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深川淑枝句集「海市」

深川淑枝句集「海市」

第三句集 文学の森 平成25年7月13日

ご恵贈深謝

句集名はおそらく
海市消え沖にさびしき空戻る
から採った模様。

帯にもう一句
夢覚めしとき向き変へて浮寝鳥
がある

通底しているトーンは著者が後書きで述べているごとく
後期高齢者の心境ということか?

著者の年齢は小生よりも二歳年上の姉さん俳人。
俳歴は「菜殻火」「春燈」「地平」「青嶺」「白桃」とある。
道理で句に無駄弾が無い。

徹底した写生眼が真骨とお見受けした。
写生よきかなである。

           高澤良一・抽

初詣飾焚き場に鈴転げ
野遊びに日暮の近き水の音
鰓に指入れて魚提げ暮の春
山の気の抜けし流木鳥帰る
朝涼や白粥へ匙深く入れ
少年の水たたく棒夏兆す
アイガーに長き夕映え藤寝椅子
明易し氷河に音のなき流れ
唾つけておくくるぶしの芒傷
冬隣日をたくはへて鶏まろし
鑑真の渡海の絵巻身に入めり
年の瀬の頭上からくり時計鳴る
水餅の息して濁す甕の水
読み残し消す灯や夜の雪しんしん
船窓に波の汚れや年詰る
蝦夷春蝉倒木白く湖の底
磯に寄すちぎれ若布や良寛忌
とどまるに使ふ蹼春の鴨
降りなんと春鴨赤き脚揃へ
島畑に藻を鋤き込みてよなぐもり
にはとりの爪青ばみて落花踏む
アカシヤの花房みじか津軽富士
柿若葉まぶしく喪服たたみ終ふ
火が通り身の反る鮎や山暮るる
あと味の煙のやうな麦こがし
川を打つ雨脚白き祭かな
川狩や草を掴みて川あがる
揚げられて陸に老いたる藻刈舟
草笛や雲より大き雲の影
流れつつまだ粗組の鷹柱
澄む水の堰落ちてまた澄みにけり
湯が沸いて小鳥来てゐる戸口かな
出立に柩は舟や天の川
八月や遺影の視野に飯を食ふ
いもうとが消え草そよぐ秋の山
灘風や生きてゐる木を稲架にして
風垣を飛砂打つ一向宗の村
ふるさとを加賀とせし父母雪降れり
壜に挿す草に根が伸び風邪心地
まだ水の通ふ切株百千鳥
草や木の芽ばかり食うべ坊泊
烏賊船は昼の眠りや葱坊主
くらやみへ波返りゆく火取虫
草刈の鎌ごと婆の背に組む手
蛸壺の海底の砂こぼしたる
馬槽(うまふね)にはぐれ蛍の来てをりぬ
山ひとつ越せば国出るさるをがせ
氷塊を祭の中に運び込む
法螺貝の内側赤き山開
もののみな遠き真昼や暑気中り
夾竹桃白も炎のいろ爆心地
晩稲干す匂ひの中の道祖神
貝割菜まだ種殻のついてゐし
精霊会閻魔のまへの皿秤
秋風に似し浄瑠璃のさはりかな
落葉みな木の根に寄せて掃き納む
いくつもの嶺経し朝日寒卵
谺にもこだまが返り猟期くる
ひと雨のまた軒を打つ針供養
石段を波甘く噛む松納
にはとりの水噛んで呑む日永かな
藻畳の上すべる水祭来る
目の上に鶏冠(とさか)の倒れ羽抜鶏
桃の木の脂透きとほる夏の風邪
父の日や抜いて熱かり錆の釘
熱帯魚のうしろ歪んで人通る
落石に屋根の痩せゆく狭霧かな
とりかぶと山国は雲間近にす
蕎麦の花雲の行く手に千曲川
とんぼ放し少しべたつく指残る
吊るすたび薄る地獄絵初閻魔
念仏の端は山籟初観音
身を折れば帯きしみたる朧かな
海女小屋に母座のありぬ桃の花
船降りるとき鈴鳴れる遍路かな
蜃気楼からゆきさんの船が見ゆ
亀鳴くや彼方にも寝ね遅れし灯
火の通り白魚白くくもりたる
梧桐に揺すられて空青かりし
百物語らふそく消ゆるたび匂ふ
かき氷崩して風にふくらむ木
夕空のえごの花まで降りて来し
栗落す棹栗の木に立てかけて
踏みくぼむ畳や遠き敗戦忌
縦列にあはひ淋しき渡り鳥
船に水積むや秋燕高かりし
肩掛けをして海女の来し朝の彌撒
繰り細りせしロザリオの冷まじき
冬銀河潮の香ほのと島の井戸
山葵田の石畝雪の降りしきる
伊良湖岬日矢をくぐりて海鼠舟
公魚釣帰り釣穴また凍る
木枯のぶつかる磨崖仏の胸
初雪や木賊で磨くこけしの頭
泉湧く降る雪ほどの音たてて
若水を飲みたての声交はしけり
水を行くやうに空ゆく木の葉かな
風ことと鮃に隠し包丁す
木菟の鳴くたび米櫃の米の減る
遙かまで海の平らや大根干す
赤海鼠前世に手足忘れきし
防風掘帰りしばらくして暮るる
雄鶏の首立て歩む朝ざくら
鋸変へし木挽の音や水温む
山寺や短き畝に三月菜
春昼や歯のなまりたるおろし金
島に来て向き変ふ潮路鳥帰る

なお この方の前句集に下記がある

風吹けばまたはじめからつくつくし
切株に鋸の休み目百千鳥

以上
by 575fudemakase | 2013-07-19 11:58 | 句集評など | Trackback


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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