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2015年 9月 ねずみのこまくら句会の諸句(コメント付)

2015年 9月 ねずみのこまくら句会の諸句(コメント付)

予選でザッと句を抜いてみたら、下記の如くとなった。
句の前の番号は、選句稿の通し番号。

3秋天下ボート遭難歌を小声(七里ヶ浜)
10二曲目へ踊浴衣を整えて
オバチャンの意気込みというところか?
12秋の蝶伊予青石に見失なふ
伊予青石の用途を見ると 灯篭、墓石、庭石や記念碑、モニュメント とある。と言うことで情景がハッキリする
15忌を修し戻る秋夜の影一つ
17秋思ふと霧積の名の宿りにて
18女郎花色無き風のつつぬけに
19鰯雲遊牧民のゲル点々
22嫂と姉を傍へにところてん
23愛想よき保険の勧誘秋暑し
24夕蜩空の片隅震わせて
25関跡の荷物置石露じめり
27一葉落ち風の行方を見てをりぬ
28道訊いて芙蓉の角を曲がりけり
表現 直裁的
29雲走る二百十日の潦
30蓮の実の飛んで何かを失へり
31秋の夜の箱の補聴器ぴいとなる
虫の類いに似て…
35凌ぎよき日でありその夜虫の声
38盆過ぎて塔頭に干す一本歯
41新秋や埃鎮めの雨となり
43竹婦人胴長なるを愛さるる
46改札に鈴虫の鳴くおらが駅
47半蔀より虫の声入る観音堂
52推敲の筆先にある夜寒かな
64秋しぐれ手をふるようにウインカー
65燈火親し手には鬼平犯科帳
73鵙高音駐在さんは巡回中
75旧道の閉鎖の久し狗尾草
76小鳥来る惚けし母の慰めに
77秋日燦信号待ちの消防車
ピッカピカの一年生のような…
81花火待つ湖上に月の吊るされぬ
安っぽい地芝居を見るような…
83埠頭かと見ればタンカー夏夕べ
84一歩づつ見て秋深む文晁画
大景画?
91長き夜を旧知と語る湖の宿
98母の忌の過ぎて蓮華のはねず色
103澱みなき雨戸の滑り今朝の秋
105葡萄狩り一歩一歩に陽の斑揺れ
112毒薬(プワゾン)てふ香水壜の捨てられず
115山のホテル湖の花火の手毬ほど
谷内六郎の絵にある様な…
116熱々を貪るごとく茸飯
117蝙蝠や散り散りに子ら帰りけり
118睡蓮を渡りてゆくは叶はずや
119庭石に散りてなほ炎ゆ百日紅
122鶏頭の喉より零る種黒し
129師の忌終へ夕日をはじくみむらさき
135母逝きてひととせ篭に秋果盛る
秋果好みの母であったらしい
136秋風や失ひしもの得たるもの
反省にかられる気節ということ
137吾亦紅さびしき風を呼びにけり
138一村にひびく水音花山葵
140独り住めば群れ咲き羨し韮の花
141寝ころべばばつたんこてふ静けさに
143ひぐらしの夕日の色の翅に死す
153鈴虫や水のやうなる宵が来る
159妊りし子に朝顔の種持たす
いつまでも母心
161瓢垂る寺に丈余の布袋尊
165さうだよと風のゑのころ頷けり
166ゆらゆらと雌かまきりが木を登る
167その昔師と見し海の天の川
170在祭さてどぶろくの味もよし
七五が小気味よい
175日焼けして現役然の早歩き
停年になってもまだ元気だぞと言い聞かせている
176母を叱つてばかりの介護きりぎりす(回想)
181クラリネット習ふ漢を秋蚊攻む
191つくつくし夫の蔵書のまた増えぬ
193秋蝉の少し勢ひてすぐ止みぬ
いかにも秋蝉らしい
195まんじゆさげランナー歩き始めたる
よく見るネェ こんな光景
198秋刀魚焼く煙と匂ひ裏通り
201鉦叩たたきて闇を楽しめり
202朝顔のぬきさしならぬ高さかな
晩夏といったところ
206菊膾些事おほやうに受け流す
210絵日記の「きょうは」が続く夏休み
一つ覚えの始まり…

追加

見落としに就き、次句を加えたい。

100萩の風林火忌に読む一千句
「一千句」の所、「一千余句」とやって多少ゆとりを設けるようにした方がよいと思う
147地蔵盆子の散る次の地蔵へと
183一宿のちちろを庭へ帰しけり
189鉄線忌修すなほらひ湖の魚
196露草のまことの藍を富士へかな
原句は「まことの藍」を言いたいのだろうが、まだ表現がシックリいっているとは言い難い。一寸見方変わるが、私の参考案は下記。
藍尽くす不二に負けじと露草も
御殿場の不二も藍色露草も

以上
by 575fudemakase | 2015-09-20 07:38 | 句評など | Trackback | Comments(0)

雄日芝

雄日芝
    上段 雄日芝 下段 雌日芝
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例句を挙げる。

雌日芝は引き雄日芝は引っこ抜く 高澤良一 燕音

雄日芝はざっくばらんを通しけり 高澤良一 石鏡

露まみれ雄日芝そこに信号機 高澤良一 石鏡

雄日芝に雨透きとほり透きとほり 高澤良一 石鏡

鋪道なほほてりをるなり雄日芝に 高澤良一 素抱

鋪道脇雄日芝長けてしたたかに 高澤良一 素抱

雄日芝にさしもの秩父の雨上がる 高澤良一 宿好

雄日芝はいつか芒になりたくて 高澤良一 寒暑

雄日芝のすれっからしのその穂先 高澤良一 燕音

雄日芝にくさやのにほひ移りけり 高澤良一 さざなみやつこ

相討ちのごとく雄日芝雨に臥せ 高澤良一 さざなみやつこ

雄日芝の引張り返すちからかな 高澤良一 さざなみやつこ

雌日芝に降り癖つきぬ野辺のそら 高澤良一 宿好

雌日芝を抜く寄り道の手始めに 高澤良一 寒暑

雌日芝の自と在れば独り言 高澤良一 寒暑


以上
by 575fudemakase | 2015-09-14 03:48 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

朝日俳壇より 2015・9・13

朝日俳壇より 2015・9・13

今日の朝日新聞の朝日俳壇を見ていて、こりゃあいいと思ったのは金子兜太選。

辞世とは見し露草を見しままに
思ひ切り秋のほほずり富士裾野
夫昼寝コッペパンの蹠(あうら)なり
原爆忌アメリカ終(つい)に謝らず

コッペパンの蹠にはアハハである。
私の想像した蹠は、身体の割には華奢な優男風の夫の白っぽい足裏。
念のため山妻に、どんな蹠を想像したかと尋ねたら、
粉を噴くような大足との返事が返って来た。これにはギャフン。人は様々である。
〝終(つい)に謝らず〟にはソウダソウダと相槌を打った。

長谷川櫂選では
老い耄(ぼ)れてばったの脚の力欲し

稲畑汀子選では
どの道をゆくも大雪山花野

大雪山から思いは拙作磐梯山へ飛んだ。句の狙いは同趣と思ったからである。
稲雀何處へ飛んでも磐梯山

以上
by 575fudemakase | 2015-09-13 11:43 | 句評など | Trackback | Comments(0)



例句を挙げる。
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*ゆで栗や冷えたる笊の水しづく 楠目橙黄子 橙圃
「河」いかになりゆくらむや栗を掌に 角川源義 『秋燕』
あくせくと起さば殻や栗のいが 小林一茶
あらし山猿のつらうつ栗のいが 野明息十一歳-小五郎 俳諧撰集「有磯海」
いがながら栗くれる人の誠かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
いが栗のつや吐く枝や筧口 室生犀星 犀星發句集
いが栗や嬉しき程は握られず 之竹
いが栗や独はぢけて出る迄 諷竹
いが栗や落つる合点に突きて逃げ 苔蘇 九 月 月別句集「韻塞」
いが栗を地蔵の膝でわりしよな 青嵐
いが栗踏みつぶす兵隊靴の空が青い 人間を彫る 大橋裸木
いつも母が栗をもたせて呉れる旅 鈴木栄子
いろいろな角出来てゆく栗をむく 深見けん二
えにしかな夫に栗むく六十年 及川貞
お十夜の茹栗売に雨の粒 草間時彦 櫻山
お墓の栗むきゐしは風の昔かな 太田鴻村 穂国
かけ稲や樹下石上の栗のいが 会津八一
ぐつぐつといひはじめたる栗の鍋 矢島渚男
ころころと兄の筆跡栗月夜 小檜山繁子
こわいもの知らずの山の栗の毬 高澤良一 燕音
さゝ栗の柴に刈らるる小春かな 上島鬼貫
しあはせと言ふもおろかの栗食みをり 鈴木栄子
しどろもどろに日を叩き栗叩き 長谷川双魚 『ひとつとや』
すべてなしぬひとつの栗のおもさ掌に 長谷川素逝
つぎの見舞は試歩のステッキ栗青し 石田あき子 見舞籠
つぶやきに似たり栗干す母の唄 青木泰夫
つぶら目の瞠れるごとき栗届く 嶋崎茂子
てのひらに少し栗鳴る祖母の音 中村梶子
てのひらに柴栗妻がのこしけり 石田波郷
どこからも見ゆる鞍岳栗拾ふ 古賀 雁来紅
どや~と風の朝の栗拾ひ 尾崎紅葉
ねむごろに栗剥きてをり泣きてをり 殿村菟絲子 『旅雁』
ねんごろにねんごろに栗剥くがよい 櫂未知子 蒙古斑
はじくまで正面のなき栗の毬 山田弘子
はじけし栗毬音飛び交ひしあとのごと 宮津昭彦
はちきれむばかりの栗ぞ好もしき 相生垣瓜人 明治草抄
はつ嵐ふけども青し栗のいが ばせを 芭蕉庵小文庫
ひしひしと毬栗をしぬ施餓鬼棚 前田普羅
ひそやかに栗育ちをる酷暑かな 阿部みどり女 笹鳴
ひとつひとつ栗むいてやりし子は遠し 及川貞 榧の實
ひろひためし栗を孤独の灯にひろげ 瀧春一 菜園
ふたたびは来ることもなき栗の路 後藤夜半 翠黛
ふみも見し鬼住跡の栗のいが 素堂 (大江山)
ほとけの栗を分けて貰うて夜の長き 林原耒井 蜩
みなし栗ならべおはじきあそびせる 加藤三七子
みなし栗ふめばこころに古俳諧 富安風生
みほとけの深大寺村栗を買ふ 及川貞 榧の實
ものの値のうそのやうなる栗いくつ妻に買はせてけふの月待つ 土岐善麿
ゆで栗や十夜と云へば霧深く 増田龍雨 龍雨句集
ゆで栗や小さな帯をして立居 阿部みどり女 『微風』
よう来たと土産に持たさる栗ずっしり 高澤良一 素抱
よき夕べ食後の栗の二つ三つ 中尾白雨 中尾白雨句集
よくぞ身を鎧ふものよと栗を剥く 堀前小木菟
よその子の栗剥くを見ゐる我子かな 青峰集 島田青峰
わが帰宅夜々遅し子に栗買ふも 下村槐太 天涯 下村槐太全句集
ダリの絵を見てきて栗のいが落す 成瀬桜桃子 風色
ユネスコ村拾ひつくされ栗はなし 石田あき子 見舞籠
一と籠の栗を提げたる客招じ 後藤夜半 底紅
一匙の栗金色に離乳食 都筑智子
一粒の栗を手にせる山の冷え 中尾寿美子
一茶生地ひらたき栗が栗色に 香西照雄 対話
三つにて腹よろこびぬ丹波栗 森澄雄 所生
三つほどの栗の重さを袂にす 篠田悌二郎
三つ栗の三つ合へば毬恋ふと見ゆ 林原耒井 蜩
串柿勝栗祝ふもの皆鄙の物 栗生純夫 科野路
丸盆に栗ころがして出しにけり 温亭句集 篠原温亭
丹波栗五六顆を墓のてのひらに 沢木欣一
丹波栗大粒の色つややかに 和泉直行
丹波栗母の小包かたむすび 杉本寛
丹波栗毬の強情なるを呉れ 石嶌岳
丹波栗笑みたる下の地主径 前田普羅 春寒浅間山
丹波路のこゝ鮎茶屋で栗の里 星野立子
二度荒れのいましめ解きつ栗収む 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
五右衛門の釜茹でに遇ふ栗の虫 高澤良一 燕音
人の世やけぶり立てをる十夜栗 石田勝彦
仕留めたる猪を担ぐに栗の棒 下田稔
休日のまひる生爪に栗をむく 中拓夫 愛鷹
何の木のもとゝもあらず栗拾ふ 虚子
信濃紙潔き勝栗一と袋 栗生純夫 科野路
信濃路に子は眠りゐむ栗を剥く 楸邨
俤のむき栗白し雨の月 露言 選集「板東太郎」
働きて夜は子の辺に栗こぼす 関戸靖子
八月の一粒栗の木や仰ぐ 石川桂郎 高蘆
八栗嶺の松原尾根の遍路みち 高濱年尾 年尾句集
兵白き歯を持ち愛し栗を割る 文挟夫佐恵 黄 瀬
凩よ世に拾はれぬみなし栗 榎本其角
刃を据ゑて大ぶりの栗剥きにけり 野末たく二
切株の上いが栗の二つ三つ 高野素十
初物の茹で栗なれば刳り餘さず 高澤良一 随笑
別れ来て栗暁く顔をほてらする 三鬼
刺(いが)に世を遁れてしるや栗の肌 酒堂 俳諧撰集「藤の実」
前山の音てふ栗の落ちはじめ 斉藤夏風
剥き甲斐のある栗だけを五つ六つ 櫂未知子 貴族
勝栗をがさと置き去る山の友 栗生純夫 科野路
医者がよひ毬ばかりなる栗を踏み 石川桂郎 四温
十六夜の小腹に納む里の栗 高澤良一 燕音
十六夜の栗と眼鏡のつるのいろ 高澤良一 燕音
半盲のもつとも栗を剥きにくし 安住敦
半茹での硬さは熊でも喰う栗か 高澤良一 随笑
厚意受く栗の三面指で触れ 香西照雄 対話
原罪といふことおもひ栗を剥く 岩崎照子
口裂かるるまでは凡人青栗笑む 香西照雄 対話
古寺や栗をいけたる橡の下 上島鬼貫
名月へ頭出したり栗の蟲 田川飛旅子
名月や琴柱(ことぢ)にさはる栗の皮 斯波園女
君が呉れし毬栗爆ぜる爆ぜるかと 八木林之介 青霞集
吾妹子は栗剥きなから怨しけり 尾崎紅葉
喪の旅の土産つややかの丹波栗 大橋敦子 匂 玉
嚇々と大毬栗の口中よ 井沢正江
四万川に一樹の栗はこぼれけり 前田普羅 春寒浅間山
土器(かはらけ)のほどこし栗や草の露 一茶
地に落ちて柿栗青し土用東風 西島麦南
埋みたる栗をうしなふ火箸かな 橋本鶏二 年輪
墓石に毛虫ゐて栗の葉洩れ陽 北原白秋
売声やかこふとすれど遠里栗 濯資 選集「板東太郎」
夕爾忌の仰ぎて栗の毬わかし 石田あき子 見舞籠
多摩の野は栗の幸あり月祭る 水原秋櫻子
夜を長く長く使ひて栗を剥く 高澤良一 寒暑
夜ル窃ニ虫は月下の栗を穿ツ 芭蕉
大いなる栗の木鉢や麦こがし 村上鬼城
大なる栗一つ飛んで失せにけり 寺田寅彦
大まかに莚に盛りて栗売らる 磯崎美枝
大年や栗ぜんざいの箸短か 鈴木真砂女 夕螢
大栗や瓦に零て居り得ず 麻夕 (禅房にて)
大粒の五山の栗を拾ひけり 根岸浩一
大風の落葉にまじり栗礫 福田蓼汀 山火
天の音たつる落栗一つ家に 赤松[ケイ]子
夫残し来て落栗の肩を打つ 竹内美智代
女の目栗をむくとき慈眼かな 沢木欣一 二上挽歌
妻として栗剥けば夫食ふ早し 殿村菟絲子 『牡丹』
妻なしや今年栗むくひとりにて 森澄雄
妻の役火中の栗をせせり出す 静塔
姉とふたりまだあたたかき栗を食ふ 和田耕三郎
婚礼という山栗が裂けはじめる 西川徹郎 月光学校
子の声の山に弾けて栗拾ふ 西山すみ子
子ら寝しや野分がとらふ栗櫟 千代田葛彦 旅人木
子を抱くや青柿栗とふりかぶり 石川桂郎 含羞
宍粟(しそう)大湖青栗のある夕余色 赤尾兜子
家を売るおろかさ栗の笑ひけり 金尾梅の門 古志の歌
家裏の栗落つ音の昔のまゝ 細見綾子
尉鶲柿の木に来て栗の木へ 高橋悦男
山の国大きく暮れて笊に栗 村越化石
山の地図そへし妙見栗を買ふ 岩田余志
山の日と八月青き栗のいが 長谷川素逝 暦日
山の日のたつぷり詰まる栗届く 恵良いさ子
山中や何れか固き鼻と栗 永田耕衣 闌位
山刀伐峠の栗の毛虫の大きさよ 細川加賀
山栗の五つ六つ乗る蓬莱盆 下田稔
山栗の大木のあるなつかしき 松本たかし
山栗の小粒袋に締めて売る 野沢節子
山行の栗の毬より雨あがる 石橋秀野
山門をいでて試食の栗もらう 山下美江子
岬に茶屋ゆで栗並べ通ひ婆 河野南畦 湖の森
峡の夜の栗を煮る灯もありぬべし 大串章
崖ゆれる栗落ちて位置きまるまで 鈴木六林男 桜島
干栗の虫出てそこら歩きけり 龍胆 長谷川かな女
干栗をつかみ食うべる月夜の子 前田普羅 飛騨紬
年よりの水にづかづか栗ひろひ 宇佐美魚目 天地存問
年神へ切火栃栗たてまつる 宮津昭彦
幾月夜干栗甘くなるばかり 前田普羅 飛騨紬
庭の栗茹でて庭師をねぎらひつ 白岩 三郎
庭木より栗名月を外し見る 高澤良一 さざなみやっこ
庭見世の衣裳・柿・栗・桃饅頭 下村ひろし 西陲集
往診の靴の先なる栗拾ふ 金子伊昔紅
待つことは長し栗の実落つることも 青邨
心から栗に味ある節句かな 鬼貫 (重陽)
我を信ぜず生栗を歯でむきながら 加藤楸邨
手にあけてつめたき栗の一袋 山西雅子
手拭に包みもならず栗のいが 寺田寅彦
手間ひまを掛けて煮上げし栗の艶 山田弘子
拾はれて毬栗あるじ然とせり 仙田洋子 雲は王冠
拾ひたる栗一夕の糧となる 下村梅子
拾ひ来て畳に置きぬ丹波栗 前田普羅 新訂普羅句集
握りもつ山栗ひとつ訣れ来し 多佳子
搗栗のくちやくちやの皺毛の国の 森澄雄
摂津より奥の栗酒鬼貫忌 森 澄雄
文も見じ鬼住む跡の栗のいが 山口素堂
料足に栗まいらする忌日かな 黒柳召波 春泥句集
新栗に甘味やゝ添ふ敬老日 遠藤 はつ
旅こよひ虫喰栗もにくからず 堀口星眠 営巣期
旅なれやひろひてすつる栗拾ふ 篠田悌二郎
旅の僧見送る栗をたなごころ 村越化石 山國抄
旅人に神説く男栗青し 堀口星眠 営巣期
旅痩を祝はん鮎はさびながら 栗几 (迎里紅)
日々に栗程よく落ちぬ住み古りぬ 及川貞 榧の實
日暮れは遊べ大きな栗の木の下で 水野 麗
日蝕の日に喰入や栗の虫 李由
日雀来る山家は縁に栗など干し 宮下翠舟
昼餉の火たゝせゐて背戸栗拾ふ 及川貞 榧の實
晩秋や藪ころげ出る栗のいが 中川宋淵 詩龕
晴の今日句集の祝ひ笑ひ栗 阿部みどり女 月下美人
月の夜の落栗拾ひ尽しけり 芥川龍之介
月の雨闇にまよふや栗の虫 杉風
月天心栗打つ音をのこしけり 中田剛 珠樹以後
朝々や栗ひらふ庭も寺どなり 室生犀星 犀星發句集
朝にひろい夜は珠数にさす山の栗 古沢太穂 古沢太穂句集
朝月の柴栗つたふ撓へかな 柴車 俳諧撰集「藤の実」
木の割に大きな栗毬や風の中 宮津昭彦
木の実ほし椎にはしばみくるみ栗 中勘助
木曾仔馬青栗のいが道にでて 森澄雄
木肌ひゆる風重し灯に栗拾ふ 金尾梅の門 古志の歌
柴栗の二つ三つは眠き数 鈴木鷹夫
柴栗の柴もみいでて栗もなし 室生犀星 魚眠洞發句集
柴栗の破顔一笑野良着干す 今井茅草
柴栗や音を抑へて水流れ 伊藤敬子
柴栗や馬のばりしてうつくしき 一茶 ■文化三年丙寅(四十四歳)
柿栗も賞でたりなほ菊さへも 横光利一
柿栗やうらぶれて母の忌となるか 杉山岳陽 晩婚
柿栗を買ひし重さも心足らず 杉山岳陽 晩婚
栗いくつたべてか秩父武者仏 和知喜八 同齢
栗いろの十一月の雀らよ 今井杏太郎
栗うめて灰かぐはしや夜半の霜 室生犀星 魚眠洞發句集
栗おこわ勝手に食べて叱られぬ 高澤良一 素抱
栗おこわ持って実家へ妻いそいそ 高澤良一 素抱
栗が落ちる音を児と聞いて居る夜 尾崎放哉
栗ぎんなんまろべばたのし京にゐて(僧顕正氏の心づくしに) 『定本石橋秀野句文集』
栗ごはんおひおひ母のこと話す 角光雄
栗たゝく信濃の少女自転車立て 殿村菟絲子
栗とどき受くるのみなる母の愛 塩谷はつ枝
栗に飽きて蘭につく鼠とらへけり 黒柳召波 春泥句集
栗のいが兎の糞や所々 寺田寅彦
栗のいが落ちるいのちの音たてる 寺田京子 日の鷹
栗のつや落ちしばかりの光なる 犀星
栗のほか秋果そろへりけふのまどゐ 森川暁水 淀
栗の上鉛筆描きの八ヶ岳 高澤良一 随笑
栗の実が一途におちる闇の中 瀧澤伊代次
栗の宿重き音する上草履 龍胆 長谷川かな女
栗の木 三年の青い毬も青田が豊年(上州佐野) 荻原井泉水
栗の木がお簾に生えて死ぬ子かな 木歩句集 富田木歩
栗の木に栗落す棒二本づつ 金久美智子
栗の木に毛虫わき女みごもれり 龍岡晋
栗の木に風のさわげる門火かな 辻桃子
栗の木や下枝をゆする名残の月 露遊 選集「板東太郎」
栗の木や出水しづかに狂ひそむ 清水基吉 寒蕭々
栗の棘みづみづしくて月夜来る 樹実雄
栗の樹下髪を叩いて蟻落す 高澤良一 宿好
栗の毬剥くや大きな軍手はめ 成宮紫水
栗の毬山なす道に出でにけり 前田普羅 飛騨紬
栗の毬心いつしか傷だらけ 品川鈴子
栗の毬踏みて脇道より登る 高澤良一 素抱
栗の毬踏みわりし跡の岐路うすく 原田種茅 径
栗の毬青くて山雨なだれけり 臼田亜浪 旅人
栗の秋ひとり寝にゆく子となりぬ 加倉井秋を 『胡桃』
栗の粒ほどの日月いきいきと 裕
栗の肌抱き痕まざとうつくしき 林原耒井 蜩
栗の茶屋五つ間灯して明からず 阿部みどり女 笹鳴
栗の虫人は心を泣き穿つ 文挟夫佐恵
栗の虫髣髴として仏かな 吉武月二郎句集
栗の題御句先づ見る一九日 菅原師竹句集
栗の飛ぶ外に音なし庵の夜 幸田露伴 谷中集
栗はねて大入道と化けても見よ 露月句集 石井露月
栗はねて山賊の頭領現はれぬ 石井露月
栗は実に育つへらへら恋すまじ 清水基吉 寒蕭々
栗は栗呼びてまろびて稚なさよ 千代田葛彦
栗みのる六分の侠気秘めながら 坂本木耳
栗むいて慈母観音のごとき夜を 中山純子 沙 羅以後
栗むいて無口の夜のありにけり 松尾 美子
栗むいて食べたる跡や猪の垣 細見綾子
栗むきぬ子亡く子遠く夫とふたり 及川貞 榧の實
栗むくや怠けて肥えし膝の上 細川加賀 『傷痕』
栗むくをそばから食うべ夫は癒ゆ 及川貞
栗むけば遠き思ひの大家族 幡野千恵子
栗めしのたしか余分に炊きし筈 松尾緑富
栗めしもゆかしき月や菊の宿 白麻
栗めしや根来法師の五器折敷 蕪村
栗めしを食べ五十五の児の如し 辻田克巳
栗をむくいまが晩年かも知れぬ 細川加賀 『傷痕』
栗をむく間縫ひ雑用足しに妻 高澤良一 さざなみやっこ
栗を剥き独りの刻を養へり 野澤節子
栗を剥くときの無口に身のぬくむ 野澤節子 黄 瀬
栗を剥くふたり暮らしを運命とし 鍵和田[のり]子
栗を剥く夭折をうべなひあうて 千代田葛彦 旅人木
栗を剥く記憶一枚づつはがし 加藤耕子
栗を売る少女の頸の栗鼠に似て 川端青踏
栗を拾ひともにはにかむ父同士 林翔 和紙
栗を掌に余し老婆の影祈る 古舘曹人 能登の蛙
栗を正橡を暫く譎となす 相生垣瓜人
栗を踏み胸にひらめくもののなし 古舘曹人 能登の蛙
栗を食ふ頬照ることも日本海 細見綾子
栗一つ食み割る音の鶉かな 虚子
栗一粒秋三界を蔵しけり 寺田寅彦
栗備ふ恵心の作の弥陀仏 蕪村
栗剥いてさゞめきこぼす膝厚し 清水基吉 寒蕭々
栗剥いて残業の娘の帰り待つ 岡村喜代子
栗剥きぬ父の帰りを待つやうに 櫂未知子 貴族
栗剥くは上手所帯は崩しても 小沢信男
栗剥くや食はすや恋も古びたり 清水基吉 寒蕭々
栗剥けと出されし庖丁大きけれ 高浜虚子
栗卓上にぶち撒かれたる童話色 石塚友二
栗叩く音に首あげ薩摩鶏 倉橋羊村
栗喰みて頬照ることも日本海 細見綾子 黄 炎
栗噛めばまなこふたつも噛むごとし 今村俊三
栗噛んで前垂渋に汚したり 金尾梅の門 古志の歌
栗埋めて郎君待てど待てどかな 会津八一
栗売の声が夜となる飛騨盆地 成瀬櫻桃子
栗大樹欝然として音もなし 雑草 長谷川零餘子
栗尽きし寮生おのが灯にもどる 金子 潮
栗拾はゞや先づは主無き山尋ねばや 古白遺稿 藤野古白
栗拾ひねんねんころり云ひながら 一茶
栗拾ひ谷川の音を進みけり 尾崎迷堂 孤輪
栗拾ふものの光の見ゆるとき 平畑静塔
栗拾ふをとめの声の妻の声 斌雄
栗拾ふ両手のほかに何もなし 佐土井智津子
栗拾ふ声か朝戸に風の音 及川貞
栗拾ふ天地に母の老い深し 原裕 青垣
栗拾ふ子女に乞食の礫かな 島村元句集
栗拾ふ家に錠なき一部落 武田忠男
栗拾ふ深山の中の林かな 尾崎迷堂 孤輪
栗材の台輪屋台秋日差す 高澤良一 素抱
栗煮えて食後の家族また集ふ 高橋悦男
栗甘くわれら土蜘蛛族の裔 津田清子
栗甘く何ごとならむ泪出づ 中山純子 沙 羅以後
栗畑を抜ける道あり電波の日 藤田あけ烏 赤松
栗硬きは茹で足らざるや出来悪しや 高澤良一 随笑
栗祭神楽の神も遊びたる 芝喜久子
栗笑めど髪かえりみるいとまもたず 古沢太穂 古沢太穂句集
栗籠のけふ茸籠どの山に 宇佐美魚目 天地存問
栗育つ朝はあさ露夜は夜霧 稲垣きくの 牡 丹
栗落ちて初めて己が影をもつ 高橋馬相 秋山越
栗落ちて龕の如しや湯治の火 宇佐美魚目 天地存問
栗落つる枕も青き月夜哉 会津八一
栗落とす時にこの世を夢とみなし 大串章
栗虫のその栗色に個性あり 如月真菜
栗虫の糸吐く空や日の盛り 乙字
栗虫の麻呂と謂へるが出できたり 大石悦子
栗虫をこの世のものとして眺む 細川加賀 『玉虫』
栗買つてより刑場へ道絞る 古舘曹人 能登の蛙
栗青しつゝむ手帛の頭文字 横山白虹
栗青し一本足に立つ木々よ 横山白虹
栗青し多摩の清さの極まり処 林原耒井 蜩
栗青し朝はうまるる善きことば 千代田葛彦 旅人木
栗食むや若く哀しき背を曲げて 石田波郷(1913-69)
桃栗は三年なるかならぬかや 名和三幹竹
棘で立つ青栗母は気兼ばかり 香西照雄 対話
椎や栗や銭いらぬ日のつゞきけり 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
樹にありて栗の翁でおし通す 古舘曹人 能登の蛙
機(はた)じねを網にしたりや栗袋 上島鬼貫
歯でむく栗むなしく女盛りすぎ 菖蒲あや 路 地
死の見ゆる日や山中に栗おとす 秋元不死男(1901-77)
母が煮る栗あまかりし十三夜 能村登四郎
母の追伸柿のこと栗のこと 長田等
毬の中別るゝ栗の相抱く 林原耒井 蜩

毬はぜて栗二つ秋をけなげなる 中島月笠 月笠句集
毬割つて栗の同棲曝きたる 辻田克巳
毬抜けしばかりの栗の濡れゐたり 山田弘子
毬栗と風が磨いてゆきし谷 櫂未知子 貴族
毬栗に袖なき猿の思ひ哉 其角
毬栗に踏みあやまちそ老の坂 黒柳召波 春泥句集
毬栗のかくまで守るをかしさよ 殿村菟絲子 『菟絲』
毬栗のまま買うてきて何為さむ 青木重行
毬栗のみどりの針の錆びはじむ 大橋敦子 匂 玉
毬栗の吹きちぎられて石の上 寺田寅彦
毬栗の弾けてをりぬわが留守に 八木林之介 青霞集
毬栗の毬に青みの抜けるころ 宮坂静生
毬栗の浮き足立てる地面かな 上野泰 佐介
毬栗の笑ふも淋し秋の山 李由 九 月 月別句集「韻塞」
毬栗の簑にとゞまるあらしかな 加舎白雄
毬栗の触角闇をゆたかにす 櫂未知子 蒙古斑
毬栗の餓鬼大将もゐたりけり 平井照敏 天上大風
毬栗は丹波の鬼の笑ひなり 筑紫磐井 婆伽梵
毬栗を活けて国宝級の壺 長田等
毬青き栗の林も瀬に潰え 瀧春一 菜園

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by 575fudemakase | 2015-09-12 00:06 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)


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例句を挙げる。

あたりまだ梨畑にしてわが新居 松尾緑富
あと三十年残つてゐるだろうか梨いろの月のひかりを口あけて吸ふ 河野裕子
いましがた手術せし手で梨をむく 吉田三角
かたい梨子をかじつて議論してゐる 尾崎放哉
こめかみに音のしろがね梨食ぶる 赤松[けい]子 白毫
これやこの梨金のごとし君にすすむ 山口青邨
さみしさを八つに割りし梨ひとつ 岡田史乃
さめざめと泣く芸者に梨をむかせけり 川島彷徨子 榛の木
すこし違ふ地の人が買ふ市の梨 齋藤美規
せみ啼や梨にかぶせる紙袋 一茶 ■文化二年乙丑(四十三歳)
そこそこの梨買うて来て褒めらるる 高澤良一 鳩信
それぞれの今日を聞きつつ梨をむく 岡田 和子
ともに居て梨剥けば足る恋ごゝろ 日野草城
とり残す梨のやもめや後の月 千代尼
どこまでも話反れつつ梨甘し 中村汀女
ばらの根にミルクの罐や梨の皮 寺田寅彦
ふるさとの梨に耀る陽のしづかなる 桂 信子
ふる里の山の名前の梨を剥く 佐藤梗子
やさしさよ梨子なんど剥く手元さへ 尾崎紅葉
ゆさゆさと梨*もぎ風を乗りすごす 栗生純夫 科野路
ゆつくりと洋梨届く北国より 桜井博道 海上
ゆふぎりにぬれたる梨を剥くナイフ 久保田万太郎 草の丈
ゆるやかに絽の帯締めて梨園の妻 内田幸子
わがまへに梨も葡萄も無月かな 久保田万太郎 草の丈
わが聞いてわが噛む音の梨の秋 爽雨
ザボンより大きな梨をもらひけり 子規句集 虚子・碧梧桐選
ジョン万の孫の越し方梨のつゆ 文挟夫佐恵 遠い橋
プロレスヘ梨がころがり梨走る 坪内稔典
マラルメて誰梨は木に灼け響き 竹中宏 饕餮
ラ・フランスとは悴な名よ梨の秋 岩崎照子
一つ*もぎさらに大きな梨を*もぐ ひさを
丸顔の多摩川梨の送り主 高澤良一 さざなみやっこ
人が逝く梨に梯子を懸けしまま 辻田克巳
人物評ざっくばらんに梨の味 高澤良一 燕音
今日といふをはりの梨を夜の珠 古舘曹人 能登の蛙
仏へと梨十許りもらひけり 正岡子規
仏壇にちちとははゐて梨ひとつ 櫛原希伊子
仏壇に梨の坐りの全しや 高澤良一 素抱
但馬城崎海のみどりを梨の肌 石塚友二 方寸虚実
体内のあらしから手が梨をむく 熊谷愛子
供するは梨を尋ん寒の中 服部嵐雪
僧あるきゐて岩梨はまだ熟れず 長谷川双魚 風形
僧は留守梨の鼎座に時計刻む 草田男
優しさよ梨なんど剥く手元さへ 尾崎紅葉
八ケ岳山肌近し小梨散る 及川貞 夕焼
八月尽昔に似たる梨の疵 百合山羽公 寒雁
八月盡つまめる梨の口当り 高澤良一 素抱
兵馬俑しずしず梨のしずくかな 中北綾子
冬越えの梨うつくしや草の家 室生犀星 犀星発句集
刃もの添へられてある梨の存在 シヤツと雑草 栗林一石路
初電話梨のつぶての息子より 田中丸とし子
包丁に載せて出されし試食梨 森田六合彦
十六夜や追炊やめて梨の味 渡辺水巴 白日
十指いま光の亀裂梨を剥く 小檜山繁子
古傘に梢の梨を包みたる 寺田寅彦
台風の前の静けさ梨を採る 檜田 慧星
吊し柿わがいくこゑの梨礫 石塚友二 方寸虚実
唇あてて陽のぬくみある梨の肌 高井北杜
嘘ついている梨の実のみずみずし 森田智子
団梨の掃き溜めてあり石まじり 小川軽舟
園の梨種類揃ひて見物也 葛三
土寄せて果樹下きよらに梨終る 及川貞 榧の實
夜半覚めて梨剥いて居りわが師亡し 町田しげき
大いなる梨困惑のかたちなす 和田悟朗(1923-)
大山の月さしてきし梨番屋 由木みのる
大音に落ちたる梨の怪我もなし 静塔
女みな運転出来て梨出荷 堀恭子
妻が買ふものに梨あり職ある日 森川暁水 黴
婚期徐々に過ぎんとす梨噛り居り 八木三日女 紅 茸
孔子一行衣服で赭い梨を拭き 飯島晴子(1921-2000)
宅急便解けばしたたる梨の艶 城木タネ女
実となれる梨の根株の泉かな 沢木欣一 雪白
小刀や鉛筆を削り梨を剥く 正岡子規
小梨日和の吊橋 やはり揺つて渡る 伊丹三樹彦
山のかなたも雲白からむ梨送らる 村越化石 山國抄
山車につく婆前垂れに梨包み 菖蒲あや
待宵の梨や今宵の亭主ぶり 浜田酒堂
我失せつつあり手のひらに梨置けば 河原枇杷男 定本烏宙論
手の甲をつめたく流れ梨の皮 依光陽子
手をひろげて焚火にあたりゐる梨樹よ 冬の土宮林菫哉
手際よく寒肥撒かれ梨畑 沖山政子
故郷や秋稍寒く梨の味 抱琴
新高といふ梨の大頒ち食ふ 高浜年尾
施餓鬼旛五彩涼しき梨葉の忌 文挟夫佐恵 雨 月
旅それは脳のかたちの梨を剥く 吉田透思朗
日の遠き撓めしばられて梨芽吹く 西東三鬼
春惜しむ灯に雪国の梨食むや 太田鴻村 穂国
春浅くくづれ繕ふ梨の棚 不句襍成 細谷不句
昨日兄に供へし梨の透る(九月人日亡夫を追う如き義弟の訃霊前梨供えくれしは昨日なり) 殿村菟絲子 『旅雁』
昼は逝く梨の位の滴れり 永田耕衣 闌位
月のぼり皿に腐乱の梨一個 鳴戸奈菜
木洩日の顔にまぶしや梨を*もぐ 赤池麦穂
来い訓を聴け梨を頒たむ 安斎櫻[カイ]子
林檎園の中の洋梨寂しからむ 山田みづえ
梨うまし予後の手足のよく動き 影島智子
梨おろす爪疵籠疵あてずもよ 冬の土宮林菫哉
梨かじる風の筋なる路傍の石 細見綾子
梨がみづみづしくて夙うから逢ひたかつた君だ 人間を彫る 大橋裸木
梨きりし鋏のそばに盆の笛 百合山羽公 寒雁
梨すゝる灯にきてたるゝ蜻蛉かな 金尾梅の門 古志の歌
梨つまむ指頭にひしと来し夜寒 赤城さかえ
梨といふ地の噴き上げしものすする 田中芥子
梨といふ天然ものの水の味 高澤良一 随笑
梨と刃物しづけきものは憤り 長谷川朝風
梨の味別るゝ人に淡きかな 高橋淡路女 梶の葉
梨の園に人彳めりおぼろ月 蕪村遺稿 春
梨の実のつぶらな青実吉野せい 坂内佳禰
梨の実の中に雨滴のぎつしりと 山西雅子
梨の実の袋にあまる夜々のつゆ 栗生純夫 科野路
梨の実もぎに父は船旅に発つごとく 西川 徹郎
梨の実をあちらこちらで貰ひたる 石田郷子
梨の木に水のぼりゆく春の空 鳴戸奈菜
梨の木に生死がまわるオルゴール 松本恭子 二つのレモン 以後
梨の木に用あり飛弾の大人 森田緑郎
梨の木に老虚無棲むやてふてふも 河原枇杷男 定本烏宙論
梨の木の露よりも井のあたたかき 栗生純夫 科野路
梨の木切る海峡の人と別れちかし 金子兜太 蜿蜿
梨の枝しんじついとしうまげるなり 冬の土宮林菫哉
梨の柄のうすみどり食ひのこされし 飴山實 少長集
梨の汁ほたほた膝に十六夜 林原耒井 蜩
梨の皮蟻ゐる土に垂らし剥く 内藤吐天 鳴海抄
梨の肉にしみこむ月を噛みにけり 東洋城千句
梨の胎「風」の字やどり風に満ち 竹中宏 句集未収録
梨の芯吐けば砂丘の海怒る 森川暁水 淀
梨の芯黒きを残すひるの留守 横光利一
梨の葉のひらひら落つる袋掛 打出 たけを
梨の葉の落ちつくしたる雀かな 石田郷子
梨ふくろ古りつゝ瀬々の鮎落ちぬ 篠田悌二郎
梨むいてすゞろ更けゆく三人かな 月舟俳句集 原月舟
梨むいてゐるかたはらに児を寝かせ 田中裕明 櫻姫譚
梨むいてをりなにごともなかりけり 今井杏太郎
梨むいて夕潮にとりまかれゐる 友岡子郷
梨むいて指ほろ甘し夫の恩 池田澄子
梨むいて若狭の海の青さいふ 鈴木しげを
梨むくや夜空は水をふゝみをり 小川軽舟
梨むくや徒然草もあと少し 月舟俳句集 原月舟
梨むくや故郷をあとに舟下る 飯田蛇笏
梨むくや故郷をあとの舟の中 東洋城千句
梨むくや海の溢れること思ひ 矢島渚男
梨むくや甘き雫の刃を垂るゝ 正岡子規
梨むけとナイフ十梃ほど出され 京極杞陽
梨むけば昼見し荒地ひろがり来 子郷
梨もいで青空ふやす顔の上 高橋悦男
梨もぐや一つひとつに日のぬくみ 飯島正人
梨もぐや大露雨と降る如し 青峰集 島田青峰
梨もぐや山雨つばさのごとく去る 桜坡子
梨をむき誓子さびしきことを秘す 岸風三楼 往来
梨をむくとき忘れゐし指の怪我 稲畑汀子
梨をむくをんなの嘘を知つてゐる 岸風三楼 往来
梨をむく隣にいつも母がゐて 上田日差子
梨をむく音のさびしく霧降れり 草城
梨をむく音の愉しき二人の夜 川口利夫
梨をもぐ妻にしたがふ母居りし 窪田 竹舟
梨をもぐ手付き稲城の人と知る 稲畑廣太郎
梨を分け病人のことたづねけり 大野林火
梨を切るみやげ一つに神の顔 対馬康子 純情
梨を剥いておこたれる髭剃れる夜 森川暁水 淀
梨を剥いて昼のむ酒はわびしいぞ 森川暁水 淀
梨を剥く一日すずしく生きむため 小倉涌史
梨を剥く母の白髪の増えしこと 館岡沙緻
梨を剥く皮のぶらぶら定年後 高澤良一 随笑
梨を噛みて子なき恨もいはずなりぬ 森川暁水 淀
梨を噛む霧に見えざる湖を前 福田蓼汀 山火
梨を食ふともに身うすき夫婦かな 森川暁水 黴
梨を食ふなまじ文字ある身ぞかなし 森川暁水 淀
梨を食ふわれに放浪癖ありぬ 森川暁水 淀
梨を食ふ刃物くりやへしまへかし 亀井糸游
梨を食ふ子に嫌はれし顔を出す 杉山 岳陽
梨を食ふ子運のわるき夫婦かな 森川暁水 黴
梨を食ふ林の出口どしやぶりに 中拓夫 愛鷹
梨を食ふ白歯さびしや子無妻 森川暁水 黴
梨を食ふ耳よりも音発しけり 井沢正江 以後
梨を食ぶ頬にふくらみ戻り来て 茂里正治
梨二つ胸もて享けて祭の子 鈴木しげを
梨個々に梨を勘忍して居りぬ 河原枇杷男 定本烏宙論
梨出荷大き麦藁帽に青空 大野林火
梨剥いてやりながら子に何いへる 久保田万太郎 草の丈
梨剥いて昔話にして仕舞う たまきみのる
梨剥きし刃先をわれに向けて置く 辻田克巳
梨剥きて退院夫に仕へ初む 石田あき子 見舞籠
梨剥き実いくとせ父なる声聞かず 成田千空 地霊
梨剥くと皮垂れ届く妻の膝 飛旅子
梨剥くやひとの夫とひとの妻 野村喜舟 小石川
梨剥くや二十世紀もどん詰まり 町垣鳴海
梨剥くや夜は羽縁を打はをり 野村喜舟 小石川
梨剥くや山水白砂を滲み出て 香西照雄 対話
梨剥くや渚を幾重にも置きて 小檜山繁子
梨剥くや筧の音に語り草 野村喜舟 小石川
梨喰うて口さむざむと日本海 森澄雄
梨噛みて秋も浴衣の妻と居ぬ 森川暁水 淀
梨圃のきよき流れの集果船 飯田蛇笏 雪峡
梨園の番犬梨を丸齧り 平畑静塔
梨地空業平竹未だ秀を解かず 林原耒井 蜩
梨売が吊る一燈へ多摩の霧 島谷征良
梨売にガードの日影移りけり 秋櫻子
梨売に炭鉱の路地雨溜る 皆川盤水
梨売の荷おろしあるは我家かな 水原秋桜子
梨売りが線路の上を帰りゆく 日原傳
梨売りの頬照らし過ぐ市電の燈 沢木欣一 雪白
梨子の葉に鼠の渡るそよぎかな 斯波園女
梨子二つ大なり病人の枕もと 尾崎紅葉
梨採りしあと梨の木のしづかさよ 辻岡紀川
梨散るや雨の夜風の吹き出でゝ 癖三酔句集 岡本癖三酔
梨散るよ白濤の生む風のつづき 大野林火
梨柵や初夏の繭雲うかびたる 水原秋桜子
梨棚にはるかに高き鰯雲 高浜年尾
梨棚に仕へ日焼をさづかりぬ 栗生純夫 科野路
梨棚に首つき出して野分晴 肥田埜勝美
梨棚のただにはらばふ峡一つ 栗生純夫 科野路
梨棚のつぶれんばかり婆の上 細川加賀 生身魂
梨棚のふつふつ霞呼べりけり 太田鴻村 穂国
梨棚の上へ秋雲ひりごり来 関 夫久子
梨棚の地に画く影は春暑き 富安風生
梨棚やこの暗がりのなつかしき 大木あまり 火球
梨棚や初夏の繭雲うかびたる 水原秋櫻子
梨棚をくぐりて出逢ふ一つの井 栗生純夫 科野路
梨棚をくぐる近道捕虫網 永方裕子
梨棚をつゆにゆだねて嶽の星 栗生純夫 科野路
梨汁のねばりや山気ただならず 栗生純夫 科野路
梨熟れて農園守も子を二人 宮津昭彦
梨狩のこごみ歩きの真顔かな 細川加賀 生身魂
梨狩の客を迎へる九官鳥 山田節子
梨狩の抱いてもらひし子供かな 細川加賀
梨狩や遠くに坐りゐるが母 細川加賀 生身魂
梨狩や遠くの山がよく見えて 今井杏太郎
梨狩りの高処の道は雲通ふ 山本洋子
梨甘く実るふるさと潮目濃し 伊藤京子
梨畑ことしぎりの麦にて苅りぬ 冬の土宮林菫哉
梨畑の女ばかりの袋掛 長谷川浪々子
梨畑稼ぎ枝まげの麦青みたれ 冬の土宮林菫哉
梨番の茣蓙の上なる筑紫琵琶 石鼎
梨終り果樹園主けふ稲架組める 及川貞 榧の實
梨肥の穴埋めてをれば寒の雨 冬の土宮林菫哉
梨舟の上り下りや山桜 橋本鶏二 年輪
梨貰ひ大きい方をののさんへ 高澤良一 随笑
梨食うてすつぱき芯に至りけり 辻桃子
梨食うて口さむざむと日本海 森澄雄 雪櫟
梨食うて顔吹き分くる秋の風 森澄雄 浮鴎
梨食うぶ雨後の港のあきらかや 汀女
梨食ふと目鼻片づけこの乙女 加藤秋邨 吹越
梨食みて雨月は人を偲ぶかな 伊藤京子
梨食むや汽車の全長見晴らして きくちつねこ
棚の梨熟れつくしたる空青し 大橋櫻坡子 雨月
此辺り多摩の横山梨をもぐ 大橋一郎
気前よく剥く洋梨の角張りぬ 高澤良一 素抱
水に湧く雲あつまれる梨畑 原裕 青垣
水の月汲て拾はん梨葡萄 沾徳 (風虎翁七回忌寄月釈教)
水分を以て豊満なる梨よ 桑原三郎 晝夜 以後
水梨や幾秋の夜の露の味 乙州
水梨子や喉に流るゝ大井川 遊哥 選集「板東太郎」
汽笛愉し梨棚乙女一瞬過ぎ 草間時彦
汽車疲れ食後の梨を措きて臥す 石塚友二 方寸虚実
沙河をこえゆくうたたねの膝に梨 渋谷道
洋梨が版画のやうに置いてある 長谷川櫂
洋梨のいびつそばかす抱きごころ 津波古江津子
洋梨のおいど優しきものの一つ 高澤良一 宿好
洋梨をトルソーに剥き由紀夫の忌 井上ひろ子
洋梨喰ふ夜はひたひたと沖にあり 櫻井博道
洋梨蠢き葡萄膨らむ佐伯の眼 林翔 和紙
海流の大きなうねり梨を剥く 和田耕三郎
清潔な匂ひの梨は妻が剥く 有働亨 汐路
渡り鳥小田原城に梨食へば 石塚友二 光塵
満月の遊心ゆらゆら地梨買いて 平北ハジム
炊き出しの外竃築き梨出荷 爽暁
炎天の梨棚がめりめりさがりくる 冬の土宮林菫哉
点滴の済みたる夫に梨をむく 重浦良枝
焦心の梨凸凹に剥かれけり 川口重美
熊本の大きな梨をもらひけり 岸本尚毅 舜
燭の焔の細り太りや梨を食む 阿部みどり女
物干にのび立つ梨の片枝かな 惟然
玻璃皿の梨蒼くなり瓦斯ともる 長谷川かな女
甘にして脆なる老梨希はしや 相生垣瓜人
生つてゐる梨の形になつてきし 高野素十
盆棚の青梨ふたつ消え失せぬ 細川加賀 生身魂
真向ひに吾妻山置き梨を狩る 菅野しげを
真夜覚めて梨をむきゐたりひとりごち 楸邨
秋の風実ならぬ梨を吹すさむ 成美
秋果籠に梨も葡萄もみな古典 山口青邨
秋立つといへど六尺褌が丸かじりする長十郎梨 和田大象
稲梨かげに唖ん坊と二人遊びけり 木歩句集 富田木歩
空の青とびつく刃物梨を剥く 高井北杜
窓を経し昼のひかりに卓の梨 宮津昭彦
翔べぬ火の鳥梨のスープを受唇に 磯貝碧蹄館 握手
老の口とざして堰きて梨を食ふ 皆吉爽雨
老梨のごろりと大き烏頭子忌 百合山羽公 寒雁
艪をこげる娘に梨をはふりやれ 高浜虚子
荷ずれ傷つきて故郷の梨届く 前橋春菜
落ち梨は水底の陽よ良寛碑 小檜山繁子
落梨を農婦の拾ふ無雑作よ 殿村莵絲子
蜆貝の内側の色梨の空 細見綾子 黄 炎
西洋梨ごろんと一つ静物画 高澤良一 燕音
西瓜など梨など賜へ山の如く 会津八一
訃報聞く梨の皮剥く音のなか 高澤良一 素抱
赤城暮れ梨園灯る地蔵盆 宮武寒々 朱卓
赤沼に嫁ぎて梨を売りゐたり 佐藤鬼房(1919-2002)
身のどこか水流れをり梨を剥く 小枝秀穂女
身弱さの頬燃えやすし梨食ぶ 木村蕪城 寒泉
近道を阿闇梨につるゝ時雨かな 斯波園女
道端に黙つて梨を売つてをり 大西一冬
遠き子供の泣きやむまで梨見つめをりし 冬の土 宮林菫哉
酒・飯・梨うまくて人間好時節 高澤良一 さざなみやっこ
銀河しるき夜頃を摘める梨ならむ 安斎櫻[カイ]子
長十郎梨街に溢れて千代尼の忌 河野南畦 湖の森
雪を経し屋根石下枝の梨いびつ 香西照雄 素心
雪後にてまばらな闇の梨畠 宮津昭彦
雲も水もさゞめきて多摩の梨熟るゝ 中島月笠
雲五月梨青坊主こぞりけり 堀口星眠 青葉木菟
青き梨ほとけは灯より来給ヘり 神尾久美子 桐の木
青き梨我より高き子へ与う 寺井谷子
青瀬のふち梨を冷せり人数だけ 中島斌雄
顔のかげ手許にありて梨を剥く 宮津昭彦
飄々と木を伝ひゆき梨*もげり 栗生純夫 科野路
食むべくはなみだたたふる梨の肉 栗生純夫 科野路
駅あげて梨の出荷期迎へけり 穐好樹菟男
骨ごときものを蔵して梨静か 河原枇杷男 定本烏宙論
高々と五月の真日や梨育つ 有働亨 汐路
鳥の眼の如き種子もち梨の芯 田川飛旅子
ラフランス五百羅漢の二重顎 古川塔子
二軒目の八百屋に在りぬラ・フランス 高澤良一 鳩信
ラ・フランスとは悴な名よ梨の秋 岩崎照子
ありの実や円く切られて重なれる 青峰集 島田青峰
ありの実のありとは梨子の花香かな 上島鬼貫
供へらる二十世紀に今日の月 高澤良一 さざなみやつこ
二人して食ふには大き梨折半 高澤良一 石鏡
梨を剥きその一片に楊子立て 高澤良一 石鏡
梨なんぞ剥いて無聊の手を濡らす 高澤良一 石鏡
洋梨の油絵掲げ洋菓子店 高澤良一 石鏡
梨重たけれど甘味の保証無し 高澤良一 暮津
洋梨の器量も含めし値段なり 高澤良一 暮津

以上
by 575fudemakase | 2015-09-11 00:02 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

栗ご飯

栗ご飯
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この頃となると栗飯の栗が、はや出回って居らぬかと八百屋の店頭を覗き見して歩く。そんな訳で昨晩は栗飯であった。
例年 栗の皮剥きはわたしの仕事。栗の皮剥きは2行程に分かれる。最初は栗の外皮を剥がす工程。次いで渋皮を取り除く工程。最初の簡単な工程を私が担当、渋皮剥きの難しい工程が山妻担当である。
昨今はこの栗の皮剥きがめんどくさいせいか 既に外皮を剥き渋皮をとりのぞいてある栗を売っているケースもある。

▼栗飯

例句を挙げる。

仏飯として栗飯は盛りにくし 林直入
円卓や栗飯に呼ぶ弟あり 河東碧梧桐
土産の栗栗飯にしてなほ余る 高澤良一 寒暑
妻子出て栗飯盛れり芭蕉の日 長谷川かな女 花 季
存問のいろ栗飯の炊きあがり 伊藤敬子
持ちよりの栗飯炊きぬ応々忌 冬葉第一句集 吉田冬葉
旬のものとて栗飯も二度三度 谷口 君子
未明覚め汝に栗飯を汝の忌なり 及川貞 夕焼
栗飯にする栗剥いてをりしかな 安住敦
栗飯によんでもらひし月夜かな 青峰集 島田青峰
栗飯に間に合はざりし栗一つ 矢島渚男 天衣
栗飯のあたゝかく人を発たせけり 長谷川かな女 雨 月
栗飯のあとのまどゐを長うしぬ 荒井正隆
栗飯のおむすび老の虫おさヘ 後藤夜半 底紅
栗飯のひえしをよそひくるゝかな 久保田万太郎 草の丈
栗飯のふつくら炊けて姑迎ふ 百井芳枝
栗飯のほくりほくりと食まれけり 太田鴻村
栗飯のまつたき栗にめぐりあふ 草城
栗飯の中に全き栗一つ 山崎ひさを
栗飯の二膳目もまたうわの空 高澤良一 寒暑
栗飯の栗あるところ熱きかな 下田稔
栗飯の栗を探してゐたりけり 角川春樹
栗飯の栗剥き悩む二人かな 尾崎紅葉
栗飯の洒落た家あり不動道 松本たかし
栗飯の釜吹きこぼし禍福なし 鈴木真砂女
栗飯も末の山住み十三夜 松村蒼石 寒鶯抄
栗飯やあは~煙る山の形 大井戸辿
栗飯やそゞろに寒き僧の影 蘇山人俳句集 羅蘇山人
栗飯や七男われも老い初めし 有働 亨
栗飯や夜は山から霧が来る 宇山薫風
栗飯や夫婦のほかに仏も居 村越化石
栗飯や子供ばかりのくんち客 下村ひろし 西陲集
栗飯や心づもりの客の数 高橋淡路女 梶の葉
栗飯や忘じて遠き母の顔 岸風三楼
栗飯や昼餉の膳の小盃 高橋淡路女 梶の葉
栗飯や木曽にかゝりの馬籠村 冬葉第一句集 吉田冬葉
栗飯や木曽の小石を箸枕 山崎竹堂
栗飯や末子が継ぎし毛虫眉 小島千架子
栗飯や栗の多きを御仏に 今泉貞鳳
栗飯や母語りゐて汝も母 大串章
栗飯や氷上泊りの二三日 松瀬青々
栗飯や糸瓜の花の黄なるあり 子規句集 虚子・碧梧桐選
栗飯や老いてしみじみ母の愛 伊東宏晃
栗飯や自己流でなす仏ごと 美濃部英子
栗飯や越後の薄日茫々と 広瀬直人
栗飯や酸素を吸はぬ夫うれし 石田あき子 見舞籠
栗飯を子が食ひ散らす散らさせよ 石川桂郎(1909-75)
栗飯を昼に炊いたる菊節供 森澄雄
栗飯を炊かんとぬれし掌を垂れて 下村槐太 天涯
栗飯を炊きあぐ遠野物語 熊谷愛子
栗飯を炊くほどの栗拾ひ来し 江口竹亭
栗飯ノ四椀ト書キシ日記カナ 正岡子規
栗飯ヤ糸瓜ノ花ノ黄ナルアリ 正岡子規
栗飯一家よく喋ること喋ること 高澤良一 ぱらりとせ
百ケ日の栗飯のみなでむくよ小栗よ 梅林句屑 喜谷六花
神仏に分つ栗飯匂ひけり 美柑 みつはる
神将睡し斎の栗飯飽食し 安住 敦
老人の日栗飯を媼はこび来し 長谷川かな女 花 季
菓子に藉き栗飯に載せ山紅葉 西本一都 景色
衝立や栗飯の香を隣なす 石川桂郎 高蘆
逗留や今日は栗飯とねもごろに 高浜虚子
野の香りこぼし栗飯炊きあがる 山田紀子
栗おこわ持って実家へ妻いそいそ 高澤良一 素抱
栗おこわ勝手に食べて叱られぬ 高澤良一 素抱
誕生日より栗づいて栗ご飯 高澤良一 石鏡
栗ご飯お焦げうれしく釜払ふ 高澤良一 暮津
栗飯の栗をごろんと箸に乗せ 高澤良一 暮津
栗飯の栗の角々灯に栄えて 高澤良一 暮津



以上
by 575fudemakase | 2015-09-10 00:01 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

赤のまんま

赤のまんま
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例句を挙げる。

あるがままただそのままに赤のまま 和田俊夫
ここになほ昔のこれり赤のまま 桜木俊晃
さゞ波のここまでよする赤のまゝ 池上不二子
しかもなほ赤のまんまの轢かれあり 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
つれづれの旅にもありぬ赤のまま 森澄雄 空艪
なか~に老の血殖えぬ赤のまゝ 萩原麦草 麦嵐
みちのべの赤まんまなど月の家 鷹女
わが心やさしくなりぬ赤のまま 山口青邨
われ黙り人話しかく赤のまま 星野立子
ゴム長を穿きてふるさと赤のまま 右城暮石
ローカルの切符は硬し赤のまま 白内慶太
主なき書屋に赤のまま活けて 川口咲子
五右衛門風呂の蓋はたつぷり赤のまま 大木あまり
人なぜか生国を聞く赤のまま 大牧広(1931-)
仔馬らの四肢太くなり赤のまま 椙山昭三
兄弟の網うち習う赤のまま 長谷川かな女 牡 丹
出土土器散らばり乾き赤のまま 水田三嬢
勝ち誇る子をみな逃げぬ赤のまま 草田男
城跡の中の径の赤のまゝ 高濱年尾 年尾句集
夏先の色薄けれど赤のまゝ 高澤良一 素抱
夜べの雨未だ降り止まぬ赤のまま 青柳薫也
夢のなか赤のまんまと仏頭と 金子皆子
夭折の弟があり赤のまま 太田土男
子をもたず母を送りて赤まんま 関口桂史
小流れをなせる余り温泉(ゆ)赤のまま 高澤良一 寒暑
山の田は作らず売らず赤まんま 影島智子
山寺の咲くだけふえて赤のまま 高浜きみ子
山羊の貌朝日うけをり赤のまま 坪野文子
崩れ伏す母岩一帯赤のまま 成田千空 地霊
幸なるかなくるすがしたの赤のまゝ 山本健吉
影踏みの影の伸び来し赤のまま 大上 充子
憩ふ石にふさはしければ赤のまま 阿部みどり女
手にしたる赤のまんまを手向草 風生
日ねもすの埃のままの赤のまま 高浜虚子
昼の虫すがれし赤のままのなか 高澤良一 さざなみやっこ
村の子は丈夫で裸赤のまま 上村占魚 球磨
杖の先あそばせ憩ふ赤のまゝ 坂口かぶん
板塀に継あててある赤のまま 遠藤梧逸
此辺の道はよく知り赤のまゝ 高浜虚子
母にある幼な友達赤のまま 大橋敦子
水子らがゆすり搖れるよ赤まんま 坪内稔典
水張りしコップに空地の赤のまま 高澤良一 ぱらりとせ
泣き羅漢の泣き止むを待つ赤のまま 小島千架子
洗ひ障子赤のまんまに置きにけり 松藤夏山 夏山句集
流水の風の筋目に赤のまま 伊藤敬子
測量士赤のまゝより十歩ほど 高澤良一 寒暑
溝そばと赤のまんまと咲きうづみ 高浜虚子
瀬にあれば酔のさめゆく赤のまま 田中裕明 櫻姫譚
犬連れの馴染みの顔や赤のまま 山本 保子
百姓にゆふべ道問ふ赤のまま 角川春樹 夢殿
石佛の口唇紅き赤のまゝ 篠原 としを
種牛は小屋で留守番赤のまま 石田勝彦
積み捨てし水禍の畳赤のまま 渡辺文雄
筧水こぼるゝところ赤のまゝ 高濱年尾 年尾句集
縄汽車のぶつかり歩く赤のまま 奥田可児
苧も赤のまんまも秣かな 松尾 久子
蕎麦汁の器に挿せば赤のまま 石川桂郎 高蘆
赤のまますがれてさらにずぶ濡れて 池田秀水
赤のまますがれて吾を憩はしむ 五線
赤のままちぐはぐに生き夫婦かな 小島千架子
赤のままむかし卑弥呼の国に敷き 小野元夫
赤のままより鄙の野のありそめし 稲畑汀子
赤のまま円空堂に通ず径 高澤良一 素抱
赤のまま双手ほうしろポケットに 横山白虹
赤のまま噴湯ぽこぽこぽこぽこと 高澤良一 寒暑
赤のまま地玉子売りの来る日暮 松浦 釉
赤のまま天平雲は天のもの 青畝
赤のまま寝溜の旅も終りけり 鷹羽狩行
赤のまま摘めるうまごに随へり 臼田亞浪 定本亜浪句集
赤のまま此処らで誰か滑りしか 高澤良一 ももすずめ
赤のまま此処を墳墓の地とせむか 吉田週歩
赤のまま潰へるまでのさくら色 高澤良一 燕音
赤のまま語らねば愛深くなる 大島六花
赤のまま賢治作りし弥助橋 高澤良一 寒暑
赤のまま遊ぶ手の中暮れている 武田涓滴
赤のまま錆びたるものにむらがれる 清崎敏郎
赤のまま馬に触れたき少女をり 太田土男
赤のまんまけさがけに負ふ石ぼとけ 赤尾兜子
赤のまゝあの子の兄を知つてゐる 岡田史乃
赤のまゝそと林間の日を集め 茅舎
赤のまゝ妻逝きて今日は何日目 小川千賀
赤まんま墓累々と焼けのこり 三橋鷹女
赤まんま屋根裏の窓人のぞく 小池文子 巴里蕭条
赤まんま留守番の子の指しやぶり 島 汀子
赤まんま空地に捨てゝある枕 秋元不死男
足もとの赤のまゝ見て立話 高木晴子 晴居
郵便夫バイクを停める赤のまま 町田一雄
酒倉に親しきものや赤のまま 石 寒太
針千本飲ます算段赤のまま 櫛原希伊子
長雨の降るだけ降るや赤のまま 中村汀女
防人の墓とつたへて赤のまゝ 湯浅桃邑
露集ひ一塊の水赤のまま 香西照雄 素心
化野の犬蓼の辺の欠け佛 高澤良一 宿好
犬蓼にある明るさよ野草園 青柳志解樹
犬蓼にけふの散歩はここ迄と 高澤良一 宿好
犬蓼にちりちりと陽が谷底まで 川崎展宏
犬蓼ぬれて道に出てゐる シヤツと雑草 栗林一石路
犬蓼のとくと淋しきさかり哉 春堂
犬蓼の中で何するかゝし哉 太無
犬蓼の秀は色に出て水に垂る 雪弥
犬蓼の稲田になだれ込むところ 高澤良一 ももすずめ
犬蓼の穂に出顔や荒屋敷 宝馬
犬蓼の花くふ馬や茶の煙 正岡子規
犬蓼の花や咎めし留守の門 也有 (我留守を訪ひし楚巾子へ遺す)
犬蓼もはなだちそろふ芋畠 飯田蛇笏 雪峡
犬蓼やめんどり納屋に入りしまま 永方裕子
犬蓼や米こぼれたる井戸の縁 寺田寅彦
犬蓼や馬のしづかな咀嚼音 角川春樹
犬蓼をまはりて句帖汚しけり 長谷川かな女 雨 月
窯元の門口飾る犬蓼よ 鈴木真砂女 夕螢
しかもなほ赤のまんまの轢かれあり 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
夢のなか赤のまんまと仏頭と 金子皆子
手にしたる赤のまんまを手向草 風生
洗ひ障子赤のまんまに置きにけり 松藤夏山 夏山句集
溝そばと赤のまんまと咲きうづみ 高浜虚子
苧も赤のまんまも秣かな 松尾 久子
赤のまんまけさがけに負ふ石ぼとけ 赤尾兜子
犬蓼見てぷらんぷらんと戻りけり 高澤良一 暮津
大犬蓼この雨何時か上がるだろう 高澤良一 随笑

以上
by 575fudemakase | 2015-09-09 00:01 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

猫じゃらし

狗尾草
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例句を挙げる

いつも靡いて空港の猫じやらし 池田秀水
えのころに風の集まる船渠跡 二又淳篁
えのころの上手に枯れを見せにけり 岸田稚魚
えのこ草コップに挿せば茎交叉 高澤良一 寒暑
えのこ草小雨を弾く青穂かな 高澤良一 寒暑
か、が渦で 猫じゃらしなど攻めて来る 坪内稔典
きらきらし狗尾草に尿のつぶ 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
けさの秋ゑのころ草にほほゑまれ 西本一都
こそばゆくなる沢山の猫じゃらし 太田土男
なるがままなるがままなり猫じやらし 奥田杏牛
みちのべの狗尾草も野分かな 鷹女
もう訪はぬ家ばかりなり猫じやらし 山田みづえ 忘
ゑのころに印南野は山遠きかな 榎本享
ゑのころに尿のつぶのきらきらし 佐々木六戈
ゑのころのうぶが吹かれて転びづめ 高澤良一 随笑
ゑのころの光れる試歩は朝の内 高澤良一 鳩信
ゑのころの川原は風の棲むところ 稲畑汀子
ゑのころの玉に出づる穂今朝の秋 皆吉爽雨
ゑのころの露の明かりを守りけり 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
ゑのころの風の広さに吉野ケ里 稲富義明
ゑのころはうぶで真青で澄みきるそら 高澤良一 随笑
ゑのころや地下には死者の円き背が 安部保男
ゑのころ草抜きざま湧くよ女知恵 手塚美佐
ゑのころ草風がそこそこ出で来たる 高澤良一 寒暑
ゑのこ草分けてカヌーを担ぎ出す 鹿野佳子
ゑのこ草媚びて尾をふるあはれなり 富安風生
ゑのこ草掌にし野分の径に佇つ 内藤吐天 鳴海抄
ゑのこ草雨に明るさ失はず 高澤良一 素抱
ゑのこ草風雨あとなく曲りけり 飯田蛇笏 春蘭
ゑのこ草首を振り振り台風裡 高澤良一 素抱
ジョギングコース狗尾草(ゑのころ)を見て走り込む 高澤良一 素抱
スケッチの揺れやまざりし猫じゃらし 橋本 道子
一茎の金の繊さよ猫じやらし 山口青邨
七月や穂に出て青き猫じやらし 青木重行
七草にもれて尾をふる猫じやらし 富安風生
下校の子追ひつ追はれつ猫じやらし 鈴木昌江
何もないとこでつまずく猫じゃらし 中原幸子
凧の尾を追かけ廻る狗(ゑのこ)哉 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
句を溜めて口重くなる猫じやらし 横山白虹
吹かれては色の脱けゆく猫じゃらし 八木マキ子
地の果ての硫黄地獄の猫じやらし 仙田洋子 橋のあなたに
夢いくつ見て男死ぬゑのこぐさ 能村登四郎
大川へ出て波少しえのころ草 見市六冬
天臺の金狗尾草の吹かれをり 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
女郎花ゑのころ草になぶらるる 野童 俳諧撰集「有磯海」
娘たち何でも笑ふゑのこ草 浦野光枝
子を遁れ来しわが刻ぞ猫じやらし 千代田葛彦
山墓へ人の消えたる猫じやらし 関戸靖子
山車通るゑのころ草も刈られけり 吉武紀代子
岬枯れ青を恥ぢらふ猫じやらし 大木あまり 山の夢
幼な児の小さき謀反や猫じゃらし 山口清子
径らしき径なく寺領狗尾草 鬼塚忠美
折りとりし猫じやらしいつ捨つるべき 有働 亨
捨自転車狗尾草に沈みをり 舘岡沙緻
握りしむ狗尾草の穂のぬくし 松下 義幸
放ちたる犬かけ廻る猫じやらし 村上辰良
日あたれば秋草なりし猫じやらし 篠田悌二郎
朝日影みなあたらしき猫じやらし 中村 秋晴
枯れ~て狗尾草は穂を持たず 奥園操子
歌をうたはぬピエロさしだす猫じやらし 仙田洋子 橋のあなたに
汽笛とおし伸べし脚間の猫じやらし 古沢太穂 古沢太穂句集
湯元の辺穂の真っ黒な猫じゃらし 高澤良一 素抱
父の背に睡りて垂らす猫じやらし 加藤楸邨
狗尾草(えのころ)の魂(たま)のぬけがら枯月夜 高澤良一 鳩信
狗尾草いたづら好きの童女かな 浦田 宏
狗尾草が寝墓磨きし風に枯る 貞好莞二
狗尾草(えのころ)の向きを一つに揃へたし 高澤良一 さざなみやっこ
狗尾草や五七五七の似非和讃 沼尻巳津子
狗尾草や翁が終の碑のほとり 三嶋隆英
狗尾草貧中子守歌やさし 清水基吉 寒蕭々
猫じゃらししゃららん即興音快調 五島エミ
猫じゃらし九州四国雨模様 坪内稔典
猫じゃらし療者平たく座りたる 金田咲子
猫じゃらし雨を嫌ひて雨弾く 高澤良一 素抱
猫じやらしのそと出でくる野分雲 角川源義
猫じやらしはづかしきゆゑ不愛想 香西照雄 対話
猫じやらしみな揺れてをり淋しきならむ 安住 敦
猫じやらしわれもと月に影震ふ 篠田悌二郎 風雪前
猫じやらし一面に偽こころざし 宇多喜代子 象
猫じやらし不愛想にもそと触れて 香西照雄 対話
猫じやらし二人子の脛相似たり 石田波郷
猫じやらし吾が手に持てば人じやらし 山口誓子
猫じやらし心おきなく見て死なむ 齋藤玄 『玄』
猫じやらし怺へて重き露たもつ 篠田悌二郎 風雪前
猫じやらし沈めてをりぬ草の丈 高木晴子
猫じやらし療者平たく座りたる 金田咲子 全身 以後
猫じやらし羅漢の腰をくすぐるか 中井一木
猫じやらし脳裡にも水流れをり 森 澄雄
猫じやらし触れてけものゝごと熱し 中村草田男
猫じやらし賢治の大き国に入る 太田土男
猫じやらし野菊と活けて十三夜 遠藤梧逸
盆花やゑのころ草の打ちまじり 石田郷子
秋はまづ街の空地の猫じやらし 森澄雄 四遠
秋晴や粟にかも似て猫じやらし 銀漢 吉岡禅寺洞
粟の穂や狗尾草は畦草に 野村喜舟 小石川
老人がゐて汐焼の猫じやらし 細川加賀 生身魂
胸の手に風とどまるや猫じやらし 岸田稚魚
舗装路の狗尾草(ゑのころ)も枯れ通院日 高澤良一 宿好
行きさきはあの道端の猫じゃらし 坪内稔典
辛抱よ辛抱雨の猫じやらし 林 翔
遊行忌の一日揺れる猫じやらし 鈴木勘之
陶乾く風のゆたかに猫じやらし 菊池ふじ子
雨に伏すゑのころのみな短くて 岸本尚毅 舜
雨の貨車過ぎをり雨の猫じやらし 石田波郷
露濡れのなほ尿濡れの猫じやらし 依光陽子
風の子がいつもまはりに猫じやらし 高山あさ江
風景を唄わせている猫じやらし 菊地京子
鮒の頭の捨てられてある猫じやらし 鈴木貞雄
鴨川やゆく水なだめ猫じやらし 青木泰夫
相俟ってゑのころ草のすがれそむ 高澤良一 さざなみやつこ
脚力をつけんとゑのころ草の道 高澤良一 鳩信
月祀る芒に添えてゑのころも 高澤良一 宿好
風が風追ひ越しゆけり狗尾草 高澤良一 石鏡
狗尾草も庭草の裡愛で暮らす 高澤良一 石鏡
狗尾草濡れぬやう穂の出来てをり 高澤良一 石鏡
銹錨狗尾草の穂の古りて 高澤良一 石鏡
擦り寄りて馴れ馴れしいぞ狗尾草 高澤良一 暮津
犬の名と猫の名ゆかりのゑのこ草 高澤良一 燕音
イヌビエとも相性のよきねこじゃらし 高澤良一 寒暑
曇日のひかり押さえてねこじゃらし 高澤良一 石鏡
除けきれぬ雨の小道の猫じゃらし 高澤良一 石鏡
金網の外にも内にも猫じゃらし 高澤良一 石鏡
ねこじゃらし老若の穂の入り混じり 高澤良一 石鏡
狗尾草英語にては
英名は緑の狐のしっぽ草 高澤良一 燕音
駆け足で雨くるアキノエノコログサ 高澤良一 素抱

以上
by 575fudemakase | 2015-09-08 00:01 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

水引の花

水引の花
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例句を挙げる。

うぐひすや水引結ぶ鮮かに 永井龍男
かひなしや水引草の花ざかり 正岡子規
くちあけに水引うるる祭かな 龍岡晋
これやこの水引の花みそなはせ 会津八一
さかりとて寂かに照や水引草 渡辺水巴
さかりとて寂かに照るや水引草 渡邊水巴
その家へ水引草を手折りつつ 山本洋子
つゆためて水引の紅ふれあへる 松村蒼石 露
のど乾くたび水引が咲いている 松本文子
ふれあひて水引草も世も淡し 中嶋秀子
みづうみのはたと日暮るる水引草 関戸靖子
ゆふぐれの金水引の一條も 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
一と雨の過ぎし水引草の赤 高木晴子 花 季
今年また水引草の咲くところ 原田浜人
仕掛けあるごとく水引ゆれてをり 藤岡筑邨
信玄が六女の寺の水引草 藤田あけ烏 赤松
剪りそへて芒水引みづ~し 高濱年尾 年尾句集
千草濃しことに金水引の金 大岳水一路
壷にさす水引草つかねあまりけり 飯田蛇笏
天台の金水引の吹かれをる 佐々木六戈
姉の恋ならず水引草こぼる 峯 信恵
子ひとりおねがいほんのり水引草 山中葛子
實むらさき銀水引と荒れまさり 黒田杏子 一木一草
小暗きに一穂の艶水引草 赤井淳子
尼来るを百も承知の水引草 齋藤玄 『無畔』
山刀伐を越ゆ水引の銀を手に 安藤五百枝
山蔭を来て水引の花の庵 後藤夜半 底紅
峠路や水引草は妻のもの 岸田稚魚
川の音金水引草に触れてをり 藤田美代
御殿野菊御所水引草京の秋 西本一都 景色
意志に色あらばくれなゐ水引草 都筑智子
戦しごき残る友どち水引草 香西照雄 対話
手習ひも四十の果や水引草 石田あき子 見舞籠
抽んでて水引花をつゞりたる 藤岡玉骨
掃きよせし水引の屑歯朶の屑 菜花
日の中の水引草は透けりけり 室生犀星
日も月も淡き世なりし水引草 大館史子
昼の月水引草に色もなし 龍胆 長谷川かな女
朝寒や花一すじの水引草 野村喜舟 小石川
木もれ日は移りやすけれ水引草 渡邊水巴 富士
木洩日のさすくさむらはひそかにて水引草の紅ながし 佐藤志満
森暗く水引の紅雨さそふ 松村蒼石 雪
武蔵野に水引の紅濃かりけり 笠原遠山
死よりしづかに水引草が濡れてゐる 栗林千津
水引がすいと目に入る高山寺 高澤良一 宿好
水引と濡れゐてくらき零余子蔓 松村蒼石 寒鶯抄
水引にとまる燈心蜻蛉かな 柑子句集 籾山柑子
水引に天の真名井を汲みこぼし 江口竹亭
水引に女人高野のざんざ降り 大峯あきら 鳥道
水引に屈みて海を遠くしぬ 原田青児
水引に滝のしぶきと深山露 大野林火
水引に視力測られゐるごとし 高澤良一 ももすずめ
水引のきんいろ挿して山の家 関戸靖子
水引のしなやかに灯を消しにけり 檜野子草
水引のひとすぢくもる墓前かな(深大寺) 岸田稚魚 『萩供養』
水引のまとふべき風いでにけり 木下夕爾
水引のよぢれてありし百千鳥 中田剛 竟日
水引の咲くは私ごとめきて 中村明子
水引の好む暗さのありにけり 西村和子 夏帽子
水引の手折りて紅の失せにけり 茂里正治
水引の暮るる間際を目守りゐる 森澄雄
水引の濃き一すぢを仏にも 北澤瑞史
水引の焦れて細る思かな 会津八一
水引の白も漸く目立ち来し 江口竹亭
水引の秋ゆく花をさらに密 皆吉爽雨 泉声
水引の穂をこきそを徒らに見をりけり 梅林句屑 喜谷六花
水引の紅にふれても露けしや 青邨
水引の紅の色ほど信じをり 白土青波
水引の紅は見えねど壺に挿せり 高浜年尾
水引の紅ひとすぢのつゆげしき 松村蒼石 露
水引の紅をふやして雨の寺 木内彰志
水引の紅を奪ひて夕日落ち 坊城としあつ
水引の紅を尽して末枯るゝ 高木石子
水引の縺るる程に鏡花の忌 相生垣瓜人 明治草抄
水引の耳掻ほどの花弁かな 大橋敦子 匂 玉
水引の花がひろげて雨の粒 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
水引の花が入つてゐる雫 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
水引の花にしをりのありそめし 後藤夜半 底紅
水引の花にはことに雨繊し 吉屋信子
水引の花に裾ひく亡者かな 長谷川かな女 雨 月
水引の花に順ふ雫かな 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
水引の花のうしろの廊下かな 中田剛 珠樹
水引の花の人目を避くる紅 後藤比奈夫 金泥
水引の花の消え入る虚空かな 福井圭児
水引の花の素直にかたくなに 後藤夜半 底紅
水引の花の触れゐる柱かな 岸本尚毅 選集「氷」
水引の花を心の日に透かす 後藤比奈夫 花匂ひ
水引の花三尺の紅に 谷活東
水引の花咲き土岐は窯どころ 井上光枝
水引の花茎にのり空へのび 上野章子
水引の触れあひて糸絡まざる 土屋いそみ
水引の跳ね一茎も交はらず 藤田八郎
水引の途中の花の咲きのぼる 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
水引の鋭きくれなゐを貴船みち 藤本和子
水引の長きが濡るゝ僧都かな 池上不二子
水引の際立つ方へ目を遣りぬ 高澤良一 ももすずめ
水引はゆふぐれの花影さへなし 福島小蕾
水引もがんぴの花も昏くなり 深川正一郎
水引やはかなき笑顔こぼしたる 小池文子 巴里蕭条
水引や人かかれ行く瀧の怪我 前田普羅
水引や奥の院より異邦人 北野民夫
水引や尼が住みつき厭離庵 北野民夫
水引や語りて居るは告げてをり 佐怒賀正美
水引をしごいて通る野道かな 赤星水竹居
水引をひそかに蟻の往来かな 会津八一
水引を濡らす雨またほそきかな 秋間樵二郎
水引草なりに燃ゆるといふこころ 山田弘子
水引草に月光詰ぶ十三夜 遠藤梧逸
水引草に跼みて海を遠くしぬ 原田青児
水引草に野分の塵のたまりけり 龍胆 長谷川かな女
水引草のつぶさに紅し宇陀郡 角川春樹
水引草の炎めきひとすぢ胸にひく 石原八束 『仮幻』
水引草はびこり母をよろこばす 山田みづえ 手甲
水引草ひとつがゆれるほどの風 藤村礼子
水引草びゆうと水吸ふ鯉の口 中拓夫 愛鷹
水引草ほどの感情の猫と暮れる 北原志満子
水引草まつくらに濡れ咲きにける 金田咲子 全身 以後
水引草まなぢり切らるおもひかな 坂巻純子
水引草や矢倉音なき片明り 小林康治 『存念』
水引草一糸の軽ろさ風に在り(山形、慈恩寺付近) 河野南畦 『硝子の船』
水引草二筋三筋風のまゝ 安藤 寿胡
水引草傘寿米寿とはげむなり 殿村莵絲子 花寂び 以後
水引草刎ねてはあがる添水かな 西本一都 景色
水引草天狗の寺が鐘を撞く 細川加賀 生身魂
水引草撥ね違ひたり揺れ違ひ 行方克巳
水引草生ふ赤門に赤仁王 高澤良一 随笑
水引草畳のつやにうつりけり 室生犀星
水引草皇女の墓へ磴細し 松本澄江
水引草目が合ひて猫立停る 石田波郷
水引草空の蒼さの水掬ふ 石田あき子 見舞籠
水引草群れて縺れて風の炎に 渡辺恭子
水引草還暦までも生かされて 朝倉和江
水引草風ひやひやと膝に来る 阿部みどり女
水引草髪より痩せてゆく思ひ 伊藤美沙子
水暮れしこと水引におよびけり 三田きえ子
濡れしまま水引草を活けてあり 大木あまり 火球
瀬音にも揺れて水引草の花 森田かずを
父の情はあらはに出さず水引白 成瀬桜桃子 風色
盆の燈の青水引草にこぼれけり 斎藤夏風
真白な妻の爪屑水引草 香西照雄 対話
秋海棠水引草の露けしや 臼田亞浪 定本亜浪句集
空襲解除水引草の水ながれ 萩原麦草 麦嵐
紅白の紅水引の花の紅 後藤夜半 底紅
紫蘇の花水引の花と印るしけり 寺田寅彦
草深く水引草に客案内 高木晴子 花 季
行水や水引の花蓼の花 田中冬二 麦ほこり
近道の昔のままに水引草 小谷久子
道の辺の蓼水引も憂しとのみ 石塚友二 光塵
野分の戸水引草にはづし置く 龍胆 長谷川かな女
釣瓶干すや水引草に雫して 龍胆 長谷川かな女
鉦鳴つて水引草のあるあたり 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
零餘子飯水引草を添へられて 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
露けさの水引草は糸雨のごと 栗生純夫 科野路
静臥永し水引繁と見得る視角 香西照雄 素心
鮠かふや水引草咲ける槻のもと 飯田蛇笏 山廬集
養生は一生のこと水引草 高澤良一 石鏡

以上
by 575fudemakase | 2015-09-07 04:12 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

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例句を挙げる。


三秋の終らんと風草に鳴る 高木晴子 花 季
三秋の絵巻果てゆくごと星座 荒井正隆
三秋や夫に数多の医療器具 小野口正江
三秋を病みて和服に親しみぬ 下村ひろし 西陲集
白秋という方角に二、三人 坪内稔典
白秋と思ひぬ思ひ余りては 後藤比奈夫 祇園守
白秋や触れて崩れし父の竿 宇佐美魚目 天地存問
眼裏に仏の鬱金秋日和 手塚美佐 昔の香
竹林を手にひびかする素秋かな 安東次男
蝦夷の地に九秋の果ありにけり 吉田紫乃
身ひとつを最中越(もなかこし)なば素秋かな 上島鬼貫
身ほとりの風に躓づく素秋かな 八幡里洋
金秋の愛語聖とならんかな 平井照敏 天上大風
金秋の鍋を煮くづす煮とろかす 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
飯うまき三秋も早や半ばかな 高澤良一 寒暑
鳥葬のための鷲舞ふ素秋かな 佐川広治
いふがほや秋は色々のふくべかな 芭蕉 選集古今句集
うち曇秋は多けれ月今霄 高井几董
うまおひの髭のそよろに来る秋はまなこを閉ぢて思ひ見るべし 長塚節
かく秋は灯を低くして親しみぬ 森澄雄
くる秋は風ばかりでもなかりけり 立花北枝
この秋はおいらんさうの皆しろし 北原白秋
この秋は何で年よる雲に鳥 松尾芭蕉
この秋は何葉にそへん盆供かな 飯田蛇笏 山廬集
この秋は旅と思へど糸瓜蒔く 北川左人
この秋は膝に子のない月見かな 鬼貫
この秋は観音開きにて立てり 正木ゆう子
この秋は鶏頭ひさし庭にをる 北原白秋
こんとんと秋は夜と日がわれに来る 三橋鷹女
それとなく秋は来にけりポタァジュに 高澤良一 随笑
はうはう秋の風吹いて赤土山 中塚一碧樓
ひややかに秋は関取児をつれて 飯田蛇笏 雪峡
まつすぐの道に佇み秋は来ず 和田悟朗
みちのくの秋はみじかし跳ぶ蝗 福田蓼汀 山火
みづひきのそよろに秋は立てりけり 東條素香
むぎ秋は身の置どころなかりけり 風蕎 俳諧撰集「有磯海」
むさし野の秋は白雲よりととのふ(疎開先の高崎より東村山に移り住む) 上村占魚 『一火』
もののねの秋はひときは猫の鈴 高橋睦郎 稽古飲食
ものゝ音秋は露さへしぐるゝか 加舎白雄
ゆく秋は酒あたためしかんな屑 北枝
万屋に秋は来にけり棒束子 川崎展宏
塩田の秋はにはかに星青き 佐野まもる 海郷
夕顔や秋はいろいろの瓢哉 松尾芭蕉
夕顔や秋は狂歌の種瓢 うせい
容赦なく降る雨秋は遠のきぬ 高木晴子
寥々と秋は澄みゆく身のほそり 中川宋淵 詩龕
山上の秋は俄かと思ひけり 千原草之
山国に省略の秋はじまりぬ 岡本 眸
山川の秋は来にけり黄鶺鴒 松本たかし
山廬忌の秋は竹伐るこだまより 西島麦南
岩峯のチロルの秋は雲よりぞ 有働亨 汐路
影の木に影の蛇巻く秋は来にけり 高柳重信
御簾かけて秋は住みよきお寺かな 長谷川かな女 雨 月
忍び泣く母より秋ははじまりぬ 高澤晶子
担樽の香も秋は親しき峡の人 成田千空 地霊
新綿や秋は風よりおとづれて 小杉余子 余子句選
新酒くまん四十九年の秋は何 加舎白雄
春は吉野秋は花ぞも奥の月 上島鬼貫
月はまろく秋はこよひや真半分 椎本才麿
月は秋は物思へとの何んのかの 道立
枕上み秋は小蜘蛛も影負ひて 石塚友二 方寸虚実
槐秋は星ふる冬の海へ発てり 高橋馬相 秋山越
櫛の歯のざらりと秋は死んでいる 津沢マサ子 空の季節
此の秋は何で年よる雲に鳥 芭蕉
此の秋は膝に子のない月見かな 上島鬼貫
此秋は何で年よる雲に鳥 芭蕉
此秋は月見の友も替りけり 許六
水を行く秋は命の数を書き 津根元潮
江山の秋はも昼の花火かな 尾崎迷堂 孤輪
海港の秋は仮寓の坂のあなた 横山白虹
溝萩に今年の秋は迅きかな 村上三良
炉の灰の冷えて夜の秋はじまれり 伊藤京子
甘蔗ほつて潮の岬も秋は秋 藤後左右
白芙蓉秋は夫人の愁ふ瞳に 飯田蛇笏 雪峡
目もさやに秋は来にけり牛蒡の葉 高澤良一 素抱
省線に秋は見おぼえの木槿垣 瀧春一 菜園
石狩の秋は大粒の大納言 橋本夢道 『無類の妻』以後
砂蒸しの秋は死にたる形かな 平井照敏 天上大風
秋はあはれ冬は悲しき月の雁 原石鼎
秋はいま露おく草の花ざかり 飯田蛇笏 山廬集
秋はきいろい丘 海坂より低い丘 富澤赤黄男
秋はこの法師すがたの夕べかな 宗因
秋はすこやか女の一生シヨーウィンドウに 寺田京子 日の鷹
秋はただ法師姿の夕かな 宗因
秋ははて酸素ぶくぶく水族館 櫂未知子 蒙古斑
秋はひそかに塔に白馬を登らせている 西川 徹郎
秋はふみわれに天下の志 夏目漱石 明治三十二年
秋はほそみちまむかうに日の没つる径 富澤赤黄男
秋はまず街の空地の猫じやらし 森 澄雄
秋はまづ目にたつ菊のつぼみ哉 去来
秋はまづ街の空地の猫じやらし 森澄雄
秋はもうガラス細工の魚たち 大西泰世
秋はものの月夜烏はいつも鳴く 上島鬼貫
秋はものの馬かさばりて穴の中 松崎豊
秋はものゝそばの不作もなつかしき 蕪村 秋之部 ■ 山家
秋はものゝひとりひとりぞをかしけれ空ゆく風もまたひとりなり 若山牧水
秋はゆふぐれ対岸はニュー・ヨーク 遠山陽子
秋はよし穂草のみちをひろふさへ 五十崎古郷句集
秋はれたあら鬼貫の夕べやな 広瀬惟然
秋は今晩はでどちらかが歓喜天である 加藤郁乎
秋は先づこの宿夕べ朝ぼらけ 上島鬼貫
秋は喫茶白手套ぬぐ愉しき世 飯田蛇笏 雪峡
秋は夕を男は泣ぬ物なればこそ 椎本才麿
秋は夕暮れ首の在庫が足りません 江里昭彦 ロマンチック・ラブ・イデオ口ギー
秋は夜を物のあはれをものゝ本 竹冷句鈔 角田竹冷
秋は夜半の篠の嵐ぞうつそ身に 石塚友二 光塵
秋は女寺から行方不明らし 永田耕衣
秋は山國の川は笛吹川 その音をきく 荻原井泉水
秋は日向に気づきて草履うらかへす 飯田蛇笏 雪峡
秋は涼しき店のいろくづ水たらす 臼田亜浪 旅人
秋は淋しい蚊にくわれていた 住宅顕信 未完成
秋は淋しくて漕ぐ飛魚一つ飛びしばかりの海を 安斎櫻[カイ]子
秋は物の身にしみて酒のうまく候 四明句集 中川四明
秋は神学ピアノのかげに人さらい 寺山修司 花粉航海
秋は紅葉眼にはれよ霧はれよ 白雄 (伏亀が眼病を)
秋は素朴な河口暮しの対話から 加倉井秋を 『真名井』
秋は絡まぬ石切槌の二挺の音 川口重美
秋は美術の石柱(ピラー)を囲む人ごころ 石原八束
秋は胸の少し冷たく目覚めけり 鈴木栄子
秋は蝉の日暮るゝ空を鳴くものか 竹冷句鈔 角田竹冷
秋は謐かに文色もわかずいきどほる 石原八束 空の渚
秋は豊かに山富む国の晴れわたり 福田甲子雄
秋は遠くを見てくらすどびんの口 内田南草
秋は部室の四隅明るく醒めて飢ゆ 石川桂郎 含羞
秋は野に早し爼濡らすたび 神尾久美子 掌
秋は金の王座に進む列にあり 古舘曹人 能登の蛙
秋は雲に塩舐む牛の舌力 宇佐美魚目 秋収冬蔵
秋は餉のあともくつろぐ木の実あり 森澄雄 四遠
背の山に秋はもみぢを踏みて住む 及川貞 夕焼
能因にくさめさせたる秋はここ 大江丸
船腹の白痛からむ秋は走り 和田悟朗
花いそぐ秋は草々の夕日かな 飯田蛇笏 山廬集
花麦の秋はあふみとおもへども 山店 芭蕉庵小文庫
苗を植う秋は真赤なかまつかの 林原耒井 蜩
莨愉し秋は火光をひざのはに 飯田蛇笏 雪峡
落ちくる水あふれず秋は歯を竝べ 竹中宏 句集未収録
蜂の巣の穴して眠る秋は来て 増田まさみ
西行忌秋は月見による柱 秋刀魚
赤とんぼさみしき秋は空より来 石原舟月
身にふるゝ秋は露哉小萩かな 松岡青蘿
金魚玉秋はたましひしづかにも 飯田蛇笏 雪峡
鐘鳴れば秋はなやかに傘のうち(東大寺) 『定本石橋秀野句文集』
飛鳥路の秋はしづかに土塀の日 長谷川素逝 暦日
飼猿も秋はことさら山の声 内藤丈草
馬追虫の髪のそよろに来る秋はまなこを閉ぢて想ひ見るべし 長塚節
魂も乳房も秋は腕の中 宇多喜代子(1935-)
かねの声ゆくはるよりも行秋ぞ 加舎白雄
なほ秋ぞ竹のうねりのしなりしな 広瀬惟然
ひらひらと木の葉うごきて秋ぞ立 上島鬼貫
一露の嶋組蓬莱の秋ぞ知る 立独 選集「板東太郎」
去年去移竹移りぬいく秋ぞ 蕪村 秋之部 ■ 古人移竹をおもふ
味噌汁に根深もすこし浮く秋ぞ 原石鼎
塩負うて山人遠く行く秋ぞ 暁台
天広く地ひろく秋もゆく秋ぞ 一茶 ■寛政七年乙卯(三十三歳)
山路行き山路を戻り深秋ぞ 村越化石 山國抄
店頭の本に目利きの要る秋ぞ 高澤良一 鳩信
引越して隣はどこへゆく秋ぞ 会津八一
愛憎の夢も現も行秋ぞ 小畑一天
折る指もけふから秋ぞ百日紅 横井也有 蘿葉集
松に時雨石の霰も幾秋ぞ 会津八一
棟上げの槌音一気に秋ぞ立つ 高澤良一 素抱
潮色も秋ぞ祭の島へ漕ぐ 金尾梅の門 古志の歌
糸車臆病口に幾秋ぞ 清原枴童 枴童句集
蛤のふたみにわかれ行秋ぞ 芭蕉
西行谷見えて川鵜のとぶ秋ぞ 岡井省二
酒飲めば涙ながるるおろかな秋ぞ 山頭火
食足りて寝足りてふかみゆく秋ぞ 杉山 岳陽
鯉も老いこの寺も古り幾秋ぞ 高濱年尾 年尾句集
石炭紀の模型蜻蛉に秋が来て 高澤良一 ももすずめ
城垣の上より呼べる秋の鯉 高澤良一 ももすずめ
カルテの横秋の心臓模型かな 高澤良一 さざなみやつこ
カナディアン・ロッキーの秋見に来たり 高澤良一 ぱらりとせ
秋秋と尾鰭を付けて啼く蝉も 高澤良一 鳩信
角田武夫「金澤百景」水彩風景画
横須賀へ舟賃五十銭の秋 高澤良一 鳩信
心音も至極尋常明日は秋 高澤良一 鳩信
有袋類おばさん秋の日向路へ 高澤良一 鳩信
妻も亦ポシェツト族なれば
店頭の本に目利きの要る秋ぞ 高澤良一 鳩信
荒木宗太郎便乗
日本の秋一見の遠眼鏡 高澤良一 燕音
上野の山人出の秋となりゐたり 高澤良一 燕音
秋はひねもす「鼻峯高慢男」読む 高澤良一 燕音
ランチタイムは秋のシシリア風ピザに 高澤良一 宿好
ピザの秋アイダホスペシャル平らげて 高澤良一 宿好
達者なる足腰秋のあめんぼう 高澤良一 随笑
草津湯畑
湯畑の秋やとてつもなき湯量 高澤良一 随笑
水も入れ替へて金魚の新居の秋 高澤良一 随笑
定年は鰐の退屈地でゆく秋 高澤良一 随笑
酷評に怯まぬ錦秋球子富士 高澤良一 随笑
八幡平
エゾオヤマリンドウ秋を告ぐ峠 高澤良一 寒暑
あららぎの泰然栃の自若の秋 高澤良一 寒暑
おのづから秋となりぬる爪楊枝 高澤良一 素抱
秋そこに横臥屈葬人骨に 高澤良一 素抱
地に降りて人に動じぬ秋の鳶 高澤良一 素抱
無聊とて秋はかまけるもの多し 高澤良一 素抱
小心の秋の雀も餌貰ひに 高澤良一 素抱
雀あぐ秋の小さな土埃 高澤良一 素抱
乗鞍の秋磧より林道より 高澤良一 素抱
上高地
上高地ビジターセンター木々の秋 高澤良一 素抱
上高地帝国ホテル樅の秋 高澤良一 素抱
日比谷公園ガーデニングシヨウ
公園の秋トピアリーコンテスト 高澤良一 素抱
トピアリー秋のイルカのジャンピング 高澤良一 素抱
擦過音身ほとりに殖え秋半ば 高澤良一 素抱
秋色のこれより亘る街並木 高澤良一 石鏡
その殻も薄手に秋のかたつむり 高澤良一 石鏡
沓履きて古刹の秋のあめんばう 高澤良一 石鏡
日に爆ぜるものの音して牧の秋 高澤良一 石鏡
倣蛇笏(誰彼もあらず一天自尊の秋飯田蛇笏)
標本としての脳天自尊の秋 高澤良一 石鏡
正視して絶景秋の人體展 高澤良一 石鏡
筆ささと芋銭のスケッチ秋の生りもの 高澤良一 石鏡
大和川北方風土館
杉玉に喜多方の秋紛れなし 高澤良一 石鏡
商秋の白虎堂とは菓子舗なり 高澤良一 石鏡
秋の遠足車内さながら鶏舎のごと 高澤良一 石鏡
秋も半ばの東京より来て智恵子のそら 高澤良一 石鏡
波間に空瓶ぷかり川崎洋死す秋 高澤良一 石鏡
団体用乗降口ある駅の秋 高澤良一 石鏡
錦繍の秋パノラマの鳩ノ巣荘 高澤良一 石鏡
そこそこの句が出来秋のたんぼ道 高澤良一 暮津

以上


by 575fudemakase | 2015-09-03 00:01 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)


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[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

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いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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