<   2015年 06月 ( 14 )   > この月の画像一覧

保育園の七夕

保育園の七夕

いつ頃からか、近所の保育園に我が家の黒竹を七夕竹として
寄贈することになったのは…。
隣家との境界に目塞ぎとして植えた竹があちこちに頭を出す
ようになって困った。当初はそれをちょんぎっていたのだが、
これはもったいないということで保育園への寄付を思い付い
たのである。
毎年3~4本ぐらい。今年は7月1日が持ち込み日である。


七夕の例句を挙げる。

あらをかし七夕竹に小提灯 尾崎迷堂 孤輪
いつとなく澄み七夕の忘れ汐 藺草慶子
いづれ若竹七夕笹として剪らる 吉野義子
うち立てて七夕色紙散るもあり 高橋淡路女 梶の葉
うれしさや七夕竹の中を行く 子規
がらくた市七夕舟を組むが見ゆ 石川桂郎 高蘆
けんらんたる七夕竹に海が透く 波津女
これやこの七夕竹として生ず 高澤良一 鳩信 
これよりさき七夕竹に風募り 久保田万太郎 流寓抄以後
ころがりて七夕竹の流れくる 比叡 野村泊月
さびしさや七夕すぎの天の川 妻木 松瀬青々
しがらみとなる七夕竹や峡泊り 鍵和田[ゆう]子 未来図
ふなばたに七夕竹を立てて漕ぐ 橋本鶏二 年輪
まだ書かぬ七夕色紙重ねあり 高浜虚子
みちのくの雨に七夕かざりかな 小澤實 砧
みなもとに七夕竹や男女川 沢木欣一
よろけやみ七夕ながすものに従けり 横山白虹
アパートに立つ七夕の葉擦れして 品川鈴子
一夜経て七夕笹の古りにけり 岸風三樓
一枚の紙に七夕笹しなふ 後藤夜半
七夕と云ひて幽けき雨間あり 相生垣瓜人 明治草抄
七夕と云へば雨夜も匂ふらし 相生垣瓜人 明治草抄
七夕にしかもうかるるはじめかな 水田正秀
七夕に一色殿の馬を見ん 斯波園女
七夕に出でて兎も野をかけれ 酒堂 俳諧撰集「藤の実」
七夕に夜干の網のありにけり 野村喜舟
七夕に契り置きてし初桜 上島鬼貫
七夕に娘持ちたる穢多かな 雑草 長谷川零餘子
七夕に貸さねば疎し絹合羽 杉風 芭蕉庵小文庫
七夕のうたがひ晴るゝ汐干かな 矩州
七夕のことちちははのこと怠りぬ 山田みづえ 草譜以後
七夕のしだり尾の風美しき 西本一都
七夕のふたつの村のしづかなる 小川軽舟
七夕のまわる火車子のうえに 和知喜八 同齢
七夕のみな冷え冷えと供物かな 飯田蛇笏 山廬集
七夕の一粒の雨ふりにけり 山口青邨
七夕の井上雪を見舞ひけり 黒田杏子 花下草上
七夕の人波にゐてふとひとり 阿部みどり女
七夕の入江奥まで並木うつす 中戸川朝人 残心
七夕の声のぼりゆく小学校 山田みづえ 手甲
七夕の夕月や鈍に暮れかぬる 野澤凡兆
七夕の夜ぞ更けにけり几 飯田蛇笏 山廬集
七夕の夜の到着ロビーかな 黛まどか
七夕の夜の沖から定期船 浜野英子
七夕の夜はかりそめの踊かな 井上井月
七夕の夜はくろぐろと広瀬川 石垣絢子
七夕の夜を訪ひくるゝこと信じ 尼子 凡女
七夕の夜汐しぶける浜祠 龍太
七夕の夜風にあたるギブス組 高澤良一 鳩信 
七夕の夢のうきはし烏鵲かな 宗鑑
七夕の大河音無く流れけり 大峯あきら 宇宙塵
七夕の大葉子の穂のたくましや 高橋馬相 秋山越
七夕の夫婦して牛洗ひをり 馬場移公子
七夕の女心の糸結ぶ 石本めぐみ
七夕の子の前髪を切りそろふ 林火
七夕の子女と遊んで家にあり 鈴木花蓑句集
七夕の心に朝の竹かつぐ 阿部みどり女 笹鳴
七夕の忍びながらも光かな 松吟 俳諧撰集玉藻集
七夕の文字うするまで石埃り 西本一都 景色
七夕の旅に病むとぞ便りせる 碧梧桐
七夕の星あをあをとすでにあへり 原コウ子
七夕の昨夜居りし椅子に今宵また 殿村菟絲子 『繪硝子』
七夕の晩は仙台おもしろき 京極杞陽 くくたち上巻
七夕の欅明るき空のいろ 斉藤夏風
七夕の母の仮名文字上がりけり 石川掬水
七夕の水平飛行に入る空路 高澤良一 燕音 
七夕の渡舟に並び少女かな 松藤夏山 夏山句集
七夕の潮さし逢ひあふ人ばかり 小林康治 玄霜
七夕の牧を見おろす物見岩 大島民郎
七夕の玄関に蟹来てゐたり 正木ゆう子 静かな水
七夕の空を降り来て女満別 高澤良一 燕音 
七夕の竹かつぎ入る御門かな 比叡 野村泊月
七夕の竹となれずにやぶにゐる 辻田克巳
七夕の竹の穂見ゆる翠微かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
七夕の竹ふりかむり立てて居り 上村占魚 球磨
七夕の竹も田中の娼家かな 松原射石
七夕の竹をくゞりて廻診す 松岡巨籟
七夕の竹を其まゝ鳥威し 比叡 野村泊月
七夕の竹を貰ひに母の家 上野泰 春潮
七夕の竹伐り担ぐ寺男 塚田秋邦
七夕の竹伐る中に修道女 朝倉和江
七夕の竹伐れば蚊が夫へゆく 殿村莵絲子 牡 丹
七夕の竹切りにゆく下男かな 比叡 野村泊月
七夕の竹採りにこの雨の中 倉田ひろ子
七夕の竹早々と若き寡婦 阿部みどり女
七夕の竹青天を乱し伐る 原裕 葦牙
七夕の笹を積み行く集塵車 田中こずゑ
七夕の管弦起る臺かな 数藤五城
七夕の紙の音して唇ひらく 飯島晴子
七夕の膳の滝川豆腐かな 龍岡晋
七夕の色紙と吾子とちらばれる 軽部烏帽子 [しどみ]の花
七夕の色紙結ふ手のあひにけり 皆吉爽雨
七夕の蓄尿瓶に通いおり 西澤寿林子
七夕の街に求めし星の本 上村占魚 『自門』
七夕の街に蓑着て杣酔へり 本多静江
七夕の見ゆるところに朝餉する 阿部みどり女
七夕の赤の千代紙裏は白 池田澄子 たましいの話
七夕の踊りになるや市の跡 涼莵
七夕の身は狂壽のごとく在り 佐藤鬼房
七夕の車中にて読み返す文 片山由美子 水精 以後
七夕の逢はぬ心や雨中天 松尾芭蕉
七夕の運河汲みては船洗ふ 小林康治 玄霜
七夕の雨きて姉妹翼とぐ 八木三日女 落葉期
七夕の雨しとどなり萱草 堀口星眠 営巣期
七夕の雨にピエロのふくれ靴 飯野弥生
七夕の雲量こそは豊かなれ 相生垣瓜人 明治草抄
七夕の青本に逢ふ古本屋 高澤良一 寒暑 
七夕の願の糸の長からず 稲畑汀子
七夕の願ひが風に音をたて 房前芳雄
七夕の願ひの糸の長からず 稲畑汀子
七夕の願ひの絲のもつれやう 原裕 『王城句帖』
七夕の願ひ一枚風に飛ぶ 冨士原芙葉
七夕の願湿りし昔かな 山田みづえ
七夕の風に吹かれしおでこかな 仙田洋子 雲は王冠
七夕の風吹く岸の深みどり 飯田龍太
七夕の飴頒つなり甲乙なく 石川桂郎 含羞
七夕は降とおもふがうき世かな 服部嵐雪
七夕やいつか六十路を過ぎゐたり 三井 チトセ
七夕やくらきを走る波がしら 杉山 岳陽
七夕やつねの浪漕ぐわたし守 水原秋櫻子
七夕やふりかはりたるあまの川 服部嵐雪
七夕やまだ指折つて句をつくる 秋元不死男
七夕やまだ越後路のはいり初 広瀬惟然
七夕やまづ寄りあひておどり初(ぞめ) 素牛 俳諧撰集「藤の実」
七夕やよみ哥聞きに梶が茶屋 黒柳召波 春泥句集
七夕や一と降りしたる四方の藍 吉武月二郎句集
七夕や一猫坐る理髪椅子 磯貝碧蹄館
七夕や二階に住めるひとりもの 蓼汀
七夕や些少ながらの祝儀樽 一茶
七夕や京の色紙を買ひにやる 五十嵐播水 播水句集
七夕や使ひ古りたる支那硯 上田渓水
七夕や俥も古りしゆふながめ 増田龍雨 龍雨句集
七夕や先づ寄りあひて踊り初め 惟然
七夕や児等の後ろに兄と語る 比叡 野村泊月
七夕や別れに永久とかりそめと 鷹羽狩行(1930-)
七夕や古りてたたずむ乳母車 堀口星眠 営巣期
七夕や場末のバアに客ふたり 井上惟一朗
七夕や天皇の御名を書しまつる 山口誓子
七夕や妻いそいそと子に逢ひに 成瀬櫻桃子 風色
七夕や子は逢ひに行く雨の中 高橋良子
七夕や子らと見上ぐる昼の星 吉原文音
七夕や子供相手の小商ひ 吉武月二郎句集
七夕や宵の畳の白団扇 碧雲居句集 大谷碧雲居
七夕や家の子としていゝなづけ 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
七夕や家中大かた妹と居す 炭 太祇 太祇句選
七夕や小縁の端の塗机 竹冷句鈔 角田竹冷
七夕や少しいびつな星に住む 今村妙子
七夕や少し影さす高遣り戸 芦風 選集古今句集
七夕や岡崎止りの貨車に昼 北野平八
七夕や川のごとくに琴を置き 高橋さえ子
七夕や川を渡れば草青く 藺草慶子
七夕や弘法の山曇りをり 藤田あけ烏 赤松
七夕や御代長月の古簾 会津八一
七夕や心もとなき朝ぐもり 高橋淡路女 梶の葉
七夕や捜索行もはや七度 福田蓼汀 秋風挽歌
七夕や文箱に文あふれしめ 朝倉和江
七夕や新家の双子美しき 四明句集 中川四明
七夕や旅の終はりを子の家に 冨田みのる
七夕や昔むかしのわらべ歌 野村 きく
七夕や昼あをあをと湯屋の澄み 秋元不死男
七夕や暗がりで結ふたばね髪 村上鬼城
七夕や暮露よび入て笛をきく 其角
七夕や木椅子を立ちて顔かげる 柴田白葉女 花寂び 以後
七夕や檜山かぶさる名栗村 秋櫻子
七夕や武蔵野低き山に果つ 有働亨 汐路
七夕や死なねば夫と逢へぬなり 日野晏子
七夕や母に素直な中学生 波多野爽波 『湯呑』
七夕や水に浸りし砂を踏み 日原傳
七夕や水髪結ぶ町娘 高橋淡路女 梶の葉
七夕や涼しき上に湯につかる 一茶 ■文政十年丁亥(六十五歳)
七夕や火の粉糸引く煙出 敏雄
七夕や灯さぬ舟の見えてゆく 臼田亞浪 定本亜浪句集
七夕や父口ずさむ祖母の唄 星野立子
七夕や独り寝さてもなつかしき 小川軽舟
七夕や甘露寺寺内芋ばたけ 龍岡晋
七夕や生くる限りは悪夢憑く 石塚友二 光塵
七夕や男の髪も漆黒に 草田男
七夕や男忘れて病み居たり 河野南畦 『黒い夏』
七夕や白粉にほふ野べの霧 松瀬青々
七夕や百姓の子と妻あそぶ 杉山岳陽 晩婚
七夕や真赭(まそほ)の地獄湧きたぎつ 山口誓子
七夕や秋をさだむるはじめの夜 芭蕉 俳諧撰集「有磯海」
七夕や秋を定むる夜のはじめ 七夕や秋を定むるはじめの夜 松尾芭蕉
七夕や窓あをあをと閨厨 古舘曹人 樹下石上
七夕や童女抱けばすぐねむり 菖蒲あや 路 地
七夕や笹に霧吹く看護生 津田渡
七夕や筆の穂なめし脣の墨 高橋淡路女 梶の葉
七夕や美濃の下切哭きにゆく 宮坂静生 山開
七夕や臈たけて尚乳母の膝 比叡 野村泊月
七夕や芭蕉人麿一枝に 島村元句集
七夕や若く愚かに嗅ぎあへる 高山れおな
七夕や莢鳴つてゐる豆畑 藺草慶子
七夕や葛ふく風は夜明から 横井也有 蘿葉集
七夕や藍屋の女肩に糸 黒柳召波 春泥句集
七夕や襖隔てゝ人通り 原月舟
七夕や賀茂川わたる牛ぐるま 服部嵐雪
七夕や送られて来し金平糖 安藤和子
七夕や遺髪といへるかろきもの 角川照子
七夕や長生殿の水時計 松瀬青々
七夕や雨たしかめる片手出す 桂信子 遠い橋
七夕や雨をふくみし浜の砂 片山由美子 水精
七夕や雨粒つきし文庫本 藺草慶子
七夕や風にひかりて男袖 耕衣
七夕や馬すすまする川の端 銭正 七 月 月別句集「韻塞」
七夕や髪に結ひこむ藤袴 木歩句集 富田木歩
七夕や髪ぬれしまま人に逢ふ 橋本多佳子(1899-1963)
七夕をきのふに荒るる夜空かな 吉田汀史
七夕をよけてやたゝが舟躍リ 向井去来
七夕をよべに星澄む越の空 文挟夫佐恵 黄 瀬
七夕を押し返す風ありにけり 阿部みどり女 『微風』
七夕を昇きて堤の霧がくれ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
七夕を流すと夙くも子は起きぬ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
七夕を祀り岬の行きどまり 萩原麦草 麦嵐
七夕を過してからの別れかな 鈴木とみ子
七夕柳かこみ点せりをさならは 臼田亞浪 定本亜浪句集
七夕流す夢これよりの少女子と 馬場移公子
七夕竹あけくれ雨の喪にこもる 角川源義 『冬の虹』
七夕竹いづくに置くも雨となる 鴻司
七夕竹ささげ狂院の前通る 辻桃子
七夕竹しきりに雨をこぼしけり 角川春樹
七夕竹そよぐ風待ち水を打つ 貞
七夕竹たつるより月稚くあり 及川貞 榧の實
七夕竹たてて家並の淋しくも 鍛冶本輝子
七夕竹の青さ清水に挿して保つ 宮坂静生 青胡桃
七夕竹をさゆさゆとかつぎくる腰に鉈 栗林一石路
七夕竹二本よせてぞ賑はしく 楠目橙黄子 橙圃
七夕竹人の夕餉の覗かるる 欣一
七夕竹借命の文字隠れなし 石田波郷(1913-69)
七夕竹分教場に机六つ 相馬遷子 山国
七夕竹地に挿すために力出す 加倉井秋を 午後の窓
七夕竹子の名書き添ふ子は遠し 及川貞 榧の實
七夕竹孤児ら願ぎ事余白多し 平井さち子 完流
七夕竹寝がへりをうつ方ありや 安東次男 裏山
七夕竹弔旗のごとし原爆地 沢木欣一 地聲
七夕竹惜命の文字隠れなし 石田波郷
七夕竹捨てゝ流れぬ水なりし 五十嵐播水 播水句集
七夕竹搭乗手続カウンターに 高澤良一 燕音 
七夕竹泛べ波疾き最上川 前田鶴子
七夕竹流すに出逢ふ旅路かな 高橋淡路女 梶の葉
七夕竹流すや桃も流れ来る 太田土男
七夕竹浄土の父母に何告げむ 堀口星眠 営巣期
七夕竹清七地獄やゝ翳り 小林康治 玄霜
七夕竹畳の上に出来上る 千葉皓史(1947-)
七夕竹碓氷に流したりき昔 及川貞
七夕竹立つるや色紙地にのこる 五十嵐播水 播水句集
七夕竹立て風もあり妻もあり 辻田克巳
七夕竹艀一族見られけり 小林康治 玄霜
七夕竹色紙疎らの枝長く 松藤夏山 夏山句集
七夕竹蝶こぼれむとして急ぐ 湘子
七夕竹雨ふくむ風吹きつけて 中田剛 珠樹
七夕笹潮引いて島ひろがりぬ 友岡子郷 風日
七夕笹風鳴りの夜となりにけり 辻桃子
七夕過ぎ誕生日過ぎ何待つ日々 吉野義子
七夕飾り潔癖に近きわが齢 阿部みどり女
七夕飾淋しげなれば書き足し遣る 高澤良一 素抱 
亡き妻の天へ七夕竹飾る 小川原嘘帥
人教へし淋しさ七夕竹くぐる 加倉井秋を
伐りざまに七夕竹を担ぎゆく 中田剛 珠樹以後
倒れやすしよ七夕の交み馬 辻桃子
吹き狂いあす七夕の竹になる 渋谷道
吾子に客七夕の夜の一少女 山田弘子 こぶし坂
喪服着て七夕竹の裏通る 寺井谷子
図書館の七夕竹の下枝かな 綾部仁喜 樸簡
土間の闇に切りし七夕竹寝せおく 宮坂静生 青胡桃
垂れ垂れの七夕竹を舁きあそぶ 大橋櫻坡子 雨月
基地に立つ七夕竹と星条旗 品川鈴子
墨すつてをり七夕の色紙あり 星野立子
大ぶりに進学塾の七夕竹 高澤良一 寒暑 
天井に七夕竹の触れてをり 藺草慶子
女の子七夕竹をうち担ぎ 高野素十
女老い七夕竹に結ぶうた 鷹女
妹に七夕星を教へけり 正岡子規
子の身丈伸び伸ぶ七夕竹立てり 清水基吉 寒蕭々
子供らに七夕すぎぬ天草採 石田波郷
子育て期の活気 七夕笹に風 伊丹公子 機内楽
孟宗を七夕竹として故郷 福永耕二
寝てさめて七夕の夜の雨の音 上村占魚 球磨
寺子屋の七夕風景随筆に 高澤良一 寒暑 
山の雲七夕竹に来て遊ぶ 不二子
山小屋の七夕の字も鎮魂歌 福田蓼汀 秋風挽歌
峡の空けふ七夕の茜濃き 黒田櫻の園
巌壁より投げて七夕竹流す 馬場移公子
忍ぶや暮かし編笠を男七夕 立吟 選集「板東太郎」
思わざる心ゆらぎを七夕の愛逢月というに言寄す 秋元千恵子
手伝て七夕祭る尼ぜかな 藤田耕雪
手術受く七夕色紙書きのこし 牧野春駒
持ちいでし七夕竹の立てどころ 高橋淡路女 梶の葉
撓ふ竹七夕色紙つけすぎる 阿波野青畝
旅の夜の七夕竹を見る手摺 槐太
旅遠く来て七夕の夜となりぬ 岸風三楼 往来
日照雨来て七夕竹に跡止めず 相生垣瓜人
日直りや七夕のそのつとめての 相生垣瓜人
旧の七夕植田に迫る怒濤光 田川飛旅子 花文字
星かげの七夕ちかき帰省かな 石原舟月 山鵲
星ほつと七夕竹に生れけり 阿部みどり女
昼畳七夕様の塵を掃く 阿部みどり女 笹鳴
格子より七夕竹や先斗町 野村泊月
横たへし七夕竹に古畳 高橋淡路女 梶の葉
母が切る七夕竹の小さけれ 高浜虚子
母と子の七夕竹に風生まる 伍賀稚子
母の文七夕竹のもとに読む 古賀まり子 洗 禮
水に櫛沈め七夕ちかき空 神尾久美子 桐の木
水は音つむぐ七夕まつりかな 三田きえ子
汗垂りをり七夕の町丘に見てをり 杉山岳陽 晩婚
汝が作せし七夕星ぞ高く吊れ 大石悦子 群萌
沼の戸の七夕竹をうち立てし 深川正一郎
流したる七夕竹やたはれ波 阿部みどり女 笹鳴
流るるは七夕竹か夜の川 山本歩禅
深爪や七夕の夜の本降りに 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
湖や七夕竹を流したる 尾崎迷堂 孤輪
潮の香に七夕の媚を売りてをり 小林康治 玄霜
潮騒や七夕柳散るもあり 臼田亞浪 定本亜浪句集
火種にはならず七夕過ぎにけり 久保純夫 聖樹
煮干噛みしめて七夕迎へけり 原田喬
父母わかき日の七夕にわれ生る 中戸川朝人 残心
牡蠣の磯七夕竹を挿せりける 下村槐太 光背
玄関に七夕竹や京の宿 五十嵐播水 播水句集
生き堪へて七夕の文字太く書く 村越化石
病む人に七夕竹を立てくれし 松本つや女
病室に七夕笹の釘探す 年尾
病室に雨の七夕昏れにけり 村越化石 山國抄
石の上七夕の蝶けむりをり 楸邨
秋近し七夕恋ふる小傾城 正岡子規
穂ぞ見ゆる七夕竹や槇の垣 尾崎迷堂 孤輪
窯びらき七夕竹を片寄せて 大島民郎
窯守りの置き捨て漫畫七夕明け 竹中宏 句集未収録
竹一本うしなひ七夕の竹藪 藤岡筑邨
竹立てて七夕といふ字が浮び 章子
箒川七夕の笹流れきし 黒田杏子 花下草上
縁側に七夕紙と硯かな 高木晴子 晴居
織女(七夕)に老の花ある尾花かな 嵐蘭 七 月 月別句集「韻塞」
肩車七夕笹に触れくぐる 大下古子狼
胸うたる七夕笹に平和の二字 田川飛旅子 花文字
腋青く剃る七夕のためならず 田川飛旅子 『邯鄲』
舁きゆくや霧にぬれたる七夕を 軽部烏帽子 [しどみ]の花
草刈りて七夕の露よごしある 千代田葛彦 旅人木
衣の如七夕竹の吹かれたる 京極杞陽 くくたち下巻
見て聞いて触って七夕となりぬ 永末恵子
親子句碑七夕笹に華やぐ日 桑田青虎
貝化石展に七夕竹飾る 中戸川朝人 星辰
車窓眼下に七夕竹の揺るゝ見し 青峰集 島田青峰
逆立ちし七夕紙に歌逆立ち 上野泰 佐介
道も狭に七夕まつり奥見えず 杉山岳陽 晩婚
遠き灯の七夕竹に灯りけり 阿部みどり女
遠里や七夕竹に虹かゝる 泉鏡花
遺体かへる雨の七夕まくらがり 田中水桜
野に遊ぶ七夕童子びしよ濡れに 原裕 『王城句帖』
長茄子の味七夕もちかきかな 久保田万太郎 流寓抄
阿蘇杉の湿り童女の七夕竹 桜井博道 海上
隣り親し七夕竹を立てしより 高浜虚子
隣人の黍七夕もすぎにけり 百合山羽公 故園
雨の中七夕竹のたててあり 成瀬正とし 星月夜
電線が七夕笹に襤褸を垂る 横山白虹
須磨の浪七夕竹をうち返し 五十嵐播水 播水句集
風さゆる七夕竹や夜半の霧 芥川龍之介 ひとまところ
風立ちて七夕竹となりにけり 長谷川櫂 虚空
飾られて七夕竹は早や葉を巻く 田川飛旅子 花文字
鱗雲七夕竹の晝淋し 東國 泉天郎、岡田葵雨城(平安堂)編
えぞにうに虫ひそみをり星祭 堀口星眠 営巣期
くらがりに水が慄へる星祭 登四郎
ことごとく海の句を書き星まつり 佐野まもる 海郷
しんかんと酸素を売れり星祭 杉本雷造
たらちねを夫婦と見るや星祭 その
たんざくに願ひは一つ星まつり 小川木久江
ぬばたまのくろ髪洗ふ星祭 高橋淡路女 梶の葉
はぎといふ女に生れ星祭 沢田はぎ女
はなやかに漸く更けし星祭 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
ふりそめし槐の雨や星まつり 五十崎古郷句集
まさをなる狭山わたりの星まつり 杉山岳陽 晩婚
まだ泳ぐこゑが門辺に星まつり 馬場移公子
みどり児も彦星もいま洗ひたて 白澤良子
むさし野の涯に来しかば星まつり 杉山岳陽 晩婚
やごとなき君に仕へて星祭 比叡 野村泊月
ゆふがたは子が川へ出る星祭 酒井裕子
ゆめにみる女はひとり星祭 石川桂郎(1909-75)
われよりも長き子の髪星祭 木内怜子
乱礁の前の彦星合はんとす 萩原麦草 麦嵐
事に寄せて招きし客や星祭 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
二女嫁ぎ二女家にあり星祭 桜坡子
亡き祖母に電話の来たる星祭 河村静香
何もかもこの手放れて星祭 八木 實
使はざる鍵が小箱に星まつり 片山由美子 水精
俯向きてひとに蹤きゆく星まつり 杉山岳陽 晩婚
六日たつ秋のこゝろや星祭 美角
冬瓜の尻のしもふり星祭 辻桃子
凡そ世に夫の句がよし星祭 池上不二子
包帯に患部包める星祭 高澤良一 鳩信 
北岸にさびたは栄え星祭 齋藤玄 『無畔』
厄年を寺に参るや星祭 名和三幹竹
古郷の子に子ありけり星祭 士朗
句に燃やすいのち尊し星祭 川村紫陽
叶はざる故願ひあり星祭 福田蓼汀

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by 575fudemakase | 2015-06-30 04:07 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

馬鹿 莫迦 バカの俳句

馬鹿 莫迦 バカの俳句

池田澄子百句(創風社出版)を読んでいたら、掲句に遭遇した。

馬鹿馬鹿と言うと口あき春の空気 

小生もいささかこの〝莫迦〟なる用語に関心あったので
拙作を羅列してみる。

「阿波の馬鹿踊り」いつ果てるやら天の川 橋本夢道 無類の妻
あらしのあとの馬鹿がさかなうりにくる 尾崎放哉
きれい好きな村鶯の馬鹿高音 岸田稚魚 筍流し
さねかづら男は馬鹿を良しとせむ 川上弘美
つぎつぎと嫁がせる馬鹿花吹雪 福井隆子
われひとり桜馬鹿にて散りぬるか 保坂加津夫
ジャスミンの芬々馬鹿に蒸す日かな 高澤良一 石鏡
世には着て親に背むくを馬鹿踊 上島鬼貫
丹波晴れてお松送りの馬鹿囃子 山田春生
五加木飯まだまだ惚けぬ俳句馬鹿 丸山太一
休み休み言ふ馬鹿ありてこそ佳けれ 筑紫磐井 花鳥諷詠
俳々と馬鹿の一念寒たまご 加藤郁乎(1929-)
傾倒する馬鹿一ものを読初 富安風生
八つ頭馬鹿丁寧に洗はれをり 高澤良一 ももすずめ
冷奴馬鹿塗りといふ箸のあり 市村楳香
夕焼けてこの馬鹿げたるはんだごて 津沢マサ子 空の季節
多数とは馬鹿の集りいかのぼり 加藤郁乎
夜ざくらや何かにつけて馬鹿ばやし 久保田万太郎 草の丈
大寒の馬鹿晴れにして山へ鳥 岸田稚魚
妻が言ふ「初蝶初蝶と馬鹿みたい」 岡崎光魚
星飛んで逝つてしまひし俳句馬鹿 小出秋光
春二番三番四番五番馬鹿 三橋敏雄 畳の上
春塵やこころの馬鹿のトルストイ 平井照敏 天上大風
木守柿わが馬鹿を世にさらしゐて 松崎鉄之介
木瓜みんな咲いてしまへり馬鹿陽気 高澤良一 ももすずめ
本心を吐く馬鹿がゐる万愚節 是松京村
松蝉や葉書・破瓜・墓・馬鹿・破壊 田川飛旅子 『山法師』
枯菊や馬鹿長きホースとぐろ巻く 野村喜舟
梅雨昼の母屋に納屋の馬鹿笑 河野静雲 閻魔
正月を馬鹿で暮して二月かな 鳴滝-秋風 選集古今句集
渋柿の馬鹿なりをして稲不作 原田青児
渋柿は馬鹿の薬になるまいか 正岡子規
無禮なる妻よ毎日馬鹿げたものを食わしむ 橋本夢道
甲の藁塚は消え失せ乙の馬鹿 永田耕衣 吹毛集
男も馬鹿女も馬鹿の冷奴 佐藤和夫
石噛んでをりし磯巾着の馬鹿 串上青蓑
秋三月馬鹿を盡して別れけり 秋 正岡子規
考へがあつての馬鹿を冷奴 加藤郁乎
聖は臍に夕ベ死すとは馬鹿らしや 隈 治人
葛飾の遅日とろとろ馬鹿囃子 文挟夫佐恵 遠い橋
蓑虫に叶はぬ馬鹿をやつてゐる 櫂未知子 貴族
虹消えて馬鹿らしきまで冬の鼻 加藤楸邨
踊るも馬鹿見るも阿呆よ阿波の夏 橋本夢道 無類の妻
酉の市そのお神楽の馬鹿囃子 高橋淡路女 梶の葉
野火の馬鹿堂々めぐりしてくすぶる 細谷源二
陽炎や鮒釣る馬鹿の鼻のさき 幸田露伴 蝸牛庵句集
風生、馬鹿一に傾倒す冬の梅 久保田万太郎 流寓抄以後
馬鹿うれし箒の柄洩る花の雪 昌夏 選集「板東太郎」
馬鹿づらに白き髭見ゆけさの秋 高井几董
馬鹿でかい夕顔瓢抱いてみる 後藤綾子
馬鹿でも何でも景気よくしこしこ大根漬けては踏み漬けては踏み 橋本夢道 無禮なる妻抄
馬鹿になりきれぬ余生や乱れ菊 高嶋香都
馬鹿になるまで鬼灯を鳴らしゐる 田村ひろ
馬鹿の腹いつも充実花南瓜 平畑静塔
馬鹿びきの出でゝかへらず五月雨るゝ 幸田露伴 拾遺
馬鹿丁寧に運ぶほかなき不発弾 五十嵐研三
馬鹿晴れや不作陸穂が刈りはかどる 米田一穂
馬鹿長き箱涅槃図を蔵すてふ 能村登四郎 寒九
麦秋や馬に出て行馬鹿息子 炭 太祇 太祇句選
黒字倒産出づ三月の馬鹿陽気 川村紫陽
黝い茸など傘とさしかけ馬鹿な切株 三橋鷹女
莫迦となる錠や西日の硝子窓 高澤良一 暮津
骨折のそれでも使ふ莫迦団扇 高澤良一 暮津
莫迦をみる初生り西瓜承知で買ふ 高澤良一 暮津
莫迦にせしその湯たんぽが恋しき夜 高澤良一 暮津
ぎんなん剥きとっくに鼻が莫迦と云ふ 高澤良一 暮津
栗剥けば手が莫迦になり小休止 高澤良一 暮津
莫迦鳴きをはばかりもなく軒の蝉 高澤良一 暮津
団栗を莫迦云ひながら拾ひをり 高澤良一 石鏡
歳旦吟作り今からそんな莫迦な 高澤良一 鳩信
ギブス組涼みがてらの莫迦話 高澤良一 鳩信
莫迦げたる蝉の一徹通しけり 高澤良一 素抱
蚊の止まる耳摶ち据えて耳が莫迦 高澤良一 素抱
莫迦げたる潮吹を又掘り当てぬ 高澤良一 素抱
俳句莫迦通す一年亦過ぎて 高澤良一 随笑
鷹化して鳩となるとは莫迦げたる 高澤良一 随笑
莫迦げたる暑さに馴るる他なかり 高澤良一 随笑
緑陰に莫迦げて大き忠魂碑 高澤良一 随笑
莫迦戦争藷が主食の座につきて 高澤良一 随笑
俳句莫迦ばかり集り初句会 高澤良一 随笑
鼻莫迦になるまで寒ンの通勤路 高澤良一 宿好
舌先が莫迦になるまで氷水 高澤良一 寒暑
夏鴉見上ぐる人を小莫迦にす 高澤良一 寒暑
莫迦でかきオオオニハスの葉の置き処 高澤良一 さざなみやつこ
死ぬは莫迦と告げたる人の墓洗ふ 高澤良一 ねずみのこまくら
*めなもみの誰にでも付きバカと呼ぶ 福田甲子雄
三日しかもたぬ芍薬バカなのよ 高澤晶子
かくも肥えてバカ芋の名あり秋の風 金尾梅の門 古志の歌
寒厨や「バカ」と呟くときの本気 平井さち子 鷹日和

以上
by 575fudemakase | 2015-06-28 03:03 | 句評など | Trackback | Comments(0)

枝豆と麦酒

枝豆と麦酒

初ものがうまいシーズンとなった。
初鰹はやったので、ここでは枝豆と麦酒の例句を挙げておく。

▼枝豆の例句

お袋が泣いて栄坊のお通夜になる青枝豆の莢 橋本夢道 無禮なる妻抄
ころがる枝豆畳に遠き海と山 磯貝碧蹄館
もてなしとなき枝豆の喜ばれ 後藤夜半 底紅
一壷酒のあり枝豆のありにけり 島野汐陽
人生事枝豆青くうだりけり 久保田万太郎 草の丈
付けたりの固き枝豆昼の酒 高澤良一 ぱらりとせ
冴え冴えと枝豆白磁の皿大き 河野多希女
十三夜枝豆醜にしてうまき 木津柳芽 白鷺抄
卓上や狼藉として豆のから 枝豆 正岡子規
口中に飛ばす枝豆いい感じ 高澤良一 素抱
喋らない人が枝豆食べてゐる 木暮陶句郎
大まかに枝豆ゆでる草の宿 奥寺田守
學校に行カズ枝豆賣ル子カナ 枝豆 正岡子規
守武忌枝豆皿に青く盛り 塙志津男
客散りて枝豆の殼なまなまと 小坂順子
川音や夜の枝豆つかみいづ 岩田昌寿
明月ヤ枝豆ノ林酒ノ池 名月 正岡子規
朝市の走り枝豆すぐ売れて 柿島貫之
枝豆がしんから青い獺祭忌 阿部みどり女 『光陰』
枝豆が汗かいて焼酎のおかわり 湯本放石
枝豆とコップ二つを出しておこ 関澄ちとせ
枝豆にみちのくの旅続けたる 鈴鹿野風呂 浜木綿
枝豆に下手碁も二十六夜待 洗耳
枝豆に寒風山の空あをし 高澤良一 寒暑
枝豆に手のよく伸びて聞き上手 小泉旅風
枝豆に無口の口を開きけり 三栖菜穂子
枝豆に牛の汚れの色を見る 松瀬青々
枝豆に藍色の猪口好みけり 長谷川かな女 雨 月
枝豆のあとさき鋏む語りをり 永井龍男
枝豆のすこし硬くて微笑せり 中村路子
枝豆のはじけ緑の夢ひとつ 松田 淑
枝豆の三ツ子のみどり押せば飛ぶ 久保武
枝豆の単細胞で通すなり 岡本卿子
枝豆の山より月の上りけり 会津八一
枝豆の弾けてみっつ里ごこち 増田萌子
枝豆の影濃く闇も濃かりけり 阿部みどり女
枝豆の殻ばかりうき物はなし 石井露月
枝豆の殻積む愚考重ねゐて 水口楠子 『泉汲む』
枝豆の毛の狐色峰をかし 原石鼎
枝豆の産毛を口にして痩せる 大石雄鬼
枝豆の真白き塩に愁眉ひらく 西東三鬼
枝豆の碧玉喉に飛び入りぬ 久米正雄 返り花
枝豆の緑鮮やかずんだ餅 渋谷一男
枝豆の葉の落つる日の千枚田 細見綾子 黄 炎
枝豆の葉は穴だらけ泥だらけ 梶山千鶴子
枝豆の虫噛むだばかりの怒ではあるまい 梅林句屑 喜谷六花
枝豆の豆とばしるや人の顔 星野麦人
枝豆の豆鉄砲や喉仏 矢田挿雲
枝豆の運ばれてくる通夜の席 嶋名栄子
枝豆の青すぎはぐれこころかな 吉田紫乃
枝豆の食ひ腹切らばこぼれ出む 三橋敏雄 眞神
枝豆は喰ひけり月は見ざりけり 枝豆 正岡子規
枝豆は妻のつぶてか妻と酌めば 楠本憲吉
枝豆は紫頭巾酒の名は 後藤比奈夫 めんない千鳥
枝豆は芯まで青し子の未来 村上喜代子 『雪降れ降れ』
枝豆やこんなものにも塩加減 北大路魯山人
枝豆やすぐ雰囲気に馴れる性 池田一歩
枝豆やふれてつめたき青絵皿 猿橋統流子
枝豆やまさらなにを咎めだて 稲垣きくの
枝豆やみんな多弁で大食で 桜田とく子
枝豆やモーゼの戒に拘泥し 西東三鬼
枝豆や三寸飛んで口に入る 正岡子規
枝豆や十枚そろふ手塩皿 山口たま子
枝豆や友は妻子のこと洩らす 村山古郷
枝豆や和尚手づからつまみ食 赤木格堂
枝豆や塩たつぷりと国なまり 飯村弘海
枝豆や夜空に近く座りをり 金子秀子
枝豆や媚びず衒わず痩詩人 富田潮児
枝豆や子欲しと言ふをはばかりて 今村俊三
枝豆や実なき男捨てるべし 柴田佐知子
枝豆や客に灯置かぬ月明り 粟津水棹
枝豆や寺に會する二十人 会津八一
枝豆や山科講がこゝろざし 大谷句佛 我は我
枝豆や手毬の中にオルゴール 藤岡筑邨
枝豆や断ちて忘れし酒の味 野口里井
枝豆や最終便にしろと言ふ 山田弘子 こぶし坂
枝豆や月明かに人の顔 露月句集 石井露月
枝豆や老いて自在な真砂女の句 角川春樹
枝豆や舞子の顔に月上る 高浜虚子
枝豆や芸うすき妓の爪化粧 村上喜己
枝豆や莢噛んで豆ほのかなる 松根東洋城
枝豆や記憶に穴のありしなり 中戸川朝人 星辰
枝豆や詩酒生涯は我になし 本下夕爾
枝豆や酒さめまじく黙りをる 榎本冬一郎
枝豆や雨の厨に届けあり 富安風生
枝豆や食のほそりをまのあたり 長谷川春草
枝豆をうけとるものや渋団扇 芥川龍之介 蕩々帖〔その二〕
枝豆をおせばつぶてと口の中 五十嵐播水
枝豆をおせばつぶてや口の中 五十嵐播水 播水句集
枝豆をけふのたつきにちぎりけり 清原枴童 枴童句集
枝豆をしなやかに食べ福祉論 大浦淑美
枝豆をつまむ幼児と晩酌す 矢島渚男 船のやうに
枝豆をもぎて炊ぎて庵主 星野立子
枝豆をもぎ傍の鉄鍋ヘ 高木晴子 晴子句集
枝豆をもぐは肉声よりさびし 小檜山繁子
枝豆を人待顔にたぶるかな 尾崎紅葉
枝豆を供へて馬の祠かな 安部元気
枝豆を喰へば無月の情あり 高浜虚子
枝豆を喰へば雨月の情あり 高浜虚子
枝豆を夫に背きて硬茄でに 柿本妙子
枝豆を引いて無月の戸にもどる 木村蕪城 一位
枝豆を根こそぎにしぬ佐吉多万人 高澤良一 さざなみやつこ
枝豆を海へ向かって弾き出す 白井春子
枝豆を真っ青にゆで旅疲れ 降籏幸子
枝豆を茹でたき風の吹いてくる 庄子紅子
枝豆を茹でる匂ひでありにけり 菅井たみよ
枝豆を茹でる湯気まで走りなり 高澤良一 素抱
枝豆を茹でゐる妻の夕ごゝろ 山内山彦
枝豆を酒徒と呼ばれてつまめけり 佐藤仙花
枝豆を飛ばし飛び出すフランス語 銀林晴生
枝豆を食うて小鳥に似てきたる 岡崎桂子
枝豆を食ひ静かなる特ダネ記者 広瀬一朗
枝豆を食へばう雨月の情あり 高濱虚子
枝豆ノカラ棄テニ出ル月夜カナ 枝豆 正岡子規
枝豆ノツマメバハヂク仕掛カナ 正岡子規
枝豆ノ月ヨリ先ニ老イニケリ 枝豆 正岡子規
枝豆ヤ三寸飛ンデ口ニ入ル 枝豆 正岡子規
枝豆ヤ俳句ノ才子曹子建 枝豆 正岡子規
枝豆ヤ月ハ絲瓜ノ棚ニ在リ 枝豆 正岡子規
枝豆ヤ病ノ牀ノ晝永シ 枝豆 正岡子規
枝豆ヤ盆ニ載セタル枝ナガラ 枝豆 正岡子規
正妻の外に三名枝豆食ぶ 山崎十生
湯道具を抱へ枝豆選びをり 館岡沙緻
真青に枝豆飯や一つの忌 甲斐田 久子
芋ヲ喰ハヌ枝豆好ノ上戸カナ 芋 正岡子規
話ながら枝豆をくふあせり哉 枝豆 正岡子規
青茹での枝豆かへらざる齢 榎本冬一郎

▼麦酒の例句

この国の出口は一つ麦酒飲む 対馬康子 純情
しみじみとわれの孤独を照らしをり札幌麦酒のこの一つ星 荻原裕幸
すぐ席をはづせる位置に麦酒酌む 鈴木栄子
だばこちさ寄れと夜汽車の麦酒かな 平井さち子
ほろにがき昼の麦酒や男の子得て 橋本榮治 麦生
一日が了る麦酒の泡見つめ 高澤良一 寒暑
何故と問ふこと多き世の麦酒かな 高橋恵美子
天上大風麦酒の泡は消えやすく 佐々木有風
夫逝きて麦酒冷やしてありしまゝ 副島いみ子
学徒われ降臨祭麦酒さゝげ飲む 山口青邨
注ぎぞめの麦酒音あり秋涼し 永井龍男
淡々と過ぎたる午後の麦酒かな 角川春樹
熱燗党麦酒党相半ばして 高澤良一 さざなみやっこ
生麦酒紙破るごと海苔を食ぶ 木島茶筅子
里の子等庭に見てゐる麦酒酌む 富安風生
麦酒つぐや胸中の子も齢五十 及川貞
麦酒のむや露台を掩ふ若楓 青峰集 島田青峰
麦酒のむ椅子軋ませて詩の仲間 林田紀音夫
麦酒の泡を吹くバルコニーの微風かな 青峰集 島田青峰
麦酒まず異国にねむる父に注ぐ 穂積曄子
麦酒樽の朱のあざやかに夕立す 内藤吐天 鳴海抄
うそばかり言ふ男らとビール飲む 岡本 眸
うたかたのビールの泡と了ふ一日 高澤良一 寒暑
かりそめの孤独は愉しビール酌む 杉本零
ぐしよぐしよに濡れ戻りたる夜のビール 石塚友二
この道にビール飲まさんと跼みけり 永田耕衣 陸沈考
こんな日はビールが佳けれ酢のものに 高澤良一 素抱
ひとりにて人を恋ひのむビールかな 野村喜舟
ひとり酌むビールを余す夕べかな 高澤良一 素抱
ひとり飲むビール妻子に何頒たむ 石塚友二
アメリカの大を語らひビール酌む 大橋敦子 手 鞠
オーダーのビールさうだなハイネッケン 高澤良一 寒暑
ストーヴにビール天國疑はず 石塚友二
ネクタイの呪縛をときてビール酌む 近藤 伸子
ビールあげよ市民に燃える遠い戦火 三谷昭 獣身
ビールうましおばこ唄へば褒めらるる 皆川白陀
ビールだコップに透く君の大きい指 北原白秋
ビールつぐ髪にハイビスカスを挿し 千原 瀟湘
ビールなら頂くワイン駄目だけど 山田弘子 こぶし坂以後
ビールのほてり闇を圧して山の星 阿部みどり女
ビールのむ時間上手に使ひし日 嶋田摩耶子
ビールの泡口髯汚す飲みっぷり 高澤良一 素抱
ビールの泡鼻の辺りでぷつぷつと 高澤良一 寒暑
ビールほろ苦し女傑となりきれず 桂信子 黄 炎
ビールますますうましアンデスポテトかな 高澤良一 寒暑
ビールまづ女に注ぐ熱帯夜 寺岡捷子
ビールよく減る日の我が家活気あり 月足美智子
ビール一本夢に飲み干し楽しみな 高浜年尾
ビール乾しさて俳論に入る気配 木野なほみ
ビール乾し辺りの風がぬるくなる 高澤良一 素抱
ビール先づすゝめてくれる倅あり 中谷今子
ビール冷ゆ渓流さやに笛となり 原裕 葦牙
ビール呑み先輩もまた貧しかりき 栗原米作
ビール呑む男の持てる喉ぼとけ 佐藤 都
ビール園神神もかく屯せし 平畑静塔
ビール壜砕かれありアイヌ酔泣きしか 林翔 和紙
ビール工場からあふれさうな満月 能城 檀
ビール汲み陶工たちの芸談議 大島民郎
ビール泡だつ夕焼劫火の日の如く 榎本冬一郎 眼光
ビール注ぎ何を言ひ出すやも知れず 山田弘子 こぶし坂
ビール注ぐ泡盛り上り溢れんと 高濱年尾
ビール溢れその手に近き夜の空 桜井博道 海上
ビール溢れ心あふるる言葉あり 林翔 和紙
ビール瓶二つかち合ひ遠ざかる 細見綾子
ビール発泡言葉無縁の日なりけり 林翔 和紙
ビール積み耶蘇島渡船日に一度 小原菁々子
ビール箱に茄子を栽えけり窓の下 獨吟 岡本綺堂
ビール酌み嘘も真も聞きながす 福永みち子
ビール酌み陶工たちの芸談義 大島民郎
ビール酌むことに心の横すべり 高澤良一 寒暑
ビール酌むすててこ季となりにけり 高澤良一 寒暑
ビール酌むやときに険しき女の眸 稲垣きくの 黄 瀬
ビール酌むや殺し文句もよしと聞き 稲垣きくの 黄 瀬
ビール酌む夜をつかれし足ぞ垂れ 細谷源二 鐵
ビール酌む少々荒き風も佳き 高澤良一 寒暑
ビール酌む男ごころを灯に曝し 三橋鷹女
ビール酌む礼文カスベエむしりつゝ 高澤良一 素抱
ビール酌む腹のくびれに眼を落とし 高澤良一 素抱
ビール酌む高原の夜や生きゐてこそ 森川暁水
ビール飲み乾す黒人と目が逢ひて 殿村莵絲子
ビール飲む友に山羊髭いつよりぞ 平賀 扶人
ビール飲む腰を痛めたぺリカンと 小西 昭夫
ビール飲む雑魚寝の床をまくしあげ 椎橋清翠
ビール館円卓の騎士・女騎士 的野雄
ビール馬車幻と過ぎ石畳 楠本憲吉
ブリューゲルのビア樽男ビール酌む 高澤良一 燕音
ミズコブの突きだしビールうまかりき 高澤良一 素抱
ミユンヘンのビールにしばし禁酒解く 稲畑汀子 汀子第三句集
一座席ビールの占めてリフト行く 宮田俊子
一里先きの鵜舟明りやビール上ぐ 佐野青陽人 天の川
一騎見ゆ冬のビールの沁みるたび 徳弘純 麦のほとり
三田伍長黄泉にもビールありますか 船木 幸人
乙女らの喉美しくビール飲む 今泉貞鳳
乾杯に遅れ静かにビール酌む 須藤常央
乾杯のためのビールは泡多く 高浜喜美子
交し飲むビールの琥珀胃の琥珀 高澤良一 燕音
人もわれもその夜さびしきビールかな 鈴木真砂女
人責むる心薄れてビール飲む 佐藤悟朗
今宵飲むビールは鉄の味のして凜きまで肉のおもひは滾る 小野興二郎
何は扨置き一杯目のビール 高澤良一 ももすずめ
何用も無き貌の生ビール哉 永田耕衣 陸沈考
冷えすぎてビールなさざり夕蛙 石川桂郎 高蘆
冷え過ぎしビールよ友の栄進よ 草間時彦
初夏だ初夏だ郵便夫にビールのませた 北原白秋 竹林清興
古町にネオン一点ビールの酔 香西照雄 対話
同郷といふだけの仲ビール干す 佐藤凌山
喪に服すこころ毒舌なくビール 吉村ひさ志
嘘ばかりつく男らとビール飲む 岡本 眸
噴きあげて一万尺の夜のビール 三嶋 隆英
地ビールにステーキ木目の顕てる卓 高澤良一 燕音
地ビールの店へ連なるバスの客 達山丁字
地ビールや星をゆたかに珊瑚浜 長谷川閑乙
地ビールや阿蘇の連山昏れかかる 中村温子
大声の酒屋のビール届きけり 太田順子
大宰の碑濡らせしビール頒けて飲む 山口誓子
大役を終へてビールの栓を抜く 星野椿
大衆にちがひなきわれビールのむ 京極杞陽(きよう)(1908-81)
妻老ゆるともゆたかなるビールの泡 榎本冬一郎 眼光
子の夫を君づけで呼ぶ生ビール 毛塚静枝
屋上に落ち目の人とビール飲む 内田美紗 浦島草
屋上の風を肴にビール酌む 高澤良一 素抱
山の夜のビール四五本女郎花 久保田万太郎 草の丈
山上の空気に冷えしビール飲む 右城暮石
床の間のビールの壜や冬籠 会津八一
心昏し昼のビールに卓濡らし 大野林火
恋せしひと恋なきひととビール汲む 辻桃子 童子
悔なき生ありやビールの泡こぼし 鈴木真砂女 夕螢
悲しみの席にビールのある事も 岡林知世子
戦後といふ分母もちわれらビール干す 玉城一香
手に指があってビールのコップに取っ手 池田澄子 たましいの話
手術して一年経つかビール注ぐ 高澤良一 鳩信
敗れたりきのふ残せしビール飲む 山口青邨
教へ子はよきかなビール林立す 森田峠 避暑散歩
教会風の屋に向き月下ビールあふる 金子兜太
旅といふ心易さのビール飲む 稲畑汀子
旅なれば昼のビールを許されよ 永田豊美
旅惜しむ心にビール酌みにけり 西村和子 窓
春夜飲む蒼きビールとは海よ 吉田透思朗
暖房にビールの酔のいまださめず 久保田万太郎 草の丈
東尋坊美(は)しやビールの泡透けて 高澤良一 宿好
桜は白いビールの空函がたくさん来た 北原白秋
歩きつつ地ビール「独歩」喇叭飲み 高澤良一 寒暑
汗の香の職餓鬼ばかりビール酌む 小林康治 玄霜
泡消えしビール座興の白けゐて 樋口津ぐ
波郷曰く生ビールのむ時「天下腹中に来る」 橋本夢道 無礼なる妻
浅草の暮れかかりたるビールかな 石田郷子
浚渫船見てゐる昼のビールかな 依光陽子
涼風の星よりぞ吹くビールかな 水原秋桜子
片なびくビールの泡や秋の風 会津八一
牡鶏の威嚇のビール妻階下 藤後左右
独り生く何時かビールの味おぼえ 江口久子
王冠を嵌めビール瓶海に投ぐ 右城暮石 上下
生きてゐる価値の一つに生ビール 河西みつる
生ビールこほしきころや宵明り 石塚友二 光塵
生ビール内地の人よと云はれ酌む 高澤良一 燕音
生ビール友ゐぬ日なく我ゐぬ日なく 石川桂郎 含羞
生ビール文楽を見し亢ぶりに 石塚友二
生ビール氷河のごときセロリ食む 松山足羽
生ビール泡流る見て愉快かな 高濱年尾 年尾句集
生ビール運ぶ蝶ネクタイ曲げて 池田秀水
生ビール飲める女になつてゐし 白幡千草
甲板に今日愉しまむビール乾す 西村和子 かりそめならず
病院のエレベーターに乗るビール 紅谷順子
白夜の燈溶けゐるごとし白ビール 関森勝夫
福引のみづひきかけしビールかな 久保田万太郎
秋雨や地階まで混むビール館 高井北杜
笑ひは通ずビール肥りの小母さんと 林翔 和紙
結納のビールに和む夫と婿 村井信子
義弟とは言葉少なくビール酌む 森田峠 避暑散歩
聞き役となりてビールを勧めらる 水原幸子
自在鉤に荒彫りの鯉ビール酌む 石川桂郎 四温
花茣蓙を甥と分ちてビール酌む 遠藤梧逸
草の絮漂ふビール祭終ヘ 関森勝夫
覇気のなき今となってはビール乾す 高澤良一 寒暑
誰もつぎくれざるビールひとり注ぐ 茨木和生 丹生
買初のビール自販機よりごとん 奈良文夫
軽くのどうるほすビール欲しきとき 稲畑汀子 汀子第二句集
逢へばすぐ繋がる月日ビール酌む 山田弘子 螢川
遠近の灯りそめたるビールかな 久保田万太郎
酌みかはすビール一夜の砂嵐 藺草慶子
長かりし一日ビールの黄昏色 高澤良一 さざなみやっこ
長老に係累あらぬビールかな 静 良夜
阿蘇人と阿蘇をたたへてビール抜く 上村占魚 『霧積』
飲み干せるビールの泡の口笑ふ 星野立子
驚くべき長身の来しビール園 近藤潤一
黄昏れてくるまでビール我慢しぬ 高澤良一 寒暑
黒ビール白夜の光すかし飲む 有馬朗人 耳順
黒ビール飲み冬の夜の食堂車 長谷川青窓
アカシヤの花の舗道のビヤホール 遠藤星村
ハーメルンの笛吹きとゐるビヤホール 仙田洋子 橋のあなたに
ビヤホールかならずハワイアンミュージック 今井杏太郎
ビヤホールに一人拍手し誰も和せず 右城暮石 声と声
ビヤホールに入りて明るき疲れかな 五十嵐播水 播水句集
ビヤホール出づれば月の黄なるあり 岸風三楼 往来
ビヤホール椅子の背中をぶつけ合ひ 深見けん二
ビヤホール背後に人の増えきたり 八木林之助
操舵輪壁に懸けあるビアホール 高澤良一 寒暑
樽の上花菖蒲活けビヤホール 今泉貞鳳
滝風に揺れゐる旗やビヤホール 五十嵐播水 播水句集
病床の子規見たきものビヤホール 今泉貞鳳
色街の灯り初めたるビヤホール 芝田教子
逃げし風船天井歩くビヤホール 右城暮石 声と声
これよりはビヤガーデンでする会話 稲畑廣太郎
もうそんな頃かや屋上ビアガーデン 高澤良一 素抱
ビアガーデンに夕日まだある誕生日 内田美紗
ビアガーデン灯る病室の真向かいに 横山房子
ビヤガーデン去年と同じ灯の風情 百合山羽公 寒雁
ビヤガーデン妻のよろこぶ何もなし 右城暮石 上下
ビヤガーデン星合の夜に灯の鎖 百合山羽公 寒雁
ビヤガーデン照明青き城望む 佐野まもる
ビヤガーデン遠稲妻を見にのぼる 百合山羽公 寒雁
ビヤガーデン隅の暗きにホース置く 岸風三樓
ビヤガーデン雨の匂ひの木椅子引く 高澤良一 素抱
北陸の星青すぎるビヤガーデン 秋沢猛
増えてゆく漁り火の数ビヤガーデン 秋沢 猛
昇降機一基はビヤガーデンのため 池田秀水
病む夫に満艦飾のビヤガーデン 横山房子
美しやビヤガーデンに拭ふ口 依田明倫
遠い灯がすりよっているビヤガーデン 平田よしこ


以上
by 575fudemakase | 2015-06-27 00:17 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

麥丘人の終の二句

麥丘人の終の二句

麥丘人の遺句集(「小椿居以後」)を読んでいて、
砂鉄が磁力に怖気を振るって吸い寄せられるように
吸い寄せられたのは次の二句。

行く春や俳句は久保田万太郎
向日葵やよせばいいのにニーチェなど

次いで
一二三二二三とあめんばう
かな?
(私は目下、脊椎管狭窄の為、週一回軽い筋トレに通っているが
その時、看護士さんが声を掛けて呉れるのが一二三二二三である)

以上
by 575fudemakase | 2015-06-26 00:31 | 句集評など | Trackback | Comments(0)

麥丘人のカタカナ俳句

麥丘人のカタカナ俳句

麥丘人のカタカナ俳句を意識するようになったのは彼の代表句

ヘンリライクロフトの私記秋深む 星野麥丘人

以来である。それを思い出して 最晩年の遺句集(「小椿居以後」)
よりカタカナ俳句を抜き出してみたら以下の通りであった。
麥丘人のカタカナに対する目配りはルビ等にも及んでいる点を観察
されたい。

三椏ノ花切腹(ハラキリ)ハ忠ナラズ
水馬にもストーカーらしき奴
八十ヲ孔子ハ曰ハズ七竈
春遅々とわが血中の血色素(ヘモグロビン)
新涼や摘ませてもらふミントの葉
レクイエムに非ず梟の啼きたるは
キャラメルの函の天使やハロウィン
リラ冷えの古きレコードダミアかな
コスモスに皆手を上げて来りけり
よろこばし妻の糞(まり)出てクリスマス
コロッケか刺身にするか養花天
どこにでもコスモスの道ありにけり
ハレルヤは妻のこゑかなクリスマス
大年やバッハミサ曲ロ短調
紙雛と相性のよきメロンパン
アメダスの画面は雨やさくらんぼ
向日葵やよせばいいのにニーチェなど
ヘルパーに柳葉魚が読めて焼いてをり
フロリダへ行きたし雪の日なりけり
ダウ平均どうでもよろし又雪が
樟若葉オルガンさんたまりあかな
秋風やイエスタディを繰返し
ユニクロを着て老人の年忘
カーテンを開けば雪となってゐし
冬晴れやカレーライスも一人では
友二忌や丸善インクいまもなほ
花冷のベッド軋ますばかりかな

以上
by 575fudemakase | 2015-06-25 00:46 | 句評など | Trackback | Comments(0)

2015年 6月 ねずみのこまくら句会の諸句(コメント付)

2015年 6月 ねずみのこまくら句会の諸句(コメント付)

予選でザッと句を抜いてみたら、下記の如くとなった。

3田園に水迸る夏の来ぬ
5真紅の薔薇選ぶレースの黒手套
10梅雨寒や余白ばかりの日程表
13掃く人に木を剪る人に新樹光
何でもない光景だが、斬新な光景である
18山寺の社務所に匂ふ蚊遣香
山寺の社務所は確かに閑散としていますネ。人肌に蚊が寄って来そうなところ。
20万緑や齢忘るる師との旅
俳句をやってて良かったが聞こえて来そうな一句
21密教の百坊支へ山新樹
山岳の空気感が手に取るようです
24薫風や十分待てば次のバス
七五の叙述の軽さもときに俳句にとって必要。所詮レトリックなんていう
ものはあざといもの。
26三伏の初伏大山詣でかな
27茅花の穂風がつまんでゆきにけり
28卯波寄す浜に砂鉄の鱗紋
32夏ひばり麦より立ちて麦の色
42田植先ず泥田に立つを教へられ
観光客かなんかではなかろうか?泥田にたつことすら難しい
52泥鯰水が大きく動きけり
カイボリ等やったことある経験者なら納得と言ったところ
58花菖蒲端然としてしどけなく
確かに花菖蒲は遠望すれば端然、しかしながら、近寄って見れば、仔細は
しどけなくであろう。この矛盾が同居しているところがミソ。
59塗香して善男善女となり涼し
61紫陽花の先ず下闇を育てをり
〝先ず下闇を育て〟が俳句の手練手管だ
70鷭の子の親の水輪にもどりけり
80青葉雨病児の描ける電車かな
94鯵刺の離宮の池に眞つしぐら
95蟻地獄に蟻を落して逃ぐる子等
正に傍観を決め込む子供たちを描いた
97奇兵隊決起の寺の大山蟻
98本を閉づ眼鏡を措けば夏暁たり
100宮址失せ茅花流しの野となれり
108姉妹都市駅前アメリカ花水木
垂れ幔幕か何かに提携する米国の都市名か何かが書いてあるのだろう。
110亡き夫の雲隠れとも青葉木菟
119ザリガニを捕らえんとする半ズボン
127生まれたる蜻蛉の影の地に濃かり
132鶯の声ゆるぎなく藪の奥
鶯の居る位置が藪であるからこそ〝ゆるぎなく〟なのであろう。
133新緑やはるか向こうの開口部
辞書で開口部を牽くと 建築用語もしくは人体用語とある。当句の場合、むろん建築用語だろう。建物の一部位。
138また同じやうな本買ひ梅雨じめり
142さくらんぼ病みて百八十度の世界
入院なんて一度もしたことないと言う人の百八十度なのであろう
そう言えば 師林火に 病みて知る母娘の世界とかなんとか言う句あったような?
144尺取や身ほとりひとりづつ逝きぬ
146無口なるふたりの前のラムネ壜
148天日を浴び総身の滝の銀
152青田風蛇は頭を持ち上げて
頭のところ、頭(かしら)とルビを振ったほうがよいと思う
153明易し言の葉もたぬ夢の母
無言だとか言葉だとか言っちゃったら元も子もない。言の葉という字ヅラの効用を思うべきだ。
156クサフグの放卵射精暮れなづむ 
草河豚を句にするだけで相当なお方。ゲテモノを句材にするとは…
かってクサフグを味噌汁に入れて食したことがあるがこれまた相当な
味であった。
158読みさしの書をつみあげて旱とす
一寸ひねった旱の叙法である
161万緑や師の健脚につきし日も
165ナイターのファウルボールが星の間
なるほど 現代的な把握だ。
167ミステリのクライマックス紙魚歩く
古本愛好者にはありそうな光景
168新緑をバネに翔つ鳥尿(しと)一滴
尿(しと)一滴は自然な行為、即ちよく見る光景、それに対し
バネに翔つ鳥は俳句的表現だ。
172鯵刺の脚に潮の満ちて来し
185ちちははと夫ゐる気配田草取る
ちちははと夫ゐる気配とは要するに人気(ひとけ)のこと。
ここで作者はその人気を〝ちちははと夫〟に限定するのだ。
187牛蛙鳴けど姿を追ひもせず
姿を追ひもせずが作者の主張するところ。そんな齢とおもわせるところがうまい
190尺取の尺とる山の案内板
197筍を割ってまるまる桃太郎
桃から生まれた桃太郎。竹から生まれたかぐや姫。さて掲句はそれをゴッチャにしたか?
202豆ご飯ふっくり炊けて独りの餉
203青梅のまた落つる音母が家
生家の最晩年が如実
207アマリリス本音を表沙汰にして
アマリリスに、作者自身のその時の心の裡をぶっつけたか?
209若葉映ゆスケッチブックまだ真白
216ちゃんづけで呼ばる神鶏えごの花
これで神鶏もずいぶんと俗っぽくなる
221欅一樹広き影置く涼しさよ
223花栗を鼻が探してゐたるかな
これを漫画で描いたなら、小さな花栗を巨大な鼻が嗅ぎ回っている構図。
226一鳥も啼かず大滝響き落つ
228雨脚の見えぬ高階梅雨見つむ

以上
by 575fudemakase | 2015-06-24 03:18 | 句評など | Trackback | Comments(0)

夏男

夏男

以下の一文はネンテンさんの最近のブログからの引用であるが、掲出句の
一大特徴は、その詠み方の傍若無人さぶりであろう。


和歌に痩せ俳句に痩せぬ夏男 正岡子規

 夏痩せをした男、それが夏男だろう。明治33年、亡くなる2年前の句である。虚子編『子規句集』から引いた。この句集、岩波文庫だが、このほど、ワイド版になって出た。ワイド版は文字が大きいので助かる。ちなみにこの本の解説は私が書いている。皆さん、ワイド版『子規句集』をお手元にどうぞ。

実は上句と同じ思いをしたのは、星野麥丘人の遺句集 「小椿居以後」にある次句。

行く春や俳句は久保田万太郎

こちらは春男だ。

以上
by 575fudemakase | 2015-06-23 02:11 | その他 | Trackback | Comments(0)

鰹季

鰹季

6月20日の朝日新聞にデカデカと鮪の広告写真が載った。
あまりにもデカく見事なので写真の如く居間の壁に貼り
付けておくことにした。

とはいえ、現今は目に青葉山時鳥…のかつお季である。

以降には 鰹 初鰹の例句を挙げておく。
因みに、私の棲む 武州 金澤八景は東京湾の船釣り基地の
一つで土日は釣客で賑わう。

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▼鰹

あかつきに戸口を固く鰹燻す 古舘曹人 砂の音
かたまりて灯台沖の鰹船 大沢一栄
つよき日の射してゐたりし鰹かな 後藤 章
はねるほど哀れなりけり秋鰹 椎本才麿
ぶらさげるために鰹の尻尾あり 結城美津女
むらさきに松魚泳がし宵の酒 高澤良一 素抱
もの古りし港の雨や鰹船 五島沖三郎
わが宿のおくれ鰹も月夜かな 蕪村
下部等(しもべら)に鰹くはする日や仏 服部嵐雪
世に青きものゝさかりや鰹時 素角
仰臥せり鰹の角煮舌に載せ 水原秋櫻子
作務僧の鰹さげ来る竹曇 橋本榮治 麦生
信濃路や松魚はみねど時鳥 井上井月
修務僧の鰹さげ来る竹曇 橋本榮治
出刃の背を叩く拳や鰹切る 松本たかし
出航の灯がいきいきと鰹船 芳野正王
初なづな鰹のたゝき納豆まで 素堂
半島に足を伸ばせる鰹季 高澤良一 さざなみやっこ
又や鰹命あらば我もまながつお 山口素堂
土に坐す婆の渡世や乾鰹 古舘曹人 砂の音
土佐の船安房に舵解く鰹どき 岩崎きゑ子
土佐みづき鰹鳥の口けふ重し 堀口星眠 営巣期
土佐日記はじまる浦の鰹船 桑原志朗
夜鰹やまだしと思へば蓼の露 山口素堂
大鰹縞目正して糶を待つ 水原春郎
天日干し鰹を吹けり時津風 高澤良一 鳩信
天渺々海漫々中にひよつくり鰹舟 尾崎紅葉
富士の嶺に鰹あがらで道者(どうしゃ)かな 松吟 俳諧撰集玉藻集
寺涼し松魚かく音厨より 河野静雲 閻魔
尾で提げて一尾の鰹冬の蒼 中島斌雄
岬々に鳶の主ゐて鰹潮 鳥居おさむ
市にけふたゞ三本の鰹かな 小澤碧童 碧童句集
帰り来よ鰹も旬の土佐なれば 片岡 北窓子
年々や家神に供ふ塩鰹 川合仙子
年よらぬ顔ならべたやはつ鰹 炭 太祇 太祇句選後篇
年年や青葉に着たし鰹縞 高橋睦郎 稽古飲食
指箸に鰹生肝ほいと喰ふ 後藤綾子
提げて来し鰹いただき提げて見し 五十嵐研三
散らばるは十中八九鰹船 宇多喜代子
新妻と二十日の別れ鰹漁夫 谷崎 和布刈男
新酒古酒千木鰹木の構へかな 進藤一考
明残る月や権右衛門が鰹船 谷活東
昨日今日鰹みえたり秋の雨 増田龍雨 龍雨句集
時鳥鰹を染めにけりけらし 松尾芭蕉
晩酌の松魚にちょんと擦りしょうが 高澤良一 素抱
暗がりに水のひらめき鰹糶る 小田 司
松魚売幡随院を見知りけり 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
松魚舟子供上りの漁夫もゐる
松魚船子供上りの漁夫もゐる 高濱虚子
松魚買ふて債ある酒屋叩きけり 酒葉月人
桟橋に灯を投げ繋る鰹船 岡安迷子
梅は実に赤銅色の鰹塚 澤柳たか子
武者幟きそふや島の鰹どき 笹井武志
水揚げの裸灯の揺るる鰹船 栗山妙子
水離れに藍迸る鰹かな 中島月笠 月笠句集
河口の潮ぶつかけ洗ふ鰹船 瀧 春一
泳ぎ子は鰹の烏帽子怖れけり 柑子句集 籾山柑子
港空ラつぽ鰹をいぶす煙流れ 杉本寛
煙よけの眼鏡ゆゝしや鰹焚き 篠原鳳作 海の旅
煮鰹をほして新樹の烟哉 服部嵐雪
瓜もみや風に吹き散る花鰹 河原白朝
発動機船を逐ひ抜く鰹一つかな 中島月笠 月笠句集
白雲や漕ぎつれ競ふ鰹舟 吉武月二郎句集
盤台に松魚生きたり若楓 正岡子規
盤台に鰹生きたり若楓 子規句集 虚子・碧梧桐選
目には青葉尾張きしめん鰹だし 三宅やよい
神へ捧ぐ籠の鰹を頭にのせて 羽部洞然
種子島隠すうねりに鰹釣る 南光 翠峰
立秋や汗ばみて鰹だく男 萩原麦草 麦嵐
籠の目や潮こぼるゝはつ鰹 葉拾
糶はじむまでに鰹のあげきれず 宮城きよなみ
糶を終へ底を乾かす鰹船 榎本冬一郎
糶市の太声に暁け鰹基地 福田蓼汀
糶聲やひたに藍さす鰹の眼 古舘曹人 砂の音
縞なす青潮一老まじる鰹船(清水港にて) 飴山實 『おりいぶ』
群れ鰹蒔餌蹴散らし去りにけり 中島月笠 月笠句集
艫揃へや波太が漁長鰹舟 河東碧梧桐
花柚に松魚に句ある頃ならん 寺田寅彦
若水に鰹のをどる涼しさよ 其角
荒神輿河岸衆鰹だかりなり 荒井正隆
蒸したるも鯛と松魚を貶しけり 森鴎外
藁ほぐし鰹焼く火を作りをり 武田みさ子
藍凝つて銀を生ずる鰹かな 松根東洋城
虫ぼしや片山里の松魚節 炭 太祇 太祇句選
見る限り戻り鰹の潮色に 茨木和生 三輪崎
足摺の男と生まれ鰹釣り 坂本鬼灯
釣竿の竹大束や鰹船 渡辺水巴 白日
釣鰹五戒はいかに禅徳寺 沾葉 選集「板東太郎」
鎌倉と名のつて死る松魚哉 正岡子規
関の清水古里恋し生鰹 青雲 選集「板東太郎」
電柱のもとのあらぐさ鰹裂く 大岳水一路
青葉時鳥松魚老しが恨なり 尾崎紅葉
風すずし膳出しかかる花鰹 洞木 俳諧撰集「有磯海」
鰤飛て鰹躍るや師走の賦 米仲
鰹きて燈台の器具青光る 百合山羽公 寒雁
鰹つり妻はまつほのうら船か 松岡青蘿
鰹の尾林立させて運びゆく 広瀬一朗
鰹の時宿は雨夜の豆腐かな 素風
鰹一本に長家のさはぎ哉 一茶 ■文政八年乙酉(六十三歳)
鰹一本井戸無き不自由な巷居 長谷川かな女 花寂び
鰹切る俎いつも水流れ 今瀬剛一
鰹割きかつをのごとき無表情 加藤知世子 花 季
鰹千本枕ならべて朝糶に 北野民夫
鰹売いかなる人を酔すらん 芭蕉
鰹売りいかなる人を酔はすらん 芭蕉
鰹幟立てて焼津市文化の日 宮下翠舟
鰹揚ぐ手送りに月滴れり 平松弥栄子
鰹時男波おもおも背をつらね 野澤節子
鰹来る大土佐晴れの濤高し 福田甲子雄
鰹潮とどろき燈台屹立す 中村明子
鰹糶つて朝月仰ぐ男なし 神尾久美子 桐の木
鰹糶る港は人の目聰くて 古舘曹人 砂の音
鰹舟南風の黒潮漕げり見ゆ 西島麦南 人音
鰹船かへり大島雲垂れたり 水原秋櫻子
鰹船出でゆく沖はなほ荒れつ 山口草堂
鰹船大滝見ゆる浦を出づ 河出斜陽
鰹船帰る砂丘も鼓動して 百合山羽公 寒雁
鰹船帰る龍馬の夜となれり 鳥居おさむ
鰹船戻るよ波を厚くして 金田あさ子
鰹船押しならびたる潮暑く 瀧春一 菜園
鰹船来初め坊の津の春深し 水原秋櫻子
鰹船真珠筏を揺らし発つ 和田暖泡
鰹船舳のたかぶりに岬暁く 松林朝蒼
鰹船見ゆ荒降りのあとの路地 大岳水一路
鰹船飯くふ裸身車座に 瀧春一 菜園
鰹荷の跡は巳日の道者哉 榎本其角
鰹見し若葉は紅葉はしり鮭 涼山
鰹負えりその血が染める人の肩 田川飛旅子 花文字
鰹負へりその血が染める人の肩 田川飛旅子 『花文字』
鰹釣る灘の紺より引き抜いて 稲松錦江
鰹釣る発止々々と胸に受け 楓巌濤
鰹釣る胴の間に飯噴きこぼれ 樟豊
鰹釣名人にしていごつそう 清崎敏郎
黒潮の中の一点鰹船 坂本 鬼灯
黒潮の色香染み込みたる鰹 岩城鹿水
かつを船滴る陸に戻りけり・・・西伊豆田子 高澤良一 ねずみのこまくら
鰹割きかつをのごとき無表情 加藤知世子 花 季
大勢の中へ一本かつをかな 服部嵐雪

▼初鰹

たつぷりと泣き初鰹食ひにゆく 宇多喜代子
みどり葉を敷いて楚々たり初鰹 三橋鷹女
めでたかり出刃打ちこんで初鰹 石川桂郎 四温
一と膳のみな海の幸初鰹 篠原 美加英
一本を抛り足したる初鰹 串上 青蓑
上の句はなんであらうと初松魚 加藤郁乎 江戸桜
中落に一擲銭や初鰹 松根東洋城
久闊や土佐もここなる初鰹 高木晴子
今日のみは江戸つ子たらむ初鰹 林翔
俎に頭はみだし初鰹 高橋絹代
冷々と舌に載りけり初鰹 増田龍雨 龍雨句集
初松魚あゝつがもねえなまりとは 加藤郁乎 江戸桜
初松魚厨に人のたかりけり 柑子句集 籾山柑子
初松魚燈が入りて胸しづまりぬ 草間時彦
初松魚羽が生えたり江戸の空 正岡子規
初松魚聞をよんだるばかりなり 岡野知十
初鰹いたくさげすむ門地かな 飯田蛇笏 山廬集
初鰹その外何も無き荷かな 島村元句集
初鰹もろ手に捧げ糶りはじむ 謙三
初鰹より土佐の旅はじまりし 稲畑汀子
初鰹五十年酒に背きし時あらず 橋本夢道 『無類の妻』以後
初鰹亭主関白つらぬきて 澤田緑生
初鰹兄弟揃ふ日なりけり 高田堅舟
初鰹包丁持つは夫の役 稲畑廣太郎
初鰹双生児同日歩き初む 中村草田男
初鰹固しと食らい死を忘ず 藤村多加夫
初鰹夜の巷に置く身かな 石田波郷
初鰹女が負けず糶り落す 夏井やすを
初鰹威勢よく売る老夫婦 佐野たけ子
初鰹子とゐる父にバッハの曲 永田耕一郎 海絣
初鰹小判こぼせし革財布 四明句集 中川四明
初鰹市へ負ひゆくみな女 亀井糸游
初鰹恋にも旬のあるような 高木一惠
初鰹料りし気魄盛られある 高橋笛美
初鰹朝風呂好きときこへけり 野村喜舟 小石川
初鰹桶より抜きて暁の糶 中村房子
初鰹男ばかりで囲みたる 宇多喜代子 象
初鰹盛ならべたる牡丹かな 服部嵐雪
初鰹盛りならべたる牡丹かな 服部嵐雪
初鰹糶の氷片とばしけり 皆川盤水
初鰹血のつながりは父のもの 椎橋清翠
初鰹襲名いさぎよかりけり 久保田万太郎 流寓抄
初鰹観世太夫がはし居かな 蕪村
初鰹都心に出でて日暮れたり 石川桂郎
包丁を弾ませ下ろす初鰹 内山美智子
北溟にどんな魚やら初鰹 会津八一
卯の花を夜目のあなたや初松魚 澄雄
受話器とる妻の濡れ手や初鰹 岡田 貞峰
四明忌やその絵すさびの初松魚 山口八九子
夕かげにみどり顕ちけり初鰹 上田五千石 森林
大江戸や犬もありつく初鰹 一茶
山村の祝ぎ唄素朴初鰹 関由紀子
市場まで夜船送りや初松魚 井月の句集 井上井月
御僧は説かず娶らず初鰹 清水基吉
擂鉢に骨付入れつ初鰹 喜舟
断つほどの酒にはあらず初鰹 鷹羽狩行 七草
普請して土間通す水初鰹 原裕 葦牙
未婚二十七歳半ば初鰹 馬場駿吉
本降りのあとの晩晴初鰹 鷹羽狩行 十友
樹々植ゑて神田に住むや初鰹 野村喜舟
水はじき鉄のごとしや初鰹 鷹羽狩行 八景
江戸を云ふざつかけなしや初松魚 加藤郁乎 江戸桜
江戸ツ子の中の神田や初松魚 五空
江戸亡ぶ俎に在り初鰹 高浜虚子
沖を指す航跡ふとし初鰹 益本三知子
流行醤の玄関先や初松魚 井上井月
浅草もさみしくなりぬ初鰹 真鍋青魚
海を見ぬ月日に馴れて初鰹 宍戸富美子
牟婁の江のにぎわひ続き初鰹 吉田 伝治
町空をとどろかす雷初鰹 井上美子
目には青葉山ほととぎす初鰹 素 堂
目には青葉山郭公初松魚 素堂
目には青葉山郭公初鰹 素堂
眼には青葉山郭公初松魚 素 堂
糶に出て女も火玉初鰹 古舘曹人 砂の音
腹も背もしろがね深き初鰹 宇多喜代子 象
船津屋の屋敷稲荷に初鰹 田中英子
船着くや糶場へ滑る初鰹 池森昭子
花鳥もきのふと過て初鰹 芙蓉花
街の日に潮や吐かん初鰹 碧雲居句集 大谷碧雲居
返稿に朱圏豊かに初鰹 木村蕪城 寒泉
通り過ぎもどりては買ふ初鰹 如月真菜
酖をもつて可なりとやせん初鰹 沙月
鎌倉を生きて出でけむ初鰹 芭蕉
関東にまた移り住み初鰹 松尾緑富
雨ざつと来てさっと去り初鰹 太田寛郎
初がつをどすんと岬たたく波 中拓夫
憂人の鮓にもすこし初がつを 巣兆
初がつをと筍飯の夕餉かな 田中冬二 俳句拾遺


以上
by 575fudemakase | 2015-06-22 00:16 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

其奴の貌

其奴の貌

ニセアカシアのこの若葉を喰い散らしたのは誰だ!
この齢(本年7月16日で後期高齢者年齢 75歳となる)までソヤツの貌を見たことない。蛞蝓か?蝸牛か?

以降に 蛞蝓 蝸牛の例句を挙げる。

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▼蛞蝓

おどけたる尼の操や蛞蝓 飯田蛇笏 山廬集
たそがれは微光とならむ蛞蝓 能村登四郎 枯野の沖
なめくじに塩ふるわざを祖先より 八木三日女 赤い地図
なめくじのふり向き行かむ意志久し 中村草田男
なめくじの俳諧もあり山越え 加藤青女
なめくじら界隈梅雨に入りにけり 小林康治 『華髪』
なめくじり倫丈艸に知られけり 松瀬青々
なめくじり寂光を負い鶏のそば 金子兜太(1919-)
なめくじり溶けるに白き歯を残す 萩原麦草 麦嵐
なめくじり眼窪みつつ一詩眼 香西照雄 対話
なめくじり賽の河原へ二三段 山口都茂女
なめくじり這て光るや古具足 服部嵐雪
なめくじり這へり仏足石の上 根岸善雄
ぬけぬけと秋なめくじの図太さよ 原コウ子
まざまざと迷ひのあとを蛞蝓 清水衣子
五月雨に家ふり捨てなめくじり 野沢凡兆(?-1714)
人の死やいま光り出す蛞蝓 小林康治 玄霜
今朝までは鬱にありしよ蛞蝓 田波富布
個性も単なる蛞蝓の跡黄に乾く 原子公平
医師病みて蛞蝓よりも意気地なし 加藤 岳雄
四十路にて稍世馴れたり蛞蝓 宍戸富美子
妹に蛞蝓溶ける登山小屋 萩原麦草 麦嵐
妻老いて蛞蝓を溶かしてしまふ 加倉井秋を
子のあとの机待つなり蛞蝓 石川桂郎 含羞
子の後の机待つなり蛞蝓 石川桂郎
家裏の鉢底漁るなめくじら 高澤良一 素抱
暁ときの朱き花食べなめくじり 原 不沙
朝曇蛞蝓の歩がきらきらと 中拓夫 愛鷹
正一位稲荷大社の蛞蝓 山田ひろむ
産声の框の我や蛞蝓 齋藤玄 飛雪
紐切って八方破れなめくじり 福田基
蛞蝓といふ字どこやら動き出す 後藤比奈夫 祇園守
蛞蝓と生れて辿る微光あり 千代田葛彦
蛞蝓に塩それからの立話 福永耕二
蛞蝓に好かれて良寛さんの墓 高澤良一 寒暑
蛞蝓のながしめしてはあるきけり 飯田蛇笏 春蘭
蛞蝓のはかなき西日青胡桃 飯田蛇笏 椿花集
蛞蝓の地球回るに追ひつかず 堀川節子
蛞蝓の玻璃にあるまま灯をともす 波多野爽波 鋪道の花
蛞蝓の行路はかはく冬の石 山口青邨
蛞蝓の跡あきらかに遊女墓 相川やす志
蛞蝓の這ふを裏より見し障子 月舟俳句集 原月舟
蛞蝓の通りし跡の俎板に 粟津福子
蛞蝓の銀かわきたる酒船石 羽田 岳水
蛞蝓や南瓜の二葉美しく 野村喜舟 小石川
蛞蝓や山のお寺の摺粉木に 野村喜舟
蛞蝓を踏みたる廊の灯をともす 阿比留苔の秋
蛞蝓不徳と言ふも古稀すぎぬ 小林康治 『存念』
蛞蝓大雨のほかは音も無し 岡田 貞峰
蛞蝓急ぎ出てゆく人ばかり 石田波郷(1913-69)
蛞蝓銭の袂をふりながら 石川桂郎 含羞
蝸牛化シテ蛞蝓(カツユ)トナラン今日カラハ 高澤良一 宿好
限りある命と思ふ蛞蝓 石田あき子 見舞籠
雨十日蛞蝓多き厨かな 滝川愚仏
魂の抜けてゐる日ぞ蛞蝓 杉山岳陽 晩婚

▼蝸牛

あかるさや蝸牛かたく~ねむる 中村草田男
ありといへば指す方はあり蝸牛 三好達治 路上百句
いつの間に近くにをりし蝸牛 岸田稚魚 『紅葉山』
いつまでも硝子の裏の蝸牛 森賀 まり
いまだ名のつかぬ木橋に蝸牛 土生重次
いまの世にあはぬ男や蝸牛 田中裕明
うこぎ摘ム蝸牛もろき落葉かな 言水
かたつむりたましひ星にもらひけり 成瀬櫻桃子
かたつむりだんだん昏れてしまひけり 宮本得志
かたつむりつるめば肉の食ひ入るや 永田耕衣(1900-97)
かたつむりははへの道を戻りけり 山本桜童
かたつむり一寸すすむ一聖句 長田等
かたつむり利休ねずみの影をひく 石原八束 『仮幻』以後
かたつむり刺の上にて今日を終る 白川順子
かたつむり南風茱萸につよかりき 飯田蛇笏 霊芝
かたつむり受話器鳴るとき消えてゐる 柿本多映
かたつむり夢二生家は草匂ふ 鳥越やすこ
かたつむり大露の草に沈みゆく 青陽人
かたつむり大露の葉に沈みゆく 佐野青陽人 天の川
かたつむり居眠り二号活字の乃 佐怒賀正美
かたつむり急ぎごころに角を出し 藤井圀彦
かたつむり手提の中でつぶやきぬ 加藤知世子 花 季
かたつむり才色風に流さるる 櫛原希伊子
かたつむり日々<複雑>を去りつつあり 折笠美秋 虎嘯記
かたつむり日月遠くねむるなり 木下夕爾(1914-65)
かたつむり木にねむりをる秋祭 宇佐美魚目 秋収冬蔵
かたつむり死して肉より離れゆく 柿本多映
かたつむり殻のうちそと過去未来 中北政巳
かたつむり殻の内陣透けゐたり 上田五千石 田園
かたつむり殻の固さに生きてをり 小林草吾
かたつむり殼の内陣透けゐたり 上田五千石
かたつむり汝も一齢加へしや 片山由美子 水精 以後
かたつむり泣きたい時は殻に入る 大川ゆかり
かたつむり渦にさみどり巻きこめて 小島花枝
かたつむり濡れ一隅を照らしおり 橋間石
かたつむり甲斐も信濃も雨の中 飯田龍太
かたつむり真竹三尺ほどのぼる 長谷川久々子
かたつむり結構づくめの一日や 増山美島
かたつむり老いて睡りを大切に 長谷川双魚 風形
かたつむり肉しづかなる冬旱 飯島晴子
かたつむり腐乱のひかり担ぎゆく 増田まさみ
かたつむり葵の濡れしところ食む 阿部みどり女 月下美人
かたつむり踏まれしのちは天の如し 阿部青鞋
かたつむり雨露に育ちて白かつし 岡本松浜 白菊
きざはしに日照雨すぎたる蝸牛 長谷川双魚 風形
きりきりと渦巻く殻の蝸牛 山口誓子 激浪
このままの晩年でよし蝸牛 石田あさ子
こぼれたる葉に戻しやる蝸牛 稲畑汀子
こもり居て雨うたがふや蝸牛 蕪村 夏之部 ■ 一書生の閑窓に書す
すこやかといふ語まろやか蝸牛 下田稔
ためらへば此處に又暮る蝸牛 高田蝶衣
ちぢまれば広き天地ぞ蝸牛 正岡子規
つひに降らずじまひの暗さ蝸牛 上田日差子
でんでん虫汝が祖文明開化派か 後藤綾子
でんでん虫雨が当りて角曲げぬ 高澤良一 素抱
どうしても吾に似てをり蝸牛 大牧 広
なほ容とどむ朽木に蝸牛 高澤良一 素抱
なめくじに塩ふるわざを祖先より 八木三日女 赤い地図
なめくじのふり向き行かむ意志久し 中村草田男
なめくじの俳諧もあり山越え 加藤青女
なめくじら界隈梅雨に入りにけり 小林康治 『華髪』
なめくじり倫丈艸に知られけり 松瀬青々
なめくじり寂光を負い鶏のそば 金子兜太(1919-)
なめくじり溶けるに白き歯を残す 萩原麦草 麦嵐
なめくじり眼窪みつつ一詩眼 香西照雄 対話
なめくじり賽の河原へ二三段 山口都茂女
なめくじり這ひて光るや古具足 服部嵐雪
なめくじり這へり仏足石の上 根岸善雄
ぬけぬけと秋なめくじの図太さよ 原コウ子
ねむたくて殻を曇らす蝸牛 鷹羽狩行 遠岸
ねむりつぎ薄日ふたたび蝸牛 桂信子 遠い橋
はるばると来てすれ違ふかたつむり 鳥居美智子
またの世に露を結びぬ蝸牛 増田まさみ
やさしさは殻透くばかり蝸牛 山口誓子
よべの雨馬藺に殖えぬ蝸牛 黒柳召波
わが足に蝸牛摧くる音ぞかし 相生垣瓜人 明治草抄
われら貧しつひに蝸牛いづる頃 岸風三楼 往来
をとゞしの蝸牛ならんおほふとり 原石鼎 花影以後
メビウスの輪を抜け出せぬ蝸牛 下村まさる
一夜攀ぢ大蝸牛空にあり 金箱戈止夫
一日の旅路しるきや蝸牛 正岡子規
一生の重き罪負ふ蝸牛 富安風生
一筆に神書きし渦蝸牛 上野泰 春潮
三つよれば其師やあらん蝸牛 松岡青蘿
三日ゐて三日富士見ず蝸牛 毛塚静枝
世辞うときままの生涯蝸牛 四倉喜美子
争はで行き来ふ年ぞ蝸牛 文梁
五月雨に家ふり捨てなめくじり 野沢凡兆(?-1714)
亡き星の光さしこむ蝸牛 光部美千代
人はローン蝸牛は殻を負ひ晩夏 高澤良一 素抱
人声のとどくあたりに蝸牛 佐野美智
仰向きに人運ばるる蝸牛 岸本尚毅 舜
佐渡昏れてしまひぬ一枝の蝸牛も 加倉井秋を 『真名井』
何事の一分別ぞ蝸牛 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
俳諧道五十三次蝸牛 加藤郁乎(1929-)
傘(からかさ)にたゝみこみけり蝸牛 横井也有 蘿葉集
傘もたす辺の草や木や蝸牛 岩田昌寿 地の塩
元興寺の鉦鳴つてゐる蝸牛 河合照子
先生の鞄より出る蝸牛 光成敏子
光悦寺垣に殻透きかたつむり 亀井糸游
光陰は竹の一節蝸牛 阿部みどり女 『光陰』
円卓にぬきさしならぬ蝸牛 宇多喜代子 象
円柱となりきる蝸牛冬の教会 加畑吉男
冬眠の蝸牛ときに羨まし 百合山羽公 寒雁
冬眠の蝸牛やこぼれ龍の髭 下村槐太 光背
冷えといふまつはるものをかたつむり 魚目
凩となりぬ蝸牛の空せ貝 榎本其角
別れ路の蝸牛などに与すまじ 齋藤玄 飛雪
力まずに過す余生や蝸牛 八谷きく
勁き拇指蝸牛のごとく覗く足袋 中村草田男
向きかはるとも一途なる蝸牛 杉山 岳陽
唐門のほそき閂かたつむり 水野爽径
喪失の途中にありぬ蝸牛 和田悟朗 法隆寺伝承
嘘の壷抱いてのろのろ蝸牛 小泉八重子
器には亀かたつむり這ひめぐり心の痛むものをあきなふ 田野陽
園児去る微光の中のかたつむり 橋本榮治 麦生
境内に汝も伽藍持つ蝸牛かな 尾崎迷堂 孤輪
夏山や桶に大きな蝸牛 岸本尚毅 鶏頭
夕月や遠出しすぎし蝸牛 中村明子
夕焼けは神話のほとり蝸牛 橋口 等
夕焼の雲の裂けゆく 蝸 牛 富澤赤黄男
夜を寐ぬと見ゆる歩みや蝸牛 炭 太祇 太祇句選
天上に火をつけにゆく蝸牛 あざ蓉子
太き殻引きずり上げし蝸牛 高橋清柳
妻の疲れ蝸牛はみな葉の裏に 沢木欣一
娶らむや知らぬ行方の蝸牛 杉山岳陽 晩婚
存念は雅馴(がじゅん)に遅筆の蝸牛 石原八束 雁の目隠し
家建てて晩年が来て蝸牛 辻田克巳
寒に入る蝸牛らも石の類 鷹羽狩行
少年等蝸牛のうすき殻囃す 右城暮石 声と声
山の雨たつぷりかかる蝸牛 飯田龍太 山の木
山吹をうつ雨かたつむりにきたり 中田剛 珠樹
山草に目をはぢかれな蝸牛 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
巡礼の遠のくやうに蝸牛 高澤良一 ぱらりとせ
幹下りて地這ふ梅雨の蝸牛 西山泊雲 泊雲句集
廟裏に生れみ仏の蝸牛 つじ加代子
弱肉もやゝ肥大せる蝸牛 百合山羽公 寒雁
強靭な肉体に神かたつむり 木村和彦
影高き松にのぞむや蝸牛 炭 太祇 太祇句選後篇
忘却のかなたより来しかたつむり 田村恵子
思ひ出すまで眼をつむり蝸牛 六本和子
怠らぬあゆみ恐ろし蝸牛 太祇
情とげし蝸牛二つが別れゆく石に音なき雨はれゆけり 千代國一
愛しさは草の穂に居る蝸牛 久米正雄 返り花
我むかし踏みつぶしたる蝸牛かな 上島鬼貫
戸袋の節穴ほどの蝸牛 田中美沙
手水鉢に蝸牛落ちぬ何とせし 尾崎迷堂 孤輪
折あしと角おさめけむ蝸牛 炭 太祇 太祇句選
持ありく家はいづくへ蝸牛 蝶夢
採つて来し零余子の中に蝸牛 岸本尚毅 舜
摺鉢やこつりと落し蝸牛 小峰大羽
撒水の庭に出てきし蝸牛 高木 冨美
文鎮の如く芭蕉に蝸牛 京極杞陽 くくたち下巻
旅行くやチロルに大きかたつむり 有働亨 汐路
日暮から桐の木のぼる蝸牛 原田喬
明るさに海ある記憶蝸牛 木村蕪城 寒泉
昏れんとし幹の途中の蝸牛 桂信子 緑夜
星ひとつ殻に灯せし蝸牛かな 桜井千種
昼の火事遠く 蝸牛の殻干き 富澤赤黄男
暁ときの朱き花食べなめくじり 原 不沙
暗くなる心を戻すかたつむり 百合山羽公 寒雁
月明の岩より湧きし蝸牛 田中冬子
朝やけがよろこばしいか蝸牛 一茶 ■文化二年乙丑(四十三歳)
朝鮮は蝸牛程の大きさよ 子規句集 虚子・碧梧桐選
木に草に雨明るしや蝸牛 長谷川 櫂
木の汁を甘なふてゐる蝸牛 松瀬青々
朽ち臼をめぐりめぐるや蝸牛 西山泊雲
朽臼をめぐりめぐるや蝸牛 西山泊雲 泊雲句集
来し跡のつくが浅まし蝸牛 炭 太祇 太祇句選
枯笹と墜ちし蝸牛に水暗し 竹下しづの女 [はやて]
枯蝸牛白きひかりのなかの眉 原裕 葦牙
柊に眠る蝸牛増ゆる水輪 田川飛旅子 花文字
柴垣や蝸牛去らで今日も在り 足立球谷
梅雨寒や屏風を渡る蝸牛 庄司瓦全
樹脂透きてなほ降る雨や蝸牛 高澤良一 素抱
殻の渦しだいにはやき蝸牛 山口誓子 激浪
殻荒れし蝸牛なりさもあらむ 飯島晴子
殻負へる蝸牛より倖せに 高澤良一 素抱
水あかり蝸牛巌を落ちにけり 飯田蛇笏 霊芝
水の辺にひと日の昏るる蝸牛 桂信子 樹影
水逝くとてのひらにのる蝸牛 桂信子 遠い橋
波の辺に眦つよき蝸牛 宇多喜代子
波郷忌や膜はつて寝るかたつむり 鳥居美智子
泣きし子に神父の見せし蝸牛 藤野 力
泣きべたや山上に行くかたつむり 増田まさみ
泥んこの子に余白なし蝸牛 中田ゑみこ
浜木綿の花の傷みや蝸牛 射場 延助
海のものとも山のものとも蝸牛 鈴木光彦
海柘榴市のむかし語らぬ蝸牛 町田しげき
涼を占む蝸牛に人語集めをり 河野多希女 こころの鷹
渦解かんばかりにのびて蝸牛 赤松[ケイ]子
火を刺して雨や一縷の蝸牛 古舘曹人 能登の蛙
点滴にうたれてこもる蝸牛 蕪村
父母老いぬ殻うす光りかたつむり 鍵和田釉子
牧に降る雨は明るし蝸牛 嶋田一歩
猫の子に嗅がれてゐるや蝸牛 椎本才麿(1658-1738)
玄奘三蔵渡天したまふ蝸牛 佐々木六戈 百韻反故 初學
生るるより透く憂さを負ひかたつむり 文挟夫佐恵 遠い橋
由来なき絵や書き壁の蝸牛 中村史邦
百姓の家に雲烟かたつむり 百合山羽公 故園
石ころと掃かれもするや蝸牛 十黄第一句集 小田島十黄
石よりも地よりも生ける蝸牛冷ゆ 橋本多佳子
石原や照つけらるゝ蝸牛 一茶 ■文化元年甲子(四十二歳)
神空に蝸牛枝にと記憶せり 相生垣瓜人
禅林に降り残さるゝ蝸牛 高澤良一 寒暑
秋風やたま~土に蝸牛 月舟俳句集 原月舟
空ゆくは青き蝸牛ぞ身にかたくまとひし殻のかがやきそめぬ 斎藤すみ子
突端と知りて長考かたつむり 長田等
竈火うつる雨の木膚や蝸牛 西山泊雲 泊雲句集
竿の上滑り易くて蝸牛 高澤良一 素抱
笹枯れて白紙の如しかたつむり 竹下しづの女句文集 昭和十一年
策もたぬことが策なり蝸牛 平子公一
箸にうつす桑の中より蝸牛 霞夫
簀むし子や雨にもねまる蝸牛 芥川龍之介
糞をして遠くも行かず蝸牛 佐野青陽人 天の川
紐切って八方破れなめくじり 福田基
絵本の絵そつくりな葉と蝸牛 高木晴子 花 季
良夜明け蝸牛の殻石の如し 榎本冬一郎 眼光
芭蕉葉にはつきり一つ蝸牛 京極杞陽 くくたち下巻
芭蕉葉に蝸牛を置くや老詩客 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
芭蕉葉の裏に表に蝸牛 京極杞陽 くくたち下巻
花の香へ蝸牛角伸し殻も揺り 香西照雄 対話
花疲れ蝸牛われをなぞるなり 攝津幸彦
若竹や砂に落ちたる蝸牛 比叡 野村泊月
茨刈る手になつかみそ蝸牛 芥川龍之介
草庵の三幹竹や蝸牛 岩木躑躅
萩の葉の小ささまろさ蝸牛 大橋櫻坡子 雨月
萱の葉の縺れほどけて蝸牛かな 島村元句集
落柿舎の時をとどめて蝸牛 長田等
葉に籠る蝸牛一つ花柘榴 島村元句集
葉より落つ夏満月の蝸牛 目迫秩父
蓑虫の角やゆづりし蝸牛 山口素堂
蔓草拓く露の利鎌や蝸牛 島村元句集
蘭の香や角ふりもどす蝸牛 桃隣
蝸牛いつか哀歓を子はかくす 加藤楸邨
蝸牛いつか深山の夢のなか 金子青銅
蝸牛おのが微光の中をゆく 千代田葛彦
蝸牛が一日の行の石めぐる 水内鬼灯
蝸牛こまかき雨に四谷濡れ 宮津昭彦
蝸牛そこで迷うて何とする 高澤良一 素抱
蝸牛たがひの音を聞き分けて 鎌倉佐弓 潤
蝸牛と童女のあはひ密とせり 岸田稚魚 『萩供養』
蝸牛どこにて傘につきしものか 川島彷徨子 榛の木
蝸牛に石過ちし障子かな 青峰集 島田青峰
蝸牛に読むは竹取物語 松藤夏山 夏山句集
蝸牛のししむら殻を砕かれし 榎本冬一郎 眼光
蝸牛ののびてひるまず風雨かな 西山泊雲 泊雲句集
蝸牛のゐる木は暗し女佇つ 石川桂郎 含羞
蝸牛の丈夫な殻や妊婦坐す 中山純子 沙羅
蝸牛の住はてし宿やうつせ貝 蕪村 夏之部 ■ 一書生の閑窓に書す
蝸牛の四五寸妻に歌ありて 石川桂郎 含羞
蝸牛の垣を去りけり寺子皆 雑草 長谷川零餘子
蝸牛の殻かわきしがまた降りいづ 榎本冬一郎 眼光
蝸牛の渦より宇宙膨張説 高澤良一 素抱
蝸牛の皆動きをり雨の垣 高濱年尾 年尾句集
蝸牛の真顔をかしき狂言師 福田蓼汀 秋風挽歌
蝸牛の角がなければ長閑哉 寺田寅彦
蝸牛の角のはりきる曇りかな 室生犀星 魚眠洞發句集
蝸牛の角風吹きて曲りけり 野見山朱鳥
蝸牛の遠く到りしが如くかな 松根東洋城
蝸牛の頭もたげしにも似たり 正岡子規
蝸牛は木の毒青年の指飾り 金子兜太
蝸牛は角があつても長閑哉 寺田寅彦
蝸牛ひたに蹤き来し歳月よ 石田あき子 見舞籠
蝸牛も人界のものでありにけり 月舟俳句集 原月舟
蝸牛も岐れ合ふ枝もわかわかし 石田 波郷
蝸牛も己に処して冬眠す 百合山羽公 寒雁
蝸牛も牛あくまで森の入口で 宇多喜代子
蝸牛やあをき雨ふる木槿垣 五十崎古郷句集
蝸牛やくるぶし冷ゆる湖の風 石川桂郎 含羞
蝸牛やどこかに人の話し声 中村草田男
蝸牛やをとこは傘をさゝず行く 岸風三楼 往来
蝸牛や人の世いくること難し 岸風三楼 往来
蝸牛や何かのベルが断続す 加倉井秋を 午後の窓
蝸牛や地蔵の眉にうつせ貝 雑草 長谷川零餘子
蝸牛や垣年々のさいたづま 尾崎迷堂 孤輪
蝸牛や墳にはやての松林 古舘曹人 樹下石上
蝸牛や子の髪いつも汗ばめる 伊東宏晃
蝸牛や家のどこかに焔あり 加倉井秋を 午後の窓
蝸牛や家を出づれば教師の貌 樋笠文
蝸牛や岐路あらばたちどまるらむ 上田五千石 田園
蝸牛や森の十字路二方坂 中戸川朝人
蝸牛や母さきに寝し月明り 清水基吉 寒蕭々
蝸牛や汝との刻の過ぎ易し 加畑吉男
蝸牛や無学不粋の大地主 福田蓼汀 秋風挽歌
蝸牛や畳を這へる風雅者 野村喜舟 小石川
蝸牛や病と共に生きてをり 岩田昌寿 地の塩
蝸牛や蛙の後の雨つゞき 山肆
蝸牛や蜆の水をもつてこい 龍岡晋
蝸牛や起き出しより垢面の子 小林康治 四季貧窮
蝸牛や降りしらみては降り冥み 阿波野青畝
蝸牛や青山半蔵幽居の間 西本一都
蝸牛ゆく巡礼のかげかたち 成田千空 地霊
蝸牛よりもゆっくり子守唄 吉田さかえ
蝸牛わが薄情の四十面 古舘曹人 能登の蛙
蝸牛をつまむ微かに抗ふを 山田みづえ 手甲
蝸牛を踏むや足駄の渡守 石島雉子郎
蝸牛万年青の鉢をめぐりゐる 田中冬二 麦ほこり
蝸牛乾ききるにも限度あり 高澤良一 素抱
蝸牛何おもふ角の長みじか 蕪村遺稿 夏
蝸牛冷春すぎてまた冷夏 百合山羽公 寒雁
蝸牛化シテ蛞蝓(カツユ)トナラン今日カラハ 高澤良一 宿好
蝸牛君が方へともゝすしり 雁宕
蝸牛喃語庭より聞こえけり 高澤良一 素抱
蝸牛喪の暦日は過ぎ易し 安住敦
蝸牛妙な明るさ遺しけり 高澤良一 素抱
蝸牛子に偏差値の世界あり 野上 水穂
蝸牛家路を辿る子に似るか 村越化石
蝸牛寄り易き木ぞ月桂樹 高澤良一 素抱
蝸牛山河を越えてきた貌する 神宮司茶人
蝸牛幹の暗さをいつも抱く 山田弘子
蝸牛幹より剥がす朝餐後 横山房子
蝸牛影をたいらにわれら老ゆ 安井昌子
蝸牛忌の近づくころや照りつゞく 塩谷半僊
蝸牛忌や驟雨が浪をわたりくる 中拓夫
蝸牛昨日も今日も同じ葉に 竹田 ひろし
蝸牛月を運んでをりにけり 和田耕三郎
蝸牛来る日来る日に視力なく 宇多喜代子
蝸牛槍の仕合に召されけり 尾崎紅葉
蝸牛気にかかる故延びのびに 油布五線
蝸牛水の玉には水の膜 小宅容義
蝸牛渦のぐるぐる颱風裡 高澤良一 燕音
蝸牛渦の終りに點をうつ 山口誓子 遠星
蝸牛版木は蔵に眠りゐて 本居三太
蝸牛玉と変りて冬眠す 百合山羽公 寒雁
蝸牛生涯かけて飲む薬 斎藤道子
蝸牛皆動きをり文書かん 香西照雄 対話
蝸牛目やさますらん秋の風 立花北枝
蝸牛睦む証の殻ふたつ 百合山羽公 寒雁
蝸牛程の私の運動量 高澤良一 素抱
蝸牛竹下り了せし草薄日 阿部みどり女
蝸牛紋に三重の鉢巻凝り性なり 香西照雄 素心
蝸牛素足濡らしつ森に入る 小川特明
蝸牛群角の黒きは父ならむ 香西照雄 対話
蝸牛聖パウロの絵硝子に 細川加賀 生身魂
蝸牛虹は朱ケのみのこしけり 大野林火
蝸牛見よ~おのが影ぼふし 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
蝸牛誕生寺より掌に乗せ来 小檜山繁子
蝸牛賓辞は空をさまよへり 河原枇杷男 定本烏宙論
蝸牛這はせ宿題終りたり 松沢久子
蝸牛這ふ礎ばかり残りけり 野村喜舟 小石川
蝸牛遅々と幼なの眼の高さ 高澤良一 素抱
蝸牛遊ぶ背に殼負ひしまま 山口波津女
蝸牛道へ擲ち庭手入 吉良比呂武
蝸牛遺書ものこさず消えにけり 松岡ひでたか
蝸牛雨の郵便局が混み 宮津昭彦
蝸牛風雨に落ちはせざりけり 野村喜舟 小石川
蝸牛鳴くか雨夜は竹の奥 古白遺稿 藤野古白
行く先を聞けば角振る蝸牛 大塚とめ子
行先も覚束なしや蝸牛 大坂-盤水 元禄百人一句
裏木戸や蝸牛殻牽く地の上 石塚友二 光塵
見つめ居れば明るうなりぬ蝸牛(思ふこと多し) 原石鼎
角ふるや物きゝわけて蝸牛 石井露月
角出して這はでやみけり蝸牛 炭 太祇 太祇句選後篇
角立てゝ立聴き顔や蝸牛 蘇山人俳句集 羅蘇山人
詩を書いて 一生綿々 蝸牛 伊丹三樹彦 一存在
詩仙堂雨の扉の蝸牛 田中王城
豊満な出口が歩くかたつむり 増田まさみ
足元へいつ来りしよ蝸牛 一茶 ■享和元年辛酉(三十九歳)
身を引くと言うこと知らず蝸牛 杉本艸舟
身を渦にいこふ蝸牛親子牛 成田千空 地霊
通園の黄色のブーツでんでんむし 高澤良一 素抱
金管を身に纏く楽士かたつむり 岡田貞峰
隠岐蝸牛眠る月夜の怒濤かな 仲田藤車
集金人涼む鳥居に蝸牛 田川飛旅子 花文字
雨の森恐ろし蝸牛早く動く 高浜虚子
雨明るくなれば子の声蝸牛 茂里正治
雨沛然蝸牛の渦のまはり出す 内藤吐天 鳴海抄
雨漏るや燭して壁に蝸牛 会津八一
雨細き凡日蝸牛愛しけり 徳永山冬子
露地草履ほの湿りして蝸牛 池松昌子
青き夜の猫がころがす蝸牛 真鍋呉夫
風の道や笹の葉戻るかたつむり 内田百間
風下の森の奥の老いの激しきかたつむり 高柳重信
鬼灯の根に汚れ出る蝸牛 右城暮石 声と声
でで虫が木のこぶ穴にねむりゐし 太田鴻村 穂国
でで虫が桑で吹かるゝ秋の風 細見綾子 花寂び
でで虫と遊びついでに遊びけり 栗林千津
でで虫と雲のいろいろ見る日かな 宮津昭彦
でで虫に林中は刻富めるかな 町田しげき
でで虫に深淵なせる油壷 高澤良一 ももすずめ
でで虫に銀の雨降る子の熟睡 石田厚子
でで虫のこそばゆき角打ちたしや 仙田洋子 橋のあなたに
でで虫のごくりともどる殻の中 大石雄鬼
でで虫のでん公雨を呼びにけり 高澤良一 ぱらりとせ
でで虫の中まで透けて辛崎よ 平橋昌子
でで虫の体内を眼が走りたる 大石雄鬼
でで虫の前は匐ふべき面ばかり 加藤秋邨 吹越
でで虫の助走やがては翔つつもり 相坂郁夫
でで虫の夢さましたる櫂しづく 栗田ひろし
でで虫の大いなる伸び朝朗(あさぼらけ) 高澤良一 随笑
でで虫の小さきは小さき殼を負ひ 大野隆史
でで虫の引っかかる殻さてどうする 高澤良一 素抱
でで虫の当推量が外れけり 高澤良一 ももすずめ
でで虫の止まる広葉に朝が来て 高澤良一 ももすずめ
でで虫の殻あをく透く朝の雨 小山森生
でで虫の殻片陰に母の家 百合山羽公 故園
でで虫の涙にありし暮色かな 岩崎宏介
でで虫の真逆にあぐねをる 鈴木貞雄
でで虫の眠る月夜の桜の木 岡井省二
でで虫の縮むところと伸ぶところ 高澤良一 随笑
でで虫の繰り出す肉に後れをとる 飯島晴子
でで虫の胡瓜を喰うてまた殖ゆる 岩田由美
でで虫の腸さむき月夜かな 原石鼎
でで虫の葉に触れしよりうすみどり 今井杏太郎
でで虫の角さえさはれぬ女(め)の子にて 高澤良一 素抱
でで虫の角のほとりへ寝ぼけ貌 高澤良一 随笑
でで虫の闘志は歩みはやめけり 行方克巳
でで虫は戦場のにほひ花の匂ひ 桑原三郎 春亂
でで虫も其角の墓も傘の内 高澤良一 さざなみやっこ
でで虫も舞ふてふ聞けば舞はしめぬ 大石悦子
でで虫も諸行無常の列に蹤く 森本芳枝
でで虫や国見大木戸雨けぶる 佐藤 博
でで虫や夜更けてはなし文覚に 宇佐美魚目 天地存問
でで虫や昨日も今日も路地に雨 菖蒲あや
でで虫や楓の木肌浄ければ 小原菁々子
でで虫や殻負ふ意志のまつすぐに 仙田洋子 橋のあなたに
でで虫や水で洗ひし戸の狂 宇佐美魚目 天地存問
でで虫や灯りし窓のよみがへり 中村汀女
でで虫や父の記憶はみな貧し 安住 敦
でで虫や雲の昏さを曳きゐたり 原田貴志
でで蟲と遊んでゐても仕方なし 星野麦丘人
でで蟲や雨行くやぶの處々 内田百間
でで蟲を見いでて朝や孫と住む 松村蒼石 露
大でで虫棲みつき寡婦の日々寧し 村上光子
庭中のでで虫蒐め一つ木に 高澤良一 素抱
梅雨嵐でで虫の自負見たりけり 柴田白葉女 『夕浪』
誘惑の雨でで虫の殻叩く 前川 実


以上
by 575fudemakase | 2015-06-21 00:03 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

ことしの初もの

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ことしの初もの

ことしの初もの さくらんぼ にありついた。

サクランボの例句を挙げる。

さくらんぼをさなさのこる妻の口 椎橋清翠
さくらんぼナポレオンとは豪奢也 高澤良一 素抱
さくらんぼ一箱買ほか買ふまいか 宇多喜代子
さくらんぼ一粒づつが灯を映す 高浜年尾
さくらんぼ並べてありぬ仏頭と 佐藤秋水
さくらんぼ二階へ運びゆきしまゝ 中岡 毅雄
さくらんぼ六月生れ讃ふべし 轡田進
さくらんぼ十年遅刻してきたと 櫂未知子 蒙古斑
さくらんぼ口に甘さの新しく 稲畑汀子
さくらんぼ右往左往の虚子の句を 阿部みどり女 『石蕗』
さくらんぼ含みて父をからかへる 鈴木貞雄
さくらんぼ城下の塾は古きより 古舘曹人 砂の音
さくらんぼ天近きほど甘きとぞ 高澤良一 素抱
さくらんぼ子に食べさせて母若し 星野立子
さくらんぼ悲鳴のやうなアリアかな 辻桃子
さくらんぼ愛別離苦を頒ちたる 宇多喜代子 象
さくらんぼ採り終へし葉の奥くらし 渡邊千枝子
さくらんぼ摘まみつつ子が欲しといふ 山田弘子
さくらんぼ撥音便のん韻(ひび)く 高澤良一 鳩信
さくらんぼ数へて食べて妻若し 下村ひろし
さくらんぼ月山の風甘くなる 姉崎 昭
さくらんぼ槲の葉にのせ売居れる 田中冬二 行人
さくらんぼ母に甘えし記憶なく 飯田 波津恵
さくらんぼ洗ふ手をまづ洗ひけり 山尾 玉藻
さくらんぼ海峡に潮満ち始む 上野さち子
さくらんぼ熟せり晝の汽車が行き 中尾寿美子
さくらんぼ熟れし証しの一光点 高澤良一 素抱
さくらんぼ熟れて真青き海ありぬ 菖蒲あや あ や
さくらんぼ熟れて路傍に俄店 吉良比呂武
さくらんぼ狩のツアーのごいっとうさん 高澤良一 素抱
さくらんぼ狩の観光バス横付け 高澤良一 素抱
さくらんぼ狩をある日の天童晴れ 高澤良一 素抱
さくらんぼ生後二十日の笑くぼ見す 池田秀水
さくらんぼ甲乙丙の丙の味 高澤良一 随笑
さくらんぼ盛れば方々灯りぬ 後藤比奈夫 花びら柚子
さくらんぼ硝子細工に似て少女 山口貞子
さくらんぼ碧海流れやまざりき 小檜山繁子
さくらんぼ笑(えみ)で補ふ語学力 橋本美代子(1925-)
さくらんぼ笑で補ふ語学力 橋本美代子
さくらんぼ紅さして子の嫁ぎけり 村上しゆら
さくらんぼ舌に置くとき風まろし 畑耕一
さくらんぼ舌に転がる英単語 吉原文音
さくらんぼ踏めば潰れて夏来る 遠藤梧逸
さくらんぼ遺影の前につぶらにて 大橋敦子 手 鞠
さくらんぼ鎧ひて赤き木々並ぶ 吉良比呂武
さくらんぼ雨滴もろとも唇に 赤松[けい]子 白毫
さくらんぼ食べてきれいな血を殖やす 加藤三陽
さくらんぼ食べてひととき遠目して 鈴木栄子
さくらんぼ鬼が影曳くかくれんぼ 坪内稔典
しだれ枝の青さくらんぼ更衣 皆吉爽雨
すき透るゼリーの中のさくらんぼ 小竹由岐子
サ行まだ覚束なき子さくらんぼ 谷中淳子
一つ食べ一句考へさくらんぼ 稲畑汀子
亡き友の年を追い越すさくらんぼ 対馬康子 吾亦紅
古書市に出会ひて別れさくらんぼ 宮田和子
国家よりワタクシ大事さくらんぼ 攝津幸彦(1947-96)
大蔵王踏み来し笑いさくらんぼ 中島斌雄
太陽はいつも一粒さくらんぼ 近藤絹子
子との距離近づく思ひさくらんぼ 田中 珠生
寝転んで読む悪女伝さくらんぼ 野村尚子
張られたる網に入口さくらんぼ 山本きよ子
思ひ出すまでのほほ笑みさくらんぼ 長田等
恋人はめんどうな人さくらんぼ 畑耕一 蜘蛛うごく
朝市の人みな素顔さくらんぼ 工藤眞智子
病めば子は父をも慕ふさくらんぼ 皆川白陀
硝子戸のうちそと灯りさくらんぼ 桜井博道 海上
童馬漫語童牛漫語さくらんぼ 加藤三七子
笑窪とてひとつは淋しさくらんぼ 清水衣子
紅顔の出羽さくらんぼ着到す 樋笠文
親と子の心の対話さくらんぼ 酒井銀鳥
食卓は話題の広場さくらんぼ 山田弘子
「桜桃」を胸に六月十九日 石川桂郎 高蘆
かの丘の桜桃椋鳥が一瞥す 栗生純夫 科野路
まろばせて桜桃洗ふ茎縺る 小池文子 巴里蕭条
ハンカチに買ふ桜桃や子の手曳き 岡田 貞峰
人はみな桜桃の種うす黄いろ 山西雅子
十七の誕生日の桜桃の種子 細見綾子 黄 炎
均斉に桜桃並ぶ心安からず 石田 波郷
垂れそろふ桜桃稚し穂高見ゆ 堀口星眠 火山灰の道
墓があるのみのふるさと麦の秋 成瀬桜桃子 風色
夕日より濃き桜桃を竿秤 有馬朗人 天為
夕暮にひかる桜桃ある祖國 宇多喜代子
太宰忌の桜桃食みて一つ酸き 井沢正江
山形の桜桃来たるまたたきて 細見綾子
急流に映り桜桃黄熟す 加倉井秋を
末つ子の親となる日や桜桃 和田千恵子
杜甫ありき巴里の市場の桜桃よ 小池文子 巴里蕭条
桜桃*もぎ馴染の顔のそろひけり 五十嵐白兆
桜桃といへば親しき忌日なる 矢島渚男
桜桃と夫帰り来て声の満つ 小池文子 巴里蕭条
桜桃にをはりを知らぬ鶸の歌 堀口星眠 営巣期
桜桃のこの美しきもの梅雨の夜に 森澄雄
桜桃のさくらかももか手を口に 増田まさみ
桜桃のはしり今年も夫が買ふ 細見綾子 黄 瀬
桜桃のまろし吾子無く事もなし 中村明子
桜桃のみのれる国をまだ知らず 三橋鷹女
桜桃の一粒添へて機内食 金子邦子
桜桃の幹つたひくる水木霊 長谷川久々子
桜桃の幹に雪沓掛けしまゝ 高橋馬相 秋山越
桜桃の数多のベルの鳴るごとし 関森勝夫
桜桃の沖の父親立ち泳ぐ 坪内稔典
桜桃の熟れゆく空に白根岳 福田甲子雄
桜桃の艶におどろく夜学生 沢木欣一 地聲
桜桃の開ききらずに別るゝ日 京塚信子
桜桃もぐ腕の下や最上川 三宅句生
桜桃やこの美しきもの梅雨の夜に 森澄雄
桜桃や北の碑のヴェルレーヌ 文挟夫佐恵 雨 月
桜桃や嫁取りの日の定まれる 石川桂郎 四温
桜桃や尖りそめたる椋鳥の嘴 栗生純夫 科野路
桜桃や日記一日晴れとのみ 石川桂郎 高蘆
桜桃や病みても響く声を持つ 朝倉和江
桜桃や笑窪のちがふ双生児 長田等
桜桃や言葉尖りて病むかなし 新田久子
桜桃を五つ房もつて寝る子かな 長谷川かな女 雨 月
桜桃を洗ふ手白く病めりけり 石田波郷
桜桃を皿に子の眉長くなりぬ 斉藤夏風
桜桃出荷終へたる雨の村しづか 古賀まり子
桜桃持てきしひとにその後逢はず 大野林火
桜桃村月山の雪さやかなり 水原秋櫻子
青水無月村の桜桃採りつくし 鳥越やすこ

以上
by 575fudemakase | 2015-06-20 06:40 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)


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らくらく例句検索

インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
よみ れいく

▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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