金原まさ子句集「カルナヴァル」

金原まさ子句集「カルナヴァル」

金原さんから句集をご恵送いただいた。
驚きつ且つ近しさを感じたのは次の三点。
著者の現住所が小生と同じ横浜市 金沢区でごく近くにお住まいであること。
血液型も小生と同じ AB型ということ。
句集の製本・印刷が小生の第四句集とおなじ会社であること。


1911年生まれ。102歳。作句開始49歳。
俳歴 「草苑」「街」「らん」
第四句集。

あとがき には
「以前、どなたの作でしたか「・・・人の終りは火の祭」という句
に出会い、深く心にとどめてあったのが甦り、依り憑いた感じです。
祭の賑やかさ、淋しさ、残酷さ、歌舞伎の「夏祭浪花鑑」の世界です。
好きなのです。AB型、天然。・・・・」
とある。

当集と別に エッセー「あら、もう102歳」も続けて出版。
当人いわく、
「私の中には道徳的で常識的なA子と、不道徳で非常識的なB子がいて、
両立している」と。

前作 99歳で出した句集「遊戯の家」は「99歳の不良少女」の〝年齢
を超越した新鮮な感性〟と注目された。

共鳴句
A群

ああ暗い煮詰まっているぎゅうとねぎ
やわらかくわけも云わずに蛭が付く

猿のように抱かれ干しいちじくを欲る
我肉を食べ放題や神の留守
【ヒトはケモノと菫は菫同志契れ】
(エロス表現としては前二句は菫句よりもより直接的)
鳥貌で鳥の手足で桜守
(たしかこんな絵 シャガールにありましたね)
身めぐりを雪だか蝶だか日暮れまで

ざら紙に青鉛筆で画く海鼠
(海鼠を画くとしたら確かにざら紙に青鉛筆がベストかも)
前へ向いて後ろへあるく海鼠かな

雪が降る海鼠に靨(えくぼ)ちらちらちら
な・なまこに大綿ひとつ付いていた
(前二句 音律の俳句 後句は吃音で
兜太句の〝狼にほたる〟に照応している)

炎天をおいらんあるきのおとこたち
(毎年 横浜野毛の大道芸祭には全裸に近い男女が全身に
金粉を塗りたくって路上で踊りまくるアトラクションがある。
金ぴかのお尻、金ぴかのおっぱい、皺寄るお腹)

満開の月夜のしゃぼん玉だまだまだま
今朝秋のお・おけえけえをひゃくさいも
 *おけえけえ は、お化粧のこと
(この二句も音律関連に特徴あり、どもりとか反響音)

血がほてる感じ風知草の前で

ほたるぶくろ卵のゆだる音がする
(通常詠法だと〝ほたるぶくろ〟のところは〝春の昼〟ぐらいだろう
ところが この作者にかかると〝ほたるぶくろ〟になる。また別な味
が出てくる)

中位のたましいだから中の鰻重
(〝中(ちゅう)だから中〟の表現がいい)

鶏頭の腋の昏さに安らぐや
(鶏頭の種採りをすると確かにこんな感じ)

十一月孔雀の首が日まみれよ

濃いかおで赤*えいが来る午後三時
(アカエイの貌は確かに注目に値する。濃いかお とはどういう貌か
判ったようで判らぬが面白い。小生の句の見立てでは以下の通り。
クー.クラックス.クラン団員エイ飛来 ぱらりとせ )

アカペラで辛夷が咲いている夜明け
(満開の辛夷は確かにこんなもの)

ああそうか昼食(ひる)は食べたのだ鰯雲

オムスクトムスクイルスノヤルスクチタカイダラボ春の雪
(このカタカナはシベリア鉄道沿いの都市名を羅列したようだ。
昔 阿波野青畝句の〝ペレストロィカペレストロィカ崎滋し〟の続編とも)

あにじゃかわいやおとうとつれていざや【あやめ】のふるさとへ
(どこか当句は歌謡 古謡の世界にも触れる。)

緋目高のうちいくつかは神の子よ
顔ちいさく生れ夏茱萸を食う女
(完熟でないグミを食べてしびれ縮まる舌。それと貌が小さいはどこか相関
関係有り)

べったら漬の樽にかいなのようなもの
白藤はもう腕である半分は
(作者の執着している語彙はと見れば「椿」「腕」などなど。ここは「腕」編)

別々の夢見て貝柱と貝は
がらがら蛇だからがらがら声で唄うのです
春帽子買いにふらりと往ったきり
ああみんなわかものなのだ天の川


B群
二階からヒバリが降りてきて野次る
ひな寿司の具に初蝶がまぜてある
山羊の匂いの白い毛布のような性
青鮫が「美坊主図鑑」購いゆきぬ
夜中いて朝いなくなる蠍だな
月が蹤けてくるにんげんを投げてやる


()内は小生のコメント
# by 575fudemakase | 2013-07-04 09:50 | 句集評など | Trackback | Comments(0)

我が家の春の桜

我が家の春の桜

我が家のこの狭い 55坪の庭に好みの桜の苗木を所狭しと
植え込んで楽しんでいる。出来れば 桜を一年中楽しみたい
という思ひである。一月~2月末は 十月桜、ヒマラヤ桜、
三波川桜が殺風景な庭を飾って呉れた。

三月からの春の桜は 三本の河津桜が三月第一週に咲きだし
熱海桜、寒緋桜(2)、啓翁桜、おかめ桜、陽光桜、横浜緋桜、
山桜と咲き続けた。

目下 3月31日現在 満開の櫻は以下の通り。

白妙、松前、一葉、駿河台匂、楊貴妃、仙台枝垂れ(2)
彼岸桜等々である。

今は蕾でその後咲く桜は

手弱女、関山(2)、天の川、御衣黄、普賢象、ウコン、
泰山府君樓、八重しだれなど

狭い庭ながら その種類は新宿御苑にも負けまいと努力
した結果である。
貝殻虫にやられやすく 冬場はその駆除に励んだ。
# by 575fudemakase | 2013-07-04 09:49 | Trackback | Comments(0)

河原敬子句集「恩寵」を読んで

河原敬子句集「恩寵」を読んで
    高澤良一・抽
(第一句集、平成二十五年三月、文學の森、昭和十九年生まれ)

俳句はやはり年季が入った方がよい。
年季が入ってこそ俳句である。
当集を読んでそう思う。
通明門下には良き俳人が大勢居る。
通明先生大繁盛である。

大吉のみくじは捨てず松過ぎぬ
魚はねて値札飛ばせり菜種梅雨
蜥蜴の尾蕗の葉よりも長かりし
ブラウスの白誇らかに入学す
思ひきり濡れ夕立を喜ぶ子
夏草を焼きて隣にどなられし
バス待つに寒さに負けて歩きけり
姑の風邪孝行めきしこと少し
豆飯や豆多きとこ姑所望
草抜けば蚯蚓反転して走る
二人して抱っこをねだる炎天下
一面のしろつめ草に鳩うようよ
受験子の靴磨きやり送り出す
花の名を後ろ送りに尾瀬の夏
生身魂常臥しのままにこにこと
また雨の気配にありし賀茂祭
敷物を取り換へしのみ夏座敷
全山をしろがねにして夕芒
藪椿海にのめりて紅を増す
全体に水平志向花水木
蟻遊ぶ陶のたぬきの腹の上
賞状の傾く味噌屋薄暑かな
台所棘持つものに茄子胡瓜
酔芙蓉酔ひ醒めぬまま果てにけり
嬉しきは良き正月と言はれしこと
下敷きのセルロイドほど初氷
休日と思うてしまふ花の昼
蕗の葉に蜥蜴遊べり揺れてをり
池の鯉小滝の下に集まれり
空蝉を集め来し夫十三匹
山頂に終の虫の音ありにけり
種区別して広縁に干してあり
高倉健のやうに着こなせ懐手
お水取待つ間に星座整ひぬ
見下ろせば桜畳となってゐし
螢烏賊茹でられ眼突出す
ついたちのきっぱり晴れて十月来
石舞台の石組みあらは赤のまま
初詣ついでのやうに寄る三社
還暦や真っ直ぐに座す初鏡
子らはゐず大人ばかりの雛まつり
摘み口のたちまち黒し蕗のたう
鯉幟良き川風に太りたる
台風は昼過ぎか店混んで来し
青竹に初芒入れ水たっぷり
雨の日は潤んでをりし虫の声
雄鹿現る案内人も興奮す
姑の手の届くは残し柿を*もぐ
鰤一匹子を抱くごとく持ち帰る
重ね着と言へばスマート着ぶくれて
談笑の真中に赤子日脚伸ぶ
よろこびはいつもささやか春兆す
頂きし筍に蟻付いて来し
忘れ物して炎昼を二往復
蛇ゐしと呼びに行けども誰も来ず
風鈴の音姑のいまの関心事
朝顔に水遣りおけと病院より
朝顔を見せ種をやる約束す
姑九十一歳
大時計五年を保証敬老日
寝そべればさらに親しき虫の声
野菜提げ来て秋日傘忘れゆく
藷洗ふ水にくれなゐ残りたる
鶴眠るすぐ飛び立てるかたちして
ふだん着の禰宜正月の予定貼る
左義長に寄る顔ぶれも老いて来し
屋根の雪あたり巻き込み落ちにけり
大まかに耕され土くろぐろと
冴返ること言ひ合うてゐたりけり
藤棚の下に寄り道女学生
ふたりの掌灯しほうたる移さるる
ふたりともハンカチを手に立ち話
採る気などなささう門の枇杷たわわ
若者らこんなにもゐる夏祭
虫時雨生くるものみな恋をして
焼き芋屋マイクの声もふっくらと
寒卵ひとつは殻に皺のあり
雀来ていつものくらし花八つ手
昼までを舞ふ春雪を見てすごす
ねこやなぎただいまひよこ生まれました
鶯や少し落着けもっと鳴け
永き日や隣組みな年金ぐらし
遠足や代田に映る色とりどり
桃色の蕾まあるし未草
秋立つやこのごろ長編読んでゐず
まじめにやればなんとかなりさう青蜜柑
絵画見て上野にをりし獺祭忌
障子貼る父とは違ふやり方で
暮早しもう食卓に姑の来て
ぜんざいにどんどの烟匂ひけり
鴨の子十羽産毛ふはふは飛ぶ真似も
神楽舞ふ始めと終り神拝し
どてら着てパリのことなど話しをり
寒波来る子どものころの寒さなり
若布刈り漁場はくじで決まりしと
山藤の高く懸かれり鞍馬道
下校子の天牛取りを手伝ひし
親鸞は夏のお生まれ祝餅
白南風やこれよりわがままに生きむ
すぐ忘ることも恩寵涼新た
ポケットより奈良のどんぐりぽろぽろと
母の初十夜つとめて兄逝けり
爪先と踵やや剥げ絵踏板
子らが飛び先生は縄回す役
日本の春の水持ち出国す
泊瀬詣旧街道は田植どき
万病に効く清水とか正しく飲む
清水うまし三輪明神は酒の神
夫病む
病得て虫の音のこと初めて言ふ
肩の手になぐさめらるる式部の実
初鴨とわかる泳ぎの嬉々として
銀杏採りの予定社務所の黒板に
ゆるびなき鱗の数や鰯雲
種採りて置き場所を言ふ遺言めく
檜林どの樹も垂らすからすうり
行くほどに紅葉良くなる岡城址
南国にいま石蕗の花伸びるのびる
年用意ひとりぐらしの練習中
初鏡何もせぬ間に老いてをり
嬉しさはいつもどほりのお正月
蝌蚪あまたすべて蛙となりたるや
梅咲いて庭に雀の戻り来し
お水取 四句
お松明火の粉掃く人従へて
チューリップどれも笑ひてあつけらかん
蝶々や常食となる蜆汁
夜桜や照らされてなほ白さ増す
つひに来し薬効かぬ日春深し
牡丹に合はせてもらふ外出許可
夫死す
残されて生きねばならぬ聖五月
かなしみはかなしみのまま白牡丹
言葉みな対語のかたち青葉風
話さぬ一日ほうたるに会ひに行く
ひとりで決めひとりで動く涼しさも
水撒きも我の仕事に加はりぬ
去年夫と天草にをり合歓のころ
亡夫の直しし戸は梅雨もよく滑る
読んで寝て食べては昼寝ひとり居は
水中のめだか水上のあめんぼう
サングラス外しほんたうの海の色
蝉の穴草の茂みに多かりし
夏籠りせむとて本を買うて来し
男手に弟が来て盆支度
弟の作りし西瓜供物とす
盆用意采配するは義姉なりし
玄関に鈴の音霊の来たまへり
身のうちに夫生きてをり天の川
朝より秋がすとんと来たりけり
曼珠沙華棚田一枚づつ荘厳
空の青棚田の黄金曼珠沙華

佳句が多く拾うのに手が疲れた。
されどこの快感は格別。
黙って居ても よき作り手は居るもの。
# by 575fudemakase | 2013-07-04 09:47 | 句集評など | Trackback | Comments(0)

波多野爽波句集「一筆時代」

波多野爽波句集「一筆時代」
      高澤良一・抽

建て増してかるた双六賑やかに
竹馬のみどり疵つき易きかな
寒林に貼り付くごとく厠あり
冬畳敷きつめて寺田屋と言ふ
盆梅に袖を払ひて坐りたる
それっきり見かけず涅槃絵解き僧
思ひきり大きくげんげ田を歩く
夏落葉掃くべき箒二三本
降りつのる雨には罌粟坊主降参
罌粟坊主大雨の底となりにけり
遊船のどれに乗るのか三隻も
羅のいづれの人を佳しとする
秋の風音羽の瀧のあたりより
はて暗き部屋かな葭戸入れたれば
かりそめに師と呼ばれもし寝冷かな
寝冷顔にて挨拶もままならず
どこか錆びはじめし氷掻機かな
墓参なるべく汗をかかぬやう
聞いてきし寺とは違ひ百日紅
大根を買ふ煌々と灯る中
隙間風さても積みたる本の数
炬燵して大いに嘆くことのあり
冬ざるる靴の先までかぐはしく
と見る間に本降りとなる鵙の贄
剪定の入念といふほどでなく
粗衣粗食にてはくれんの花明り
干潟波相もつれつつ裏返り
花冷の消ゴム屑の多く出て
チューリップ着易きことを第一に
商売にはやりすたりや壬生念佛
パサパサの髪にて桜しべ掃ける
石楠花のそこより宿の梯子段
草むしる右左履き違ふまま
担ぐかな絨緞巻いて棒となし
夜濯や貧乏寺と塀一重
七夕のほつりほつりの雨もよし
ちゃぶ台の脚を畳みて野分めく
盆に立つ二階へ運ぶビールかな
これといふ木蔭もなくて寺を出る
妹はしやうがない奴星月夜
大覚寺さてこそ藻刈大がかり
添水にてどうも英語と違ふやう
下着までさつぱり替へて燈下親し
よく掃きて馬追の来さうな畳
茸狩や寺の厠へまっすぐに
褞袍着て鏡にぶつかりさうになる
按摩機にかかりてをれば時雨れきし
歩を早むれば葱の束ゆさゆさと
褞袍をばそっくり脱いでいづくへか
切干の真白二時の日三時の日
大根を洗ふに喋り過ぎなるよ
ねんねこに墨のつきたる何とせう
蓮枯れてその水ひかる屋敷内
竹馬の子に大仏の裏みちよ
竹馬を駆つてゆかばや由比ヶ浜
蕗の薹袂にをさめ舟に乗る
遊船のあちこちに手を触れてみる
初桜襖運ぶに顔かくれ
大根の花に鼻毛のむずかゆく
傘ぶつけ合ひて壺焼屋に入る
菜の花の雨に投網の打たれけり
花ぐもり鳩舎の網目影をもつ
桜しべ降らして知らん顔の空
針箱の中より桜しべつまむ
飾りたる武具眺めては庭を掃く
壺焼や雨に大きく海ふくれ
竹皮を脱ぐ家うらを広くもち
水晶の大きな原石夏館
豆腐屋も颱風圏に入りにけり
プール辺に時間たつぷりありにけり
見渡して虎刈りであり芝刈つて
鷺草にはじめは堅き鼻緒かな
箸紙のひっ付いてくる汗の肘
糸瓜忌の厠掃除を取敢へず
夜学いま定規一せい使ふ音
ボンネット開け柿の籠栗の籠
ふくませし乳を仕舞ひぬ梅もどき
白露やおからを玉とまるめをり
釦つけて貰ってゐる間の水引草
末枯の雨を流して茎赤き
馬場に来てしばし日を浴び落葉浴び
畳まれてこそ襟巻の格子縞
うるはしき天を戴き畳替
寒林にふと聞きとめし奇声かな
わが手には負へざることと湯気立てて
参道や新しき足袋皺みきし
句集成りしかと鶲が今日もくる
剪定の空を自在に使ふかな
鯛焼を口を覆うて食べるかな
鯛焼の腹破れしを丸かぶり
雪くぼみ熊笹原と知られけり
山茱萸の前にて肩の力抜く
初桜一と鞭呉れて遠駈けへ
酢昆布が好きで椿が満開で
ひよどりの菜の花へ突込みしまま
山茱萸へ小きざみに近づいてゆく
山茱萸に佇つこの辺が宜しきと
たんぽぽをくるくるとヤクルトのおばさん
おへんろの去るに伸び伸ぶ燭夕べ
花の門(と)の閂外すこともなく
往時の坂広きまま風光るまま
大根の花より空巣狙ひの眼
オムライス毛虫そろそろ出る頃か
壬生念仏見てゐるうちに気が変り
永き日の芝の剥げたるところかな
体重計から背伸びして罌粟が見え
くもの糸吹き流れをり衣桁より
【ぼうふら】の屈伸すべて見下さる
尺蠖の中折帽に尺をとる
竹皮を脱ぐこのあたり金気水
一八やお妃選びのびのびに
てらてらとするは石蕗の葉他は蕗
舟虫の未だのろまの域を出ず
竹皮を脱ぐ宙返りするかたち
立葵まだ葉が嫩く花嫩く
寺田屋の裡窺へる日傘かな
網戸して北山杉の風がくる
夏安居の皇統系図掲げたる
越えさうでとうすみ閾越ゆるなく
金蠅がその傍にゐる肥柄杓
やはらかな浴衣もわが家なればこそ
お洒落とは身につきしもの墓詣
門火焚くとき身ほとりに師を感じ
星月夜読書の母の白ソックス
芭蕉葉の破れて元に復らざる
貝割菜あれの甍は相国寺
一曲が終り芭蕉葉破れをり
芭蕉破れすすみ下草みすぼらし
夜業してみんなに見ゆる時計あり
誰ひとり芭蕉の破れ口にせぬ
冬に入る煙草を持つは左の手
洋菓子の箱にもいちやう落葉かな
塔頭にあからさまなり茎の桶

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波多野爽波句集「一筆以後」
   高澤良一・抽

家長の煤掃の手に白雑巾
寒林を思ひ思ひに歩くかな
鮨屋にてこれは破魔矢の忘れもの
左義長へ何もそんなに急かずとも
楪に落ちはじめたり雪の粒
縁とは大蛤をすすり合ひ
摘みにきて貧乏寺の土筆かな
異なものの流れ過ぎたる芹の水
降り昏む雨や杉菜の浸かりそめ
チューリップ花びら外れかけてをり
桜しべ降る金文字は靴の中
種池のひとりで波を立ててゐる
折角の壬生念仏も見て来ずと
掃いてきて石榴の花が目の前に
げんげ田の雨のもたらす冷えなりし
潮干狩帰りの切符皆が持つ
桜しべ付く湯上りの足のうら
釣堀を雨が綺麗にしてくれし
代掻機始動のけむり吐き出しぬ
一巻きの予備の蚊遣の添へてあり
茎弱き矢車草も混りをり
西日さしそこ動かせぬものばかり
八瀬の子に水鉄砲を向けられし
夏山家尿る糞まる意のままに
観葉樹蝿虎の跳び下りし
唖蝉も来たる燈下の親しけれ
爽やかに今日の日程聞き入りぬ
次の世の子やねんねこに顔あかく
炬燵にて帽子あれこれ被りみる
切火して人送り出す負真綿
北風や椿油は瓶の底
雪折や少しづつ減り五色豆
仏壇の花絶やしたる雪解かな
飯蛸やさても鞍馬は山の中
訳ありてパンジーの鉢貰ひけり
この襖開ければ雛壇の裏よ
雪折をよく見し旅も終りかな
毛深きは情強(こわ)しとか連翹花
この我を鰻臭しと蟻のぼる
これしきの傷はや癒えよ花明り
しじみ蝶甘茶の桶に翅合はす
恥づかしきものげんげ田に捨ててあり
羅の人すんなりと寺に入る
草いきれいづれ醜名の草ばかり
姿見に人退けばあり百日紅
墓参終へさてはとあたり眺むれば
吾亦紅をとこをんなと靴を脱ぎ
今はもうゐのこづちより滴る雨
末枯るるその雲行きとなってきし
積む本を跨ぎ跨ぎて衣被
ハンカチは洗ひ溜めして末枯るる
露けさの極みや蝶はぼろぼろに
鴨などに心移りをしてならじ
その向う更に大きな冬座敷
冬座敷その端ちょっと借りもする
真赤なる毛布はたけばこの埃
毛布干すここ知恩院奥の奥
華頂山焼藷車など寄せず
冬座敷見ゆる限りの屋根濡れて
世帯もちてからずっとなり隙間風
隙間風折鶴の翅震ふほど
ボーイッシュな娘に猟犬の跳ねざまよ
スイミングクラブ飛沫のとぶ聖樹
北風に洗剤の泡押し合へる
南天に雪や手の甲すべすべし
赤ん坊這ふにまかせて初景色
ちゃんちゃんこには猫の爪かかり易
思ひきり蔵書減らさむ寒の月
拝見は毛皮のままで宜しきや
剥製のあの間この間に宿雪解
蜆売の言へる全くその通り
春風や凭れ合ひ立つ乗馬靴
見るからに重き障子に手をかけず
いと古きいと日の永きみ寺かな
茎立ちて潰すダンボール箱木箱
いと細き杉菜の中の流れかな
石楠花に長く変らず革スリッパ
魚島やばりばりひらく宿の傘
穴子裂くそれを見て立つ変な人
白地着て勝気の頬の赤らみて
蠅一つ居らぬ畳のひろびろと
歳時記を座右としたり梅雨の底
古雑巾絞ってをりぬ梅雨の底
コトデンでのんびり帰る行々子
牛蛙にやりにやりと読む本は
牛蛙御本山には大金庫
# by 575fudemakase | 2013-07-04 09:46 | 句集評など | Trackback | Comments(0)

名人×名句×名評集「上」を読んで

名人×名句×名評集「上」を読んで

(俳句講座6「現代名句評釈(明治書院刊)」より明治書院編集部整理)
平成二十四年八月)

小生、上述より久しく又はあまり見たことないと思う句を書き抜く

子規庵のユスラの実お前も貰うて来た 河東碧梧桐
炭竃は雨にくづれて遅桜 内藤鳴雪
ふるひ寄せて白魚崩れんばかりなり 夏目漱石
膓に春滴るや粥の味 夏目漱石
湯呑久しくこはさずに持ち四十となる 荻原井泉水
咲きいづるや桜さくらと咲きつらなり 荻原井泉水

昭和二年作。この句の作者は「『咲きいづる桜』で休止する。それから改めて
『さくらと咲きつらなり』といふ呼吸である」と説明し、また「『咲きいづる桜』
と眺めて、それから更に別の『桜』に目をうつす、しかしその桜は春の脉絡から
いへば決して別のものでない、この気持のうつりが『桜』ときって直に又『桜』
と受けつなげる呼吸である。そして『咲きつらなり』と遠く大きく目の放たれる
気持になって、この『咲きつらなり』が上の『咲きいづる』に応じて気持を結び
とめるといふリズムである」と説明している。これで委曲を尽くしている。
春爛漫の花の幕だ。咲きつぐ桜の気息がうかがわれる。

ー評・大野林火

海の中に桜さいたる日本かな 松根東洋城
光氏(みつうぢ)と紫と寝る蒲団かな 松根東洋城
移り住みて先づ見し花は薺かな 渡辺水巴
たんと食うてよき子孕みね桜餅 村上鬼城
冬籠る子女の一間を通りけり 前田普羅
アドバルーン冬木はづれに今日はなき 吉岡禅寺洞
雹に打たれ白さも白し大桜 長谷川かな女

出雲へ妻の旅立てるに
淡雪や妻がゐぬ日の蒸し鰈 臼田亜浪
何の菜のつぼみなるらん雑煮汁 室生犀星
朝さむや幹をはなるゝ竹の皮 室生犀星
# by 575fudemakase | 2013-07-04 09:44 | Trackback | Comments(0)


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
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《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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