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俳句で綴る変哲半生記(第三章)

俳句で綴る変哲半生記(第三章)

小沢昭一 岩波書店 平成二十四年十二月

先づは、端書きより

今で詠んだ句を集めましたら、およそ四千にもなり
ました。改めて眺めてみますと、どの句にも「自分」
というものがチラチラ出ているように思えます。
特に「駄句」にこそ私らしさが現れておりますので、
あれこれ選ばず、恥ずかしながら詠んだ句全てを載
せさせていただきました。まさに、これも私メの半
生記と申せましょう


第一章 俳句を知り初めしころ(昭和44年~53年)
第二章 句友がいれば、苦吟もまたたのし(昭和54年~63年)
第三章 駄句への愛着、迷句へのこだわり(平成元年~10年)
第四章 句縁で結ばれ、豊かな後半生(平成11年~24年)

以降は

第三章 駄句への愛着、迷句へのこだわり(平成元年~10年)
よりの小生(高澤良一)の共鳴句
()内は小生のつぶやき。

毬拾うにわか良寛にて暮るる
ふんどしと俺と昭和と厄おとし
いまさらに吾が身いとしき初湯かな
剪定の音の途絶えて昼餉らし
放り出すバナナの包み父帰館
放歌高吟酔漢バナナしかと抱く
まみどりの田をまっ二つつばくらめ
湯上りにはや整いし夏料理
川向うだけ夕焼けて暮れにけり
短夜の他人の家のにほひかな
酔うて梨しずくものかはかぶりつく
山あいの陽ざし短かし吊し柿
熱燗に仕事を了えし機嫌かな
湯気立ててある奥の間に金庫あり

壇の浦見下ろす丘や椿落つ
海澄みて底まで冬日さしこめる
冬凪やいみじきものの流れ寄る
雨降りてやさしき春に包まるる
なにはさて春は分葱のぬたの色
うとうとと観る小津映画春炬燵
遅き日の帰宅まぎわの立ばなし
春の灯のゆらいでやがて眠りけり
小流れに小魚速く夏来る
蛞蝓やしばらくはかぬ庭の下駄
裸電球すももひと山売れ残る
失敬という挨拶や夏帽子
父の日の父のびんぼうゆすりかな
浜木綿や漁業組合残業らし
冷房をいとう恩給ぐらしかな
暑気ばらいですと昼より酩酊す
かき氷ブリキの匙の舐め心地
花野とは遠く眺めて花野なり
出稽古にゆく曇り日の秋袷
美術館の搬入口や蔦紅葉
あんたがたどこさひごさの小春かな
八千代座のうわさ浅漬手に受けて
備長で焼く無愛想の主かな

雪かきの道をきかれて一服す
裏木戸へまわっても留守青木の実
立腹の酒や目刺しを食いちぎる
握れば以外葱坊主ひんやりと
気をつけのまま風にゆれ葱坊主
春暮るる今宵はヨハンシュトラウス
蜃気楼の話などして薬売り
むきだしの命はねたり青がえる
けたたましく中華民国夏に入る
ビールあり世話女房あり夜風あり
まずは下駄つっかけて出る避暑地かな
俺見えぬあたし見えたの流れ星
秋めいてビル半分にビルの影
下駄屋店じまいして柳散る
ポケットにあった去年の木の実かな
熱燗にしろと小言のあるらしく
貞吉ではねて上野の初時雨
餅をつく養護学級にぎやかに
ざんぶりと湯のあふれ出て除夜の鐘
ストーブに旅の楽屋の阿弥陀くじ
炭つぎてまァ休んでけや食いなんしょ
暫時柝の途絶えて夜番何をせし?

探梅の客へ和尚の注意書き
水洟の釣り銭手間がかかりけり
白足袋やお日和もよく出開帳
試験もう終ったらしきギターかな
春潮に散りゆく岩の虫あまた
たんぽぽや飛行機雲の野に立ちて
春寒やここまでくればひと我慢
起伏ある町小石川春の虹
朝凪の浜をしわの手組む二人
潮焼や腰で結んだアロハシャツ
ほのるるの夜涼の月の明澄に
直江津の一直線の浜や夏
打ち水や平次が謎をとく時分
汗をふくとき人はみな好人物
蛍とびそうな今宵よ鍬洗う
水羊かん結局はなし切り出せず
炎天下第一京浜炎上す
休暇明けことあたらしき雲と風
南瓜煮ておいたからネと母子家庭
庭掃けば昨夕(ゆうべ)来た子の花火くず
口にふたする仕草して秋扇
末枯や夫婦っきりのちんどん屋
小春日や動物園のうらの道
藪入りの六区デン助、不二、大江
熱海より芸妓来ていて初芝居

散髪はまたの日にして雪もよい
焼きうどんつくる留守居や雪もよい
咳ばらいしてあらわれる主人(あるじ)かな
ついぞ見ぬ猫も来ていて軒の恋
臼のごとおはす余寒の首ぼとけ
燕来てほほえみ給う磨崖仏
とある夜にもずくで酒をなめにけり
上着ぬぐ時ひとひらの落花かな
手拭をかぶる意気ごみ大掃除
バイエルのもれくる薔薇の垣根かな
穫れすぎのいかの噂や佐渡暑し
踊りの娘ひとり選びて目で追いぬ
骨と皮背広着ていて伯父涼し
道具屋のよろいかぶとや志ん生忌
買い食いの子供こころに月の道
くるみ割る人それぞれの手つきかな
靴下ではく庭下駄や落葉焚き
書初めや嫌な野郎の見事な字
横浜の坂やまもなくクリスマス
寒夕焼馬のにほひの根岸かな
元日という日も暮れてゆきにけり

カーラジオ八代亜紀なりみぞれ降る
虎造を寝てイヤーホーン春の風邪
寝不足をむうっと包む朝曇り
両国に草履の音や風薫る
浮人形ゆうべのままの風呂の水
夏の雨西の雲間に陽はさんさん
新涼や額かけ替えてモジリアニ
遅き湯にひたれば遠き虫しぐれ
風あればななめななめに秋の蝶
いちど手に包みて桃はむくがよし
たこ焼をほおばっていて流れ星
迷いとんぼガラスを上下して死せり
車窓一瞬幟の見えて秋祭
夕刊を簑傘にして初時雨
ごみ捨てに出ればカラカラ落葉の夜
どんとどんとむかし藤原波を越え
散る木の葉散らぬ木の葉もやがて散る
寒風やはずれ馬券の野毛通り
馬車道の秘薬売る店寒灯し
どうらんの堅さ冬至の楽屋かな

寒釣や同じ顔ぶれ同じ場所
寒釣の餌かえてみて小半日
束髪に椿の表紙「主婦の友」
寮長の意外に取るや歌留多とり
梅匂う農家のぞきて吠えらるる
汐干狩熊手にすがり子は帰る
ブリーフに収まりよき日春ぞ行く
(ブリーフのところがパンツだったら駄目である
股間にピッタリとくるのはブリーフ この肌感覚
が眼目 収まりよきとは男の一物であろうか?)
山吹や鉄砲の音ポンの音
人はみな食って生きてる夏の雲
蛍の背べんがらの赤炭の黒
お岩でて貞山の脱ぐ夏羽織
スター居て付人の居て日傘かな
トマト煮てワイフ突然カンツォーネ
足で足掻いて昼寝の覚め心地
昼寝さめさてもう一仕事する背伸び
流燈の明くれば堰に無残なり
かくなればかくなるものよ秋の蝉
駅裏に咳こむひげの易者かな
防火用水まだ残る町秋の暮
へへのののしかと見守る実りかな
冬の朝遅刻しそうな子の走る
肉まんの湯気立つ角に人を待つ
爆音の聞こえるエイの姿かな
伝法な口も羽子板市の華
かさぶたのある子凧揚げ上手な子
新年はけだし心のなかのこと
雪は朝おどろくことを佳しとする
如月の星刺してくる夜道かな
菱餅の菱の先より反りかえる
逃げ水の逃げる彼方の鎮守かな
二浪して草笛吹いていたりける
短夜やどこか近所へ救急車
糸とんぼ帆かけてつるむ葉末かな
手花火をするお屋敷のパジャマの子
彼岸花よくも彼岸にあわせ咲く
腹ばいに見る小津映画秋めく夜
虫の音に寄れば鳴き止み去れば鳴く
一望の刈田にまろぶ犬二匹
それぞれの窓それぞれの秋の灯よ
児の靴の片っぽ落ちていて野菊
いつもよりゆっくり歩む秋深し
ロッパ観てホットケーキの日比谷かな
年暮るる猫つくづくと見てやがる
*お嬢さまお入ンなさいの声うらら
*セーターはお古メンコの強い奴
*年問えば手袋ぬぎて指出す子
*背で囲み背で話し合う焚火かな
(*かような句は何を意味するか?
谷内六郎的世界 即ち 六郎メルヘンの再現である)

*本郷の市場たいやき買う教授
*水洟や万年筆(ペン)修理する腕カバー
*如月やぱったり顔を見ぬ易者
*仕立物とりに蜆の路地を踏む
*事務服のバドミントンや春めく日
(*かような句は何を意味するか?
昭和風俗の博物館への収集である)
野遊びや次男の嫁になるひとも
(極めて個人的事情をも俳句と為す
これ小沢昭一的世界)
両国の髷の匂いに夏来る
西空へ向って泳ぐ鯉のぼり
夕立ちのあがりし町の匂いかな
あじさいの供えてありし無縁墓
江ノ電の踏切りわたる夏の蝶
うな丼や親父の馴染みだった店
遠出したばかりに蚯蚓干からびる
勝鬨をわたる都の雲の峰
手花火や算盤塾の角あたり
ふるさとで着る横綱のアロハシャツ
下駄といふ有難きもの夕涼み
(一句一句に一味加えてあるという感じ
この手間が後味となって読み手を魅了する)
夕立ちや小言もにぎる江戸かたぎ
短夜やウクレレの弦切れしまま
裏路地へ日傘で顔を隠すひと
昼顔や隣家の下手なバイオリン
枯蔦のはう窓からのマンドリン
おでん屋の同じ顔ぶれ同じ席
悠久のなかのひと日の初み空
いっぱしに鎌ふりあげて子かまきり
たきびの輪老棟梁の朝の指示
寄せる波あれば引く波去年今年
網干してあるだけの島小春かな
餅花の上(かみ)に昭和の両陛下
吉良の忌やうまい役者が吉良の役
商談のまとまる鍋の機嫌かな
寒き夜の舌ににぎりのぬくみかな
雪女郎とけて流れて三島まで
(以前にこの様に詠ったのは白隠)
陸送の噂峠の雪女郎
(天声人語のようなものなら昭一俳句は
いくらでも挟み込めそう)
ねんねこのなかパッチリと上眼かな
岩のりに仄かに海の甘みかな
あぶく銭使い果たして冴返る
タテのカギ二つわからず春の風邪
白きもの見えがくれして遍路みち
春雨の谷中の墓地の匂いかな
すかんぽやバスにぬかれる万歩計
天衣無縫おたまじゃくしの丸い口
若き日の下宿仲間やパリー祭
炎天下現場検証裸女腐乱
(かように 妄想も超一流)
地下鉄を出れば炎天襲いくる
風鈴はたまに小さく鳴るがよき
百円ライター造る工場や夾竹桃
杵屋某の表札ありて百日紅
まずおらが食うだべおらの今年米
寒き朝痴呆の母は薄着にて
その場しのぎに生きてきてまた師走
相談をしてる兎の鼻と鼻
酢なまこやのれんを入れた後の酒
懐手して棟梁の鋭き目
(かように人物描写の眼も鋭い)
小津映画流るるままに寝正月
席ぱっと立ってゆずる子春隣
口笛の透る夜道や冬めける
水洟やひとりの方が好きな俺

*****************

変哲句に詠まれる句の人物、情景が多彩、
躍動しているのは、ひとえにラジオトーク
演劇 放浪芸などをこなす小沢個人の大衆
との接点の多彩さを反映するもの
by 575fudemakase | 2013-07-26 08:14 | 句集評など | Trackback


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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