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筆の俳句

あたらしき筆を噛む歯の寒さかな 久保田万太郎 流寓抄

いのち毛をすりへらす筆年来ると 平井さち子 鷹日和

いまわまで筆をはなさず萩惜しむ 富田潮児

うぐひすや筆噛んで書く詫手紙 秋元不死男

おほまかに筆洗ひたる玉子酒 本宮銑太郎

おもひきり筆が墨吸ふ油照り 小川原嘘帥「日輪」

かねて見し不折の筆の梅があり 河東碧梧桐

きのふ古し遺筆に活けてこぼれ萩 渡邊水巴 白日

ぐぐぐいと引ける渇筆お風入れ 高澤良一 燕音

くれなゐの色紙を選ぶ筆始 野見山ひふみ

けさの秋硯に筆のすべり哉 今朝の秋 正岡子規

けふ使ふ雛のひとつや有馬筆 森澄雄

ことごとく夫の遺筆や種子袋 竹下しづの女

この花を祇園守といふ謂れ 後藤比奈夫

こほろぎを夫が聴く夜は筆おいて 鷹女

さへづりや筆の走りて余白の美 郡山マサ子

しぐるるや鉄筆捨てし黙ふたつ(川島四天居にて筆耕細川加賀 『傷痕』

しくるゝや物書く筆の薄にじみ 時雨 正岡子規

しばらくは初音と聞けり筆止めて  道子

すさまじや筆も硯もともに古り 鷹羽狩行

セザンヌの筆の余白に秋の声 岡田 貞峰

そこ冷えの夜ごとは筆のみだれけり 石橋秀野

その筆の日課観音実朝忌 水原秋櫻子 蘆雁

そもそもといふ行儀にて初かはづ 梅室

そもそもと風の吹けり門の松 完来

そもそものいちぢく若葉こそばゆく 小沢信男

そもそものはじめは紺の絣かな 安東次男 裏山

そもそもの初めがありて近松忌 岩淵喜代子 硝子の仲間

そもそもは都踊で見染めけり 日野草城

そもそもは菱の実採つて呉れしより 大石悦子 聞香

そもそもは夜店のひよこ羽抜鶏 若月勝男

たまきはるいのちのいの字筆始 上田五千石 琥珀

たま祭る料理帳有筆の跡  太祇 太祇句選

ちびし筆湯呑に立てし施餓鬼寺 川瀬清子

ちび筆に俳諧うとし春の風邪(句評をもとめられて『定本 石橋秀野句文集』

つくづくし筆一本の遅筆の父 中村草田男

どの筆を執りても夏書疲れして 阿波野青畝

ともし火に氷れる筆を焦しけり 大魯 五車反古

ならべるは細筆ばかり雛作 森田 

なりはひの選句染筆そぞろ寒 鷹羽狩行

はま弓やそもそも須磨の物語 完来

ひた走る大文字の火の一の筆 岡本眸

ひと筆に文をむすびて藤の花 佐藤美恵子

ひと筆を素焼に賭けて爽やかに 鈴木真砂女 夕螢

フリージアに陶師が筆の愛陶記 桂樟蹊子

 しろなる筆の命毛初硯 富安風生

ましろなる筆の命毛初硯 風生

またけふも筆硯欲しや鳥雲に 森澄雄

まづしづく落ちて大書や筆始 森澄雄

まづ鯛と筆を立てけり恵比須講 中村史邦

まろびたる筆が墨曳く油団かな 飯田京畔

み仏千手、筆をもつ御手もあるべしや 荻原井泉水

もともとのひかり押さへて後の月 鷹羽狩行

もともとはトマトケチャップ寒の闇 高野ムツオ 雲雀の血

やごとなき筆とおぼしき歌留多かな 三村純也

ゆく春や筆重き日は海も鳴り 鈴木真砂女 夏帯

ゆづり葉や口にふくみて筆始 其角 (手握蘭口含鶏舌)

ゆふだちや筆もかハかず一千言 蕪村 夏之部  雙林寺獨吟千句

よき枕詞より書く筆はじめ 能村登四郎

リスの子に筆の穂ほどの芽からまつ 吉野義子

リハビリの筆しつかりと初便り 鶴田 

わらんべの寿詞(よごと)はかなし筆竜胆 富安風生

わらんべの寿詞はかなし筆竜胆 富安風生

わりなきは選句染筆実千両 鷹羽狩行

われを見る机上の筆や秋の風 飯田蛇笏

わんぱくや先づ掌に筆はじめ 一茶

をだまきの花やみやげに有馬筆 森澄雄 空艪

庵主の禿筆を噛む試筆かな 村上鬼城

伊呂波など散らす夏書の筆馴らし 上田五千石『琥珀』補遺

謂れなき椎佇ちつくす喉の奥 増田まさみ

遺されし筆硯座右に初句会 星野立子

遺書かきし筆そのままに秋の暮 小林康治 『虚實』

磯振りや筵の上に夏書筆 加藤耕子

一といふ字三といふ字の筆始め 高野素十

一といふ字人といふ字や筆始め 高野素十

一の字に己の見えて筆始 田淵宏子

一の字のかすれかぐはし筆始め 鷹羽狩行

一字なほにじみひろごる試筆かな 爽雨

一振りの刀の由来藤の花 澤谷文代

稲の香が町をつつみて筆まつり 亀井朝子

芋掘りて疲れたる夜の筆づかひ 石田波郷

雨の香の紙筆におよぶ春の暮 岡本眸

雨水くむ筆の林に鳳(ほう)の雛 上島鬼貫

雨風の花の首都とも謂ひつべし 阿波野青畝

丑紅の唇にちよとかむ筆のさき 阿波野青畝

瓜人筆「芋の図」を掛け無月なり 能村登四郎

雲上に筆執るは誰 桐の花 伊丹三樹彦

永き日や雑報書きの耳に筆 日永 正岡子規

永日のそもそも何でこの病ひ 高澤良一 鳩信

猿飛といふは涼しき渓を謂ふ 阿波野青畝

縁先にさしおく筆や人丸忌 富安風生

縁端にさしおく筆や人丸忌 富安風生

横書に心の小窓筆始 後藤比奈夫 めんない千鳥

襖絵の由来を聞きし糸桜 本保志津子

鴬の乙音をまつや筆置きて 井上井月

黄梅の弾ねる風下筆洗ふ 菅裸馬

沖荒の見ゆる二階に試筆かな 茨木和生 

牡丹に寄す侍従長筆大御歌(おおみうた高澤良一 宿好

牡丹の芽筆ほどといふしか思ふ 細見綾子 曼陀羅

牡丹咲く庭の制札誰が筆ぞ 井上井月

仮名文字の筆遅々として梅雨深し 國岡錫子

加賀友禅筆より草の花生まる 野崎ゆり香

夏山に向ひて稿の筆を擱く 高野素十

夏書の筆措けば乾きて背くなり 橋本多佳子

夏痩といへど筆陣逞しき 阿波野青畝

夏草のダチュラ林と謂ふべかり 阿波野青畝

夏濤の発端純白立志めく 香西照雄 素心

嫁が渕謂れ哀しき秋の水 金澤俊子

家計簿のページはじまる筆始 蕪木啓子

家古び筆立にある秋扇 清水鵲木

火の筆勢そのままに雪大文字 鷹羽狩行 八景

花つけてへくそかづらと謂ふ醜名 片岡亜土

花やこれ君が常盤の筆のあと 幸田露伴

花や咲く筆に机に雲見草 上島鬼貫

花榊ひらきて夜の筆硯 藤田あけ烏 赤松

花襲ね玉葛と謂ふべかりけり 阿波野青畝

花満ちて冷ゆ僧正の筆一本 黒田杏子 花下草上

花茗荷しばらく筆を断たんとも 上田五千石『天路』補遺

我画をよくす筆を下せは蕨かな 尾崎紅葉

我戀や筆のはこびも蔦かつら  正岡子規

画仙紙の天地はかりて試筆かな 富田潮児

賀状のみのえにしの友の筆寂びぬ しげ子

雅仙紙や試筆の墨の飛ばば飛べ 阿波野青畝

懐手無為責められる謂れなし 伊達 

懐柔の筆意読みをり*ごりを喰ふ 石原八束 『人とその影』

海一句金短冊に筆始 有働 

海山や都の筆に雲見草 上島鬼貫

絵付筆壺にいろいろ鳥曇 黒木千代子

貝母咲き露風の筆を祀る寺 山田弘子 

橿原の宮の記帳が筆始 滝本魚顔女

梶の葉や筆は思ひをつくさざり 島田五空

渇筆を絶え絶えと継ぐ吉書かな 大石悦子 百花

乾かざるままに筆巻く獺祭忌 ふけとしこ 鎌の刃

寒巌五彩あり雪舟筆を負うて来る 荻原井泉水

寒灯下筆置く音も響きけり 松田美子

寒梅の下に筆焚く煙かな 尾崎紅葉

寒梅や筆硯いよよふくよかに 星野麥丘人

寒明の雲をほぐせる筆づかひ 峯尾保治

完成が発端赤児の指紋すずし 中村草田男

干蒲団日和と妻に謂はれをり 高澤良一 さざなみやつこ

還暦と謂ふはにかみの屠蘇を酌む 前田忠男

岩山の岩より咲きぬ筆竜胆 中島いはほ

贋筆の達磨ふすぼる蚊遣かな 蚊遣 正岡子規

贋筆をかけて灯ともす夜寒哉 夜寒 正岡子規

雁のへだてぞ佳けれ筆硯 齋藤玄 飛雪

雁渡老いて筆絶つ人のこと 藤田湘子 てんてん

頑に庄屋の筆や毛見の帳 長谷川零余子

幾変遷~や草紅葉 高野素十

鬼城忌や遺筆の幅は聾の句 伊沢三太楼

鬼城代書の筆は足鍬の類なりけん 中村草田男

鬼灯の顏や四つ子が筆の跡 鬼灯 正岡子規

亀鳴くと孤りの筆を折られけり 黒田杏子 花下草上

偽筆芭蕉かけてをかしや暮の秋 山口青邨

久々に筆墨の用涼風裡 飯田龍太

灸点をぬるや二月の筆初 二日灸 正岡子規

京祇忌のしばらく筆の遊びせむ 大石悦子 百花

胸で拭き筆柿を食ふ泣きながら 森田公司

興来ねば筆持つ指も夜寒かな 日野草城

曲水や盃の舟筆の棹 曲水 正岡子規

極細の筆を運びて花は葉に 佐藤美恵子

近代に踏み入るとして廃藩の大事に遭ひし祖父の筆塚 齊藤史 風翩翻

金箔に墨弾かるる試筆かな 浅井陽子

金屏に筆投げつけつ時鳥 時鳥 正岡子規

金屏や賢き妹が筆始 会津八一

九と刎ね一と引きすゑ試筆かな 富安風生

句を練るも筆を舐むるも花下の所作 阿波野青畝

愚図愚図の筆あはれめや冬の鵙 上田五千石 天路

空海と決めある筆や筆始 後藤比奈夫

栗虫の麻呂と謂へるが出できたり 大石悦子 群萌

君が代や猶も永字の筆始 乙由

薫風や魯迅手沢の筆二本 鷹羽狩行

傾城が筆のすさひや燕子花 杜若 正岡子規

啓蟄や人はもともと一面二臂 北野民夫

鶏頭の吹きかしぐなり筆意かはる 加藤秋邨

鶏頭花筆を立て君が病よし 西本一都

月も雪も何か残らう花も筆に 上島鬼貫

元旦の日記を筆の初かな 会津八一

古稀にして細楷をよくす筆始 四明

古紙えらび古墨えらびて筆始  春草

古雛の由来を歌ふごとく言ふ 堀口星眠 営巣期

古筆も洗ひて御用納かな 山県瓜青

孤剣に似たる筆一本も芽吹く日ぞ 原子公平

枯菊や洗ひし筆を軒に吊り 遠藤梧逸

枯萩を筆の軸とし萩筆と 山口青邨

湖筆欲し筆鶏頭を見てをれば 阿波野青畝

五倍子干して小さいながらも筆問屋 山田緑女

吾れ画を善くす筆を下せば蕨哉 尾崎紅葉 紅葉山人俳句集

御影供や筆塚にくる朝雀 滝上登美子

御命講や寺につたはる祖師の筆 御命講 正岡子規

口切や講肝煎りを筆がしら 水田正秀

口切や講肝煎を筆がしら 正秀 俳諧撰集「有磯海」

弘法の謂れの山を恵方とす 武石花汀

弘法の投筆かなに大文字 大文字 正岡子規

弘法の筆に新涼おぼえけり 阿波野青畝

弘法筆砂丘にひろふ秋風裡 角川源義

紅梅にほむらのなびく筆供養 川崎慶子

紅筆に口つき出して七五三 水口泰子

紅筆に薄紅梅を染めて見ん 紅梅 正岡子規

紅筆の朝顔風に咲きにけり 朝顔 正岡子規

紅葉焚くときに小筆も二三本 蓬田紀枝子

考へて筆かはきけり日の短か 中戸川朝人 星辰

荒筆と乱句を年の始めとす 和田悟朗

行かばわれ筆の花散る処まで 散桜 正岡子規

行秋や語源に多きヘブライ語 対馬康子 吾亦紅

合い性の筆は一本 白椿 伊丹三樹彦

合性の筆は一本 白椿 伊丹三樹彦 花恋句集二部作 花仙人

黒鉛筆赤鉛筆や春の宵 高野素十

黒土によき句かかばや葱の筆 中勘助

腰浮かし試筆くたびれ易きかな 阿波野青畝

今日二度の帰宅に筆が咲いている 池田澄子

今年竹筆とればはや退路なし 野澤節子 鳳蝶

今年竹筆取ればはや退路なし 野澤節子 『鳳蝶』

左右に鮎焼く火清しと謂ふべかり 飯島晴子

妻の筆ますらをぶりや花柘榴 沢木欣一 往還

才筆に歯序はあらざり曼珠沙華 橋本夢道 良妻愚母

採点記帳筆おもむろに弓始 山口青邨

細書きの筆買ひに出る燕子花 岡田菫也

細筆を買うて戻るや涅槃雪 鷹羽狩行

菜種御供梅の瑞枝の筆買へり 永田由子

菜種梅雨筆とどこほる訃への文 阿部千恵子

笹の子のうす紫や小筆ほど 野村泊月

笹鳴や職場に知己ある謂なし 中村草田男

三寒の四温兆しぬ筆買ひに 及川貞

山荘客を見すして大臣の試筆哉 尾崎紅葉

山鳥に會ひたきひとの筆不精 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅

散らばりし筆紙の中の櫻餅 松本たかし

残暑なほペン皿にペン筆立に筆 鷹羽狩行

士筆野に妹も母の眼細めがち 平井さち子 完流

子が来ると夏書の筆を措きにけり 関戸靖子

子規堂の筆のちびたる暑さかな 田中義孝

師の筆のゆきつ戻りつ梅雨の稿 斉藤夏風

指うるはしきよごれや筆始め 鷹羽狩行

死ぬとしもひとつ取たよ筆の跡  太祇 太祇句選

死ぬまでの名をいくたびの筆初め 池田澄子

歯あらはに筆の氷を噛ム夜哉 與謝蕪村

歯を借りて筆噛みおろす残暑かな 鷹羽狩行

歯豁(あらは)に筆の氷を噛む夜哉 蕪村

歯豁に筆の氷を噛む夜かな 蕪村

時鳥筆を投じて起たんとす 森鴎外

次の間も畳明るし筆始 柴田佐知子

軸赤き小筆買ひけり事始 小林篤子

七夕や廃れしものに筆と夢 鷹羽狩行

七夕や筆の穂なめし脣の墨 高橋淡路女

蛇骨地蔵の由来身に入む日暮どき 詫摩まつ子 『卒寿』

若水の一滴に筆おろしけり 水田むつみ

若竹の筆になるべき細り哉 若竹 正岡子規

手凍えてしばしば筆の落んとす 凍る 正岡子規

手凍えて筆動かず夜や更けぬらん 凍る 正岡子規

修善寺の面の由来の露けしや 河野石嶺

秋に痩せて恨みの筆のあと細し  正岡子規

秋の句書く辞表を書きし筆をもて 安住敦

秋の蝉二三の筆を洗ひけり 藤田あけ烏 赤松

秋海棠様にならぬと筆投げ出し 高澤良一 素抱

秋晴るるごとくに座右の萩の筆 後藤比奈夫

終章は白い頁で筆を擱く 都留元汰 「オール川柳」

十丈の蓮開くや筆の尖 蓮の花 正岡子規

十団子に添えて十団子由来状 高澤良一 宿好

十二月小筆の増えし硯箱 伊東一升

宿坊に高野豆腐の由来きく 中野つぎの

淑気はや机上の筆硯紙墨より 小田切輝雄

出替りや乳の目利きが一の筆 斯波園女

術後いぢらしや凍む手を筆落つる 秋元不死男

春の庵筆より重きものは無し 小澤克己

春の蚊や舞の由来に大柱 古舘曹人 能登の蛙

春の筆かなしきまでに細かりし 田中裕明 櫻姫譚

春の露そもそも月の宵曇り 飯田蛇笏 白嶽

春はあけぼのそもそもは堯舜禹 岩城 久治

春やむかし路標の仮名も山陽筆 富安風生

春ヤ今浜荻筆ノ穂ノ長キ  正岡子規

春ヲ湛フ浜荻筆ノ穂ノ長キ  正岡子規

春暁の竹筒にある筆二本 飯田龍太

春愁やささくれだちし筆の先 落合芳子

春焼の竹筒にある筆二本 飯田龍太 忘音

春深し女の筆をとりて書く 山口青邨

春蘭や無名の筆の俗ならず 春蘭 正岡子規

春竜胆ひらかな書きの筆ほどに 山田弘子 こぶし坂以後

初硯知足常楽筆太に 村地八千穂

初硯筆に朱墨を染ませけり 龍男

初桜筆やはらかく持ち直す 田中幸雪

初笑ひ笑つて死ねと今謂はず 小出秋光

初雪の便り卒寿の母の筆 杉本寛

初雪や船筆削ることもして 星野麥丘人

初天神兼ねて筆塚供養とよ 石塚友二

初冬や石油で洗ふ絵の具筆 栗林千津

初日待つかぐろきものに筆硯 鷹羽狩行

初筆の金短册の墨をはね 能村登四郎

初富士や雪の筆勢麓まで 染谷彩雲

初鵙の裏山に鳴く筆まつり 山岡綾子

書きし字を離れし筆や秋燈火 嶋田摩耶子

書きなれて書きよき筆や冬籠 冬籠 正岡子規

書き了へて梶の葉に置く小筆かな 山本京童

書ぞめをせし筆ついで便り書く 星野立子

書屋あり実梅落つ音筆擱く音 松本たかし

書初におろす白穂の奈良の筆 きくちつねこ

書初のわれをなぶれる有馬筆 大石悦子 百花

書初の筆の力の余りけり 稲畑汀子 汀子第三句集

書初の筆もおろさず病み籠る 寸七翁

書初の筆を鎮めて納めけり 稲畑汀子

書初の筆硯拝借 女房殿 伊丹三樹彦

書初の筆勢富士へ韻きけり 小川原嘘帥

書初めを明日に筆の穂の尖り 鷹羽狩行

書初や七十歳筆摂州住 宗因

書初や筆勢勁き福一字 青木愛子

女學生御見合ひ否む謂(いひ)も汗 筑紫磐井 婆伽梵

除虫菊そもそも蚊取り線香は 高澤良一 随笑

小さき蟻這ふ梶の葉に筆をとる 大橋桜坡子

小説の発端汗の捨切符 藤田湘子(1926-)

小筆の穂なだめてをれば雁の声 鷹羽狩行

晶子忌の大事にしまふ筆一本 禰寝雅子「未来図合同句集」

松蝉や余白大事に筆運ぶ 坂田美代子

焼筆で飯を食つゝ冬篭 一茶 ■文化十四年丁丑(五十五歳)

鐘由来何はともあれ除夜を撞く 阿波野青畝

鞘ながら筆もかびけりさつき雨 永井荷風

鞘を出し筆の白穂も夜寒かな 日野草城

丈山の渇筆黴びず学甫堂 富田潮児

譲られし扇に虚子の筆の跡 伊藤英子

色紙や色好みの家に筆はじめ 遊女-利生 俳諧撰集玉藻集

色鳥の声こぼれゐる筆供養 宮川杵名男

蝕ひし母の筆抽出にあることを秋の屋上に居て思ひ出づ 斉藤史 『ひたくれなゐ』

寝酒などもともとやらぬ夜の秋 高澤良一 素抱

心こめて筆試みることしかな 白雄

心こめて筆試ることしかな 加舎白雄

心太文字の由来を聞かれけり 横原律子

新しい筆がなじんで朧かな 大石悦子 群萌

新年の菓子の由来は御所ことば 山下青希

神やしる試筆の文字のすみにごり 信徳

酢海鼠や桂郎酒筆讃へつつ 福永耕二

水茎の馬刀(まて)かき寄せん筆の鞘 服部嵐雪

水茎の馬刀かきよせん筆の鞘 服部嵐雪

水茎の馬刀かき寄せん筆の鞘 嵐雪

水仙と唐筆と売る小店かな 河東碧梧桐

水仙と唐筆を売る小店かな 河東碧梧桐

水仙や試筆のあとの緋毛氈 久保より江

睡たさよ筆とるひまの春の雨 室生犀星 犀星発句集

睡蓮の水すまば筆を洗ふべく 会津八一

酔ふままに羽織の裏を筆始 荷風

酔筆と人は見るらむ吉書かな 相生垣瓜人

数の子や鰊もともと青ざかな 石塚友二

雛の日の筆を買ひたるのみに暮る 関戸靖子

寸心忌穂先減りたる竹の筆 志奈子

征きし夜の露を便の筆はじめ 加藤秋邨

整はぬ初音に滲む筆のあと 中野静枝

逝く秋や夫が遺愛の筆太き 桂信子 月光抄

青丹よし筆墨を買ふ木の芽どき 森澄雄

青邨筆実朝公や端午の床 山口青邨

石に絞る香や橘の筆の汗 浜田酒堂

石庭の謂れ露けき日本語に 高澤良一 宿好

赤芽がし筆師とわかれ雨の湖 角川源義

接木せしばかりの庭を分筆す 本郷桂子

折からの野火を神話の発端に 鷹羽狩行

雪しぐれして空海の太き筆 羽田れい

雪の懸巣霊泉由来つたへけり 水原秋櫻子 殉教

雪虫や日を重ねつつ筆不精 展宏

扇おき筆を執りては海を見る 山口青邨

洗ひたる硯にほそき筆二本 高橋淡路女

洗ひ干す筆のいのち毛去年今年 松本可南

洗ふ筆よりさつと墨水の秋 鷹羽狩行

染寺の細筆下ろす秀野の忌 山田春生

漸くに筆紙得し戦信とかや 伊丹三樹彦

疎んぜし筆を洗ふも年用意 上田五千石『森林』補遺

双魚忌の小筆洗ふも露けしや 松本 

掃初のそもそも塵の出る処 阿波野青畝

窓にとぶ都鳥あり筆始 大橋桜坡子

草むらに筆塚があり蛾が飛んで 山口青邨

草々の筆の達磨も忌日かな 菅原師竹

蒼天の夢を淋漓と筆始め すずき波浪

足よりも筆の衰へ鬼やらひ 清水基吉

大秋と謂ひ早世す曼珠沙華 飯田蛇笏

大小の筆の穂白し初硯 中川久子

大滝の音純白と謂つべし 深川正一郎

大津絵の筆のはじめは何仏 芭蕉 (三日口を閉て、題正月四日)

大津絵の筆のはじめやなに仏 芭蕉 芭蕉庵小文庫

大津絵の筆の始めは何仏 芭蕉

大伯父の移住の由来震災忌 島田悦子

大伴の三つ物かかむ筆はじめ 大江丸

大筆にかする師走の日記かな 師走 正岡子規

大文字の筆勢生かす残雪よ 鷹羽狩行

大和仮名いの字を児の筆始め 蕪村

拓本とる直哉の筆あと柳散る 川端静子

谷中より筆屋に寄りて夏の月 石嶌岳

誰が筆のその紅や懸想文 松根東洋城

炭の香や僞筆の虎の寝ぼけ面 会津八一

短日の灯をともす間の筆を措く 夜半

短夜の筆そのまゝの御仏 高野素十

端渓もは歙硯(きふけん)もあり筆始 森澄雄

端正に水打ち筆屋店開く 岩木秋水

断崖や絶望のために由来絶景 橋本夢道 無禮なる妻抄

地下茎の絆をたもつ筆の花 相澤乙代

竹筆のうすき夢の字谷崎忌 三宅芳枝

中元や萩の寺より萩の筆 井上洛山人

虫干に蕪村の偽筆掛りけり 土用干 正岡子規

帳書や先生筆を振はれたり 松根東洋城

朝から立つ虹が発端立話 高澤良一 暮津

朝寒み筆硯用意寒山寺 阿波野青畝

朝蝉や筆をしづかに假名日記 筑紫磐井 野干

朝涼の筆を走らせずに運ぶ 茨木和生 往馬

鳥雲に色紙短冊筆買つて 鈴木真砂女 居待月

沈丁の風に吊すや洗ひ筆 大石悦子 百花

椿や白椿や筆は葬り反故は焼く 荻原井泉水

鉄つくる固き指もて筆始 沢一三

鉄線を活けて有馬の筆作り 大坪景章

鉄砲の変遷見せて武具飾る 二塚元子

天界の母は筆まめ落し文 石川北辺子

天照大神そもそもの初紅葉 渡辺恭子

天地なき金の色紙に筆始め 澤田緑生

天地はもともと一つ牡蠣料理 高野ムツオ 雲雀の血

天平の祝ぎ歌うつす筆はじめ 奥田とみ子

田亀くわがた有りマスと筆太に 梁取久子

杜甫の詩の山河に遊び筆始 宇佐美恭子

登りきて筆塚前は春の海 安田郁代

倒れ木の臥す林あり筆竜胆 石田波郷

冬ざれや花のごとくに絵付け筆 鷹羽狩行

冬ぬくし子規の遺筆の玩具帖 有馬朗人 天為

冬の虹神はもともと好色な 鈴木伸一

冬の日の筆の林に暮れて行く 冬の日 正岡子規

冬塩田とひとの謂ふなる幽けさよ 佐野まもる 海郷

冬芽見て筆の不精を守り神 小檜山繁子

冬座敷筆子産湯の井戸が見ゆ 岡部六弥太

凍てとけて筆に汲み干す清水かな ばせを 芭蕉庵小文庫

凍て解けて筆に汲み干す清水哉 松尾芭蕉

凍どけて筆に汲干す清水かな 芭蕉

凍みる中そもそも三井の鐘由来 高澤良一 燕音

凍筆をホヤにかざして焦しけり 凍る 正岡子規

投げ入れの点描の筆 藪椿 伊丹三樹彦

桃の花筆筒鳴らし駈けゆきし 木下夕爾

燈火親しペンより筆をもちなれて 鈴木真砂女 夏帯

豆飯に呼べど画室に筆おかず 皆吉爽雨

道元元元(もともと)冬日親鸞も亦また 人生 永田耕衣

禿筆は 他人無用の 白椿 伊丹三樹彦

禿筆を束ね捨てけり秋の蝉 波多野爽波 『骰子』

禿筆を塚に築きて梅の花  正岡子規

読初の葩餅の由来かな 大橋敦子

読初めは干菓子に添ひし謂れ書 永井東門居

読初やそもそも志斐の強語 阿波野青畝

奈良筆の細きを撰りぬ萩にふれ 岡崎ゆき子

二三本土筆生えけり池の端 土筆 正岡子規

二紙三紙いよゝ書き劣る試筆かな 志田素琴

日に梅よ思はず恋の筆はじめ そめ 俳諧撰集玉藻集

日ノ永キ浜荻筆ノ穂ノ長キ 日永 正岡子規

日を以て數ふる筆の夏書哉 蕪村 夏之部  春泥舎會、東寺山吹にて有けるに

日野と謂ふ小さき駅に立ちし冬 上村占魚 

禰宜の筆絵雛木履をはきたまひ 後藤比奈夫

葱汁に筆硯甚だ多祥なり 田森柳渓

年頭躍筆墨条のみの白馬の図 中村草田男

念いれて洗ふ大筆涅槃西風 角川照子

燃えさかリ筆太となる大文字 山口誓子 不動

馬士の謂ひ次第なりさつき雨 中村史邦

馬士の謂次第なりさつき雨 史邦

俳壇の変遷を生き去年今年 野見山ひふみ

梅はとく開いて居るや筆始 才麿

梅雨の花病みて怠る謂れなし 石田波郷

買初の句会の筆の五六本 山口青邨

買足せり筆の始めの追分繪 高澤良一 燕音

買物は筆一本や啄木忌 鈴木真砂女 都鳥

売文の筆買ひに行く師走かな 永井荷風

萩の筆買ふ三月の雨強し 沢木欣一 地聲

萩筆の遠江よりしぐれ文 上田五千石『琥珀』補遺

白菊に謂はん方なき夜明かな 尾崎紅葉

白魚かそもそも氷のかげなるか 白魚 正岡子規

白雪の筆捨山に墨つけん  正岡子規

白湯呑んで仕事納めの筆硯 佐藤素人

白梅の風筆塚に棲み付けり 加藤元子

白梅や皇族下馬と筆大なり 寺田寅彦

白壁や子供がすさみ筆始 黄口

薄暑芭蕉の詩筆千行万行や 中村草田男

薄々と筆を下ろせば冬の海 正木ゆう子 静かな水

麦秋やどこも能筆札所妻 木村勇

八一忌の筆の荒毛をいとしめり 西山あきら

発端は朝の玻璃戸の守宮より 土谷倫

発端は忘れ月下の会議室 石寒太 

発端を忘る縁や春の雪 上田五千石『琥珀』補遺

鳩寿たり火燵の上の筆硯 阿波野青畝

半歌仙独吟したる試筆かな 茨木和生 往馬

反古さらへ女筆恥かし年の暮 安昌 選集「板東太郎」

眉白をきゝとめて筆置きにけり 白井常雄

筆いれて掻き探したる巨燵哉 炬燵 正岡子規

筆えらぶ店さきにゐて冴え返る 室生犀星 犀星発句集

筆おろす寒九の水になじませて 武藤あい子

筆がすれして消えかかる大文字 池田笑子

筆かすれ月斗ふすまに花の冷 杉本艸舟

筆かりて旅の記を書く蒲團哉 蒲団 正岡子規

筆くれて返事させけり雪の庵 内藤丈草

筆すてた手を手で握る寒さかな 幸田露伴 谷中集

筆すてぬ松こそよけれ初硯 蓼太

筆ちびてかすれし冬の日記哉  正岡子規

筆で食ふこといくとせぞ冬木の芽 鷹羽狩行

筆とつて冨士や画かん白重 白重 正岡子規

筆とめて外を見て居る春日かな 野村泊月

筆とらず読まず机に霙さく 上村占魚

筆とりて四隅にわかる月見哉 松岡青蘿

筆とりて門辺の草も摘む気なし 杉田久女

筆とるは硯やほしき児桜 服部嵐雪

筆とればわれも王なり塗火鉢 杉田久女

筆とれは若葉の影す紙の上 森鴎外

筆とれば短冊の上に桜ちる 散桜 正岡子規

筆と見て見ひらく芙蓉の命かな 山口素堂

筆につく墨のねばりや五月雨 五月雨 正岡子規

筆に紅つけて雛の口を描く 瀬戸十字

筆に墨たっぷり吸わせ立夏なり 好井由江

筆に霊ありて夕立を祈るべく 夕立 正岡子規

筆に聲あり霰の竹を打つ如し  正岡子規

筆のもの忌日ながらや虫払 召波

筆の海墨に声有り千鳥石 口慰 選集「板東太郎」

筆の鞘焼きて待つ夜の蚊遣りかな -芳樹 俳諧撰集玉藻集

筆の先双つにわれて秋初 中嶋秀子

筆の尖ちよんと落して爽波の忌 西野文子

筆の穂のかなしき反りよ朝曇 相馬 黄枝

筆の穂のさゝけ出したり秋の風 秋風 正岡子規

筆の穂のすつぽ抜けたる安居かな 阿波野青畝

筆の穂のまだ濡れてゐる虹の下  辰夫

筆の穂の干され植田の穂のなびく 松崎鉄之介

筆の穂の長いのが好き福寿草 後藤夜半

筆の毛をそろへたつるや年の暮 才麿

筆の林つくろひ物や雲の峯 調泉 選集「板東太郎」

筆の穗にいとど髭うつ寫し物 竈馬 正岡子規

筆はこぶ一点一画夜の秋 上田五千石『琥珀』補遺

筆はじめ去年よりの修羅走りだす 小檜山繁子

筆ひぢてむすびし文字の吉書かな 宗鑑

筆ひぢて結びし文字の吉書哉 宗鑑

筆ほぐす朱唇の墨も夜涼かな 西島麦南

筆まめといはれて書けぬ春の闇 ふけとしこ 鎌の刃

筆もつて寝たるあるじや時鳥 時鳥 正岡子規

筆も凍るこよひなりけり実朝忌 山口青邨

筆モ墨モ溲瓶モ内ニ秋ノ蚊帳 秋の蚊帳 正岡子規

筆より持たぬ指にて 東京夜景さす 伊丹公子 山珊瑚

筆りんだう摘んで東京遥かなり 栗原米作

筆をると詩箋に落つる木の葉髪 上田五千石『田園』補遺

筆を手に夏書の人の昼寝哉 夏書 正岡子規

筆を選りをり老鶯を聞くとなく 田部黙蛙

筆を挿すごとく水仙壺に挿す 吉屋信子

筆を箒として蕪村大暑を一掃す 荻原井泉水

筆一本 疼く背骨を立て直して 伊丹三樹彦

筆一本洗ひ八十八夜かな 関戸靖子

筆一本箸は二本のとろろ汁(緑雨居士に倣ふ石原八束 『黒凍みの道』

筆一本疼く背骨を立て直して 伊丹三樹彦

筆柿や面会謝絶いつまでも 石田波郷

筆柿を看護婦も買ふわが後に 石田波郷

筆噛んで寒紅の唇汚さざる 村林星汀

筆噛んで詩箋引き寄す屠蘇の酔 上田五千石『天路』補遺

筆揮へばこぼるる櫻散る楼 会津八一

筆供養一管一管年惜む 阿波野青畝

筆供養片手拝みに焚きにけり 江原正子

筆結ひの心もほそる五月雨 立花北枝

筆硯に一人親しむ灯火かな 増田月苑

筆硯に及べる喜雨のしぶきかな 日野草城

筆硯に親しむことも梅雨籠 山田弘子 こぶし坂

筆硯に多少のちりも良夜かな 飯田蛇笏

筆硯のそのままにある夕ざくら 山口青邨

筆硯の一間ありけり夏木立 山本洋子

筆硯の小さき黴の書院かな 大峯あきら 宇宙塵

筆硯の正しく置かれ青簾 本岡歌子

筆硯の部屋に牡丹の風入るる 稲荷島人「続夏雲」

筆硯の夜長き水を足しにけり 細川加賀 『傷痕』

筆硯ペンと鉛筆喜寿の春 後藤比奈夫

筆硯や月の筵に置かれたり 池内たけし

筆硯や新草離離と垣の内 下村槐太 光背

筆硯をはなれかげろふ踏みにけり 宇佐美魚目

筆耕や一穂の灯に暑き宵 飯田蛇笏

筆始ほろ酔ひの字もめでたけれ 柏木志浪

筆始めこめかみ酔ひてきたりけり 小林康治 『華髪』

筆始め決意の文字のにじみけり 中林利作

筆始め坐り直せば墨匂ふ 板津 

筆始め要らぬところに力入れ 高澤良一 宿好

筆始歌仙ひそめくけしきかな 不器男

筆持たぬ盲ひの友の初電話 高橋利雄

筆持つて硯の乾く眠さかな 幸田露伴

筆持てば文字が寄せくる春騒夜 能村登四郎

筆捨の岩に鮎釣仁王立 阿波野青畝

筆取て千艸の花におくるゝな 闌更

筆取りてむかへば山の笑ひけり 蓼太

筆初め土牛の富士を仰ぎけり 大久保たけし

筆匠の家紅梅を見て入る 森澄雄

筆匠の死後も名だいに雪降れり 飯田蛇笏

筆匠の暖簾垂れたり鳥総松 水原秋櫻子 蘆雁

筆匠の鑿返し研ぐ朝桜 井口秀二

筆勢の声となりゆく墓の秋 岡本眸

筆勢の余りて切れし大文字 岡本眸

筆蹟の美しき寒さ女なりし 渡邊水巴 富士

筆折つて藷に窶るゝ六腑かな(文章書かぬ言ひわけに『定本石橋秀野句文集』

筆洗う梅のつぼみの白のため 増田萌子

筆洗にむらぐもつくる寒四郎 上田五千石 琥珀

筆洗に湖を掬へり神の留守 内山寒雨

筆洗の若水に朱を走らしむ 小金井絢子

筆洗の水かつてあり竹田忌 黒田桜の園

筆洗の水こぼしけり水仙花 正岡子規

筆選ぶ雨の石見や人麿忌 野上美代子

筆選ぶ店先にゐて冴え返る 室生犀星

筆措いて妻と十六むさしかな 後藤比奈夫

筆措いて秋の螢の闇欲しき 中村祐子

筆措いて早稲吹く風をききに出づ 水原秋桜子

筆草やいそはかすみて一文字  正岡子規

筆造る毛揃ひの下屋涼しかり 松崎鉄之介

筆太き蓮如名号日雷 山本洋子

筆太に描きたる円や達磨の忌 磯貝碧蹄館

筆太に夢一文字を智恵詣 鈴木千恵子

筆太に臘八接心告知せる 赤木利子

筆置いて仰ぐ前山夏近し 北村勢津子

筆置いて夜も竹の葉の散る音か 鷲谷七菜子 天鼓

筆置けば鈴虫闇に鳴きそろふ 西浦末寿

筆塚に花散りそむる虚子忌かな 池内けい吾

筆塚のもぬけのからの落し文 原与志樹

筆塚や何ともしれぬ草の花 草の花 正岡子規

筆土割り小学生の浄き脚 大野林火

筆凍てゝかするゝばかり辞表書く 石井とし夫

筆島の穂先に夕焼夏の潮 馬場好苗

筆投げんばかり 満樹に沙羅の花 伊丹三樹彦

筆筒にいつまで秋の扇かな 尾崎放哉 大学時代

筆筒に拙く彫りし柘榴かな 柘榴 正岡子規

筆筒に団扇さしたる机かな 河東碧梧桐

筆筒の筆に待たれて明易し 鷹羽狩行

筆筒も湯呑も秋の灯を容れて 中村草田男

筆筒や筆と挿し置く山ざくら 水原秋櫻子 重陽

筆買うて終ひ天神果たしけり 仁藤稜子

筆買ひにとて雪ふんで十二町  正岡子規

筆買ひに行く一駅の白雨かな 上田五千石 琥珀

筆買ふや朝虹の今日佳きことあれ 川口重美

筆疲れ見えつつ賀状書きやまず 亀井糸游

筆墨の濃き晴れさそふ梅の花 原裕 新治

筆立ての筆さき絮のごと二月 鷹羽狩行

筆立にいろいろのペン花疲れ 矢村三生

筆立に線香立てたり水仙花 寺田寅彦

筆立の山鳥の尾の初日かな 山口青邨

筆立の中の耳掻き居待月 鈴木真砂女

筆立は黄なり紋白蝶庭に 山口青邨

筆竜胆疲れてまろぶ鼻さきに 鈴木 

筆霊にして夕立を祈るべく 夕立 正岡子規

筆擱いてにはかに募る夜寒かな 日野草城

筆擱いてまなぶたとざす猫の恋 上田五千石『天路』補遺

筆擱けば真夜の白菊匂ひけり 日野草城

筆擱けば不意に鳴きだす初蛙 白井春子

筆擲つて薄暑の袖をからげしのみ 小林康治 『玄霜』

百姓の筆を借りけり閑古鳥 石田波郷

百日の夏書の筆を供養かな 菅原師竹

百本の筆の清浄夏山家 高野素十

百本の筆の穂ならぶ爽気かな 能村研三

氷れる硯に筆なげて布団にもぐる 尾崎放哉 (病中大正時代

描き上げて筆置く窓辺小鳥来る 山田裕理子

富士の風や扇にのせて江戸土産 芭蕉「土芳筆全伝」

父さんは藁穂を束ねてなんぼでも習字の筆を作ってくれた 山崎方代 迦葉

蕪村筆あやしみつつも曝しけり 北村好作

蕗刈つて沼の謂れを忘じたる 田中隆子

福寿草咲いて筆硯多祥かな 村上鬼城

仏桑花洗へど筆に朱の残り 吉田登美子

物うつす筆に蚊遣の煙かな 蚊遣 正岡子規

鮒膾鮒に片目の由来あり 鮒膾 正岡子規

文机に竹の筆立春障子 大野林火 方円集

文鎮を置けば鎮まり筆始 倉田紘文

変遷のいくたび秋の灯を仰ぎ 星野立子

返信の筆も鈍れる大暑かな 高澤良一 寒暑

暮雪の軸雪村八十二歳筆 高澤良一 鳩信

母と一字母とあそびて筆はじめ 町田しげき

母はもともと揚羽に乗りて来たるかな 宗田安正

亡き人の名をなんとなく筆始 池田澄子 たましいの話

亡き人へ年賀の筆をあやまりて 川畑火川

亡き母は 筆をくわえて 葛の花 伊丹三樹彦

忙しき人の筆まめ地虫出づ 橋本榮治 逆旅

鉾ありけり大日本の筆はじめ 素堂

墨つぎて秋思の筆に迷ひあり 石川[テキ]

墨つげばしぐれかよひぬ一夜筆 上田五千石『風景』補遺

墨と筆一気呵成に皐月富士 川崎展宏 

墨は旧く筆は新しくことし虎をかく 荻原井泉水

墨汁も筆も氷りぬ書を讀まん 凍る 正岡子規

墨染の兼好法師あらわれて氷れる筆の先嚼みほぐす 山崎方代 右左口

墨足る筆 奥歯噛むにも 奥歯無く 伊丹三樹彦

翻訳の筆を休めず葡萄くふ 佐藤一村

麻痺の手に筆握りしめ子規忌くる 瀬川芹子

万緑やこけし笑まわす筆さばき 田畑はつ枝

万苣噛むや左遷せらるる謂れなし 細川加賀 『傷痕』

未定稿ばかり筆さへ黴さすや 清水基吉

妙筆や葡萄の丘を抜けてゆく 飯島晴子

眠る山樵夫筆立を鳴らしけり 前田普羅

霧の中一筆描きの白は滝 山口誓子

名月や筆の言葉の引廻はし 園女 俳諧撰集玉藻集

命毛ながし末子に与ふ吉書の筆 北野民夫

命毛の長さよ筆の買ひはじめ 元夢

明月や無筆なれども酒は呑む 夏目漱石 明治三十年

鳴き残るすいとの声が筆の先 秋元不死男

面相筆の細さ杉菜の風 北原白秋

盲春庭筆太の字の秋の聲 八木林之介 青霞集

木下闇御霊屋恐る謂れ無し 鍵和田[ゆう] 未来図

夜の秋や写経に立つる筆の鋒 鷲谷七菜子

夜の秋修験の宿に古筆あり 松井幸子

夜もすがら冱ててありけり父の筆 永田耕衣 真風

夜永さに筆とるや旅の覚書 几董

野に日ざし山に影ある筆始 辻桃子

役げ筆の淵へ石投げ夏惜しむ 鷹羽狩行

優曇華に会ひ読み直す塚由来 小路生雅

由来なき絵や書き壁の蝸牛 中村史邦

由来なき絵や書壁の蝸牛 史邦

夕立や紅筆溝を流れ行 夕立 正岡子規

夕立や筆そゝぐべき潦 井上井月

余生とは戦中派の謂さりながら青年をして眠らせしは何 晋樹隆彦

用始禿筆を噛む小吏かな 村上鬼城

羊水を拭く手挑ねのけ仔馬立つ 都田 

葉牡丹の座に薄明の筆硯 石原舟月

羅のそもそも鰻嫌ひなる 藤田あけ烏 赤松

落ち際はそもそも無音法の滝 高澤良一 素抱

略字化の国の筆紙を 夕日に抱く 伊丹三樹彦

涼風は筆をまろばし紙をとばし 山口青邨

良寛を学びて遠し筆始  火臣

瑠璃鶲ふと筆を置く山日記 安田和義

冷酒に刀筆の吏の韻事かな 日野草城

礼帳に備へて徽墨又湖筆 阿波野青畝

礼帳や筆初めなる我が名慚づ 五十嵐牛

鈴虫やねむごろに拭く写経筆 長谷川 

漣掛けそもそもをかし滝不動 阿波野青畝

露けしや名刀に銘筆に銘 鷹羽狩行

露凍てて筆に汲み干す清水哉 松尾芭蕉

和を以て貴しと筆始めけり 阿波野青畝

冱は来ぬ熊は掌をなめもの謂はず 前田普羅 飛騨紬

宸筆もものかは紙魚の確信犯 高澤良一 随笑

戀の字の糸のもつるる試筆かな 鷹羽狩行

棕櫚主日陶師の蔵す木裂き筆 竹久よし子

楪に筆こころみん裏表 浪化

涅槃雪玄奘も筆休めけむ 有馬朗人 耳順

穗薄を筆に結んで物書かん  正岡子規

(ここ)十日萩大名と謂ひつべし 阿波野青畝(1899-1992)

茲十日萩大名と謂ひつべし 阿波野青畝

茱萸は実に戦没者のこと世に謂へり 及川貞 榧の實

萵苣噛むや左遷せらるる謂れなし 細川加賀

蕾稚し筆のごとくに蓮の花 山口青邨

蘆と言ひ葭と謂はれて刈られけり 大石悦子 群萌

蝗見れば筆といふ人なつかしく 星野立子

銜へしは漆の筆や冬ざるる 飯田はるみ

頽齢をうべなふ字句を筆始 富安風生

鵯鳴くや筆勢強き久女の書 里坂紫陽子

鷽替へに来て天神の筆を買ふ 橋本 

鷽鳴くやわざ老ゆるなき筆づくり 内山 亜川

黴の中業の筆執るあぐら組む 清水基吉


以上


# by 575fudemakase | 2024-03-08 09:26 | ブログ | Trackback

墨の俳句

*帷子やおもきが上の墨衣 三宅嘯山

あぢきなき墨の砂かな夜寒哉 五明

あぢさゐに淡墨いろのけふありし 上田五千石『琥珀』補遺

あはあはと墨のにじみし雪見舞 阿部子峡

あやまちて墨が宜し老の春 阿波野青畝

うぐひすに墨のひなたや梅の花 浪化

うすれゆく墨のいのちや蕨山 宇佐美魚目

うす墨にさくらが見えて男かな 能村登四郎

うす墨に牡丹供養の招き文 櫛原希伊子

うす墨の霞のごとき字に遊ぶ 大野林火 月魄集 昭和五十五年

うす墨の硯の沖に雪来つつ 和田悟朗

うす墨の多摩の横山流灯会 下田閑声子

うす墨の夕暮過や雉の声 小林一茶

うす墨の枠をつけたる一枚のハガキの中に君はありたり 山崎方代 右左口

うす墨を流した空や時鳥 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)

うつくしき墨絵の便り紀元節 杉戸由紀子

おほらかに墨の撥ねたり臘八会 中村苑子

おもひきり筆が墨吸ふ油照り 小川原嘘帥「日輪」

お降りやたひらに減りし奈良の墨 殿村莵絲子

お降りや心たひらに墨をすり 西森千代樹

お風入れ墨に佳き香のもどりしと 大石悦子 百花

かきつばた畳に墨はこぼれても 夏目成美

かじかめるまま蝮指墨を練る 橋本多佳子

かな文字の墨の匂ひの花野かな 渡辺恭子

がん二字の墨痕星をまつりけり 中本柑風

きたなしや蠅のはこかと墨のはね 寥松

きのふまで墨搗いてゐし初燈 南上敦子

くちびるの墨わすれゐる安居かな 阿波野青畝

けふ貼りし障子に近く墨を摺る 山口波津女

けんがくに墨もをりよし春の水 玄梅

ことしまたうす墨の天楸邨忌 岡崎ゆき子

ご遺墨に鬼灯赤し莫愁忌 岡澤喜代子

さくらのような薄墨の朝いつかくる 宇多喜代子

さなぶりのおほぜい登る古墳かな 吉本伊智朗「墨隈」

さむざむと壁墨工の黒手型 山口誓子

さやけくて薄墨いろの羽根拾ふ 鍵和田[ゆう] 浮標

しじみ貝の二つと一つと青墨、栖鳳えがく 荻原井泉水

しだれ梅薄墨色の夜空より 大野林火 月魄集 昭和五十六年

しづるとき薄墨となる春の雪 岩坂満寿枝

しのぶ艸顔に墨つく夏書哉 高井几董

じゆんじゆんと淡墨桜枝張れる 田中水桜

しら露も墨に和してぞ五々百野 玄梅

すでに汚る墨工が眼に触れしのみに 橋本多佳子

すり曲し墨にも月をまたれけり 松窓乙二

すり流すよき墨の香や九月盡 会津八一

する墨に落花の雪のまぶれけり 三宅嘯山

せされいや金色夜叉は墨の稿 平畑静塔

せり上り渓墨ざくら雲寄せず 関森勝夫

そぞろ寒布施書くだけの墨をする 犬塚藤子

その所持の墨をわが継ぐ木堂忌 水原秋櫻子 蘆雁

その夢も薄墨いろか浮寝鳥 鍵和田[ゆう] 飛鳥

それ以来筆墨置かぬ卓の冷え 上田五千石『琥珀』補遺

たそがれはうす墨かぶり花すもも 井沢正江 湖の伝説

たゞ墨を擦りて香を立つ虚子忌なりき 殿村菟絲子 『旅雁』

たなごころ墨によごさば蘆刈らむ 田中裕明 櫻姫譚

ちび墨と我とありけり年の暮 幸田露伴 礫川集

つくづくと翅の上げ下げ墨とんぼ 高澤良一 寒暑

つくづくと黴面白き墨の尻 高橋睦郎

つくづくと黴面白し墨の尻 高橋睦郎 稽古

とても世を藤に染たし墨衣 宗波

とばしりし墨も頓阿の杜鵑 高井几董

ながき夜や眠らば顔に墨ぬらん 三浦樗良

なかなかに墨濃くならず水仙花 右城暮石 上下

なつかしき夏書の墨の匂ひかな 蕪村

ならの名の墨にも匂ふさくら哉 馬場存義

にじむ墨自在にあそぶ萩月夜 三橋迪子

のうぜんや古墨を出してまたしまふ 伊藤敬子

はなびらにゝと墨つけて芥子晴れやか 阿波野青畝

ひらき見す卒業証書墨匂ふ 西村和子 かりそめならず

ふくませて朱墨はかなし筆始 三浦恒礼子

ポケットの青墨秋の夜に重し 皆吉司

ボジヨレーヌーボー烏賊墨和へのスパゲッティ 佐藤喜代子 『水の綺羅』

ほたと落ちし墨も白紙のうらゝけき 碧梧桐

ほとゝぎす啼や墨絵に似たる寺 白雪

ほろほろと墨のくづるゝ五月哉 五月 正岡子規

まろびたる筆が墨曳く油団かな 飯田京畔

みとり子の墨かいつけし晒かな 蓼太

みどり子の墨かい付けしさらしかな 蓼太「続明烏」

ものの芽や木賊は古き墨の節 永井龍男

ゆく秋や月の遺墨を掛け通し 荒井正隆

ゆつくりと遺墨の扇使ひをり 小島健 木の実

ゆつくりと墨磨ることも圭岳忌 岡本差知子

ゆふされば墨を点ずる蟻地獄 山口誓子

ゆふ涼魚墨をのむ都かな 寥松

リラ冷えや墨の乾かぬ芳名簿 伊藤敬子

わが知れる墨堤失せぬ雛納め 渡邊千枝子

わが庭に来ませ薄墨初桜 稲畑汀子

わらび餅老師の口の墨を消す 宇佐美魚目

われも滲みて月の出の墨画かな 塘柊風

をしみなく夏書の墨のまがりける 阿波野青畝

をとめ手に墨すらしめて山笑ふ 上田五千石 天路

愛染と墨書して冬深まれり 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅

案山子に目鼻描くもほのぼの墨の香は 大熊輝一 土の香

闇汁の案内の墨痕淋漓たり 鈴木鷹夫 千年

遺墨よく虚子を伝へて暖かし 岩松草泊

遺墨展しぐれ呼ぶ灯に集ふかな 伊藤京子

遺墨展見て爽やかに鬼城の忌 山王堂正峰

一ツ目の橋や墨絵のほとゝぎす 永井荷風

一はけに墨絵の竹の寒さかな 〔ブン〕村

一気に書く土用うなぎの墨太く 吉田北舟子

一隅の蝌蚪のかたまり墨こぼし 山口誓子

一行の遺墨のごとく蟻の道 鷹羽狩行

一行の墨痕淋漓青嵐 鷹羽狩行

一室に淑気を放つ徽墨かな 阿波野青畝

一点の墨もつかじや白ぼたん 木因

一筆の墨絵に涼し峯の松 琴風

一驟雨駆け抜ける山墨す 高澤良一 宿好

引売りの花烏賊墨を流したる 川崎展宏 

陰陽師 落花のつみを贖ふと未明のそらの薄墨の母 筑紫磐井 未定稿Σ

烏賊の墨こぼれつゞける渚かな 岡田耿陽

烏賊の墨ながるゝ小家の節句哉 曉台

烏賊の墨返り血のごと浴ぶ寒暮 内田美紗 浦島草

烏賊の墨流るる小家の節句かな 暁台

烏賊市場何升の墨流しけん 阿波野青畝

烏賊墨に舌染め小悪魔の春夜 馬場駿吉

羽とぢし墨蜻蛉の失せにけり 阿波野青畝

雨あしを薄墨いろに白牡丹 鷹羽狩行

雨の昼経木に滲む墨をする 林田紀音夫

雲の日の薄墨に花うすずみに 大橋敦子

雲水の笠に墨痕雲の峰 藤田枕流「雪解風」

円相の墨の色濃し三が日 高原 

押分て石に墨あり花すゝき 百里

横つらの墨も拭はず冬ごもり 大魯

横丁に碩学隠れ墨とんぼ 加藤郁乎

翁忌といふうす墨を身のうちに 藤田湘子

襖絵のうす墨山の夜寒かな 鈴木鷹夫 大津絵

襖絵の墨の薄るる実千両 古田紀一

黄梅に馴染徽墨に馴染かな 後藤比奈夫

黄葉やしんしんと師に墨するも 小池文子

牡丹をえがく墨一いろの墨気揮う 荻原井泉水

下り立ちし雪にて墨の手を浄む 山口誓子

下校時の子の声溢る迎春花 山田千代 『淡墨』

夏百日墨もゆがまぬこころかな 蕪村「蕪村句集」

歌を書く墨は金箔実朝忌 北村和子

花いかの墨ぬくや水やわらかく 秋山美智子

花そばやうす紅の後墨衣 支考

花の雲あれが薄墨桜とや 高野素十

花を見る人の袂に墨つけん 移竹

花烏賊のいでいる息の墨の泡 阿波野青畝

花烏賊のいでゐる息の墨の泡 阿波野青畝

花烏賊の生温かき墨流す 森田智子

花烏賊の生温き墨流す 森田智子

花烏賊の墨のしくしく笑ひかな 鳥居真里子

花烏賊の墨の洪水さと流す 阿波野青畝

花烏賊の墨はしりたる腕かな 早野四方

花烏賊やおのれ吐きたる墨まとひ 加藤三七子

花祭稚児の眉墨太かりき 村山敏行

花人を憂しと墨烏賊うづくまる 川崎展宏

花鳥やはては舐めみる墨くらべ 能村登四郎 菊塵

花曇墨を守りて桐の箱 長谷川櫂 古志

花冷と覚えて墨の香もほのか 千代田葛彦

蚊たたいて子規遺墨集一瞥す 阿波野青畝

蚊遣して畳に立たす位牌かな 吉本伊智朗「墨隈」

我とても墨はく烏賊の迯所 松窓乙二

雅仙紙や試筆の墨の飛ばば飛べ 阿波野青畝

戒名の墨うすれゆく新樹光 林房枝

海苔の名やただうち見には雪と墨 丈草

海苔の名やたゞ打見には雪と墨 丈草

海苔の名やただ打見には雪と墨 内藤丈草

灰に埋め墨乾すといふ露の町 飴山實

灰墨のきしみ村*くわうの返り花 芥川龍之介 我鬼窟句抄

絵の上に墨の太文字種袋 清崎敏郎

柿崎や墨にはそめで夏衣 支考

柿若葉大工一気に墨打ちす 木村里風子

格子戸も奈良墨の香ぞ大西日 伊藤三十四

郭公の一日墨にまみれけり 丸山比呂

郭公薄墨時の遠音かな 完来

梶の葉に硯はづかし墨の糞 無腸

梶の葉の墨のかをりのきこえける 日野草城

梶の葉や雫の田井に墨摺らん 馬場存義

割れ墨の束ねを買ひぬ獺祭忌 ふけとしこ 鎌の刃

寒いペンギン考えは今首の中 墨谷ひろし

寒の鯉描く薄墨を塗りかさね 能村登四郎

寒の墨練りし足裏に麝香の香 田中英子 『浪花津』

寒泳の果つ墨痕をあざやかに 拓植翠里

寒硯に茂吉遺愛の墨匂ふ 水原秋櫻子 帰心

寒見舞したたむ墨のかんばしき 西島麦南

寒食や薄墨流す西の空 会津八一

寒雀と墨工眼澄む夕餓ゑどき 橋本多佳子

寒凪や硯の海の忘れ墨 疋田秋思

寒梅や墨絵ぼかしの比叡山 鷹羽狩行

寒白菊墨を洗へば手に付く墨 菊岡素子

寒墨の足練り職人煤羅漢 松崎鉄之介

寒墨を造る顔以下さらに黒し 山口誓子

寒墨工夕ベは臍に煤詰る 品川鈴子

寒墨造り一桝一人牢屋(ひとや)めく 松崎鉄之介

寒墨造り轟轟と鳴る採煙倉 松崎鉄之介

寒墨造り湯煎の膠とろとろり 松崎鉄之介

寒墨踏む蹠足趾ねんごろなる 橋本多佳子

干支一字青墨で書く賀状かな 山崎安子

雁わたる薄墨使ひはじめの夜 原裕 新治

幾山河越えてうす墨色の鶴 木田千女

徽墨ありわが日の本の梶の葉に 阿波野青畝

鬼城忌や芳墨惜しみなくおろす 上村占魚

鬼灯を鳴らしつつ墨すりにけり 篠原鳳作

義仲寺の志功の墨絵春なかば 谷口淑江

久々に筆墨の用涼風裡 飯田龍太

旧正月墨一色の魔除ヶ札 藤枝大成

去年今年墨の香父祖のにほひかな 飯田龍太

虚子忌とは斯く墨すりて紙切りて 星野立子

許六忌のこぼれし墨を拭ひけり  

金箔に墨弾かるる試筆かな 浅井陽子

空は墨に画龍覗きぬほとゝぎす 嵐雪

靴下の淡墨にしてさくら狩り 飯田蛇笏

靴穿きて想ふさむき殿その水墨 山口誓子

靴凍てゝ墨塗るべくもあらぬ哉 凍る 正岡子規

靴墨のはつかに匂ひ春寒し 行方克巳

熊笹の墨乾くごと枯れてあり 長谷川櫂 古志

君が賀状墨むらさきににほふなり 山口青邨

君とわれ短日読めぬ墨の銘 水原秋櫻子 重陽

薫風や硯も墨もかくは欠け 久保田万太郎 流寓抄

形しろの墨のにじみしわが名かな 西山誠

渓水や花烏賊墨を吐きつくす 芝不器男

蛍烏賊目玉も墨も食うてけり  桃子

欠け墨を匁にて買ふ年の暮 松崎鉄之介

月の座の一人は墨をすりにけり 中村草田男

月花の心冱寒ぬ墨の石 朱拙

月雪の墨の香ふかみ古人達 白雄

硯洗ふ墨あをあをと洗れけり 橋本多佳子

硯洗ふ墨あをあをと流れけり 橋本多佳子

硯墨蠅の喰ものなかりけり 百里

絹が吸ふ墨の淡さや風五月 義澤竹麗

絹本の墨色浅し一蝶忌 黒田桜の園

見せ合へば見合ふ古墨を立つ霞 三橋敏雄

見るうちに薄墨になる浸け障子 能村登四郎 菊塵

見世物の干墨笑ふ寒鴉 松崎鉄之介

遣羽子や我墨つける君が顔 遣羽根 正岡子規

遣羽子や鼻の白粉頬の墨 遣羽根 正岡子規

元朝の凍ての極みの墨を磨る 中島斌雄

元日の竹は墨絵となりて暮れ 山口青邨

元日の墨摺つて呼ぶ父の声 春樹

古紙えらび古墨えらびて筆始  春草

古梅酒開くや母の墨の文字 武藤勝代

古筆や墨嘗めに來る冬の蠅 冬の蠅 正岡子規

古墨のことなど思ふ水中り 赤尾兜子

枯れ季の鯉墨いろをやや深め 能村登四郎

枯葉つけし桑と薄墨月信濃 古沢太穂 火雲

枯蘆の墨絵に似たる雀哉 荊花

狐火や便りの墨を濃にすれば 中村汀女

後ろ手に点る薄墨桜かな 五島高資

御遺墨に紙魚一つなき淡窓忌 熊谷秋月

御中元と書いて墨痕淋漓たり 日野草城

御秘蔵に墨をすらせて梅見哉 榎本其角

光陰のやがて淡墨桜かな(根尾岸田稚魚 『萩供養』

光陰のやがて薄墨桜かな 岸田稚魚

向合うて墨すりかはせ用始 村上鬼城

更けてゆく夜の鏡にひずみおるおのれの鼻に墨ぬってみる 山崎方代 右左口

紅葉は淡彩、谷は墨色かげりゆく 荻原井泉水

紅薔薇の紅を矢立の墨で描く 後藤比奈夫

行く秋の雲と思ひぬ墨に金 山口青邨

行としを墨すり流す宵のそら 風国

香墨にうすき黴あり丈山忌 平畑静塔「月下の俘虜」

高野切墨継ぎも佳き春夕焼 伊藤敬子

此頃は薄墨になりぬ百日白 百日紅 正岡子規

今の世の竹を育てつ苔の花 才麿「墨吉物語」

今昔のいろ淡墨に花吹雪 伊藤敬子

昏れ雲のうす墨垂りて山ざくら 石原舟月

冴ゆるまで静けき室に墨匂ふ 新井石毛

桜烏賊おのれの墨に汚れたる 沖崎一考

桜淡墨天上無風散りそむる 近藤一鴻

鯖漁夫の腕の入墨大王崎 高野素十

皿の墨すぐにかわくよ若葉風 星野立子

山井や墨のたもとに汲蛙 杉風

山桜力のままの墨の跡 長谷川櫂 天球

山宿に物の怪ばなし二日月 山田千代 『淡墨』

山焼の香に買ふ寧楽のみやげ墨 松島 利夫

山焼の夜は墨色に奈良町屋 広岡仁 『休診医』

山茶花にうす墨いろの日昏かな 山岡成光

散りいそぐ花を払ひぬ墨ごろも 前山松花

散るを惜しむ淡墨桜しきり散る 大野林火 飛花集 昭和四十八年

散る花のなほ薄墨になりきれず 坊城俊樹

散る花を墨に摺り込め旅硯 青蘿

散ればこそ桜を雪に墨なをし 吾仲

残る蚊を墨にすりたる麁相かな 尾崎紅葉

刺墨の竜の背と合ふ初湯かな 西村 旅翠

四図の墨豊かなり鉄斎忌 相生垣瓜人

四明忌や遺墨に穂麦たてまつる 星野空外

士朗忌や数百点の書と遺墨 寺島初巳

子は墨の髭など生やし日向ぼこ 京極杞陽

子規遺墨漱石遺墨冬ぬくし 後藤比奈夫

子供らや墨の手あらふ梅の花 室生犀星 犀星發句集

師に侍して吉書の墨をすりにけり 杉田久女

志す惜春の句や墨をする 星野立子

指に墨つけ秋晴へ出て来たる 右城暮石 句集外 昭和四十七年

斯く在りと開く薄墨桜かな 阿波野青畝

紙一反墨を一挺春愁ひ 伊藤敬子

字母の房事に墨かすむ玉の井のギボン 加藤郁乎

時雨るゝや墨のヂマル新卒都婆 夕兆

次の間に墨の香流れ夏書かな 吉川智子

鴫立て日は薄墨に暮にけり 尚白

軸涼し墨一刷きの瀑布なる 伊藤宮子

七月や描く眉墨の細く濃く 野村津也子

七夕や筆の穂なめし脣の墨 高橋淡路女

若芝に墨の雫のやうな僧 小澤克己

若水で墨磨る部屋の静もれる 原田英子

若水や三斗ばかりも墨すらん 尾崎紅葉

寂庵の淑気に墨の香を加ヘ 鷹羽狩行

手にうけてこまか淡墨桜散る 大野林火 飛花集 昭和四十八年

朱と墨を恃む篆刻事始 上津原太希子

朱印の上いきいきと冬の遺墨 飯田龍太

朱硯に散りしむ墨や庭若葉 内田百間

寿ぎの墨の光を載せ賀状 高澤良一 随笑

修二会待つ生駒信貴山薄墨に 岸野不三夫

秋の蚊の墨の匂ひに来たりけり 石川纓子

秋海棠の広葉に墨を捨てにけり 村上鬼城

秋収の夜更けて墨を摺りにけり 森つる子

秋蝉に墨痕著るき掛色紙 飯田蛇笏

秋扇や薄墨滲む母の文字 岡田晏司子

秋痩せて落墨描きのごとくあり 能村登四郎

秋灯の流しに蛸の墨袋 横山房子

秋風の墨すられつつにほひけり 木下夕爾

秋風をふるうて見せよ墨ごろも 服部嵐雪

秋風をふるふて見せよ墨ごろも 嵐雪

秋立つや観念の墨磨つてをり 桂信子 草影

秋涼し世の縄墨に従ひて 守屋吉郎

秋涼や墨絵となりぬ相模湾 落合柊子

宿墨の沈む藍色冬に入る ふけとしこ 鎌の刃

宿墨を蠅虎は知つてをり 阿波野青畝

淑気はや机上の筆硯紙墨より 小田切輝雄

出羽薄墨めざめて人は爪を噛む 澁谷道

春くれぬ酔中の詩に墨ぬらん 几菫 五車反古

春の山画くうす墨のにじみけり 梅里全子 『祝矢』

春の大掌に古墨一丁縦に載せて 中村草田男

春の昼大書して墨減らしゐる 森澄雄

春の日やどの兒の顔も墨だらけ 井上井月

春の夜や墨に負けたる吉野紙 大石悦子 聞香

春の晝墨磨つてをりひたごころ 森澄雄

春みぞれ墨絵の里は昼灯し 勝村茂美

春寒や朱墨すり出す病羽音 渡邊白泉

春暁やうす墨色の家はたけ 渡邊白泉

春宵は墨絵のごとく尼おはす 石田雨圃子

春昼をはつと墨打つ鉄の板 山口誓子

春潮や墨うすき文ふところに 宇佐美魚目

春灯や朱墨の濃さもこゝろよく 日野草城

春灯書きたき文字の墨を磨る 町春草

春暮ぬ酔中の詩に墨ぬらん 高井几董

春雷の雲湧き墨を垂らしけり 山口青邨

春蘭や銷閑の具に墨戯あり 富安風生

初雁の空の薄墨流しかな 根岸善雄

初硯雪になる夜の墨匂ふ 銀林晴生

初硯奈良の古墨の香りけり 奥村治夫

初硯筆に朱墨を染ませけり 龍男

初硯墨に五彩のありにけり 千石比呂志

初硯墨むらさきに匂ひけり 田中美智子

初硯命毛に墨滲みゆき 河府雪於

初霜や墨美しき古今集 大嶽青児

初天神欠けし硯に欠けし墨 草間時彦

初買の手を汚したる烏賊の墨 鈴木真砂女 居待月

初筆の金短册の墨をはね 能村登四郎

曙の墨絵の雲や糸ざくら 泉鏡花

曙や眉墨匂ふ白重ね 白重 正岡子規

書初の淡墨濃墨磨りわけし 武久昭子

書初の筆重きまで墨吸はす 清水 

書初の夫の部屋より墨匂ふ 鈴木幸子

書初の墨の匂ひの一間かな 河野由希

書初の墨を磨らんとして熄みぬ 石田波郷

書初の墨病室をかをらしむ 波郷

書初の墨流るるを早や吊りぬ 田村一翠

書初やあたらしき墨匂ひだす 新谷ひろし

書初や寸余の墨をたふとみて 下村ひろし

書展出て炎天のうす墨の色 高瀬哲夫

女将ときに墨磨ることを梅雨の昼 鈴木真砂女 居待月

小机に墨摺る音や夜半の冬 永井荷風

小鏡にうつし拭く墨宵の春 杉田久女

小春日や青墨淡く鯰画く 梅里全子 『祝矢』

松の影の墨絵ににじむ沼の秋 寺田寅彦

松桜川をへだてゝ墨の袖 李由

沼の雨墨絵の如く鷭浮けり 綾部ひで子

沼寒し手賀の魚拓の墨のいろ 阿波野青畝

衝立の遺墨の虎や仙忌 小原菁々子

象潟の冬は美人の墨絵にて 望月宋屋

鉦叩朝より叩く含み墨 村上麓人

上げ潮の匂ふ墨堤いぬふぐり 藤武由美子

唇に墨つく児のすゞみかな 千那

唇の墨はいつから冬ごもり 凉菟

心経の摩訶に墨つぐ夏書かな 上田五千石『天路』補遺

新しき天秤棒に烏賊の墨 岡田耿陽

新築の窓に墨つく寒哉 寒さ 正岡子規

新年の墨水語り其村吶る 新年 正岡子規

新涼のぴしと打つたる墨の糸 松倉ゆずる

真裸に字を書く墨をたっぷりと 山口誓子

神の申し子濃墨桜天へ満つ 田中水桜

神南備の四温の鯉の彩と墨 上田五千石『天路』補遺

神輿舁く夜目にも派手な入墨が 飯島晴子

人の死が続けり梅雨の墨匂う 穴井太 鶏と鳩と夕焼と

水の上を墨の流るる秋彼岸 吉田汀史

水喧嘩墨雲月をながしけり 飯田蛇笏

水澄むやいづれ遺墨となる文字を 橋本鶏二

水仙や師へおとづれは墨もてかく 富安風生

水墨の牡丹の中の牡丹色 銀林晴生

水墨の山あるごとし秋の暮 長谷川櫂 虚空

水墨の槎(いかだ)に孤客冬深む 小澤實

水無月の宿帳に墨飛び散れる 大西淳二

水無月も文月も憂しや墨硯 桂信子 草影

杉山の墨絵ぼかしに牡丹鍋 木内彰志

摺る墨の香は忘れずよ冬の蝿 白雄

摺墨と媾()ふ肌匂ひ初硯 富安風生

摺墨の香は忘れずよ冬の蝿 白雄

摺墨をのぞきにおはせ龍田姫 松窓乙二

寸烏賊は/寸の墨置く/西から来て 大岡頌司

星祭墨磨りまげてはづかしき 山口青邨

生墨の灰干し職人マスクせり 松崎鉄之介

西方へ灯る薄墨桜かな 角川春樹

青芦の水に映れば墨の香も 山口青邨

青丹(あおに)よし寧楽(なら)の墨する福寿草 水原秋桜子

青丹よし奈良の都の墨雛 阿波野青畝

青丹よし寧楽に墨する福寿草 水原秋櫻子

青丹よし寧楽の墨する福寿草 水原秋櫻子 重陽

青丹よし筆墨を買ふ木の芽どき 森澄雄

青墨のたらしこみある冬の淵 上田五千石『天路』補遺

青墨の欠けも冷夏の遺品展 上田五千石 琥珀

青墨の斑点ゆゆし山女魚これ 山口青邨

青墨をおろしてやめり初硯 上田五千石『天路』補遺

青墨を置き宵闇の闇にほふ 鷹羽狩行

惜春の書の跳ね墨をおもひをり 能村登四郎

石経の墨を添けり初しぐれ 丈草

石経の墨を添へけり初しぐれ 内藤丈草

石刷りの墨の匂のあまき雨 富澤赤黄男

雪の暮墨工の眼に墨むらさき橋本多佳子

雪解風墨のつきたる童女の手 飯田龍太

雪渓や墨玉を生む山といひ 佐藤斗星 『七草の籠』

雪止みて墨絵の屏風伊賀連山 田中義明

雪足らぬ所初富士墨書され 平畑静塔

千両や大墨にぎる指の節 かな女

川砂の薄墨いろに鳥の恋 飯島晴子

洗ひたる花烏賊墨をすこし吐き 高濱虚子

洗ひたる硯を磨れば墨の虹 三星山彦

洗ふ筆よりさつと墨水の秋 鷹羽狩行

洗へども落ちぬ手の墨虚子の忌に 中原道夫

洗硯のゆくへ迷へる墨一縷 能村登四郎

喪ごころの薄墨ふかめ秋の暮 能村登四郎

爽籟や鈴鹿墨干す井桁組み 市川正一郎

掃きよせし花屑もまた薄墨よ 近藤一鴻

巣燕に墨の老舗の太格子 岡本差知子

草の戸のとしとる物や墨と筆 杉風

草描ける淡墨やがてすだくなり 渋谷道

蒼朮の焚かれ写経の墨匂ふ 吉年虹二

霜枯の鶏頭墨をかぶりけり 皆吉爽雨

尊きかも童馬山房に黴びし墨 石田波郷

村挙げて咲かす淡墨桜かな 右城暮石 天水

太梁の明治の墨書余花明り 佐久間俊子 『むさし野』

大き師の遺墨にまみゆ福寿草 佐藤いね子

大烏賊の墨べつたりと舷に 岡田耿陽

大堰川掬みて墨磨る西祭 米沢吾亦紅

大根干す淡墨櫻遠巻きに 黒田杏子 花下草上

大桜散るとき墨の香を流す 原裕 出雲

大正よ明治よ墨をすりにける 西口昌伸

大津絵の墨色にじむ梅雨入りかな 宇多喜代子

滝臭い若葉の夜は墨は濃く 原満三寿

鱈釣や我子もてなす墨の袖 野坡

誰ぞとなく春宵の墨濃にしつつ 中村汀女

誰も来ぬ三日や墨を磨り遊ぶ 殿村菟絲子

丹頂に薄墨色の雪降り来 西嶋あさ子

淡墨ざくら花を噴き上ぐ幹の瘤 関森勝夫

淡墨のさくらの花を朝に見て 伊藤敬子

淡墨のさくら千年忌のごとし 内藤さき

淡墨の花を螺鈿に畦塗れり 國島十雨

淡墨の桜の育ち后塚 田畑美穂女

淡墨の桜まぼろしならず散る 田畑美穂女

淡墨の桜紅葉の雨雫 茨木和生

淡墨の残花白雲持ち去れり 野沢節子

淡墨桜その影かその花びらか(根尾淡墨桜、樹齢千四百余年三句殿村菟絲子 『晩緑』

淡墨桜に胸襟開きたる日和 田中水桜

淡墨桜に光陰の軽からず 伊藤敬子

淡墨桜の白の崇さに洗はるる 田中水桜

淡墨桜わが晩節に惑ひなし 蒲田美音

淡墨桜空もうすずみ流しけり 衣川 砂生

淡墨桜見しあと根尾の村祭 杉本寛

淡墨桜高枝のはやふぶきをり 倉橋羊村

淡墨桜山の天日五衰なし 近藤一鴻

淡墨桜雪吊るさまも臈たけし 伊丹さち子

淡墨桜聴けば快楽の日もありき 殿村莵絲子

淡墨桜浮びて幽し山の姥 伊丹さち子

淡墨桜風たてば白湧きいづる 大野林火

淡墨桜風立てば白湧きいづる 林火

淡墨桜木霊あをざめゐたるかな 新井佳津子

淡墨桜虔しみて酒こぼしあふ 國島十雨

短日の磯を汚しゝ烏賊の墨 原石鼎 花影

短日の磯を汚しゝ賊の墨 原石鼎

短日の磯を汚せし烏賊の墨 原石鼎

短夜や碧に光る墨のしみ 照敏

端渓に墨がまだ干ぬ遅日かな 阿波野青畝

智照尼のうす墨ごろも雷涼し 阿波野青畝

竹春や遠流百首の墨のあと 船越淑子

竹青く日赤し雪に墨の隈 山口素堂

中空に匂ひ淡墨桜散る 大野林火 飛花集 昭和四十八年

中庭に筍壁に墨竹図 大島民郎

猪鍋や薄墨色に外暮れて 遠藤正年

帳書きや正直に濃き墨の色 百尾

朝つゆに墓標の墨の光かな 森鴎外

朝寒や弱檜に墨をうてば散 松窓乙二

朝寒や匂ふ白木に縄墨を打つ 日野草城

朝市の花烏賊墨を吹き合へり 渡辺富郎

朝蝉や墨絵のなかの金の*し尾 角川源義

朝涼の墨壺に水ふふまする 石橋林石 『石工日日』

長安の古墨匂ひぬ筆始 渡部抱朴子

吊し柿して奈良墨の老舗たり 伊藤柏翠

吊干の墨千挺に寒明くる 今西桜陵子

鶴渡り老人墨と成りゆけり たまきみのる

天平の意匠の墨を造りけり 阿波野青畝

天墨の如し大雪になるやらん 青木月斗

電燈の煤黒寒の墨造り 山口誓子

冬ちちろ磨る墨のまだ濃くならぬ 河合照子

冬に入るうす墨いろの鴎ふえ 下田稔

冬の菊木型はづせば墨うまれ 大島民郎

冬紅葉墨一色の群猿図 田中水桜

冬座敷父の遺墨をもて飾る 堀田政弘 『父の日』

冬至とて畳の墨を拭せけり  

凍滝の中の水音墨を摺る 一條友子

唐墨の伸び匂やかに初硯 羽村野石

灯芯替える 墨師は紙の帽被り 奥中晩暉

藤の実や鹿を彫りたる春日墨 大島民郎

独り磨る墨よく匂ふ寒の内 小川原嘘帥

奈良墨の黒さ秋行く画仙紙に 富田潮児

奈良墨の店に秋果つ暖簾かな かな女

奈良墨の練りをいのちに老いにけり 阿波野青畝

奈良墨を磨るたなごころ夜の秋 杉浦かずこ

鍋墨にはしる火の色もどかしく外の面は西の風にかわれり 山崎方代 右左口

鍋墨を静かになてる柳かな  正岡子規

鍋墨を塗られし頬の寒雀 鷹羽狩行

南無の背の墨痕滲み梅雨遍路 中村冬星

二荒山墨絵ぼかしに霾れり 松崎鉄之介

二分咲きの実は薄墨桜かな 能村登四郎

日はあれど淡墨桜宵のごと 大野林火 飛花集 昭和四十六年

入り乱れ此許をこのめる墨蜻蛉 阿波野青畝

入選の書の薄墨やあやめ咲く 梅里全子 『祝矢』

如何なる明日ありや散り敷くもちの花 山田千代 『淡墨』

葱匂ふ厨へ墨の水とりに 百合山羽公

年頭躍筆墨条のみの白馬の図 中村草田男

年々や硯を洗ふ墨の滓 佐藤紅緑

濃き墨のかはきやすさよ青嵐 橋本多佳子「信濃」

濃き墨のかわきやすさよ青嵐 多佳子

濃き墨はひかりて乾き雲の峰 茨木和生 往馬

濃山吹墨をすりつつ流し目に 松本たかし

濃山吹墨をすりつゝ流し目に 松本たかし

派をなして薄墨すすきと言ふべかり 齋藤玄 『雁道』

盃洗に墨たたへけり時鳥 会津八一

梅雨・遺墨柱時計はいまの刻 大野林火 方円集 昭和五十一年

梅雨くらし金色のこる墨の銘 水原秋櫻子 古鏡

梅雨寒や墨絵うするる一枚戸 浜田みずき 『石蕗の花』

煤膚に隠れ墨工何思ふや 橋本多佳子

煤膚の墨工佳しや妻ありて 橋本多佳子

買初のメモ靴墨と神曲と 飛旅子

白山屏風そこに渓墨桜の裳 伊藤敬子

白雪の筆捨山に墨つけん  正岡子規

白扇や乾き乾かぬ墨の痕 日野草城

白梅に 善相句碑の墨の冴え 伊丹三樹彦

白梅の香や墨香の如かりき 中村草田男

白梅や墨芳しき鴻() 蕪村 春之部  草庵

白梅や墨芳しき鴻臚館 與謝蕪村

薄氷鯉を墨絵のごとくせり 安江緑翠 『枯野の家』

薄墨がひろがり寒の鯉うかぶ 能村登四郎 有為の山

薄墨てかいた様なり春の月 春の月 正岡子規

薄墨で描かれし夏の蕨かな 佐竹たか

薄墨にしくるゝ山の姿哉 時雨 正岡子規

薄墨に昏るる寺町空也の忌 石沢シヅ

薄墨に散りてこの世のさくらならず 大野林火 飛花集 昭和四十八年

薄墨に書きゐて春の風邪ごこち 八染藍子

薄墨のさくららしくて遅れ咲く 能村登四郎

薄墨のさくら養ふ断層土 藤本安騎生

薄墨のたよりなき色や懸想文 村上鬼城

薄墨のどこか朱をひく亥の子餅 有馬朗人 立志

薄墨のどこか朱を引く亥の子餅 有馬朗人

薄墨のひまの紺青しぐれ空 富安風生

薄墨のやつれや松の秋時雨 支考

薄墨の雨雲低し青薄 巌谷小波

薄墨の雲飛ぶ尾瀬の梅雨月夜 岡田日郎

薄墨の花に通ひてゐし心 稲畑汀子 汀子第二句集

薄墨の花の下臥恋ひて来ぬ 下村梅子

薄墨の花より淡く風花す 稲岡長

薄墨の会津ぐもりに木守柿 徳田千鶴子

薄墨の空を離れずつばめ鳴く 廣瀬直人 帰路

薄墨の桜巨樹には巨魂あり 金子青銅

薄墨の山河をひろげ初衣桁 檜紀代

薄墨の汐こそきたれ夕すゞみ 完来

薄墨の祖母と木槿の道に遭ふ 有住洋子

薄墨の仲に夕顔つぼみけり 橋閒石

薄墨の富士にまみゆる遅日かな 川崎展宏

薄墨の鱗の金ンや紅葉鮒 松根東洋城

薄墨は花に霞の夕哉  正岡子規

薄墨を腐草螢のころにかな 柘植晴美 銀化

薄墨桜 きれいな嘘を下さいな 松本恭子

薄墨桜ことし谺の棲むことも 諸角せつ子

薄墨桜逢ひ得たりあまごに酒一盞 福田蓼汀

麦烏賊の墨吐き潮のよよ青し 田中冬二 行人

箱書きの墨匂いたつ冬座敷 土田桂子

箱庭や小さき杉の風薫る 榾沢墨水

八一忌の墨買ふてゐる舞妓かな 上山茅萱

溌墨に夜寒の紙の白さかな 日野草城

蛤もて寒墨磨く机上かな 松崎鉄之介

半夏生墨絵の滝を吊しけり 平林孝子

秘事多き墨師と別れ暮の秋 角川源義

飛び散つて蝌蚪の墨痕淋漓たり 野見山朱鳥

飛び敗つて蝌蚪の墨痕淋漓たり 野見山朱鳥

眉墨で書き留む一句帰り花 宮下みさえ

美濃の鯉相聞の墨ながしけり 豊口陽子

鼻にまで墨を付けり冬籠 桜井梅室

筆につく墨のねばりや五月雨 五月雨 正岡子規

筆に墨たっぷり吸わせ立夏なり 好井由江

筆の海墨に声有り千鳥石 口慰 選集「板東太郎」

筆ほぐす朱唇の墨も夜涼かな 西島麦南

筆モ墨モ溲瓶モ内ニ秋ノ蚊帳 秋の蚊帳 正岡子規

筆始め坐り直せば墨匂ふ 板津 

筆墨の濃き晴れさそふ梅の花 原裕 新治

姫著莪の花に墨する朝かな 杉田久女「杉田久女句集」

百合遺墨気多の海の歌匂ふなり 能村登四郎

百年の露けさ笹の朱墨にも 藤浦昭代

表札に墨足して置く初つばめ 木下助治

苗札のほかには父の遺墨なし 御堂周介

浜木綿や父を墨痕ながれたり 宇多喜代子

不漁(しけ)の朝餉鍋墨につく静かな火 佐藤鬼房

夫は出稼鍋墨を枯るる潟に流し 能村登四郎

夫は出稼鍋墨を枯るゝ潟に流し 能村登四郎 合掌部落

布を晒す水ひやゝかに流れけり 高井墨公

武者幟雨空墨をながすなり 中村秋晴

蕪村忌に磨る奈良墨の匂ひけり 福村青纓

風かほれ唐とやまとの墨の色 白雄

風雨案山子墨の相好くずしゐて 上田五千石『田園』補遺

風花や墨書のまだ乾かぬに 不死男

風蘭の下大いなる墨を磨る 片岡奈王

風鈴のほどよく鳴る日墨を磨る 八木 

文字摺の花に墨磨る閑もなし 後藤比奈夫

文墨のよき交りに良夜あり 深川正一郎

文晁の墨絵の襖に青葉寺 八牧美喜子

別ビラの墨いろ東風に匂ひけり 久保田万太郎 流寓抄

片減りの墨の歳月露伴の忌 成瀬櫻桃子

峯入の墨鮮やかな檜笠 朝妻 

蓬莱や老舗めでたき御用墨 高橋淑子

棒杭の如きをぐいと墨の涼 高澤良一 ねずみのこまくら

頬墨のすゝけてをりぬ寒雀 静雲

北限に墨引くごとし去年の貨車 大郷石秋

北国の涼掌に伝ふ十勝石 山田千代 『淡墨』

墨いろのやうやくあかね初景色 鷹羽狩行

墨いろの運河へ垂らす秋すだれ 有馬籌子

墨いろの魚が泳ぎて夏木立 伊藤 敬子

墨うすき一消息や宗易忌 阿波野青畝

墨うすき絵に似て里の碪かな 野紅

墨うすくして若竹のみどりとす 山口青邨

墨おきて硯の海も水の秋 鷹羽狩行 七草

墨かぶりエイの涼気を曳き来たり 高澤良一 ぱらりとせ

墨かをり泰山木の花かをる 日野草城

墨こねて服まで黒し女来な 品川鈴子

墨しかと離さぬ硯洗ひけり 鷹羽狩行

墨しらぬ硯になるな玉ぞとて 鈴木道彦

墨すつてひととへだたる十三夜 桂信子 月光抄

墨すつてをり七夕の色紙あり 星野立子

墨すつて何も書かぬ日百千鳥 鈴木鷹夫 渚通り

墨すつて十一月の卓の上 橋本榮治

墨すつて十一月の洛の宿 橋本榮治 越在

墨すって昼暗くせり雪催 秋元不死男

墨すつて昼暗くせり雪催 秋元不死男

墨すつて余寒の燈うるまする 上田五千石『天路』補遺

墨すらば団扇よごさん星むかえ 風国

墨するや月のぼりゆく春草忌 横光利一

墨するや秋夜の眉毛うごかして 飯田蛇笏

墨する手いつか休めて冬日見る 星野立子

墨すれば宛てたき名あり月今宵 谷口桂子

墨すれば今宵雨月の香ありけり 村林星汀

墨すれば埴輪のゆるる文化の日 秋元不死男

墨すれば濃淡おのづから若葉光 山口青邨

墨すれば鳴く山鳩よ八一の忌 松田百合子

墨つぎて秋思の筆に迷ひあり 石川[テキ]

墨づくり見て春霰に叩かれし 宇佐美魚目

墨つけて翌日を待べし旅衣 松窓乙二

墨つげばしぐれかよひぬ一夜筆 上田五千石『風景』補遺

墨で描く桜いつしか色を持つ 横田静子

墨とカトレア漂うドレス 高階にて 伊丹公子 山珊瑚

墨と筆一気呵成に皐月富士 川崎展宏 

墨なめた虻を掃出す九月かな 寥松

墨に雲人のこと葉の初桜 上島鬼貫

墨のいろいつまで草や花のつや りん女

墨ののりよかりし梶の広葉かな 下村梅子

墨の一墨の二いづれ牡丹の名 後藤比奈夫

墨の香に倦みゐて春も逝きにけり 澤村昭代

墨の香のまだ消えやらぬ秋扇 大久保道彦

墨の香のゆらりと解夏の机より 原通

墨の香の殊に匂ひて初硯 中川喜久栄

墨の香も孫に磨らせつ風信子 瀧井孝作

墨の香も朴の花香も楸邨忌 井浪立葉

墨の香や栗鼠の聴耳すずしとも 宮坂静生 山開

墨の香や雪のあしたの青女房 吾仲

墨の香や霜なつかしき鳥の跡 完来

墨の香や片耳の鹿振りかえり 岡村光代

墨の香や杢太郎忌の客座敷 平綿春響

墨の色いつ迄草や月と花 りん女

墨の線たどり申せば寝釈迦かな 山口青邨

墨の梅はるやむかしの昔かな 榎本其角

墨の番や奈良の都の古梅園 夏目漱石 明治三十二年

墨は旧く筆は新しくことし虎をかく 荻原井泉水

墨も濃くまづ元日の日記かな 永井荷風

墨よしの神の留守にも淡路嶋 諷竹

墨よしや千鳥こぼるゝ朧月 嵐山

墨よしや千鳥こぼるる朧月 嵐山 五車反古

墨をする硯の海に月明かり 寺島たみ子

墨をつけた顔でもどつて来た  尾崎放哉 小豆島時代

墨をぬるランプの夜明水鶏鳴く 皆吉爽雨

墨をもてさらりと蕪画かれけり 長谷川櫂 蓬莱

墨を以て大萬緑を描きたる 中杉隆世

墨を濃く愛新覺羅氏へ賀状 森田公司

墨を濃く一字写経や夏きざす 美谷島寸未子

墨を磨り終えて真向う冬の山 桂信子

墨を磨るなめらな音も冬とおもふ 上村占魚 『玄妙』

墨を磨るほかに音なき白障子 片山由美子 天弓

墨を磨る心しづかに冬に入る 桂信子 月光抄

墨を磨る長梅雨の鬱払ふため 鷹羽狩行

墨一色彩百色の夏の山 滝青佳

墨烏賊の墨にまみるる余寒かな 鈴木真砂女 夕螢

墨烏賊の墨美しき朝の歴史 攝津幸彦 鹿々集

墨火華麗に盛って 陶師の妻 伊丹三樹彦 正月

墨絵にもほのかなる紅風光る 福島加津

墨絵へと帰る八坂の寒鴉 乙も 明隅礼子

墨絵めく霧の山河や雪舟忌  紀代

墨絵書く心床しや年のくれ 桃隣

墨吉や今一*しぐれと暮る迄 諷竹

墨工のわが眼触れざる側も汚れ 橋本多佳子

墨工の黙つひに住し工房去る 橋本多佳子

墨工房寒気はなれぬ煤天井 谿昭哉 『航跡』

墨痕に父の温みや花曇り 水原春郎

墨痕のいづれ身に沁むものばかり 上田五千石『天路』補遺

墨痕の飛び散るままに 福寿草 伊丹三樹彦

墨痕の肘に付きゐし夏行かな 岩城久治

墨痕を淋漓のままに古屏風 鷹羽狩行

墨刷いて多摩の横山戻り梅雨 川崎展宏

墨擦つて涅槃の雪となりにけり 永方裕子

墨擦るや夜の雨音の芭蕉より 丹羽 啓子

墨師らに小湯壺三つ露の土間 飴山實

墨匠に沸き続く風呂かまど猫 田中英子

墨象の墨飛び散つて羽抜鶏 鬼貫

墨色の金うかべたり日雷 石田波郷

墨色の富士へ短かき男郎花 三枝正子

墨色の夜のむかうの猫の恋 木栓恵美

墨水に妓と遊ばむか芋名月 筑紫磐井

墨水に妓と游ばむか芋名月 筑紫磐井 婆伽梵

墨水の行燈鈍仙の納豆かな 会津八一

墨水は燈籠もこはくおぼすらん 燈籠 正岡子規

墨青く磨ればしぐるる桂郎忌 古賀まり子

墨蹟寒香五臓雲行き水行けり 中村草田男

墨折つて言葉掠るる厄日雲 秋元不死男

墨折れて七夕雨となりにけり 秋元不死男

墨倉の明け放たれし四温かな 佐藤美智子

墨蔵の錠ぬばたまに年つまる 西村和子 かりそめならず

墨足る筆 奥歯噛むにも 奥歯無く 伊丹三樹彦

墨打ちの糸の直線風光る 富田好江

墨達磨ぎろりと睨める安居かな 阿波野青畝

墨淡く書いて涼しき弔句かな 上田五千石『琥珀』補遺

墨竹の上に瓶梅の影を印す  正岡子規

墨竹の風しかと見ゆ初雀 十王

墨坪の奥はよし野と姨捨と 松岡青蘿

墨壷の糸びんびんと山眠る 長谷川双魚

墨堤に雨の明るし桜餅 下山宏子

墨堤に花人となる足慢ろ 高澤良一 寒暑

墨堤に人ごゑひびく雨水かな 喜多みき子

墨堤に雀弾める福詣 依田安子

墨堤に年の豆打つ艀人 御子柴光子

墨堤に返す波間の都鳥 鳥飼しげを

墨堤のさくら大きく波うって 高澤良一 寒暑

墨堤の雨の桜となりしかな 片山由美子 風待月

墨堤の花冷え募る太極拳 高澤良一 寒暑

墨堤の桜を見むと傘さして 細見綾子 天然の風 

墨堤の三月十日茜燃ゆ 松木 

墨堤の浮浪者に湧く朝ざくら 高澤良一 石鏡

墨堤の埃まみれに冬霞 佐藤鬼房

墨堤の櫻過ぎゆき梅若忌 森澄雄

墨堤やつくし二本に声あげて 須賀一男

墨提に空のもどりし桜しべ 小島健 木の実

墨吐いてくぼめる腹や烏賊かなし 岡田耿陽

墨吐て烏賊の死居る汐干哉 汐干狩 正岡子規

墨吐て烏賊め死居る汐干哉 汐干狩 正岡子規

墨豆腐や妻が居ぬ夜の恋衣 尾崎紅葉

墨縄に美しうちるさくら哉 松窓乙二

墨縄の墨が付けりけしの花 成田蒼虬

墨匂ふ漢の山々眠りけり 室生犀星 犀星發句集

墨入れしをんなの肌西鶴忌 鷹羽狩行

墨梅の軸にさしけり初日影 初日影 正岡子規

墨梅の軸にさしこむや初日の出 初日 正岡子規

墨買うて仏に逢うて奈良遅日 浅沼 艸月

墨買ひて茶をもてなさるあたたかや 大石悦子 聞香

墨買ふや大和にかかる春の虹 町田しげき

墨髭も洗ひかえてや更衣 魯九

墨髭や豆腐抱て年の暮 車庸

墨付し行燈を泣くきり~す 越人 (子の空しく成るあとにて、与風見付侍りて)

墨磨ってゐて元日の顔となる 加藤知世子

墨磨つて七夕月の夜気にゐる 上田五千石『琥珀』補遺

墨磨つて徐々に見えくる夕螢 小泉八重子

墨磨つて水に色やる星月夜 上田五千石『琥珀』補遺

墨磨りて正座の長き懐手 小原紫光 『めくら縞』

墨磨るやこころにひゞく夕河鹿 山中三木

墨磨れば二月去りゆくひびきかな 上野さち子

墨磨れば墨の声して十三夜 成田千空

墨浴びることを覚悟の烏賊を裂く 堂前悦子

墨流れ雲龍となる硯洗ふ 山口青邨

墨涼し馬を描けば奔ばんとす 会津八一

墨練りて出来たり「天地玄黄」と 阿波野青畝

墨壺に井戸水差して初仕事 小林 

墨壺の糸ぴんぴんと山眠る 長谷川双魚 『ひとつとや』

墨壺や大工の覗く梅の花 怒風

墨壺を捧げはべりて初仕事 桑田青虎

墨滲むごとく焼野となりゆけり 川島朗生

墨蜻蛉或は紺を刷きにけり 阿波野青畝

墨蜻蛉参差と羽うつ極暑かな 阿波野青畝

墨蜻蛉出水の道のへりへりを 阿波野青畝

墨蜻蛉風支へしが流しけり 小原菁々子

牧谿の墨さながらに野分雲 阿波野青畝

奔放に墨はしらするお書初 角川照子

凡の墨すりて香もなし梅雨の入り 及川 

盆すぎの忽とうす墨いろの海 成田智世子

磨りおろす墨なめらかや夜の秋 上田五千石 天路

磨りたまる墨のみどりや家康忌 藤田あけ烏

磨りためし墨に塵なき夏書かな 高浜虚子

磨り込みし墨を一筆冬木にする 望月たけし

磨り終へし墨をことりと櫻の夜 小澤克己

磨り置ける墨のみどりや家康忌 藤田あけ烏 赤松

磨る墨に雁の羽音のまぎれしや 齋藤愼爾

磨る墨に酒の一滴白雄の忌 竹中龍青

磨る墨の吸ひつきのよき二日かな 澤田佳久

磨る墨の金粉浮きて初硯 鷹羽狩行

磨る墨の香にしまりたる二日かな 梅里全子 『祝矢』

磨る墨の香りがゆかし初写経 曽田卓夫

磨れば濃く墨の応へて立夏かな 鷹羽狩行

万緑の墨のごとしや海芋咲き 山口青邨

満関の花の薄墨暮れにけり 渡邊千枝子

夢に書く墨痕淋漓屏風 山口青邨

夢に色あらば淡墨桜かな 西川五郎

霧入れて墨ひといろの軸仏 荒井正隆

名を書くや奈良墨にほふ雑煮箸 的場 敏子

名月や墨摺くだす古瓦 加舎白雄

命毛を墨のぼりくる淑気かな 前田恭子

明け易し硯離れぬ使ひ墨 秋元不死男

木の間漏る安居の墨の香なるべし 殿村莵絲子

餅腹の重きを据ゑて墨をする 杉本零

弥生尽烏賊が墨吐くはしりもと 石橋秀野

勇志秘めて像の磨墨寺残暑 近藤幹子

有風忌花の墨堤今日も風 柳沢一弥

誘蛾燈しきりに墨を塗りをりぬ 阿波野青畝

夕べすずしく竹が青墨の竹になる 荻原井泉水

夕影を曳く薄墨の花に又 稲畑汀子 汀子第二句集

夕澄みて夏書の墨の濃く匂ふ 皆川盤水

揺れあへる牡丹に墨をすりにけり 千石比呂志

葉桜や墨をするとき袖鳴りぬ 鈴木鷹夫 渚通り

落鮎の身の行末や墨衣 元隣

落款の丹の冴え冴えと遺墨あり 上田五千石『天路』補遺

落蝉の頭や墨を塗られしか 山口誓子

蘭を画て疊に透る墨の跡  正岡子規

蘭を画て疊に墨のこぼれ哉  正岡子規

蘭咲くや大國香は墨の銘  正岡子規

立春大吉絵馬堂に墨匂ふ 岡本菊絵

立冬や墨壺めきて谷の闇  紀代

立膝のわたし墨絵のなかの黒 情野千里 「オール川柳」

流れざる墨のゆくへや光悦忌 石寒太 あるき神

流れゆく墨の行方や光悦忌  寒太

流星や墨壱丁を照らしたる 永田耕衣 冷位

竜天に登る古墨に重さなし 福田甲子雄

両頬に墨つけふくら雀かな 川崎展宏

涼あらた越前和紙の墨流し 増山千鶴子

涼新たパンに眠りし烏賊の墨 二村典子

良寛の墨の飛沫よこほろぎよ 小檜山繁子

良夜とは墨のひろがりはじめかな 筑紫磐井 未定稿Σ

輪飾りのすでに煤けつ墨造り 澤田 緑生

礼帳に備へて徽墨又湖筆 阿波野青畝

礼帳も新毫も未だ墨付かず 阿波野青畝

練りあげし奈良墨匂ふ春夕べ  重夫

連如忌の墨の匂いへ忘れ雪 穴井太 天籟雑唱

炉の名残墨交る朱硯洗ひけり 柴田紫陽花

露けしや一滴磨れば墨の足り 八染藍子

露けしや一滴麿れば墨の足り 八染藍子

露けしや重ねてしまふ墨・硯 鷹羽狩行

露けしや母の遺しし墨使ふ 田川飛旅子 『山法師』

露の世の又書く手紙墨書もて 星野立子

俎や青菜で拭ふ烏賊の墨 松瀬青々

俤は菊の香深き墨絵かな 除風

楸邨の墨宙小鳥渡りけり 綾部仁喜 樸簡

溽暑なる顔にはじけし烏賊の墨 影島智子

(めつむ)れば紅梅墨を滴らす 角川春樹

瞑れば紅梅墨を滴らす 春樹

祗王寺の今昔薄墨椿咲く 山田弘子

筍や墨信に人なつかしき 小川軽舟

糶り落すこゑに大蛸墨を吐く 南方 惇子

糶終る土間のくぼみに烏賊の墨 木村里風子

糶台の花烏賊墨を洗はれる 阿部寿雄

芒描く薄墨さらにうすめつつ 能村登四郎

藪の井や夏の一合は経の墨 野坡

蜻蛉に墨糸ぴんと打たれたり 龍岡晋

蝸牛みづからゑがく墨淡く 山口青邨

蝙蝠や薄墨にしむふしの山 蝙蝠 正岡子規

蠅に吾が墨舐めさせて晝寐かな 幸田露伴 谷中集

雉子鳴くや写経無の字に墨つげば 吉野義子

雉子啼くや写経無の字に墨つげば 吉野義子

霹靂と墨書して四肢おとろふる 塚本邦雄

颱風の浪見て墨を磨りにけり 山口誓子

鮠あゆる墨股川の瀬ごしかな 旦藁

鰆舟薄墨に陸暮れゆけり 根岸善雄

鰤肥り白磁のごとき胸を揃ふ 墨石

黐咲いて久女の遺墨蔵す寺 能村登四郎


# by 575fudemakase | 2024-03-08 09:04 | ブログ | Trackback

書の俳句

「不老」の額かけたり書屋竹の春 山口青邨

『死者の書』を脱け来し石の蛍よ 荻原久美子

あがりては焔先ととのへ吉書の火 加倉井秋を 『隠愛』

あこが手に書て貰ふや星の歌 一茶 ■文政六年癸未(六十一歳)

あるあした書屋の柱蝉這うて 山口青邨

いきもののぬくき寝息に書を読めり 佐藤鬼房

イザヤ書の語や凜々と遠青嶺 大谷利彦

いはねども色に吉書の花桜 常春 元禄百人一句

うすうすと冬陽のとどく簿書の上 桂信子 月光抄

うたゝ寐の夢想書とる団かな 高井几董

おおかたの書を離す日の雪真白 宇多喜代子 

おほわだは闇なほ解かず吉書揚 岡本眸

おもふ書のなくて出端の日記買ふ 下村ひろし

ががんぼに夏書の膝を折りたたむ 石田あき子

ががんぼの一肢が残り遺品の書 榎本嵯裕好

ががんぼや老いて臥所も書屋裡に 皆吉爽雨

かなぶん~仮名書魯文徹夜かな 久米正雄 返り花

かの日持ち去られざりし一書ローザうつり 古沢太穂 三十代

かもめ来よ天金の書ひらくたび 三橋敏雄

かもめ来よ天金の書をひらくたび 三橋敏雄 まぼろしの鱶

きさらぎの火もて炙れば一枚の烏賊は艶書のごと燃ゆるなれ 江畑実

きのふ書にけふ盆栽に木の葉髪 山内星水

ことごとく挫折の書なり曝す 小林康治 『存念』

ことば書略 鬼王が妻におくれしふすま哉 蕪村遺稿 

この時雨かつて独歩の書に読みき 加藤秋邨

ゴホ・ルオー・歌麿・写楽曝書され 阿波野青畝

さいかちに鳴る剥製の由緒書 安西 

さびしげに書付消さん笠の露 松尾芭蕉

サラダふた皿 同齢女流書家とです 伊丹公子

しぐるるや安重根の書を黒く 佐々木六戈 百韻反故 初學

しぐれ来やさしくる傘のはぢき書 立花北枝

しのぶ艸顔に墨つく夏書哉 高井几董

しはぶきて講書始の席につく 富田直治

しぶしぶと秋雨の夜の故人の書 田中冬二 俳句拾遺

ちちろ夜や書架はほとんど戦後の書 和田悟朗

ちちろ蟲枕頭の書の殖ゑゆくも 上田五千石『森林』補遺

チユーリツプ赤の週間わが書屋 後藤夜半

でゝむしやその角文字のにじり書 蕪村 夏之部  一書生の閑窓に書す

どの筆を執りても夏書疲れして 阿波野青畝

なつかしき夏書の墨の匂ひかな 蕪村

なつかしく遺書の曝書に参りけり 河東碧梧桐

はしなくも彼と師走の書舗に逢ふ 高橋笛美

はしり書する曲水の懐紙かな 松瀬青々

はや秋や書屋の窓に萩ゆれて 山口青邨

はるかなる男の賀状書に挾む 殿村菟絲子

ひき寄せて書を枕すや木の葉髪 伊丹三樹彦

ひそとして秋日に曝す遺愛の書 能村登四郎

ひねりたる吉書揚がらず吉書揚げ 上島清子

ひらく書の第一課さくら濃かりけり 能村登四郎

ふところの詩書に海風ふくるるなり 伊丹三樹彦

マスクなき不安の盾の車中の書 金子 

マタイ書につまびらかなり雲の峯 山本洋子

まほろばの鵄よと吉書揚げにけり 阿波野青畝

みづいろの海の朝来る吉書揚 

めかしさよ夏書を忍ぶ後ロ向  太祇 太祇句選

ゆきずりに買ひし一書や啄木忌 鈴木真砂女 紫木蓮

ゆく春の書に対すれば古人あり 高浜虚子

よき鉢によき金魚飼ひ書を読めり

レーニンの伏字無き書に五月の風 赤城さかえ

わが吉書平成元年かじかむな 阿波野青畝

わが書みな憂しと思へど春めく日 飯田龍太

わが書屋わが掃き坐り四月尽 亀井糸游

わが書屋枯れ立つものの矗々と 山口青邨

わが書屋守宮が守るよからずや 山口青邨

わが書屋十一月の片もみぢ 山口青邨

わが書屋落花一片づつ降れり 山口青邨

わが吐瀉なり山峡杉の根の残書 高野ムツオ 陽炎の家

をしみなく夏書の墨のまがりける 阿波野青畝

愛染と墨書して冬深まれり 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅

愛日の佳書激浪と暦日と 日野草城

伊予晩夏右横書に庁舎の名 北野民夫

伊呂波など散らす夏書の筆馴らし 上田五千石『琥珀』補遺

移り来て書を横積めばちちろ虫 伊丹三樹彦

維武維文御講書始ありにけり 松根東洋城

一巻の軍書持ちけり網代守 霽月

一冊の書を昼の蚊帳夜の蚊帳 山口誓子

一冊を拾ひ読みして書を曝す 鷹羽狩行

一山の薬掘り得で書半巻 尾崎紅葉

一司書へ言葉をかけて卒業す 森田峠 逆瀬川

一書より叱咤湧く日や秋の蝉 馬場移公子

一書家の死へのりうつる桜かな 佐藤鬼房

一書抜けば一書の弛み黴匂ふ 河府雪於

一人来て夏書のあうら高重ね 赤松[ケイ]

一泊の荷重りは詩書藤袴 桂樟蹊子

一枚の奉書の裏をとぶかもめ 津沢マサ子

稲妻に切られ斬るべき書に向かう 金子兜太

陰書に世帯の塵をはばからず 行方克己 知音

羽子板の裏や恋歌のぬすみ書 尾崎紅葉

雨を看る顔が浮べり簿書の上 日野草城

雨重く紫苑書屋の窓に斜め 山口青邨

雲に爆音石に冬薔薇我に此書 中村草田男

永き日を溺るるごとく読む一書 長山あや

越前奉書漉くふね休む文化の日 羽田岳水

遠きピアノ書を閉ぢ外套を着てかへる 中島斌雄

鉛筆で助炭に書きし覚え書 高浜虚子

塩味のはつたい新刊の書を膝に 赤城さかえ

横額は八一の書なり鋤焼す 右城暮石 句集外 昭和六十二年

王義之の書と玉解きし芭蕉あり 中杉隆世

王義之の書をまたひらき鰯雲 伊藤敬子

黄表紙にこの書の似たる溽暑かな 筑紫磐井 花鳥諷詠

黄落や晩学の書の新しく 加藤みさ子

屋根が鳴る冬や読まざる書が溜る 寺田京子

牡丹雪の日と記し獄へ入るる書よ 古沢太穂 古沢太穂句集

乙字忌の一書に執し己れ勤む 平川雅也

温突に木版の軽き書を読めり 山口誓子

下闇の親しやともす書屋の灯 山口青邨

加賀奉書北窓開けて漉きゐたり 城村貞子

夏を痩せ棚高き書に爪立つも 山口誓子

夏館乃木希典の書を額に 遠藤梧逸

夏至今日と思ひつゝ書を閉ぢにけり

夏至今日と思ひつつ書を閉ぢにけり 高浜虚子

夏書して髪膚脱水せるごとし 佐藤鬼房

夏書の筆措けば乾きて背くなり 橋本多佳子

家書ひらく鬼の一毛現われる 安井浩司

家書万金に抵るなり凧 龍岡晋

架に書なし桶無し蝶花なし 竹下しづの女句文集 昭和二十五年

歌書よりも軍書にかなし吉野山 各務支考

花園の枯れ退きてわが書屋 山口青邨

花石蕗やますらをぶりに路通の書 関森勝夫

花日和として暗い茶室の良寛の書 荻原井泉水

花冷や落丁のある明治の書 復本鬼ヶ城

菓桜やとどくとどかぬ書屋の灯 山口青邨

蝦夷ぶりのストーブ書屋靉靆と 山口青邨

我夏書試みん奥の細道を 阿波野青畝

蛾の眼すら羞ぢらふばかり書を書く 竹下しづの女

芥子播いて入りし書屋のすでに暮れ 亀井糸游

柿一つ乗せ伝言の走り書 川村紫陽

赫茶(あかちゃ)けし書魔におぼろの書庫燈る 竹下しづの女句文集 昭和十一年

郭公や目覚めの遅き書家の家 森澄雄

楽書の線たしかなる梅雨の壁 右城暮石 句集外 昭和三十一年

楽書の彫り深き幹奈良の冬木 右城暮石 句集外 昭和二十九年

額は朝鮮人趙重応書蝉時雨 山口青邨

掛大根屏風の如く書を読める 山口青邨

潟干たる日や一通の来書なし 山口誓子

活計に疎き書どもや寒夜の灯 村上鬼城

寒燈やわれに少しの技術の書 田村了咲

寒燈や辞書のみ厚く乏しき書 田村了咲

寒燈や書架にあまりて馬学の書 田村了咲

寒林の中や一書を抱きゆく 上野美智子

寄せ書に浸みける酒か芋煮会 水原秋櫻子 蘆雁

寄せ書のねなしかづらは唐の秋 殿村菟絲子 『菟絲』

寄せ書の灯を吹く風や雨蛙 渡邊水巴 白日

寄せ書の葉書の上を柳絮飛ぶ 高浜虚子

忌の近し灯下親しき書を掲げ 角川照子

忌の近し燈下親しき書を掲げ 角川照子

気休めにひもどく一書鳥曇 宇多喜代子 

飢えている胸にずしりと前衛書 川田玉恵

義之の書に会ひてはじまる冬の旅 上野さち子

菊あまた書屋の瓶に畑になし 山口青邨

菊の芽や読まず古りゆく書の多し 小野宏文

菊日和書塾の子らの行儀よく 山口青邨

吉書ながら世の消息のせはしなき 嵐雪

吉書翁白の帯地を展べにけり 阿波野青畝

吉書焚く同じ日向に白い門 加倉井秋を

吉書也天下の世継物がたり 井原西鶴

吉書揚げひらひら春の字がとんで 阿波野青畝

吉書揚げ鳥居を遥か越えにけり 小川玉泉

吉書揚金冬心に似し習字 阿波野青畝

吉書揚役の行者が煽るなり 阿波野青畝

橘のかたみの衣に夏書せん 几董 (白砧百ケ日)

宮内庁書陵部御用始かな 山崎ひさを

旧約の書にはさみある種袋 有馬朗人 天為

強燭に倚りて書を読む水澄む夜 岡本眸

胸の書が音してひらく秋の風 加藤秋邨

胸張つて書初へ身を臥せにける 中村草田男

玉を巻く芭蕉の奉書めきにけり 岡本誓山

禁断の書(ふみ)よセードの緑光に 西東三鬼

近刊の一書待たるる冬籠 後藤比奈夫

金餓鬼と見るか書を売る汗の日々 伊丹三樹彦

金粉を指に曝書を宰どる 山口誓子

銀杏散る万巻の書の頁より 有馬朗人 天為

九十の春いまだ読みたき書のあり 桂信子 「草影」以後

屑籠を楯なる書屋隙間風 井沢正江 湖の伝説

君の遺著まづ雪の香の書といはむ 能村登四郎

軍書読み支那のラムプを夜々愛づや 伊丹三樹彦

傾城の夏書やさしや仮の宿 榎本其角

渓声に馴れて日々よむ古文詩書 飯田蛇笏

茎立や書をくくりたる十文字 和田 祥子

鶏頭を屏風の如くわが書屋 山口青邨

穴まどひ見て旧約の書を閉ぢる 有馬朗人 知命

月明の書を出て遊ぶ紙魚ひとつ 大野林火 飛花集 昭和四十八年

検閲の書の伏字を紙魚食らふ 柴田奈美

見おぼえの父の印ある書を曝す 佐藤信子

見て過ぐる故人の書屋秋すだれ 亀井糸游

古書店に父の書披く菊日和 水原春郎

固く封じてレーニン全集曝書せず 原田喬

己が書の野馬追句碑に拍手打つ 松崎鉄之介

枯れ果てし馬糞を踏んで書を売りに 西東三鬼

枯野光炎々として書をひらく 窓秋

湖凍るひびきの夜夜を書に痴るる 木村蕪城

御奉書に千代や促す国の春 九石 選集「板東太郎」

口切の封も奉書もまつたき白 佐野美智

向日葵がすきで狂ひて死にし書家 高濱虚子

皇子の座の明るく講書始かな 成瀬正俊

行としや古傾城のはしり書 高井几董

行年や覚一つと書附木 一茶 ■文化十二年乙亥(五十三歳)

講書始の記事夕刊の上欄に 西山惟空

講書始め御門の松は雪に侍す 鳥野信夫

講書始大内山の寂として 野沢純

国禁の書は今在らず啄木忌 林かつみ

此の書屋美しと定まる破魔矢かな 阿波野青畝

此書屋美しとさだまる破魔矢かな 阿波野青畝

今日よりや書付消さむ笠の露 芭蕉 (同行曾良に別るゝ時)

今日よりや書付消さん笠の露 芭蕉

座椅子籐椅子余生まだまだ書を手にす 皆吉爽雨

座右の書兵火免れ読始 山口青邨

宰どる曝書といへどわが孤り 山口誓子

歳暮てふ書箋百枚やさしかり 田中裕明 櫻姫譚

細紐たばね夏灯に書を読み初む 中村草田男

冴えて書の天金浮けり病世界 目迫秩父

笹鳴や書屋は昼をひともして 山口青邨

雑炊に生きて百書の志 遠藤梧逸

雑多な書雑多に重ね老の秋 三好あきを

三伏や決議書に判べた~と 日野草城

山岳書増えて書棚も夏に入る 河野南畦 『元禄の夢』

散らばる書春曙をみな睡る 鶏二

残雪や双手握りに書と靴と 加藤秋邨

司祭員かん床に寝て書を読めり 山口誓子

四迷忌や借りて重ねし書少し 石田波郷

子が来ると夏書の筆を措きにけり 関戸靖子

子にかくし読む悲恋の書雁は雲 加藤秋邨

子の土の奉書にこぼれ子日草 大谷句仏

子規の書に棲みたる紙魚ぞきらきらす 辻桃子

子規の書のかなしく勁し水仙花 村上 光子

師に侍して吉書の墨をすりにけり 杉田久女

思羽いとしや老の書にはさむ 青邨

指で読む書は白かりし冬の薔薇 平井 

指紋ひとつ羽蟻つぶれし戦時の書 加藤秋邨

死所ここや堆書裡炉を開く 山口青邨

糸瓜忌の雨の来書の男文字 村上 光子

紙の音衣の音して夏書寺 三浦美穂

紙魚の書に天窓の日の瞑さかな 石田阿畏子

紙魚の書の深きに入りて父と会ふ 深谷雄大

紙魚の書を愛する父を怖れけり 白岩三郎

紙魚の書を惜まざるにはあらざれど

紙魚の書を知恵のはじめの如く読む 井沢正江

紙魚の書を智恵のはじめの如く読む 井沢正江 以後

紫陽花にソフィストの書を読み来る 有馬朗人 母国

肢垂れて書屋うかがふ冬の蜂 山口青邨

詩の館書に冬影の麗らかな 高屋窓秋

詩書更けぬ身近に雪のつもる音 日野草城

飼猿も座に侍す講書始かな 安藤橡面坊

侍つ春や机に揃ふ書の小口 浪化   月別句集「韻塞」

時の日を歌書へ爪立ち古書漁る 秋元不死男

時は弥生書を売り山を買はんずる 尾崎紅葉

而うして一書閉ぢたり除夜の閑 阿波野青畝

七夕や天皇の御名を書しまつる 山口誓子

室咲や詩書積む中に花ひとつ 水原秋櫻子 残鐘

実朝の歌が好きなり吉書揚 行方克己 昆虫記

実篤の書にいなびかりつづけざま 細見綾子 存問

借りし書の返しがたなく春隣 松本たかし

借りて読む獄書のくさき十二月 秋元不死男

若き日の登四郎のゐる涼夜の書 能村登四郎

若楓書屋をくらむ灯し読む 山口青邨

取りもせぬ糸瓜垂らして書屋かな 高浜虚子

手に適ふ太筆太字書始 阪本謙二

朱線みなわれを育てし書を曝す 神野青鬼灯

種袋蒔く前夜まで書に挾む 桜井博道

受験書に俯伏し眠る覚ますべし 那須 乙郎

宗左の書新兵衛の陶新茶待つ 阿波野青畝

秋の燈に哀れ独歩の書を読める 三橋鷹女

秋の風書むしはまず成にけり 蕪村 秋之部  旅人に別る

秋の夜や古き書讀む南良法師 蕪村遺稿 

秋の夜や書淫まさしく子に伝はり 平畑静塔

秋雨のけふの暗さに寄贈の書 松本たかし

秋十とせ記紀にもれたる書を訂す 加藤郁乎

秋暑し五指を披きて書を支ふ 日野草城

秋深し誨淫の書を白昼も読む 日野草城

秋灯下子ととり出しぬ故人の書 田中冬二 俳句拾遺

秋暮るるなり良寛の書の天地 対馬康子 純情

秋立つや一巻の書の読み残し 夏目漱石 大正五年

秋立つや書きかけの書のそのままに 田中冬二 若葉雨

秋立つや風は残書を翻へし 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄

秋冷の書を買ふ怒り鎮めんため 山田みづえ 

十三夜架にねむる書のもたれあい 朔多恭

縦書と昵懇の眼やつちふれり 藤田湘子 てんてん

春を待つ下宿の人や書一巻 夏目漱石 明治三十九年

春雨やもの書ぬ身のあはれなる 與謝蕪村

春場所の一校書たることありし 下田実花

春蝉の書屋にあるを憩ひとす 亀井糸游

順禮の目鼻書ゆくふくべ哉 蕪村 秋之部  古人移竹をおもふ

初夏まぶし読みがたきまで書を白む 山口誓子

初桜天金の書を開かしむ 嶋田麻紀

初刷の一書しづかに日の机 山田弘子

初買の異国書インキ匂ひけり 洋一

初版たり紙魚の跡なき沙翁の書 有馬朗人 非稀

書き込みし青春の檄書を曝す 川端 

書して劃崩さず盆の枌塔婆 加倉井秋を

書ぞめや詩歌連俳四方の春 季吟

書ぞめをせし筆ついで便り書く 星野立子

書つゞる師の鼻赤き夜寒哉 蕪村遺稿 

書には舞ふ遊びわれには睡る遊び 

書に淫す人立春の野を知らず 日野草城

書に還り秋山肌の彩(いろ)萬化 川口重美

書に倦きて待つているのは三十三才 遠藤梧逸

書に倦みて己にかへる鍬始 高田自然

書に倦むや磨きて喰ふ巴旦杏 北野民夫

書に倦むや蜩鳴いて飯遅し 正岡子規

書に倦んで葡蒲の小粒小粒食ふ 佐藤鬼房

書に触るるうれしさのみにかじかめる 竹下しづの女句文集 昭和十三年

書に溺れ極寒の些事かへりみず 飯田蛇笏

書に飽きて出てみる町の鰯雲 岡田順子

書の重さ蜜柑の重さ夫見舞ふ 石田あき子

書の上を鎖す溶暗霧の海 金子兜太

書の帯のいつしか失せし二月かな 能村登四郎

書の白さ外套を脱ぎ痩身なる 石田波郷

書の面の灯色に代はり初明り 中村草田男

書よめば卯月は黄なりあやめ草 三橋鷹女

書をくるも時を刻むも秋の音 斎藤道子

書をとりに二階がとほくなりて冬 金子 

書をにぎる芭蕉にねぶれ菊の児(ちご服部嵐雪

書をはこびきて四壁なり煤ごもり 皆吉爽雨

書を愛し秋海棠を愛すかな 山口青邨

書を移していまは落葉す林崎 山口誓子

書を遺し月明の江を遡る 加藤秋邨

書を求む神田はすでに喜雨の中 角川源義

書を去りて秋の多毛の街の隈 金子兜太

書を校す朱筆春立つ思あり 柴田宵曲

書を捨てて 抱く若い脛 椎咲く森 伊丹三樹彦

書を積みて険しく冬を迎へけり 小林康治 『潺湲集』

書を積んでいにしへにぬるる露の宿 山口青邨

書を措けば壁炉が照らす卓の脚 石田波郷

書を蔵す春水の豊かなるがごと 大木格次郎

書を貸してやる夜の女かも知れず 伊丹三樹彦

書を置いて開かずにあり春炬燵 高浜虚子

書を抽芭蕉にねぶれ菊の児 服部嵐雪

書を読まず搗き立ての餅家にあれば 西東三鬼

書を読むや冷たき鍵を文鎮に 中村草田男

書を読むや颱風の夜の白き燈に 山口誓子

書を読むを多くは臥てす秋袷 山口誓子

書を読む燈浜田の浮塵子来り死す 山口誓子

書を読めるとき幾由旬なるちちろ 山口誓子

書を買ひて暫く貧し蟲の秋 松本たかし

書を売つて炎天の下寂寥に 山口誓子

書を売つて書斎のすいた寒さ哉 幸田露伴 江東集

書を売れば短日の日ざし街を去る 欣一

書を曝しわが生涯をかへり見る 深川正一郎

書を曝し少年の日を曝したり 辻田克巳

書を曝し文を裂く天の青きこと 渡邊水巴 富士

書を曝す焼いても惜しくなけれども 能村登四郎

書を曝す中に紅惨戦絵図 橋本多佳子

書を伏するたび冬蝶の死が見ゆる 殿村菟絲子 『菟絲』

書を伏せて太宰を語る夜学の師 町田しげき

書を伏せる度冬蝶の死が見ゆる 殿村莵絲子

書を閉ぢし音枯山の一燈下(読み終えて好き書一巻閉ずる如き死を希いて居し夫の言葉思いて殿村菟絲子 『樹下』

書を閉づるかそけき音も冬の声  

書を明るます秋雲に眼を上ぐる 中戸川朝人

書淫の眼あげて卯の花腐しかな 富安風生

書淫の目あげて卯の花腐しかな 富安風生

書屋あり実梅落つ音筆擱く音 松本たかし

書屋いま取穫の南瓜おきならべ 山口青邨

書屋いま収穫の南瓜置きならべ 山口青邨

書屋ともすまだ見えてゐてふる落葉 山口青邨

書屋のみすがしさ保つ福寿草 水原秋櫻子

書屋の灯消し邯鄲に夜を与ふ 富安風生

書屋の灯南瓜の苗に蛾を点ず 山口青邨

書屋わが死所なり花菖蒲 山口青邨

書屋暗く金魚の紅の漾々と 山口青邨

書屋古りうどんげも花ざかりにて 山口青邨

書屋師走夜ごと夜ごとの十二時うつ 山口青邨

書屋灯る笹子訣れを告げて去る 山口青邨

書屋這ふごきぶり厨追はれしか 亀井糸游

書架十数年の書は日に曝し論語孟子風あり 荻原井泉水

書割にあらず夕ベの白木槿 星野麥丘人

書割も豊年の黄や村芝居 宮津昭彦

書巻の気みなぎらしめよ漱石忌 阿波野青畝

書巻の気惻々たりし火鉢かな 阿波野青畝

書閑に醤造るや山の寺 佐藤紅緑

書棄し歌もこし折うちは哉  太祇 太祇句選

書記・雇昼寝を偸む簿書の蔭 日野草城

書渓に食ふ雪よりくろき山の飯 能村登四郎

書庫にかへす詩書の天金麦の秋 木下夕爾

書庫の書に落花吹雪き来()しづかにも 竹下しづの女句文集 昭和十年

書庫古りて書魔老ひて花散りやまず 竹下しづの女句文集 昭和十一年

書庫瞑(くら)しゆうべおぼろの書魔あそぶ 竹下しづの女句文集 昭和十一年

書庫瞑く春尽日の書魔あそぶ 竹下しづの女句文集 昭和十年

書庫瞑く書魔生()るゝ春逝くなべに 竹下しづの女句文集 昭和十年

書債かなし夏書神妙草の庵 山口青邨

書冊と牡丹と、乱抽そのままに散る 荻原井泉水

書冊懸崖のごとく菊を置くところありて置く 荻原井泉水

書初といふもあはれや原稿紙 吉屋信子

書初に且つ読初に良寛詩 上田五千石 天路

書初に日がさしさつと書きむすぶ 波津女

書初のための右馬左馬 後藤比奈夫

書初のつたなきをはぢらはずけり 日野草城

書初のひとりの日向ありにけり 藺草慶子

書初の仮名万葉の歌となる 安田晃子

書初の此の日あたりや不老門 尾崎紅葉

書初の子に吉野雛ながれつつ 大峯あきら

書初の弱筆はすぐなげうちぬ 石田波郷

書初の書き出せし字の大滲み 岩崎起陽子

書初の太文字はわが男弟子 古賀まり子

書初の筆の力の余りけり 稲畑汀子 汀子第三句集

書初の筆もおろさず病み籠る 寸七翁

書初の筆を鎮めて納めけり 稲畑汀子

書初の筆硯拝借 女房殿 伊丹三樹彦

書初の筆力今を盛りとす 矢田挿雲

書初の夫の部屋より墨匂ふ 鈴木幸子

書初の墨を磨らんとして熄みぬ 石田波郷

書初の墨病室をかをらしむ 波郷

書初の墨流るるを早や吊りぬ 田村一翠

書初の龍は愈々翔たむとす 有馬朗人 非稀

書初は五尺の神符かしこみて 白井 香甫

書初は恋の場面となりにけり 吉屋信子

書初やあたらしき墨匂ひだす 新谷ひろし

書初やうるしの如き大硯 杉田久女

書初やをさなおぼえの万葉歌 竹下しづの女

書初や一點一劃方正に 上村占魚 『かのえさる』

書初や硯に映じ梅薫ず 寺田寅彦

書初や口上の覚えけふの礼 兼豊 選集「板東太郎」

書初や子も一つとる年の功 千咲

書初や紙に落ちたる竹の影 方明

書初や紙の小旗の日のしるし 子規

書初や親子と生れ詩に仕ふ 島田青峰

書初や衰へならで枯れしと言ふ  春一

書初や寸余の墨をたふとみて 下村ひろし

書初や草の庵の紅唐紙 蛇笏

書初や白き鳥浮く神田川 辻桃子

書初や筆勢勁き福一字 青木愛子

書初や父となる子の筆力 小林綾子

書初や父の遺愛の硯箱 萩原まさえ

書初や旅人が詠める酒の歌 占魚

書初や老妻酒をあたゝめたり 鬼城

書棚より一書抜き出す雪籠  昌子

書痴の顔冬木の影に目をほそめ 加藤秋邨

書痴われに本の神田の祭かな 浩山人

書賃のみかんみい~吉書哉 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)

書展出て炎天のうす墨の色 高瀬哲夫

書燈いつも船は夕焼また朝焼 山口誓子

書読むは無為の一つや置炬燵

書函序あり天地玄黄と曝しけり

書付にふびんと書かれ翁の忌 阿波野青畝

書乏しけれども梅花書屋かな

書魔堰いて書庫の鉄扉が生む朧 竹下しづの女句文集 昭和十一年

書夜を舎かぬもの添水山は晝しずかなり 荻原井泉水

書裡の楸邨生の楸邨と雪夜逢ふ 加藤秋邨

書樓出て日寒し山の襞を見る 飯田蛇笏

書痙とはお気の毒なる夏書かな 阿波野青畝

書痙の手冬日に伸ばしさすりをり

書肆の灯にそぞろ読む書も秋めけり 杉田久女

書肆の灯にそゞろ読む書も秋めけり 杉田久女

女流書家みどりの外套着て華奢に 柴田白葉女 『冬泉』

小書*かもポインセチヤを得て聖夜 富安風生

床の軸は桐一葉唐子の若書よ 山口青邨

彰仁書の大幅かかる梅館 大橋宵火

昭乗の書に憑かれをる安居かな 阿波野青畝

昭和史に一書加へぬ露しとど 八牧美喜子

松陰の書をはゞかりて紙魚乏し 森田 

松過ぎて父の辺に殖ゆ漢学書 杉本寛

松蝉や書家に丈余の紙しづか 友岡子郷

障子替へ紺青の帙の書を置けり 水原秋櫻子 蓬壺

障子閉めてふるさとは書に沈み易し 大串章

上人の杏書の仕度次の間に 静雲

上人の一行の書や夏の寺 深川正一郎

常埴伽と夏書の心現はしぬ 阿波野青畝

常瑜伽と夏書の心現はれぬ 阿波野青畝

色鳥の来てわが書屋のぞき去る 深川正一郎

寝ねがての書や千秋の音すなり 高屋窓秋

寝酒得て旅の書を伏す遠河鹿 角川源義

心しづか端午の書屋もの書きて 山口青邨

深秋や子の渡航書を懐に 羽部洞然

深川めし河豚筆頭のお品書 田中英子

真名書を愛し鰈を食べている 金子兜太

真夜の雷傲然とわれ書を去らず 加藤楸邨

神様の楽書として自分を全うしよう 海藤抱壺

親しき書疎き書書架の夜の長き 橋閒石

親雀誓子書屋の簷に入る 山口誓子

人それ~書を読んでゐる良夜かな 山口青邨

人それぞれ書を読んでゐる良夜かな 山口青邨

人丸忌俳書の中の歌書一つ 松本つや女

水澄むや病気の百科といふ書読む 田川飛旅子

水澄めり繊き榾もて書を抱き 石原八束 秋風琴

水仙や机上の一書菜根譚 遠藤梧逸

水霜や獺祭書屋主人考 藤田あけ烏 赤松

水無月や子規の一書に対峙せん 水田むつみ

水餅や死に関したる書の溜る 田川飛旅子 『山法師』

雛あられ書も闌けしと思ふかな 後藤夜半

晴れやらぬ心に夏書はかどりぬ 宇野幸子

正直〔直()〕段ぶ〔ツ〕つけ書の西瓜哉 一茶 ■文政八年乙酉(六十三歳)

清閑になれて堆書裡夏来る 富安風生

清浄と夏書の一間塵もなし 河東碧梧桐

清貧という語うべなひ書を曝す 浅井青陽子

清和なる書淫に旅もせざりけり 皆吉爽雨

生きてとびし蜻蛉の透翅書にはさむ 山口誓子

生涯の書屋の障子今を暮れ 皆吉爽雨

聖き書(ふみ)()よりも黒く魚と在り 西東三鬼

聖き書外よりも黒く魚と在り 西東三鬼

逝涼の書をよみ電車街に入る 石田波郷

青雲に松を書たりけふの月 服部嵐雪

青春はあまりに暗く書を曝す 新谷ひろし

青畳涼し一書の重さの影 野澤節子 未明音

青潮へ脚組みすでに詩書に倦む 伊丹三樹彦

静臥椅子秋風の書に指挿む 山口誓子

惜しからず吉書に焼きて無一物 平畑静塔

惜まるゝ書の落丁や夜半の春 内田秋皎

惜春の書の跳ね墨をおもひをり 能村登四郎

積みし書のはたと崩るゝ大暑かな 藤田湘子 去来の花

積み上げし書が目の高さ酷暑来る 松本旭

赤キ斜面ニ未定勅語ヲ書キ下ロス 夏石番矢

赤貧の日の麦いろの書を曝す 上田五千石 琥珀

碩学の紙魚を讃へてわれも書に 三嶋 隆英

節分の書屋の鬼は追はしめず 亀井糸游

説林の書に見て木の実植ゑにけり 河東碧梧桐

雪の降る庭を見てゐて書読まぬ 山口青邨

雪ふりつむ紺にして書の手重りす 加藤秋邨

雪足らぬ所初富士墨書され 平畑静塔

雪嶺(ゆきね)を砦書を砦しなほ恋へる 川口重美

絶食のわれと書の間蜘蛛わたる  

蝉とりの吾子に叱られ書をとざす 加藤秋邨

蝉涼し頬ばつてゐる郵書受 日野草城

先いけて返事書也蓮のもと  太祇 太祇句選

戦術の書や秋風は低きより 宇多喜代子 

扇一筋が結界見上ぐ流祖の書 佐野美智

祖父の書をかけて夏痩はじまりぬ 原田豊子

僧の書をかゝげて主月を待つ 高野素十

爽かや乱帙に処す書淫の士 日野草城

早乙女の袂ほどきし書餉かな 高濱朋子

巣衣着て若く読みにし書をひらく 能村登四郎 咀嚼音

送行の荷を振分けに書冊あり 森田 

霜の夜の死に方の書を一、二冊 山田みづえ

霜の夜や死に方の書を一、二冊 山田みづえ

蔵王より春雲なだれ茂吉の書 加藤知世子

足利学校秋の曝書の始まれり 飯島晴子

卒論の堆書にわが子漱石忌 中戸川朝人

村書高らかに誦して冬學の腐儒と没(ヲハ)らばや 日夏耿之介 婆羅門俳諧

村風子然と書を読み炬燵守る 福永鳴風

多喜二忌や発禁の書を読み返し 遠藤若狭男

太テエ女ト言ハレタ書イタ一葉忌 田中久美子

太箸を恭々しくも奉書紙 阿波野青畝

堆書よりとりて一遺著柏餅 亀井糸游

堆書裡に古扇風器吾としづむ 皆吉爽雨

堆書裡の書物くづるる根深汁 山口青邨

堆書裡の遊び場多きちちろ虫 山口青邨

大寒の猫蹴つて出づ書を売りに 西東三鬼

大年の街を乙女は書を読みつ 平畑静塔

誰が書て花鳥風月を雪の上 水田正秀

単衣着て若く読みにし書をひらく 能村登四郎

炭籠に炭は満ちたり書を讀まな 山口青邨

短日の庭師書屋ははや灯り 山口青邨

短日や起てばつまづく机辺の書 上田五千石『琥珀』補遺

置ざまと書なぐりたる扇かな 望翠 俳諧撰集「有磯海」

竹煮草練馬の空を書割りて 永園皓哉

中折や奉書椙原売り切れど貧乏がみは買ふ人ぞなき 玄康

中天に寝待の月や書屋も更け 山口青邨

注連の内人を罷免の書に署名 亀井糸游

虫の音や月ははつかに書の小口 加舎白雄

虫干や返す人亡き書一函 河東碧梧桐

徴税書混る晩夏の書信を受く 伊丹三樹彦

朝顔の雨や書屋を開け放ち

潮騒や山岳の書に読み耽る 日野草城

聴禽書屋ころところげて雀の子 加藤秋邨

調理の書夜々を消燈喇叭以後 伊丹三樹彦

鳥雲に仙貨紙やけて戦後の書 矢島房利

鳥帰る水際にて書を焚きしあと 岡本眸

壷に咲いて奉書の白さ泰山木 渡辺水巴

汀女忌のせめて机上の書を正す 村田 

泥棒の自伝書など売れドライな冬 北野民夫

溺愛の顔も書もなし秋の風 秋元不死男

鉄線を咲かせて主書に籠る

天金の一書重たき桜桃忌 伊藤喜太郎

天金の書などは持たず秋刀魚焼く 福田てつを

天金の書を繙くや初燕 山川安人

展べてゆく夏書さすかに紺深し 阿波野青畝

登高すヘツセの一書ふところに 安立公彦

登高や楽書残すこと勿れ 阿波野青畝

土用干や軍書虫ばみて煙草の葉 正岡子規

冬あをき竹かたぶきて書屋あり 水原秋櫻子 雪蘆抄

冬ごもり燈下に書すとかゝれたり 蕪村 冬之部  人人高尾の山ぶみして一枝の丹楓を贈れれり、頃ハ神無月十日まり、老葉霜にたえず、やがてはらはらと打ちりたる、ことにあハれふかし

冬近し厚きプラトン書の余白 有馬朗人

冬蝶の置きてゆきたる棄民の書 原田喬

冬来る一書よすがに父偲び 上田日差子

冬麗ふところふかき八一の書 槍田良枝

冬籠万巻の書を守るごとし 山田みづえ

凍雪に足跡ささり吉書揚げ 舗土

島の子の怒濤そびらに吉書揚 西浦一滴

灯下親し亡母は一書だに持たず 平松鉦重

藤村の書のちらと見ゆ紅葉宿 藤田湘子

踏青や秘めて胸の香移る書 日野草城

独房囚書を読み寒に若さに耐ゆ 能村登四郎

読まぬ書の砦づくりに十三夜 角川源義 『西行の日』

読まゝくの書の堆き蔭に読む 日野草城

読みあさる書を砦とす星祭 角川源義

読みかけの書に夏蜜柑酸跳ばす 津田清子

読みさしの書を伏せ置くやちちろ虫 山口誓子

読み了へし死の書溜れり萩の家 田川飛旅子 『山法師』

読初や書痴といはるること甘受 深川正一郎

南瓜伸びやがては書屋かくすべし 山口青邨

難解な哲学の書や目にかぼちや 橋本夢道 無礼なる妻

日を以て數ふる筆の夏書哉 蕪村 夏之部  春泥舎會、東寺山吹にて有けるに

日を待てる夜空の色の一書冴ゆ 中村草田男

日脚伸ぶ綱掛け神事覚え書 山本洋子

日除け作らせつゝ書屋書に対す

日照雨緑陰の人書を閉ぢず 佐藤念腹

日盛りは今ぞと思ふ書に封す 高濱虚子

日短し雑書嵩なす辺に目覚め 飯田龍太

入りきらぬ末の一字やお書初 辻桃子

如意輪の白壁楽書は稲架隠す 山口青邨

熱もつてゐる炎天を来し一書 辻美奈子

波のごとく書屋に寄する若楓 山口青邨

芭蕉蔽ふ月下の書屋子規忌かな 竹美

芭蕉葉のひるがへるあり曝書楼 田村了咲

馬追の書屋を出でず初嵐 山口青邨

俳書万巻われこほろぎと遊びけり 山口青邨

俳書万巻秋海棠は庭に赤く 山口青邨

廃校に束ねし書冊緑立つ 木村蕪城

梅雨の月帰りし帽を書の上に 金子兜太

梅雨籠書屋狭きが故親し 松尾緑富

梅花書屋地蔵にあづけ鳥の恋 角川源義

梅花離々鳥頭子書屋成りにけり 水原秋櫻子 蓬壺

買ひし書のしかと手にある夜店かな 池上不二子

買初やうべなひがたき極め書 水原秋櫻子 殉教

買戻すすべのなき書や蟲の宿 石田波郷

蝿虎鉄斎の書にはしりけり 阿波野青畝

萩の花心にありで書に対す 高野素十

白き書と病み工場の音と病み 西東三鬼

白き書の點字痛しや見えぬ空 三橋敏雄

白桔梗文字は縦書匂ふなり 渡邊千枝子

白玉や夏書疲れに参らする 日野草城

白息以て封ず納税告知書を 伊丹三樹彦

白浪に向きて書を読む夏は佳し 山口誓子

白几夏書の僧のかぶさりぬ 大石悦子

曝す書となりたる『されど我らが日々』 片山由美子

曝す書のかたへに加ふ舞扇 渡邊千枝子

曝す書の仮の栞と思へども 中村汀女

曝す書の朱線は父のつけしもの 今瀬剛一

曝書して浦の白波攻めつづく 中拓夫

曝書して丸き師の文字たどりけり 伊藤京子

曝書して職長き身も曝しけり 禰寝雅子

曝書して心の飢ゑてきたりけり 秋元不死男

曝書して太平洋を明日越えん 大峯あきら

曝書しばし雲遠く見て休らひぬ 嶋田青峰

曝書にほふ性に眼覚めし頃のにほひ 山口誓子

曝書の日腓返りを致しけり 波多野爽波 『一筆』

曝書まぶし百日紅の花よりも 星野立子

曝書変*と魚乱帙の嶮に拠る 日野草城

箱根書屋の汲取口も見しのちにいよいよ親し茂吉先生 齊藤史 風翩翻

箱書の有耶無耶とある残暑かな 石嶌岳

八重山梔子微志をつつみて厚奉書 中村草田男

髪梳けば琴書のちりや浅き春 飯田蛇笏

蛤の煮らるる音の中にて書 加藤楸邨

晩夏薄暮旅にたづさふ書を選ぶ 川口重美

晩学の手袋遁ぐる一新書 千代田葛彦

晩年を曝せるごとく書を曝す 市川彳水

碑文棒書「亜細亜は一つ」冬の濤 中村草田男

避暑に来て君書を読まず行李の書 河東碧梧桐

美しきひと去り椅子に悲劇の書 伊丹三樹彦

美しき名の吾が妻の書初よ 鷹羽狩行

鼻さむし遺書とならざりし書を読めば 加藤秋邨

膝抱いて書守の春のゆふまぐれ 伊丹三樹彦

筆ひぢて結びし文字の吉書哉 宗鑑

百千の指紋の躍る書を曝す 竹下しづの女句文集 昭和十年

百日の夏書の筆を供養かな 菅原師竹

百日草在りしごとくに書を重ね 徳田千鶴子

氷柱とざす書窟乾燥花を挿して 山口青邨

病涯に書の弟子童星祭 鹿山隆濤

品書の鱈といふ字のうつくしや 片山由美子

品書の煤け老舗のどぜう鍋 瀬川としひで

貧樂や釣の書をみる年の暮 幸田露伴 拾遺

夫子貧に梅花書屋の粥薄し 夏目漱石 明治三十二年

富士山頂より寄せ書の夏見舞 佐野梧朗

父の忌の曝書にまじる亡母の文 吉野義子

父母を辞して書窓の柳かな 会津八一

風花や墨書のまだ乾かぬに 不死男

風薫り空海の書の馳すごとし 上野さち子

風蘭や華のごとくに華人の書 上野さち子

福音の書にリラ匂ふ夕明り 加藤春彦

福寿草奉書は折り目ケバ立ちて 久米正雄 返り花

腹の上に字を書ならふ夜永哉 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)

仏書より好きな俳書や冬籠 月尚

物書て扇引さく余波(なごり) 芭蕉

文机に一書も置かぬ良夜かな 穐好樹菟男

文机に書措かず在五中将忌 阿波野青畝

文芸無頼枕頭の書へ足袋重ね 北野民夫

返す書にひとひらはさむ薔薇が欲し 小檜山繁子

返り花三年教へし書にはさむ 中村草田男

返り花書屋をのぞく童あり 青邨

穂すすきの群るる山越え愛語の書 細見綾子 和語

暮春の書に栞す宝くじの殻 日野草城

暮鳥忌の書屋の埃はらひけり 室生犀星 魚眠洞發句集

暮鳥忌の書屋の埃払ひけり 室生犀星

母と子の並び貼られて書初展 松尾千代子

母の書を離れず紙魚の生きゐたり 橋本美代子

母持ちし書を受け継ぎぬ一葉忌 長谷川久代

奉書紙乾く日和や牡丹咲く 根岸善雄

峯雲や新約の書は比喩に満ち 鷹羽狩行

蓬莱の芋銭の一書掛け句会 佐藤 欽子

訪ひ寄れば夏書の主の晝寝哉 会津八一

亡き人の句に逢ひ閉づる雪夜の書 野澤節子 未明音

亡夫の書を子が読み初むる夏休 福永みち子

頬の虻歩みつ打てり書に帰らん 金子兜太

北風やこの板の間は書を教ふ 波多野爽波 『一筆』以後

奔放に墨はしらするお書初 角川照子

本棚より抜きし一書や居待月 鈴木真砂女 都鳥

麻の葉に借銭書て流しけり 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)

妹が子に宿の儀方を書せけり 松瀬青々

万の毛虫林にこもる深夜の書 金子兜太

万巻の書と地下室に凍ててをり 中村雅樹

万巻の書に春暁の来たりけり 有馬朗人 知命

万巻の書のうつうつと梅雨ふかし 重松白雲子

万巻の書のひそかなり震災忌 中村草田男

万巻の書も手沢なく年は逝く 山口青邨

万巻の書を黴びしめて命あり 山口青邨

万巻の黴の書の中われも黴び 山口青邨

万緑のふかきそこひにわが書屋 山口青邨

未生の兄あれば空淫書のごとし 江里昭彦

未草 名立たる巌に 名立たる書 伊丹三樹彦

未知の書は真冬焼けゆく川の色 飯田龍太

密談に参ずるとなく書に疲る 飯田蛇笏

霧の崖書冊いく重に積みしごと 中村草田男

命毛ながし末子に与ふ吉書の筆 北野民夫

明の春弓削道鏡の書が好きで 高浜虚子

明易し万巻の書を志す 高野素十

鳴くちちろ棚に書のある部屋ならむ 山口誓子

鳴るや秋鋼鉄の書の蝶番 中村草田男

毛中書訪ひかねつちまたに塵をきく 日夏耿之介 婆羅門俳諧

木の実一つまろびてのこる砲術書 幕内 千恵

木の実降る音がしきりに家書を待つ 有馬朗人 母国

木の葉髪白きを混へ詩書の上 伊丹三樹彦

木枯や五指の痺れが抱ける書 石橋秀野 『定本石橋秀野句文集』

目貼してカーテン引きし書斉かな 高浜虚子

餅箱の父の書にある年齢となる 中川正登

夜の菊積む書の中に家計簿も 能村登四郎

夜の深さ書に傾ける横顔に 日野草城

夜廻にわが書屋の灯たのもしき 山口青邨

夜店にて仮名書論語妻買ひし 池上浩山人

油照「一筆啓上」書翰の碑 内山泉子

油虫聖賢の書に対すのみ

友とすら夜も書車(ふくるま)の萩の声 上島鬼貫

郵書入れて来しやすらさを鳴く蛙 角川源義

夕雲を望む夏書の小窓かな 渡辺波空

葉になりて書れぬ梅にほとゝぎす 榎本其角

遥かなるかな雪夜明りの書を出でて 加藤秋邨

養老の炬燵を掘れる小書屋 遠藤梧逸

落字して老いの吉書のめでたけれ 池上浩山人

蘭学と呼ばれし頃の書を曝す 三村純也

履歴書の七枚を書初にせり 日野草城

梨の花月に書()ミよむ女あり 與謝蕪村

梨の花月に書ミよむ女あり 蕪村 春之部  やごとなき御かたのかざりおろさせ給ひて、かゝるさびしき地にすミ給ひけるにや

梨の花月に書よむ女あり 蕪村

立冬の堆書にかさね聖書あり 亀井糸游

旅行書の南海青し寝正月 大島民郎

良寛の一書を床に冬座敷 照田 良女

良寛の書より涼湧く蔵二階  

緑蔭に聲ごゑそろふ問答書(どちりいな筑紫磐井 婆伽梵

緑蔭の書屋灯して人新し 山口青邨

緑蔭の書屋白骨の蝋燭を 山口青邨

林檎園守り皇学の書を書架に 富安風生

例のわが楷書つつしみ書し了る 日野草城

炉を開きぬ贈られし書に礼懈り 山口誓子

炉を開くおもひ一書を繙きぬ 鷹羽狩行

露けしや探す書忘れ書架に立つ 鷹羽狩行

露の世の又書く手紙墨書もて 星野立子

露秋の書に老婦泣くおしまづき 飯田蛇笏

老校書一さし舞ひぬ年忘れ 富安風生

老人の性の書の出て麗なり 能村登四郎

傅書鳩四ツ辻に舞へり東風日和 内田百閒

儺の香のほのかなる書を手ばなしぬ 能村登四郎

凩は書屋の障子折らんとす 山口青邨

雙池硯といふなり書初の硯なり 水原秋櫻子 蘆雁

塹壕に支那の活字の書を瞥す 三橋敏雄

壺に咲いて奉書の白さ泰山木 渡邊水巴 富士

枳殻の実この著者の書は遠ざくる 中村草田男

梟の次の声待ち書を膝に 千代田葛彦

梟や我が書の傷みともおもひ 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺

梟や我が書の痛みかとおもふ 佐々木六戈

炬燵して老艶の書に深入りす 能村登四郎 天上華

獺の祭と散らし書屋寒む 上田五千石『琥珀』補遺

筐底に火事で焦げたる三鬼の書 松崎鉄之介

籠鳥の出遊ぶ夏書几かな 内田百閒

糶待ちの鮪の胴のなぐり書 藤井寿江子

絨毯は赤し晶子の書は古りて 石原八束

繙きし故人の書より枯紅葉 田中冬二 俳句拾遺

胼薬しみ入る農書開きけり 清水武を

臘梅や書屋即ち父の城 大橋敦子

苣の葉に酢を乞ふと書送りけり 尾崎紅葉

薔薇の雨妹は性学の書を読めり 日野草城

蜈蚣をも書は益虫となしをれり 相生垣瓜人

蜥蜴出て走りぬ曝書たけなはに 山口誓子

蝸牛氏と書屋主人と相識らず

蝌蚪尾なし四五冊の書をさまよへば 加藤秋邨

蠅虎鉄斎の書にはしりけり 阿波野青畝

蟲干や黄檗の書にうづもれて 京極杞陽

蟷螂曰く書は姓名を記するに足る 会津八一

誨淫の書にしたしめり暮の秋 日野草城

諤諤として茲に夏書の四千言 会津八一

霹靂と墨書して四肢おとろふる 塚本邦雄

鱸の身奉書焼きして快気膳 大野雑草子

鵙日和太鼓打つごと書をかきて 柳澤和子

鵯鳴くや筆勢強き久女の書 黒坂紫陽子

黴の書に占魚不換酒の印存す 上村占魚 『球磨』

黴の書の書架よりぬきし罪と罰 藤井寿江子

黴の書の中なる姉の遺句集よ 鈴木真砂女 居待月

黴の書の點竄(てんざん)とありなつかしき 後藤比奈夫

黴の書を一つ叩けば一と昔 高橋健文

黴の書を開き古人に糺すこと 三村純也

黴の書を売らむ遣らむと積みわくる 亀井糸游

黴の書を夜店に買うやチエホフ忌 古沢太穂 古沢太穂句集

黴びし書架若き日借りし書もありし 能村登四郎


以上


# by 575fudemakase | 2024-03-07 18:12 | ブログ | Trackback

佐々木敏光句集 富士山麓・秋の暮を読んで (高澤良一)

佐々木敏光句集 富士山麓・秋の暮を読んで (高澤良一)
      ふらんす堂 2024・2・3 初版
佐々木敏光句集 富士山麓・秋の暮を読んで (高澤良一)_b0223579_05501116.jpeg
ご恵送に深謝。同時代に生きた者として共鳴する処を述べてみたい。(佐々木さんとは三歳違い)

初富士や空荘厳の鷹一羽
飛びさうな春の鶏なり屋根へ飛ぶ
水蜘蛛で銀河を渡る老忍者
春雨や欺瞞の議事堂傲然と
春の日や総じて笑みの羅漢たち
春の空富士をうかべて「いい感じ」
無人駅春田のなかやおりたちぬ
逆さ富士頂上あたり蝌蚪元気
万緑や瞳のごとき一湖あり
深酒の夜は森々と大銀河
ピョンピョンとうさぎ跳びして烏の子
三光鳥ひと月鳴けど姿見ず
青嵐木々は腕ふり歌ふかな

箱根
山百合の見下ろしてゐる関所かな
山羊二頭角突きあへる雲の峰
わが庭を巡回中の鬼ヤンマ
ぼうふらの水をぶちまく炎天下
死に体で浮かぶプールや雲の峰
釣り上げし鱒の力や青嵐
尻の黄の輝く蜘蛛を殺すとこ
冬晴や手を当て欠伸の美(は)しき巫女
木洩れ日に踊る小人(こびと)や秋の暮
山麓やプールただいま凍結中
元日や富士牧場のウエスタン
細胞は生死をやめず去年今年
ほがらかに歩き脱ぎして初湯かな
小鳥くる森の老いたるフランチェスコ
桜咲く子供や孫へはoui(ウイ) oui(ウイ)と
春の川夢みるごとく玉藻揺れ
腹ばいて大地の春の鼓動聞く
声甘く鵯鳴きかはす春は来ぬ
海底を歩くごとしや樹海夏
「鹿死体放置禁止」や夏山路
霧の森シテとして舞ふ大欅

ベニス
ゴンドラを操る夏の筋肉よ
落葉舞ふくるくるパーのこの世かな
前世は宇宙と思ふなまこかな
水澄むや川底歩むわれの影
富士塚にのぼりて春ををしみけり
雪の夜や遠くなまめく灯がひとつ
朧へと身体(からだ)溶けゆく齢(よわい)かな
堂々とくたばつてゐる夏の主婦
厭離穢土彼岸へ泳ぐ蛇の首
森々(しんしん)と森羅万象雪が降る
蜩が告げてゐるのは我が五衰
天高し「ご長寿祝」届きけり
ところどころ靨(えくぼ)つくりて春の川
街師走富士塚登りおりてみる
カマキリはバッタの頭爆食中
おもしろきことなき世なり掃納(はきおさめ)
鶯の声聴いてゐる診察台
春の川同じはやさで歩かんと
わが森のわがふくろふと決めて聞く

一九四三年生れ
記憶なき記憶の日々や終戦日

零戦のあらはれさうな夏の雲
木漏日の美(は)しき散歩をいつまでも
ホトトギス特許許可局聞き飽きた
夏休全裸の自然にかこまれて
緑陰に車をとめてさて昼寝
ばちあたりいつしかわれも老いて秋
いつだつて時代は冥し五月闇
たゆたへどしづまぬ地球流れ星
まん中に雪の富士ある日本晴
疑念なき牛のまなこや秋日和
月光や本にかこまれ老いにけり
虫の闇われにはわれの真暗闇
年をこす見えぬ尻尾をひきずって
大枯野さまよふ後期高齢者
渦まける桜吹雪の真ん中を
大仏のごとく富士座す春の空
まるしかくさんかく春の富士の雲
入道雲富士に坐りて腕をくむ
人生は俳句と思ふかはづかな
最近は見上げるのみの雪の富士
山路ゆく春の産毛の中を行く
春野行くレットイットビーの翁かな
庭かける子犬のやうな落葉かな
舐めるぞと大沢崩れの雪の舌
初夢や結局誰もゐなくなる
蝮草ばかり元気や裏の道
湖北なる古戦場なり鼬(いたち)立つ
春雨や用なく傘をさして出る
駿河甲斐富士はよきかな雪の富士
小鳥来てささやく春のうはさかな
雪化粧今年も終へぬ美人富士
乱舞する秋のアカネに取りまかれ
炎天下川黒々とながれをる
おほみそか粗忽夫の妻つよし

集中特に惹かれたのは下記

元日や富士牧場のウエスタン
桜咲く子供や孫へはoui(ウイ) oui(ウイ)と
落葉舞ふくるくるパーのこの世かな
堂々とくたばつてゐる夏の主婦
蜩が告げてゐるのは我が五衰
わが森のわがふくろふと決めて聞く

一九四三年生れ
記憶なき記憶の日々や終戦日

夏休全裸の自然にかこまれて
疑念なき牛のまなこや秋日和
月光や本にかこまれ老いにけり
虫の闇われにはわれの真暗闇
大枯野さまよふ後期高齢者
まるしかくさんかく春の富士の雲
最近は見上げるのみの雪の富士
山路ゆく春の産毛の中を行く
春野行くレットイットビーの翁かな
舐めるぞと大沢崩れの雪の舌
春雨や用なく傘をさして出る
小鳥来てささやく春のうはさかな
おほみそか粗忽夫の妻つよし

亦佐々木さんと云へば富士さんの句だがその中でも

まるしかくさんかく春の富士の雲
舐めるぞと大沢崩れの雪の舌

辺りには仙厓や白隠禅師の禅定の宜しさが感じ取られた。


以上

# by 575fudemakase | 2024-03-07 05:49 | ブログ | Trackback

山口昭男著 波多野爽波の百句 を読んで (高澤良一)

山口昭男著 波多野爽波の百句 を読んで (高澤良一)
     ふらんす堂 2020年7月7日 初版
山口昭男著 波多野爽波の百句 を読んで (高澤良一)_b0223579_03021404.jpeg
共鳴する句のみを採り挙げた。作者名は原著を参照されたし

◾️波多野爽波がどんな俳句をよい俳句だと考えていたかは、毎月の「青」の選後にを読めばほぼわかってくる。当然弟子たちの作句の方向を修正したり鼓舞したりという意図もあったであろうが、あの頁は大変貴重な内容が散りばめられている。今ここで全てを紹介する事はできないので、次の一句を元にした爽波の考えを見てみたい。

◾️ラグビーの選手あつまる桜の木 田中裕明
◾️この句に対して、ラグビーの選手が集まってこれから先のことを想像するのは見当違いだとまず述べその後、集まるまでの選手たちの動きを原稿用紙一枚分以上の言葉で説明している。この欄でこれほど詳しく一句の背景を説明したのは珍しい。それほど心が動いたということであろうか。そして締めくくりとしてこのように言う。「いい俳句というものは表面単純のように見えてなかなかに奥が深い。読み手はその句の中に入って連想の翼を広げながら自由に遊ぶことができる」。(「青」2月号昭和54年)。裕明のラグビーの句を「いい俳句」という前提でこれだけの言葉を費やしている。実際の俳句が示されているので、納得してしまう。
(以上は上記書より引用)

小生にとって既視感のあるものは外した。
かなりかってのもの故お許しください。
また勝手な感想もお許しください。


葱坊主越しに伝はる噂かな 『舗道の花』昭和二十四年作  
(洒落た 粋な作品と感得した)

冬空をかくす大きなものを干す 『舗道の花』昭和二十六年作
(さて何が冬空を覆ったのであろうか?気をもたせる謎かけの一句は楽しい)

赤と青闘つてゐる夕焼かな 『舗道の花』昭和二十七年作
(爽波句には「色」に係る佳句がある。これもその一つ。クレヨン画か油絵か?)

春暁のダイヤモンドでも落ちをらぬか 『舗道の花』昭和二十八年作
(「大空」から「大地」への目線の移動を褒めるべき点と思った)

金魚玉とり落しなば舗道の花 『舗道の花』昭和二十八年作
(「とり落しなば」が秀逸。そこを「ガシャンと落とし」とやったらいけません。一寸下品な句になってしまいます)

本あけしほどのまぶしさ花八つ手 『湯呑』昭和二十九年作
(確かに「花八つ手」のあのまぶしさは、「冬」といふ季節の「到来」「宣言」でラッパ手のファンファーレのやうに小気味よい)

鶯に来かかりし人ひきかへす 『湯呑』昭和三十年作
(何処か引っ込みがつかなくなった感じがして面白い)

額縁をかかへて芥子の花を過ぐ 『湯呑』昭和三十二年作
(「花盗っ人」という言葉があるのだから「絵画盗っ人」という光景があってもよかろう)

鶴凍てて花の如きを糞りにけり 『湯呑』昭和四十四年作
(スマホに「‥‥映(ば)え」と言葉があるがこの光景を叙すにもそれが使えそう)

墓参より戻りてそれぞれの部屋に 『湯呑』昭和四十四年作
(この句に解説など付けたらおかしなことになる。私はそんなことはやらない…)

ちぎり捨てあり山吹の花と葉と 『湯呑』昭和四十九年作
(もし山吹が八重だったら絶対千切ろうなんて思わんだろう。先づ花だが毟るのは面倒臭くてそんな気起こらん。では何故作者はこんな句を詠んだのだろう。さあ?。頭の裡で遊んでいたのだろう。山吹が一重ならもちろん問題無しである)

掛稲のすぐそこにある湯呑かな 『湯呑』昭和四十九年作
(確かに異様な光景である)

茶の花のするすると雨流しをり 『湯呑』昭和四十九年作
(茶の花の開花前の情景を注意深く思い出してみると「するすると」の形容が判ってくる。坊主頭のやうなあの莟。花と莟が混在している。へたをすると去年の実までがぶるさがている。)

水洟やどこも真赤な実南天 『湯呑』昭和五十年作
(当句季語が判らないといふ御仁が居られる様だが貴方はどう?私は no ser!である。)

向ひ家へ魚もたらせし夜長かな 『湯呑』昭和五十年作
(婉曲なもの云ひに味がある)

沈丁の花をじろりと見て過ぐる 『湯呑』昭和五十一年作
(この沈丁。色は白でも真白。まだ莟の裡がピタリであろう)

山吹の黄を挟みゐる障子かな 『湯呑』昭和五十二年作
(まるで上等な日本絵画でも見ている気分になる)

菱採りしあたりの水のぐつたりと 『骰子』昭和五十六年作
(子供の玩具遊びのように跡をとり散らかして…)

骰子の一の目赤し春の山 『骰子』昭和五十七年作
(この句から私は直感的にある「花札」の構図を思い浮かべていた。生毛の生えたぺけぺけサボテンに鶴の佇むイラストの…)
山口昭男著 波多野爽波の百句 を読んで (高澤良一)_b0223579_04062304.jpeg
あれ 間違っていた。サボテンではなく松だった。❗️❗️


汗かかぬやうに歩きて御所の中 『骰子』昭和五十八年作
(御所は御所でも京都の仙洞御所で私も実感した)

巻尺を伸ばしてゆけば源五郎 『骰子』昭和五十九年作
(この巻尺の到達点に喝采‼️)

脱いである縕袍いくたび踏まれけり 『一筆』昭和六十二年作
(時代と伴にある衣服といふものの懐かしさ)

鶏頭にこぼしてゆきし鰯かな 『一筆』昭和六十二年作
(佛さんが申すやうな有難き一句。なむからたんのとらやーやーである)

悲鳴にも似たり夜食の食べこぼし 『一筆』昭和六十三年作
(当句から同門宮津昭彦さんの「霜旦の鶏鳴悲鳴にも似たり 」を思い出した)

網戸越し例の合図をしてゆける 「青」平成二年作
(ツーと云へばカーか)

雪しろや日当りよくて蔵二階 「青」平成三年作
(キリリと緊まった好景)

以上

# by 575fudemakase | 2024-02-26 02:57 | ブログ | Trackback


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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