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一茶 生きもの句帖 小学館文庫を読んで (高澤良一)

一茶 生きもの句帖 小学館文庫を読んで (高澤良一)
   高橋順子 編 岡本良治 写真 2002・12・1初版
一茶 生きもの句帖 小学館文庫を読んで (高澤良一)_b0223579_13311378.jpeg
上書より好みの句を選出。

雀の子そこのけそこのけ御馬が通る
むつましや軒の雀もいく世帯
雀らもしょうばん(相伴)したり蓮の飯
雀子を遊ばせておく畳かな
我と来て遊ぶや親のない雀
雀来よ炬燵弁慶是に有り

痩藪の下手鶯もはつ(初)音かな
来るも来るも下手鶯よ窓の梅
鶯が呑むぞ浴びるぞ割下水(わりげすゐ)

古郷(ふるさと)の見えなくなりて鳴く雲雀

雉なくや彼の梅わか(若)の泪雨
走る雉山や恋しき妻ほしき
雉鳴くや関八州を一呑みに

紅粉(べに)付けてづらり並ぶや朝乙鳥
店かりて夫婦かせぎの乙鳥かな

やあれまて声が高いぞ時鳥
三日月とそ(反)りがあふやら時鳥

行々し(子)大河はしんと流れけり
行々しどこが葛西の行き留り
よし(葭)雀(きり)に水盗人(ぬすっと)の行衛かな

かはほりも土蔵住居(ずまひ)のお江戸かな
かはほりや仁王の腕にぶらさがり

けふの日やけぶり立つるも鵜のかせぎ
小けぶりや鵜匠代々鵜も代々

一ならび千鳥高麗(こま)よりつゞくかな
浜千鳥ひねくれ松を会所(くわいしよ)かな

打つ鉦と互ひ違ひやかんこ鳥*郭公の異称。転じて、人の訪れがなく閑散としたさまを「閑古鳥が鳴く」という。
大酒の諫言らしや閑古鳥
死んだならおれが日を鳴け閑古鳥

相伴(しゃうばん)に鳩も並ぶや大師粥

けふからは日本の厂(かり)ぞ楽に寝よ
雁よ雁いくつのとしから旅をした
帰る日も一番先や寡雁(やもめかり)
行く雁や子とおぼしきを先に立て

鶏に一葉ふるまふ若葉かな
花の木に鶏寐るや浅艸寺(せんそうじ)
春雨や喰はれ残りの鴨が鳴く

糞土(ふんど)より梅へ飛んだり斤鵙(みそさざい)
野はこ(糞)せん見ることなかれみそさゞい

大鶴の身じろぎもせぬ日永かな

三絃(さみせん)で鴫を立たする潮来(いたこ)かな

梟も面癖(つらくせ)直せ春の雨
梟よのほゝん所かとし(年)の暮れ

妙法(めうほふ)の火に点を打つ烏かな
かまくら(鎌倉)や十夜くづれの明烏
起きてから烏聞くなりおこり炭

痩蛙まけるな一茶是に有り
象潟(きさがた)や桜を浴びてなく蛙
木母寺(もくぼじ)の花を敷寝(しきね)の蛙かな
我が菴(いほ)や蛙初手から老いを鳴く
卯の花や水の明りに鳴く蛙
おれとしてにらみくらする蛙かな
小便の滝を見せうぞ鳴く蛙
艸蔭(くさかげ)にぶつくさぬかす蛙かな
かゝる世に何をほたえて鳴く蛙
赤蛙皮むかれても飛びまはる
天文を心得㒵(こころえがほ)の蛙かな
ゆうぜんとして山を見る蛙かな
蛙鳴き鷄なき東しらみけり
夕不二に尻を並べて鳴く蛙
芦の葉に達磨もどきの蛙かな

雲を吐く口つきしたり引蟇
稲妻につむりなでけり引蟇

あなう(憂)世としらでや蛇の出て歩く
蛇(くちなは)も一皮むけて涼しいか
御仏の膝の上なり蛇の衣(きぬ)
今の世や蛇の衣も銭になる

蔵住や田螺に似せてひとり蚊屋

それなりに成仏とげよ蝸牛
練塀(ねりべい)や廻りくらするかたつむり
戸を〆(しめ)てづんづと寐たりかたつむり
雨一見(いつけん)のかたつぶりにて候よ
でゝ虫の捨(すて)家いくつ秋の風

汚れ猫それでも妻は持ちにけり
梅がゝ(香)にうかれ出(いで)けり不性(ぶしやう)猫
でくでくと蚤ま(負)けせぬや田舎(ゐなか)猫
蚤かんで寝せて行くなり猫の親
のら猫が仏のひざを枕かな
な(菜)の花にまぶれて来たり猫の恋
恋猫や答へる声は川むかふ
猫の恋打切棒(ぶつきりぼう)に別れけり

つく羽を犬がくはへて参りけり
花寒し犬ものがれぬ嚔(くさめ)かな
山盛(やまもり)の花の吹雪や犬の椀
卯の花の垣根に犬の産屋(うぶや)かな
赤犬の欠(あくび)の先やかきつばた

古郷や馬も元日いたす㒵(かほ)
一つ舟に馬も乗りけり春の雨
どかどかと花の上なる馬ふん(糞)かな
順礼が馬に乗りけり秋日和
柴栗や馬の尿(ばり)してうつくしき
松の木に馬を縛つて角力(すまふ)かな
雪解けにしなのゝ駒のきげんかな

しぐるゝや牛に引かれて善光寺

初午に無官の狐鳴きにけり
もう一つ狐の穴へ御慶(ぎよけい)かな

往来の人にすれたる鹿子(かのこ)かな
足枕手枕鹿のむつまじや
夜あらしの鹿のとなりに旅寐かな
奈良山の神の御留主(おるす)に鹿の恋
むら萩に隠れた気かよ鹿の㒵(かほ)

舞猿や餅いたゞきて子にくれる

狙丸(さるまろ)が薬礼ならん柿ふたつ
狙引(さるひき)は猿に持たせて几巾(いかのぼり)

とし棚や闇(くら)い方より福鼠
春風や鼠のなめる角田(すみだ)川

瓜の香に手をかざしたる鼬かな

木がらしにぐすぐす豕(ぶた)の寝たりけり

白魚のどつと生まるゝおぼろかな

鵜の觜(はし)をのがれのがれて鮎さびる

大江戸や犬もありつく初鰹

うたかたや淡(あは)の波間の平家蟹
芦の穂を小楯(こだて)にとつて平家蟹

ふぐ汁やもやひ世帯の惣鼾(そういびき)
五十にして鰒(ふくと)の味を知る夜かな
誰やらが面(つら)にも似たる鰒(ふくと)かな
とら鰒の何をふくるゝ年の暮
浅ましと鰒や見るらん人の顔

永の日を喰ふやくはずや池の亀
どこへなと我をもおぶへ磯の亀

住みづらい里はないとや身寄虫(がうな)どの

魚どもは桶と知らでや夕凉
萍や魚すくふたる小菅笠

深川や蠣殻(かきがら)山の秋の月

人ならば仏性(ほとけしやう)なるなまこかな

古郷は蠅すら人をさしにけり
もろともに須磨一見か笠の蠅
やれ打つな蠅が手を摺り足をする
剃り立ての頭(つぶり)を蠅に踏まれけり

はつ蝶の夫婦連れして来たりけり
初蝶のいきほひ猛(まう)に見ゆるかな
蝶見よや親子三人寝てくらす
むつましや生まれかはらば野辺の蝶
墨染の蝶もとぶなり秋の風

初蝉といへば小便したりけり
小坊主や袂(たもと)の中の蝉の声
蝉鳴くや山から見ゆる大坐敷
寒いぞよ軒の蜩唐がらし

蚤の迹(あと)数へながらに添乳(そへじ)かな

うつるとも花見虱(じらみ)ぞよしの山
形代に虱おぶせて流しけり

我が袖に一息つくや負け螢
行け螢手の鳴る方へなる方へ
手の皺が歩み悪(にく)いか初螢
大螢ゆらりゆらりと通りけり
辷つたをそれ見たかとや行く螢

人ありや更けて蚊叩く庭の月
昼の蚊やだまりこくつて後(うしろ)から
蚊の声に馴れてすやすや寝る子かな
年寄と見るや鳴く蚊も耳の際(きは)
むらの蚊の大寄合や軒の月

人喰ふた虻が乗るなり蓮の花
痩脛(やせずね)や凉めば虻に見込まるゝ

店先(たなさき)に釣し捨てたり袋蜘(ふくろぐも)

孑孒が天上するぞ三ヶの月
孑孒も御経の拍子とりにけり

たをやめの側へすりよる毛虫かな

蟻の道雲の峰よりつゞきけり

蟷螂(たうらう)や五分(ごぶ)の魂見よ見よと
蟷螂が片手かけたりつり鐘に

御仏の鼻の先にて屁ひり虫

蜂の巣のぶらり仁王の手首かな

みぞ(溝)川をおぶさつてとぶいなごかな

やあしばらく蛼(こおろぎ)だまれ初時雨
蛼が髭をかつぎて鳴きにけり

そば所と人はいふなり赤蜻蛉
蜻蛉(とんぼう)の尻でなぶるや角田(すみだ)川
遠山が目玉に映るとんぼかな
馬の耳ちよこちよこなぶるとんぼかな

蛬(きりぎりす )鳴くやつゞいて赤子泣く
蛬身を売られても鳴きにける
凉風や力一ぱいきりぎりす
寝返りをするぞそこのけ蛬
蛬きりきり死にもせざりけり

以上



















以上

# by 575fudemakase | 2024-03-18 13:28 | ブログ | Trackback

シュリンクフレーションという言葉  (高澤良一)

シュリンクフレーションという言葉  (高澤良一)
シュリンクフレーションという言葉  (高澤良一)_b0223579_05181977.jpeg
シュリンクフレーション(英語: shrinkflation)とは
小売りされる商品の価格は変わらないままその内容量がシュリンク(縮小)してゆく経済問題である。shrink(収縮)とinflation(インフレ)の合成語であり、インフレーションの形態の一つである。
実質的な値上げに消費者が気づきにくいことから、日本語では敵のレーダーに映らない戦闘機になぞらえてステルス値上げとも呼ばれる。

実にいまいましい経済の実態であるが、そんな言葉が大手を振って歩いているのが現状である。

情け無いことに、後期高齢者である私などは、煙に巻かれた浦島太郎である。貴方はどうですか❓

さう云へば、過日。こんな俳句に出合った。

虫の闇われにはわれの真暗闇  佐々木敏光
大枯野さまよふ後期高齢者   同

【参考】芭蕉が残した生前最後の句は
旅に病んで夢は枯野をかけ廻る

以上


# by 575fudemakase | 2024-03-13 05:15 | ブログ | Trackback

ザッピングzapping?きのう2024/03/10

ザッピングzapping?きのう2024/03/10

なんだろね。

関東北部春本番は何時(いつ)なのか
春を待つ昭和堅気(かたぎ)の唄歌ひ

室外機ぶるんと春場所始まれり

押っ付けて横から攻める佐田の海
顰めっ面しながら阿炎(あび)と対戦す
その目付き阿炎は蟹族然として
あのギョロ目阿炎は蟹族然として
小兵だが出足の動き美事なり
煮えくりかえる腸(はらわた)大事次は勝つ
我慢とは徹頭徹尾退(ひ)かぬこと
怪我持ちの力士のぐるぐる巻きほうたい
父超える話にも触れ大関談…琴ノ若
丸太ん棒王鵬はたかれつんのめる

以上

# by 575fudemakase | 2024-03-11 01:51 | ブログ | Trackback

書道 書・筆・墨・硯の俳句

書道 書・筆・墨・硯の俳句



書道の俳句

書道 書芸 習字 墨跡 墨痕 水茎の跡 みずぐき 筆跡
遺墨 書き振り 筆遣い 字配り 筆勢 筆鋒 筆力 筆法
運筆 用筆 書体 達筆 揮毫 筆を揮う 毛筆 朱筆 禿筆 墨汁 薄墨 朱墨 墨壺 硯箱


書の俳句


筆の俳句


墨の俳句


硯の俳句





以上


# by 575fudemakase | 2024-03-08 10:04 | ブログ | Trackback

しょどう

あたたかに良寛遺墨海展らけ 松村蒼石

お習字のはじまつてゐる椿かな 石田勝彦 秋興

お習字の濡れてゐる間のゑのころよ 波多野爽波

がん二字の墨痕星をまつりけり 中本柑風

きさらぎの山道見ゆる書道塾 廣瀬直人

ぐいぐいと筆法のびる大文字 きくちつねこ

ころころと兄の筆跡栗月夜 小檜山繁子

さくらのような薄墨の朝いつかくる 宇多喜代子

しだれ梅薄墨色の夜空より 大野林火 月魄集 昭和五十六年

しづるとき薄墨となる春の雪 岩坂満寿枝

ちはやぶる神の運筆雪間川 林翔

のこる蚊を追ふ校正の朱筆以て 山口誓子

ふくませて朱墨はかなし筆始 三浦恒礼子

ほととぎす鳴く音や古き硯箱  松尾芭蕉

ゆく秋や月の遺墨を掛け通し 荒井正隆

わが庭に来ませ薄墨初桜 稲畑汀子

庵主の禿筆を噛む試筆かな 村上鬼城

遺墨にも月日涼しく流れけり 辻口静夫

遺墨見て越後炉ばたの灰かぶる(越後、島崎に良寛遺跡を訪ふ)  細見綾子

遺墨見て風の椿の耳門辞す 宮武寒々 朱卓

遺墨展しぐれ呼ぶ灯に集ふかな 伊藤京子

遺墨展見て爽やかに鬼城の忌 山王堂正峰

一行の遺墨のごとく蟻の道 鷹羽狩行

一行の墨痕淋漓青嵐 鷹羽狩行

陰陽師 落花のつみを贖ふと未明のそらの薄墨の母 筑紫磐井 未定稿Σ

雨あしを薄墨いろに白牡丹 鷹羽狩行

雲の日の薄墨に花うすずみに 大橋敦子  

炎昼をこもり賜ひし朱筆かな 草間時彦 櫻山

牡丹や揮毫の書箋そのまゝに 杉田久女

加筆なほ気負ひの筆勢桜桃忌 奈良文夫

火の筆勢そのままに雪大文字 鷹羽狩行 八景

花に酌む鮮人あるは揮毫せる 森川暁水 

花の雲あれが薄墨桜とや 高野素十

蚊たたいて子規遺墨集一瞥す 阿波野青畝

蚊を叩き「墨汁一滴」よごしたり 阿波野青畝

戒名の筆跡の美さ雪や来る 渡邊水巴 富士

垣まで南瓜這わして習字教授とある其の隣 荻原井泉水

郭公薄墨時の遠音かな 完来

寒の鯉描く薄墨を塗りかさね 能村登四郎

寒菊や古風ののこる硯箱 榎本其角

寒食や薄墨流す西の空 会津八一

雁わたる薄墨使ひはじめの夜 原裕 新治

吉書揚金冬心に似し習字 阿波野青畝

空海の筆跡茅花流しかな 白澤良子

熊蝉に 妻の習字は小半時 伊丹三樹彦 一存在

硯箱に秋海棠の蒔繪哉 正岡子規 秋海棠

硯箱ふたよの月を見納めぬ 黒柳召波

見るうちに薄墨になる浸け障子 能村登四郎 菊塵

枯葉つけし桑と薄墨月信濃 古沢太穂 火雲

五月雨や硯箱なる番椒(唐辛子服部嵐雪

五月雨や硯箱なる蕃椒 嵐雪

後ろ手に点る薄墨桜かな 五島高資

御遺墨の一軸をもて炉を開く 河田たき子

御中元と書いて墨痕淋漓たり 日野草城

梧桐の実の房々と書道展 右城暮石 虻峠

光陰のやがて薄墨桜かな 宇佐美魚目

校正の朱筆や机辺暑をきざす 山口誓子

校正の朱筆擲つおぼろかな 星野麥丘人

紅さして筆鋒ほぐる曼珠沙華 上田五千石 森林

此頃は薄墨になりぬ百日白 正岡子規 百日紅

在原雛の調度の料紙硯箱 高橋淡路女 梶の葉

散る花のなほ薄墨になりきれず 坊城俊樹

四明忌や遺墨に穂麦たてまつる 星野空外

子規遺墨漱石遺墨冬ぬくし 後藤比奈夫

斯く在りと開く薄墨桜かな 阿波野青畝

時雨れて燦と八百年の筆力 加藤知世子 花寂び

鴫立て日は薄墨に暮にけり 尚白

実篤の禿筆親し合歓の花 岡田貞峰

朱印の上いきいきと冬の遺墨 飯田龍太

朱筆置き一誌安寧鳥曇 斉藤夏風

修二会待つ生駒信貴山薄墨に 岸野不三夫

秋澄むや楸邨遺墨雄渾に 伊東宏晃

秋蝉に墨痕著るき掛色紙 飯田蛇笏 椿花集

秋扇や薄墨滲む母の文字 岡田晏司子

習字して抑ふるものや水温む 田川飛旅子

十二月小筆の増えし硯箱 伊東一升

宿帳に禿筆舐めぬ灯取虫 松藤夏山 夏山句集

出羽薄墨めざめて人は爪を噛む 澁谷道

春寒や朱墨すり出す病羽音 渡邊白泉

春灯や朱墨の濃さもこゝろよく 日野草城

春雷や筆垂直に習字塾 赤松[けい] 白毫

初雁の空の薄墨流しかな 根岸善雄

初硯筆に朱墨を染ませけり 龍男

初仕事形見の朱筆とり出だし 星野立子

書けばすぐ悴みつつも筆力 加藤秋邨

書を校す朱筆春立つ思あり 柴田宵曲

書初の筆力今を盛りとす 矢田挿雲

書初や筆勢勁き福一字 青木愛子

書初や父となる子の筆力 小林綾子

書初や父の遺愛の硯箱 萩原まさえ

書道塾出る子入る子に玉霰 福田甲子雄

書道部が墨擦つてゐる雨水かな 大串 

衝立の遺墨の虎や仙忌 小原菁々子

神棚の習字に盆の夕日さす 福田甲子雄

水仙に蒔絵はいやし硯箱 正岡子規

水仙に蒔繪はいやし硯箱 正岡子規 水仙

水仙花校了の朱筆おきにけり 渡邊水巴 富士

数へ日や乾ききつたる硯箱 鈴木真砂女 紫木蓮

雛の間にいつまでも黒硯箱 鷹羽狩行

西方へ灯る薄墨桜かな 角川春樹

青年の気宇の書体や夏見舞 東郷喜久子

雪の野に拾ふ薄墨羽毛なり 古賀まり子 緑の野以後

舌鋒にまさる筆鋒 沙羅の花 伊丹三樹彦

先生の夏羽織脱く揮毫哉 正岡子規 夏羽織

宣長の朱筆露けし古事記伝 長谷川史郊

川砂の薄墨いろに鳥の恋 飯島晴子

喪ごころの薄墨ふかめ秋の暮 能村登四郎

掃きよせし花屑もまた薄墨よ 近藤一鴻

草稿に朱筆一点春立てり 加藤耕子

大き師の遺墨にまみゆ福寿草 佐藤いね子

大道に書道する者片かげり 阿波野青畝

大文字の筆勢生かす残雪よ 鷹羽狩行

滝殿のしぶきや料紙硯箱 正岡子規 滝

丹頂に薄墨色の雪降り来 西嶋あさ子

短日や書体父より祖父に似る 廣瀬直人

猪鍋や薄墨色に外暮れて 遠藤正年

冬の墓「忙書体(そうばうしょたい)」を移したり 中村草田男

禿筆は 他人無用の 白椿 伊丹三樹彦

禿筆を束ね捨てけり秋の蝉 波多野爽波 『骰子』

禿筆を塚に築きて梅の花 正岡子規 梅

南無の背の墨痕滲み梅雨遍路 中村冬星

二分咲きの実は薄墨桜かな 能村登四郎

日曜は習字の寺や岩たばこ 青木重行

熱帯魚まこと墨痕淋漓たり 西本一都 景色

年行くや耳掻光る硯箱 普羅

年初め子の運筆を凝視む母 小原菁々子

派をなして薄墨すすきと言ふべかり 齋藤玄 『雁道』

梅雨・遺墨柱時計はいまの刻 大野林火 方円集 昭和五十一年

白地着て揮毫の構くづされず  阿波野青畝

白地着て揮毫の構べくづされず 阿波野青畝

薄墨がひろがり寒の鯉うかぶ 能村登四郎 有為の山

薄墨てかいた様なり春の月 正岡子規 春の月

薄墨で描かれし夏の蕨かな 佐竹 たか

薄墨にしくるゝ山の姿哉 正岡子規 時雨

薄墨に散りてこの世のさくらならず 大野林火 飛花集 昭和四十八年

薄墨に書きゐて春の風邪ごこち 八染藍子

薄墨のさくららしくて遅れ咲く 能村登四郎

薄墨のたよりなき色や懸想文 村上鬼城

薄墨のどこか朱をひく亥の子餅 有馬朗人 立志

薄墨のにじむを華と三ケ日 鳥居美智子

薄墨のひまの紺青しぐれ空 富安風生

薄墨のやつれや松の秋時雨 支考

薄墨の雨は降れども若葉かな 京極杞陽 くくたち下巻

薄墨の雨雲低し青薄 巌谷小波

薄墨の花に通ひてゐし心 稲畑汀子 汀子第二句集

薄墨の花の下臥恋ひて来ぬ 下村梅子

薄墨の花の齢にことよせむ 大橋敦子  玉以後

薄墨の花より淡く風花す 稲岡長

薄墨の会津ぐもりに木守柿 徳田千鶴子

薄墨の空を離れずつばめ鳴く 廣瀬直人 帰路

薄墨の桜まぼろしならず散る 田畑美穂女

薄墨の山河をひろげ初衣桁 檜紀代

薄墨の汐こそきたれ夕すゞみ 完来

薄墨の祖母と木槿の道に遭ふ 有住洋子

薄墨の大幕雷太鼓鳴る 林翔

薄墨の仲に夕顔つぼみけり 橋閒石 卯

薄墨の冬よ笑窪の子を連れて 原裕 青垣

薄墨は花に霞の夕哉 正岡子規 霞

薄墨桜 きれいな嘘を下さいな 松本恭子 檸檬の街で

薄墨桜ことし谺の棲むことも 諸角せつ子

薄墨桜逢ひ得たりあまごに酒一盞  福田蓼汀

箱書に父の筆跡雛飾り 加藤耕子

飛び散つて蝌蚪の墨痕淋漓たり 野見山朱鳥 曼珠沙華

飛び敗つて蝌蚪の墨痕淋漓たり 野見山朱鳥

筆勢の机はなれやとしの暮 三宅嘯山

筆勢の声となりゆく墓の秋 岡本眸

筆勢の余りて切れし大文字 岡本眸

筆跡を人うたがふや貞徳忌 岡安青波

筆鋒を誰に向けんか旱星 上田五千石『天路』補遺

筆力も抜けて火燵の寫し物 会津八一

百合遺墨気多の海の歌匂ふなり 能村登四郎

百年の露けさ笹の朱墨にも 藤浦昭代

病床に鉛筆朱筆秋うちは 百合山羽公 樂土以後

浜木綿や父を墨痕ながれたり 宇多喜代子

父の筆勢減ぜし刻字燕来ぬ 香西照雄 対話

蕪村忌や軸の墨痕梅が香に 赤尾兜子 稚年記

文机と硯箱のみ葭障子 経谷 一二三

墨痕に父の温みや花曇り 水原春郎

墨痕のいづれ身に沁むものばかり 上田五千石『天路』補遺

墨痕の隆々として古扇 石田勝彦 秋興以後

墨痕を淋漓のままに古屏風 鷹羽狩行

墨汁のかわく芭蕉の巻葉かな 正岡子規 芭蕉の巻葉

墨汁のごとき川見て福詣 福永耕二

墨汁も筆も氷りぬ書を讀まん 正岡子規 凍る

墨汁をぶつかけしさま焚火消す 阿波野青畝

墨壺の糸ぴんぴんと山眠る 長谷川双魚 『ひとつとや』

墨壺や大工の覗く梅の花 怒風

抹殺の朱筆をおきてさわやかに 三橋鷹女

万緑や揮毫の全紙老を乗せ 赤松[ケイ]

満関の花の薄墨暮れにけり 渡邊千枝子

夢に書く墨痕淋漓屏風 山口青邨

椋鳥過ぎて薄墨いろのながれけり 古舘曹人 樹下石上

唯一の父の遺墨も黴の頃 林翔

夕影を曳く薄墨の花に又 稲畑汀子 汀子第二句集

夕永くなりぬ堆朱の硯箱 大野林火 方円集 昭和四十九年

用始禿筆を噛む小吏かな 村上鬼城

落款の丹の冴え冴えと遺墨あり 上田五千石『天路』補遺

旅に見る父の遺墨や露の秋 大橋敦子  

丼の墨汁灼けて葬終る 田口珂那

橙の花入れてある硯箱 岡本清子

祗王寺の今昔薄墨椿咲く 山田弘子

芒描く薄墨さらにうすめつつ 能村登四郎

藪入や父が遺愛の硯箱 沼澤石次

蝙蝠や薄墨にしむふしの山 正岡子規 蝙蝠

鯊の宿薄墨色に鷺わたる 高橋馬相 秋山越

鰆舟薄墨に陸暮れゆけり 根岸善雄

鵙鳴くや朱筆のしるき破戒の稿 羽田岳水

鵯鳴くや筆勢強き久女の書 里坂紫陽子

黐咲いて久女の遺墨蔵す寺 能村登四郎


以上


# by 575fudemakase | 2024-03-08 09:38 | ブログ | Trackback


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
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例1 残暑 の例句を調べる

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いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
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[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

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いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
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[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

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