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枯芝

枯芝

例句を挙げる。

これや天使われより低く枯芝に 林翔
しなやかにふくよかに芝枯れてあり 油布五線
たばこの甘さ枯芝に置く郵便帽 磯貝碧蹄館 握手
ふらここへ枯芝の上走りけり 高木晴子 晴居
をとめ羨し枯芝にまろび芝着けて 及川貞 夕焼
ゴルファーらヘアピンのごと枯芝に 川崎展宏
サーカスの犬枯芝をゆく犬見る 古屋秀雄
ラヂオより拍手万雷芝枯らす 山口誓子
何せむとわが枯芝に火を焚きゐし 大石悦子
佳き庭の石打ち沈み芝枯るゝ 高木晴子 花 季
兄いもといつも一緒に枯芝に 安住敦
四百年経し枯芝や興聖寺 児嶌すぐろ野
基地沿ひの車窓や枯芝明りのみ 奈良文夫
墓に焚く新聞紙の火枯芝に 原裕 葦牙
太陽の直射平らに芝枯るる 阿部みどり女
子ども枯芝すべりくる水辺でとまる シヤツと雑草 栗林一石路
子を追へる親は緩走芝枯るる 林翔 和紙
市の音すれど静かや芝枯るゝ 阿部みどり女 笹鳴
師の忌はや枯芝に日を浴びゐつつ 原裕 葦牙
意味が字となり石となる枯芝に 鷹羽狩行
扁平な巨獣老いたり芝枯るる 林 翔
手毬かくる狐ケ崎の枯芝に 萩原麦草 麦嵐
朝の日や老いたる鹿が枯芝に 関戸靖子
未来図や枯芝に置く椅子二脚 林 翔
枯芝かげろふ誰かこほこほと 北原白秋
枯芝があつて幸福さうな家 加倉井秋を
枯芝が少し蘇鉄がたくさんに 京極杞陽 くくたち下巻
枯芝こまやか女は裾を彩重ね 加藤かけい
枯芝で彼らは実にほがらかな 藤後左右
枯芝と枯蔓映りゐる鏡 京極杞陽 くくたち上巻
枯芝にいのるがごとく球据ゆる 横山白虹
枯芝にうしろ手ついて何も見ず 角川春樹
枯芝にうつくしき日はとどまれり 吉武月二郎句集
枯芝にうはさの影のさしにけり 久保田万太郎
枯芝にこもる日ざしを背に吸ふ 篠原梵
枯芝にそびえ澄みたるつくしかな 大橋櫻坡子 雨月
枯芝にねむり虚空に出てゆきぬ 横山白虹
枯芝にはなしは尽きじ梅日和 五十崎古郷句集
枯芝にまみれて女学生楽し 小林拓水
枯芝に一団欒のブーツ脱ぐ 館岡沙緻
枯芝に九品浄土のみぢんたつ 川端茅舎
枯芝に今まで人のゐたらしく 西村和子 夏帽子
枯芝に俳諧の国子供の国 福田蓼汀 山火
枯芝に円陣若く爆笑す 木下夕爾
枯芝に四温の月を眺め立つ 大場白水郎 散木集
枯芝に回転木馬影まはす 慶伊邦子
枯芝に夕日の山の影のびる 伊藤淳子
枯芝に嫁ぐ日までの犬を愛す 大島民郎
枯芝に寝て天国と対ひ合ふ 辻岡紀川
枯芝に居て常春や舞子浜 鈴鹿野風呂 浜木綿
枯芝に山裾流れ来てをりぬ 五十嵐播水 埠頭
枯芝に影長く竿に旗あらず 久米正雄 返り花
枯芝に彳てば歳月なきごとし 西村和子 かりそめならず
枯芝に忘れたる如待たされて 川上明女
枯芝に投げ出す脚を犬跳び越え 神田敏子
枯芝に折れ線香のみどり濃き 館岡沙緻
枯芝に日あたり来よと思ひゐつ 細見綾子 花 季
枯芝に日ざしは語る如くあり 稲畑汀子 春光
枯芝に日当たりをれば心足り 西村和子 夏帽子
枯芝に最も広く雪残る 高浜年尾
枯芝に来て足音のなくなりし 山下しげ人
枯芝に柩の夫を連れ還る 横山房子
枯芝に校塔の影来る時刻 粟津松彩子
枯芝に椅子テーブルを下しくる 比叡 野村泊月
枯芝に煙草捨つひとりとなれる シヤツと雑草 栗林一石路
枯芝に煙草踏み消す直ぐは消えず 森田峠 避暑散歩
枯芝に生ひし蘇鉄と竜の髯 京極杞陽 くくたち下巻
枯芝に白猫飛ぶや黙読す 中拓夫 愛鷹
枯芝に紙飛行機の落ちて来し 佐々木 美乎
枯芝に置きて再びピアノ運ぶ 今井 聖
枯芝に置き雲の影相寄らず 木下夕爾
枯芝に置く田楽の衣裳櫃 民井とほる
枯芝に置く駅長の赤き帽 松山足羽
枯芝に膝抱く乙女ジードの忌 和田 祥子
枯芝に蓬薊と萌えて居し 松藤夏山 夏山句集
枯芝に身を置く心澄ましむと 加藤楸邨
枯芝に転べば肝のあたたかき 栢尾さく子
枯芝に陽の暮れかかる旅寂し 井上 隆幸
枯芝に障子開けたるまま夜に 岸本尚毅 舜
枯芝に雨夫婦仲しぶきけり 長谷川双魚 風形
枯芝に青春もかく翳りたる 木下夕爾
枯芝に音立てゝ見よ鴛鴦の沓 龍胆 長谷川かな女
枯芝に鼻梁まぶしく中学生 田中裕明 櫻姫譚
枯芝のあまり広くてかなしけれ 波多野爽波 鋪道の花
枯芝のそこらも夜となりにけり 長谷川春草
枯芝のときに青みてみゆるかな 久保田万太郎 草の丈
枯芝のひろさ犬に口笛を吹く 川島彷徨子 榛の木
枯芝のわが座のくぼみ惜しみ去る 中村秋晴
枯芝の上手鏡のごとく海 木下夕爾
枯芝の中に上向く蛇口あり 中嶋延江
枯芝の人影が去り夕日去り 清崎敏郎
枯芝の少し光りて道があり 高木晴子 晴居
枯芝の日にひよわなる子を連れて 成瀬桜桃子 風色
枯芝の日向跳ぶ禽歩く禽 原 柯城
枯芝の海に傾き榻もまた 山口青邨
枯芝の道は十字にある広場 対馬康子 吾亦紅
枯芝の陽にかがむ児よ宝あるか 寺井谷子
枯芝の隅々にあるベンチかな 比叡 野村泊月
枯芝の風ゴチツクの扉にひかる 川島彷徨子 榛の木
枯芝は眼をもて撫でて柔かし 富安風生
枯芝ふと燈台と墓一線に 香西照雄 対話
枯芝へ犬放ちたり吾も駈け 蓬田紀枝子
枯芝も老一徹に今朝の霜 今泉貞鳳
枯芝やまだかげろふの一二寸 芭 蕉
枯芝ややや陽炎の一二寸 松尾芭蕉
枯芝や子の逆立ちをゆるすべき 原田種茅
枯芝や庭の小椅子に黒鶫 三好達治 俳句拾遺
枯芝や廊下あかるき照りかへし 高田保
枯芝や服光りつつ学生ら 波多野爽波 鋪道の花
枯芝や石と冷えゐる詩をしかと 木下夕爾
枯芝や萩の節折茎高き 深山柴(橡面坊句集) 安藤橡面坊、亀田小[ゼン]選
枯芝や金の茶壷の二坪ほど 石口光子
枯芝や鹿の肉むら起ちあがる 不破 博
枯芝をいたはり歩く祝意こめ 古舘曹人 能登の蛙
枯芝をなにも持たずに歩きけり 佐川広治
枯芝を四角に切つてありし処 行方克巳
枯芝を尻に背中につけてをり 高浜虚子
枯芝を来る三人の影斜め 田中丈子
枯芝を焼きたくて焼くてのひらほど 西東三鬼
枯芝を踏む返りくる力あり 辻美奈子
枯芝を踏んで囑目初句会 吉屋信子
枯芝を踏んで居り長身に見ゆ 久米正雄 返り花
枯草を手に枯芝のかがやきに 山西雅子
熔岩のみち枯芝のみち海に墜つ 大橋宵火
牝去れば枯芝の犬皆去れり 阿部みどり女
犬首を寝せ身體寝せ枯芝に 京極杞陽
紫を着て枯芝にをとめさぶ 太田鴻村 穂国
絨毯につづく枯芝海も見ゆ 和田祥子
芝枯れてねむりさだまる石の数 木下夕爾
芝枯れて庭の隅々まで黄なり 山口波津女 良人
芝枯れて海女のいち日おだやかに 鈴木真砂女
芝枯れて眠りさだまる石の数 木下夕爾
芝枯れて運河は青し朝のお茶 片山桃史 北方兵團
若ものの来ずなりし芝枯れにけり 林翔 和紙
葬列たたまり輪となれり枯芝の夕日 シヤツと雑草 栗林一石路
言ひかけて枯芝に瞳を逸しけり 谷口桂子
試験期や枯芝に椅子一つ残し 中拓夫 愛鷹
身に一ぱい枯芝附けて若返る 右城暮石 上下
閑庭や芝枯れてねむる鴨ふたつ 水原秋櫻子
鶺鴒が峡の温泉宿の枯芝に 高濱年尾

以上
by 575fudemakase | 2014-12-29 00:42 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

粕汁

粕汁

例句を挙げる。

吹きすする粕汁訛飾らざり 高萩篠生
小屋掛けて牛市あての粕汁屋 浅賀渡洋
居残れる子に粕汁を温めて 児山綸子
粕汁にあたたまりゆく命あり 石川桂郎 四温
粕汁にぶち斬る鮭の肋かな 石塚友二 光塵
粕汁にほてりし頬を撫でて居り 木村 いつを
粕汁にむせしと見せむ師を追ひて 石川桂郎 四温
粕汁に汗ばむ程となりにけり 菅内左山
粕汁に衆人環視の中に酔ふ 猿橋統流子
粕汁に酔ひし瞼や庵の妻 日野草城
粕汁に頭を割つて鮭とばしたり 石川桂郎 四温
粕汁に鮭の鱗の浮びけり 稲垣陶石
粕汁の一つ座にわれ夜の国 村越化石 山國抄
粕汁の一椀雪の朝発ちに 古賀まり子
粕汁の大あつ~の斎をうけ 田畑比古
粕汁やねむたき児の手あたたかし 船山順吉
粕汁やもやもやもやがてのみほす こしのゆみこ
粕汁や大いなる月木にかけて 小原俊一
粕汁や夫に告げざることの殖ゆ 大石悦子 群萌
粕汁や山の鳴る夜は闇深し 橋本花風
粕汁や巨いなる月木にかけて 小原俊一
粕汁や朝からのこと夢のごと 細川加賀 生身魂
粕汁や父にかしづく母亡くて 木附沢麦青
粕汁や空也の痩を拝みきて 田中英子
粕汁や老いていよいよ顎長く 草間時彦 櫻山
粕汁や蓋を浮かせて沸きたちし 富安風生
粕汁や裏窓にある波がしら 千田一路
粕汁や野の風遠くわたる音 水原秋櫻子
粕汁をすすり早寝の老夫婦 岸風三樓
粕汁を吹き凹めてはたうべけり 金子杜鵑花
粕汁を噴きこぼしけり啄木忌 佐野農人
行きも戻りも粕汁の中を通つて 稲葉直
かす汁をうすめてくれる内儀かな 中村吉右衛門

以上
by 575fudemakase | 2014-12-29 00:41 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

干菜汁

干菜汁

例句を挙げる。

冷腹を暖め了す干菜汁 高濱虚子
夜ふかしを妻に叱られ干菜汁 沢木欣一 往還
大鍋に総本山の干菜汁 上田正久日
家郷いつも誰かが病めり干菜汁 関戸靖子
山鳴りの他は聞えぬ干菜汁 小林輝子
干菜汁ふるさとの闇温めて 戸川稲村
干菜汁みちのくに住み五十年 鈴木綾園
干菜汁仏縁の日に当りけり 鈴木芋村
干菜汁妻との会話そつけなし 清水基吉
干菜汁徹夜ののんど通りけり 藤田あけ烏 赤松
干菜汁田舎育ちの抜けきれず 石川久
海鳴りの日々続きゐて干菜汁 井波美雪
烈風の入江を走る干菜汁 大木あまり 火球
笑ふとき父の老見ゆ干菜汁 木附沢麦青
言の葉も湯気ももてなし干菜汁 岡部名保子
貧富なき暮しもよしや干菜汁 翁長日ねもす
貧農の身をあたたむる干菜汁 金谷土筆
電燈の一つ下がりし干菜汁 滝沢伊代次

以上
by 575fudemakase | 2014-12-29 00:39 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

蕪汁

蕪汁

例句を挙げる。

うき宿の朝な朝なや蕪汁 松瀬青々
こぼす子はいつも同じ子蕪汁 平位登代子
にんげんの不幸が愉し蕪汁 増田まさみ
ふるさとのまどゐうれしき蕪汁 牧野 豊陽
一宿を和尚と共に蕪汁 大塚松籟
俳諧に老いて好もし蕪汁 高浜虚子
向学のまつすぐ古稀へ蕪汁 赤松[ケイ]子
奥人の大飯食ふや蕪汁 大須賀乙字
婢を御してかしこき妻や蕪汁 飯田蛇笏
床あげやかさねて啜る蕪汁 富田潮児
母すこやか蕪汁大き鍋に満つ 目迫秩父
炉話に煮こぼれてゐる蕪汁 高濱虚子
煮ゆるとき蕪汁とぞ匂ひける 虚子
白河に風がうがうと蕪汁 福原十王
真珠棚打つ潮鳴りや蕪汁 稲瀬奈加枝
砂のある飯に馴れけり蕪汁 菅原師竹
織機を祝ふ日のあり蕪汁 広江八重桜
花冷えや京の旅籠の蕪汁 田中冬二 行人
草山に夜の風きて蕪汁 大木あまり
蕪汁ではれやれ何の菜のなさ 広瀬惟然
蕪汁に世辞なき人を愛しけり 高田蝶衣
蕪汁に僧眼を病んでおはしけり 大橋櫻坡子 雨月
蕪汁に敗残の党集ひけり 雉子郎句集 石島雉子郎
蕪汁に足ること知りて憂ひなし 高橋淡路女 梶の葉
蕪汁みちのくぶりに人親し 山口青邨
賽の目の豆腐は白し蕪汁 川島奇北
雨毎につのる寒さや蕪汁 皿井旭川
ひとり居も馴れゝば楽しかぶら汁 永井荷風

以上
by 575fudemakase | 2014-12-29 00:37 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

冬杣

冬杣

例句を挙げる。

冬の杣渡り初めたり島荒るる 伊藤凍魚
冬杣に片根の雪のあらはなり 田中勝次郎
冬杣の谺杉枝の雪散らす 町田しげき
冬杣や猿は再び出でざりき 宵信二
冬杣を見てゐし鴉立ちにけり 小笠原燈鳥
年輪と冬日を杣が会はせけり 都筑智子
杣が家の一畑五菜冬に入る 白井爽風
杣の子にうさぎの耳の冬帽子 菅原多つを
父を待つ杣の子に椎の冬日消ゆ 石島雉子郎
諸道具や冬めく杣が土間の壁 原石鼎
身綺麗な杣下りてくる冬の山 橋石 和栲
鎌やせて杣の夫婦の冬仕度 渥美文窓
頬皺の深き杣なり冬帽子 松藤夏山 夏山句集
骨どこか鳴らし杣ゆく冬の山 鷲谷七菜子 花寂び
火を焚きて眼を燃やしゐる冬木樵 大野林火

以上
by 575fudemakase | 2014-12-29 00:35 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

牡蠣剥く

牡蠣剥く

例句を挙げる。

しぐるゝや牡蠣割る辻も灯りぬ 貞
ひとり過ぐ巴里の灯牡蠣の剥かれゐし 小池文子 巴里蕭条
乳呑ますときは乳の香牡蠣割女 田村劉一郎
余所者に口固かりき牡蠣割女 安東せつ
入海の寒き汐時牡蠣を割る 百合山羽公 故園
剥かれたる牡蠣の白さをなほ洗ふ 花田春兆
剥きし牡蠣こぼれてぺたとすぐに穢や 中戸川朝人 残心
剥きし牡蠣生きゐて水を濁らしむ 山口誓子
同性に見られ加速の牡蠣割女 中村明子
夜は疼く指をかばひて牡蠣割女 湯川雅
嫁取りの噂や牡蠣を割りながら 小西 藤満
岩くだくごとくに牡蠣を割りにけり 波出石品女
廃線を跨ぎ牡蠣割女となりぬ 斉藤弘子
新月を揺る波に泣く牡蠣割女 飯田蛇笏 霊芝
比喩探しをればするんと牡蠣剥かる 秋元不死男
浜名湖の女波ばかりや牡蠣割女 百合山羽公
渺々と海はありけり牡蠣割女 鈴木真砂女 夕螢
牡蠣の殼打割れば潮匂ひたる 城戸春弥
牡蠣を剥くをりをり女同士の目 加藤楸邨
牡蠣を剥く牡蠣のくらさをいつしんに 正木ゆう子 悠
牡蠣を剥く迅さの傷と諾へり 河野美奇
牡蠣を割る妻よゑくぼのいつ失せし 佐野まもる 海郷
牡蠣を割る方一尺の無言の座 水原 春郎
牡蠣剥くは身ぐるみ剥ぐに似たりけり 瓜人
牡蠣剥くやたのしくもまた切なくも 大木あまり 火球
牡蠣剥くや洗ふや巌の夕汐に 石塚友二
牡蠣剥場海の星よりくらき灯を 掬池路
牡蠣剥女黄昏は児が慕ひ寄る 木村蕪城 寒泉
牡蠣割つて脛に傷もつ女かな 鈴木真砂女
牡蠣割の一隅はつと乳子泣くこゑ 橋本多佳子
牡蠣割の女の中の男かな 相島虚吼
牡蠣割りのとばす牡蠣殻冴えかへる 細見綾子
牡蠣割るや舟着の板欠きしまゝ 百合山羽公 寒雁
牡蠣割る手染めし夕日もきえにけり 西島麦南
牡蠣割る瞳牡蠣負ふ夫へ向けやさし 岸田稚魚
牡蠣割女かきは女体の青さもつ 日垣四月子
牡蠣割女ただ一瞥をくれしのみ 山田弘子 初期作品
牡蠣割女にも確執のありにけり 的場松葉
牡蠣割女をとこの如き口きける 霞村
牡蠣割女貝の要を一撃す 品川鈴子
牡蠣打の時には剥身啜りては 坂本雅陵
牡蠣舟を出るや牡蠣割既になし 五十嵐播水 播水句集
白菊や血の滲むまで牡蠣を剥く 小泉八重子
百千の牡蠣を割りたる刃のしづか 和田 祥子
空色のゴム手袋や牡蠣を割る 松本みず代
老の手の乾く間もなく牡蠣を割る 堺 祥江
耶蘇島のなべて無口の牡蠣割女 武藤壱州
街人の跫音ちかく牡蠣を割る 松村蒼石 寒鶯抄
風花す牡蠣割の黙われの黙 川畑火川
ひとひとり生きる淋しさ牡蠣打場 原裕
午後の日の膝までとどき牡蠣を打つ 山田弘子 初期作品
南風と子らの牡蠣打つ音と来る 篠原梵 雨
夕潮の静かに疾し牡蠣筏 打出綾子
如月の牡蠣打ち割れば定型を持たざるものの肉やわらかき 道浦母都子
岩牡蠣を打つ手力のまだ老いず 稲生 正子
波暮れて牡蠣打小屋に灯の点る 藤井すみ子
牡蠣の殼打割れば潮匂ひたる 城戸春弥
牡蠣を打つ岩と同じに死にたけれ 萩原麦草 麦嵐
牡蠣を打つ鐵刃濡れては鐵光り 中島斌男
牡蠣打たれ積まる爆音みなぎれり 中島斌男
牡蠣打ちし後あり~と潮満つる 森岡とも子
牡蠣打ちの妻の姿を遠まもる 佐野まもる 海郷
牡蠣打つや島に生れて島に嫁し 佐藤三男
牡蠣打つや舳の向きの島をかヘ 石川桂郎 高蘆
牡蠣打に日和の声をかけにけり 飴山實 辛酉小雪
牡蠣打の一人がかへり皆かへる 鶴田亜星
牡蠣打女坐して濡れざるところなし 藤井亘
牡蠣打女灯台やがて灯るころ 田尻牧夫

以上
by 575fudemakase | 2014-12-29 00:34 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

泥鰌掘る

泥鰌掘る

例句を挙げる。

うつむける声のをさなき泥鰌掘り 八木林之助
つくるより崩るゝ堰や泥鰌掘 田上一焦子
掘られたる泥に泥鰌の動きあり 岡安仁義
掘られたる泥鰌は桶に泳ぎけり 青木月斗
掘返す泥にさゝりし泥鰌かな 平松草山
次の田へ笊をひきずり泥鰌掘り 今瀬剛一
泥鰌掘どこの漢か見知らざる 野村喜舟
泥鰌掘りの暮色の顔に見送らる 大野林火
泥鰌掘り去りぬよごれし日の面 栗生純夫 科野路
泥鰌掘り善良な顔上げにけり 遠藤梧逸
泥鰌掘り集つて来て火を焚けり 皆川盤水
泥鰌掘るすべを覚えて学うすれ 礒崎 緑
泥鰌掘るだんだん遊び心かな 有馬朗人 耳順
泥鰌掘る受難イエスのごと汚れ 景山筍吉
泥鰌掘る向ふは藁の屋根ばかり 成田千空 地霊
泥鰌掘る宇佐も田舎のことなれば 松田 禹川
泥鰌掘る手にちよろ~と左右の水 阿波野青畝
泥鰌掘る痩田ばかりに子が跳ねて 星野麥丘人
泥鰌掘る白き手拭昏るるなよ 辻田克巳
泥鰌掘泥そのままに立ち去れり 棚山 波朗
泥鰌掘眼に風の集まり来 柳澤和子
泥鰌掘肺の中まで赤らまむ 宮坂静生 山開
田のくろや鳥声もなき泥鰌掘る 石川桂郎 高蘆
畦つひにほろび泥鰌を掘りつくす 栗生純夫 科野路
眠りまだ覚めざる泥鰌掘られけり 川崎栖虎
葦原を撫でて日が落つ泥鰌掘 斎藤道子
逃げられて本気になりし泥鰌掘り 大久保白村
闇に馴れ泥鰌掘る手の巧みなる 清水徹亮

以上
by 575fudemakase | 2014-12-29 00:32 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

鉢叩

鉢叩

例句を挙げる。

これはこのあたりの僧や鉢叩 巌谷小波
その古き瓢箪みせよ鉢たたき 去 来
なき父に似た声もあり鉢叩 正岡子規
まねし人のゆかしや夜半の鉢叩 高井几董
わが門を鉢叩かずに通りける 河東碧梧桐
われが手で我が顔なづる鉢叩 上島鬼貫
われてこそ空の一宇ぞ鉢たたき 立花北枝
われもいま半僧半俗鉢叩 森澄雄
一しきり雨に止みけり鉢叩 大谷句佛
一瓢に酔ふや出初の鉢叩 名和三幹竹
下京の暗に消えけり鉢叩 伊藤松宇
京にきて京の辻なり鉢叩 星野麦丘人
今少し年寄見たし鉢叩 服部嵐雪
付そひて妻は出でぬか鉢たたき 京-淵瀬 元禄百人一句
先達も藪もおそろし鉢叩 鈴木六林男
北さして暗に消えけり鉢叩 菅原師竹句集
千鳥たつ加茂川こえて鉢叩 其角
夏痩のもどらぬ顔や鉢叩 漣月
夕かほのそれは髑髏か鉢叩 蕪村
夜泣する小家も過ぬ鉢叩き 蕪村
嫁入の門も過ぎけり鉢たたき 許六 選集古今句集
子を寝せて出て行く闇や鉢叩き 蕪村
寐て聞は西へ過きけり鉢叩 佳則
山彦をつれて歩行や鉢たたき鉢叩 千代尼
川音や声遠くなる鉢叩 雉子郎句集 石島雉子郎
師の坊にまねて見せけり鉢叩 吉野左衛門
幽霊に水のませたか鉢たたき 智月 芭蕉庵小文庫
弥兵衛とは知れど哀や鉢叩 蟻道
愚なる御僧と申せ鉢叩 黒柳召波 春泥句集
戯れに雀ころがる鉢叩 宮坂静生
戻ろかと月に問ふなり鉢叩 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
投節のその次来るや鉢たたき 野坡
旅人に銭もらひけり鉢たたき 佳棠 五車反古
曙の松原行くや鉢叩 蘇山人俳句集 羅蘇山人
月の夜に笠きて出たり鉢叩 高浜虚子
月雪や鉢たたき名は甚之丞 越人 選集古今句集
有りし世の憂さをも語れ鉢叩き 井上井月
朔日は猶あはれなり鉢叩 イセ-柴雫 閏 月 月別句集「韻塞」
朝めしの浮世になりぬ鉢叩 田福
東寺まで道濡れてゐる鉢叩 西田栄子
梟の空でわらふや鉢叩 妻木 松瀬青々
殊勝なり牛の糞ふむ鉢叩 上島鬼貫
清水の灯は暗うして鉢叩 藤野古白
狼のひよつと喰ふべし鉢たたき 野童 俳諧撰集「有磯海」
白髪より細き世や経ん鉢叩 松岡青蘿
真葛から女夫出てゆく鉢叩 四明句集 中川四明
納豆きる音しばしまて鉢叩 芭蕉
紛るべき物音絶えて鉢叩 樗良
縦横に洛の夜々や鉢叩 松根東洋城
聞きも居るや行くか踊るか鉢叩 松根東洋城
船岡に影こほらすや鉢叩 内藤丈草
花に表太雪に君あり鉢叩 蕪村 冬之部
落柿舎の日記に句あり鉢叩 正岡子規
裏門の竹にひびくや鉢叩き 内藤丈草
賀茂川に灯のこぼれたる鉢叩き 大森理恵
辻君に衣借られな鉢叩 旧国
鉢たたき修行初かおさな立 水田正秀
鉢たたき右京左京の行き戻り 黒柳召波 春泥句集
鉢たたき夜毎に竹を起しける鉢叩 千代尼
鉢たたき昼は浮世の茶筌売 支考
鉢たたき来ぬ夜となれば朧なり 向井去来(1651-1704)
鉢たたき洛中洛外初しぐれ 角川春樹 夢殿
鉢たたき頭巾まくれて髪の霜 黒柳召波 春泥句集
鉢叩いまだ昭和の終らざる 原裕 出雲
鉢叩うかれ女に名を問はれけり 可重
鉢叩かたまつてゆく橋の上 角川春樹
鉢叩かの岸とはん瓢箪船 椎本才麿
鉢叩き夜更けて道の広さかな 智月 俳諧撰集「藤の実」
鉢叩き月下の門をよぎりけり 闌更
鉢叩ものに狂はであはれなり 家足
鉢叩七つの月は西(せい)のあて 浜田酒堂
鉢叩五条東に行く声す 寺野竹湍
鉢叩四条を渡り東山 倉知漁村
鉢叩応仁の乱過ぎしより 四明句集 中川四明
鉢叩惟然丈草戀しさよ 孤輪 尾崎迷堂
鉢叩枯木に影の添ふごとく 野村喜舟
長嘯の墓もめぐるか鉢叩き 芭蕉
頭巾着て尊くなりぬ鉢叩 路景
飯くはぬ腹にひびくや鉢叩き 正岡子規
鳴らし来て我夜あわれめ鉢叩 蕪村 冬之部

以上
by 575fudemakase | 2014-12-29 00:31 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

年籠

年籠

例句を挙げる。

くらやみを見るとき立ちて年籠 綾部仁喜 寒木
とかくして又古郷の年籠り 小林一茶
みづうみの風のすさめる年籠 木村蕪城
他愛なく眠つてしまふ年籠 大須賀浅芳
南無不可思議光如来や年籠 森澄雄
大榾の火の粉柱や年籠 松本浮木
崩れゆく熾(おき)美しき年籠 水谷敦子
年籠りして小面は美女と思ふ 阿波野青畝
年籠る子の片言のむつかしき 中谷朔風
年籠る御題島の香焚きて 伊藤 文女
心經の心しづかに年籠 石原 すみ子
新刊書二三手にして年籠 高澤良一 宿好 
月もなき杉の嵐や年籠 黒柳召波 春泥句集
深川や木更津舟の年籠 正岡子規
爪取てこころやさしや年籠り 素龍 選集古今句集
物忌みのさんげさんげの年籠 太田権六
買ひ置きの焼栗つまみ年籠 高澤良一 宿好 
身ほとりを片づくるのみ年籠 石川桂郎 高蘆
配られて赤福餅よ年籠 下田稔

以上
by 575fudemakase | 2014-12-29 00:29 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)

師走

師走

例句を挙げる。

*ほうぼうの鰭を師走の街へ立つ 加藤耕子
「雲雀運輸」とは優しき社名飛ぶ師走 田川飛旅子 『使徒の眼』以後
あかんべのように師走のファクシミリ 小沢信男
いそがしく時計の動く師走哉 正岡子規
いま一つ赤らみ欲しき師走雲 高澤良一 鳩信 
うぐひすの啼や師走の羅生門 蕪村 冬之部 ■ 春泥舎に遊びて
うすうすと紺のぼりたる師走空 飯田龍太
うちこぼすささげも市の師走かな 正秀 芭蕉庵小文庫
うるむ瞳の師走の妻よ何も云ふな 杉山岳陽 晩婚
おほまかな煤取りしたり降り師走 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
かくれけり師走の海の鳰 芭 蕉
かくれ家に金のとゞきし師走かな 比叡 野村泊月
かくれ家を訪ね佗びたる師走かな 比叡 野村泊月
かく多き人の情に泣く師走 相馬遷子 山河
かにかく帰りし白くあたたかく師走の空 古沢太穂 古沢太穂句集
がんがんと鉄筋のびる師走かな 高柳重信
くわん~と炭火おこれり師走店 温亭句集 篠原温亭
けだものの肉喰ひ師走の町に出づ 福田蓼汀 山火
けろ~と師走月よの榎哉 一茶 ■享和三年癸亥(四十一歳)
こざかしき師走の草の生れたち 斯波園女
この街の芭蕉の辻も師走かな 原田青児
この頃の師走さびれや娼家の灯 富田木歩
さいかちのこぼれこぼれつ師走かな 室生犀星 犀星発句集
さびしさや師走の町の道化者 増田龍雨 龍雨句集
しみじみと山に向へばすぐ師走 前野雅生
じたばたのじたの師走のちんどん屋 高澤良一 鳩信 
すれ違ふ妻の気附かず町師走 榊原八郎
そら死や師走の町の酔倒れ 尾崎紅葉
そろばんをおくや師走の女房ぶり 高橋淡路女 梶の葉
つくろはぬものや師走の猿すべり 加舎白雄
とぎ水の師走の垣根行きにけり 木山捷平
なまじひに市に隠れて師走かな 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
ぬくぬくと師走日和や麦の丈 集馬
のぼりつめて師走満月葱もて指す 寺田京子 日の鷹
はしなくも彼と師走の書舗に逢ふ 高橋笛美
ふるさとの橋のかずかず師走かな 飯田龍太 山の木
ほのぼのと師走月夜や昔斎忌 飯田蛇笏 山廬集
わが師走即ち一児病院に 石塚友二 光塵
わが生れし町名消ゆる師走寒 下村ひろし 西陲集
わびすけのくちびるとけて師走なる 室生犀星 犀星発句集
インディオの鳥になりたる師走かな 佐川広治
ウインドの銀器に映る街師走 西村和子 かりそめならず
キッド観てひとり師走の涙かな 岸田稚魚 『萩供養』
シスターの背へ押されけり師走の駅 橋本いさむ
トランペット鳴き上げて師走大詰め 河野多希女 彫刻の森
バスの窓かたく閉じられてゆく師走 市原正直
ベッドより別の病院見て師走 里見善三郎
ペン皿に硬貨殖えつつ師走来ぬ 米澤吾亦紅
マカダミアナッツ師走の船便にて 高澤良一 ぱらりとせ 
メモ一つ消して師走の一と日暮れ 稲岡長
一歩だにあらばとうめく師走かな 幸田露伴 拾遺
下駄の歯を蹴欠いて戻る師走かな 鳳朗
世に住まば聞(きけ)と師走の碪かな 西鶴
世の外の身にも師走のあらし哉 松岡青蘿
予定なき師走の客の応対に 松尾緑富
事務机師走めきつつ古びつつ 成瀬正とし 星月夜
事足りて而も師走の月夜かな 尾崎紅葉
二匹飼ひし犬の機嫌も師走かな 冬葉第一句集 吉田冬葉
二日寝て師走に越されゐたるなり 石塚友二 光塵
亡き友の遺著また届く師走かな 上林暁(1902-80)
交差点踏み出す半歩街師走 小川濤美子
人の親の病悲しき師走かな 赤木格堂
人はいざ師走を我の端居かな 会津八一
人口肛門(オストミー)のおなら優しき師走かな 秋元不死男
仕事場に泊り込みなる師走かな 森川暁水 黴
仕事場の振子の音も師走かな 菊池 輝行
仲見世の新仲見世の師走人 有川淳子
伊勢藤に師走の客の四人かな 岸田稚魚
佃路地師走発たすと風日和 古沢太穂
何にこの師走の市にゆく烏 芭蕉
何もなき師走の流れ早きかな 高橋淡路女 梶の葉
何んとなく師走顔なる厨妻 丸木千香
余白すぐ消ゆる師走の予定表 八木久江
僕キツネ私タヌキの店師走 高澤良一 燕音 
光り澄む師走の星のみな低し 新井 石毛
党への票強まる病躯師走の投票へ 橋本夢道 無類の妻
公園の喧嘩美声に師走の子 赤松[けい]子 白毫
出逢ひたる人もそゝくさ師走街 阿部みどり女 笹鳴
切りほどきありたるといふ師走かな 龍岡晋
前燈尾燈照らし合ふのみ師走寒 香西照雄 素心
前輪を後輪追へる街師走 高澤良一 ももすずめ 
北陸の師走の街に吾もまじり 高木晴子 晴居
古梅園師走の音を隔てたり 西村和子 かりそめならず
名号を母が鵙ひし師走かな 石田波郷
吾も見き師走の湖のその鳰を 相生垣瓜人
呼びからす声や師走の市の人 魯白
喜劇座に一夜笑ふも師走かな 四明句集 中川四明
嘗めもので酒呑む師走日和哉 小澤碧童 碧童句集
噴水の丈切り詰めて師走来る 橋本榮治 麦生
国引の師走の月の力見ゆ 榎本 好宏
坂本の里の蕎麦屋の師走かな 久保田万太郎 流寓抄以後
坐しをれば師走の心遠のきぬ 阿部みどり女 『光陰』
塩鮭の風に吹かるる師走かな 田中冬二 麦ほこり
売文の筆買ひに行く師走かな 永井荷風
夕霧より伊左さま参る師走かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
外湯出てすぐに師走の山仕事 大島民郎
夜の駅の月の鋭き師走かな 梅田圭一郎
夜は月に橋あらはるる師走かな 蓼太
大切な指を傷つけ師走妻 柳本津也子
大声にさわぐ師走の鴉かな 正岡子規
大寺の静まりかへる師走かな 正岡子規
大幅の達磨かけたる師走かな 正岡子規
大根の丘に現れ師走富士 遠藤梧逸
大空のあくなく晴れし師走かな 久保田万太郎 流寓抄
大空を亀這ひゆきて師走なる 冬の土宮林菫哉
大筆にかする師走の日記かな 正岡子規
大鍋の売れで師走のほこり哉 幸田露伴 拾遺
大阪の師走をあとに帰りけり 玉越琅々
大黒の小槌の塵も師走かな 加藤耕子
天井へ浮いてはりつく師走の夢 横山白虹
夫の蹠洗ふベツドに師走の日 石田あき子 見舞籠
失いしことば失いしまま師走 楠本憲吉
奈良に来て師走ともなき一日かな 山口一秋
女を見連れの男を見て師走 高浜虚子
妻として師走を知りしあはれさよ 杉山岳陽 晩婚
妻を抱き師走なじめず仮の家に 杉山岳陽 晩婚
嬉野や油こぼれし師走風 横光利一
子供等は羽子ついてゐる師走かな 高橋淡路女 梶の葉
学問も小判も囓つてみて師走 櫂未知子 蒙古斑
寝る前になりて物書く師走かな 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
小角力取物荷ひ売る師走哉 丑二
小鼠の行列つづく師走哉 正岡子規
山の上師走ごころを日にさらす 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
山伏の見事に出立つ師走かな 服部嵐雪
山茶花の咲いてことしも師走かな 久保田万太郎 流寓抄
山陵の壱歩をまはす師走哉 榎本其角
川痩せて師走の町を流れたり 相馬遷子 山国
市に入りてしばし心を師走かな 山口素堂
市に暮るゝ師走の人の眉太し 青峰集 島田青峰
師はひとり痩身の師の師走また 河野薫
師走かな餅つく音の須磨の浦 野澤凡兆
師走くる靴屋に靴をはきながら 秋山巳之流
師走すぐ目の前にして急く心 高浜年尾
師走ぞと呵る妻あり舌ありや 高井几董
師走てふ物入り月が目の前に 高澤良一 随笑 
師走とて刷ろはむ翼もなし 石塚友二 光塵
師走とて忘れもせずに訪ひくれし 高浜年尾
師走と云ふ言の葉ゆゑにせはしくて 池上不二子
師走のバス水に沿うては鳥の翔つ 原田種茅 径
師走の些事その一つにてひと死にき 及川貞 夕焼
師走の分野是かや春の物狂ひ 榎本其角
師走の夜のつめたい寝床が一つあるきり 尾崎放哉
師走の夜の釣鐘ならす身となりて 尾崎放哉
師走の夜鬢どめ一つうじうじと 栗林千津
師走の川一と吹き吹いて風なかり 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
師走の店の妻には欲しきものばかり 臼田亜浪 旅人
師走の旅を行きつめてま青なる海 人間を彫る 大橋裸木
師走の日まだある障子灯を入るゝ 久米正雄 返り花
師走の木魚たたいて居る 尾崎放哉
師走の枯山海見ゆるまで登り来し 内藤吐天 鳴海抄
師走の灯まばゆくあびて仏具買ふ 石原舟月 山鵲
師走の灯前後にて恥らひぬ 杉山岳陽 晩婚
師走の燈にひたりし金の靴を売る 斉藤夏風
師走の肩摩疲れ深きが弾かれて 香西照雄 素心
師走の蝶遠き元禄誘ひ出す 河野南畦 『元禄の夢』
師走の身触れあふ緋鯉長挨拶 香西照雄 対話
師走の風が吹き暮るる寺の釣鐘 人間を彫る 大橋裸木
師走の風をとほせんぼして火を擦る母 磯貝碧蹄館 握手
師走はや夫の病床花乏し 石田あき子 見舞籠
師走はや妻に借りたる銭かさむ 米沢吾亦紅 童顔
師走はや心斎橋の人通り 高濱年尾 年尾句集
師走ひと夜救世主曲聴衆の中にあり 及川貞
師走ひと日仔犬もらひて抱きてかへる 及川貞 夕焼
師走ひと日時計の埃はきにけり 室生犀星 犀星発句集
師走もつともスクランブル交叉点 岩岡中正
師走三日月家路は誰も靄まとう 古沢太穂 古沢太穂句集
師走中幸うすき手と知りて蹤け 杉山岳陽 晩婚
師走人堰きてはエスカレーターヘ 谷野黄沙
師走何ぢや我酒飲まむ君琴弾け 幸田露伴 江東集
師走八日汝はも病魔に克ちたらずや 林原耒井 蜩
師走六日初雪消えて髭のびて 林原耒井 蜩
師走六日母に文書く暇得たり 林原耒井 蜩
師走共しらで遊ぶや鴛鴎 水田正秀
師走圏外金色を経て一紫雲 香西照雄 素心
師走妻うしろをよぎり前よぎり 高澤良一 ぱらりとせ 
師走妻剥きかけみかん置いて起つ 高澤良一 宿好 
師走妻算盤はじく眼をしたり 高澤良一 随笑 
師走妻風呂敷にある稜と丸み 香西照雄 対話
師走寒し血を出す罪と火を出す罰 磯貝碧蹄館 握手
師走尽友をたづねて白き飯 栗生純夫 科野路
師走曇りに柿の木の小さくなる 松村蒼石 雪
師走朔日母があぶりし海苔食べて 百合山羽公 故園
師走来ぬ相触れて人の肩かたし 中山 良章
師走某日壺の酒欲る恋ごころ 萩原麦草 麦嵐
師走校了カレーライスを注文す 斉藤夏風
師走空暮るると見つつ眠りたり 原田種茅 径
師走街ゴーストップの今は青 高木晴子 晴居
師走記者筆の疎略を慎まん 吉井莫生
師走閑に羽つくろへる孔雀かな 原石鼎
干蝮この軽きこと師走市 山田千秋
床屋出てさてこれからの師走かな 辻貨物船
底ぬけに晴れて師走を早めをり 西村公鳳
座布団も綿ばかりなる師走哉 永井荷風
廓への用いくつもや師走人 白水郎句集 大場白水郎
建長寺さまの托鉢来て師走 宮下翠舟
影淡き師走の寺や笹子鳴く 角川春樹 夢殿
心電図師走の波形出でをらむ 高澤良一 さざなみやっこ 
忠信が狐に戻る師走かな 辻桃子
思ひきの母の長病み師走来る 大橋敦子
怨霊物四番も見たる師走かな 瀧井孝作
愧かしき三百余日師走かな 喜谷六花
我も亦師走の人よとかへり見る 高濱年尾 年尾句集
手を上げてながされ別れ師走町 皆吉爽雨
打ちこぼす小豆も市の師走かな 水田正秀
抜け道もその抜け道も街師走 稲畑汀子
持舟の皆かへりつく師走かな 大塚羽山
掛嫌ひ通して老いし師走妻 平野一鬼
故郷の山しづかなる師走かな 吉田冬葉
数刻のひまを花挿す師走かな 高田蝶衣
新しく溝板かへて路地師走 菖蒲あや 路 地
新聞小説ハッピーエンドせり師走 藤木清子
旅寝よし宿は師走の夕月夜 松尾芭蕉
旅衣あでに師走の女衒かな 石原舟月 山鵲
日のさせば巌に猿集る師走かな 原石鼎
日暮里へ師走のみちのつゞきけり 久保田万太郎 草の丈
日曜の出勤もはや師走なる 長野深郷
星照るや師走八日も明けちかき 乙二 選集古今句集
暗闇の師走狐のくをんと啼く 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
暮て行時雨霜月師走哉 井原西鶴
暮るる湖見つめ師走の外にあり 柊 愁生
替へて早火こぼす師走畳かな 比叡 野村泊月
月白き師走は子路が寝覚哉 松尾芭蕉
本郷の寺に廻りし師走かな 成瀬桜桃子
松葉敷ける庭の師走の月夜かな 籾山梓月
枯木折る音や師走の崖の上 内藤吐天 鳴海抄
枯菊を焚いて師走の閑にあり 木村蕪城 一位
桜湯にひしほの匂ふ師走かな 青木重行
梅が香に袖ぶり直す師走かな 備前-定直 元禄百人一句
梅さげた我に師走の人通り 蕪村
梅鶯の南部坂聴き早や師走 高澤良一 鳩信 
椅子に椅子のせて釘打つ師走かな 石川文子
椿寿と書き師走をこもる奢りかな 長谷川かな女 花寂び
機関車を磨きあげたる師走かな 大久保重信
止り木に離れて坐る師走かな 角川春樹
歳凶に師走の市の人淋し 佐藤紅緑
死の床に死病を学ぶ師走かな 相馬遷子 山河
母亡くし師走ひと日の川ほとり 深見けん二
母訪ふや師走の空の紺一色 星野麦丘人
水仙にたまる師走の埃かな 高井几董
水仙や早稲田の師走三十日 夏目漱石 大正四年
水垢離の背より明くる師走風 横光利一
汝を世に送る大いなる夜の師走 阿部みどり女 笹鳴
汝行きしあとの月日の師走かな 及川貞 榧の實
洋上も師走のローリングピッチング 高澤良一 燕音 
洗濯機の中に潜んでいる師走 苅部牧生
洛陽の灯おびたゞしき師走かな 古白遺稿 藤野古白
活き馬の目を抜く江戸の師走かな 柑子句集 籾山柑子
浅草の師走に遊び牛鍋屋 高澤良一 燕音 
浚渫の師走雨降る水の上 鈴木六林男 王国
海は師走の青き浪立てて島へ漕ぐ舟 人間を彫る 大橋裸木
海女あはれ墓も師走の海へ向く 山口草堂
海広し師走の町を出離れて 正岡子規
海彦と遊んでゐたる師走かな 池田秀水
海月打ちつけし桟橋の師走の灯 河東碧梧桐
淋しさをにらみあふたる師走かな 正岡子規
湯がちゆんと沸き老人に師走あり 岸田稚魚 『雪涅槃』
濯ぎつつ炊ぐ師走の艀妻 道川虹洋
炭売に日のくれかゝる師走かな 蕪村
炭斗の羽箒に来る鼠かな 師走
炭賣に日のくれかゝる師走哉 蕪村遺稿 冬
無用人用人師走賑はへり 野村泊月
焼けあとのまだそのまゝの師走かな 久保田万太郎 草の丈
煎茶に飯粒の入る師走かな 胡布 極 月 月別句集「韻塞」
煤の手に一歩を渡す師走かな 岱水 極 月 月別句集「韻塞」
片隅に正座を強いる喪の師走 渋谷道
牛馬には師走のありて宝哉 几圭
牡蠣船の上や師走の橋の音 島村元句集
獅子舞や師走の空の雪催ひ 木歩句集 富田木歩
獨身の文で物買ふ師走かな 幸田露伴 江東集
王孫を市にあはれむ師走かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
理髪鋪に師走の師弟むき合へる 宮武寒々 朱卓
田を踏んでゆけば師走の池があり 岸本尚毅 選集「氷」
町師走いつもどこかが掘り返され 渡辺大年
町汚れ日輪汚れ師走かな 藤松遊子
画廊出てやがて画が消え街師走 皆吉爽雨
画架立てて師走の町に背を向ける 山下美典
畳さし二人並びて師走富士 増田龍雨 龍雨句集
病む師走わが道或はあやまつや 石田波郷(1913-69)
痩法師師走の質屋覗きけり 渡辺香墨
白足袋のよごれ尽せし師走哉 正岡子規
目前の師走手帳に走り書き 高澤良一 ぱらりとせ 
眉繊き師走の女送金す 片山桃史 北方兵團
瞑りて師走半ばの世の音か 相馬遷子 山河
砂にある師走の翳の深きかな 阿部みどり女
禿山を師走の町へ下りけり 寺田寅彦
立つて逢う師走神戸の坂の上 鈴木六林男
竹馬のかけぬけて行く師走かな 小澤碧童 碧童句集
節季候の来れば風雅も師走哉 松尾芭蕉
篁や師走の月のかけりざま 高井北杜
義父の死に吾もがくがくと嘆く師走 森川暁水 淀
羽子を買はんと師走原稿書くなりし 長谷川かな女 雨 月
老體や師走や而もおなかうど 尾崎紅葉
耳塚の前ひろびろと師走かな 川端茅舎(1897-1941)
耳鳴るや師走を寝よと賜ふ風邪 及川貞 夕焼
能を見て故人に逢ひし師走かな 高浜虚子
能面の師走或る夜の貌の我れ 河野南畦 湖の森
自炊子も師走の主婦の渦にをり 黒坂紫陽子
自転車のベルに追い立てられ師走 高澤良一 随笑 
花と本買ひしばかりや師走市 中村苑子
花街のネオン師走の雨に濡れ 本宮哲郎
茂索忌にまづ始まれる師走かな 吉屋信子
茶の匂ふ枕も出来て師走かな 河東碧梧桐
荒馬の師走の牧の寒さかな 斯波園女

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by 575fudemakase | 2014-12-29 00:15 | 冬の季語 | Trackback | Comments(0)


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インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
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▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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