我が家の春の桜

我が家の春の桜

我が家のこの狭い 55坪の庭に好みの桜の苗木を所狭しと
植え込んで楽しんでいる。出来れば 桜を一年中楽しみたい
という思ひである。一月~2月末は 十月桜、ヒマラヤ桜、
三波川桜が殺風景な庭を飾って呉れた。

三月からの春の桜は 三本の河津桜が三月第一週に咲きだし
熱海桜、寒緋桜(2)、啓翁桜、おかめ桜、陽光桜、横浜緋桜、
山桜と咲き続けた。

目下 3月31日現在 満開の櫻は以下の通り。

白妙、松前、一葉、駿河台匂、楊貴妃、仙台枝垂れ(2)
彼岸桜等々である。

今は蕾でその後咲く桜は

手弱女、関山(2)、天の川、御衣黄、普賢象、ウコン、
泰山府君樓、八重しだれなど

狭い庭ながら その種類は新宿御苑にも負けまいと努力
した結果である。
貝殻虫にやられやすく 冬場はその駆除に励んだ。
# by 575fudemakase | 2013-07-04 09:49 | Trackback | Comments(0)

河原敬子句集「恩寵」を読んで

河原敬子句集「恩寵」を読んで
    高澤良一・抽
(第一句集、平成二十五年三月、文學の森、昭和十九年生まれ)

俳句はやはり年季が入った方がよい。
年季が入ってこそ俳句である。
当集を読んでそう思う。
通明門下には良き俳人が大勢居る。
通明先生大繁盛である。

大吉のみくじは捨てず松過ぎぬ
魚はねて値札飛ばせり菜種梅雨
蜥蜴の尾蕗の葉よりも長かりし
ブラウスの白誇らかに入学す
思ひきり濡れ夕立を喜ぶ子
夏草を焼きて隣にどなられし
バス待つに寒さに負けて歩きけり
姑の風邪孝行めきしこと少し
豆飯や豆多きとこ姑所望
草抜けば蚯蚓反転して走る
二人して抱っこをねだる炎天下
一面のしろつめ草に鳩うようよ
受験子の靴磨きやり送り出す
花の名を後ろ送りに尾瀬の夏
生身魂常臥しのままにこにこと
また雨の気配にありし賀茂祭
敷物を取り換へしのみ夏座敷
全山をしろがねにして夕芒
藪椿海にのめりて紅を増す
全体に水平志向花水木
蟻遊ぶ陶のたぬきの腹の上
賞状の傾く味噌屋薄暑かな
台所棘持つものに茄子胡瓜
酔芙蓉酔ひ醒めぬまま果てにけり
嬉しきは良き正月と言はれしこと
下敷きのセルロイドほど初氷
休日と思うてしまふ花の昼
蕗の葉に蜥蜴遊べり揺れてをり
池の鯉小滝の下に集まれり
空蝉を集め来し夫十三匹
山頂に終の虫の音ありにけり
種区別して広縁に干してあり
高倉健のやうに着こなせ懐手
お水取待つ間に星座整ひぬ
見下ろせば桜畳となってゐし
螢烏賊茹でられ眼突出す
ついたちのきっぱり晴れて十月来
石舞台の石組みあらは赤のまま
初詣ついでのやうに寄る三社
還暦や真っ直ぐに座す初鏡
子らはゐず大人ばかりの雛まつり
摘み口のたちまち黒し蕗のたう
鯉幟良き川風に太りたる
台風は昼過ぎか店混んで来し
青竹に初芒入れ水たっぷり
雨の日は潤んでをりし虫の声
雄鹿現る案内人も興奮す
姑の手の届くは残し柿を*もぐ
鰤一匹子を抱くごとく持ち帰る
重ね着と言へばスマート着ぶくれて
談笑の真中に赤子日脚伸ぶ
よろこびはいつもささやか春兆す
頂きし筍に蟻付いて来し
忘れ物して炎昼を二往復
蛇ゐしと呼びに行けども誰も来ず
風鈴の音姑のいまの関心事
朝顔に水遣りおけと病院より
朝顔を見せ種をやる約束す
姑九十一歳
大時計五年を保証敬老日
寝そべればさらに親しき虫の声
野菜提げ来て秋日傘忘れゆく
藷洗ふ水にくれなゐ残りたる
鶴眠るすぐ飛び立てるかたちして
ふだん着の禰宜正月の予定貼る
左義長に寄る顔ぶれも老いて来し
屋根の雪あたり巻き込み落ちにけり
大まかに耕され土くろぐろと
冴返ること言ひ合うてゐたりけり
藤棚の下に寄り道女学生
ふたりの掌灯しほうたる移さるる
ふたりともハンカチを手に立ち話
採る気などなささう門の枇杷たわわ
若者らこんなにもゐる夏祭
虫時雨生くるものみな恋をして
焼き芋屋マイクの声もふっくらと
寒卵ひとつは殻に皺のあり
雀来ていつものくらし花八つ手
昼までを舞ふ春雪を見てすごす
ねこやなぎただいまひよこ生まれました
鶯や少し落着けもっと鳴け
永き日や隣組みな年金ぐらし
遠足や代田に映る色とりどり
桃色の蕾まあるし未草
秋立つやこのごろ長編読んでゐず
まじめにやればなんとかなりさう青蜜柑
絵画見て上野にをりし獺祭忌
障子貼る父とは違ふやり方で
暮早しもう食卓に姑の来て
ぜんざいにどんどの烟匂ひけり
鴨の子十羽産毛ふはふは飛ぶ真似も
神楽舞ふ始めと終り神拝し
どてら着てパリのことなど話しをり
寒波来る子どものころの寒さなり
若布刈り漁場はくじで決まりしと
山藤の高く懸かれり鞍馬道
下校子の天牛取りを手伝ひし
親鸞は夏のお生まれ祝餅
白南風やこれよりわがままに生きむ
すぐ忘ることも恩寵涼新た
ポケットより奈良のどんぐりぽろぽろと
母の初十夜つとめて兄逝けり
爪先と踵やや剥げ絵踏板
子らが飛び先生は縄回す役
日本の春の水持ち出国す
泊瀬詣旧街道は田植どき
万病に効く清水とか正しく飲む
清水うまし三輪明神は酒の神
夫病む
病得て虫の音のこと初めて言ふ
肩の手になぐさめらるる式部の実
初鴨とわかる泳ぎの嬉々として
銀杏採りの予定社務所の黒板に
ゆるびなき鱗の数や鰯雲
種採りて置き場所を言ふ遺言めく
檜林どの樹も垂らすからすうり
行くほどに紅葉良くなる岡城址
南国にいま石蕗の花伸びるのびる
年用意ひとりぐらしの練習中
初鏡何もせぬ間に老いてをり
嬉しさはいつもどほりのお正月
蝌蚪あまたすべて蛙となりたるや
梅咲いて庭に雀の戻り来し
お水取 四句
お松明火の粉掃く人従へて
チューリップどれも笑ひてあつけらかん
蝶々や常食となる蜆汁
夜桜や照らされてなほ白さ増す
つひに来し薬効かぬ日春深し
牡丹に合はせてもらふ外出許可
夫死す
残されて生きねばならぬ聖五月
かなしみはかなしみのまま白牡丹
言葉みな対語のかたち青葉風
話さぬ一日ほうたるに会ひに行く
ひとりで決めひとりで動く涼しさも
水撒きも我の仕事に加はりぬ
去年夫と天草にをり合歓のころ
亡夫の直しし戸は梅雨もよく滑る
読んで寝て食べては昼寝ひとり居は
水中のめだか水上のあめんぼう
サングラス外しほんたうの海の色
蝉の穴草の茂みに多かりし
夏籠りせむとて本を買うて来し
男手に弟が来て盆支度
弟の作りし西瓜供物とす
盆用意采配するは義姉なりし
玄関に鈴の音霊の来たまへり
身のうちに夫生きてをり天の川
朝より秋がすとんと来たりけり
曼珠沙華棚田一枚づつ荘厳
空の青棚田の黄金曼珠沙華

佳句が多く拾うのに手が疲れた。
されどこの快感は格別。
黙って居ても よき作り手は居るもの。
# by 575fudemakase | 2013-07-04 09:47 | 句集評など | Trackback | Comments(0)

波多野爽波句集「一筆時代」

波多野爽波句集「一筆時代」
      高澤良一・抽

建て増してかるた双六賑やかに
竹馬のみどり疵つき易きかな
寒林に貼り付くごとく厠あり
冬畳敷きつめて寺田屋と言ふ
盆梅に袖を払ひて坐りたる
それっきり見かけず涅槃絵解き僧
思ひきり大きくげんげ田を歩く
夏落葉掃くべき箒二三本
降りつのる雨には罌粟坊主降参
罌粟坊主大雨の底となりにけり
遊船のどれに乗るのか三隻も
羅のいづれの人を佳しとする
秋の風音羽の瀧のあたりより
はて暗き部屋かな葭戸入れたれば
かりそめに師と呼ばれもし寝冷かな
寝冷顔にて挨拶もままならず
どこか錆びはじめし氷掻機かな
墓参なるべく汗をかかぬやう
聞いてきし寺とは違ひ百日紅
大根を買ふ煌々と灯る中
隙間風さても積みたる本の数
炬燵して大いに嘆くことのあり
冬ざるる靴の先までかぐはしく
と見る間に本降りとなる鵙の贄
剪定の入念といふほどでなく
粗衣粗食にてはくれんの花明り
干潟波相もつれつつ裏返り
花冷の消ゴム屑の多く出て
チューリップ着易きことを第一に
商売にはやりすたりや壬生念佛
パサパサの髪にて桜しべ掃ける
石楠花のそこより宿の梯子段
草むしる右左履き違ふまま
担ぐかな絨緞巻いて棒となし
夜濯や貧乏寺と塀一重
七夕のほつりほつりの雨もよし
ちゃぶ台の脚を畳みて野分めく
盆に立つ二階へ運ぶビールかな
これといふ木蔭もなくて寺を出る
妹はしやうがない奴星月夜
大覚寺さてこそ藻刈大がかり
添水にてどうも英語と違ふやう
下着までさつぱり替へて燈下親し
よく掃きて馬追の来さうな畳
茸狩や寺の厠へまっすぐに
褞袍着て鏡にぶつかりさうになる
按摩機にかかりてをれば時雨れきし
歩を早むれば葱の束ゆさゆさと
褞袍をばそっくり脱いでいづくへか
切干の真白二時の日三時の日
大根を洗ふに喋り過ぎなるよ
ねんねこに墨のつきたる何とせう
蓮枯れてその水ひかる屋敷内
竹馬の子に大仏の裏みちよ
竹馬を駆つてゆかばや由比ヶ浜
蕗の薹袂にをさめ舟に乗る
遊船のあちこちに手を触れてみる
初桜襖運ぶに顔かくれ
大根の花に鼻毛のむずかゆく
傘ぶつけ合ひて壺焼屋に入る
菜の花の雨に投網の打たれけり
花ぐもり鳩舎の網目影をもつ
桜しべ降らして知らん顔の空
針箱の中より桜しべつまむ
飾りたる武具眺めては庭を掃く
壺焼や雨に大きく海ふくれ
竹皮を脱ぐ家うらを広くもち
水晶の大きな原石夏館
豆腐屋も颱風圏に入りにけり
プール辺に時間たつぷりありにけり
見渡して虎刈りであり芝刈つて
鷺草にはじめは堅き鼻緒かな
箸紙のひっ付いてくる汗の肘
糸瓜忌の厠掃除を取敢へず
夜学いま定規一せい使ふ音
ボンネット開け柿の籠栗の籠
ふくませし乳を仕舞ひぬ梅もどき
白露やおからを玉とまるめをり
釦つけて貰ってゐる間の水引草
末枯の雨を流して茎赤き
馬場に来てしばし日を浴び落葉浴び
畳まれてこそ襟巻の格子縞
うるはしき天を戴き畳替
寒林にふと聞きとめし奇声かな
わが手には負へざることと湯気立てて
参道や新しき足袋皺みきし
句集成りしかと鶲が今日もくる
剪定の空を自在に使ふかな
鯛焼を口を覆うて食べるかな
鯛焼の腹破れしを丸かぶり
雪くぼみ熊笹原と知られけり
山茱萸の前にて肩の力抜く
初桜一と鞭呉れて遠駈けへ
酢昆布が好きで椿が満開で
ひよどりの菜の花へ突込みしまま
山茱萸へ小きざみに近づいてゆく
山茱萸に佇つこの辺が宜しきと
たんぽぽをくるくるとヤクルトのおばさん
おへんろの去るに伸び伸ぶ燭夕べ
花の門(と)の閂外すこともなく
往時の坂広きまま風光るまま
大根の花より空巣狙ひの眼
オムライス毛虫そろそろ出る頃か
壬生念仏見てゐるうちに気が変り
永き日の芝の剥げたるところかな
体重計から背伸びして罌粟が見え
くもの糸吹き流れをり衣桁より
【ぼうふら】の屈伸すべて見下さる
尺蠖の中折帽に尺をとる
竹皮を脱ぐこのあたり金気水
一八やお妃選びのびのびに
てらてらとするは石蕗の葉他は蕗
舟虫の未だのろまの域を出ず
竹皮を脱ぐ宙返りするかたち
立葵まだ葉が嫩く花嫩く
寺田屋の裡窺へる日傘かな
網戸して北山杉の風がくる
夏安居の皇統系図掲げたる
越えさうでとうすみ閾越ゆるなく
金蠅がその傍にゐる肥柄杓
やはらかな浴衣もわが家なればこそ
お洒落とは身につきしもの墓詣
門火焚くとき身ほとりに師を感じ
星月夜読書の母の白ソックス
芭蕉葉の破れて元に復らざる
貝割菜あれの甍は相国寺
一曲が終り芭蕉葉破れをり
芭蕉破れすすみ下草みすぼらし
夜業してみんなに見ゆる時計あり
誰ひとり芭蕉の破れ口にせぬ
冬に入る煙草を持つは左の手
洋菓子の箱にもいちやう落葉かな
塔頭にあからさまなり茎の桶

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波多野爽波句集「一筆以後」
   高澤良一・抽

家長の煤掃の手に白雑巾
寒林を思ひ思ひに歩くかな
鮨屋にてこれは破魔矢の忘れもの
左義長へ何もそんなに急かずとも
楪に落ちはじめたり雪の粒
縁とは大蛤をすすり合ひ
摘みにきて貧乏寺の土筆かな
異なものの流れ過ぎたる芹の水
降り昏む雨や杉菜の浸かりそめ
チューリップ花びら外れかけてをり
桜しべ降る金文字は靴の中
種池のひとりで波を立ててゐる
折角の壬生念仏も見て来ずと
掃いてきて石榴の花が目の前に
げんげ田の雨のもたらす冷えなりし
潮干狩帰りの切符皆が持つ
桜しべ付く湯上りの足のうら
釣堀を雨が綺麗にしてくれし
代掻機始動のけむり吐き出しぬ
一巻きの予備の蚊遣の添へてあり
茎弱き矢車草も混りをり
西日さしそこ動かせぬものばかり
八瀬の子に水鉄砲を向けられし
夏山家尿る糞まる意のままに
観葉樹蝿虎の跳び下りし
唖蝉も来たる燈下の親しけれ
爽やかに今日の日程聞き入りぬ
次の世の子やねんねこに顔あかく
炬燵にて帽子あれこれ被りみる
切火して人送り出す負真綿
北風や椿油は瓶の底
雪折や少しづつ減り五色豆
仏壇の花絶やしたる雪解かな
飯蛸やさても鞍馬は山の中
訳ありてパンジーの鉢貰ひけり
この襖開ければ雛壇の裏よ
雪折をよく見し旅も終りかな
毛深きは情強(こわ)しとか連翹花
この我を鰻臭しと蟻のぼる
これしきの傷はや癒えよ花明り
しじみ蝶甘茶の桶に翅合はす
恥づかしきものげんげ田に捨ててあり
羅の人すんなりと寺に入る
草いきれいづれ醜名の草ばかり
姿見に人退けばあり百日紅
墓参終へさてはとあたり眺むれば
吾亦紅をとこをんなと靴を脱ぎ
今はもうゐのこづちより滴る雨
末枯るるその雲行きとなってきし
積む本を跨ぎ跨ぎて衣被
ハンカチは洗ひ溜めして末枯るる
露けさの極みや蝶はぼろぼろに
鴨などに心移りをしてならじ
その向う更に大きな冬座敷
冬座敷その端ちょっと借りもする
真赤なる毛布はたけばこの埃
毛布干すここ知恩院奥の奥
華頂山焼藷車など寄せず
冬座敷見ゆる限りの屋根濡れて
世帯もちてからずっとなり隙間風
隙間風折鶴の翅震ふほど
ボーイッシュな娘に猟犬の跳ねざまよ
スイミングクラブ飛沫のとぶ聖樹
北風に洗剤の泡押し合へる
南天に雪や手の甲すべすべし
赤ん坊這ふにまかせて初景色
ちゃんちゃんこには猫の爪かかり易
思ひきり蔵書減らさむ寒の月
拝見は毛皮のままで宜しきや
剥製のあの間この間に宿雪解
蜆売の言へる全くその通り
春風や凭れ合ひ立つ乗馬靴
見るからに重き障子に手をかけず
いと古きいと日の永きみ寺かな
茎立ちて潰すダンボール箱木箱
いと細き杉菜の中の流れかな
石楠花に長く変らず革スリッパ
魚島やばりばりひらく宿の傘
穴子裂くそれを見て立つ変な人
白地着て勝気の頬の赤らみて
蠅一つ居らぬ畳のひろびろと
歳時記を座右としたり梅雨の底
古雑巾絞ってをりぬ梅雨の底
コトデンでのんびり帰る行々子
牛蛙にやりにやりと読む本は
牛蛙御本山には大金庫
# by 575fudemakase | 2013-07-04 09:46 | 句集評など | Trackback | Comments(0)

名人×名句×名評集「上」を読んで

名人×名句×名評集「上」を読んで

(俳句講座6「現代名句評釈(明治書院刊)」より明治書院編集部整理)
平成二十四年八月)

小生、上述より久しく又はあまり見たことないと思う句を書き抜く

子規庵のユスラの実お前も貰うて来た 河東碧梧桐
炭竃は雨にくづれて遅桜 内藤鳴雪
ふるひ寄せて白魚崩れんばかりなり 夏目漱石
膓に春滴るや粥の味 夏目漱石
湯呑久しくこはさずに持ち四十となる 荻原井泉水
咲きいづるや桜さくらと咲きつらなり 荻原井泉水

昭和二年作。この句の作者は「『咲きいづる桜』で休止する。それから改めて
『さくらと咲きつらなり』といふ呼吸である」と説明し、また「『咲きいづる桜』
と眺めて、それから更に別の『桜』に目をうつす、しかしその桜は春の脉絡から
いへば決して別のものでない、この気持のうつりが『桜』ときって直に又『桜』
と受けつなげる呼吸である。そして『咲きつらなり』と遠く大きく目の放たれる
気持になって、この『咲きつらなり』が上の『咲きいづる』に応じて気持を結び
とめるといふリズムである」と説明している。これで委曲を尽くしている。
春爛漫の花の幕だ。咲きつぐ桜の気息がうかがわれる。

ー評・大野林火

海の中に桜さいたる日本かな 松根東洋城
光氏(みつうぢ)と紫と寝る蒲団かな 松根東洋城
移り住みて先づ見し花は薺かな 渡辺水巴
たんと食うてよき子孕みね桜餅 村上鬼城
冬籠る子女の一間を通りけり 前田普羅
アドバルーン冬木はづれに今日はなき 吉岡禅寺洞
雹に打たれ白さも白し大桜 長谷川かな女

出雲へ妻の旅立てるに
淡雪や妻がゐぬ日の蒸し鰈 臼田亜浪
何の菜のつぼみなるらん雑煮汁 室生犀星
朝さむや幹をはなるゝ竹の皮 室生犀星
# by 575fudemakase | 2013-07-04 09:44 | Trackback | Comments(0)

波多野爽波句集「骰子」

波多野爽波句集「骰子」

(第三句集、昭和六十一年一月、四百三句)

炬燵出て歩いてゆけば嵐山
いたづらに睡蓮花を増やしつつ
さきほどの雨またの雨爽やかに
新涼の雨はすかひに見上げけり
下りてゆく根釣の人の見ゆるかな
ヨットの帆近く来てゐる松手入
池涸るるされど苅込み行き届き
鮠の子のかたまりが濃し年の暮
福笑鉄橋斜め前方に
霙降る大八車鉄輪(かなわ)かな
波音の大王崎の蚊と生れ
繃帯の身をのり出して干潟見る
手に軽く握りて鱚といふ魚
その顔のまた出て覗く川床の雨
川床つづくぽっかり開いてまたつづく
玄関のただ開いてゐる茂かな
訪ひの声低かりし茂かな
菱採りしあたりの水のぐったりと
仲秋の金蠅にしてパッと散る
懸崖の菊の間に犬の顔
萩を刈りはじめ石には替の鎌
天ぷらの海老の尾赤き冬の空
避寒して鏡台の気に入らぬまま
避寒して海の入日に床柱
診察の椅子をくるりと鴨の湖
蕗の薹見てきしのみと答ふなり
骰子の一の目赤し春の山
黄あやめに機嫌直らぬままにゐる
鰻屋の二階がよろし走り梅雨
掃いてをり茅の輪失せたるそのあたり
妙法の火床ごしらへ見えて酌む
エレベーター出て大文字点いてゐる
腹少し出てゐて松の手入れかな
ここと坐りて焼藷を食べはじむ
水鳥にかぼそき声をあげし人
家ぢゆうの声聞き分けて椿かな
目が笑ひゐるこでまりの花越しに
煙草盆までとうすみの来ることも
来てすぐに気に入ってゐる避暑地かな
吾を見て雨の障子を閉めし人
おでん煮えさまざまな顔通りけり
毛皮脱ぎ置きてまっすぐ吾を見る
火を埋めるときに必ずうかぶ顔
雪うさぎ柔かづくり固づくり
剪定の遂にはシャツのはみ出でし
武具飾り終へて鼻唄交りかな
おしぼりをまだ手放さず柳絮とぶ
寸づまりなるも足早毛虫かな
巻尺を伸ばしてゆけば源五郎
羅のひとのなかなか頑なに
指一本出してつつきぬ冷し瓜
蓮見茶屋ドーンと遠き音は何
合点す浴衣の膝をうち叩き
大金をもちて茅の輪をくぐりけり
船遊びよくぞ著て来しこの柄を
背高に育つかこの子水遊び
犬が臥て横向きの顔秋の山
徒らに添水の竹の太きこと
これほどの浸け障子みな寺のもの
大ばった紫帯ぶと見ゆるなり
内玄関足袋脱ぎ捨ててありにけり
靴はいてから屏風絵を今一度
冬ざるるリボンかければ贈り物
この人の才能は未知おでん酒
いつも留守足袋を一つか二つ干し

波多野爽波句集「一筆」

(第四句集、三百七十五句、平成二年八月)

盆梅の蕾紙屑籠に捨つ
壺焼が運ばれてなほ浮かぬ顔
鮨桶の中が真赤や揚雲雀
行くところ雨に葉がちやももさくら
いま行くが鉄砲町よ風光る
町の名のそれぞれに佳き端午かな
水に浮く竹皮金ンをふちどりぬ
溝浚ふところを登り蝉丸社
座ぶとんにこれも逢坂山の蟻
一八のほかにはこれといふ花も
大寺や【ぼうふら】雨をよろこびて
脇息に倚れば直ちに牛蛙
栗の花踏んで別れぬみぎひだり
火熾しの団扇で裾をばたばたと
腹具合怪しけれども舟遊び
胸の裡明かさずに去る茂かな
寺にゐてががんぼとすぐ仲良しに
日の盛り豆辞典にて事足りし
秋風に倒れし音は簀子板
姿見は裾まで映すゐのこづち
ねこじゃらし太りにけりな花鉢に
ついてくる人はと見れば吾亦紅
子規の忌の板塀裾は犬が噛み
帳場から見ゆる限りや秋収
次なる子はやも宿して障子貼る
黄落のわが名しるけきロッカーよ
木端浮き消炭底に沈みをり
お祝儀と書いてにはかに雪催ひ
避寒して金使ふことごく僅か
剪定の脚立の足の掻きし土
やどかりの中をやどかり走り抜け
塔よりの雀チューリップに沈む
壬生の鉦クリーニング屋励むなり
流したる水桜しべ押してゆく
下闇にバケツ仲良く二つかな
天瓜粉まみれや寺のひとりつ子
羅や勝手知ったる寺廊下
捲き上げし簾に房の二つづつ
行々子殿に一筆申すべく
おしろいのまだまだ増ゆる花と見て
掃除婦の揃ひの服に秋が立つ
ソース壜汚れて立てる野分かな
首飾りざらっと置きたる野分かな
燈下親しむに涎を拭ひつつ
脱いである褞袍いくたび踏まれけり
湯豆腐を食べ散らしたるままの部屋
赤ん坊の尻持ち上ぐる冬座敷
池池とつぶやきながら枯をゆく
手が冷た頬に当てれば頬冷
闘牛士の如くに煤を払ひけり
配膳の成りて椿を一と眺め
夜着いて燈はみな春や嵐山
春眠や腫れものの根の深うして
この国や今し飛び交ふ新茶の荷
新茶の荷急ぎ届くよ字が撥ねて
青あらし電流強く流れをり
泰山木の花に怒りの相を見し
そのむかし書生部屋とか釣忍
籐椅子の鱗払ひて坐りけり
裂かれたる穴子のみんな目が澄んで
いろいろな泳ぎ方してプールにひとり
脱衣籠空蝉のとり縋れるも
大雨の降り昏めたる円座かな
帰省してその夜月の出遅くあり
川床遊び戸惑ひ顔のうつくしや
川床に居てタカラジェンヌかと思ふ
障子貼る糊の固まりぶるぶると
捕虫網その他何でもある教会
五山の火燃ゆるグランドピアノかな
尚毅居る裕明も居る大文字
鶏頭にこぼしてゆきし鰯かな
養鰻の見廻りの灯の露けしや
箸の先噛んで見てゐる野分かな
金策に夫婦頭を寄せすいっちょん
鉦叩虚子の世さして遠からず
気に入りの羽織と言へばこれ一つ
口論に負けては居らず冬の梅
竹の皮拾ひて胸に当てにけり
ゴールデンウィークの霊柩車が行くよ
蠅取紙蠅みな潰れゐたりけり
花茣蓙の我を覗きに雀くる
とうすみのこの慎しき訪ひは
金亀子とび続けをりいま何時
夏館廊下長きを舞ふごとく
老人よどこも網戸にしてひとり
瓜冷しあること思ふ二階かな
痣は濃く残りて二百十日かな
悲鳴にも似たり夜食の食べこぼし
十夜寺金魚の増えも減りもせず
# by 575fudemakase | 2013-07-04 09:43 | 句集評など | Trackback | Comments(0)


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


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らくらく例句検索

インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
よみ れいく

▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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