り簗地獄 皆吉爽雨
傘雫したたかなりし下り簗 古舘曹人 樹下石上
大うねりして水青し下り簗 加古宗也
大川を斜めに断てり下り簗 楠目橙黄子 橙圃
天領の水集りし下り簗 千石 比呂志
山並のその頃となり下り簗 浅賀渡洋
山川の斯かるところに下り簗 高浜虚子
山河ここに集り来り下り簗 高浜虚子
川中に蛇籠踏ん張る下り簗 手島知韶
川舟の陸上げされて下り簗 羽吹利夫
平らなる水曳き絞り下り簗 三井紀四楼
年々の眉雪のつどひ下り簗 宇佐美魚目 天地存問
恐ろしきほど町高き下り簗 阿波野青畝
月に出て人働けり下り簗 前田普羅 飛騨紬
月光の音となりたる下り簗 小島花枝
水に月崩れて暗し下り簗 櫛原希伊子
水ひかり膨れ極まり下り簗 菖蒲あや あ や
洲に下りて爪立つ鴉下り簗 皆吉爽雨
洲の先に早瀬しづかの下り簗 石川桂郎 高蘆
渦見せて大河馳せゆく下り簗 水原秋桜子
激し寄る四方の川水下り簗 星野立子
眉間まで寄せくる水や下り簗 本多静江
簗手あふるゝ水勢となり下り簗 長谷川かな女 雨 月
紅葉からまづかかりけり下り簗 小林一茶
蘆の穂がのぞく無聊の下り簗 堀口星眠 営巣期
行く秋の所々や下り簗 蕪村
透きとほる時が去りゆく下り簗 平畑静塔
郡長の来て歩きけり下り簗 前田普羅 新訂普羅句集
青竹を足して繕ふ下り簗 山田節子
人かげの尖りて立てり秋の簗 宮津昭彦
秋の簗動転したる鮎かゝる 小林康治 玄霜

以上


by 575fudemakase | 2014-10-31 00:16 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

崩れ簗

崩れ簗

例句を挙げる。

しわしわと月光さすや崩れ簗 橋本鶏二 年輪
すさまじき乱鴉に暮れて崩れ簗 竹冷句鈔 角田竹冷
もの言はでつくろうて去ぬ崩れ簗 蕪村
よもすがらせせらぐ音や崩れ簗 長谷川櫂 蓬莱
一本の竹空へ立て崩れ簗 今瀬剛一
両岸の漆紅葉や崩れ簗 西山泊雲 泊雲句集
中流のあやしき波は崩れ簗 五十崎古郷句集
休診の父と来てをり崩れ簗 黒田杏子 木の椅子
何為せしおのれか崩れ簗見入る 下村槐太 天涯
南総の赤壁のもと崩れ簗 松藤夏山 夏山句集
太郎籠残して峡の崩れ簗 道川虹洋
富士川の淡き夕日に崩れ簗 上田孤峰
小屋がけのあともそこらに崩れ簗 福井圭児
山の影かぶさり冷ゆる崩れ簗 今井時子
峡の家たづねあぐみぬ崩れ簗 村山古郷
崩れ簗あるらし水の盛り上り 山本 祐三
崩れ簗かゞやく水尾を曳きにけり 五十崎古郷句集
崩れ簗ならめひよろひよろひよろと 阿波野青畝
崩れ簗下に小さき魚の影 船坂ちか子
崩れ簗乾きしままの川日和 鈴鹿野風呂
崩れ簗夜は荒星をかかげたる 加倉井秋を 『欸乃』
崩れ簗天城へしぐれ移りけり 佐野梧朗
崩れ簗崩れ番小屋ありにけり 草間時彦
崩れ簗川は素通りしてゐたり 塩川雄三
崩れ簗杭一本残りけり 正岡子規
崩れ簗水のすぎゆくままにかな 長谷川櫂 蓬莱
崩れ簗水徒らに激しをり 高浜虚子
崩れ簗水賑はつてゐたりけり 中原道夫
崩れ簗石飛びとびに水激つ 山口草堂
崩れ簗繕ふ人に灯を向くる 橋詰 一石
崩れ簗芥よせつつ水清し 山田八重椿
崩れ簗見て宿に著く日短 高濱年尾 年尾句集
崩れ簗見れば見えをりしぐれつつ 加藤楸邨
崩れ簗観音日々にうつくしく 大峯あきら
崩れ簗雪嶺のぞみそめにけり 五十崎古郷句集
川添や雨の崩れ家崩れ簗 一茶
帰り来る魚のすみかや崩れ簗 内藤丈草
常のまゝ利根川流れ崩れ簗 田中暖流
日のありしところに月や崩れ簗 小原啄葉
明日閉ぢる水音高き崩れ簗 芝 由紀
杉の秀に大き鴉や崩れ簗 佐久間慧子
水に日の透りて暗き崩れ簗 江見渉
水のほかかかるものなし崩れ簗 山崎ひさを
水底も紀の国あかり崩れ簗 鷲谷七菜子 花寂び
清滝や紅葉がくれに崩れ簗 比叡 野村泊月
白波の立ち止まざるに崩れ簗 野見山朱鳥
米をつく舟もすさまし崩れ簗 河東碧梧桐
舟一つつなぎて崩れ簗尻に 皆吉爽雨 泉声
草の根の生きてかかりぬ崩れ簗 後藤夜半
行く秋の流材いたみ崩れ簗 高濱年尾 年尾句集
阪東小太郎崩れ簗にてちよろちよろす 平畑静塔
髪冷ゆと女が言へり崩れ簗 西宮正雄

以上



by 575fudemakase | 2014-10-31 00:15 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

例句を挙げる。

あたたかく山へのぼるや去歳の萱 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
えぞ萱草遠見に過ぎる島の墓 文挟夫佐恵 遠い橋
おのづから急流に触れ萱育つ 廣瀬直人
かなかな木魂山萱の葉のふれ合へる 臼田亜浪 旅人
さゝ鳴や雪にひとたまりもなき萱に 篠田悌二郎
すいと虫はなてば萱を泳ぎける 田島 秩父
すぐろなる遠賀の萱路をただひとり 杉田久女
やおろちのうみの初東風萱鳴らし 高澤良一 ももすずめ
ゆく雲の遠きは萱にかくれつゝ 石橋辰之助 山暦
ゆふだちのすだれしづくを萱庇 荒井正隆
わたくしは*しんにゅうに首萱野を分け 澁谷道
われを吹き萱過ぐ風のうしろ見ゆ 森澄雄
サイダーや萱山颯と吹き白み 董糸
スケートの影を走らす萱黄なり 岡田 貞峰
ピリカ雲火の匂うまで萱野原 川田由美子
一樹なき萱山燦と二月果つ 村上 光子
七夕の雨しとどなり萱草 堀口星眠 営巣期
七月や萱は切先豊かにて 上野 燎
三月や茜さしたる萱の山 芥川龍之介 蕩々帖〔その二〕
下萌にたれたる萱の日ざしあり 銀漢 吉岡禅寺洞
亀岩までとびしま萱草立ち騒ぐ 田口一穂
人声は灘より起る萱の絮 木村蕪城 寒泉
余寒惜む独りかも風の萱に来たり 渡辺水巴 白日
兵(つわもの)の幾人かくす萱一本 宇多喜代子
初日いま阿蘇の萱原さゞめかす 原三猿子
初茸のあかときいろに萱の苞 古舘曹人 樹下石上
十年ののちのわが子と萱の丈 飯田龍太
南風の径はるけくも萱を縫ふ 石橋辰之助 山暦
南風やゆく人まれに萱さわぐ 石橋辰之助 山暦
去歳の芽は骨萱よこの芽も長けぬ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
口ぼその萱の穂影にあつまりぬ 斉藤夏風
古萱の丈おそろしき柳絮かな 石田勝彦 秋興
古萱を黄に伏せ山のぬくもるよ 村越化石
合掌の一集落の萱を干す 杉浦 東雲
吊橋は低くはあらず萱負うて 下村梅子
吹くからに秋といふ字や萱の原 清水径子
塊を擡げて萱の総芽立ち 西山泊雲 泊雲句集
墓詣むしりし萱の芽立ちゐる 松藤夏山 夏山句集
夕月の山をうしろに萱負うて 橋本鶏二 年輪
夜を籠めて萱の葺面(つら)もがり笛 高澤良一 随笑
大寒の牛鳴いてゐる萱の中 飯田龍太 山の木
寒き日がわたり萱鳴り萱鳴れり 加藤楸邨
寒晴の谷戸は萱山開きかな 皆川白陀
寒晴れの萱生に下ろし鳥鳴ける 金尾梅の門 古志の歌
屈託の萱あをあをと手摺に手 稲垣きくの 牡 丹
島ははやきち~ばつた萱にとび 清崎敏郎
崖しづくしたたる萱や紅葉しぬ 飯田蛇笏 山廬集
年神の来て萱葺の軒雫 山本洋子
径どれも萱原へ外れけもの径 千田一路
心飛ぶ萱の新穂の波に乗り 細見綾子
怖ろしき夢みてをらむ萱の穂も 河原枇杷男 定本烏宙論
慈光院萱葺きかへて野にたかし 山田孝子
手折らんとすれば萱吊ぬけて来し 杉田久女
抜け易き櫛にもあるか萱かつぎ 松藤夏山 夏山句集
捨て萱焼く 未明湖北の大事な火 伊丹公子
日と風と大石橋を萱車 成田千空 地霊
日の萱に逃避の我や笹鳴ける 相馬遷子 雪嶺
明けはずむ穂萱を馬の扱きゐたり 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
本堂の床下くゞり萱運ぶ 高浜虚子
次郎も出征みくに萱屋のぺんぺん草 中村加津彦
水鳥のたちぬ提灯萱に照る 清原枴童 枴童句集
河音の未だにこもる萱焚火 栗生純夫 科野路
泳ぎ子の萱草手折りゆきにけり 鈴木貞雄
湯治場や黄なる萱草得て帰る 正岡子規
湯煙に人現るゝ時萱草も 高浜虚子
濤音の萱にはずみて明治節 齋藤玄 飛雪
火となりし萱のたふるゝ野火の中 佐藤寥々子
焼山の白き道ゆく萱負女 丸山海道
煙しみるなじみの小みち萱車 成田千空 地霊
生涯の淋しき醜女萱を負ふ 橋本鶏二
田舟干すほとり高萱紅葉かな 乙字俳句集 大須賀乙字
白樺やのこる古雪萱の中 誓子
白露や家こぼちたる萱のうへ 蕪村遺稿 秋
秋の日や萱に道ある山畑 尾崎迷堂 孤輪
秋風や道の辺の萱震ひ立ち 松藤夏山 夏山句集
笹鳴に逢ふさびしさも萱の原 加藤楸邨
笹鳴や海女が入る温泉の萱がくれ 宮下翠舟
老いぼれて菊より萱の枕よし 後藤綾子
老鶯や萱の中なる薪の棚 大橋櫻坡子 雨月
耶蘇祀り摘草峠野萱草 小原菁々子
肩胛骨双つあらわに萱を抱く 渋谷道
背負はれし萱が歩いてゆけるなり 石井とし夫
脚長の足早に蹤き野萱草(石川桂郎氏宅) 野澤節子 『存身』
荒壁に萱の束をば立てかけし 大石暁座
萱かつぎ閉せる家に戻りけり 松藤夏山 夏山句集
萱かつぎ風に追はれて帰るなり 松藤夏山 夏山句集
萱に臥て躬を秋雲にまみれしむ 中島斌男
萱に雪鳴る米山村は亡びけむ 安斎櫻[カイ]子
萱の傷つめたくゆびをはしりけり 高井北杜
萱の原近くにあれば寝覚めがち 清水径子
萱の日や薄煙上げし馬糞茸 島村元句集
萱の朱一すぢ走る炭俵 丸山しげる
萱の根に沁む邯鄲のきかれたり 村越化石 山國抄
萱の秀に蜻蛉とまらんとする耀きなる 北原白秋
萱の穂に夕日ふれては燃えにける 和田朴人
萱の穂に荒霊ひとつ憑きゐたる 河原枇杷男 定本烏宙論
萱の穂のあちこち向いて日和かな 皿井旭川
萱の穂の稚き月を眉の上 加藤楸邨
萱の穂を訪ひゆくも旅の袖 齋藤玄 飛雪
萱の空たちまち晴るる時雨かな 橋本鶏二 年輪
萱の芽を見たり地獄の鳴るほとり 楸邨
萱の葉の縺れほどけて蝸牛かな 島村元句集
萱の離々これのみ雪の暮の景 篠田悌二郎
萱ふかく雪照る雲雀きこえくる 金尾梅の門 古志の歌
萱わけて眼は寒波にひかれをり 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
萱わけて馬の来てをる泉かな 秋櫻子
萱を積む馬とゆくえを同じうす 渋谷道
萱を負ひ雀色時おし黙る 山口誓子
萱一駄負ひ大風を負うて来る 米田一穂
萱作務のはじまつてゐる水平寺 山口水士英
萱傷に少し旅情のごときもの 岩岡中正
萱厚く氷室を葺きて白蛾湧く 吉田紫乃
萱原にいまはあまねき初日かな 清原枴童 枴童句集
萱原にちん~ちろり風がふく 寺田寅彦
萱原のしら~明けて馬の市 長谷川素逝
萱原の中直通の電話線 茨木和生
萱原の日に埋もれて薬掘る 木村蕪城
萱原の笹原続き二月かな 尾崎迷堂 孤輪
萱原やぬるでの紅葉風に照る 高田蝶衣
萱原や贅さす百舌の声せわし 寺野守水老
萱垣の千の筋目の日に産屋 成田千空 地霊
萱堂に雨声鐘声秋の蝉 百合山羽公 寒雁
萱塚に心もとなくなる日射し 佐藤冨士男
萱奔る野火や煙の追ひつけず 羽部洞然
萱屑のかゝりし髪を梳きにけり 松藤夏山 夏山句集
萱山に凧あげて友なかりけり 大須賀乙字
萱山に濃き影落し薬掘る 皆川盤水
萱山に雨降り足りし長夜かな 内藤吐天
萱山の巌に鷹の舞ひ下りぬ 橋本鶏二 年輪
萱山の巌を鷹の栖とす 橋本鶏二 年輪
萱山を僧侶山とふ気に入りし 後藤綾子
萱干してある鐘楼のまはりかな 山本洋子
萱廂いつまで雫る夕とんぼ 林原耒井 蜩
萱束にもたれ葺替ひと休み 石田勝彦 秋興
萱編めり離村を前の墓囲 三嶋隆英
萱背負ひ礁づたひに老の腰 岸風三樓
萱芒生き死にの世の揺れてをり 櫛原希伊子
萱茸の厚さの涼や囲炉裏酒 石川桂郎 高蘆
萱草に立つ浪音や桂浜 高木晴子
萱草に雷遠き日かげかな 子規句集 虚子・碧梧桐選
萱草の影澄む水を田に灌ぐ 西島麦南
萱草の捧げたる朱に帰り来し 細見綾子 黄 炎
萱草の芽に雨しみる田経かな 飯田蛇笏
萱草やこゝに芽をふく忘草 子規句集 虚子・碧梧桐選
萱草や林はづれに牧師館 友岡子郷
萱草や浅間をかくすちぎれ雲 寺田寅彦
萱萌えし伊豆の峠の雪を踏む 石橋辰之助 山暦
萱襖くぐりなやみぬささ鳴けり 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
萱負うて束ね髪濃き山処女 星野麦丘人
萱負うて灯りし町をつゞきゆく 石井とし夫
萱負せ牧より帰す牧の牛 原 柯城
萱負ふて束ね髪濃き山処女 星野麦丘人
萱負ふて萱の中より現はれし 大橋もと女
萱負へば音の変りし夕あられ 藤原 如水
萱馬のたてがみ涼し波が越す 伊藤いと子
萱鳰があり粟鳰も稗鳰も 橋本鶏二
萱鳴らす山風霧を晴らしけり 金尾梅の門 古志の歌
蝶々や日中滲める萱の茎 中島月笠 月笠句集
蝶さきに真野の萱原吹かれゆく 角川源義 『西行の日』
蝶漸く風の萱葉をのがれ出し 島村元句集
親茎につく萱の芽のひらきけり 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
負ひ被る萱におされつ落葉風 大須賀乙字
踏みこみし萱のほとりの雪深く 木村蕪城 一位
遠雷や萱わけて人出できたる 木下夕爾
邯鄲の縷々と翳抱く萱ばかり 山口草堂
野火移りゆくに遅速の萱の丈 稲畑汀子
野萱草もつてのほかの恋をして 大石悦子
野蒜野萱草大荷物山家に入る 金子皆子
金色に萱立てかけし馬の墓 村越化石 山國抄
鎌鼬萱負ふ人の倒れけり 水原秋桜子
鐘見えぬまで萱積みし鬼女の寺 西本一都 景色
雉子啼くや茶屋より見ゆる萱の中 蓑立 俳諧撰集「藤の実」
雪原につんと彳ちたる萱いっぽん 高澤良一 随笑
雪霞野の萱骨のとげとげし 臼田亞浪 定本亜浪句集
霙るるや猟夫踏み来る水辺萱 金子 潮
霧にふれ萱の白緑暁けきりぬ 下村槐太 天涯
霧籠めの一夜を厚き萱の簷 栗生純夫 科野路
風さそふ遠賀の萱むら焔鳴りつゝ 杉田久女
風除けの萱にはりつく浜の砂 宮下邦夫
馬繋げ新茶かをらす萱が軒 蝶夢
高原涼し靄の刻すぎ朝日の萱 古沢太穂 古沢太穂句集
鳴きやみし囮や萱にあまねき日 水原秋櫻子
鶯や礁へ落とす萱の径 富安風生
鼠穴天には荒れる萱ばかり 安井浩司 汝と我

以上


by 575fudemakase | 2014-10-31 00:13 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

陸稲

陸稲

例句を挙げる。

ここに又陸稲のみどり島の冬 深見けん二
そこばくの陸稲を掛けて祖谷に住む 山下 輝畝
はじめから寺の真下に陸稲つくれる 飯島晴子
ゆさゆさと陸稲のさやぐ畦ゆけり 粟原和子
夕べはや露の上りし陸稲かな 白石天留翁
山国や陸稲畑に父の糞 金子兜太
慈雨到る君の陸稲に及びしや 川端龍子
掌に掬ふ陸稲の垂り穂軽きかな 茅舎
摘み干せる陸稲莚の五六枚 井手 芳子
日おもてへ靄のなだるる陸稲かな 木村蕪城
旱天の闌くる露もつ陸稲畠 石原舟月
晴(めのたま)や陸稲涅槃の雨上り 折笠美秋 虎嘯記
月のぼるまでひとりなり陸稲刈る 石井保
朝風の白きを追ふて陸稲刈る 臼田亜浪
武蔵野の陸稲を守る案山子かな 松藤夏山 夏山句集
湯治場のまだ茎あをき陸稲刈 中拓夫 愛鷹
濤音や陸稲の中のきりぎりす 増田龍雨 龍雨句集
火の国の厄日過ぎたる陸稲の香 大島民郎
痩せ陸稲へ死火山脈の吹きおろし 西東三鬼
登高やはろか平に陸稲刈 芝不器男
終点や団地へ陸稲孕みつつ 原田種茅
草よりも風脚迅し瘠陸稲 菅原多つを
開墾小屋の孤影に陸稲照り映えぬ 滝春一
陸稲の穂掌に受けて掌にのこる火山灰 大岳水一路
陸稲刈るにも赤き帯紺がすり 西東三鬼
馬鈴薯の花や陸稲(はたごめ)蒔き納め 冬の土宮林菫哉
鳴子縄たれてみのりし陸稲かな 高浜虚子

以上


by 575fudemakase | 2014-10-31 00:09 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

「夜のぶらんこ」を読んで

「夜のぶらんこ」を読んで
土肥あき子 未知谷 2009.3.3

共鳴句は以下。

夜のぶらんこ都がひとつ足の下
逃げ水を詰めて駱駝に瘤ふたつ
一面の干潟に千の息づかひ
青葉光つまづいて止むオルゴール
新涼やたとへば広き男の背
腕時計外してよりの夜長かな
あちらからどっと来ました渡り鳥
秋の野になりかけてゐる古戦場
文楽のをんなひかへめ雪催
はじまりは終りのつづき冬木立
サンドイッチ頬ばるスケート靴のまま
鷽替の鷽も器量で選びけり
曇天や田螺の泡のひとつづつ
春の夜の電球切れしときに音
トーストにさまよふバターうららけし
煙突のあったところに春の雲
初夏やひと歩くとき一列に
行きあたりばったり夏の水平線
待針の頭揃へて朝寒し
アイロンの前では正座秋日和
小春日や仮縫に身を固くして
匙の背に湯冷めの顔を映しけり
枯るるにも力の限り八重葎
数へ日のともあれわたくしの居場所
足跡の水辺に集ひあたたかし
蝌蚪に手の出てきて人に親不知
行く春や「燃えるゴミ」としての机
木洩れ日のひとつ星型夏に入る
守宮鳴く夜景のどれも働く灯
ぐったりと引きあげられし水中花
端居して昔話のまた同じ
長寿てふひとりぼっちの昼寝覚
水少し皺寄り金魚翻る
ことごとく秋の花火の流れやすし
おしまひとつぶやき蛇は蛇穴へ
燃えさしのどっと落ちたる虫送り
天高く飴細工よく伸びてをり
茶の花やさびれつくしてなほ本家
老人のゆっくり笑ふ石蕗の花
空に行きたがらぬ煙十二月
点滴のふるへて落ちる冬銀河
頷いてばかり葛湯を前にして
あたたかや人にくるぶしぼんのくぼ
磯遊びして手のひらが先づ器
蝌蚪生るるしゃがめば並ぶ膝頭
花疲れして懐の猫が邪魔
初夏の折ってたたんで紙の舟
花樗子供にもある昔の日
月涼し人に生まれて人の妻
眉間ひろびろと木犀香りたる
レモン掌に弾ませてから買ひにけり
冬ぬくし鳥の言葉はわからねど
冬眠の心音いつか波の音
沢音を絶やさず山の眠るなり
初夢にものを探してゐるばかり
水仙の活けられてよりあらぬ向き
花曇市場のどこも濡れてをり
濡れ縁といふ春の雲見るところ
夏薊一目散に雨あがる
糸通すために呼ばるる夏座敷
かなかなに仕舞ひ忘れたやうな雲
音立てて波の折れたる敗戦忌
こらしめのやうに胡麻打ち続けをり
芋虫のところどころに力瘤
七五三終へて鳩より眠たげに
猟犬に遠吠えといふ独り言
待春といふくらがりの子供部屋
心配の種の芽吹きてをりしかな
犬の仔の腹につむじやあたたかし
けんもほろろけんもほろろと囀りぬ
目覚めれば蛙としての一日目
川底に魚は影置き薄暑かな
月涼し斜めに崩すものに膝
にんげんの身体に折目涼新た
灯芯の油に映る良夜かな
秋澄みて真っ直ぐ伸びる貝の舌
長き夜や舟に寝かせる櫂二本
秋蒔の毛羽立ってゐる花の種
木枯や猫の話を猫にして
暖炉燃ゆ手につくづくとうらおもて

以上
by 575fudemakase | 2014-10-30 09:35 | 句集評など | Trackback | Comments(0)


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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《方法1》 残暑 の例句を調べる
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(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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