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玉簾の花 の俳句

玉簾の花 の俳句

玉簾の花

厨口から出て玉簾咲く小径 飴山 實
玄関の灯の及びゐる玉すだれ 高澤良一 素抱
玉すだれ裸叩いてゐる男 高澤良一 素抱
玉すだれ政権どちらに転ばうと 高澤良一 暮津
玉すだれ殖え来ぬ住宅団地なる 二神節子 『砥部』
玉すだれなかなか夏が逝かぬなり 高澤良一 燕音
家一つ毀たる跡に玉すだれ 高澤良一 寒暑
ちらほらと投票の道玉すだれ 高澤良一 暮津

玉簾の花 補遺

逍遥いいえ 老守衛の首 玉すだれ 伊丹三樹彦
途は主へ聖母へつづく 玉すだれ 伊丹三樹彦
厨口から出て玉簾咲く小径 飴山實 句集外


by 575fudemakase | 2017-08-28 17:21 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

花火 拙句

花火 拙句

あがりたる初手の花火の高さかな 高澤良一 ぱらりとせ
うしろより声あり花火の出来を云ふ 高澤良一 暮津
おとぼけの花火も交じる前半部 高澤良一 寒暑
クレヨン画原色花火描きなぐり 高澤良一 寒暑
しけた音残して揚がる昼花火 高澤良一 暮津
シンシナティキッド連発花火かな 高澤良一 随笑
ストトンとさきがけ花火揚がりけり 高澤良一 ぱらりとせ
どかどんと犬へこまする大花火 高澤良一 随笑
どぶ板通りねずみ花火が駈け抜けて 高澤良一 ねずみのこまくら
どんじりに控えて音も凄花火 高澤良一 寒暑
どんぷすと岬辺りの遠花火 高澤良一 暮津
ナトリューム色の花火に顔染めて 高澤良一 ももすずめ
にっぽんの芯円菊形花火かな 高澤良一 寒暑
パリパリと揚がりズドンと花火了ふ 高澤良一 ももすずめ
ポカポカと追打かけて昼花火 高澤良一 ぱらりとせ
ぽんぽんとけふの花火の予告あり 高澤良一 素抱
みちのくの空攀ず花火鼠鳴き 高澤良一 寒暑
愛敬を振りまき上る花火あり 高澤良一 暮津
意気込みも新たに花火揚がりけり 高澤良一 さざなみやつこ
一工夫ありそな花火揚がりけり 高澤良一 ももすずめ
横須賀の空鈍く打ち昼花火 高澤良一 暮津
音に凝る花火もありてどよもせる 高澤良一 さざなみやつこ
花火セット取り合ふ喧嘩に負けし汝(妹) 高澤良一 暮津
花火にも音の味付ありにけり 高澤良一 素抱
花火にも前座・真打ちありにけり 高澤良一 宿好
花火の煙ゆらゆらかつおのゑぼしめく 高澤良一 随笑
花火の下潮淙々と流れをり 高澤良一 素抱
花火の傘ぐらりと天のシャンデリア 高澤良一 寒暑
花火の傘爛れかつをのえぼしかな 高澤良一 燕音
花火音立て込む家に谺して 高澤良一 宿好
花火果つその大空のみみず腫れ 高澤良一 暮津
花火果つ五體叩きて砂払ふ 高澤良一 暮津
花火果て闇抱え込む雄物川 高澤良一 燕音
花火見る旅も山下清めく 高澤良一 宿好
花火尺玉東京湾を凹まする 高澤良一 随笑
花火野郎青嶺の肝を抜き来しと 高澤良一 ねずみのこまくら
花火揚ぐ入江巡れりモノレール 高澤良一 素抱
帰るさの横手の花火蔵の間 高澤良一 素抱
逆さまのぺこちゃん花火失笑買ふ 高澤良一 素抱
協賛の某花火あがりけり 高澤良一 ぱらりとせ
筋ばって花火のあとの白煙 高澤良一 素抱
蛍光の腕輪して子の花火待つ 高澤良一 素抱
軽きどよめき麦藁帽の花火なり 高澤良一 随笑
今一つ高さの欲しき花火とも 高澤良一 素抱
耳たぶを押さえて花火怖がる子 高澤良一 素抱
手の内をあかすが如く花火爆ぜ 高澤良一 さざなみやつこ
手花火に興じゐしこゑ引っ込みぬ 高澤良一 ぱらりとせ
手花火の煙くる部屋にシーツ敷く 高澤良一 ももすずめ
手花火の音の奇天烈奇天烈と 高澤良一 鳩信
手花火の玉より大き焼夷弾 高澤良一 寒暑
首根っこ打てる花火の大谺 高澤良一 素抱
終の花火らしき高さにあがりけり 高澤良一 ももすずめ
昇りつむ花火の青息吐息かな 高澤良一 宿好
消ゆ花火開く花火に照らされて 高澤良一 さざなみやつこ
新世界求めてあがる花火とも 高澤良一 暮津
世直しのつもりの花火揚がりけり 高澤良一 寒暑
川幅のそれと知らるる花火舟 高澤良一 ぱらりとせ
打止めの花火はこれかこの後か 高澤良一 ももすずめ
大曲平日の日の昼花火 高澤良一 素抱
大玉となりて間合をとる花火 高澤良一 ももすずめ
大玉の花火に見惚る団扇かな 高澤良一 素抱
炭酸のはじけるやうに閉ず花火 高澤良一 燕音
中華風彩色花火あがりけり 高澤良一 ぱらりとせ
長たらしき呼び名の花火揚がりけり 高澤良一 石鏡
長岡の花火帰りの道真直 高澤良一 ぱらりとせ
転調の花火どどどと揚がりけり 高澤良一 素抱
筒積まれ花火船めく穴子船 高澤良一 石鏡
同床異夢冬の花火を倶に見て 高澤良一 素抱
匂ふ海これより花火一萬発 高澤良一 暮津
泊船のデッキの人も花火見る 高澤良一 随笑
漂ふて花火の煙の大海月 高澤良一 鳩信
浜明けて真砂驚く花火殻 高澤良一 素抱
不景気を一蹴せんと揚花火 高澤良一 鳩信
腹に滲むいけいけどんどん花火かな 高澤良一 随笑
目と鼻とおまけに口もある花火 高澤良一 暮津
夜間飛行たかだか花火の合間ゆく 高澤良一 暮津
揚花火うち抜きし空締まりけり 高澤良一 暮津
揚花火その名隅田の恋ごころ 高澤良一 素抱
揚花火どんと武甲山の肩を突き 高澤良一 宿好
揚花火ポンポン景気悪しき世に 高澤良一 寒暑
揚花火粋やシャンパングラス風 高澤良一 寒暑
揚花火探り当てたる空の芯 高澤良一 暮津
揚花火表六玉もあがりけり 高澤良一 ぱらりとせ
揚花火連打ドンプスドンプスと 高澤良一 随笑

by 575fudemakase | 2017-08-27 10:13 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

ビヤガーデン の俳句

ビヤガーデン の俳句

ビヤガーデン

矢の如くビヤガーデンヘ昇降機 後藤比奈夫 初心
矢のごとくビヤガーテンへ昇降機 後藤比奈夫(1917-)
満席のビヤガーデンに誘餓灯 吉村令子
北陸の星青すぎるビヤガーデン 秋沢 猛
傍らに逢ふ人の椅子ビアホール 中林勉
病床の子規見たきものビヤホール 今泉貞鳳
病む夫に満艦飾のビヤガーデン 横山房子
美しやビヤガーデンに拭ふ口 依田明倫
逃げし風船天井歩くビヤホール 右城暮石
樽の上花菖蒲活けビヤホール 今泉貞鳳
滝風に揺れゐる旗やビヤホール 五十嵐播水 播水句集
大川の著るき西日のビヤホール 松村蒼石「露」
太陽と麦と描けりビヤホール 行方克己 知音
増えてゆく漁り火の数ビヤガーデン 秋沢 猛
操舵輪壁に懸けあるビアホール 高澤良一 寒暑
心頭を滅却できずビアホール 有吉堅二
色街の灯り初めたるビヤホール 芝田教子
昇降機一基はビヤガーデンのため 池田秀水
山よりまつすぐビアガーデンにリュック下す 七里みさを
屋上に稲荷の社ビアガーデン 可知あきを
遠い灯がすりよっているビヤガーデン 平田よしこ
もうそんな頃かや屋上ビアガーデン 高澤良一 素抱
ブリューゲルのビア樽男ビール酌む 高澤良一 燕音
ビヤホール麦藁帽はどこに置くか 藤田湘子 てんてん
ビヤホール背後に人の増えきたり 八木林之助
ビヤホール出づれば月の黄なるあり 岸風三楼 往来
ビヤホール椅子の背中をぶつけ合ひ 深見けん二
ビヤホールに入りて明るき疲れかな 五十嵐播水 播水句集
ビヤホールに一人拍手し誰も和せず 右城暮石 声と声
ビヤホールかならずハワイアンミュージック 今井杏太郎
ビヤガーデン話題貧しき男等よ 吉田耕史
ビヤガーデン俳論の辺は小暗くて 久保田 博
ビヤガーデン星合の夜に灯の鎖 百合山羽公 寒雁
ビヤガーデン照明青き城望む 佐野まもる
ビヤガーデン妻のよろこぶ何もなし 右城暮石 上下
ビヤガーデン最も暗き席を占む 山口誓子
ビヤガーデン隅の暗きにホース置く 岸風三樓
ビヤガーデン去年と同じ灯の風情 百合山羽公 寒雁
ビヤガーデン遠稲妻を見にのぼる 百合山羽公 寒雁
ビヤガーデン雨の匂ひの木椅子引く 高澤良一 素抱
ビアホールホルンを吹いて大男 関森勝夫
ビアジョッキ目許さみしといはれけり 内田美紗 浦島草
ビアガーデン風やはらかに語り出す 大西岩夫
ビアガーデン灯る病室の真向かいに 横山房子
ビアガーデン大言壮語飛び交うて 蔵澄 茂
ビアガーデンボーイジョッキを幾つ持つ 大橋敦子
ビアガーデンに夕日まだある誕生日 内田美紗
ビアガーデンジヨツキ女の手に重き 大橋敦子
ビアガーデングラスに透けし空の彩 平井千代子
ハーメルンの笛吹きとゐるビヤホール 仙田洋子 橋のあなたに
さまよへる湖に似てビヤホール 櫂未知子
これよりはビヤガーデンでする会話 稲畑廣太郎
アカシヤの花の舗道のビヤホール 遠藤星村

ビヤガーデン 補遺

かりそめのビヤホールなり灯取虫 日野草城
ビヤガーデンのみに運転エレベーター 右城暮石 虻峠
ビヤガーデンひとのジョッキの泡曇り 山口誓子
ビヤガーデン一せいに無くなりゐたり 右城暮石 句集外 昭和三十五年
ビヤガーデン遠稲妻を見にのぼる 百合山羽公 寒雁
ビヤガーデン王冠星になりそこね 鷹羽狩行
ビヤガーデン去年と同じ灯の風情 百合山羽公 寒雁
ビヤガーデン更くる天より燈を卸す 山口誓子
ビヤガーデン硬直の気球の綱 山口誓子
ビヤガーデン黒ボンネット夜も冠る 山口誓子
ビヤガーデン最も暗き席を占む 山口誓子
ビヤガーデン妻のよろこぶ何もなし 右城暮石 上下
ビヤガーデン死の病院をそこに見て 山口誓子
ビヤガーデン乗せて港をめぐる船 後藤比奈夫
ビヤガーデン星合の夜に灯の鎖 百合山羽公 寒雁
ビヤガーデン入れてもらつて開始待つ 右城暮石 一芸
ビヤガーデン文字と燈の文字掲げ替ふ 山口誓子
ビヤホールに一人拍手し誰も和せず 右城暮石 声と声
ビヤホール椅子の背中をぶつけ合ひ 深見けん二
ビヤホール客なしテレビ砲音籠め 岸田稚魚 負け犬
ビヤホール四十の体躯椅子に載せ 草間時彦 中年
ビヤホール出て雑踏の月夜なる 村山故郷
ビヤホール女に氷菓ただ一盞 石田波郷
ビヤホール麦藁帽はどこに置くか 藤田湘子 てんてん
みな紅き尾燈去りゆくビヤガーデン 山口誓子
下降せし気球ぶよぶよビヤガーデン 山口誓子
何時建ちしビル屋上のビヤガーデン 右城暮石 句集外 昭和三十五年
給仕娘(フロイライン)恋の使もビヤガルテン 山口青邨
君達の頭脳硬直ビヤホール 藤田湘子 神楽
前掛はバイトの具足ビヤホール 百合山羽公 樂土以後
滞空の文字ビヤガーデンより読めず 山口誓子
大阪は西の虚しさビヤガーデン 山口誓子
探す顔我に向きゐしビヤガーデン 右城暮石 句集外 昭和三十四年
逃げし風船天井歩くビヤホール 右城暮石 声と声
暮色夜色ビヤガーデンの椅子にゐて 山口誓子
忘年会ランチヨンはビアホールにて 石塚友二 磊[カイ]集
矢の如くビヤガーデンヘ昇降機 後藤比奈夫
薬町薬の靄にビヤガーデン 山口誓子

以上

by 575fudemakase | 2017-08-27 08:22 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

朝鮮朝顔 の俳句

朝鮮朝顔 の俳句

朝鮮朝顔

アトリエを包む潮騒花ダチュラ 高澤良一 宿好
エンゼルトランペット教会(チャーチ)の庭に垂れ 高澤良一 石鏡
ダチュラ見て俳句作りの面白さ 高澤良一 鳩信
ダチュラ咲き当地至つて温暖な 高澤良一 さざなみやつこ
ダチュラ咲く水底に似て島の闇 黒田杏子
ぶらさがり咲きが得手なり花ダチュラ 高澤良一 宿好
むつとして妻良の明け方ダチュラ咲く 高澤良一 ももすずめ
印度ムード歌謡真白きダチュラ咲く 如月真菜
渦潮に西日照りこむ曼荼羅華 稲垣きくの 牡 丹
花ダチユラそむきし人の耳のうら 小倉斑女(銀化)
花ダチュラだらんとぴちょぴちょ雨の路地 高澤良一 暮津
花ダチュラ押さばぱふぱふ鳴るならむ 高澤良一 ぱらりとせ
花ダチユラ妻の言葉に毒すこし 橋本榮治 麦生
花ダチュラ女が水を運びをり 奥名春江
外科医院ダチユラの花を匂はせり 詫摩まつ子 『卒寿』
月の香のダチュラを積みて島を去り 黒田杏子 花下草上
月光にダチュラ怪人佇つごとし 高澤良一 暮津
勾玉や摩訶曼陀羅華曼珠沙華 鈴木六林男 悪霊
港町ダチユラに荒き夕の雨 柴田美枝子(かびれ)
荒行の朝鮮朝顔昏れしまま 佐々木六戈 百韻反故 初學
咲き揃ふダチュラ百管農繁期 張替総史
終末の喇叭を吹けり花ダチュラ 高澤良一 暮津
曙いろダチュラ大きく開けゴマ 高澤良一 寒暑
淡紅の眠気もよほす花ダチュラ 高澤良一 素抱
仲違ひダチュラがそっぽ向いてゐる 高澤良一 素抱
朝鮮朝顔首長くして咲くを待つ 高澤良一 寒暑
朝鮮朝顔朝から上気してゐたり 高澤良一 寒暑
満開のダチユラの花に靴かくす 岩淵喜代子 硝子の仲間
夕立の叩き甲斐あるダチュラの葉 高澤良一 暮津
曼陀羅華一つ吹きたや二度吸ふて 攝津幸彦 未刊句集
曼陀羅華咲けば豆州の妻良おもふ 高澤良一 素抱
曼陀羅華大きな淵と供にあり 攝津幸彦 鹿々集

朝鮮朝顔 補遺

シリウスや十一月の曼陀羅華 岡井省二 大日
シリウスを抱かむとして曼陀羅華 岡井省二 大日
夏草のダチュラ林と謂ふべかり 阿波野青畝
月讀の月の水際の曼荼羅華 岡井省二 鯛の鯛
見まはすに身は曼陀羅華叢なりし 岡井省二 鯛の鯛
古丹波に挿す紫の朝鮮朝顔 細見綾子
風呂敷を噛んでをりしが曼陀羅華 岡井省二 大日

以上

by 575fudemakase | 2017-08-27 08:20 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

奉灯会 の俳句

奉灯会 の俳句

奉灯会

たまゆらの一燈つきし万燈会 細見綾子 黄 炎
をちこちの鹿の夜遊び万燈会 三島富久恵
闇に浮く杉の直幹万燈会 安達波外
一山の涼を呼び寄せ万灯会 佐野すすむ
一灯にわが名があるよ万灯会 丸山いわを
外套の肩が擦れあふ万灯会 林 徹
幾度もつまづく木の根万灯会 細見綾子
継ぎし火の冴えて灯の穂や万燈会 加藤知世子 花 季
五観偈を唱ふ斎の座万灯会 高木節子
紅蜀葵宵弘法も近づきて 臼田亜浪 旅人
子の画きし一灯探す万灯会 吉田早苗
鹿のゐる闇濃かりけり万灯会 野上智恵子
生くる力もて万灯会の闇に立つ 細見綾子
生ける者さざめき通る万灯会 富田かづを
戦中は闇深かりし万灯会 鈴木けんじ
大沢へかけて露天や奉灯会 山中納士
竹林の裾に闇湧き万燈会 阪本謙二
凍て雲に笙放つなり万燈会 角川春樹 夢殿
東塔に十日の月や万燈会 上村末子
灯の海に立ちゐて涼し万灯会 工藤葉子
背の真闇前の灯の波万灯会 倉林敏子
母の手に一人は眠い子万灯会 篠田文子
万灯のゆらぐ結界宵弘法 林 香
万灯会この一燈で全て点く 秋山暮谷
万灯会闇にふるまふ酒にほふ 古川京子
万灯会何時も必ず誰かに会ふ 右城暮石 上下
万灯会果て一山の虫の闇 佐藤藍
万燈会銀河明りをゆくごとく 野澤節子
万燈会人の暗さはかたまつて 津田清子
万燈会杉が匂へりうしろより 宇野隆雄
無縁なる人と袖ふれ万燈会 細見綾子 黄 炎
旅びとに雨のはげしき万燈会 太田穂酔

奉灯会 補遺

たまゆらの一燈つきし万燈会 細見綾子
闇の中濃き闇は溝万燈会 右城暮石 虻峠
幾度もつまづく木の根万燈会 細見綾子
宮柱丹を火のいろに万燈会 大野林火 方円集 昭和五十三年
京底冷え奈良は粉雪の万燈会 細見綾子
紅蜀葵宵弘法も近づきて 臼田亜浪 旅人 抄
大榾の燃えきりて落つ万灯会 右城暮石 句集外 昭和四十五年
丹の宮をみなもとにして万燈会 大野林火 方円集 昭和五十三年
灯亦身亦身節分万灯会 岡井省二 鯛の鯛
燈の消ゆる頃にも見たし万燈会 右城暮石 虻峠
万灯会何時も必ず誰かに会ふ 右城暮石 上下
万灯会銀河明りをゆくごとく 野澤節子 存身
万燈会廻套利玄とすれちがふ 橋本多佳子
万燈会行き交うて闇かぐはしく 大野林火 方円集 昭和五十三年
無縁なる人と袖ふれ万燈会 細見綾子
話しゆく体温の息万燈会 橋本多佳子

以上

by 575fudemakase | 2017-08-22 17:14 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

後評(2017・8)

後評(2017・8)


ねずみのこまくら句会


青鷺の黙考のふり魚捉ふ

(この一句 何処かユーモラス。そこが買いか?)


湧水に弾き出されし水馬

(例えば、柿田川のあの富士湧水などの例を見れば、湧水の弾力性は半端じゃない。正に弾き出されしなのである)


かがり火の消えていくまで盆踊

(かって秋田、西馬音内の盆踊を最後の最後まで見尽くした。踊上手は夜十一時頃から登場して雁化踊等を舞った。夜の更けるに連れ、秋田音頭も卑猥な代え唄に変じた。篝火がガクッと崩れて踊は終焉を迎える)


朝曇り鎌の切れ味悪からず

(滞り無き表現に、言うべきことは全て言ったとでも申しているような作品)


蜩やわたくし雨の過ぎし杜

(かって小生は八丈島で次句を得た。


八丈島で夕立のことを斯く言えば

明日葉を嬉しがらせる所降


小生の「所降」もこの句の「私雨」も同じ処を狙ったもの。

因みに辞書に依ると、「私雨」は局地的に降る雨のことで、箱根、比叡、丹波などのものが有名とある )


朝の試歩蝉の飛び交ふ並木道

(夏も中、後半を過ぎると蝉もバタバタと乱れ飛ぶ。そんな状況か?)


木偶となりぬ夏風邪に声盗られたる

(「木偶となりぬ」と觀念したところに、軽い納得の念を覚える)


宍道湖の締めは土用の蜆かな

(「宍道湖の締め」は「宍道湖の旅の締め」のことなのだろう。言い足らずなのか?これでオーケーなのか読者に聞いて見たいところである)


水音の途切れぬ鬼無里水芭蕉

(水芭蕉の咲くところは、雪解水なり水量が豊富なところ。「水音の途切れぬ鬼無里」とは言い得てる)


熊除け鈴響ける池の井守かな

(人気の無き山湖の静寂を想う)


白粉の花の乱るる遊女屋(のすかいや)

(正に、造った作と思うが、映画のように情念の世界が伝わって来る面も否めない)


羅や双の乳房を緊縛し

(男故女の心中は察しかねるが、字面通りに伝わって来るもの有りと判断した)


朝顔市のポスターのはや大江戸線

(「大江戸線」から江戸を引き出し朝顔市に結び付けた。ここら辺が手柄)


かの猫も消えてしまひし夏の果て

(些末なものに夏果の風情を詠みとっている)


竹の花見たさに藪に踏み入りぬ

ひつそりと咲くがよろしき竹の花

(両句 何処か無手勝流。そこに好感を持った)


青葦に涼(そよ)いでゐたる鳥の声

(漢和辞典を繰ったが、「涼」をそよぐと読ませる根拠は無いと判断するが、作者の意図を確認したいところ…)


紫陽花のてんまりてまり揺れにけり

(童謡 鞠と殿様を下敷きにした洒落た一句。リズミカルな音調を一句に取り込んだ)


風鈴の鳴る時赤子泣き止みぬ

(ひょっとした発見。たわいもないと言えばたわいもないが…)


五箇山の空うめつくす赤とんぼ

(群舞する赤蜻蛉。空埋め尽くすは常識の範疇だが、固有名詞「五箇山」でこの句は活きたのではないか?)


地獄絵に鬼灯燃ゆる珍皇寺

(目下、小生はFacebookに嵌っている。写真家の写す京都の一葉一葉に頷いている。今夏は珍皇寺も度々登場した。どの写真家も盆花のほおづきを冒頭に持って来ていた。)


山頂に己れちっぽけ星飛べり

(五七の達観したような物言いがユニーク。俳句は尋常では面白くない。尋常ならざることを申してナンボのものである…。と言ってやりすぎるとこれ亦駄目である)


大西瓜まずは佛に褒めてねと

(誰に言い聞かしているのか? 己れ自身にか? それとも孫達にか?亡き夫にか?)


田畑を守りて一人の盂蘭盆会

(一人に…の措辞に、安らぎを覚えるのか?寂寞を思うのか?それとも やれやれを思うのか?)


稲の花ぐっすり眠りし朝かな

(「稲の花」と「ぐっすり眠る」の間にはどういう関連があるのか? 「ぐっすり眠る」の古語に うまい(熟寝)がある。どうやらこの裡の一漢字「熟」にその原因があるようである)


流鏑馬道けふは涼風通ふ道

(流鏑馬から一日間を置いた叙法に、この句の安らかさの原因があろう)


大本山がらんだうなり百日紅

(大本山は本来 がらんどう。大本山は知識の宝庫。「知識の宝庫」なんてそもそもガランドウ也と禅坊主宜しく言いたい)


峯雲や父の掌の添ふ逆上がり

(きめ細かな表現に賛同した)


泥鰌鍋尻ポケットに下足札

(ザックバランな泥鰌屋の雰囲気をザックバランに詠んだ)


たよりなや甘さ控えし土用餅

(元来、土用餅は暑に打ち勝つ為に考案されたものであろう。その為には味もシッカリしていなければならない。それなのに…と言った処なのであろう)


漱石の墓所に金えのころと猫

(何故 金えのころなのか? 私は漱石全集の装丁デザインのことをちらっと想ったりした)


母許や西瓜の躍る自噴井戸

(説明の要無しであろう)


母の紅つけてうれしや祭の子

(これは人様の子を詠んだのではない。自己の懐古詠じゃあないのか? それの方が味わい深い)


雲の峰山の向かうは沸騰中

(訳は判らんが、「沸騰中」の措辞は気になる。それが読者を引っ張って離さない)


八歳の虚空八月十五日

(戦時のある時点に一気呵成に遡っていった作者に共感した)


以上


by 575fudemakase | 2017-08-20 18:37 | ねずみのこまくら句会 | Trackback | Comments(0)

2017年 8月 ねずみのこまくら句会の諸句

2017年 8月 ねずみのこまくら句会の諸句



予選でザッと句を抜いてみたら、下記の如くとなった。

句の前の番号は、選句稿の通し番号


1鉾宿の月讀命「つきよみ」祀る低天井

3野馬追の檄阿武隈山に谺せり

8地平まで北の大地の蕎麦の花

14その中に美しきくれなゐ夏落葉

15拭き艶の箱階段や西鶴忌

16烏瓜の花背戸垣を好みけり

18羅や双の乳房を緊縛し

21黒松の篠突く雨に扇置く

22野萱草佐渡にあまたの能舞台

23宍道湖の締めは土用の蜆かな

27鮎美し古代のままや黄みを帯ぶ

29行く夏の川面に遊ぶ赤き毬

31朝の試歩蝉の飛び交ふ並木道

33水音の途切れぬ鬼無里水芭蕉

38大文字火勢余りて跳ねあがり

39塾の少女雛罌粟ほどの欠伸して

42夏雲立つ丈七丈の鰹塚

43かの猫も消えてしまひし夏の果て

46漱石の墓所に金えのころと猫

48新涼や句集の表紙決まりたる

49舟小屋へ舟曳く漁師朝曇

52秋暑し象舎にのぞく大き尻

55踊り子の紙の雪追ふ羽根扇

56十一や富士山頂より暁けぬ

57新豆腐富士の湧水無尽蔵

62墓灼けて骨の仏も暑からむ

63青鷺の黙考のふり魚捉ふ

68原爆忌採血室のひとひとひと

69八歳の虚空八月十五日

70五箇山の空うめつくす赤とんぼ

72熊除け鈴響ける池の井守かな

73明け易し漁火の陣崩れ初む

74地獄絵に鬼灯燃ゆる珍皇寺

78鉄線を供花としまみゆ師の墓前

82鰡あまた沖飛び熊野灘ひろぐ

83D51の煙朦朦大夏野

85母許や西瓜の躍る自噴井戸

89夏座敷真ん中に犬四肢伸ばし

91エアコンを持ちきし人に扇風機

93暗闇にわれを窺うごきかぶり

95山頂に己れちっぽけ星飛べり

96片蔭を欲る電柱の影さへも

97風鈴の鳴る時赤子泣き止みぬ

98木偶となりぬ夏風邪に声盗られたる

99田畑を守りて一人の盂蘭盆会

100大本山がらんだうなり百日紅

103蓮見舟たゆたふ池や生絹波

107たよりなや甘さ控えし土用餅

108瑠璃鳴くや一人っきりの山の畑

112青芝に沈む踏み石夕まぐれ

114夕河鹿湯ぼてり覚ます川原風

115朝顔市のポスターのはや大江戸線

116泥鰌鍋尻ポケットに下足札

120俎板の鰯は行儀良く並び

124白粉の花の乱るる遊女屋(のすかいや)

128朝曇り鎌の切れ味悪からず

129かがり火の消えていくまで盆踊

130峯雲や父の掌の添ふ逆上がり

131雲の峰山の向かうは沸騰中

136百鬼夜行のありしやとこの梅雨出水

144ひつそりと咲くがよろしき竹の花

147海の日のとても小さなコンサート

149背を向けて夕餉食べをり夜店番

150小躍りして寄り来る海月盥舟

152英会話のテープリピイト生身魂

157稲の花ぐっすり眠りし朝かな

158炎昼の朽ち杭現るる船溜り

159水中花まだ恋知らぬ長睫毛

160竹の花見たさに藪に踏み入りぬ

163大西瓜まずは佛に褒めてねと

168流鏑馬道けふは涼風通ふ道

169母の紅つけてうれしや祭の子

170秋刀魚焼く匂ひの届く奥座敷

174蜩やわたくし雨の過ぎし杜

175雲海を碧き小島や槍・穂高

176湧水に弾き出されし水馬

177接ぎ穂なき言の葉竹の皮散れり

180青葦に涼(そよ)いでゐたる鳥の声


以上






by 575fudemakase | 2017-08-18 05:18 | ねずみのこまくら句会 | Trackback | Comments(0)

蝉時雨 の俳句

蝉時雨 の俳句

蝉時雨

「実入れむ実入れむ」田を重くする蝉時雨 和湖長六
あによめの日傘を借りてせみしぐれ 筑紫磐井 婆伽梵
いちにちの省略の刻蝉時雨 三木照恵
いづかたへ父は逝きしか蝉時雨 星野昌彦
うれしさはかなしみとなり蝉時雨 阿部みどり女
オルゴールの円盤の穴蝉時雨 高澤良一 宿好
さくと縄切る全山の蝉時雨 菅原鬨也
ジーパンの張りつく腿や蝉時雨 小檜山繁子
せみしぐれ身体のなかの対の骨 大西泰世
どこまでも蝉時雨とは包まれて 稲畑汀子 汀子第二句集
トンネルを出てしろがねの蝉時雨 五島高資
みほとけのみち渾身の蝉時雨 香下寿外
もてあまし居る長電話蝉時雨 樋口明子
わがために待つこと一つ蝉時雨 龍男
阿闍梨来てしたゝりはげし蝉時雨 筑紫磐井 婆伽梵
安達太良へ赫と日の差す蝉時雨 鈴木萩月
一つ~なつかしき名や蝉時雨 碧雲居句集 大谷碧雲居
一と回り森を大きく蝉時雨 浜口秀村
一樹なき火の山樹海は蝉時雨 福田蓼汀 秋風挽歌
一切の外側の蝉時雨なり 奥坂まや
隠国の長谷一山の蝉時雨 亀井新一
雨止むや欅並木に蝉時雨 羽根井芳夫
永遠のいまどの辺り蝉時雨 津沢マサ子
猿橋の墜ちんばかりや蝉時雨 肥田埜恵子
音符なく調子揃へる蝉時雨 吉留洋子
火の朱鳥石の茅舎や蝉時雨 中杉隆世
過去未来まつすぐに降る蝉時雨 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
我影のこの短かさよ蝉時雨 稲垣恵子
絵馬堂の戦国絵図や蝉時雨 今井誠人「亀山」
階より蝉時雨して光堂 市野沢弘子
笠とるや杜の下道蝉時雨 蝉 正岡子規
樫太る五十六生家の蝉時雨 関根和子
茅蜩が一つそのほかたゞ蝉時雨 北原白秋
干草を踏む蹠ざはり蝉時雨 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
換骨奪胎蝉時雨また蝉時雨 伊丹さち子
汗を吹く茶屋の松風蝉時雨 汗 正岡子規
観念の念にもあらず蝉時雨 川崎展宏
還ります人に故国の蝉時雨 阿部みどり女
岩山の岩を揺すりて蝉時雨 小林たけし
幾枚のタオルをたたむ蝉時雨 対馬康子 吾亦紅
給水船待つ全島の蝉時雨 右城暮石
倶利伽羅の深みどり照り蝉時雨 文挟夫佐恵 黄 瀬
鶏買が影忘れゆく蝉時雨 福田甲子雄
見はるかす我家すゞしや蝉時雨 佐野青陽人 天の川
現世を太く短かく蝉時雨 井上智香代
己が出し穴を満たせり蝉時雨 町垣鳴海
故郷の山深くして蝉時雨 山本仟一
荒御霊に大樹が降らす蝉時雨 林翔 和紙
行水の老骨さらす蝉時雨 米澤吾亦紅
黒衣着てどこか破調の蝉時雨 櫂未知子 貴族
左内の書勇渾淋漓蝉時雨 伊藤いと子
山は即ち水と思へば蝉時雨 高柳重信
山酔いの未通女(おとめ)を襲う蝉時雨 仁平勝 東京物語
死せば死の舌端として蝉時雨 小檜山繁子
獅子舞の道中笛に和す蝉時雨 町田しげき
樹のごとくうしろに父や蝉時雨 鈴木鷹夫 千年
象山神社絵馬るいるいと蝉時雨 片山桃弓
寝転がる我が身の弱さ蝉時雨 宇佐美次男
心頭を滅却しても蝉時雨 野中亮介
森はまだ濡れてをりけり蝉時雨 三木智子
森抜けしこと蝉時雨抜けてをり 稲畑汀子
震災忌上野の山は蝉時雨 降幡加代子
人力の森に這入るや蝉時雨 蝉時雨 正岡子規
水の景ばかりを歩き蝉時雨 水田むつみ
水中にナイフとフォーク蝉時雨 折井紀衣
瑞鳳殿感仙殿と蝉時雨 島崎五穂 『さざれ石』
世を捨てしごとき一舟蝉時雨 古賀まり子
清水の舞台ゆるがし蝉時雨 山内なつみ
生きること精一杯の蝉時雨 亀井歌子
生き急ぐとても一生蝉時雨 小野あゆみ
聖壇の光陰へだつ蝉時雨 橋本榮治
石階にましろき日射し蝉時雨 原田青児
石段に日ざし灼きつく蝉時雨 西岡正保
蝉時雨その中に森ありにけり 塙告冬
蝉時雨たましひは樹を離れゆく 河野多希女 月沙漠
蝉時雨だまらっしゃいと夕立来 高澤良一 鳩信
蝉時雨ちちはは恋し死ぬるまで 中村昭子
蝉時雨つく~法師きこえそめぬ 定本芝不器男句集
蝉時雨つくつく法師きこえそめぬ 芝不器男
蝉時雨ときにはうねることのあり 高澤良一 暮津
蝉時雨まひるの山は荒々し 阿部みどり女
蝉時雨もはや戦前かもしれぬ 摂津幸彦
蝉時雨やぼ用一つ出来にけり 高澤良一 暮津
蝉時雨より深きもの人の息 原裕
蝉時雨リフトの足を漕ぎ急ぐ 田宮真智子
蝉時雨わたし消されてなるものか 伊関葉子
蝉時雨一空間を漬すなり 折井紀衣
蝉時雨一人の常着えらび着て 北原志満子
蝉時雨影の小さき己が部屋 山本けんゐち
蝉時雨黄昏早き恵日寺 木伏芙美子
蝉時雨開腹手術待つ妻に 高橋六一
蝉時雨街幅越え来ぺんやすむ 原田種茅 径
蝉時雨角まがりても蝉しぐれ 阿波澄子
蝉時雨岩屋それぞれ仏さま 杉本寛
蝉時雨急に近づき接岸す 西村和子 夏帽子
蝉時雨供華の花束砂にさし 阿部みどり女
蝉時雨仰むく口や木の雫 蝉時雨 正岡子規
蝉時雨空の真ん中穴あいて 秋元大吉郎
蝉時雨五所塚深き翳落し 藤科美佐子
蝉時雨壕口に声あつまりぬ 玉城一香
蝉時雨子は担送車に追ひつけず 石橋秀野
蝉時雨止みて遠くの蝉時雨 山下美典
蝉時雨寺境を過ぐる余り風 大谷句佛 我は我
蝉時雨女のうしろ行くほかなし 萩原麦草 麦嵐
蝉時雨唱和してゐるひいひいふう 室石由紀子
蝉時雨少しづつ蝉死に替はり 花尻 万博
蝉時雨城山の風連れてくる 八木ケイ
蝉時雨人は勤まることをして 高澤良一 暮津
蝉時雨石鼎旧居その中に 倉田敏夫
蝉時雨蝉の鼓膜は青からむ 磯貝碧蹄館 握手
蝉時雨蝉の来ぬ樹に蝉は来ず 永井龍男
蝉時雨中に鳴きやむひとつかな 加藤楸邨
蝉時雨突然訃報の駅にいる 掛橋初子
蝉時雨日斑(まだら)あびて掃き移る 久女
蝉時雨晩年押しつけられてをり 高澤良一 暮津
蝉時雨庇の下を通ひ路に 林火
蝉時雨楓一枝もみぢして 佐野青陽人 天の川
蝉時雨風の竹にもとりついて 花蓑
蝉時雨墓の伍長は同い齢 森 季高
蝉時雨墓石も古りし田原坂 有働祐子
蝉時雨棒のごとくに人眠り 清崎敏郎
蝉時雨木の葉の雫踊らせて 伊藤恵津子
蝉時雨木々ふるはせて光堂 平畑静塔
蝉時雨流人の島にゐるごとく 丸山ゆきこ(阿蘇)
蝉時雨冷たい水の湧く程に 湖中「発句題叢」
蝉時雨倚れば眠たき大樹かな 比叡 野村泊月
戦災を知る街路樹や蝉時雨 丸山文子
栓締むるごとく止みたる蝉時雨 辰巳奈優美
全山のひとつとなりし蝉時雨 原田青児
草に座し五体満足蝉時雨 田中大夢
足は百姓顔は學生蝉時雨 津田清子
太陽系一惑星の蝉時雨 村松紅花
退屈な鉛筆削り蝉時雨 増田河郎子
大伽藍がらんどうなり蝉時雨 北見さとる
滝音の息づきのひまや蝉時雨 定本芝不器男句集
瀧音の息づきのひまや蝉時雨 芝不器男
池の上にも及び来し蝉時雨 大橋はじめ
庭にもう始まつてゐる蝉時雨 井口雪嶺
庭下駄に柾目のとほり蝉時雨 片山由美子
島へ一歩踏むくらくらと蝉時雨 鈴木鷹夫 大津絵
日の高き巌流島や蝉時雨 高萩弘道
乳呑子の泣く意志強し蝉時雨 藤松遊子
芭蕉とて異端の系譜蝉時雨 久保不律
彼の日また彼のときもまた蝉時雨 伊藤敬子
被爆せし大樹が放つ蝉時雨 朝倉和江
浮嶋やうごきながらの蝉時雨 一茶 ■享和三年癸亥(四十一歳)
柄杓ゆらと水にしづみぬ蝉時雨 金尾梅の門 古志の歌
墓石より温みつたはり蝉時雨 阿部みどり女
母の忌の母を語らず蝉時雨 小村きよし
傍若無人此の世我が世と蝉時雨 滝本魚顔女 『絵踏』
目覚めれば家すつぽりと蝉時雨 林 雪
野外劇せりふなき刻蝉時雨 伊藤彩雪
頼朝の虚子の鎌倉蝉時雨 星野高士
裏返る蝉のなきがら蝉時雨 蓬田紀枝子
老い母に道見えてゐる蝉時雨 野沢節子 八朶集
曼陀羅図干す山寺の蝉時雨 吉澤卯一
橙青き丘の別れや蝉時雨 横光利一
笊の目につきささる米蝉時雨 岡田史乃
隧道を抜けてあらたの蝉時雨 甲斐誠夫

蝉時雨 補遺

いと低き幹にも蝉や蝉時雨 富安風生
たたら遺蹟番子の音か蝉時雨 松崎鉄之介
どこまでも蝉時雨とは包まれて 稲畑汀子
或時は稽古の如き蝉時雨 後藤比奈夫
一山の僧ひれふす時や蝉時雨 山口青邨
一樹なき火の山樹海は蝉時雨 福田蓼汀 秋風挽歌
隠し湯の跡池泉なす蝉時雨 松崎鉄之介
下りてきし坂がうしろに蝉時雨 清崎敏郎
海をあがりし寒さ夕づく蝉時雨 村山故郷
額は朝鮮人趙重応書蝉時雨 山口青邨
笠とるや杜の下道蝉時雨 正岡子規 蝉
汗を吹く茶屋の松風蝉時雨 正岡子規 汗
機音を聞きわける蝉時雨の中(奥多摩、青梅) 細見綾子
給水船待つ全島の蝉時雨 右城暮石 虻峠
渓流にふりかぶさり来蝉時雨 稲畑汀子
渓流を掃けばすぐ澄む蝉時雨 川端茅舎
健かさいふ蝉時雨浴びながら 大野林火 海門 昭和十年
湖に根の深き島蝉時雨 右城暮石 虻峠
荒御霊に大樹が降らす蝉時雨 林翔 和紙
細密壁画塗る 気遠さの 蝉時雨 伊丹三樹彦
将軍の位に坐して蝉時雨 山口青邨
森抜けしこと蝉時雨抜けてをり 稲畑汀子
人力の森に這入るや蝉時雨 正岡子規 蝉時雨
水自給自足の離島蝉時雨 右城暮石 句集外 昭和四十八年
政宗公馬にまたがる蝉時雨 山口青邨
聖代めく蝉時雨にぞめぐりあへる 中村草田男
石に沁む石工の汗や蝉時雨 日野草城
蝉に附く蟻を只今せみしぐれ 三橋敏雄
蝉時雨のなかや雲中供養佛 森澄雄
蝉時雨より深きもの人の息 原裕 青垣
蝉時雨わが肉に濃緑がしみる 金子兜太
蝉時雨或は篠を乱しけり 相生垣瓜人 負暄
蝉時雨河幅広く主流疾し 津田清子 礼拝
蝉時雨仰むく口や木の雫 正岡子規 蝉時雨
蝉時雨豪酒の仁の横たわる 金子兜太
蝉時雨子は担送車に追ひつけず 石橋秀野
蝉時雨森ふかく海入りこめる 大野林火 早桃 太白集
蝉時雨即身仏に藻抜けの穴 松崎鉄之介
蝉時雨日斑(まだら)あびて掃き移る 杉田久女
蝉時雨熱の掌を組む胸うすし 桂信子 月光抄
蝉時雨能登も果なる葬り処に 清崎敏郎
蝉時雨夫のしづかな眸にひたる 桂信子 月光抄
蝉時雨平家納経模写拝観 山田みづえ まるめろ
蝉時雨棒のごとくに人眠り 清崎敏郎
蝉時雨木彫仏の縦の木肌(きめ) 大野林火 雪華 昭和三十六年
蝉時雨木々ふるはせて光堂 平畑静塔
蝉時雨涼しけれども起居慵し 野見山朱鳥 曼珠沙華
塔しづく止むを待たずに蝉時雨 鷹羽狩行
八ケ嶺に夜の雲遊ぶ蝉時雨 角川源義
便りせん日々のこの蝉時雨 高野素十
木喰の里へ岨道蝉時雨 松崎鉄之介
老い母に道見えてゐる蝉時雨 野澤節子 八朶集
呟ける蝉もあるべし蝉時雨 林翔
滂沱たる蝉時雨とも聞きつべし 相生垣瓜人 負暄
萬力の起す一石蝉時雨 松本たかし
靠れ合うのは無縁仏 蝉時雨 伊丹三樹彦


by 575fudemakase | 2017-08-17 12:39 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

落蝉 の俳句

落蝉 の俳句

落蝉

いと白き落蝉の腹風立ちぬ 高澤良一 暮津
せんだって落蝉を無視した処 池田澄子 たましいの話
ちやぼ不思議がる落蝉の断末魔 辻田克巳
にはたづみ蝉の落ちたる光悦寺 川崎展宏
ふきもせぬ風に落ちけり蝉のから 蝉の殻 正岡子規
唖蝉と放てばちちと草に落つ 中拓夫
唖蝉の惜しとも云はず落て死す 寺田寅彦
唖蝉をつつき落して雀飛ぶ 鬼城
仰のけに落ちて鳴きけり秋の蝉 一茶
見馴れたる木から晩蝉転げ落つ 高澤良一 素抱
山の旭や蝉落ちて啼く秋海棠 中島月笠 月笠句集
死蝉をときをり落し蝉しぐれ 藤田湘子
自転車の荷台に蝉の落ちゐたり 高澤良一 暮津
秋の蝉歌い足らずに落ちにけり 越智幸子
秋風やほろりと落し蝉の殻 秋風 正岡子規
秋風を掴みて落ちし蝉ならむ 行方克己 昆虫記
秋立つやほろりと落ちし蝉の殻 正岡子規
梢よりあだに落ちけり蝉のから 芭蕉
神前の堅き大地や蝉落つる 比叡 野村泊月
青空がずり落ちて蝉転落死 高澤良一 寒暑
石原に蝉落ち居けりいまの雨 召波
蝉しぐれより蝉ひとつこぼれ落つ 内藤恵子「冬芽」
蝉鳴いて落ちて秋きぬ忘れ庵 勘助
蝉落ちてひびきわたりぬ法隆寺 原田喬
蝉落ちて遠くの蝉の鳴きにけり 今井杏太郎
蝉落ちるタイムカプセル埋設点 勝田澄子
掃かれゆく落蝉の胸厚かりき 小島淑子
早や一つ落ちゐて蝉のあっけなし 高澤良一 寒暑
地下女将軍へ一切の蝉落つる 川崎展宏
通り雨長らふ蝉に落蝉に 高澤良一 随笑
辻褄合ふ一落蝉と樹の位置と 高澤良一 暮津
冬至の日炎上つくしたれば落つ 井沢正江 晩蝉
動かざる落ち蝉拾ひ鳴かれけり 萩原正章
日暮るゝや夜蝉頻りに葉を落ち合ふ 原石鼎 花影以後
晩涼や蝉落ちまろぶ石畳 木下夕爾
扉に触れてぢぢと鳴き落つ夜の蝉 嶋田麻紀
万歳をして落つ蝉の手をそのまゝ 高澤良一 寒暑
夜の蝉美々しき声を挙げて落つ 文挟夫佐恵 雨 月
薬莢のごときものなり落蝉は 杉本雷造
夕蝉のすとんとこゑを落しけり 高澤良一 素抱
落ちてゐる蝉の骸と商店街 高澤良一 暮津
落ち蝉に歩を返す猫ありにけり 原裕
落ち蝉の覚めず落ちゐる砂の上 松瀬青々
落ち蝉の砂に羽摶つ尚暑し 河東碧梧桐
落蝉とくたびれし時間転がれり 柴田奈美
落蝉にいつもの空があり真青 高澤良一 寒暑
落蝉に火の匂ひある掌 波戸岡旭
落蝉に息吹きかけて放ちけり 青鷺
落蝉に土はいつでもやわらかい 桜木美保子
落蝉に風の囁き絶え間なし 山崎千枝子
落蝉のあっけらかんと乾きゐる 酒井裕子
落蝉のごとく仰向きぐうたら寝 高澤良一 随笑
落蝉のころりと参る姿かな 高澤良一 随笑
落蝉のたそがれの土匂ひたり 橋本和子
落蝉のほとり過ぎゆく勤め人 高澤良一 暮津
落蝉のまたここにもの思ひかな 高澤良一 素抱
落蝉のやっと静かに我もしずか 池田澄子 たましいの話
落蝉の一つは玄関灯真下 高澤良一 素抱
落蝉の一つやや這ふ兜かな 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
落蝉の蟻乗せしまま歩き出す 篠田重好
落蝉の仰向くは空深きゆゑ 宮坂 静生
落蝉の四肢まだ動く動かせよ 三輪閑蛙
落蝉の静かに草を上りけり 比叡 野村泊月
落蝉の足蹴にされて一、二転 高澤良一 素抱
落蝉の天空を風吹き抜けり 高澤良一 素抱
落蝉の落ち方むろん頭から 高澤良一 寒暑
落蝉の翅ヒクヒクとさきほどまで 高澤良一 暮津
落蝉の翅をひらけば山河透き 岸原清行
落蝉は有為の奥山けふ越えて 高澤良一 素抱
落蝉をヘッドライトのよぎり消ゆ 高澤良一 素抱
落蝉を一分隊も蒐めたる 後藤比奈夫 めんない千鳥
落蝉を起せば飛んで行きにけり 奥野桐花
落蝉を拾へばこゑをあげにけり 白井 爽風

落蝉 補遺

落蝉を一分隊も蒐めたる 後藤比奈夫
落蝉は落ち菩提子は舞ひて落つ 後藤比奈夫
落蝉の裏返りゐて声を出す 右城暮石 虻峠
落蝉の眉間や昔見しごとく 山口誓子
落蝉の頭や墨を塗られしか 山口誓子
落ち蝉の砂に羽摶つ尚暑し 河東碧梧桐
日暮るゝや夜蝉頻りに葉を落ち合ふ 原石鼎 花影以後
草を翔ち草に落ちたる秋の蝉 山口青邨
草に落ち蝉鳴きいづる雨後の月 水原秋櫻子 餘生
掃き溜めてありしみくじと落蝉と 後藤比奈夫
松蝉の地に落ち這へり松ひそか 松本たかし
秋蝉の落ちて地心へ流れけり 水原秋櫻子 餘生
秋の蝉落つ袖無を著たるかに 三橋敏雄
秋の蝉落ちたる原のひろさかな 三橋敏雄
秋の蝉本の谷間に落ちしづか 山口青邨
秋の蝉羽根を開いて落ちにけり 三橋敏雄
紙鉛筆散らかる中に蝉落ちし 細見綾子
死蝉をときをり落し蝉しぐれ 藤田湘子 神楽
死はそこにここに落蝉のみならず 林翔
唖蝉をつゝき落して雀飛ぶ 村上鬼城
おのづから倚る樹定まり蝉は落つ 山口青邨

落蝉 続補遺

葉を落て嵐や蝉のつかみ啼 早野巴人
行く秋や椴より落る蝉の殻 桃隣

by 575fudemakase | 2017-08-17 12:37 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

空蝉 の俳句

空蝉 の俳句

空蝉

あまりに軽き空蝉山河還るなし 小松崎爽青
いつか壊れる空蝉という置き手紙 芹沢愛子
うつせみと香の銘さへ寒さかな 久保田万太郎 流寓抄
うつせみのあまたつめたき木立かな 中田剛 珠樹
うつせみのおのれつまづく手飼かな 安東次男 昨
うつせみのすでに雫のみどりかな 中田剛 珠樹
うつせみの羽衣の宮や神の留守 神の留守 正岡子規
うつせみの咳なりやこのさびしさは 筑紫磐井 未定稿Σ
うつせみの稚魚を哀しと筆はじめ 村上 麗人
うつせみの爪するどしと記しおく 中田剛 珠樹以後
うつせみの恋は酔ふべき濃あぢさゐ 稲垣きくの 牡 丹
うつせみや一切空の石舞台 渡辺恭子
うつせみや何を活甲斐に我はただ 暁台「暁台句集」
うつぜみをとればこぼれぬ松の膚 日野草城
うつせみを裸になつて晝寝哉 会津八一
うなりなき凧空蝉の破れかな 安藤十歩老
かりそめに空蝉を置く山河かな 齋藤愼爾
くだかるるまへに空蝉鳴いてみよ 清水径子
こひしらに空蝉をもてあそぶなり 稲垣きくの 黄 瀬
これもこれもこれも空蝉平成 斉藤雅子
ずぶ濡れの空蝉一つ見つけけり 高澤良一 燕音
たかがポルノグラフィーの空蝉ではないか 須藤徹
たかぶれば空蝉も鳴く夕茜 渋谷道
てのひらに空蝉のせて山のこゑ 田中里佳
ドロの木より空蝉剥がしやりにけり 高澤良一 燕音
ぬけがらの君うつせみのうつゝなや 蝉の殻 正岡子規
のけぞりに空蝉すがる青柚かな 阿波野青畝
ふと触れし指に空蝉すがりけり 上西左兌子
ふるさとにわが空蝉は突伏して 正木ゆう子
ポケットを出るこなごなの空蝉よ 遠山 陽子
またの名をうつせみ寺に詣でけり 久保田万太郎 草の丈
めざましが鳴る空蝉を机に置けば 不死男
ゆつくりと見る空蝉の行うを 清水径子
愛染の身に空蝉は握られぬ 庄中健吉
一つ葉に空蝉二つ生垣に 高澤良一 素抱
一と震へして空蝉となりゆけり 稲畑廣太郎
遠く行くときは空蝉にかぎる 永末恵子
襖しめて空蝉を吹きくらすかな 飯島晴子
黄泉の子もうつせみの子も白絣 能村登四郎
乙女らよ空蝉の背の割れざまよ 永島靖子
火の国の空蝉高くとまりけり 大石雄鬼
花とみまがふうつせみの形あり 中田剛 珠樹以後
快楽のあとくらくなる空蝉よ 斎藤愼爾 冬の智慧
街空のチヤイム空蝉雨溜めて 木村蕪城 寒泉
閑かさや空蝉は粒ぞろいにて 渋谷道
眼を縦にして空蝉の中おもふ 大石雄鬼
岩に爪たてて空蝉泥まみれ 三鬼
幾度も来し空蝉よ今年また 山西雅子
机上に風起ちて空蝉吹き転がす 高澤良一 素抱
旧姓といふ空蝉に似たるもの 辻 美奈子
仰向きて空蝉山を離れゆく 齋藤愼爾
銀の空蝉かさね秤るかな 山本掌
空蝉が空蝉を追ひつめる杭 川崎展宏 冬
空蝉が見てをり天のさみしさを 徳永山冬子
空蝉が散つて疲れてならぬなり 斎藤玄 雁道
空蝉が草の先まで登りゐし 田原勝子
空蝉とHOPE机上に昼闌けぬ 高澤良一 素抱
空蝉となりても登る爪かけて 照敏
空蝉となりて完全無欠なる 松尾隆信
空蝉となるまでなくを仕事かな 乙州 俳諧撰集「有磯海」
空蝉となるまで登りつめたり 野崎妙子
空蝉と成るべく脚を定めけり 夏井いつき
空蝉と同じ眼蛇の衣の眼は 茨木和生 遠つ川
空蝉にあるはづもなき砂の音 大木孝子
空蝉にかき附かれたる寂しさよ 永田耕衣
空蝉にこころふたつよ相寄らず 稲垣きくの 牡 丹
空蝉にしてやはらかく草つかむ 長谷川櫂 天球
空蝉にして眼光の衰へず 小林一生
空蝉にして飛ぶこころあるごとし 八染藍子
空蝉にしばらくありし雷神 斎藤玄
空蝉にひとしき人生吹けばとぶ みどり女
空蝉にまた夜が来て朝が来て 稲田眸子
空蝉に雨水たまり透きとほる 篠原梵
空蝉に雨水たまる麓かな 高橋龍(龍年纂)
空蝉に艶といふものありにけり 鈴木貞雄
空蝉に金色の風溢れけり 大橋俊彦
空蝉に山の風来て充満す 山冬子
空蝉に水のやうなる風が吹く 阿部みどり女
空蝉に静かな水位ありにけり あざ 蓉子
空蝉に蝉のかなしみ残りけり 林 翔
空蝉に草の匂ひのありにけり 仙田洋子
空蝉に天の一刀過誤もなし 橋本榮治
空蝉に肉残り居る山河かな 永田耕衣
空蝉に入らむと待てる空気哉 永田耕衣
空蝉に呆け雷とどきけり 下村槐太 光背
空蝉に問ひかけてゐる別の我 高澤良一 素抱
空蝉に翅を収めし突起かな 日原 傅
空蝉に跼みても御墓ひくかりき 能村登四郎
空蝉の 全ては昨日までのこと 木村美岐
空蝉のあり処たしかめ凭る机 稲垣きくの 牡 丹
空蝉のいづれも力抜かずゐる 阿部みどり女
空蝉のいのちたぎりしなりのまま 岡崎陽市
空蝉のいのちを生みし足構へ 根本文子
空蝉のいのち全く抜けしいろ 木内怜子
空蝉のかけらも入るらむ長寿薬 高澤良一 素抱
空蝉のからくれないに砕けたり 間石
空蝉のこだま綴りし少年期 斎藤慎爾
空蝉のごとく服脱ぐ背を開けて 加藤三七子
空蝉のごとたましひの抜かれたる 角川春樹
空蝉のごと縋りゐしもの虚し 稲垣きくの 牡 丹
空蝉のこはれゆく日に立会ひし 吉田汀史
空蝉のしかと火薬庫抱きおり 中村 和弘
空蝉のしがみついたり草箒 森無黄
空蝉のしがらみほどき遣りにけり 高澤良一 素抱
空蝉のしつかと地球つかんでいる 大木石子
空蝉のすがりてかろき青木賊 麦南
空蝉のすぐに火となる秋炉かな 大木あまり 火球
空蝉のすこしよぢれてをりにけり 京極杞陽
空蝉のすずなりの木を恐れけり 糸山由紀子
空蝉のそびらに空の入りけり 大原千鶴子
空蝉のたましひはまだ殻の中 大岩里子
空蝉のちからの脚に地の月日 宇多喜代子
空蝉のつかんだ枝風がゆらし 松本華桜
空蝉のつきし葉裏のひるがえり 夏目としえ
空蝉のどれも山頭火の背中 照井 翠
空蝉のなかあはあはと風が吹く 鍵和田[のり]子
空蝉のなかにも水のひろがりて 阿部青鞋
空蝉のなほ苦しみを負ふかたち 鷹羽狩行
空蝉のばらばらなるへ俯ける 中田剛 竟日
空蝉のひとつひそかに山の日日 稲垣きくの 黄 瀬
空蝉のふんばつて居て壊はれけり 前田普羅
空蝉のまだ濡れてゐる羽化曇 宮下十一
空蝉のまだ濡れ色にありにけり 岩崎艸寿
空蝉のまろべば紙の音すなり 小林清之介
空蝉のもはらに青き萩このむ 篠田悌二郎 風雪前
空蝉のやがて忘らる机の上 高澤良一 素抱
空蝉の阿鼻叫喚や厳島 飴山實(1926-2000)
空蝉の握力かぎりなく零に 芹山 桂
空蝉の威をくづさずにあはれなり 阿部みどり女
空蝉の一つが見えてあまた見ゆ 岩田由美
空蝉の一つひっつく常夜燈 高澤良一 暮津
空蝉の一もつもなき胸のうち 浅井千代子
空蝉の一太刀浴びし背中かな 朱鳥
空蝉の一太刀浴びせし背中かな 野見山朱鳥
空蝉の雨ため草にころげけり 阿部みどり女
空蝉の温泉窓に遠く午下り 飯田蛇笏 椿花集
空蝉の開きし背に虚空あり 山本歩禅
空蝉の鎧兜の泥まみれ 鷹羽狩行 十友
空蝉の完全なるをしばらく飼ふ 桑原三郎 晝夜 以後
空蝉の貫き通す初一念 高澤良一 鳩信
空蝉の眼に泥や乾きたる 小澤實
空蝉の眼に覗き込まれたる 松本 久
空蝉の眼より暗きものありや 齋藤愼爾
空蝉の眼窩に光のこりけり 松山足羽
空蝉の脚のつめたきこのさみしさ 成田千空
空蝉の脚の確かさ眼の確かさ 後藤比奈夫
空蝉の胸を抱へて草の上 島田藤江
空蝉の興はや失せて掌に残る 高澤良一 素抱
空蝉の空部屋貸してくれないか 滝口明男
空蝉の桑に吹かるる虫送り 黒沢宗三郎
空蝉の軽さはみだすてのひらや 稲葉直
空蝉の軽さを何の留守かとも 正木ゆう子 悠
空蝉の結婚式の靴がない 攝津幸彦
空蝉の鋼の脚のとこしなへ 高澤良一 素抱
空蝉の号泣の爪立てゐたる ほんだゆき
空蝉の今抜けし色濡れてをり 臺 きくえ
空蝉の魂までは抜け切れず 樋田初子
空蝉の三つまですがる垣戸かな 秋櫻子
空蝉の残る力を欲しと思ふ 片山由美子 水精 以後
空蝉の思ひを徹す山河かな 宗田安正
空蝉の死して落たり樹下の帽 会津八一
空蝉の肢欠けやすき旅にあり 昆ふさ子 『冬桜』
空蝉の湿りもちたる宗祗の忌 小島花枝
空蝉の捨身何飼ふ磯長墓 安東次男 昨
空蝉の寝墓にあるはあらしめよ ひろし (大浦外人墓地)
空蝉の身の透くばかり恋わたる 稲垣きくの
空蝉の身を立てとほす朝の光げ 原裕 『王城句帖』
空蝉の人には告げぬ方途かな 沼尻巳津子
空蝉の吹かるる杜国住居趾 関森勝夫
空蝉の水より迅く流れけり 吉武月二郎句集
空蝉の生き~と幹掴みをり 徳永球石
空蝉の生きて歩きぬ誰も知らず 三橋鷹女
空蝉の声上げて背破れしや 後藤比奈夫 花びら柚子
空蝉の折れたる脚の管なして 山西雅子
空蝉の礎石に吹かる南谷 御子柴光子
空蝉の双掌掴みに高野槇 角川春樹 夢殿
空蝉の着く木々闇をまとひ来る 原裕 葦牙
空蝉の中に熊野の闇を置く 大西健司
空蝉の中の空気を大切に 谷口愼也
空蝉の中も夕映母の国 今井聖
空蝉の朝から鳴けり万骨塔 穴井太 原郷樹林
空蝉の爪のくいこむ被爆の木 助田素水
空蝉の爪のなかなか縋るなる 富安風生
空蝉の爪の切っ先岩に立て 高澤良一 暮津
空蝉の爪の先までがらんどう 永江哀紅糸
空蝉の爪の力は神憑り 吉田淡虹
空蝉の爪の力は葉裏まで 水口澄子
空蝉の爪先少し焦げてをり 高澤良一 素抱
空蝉の爪立て思ひぬけてをり 中川須美子
空蝉の点々森の広さかな 稲畑廣太郎
空蝉の登りきつたる一茶句碑 猪狩行々子
空蝉の透きとほる死のうらやまし 稲垣きくの 牡 丹
空蝉の透けて夕焼濃くなりぬ 内藤吐天 鳴海抄
空蝉の内にも影のありにけり 松丸春生
空蝉の内側に日の当たりをり 正木浩一
空蝉の背にひとすぢの糸のくづ 三嶋 隆英
空蝉の背にひびく風遥かより 坂本山秀朗
空蝉の背にひびく風遙かより 坂本山秀朗
空蝉の背に刻めるは梵字とも 高澤良一 素抱
空蝉の背の一太刀の深かりき 塚田文
空蝉の背の割れに鳴る山の風 井野時子
空蝉の背の裂け目より縷の如きもの 中田みづほ
空蝉の背よりぬけゆく櫂の音 井坂景秋
空蝉の背割れ激流とぞ思ふ 小川双々子
空蝉の背割烈しく去りしもの 金箱戈止夫
空蝉の背中に冷気残りをり 窪田英治
空蝉の反り身にかかふ石祠 梅澤朴秀
空蝉の比較をこばむ貌並ぶ 五十嵐研三
空蝉の飛ばないやうに拾ひけり 今井誠人
空蝉の頻にありて蛇は木に 下村槐太 天涯
空蝉の部屋なら沢山ありますよ あざ蓉子
空蝉の風雨に目鼻古びざる 高澤良一 暮津
空蝉の腹にさし込む夕日哉 野崎柴兮
空蝉の片手掴みに空の端 加藤 耕子
空蝉の宝庫と巡る興半ば 高澤良一 素抱
空蝉の縫目ほぐれし背中かな 稲田幸子
空蝉の無明の眼背を裂かれ 福田蓼汀
空蝉の目の見るものをおそれけり 平井照敏 天上大風
空蝉の立ち端も知らず碁打共 梧胡 俳諧撰集「藤の実」
空蝉の流れて速し柿田川 後藤暁子
空蝉の両眼濡れて在りしかな 河原枇杷男
空蝉の涙の如き眼かな 上野泰
空蝉の露に日の矢のきらめきて 眞鍋呉夫
空蝉の埃除らんと七年経つ 永田耕衣 人生
空蝉の泪のいろに白日は 斎藤梅子
空蝉の琥珀を抜けし翡翠かな 五島高資
空蝉の縋りしかたちして置かる 稲垣きくの 黄 瀬
空蝉の縋る一ト葉ももみづれり 高澤良一 暮津
空蝉の縋れる枝の折れゐたり 辻田克巳
空蝉の縋れる草は引かず置く 相馬沙緻
空蝉の谺とならず谿昏れる 山田晴彦
空蝉ハ 果シテ 風ノ 呪文トナレリ 富澤赤黄男
空蝉はあかるい雨の一農夫 栗林千津
空蝉ばかり仏壇巨大なる村は 林唯夫
空蝉はまだ笑い声残しをり 黒田肇
空蝉ハ果シテ風ノ呪文トナレリ 富澤赤黄男
空蝉は胎児の容千年樹 伊丹さち子
空蝉は白雨飛沫を浴びてをり 高澤良一 石鏡
空蝉は風の重さとなりにけり 田中良一
空蝉は命離して透きとほり 坂巻純子
空蝉へ移す情など日の高し 河野多希女 月沙漠
空蝉へ神父の口より祝祷洩る 田川飛旅子 花文字
空蝉ほど全き殻を脱ぎたしや 花谷和子
空蝉も絵馬にすがりて祈りをり 金原千代子
空蝉も硝子の仲間に加へけり 岩淵喜代子
空蝉も世を観るときは斜に構え 高澤良一 暮津
空蝉も蝉も入れられ一つ籠 高澤良一 素抱
空蝉も墓も夏草隠りかな 小林康治 玄霜
空蝉やあの世へ行きてなほ生きむ 藤本保太
空蝉やある時なにもかもがみえ 木内怜子
空蝉やいのち見事に抜けゐたり 片山由美子
空蝉やきたなき物は人の果 蝶夢「草根発句集」
空蝉やひるがへる葉にとりついて 素十
空蝉やまだやはらかき眼の凹み 渡辺乃梨子
空蝉やまなこに魂残し置く 松せい一
空蝉やよぢのぼりたる枝を抱き 池内たけし
空蝉や愛情の機微埋めたくなる 河野多希女 彫刻の森
空蝉や葦吹く風も父祖の郷 石塚友二
空蝉や詠はねば吾も脱けがらに ましお湖(やまびこ)
空蝉や家をめぐりて水の音 岸田稚魚 筍流し
空蝉や鎧かぶとを飾る亭 柏木豊太
空蝉や巌の湿り近うして 依光陽子
空蝉や熊野懐紙の王子あと 黒田櫻の園
空蝉や妻に肩借す寺の階 原 石水
空蝉や山の日照雨の毛越寺 皆川盤水
空蝉や山河にもどる朝のいろ 大嶽青児
空蝉や残ると思う背の痛み 外山恒吉
空蝉や死海を越えて来し便 白井久雉
空蝉や女名はなき開拓碑 金箱戈止夫
空蝉や娼妓とありし供養塔 山岡よね子
空蝉や松の天辺すがりつく 植田都甫
空蝉や触るも惜しき年埃 永田耕衣 人生
空蝉や人目にさらす殉死遺書 平井さち子 鷹日和
空蝉や千手仏にもあそびの手 奥野昌子
空蝉や草のそよぎを落むとす 野村喜舟 小石川
空蝉や潰えて墓のわかちなし 石川桂郎 高蘆
空蝉や爪立て易き朽塔婆 松岡美代子
空蝉や遁げつ坂逼ふおのが影 石塚友二 方寸虚実
空蝉や日昏れてとほき父母のくに 平田繭子
空蝉や背割れ八月十五日 河野南畦 『元禄の夢』
空蝉や不吉のぞかす背の割れ目 成瀬桜桃子 風色
空蝉や不幸に重さのありとせば 齋藤愼爾
空蝉や父が幼名吉之助 森 一九
空蝉や芙蓉落ちたる音閑か 渡邊水巴 富士
空蝉や風吹き抜けて后塚 齊藤 翠
空蝉や本音だけでは生きられず 高塚明子
空蝉や凡日にして午後長し 米澤吾亦紅
空蝉や命みごとに抜けゐたり 片山由美子
空蝉や諭吉旧居の深廂 宮原双馨
空蝉や有為の奥山知りもせず 中里 良
空蝉や夕景といふ白きもの 夏井いつき
空蝉や予後のいのちの軽さとも 早崎明
空蝉や旅の浴衣を袖だたみ 岡田貞峰
空蝉や聯隊の樹の刻みし名 飯塚すなお
空蝉をあかるき雨の過ぎにけり 井上弘美(俳句)
空蝉をあつめて暗く坐りをり 大串章
空蝉をいつまで捕う樹の余熱 源鬼彦
空蝉をおしろい匂ふ抽斗に 波多野爽波 『一筆』以後
空蝉をおっかなびっくり抓む指 高澤良一 石鏡
空蝉をつぶすこはれぬものが欲し 伊藤トキノ
空蝉をつぶす壊れぬものが欲し 伊藤トキノ
空蝉をとらんとおとす泉かな 飯田蛇笏 霊芝
空蝉をとらんと落す泉かな 飯田蛇笏 山廬集
空蝉をにぎり海への径くだる 田邊香代子
空蝉をのせて銀扇くもりけり 宇佐見魚目
空蝉をひろふ流人の墓ほとり 大野林火
空蝉をみつけて仕事着の硬さ 渋谷道
空蝉を一つしじまにゐて醒めず 高垣美恵子
空蝉を観世音寺の何処に置く 河村昇
空蝉を机上に置いて散歩果つ 高澤良一 素抱
空蝉を空蝉が抱く我鬼忌かな 影浦ようじ
空蝉を見るにも星の別れかな 松岡青蘿
空蝉を見る妻の瞳のうるむなり 岳陽
空蝉を呉れし丸山芸者かな 山内 傾一路
空蝉を子が拾ふ手の女なる 後藤夜半
空蝉を指にすがらせ餉の祷り 子郷
空蝉を手にせりはるかなる想ひ 塚原 夜潮
空蝉を手提に拾ひ一人旅 細見綾子 黄 炎
空蝉を拾い跡見る見損かな 永田耕衣 闌位
空蝉を拾ひし指の濡れてをり 雨宮きぬよ
空蝉を拾ひぬ風の秩父郡 鈴木鷹夫 春の門
空蝉を拾ふのみなる気弱の子 駒沢たか子
空蝉を拾へば笑ひ天よりす 藤田湘子 てんてん
空蝉を拾へば水の零れけり 柿本多映
空蝉を蒐めたる手や若からず 山田みづえ 木語
空蝉を集めて深山暮らしかな 林桂 ことのはひらひら 抄
空蝉を掌に風塵の山のこゑ 豊長みのる
空蝉を硝子の仲間に加へけり 岩淵喜代子
空蝉を吹けばとほくへとびにけり 小西領南
空蝉を川に放りて手招きす 鳴戸奈菜
空蝉を弾ませて辞書置かれけり 岩淵喜代子 朝の椅子
空蝉を置いて白紙に馨り生む 鍵和田釉子
空蝉を置いて白紙に翳り生む 鍵和田[のり]子
空蝉を置きてピアノに土こぼる 鷹羽狩行
空蝉を置けばヨブ記のヨブの声 長田等
空蝉を敦盛塚に供へけり 手島南天
空蝉を入れし袋の落し物 茨木和生
空蝉を入れる器に空き菓子折 高澤良一 素抱
空蝉を燃し地の涯を照しけり 津久井理一
空蝉を白紙に置きて二日過ぐ 赤尾冨美子(南風)
空蝉を抜け来し風の翳りけり 檜紀代
空蝉を頒つ太郎の掌次郎の掌 佐野まもる
空蝉を飛ばしかずかず盆の道 斎藤玄
空蝉を風に拾ひし近江かな 金久美智子
空蝉を風の中にていつくしむ 山口誓子
空蝉を包む夕刊が遅れてゐる 攝津幸彦 鹿々集
空蝉を妹が手にせり欲しと思ふ 山口誓子
空蝉を林のみちに拾ひけり 高橋淡路女 梶の葉
空蝉を恋の言葉のごとく置く 関戸靖子
経蔵の壁に空蝉白峰寺 一宮半月
血の奥にうつせみといふ音するなり 斎藤玄 雁道
月日過ぎ易く空蝉の爪に泥 高澤良一 素抱
現し世に空蝉といふもの残し 柏崎夢香
戸袋に空蝉八一死せる家 鈴木鷹夫 千年
吾子なくて空蝉いつまで机上なる 松本千恵女
広島の空蝉を百ひろひけり 小川双々子
今脱ぎし空蝉透きて夜明けなり 和田 和子
四阿の梁に空蝉高台寺 上野是清
手に置けば空蝉風にとびにけり 高浜虚子
首塚に空蝉拾ふ道灌忌 小野千枝子
拾ひたる空蝉指にすがりつく 橋本多佳子
拾ひ上げし空蝉に昼のかすかかな 中島月笠 月笠句集
拾ひ来しうつせみ卓におきしのみ 安住敦
十ほどの空蝉雪の匂いする 鳴戸奈菜
女の手に空蝉くだけゆきにけり 西東三鬼
少年の机に地図と空蝉と 大木あまり
少年老い空蝉と目を合はせけり 山口正心
掌の中に空蝉爪を立つる軽さ 原田種茅 径
冗談に空蝉個個に歩きけり 永田耕衣
唇の二枚を合はせ吹く空蝉 沼尻巳津子
森閑とこの空蝉の蝉いづこ 福永耕二
神の手の触れ空蝉のふと動く 小泉八重子
水溜めてゐる空蝉の濃かりけり 中戸川朝人 尋声
生ありし日の夢みてか空蝉は 大橋麻沙子
禅定に入りし空蝉堂庇 山崎湖郷(春郊)
掃苔の垣に空蝉のこしたる 皆吉爽雨 泉声
草のぼりつめ空蝉となりゐたり 藤崎久を
草庵や空蝉あまたしがみつく 新子満州男
息をひそめて空蝉になつてゐる 阿部王一
太極拳の翁空蝉より軽し リンズィー、ドゥーグル・J
地上一尺に空蝉幽かなり 百合山羽公 寒雁
鳥雲にうつせみの子は影踏みあひ 齋藤愼爾
爪たててゐる空蝉を剥がしけり 永田耕一郎 雪明
哲学の道に空蝉拾ひけり 高野千代
天の川われを逐いくるは空蝉か 斎藤愼爾 秋庭歌
天の川われを逐ひくるは空蝉か 齋藤愼爾
天気かな空蝉で翔ぶ翔びごころ 折笠美秋 虎嘯記
土くれを抱く空蝉のくらさかな 原裕 『王城句帖』
冬ゆふべうつせみを置く藁半紙 中田剛 珠樹以後
汝等まろき脂ぎつたる空蝉よ 草田男
父の忌の空蝉なれば掌につつむ 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
父の忌の空蝉母の忌の螢 斎藤愼爾 冬の智慧
父の木とよぶ空蝉があまたの木 折原あきの
風遊ぶまろぶほかなき空蝉に 渡邊千枝子
風立ちて空蝉草を楯とせり 岩田沙悟浄
母の忌の空蝉を母と思ひ初めし 中村苑子
母校とは空蝉の木が鳴くところ 守屋明俊
妹が掌の空蝉燃やす夢のあと 齋藤愼爾
夢の世にかかる執着空蝉は 斎藤慎爾(1939-)
夢殻は裂けてそれきり空蝉も 中原道夫
無為にしてひがな空蝉もてあそぶ 川端茅舎
明けのゆめ空蝉ばかり踏みさうな 澁谷道
目に見えぬ程の雨ふる空蝉に 高澤良一 素抱
目を張りて空蝉となりゐたるかな 藤田あけ烏
夕映えてうつせみに踏む寒浄土 相馬遷子 山国
夕焼のうつせみと蝉相識らず 渋谷道
葉さやぎや空蝉すがる葉も見えて 八木絵馬
羅の身より空蝉こぼしたり 齋藤愼爾
聾に掌の空蝉の鳴きくれし 安川喜七
囁きぬ空蝉のこと舟のこと 鳴戸奈菜
埃痩せして空蝉の溜まりけり 永田耕衣 葱室
箒とめて空蝉はがす詩を待つごと 赤城さかえ句集
翔たしめても祈りの眼もつ空蝉は 榎本嵯裕好
腑分け図のごとく詳しく空蝉描く 高澤良一 素抱
薔薇園の薔薇に縋りし空蝉よ 原田青児
螢・蝶・空蝉この世に遅れ着く 齋藤愼爾

空蝉 補遺

うつせみの羽衣の宮や神の留守 正岡子規 神の留守
うつせみの杖つく吾や成道会 百合山羽公 樂土以後
うつせみの生身をかしき柚子湯かな 上田五千石 天路
うつせみの翳しろたへに菊の前 赤尾兜子 稚年記
うつせみをとればこぼれぬ松の膚 日野草城
その軽み空蝉こそはいみじけれ 相生垣瓜人 明治草
ながらひて目も空蝉のさらしもの 平畑静塔
ぬけがらの君うつせみのうつゝなや 正岡子規 蝉の殻
のけぞりに空蝉すがる青柚かな 阿波野青畝
遠弟子に空蝉ひとつ天ふらす 能村登四郎
襖しめて空蝉を吹きくらすかな 飯島晴子
黄泉の子もうつせみの子も白絣 能村登四郎
咳のあとうつせみの息ほうと吐く 能村登四郎
街空のチヤイム空蝉雨溜めて 木村蕪城 寒泉
空蝉が散つて疲れてならぬなり 斎藤玄 雁道
空蝉が賽銭函に鄙の宮 飯島晴子
空蝉とあふのきて死にし蝉とあり 山口誓子
空蝉として一点を見つめる眸 後藤比奈夫
空蝉として存ふといふことを 後藤比奈夫
空蝉と夏の終に会ふ哀しさ 後藤比奈夫
空蝉と手にとり見れば蝉こもる 水原秋櫻子 霜林
空蝉にこゝろ重きは何の咎 鈴木真砂女 夏帯
空蝉にさやけき声のあらむとす 相生垣瓜人 負暄
空蝉にしてこれからといふ眼もつ 後藤比奈夫
空蝉にしばらくありし雷神 齋藤玄 飛雪
空蝉にしをるる様のあらむとす 相生垣瓜人 明治草
空蝉にすでに落葉の二三枚 大野林火 冬雁 昭和二十二年
空蝉にはやさしかくる眉なりけり 岡井省二 五劫集
空蝉にまさをき天の透きにけり 百合山羽公 春園
空蝉に雨水たまり透きとほる 篠原梵 年々去来の花 雨
空蝉に舌を探しぬ湖ゆれぬ 岡井省二 夏炉
空蝉に肉残り居る山河かな 永田耕衣 葱室
空蝉に敗戦の日の真澄照り 上田五千石 風景
空蝉に呆け雷とどきけり 下村槐太 光背
空蝉に跼みても御墓ひくかりき 能村登四郎
空蝉のああ効(かい)疲れ鼎の如し 永田耕衣
空蝉のかなたこなたも古来かな 永田耕衣
空蝉のからくれないに砕けたり 橋閒石
空蝉のすがれる庵のはしらかな 川端茅舎
空蝉のとなりの木より鳴きはじむ 鷹羽狩行
空蝉のなほ苦しみを負ふかたち 鷹羽狩行
空蝉のほどの軽さにあこがるる 能村登四郎
空蝉のまこと碧きを見たらずや 岡井省二 五劫集
空蝉のまなこは泡の如くあり 野見山朱鳥 曼珠沙華
空蝉の阿鼻叫喚や巌島 飴山實 花浴び
空蝉の阿鼻叫喚や京の果 飴山實 花浴び
空蝉の一太刀浴びし背中かな 野見山朱鳥 曼珠沙華
空蝉の温泉窗に遠く午下り 飯田蛇笏
空蝉の鎧兜の泥まみれ 鷹羽狩行
空蝉の脚の確かさ眼の確かさ 後藤比奈夫
空蝉の苦悶の爪と見たりけり 能村登四郎
空蝉の口のあたりの泥かわく 山口青邨
空蝉の掌にあるいまをいま歎く 中村苑子
空蝉の身内にも露宿りける 野見山朱鳥 曼珠沙華
空蝉の人を怖れてゐる高さ 後藤比奈夫
空蝉の生きて歩きぬ誰も知らず 三橋鷹女
空蝉の精妙なるも驚異なり 相生垣瓜人 明治草
空蝉の声上げて背破れしや 後藤比奈夫
空蝉の僧形を蹴る山河かな 永田耕衣
空蝉の着く木々闇をまとひ来る 原裕 葦牙
空蝉の柱のもとの端居かな 百合山羽公 春園
空蝉の爪のとどける物の裏 後藤比奈夫
空蝉の爪のなかなか縋るなる 富安風生
空蝉の泥は払つてやりたかり 後藤比奈夫
空蝉の背の白きもの臍の緒か 鷹羽狩行
空蝉の背の裂目はもチャックなし 安住敦
空蝉の背より胸腔覗かるる 山口誓子
空蝉の背割れの内へくぼみをり 能村登四郎
空蝉の頻にありて蛇は木に 下村槐太 天涯
空蝉の無害三昧響くなり 永田耕衣
空蝉の目の見るものをおそれけり 平井照敏
空蝉の涙の如き眼かな 上野泰
空蝉の毀(め)げて居るなり春の暮 永田耕衣
空蝉ハ 果シテ 風ノ 呪文トナレリ 富澤赤黄男
空蝉もとばばやの空藍屋敷 平畑静塔
空蝉も拡大鏡も子に大事 中村汀女
空蝉も墓も夏草隠りかな 小林康治 玄霜
空蝉やいづこにか酒溢れたる 永田耕衣 葱室
空蝉やこの身ひとつに苦を集め 鈴木真砂女 卯浪
空蝉やひるがへる葉にとりついて 高野素十
空蝉や葦吹く風も父祖の郷 石塚友二 光塵
空蝉や家をめぐりて水の音 岸田稚魚
空蝉や直哉の在りしその壁に 阿波野青畝
空蝉や潰えて墓のわかちなし 石川桂郎 高蘆
空蝉や遁げつ坂逼ふおのが影 石塚友二 方寸虚実
空蝉や芙蓉落ちたる音閑か 渡邊水巴 富士
空蝉や迷あらたなる川も在る 永田耕衣
空蝉をあつめじつくり老いゆくと 飯島晴子
空蝉をおしろい匂ふ抽斗に 波多野爽波
空蝉をかがみ拾へり高畑(奈良二句) 細見綾
空蝉をとらんとおとす泉かな 飯田蛇笏 霊芝
空蝉をとらんと落す泉かな 飯田蛇笏
空蝉をのせてすなほな掌 後藤比奈夫
空蝉をひろふ流人の墓ほとり 大野林火 海門 昭和十一年
空蝉を愛し人間にも飽かず 富安風生
空蝉を救ふ小爪も剥がさず 平畑静塔
空蝉を供えたりけり九鼎に(註*九鼎=中国戦国時代の王位の象徴・青銅器) 永田耕衣
空蝉を九鼎と為す展墓哉 永田耕衣
空蝉を九鼎と為す民家かな 永田耕衣
空蝉を残して鳴きしのみの生 鷹羽狩行
空蝉を指に縋らせ寂び乙女 三橋鷹女
空蝉を手提に拾ひ一人旅(奈良二句) 細見綾子
空蝉を拾い跡見る見損かな 永田耕衣
空蝉を拾へば笑ひ天よりす 藤田湘子 てんてん
空蝉を拾へり蝉の鳴ける樹下 鷹羽狩行
空蝉を蒐めたる手や若からず 山田みづえ 木語
空蝉を出して来るなり高めにぞ 永田耕衣
空蝉を食卓に置く山故郷(丹波にて) 細見綾子
空蝉を卓上に置き人惜しむ(西垣脩さん突如として長逝さる) 細見綾子
空蝉を置きてピアノに土こぼす 鷹羽狩行
空蝉を得たる辺りに返しけり 相生垣瓜人 明治草
空蝉を飛ばしかずかず盆の道 斎藤玄 雁道
空蝉を風の中にていつくしむ 山口誓子
空蝉を妹が手にせり欲しと思ふ 山口誓子
空蝉冷ゆ谷間紅きビニール紐縺れ 赤尾兜子 歳華集
熊油法師空蝉尻細り 百合山羽公 樂土
血の奥にうつせみといふ音するなり 斎藤玄 雁道
光るは仏壇 空蝉囲いの故郷である 伊丹三樹彦
子のいのち眇たり空蝉葉にすがる 山口誓子
死の家や空蝉幹につよき爪 能村登四郎
呪咀の白い札咲く森の空蝉 蹴る 伊丹三樹彦
拾ひたる空蝉指にすがりつく 橋本多佳子
拾ひ来しうつせみ卓におきしのみ 安住敦
十三夜月うつせみの泪眼に 三橋鷹女
十二月空蝉振れば玉の音 秋元不死男
女の手に空蝉くだけゆきにけり 西東三鬼
少女の掌のくぼ ひっそり 飴色空蝉のせ 伊丹三樹彦
掌の秋の空蝉遺り処なし 飯島晴子
食卓のペン皿におく空蝉を 細見綾子
神垣に空蝉あまた見て処女 飯島晴子
水引に居る空蝉をあはれめり 相生垣瓜人 負暄
生害石空蝉すがりかなしけれ 山口青邨
蝉声の真只中の空蝉よ 三橋鷹女
禅寺の空蝉すがる干蒲団(平林寺) 細見綾子
地上一尺に空蝉幽かなり 百合山羽公 寒雁
遅筆わが手に空蝉の誇らしげ 秋元不死男
汝等まろき脂ぎつたる空蝉よ 中村草田男
年越えむ空蝉のあり越えしめむ 相生垣瓜人 負暄
風の黍空蝉一つ落しけり 水原秋櫻子 餘生
仏の裾夕焼に毀れざる空蝉 大野林火 潺潺集 昭和四十三年
母の忌の空蝉を母と思ひ初めし 中村苑子
夢にも喉に空蝉の肢かかりをり飯島晴子
無為にしてひがな空蝉もてあそぶ 川端茅舎
鳴きしざりつつ空蝉とならぶ蝉 西東三鬼
夕映えてうつせみに踏む寒浄土 相馬遷子 山国
葭の風空蝉水へ落ちにける 水原秋櫻子 秋苑

空蝉 続補遺

富士に入日を空蝉や今日の月 其角
富士に入日を空蝉やけふの月 其角 五元集
空蝉を見るにも星の別れかな 松岡青蘿
空蝉のなみだや生た時よりも 露川
空蝉のかづらかけたり床柱 其角
空蝉に吉原ものゝ訴訟かな 其角
うつせみや宿は木の下桜がり 野坡
うつせみや何を活甲斐に我はたゞ 加藤曉台
うつせみやかよはき草にシガミツキ 東皐
うつせみの現に秋をしる日かな 加藤曉台

by 575fudemakase | 2017-08-17 12:25 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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