邯鄲 の俳句

邯鄲 の俳句

邯鄲

例句を挙げる。

こときれてなほ邯鄲のうすみどり 富安風生(1885-1979)
はるけきを待つ邯鄲の鳴くを待つ 齋藤玄 『雁道』
むらさめに邯鄲のなく山の草 飯田蛇笏 春蘭
一見もなく邯鄲を百聞す 白岩三郎
傷ひとつなき邯鄲の骸かな 岸本尚毅 舜
刻過ぎゆく邯鄲のこゑ止めば 橋本榮治 越在
口に指立てて邯鄲吾子と聞く 石川桂郎 高蘆
夕日草にあり邯鄲の鳴き始む 高木晴子 花 季
夕霧に邯鄲のやむ山の草 飯田蛇笏
嬰児だいて邯鄲きかな花圃の中 飯田蛇笏 春蘭
宿題の子に邯鄲の遠音澄む 西村和子 窓
待つほどに月の邯鄲沼堤 石井とし夫
後手をついて邯鄲聴いてをり 石嶌岳
月の出の邯鄲の闇うすれつつ 大野林火
月消ぬる邯鄲それのごとく鳴く 山口青邨
欠席の返事邯鄲を聞く会へ 田川飛旅子 『邯鄲』
湧きつぎて邯鄲のこゑ今ありぬ 岸田稚魚 筍流し
火にちかく邯鄲の鳴く秋ぐもり 飯田蛇笏 春蘭
牛売りし夜は邯鄲が胸に棲む 加藤安希子
玲瓏として邯鄲のむくろかな 富安風生
目つむりて邯鄲の聲引きよせし(武州御嶽山上) 上村占魚 『萩山』
瞑りて邯鄲の闇近づけぬ 永峰久比古
秋暑く手首尾狂ひし邯鄲師 文挟夫佐恵 雨 月
籠枕して邯鄲の夢もなし 後藤比奈夫 祇園守
粟炊いて邯鄲謡ふ男哉 寺田寅彦
缺席の返事邯鄲を聞く会へ 田川飛旅子
美しき死を邯鄲に教へらる 富安風生
羽化終へし邯鄲おのれのぬけがらを喰らひ尽くして顔あげざりき 久我田鶴子
聴かれしや水巴がこゑを邯鄲を 渡辺恭子
萱の根に沁む邯鄲のきかれたり 村越化石 山國抄
虫籠の邯鄲淡し月させば 水原秋櫻子
裾野包み邯鄲包み霧月夜 町田しげき
足しびれて邯鄲の昼寐夢さめぬ 子規句集 虚子・碧梧桐選
身じろげるとき邯鄲に鳴かれけり 高澤良一 ももすずめ
邯鄲とききしが山雨俄なり 甲賀山村
邯鄲と人いふに耳さびしかり 岸田稚魚
邯鄲にくもれるまなこ拭きにけり 赤尾兜子
邯鄲に地の刻移る月あかり 豊長みのる
邯鄲に歩けば見えてくる夜道 辻井ト童
邯鄲に美しき客あれば足る 京極杞陽
邯鄲のこゑあり風のあはひより 岩渕晃三
邯鄲のこゑのしろがね綴りけり 根岸 善雄
邯鄲のこゑの中なり夜坐の僧 藤原如水
邯鄲のこゑ月光をのぼるなり 三嶋隆英
邯鄲のそれと聞きゐるさはりかな 高澤良一 素抱
邯鄲のなか~啼かぬ豪奢かな 中島月笠 月笠句集
邯鄲のほの~啼いて虫屋かな 中島月笠 月笠句集
邯鄲の人見も知らず鳴きにけり 後藤夜半 翠黛
邯鄲の冷たき脚を思ふべし 長谷川櫂
邯鄲の声すぐそこに闇深し 下田閑声子
邯鄲の声たゞしさよ風の中 相馬遷子 山河
邯鄲の声に佇む熔岩の径 内山 茂
邯鄲の声のしろがね風落つる 関根黄鶴亭
邯鄲の声のゆくへのせせらげる 原 柯城
邯鄲の声の満ち干の月の谷 野沢節子
邯鄲の声まろび来て光琳画 河野南畦
邯鄲の声明六つの鐘のあと 西村公鳳
邯鄲の声沁むばかり月の熔岩 小林碧郎
邯鄲の声真似せよと云はれても 山中みね子
邯鄲の声触れてくる夜の素顔 野澤節子 花 季
邯鄲の夜は人かげもまた淡し 土方 秋湖
邯鄲の夢とも空をゆく火とも(盟友鈴木詮子逝く) 石原八束 『仮幻』以後
邯鄲の夢はじまりし水中花 橋田憲明
邯鄲の夢路追ひ来て鳴きつづく 水原秋櫻子
邯鄲の宿のそば殻枕かな 荒井正隆
邯鄲の屏風のかげに飼はれをり 辻桃子
邯鄲の市に鰒見る雪の朝 蕪村遺稿 冬
邯鄲の市栄えをり夕葎 堀口星眠 営巣期
邯鄲の息つくときのしゞまかな 斎藤千萩
邯鄲の文体凛とまた縷々と 田川飛旅子 『山法師』
邯鄲の枕かゝへて二日灸 妻木 松瀬青々
邯鄲の歌三昧や影見えて 堀口星眠 営巣期
邯鄲の流離流離と鳴きにけり 永田耕一郎 雪明
邯鄲の穂芒遠はけぶるなり 山口草堂
邯鄲の筥鳴りひびきをりにけり 鈴木貞雄
邯鄲の粗末なる蟲の鳴きにけり 後藤夜半
邯鄲の絶えし夜より山の音 澤田 緑生
邯鄲の縷々と翳抱く萱ばかり 山口草堂
邯鄲の草より淡く草に棲む 脇 祥一
邯鄲の葉裏にほそき月の声 角川源義
邯鄲の薄羽かなしく捕へらる 新井 英子
邯鄲の辺や生えそめし昼の髯 岸田稚魚
邯鄲の遠きは風に消えにけり 井上波二
邯鄲の闇もて富士を塗りつぶす 宮下翠舟
邯鄲の闇をへだてて外湯の灯 井沢正江
邯鄲の闇茫々と風が過ぎ 永作美千穂
邯鄲の音色を通り過ぎてをり 稲畑汀子
邯鄲の骸透くまで鳴きとほす 山口草堂
邯鄲の鳴き細りつつすきとほり 西村和子 窓
邯鄲の鳴くほか能のなき顔ぞ 堀口星眠 営巣期
邯鄲の鳴ける遠音に風の出て 行方克巳
邯鄲はいまとらはれの夜の騎士 堀口星眠 営巣期
邯鄲やあまたの虫の声の中 黒坂紫陽子
邯鄲やうつりすまひし家の垣 木津柳芽
邯鄲やからまつ林遠く置き 館岡沙緻
邯鄲やこよひの宿は御師の家 沢木欣一
邯鄲やみちのおくなる一挽歌 加藤楸邨
邯鄲やみづいろの山くろき川 中拓夫
邯鄲やゆめにも未だ帰還せず 北見さとる
邯鄲や一燈くらき山の駅 奈良千代子
邯鄲や並べて寝座は正しうす 清水基吉 寒蕭々
邯鄲や人はそれぞれ霧に消え 古賀まり子 緑の野以後
邯鄲や叢中泉あるごとし 羽部洞然
邯鄲や呼名もたざる牧の犬 堀口星眠 営巣期
邯鄲や地上三尺まで暗し 和田悟朗
邯鄲や夜の山寺のどこにでも 山口 笙堂
邯鄲や子供の頃のまくらがり 清水基吉
邯鄲や山みづの曳く夕あかり 荒井正隆
邯鄲や山家は昼の星見えて 内山亜川
邯鄲や我れのみ踏まぬ草の露 碧雲居句集 大谷碧雲居
邯鄲や戦遠のきつつ近く 小檜山繁子
邯鄲や掘られて甑(こしき)けむり色 宮坂静生
邯鄲や日のかたぶきに山颪 飯田蛇笏 山廬集
邯鄲や星の滴に草は濡れ 竹内留村
邯鄲や昼の霧ゆく千草原 鷲谷七菜子 花寂び
邯鄲や月待ちて立つ奥の院 水原秋桜子
邯鄲や月齢育ちつゝありし 岩原玖々
邯鄲や樅のほつ枝に星一つ 相馬遷子 山国
邯鄲や櫛の歯立ての夜を徹す 加藤知世子 花 季
邯鄲や永久の眠りにつくもよし 高畑信子
邯鄲や湖囲む灯のまたたかず 松田 多朗
邯鄲や滋養の酒を舌の先 村越化石
邯鄲や生涯といふ涯にゐて 木内怜子
邯鄲や町の灯に載る雲一朶 伊藤いと子
邯鄲や白樺ばやし晝ねむり 相馬遷子 雪嶺
邯鄲や目瞑れば四囲はや黄土 金箱戈止夫
邯鄲や神に近づく道けはし 加藤知世子 花寂び
邯鄲や移す歩に影したがひて 及川貞
邯鄲や箸を逃るる笹豆腐 藤原たかを
邯鄲や精霊来る径つづり 羽部洞然
邯鄲や翳さしやすき草の山 鷲谷七菜子 花寂び
邯鄲や胎蔵の空はるかにも 大西淳二
邯鄲や胸元の闇濡れはじむ ほんだゆき
邯鄲や荷葉のみどりなかなかに 伊丹 丈蘭
邯鄲や萩わけゆきて谷見えず 殿村莵絲子
邯鄲や貧しさ語り継がれ来し 稲畑汀子
邯鄲や酒断ちて知る夜の襞 正木浩一
邯鄲や酔余の昼寝泛くごとし 山口草堂
邯鄲や隣る一つも月の山 村越化石
邯鄲や露ふる音の草にあり 竹内留村
邯鄲や顔もわからずすれ違ふ 岡田日郎
邯鄲や風鎮まれば草に鳴く 菅原文子
邯鄲や高原はものの翳ひそむ 山口草堂
邯鄲をきくべき部屋は灯を入れず 稲垣きくの 黄 瀬
邯鄲をきく爪先に身を乗せし 岡田 和子
邯鄲を手捕りしあとの風淋し 堀口星眠 営巣期
邯鄲を捕りし双手の露まみれ 根岸 善雄
邯鄲を聞きとめてをる遠目かな 千代田葛彦
邯鄲を聞くそばがらの枕かな 川崎展宏
邯鄲を聞く一行のばらばらに 森田公司
邯鄲を聴きにひきずる下駄の音 高澤良一 ねずみのこまくら
邯鄲を覗き込みては胸薄し 岸田稚魚 筍流し
邯鄲を遠き音色と思ひ聴く 工藤いはほ
邯鄲を飼ふわが庭のいづこかに 相馬遷子 山河
邯鄲を飼へば火攻めのごとく鳴く 堀口星眠 営巣期
邯鄲死すバレリーナの死の如く 鈴木貞雄
鈴虫は雨邯鄲は雫打つ 松山足羽
雲の上の塔に邯鄲飼ひたしや 大木あまり 雲の塔
風が打つ戸に邯鄲のつつがなし 目迫秩父
風が消す邯鄲のこゑ人の夢 渡邊千枝子
鳴きやめぬ邯鄲となる側に居る 石井とし夫



邯鄲 補遺

いにしへの邯鄲に黍熟れにけり 加藤秋邨
おもひあらた邯鄲の鳴く國土かも 飯田蛇笏 白嶽
こゝこせは世は邯鄲の枕はし 正岡子規
こときれてなほ邯鄲のうすみどり 富安風生
なのはなやかへり見すれば邯鄲里 加藤曉台
はるけきを待つ邯鄲の鳴くを待つ 斎藤玄 雁道
むらさめに邯鄲のなく山の草 飯田蛇笏 春蘭
嬰児だいて邯鄲きかな花圃の中 飯田蛇笏 春蘭
火にちかく邯鄲かきて秋ぐもり 飯田蛇笏 心像
火にちかく邯鄲の鳴く秋ぐもり 飯田蛇笏 春蘭
楽遠くなり邯鄲の昼寝夢さめぬ 正岡子規 昼寝
橋こせは世は邯鄲の枕かな 正岡子規
橋こせは世ハ邯鄲や枕はし 正岡子規
月の出の邯鄲の闇うすれつつ 大野林火 早桃 太白集
月消ぬる邯鄲それのごとく鳴く 山口青邨
口に指立てて邯鄲吾子と聞く 石川桂郎 高蘆
書屋の灯消し邯鄲に夜を与ふ 富安風生
戦死者と邯鄲の灼くる野を過ぎゆく 加藤秋邨
足しひれて邯鄲の昼寝夢さめぬ 正岡子規 昼寝
待宵や邯鄲籠に鳴きいでて 水原秋櫻子 蘆雁
虫籠の邯鄲淡く声あはし 水原秋櫻子 殉教
虫籠の邯鄲淡し月させば 水原秋櫻子 殉教
朝の間の邯鄲の鳴く刻しばし 清崎敏郎
渡りゆけは世ハ邯鄲の枕かな 正岡子規
渡りゆけは世は邯鄲や枕はし 正岡子規
微は微にて邯鄲の髭風を待つ 加藤秋邨
美しき死を邯鄲に教へらる 富安風生
聞きすましみて邯鄲の声なりし 清崎敏郎
霧こめて四顧邯鄲の声ばかり 富安風生
湧きつぎて邯鄲のこゑ今ありぬ 岸田稚魚 筍流し
玲瓏として邯鄲のむくろかな 富安風生
籠枕して邯鄲の夢もなし 後藤比奈夫
縷々と鳴き邯鄲声を絶たぬかな 清崎敏郎
邯鄲 の音は湖上にも満ちにけり 富安風生
邯鄲と人いふに耳さびしかり 岸田稚魚
邯鄲にくもれるまなこ拭きにけり 赤尾兜子 歳華集
邯鄲につかれ忘れる枕かな 正岡子規 虫の声
邯鄲に息つぐときのありて風 鷲谷七菜子 天鼓
邯鄲に鳴き変りゐし夜のしじま 稲畑汀子
邯鄲のいただきに生の声落す 加藤秋邨
邯鄲のこゑのぼりゐる夜干梅 森澄雄
邯鄲のせり上りくる峠神 岸田稚魚
邯鄲の闇のどこかに胡笛かな 松崎鉄之介
邯鄲の一つにすがり他は棄つる 加藤秋邨
邯鄲の音よりだんだん丸乳房 加藤秋邨
邯鄲の細音たどれば潮の音 加藤秋邨
邯鄲の止みし草の葉ばかりかな 加藤秋邨
邯鄲の死こそ上品上位佛 富安風生
邯鄲の死装束の銀光り 富安風生
邯鄲の人見も知らず鳴きにけり 後藤夜半 翠黛
邯鄲の声たゞしさよ風の中 相馬遷子 山河
邯鄲の声もかれがれ灯も消えて 山口青邨
邯鄲の声触れてくる夜の素顔 野澤節子 花季
邯鄲の声澄み通る美しや 高浜年尾
邯鄲の粗末なる虫の鳴きにけり 後藤夜半 翠黛
邯鄲の辺や生えそめし昼の髯 岸田稚魚
邯鄲の枕ぞ花の根の曲り 桃隣
邯鄲の夢路追ひ来て鳴きつづく 水原秋櫻子 餘生
邯鄲の鳴き止む吾の気配にて 右城暮石 句集外 昭和五十九年
邯鄲の鳴く草叢の草やさし 山口青邨
邯鄲の鳴けるあたりを窺ひし 清崎敏郎
邯鄲の鳴けるところへ近寄れず 右城暮石 虻峠
邯鄲の鳴けると傘を傾けし 清崎敏郎
邯鄲の葉裏にほそき月の声 角川源義
邯鄲の鬨の寄せ来る夜の湖 富安風生
邯鄲は足助の霊地獄谷 右城暮石 天水
邯鄲は蠅なき時のねざめ哉 馬場存義
邯鄲やくらがりの海動きゐて 加藤秋邨
邯鄲やしばし葛吹く御師の門 水原秋櫻子 殉教
邯鄲やすぐそこにある日本海 加藤秋邨
邯鄲やすべるごとくに夜気ながれ 上田五千石 天路
邯鄲や阿蘇のしづけさ底知れず 上田五千石 天路
邯鄲や哀れ方方SENSE切れ 永田耕衣
邯鄲や伊賀は月夜の薯蕷 森澄雄
邯鄲や一日千の選句終へ 鷹羽狩行
邯鄲や三人の二人肱枕 森澄雄
邯鄲や耳ゆるされて山の村 岡井省二 有時
邯鄲や十六夜殊に声澄みて 水原秋櫻子 蘆雁
邯鄲や摂津六波羅まつ昼間 岡井省二 大日
邯鄲や昼の霧ゆく千草原 鷲谷七菜子 花寂び
邯鄲や日のかたぶきに山颪 飯田蛇笏
邯鄲や白樺ばやし晝ねむり 相馬遷子 雪嶺
邯鄲や風の葉音は葛ばかり 水原秋櫻子 殉教
邯鄲や霧に白める亭午の日 富安風生
邯鄲や明日は手術と思ふさへ 村山故郷
邯鄲や盲仏は耳を持つ 加藤秋邨
邯鄲や夜目にそびえし大江山 森澄雄
邯鄲や樅のほつ枝に星一つ 相馬遷子 山国
邯鄲や翳さしやすき草の山 鷲谷七菜子 花寂び
邯鄲をとめたる草も枯れはてぬ 飯田蛇笏 家郷の霧
邯鄲をとる灯の葛を染めにけり 水原秋櫻子 殉教
邯鄲を飼ふわが庭のいづこかに 相馬遷子 山河
邯鄲を葬る一伍一什かな 富安風生
邯鄲を覗き込みては胸薄し 岸田稚魚 筍流し

以上

# by 575fudemakase | 2017-05-19 05:08 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

すべりひゆ の俳句

すべりひゆ の俳句

すべりひゆ

すべりひゆ 一俳人でしかなく候 伊丹三樹彦 花恋句集二部作 花仙人
すべりひゆ 蹠がいくさ忘れない 保尾胖子
すべりひゆ水に正午の匂ひあり 正木ゆう子 悠
すべりひゆ世の末のまだつづきつつ 池田澄子 たましいの話
すべりひゆ漸く霽るる日のいろに 平沢桂二
すべりひゆ繁茂なにぶん古き庭 高澤良一 石鏡
言う前にひらく唇すべりひゆ 池田澄子 たましいの話
四の五のと云うとてもすべりひゆなのね 永末恵子 留守
糸屑が絡まってゐるすべりひゆ 高澤良一 素抱
照り返す地べた親しや滑りひゆ 池田澄子
先客は犬と老人すべりひゆ 新出朝子
代々おさむらいすべりひゆすべりひゆ 永末恵子
田の畔に近き墓標やすべりひゆ 磯貝碧蹄館
日は常に音無くそそぐ滑*ひゆ 青木重行
猫にこゑかけられすべりひゆの路地 大岳水一路
保線夫の足袋裏厚しすべりひゆ 小林幸子
淋しさや花さへ上ぐる滑ひゆ 前田普羅

すべりひゆ 補遺

すべりひゆ 一俳人でしかなく候 伊丹三樹彦
トルファンの路地に丈なす滑筧 松崎鉄之介
睫毛吹くほどの風見ゆ滑筧 斎藤玄 雁道
砂利道に花を閉ぢたるすべりひゆ 佐藤鬼房

以上

# by 575fudemakase | 2017-05-19 05:02 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

菊芋の花 の俳

菊芋の花 の俳句

菊芋

例句を挙げる。

凱旋門見えて朝市菊芋も 小池文子 巴里蕭条
寺一つ隠す菊芋べらばうに 高澤良一 暮津
手一杯菊芋摘みて童女めく 山根きぬえ
文庫(ふみくら)の裏山菊芋咲き出して 高澤良一 素抱
旧盆の菊芋の丈高きかな 池田秀水
花菊芋日傘に保母の瞳が涼し 宮坂静生 青胡桃
菊芋に日照雨の走る木曽路かな 大脇徳恵
菊芋の咲きて猛火のごとき照り 藤沢紗智子
菊芋の花が満開山の駅 青柳照葉
菊芋の花にばらばら雨白し 小松崎爽青
菊芋の花の外に出ず病むとなく 文挾夫佐恵
菊芋の跋扈仮バスターミナル 高澤良一 石鏡
菊芋の長けて切なきまで青空 高澤良一 石鏡
菊芋や瀟洒な寺のしょうしゃな墓 福田太ろを

菊芋の花 補遺

菊芋の雨の黄色や野川べり 細見綾子


# by 575fudemakase | 2017-05-19 04:58 | 秋の季語 | Trackback | Comments(0)

蝉2

蝉2

あかがねの蝉ひた鳴けり広島忌 中 拓夫
あけぼのや盡盡無明蝉のこゑ 菅野匡夫
あすなろに鎬を削り始む蝉 高澤良一 寒暑
アナガマノ声ヤ手ノ蝉袖ノ蝉 蝉 正岡子規
あらぬこと考えて蝉、音の鈍る 高澤良一 寒暑
あらゆる蝉がいて 肢体あらわな仏たち 星永文夫
いいかげんにしておけ嵩にかかる蝉 高澤良一 寒暑
いきいき動く庫裡のアイロン蝉しぐれ 平井さち子 完流
いくさ知る人いくばくぞ蝉の殻 岡田透子 『珊瑚樹』
いたづらに力んでみせる蝉は野暮 高澤良一 寒暑
いち早く日暮るゝ蝉の鳴きにけり 飯田蛇笏「椿花集」
いづかたへ父は逝きしか蝉時雨 星野昌彦
いつも母連れて蝉捕り内弁慶 高澤良一 素抱
いでや我よき布着たり蝉衣 芭蕉「栞集」
いとたやすく手捕らる蝉となり果てしか 高澤良一 暮津
いと白き落蝉の腹風立ちぬ 高澤良一 暮津
いま正に蝉の天下といふべかり 高澤良一 素抱
いろいろの売声絶えて蝉の昼 蝉 正岡子規
うだうだと頭でっかち蝉啼けり 高澤良一 鳩信
うたたねの暮るるともなし蝉の声 太祇「太祇句稿」
えらきこと顧み啼ける夕の蝉 高澤良一 随笑
おいて来し子ほどに遠き蝉のあり 中村汀女
おし黙りころり転倒せる蝉も 高澤良一 暮津
オポチュニストと蝉の屍あまた草田男死す 齊藤美規
おぼつかなくなりし日差しに愚図る蝉 高澤良一 さざなみやつこ
オルゴールの円盤の穴蝉時雨 高澤良一 宿好
おろおろと寒さの夏の油蝉 岩田由美
お迎えはまだまだまだよと蝉啼けり 高澤良一 暮津
お粗末を悪声ながら勤む蝉(森の石松三十石道中) 高澤良一 暮津
お騒がせしましたと蝉木を離れ 高澤良一 寒暑
お面かぶり待てりどの木も蝉鳴いて 大西八洲雄
かうなれば蝉の殲滅計りたし 高澤良一 素抱
かく荒き雨にも蝉の鳴くことを 山田弘子 こぶし坂
かなかなのあと艶消しの油蝉 高澤良一 素抱
かへり花蝉のもぬけに薫す 召波
ガムテープにまたひつつきし蝉の声 朱間繭生
カレー粉と 蝉の匂いの 夏休み 伊丹公子 ドリアンの棘
きき惚れる蝉のだみ声石垣島 中山純子
キラキラと雲の峰より蝉の尿 大峯あきら
くろがねの熊蝉鎧ふ源氏山 小野宏文
けなげにも蝉が欅に取り付く図 高澤良一 随笑
けふの無事告げ合ふごとく蝉啼けり 高澤良一 寒暑
けふも又蝉の頭陀行樫の木に 高澤良一 随笑
ここからは島の蝉音や橋わたる 中戸川朝人
ここに来て蝉鳴くほんの二三日(にさんち)前 高澤良一 素抱
こともなく蝉また鳴けり野分あと 高澤良一 素抱
ごにょごにょと云ひて夜蝉の紋切型 高澤良一 随笑
この穴や地下女将軍より蝉出づる 川崎展宏
この蝉殼しんから欲しきものならず 山西雅子
この通り蝉は素手もて掴むもの 高澤良一 寒暑
この木さしづめ蝉の井戸端会議の木 高澤良一 寒暑
ころころと蝉が死にをり原爆忌 引地冬樹
こゑも褪せ茶の出がらしのやうな蝉 高澤良一 随笑
こゑ止みしところに鳴いてゐたる蝉 齊藤美規
こゑ太し茂吉の国の油蝉 伊藤白潮
コンビニに蝉と蝉がら持ち込む子 高澤良一 暮津
ご近所を騒がす蝉も一頓挫 高澤良一 寒暑
ご当地の赤蝦夷蝉といふを聴く 高澤良一 燕音
ご法話に蝉随喜して霊鷲山 高澤良一 随笑
さかしまに残る力や蝉のから 蝉の殻 正岡子規
さくと縄切る全山の蝉時雨 菅原鬨也
ざら紙に蝉の一句を書留めん 高澤良一 素抱
ジーパンの張りつく腿や蝉時雨 小檜山繁子
しどろもどろに鳴く蝉ありて雨の中 高澤良一 素抱
しのび音の咽び音となり夜の蝉 三橋鷹女「羊歯地獄」
しやがみてもこどもになれず蝉の穴 大島雄作
じり貧といふ鳴き方をせる蝉も 高澤良一 燕音
じり貧と云ふ鳴き方をせる蝉も 高澤良一 宿好
じり貧の蝉音湯舟に浮かびゐて 高澤良一 暮津
しろじろと夜風に揺れて蝉の羽化 岡本昭子
しんしんと離島の蝉は草に鳴く 山田 弘子
すんでのとこ蝉に逃げられ大きなこゑ 高澤良一 寒暑
ずんどうの欅に蝉の取縋る 高澤良一 ももすずめ
せみのからわつて見たれは雫哉 蝉の殻 正岡子規
せみのなく木かげや馬頭観世音 蝉 正岡子規
せんだって落蝉を無視した処 池田澄子 たましいの話
そこにある本を開いて蝉の昼 高澤良一 暮津
そこらぢゅうとり散らかして蝉音の中 高澤良一 随笑
そのあとも力を抜かず蝉の穴 落合水尾
その羽音てっきり蝉と思ひけり 高澤良一 素抱
だう飛んでもこんな恰好になる蝉か 高澤良一 暮津
たそがれの蝉のひととき食慾あり 岡本差知子
ただ一度蝉の通りし蝉の穴 吉田汀史「一切」
たどたどしきにいにい蝉の節廻し 高澤良一 寒暑
たまたまに蝉鳴く松の林哉 蝉 正岡子規
ぢゝと啼く蝉草にある夕立かな 高浜虚子「虚子全集」
ちち在せば伊予のなまりに蝉鳴かむ 山本つぼみ
つじつまの合ふ句は陳腐蝉しぐれ 高澤良一 暮津
つひの音を地上に曳きて蝉死にき 佐野美智
つぶやける夜蝉に応ふ蝉もなし 石田あき子
どこからが私どこからが蝉の声 郷 正子
どこまでも蝉声濃しや長土塀 鍵和田[ゆう]子 未来図
どの靴も苦しきかたち蝉しぐれ 森沢 程
どの木からともなく蝉の木となれり 中尾杏子
ともに激しさもち蝉と生れ人と生れ 玉城一香
にいにい蝉生ぬるく夜の明けにけり 高澤良一 ぱらりとせ
にいにい蝉鳴き出す雨を振り切って 高澤良一 素抱
にはたづみ蝉の落ちたる光悦寺 川崎展宏
ぬけがらの君うつせみのうつゝなや 蝉の殻 正岡子規
バタバタと唖蝉あたり昏れしめき 高澤良一 暮津
はっきりと蝉鳴きそむは今日のこと 高澤良一 暮津
ばらばらに鳴いてけつかる処暑の蝉 高澤良一 素抱
ハリギリの樹が大好きな森の蝉 高澤良一 寒暑
ひきかへす風あり蝉の穴を吹く 正木ゆう子 静かな水
ひたひたと昭和曳きゆく夜の蝉 酒井弘司
ひよつとして今が生き甲斐蝉しぐれ 比嘉幸女
ひらひらと蝉の逃げゆく空の丈 高澤良一 暮津
ヒリヒリと蝉音あたりが暮れてくる 高澤良一 暮津
ファーブルの机の上の蝉の殻 増田陽一
ふきもせぬ風に落ちけり蝉のから 蝉の殻 正岡子規
ぶつかれる蝉の羽音の残暑かな 柏木喜美恵
ぶりかへす暑さも森の蝉の音も 高澤良一 寒暑
ぶりきの蝉へこへこと秋立ちにけり 高橋睦郎
ふるさとはいつも遠景蝉ないて 豊田都峰
ぶるぶると鳴かぬ朝蝉木を替えて 高澤良一 暮津
ほうし蝉浦戸城址を鳴きつつむ 谷口綾子
また元の木に舞ひ戻る蝉なる歟 高澤良一 寒暑
また別の蝉が鳴きだす莫愁忌 河野恵水
まだ鳴かずどうしたことか油蝉 高澤良一 随笑
まだ鳴かぬ蝉のどうしていることやら 高澤良一 随笑
また鳴きて蝉は古きに泥むごと 高澤良一 さざなみやつこ
まほろしや花の夕の蝉衣 花 正岡子規
まんじりとせざる夜の明けにいにい蝉 高澤良一 寒暑
みちのくの玉川蝉の名所哉 蝉 正岡子規
みちのくや出羽へ出ても蝉の声 蝉 正岡子規
みほとけのみち渾身の蝉時雨 香下寿外
みやこ逍遥蝉とまらせて呟いて 阿部完市 軽のやまめ
みんみんにとってかはられ杜の蝉 高澤良一 暮津
もう一つ鳴く蝉殖えてまったくもう 高澤良一 素抱
もう既にこゑの森なす朝の蝉 高澤良一 暮津
もう蝉の嶋かぬ欅となりにけり かみや久仁彦
もう先が無いぞ無いぞと蝉しぐれ 高澤良一 素抱
やがて死ぬけしきは見えず蝉の声 芭蕉
やすやすと蝉の背後に廻りけり 高澤良一 暮津
ゆつたりと寛ろぐ心蝉の声 高梨白翁
よく聞けば夜蝉時折手を抜けり 高澤良一 寒暑
より短くなりぬ油蝉(あぶら)の飛翔距離 高澤良一 暮津
リズムよく蝉の唄入り観音経 高澤良一 寒暑
ロード・ローラーのバックの充実蝉しぐれ 平井さち子 完流
わが悔の無数にありぬ蝉の穴 轡田幸子(若葉)
わが庭のわがものでなき蝉の穴 花谷和子
ワキ師寂と「安達ケ原」いま蝉しぐれ 平井さち子 紅き栞
わめき散らす蝉あり我に鼓膜あり 高澤良一 随笑
わめく蝉塚原問答聴くごとし 高澤良一 ももすずめ
唖蝉のしきりに見られやはり鳴かず 阿部完市 無帽
唖蝉の羽音ばかりが大きかり 高澤良一 寒暑
唖蝉の空転に似し一旋回 波多野蟻杖 『風祭』
唖蝉は神の与へし黙ならむ 熊崎かず子
唖蝉も鳴く蝉ほどはゐるならむ 山口青邨「冬青空」
唖蝉や祷るかたちに羽たたむ 大石悦子 群萌
握りつぶすならその蝉殼を下さい 大木あまり
安達太良へ赫と日の差す蝉時雨 鈴木萩月
伊勢一の鳥居の脚に蝉の殻 梅田 葵
意気上がらぬ世嘆き蝉もこんな調子 高澤良一 寒暑
遺書にじむは泣き書きせしか蝉しぐれ 安江緑翠 『枯野の家』
井月の村きさらぎの蝉の殻 宮坂静生 春の鹿
一と回り森を大きく蝉時雨 浜口秀村
一筋の夕日に蝉の飛んで行 蝉 正岡子規
一行のみな鈴を振る勤行蝉 中戸川朝人 尋声
一重づゝ解かれ蝉音は三重なりき 高澤良一 暮津
一緒には死んでやれない夜の蝉 松山律子
一切の外側の蝉時雨なり 奥坂まや
一匹の蝉しんしんと蚶満寺 深見けん二 日月
一匹の蝉全島の石乾き 黒田杏子
一本に蝉の集まる野中哉 蝉 正岡子規
一夜庵つゝぬけ風に蝉涼し 鈴鹿野風呂
引継もいと簡単に楠の蝉 高澤良一 寒暑
羽化の蝉地涌(じゆ)の菩薩の化身にて 高澤良一 随笑
雨に鳴くにいにい蝉のみそっかす 高澤良一 宿好
雨止むや欅並木に蝉時雨 羽根井芳夫
雨上り耳に染みつく蝉一つ 高澤良一 素抱
嘘をつき了せざる日の油蝉 杉山岳陽
永遠のいまどの辺り蝉時雨 津沢マサ子
永久にます天女や蝉声張り通し 鍵和田[ゆう]子 未来図
円空上人入寂の跡蝉涼し 堀口星眠
猿橋の墜ちんばかりや蝉時雨 肥田埜恵子
遠き蝉さらに遠くを風吹けり 高澤良一 寒暑
横に殼有りて真白く蝉生る 波多野幸子
横着は蝉鳴き初めしその日より 高澤良一 素抱
音のなき軍靴の列や蝉しぐれ 小野 伶
音符なく調子揃へる蝉時雨 吉留洋子
何をどう勘違いして玻璃へ蝉 高澤良一 寒暑
可哀想蝉鳴きやめし樹にもたれ 阿部完市 無帽
夏送る一樹一樹は蝉音挙げ 高澤良一 暮津
火を噴きし銃は穢し油蝉 星野沙一
花も月も見しらぬ蝉のかしましき 蝉 正岡子規
過去未来まつすぐに降る蝉時雨 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
我影のこの短かさよ蝉時雨 稲垣恵子
回り込み蝉捕り坊主樹のうしろ 高澤良一 素抱
戒壇に初蝉の声鑑真忌 内藤恵子
海へ蝉片道切符めく飛行 高澤良一 暮津
海亀を待つ蒲生田の夜蝉鳴き 藤江駿吉
海原を母郷と呼ばはむ松の蝉 鍵和田[ゆう]子 浮標
界隈の木々に目配り蝉捕る子 高澤良一 暮津
皆指を入れてみたがる蝉の穴 高澤良一 暮津
絵馬堂の戦国絵図や蝉時雨 今井誠人「亀山」
階より蝉時雨して光堂 市野沢弘子
骸蝉 何気なく在り 海への道 伊丹公子 山珊瑚
蛙鳴蝉噪彼モ一時ト蚯蚓鳴ク 蚯蚓鳴く 正岡子規
殻半ば脱ぎかけて蝉死んでをり 上野玲子
学ぶ子に暁四時の油蝉 橋本多佳子「信濃」
笠とるや杜の下道蝉時雨 蝉 正岡子規
樫太る五十六生家の蝉時雨 関根和子
割り込んでここぞと鳴ける油蝉 高澤良一 燕音
割れ鐘のごときも居りて三井の蝉 高澤良一 素抱
割れ鐘の蝉の独壇場に入る 高澤良一 随笑
蒲原の夜蝉朝蝉たのしけれ 山田みづえ
乾坤の煮え滾るらむ油蝉 増田松翁
喚く蝉二百億劫(こう)経て成佛 高澤良一 随笑
幹添ひに目遣れば蝉のシルエット 高澤良一 宿好
汗を吹く茶屋の松風蝉時雨 汗 正岡子規
甘噛みの蝉を鳴かせて猫通る 矢野典子
甘露忌の蝉と怠けて山の中 鷹羽狩行
観念の念にもあらず蝉時雨 川崎展宏
閑かさや岩にしみ入る蝉の声 芭蕉「奥の細道」
閑さや岩にしみ入る蝉の声 芭蕉
閑さや岩にしみ入蝉の声 松尾芭蕉
眼前の蝉を加えし蝉しぐれ 増田河郎子
岩座の栂の夕蝉鳴き納む 前田和子
岩山の岩を揺すりて蝉時雨 小林たけし
顔を入れて蝉を取り出す捕虫網 今瀬剛一
幾つもや月夜を蝉の魂(たま)昇天 高澤良一 暮津
幾万の蝉死に絶えて風の音 長谷川櫂 虚空
起きぬけに手紙一本蝉しぐれ 黒田杏子 花下草上
飢餓の死者呻くか谷の草に蝉 矢島渚男 延年
鬼太鼓に夜蝉ぶつかる見付浜 橋本珠見
亀ケ城蝉ははるけきものへ鳴き 石川さだ子
蟻の居て寝釈迦の如く蝉死して 京極杞陽「但馬住」
休みなき学習塾や油蝉 竹村幸四郎
窮蝉のふつと途切れし懺悔室 波戸岡旭
居心地のたじたじ蝉に近寄られ 高澤良一 寒暑
虚空会(え)の説法蝉のこゑ借りて 高澤良一 随笑
漁火の陣ほどきつつ 夜明けの蝉 平井幸子(青玄)
強靱な蝉の肋を仰ぎ見て 高澤良一 暮津
胸元を汗落ちてゆく蝉しぐれ 高室有子(白露)
驚き逃ぐ蝉の麁相に「まあいいか」 高澤良一 寒暑
暁やうまれて蝉のうすみどり 篠田悌二郎
錦帯橋裏にとまりて蝉鳴けり 陣場孝子
近づけば郵便受より蝉発てり 高澤良一 暮津
九月の教室蝉がじーんと別れにくる 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
屈葬や裏山はいま蝉の山 柿木 多映
熊蝉が朝から納豆粘り出す 高澤良一 素抱
熊蝉にせきたてられて薬王寺 高橋たみ子
熊蝉の熊坂長範啼き出すよ 高澤良一 寒暑
熊蝉の声より晴れて磯馴松 村岡 悠
熊蝉の大捕物となりにけり 高澤良一 素抱
熊蝉の鳴き北面の廟乾く 加古宗也
熊蝉や隙間あらざる檜山 永方裕子
兄が字を教へてくれしころの蝉 大石悦子 聞香
桂子忌の百句を誦す蝉の声 秋澤流火
結界や頭上に散りし蝉の翅 吉本伊智朗
結局は一日蝉を聞く羽目に 高澤良一 鳩信
月光に濡れつつ蝉となりにけり 桑原イチロー
月光の底にいくつも蝉の穴 瀧春一「瀧春一全句集」
月端(はな)の蝉ごゑ何処か衰へし 高澤良一 宿好
剣客シラノさながら夜蝉の呟くは 高澤良一 随笑
建前の柱に蝉も招ばれけり 高澤良一 素抱
見て呉れと眸が云ふ僕の捕りし蝉 高澤良一 素抱
見当をつけずに飛ぶは正に蝉 高澤良一 素抱
見馴れたる木から晩蝉転げ落つ 高澤良一 素抱
軒へ蝉早速鳴いてみせにけり 高澤良一 寒暑
原稿の余白数行朝の蝉 藤田あけ烏
原爆へ昂る師の語夜の蝉 鍵和田[ゆう]子 未来図
減る蝉音聞いて山妻厨に立つ 高澤良一 暮津
現世を太く短かく蝉時雨 井上智香代
古池やさかさに浮ふ蝉のから 蝉の殻 正岡子規
故郷の山深くして蝉時雨 山本仟一
吾が宗旨曹洞宗と蝉啼けり 高澤良一 素抱
吾とわが鈍くゐる日や蝉生る 大石悦子 聞香
吾知らぬところで蝉のぽっくり死(じ)に 高澤良一 素抱
御殿場や並杉老いて蝉稀也 蝉 正岡子規
梧桐の被爆の幹に蝉生る 川口崇子
光背に火を負ふほとけ蝉鳴けり 伊藤敬子「百景」
公園の広場を蝉のまっしぐら 高澤良一 寒暑
口はさむ余地なき蝉の天下なり 高澤良一 素抱
向き変へて声一途なり油蝉 岸 一泉
広島忌蝉は鳴きつつ焼かれたる 上田フサ子
稿進めをれば夜蝉のとび来り 大橋敦子
行きあたりばつたりの蝉吾を掴む 高澤良一 ももすずめ
行きずりの松から転倒したる蝉 高澤良一 寒暑
行き遇ひて蝉も驚く吾も驚く 高澤良一 暮津
行くまえの行く決心と蝉しぐれ 池田澄子
行く方に朝蝉の杜わつとあり 高澤良一 ももすずめ
行けばあつしやめれば涼し蝉の声 蝉 正岡子規
行けは熱し休めば涼し蝉の声 蝉 正岡子規
高低を選ばず止まる蝉となんぬ 高澤良一 素抱
狛犬の口の中なる蝉の殻 國守セツ
今朝出でし蝉の穴なる冥さかな 檜山哲彦
今日の秋をあら何ともなの蝉の鳴きやうや 立秋 正岡子規
今日乗り切る気概を籠めて朝の蝉 高澤良一 暮津
今日生きて山の湯にあり朝の蝉 畠山譲二「朝の蝉」
昏れて来て蝉音半減又半減 高澤良一 暮津
昏倒の蝉を箒に懸けにけり 高澤良一 随笑
混血の従弟に手渡す 日本の蝉 伊丹公子 機内楽
佐久山の城址はいま蝉の森 皆川盤水
砂あぶる雀見てゐて蝉の恋 宮坂静生 樹下
斎場御獄蝶蜂蝉の死にどころ 山田春生
昨日より暑くなるぞと朝の蝉 高澤良一 燕音
三鬼の墓蝉の鳴く樹もなき墓地に 茨木和生 野迫川
傘寿にて蝉手捕しは手柄なり 小林清之介
山を訪はむしるべに蝉の殻 斎藤梅子
山深ク見馴レヌ花ヤ蝉モ鳴カズ 蝉 正岡子規
山林に蝉の蛮声おとろえず 高澤良一 素抱
桟やかづらにすがる蝉の声 蝉 正岡子規
産声と聞く暁の蝉の声 広渡詩乃
産土の夜蝉を零す木もあらむ 高澤良一 燕音
残り蝉友の訃伝う電話来る 金子徳治
始めて鳴く蝉と思へず達者なもん 高澤良一 寒暑
子の声に憑かれさまよふ夜の蝉 羽田岳水
子を殴ちしながき一瞬天の蝉 秋元不死男
思うともけふを限りの蝉ごゑと 高澤良一 随笑
死してなほ蝉の目鼻の剛健に 高澤良一 暮津
死してなほ肉付きのよき蝉の肩 高澤良一 ぱらりとせ
死す蝉のそのままドンキホーテ面 高澤良一 ぱらりとせ
死を遠き祭のごとく蝉しぐれ 正木ゆう子 静かな水
死蝉のほつたらかしが消えにけり 藤田湘子 てんてん
死蝉をときをり落し蝉しぐれ 藤田湘子「神楽」
時国家湯殿にとほる蝉のこゑ 高澤良一 ぱらりとせ
次の日となつてをりたる夜の蝉 深見けん二 日月
耳蝉の冬から春へ鳴き移る 穴井太 天籟雑唱
耳底に蝉はまだ啼く枕かな 蓼太「蓼太句集二編」
耳鳴りを忘れてをりし蝉しぐれ 杉山よしの
自宅にて養生始まる朝の蝉 高澤良一 鳩信
自転車の荷台に蝉の落ちゐたり 高澤良一 暮津
煮え切らぬ鳴き方あれはにいにい蝉 高澤良一 素抱
社好き瀬戸明神の油蝉 高澤良一 鳩信
蛇口より僧が水呑む蝉しぐれ 高橋良子
寂として死蝉の他消ゆる景 高澤良一 寒暑
取出してヤヤ、蝉の羽の古袴 高橋睦郎 稽古
手に触るるものみな得たし夜の蝉 大石悦子 群萌
手短に鳴ける夜蝉の空元氣 高澤良一 暮津
首筋に蝉の羽月の風受けて 高澤良一 ぱらりとせ
樹が鳴ってゐるやう十あまり連なる蝉 高澤良一 暮津
樹のごとくうしろに父や蝉時雨 鈴木鷹夫 千年
樹をもたぬ蝉鈍行の川一本 飯島草炎
囚人の鎖重たし蝉の声 蝉 正岡子規
就職書類封じ終れば蝉も澄む 友岡子郷 遠方
就中意味あるやうに蝉の啼く 高澤良一 寒暑
拾ひあげ蝉の茶羽根を広げみる 高澤良一 さざなみやつこ
秋の日の谷中にせまる蝉の聲 秋の日 正岡子規
秋秋と尾鰭を付けて啼く蝉も 高澤良一 鳩信
秋風やほろりともけし蝉の殻 秋風 正岡子規
秋風やほろりと落し蝉の殻 秋風 正岡子規
秋立つやほろりと落ちし蝉の殻 正岡子規
終盤へ蝉さまようや西日中 高澤良一 寒暑
宿題のやる気を壊すみんみん蝉 月輪 満
宿坊に百の子の靴蝉しぐれ 田中恵子
粛と蝉発たする天下一の鐘 高澤良一 素抱
出し殻のやうな蝉の音絞りをり 高澤良一 寒暑
処暑処暑と今朝方の蝉さう鳴くも 高澤良一 随笑
初蝉と思ひしそばに誰もをらぬ 舘岡沙緻
初蝉のしきりになくや音羽山 日野草城
初蝉のつまづきながら鳴き始む 菅野虚心
初蝉のはばかり鳴くも大三島 高橋繁喜
初蝉のふと銀箔を皺にせる 澁谷道
初蝉の樹に選ばれて杉熱し 鈴木鷹夫 大津絵
初蝉の声ひきたらぬ夕日哉 蝉 正岡子規
初蝉の待ち兼ねしごと鳴き出しぬ 清水孝子
初蝉は雑賀踊りのささらかな 春耕「糸切歯」
初蝉やわが弱腰の帯ゆるぶ 千代田葛彦
初蝉や小径のつづく雑司ヶ谷 仲川ハツエ
初蝉や硝子コツプひとつこわれない 中尾よしこ
初蝉や榛名修験の水行場 水谷爽風
初蝉や暮坂峠暮色いま 水原秋桜子
初蝉や母の唄へる赤い靴 山下良江
初蝉や幼子の髪丸刈りに 佐野和子
初蝉を捕へし耳を疑はず 逸見節子
暑さうに啼く蝉ペンキ塗り重ね 高澤良一 随笑
女ざかりといふ語かなしや油蝉 桂信子「女身」
傷みなき蝉の屍即身仏 平井さち子 紅き栞
小ごゑなる蝉にもめ事あるごとし 高澤良一 寒暑
小さな燦橋の一脚蝉が摶ち 友岡子郷 遠方
少年に 水の紋章の蝉 かがやく 伊丹公子 機内楽
少年野球わあわあと蝉じいじいと 宮坂静生 青胡桃
梢よりあだに落ちけり蝉のから 芭蕉「六百番発句会」
象山神社絵馬るいるいと蝉時雨 片山桃弓
上ずって蝉音何とも幼かり 高澤良一 暮津
上枝より手離し或る日蝉頓死 高澤良一 暮津
上野から庭の木へ来て蝉の声 蝉 正岡子規
上野山精養軒の蝉しぐれ 高澤良一 素抱
城跡の森に百蝉鬨をつく 小倉文子
畳拭いて夕蝉のよく聞こえけり 折井紀衣
拭上げし畳百枚蝉しぐれ 石川美佐子
職退くと決めし日の庭蝉の殻 須賀遊子 『保津川』
寝過ごせぬ性分にして蝉に起つ 高澤良一 素抱
寝転がる我が身の弱さ蝉時雨 宇佐美次男
寝返りを打ちつゝ蝉のかすれごゑ 高澤良一 さざなみやつこ
心経の皮切りに似て朝の蝉 高澤良一 さざなみやつこ
新羅三郎義光と鳴く蝉あり 川崎展宏
森はまだ濡れてをりけり蝉時雨 三木智子
森ひとつ手中におさむ蝉しぐれ 衣川雅子
森深く蝉八百の眼(げん)瞠きて 高澤良一 随笑
深山蝉どこへもゆかぬ母を掴み 友岡子郷 遠方
真空の真昼の夢や蝉しぐれ 吉原貞子
真夜の蝉啼くといふより洩らすこゑ 高澤良一 寒暑
神宮のどの木も蝉の木となりぬ 細川淳子(椎の実)
身に貯へん全山の蝉の声 西東三鬼
身は空に放ちて蝉の糞掃衣(ふんぞうえ) 高澤良一 随笑
震災忌上野の山は蝉時雨 降幡加代子
人間勝手蝉暑しとも涼しとも 新明紫明
人死にし家裏かつと蝉の山 鷲谷七菜子「游影」
人夫のみの診療に暮れ蝉とほし 古賀まり子
人力の森に這入るや蝉時雨 蝉時雨 正岡子規
須磨の浦やうしろの山に蝉の声 蝉 正岡子規
水のみに起つ昼蝉のしまり無き 高澤良一 暮津
水の景ばかりを歩き蝉時雨 水田むつみ
水郷の蝉鳴かせゐる大榎 細見綾子
水打つや蝉驚いて飛んで行く 打ち水 正岡子規
水中にナイフとフォーク蝉時雨 折井紀衣
瑞鳳殿感仙殿と蝉時雨 島崎五穂 『さざれ石』
杉玉を吊るす地酒屋蝉涼し 後藤冬至男
杉脂の手に煩はし蝉の声 野坡「百曲」
成仏を明日に蝉の富楼那(ふるな)の弁 高澤良一 随笑
晴天やおきぬうちから蝉の声 蝉 正岡子規
晴天やふしてとく知る蝉の声 蝉 正岡子規
正調といふべき蝉に耳を藉し 高澤良一 寒暑
清水の舞台ゆるがし蝉時雨 山内なつみ
生きものの通りし暗さ蝉の穴 宮田正和
生きること精一杯の蝉時雨 亀井歌子
生き急ぐとても一生蝉時雨 小野あゆみ
生ぬるき木椅子ににいにい蝉聴けり 高澤良一 ももすずめ
生まれたる蝉にみどりの橡世界 田畑美穂女
生ま身にはなかりし艶を蝉の殻 木内怜子「繭」
生れし蝉しばらくはその殻に添ふ 望月晴実「要滝」
生涯を耕して病む蝉しぐれ 石田あき子
西方へ向かいて乾く蝉の穴 寺井谷子
青い麩をうかせる料理の青蝉屋 阿部完市 軽のやまめ
青空がずり落ちて蝉転落死 高澤良一 寒暑
青空見ゆ驟雨の中の蝉さかん 橋本美代子「石階」
青天の霹靂とはこれ蝉の尿(しと) 高澤良一 寒暑
青田とぶ蝉ひるがへり明智領 大峯あきら 宇宙塵
石山に夏了へて鳴く油蝉 川崎展宏
石山のじりりと這ひし唖の蝉 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
石段に日ざし灼きつく蝉時雨 西岡正保
石粉に汗の衣重し蝉しぐれ 石橋林石 『石工日日』
石枕してわれ蝉か泣き時雨 川端茅舎「川端茅舎句集」
赤松に蝉鳴きしきる日照雨かな 長谷川櫂 蓬莱
赤恥をさらす訳には蝉しぐれ 高澤良一 暮津
折紙の国から赤い蝉生まる 佐田和江
蝉が殻を脱ぐ こんなすばらしい背信 松下三郎
蝉か鳥かギィーとねじ巻く鬱の山 矢島渚男
蝉ごゑのあの啼き方は手捕られし 高澤良一 随笑
蝉ごゑのヒリつく中を投函に 高澤良一 随笑
蝉ごゑのまだ幼かり防潮林 高澤良一 暮津
蝉ごゑの果てはよれよれ日は斜め 高澤良一 暮津
蝉ごゑを薄め薄めて夕風吹く 高澤良一 素抱
蝉させば竿にもつるゝ柳哉 蝉 正岡子規
蝉しぐれあたり暮れ来て先細り 高澤良一 寒暑
蝉しぐれずつと奥まで戦争展 漆畑利男
蝉しぐれてふ特大の坩堝かな 高澤良一 寒暑
蝉しぐれブナすらすらと生ふる森 高澤良一 素抱
蝉しぐれぼちぼち四時と教へられ 高澤良一 随笑
蝉しぐれより蝉ひとつこぼれ落つ 内藤恵子「冬芽」
蝉しぐれ寄進杉苗拾萬本 高澤良一 素抱
蝉しぐれ胸の創口ありありと 高澤良一 素抱
蝉しぐれ袈裟懸けにして三塁打 細田佳道
蝉しぐれ今日も異界に目覚めけり 川上義則
蝉しぐれ柵萌大甕大口開け 成瀬櫻桃子 素心
蝉しぐれ子の誕生日なりしかな 安住敦「古暦」
蝉しぐれ寺に芥を捨てる穴 岩淵喜代子
蝉しぐれ少年はみな塾通い 金子 朗
蝉しぐれ赤松多き鶴ヶ城 田畑 龍
蝉しぐれ舌鋒鋭き芭蕉さん 高澤良一 暮津
蝉しぐれ大乗寺坂薄暗き 太平栄子
蝉しぐれ誰がタクトを振うやら 西山節子
蝉しぐれ痴呆の母と禅問答 高澤良一 暮津
蝉しぐれ氷のつまる魚箱 長谷川櫂 古志
蝉しぐれ漫然と聞き横坐り 高澤良一 暮津
蝉しぐれ木々につきたる木の番地 小島幸子
蝉すゞし牛頭天王の杉のもり 蝉 正岡子規
蝉とまり鳴き出す秋の簾かな 長谷川櫂 虚空
蝉とめて木は鬱鬱と走るかな 河原枇杷男「訶梨陀夜」
蝉とんで欅一樹のかわきおり 築部由紀美
蝉なくや砂に短き松の影 蝉 正岡子規
蝉なくや田中に細き土饅頭 蝉 正岡子規
蝉なくや物売絶ゆる昼餉過 蝉 正岡子規
蝉に遠く蛙に近し裏二階 蝉 正岡子規
蝉に穴人間に穴たのしかり 矢島渚男 延年
蝉に尿(しと)など掛けられてたまるかと 高澤良一 素抱
蝉に網被せてよりの一仕事 高澤良一 素抱
蝉のから碎けたあとや歸り花 帰り花 正岡子規
蝉のため一樹を残す校舎跡 松倉ゆずる
蝉のはね樹液昇らむばかりなり 正木ゆう子 悠
蝉の遺書開かず柩車行方知れず 小泉八重子
蝉の羽化いまだこの世の色なさず 飯塚雅芳
蝉の羽化さみどりの羽根ひりひりり 山本君枝
蝉の羽化雲ゆつくりと動きけり 櫛田栄子
蝉の羽化始まつてをる夜の十時 加藤きい子
蝉の音の納まるを待ち門火焚 高澤良一 素抱
蝉の音も煮ゆるがごとき真昼かな 闌更「三傑集」
蝉の音をこぼす梢のあらしかな 支考
蝉の殻朝日射しきて透きとほる 野田武
蝉の胸時計の内部覗くごと 高澤良一 寒暑
蝉の空ひたすら青し蔵王堂 山本 洋子
蝉の穴あまたのひとつ鮮しき 正木ゆう子 静かな水
蝉の穴ここらに集中する訳は 高澤良一 暮津
蝉の穴のぞき百年後の生家 鳥居真里子
蝉の穴のぞけば海の音がする あざ蓉子
蝉の穴ホーチンミンも斯く潜み 高澤良一 宿好
蝉の穴もうこの世へは誰も来ぬ 齋藤愼爾
蝉の穴一人の時は一人で見る 相原左義長
蝉の穴遠巻きに増え廃炭住 穴井太 原郷樹林
蝉の穴億年後は誰も留守 木村えつ
蝉の穴暇を潰すに少し馴れ 高澤良一 素抱
蝉の穴乾ききつたる大地かな 山内繭彦
蝉の穴眼の穴となる午后ながし 蓬田紀枝子
蝉の穴京に七つの出入口 山尾滋子
蝉の穴随所に杜の鎮まれり 高澤良一 暮津
蝉の穴数ふることをまだ止めず 高澤良一 暮津
蝉の穴掃かれて数をふやしけり 肥田埜勝美
蝉の穴探しきりなしもう止めた 高澤良一 暮津
蝉の穴程の寂しさなどといふ 高澤良一 燕音
蝉の穴同士近くて愛しけれ 高澤良一 暮津
蝉の穴覗きてほむら鎮めをる 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
蝉の穴覗く故郷を見尽くして 中村 苑子
蝉の穴目利きのごとく覗きをり 大石悦子 聞香
蝉の穴優に一千越えをらむ 高澤良一 暮津
蝉の穴淋しきときは笑ふなり 長谷川双魚
蝉の屍の泥眼外すこともなし 嶋野國夫(玄火)
蝉の死のにぎはつてをる天気かな 内田美紗 魚眼石 以降
蝉の寺匁秤で艾売る 矢田鹿苑子 『白雲悠々』
蝉の時間が虫の時間へ急転す 九鬼あきゑ
蝉の樹下あらゆる絆忘れゐる 鍵和田[ゆう]子 未来図
蝉の終末男湯真中噴き溢る 友岡子郷 遠方
蝉の声かぶさってくる山の道 田中登志子
蝉の声ききをれば時わが中に 玉城一香
蝉の声しばらく汽車に押されけり 蝉 正岡子規
蝉の声共に吹かるゝ梢かな 蝉 正岡子規
蝉の声絶えて水音山深し 蝉 正岡子規
蝉の昼ペットボトルの裡曇る 高澤良一 暮津
蝉の昼辞書を牽き牽き確かめごと 高澤良一 暮津
蝉の朝愛憎は悉く我に還る 石田波郷「鶴の眼」
蝉の天指もて髪を梳り 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
蝉の尿ならぬお山の通り雨 高澤良一 素抱
蝉の尿無味無臭にして蒼天 高澤良一 寒暑
蝉の墓棒切れ立てて子ら帰る 三谷安代
蝉の貌この威や天下大将軍 川崎展宏
蝉の鳴いて机の日影かな 蜩 正岡子規
蝉の木が官庁街の動脈なり 熊谷愛子
蝉の瑠璃ちらっと脳裏掠めけり 高澤良一 随笑
蝉の聲あつし蜩やゝ涼し 蜩 正岡子規
蝉はみな残暑残暑と鳴きゐたり 高澤良一 素抱
蝉は今普賢の行説く大団円 高澤良一 随笑
蝉は木に登る六根清浄と 高澤良一 随笑
蝉も/蜻蛉も/乾いて生きる/風の暮 林 桂
蝉も木も記憶を持たず蝉しぐれ 藤田湘子 てんてん
蝉よりも生き長らへて蝉の殼 大木あまり
蝉よりも大き声して遊びをり 小田郁子
蝉わっと鳴き出す前にしておくこと 高澤良一 随笑
蝉をやる盲児わなゝきしかとやる 阿部完市 無帽
蝉を彫る光太郎居ず蝉しぐれ 矢島渚男 延年
蝉を追ふ雀の眼まるく見ゆ 川崎展宏
蝉を捕る極意暫く鳴かせてから 高澤良一 素抱
蝉を捕る子のためにあり八幡さま 高澤良一 素抱
蝉遠く耳鳴りに似る終戦日 鈴木鷹夫 渚通り
蝉音いま空中楼閣なせりけり 高澤良一 暮津
蝉音はやいぢらしき機(とき)過ぎゐたり 高澤良一 素抱
蝉音絶ゆ木が悄然と佇ってをり 高澤良一 寒暑
蝉音断ち靫彦の釈迦説法図 高澤良一 随笑
蝉音聞き我も端くれアバ世代 高澤良一 素抱
蝉音沁む洗濯ものを取り込めり 高澤良一 素抱
蝉何かに突き当たる音露けしや 高澤良一 暮津
蝉殻のそこで時間が止まりをり 高澤良一 暮津
蝉殻の弄ばれて置き去りに 高澤良一 暮津
蝉殻を終には壊し始めし子 高澤良一 暮津
蝉殻を蒐めゐし子の気が変る 高澤良一 暮津
蝉殻を剥がし欄干歩まする 高澤良一 暮津
蝉喚く真言亡国禅天魔! 高澤良一 随笑
蝉気儘に啼いて迎える転落死 高澤良一 素抱
蝉穴のいづれも深き息のこる 山崎千枝子
蝉穴の瞑さに辺り暮れて来ぬ 高澤良一 ぱらりとせ
蝉穴を覗き少年期をさがす 加藤三陽
蝉穴を無言で過ぎし一兵士 相原左義長
蝉止まる所に拘る太郎杉 高澤良一 素抱
蝉止まれりゃ何處でもよいといふ風情 高澤良一 暮津
蝉死して硬き舗道でありにけり 山田弘子 懐
蝉時雨だまらっしゃいと夕立来 高澤良一 鳩信
蝉時雨ときにはうねることのあり 高澤良一 暮津
蝉時雨もはや戦前かもしれぬ 摂津幸彦
蝉時雨やぼ用一つ出来にけり 高澤良一 暮津
蝉時雨一人の常着えらび着て 北原志満子
蝉時雨黄昏早き恵日寺 木伏芙美子
蝉時雨開腹手術待つ妻に 高橋六一
蝉時雨角まがりても蝉しぐれ 阿波澄子
蝉時雨仰むく口や木の雫 蝉時雨 正岡子規
蝉時雨五所塚深き翳落し 藤科美佐子
蝉時雨壕口に声あつまりぬ 玉城一香
蝉時雨子は担送車に追ひつけず 石橋秀野
蝉時雨止みて遠くの蝉時雨 山下美典
蝉時雨唱和してゐるひいひいふう 室石由紀子
蝉時雨城山の風連れてくる 八木ケイ
蝉時雨人は勤まることをして 高澤良一 暮津
蝉時雨石鼎旧居その中に 倉田敏夫
蝉時雨突然訃報の駅にいる 掛橋初子
蝉時雨晩年押しつけられてをり 高澤良一 暮津
蝉時雨墓の伍長は同い齢 森 季高
蝉時雨墓石も古りし田原坂 有働祐子
蝉時雨木の葉の雫踊らせて 伊藤恵津子
蝉時雨木々ふるはせて光堂 平畑静塔
蝉時雨流人の島にゐるごとく 丸山ゆきこ(阿蘇)
蝉時雨冷たい水の湧く程に 湖中「発句題叢」
蝉取る子貝殻骨に秋は来ぬ 川崎展宏
蝉手づまりそんな感じのする啼きごゑ 高澤良一 素抱
蝉生まれし穴が謎めく古墳群 水野公子
蝉生るる月の光をふるはせて 加藤多美子(けごん)
蝉生る神杉をよづ翅の透き 川瀬カョ子
蝉生る水平線の濃き日なり 栗山政子
蝉生る蝉の諸音につつまれて 五十嵐播水(九年母)
蝉生れこの世の色に変身す 山口博(桑海)
蝉声と声明三井の怒り節 川崎展宏
蝉声と陽が凝るだけの 水軍基地 伊丹公子 山珊瑚
蝉声に和して小声の菩薩たち 成田東夫
蝉声のおっと止まった誰か来た 高澤良一 暮津
蝉声のきれ目を山雨馳せ通る 白岩三郎
蝉声や染料として紅茶煮る ふけとしこ 鎌の刃
蝉声を浴びて馬齢を重ねけり 井村経郷
蝉堕ちて谷一掬の水残す 相原左義長
蝉塚に雨のしきりや吾亦紅 布谷洋子
蝉塚に媼が売れる一夜酒 多田英治
蝉逃ぐるぶうんと熱き風起たせ 高澤良一 寒暑
蝉発たす気などさらさらなかりしよ 高澤良一 寒暑
蝉発たせて仕舞ひこちらも大慌て 高澤良一 寒暑
蝉非力一陣の風起てば墜つ 高澤良一 素抱
蝉飛ぶは粋な小政の旅姿 高澤良一 暮津
蝉飛んでなんだ近くにまた止まる 高澤良一 暮津
蝉聞いてあちらこちらの湯壺かな 高澤良一 素抱
蝉聞きて夫婦いさかひ恥づるかな 西鶴「蓮の実」
蝉捕の蝉を鳴かせて通りけり 高澤良一 暮津
蝉捕の油を売れり遊園地 高澤良一 暮津
蝉捕りの極意は逃げ来る蝉捕ると 高澤良一 暮津
蝉捕りの子を指図して通行人 高澤良一 寒暑
蝉捕りの少年のゐる西寺跡 伊藤総司
蝉捕りの声に特徴近所の子 高澤良一 暮津
蝉捕りの朝の巡回始まれり 高澤良一 寒暑
蝉捕りの父と子に会ふ真田庵 佐々木経子
蝉捕りを中断塾に出かける子 高澤良一 素抱
蝉捕る子五百羅漢へ割り込めり 笠原ひろむ 『棕梠の花』
蝉捕る子新参者を睨みつけ 高澤良一 暮津
蝉捕上手この近所では肉屋の子 高澤良一 暮津
蝉蜜集の村 賃縫の母 ねむる 伊丹公子 メキシコ貝
蝉鳴いて死は仰向けに来ていたる 山本千之
蝉鳴き出す空襲警報発令と 高澤良一 暮津
蝉鳴き出す山の夜明を待ち切れず 福田ミチル(圭)
蝉鳴き出す僧に苛酷な日の始め 姫野三千枝
蝉鳴くやもう雨の止む気配して 和泉厚子
蝉鳴くや音戸の瀬戸の潮曇 藤田佳子
蝉鳴くや寒暖計は九十九度 蝉 正岡子規
蝉鳴くや行水時の豆腐売 蝉 正岡子規
蝉鳴くや寺は石橋杉木立 蝉 正岡子規
蝉鳴くや消えざるものにわが昭和 板津堯「雪起し」
蝉鳴くや水中に暗ひろがりぬ 山上樹実雄
蝉鳴くや団扇に画く滝の音 蝉 正岡子規
蝉鳴くや仏ヶ浦の奇巌仏 畑中とほる
蝉鳴くや野中の井のはね釣瓶 蝉 正岡子規
蝉鳴けり人も車も気にせずに 茨木和生 野迫川
蝉鳴けり泉湧くより静かにて 水原秋桜子
蝉鳴て殘暑の頭裂くる思ひ 残暑 正岡子規
蝉来ると声うわずって手を引く子 高澤良一 素抱
蝉落ちるタイムカプセル埋設点 勝田澄子
蝉涼し絵馬の天人身を横に 松本たかし「野守」
蝉涼し朴の広葉に風の吹く 河東碧梧桐「碧梧桐句集」
蝉啼かぬ分だけ凌ぎ易きけふ 高澤良一 寒暑
蝉蜩其中下す小舟かな 蜩 正岡子規
先客にとまどひながら止まる蝉 高澤良一 寒暑
千灯の一灯へ蝉つきあたる 木村里風子
川音の勝りて遠き蝉しぐれ 加藤直子
戦遠し被爆ドームの蝉しぐれ 野地一枝
戦後遠しまつすぐに啼く朝の蝉 酒井弘司
戦災を知る街路樹や蝉時雨 丸山文子
船頭の舟には居らず蝉のこゑ 蝉 正岡子規
僧が来て 仏壇へ蝉はげしくなる 伊丹公子 陶器の天使
僧正の榎かしまし蝉の声 蝉 正岡子規
掃かれゆく落蝉の胸厚かりき 小島淑子
早や一つ落ちゐて蝉のあっけなし 高澤良一 寒暑
早起きを励ます蝉も減りにけり 高澤良一 暮津
窓を打つ夜蝉の音の乾きゐる 山田弘子 初期作品
草に座し五体満足蝉時雨 田中大夢
草色の翅に息する蝉の羽化 黒川良子
草蝉の草地に深し不発弾 矢島渚男 延年
草蝉や陸やどかりは夜歩く 矢島渚男 延年
足六つ不足もなしに蝉の殻 蝉の殻 正岡子規
速玉や熊野熊蝉夜を哭く 黒田杏子 花下草上
卒塔婆に肝を試され唖の蝉 中川杞友
代る仕る蝉の穴見る老夫妻 川崎展宏
台風の巻き添え喰って鳴く蝉か 高澤良一 素抱
台風の眼の中の蝉憶せずに 高澤良一 素抱
台風の来る日を蝉の知らん顔 高澤良一 素抱
大雨に耐へゐる蝉が声洩らす 阿見九十九
大学も九月となりぬ蝉の声 深見けん二 日月
大空をつなぎ蝉鳴く原爆忌 大岳水一路
大阪の寸土に蝉の一樹かな 広岡仁 『休診医』
大施主のこゑを代弁油蝉 高澤良一 随笑
大修羅場の跡や蝉取る子の転び 鍵和田[ゆう]子 未来図
大西日蝉の今際(いまは)に立ち会へる 高澤良一 暮津
大地いましづかに揺れよ油蝉 富沢赤黄男
大塔の鐘に止まりて蝉が鳴く 中村 愛
大木にとりつき鳴ける蝉反り身 高澤良一 暮津
大木の注縄に蝉啼く社哉 蝉 正岡子規
大夕立などなにくその一油蝉(ユセン) 高澤良一 暮津
滝の音も細るや峰に蝉の声 千代女「真蹟」
滝音の中松蝉のまぎれなし 深見けん二 日月
滝水の中やながるる蝉の声 惟然「草庵集」
啄木の少年の日の蝉鳴けり 大峯あきら 宇宙塵
但馬路の何処へ佇っても 湧く蝉声 伊丹公子 メキシコ貝
奪ひあふものに愛あり蝉骸 河野多希女
脱藩者めく蝉街道外れゆけり 高澤良一 寒暑
棚低き梨下百千の蝉の声 水野北迷
男蝉小便すれば女蝉も小便す 蝉 正岡子規
地下女将軍へ一切の蝉落つる 川崎展宏
地震に発つ蝉のおろおろ飛ぶばかり 高澤良一 暮津
地熱さめやらず夜蝉の鳴きやまず 柿本久美
蜘蛛の囲に蝉の片翅夏畢る 高澤良一 暮津
秩父事件蜂起の鐘を蝉抱き 高澤良一 宿好
着艦に似たり油蝉(あぶら)の止まり際 高澤良一 暮津
着物干す上は蝉鳴く一の谷 蝉 正岡子規
仲秋や木々をくぐりて蝉の飛ぶ 長谷川櫂 天球
抽んづる赤松蝉を集めをり 高澤良一 ももすずめ
昼寝する母子に迷ひ蝉の鳴く 宮坂静生 青胡桃
昼中や雲いらいらと蝉の声 蝉 正岡子規
昼中や蝉の集まる大榎 蝉 正岡子規
虫籠に蝉の御報謝ありにけり 高澤良一 素抱
虫籠の中はと見れば蝉の殻 高澤良一 暮津
虫籠提げ蝉など捕ってちょうだいと 高澤良一 素抱
貯水は水の柩蝉声横へあふれ 友岡子郷 遠方
朝の蝉うんざりする日が始まりぬ 高澤良一 随笑
朝の蝉潮のごとく退くときあり 高澤良一 暮津
朝の蝉聞き流しをり床の中 高澤良一 暮津
朝蝉が一つ遠くへ鳴き移る 高澤良一 素抱
朝蝉が風に埋もれて誰が忌日 高澤良一 素抱
朝蝉が啼かぬとある日来たりけり 高澤良一 鳩信
朝蝉に鼓舞され我流体操す 高澤良一 暮津
朝蝉のいつとはなしに一潮流 高澤良一 暮津
朝蝉のいやに啼くとき啼かぬとき 高澤良一 鳩信
朝蝉のきのふともなく音を絶てり 高澤良一 素抱
朝蝉のしゃんしゃん手拍子足拍子 高澤良一 寒暑
朝蝉のじゆげむじゆげむに起き出して 高澤良一 ももすずめ
朝蝉のはや鳴いてゐる薬師かな 大峯あきら 宇宙塵
朝蝉のもうこゑ絞る中起床 高澤良一 暮津
朝蝉のゆきわたりたる若狭かな 大峯あきら 宇宙塵
朝蝉の寝言まがひのこゑ一つ 高澤良一 素抱
朝蝉の勢ひたてるが元氣の素 高澤良一 暮津
朝蝉の頭越しなる喧し屋 高澤良一 ぱらりとせ
朝蝉の日毎に薄れ儚(はかな)言(ごと) 高澤良一 素抱
朝蝉の鳴き出すまでの樹のしじま 高澤良一 暮津
朝蝉の誦経のしりきれとんぼかな 高澤良一 随笑
朝蝉へ商の戸を繰りにけり 増子京子
朝露を乾かして鳴く蝉の声 蝉 正岡子規
町中の肉屋の裏の蝉の墓地 高澤良一 暮津
町中の墓地の空飛ぶ油蝉 高澤良一 暮津
調弦のごとし夜明けの油蝉 黒沢信行
長っ尻の蝉に口説かれゐるごとし 高澤良一 寒暑
長雨にことし少き蝉の穴 高澤良一 素抱
頂は日射す風樹や蝉音籠る 中戸川朝人 残心
鳥稀れに水また遠し蝉の声 蕪村「落日庵句集」
椎の影蝉鳴く椽の柱哉 蝉 正岡子規
通り雨長らふ蝉に落蝉に 高澤良一 随笑
佃煮のやうに詰め込み蝉の籠 高澤良一 素抱
辻褄合ふ一落蝉と樹の位置と 高澤良一 暮津
定年だあ定年だあと蝉啼ける 高澤良一 宿好
定年は如何にと蝉の頭陀行者 高澤良一 随笑
庭にもう始まつてゐる蝉時雨 井口雪嶺
庭の木にらんぷとゞいて夜の蝉 蝉 正岡子規
庭下駄に柾目のとほり蝉時雨 片山由美子 天弓
哲人の風貌しかと蝉の面(つら) 高澤良一 寒暑
天と地のあはひに充ちて蝉の声 長岡静子
天寿おほむね遠蝉の音に似たり 飯田龍太「今昔」
天城嶺に空も径なす蝉しぐれ 高橋悦男
店の前近江へはしる馬と蝉 阿部完市 春日朝歌
顛倒せる蝉の太っちょ一凡夫 高澤良一 随笑
点滴につなぐ玉の緒蝉しぐれ 角川源義「西行の日」
電信の柱にあつし蝉の声 蝉 正岡子規
電線揺れ地震の間飛ぶ蝉見たり 高澤良一 暮津
杜の蝉勝手に幕を引きにけり 高澤良一 暮津
登呂遺跡ねずみ返しに蝉の殻 江口ひろし
土管坂より蝉声の溢れ出す 加古宗也
土壇場の蝉の声音と思ひけり 高澤良一 随笑
怒る羅漢を終日囃す油蝉 勝又寿々子 『春障子』
唐突に簾の蝉の鳴き出せり 高澤良一 ももすずめ
塔婆より塔婆へ飛んで油蝉 高澤良一 暮津
島すべて熊蝉領や朝より 小澤 實
島の蝉砂でみがいて樽を白め 友岡子郷 遠方
島へ一歩踏むくらくらと蝉時雨 鈴木鷹夫 大津絵
投げやりな子につき合ひて蝉の昼 高澤良一 素抱
湯上りの身に夕蝉を引き寄せて 高澤良一 寒暑
灯を取りにきたぞと網戸の外の蝉 高澤良一 随笑
灯を取りに蝉の来てゐる盆踊 高澤良一 素抱
踏んばりしあとあきらかに蝉の殻 大木あまり
頭を寄す子ら一人が蝉を押さえ付け 高澤良一 素抱
同じ世の風吹きかはる蝉の穴 柿木 多映
堂縁に一つ載せあり蝉骸 高澤良一 宿好
童等の蝉さしにくる社かな 蝉 正岡子規
道岐つとこが別れよ蝉しぐれ 池田弘子
毒舌も吃音もこゑ絶えし蝉 正木ゆう子 悠
馴れ馴れしく何處でも止まる蝉がいや 高澤良一 暮津
楠に蝉少年上目使ひせり 高澤良一 暮津
楠亭々蝉捕り坊主まだ来ぬ森 高澤良一 素抱
二河白道蝉のもどれぬ蝉の穴 吉田紫乃「一尋」
二番蚕が眠り遠くで蝉が鳴き 森 重昭
肉声に肉声ぶつけ油蝉 高澤良一 随笑
日と風のうすうすありぬ蝉の穴 鈴木鷹夫 大津絵
日の高き巌流島や蝉時雨 高萩弘道
日の渡る空のよろこび蝉氷 池田澄子 たましいの話
日蝕して蟷螂蝉を捕んとす 蟷螂 正岡子規
日蓮寺力みなぎる蝉の声 菊池実津子
入れかはり立ちかはり水蝉生る 百瀬美津
忍辱(にんにく)の鎧に蝉の啼き通す 高澤良一 随笑
濡縁で聞きて夜蝉の腹話術 高澤良一 素抱
念力をキリキリ蝉の大神通(だいじんずう) 高澤良一 随笑
捻子(ビス)埋ずむ胸の手ざはり遠き蝉 高澤良一 寒暑
脳病の頭にひゞくせみの声 蝉 正岡子規
覗きたきものは奈落よ蝉の穴 村上巳津子(曲水)
芭蕉とて異端の系譜蝉時雨 久保不律
馬鈴薯を夕蝉とほく掘りいそぐ 水原秋桜子
俳諧寺一茶も見たり蝉の穴 川崎展宏
這ひ松の花を抱きて蝉鳴けり 橋爪巨籟
白亜紀の世界へ続く蝉の穴 加藤房子(秀)
莫迦げたる蝉の一徹通しけり 高澤良一 素抱
莫迦鳴きをはばかりもなく軒の蝉 高澤良一 暮津
八月盡おいてきぼりの蝉が鳴く 高澤良一 素抱
八幡の杜に君臨熊蝉は 高澤良一 素抱
半生を綴る余白に蝉しぐれ 加藤晶子
帆のままの憩ひを容るる蝉しぐれ 中戸川朝人 星辰
帆柱のさきに蝉鳴く入江哉 蝉 正岡子規
晩酌や蝉音遠のくばかりなり 高澤良一 寒暑
晩節や遠くに鳴いて夜の蝉 太田寛郎
晩節や蝉同色の樹を選りて 高澤良一 素抱
晩蝉に滅却心頭大自涼 高澤良一 寒暑
晩蝉のこゑ押っ被せ押っ被せ 高澤良一 随笑
晩蝉のときどき手抜きしたりけり 高澤良一 素抱
晩蝉の明けても暮れてもこの一手 高澤良一 随笑
晩蝉の離れ大椨暮れしめぬ 高澤良一 素抱
彼の日また彼のときもまた蝉時雨 伊藤敬子
飛びあてる木に落付て蝉の声 蝉 正岡子規
飛び下手の頭でっかち油蝉 高澤良一 暮津
飛び方を蝉に手ほどきして遣りたし 高澤良一 暮津
飛ぶ蝉のいづれも路頭に迷ふさま 高澤良一 暮津
飛んで来てとまるやすぐに蝉の声 蝉 正岡子規
飛んで来て蝉の墜ちたる能舞台 川崎展宏
飛行法伝授させたき蝉のあり 高澤良一 寒暑
飛来せる蝉は真夏の代名詞 高澤良一 暮津
鼻つまみ鳴き継ぐ蝉の盛夏過ぐ 高澤良一 暮津
鼻声に何か言ひたげ朝の蝉 高澤良一 鳩信
百の蝉鳴いて身罷る大樹かな 渡辺ミチ子(道)
百畳の巌を滴る蝉の声 加藤耕子
百蝉(せん)の中の一蝉たち優る 高澤良一 暮津
百蝉の息ひそめけり朝の杜 高澤良一 随笑
病むもよし死ぬもまたよし油蝉 長谷川秋子
不受不施と日蓮坊を慕ふ蝉 高澤良一 随笑
夫の書く「商道不変」蝉音沁む 山田千代 『淡墨』
布巾おろすは幸せに似て蝉しぐれ 北原志満子「北原志満子」
父の忌の朝拾ひたる蝉の殻 中村祐子
父見舞ふ当番の日や朝から蝉(妻) 高澤良一 暮津
武士(もののふ)の風貌に似ず蝉非力 高澤良一 素抱
風の忌や 蝉はしぐれに鳥は樹に 星永文夫
風の中直なる幹をあゆむ蝉 高澤良一 宿好
風よりも蝉ひるがへる翌檜 高澤良一 素抱
風吹て涼しき蝉の初音哉 蝉 正岡子規
風立って蝉の乱痴気騒ぎ了ゆ 高澤良一 寒暑
風流は苦しきものぞ蝉の声 蝉 正岡子規
腹見せて暑苦しいぞ軒の蝉 高澤良一 暮津
聞きそめた日よりかしまし蝉の声 蝉 正岡子規
聞き尽したる蝉の声身に貯まる 三好潤子
聞くうちに蝉は頭蓋の内に居る 篠原梵
兵馬俑八千のこゑ蝉山河 鍵和田[ゆう]子「光陰」
別宅という言葉あり蝉しぐれ 穴井太 穴井太句集
片脚は雲をつかみて蝉の殻 高橋悦男
片脚を踏み出してをる蝉の殻 井上弘美
捕虫網ぬうっと蝉の背後より 高澤良一 暮津
捕虫網身をもつて蝉突入す 軽部烏頭子
捕虫網蝉をとらえし大きこゑ 大野美幸
捕虫網蝉を大地に押さえ付け 高澤良一 素抱
暮るるまで蝉鳴き通す終戦日 下村ひろし
母と住む木蔭の里や夜の蝉 素郷「発句題叢」
母の忌の母を語らず蝉時雨 小村きよし
母の忌の夜蝉一吟二吟なし 中本柑風
母の忌や森をこぼれる朝の蝉 鈴木良房
母逝くやあかつき遠き蝉鳴かせ 成瀬櫻桃子 風色
放哉の句碑しみじみと蝉しぐれ 今村博子
放浪の木を替え蝉の山頭火 高澤良一 素抱
方向がちがふと羽根を返す蝉 高澤良一 暮津
方寸の景見て死ぬる蝉ならむ 高澤良一 素抱
方便の一つに蝉の小便も 高澤良一 随笑
法師品(ほっしほん)称えて蝉の生まる也 高澤良一 随笑
傍若無人此の世我が世と蝉時雨 滝本魚顔女 『絵踏』
帽脱るや憂ひ無きかに蝉山河 鍵和田[ゆう]子 浮標
頬二つあるごとき蝉川施餓鬼 墨谷ひろし
凡愚には凡石蝉は一途に鳴く 鍵和田[ゆう]子 未来図
凡百の蝉に占められ官幣社 高澤良一 暮津
盆過ぎの蝉が東京駅に鳴く 大西八洲雄
盆近み蝉音そろそろ空いて来し 高澤良一 素抱
摩尼寺や蝉の経ふる石の上 中村静子
毎日の蝉に聾を決め込むや 高澤良一 素抱
万歳をして落つ蝉の手をそのまゝ 高澤良一 寒暑
岬の蝉のまたたき遠し土用あい 岡本圭岳
夢にまで出てくる蝉のくだくだし 高澤良一 暮津
夢解きに水のかかはる蝉の殻 正木ゆう子 悠
名にし負ふ石の大谷の蝉しぐれ 高澤良一 素抱
名も知らぬ大木多し蝉の声 蝉 正岡子規
名残蝉今日を限りと思ひ聞く 社本茂子
明家の門に蝉鳴く夕日哉 蝉 正岡子規
明神のうしろ日当る竹に蝉 高澤良一 ねずみのこまくら
迷ひ蝉氷室は墓地の暗さもち 宮坂静生 青胡桃
鳴きさして蝉の飛行く夕日哉 蝉 正岡子規
鳴きながら川とぶ蝉の日影かな 巴人「夜半亭発句集」
鳴きやめて飛ぶ時蝉の見ゆるなり 正岡子規「子規句集」
鳴きやんで軽くなりたる蝉の山 澤野 弘
鳴き競ふ蝉の肋の熱からむ 高澤良一 暮津
鳴き通すことが全てや蝉非力 高澤良一 素抱
鳴き納む蝉ヂリヂリとヂリとヂと 高澤良一 ぱらりとせ
鳴くしきゃない蝉のいちにち了りけり 高澤良一 暮津
鳴く蝉の鳴くだけ鳴きて樹を離る 塩川雄三
鳴く蝉や折々雲に抱かれゆく 路通「三山雅集」
鳴く程に蝉の非力を思はする 高澤良一 随笑
鳴く番がなき唖蝉と発ちて知る 高澤良一 寒暑
鳴声のみなもとにゐて蝉しづか 綾部仁喜 寒木
面かぶり榧の大樹の蝉しぐれ 奈良英子
盲蝉ぶつかる音にまどろまず 高澤良一 鳩信
木に縋る蝉のまたもやドジを踏む 高澤良一 素抱
木斛に晩蝉こゑをたてずにゐる 高澤良一 暮津
黙祷のまなうら白し油蝉 土屋未知
目が覚めて此処如何な國蝉しぐれ 高澤良一 随笑
目の覚めぬうちから聞や蝉の声 蝉 正岡子規
目覚めれば家すつぽりと蝉時雨 林 雪
目減りせし蝉は高きにホルトの木 高澤良一 寒暑
夜が来て蝉に引導渡しけり 高澤良一 暮津
夜が来る蝉は木立に収まりて 高澤良一 寒暑
夜の蝉も十七文字も紋切り型 高澤良一 素抱
夜の蝉人の世どこかくひちがふ 成瀬櫻桃子 素心以後
夜も蝉鳴く洗面器に双手つき 岡本眸
夜更け訪ふまさかの蝉でありにけり 高澤良一 寒暑
夜蝉ヂと寝落ち難きを託てるか 高澤良一 寒暑
夜蝉また油の闇にひるがへり 大峯あきら 宇宙塵
夜蝉鳴く丑満ほんのちょっぴりだけ 高澤良一 素抱
夜蝉鳴く都心に残る地のほてり 伊藤まさ子
夜蝉啼くは後悔に似て忸怩たり 高澤良一 暮津
夜店の灯杜を焦がして狂ふ蝉 高澤良一 素抱
夜風出づ短か鳴きして盆の蝉 高澤良一 寒暑
夜明から熱いことかな蝉の声 蝉 正岡子規
夜明から熱い天気に蝉の声 蝉 正岡子規
野次馬のやうに馳せゆく蝉見たり 高澤良一 素抱
野分あと斯く減る蝉音拍子抜け 高澤良一 素抱
野分して蝉の少きあした哉 野分 正岡子規
野分雲それより迅く蝉飛べり 高澤良一 素抱
弥勒まだ仏に成らず蝉の夏 大峯あきら 宇宙塵
油山寺や行く先々に蝉の声 内山草三
油蝉しおからごゑを張り上げて 高澤良一 素抱
油蝉たつた一度の死を生きて 藤井正幸(藍生)
油蝉にも争鳴のとき過ぎし 綾部仁喜 樸簡
油蝉もうこれきりの力み声 高澤良一 鳩信
油蝉一気に森の沸騰す 永井あゆみ
油蝉一列縦隊直なる樹 高澤良一 素抱
油蝉死せり夕日へ雨手つき 岡本眸
油蝉少女に国の敗れたり 名越憲子
油蝉人を柱と数えし日 大熊久子
油蝉朝の大気を揺さぶりぬ 川又春桃子
油蝉弑逆のこゑを真上より 清水青風「午后の位置」
友をまつ虫たゞ日ぐらしの蝉のこゑ 蜩 正岡子規
有るよりも無は確かなる蝉の殻 新明紫明
有無云はさず蝉音を断てる大夕立 高澤良一 暮津
遊ぶ子のこきりこ唄ふ蝉の宿 三浦晴子 『晴』
夕栄えも手伝ひ蝉の愁嘆場 高澤良一 寒暑
夕爾忌や大樹の幹を蝉のぼる 中川幸子
夕渚残りの蝉を連れ歩く 井上青穂
夕蝉にやうやう見ゆる鳴き疲れ 高澤良一 燕音
夕蝉に一樹さながら森をなす 市村究一郎
夕蝉に老人けむるごとくかな 鈴木鷹夫 大津絵
夕蝉のいちだんらくや飯にせん 高澤良一 素抱
夕蝉のこゑ沁みとほり茅舎の忌 宮下翠舟
夕蝉のすとんとこゑを落しけり 高澤良一 素抱
夕蝉のやかましからぬ音と聞けり 高澤良一 素抱
夕蝉のゐて電柱に木のぬくみ 水野宗子
夕蝉の雁木の町やかへりみる 友岡子郷 遠方
夕蝉の汐引く如く鳴き沈む 梧桐青吾
夕蝉の天近づきぬ死者の窓 石寒太 炎環
夕蝉の鳴きゐし一つ鳴き止みぬ 高澤良一 素抱
夕蝉や家路といふは幾曲り 鈴木鷹夫 風の祭
夕蝉や生るるさきの日のごとし 阿部完市 無帽
夕蝉や追悼の稿まだ白紙 鈴木鷹夫 大津絵
夕飯の支度そろそろ蝉音減る 高澤良一 随笑
夕方にもう一度出て蝉捕す 高澤良一 暮津
夕方の風が出てきて減る蝉音 高澤良一 暮津
夕立にこりゃたまらんと馳せる蝉 高澤良一 寒暑
夕立に屋をはなれて蝉の翔ぶ 高澤良一 寒暑
夕立に蝉の逃げ行く西日哉 夕立 正岡子規
夕立に蝉の逃げ行く日影哉 夕立 正岡子規
夕立に蝉の飛び行く西日哉 夕立 正岡子規
夕立に蝉の飛び行く日影哉 夕立 正岡子規
夕立の笘に蝉鳴く日影かな 夕立 正岡子規
葉隠れに桂離宮の蝉の殼 片山由美子 風待月
葉柳にふられて鳴くか蝉の声 蝉 正岡子規
螺子を巻き直せし声か油蝉 片山由美子 天弓
頼むからもそっと抑え啼けよ蝉 高澤良一 寒暑
頼朝の虚子の鎌倉蝉時雨 星野高士
雷晴れて一樹の夕日蝉の声 蝉 正岡子規
落ちてゐる蝉の骸と商店街 高澤良一 暮津
落蝉にいつもの空があり真青 高澤良一 寒暑
落蝉に土はいつでもやわらかい 桜木美保子
落蝉に風の囁き絶え間なし 山崎千枝子
落蝉のごとく仰向きぐうたら寝 高澤良一 随笑
落蝉のころりと参る姿かな 高澤良一 随笑
落蝉のほとり過ぎゆく勤め人 高澤良一 暮津
落蝉のまたここにもの思ひかな 高澤良一 素抱
落蝉のやっと静かに我もしずか 池田澄子 たましいの話
落蝉の一つは玄関灯真下 高澤良一 素抱
落蝉の一つやや這ふ兜かな 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
落蝉の四肢まだ動く動かせよ 三輪閑蛙
落蝉の足蹴にされて一、二転 高澤良一 素抱
落蝉の天空を風吹き抜けり 高澤良一 素抱
落蝉の落ち方むろん頭から 高澤良一 寒暑
落蝉の翅ヒクヒクとさきほどまで 高澤良一 暮津
落蝉の翅をひらけば山河透き 岸原清行
落蝉は有為の奥山けふ越えて 高澤良一 素抱
落蝉をヘッドライトのよぎり消ゆ 高澤良一 素抱
落蝉を一分隊も蒐めたる 後藤比奈夫 めんない千鳥
落蝉を起せば飛んで行きにけり 奥野桐花
裏口の馬穴の空の蝉しぐれ 小檜山繁子
裏返る蝉のなきがら蝉時雨 蓬田紀枝子
立ち枯れの木ありて展く蝉の谿 八木絵馬「月暈」
立枯れの木に蝉なきて雲のみね 蕪村「落日庵句集」
立秋とがなれる蝉に聞かせばや 高澤良一 素抱
流水の渦るるるると蝉暮れつ 荒井正隆 『父嶽』
竜口寺蝉音の念彼(ねんぴ)観音力 高澤良一 随笑
凌霄の花に蝉鳴く真昼哉 凌霄花 正岡子規
淋しさにころげて見るや蝉の殻 蝉の殻 正岡子規
臨終に一際高き蝉の声 碓井幸枝
狼狽へる蝉に幹貸すあすなろう 高澤良一 鳩信
凩や蝉も榮螺もから許り 凩 正岡子規
啼き方もまた死に方も蝉愚直 高澤良一 素抱
啼き了へし蝉のころりと仏国土 高澤良一 随笑
啼く蝉のただならぬ時過ぎゐたり 高澤良一 素抱
啼く蝉の後先もなく一緒くた 高澤良一 素抱
啼けるだけ啼きて焦げたる油蝉 小川原嘘帥
戰艦の一部のごとき蝉の胸 高澤良一 寒暑
檜枝岐蝉の出番は疾うに過ぎ 高澤良一 鳩信
椨大樹果たして蝉はここに居る 高澤良一 寒暑
榾になる木にも蝉なくあつさ哉 暑 正岡子規
滾る暑の底の方より油蝉 高澤良一 暮津
煌々と大学の坂夜の蝉 寺井谷子
玻璃の蝉腹部まじまじ見られをり 高澤良一 寒暑
睨まれて閻魔の堂の蝉の殻 蝉の殻 正岡子規
磴のぼりつめれば蝉の音楽寺 椎橋清翠
祠には石ひとつ在り蝉湧く村 穴井太 原郷樹林
茫洋と床起ち蝉に狎れし耳 高澤良一 寒暑
襤褸のごと寝ねて夜蝉の短鳴き 高澤良一 暮津
賽銭箱のぼり詰めたる蝉殻あり 高澤良一 暮津
鐵塔に蝉のきてゐる敗戰忌 福島壺春
隧道を抜けてあらたの蝉時雨 甲斐誠夫
颱風の合間蛮勇ふるふ蝉 高澤良一 随笑
鶯の蝉にせりあふ木末哉 蝉 正岡子規

# by 575fudemakase | 2017-05-19 04:42 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)

蝉1

蝉1

「衣蝉(みんみん)」鼻声かゆきへ自ら手が届く 中村草田男
「画家の妻」貧しくすがし朝の蝉 水原秋櫻子 餘生
アヴエマリア蝉声勁く入り交り 野澤節子 未明音
あかがねの満月蝉のそら音散る 松村蒼石 雪
あかつきの蝉と聞きつつ又眠る 山口誓子
あかつきを告げにし蝉のゆふべに死 鷹羽狩行
アナガマノ声ヤ手ノ蝉袖ノ蝉 正岡子規 蝉
あなた来ない旅で蝉声いま抛物線 楠本憲吉 孤客
あはれ蝉のうまれ出でし木のもと 中川一碧樓
あひびきの少女とび出せり月夜の蝉 西東三鬼
あぶら蝉夜明の土にゐてあゆむ 水原秋櫻子 霜林
あるあした書屋の柱蝉這うて 山口青邨
ある朝の蝉の屍悼みすぐ忘る 安住敦
あをくあをく海揺れ蝉音ひろごらす 大野林火 雪華 昭和三十三年
あをぞらへ蝉音放てり野の一樹 大野林火 冬雁 昭和二十二年
いくばくか冷たくなりし蝉の穴 飯島晴子
いちにちの海の照りやむ高木蝉 上田五千石『風景』補遺
いちはやく高嶺の草木蝉たえし 飯田蛇笏 春蘭
いち早く日暮るる蝉の鳴きにけり 飯田蛇笏
いと低き幹にも蝉や蝉時雨 富安風生
いのちなほともしつづけよ油蝉 松村蒼石 雪
いのちまだ死なずにいた蝉のまた鳴く 荻原井泉水
いま生れし蝉に老鴬ほととぎす 後藤比奈夫
いま鳴くは夜蝉ならずや星月夜 水原秋櫻子 蘆雁
いろいろの売声絶えて蝉の昼 正岡子規 蝉
おいて来し子ほどに遠き蝉のあり 中村汀女
おのづから倚る樹定まり蝉は落つ 山口青邨
おもひつめたるひと木のゆらぎ蝉の声 臼田亜浪 旅人 抄
かうかうと蝉鳴き潮迫門に寄す 大野林火 早桃 海風抄
かかる日に聞く初蝉と思ひゐし 中村汀女
かく高く誘ふか幹の恋の蝉 山口青邨
かしこみて蝉の鳴きだす守武祭 鷹羽狩行
かすかなる蝉や吾等も声低く 山口誓子
かはたれの蝉のめだまに追つかけられ 平井照敏 猫町
かはたれの蝉ひとこゑのしびれたり 平井照敏 猫町
かま場みて桐の高きに油蝉(丹波、立杭焼窯) 細見綾子
ぎりぎりまで青蝉さがす男女かな 飯島晴子
くま蝉を握つて先ほどまではゐし 飯島晴子
クレョン画描いてゐる子に蝉取る子 上村占魚 球磨
けふの日も事なかりけり蝉暑し 種田山頭火 自画像 層雲集
ここだけの蝉や名もなき渡海の碑(那智) 細見綾子
このときのわが家しんと蝉高音 中村汀女
この刻を待ち一斉に蝉鳴き出づ 山口誓子
この頃は仇も守らず蝉涼し 杉田久女
この森の蝉取の子に木は高く 山口青邨
この庭のものには蝉の尿かかり 阿波野青畝
これもまた浪花の声の油蝉 鷹羽狩行
こゑ太し茂吉の国の油蝉 伊藤白潮
さかしまにとまる蝉なし天動く 三橋敏雄
さかしまに残る力や蝉のから 正岡子規 蝉の殻
さざ波の夕づく時の雄島の蝉(NHK衛星テレビのため松島で三句) 細見綾子
じいと鳴く蝉それきりの朝ぐもり 能村登四郎
しづけさに初蝉のまたきこえけり 日野草城
しのび音の咽び音となり夜の蝉 三橋鷹女
シヤツ干すや竿の一方蝉鳴く木ヘ 大野林火 青水輪 昭和二十四年
しゆくしゆくと蝉鳴き夏はもどりけり 山口誓子
じりじりと蝉横に匍ふまだ鳴かず 加藤秋邨
じんじんと耳蝉が鳴く虚空かな 中村苑子
せみのからわつて見たれは雫哉 正岡子規 蝉の殻
せみのなく木かげや馬頭観世音 正岡子規 蝉
せわしき蟻のひとむれに蝉が死にゐたれ 尾崎放哉 大正時代
セ口を弾くごと朝蝉はしらべ替へ 阿波野青畝
その穴と殻を残して蝉失せぬ 相生垣瓜人 負暄
その後の日にも鳴きたりほふし蝉 山口誓子
その樹はや蝉群れてなくこともなく 山口誓子
たたら遺蹟番子の音か蝉時雨 松崎鉄之介
たどりゆく患者居住区蝉暑し 草間時彦 中年
たまたまに蝉鳴く松の林哉 正岡子規 蝉
たまもののごとき熟睡蝉生る家(丹波にて) 細見綾子
ダムといふ水の鬱積蝉旺ん 上田五千石『琥珀』補遺
タ方にまだまだ遠し蝉よ鳴け 高田風人子
ちつち蝉孩子の石の彫り浅く 佐藤鬼房
つくづくと聞けよと蝉の鳴き頻る 相生垣瓜人 負暄
つみ石に蝉の殼ある山葵床 右城暮石 句集外 昭和八年
てのひらにあるとき蝉の声咽ぶ 山口誓子
とぎれ蝉読めば幕末史も哀し 及川貞 夕焼
どこまでも蝉時雨とは包まれて 稲畑汀子
なきやみしまゝ梢はあり蝉の梢 山口誓子
なきやみし蝉の宵すぐ闇来る 山口誓子
なける蝉やはらかき網に捕らへらる 山口誓子
にいにい蝉が氾濫す筒鳥はつひにひとつ 加藤秋邨
ぬけがらの君うつせみのうつゝなや 正岡子規 蝉の殻
ねんごろに蝉の交みも見て旅す 森澄雄
のうぜんの花をいたゞき蝉涼し 百合山羽公 春園
はかどらぬ稿や夜明の蝉ひとつ 水原秋櫻子 霜林
はつ蝉に忌中の泉くみにけり 飯田蛇笏 山響集
はろかにも初蝉聞けり平林寺 村山故郷
ひぐらしに今日を譲らず油蝉 百合山羽公 樂土
ひたすらに怺ふ唖蝉夕立つ中 赤尾兜子 玄玄
ひたぶるの喚きの蝉を耳へ当て 中村草田男
ひとかゝへ濯ぐより蝉鳴きはじめ 石橋秀野
ひとすぢの尿を加へて蝉しぐれ 鷹羽狩行
ふきもせぬ風に落ちけり蝉のから 正岡子規 蝉の殻
ふたたびは帰らず深き蝉の穴 阿波野青畝
ほふし蝉こゑをさむるもわが咫尺 山口誓子
ほふし蝉海の景色の裡にやむ 山口誓子
まぎらはしテレビか庭か蝉の声 右城暮石 句集外 昭和六十三年
まだ灯せるはわれのみなるか蝉来つ 篠原梵 年々去来の花 皿
まほろしや花の夕の蝉衣 正岡子規 花
みちのくの玉川蝉の名所哉 正岡子規 蝉
みちのくや出羽へ出ても蝉の声 正岡子規 蝉
みづうみに出でし園児に松の蝉 飯田龍太
みほとけの千手むざむざ むくろ蝉 伊丹三樹彦
みんみんの息つぐひまの蝉遠し 篠原梵 年々去来の花 雨
みんみん蝉低吟やみぬ露しぐれ 水原秋櫻子 蘆雁以後
みんみん蝉独吟靄を払ひけり 水原秋櫻子 蘆雁以後
みんみん蝉立秋吟じいでにけり 水原秋櫻子 帰心
もとの地に還りし蝉のむくろかな 阿波野青畝
ものの影なべて動かず油蝉 橋閒石 雪
やをにもやたにもいま鳴いて赤蝉よ 岡井省二 猩々
ゆふ蝉の樹の下過ぎし歩みかな 山口誓子
ゆふ蝉やその樹の下を通るとき 山口誓子
わがそばに夜蝉を猫が啼かし啼かし 橋本多佳子
わが家の椎蝉つくきのふけふの風 大野林火 海門 昭和七年以前
わが庭に蝉なく切にわが家あり 秋元不死男
わが庭を死所と定めて蝉吟ず 相生垣瓜人 負暄
わが庭を蝉の生るる聖地とす 山口青邨
わが余白雄島の蝉の鳴き埋む 細見綾子 牡丹
わだつみの風濤けぶる蝉の声 角川源義
唖蝉に取縋られて困じけり 相生垣瓜人 負暄
唖蝉のいくたび弾く夜の簾 水原秋櫻子 玄魚
唖蝉のもがき足掻きもかくならむ 能村登四郎
唖蝉の寂々と啼きゐたりけり 平井照敏 天上大風
唖蝉の樹を移り飛ぶ翅音たて 右城暮石 句集外 昭和二十九年
唖蝉の灯に来て荒き音立つる 右城暮石 句集外 昭和四十五年
唖蝉の捕られてぢゝと鳴きにけり 村上鬼城
唖蝉の方尺闇がにじり寄る 伊藤白潮
唖蝉は唖のままなる 積乱雲 富澤赤黄男
唖蝉も鳴きをはりたるさまをせり 加藤秋邨
唖蝉も来て聴開す明恵伝 水原秋櫻子 蓬壺
唖蝉も嗚く蝉ほどはゐるならむ 山口青邨
唖蝉や されば無音の地の乾き 富澤赤黄男
唖蝉やみどり極まる伊那の谷 加藤秋邨
唖蝉や子の放ちやる葬の纜 角川源義
唖蝉や父母歿後そして父母未生 中村草田男
唖蝉や放てば山の紺きたり 加藤秋邨
唖蝉や鳴かざるものは暑くるし 加藤秋邨
唖蝉をつゝき落して雀飛ぶ 村上鬼城
哀れあはれ蝉が蓮田にとびまどふ 山口誓子
愛たしか夏蝉朝を奏でけり 鈴木真砂女 夏帯
或る蝉の庇にあたり枝移り 後藤夜半 底紅
或時は稽古の如き蝉時雨 後藤比奈夫
意味深き眠りを呉るる朝の蝉 山田みづえ 草譜
医師来て夢揺すらるる蝉の中 石川桂郎 含羞
磯山の霖雨小歇みに蝉しぐれ 飯田蛇笏 山響集
一つ蝉鳴き澄む鉄扉くぐるとき 楠本憲吉 孤客
一と夏を蝉鳴き通す踏切よ 波多野爽波 鋪道の花
一雨が洗ひし野川蝉鳴き出づ 細見綾子
一筋のながなく蝉の声加ふ 山口誓子
一筋の夕日に蝉の飛んで行 正岡子規 蝉
一群の遠森に蝉病む広額 金子兜太
一山の僧ひれふす時や蝉時雨 山口青邨
一山の大荒れの滝蝉鳴かず 渡邊水巴 富士
一樹なき河尻に蝉聴きとがむ 右城暮石 声と声
一樹なき火の山樹海は蝉時雨 福田蓼汀 秋風挽歌
一樹なき船溜り蝉鳴きゐたり 鷹羽狩行
一心に蝉を捕りをる女人あり 相生垣瓜人 明治草
一蝉の鏑矢つよしわが行方 林翔
一蝉声刻つんざくや翁塚 小林康治 玄霜
一船笛止み蝉声を誘ひ出す 鷹羽狩行
一点の雲無くなんと蝉に風 原石鼎 花影以後
一本が鳴きたちまちに蝉の森 鷹羽狩行
一本に蝉の集まる野中哉 正岡子規 蝉
一本の樹のしみじみと蝉鳴けり 山口誓子
一本釣老爺に 岬の蝉の追立て鳴き 伊丹三樹彦
一夜登山もとのもくあみ蝉の声 右城暮石 句集外 昭和三十六年
飲食や朝の蝉から頭が腐る 三橋鷹女
隠し湯の跡池泉なす蝉時雨 松崎鉄之介
隠棲の蝉たえまなき雨月かな 飯田蛇笏 山響集
羽音先立て灯を取りにつんぼ蝉 鷹羽狩行
羽透きて鳴く蝉ならむ鳴き出でぬ 山口誓子
雨の蝉鳴きつまづきしより聞かず 稲畑汀子
雨後の村蝉音は山へしりぞきぬ 大野林火 早桃 太白集
雨洗ふ野川一せいに夕の蝉 細見綾子
姥子の蝉は緩歩さながらに濁り声 古沢太穂 古沢太穂句集
雲あそぶ青嶺の遠く蝉たえぬ 飯田蛇笏 心像
雲のぼる六月宙の深山蝉 飯田龍太
雲の下飛ぶ雨雲に狂ひ蝉 「方寸虚実」石塚友二
雲靆きて秋の大嶽蝉たえき 飯田蛇笏 雪峡
永久に生きたし女の声と蝉の音と 中村草田男
泳ぎ女の声聞ゆほど蝉静か 中村汀女
炎天やむくろの蝉のうらがえり 古沢太穂 古沢太穂句集
炎天や額を蝉のたちゆける 百合山羽公 春園
猿島は「水飲めません」蝉暑し 百合山羽公 樂土以後
遠き蝉近くの蝉に鳴き及ぶ 山口誓子
遠く巴里陥つ啼き移る蝉つぶて 三橋敏雄
遠蝉の止みたるのちの長き道 桂信子「草影」以後
横向きに鳴く蝉見えて喧し 山口誓子
王妃の額ばかりの部屋も 蝉の朝 伊丹三樹彦
黄なる看板塗られ墜ちいそぐ蝉 橋閒石 無刻
下りてきし坂がうしろに蝉時雨 清崎敏郎
何者が塞ぎたりけむ蝉の穴 相生垣瓜人 負暄
家より十歩泉のありて朝の蝉 大野林火 白幡南町 昭和二十七年
家族から見放され病む蝉の声 右城暮石 句集外 昭和三十三年
花も月も見しらぬ蝉のかしましき 正岡子規 蝉
花木槿真夏の蝉のなきにけり 百合山羽公 春園
臥て聞けば初蝉海に沁みわたる 山口誓子
壊はれゐし楽器のむくろあぶら蝉 阿波野青畝
海をあがりし寒さ夕づく蝉時雨 村山故郷
海距て脚下に抉る蝉の谷 富安風生
海浪を裾にしづめて蝉の岬 上田五千石『田園』補遺
貝塚の海まぼろしに蝉あつし 角川源義
崖は土こぼしつづけて蝉の声 鷹羽狩行
蛙鳴蝉噪彼モ一時ト蚯蚓鳴ク 正岡子規 蚯蚓鳴く
殻かかる蝉の旦の箒かな 阿波野青畝
学ぶ子に暁四時の油蝉 橋本多佳子
額は朝鮮人趙重応書蝉時雨 山口青邨
笠とるや杜の下道蝉時雨 正岡子規 蝉
鎌倉の遺構存置す蝉の寺 松本たかし
幹に着きあやまつ蝉の羽音しつ 篠原梵 年々去来の花 雨
汗の肩精悍なり蝉を示したる 加藤秋邨
汗を吹く茶屋の松風蝉時雨 正岡子規 汗
甘え猫鳴く蝉荒く喰ひたるに 及川貞 夕焼
甘露忌の蝉と怠けて山の中 鷹羽狩行
丸太磨く蝉音川音光り添へ 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
眼つりし野分の芭蕉いまの蝉 中村草田男
眼ひらきて鳴く夕蝉に似たらずや 鷹羽狩行
岩が根を蟻攀ぢ田毎の蝉あつし 角川源義
岩壁に怒りのこゑの油蝉 飯田龍太
頑な子が錐帯びて蝉の山 金子兜太
顔近く蝉とび立てり母恋し 西東三鬼
顔置いて夕蝉の木々にかこまるる 石川桂郎 含羞
喜び以外へ眼挙げぬ祖母や土塀の蝉 中村草田男
幾夏の記憶重なり蝉なきそむ 山口誓子
幾千の蝉なき汝今は亡し 加藤秋邨
机居の何も書かざる蝉の山 森澄雄
机上わが顎から映る蝉澄みて 古舘曹人 能登の蛙
機音を聞きわける蝉時雨の中(奥多摩、青梅) 細見綾子
稀れ稀れの蝉声ダムの旧山河 平畑静塔
起きぬけに残りの蝉よ露の奥 角川源義
議論して君とあるうち蝉も暮れ 山口誓子
吃る蝉をり台風の来つつあり 秋元不死男
吃々と蝉の前奏推敲成る 香西照雄 素心
桔梗ほか剪り来し花に遠き蝉 中村汀女
黍みのる峡の雲間やなごり蝉 飯田蛇笏 心像
客あれば万蝉こぞり鳴くもよし 山口青邨
逆なりに蝉匐ひくだる正午かな 加藤秋邨
丘の蝉音ひびく焼跡人かよふ 大野林火 冬雁 昭和二十一年
急流を挟む山壁忘れ蝉 上田五千石『琥珀』補遺
泣く如く噎ぶ如きか蝉も亦 相生垣瓜人 負暄
給水船待つ全島の蝉時雨 右城暮石 虻峠
魚屋の小僧薬屋の小僧に蝉とらせ 上野泰 春潮
魚藍観音赤蝉の夕あるき 岡井省二 鹿野
峡の子の真裸蝉を鳴かせ来ぬ 加藤秋邨
鏡中のわが顔青し朝の蝉 村山故郷
暁のその始りの蝉一つ 中村汀女
暁の蝉がきこゆる岬かな 前田普羅 能登蒼し
暁の雷雨を蝉が鳴きとほす 右城暮石 句集外 昭和二十三年
極く近く蝉鳴きいだす何か忘れ 岡本眸
玉手箱開けつ放しに蝉の声 右城暮石 一芸
金堂の扉を開けし蝉の声 右城暮石 句集外 昭和三十八年
句集世に湧き八方に蝉わめく 飯田龍太
空灼くる何処かに蝉の天開け 松崎鉄之介
熊蝉に 妻の習字は小半時 伊丹三樹彦
熊蝉に耳劈かれをりにけり 清崎敏郎
熊蝉の遠声こひしまた暑し 百合山羽公 寒雁
熊蝉の折伏の声はじまれり 百合山羽公 樂土
熊蝉の打ち消す秋の立ちにけり 百合山羽公 樂土
熊蝉の熱祷の声捨てて逃ぐ 百合山羽公 寒雁
熊蝉の鳴きやみ際を渋りけり 橋閒石 微光
兄弟の目までの黄帽蝉しぐれ 古沢太穂 捲かるる鴎
渓ぞひの樹になく蝉もいつか秋 飯田蛇笏 春蘭
渓声も蝉声もただ暮れゆくに 山口青邨
渓流にふりかぶさり来蝉時雨 稲畑汀子
渓流を掃けばすぐ澄む蝉時雨 川端茅舎
継橋の真間のつくつくほふし蝉 佐藤鬼房
月さして鳴き澄む蝉や雷のあと 水原秋櫻子 霜林
月ながら雨いくたびや油蝉 水原秋櫻子 餘生
月島や三文玩具の蝉鳴いて 中村草田男
月明にきそひ生れて鳴く蝉か 松村蒼石 雪
健かさいふ蝉時雨浴びながら 大野林火 海門 昭和十年
軒へはねるシャッター二枚朝より蝉 岡本眸
鍵屋の辻裏に無数の蝉の穴 松崎鉄之介
元義の歌よろこべば木々の蝉 山口誓子
元湯噴き長鳴く蝉とありにけり 大野林火 月魄集 昭和五十四年
原稿紙白し蝉声波紋なす 野澤節子 未明音
原色の毛布積まれてかなかな蝉(泉大津市に鈴木六林男氏を訪ふ) 細見綾子
原爆図絵吾子には見せず油蝉 能村登四郎
古伊万里のすこし明るく蝉しぐれ 鷲谷七菜子 花寂び
古池やさかさに浮ふ蝉のから 正岡子規 蝉の殻
孤座へ来て漆と膠と胡粉の蝉 中村草田男
湖に根の深き島蝉時雨 右城暮石 虻峠
午下の蝉拭へるごとき空となりぬ 原石鼎 花影以後
午後の蝉水道工事の跡歴と 野澤節子 未明音
呉須の絵のただしく澄みて蝉涼し 水原秋櫻子 岩礁
吾に捕はるみんみん蝉を叱りけり 山田みづえ まるめろ
吾よりも蝉の逸れる誕生日 相生垣瓜人 負暄
吾子の鼻汗かきて蝉を鳴かせゐる 加藤秋邨
後山に蝉減る霧の罩むるのみ 飯田蛇笏
御鏡に曠古一瞬蝉しぐれ 石塚友二 方寸虚実
御殿場や並杉老いて蝉稀也 正岡子規 蝉
交む蝉彼つかまへてうち興ず 山口青邨
光太郎彫りしは唖の蝉なるべし 伊藤白潮
向日葵に夜蝉すがれる蔵屋敷 水原秋櫻子 餘生
甲斐の雨雲蝉声のはやじまひ 鷹羽狩行
稿成りし机を拭けよ朝の蝉 水原秋櫻子 霜林
糠蝉を生みて小さき蝉の穴 富安風生
荒御霊に大樹が降らす蝉時雨 林翔 和紙
荒岬この先はもう蝉声なし 鷹羽狩行
行けばあつしやめれば涼し蝉の声 正岡子規 蝉
行けは熱し休めば涼し蝉の声 正岡子規 蝉
高き蝉僧の足音日の中に 飯田龍太
高館の蝉むせぶともおらぶとも 鷹羽狩行
合はす手に夜蝉のにほひ地蔵盆 林翔
合歓の葉に蝉みん~とこそばゆき 川端茅舎
合唱に加はるとなく蝉鳴き出す 鷹羽狩行
告白の言葉つまづく夜の蝉 鷲谷七菜子 黄炎
国の勢ひは山々へ退き蝉の寺 中村草田男
黒林にめぐらす蝉の声の網 上田五千石『田園』補遺
今日の今生きほとばしる蝉の声 鷹羽狩行
今日の秋をあら何ともなの蝉の鳴きやうや 正岡子規 立秋
今年出て蝉となりたる穴ばかり 右城暮石 一芸
婚約せむ一樹浸して蝉の声 鷹羽狩行
混血の児が樹を抱けば蝉とび立つ 西東三鬼
砂に埋めて蝉の骸はあとかたなし 安住敦
最高気温が天の健康蝉の穴 百合山羽公 寒雁
妻が招く朝餉や蝉の涼しさに 山口青邨
才ありて蝉殼を戸にかけておく 飯島晴子
細密壁画塗る 気遠さの 蝉時雨 伊丹三樹彦
昨日見し蝉捕の子もミサにゐし 清崎敏郎
皐月なり蝉鳴きいなご弾みたり 金子兜太
山を出る瀬の蕩搖と蝉しぐれ 飯田蛇笏
山宮の暮雨におどろく残り蝉 上田五千石『風景』補遺
山国は夜も蝉憑く片枕 森澄雄
山上より海に向ひて蝉放つ 松崎鉄之介
山上三日初蝉の声天界に 大野林火 飛花集 昭和四十七年
山深ク見馴レヌ花ヤ蝉モ鳴カズ 正岡子規 蝉
山川の泳ぎ蝉鳴き止めるまで 右城暮石 句集外 昭和四十四年
山頂の丘や上なき蝉の声 中村草田男
山毛欅の蝉聞く田楽の湯気の中 岡井省二 明野
山里は青田に日ざし朝の蝉 右城暮石 句集外 昭和二年
散ずべし雨にもめげず鳴く蝉を 相生垣瓜人 負暄
桟やかづらにすがる蝉の声 正岡子規 蝉
桟や荒瀬をこむる蝉しぐれ 飯田蛇笏
産衣着てはやも家族や蝉涼し 渡邊水巴 白日
残蝉のないては止むや忌の父に 山口誓子
残蝉のなくこゑありて校正す 山口誓子
残蝉の喘鳴おこる 彼岸花 伊丹三樹彦
残蝉もそこはかとなく爽やげり 相生垣瓜人 負暄
残蝉もなほ正調を存しけり 相生垣瓜人 負暄
姉妹同じ声音蝉鳴く中に会ひ 橋本多佳子
子の熱が出る夕蝉に息あはせ 松村蒼石 雪
子の反抗泣きつつ蝉を手に放たず 加藤秋邨
子らに祭爆音ささえて蝉しぐれ 古沢太穂 三十代
子を殴ちしながき一瞬天の蝉 秋元不死男
子供等は捨ててしまひぬ鳴かぬ蝉 細見綾子
師の句碑やこれより蝉の時雨鳴き 鈴木真砂女 紫木蓮
師の来む日今日蝉の樹も凡に見ず 石田波郷
枝折れし枯葉に来鳴く油蝉 右城暮石 天水
死はそこにここに落蝉のみならず 林翔
死後涼し光も射さず蝉も鳴かず 野見山朱鳥 幻日
死際も唖蝉は声持たざりき 加藤秋邨
死蝉に顔よせてまだ香あり 百合山羽公 故園
死蝉のほつたらかしが消えにけり 藤田湘子 てんてん
死蝉の仰向きにけり菩提樹下 阿波野青畝
死蝉をときをり落し蝉しぐれ 藤田湘子 神楽
紙鉛筆散らかる中に蝉落ちし 細見綾子
紙漉くも干すも夫婦っきり 晩蝉 伊丹三樹彦
歯ぎしりも舌打ちもして蝉育つ 後藤夜半 底紅
時かけて生れて蝉の唖蝉よ 鷹羽狩行
時化空や芭蕉を打ちし狂ひ蝉 富安風生
次の木に素知らぬこゑの油蝉 鷹羽狩行
耳鳴りか蝉か風絶え北津軽 佐藤鬼房
自ら煙蝉鳴く岩も絶えず燃ゆ 中村草田男
自我ありて泣くこゑ蝉に敗けてゐず 鷹羽狩行
自然死の蝉樹の影が地を移る 津田清子
悉く遠し一油蝉鳴きやめば 石田波郷
漆黒の眼を見ひらいて蝉生る 野見山朱鳥 運命
遮断機の前で握られ鳴く蝉よ 秋元不死男
灼け浜に下り蝉声をわすれたり 大野林火 早桃 海風抄
灼け浜へ下り蝉声をわすれたり 大野林火 海門 昭和十四年
手にとどく蝉の悪声住み古りて 古舘曹人 砂の音
手に乗せし蝉の蛻や二度童子(わらし) 佐藤鬼房
手触る樹も他郷蝉声ぶりかへし 上田五千石『田園』補遺
授乳して母子一体蝉の森 鷹羽狩行
樹を過ぎて蝉のこゑごゑ遠ざかる 山口誓子
樹下の土蝉のしぐれに鏡なす 長谷川素逝 暦日
囚人の鎖重たし蝉の声 正岡子規 蝉
秋の日の谷中にせまる蝉の聲 正岡子規 秋の日
秋雨に両眼濡れて蝉鳴けず 野澤節子 八朶集
秋風に殻脱ぐ蝉のあはれかな 林翔
秋風やほろりともけし蝉の殻 正岡子規 秋風
秋風やほろりと落し蝉の殻 正岡子規 秋風
秋風や眼を張つて啼く油蝉 渡邊水巴 白日
秋立つと蝉吟澄めり駿河台 水原秋櫻子 蘆雁
秋立つやほろりと落ちし蝉の殻 正岡子規 立秋
集る樹なき海際の蝉の声 右城暮石 句集外 昭和三十一年
住み跡は蝉の鳴き処となりゐたり(奈良) 細見綾子
十字架にからまる糸と蝉の声 鷹羽狩行
十年忌浦上の蝉にひしと鳴かれ 石塚友二 曠日
熟睡の目覚め雨戸に蝉ぶつかる 細見綾子
初蝉ときづきてさやにきこえけり 日野草城
初蝉とはげしき園の香ときたる 百合山羽公 春園
初蝉に子がのけぞれば二枚の歯 有馬朗人 母国
初蝉に信濃胡桃は蔭ひろし 水原秋櫻子 玄魚
初蝉に川音またしても激し 飯島晴子
初蝉のこゑひとすぢにとほるなり 日野草城
初蝉のこゑ高きより噴きこぽる 山口誓子
初蝉のしきりになくや音羽山 日野草城
初蝉のひとつのこゑのつゞきけり 日野草城
初蝉の唄絶えしまま羊歯の国 西東三鬼
初蝉の音のかすかなる耳順ふ 富安風生
初蝉の幹まっすぐに母子肥立つ 橋閒石
初蝉の幹まつすぐに母子肥立つ 橋閒石 無刻
初蝉の樹のゆふばえのこまやかに 日野草城
初蝉の清水坂をのぼりけり 日野草城
初蝉の生きる声生きとほす声 鷹羽狩行
初蝉の声ひきたらぬ夕日哉 正岡子規 蝉
初蝉の鳴き終へてより夕早し 橋閒石 雪
初蝉は寝も早きかや旧街道 中村草田男
初蝉や「来る者」は「来る水」の如し 中村草田男
初蝉やかがやきそめし水のいろ 桂信子 女身
初蝉やしきりにひかる蔦若葉 日野草城
初蝉やしづかにをりて老夫婦 山口青邨
初蝉やたがはず来鳴く梅の幹 水原秋櫻子 緑雲
初蝉やたつきひそかな音のみに 中村汀女
初蝉ややうやく基地を辿り出し 中村草田男
初蝉や顔あげて受く葉のしづく 鷲谷七菜子 天鼓
初蝉や久に風呂わくこのゆふべ 水原秋櫻子 磐梯
初蝉や己れゆるしてまどろめば 中村汀女
初蝉や高き樹のその低きところ 山口青邨
初蝉や山気つらぬく川の照 岡本眸
初蝉や松を愛して雷死にし 西東三鬼
初蝉や水面を雲のうつりつゝ 桂信子 月光抄
初蝉や即身佛の俯いて 佐藤鬼房
初蝉や昼餉にほはす邑の家 日野草城
初蝉や著莪は仔細に美しき 日野草城
初蝉や暮坂峠暮色いま 水原秋櫻子 殉教
初蝉や夜明をひとり眼覚めゐて 水原秋櫻子 蘆雁以後
初蝉よ抱けばまぶたに伏せ睫毛 鷹羽狩行
初蝉をききとむ驟雨はしる中 水原秋櫻子 餘生
初蝉をきくや厨の妻を呼び 日野草城
初蝉をきけば耳から飛びだす樹 秋元不死男
初蝉をこの樹に聴くも間のあらじ 三橋鷹女
初蝉を聞くおぼつかな病後の身 山口青邨
初蝉を聞く蒼生の墓山に 飯島晴子
初蝉仰ぐ恋しきものへ寄るごとく 野澤節子 未明音
初鳴きを捕はれて鳴く油蝉 鷹羽狩行
書き出しの一語堰なす夜の蝉 岡本眸
諸蝉が墓地の赭土嘆きあふ 山口誓子
諸蝉の鳴くにまかする昼寝呆け 日野草城
女童に惜しみて与ふ蝉のから 山口誓子
傷つける蝉かつまづきつつ鳴くは 岡本眸
傷癒やす湯や夕蝉の声長し 大野林火 白幡南町 昭和三十年
将軍の位に坐して蝉時雨 山口青邨
小蝉鳴く安寿の嘆く声にして 右城暮石 句集外 昭和四十八年
小天地作して蝉鳴く海の際 右城暮石 句集外 昭和二十八年
床に起きて絵かく子となり蝉涼し 杉田久女
掌にもがく蝉むづがゆき離愁かや 細谷源二 砂金帯
掌中の水晶の蝉小便を 川端茅舎
松に鳴く蝉松に泊つ一夜庵 原裕 青垣
松の幹巌のごとく蝉歩む 山口青邨
松の樹に途切れとぎれに蝉なきやむ 山口誓子
松風に誘はれて鳴く蝉一つ 日野草城
松籟の蝉の澄む丘無きか行かむ 及川貞 夕焼
梢先に鳴いて湖岸の残り蝉 上田五千石『琥珀』補遺
樟二岐いづれの蝉のかしましき 山口青邨
照葉樹叢に熊蝉婆ら猥雑に 金子兜太
上野から庭の木へ来て蝉の声 正岡子規 蝉
城の樹に蝉鳴き澄めり京近し 西東三鬼
城の蝉天下を取りしごとき声 鷹羽狩行
城山というものは登つて見ても蝉の鳴くばかり 荻原井泉水
埴土の黒点は蝉の穴なりや 阿波野青畝
織るごとく蝉とびかひて森暮るる 山口青邨
織糸に日光とほく蝉澄めり 大野林火 海門 昭和十一年
触れしものありしや夜蝉声を出す 右城暮石 句集外 昭和三十七年
食終へて聞きに下り立つ松の蝉 山口誓子
信長に焼かれし寺の蝉しぐれ 百合山羽公 樂土
寝まきの子灯に浮かみ出で夜蝉飛ぶ 木村蕪城 寒泉
寝覚めより嘲られしや天に蝉 小林康治 四季貧窮
寝冴ゆると双耳の蝉や鳴きしきる 石塚友二 方寸虚実
心頭の蝉みんみんといさぎよし 川端茅舎
森ゆきて蝉の洗礼ひとり浴ぶ 伊丹三樹彦
森抜けしこと蝉時雨抜けてをり 稲畑汀子
深山の月夜にあへる蝉しぐれ 飯田蛇笏 春蘭
深山蝉肉親ははや前になき 飯田龍太
深山蝉日焼の顔をわらひあふ 水原秋櫻子 蓬壺
深山蝉杣夫抜け来し杉の城 原裕 青垣
深山木に雲行く蝉のしらべかな 飯田蛇笏
真赤な花咲きつぐゆゑに蝉減らず 野澤節子 未明音
神の井のほとりをよしと蝉も鳴く 山口青邨
神父の裾掴む園児ら 蝉の朝 伊丹三樹彦
神木にいちど弾かれ蝉とまる 鷹羽狩行
神甕酒満てり蝉しぐれする川社 飯田蛇笏 山廬集
薪能火を継ぎて蝉たかぶれり 角川源義
身に貯へん全山の蝉の声 西東三鬼
身に迫りややに退く蝉のこゑ 山口誓子
人の死も蝉の死も皆仰向ける 能村登四郎
人の訃の相つぐ蝉の鳴きつづく 山口青邨
人間の声をつらぬき蝉のこゑ 日野草城
人語喪失 ただ油蝉なきしぼり 富澤赤黄男
人死にし家裏かつと蝉の山 鷲谷七菜子 游影
人焼くや飛騨の青谷蝉が充ち 加藤秋邨
人黙し蝉吟ずべき時来る 相生垣瓜人 負暄
人力の森に這入るや蝉時雨 正岡子規 蝉時雨
須磨の浦やうしろの山に蝉の声 正岡子規 蝉
吹かれ鳴く蝉二つ三つ朝渡し 尾崎放哉 大学時代
水を得てふぐり洗へばなく夜蝉 佐藤鬼房
水郷の蝉鳴かせゐる大榎 細見綾子
水自給自足の離島蝉時雨 右城暮石 句集外 昭和四十八年
水打つや蝉驚いて飛んで行く 正岡子規 打ち水
水打つや明らさまなる唖な蝉 前田普羅 普羅句集
水平に鳴き励みをり油蝉 石塚友二 玉縄抄
水面に油紋のみどり蝉の昼 桂信子 初夏
雀ちよと蝉を追ふこと初嵐 山口青邨
世に古るは一峡一寺蝉のこゑ 飯田蛇笏 家郷の霧
瀬に沁みて奈良までとどく蝉のこゑ 山口誓子
征くと決まれば三日経ちぬ蝉のこゑ 三橋敏雄
政宗公馬にまたがる蝉時雨 山口青邨
星ぞらにこゑの綾なす深山蝉 飯田龍太
晴天やおきぬうちから蝉の声 正岡子規 蝉
晴天やふしてとく知る蝉の声 正岡子規 蝉
生くといふことの切なさ夜の蝉 林翔
生や死や有や無や蝉が充満す 加藤秋邨
生れたる蝉はなじろみ蠢きぬ 飯田蛇笏 霊芝
生れたる蝉まなかひに翁堂 後藤比奈夫
生永し息長蝉が息をつぐ 森澄雄
聖代めく蝉時雨にぞめぐりあへる 中村草田男
声あげて蝉夕風にさからひぬ 中村汀女
声かれて蝉一本の濡れ仏 古舘曹人 能登の蛙
声とめてさらに後方の蝉なかす 山口誓子
声悪き蝉は必死に鳴くと云ふ 相生垣瓜人 明治草
西も蝉東も蝉や西瓜切る 日野草城
青き蝉鳴くマロニエや駿河台 水原秋櫻子 蘆雁
青山に蝉鳴き揃ふ日の出かな 村山故郷
青竹の膚にひゞけるは初蝉なる 日野草城
青蔦にきて鳴きいづる蝉はげし 大野林火 冬雁 昭和二十二年
青田の上飛びも越えずに蝉鳴けり 右城暮石 句集外 昭和三十四年
青年の病死弔ふ朝蝉に 日野草城
青年は朝からギター山から蝉 秋元不死男
石に沁む石工の汗や蝉時雨 日野草城
石の上の熊蝉の殻消えゐたる 加藤秋邨
石枕してわれ蝉か泣き時雨 川端茅舎
舌うちをしてゐる蝉に閼伽を汲む 後藤夜半 底紅
蝉あつし昼餉はパンの一ト切れのみ 村山故郷
蝉いくつ穴を出でしやお石茶屋 石田勝彦 百千
蝉いくつ鳴きしきる音の分かずつながる 篠原梵 年々去来の花 雨
蝉いざるほとりの塘の蟲なごり 飯田蛇笏 家郷の霧
蝉うつうつ街に鳴き移り巴里陥つ 三橋敏雄
蝉おちて鼻つく秋の地べたかな 飯田蛇笏 霊芝
蝉がしみこむこけしつくりの背戸の川 森澄雄
蝉かなしベツドにすがる子を見れば 石田波郷
蝉かなし鋼の貌の粉を吹いて 山口青邨
蝉が樹をはなれてちらと青天あり 右城暮石 句集外 昭和三十三年
蝉が鳴き出してこの世は蝉の声 鷹羽狩行
蝉きくも夏行と心落ち付けん 細見綾子 桃は八重
蝉きくも夏竹と心落ち付けん 細見綾子
蝉キリギリス炎帝の寵児たち 飯田龍太
蝉させば竿にもつるゝ柳哉 正岡子規 蝉
蝉しきりに墜ち付髭を忘れたり 橋閒石
蝉しぐれきよらかに人くらしゐる 大野林火 海門 昭和十年
蝉しぐれはればれと野の一喬木 原裕 葦牙
蝉しぐれま青と降らせ樹下の土 長谷川素逝 暦日
蝉しぐれもろ手を揚げて措きどなし 飯田蛇笏
蝉しぐれやがては噂しぐれかな 橋閒石
蝉しぐれより黄縅の蝶々かな 野見山朱鳥 曼珠沙華
蝉しぐれ歓喜のごとく死のごとし 野見山朱鳥 運命
蝉しぐれ後山の樹下に汝埋む 角川源義
蝉しぐれ子の誕生日なりしかな 安住敦
蝉しぐれ私服神父の大工仕事 津田清子 礼拝
蝉しぐれ篠つくときを立ちどまる 上田五千石『森林』補遺
蝉しぐれ樹々は泉石かき抱き 大野林火 冬雁 昭和二十二年
蝉しぐれ窓なき部屋を借りしと次子 古沢太穂 火雲
蝉しぐれ台杉に立つ七十本 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
蝉しぐれ担送車に子の声は無し 桂信子 草影
蝉しぐれ中に一すぢ嘆きのこゑ 上田五千石 田園
蝉しぐれ中に鳴きやむひとつかな 加藤秋邨
蝉しぐれ庇の下を通ひ路に 大野林火 白幡南町 昭和二十九年
蝉しぐれ凡愚の歌よ徹らざれ 石塚友二 方寸虚実
蝉しぐれ齢洗ふがごとくなり 上田五千石『森林』補遺
蝉しぐれ連山杉を鎧ひけり 野見山朱鳥 天馬
蝉すゞし牛頭天王の杉のもり 正岡子規 蝉
蝉だの蟹だの 野晒し 島の盆過ぎの 伊丹三樹彦
蝉とともに聖鐘正午を告げわたる 山口誓子
蝉となり鶏となり泣く子の前 加藤秋邨
蝉とび出す緑の一目千本へ 平畑静塔
蝉とべり千年杉の塵として 百合山羽公 樂土
蝉とりし蜘蛛をかすめて秋の蜂 飯田蛇笏 山響集
蝉とりの吾子に叱られ書をとざす 加藤秋邨
蝉とんで火山灰地の灼けたる石 加藤秋邨
蝉なくやしとゞに濡れて洗壜婦 西島麦南 人音
蝉なくや古城の町は青丹満つ 角川源義
蝉なくや砂に短き松の影 正岡子規 蝉
蝉なくや袖に射し入る夕薄日 桂信子 月光抄
蝉なくや田中に細き土饅頭 正岡子規 蝉
蝉なくや物売絶ゆる昼餉過 正岡子規 蝉
蝉にわれらの二十五年を懐古園 中村草田男
蝉に遠く蛙に近し裏二階 正岡子規 蝉
蝉に覚む夜勤の疲れ節々に 大野林火 早桃 太白集
蝉に水車愚かにたえまなく廻る 有馬朗人 母国
蝉に生れてさんげさんげと山の蝉 森澄雄
蝉に附く蟻を只今せみしぐれ 三橋敏雄
蝉に嗚かれ夕焼さめしひとりの顔 角川源義
蝉ねむし荒磯をしろきみちかよふ 大野林火 海門 昭和十一年
蝉のから碎けたあとや歸り花 正岡子規 帰り花
蝉のこゑしきりに肩を過ぎにけり 山口誓子
蝉のこゑとほき白浪馳けらする 大野林火 海門 昭和十一年
蝉のこゑピアノの深部ひそまりて 山口誓子
蝉のこゑ幹高く湧く九月来ぬ 廣瀬直人 帰路
蝉のこゑ胸元浸る思ひする 山口誓子
蝉のこゑ樹林をなかく涵しける 山口誓子
蝉のこゑ暑き入院ははじめてか 石田波郷
蝉のこゑ梅干せば又梅のこゑ 相生垣瓜人 微茫集
蝉のせちに呼ぶ声コンバイン 阿波野青畝
蝉の羽の赤きをけふの快事とす 山口誓子
蝉の羽音が狼狽・強行・脱出せり 中村草田男
蝉の羽瑞瑞し魄のなきいまも 山口誓子
蝉の音と赤きインクを終日に 大野林火 早桃 太白集
蝉の音の棒の折れたるごとく止む 加藤秋邨
蝉の音の万貫の石負ひにけり 加藤秋邨
蝉の夏曙覧元義継ぎて読む 山口誓子
蝉の殻見るにも女科つくる 右城暮石 天水
蝉の殻拾ふも捨つもふたつ指 佐藤鬼房
蝉の額に蛾の眉首は木喰い虫 金子兜太
蝉の宮とも申すべき小さき宮 高野素十
蝉の空松籟塵を漲らし 川端茅舎
蝉の穴あまりに多し疑へる 山口青邨
蝉の穴はかなき道に名をとどむ 有馬朗人立志
蝉の穴よけて踏みたる蝉の穴 後藤比奈夫
蝉の穴わが荒庭に数ふべし 相生垣瓜人 負暄
蝉の穴乾き蟻のぞく秋の風 山口青邨
蝉の穴蟻のぞきても詮なしや 山口青邨
蝉の穴蟻の穴よりしづかなる 三橋敏雄
蝉の穴堅き土にも出てゐたり 右城暮石 句集外 昭和十二年
蝉の穴書庫のあたりのさても多き 山口青邨
蝉の穴覗く故郷を見尽くして 中村苑子
蝉の穴冥へつづくはどの穴か 桂信子 花影
蝉の穴柩通れるところにて 石田勝彦 秋興
蝉の午後妻子ひもじくわれも亦 日野草城
蝉の語尾書留の印捜しをり 石川桂郎 含羞
蝉の山やがて透明な穢のはじまり 金子兜太
蝉の山蜩の山向ひ合ふ 右城暮石 句集外 昭和四十九年
蝉の子に父還るべき夏きたる 加藤秋邨
蝉の樹の地に触るゝより鳴き初むる 上田五千石『田園』補遺
蝉の樹下掃く学院や駿河台 水原秋櫻子 蘆雁
蝉の松礎石擡げて老いにけり 林翔 和紙
蝉の梢白雲あまた過ぎつあり 山口誓子
蝉の城深井の底をわあと呼ぶ 山口誓子
蝉の森ゴルフ場こそ無一物 香西照雄
蝉の陣真平らなる水面奔る 中村草田男
蝉の声あの世も同じ声なるや 右城暮石 散歩圏
蝉の声しばらく汽車に押されけり 正岡子規 蝉
蝉の声たしかに捕へられしらし 岡本眸
蝉の声なり寸々と水のひきそめし 荻原井泉水
蝉の声ひとすぢ起る朝まだき 日野草城
蝉の声やまず庭木の太ければ 鷹羽狩行
蝉の声海へ海から何も来ず 鷹羽狩行
蝉の声共に吹かるゝ梢かな 正岡子規 蝉
蝉の声耳に残りて船に乗る 右城暮石 句集外 昭和六十一年
蝉の声掌に恍惚と火口壁 角川源義
蝉の声絶えて水音山深し 正岡子規 蝉
蝉の声頻に吾に染み入れり 相生垣瓜人 明治草
蝉の窓朝の花瓶の水にごる 桂信子 新緑
蝉の谷いま黄葉して青狐 金子兜太
蝉の昼 虫の夜 サロン一枚きり 伊丹三樹彦
蝉の昼多幸ならんか便り絶ゆ 野澤節子 未明音
蝉の朝愛憎は悉く我に還る 石田波郷
蝉の朝喇叭手等吹く電形音 石塚友二 方寸虚実
蝉の杜抜け壮年の貌となる 伊丹三樹彦
蝉の尿燦たりけふの日を飾る 山口誓子
蝉の尿水分に人詣でけり 岡井省二 有時
蝉の背の紺青にして檻の風 原石鼎 花影
蝉の鳴いて机の日影かな 正岡子規 蜩
蝉の鳴き止みしはるかへさそはるる 鷹羽狩行
蝉の鳴くあひだ樫の木まつすぐに 鷹羽狩行
蝉の鳴くこゑごゑに樹は脂凝る 山口誓子
蝉の鳴く山道ゆるくのぼりゆきし(欣一母逝く) 細見綾子
蝉の木と吾とがおなじ風の中 山口誓子
蝉の木に砕かれし頭を持ち歩く 佐藤鬼房
蝉の木や首拭く顔を仰向かす 岡本眸
蝉の木を吾家の木ぞと聞きわきて 山口誓子
蝉の目の岬育ちの寂かな目 秋元不死男
蝉の夜の暗きともしび灯りけり 桂信子 月光抄
蝉の殼果樹の蘗なびきゐて 右城暮石 句集外 昭和二十七年
蝉の殼流れて山を離れゆく 三橋敏雄
蝉の聲あつし蜩やゝ涼し 正岡子規 蜩
蝉はたと鳴きやむ何も得ざりしに 岡本眸
蝉はなやぎて丈ひくき路傍の木 橋閒石
蝉ふいと嗄れゆるく鳴きつづく 篠原梵 年々去来の花 雨
蝉もその一つに遠し昼寝覚 古舘曹人 樹下石上
蝉もはや工を極めし骸なり 百合山羽公 故園
蝉も朝寝客も朝寝や春の雨 高野素十
蝉も鳥も人には鳴かぬ今は鳴く 金子兜太
蝉も木も記憶を持たず蝉しぐれ 藤田湘子 てんてん
蝉や時雨れむ高津乙女が衣濯ぐ 臼田亜浪 旅人 抄
蝉や藍染甕に夜もすがら 阿波野青畝
蝉よ鳴け昔磔茂左衛門 加藤秋邨
蝉わめく山々や世は揺れ移る 中村草田男
蝉を愛すわが身に迫り鳴くからに 山口誓子
蝉を獲し雀は蕗の中に落つ 水原秋櫻子 磐梯
蝉を獲し狡蟷螂に干渉す 相生垣瓜人 明治草
蝉を獲て雀躍すなる雀あり 相生垣瓜人 明治草
蝉を近づけ昼寝の母を子がのぞく 加藤秋邨
蝉を語りてそこにあるごと宙を指す 加藤秋邨
蝉を聴きぬ月を見るべき台にして 相生垣瓜人 微茫集
蝉を入れ叫喚を入れ捕虫網 相生垣瓜人 負暄
蝉を聞く鉱泉湧くに暇あれば 大野林火 早桃 太白集
蝉を聞く蝉よ松風勝れつつ 三橋敏雄
蝉握りながら我を見る島の子は 清崎敏郎
蝉移り飛ぶ瞭かや滝の天 右城暮石 句集外 昭和三十一年
蝉一途に鳴くとき道も遥かなり 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
蝉一夜草の庵のきぬぎぬに 山口青邨
蝉咽ぶ他郷信濃の古城址に 中村草田男
蝉遠く切支丹浄土涼しけれ 小林康治 玄霜
蝉遠し何するとなく書架の前 岡本眸
蝉遠し午下の倦怠茶を淹れよ 日野草城
蝉遠し石のことばを聴くごとく 林翔 和紙
蝉遠音とほきあをぞら眼を清む 大野林火 青水輪 昭和二十六年
蝉音あふれ出る高槻を仰ぎゆく 篠原梵 年々去来の花 皿
蝉殻に蝉の行方を問ひたしや 林翔
蝉殻を時にくしやつとつかみけり 岡井省二 前後
蝉殻を朝見つけたる朴葉裏 細見綾子
蝉幾萬英霊幾萬青天下 三橋敏雄
蝉去りしのちも西日の木とし立つ 大野林火 青水輪 昭和二十四年
蝉共が忙殺されてをりにけり 相生垣瓜人 負暄
蝉響く幹やたちまち身のほとり 山口誓子
蝉近く来鳴く吾を木と思ひけむ 山口青邨
蝉吟が蝉咽にこそ変りたれ 相生垣瓜人 負暄
蝉吟に和して老樹も微吟せり 相生垣瓜人 負暄
蝉吟のそろひて老師なかりけり 百合山羽公 樂土
蝉吟やひたすらねむる食中り 水原秋櫻子 霜林
蝉吟を鵯の来て掻き乱す 相生垣瓜人 負暄
蝉穴といふ寂寞をのぞき見る 能村登四郎
蝉穴の暗き貫通ばらの寺 西東三鬼
蝉語清み人語しきりに濁りけり 相生垣瓜人 負暄
蝉交む乳白色の部分かな 永田耕衣
蝉高音飲食に手はよごれそむ 野澤節子 未明音
蝉黒く見ゆるゆふべになほなけり 山口誓子
蝉山に墓舁ぎ入るえいほうと 森澄雄
蝉孜々とわが少年の学のごとく 山口青邨
蝉死せり人も末期は手を合はす 林翔
蝉死にて夕日浴びゐる手洗ひ場(丹波にて) 細見綾子
蝉持つ子笑顔をしまひ忘れたり 加藤秋邨
蝉時雨のなかや雲中供養佛 森澄雄
蝉時雨より深きもの人の息 原裕 青垣
蝉時雨わが肉に濃緑がしみる 金子兜太
蝉時雨或は篠を乱しけり 相生垣瓜人 負暄
蝉時雨河幅広く主流疾し 津田清子 礼拝
蝉時雨仰むく口や木の雫 正岡子規 蝉時雨
蝉時雨豪酒の仁の横たわる 金子兜太
蝉時雨子は担送車に追ひつけず 石橋秀野
蝉時雨森ふかく海入りこめる 大野林火 早桃 太白集
蝉時雨即身仏に藻抜けの穴 松崎鉄之介
蝉時雨日斑(まだら)あびて掃き移る 杉田久女
蝉時雨熱の掌を組む胸うすし 桂信子 月光抄
蝉時雨能登も果なる葬り処に 清崎敏郎
蝉時雨夫のしづかな眸にひたる 桂信子 月光抄
蝉時雨平家納経模写拝観 山田みづえ まるめろ
蝉時雨棒のごとくに人眠り 清崎敏郎
蝉時雨木彫仏の縦の木肌(きめ) 大野林火 雪華 昭和三十六年
蝉時雨木々ふるはせて光堂 平畑静塔
蝉時雨涼しけれども起居慵し 野見山朱鳥 曼珠沙華
蝉取の子が曲りゆき塀残る 清崎敏郎
蝉取の子にみな高き札所の樹 後藤比奈夫
蝉取の凌霄の花おとしゆく 高屋窓秋
蝉取の黐竿しなひ~駈け 清崎敏郎
蝉取りに行って帰らない子がきのうきよう来ている 荻原井泉水
蝉終に疾風の中に声を絶つ 山口誓子
蝉出でし穴なり歴としてをれり 相生垣瓜人 負暄
蝉暑し作家先づ知る作の瑕 下村槐太 天涯
蝉暑し岬の風神休日か 角川源義
蝉暑し颱風二つ天気図に 日野草城
蝉娼たる秋風松に傷みつつ 永田耕衣
蝉常に餓うと云ふなり如何ならむ 相生垣瓜人 明治草
蝉殖えし朝や隣人争へり 藤田湘子 途上
蝉生る寸土一つの穴ありき 山口青邨
蝉生る能登の海辺をさかさまに 有馬朗人 母国
蝉生れゆづり葉句集第二成る 高野素十
蝉声が湧く満願の日にも似て 鷹羽狩行
蝉声しづか門入りし者後は杳と 中村草田男
蝉声につゝまれゐしが歩み出づ 山口誓子
蝉声に慰撫せられつつ日を経たり 相生垣瓜人 明治草
蝉声に高音加はる死は遠し 橋本多佳子
蝉声に乗じて蝉の殻拾ふ 鷹羽狩行
蝉声に送られて喜雨去り行けり 相生垣瓜人 明治草
蝉声のいま鉄壁や杉木立 岡本眸
蝉声の一つ火となる秋夕べ 鷲谷七菜子 一盞
蝉声の完璧にして身の渇き 岡本眸
蝉声の激しきは樹の裏ならむ 山口誓子
蝉声の減るは立木の減るごとし 上田五千石『森林』補遺
蝉声の樹下の一円鏡なす 森澄雄
蝉声の絶えて樹声の發りけり 相生垣瓜人 負暄
蝉声の中へ梯子を登りゆく 鷹羽狩行
蝉声の沛然と人逝きにけり 鷲谷七菜子 一盞
蝉声ほのぼの「三曲二百歩」一段づつ 中村草田男
蝉声も入り来双眼鏡の内 右城暮石 声と声
蝉声も風もさざなみして届く 大野林火 方円集 昭和五十二年
蝉声や学徒朝行く駿河台 水原秋櫻子 蘆雁
蝉声や吾を睡らし吾を急き 橋本多佳子
蝉声をかぶりてこの身こゝろよさ 山口誓子
蝉声を堰く長城の厚き壁 津田清子
蝉声を冠着越えの汽笛消す 大野林火 潺潺集 昭和四十三年
蝉声を声援として又聞けり 相生垣瓜人 明治草
蝉声を踏んで雲居の宮を訪ふ 上田五千石『琥珀』補遺
蝉声を驟雨の樹樹になほ絶たず 山口誓子
蝉声降りしきれ寺領に子どもらに 楠本憲吉 孤客
蝉声降るにまかせ寺領はエアーポケット 楠本憲吉 孤客
蝉声八重息つぐことは生きつぐこと 上田五千石 森林
蝉絶えて急に水平線ちかし 橋閒石
蝉絶えて虫絶えて何もなき野末 桂信子 草影
蝉絶えて島の裏側波荒し 橋閒石
蝉羨し憶ひのたけを啼きゐるは 桂信子 草影
蝉脱の始まりて目の離されず 相生垣瓜人 明治草
蝉脱の秘事にも嘗て参じけり 相生垣瓜人 明治草抄
蝉脱の秘事にも嘗て參じけり 相生垣瓜人 明治草
蝉旦渚歩めばさく~と鳴る 種田山頭火 自画像 層雲集
蝉低くとぶのみ夏野さびしくて 山口青邨
蝉年の四隣の蝉が励ませり 百合山羽公 樂土以後
蝉飛んで樹に当たりたる声を出す 右城暮石 散歩圏
蝉飛んで巡査の独語すぐ終る 加藤秋邨
蝉飛んで墓の古さよ新しさよ 秋元不死男
蝉氷いまし羽ばたくかも、しれず 伊藤白潮
蝉沸くや海桐崖なす崎のみち 下村槐太 天涯
蝉聞けば暗き暁とも思ほえず 山口誓子
蝉捕つて瞳の耀をみれば秋 飯田蛇笏 山響集
蝉無心に鳴けり島人海を説く 大野林火 海門 昭和十一年
蝉鳴いて遅月光る樹海かな 飯田蛇笏 霊芝
蝉鳴いて天の橋立よこたはる 日野草城
蝉鳴いて日かげ涼しきさるすべり 右城暮石 句集外 昭和三年
蝉鳴いて名残雨ふる木立かな 日野草城
蝉鳴いて夜を氾濫の水殖えぬ 飯田蛇笏 山響集
蝉鳴いて颱風のさき見え来る 山口誓子
蝉鳴かずなりたる虹の全けれ 右城暮石 声と声
蝉鳴かずなりて寂然たる一木 山口誓子
蝉鳴かず直線の街きらきらす 加藤秋邨
蝉鳴かす電柱橋の際に立ち 山口誓子
蝉鳴かぬ夏や懺悔を強ひられて 上田五千石『天路』補遺
蝉鳴かぬ寂けさと鳴く寂けさと 相生垣瓜人 明治草
蝉鳴かぬ深大寺とはけつたいな 亭午 星野麥丘人
蝉鳴きはやり鳴きさかり潦 廣瀬直人
蝉鳴くとともに眼界嚇々と 山口誓子
蝉鳴くや一刻々々ひかるものに 大野林火 潺潺集 昭和四十年
蝉鳴くや寒暖計は九十九度 正岡子規 蝉
蝉鳴くや行水時の豆腐売 正岡子規 蝉
蝉鳴くや寺は石橋杉木立 正岡子規 蝉
蝉鳴くや瀬にながれ出しところてん 飯田蛇笏
蝉鳴くや相呼応して相寄らず 山口青邨
蝉鳴くや息つめて書く第一行 大野林火 雪華 昭和三十六年
蝉鳴くや団扇に画く滝の音 正岡子規 蝉
蝉鳴くや八月望のうすぐもり 水原秋櫻子 殉教
蝉鳴くや木曾青谷は十一宿 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
蝉鳴くや野中の井のはね釣瓶 正岡子規 蝉
蝉鳴くや涙を吸ひし畳の目 鈴木真砂女 卯浪
蝉鳴く樹はるかにありて痔を嘆く 秋元不死男
蝉鳴けり泉湧くより静かにて 水原秋櫻子 蓬壺
蝉鳴けり亡者亡者と早口に 右城暮石 虻峠
蝉鳴ける貨車やそのまま動き出す 加藤秋邨
蝉鳴ける椎樟の中陶の窯 山口青邨
蝉鳴て殘暑の頭裂くる思ひ 正岡子規 残暑
蝉湧く森シーボルト邸趾翳るなし 小林康治 玄霜
蝉夕べ大曉出で来て一座せよ 角川源義
蝉来つて鳴きいづる何ぞ速かなる 山口誓子
蝉涼しわがよる机大いなる 杉田久女
蝉涼し絵馬の天人身を横に 松本たかし
蝉涼し憩へば髪に手をやりて 清崎敏郎
蝉涼し山の泉のひとゝころ 上村占魚 鮎
蝉涼し長官邸は木がくれに 杉田久女
蝉涼し汝の殻をぬぎしより 杉田久女
蝉涼し頬ばつてゐる郵書受 日野草城
蝉涼し朴の広葉に風の吹く 河東碧梧桐
蝉啼き出づ起きぬけざまに水汲めば 安住敦
蝉擲てば狂人守の夜が疲れ 平畑静塔
蝉殼の湿りを父の杖通る 飯島晴子
蝉殼も共に落ち来し栗拾ひ(丹波五句) 細見綾子
蝉殼よ玉葱結び吊せるに(奈良、右城暮石さん居) 細見綾子
蝉蛻く蛻き慣れたる者の如 相生垣瓜人 明治草
蝉蜩其中下す小舟かな 正岡子規 蜩
先行の人になおあり蝉の空 赤尾兜子 歳華集
先週につづく蝉声つづく幕営 鷹羽狩行
千代田城大手の蝉に龍駕出づ 飯田蛇笏 霊芝
千部の経誦して朗々蝉涼し 山口青邨
千部会の笛鉦太鼓蝉声も 山口青邨
船は汐とともに低まり蝉の崖 中村草田男
船頭の舟には居らず蝉のこゑ 正岡子規 蝉
全からぬわが生の一と日蝉の唱 野澤節子 未明音
全身で鳴く蝉花輪なき葬り 岡本眸
粗笨なる蝉の羽とびて高からぬ 山口誓子
素性よき幹を選びて蝉鳴けり 上田五千石『田園』補遺
僧正の榎かしまし蝉の声 正岡子規 蝉
倉敷川夜蝉鳴きつぐ夏柳 水原秋櫻子 餘生
掃き溜めてありしみくじと落蝉と 後藤比奈夫
早蝉の絶え入るばかり梅雨上る 前田普羅 能登蒼し
草に落ち蝉鳴きいづる雨後の月 水原秋櫻子 餘生
蒼白き蝉の子を掘りあてにける 三橋敏雄
息長き蝉ごゑを籠め墓の穴 岸田稚魚 筍流し
足六つ不足もなしに蝉の殻 正岡子規 蝉の殻
卒然と初蝉こころ遊びけり 山口誓子
存在の頂点蝉の両眼木に点じ 加藤秋邨
太陽がなかなか消えぬ海の蝉 岡井省二 明野
体当りして蝉とまる森深く 山口青邨
大寺の秋暑の蝉に参じたり 上田五千石『琥珀』補遺
大蝉の炎々たるが聞かまほし 相生垣瓜人 明治草
大地いましづかに揺れよ 油蝉 富澤赤黄男
大蜘蛛の蝉を捕り食めり音もなく 加藤秋邨
大木の注縄に蝉啼く社哉 正岡子規 蝉
滝川に沿うたる旅や蝉しぐれ 飯田蛇笏 霊芝
卓四座親子立つなく蝉鳴きいづ 野澤節子 未明音
脱け殻にすがりて蝉が曙光待つ 鷹羽狩行
谷深し樹を放れ飛ぶ蝉の音 右城暮石 句集外 昭和五十四年
男蝉小便すれば女蝉も小便す 正岡子規 蝉
地には蝉月面に人立ち、歩む 石塚友二 磊[カイ]集
地に居りし蝉が木に鳴く朝ぐもり 水原秋櫻子 霜林
地の中に蝉を残して地虫出づ 鷹羽狩行
地中よりあく穴うれし蝉しぐれ 三橋敏雄
稚松にとまりて直ぐに蝉のこゑ 山口誓子
蜘蛛の高巣にさかしまの蝉不しあはせ 中村草田男
竹の根の蝉となりたる暑さかな 内藤鳴雪
竹藪より蝉声浴びて帰化したり 津田清子 礼拝
茶もて溶き呉須磨りをれば蝉の天 加藤秋邨
着物干す上は蝉鳴く一の谷 正岡子規 蝉
忠治湯のいはれは聞かず蝉の夜 角川源義
昼寝してまなこくぼみぬ油蝉 森澄雄
昼中や雲いらいらと蝉の声 正岡子規 蝉
昼中や蝉の集まる大榎 正岡子規 蝉
樗さく牧の初蝉かなでけり 西島麦南 人音
朝からの蝉朝からの花木槿 後藤夜半 底紅
朝ぐもり無吟の青き蝉ひとつ 水原秋櫻子 餘生
朝の蝉富士のくれなゐ褪せゆけり 水原秋櫻子 蓬壺
朝の蝉鳴きとぎれつつ露涼し 日野草城
朝の蝉老幼の弥撒を荘厳す 小林康治 玄霜
朝床と云ふと雖も蝉声裡 相生垣瓜人 負暄
朝蝉しぐれけふも炎ゆらむ空青く 日野草城
朝蝉の一つ鳴きつぐ竃の火 中村汀女
朝蝉の湖に溺るる水輪かな 秋元不死男
朝蝉の声もこもりて煉瓦館 能村登四郎
朝蝉やよべより風の絶えしまま 中村汀女
朝蝉や墨絵のなかの金の*し尾 角川源義
朝蝉や明治づしりと梁・柱 能村登四郎
朝曇り蝉音すくなくなりにけり 大野林火 早桃 太白集
朝日影横這ふ朴や深山蝉 原石鼎 花影
朝日涼し野良着も蝉も縞摸様 香西照雄
朝露を乾かして鳴く蝉の声 正岡子規 蝉
朝帚初蝉の句もありなしに 中村汀女
墜ち蝉の胸の前垂古馴染 中村草田男
椎の影蝉鳴く椽の柱哉 正岡子規 蝉
掴む掌を強め弛めて蝉鳴かす 右城暮石 句集外 昭和三十五年
潰ゆる胃繞りて朝の蝉湧けり 相生垣瓜人 微茫集
爪かけて進む姿に蝉死せり 百合山羽公 故園
吊橋に立つ蝉声の籠に入り 上田五千石『田園』補遺
庭に蝉来しををさなに真似び教ふ 篠原梵 年々去来の花 雨
庭の木にらんぷとゞいて夜の蝉 正岡子規 蝉
庭園に蝉とめどなく鳴く別れ 金子兜太
庭松のゆらぎ蝉しめやかな夕となりぬ 種田山頭火 自画像 層雲集
天の蝉聴えてゐたる静寂かな 鷲谷七菜子 天鼓
天界に散華きらきら蝉の昼 山口誓子
天限る檜山が放つ蝉の声 林翔 和紙
天寿おほむね遠蝉の音に似たり 飯田龍太
天日のなきまま暮るる蝉のこゑ 山口誓子
天平の礎石に坐せば松の蝉 上田五千石『天路』補遺
点滴につなぐ玉の緒蝉しぐれ 角川源義
点燈時いよいよ林蝉湧きかへる 山口誓子
田へひらけし庭木のはしに小蝉哉 右城暮石 句集外 昭和十年
電信の柱にあつし蝉の声 正岡子規 蝉
電柱にとまりて赤き油蝉 右城暮石 句集外 昭和三十五年
電柱に登りて工夫蝉となる 三橋鷹女
登りつめし恍惚蝉の遠ざかる 松村蒼石 雁
土を出る蝉に記憶のうすみどり 橋閒石
土古き野山の蝉むくろかな 三橋敏雄
土左日記ここに始まる蝉の穴 有馬朗人 立志
土砂降りや無辜の蝉声根絶やしに 上田五千石『田園』補遺
塔しづく止むを待たずに蝉時雨 鷹羽狩行
塔に日の夕よみがへる蝉しぐれ 上田五千石『天路』補遺
島蝉や子は子ながらに網干して 臼田亜浪 旅人 抄
桃赤らむじんじん蝉の油滲み 森澄雄
灯に来り老妻つかむ蝉は唖 山口青邨
燈にあたり畳にあたり蝉鳴きつ 篠原梵 年々去来の花 皿
燈を取りに来たる蝉あり取り得ぬに 相生垣瓜人 明治草
燈心のふたつ焔や蝉の寺 岡井省二 前後
透きとほる翼負ひゐて蝉頓死 阿波野青畝
頭熱しく蝉を聞きわすれては聞きぬ 篠原梵 年々去来の花 皿
童等の蝉さしにくる社かな 正岡子規 蝉
道と渓流蝉声も亦蜿蜒と 中村草田男
道通ひ蝉鳴く森の深からず 大野林火 海門 昭和十四年
峠路で重る売薬 別れ蝉 伊丹三樹彦
曇り日の蝉やこえなく幹をたつ 古沢太穂 古沢太穂句集
那谷寺の苔のここにも蝉の穴 石田勝彦 百千
内観といふにはとほし蝉しぐれ 亭午 星野麥丘人
縄文人居ず深山蝉生き継ぎて 赤尾兜子 歳華集
二の滝の虹のごとしや蝉の声 角川源義
二三日また沸きかへし油蝉 阿波野青畝
二時頃は山も汗する蝉ぢぢと 星野立子
尼寺の蝉存分に鳴きにけり 廣瀬直人 帰路
肉声はよしみんみん蝉油蝉 鷹羽狩行
日かげりて蝉鳴き澄めり高梢 日野草城
日の道盡きぬ夕蝉と惜み歎けども 荻原井泉水
日を透す栴檀の樹の蝉しぐれ 山口誓子
日射すとき万木の蝉声発す 山口誓子
日照雨して檜山の蝉の声ごもる 飯田蛇笏
日蝕して蟷螂蝉を捕んとす 正岡子規 蟷螂
日暮るゝや夜蝉頻りに葉を落ち合ふ 原石鼎 花影以後
日暮蝉急に鳴き出す鵜飼宿(岐卓県小瀬六句) 細見綾子
日本海早立ちの背に蝉殻一つ 金子兜太
日曜の飯食ふ蝉はもう鳴かず 右城暮石 句集外 昭和二十六年
乳ぜるこゑ蝉にもありて春ゆふべ 鷹羽狩行
乳呑児の白眼は青眼 蝉鳴く朝 伊丹三樹彦
妊りしやと夕蝉の声おこす 鷹羽狩行
熱き茶を息継ぎ飲めり朝の蝉 水原秋櫻子 殉教
熱き茶を用ひて蝉を聴きにけり 相生垣瓜人 明治草
年闌けて小机守る盆の蝉 上田五千石『琥珀』補遺
念仏の背筋ゆたかに油蝉 古舘曹人 能登の蛙
濃霧だから顆に光蝉を覚えるのだ 金子兜太
脳中に風白く満ち唖蝉墜つ 橋閒石
脳天にある蝉声を聴きゐたり 山口誓子
脳病の頭にひゞくせみの声 正岡子規 蝉
芭蕉糸こはくに透けて島の蝉(沢木欣一句碑、沖縄辺戸岬に建つ) 細見綾子
芭蕉葉に水晶の蝉羽を合せ 川端茅舎
拝殿のぐるりに深山蝉の声(諏訪大社) 鷹羽狩行
敗戦の矛を擲つや油蝉 村山故郷
梅雨あけて奥の山より一つ蝉 前田普羅 能登蒼し
梅雨明けず蝉も困じてをるならむ 相生垣瓜人 負暄
白雨いま蝉音七堂伽藍濡れ 大野林火 飛花集 昭和四十六年
白雨降る蝉音は絶えず青杉より 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
白泉のもの朽縄も唖蝉も 佐藤鬼房
麦蝉のさも麦蝉といふ鳴く音 富安風生
八ケ嶺に夜の雲遊ぶ蝉時雨 角川源義
八月の蝉風の吹く高さにて 廣瀬直人 帰路
発心の蝉金堂の白壁に 津田清子
抜殻の蝉の歩みて行くごとし 平井照敏 猫町
半身を草に石仏蝉の空 大野林火 潺潺集 昭和四十三年
帆柱のさきに蝉鳴く入江哉 正岡子規 蝉
晩夏はことに蝉好き柿の幼な木ぞ 金子兜太
晩蝉の一と啼き 以後の 辻警官 伊丹三樹彦
晩蝉や六波羅蜜寺堆朱なす 岡井省二 明野
碑巌に凭れうしろおそろし蝉の声 中村草田男
碑巌の上に下枝太さや蝉の昼 中村草田男
秘術をば盡くして蝉の蛻けけり 相生垣瓜人 負暄
緋の蝉の腹のぎざ~善通寺 岡井省二 鯨と犀
飛びあてる木に落付て蝉の声 正岡子規 蝉
飛び来つて蜘蛛とたたかふ油蝉 阿波野青畝
飛ぶときの蝉の薄翅日照雨 日野草城
飛ぶ蝉の翅瞭かに無縁仏 右城暮石 句集外 昭和三十八年
飛んで来てとまるやすぐに蝉の声 正岡子規 蝉
飛島を去る蝉声をみな返し 秋元不死男
尾の先を尖らせつくつくほふし蝉 鷹羽狩行
微笑みて征けり蝉鳴きしんに鳴く 加藤秋邨
枇杷の蝉かすかに鳴ける逮夜かな 西島麦南 人音
鼻唄の律呂初蝉泣き狂ふ 石塚友二 方寸虚実
百日紅夜蝉は朝の道に死す 角川源義
病める息目守るわが息油蝉 鷲谷七菜子 黄炎
夫とゐるやすけさ蝉が昏れてゆく 桂信子 月光抄
父の忌の身も浮くばかり蝉晴雨 岡本眸
父は遠くの畠にありし油蝉 廣瀬直人 帰路
風強く目の前の木に蝉の来し 右城暮石 句集外 昭和十二年
風吹て涼しき蝉の初音哉 正岡子規 蝉
風流は苦しきものぞ蝉の声 正岡子規 蝉
仏の身忘れて蝉を聴き給ふ 上田五千石『森林』補遺
噴井には蝉声こもる古戦場 鷹羽狩行
聞きそめた日よりかしまし蝉の声 正岡子規 蝉
聞き慣れし蝉吟なれど傾聴す 相生垣瓜人 負暄
聞くうちに蝉は頭蓋の内に居る 篠原梵 年々去来の花 皿
塀の上蝉取袋二つ踊り 上野泰
平日の教会蝉へ窓開き 津田清子 礼拝
片蔭や万里小路に蝉鳴くも 赤尾兜子 稚年記
片虹を飛蝉に見下ろす峰の神 水原秋櫻子 蓬壺
片恋やひとこゑもらす夜の蝉 日野草城
便りせん日々のこの蝉時雨 高野素十
捕はれし蝉の鳴声突然に 星野立子
捕へたる蝉をかまきり放さざる 右城暮石 句集外 昭和四十九年
墓の辺に鳴きゐし蝉か夜は宿に 安住敦
墓地の道夕蝉われにぶつかり飛ぶ 大野林火 海門 昭和十四年
墓地はまた蝉の盛り場鳴き集ふ 右城暮石 句集外 昭和三十三年
墓地は焼跡蝉肉片のごと樹樹に 金子兜太
暮れはててなほ鳴く蝉や敗戦日 石田波郷
暮天にてなほ蝉声を容るる余地 上田五千石『田園』補遺
母とあるや蝉の立ちゆき来鳴くなど 篠原梵 年々去来の花 皿
母の忌の桜大樹に蝉鳴くも 細見綾子 天然の風
包む手に翅音鋭き唖の蝉 鷹羽狩行
方丈の宿の昼餉や椎の蝉 村山故郷
法起寺の堂裏蝉の穴だらけ 佐藤鬼房
法燈の焔の音か遠蝉か 中村汀女
忘却の彼方に大樹蝉しぐれ 原裕 葦牙
望楼の白壁に蝉木歩忌か 飯田龍太
牧柵になく蝉おろか手に捕ふ 大野林火 海門 昭和十二年
本坊に蝉はかく鳴くべしと鳴く 後藤比奈夫
盆過ぎて蝉鳴く天の雲明り 飯田蛇笏
盆休み山城跡は蝉まかせ 百合山羽公 樂土以後
盆蝉に耳をあづけし盆休み 百合山羽公 樂土
末期蝉かとも かともと 耳立てて 伊丹三樹彦
繭白しこゑ惜しみなき山の蝉 飯田龍太
繭白しこゑ惜しみなく山の蝉 飯田龍太
岬の蝉鳴き出で濤の音をつらぬく 篠原梵 年々去来の花 雨
蓑虫庵裏の蝉穴の数いくつ 飴山實
民民と良寛の詩の蝉鳴けり 山口誓子
霧くらき起居や蝉声絶えにけり 水原秋櫻子 残鐘
名も知らぬ大木多し蝉の声 正岡子規 蝉
明家の門に蝉鳴く夕日哉 正岡子規 蝉
鳴ききそふ蝉と蜩うすつく日 山口青邨
鳴きさして蝉の飛行く夕日哉 正岡子規 蝉
鳴きしぶりつつゐたる蝉鳴きとほる 日野草城
鳴きすめるその時蝉は恋忘る 山口青邨
鳴きて翔つ蝉に高野の日が当たる 右城暮石 句集外 昭和三十一年
鳴きやみて一本のこる蝉の松 山口誓子
鳴きやめて飛ぶ時蝉の見ゆる也 正岡子規 蝉
鳴き急ぎ死に急ぐなよ初蝉よ 中村苑子
鳴き交す蝉は見えねど幹ふたつ 水原秋櫻子 餘生
鳴き添うて高音張る蝉雨霽るゝ 日野草城
鳴き了る蝉のごと吾子寐入りつつ 篠原梵 年々去来の花 皿
鳴くものにまだ蝉のあり白露とや 石塚友二 磊[カイ]集
鳴く蝉に漁船は海の奥となり 山口誓子
鳴く蝉の幹をはがれて飛び翔ちし 清崎敏郎
鳴く蝉は海へ落つる日独り負ひ 中村草田男
鳴り出すピアノ忽ち蝉の樹は遠し 林翔 和紙
毛虫桃伐らんとぞ思ふ蝉の声 河東碧梧桐
木がくれて蟷螂蝉を食ひ了へぬ 石橋秀野
木喰の里へ岨道蝉時雨 松崎鉄之介
木曾の果泊るときめて蝉暑し 角川源義
木曽谷に友等相会ふ蝉涼し 松本たかし
目に光りくる蝉声と父の斧 原裕 葦牙
目の覚めぬうちから聞や蝉の声 正岡子規 蝉
目の前の幹蝉ここだどれが鳴く 高浜年尾
貰ひ乳残りし吾に蝉近鳴く 細見綾子
門中墓の火出樹に鳴きゐたりし蝉(沖縄) 細見綾子
夜すがらの蝉の木立はどれならむ 篠原梵 年々去来の花 雨
夜の蝉くるひあがりし北斗かな 加藤秋邨
夜の蝉とび来てあたる男の胸 野澤節子 未明音
夜の蝉のまことしやかに鳴きにけり 安住敦
夜の蝉の起ししかろきしじまかな 中村汀女
夜の蝉の思ひ出し啼きしてゐたる 鷲谷七菜子 游影
夜の蝉われに靠るゝもの等寝て 小林康治 四季貧窮
夜の蝉吾子くるごとく戸を打てり 角川源義
夜の蝉富士の方富士ありやなし 岸田稚魚 筍流し
夜の蝉壁にあたまをうちつけ死にき 篠原梵 年々去来の花 皿
夜も蝉鳴く洗面器に双手つき 岡本眸
夜烏も夜蝉も友のために啼く 山口青邨
夜蝉チュとひびく小さき宿机 秋元不死男
夜蝉の鳴きうつりしも晩夏かな 細見綾子
夜蝉ふと声落したる闇深し 高浜年尾
夜蝉鳴き雨後の靄立つ武者返し 能村登四郎
夜蝉鳴き枕布きよく師と寝ぬる 能村登四郎
夜蝉鳴く運河に厚き潮満たし 佐藤鬼房
夜蝉鳴く複眼朱きものを写し 三橋鷹女
夜明から熱いことかな蝉の声 正岡子規 蝉
夜明から熱い天気に蝉の声 正岡子規 蝉
夜明けより蝉鳴きたてゝ国貧しき 右城暮石 声と声
夜々いつとなく冬眠の蝉のごとし 飯田龍太
野の療舎蝉も来鳴かぬひろ野なり 及川貞 夕焼
野尻潮は楽器のごとく蝉涼し 阿波野青畝
野分して蝉の少きあした哉 正岡子規 野分
野分中蝉は声のみとびにけり 山口誓子
薬猟す深山は蝉のこゑ澄みぬ 飯田蛇笏 白嶽
油蝉ぎくりと礼をためらへり 草間時彦 中年
油蝉机に落ちてうつ伏せに 細見綾子
油蝉死せり胡粉の色褪せず 右城暮石 句集外 昭和五十九年
油蝉死せり夕日へ両手つき 岡本眸
油蝉声量のなきものは去れ 鷹羽狩行
油蝉道三塚に穴あまた 百合山羽公 樂土以後
油蝉朴にうつりて鳴かざりき 前田普羅 普羅句集
油蝉藪も畑も峡のうち 飯田龍太
油蝉赭土の坂赭を増し 鷹羽狩行
友をまつ虫たゞ日ぐらしの蝉のこゑ 正岡子規 蜩
幽邃を蝉おのづから鳴き止みぬ 細見綾子 桃は八重
遊船や棹のまに~蝉の声 石橋秀野
雄島の蝉息のあるだけ鳴き切つて(NHK衛星テレビのため松島で三句) 細見綾子
夕かけて己れ励ます蝉の声 桂信子 草影
夕闇にせつなく蝉の鳴きをれり 相生垣瓜人 負暄
夕汽車はいづこに向ふ蝉は樹に 山口誓子
夕焼けて淫祠の前の蝉の穴 大野林火 雪華 昭和三十六年
夕焼の中執心す油蝉 山口誓子
夕蝉にふわりとひらく狐茸 松村蒼石 寒鶯抄
夕蝉に一線の水脈生れけり 大野林火 青水輪 昭和二十三年
夕蝉に鶏頭がまづ暮るるなり 大野林火 冬雁 昭和二十二年
夕蝉に弱音といふもまじるべし 上田五千石『風景』補遺
夕蝉に心もとなき丘の家 廣瀬直人 帰路
夕蝉に草むら風をたゝみけり 上村占魚 鮎
夕蝉のいつほどとなく日のつまる 中村汀女
夕蝉のここにも切に町の果 中村汀女
夕蝉ののこりの一ついつか止み 後藤比奈夫
夕蝉のひとつひとつの語り口 鷹羽狩行
夕蝉の遠くなりつゝ雨降れり 高浜年尾
夕蝉の火の声やがて水の声 鷹羽狩行
夕蝉の激しさ拒むすべもなし 飯島晴子
夕蝉の昂ぶり鳴ける城址かな 中村苑子
夕蝉の止むに止まれぬ声ならむ 相生垣瓜人 明治草
夕蝉の終るを待たで轡虫 相生垣瓜人 明治草
夕蝉の声流れこむ餉に戻る 廣瀬直人 帰路
夕蝉の地に沁む声を高うする 中村汀女
夕蝉の長鳴き余命量らすや 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
夕蝉の長鳴く家の滅ぶかとも 大野林火 青水輪 昭和二十五年
夕蝉の鳴きいづ音のながりし天 山口誓子
夕蝉の鳴き逸るとも鳴き切れじ 相生垣瓜人 明治草
夕蝉やどの顔ももの云はでゆく 石橋秀野
夕蝉やもの書けば時ながれ去り 鷹羽狩行
夕蝉や胸をめぐりて骨の数 石田波郷
夕蝉や昆虫館に灯りし火 後藤夜半 底紅
夕蝉や山に疲れし顔洗ふ 村山故郷
夕蝉や指なくてさす島の沖 草間時彦 中年
夕蝉や詩のすなどりのなほ一網 中村草田男
夕蝉や女一人の山畠 相馬遷子 雪嶺
夕蝉や松の雫のいまも垂り 桂信子 月光抄
夕蝉や早瀬は崖になだめられ 上田五千石『森林』補遺
夕蝉や竹の穂が見す風の幅 石塚友二 磊[カイ]集
夕蝉や茶漬に浮かす塩こんぶ 村山故郷
夕蝉や黙して對ふ癌患者 相馬遷子 雪嶺
夕蝉や野分がのこる岨の竹 及川貞 夕焼
夕蝉や嫋々として飛騨訛 大野林火 白幡南町 昭和二十九年
夕蝉よ泉いちにち水を練り 鷹羽狩行
夕蝉を化石いふ別れ近づけり 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
夕蝉を鎮めむ水を打ちにけり 相生垣瓜人 明治草
夕風やさざ波となる遠き蝉 桂信子 草影
夕暮の蝉じゅんと鳴き工場風呂 細谷源二 鐵
夕立に蝉の逃げ行く西日哉 正岡子規 夕立
夕立に蝉の逃げ行く日影哉 正岡子規 夕立
夕立に蝉の飛び行く西日哉 正岡子規 夕立
夕立に蝉の飛び行く日影哉 正岡子規 夕立
夕立のあと冷じや油蝉 山口誓子
夕立の笘に蝉鳴く日影かな 正岡子規 夕立
夕立晴るより小蝉静かに鳴き初めぬ 種田山頭火 自画像 層雲集
葉風よりはげしき蝉音衣透りぬ 野澤節子 未明音
葉柳にふられて鳴くか蝉の声 正岡子規 蝉
抑揚なき声のつゞける高野蝉 右城暮石 句集外 昭和三十一年
裸許したまへ青柿照り蝉鳴く 大野林火 白幡南町 昭和二十八年
雷晴れて一樹の夕日蝉の声 正岡子規 蝉
落ちぶれて電柱に鳴く山の蝉 鷹羽狩行
落ち蝉の砂に羽摶つ尚暑し 河東碧梧桐
落蝉の頭や墨を塗られしか 山口誓子
落蝉の眉間や昔見しごとく 山口誓子
落蝉の裏返りゐて声を出す 右城暮石 虻峠
落蝉は落ち菩提子は舞ひて落つ 後藤比奈夫
落蝉を一分隊も蒐めたる 後藤比奈夫
卵塔の何があふれて油蝉 平井照敏
立ち出づる吾家の蝉のこゑを曳き 山口誓子
立秋の蝉鳴きながら畠越ゆ 廣瀬直人 帰路
立木尽きし五合目あたり蝉も聞かず 村山故郷
流れに手やれば蝉声身にかよふ 上田五千石『森林』補遺
旅の背にしゆんと信濃の残り蝉 上田五千石『田園』補遺
凌霄の花に蝉鳴く真昼哉 正岡子規 凌霄花
凌霄花に蝉のたよむら隣りたる 百合山羽公 春園
凌霄花や旦の蝉の啼きいづる 百合山羽公 春園
療園の地中の蝉よいつ出づる 三橋敏雄
淋しさにころげて見るや蝉の殻 正岡子規 蝉の殻
涙垂る蝉塚の蝉に鳴かれゐて 小林康治 玄霜
礼拝尼俯向き過ぎに蝉のこゑ 山口誓子
露けしや真葛がもとの蝉塚は 小林康治 玄霜
露の蝉鳴き渋りゐる彌撒の前 水原秋櫻子 残鐘
老い母に道見えてゐる蝉時雨 野澤節子 八朶集
老蝉の眼を人の走りけり 飯島晴子
和書増えて夕蝉の鳴きゐなりけり 山口誓子
腕あぐる埋没クレーン蝉あるき 加藤秋邨
腕くむはかなしさと知る蝉の中 加藤秋邨
凩や蝉も榮螺もから許り 正岡子規 凩
呟ける蝉あり夜も更けたるに 相生垣瓜人 明治草
呟ける蝉もあるべし蝉時雨 林翔
啼きすめる蝉声あるを忘れゐし 平井照敏 天上大風
啼き初めて三日の蝉に梢揃ふ 上田五千石『森林』補遺
啼くも飛ぶもいらだつ蝉や花芙蓉 渡邊水巴 富士
啼く蝉は幽しうつろの秋の暮 渡邊水巴 富士
曉闇をゆるがす蝉のいのちかな 林翔
暾なきとき蝉ら一語も発せずに 山口誓子
棕梠咲けりじわりじわりと蝉なける 日野草城
楷の蝉我に当りてのがれけり 阿波野青畝
榾になる木にも蝉なくあつさ哉 正岡子規 暑
淙々と水音珊々と深山蝉 福田蓼汀 山火
滂沱たる蝉時雨とも聞きつべし 相生垣瓜人 負暄
潺々と遅れ初蝉師の忌なり 上田五千石『琥珀』補遺
癪に効く湯へ声おとす高嶺蝉 秋元不死男
睨まれて閻魔の堂の蝉の殻 正岡子規 蝉の殻
瞼垂れ蝉も烈日も忽と消ゆ 相馬遷子 山国
磧石蒼味さしきぬ夕蝉に 大野林火 海門 昭和十二年
磴雲に入り響き交ふ四方の蝉 石塚友二 光塵
邃し単なる蝉の穴なれど 相生垣瓜人 負暄
籠の蝉放ち放ちて小雨来る 橋閒石
荼毘蝉のこちら 跣で駈けて育つ 伊丹三樹彦
萬力の起す一石蝉時雨 松本たかし
蛻けざる蝉が試食に堪へしちふ 相生垣瓜人 明治草
蜩も有りと思へて蝉の殼 右城暮石 句集外 昭和九年
蜩遠く鳴き去り澄めり朝の蝉 及川貞 榧の實
螢来しあとや蝉飛ぶ端納涼 河東碧梧桐
躓ける恰好のまま蝉の殻 後藤夜半 底紅
靠れ合うのは無縁仏 蝉時雨 伊丹三樹彦
颱風の中にゆふべを告げし蝉 山口誓子
颱風を送る短かき蝉のこゑ 山口誓子
驟雨直ぐ蝉のこゑごゑ降り包む 山口誓子
驟雨来ぬ蝉は両眼濡らし啼く 山口誓子
鶯の蝉にせりあふ木末哉 正岡子規 蝉

# by 575fudemakase | 2017-05-19 04:40 | 夏の季語 | Trackback | Comments(0)


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インターネットの「Google」や「yahoo」の検索ボックスから、季語等を入力して数多くの例句を得られれば大変便利である。

具体的に季語“新樹”の例句を求めるには、先ず検索ボックスに“新樹”と入力する。
その後、ひらかなで“れいく”と入力する。この時、日本語変換候補に幾つかの語彙が表示されるが、その中から“575筆まか勢”を選択する。
この結果、検索ボックスには “新樹575筆まか勢”と表示される筈である。
この用語で検索すれば求めるサイトが表示される。

但し、上述の ひらかなの“れいく”と入力して“575筆まか勢”を選択する為には、事前に小細工をしておく必要がある。
即ち、ユーザーズ辞書を使って “れいく=575筆まか勢”を定義しておく必要がある。以下はその指定方法。

ユーザーズ辞書定義

▼iPadの場合
設定>一般>キーボード>ユーザーズ辞書

単語 575筆まか勢
よみ れいく

▼kindleの場合
アプリ>設定>言語とキーボード>キーボードの設定>ユーザーズ辞書

読み れいく
表記 575筆まか勢

PCの場合も同様に「ユーザーズ辞書」機能を使い、前もって定義しておく。

春の季語から現在の当季季語までは既に表示可能である。
来年の三月末(2015年3月末)までに全季語について表示可能となる。

以上

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