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卯月

卯月

例句を挙げる。

あいまいな空に不満の五月かな 中澤敬子
いくつもの扉開け聖母に五月青し 津田清子 礼 拝
いつぴきの山羊と五月の雲がある 岸風三楼 往来
いはれなくけふ頸燃えて五月逝く 藤田湘子
うす~と窓に日のさす五月かな 正岡子規
うなじ吹く風に醒めをり五月来ぬ 堀口星眠 営巣期
えにしだの黄にむせびたる五月かな 久保田万太郎 流寓抄
かぎりなく背鰭の黒い五月かな 津沢マサ子 楕円の昼
かもめ五月の波寒ければ沖へ去る 中拓夫
ぎざぎざの石槌山に五月来る 綿利信子
くらがりに一線白し五月潮 阿部みどり女
さびしろの五月骨片めく貝よ 野澤節子 黄 炎
さみしくて背ばかり伸びし子の五月 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
さやさやと夜も水ひかる五月かな 上村占魚 『かのえさる』
しなめきて五月の葛の伸びはじめ 松村蒼石 春霰
すこやかな固さに五月玉菜なり 上田五千石 風景
その映画見忘れまじく五月川 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
たまたまに三日月拝む五月哉 向井去来
つつじ白くて長いしべの五月をよしとす 荻原井泉水
てのひらに砂を平して五月処女 山口誓子
とぎ屋来て村の五月の簷下に 長谷川素逝 村
どよめきから部隊をもつて行くレールの鐵錆も五月 橋本夢道
なによりも犬が鳴く五月五日かな 橋石 和栲
なんだつてできる気がする五月かな 森田美智子
にはとりのつまりしこゑや五月冷ゆ(旅先にて斎藤玄の訃に接す) 岸田稚魚 『萩供養』
ぬか星の日和呼出す五月かな 水田正秀
ねばならぬもののみ増えて五月尽 加藤瑠璃子
はねつるべ太虚に跳ねて五月の村 成田千空 地霊
ばら五月わが誕生日その中に 矢田部芙美
ばら五月女に彩を著る楽しさ 大橋敦子
ひつそりと並ぶ五月の火鉢かな 大木あまり 火球
ぼうたんに五月の真日の照り映ゆる 鈴鹿野風呂 浜木綿
また楽し友遠方の五月文 横光利一(1898-1947)
まつすぐに人見る男児五月雛 中村草田男
まづ船に旅の幸えし五月かな 久保田万太郎 流寓抄
みどり子の頬突く五月の波止場にて 西東三鬼(1900-62)
もの憂きは五月半ばの杣の顔 飯田龍太
わがつけし傷に樹脂噴く五月来ぬ 木下夕爾
わが五月老楽の飛白着て行かな 山口草堂
わけもなく隅田川好き五月好き 成瀬正とし 星月夜
われを離れわが杖立てる五月かな 高橋睦郎 荒童鈔
をちの灯のさしてゐるなり五月川 銀漢 吉岡禅寺洞
をとめ子のやうな五月の風の肌 上村占魚 『方眼』
アカハタと葱置くベツド五月来る 寺山修司 未刊行初期作品
アメリカの牧草とどく聖五月 大島民郎
アルミの音五月野の雲二た重ね 中村草田男
オリーブの木のみな斜め五月来る 大石雄鬼
ガラス絵の空は五月かまこと青 文挟夫佐恵 黄 瀬
コンクリートにインク乾ける五月憂し 上野さち子
シャガールの飛天の男女五月来る 嶋田麻紀
セロリ棒はりはり齧り五月来る 石川文子
セーラー服白のきはまる五月かな 谷口桂子
タイピストすきとほる手をもつ五月 片山桃史 北方兵團
ダミア美し黒きサテンの五月かな 今泉貞鳳
ナースらの爪先走り聖五月 村越化石
バイブルに若き日の朱線聖五月 沼山虹雨
バースデイケーキをりから聖五月 大島民郎
ビニール袋に魚と太陽五月来ぬ 高井北杜
ビラ百枚貼りおわりたり五月の朝 古沢太穂 古沢太穂句集
ピンポン球脣紅のこる五月来ぬ 宮武寒々 朱卓
マイン五月妻争ひの鴨のゐて 関森勝夫
モデイリアーニの女五月の水あかり 藤岡筑邨
リラの花卓のうへに匂ふさへ五月はかなし汝に会はずして 木俣修
レーニンの伏字無き書に五月の風 赤城さかえ
一家連れ五月五日の海渡る 倉田しげる
一山に秘めたる祭り五月来る 石原林々
一神事五月の風を奉る 高木石子
乙女合唱絶えずきららに五月の日 中村草田男
九州に入りて五月のジャボンかな 子規句集 虚子・碧梧桐選
乾きたるタオルの粗き五月来る 原田青児
二人ゆく五月の路や水近し 長谷川かな女 雨 月
五月 石橋をくぐり黒ずむ花あやめ 宇多喜代子
五月、金貨漾ふ帝王切開 加藤郁乎
五月いま噴くはおとこを励ます木 谷口亜岐夫
五月かな合抱の杉の群列色新た 橋本夢道 無類の妻
五月かな地玉子を吾がたなごころ 村越化石
五月きて若者のしぶきとしずく 江里昭彦 ロマンチック・ラブ・イデオ口ギー
五月きぬビルは真白き艦のごと 金尾梅の門
五月このユークリッドの木を起し 加藤郁乎 球体感覚
五月すでに父と子裸麦育つ 中島斌男
五月とよ口中に満つ酸さ甘さ 加倉井秋を
五月なむ花を撒きゆく空中溺死 折笠美秋 虎嘯記
五月なりよく働く手よく洗ひ 清水武を
五月なる千五百産屋のーつなれど 中村草田男
五月には五月の色の紬織る 吉本渚男
五月のとんぼモーツァルトがきこえて来そう 八木原祐計
五月の噴水にふれこの刻もう還らず 寺田京子 日の鷹
五月の地たしかに杖に応へあり 村越化石
五月の地荒蹴る鶏の炎とならめ 村越化石 山國抄
五月の夕暮大きな路の見ゆる 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
五月の夜未来ある身の髪匂う 鈴木六林男
五月の夜給水塔に水満たす 沢木欣一
五月の微風愉しきときは眼をつぶる 内藤吐天 鳴海抄
五月の日眩しとなみだ溢るるか 西島麦南
五月の朝空すいすいと草のみどりが垂れる 人間を彫る 大橋裸木
五月の槻劃す野空へ望放つ 香西照雄 対話
五月の港湾頸に人夫が日の環を享く 磯貝碧蹄館 握手
五月の空を四分さぐる観覧車 横山白虹
五月の蝶消えたる虚空修司の忌 新谷ひろし
五月の陽が手玉網覗く子の顔して 磯貝碧蹄館 握手
五月の雨岩ひばの緑いつまでぞ 芭蕉
五月の電線うしろへ走らす郵便夫 磯貝碧蹄館 握手
五月の風蕗の若葉の崖を吹く 瀧春一 菜園
五月はや沼の上くる風にほふ 長谷川素逝 村
五月はや舳にはやる夜光虫 佐野まもる 海郷
五月もの憂しなかんづく修司の忌 遠藤若狭男
五月よしリフトの迅さ身に感じ 片山桃史 北方兵團
五月より六月にかけ満洲へ 京極杞陽 くくたち下巻
五月わが桃色の肌いくとせぶり 赤城さかえ句集
五月を歩く恋とは別の話して 河草之介
五月一日ジエットコースターは青空へ 大森理恵
五月万歳「飴の中から金太さんが出たよ」 磯貝碧蹄館 握手
五月乙女の笠の咫尺に青朝日 竹下しづの女句文集 昭和二十三年
五月乙女の笠昏きまで青朝日 竹下しづの女句文集 昭和二十三年
五月人形殺という文字見ぬ日なし 田川飛旅子 花文字
五月人形見せて貰ひてすぐに発つ 鈴鹿野風呂 浜木綿
五月佳し水仕すゝんでつかさどる 篠田悌二郎 風雪前
五月冷ゆ薬師瑠璃光王の前 神尾久美子 桐の木
五月堅肉背丈の棕梠も花もちて 古沢太穂 古沢太穂句集
五月夜空叉光敵機を放たざる 林原耒井 蜩
五月太陽と小松の林傾き 中塚一碧樓
五月好き札幌が好きライラック 松尾 美子
五月孕女神の子を産む凍筵 関森勝夫
五月尽みのむし庵の竹びさし 柴田白葉女
五月尽ものぐさ癖のぬる朝湯 永井龍男
五月尽旅はせずとも髪汚る 中嶋秀子
五月山月出て鴉啼きしづむ 飯田蛇笏 椿花集
五月微風ミルクの膜の舌ざはり 秋元不死男
五月憂し子うさぎ抱きて旅せむか 所山花
五月憂し悲劇独白剣を手に 野見山朱鳥
五月暑し三潭印月影持たず 関森勝夫
五月朔日初花なりし時計草 滝 春一
五月来て困ってしまう甘納豆 坪内稔典
五月来て白鳥橋を渡りけり 小西 昭夫
五月来にけり夜を人ごゑにそうて風 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
五月来ぬアカシヤの蜜麺麭に塗り 鈴木栄子
五月来ぬ岩魚の錆も磨かれて 小林黒石礁
五月来ぬ心ひらけし五月来ぬ 星野立子
五月来ぬ指美しくなり始め 毛塚静枝
五月来ぬ樹々の輪郭濃くなりて 米澤吾亦紅
五月来ぬ水田黒土光噴き 相馬遷子 山国
五月来ぬ水田黒畑光噴き 相馬遷子
五月来ぬ潮の青きにのりて来ぬ 藤木清子
五月来ぬ窓に木の影鳥の影 福永みち子
五月来ぬ肩組むことを吾子もする 加倉井秋を 午後の窓
五月来ぬ艇に真白き潮見表 野島抒生
五月来ぬ言問橋の向ふより 今井杏太郎
五月来よ馬のまわりに地の窪み 宇多喜代子
五月来るホームの端より鳩放ち 桜井博道 海上
五月来る伊豆に万次郎岳万三郎岳 原田青児
五月来る朝日半円に土管の影 古沢太穂 古沢太穂句集
五月来る運河にギター沈みゐて 皆吉司
五月果つ夜明の雨を別れとは 皆川白陀
五月海女さらさらまとふ白木綿 下田稔
五月海女三鬼おそれし乳房揺れ 豊田養之祐
五月濯ぐよ死ぬまで海を知らざる母 磯貝碧蹄館 握手
五月灯台無韻青年崖にいて 和知喜八 同齢
五月照るや落葉松籬樅籬 村越化石 山國抄
五月片面講和発効して皆敵と味方の如し 橋本夢道 無禮なる妻抄
五月白嶺恋ひ近づけば嶺も寄る 橋本多佳子
五月礼讃天へ手を挙ぐ童子像 大橋敦子 匂 玉
五月祭の汗の青年病むわれは火のごとき孤独もちてへだたる 塚本邦雄
五月祭サンチヨパンサの科白拙 木村蕪城
五月祭緑のペンキすぐなくなる 田川飛旅子
五月空片かざしなる椎大樹 八木林之介 青霞集
五月空真白くのぞき木曽の駒嶽 橋本多佳子
五月野に黄のにじめるは日当れる 宮津昭彦
五月野の露は一樹の下にあり 草田男
五月野やすれ違ひしはわが少年 野崎憲子
五月青し硝子の部屋に光堂 原田青児
五月音(さつきね)に我が蓑虫や母恋し 服部嵐雪
五月鬱琴高音で走り出す 河野多希女 こころの鷹
五月鳶啼くや端山の友くもり 野坡
五月鴎流水の空しなやかに 成田千空 地霊
人に秘す記念日ひと日薔薇五月 後藤綾子
会津五月子へ買ふ百回塗りの箸 奈良文夫
余部鉄橋五月の空に架りけり 本橋 節
光りしは皿か五月の日ぐれとなる 細見綾子
八つ手の実黒く地に踏む五月来ぬ 松村蒼石 雪
八重雲に朝日のにほふ五月哉 炭 太祇 太祇句選後篇
六尺も力おとしや五月あめ 榎本其角
円柱のかたへ五月の酔魔をり 岡井省二
初暦五月の中に死ぬ日あり 正岡子規
制服も鞄も返し五月果つ 皆川白陀
劇終り女優五月の花束抱き 成瀬正とし 星月夜
北岳は篠の乾きに五月果つ 鳥居美智子
匙につぶす苺の弾力さへ五月 瀧 春一
南国の五月はたのし花朱欒 杉田久女
南国の果実をならべ店五月 岩崎照子
南溟に風の目一つ湧く五月 的井健朗
原色の琉球ガラス買ふ五月 野上 水穂
叔父帽をかしぐ五月の訴願ごと 宮武寒々 朱卓
合宿の艇漕ぎ出す湖五月 伊東宏晃
名刺たまる抽出五月の密なる雲 桜井博道 海上
君の瞳にみづうみ見ゆる五月かな 木下夕爾
吸殻を突きさし拾う聖五月 西東三鬼
吸物に茗荷きざむも五月かな 野村喜舟 小石川
吹きのぼる山は五月の嵐かな 酒堂 俳諧撰集「藤の実」
品川過ぎ五月の酔いは夜空渡る 森田緑郎
唐猫に五月の玉やたますだれ 才麿
啄木になつて五月の砂すくふ 堀内一郎
噴水の玉とびちがふ五月かな 中村汀女
四五月の卯浪さ浪やほととぎす 許六
回診の医師ら五月を従えて 佐野とも子
国原や五月は青き霞立つ 佐野良太 樫
地下街の列柱五月来たりけり 奧坂まや(1950-)
地下道に溜る打水五月尽 右城暮石 上下
地球儀のあをきひかりの五月来ぬ 木下夕爾(1914-65)
坂の上たそがれながき五月憂し 石田波郷
坂の名が明るくなってきて五月 対馬康子 吾亦紅
垣草に湧立つ風も五月かな 白水郎句集 大場白水郎
城古び五月の孔雀身がかゆし 西東三鬼
堪へ馴れてなほ堪へがたし五月来れば 及川貞 榧の實
堰切つて水は五月の田をめざす 影島智子
墨堤の五月川風着流しに 成瀬正とし 星月夜
墾田はや光る五月の田の仲間 成田千空 地霊
声映すまで透きとおる五月の窓 花谷和子
夏みかん目にとぶつゆの五月かな 龍岡晋
夏草に五月の雉子のたまごかな 飯田蛇笏
夕まけて五月順風けふ饒かに 千代田葛彦 旅人木
外光の五月や画架に芝映えて 有働亨 汐路
夜が来る五月はいつもばら散り敷き 野見山朱鳥
夜の椎の身を揺りてゐる五月かな 八木林之介 青霞集
夜の穂高紫紺あせざる五月来ぬ 澤田緑生
夜雲重き五月の地平赫と燃ゆ 林原耒井 蜩
夜鴬五月暁けゆく顔ありて 小池文子 巴里蕭条
夢あさき五月の小草ぬかれけり 松村蒼石 雪
夢を守る朝風のもう五月かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
大学の草に坐りて五月かな 山口青邨
大学を駆け抜けし翳五月憂し 鈴木六林男 国境
大沼や蘆を離るゝ五月雲 鳴雪句集 内藤鳴雪
天地に直グ維れ神や瀧五月 松根東洋城
天壇や五月の星座溢れ落つ 上野さち子
太陽上る五月黄金のエーゲ海 上野さち子
夫子という最強の盾五月浪 荒井千佐代
女の髪触れて五月の白堊かな 宮武寒々 朱卓
女学生遅れて走る旅の五月 鈴木六林男 桜島
妻ごめに小芥子のならぶ五月かな 齋藤玄 飛雪
妻の忌の梵鐘一打五月なり 渋谷のぼる
婚と葬家にかさなる聖五月(五月二十一日次女真理逝く。享年十八歳) 角川源義 『冬の虹』
嬰児を抱いて五月の海になる ほんだゆき
子とあたる五月の炬燵旅もどり 木村蕪城 寒泉
子なき居のうすき塵掃く五月かな 谷口桂子
子に五月手が花になり鳥になり 岡本眸
子の髪の風に流るる五月来ぬ 大野林火(1904-84)
子よ五月サキソフォン海の父へ吹け 金箱戈止夫
子をよべば妻が来てをり五月尽 加藤楸邨
学院は五月の空に窓枠青 福田蓼汀 山火
宇宙図を広げ五月の子を待てり 対馬康子 愛国
安曇野や水の匂の五月の木 橋本榮治 逆旅
封切って劇薬ひかる五月かな 渋谷道
封緘の糊の甘しよ聖五月 鈴木栄子
小江戸菓子いろはにほへと五月来る 北見さとる
少女二人五月の濡れし森に入る 西東三鬼
少年の素足吸ひつく五月の巌 草間時彦
屋上の五月哀しい眼干す 森田智子
山の上に雲のさわげる五月かな 太田鴻村 穂国
山の五月は寒しとばかり昼をこやる 臼田亞浪 定本亜浪句集
山の湯に青き蛾泛ぶ五月来ぬ 小林黒石礁
山毛欅山のきらめく五月果つるかな 石塚友二 光塵
山荘の五月の煖炉焚かれけり 大橋越央子
山頂に乙女座垂るる聖五月 加藤春彦
岬山に現れて五月の一馬身(都井岬) 野澤節子 『飛泉』
峡五月寺領を分つ杉の雨 原裕 青垣
崖買わん古城も買わん五月なり 中島斌雄
工場の愛しあう煙五月くる 寺田京子 日の鷹
布かけて鸚哥睡らす五月の夜 堀口星眠 営巣期
布杭に桶の尻ほす五月かな ミノ-可吟 五 月 月別句集「韻塞」
帆船の女神かがよふ聖五月 南方惇子
師と背中合はせ五月のレストラン 名井ひろし
師を迎ふ五月太陽底抜けに 影島智子
庵室に蓑笠かけし五月かな 竹冷句鈔 角田竹冷
引いてゆく長きひゞきや五月波 鈴木花蓑句集
弥彦根を洗ふ五月の海濁る 松村蒼石 寒鶯抄
徴兵のない校舎には五月病 石村与志
心にも傷あと深く五月癒ゆ 古賀まり子 緑の野
忌明けの五月の屋根に上るべし 攝津幸彦
怒濤音島にひびきて五月果つ 村上辰良
思念老ゆ五月虚空の歩みまた 石原八束 空の渚
恐竜の喉に触って聖五月 松本恭子 二つのレモン 以後
患者等に五月の冷えの屍室 石田あき子 見舞籠
憩ふ鵜も沖へ嘴向け五月来ぬ 野澤節子 花 季
手が足が伸びて荒野に五月くる 津沢マサ子 風のトルソー
手をふれてピアノつめたき五月かな 木下夕爾
手術台の五月の冷の外は覚えず 宮原 双馨
折しもあれ五月美し北の旅 森鴎外
抛り上げて見たき五月のわれ軽量 長谷川かな女 花寂び
抱けば顔打つ五月誕生日なる子は 皆吉爽雨
拭き込まれ五月冷たき炉の板間 木村蕪城 一位
捻子締めてあり五月の窓開かず 加倉井秋を 午後の窓
掌のあたたかき胸五月の夜 和知喜八 同齢
揚舟の寧さ五月の旅の腰 野澤節子 花 季
教室の画鋲の光る五月来し 中川忠治
新墾山五月の真水仰ぎ呑む 成田千空 地霊
旅の歩を砂丘に残す五月かな 山内山彦
*いとど谷に青筋青き卯月かな 野村喜舟 小石川
いま見しは大魚か人か卯月波 中村苑子
くばりあふ卯月八日のよもぎ餅 長谷川素逝 村
この空につづくみちのく卯月晴 阿部みどり女 『石蕗』
すぐやみしことも卯月の蝉らしさ 市場基巳
たそがれの草花売も卯月かな 富田木歩
たまゆらの月の曇りに卯月星 石塚友二 方寸虚実
つやつやと卯月野へもの捨てに行く 永末恵子
はやり来る羽織みじかき卯月かな 立花北枝
み名の山卯月の雲のたもとほり 林原耒井 蜩
一壷あり卯月曇の空映し 若林 北窗
三姉妹卯月の宵を少女めき 佐々木 美乎
仏さま杖つき来ませ卯月の夜 村越化石
仕入れたる茄子の小さき卯月かな 鈴木真砂女 生簀籠
切花に飽いたるひとの卯月かな 安東次男 昨
卯の花や誰が卯月より此の曇り 立花北枝
卯月 しろがねの鱗を飛ばす母系かな 宇多喜代子
卯月の夜夢見むための身の眠り 村越化石
卯月はや筍固くなりにけり 野村喜舟
卯月住むや楓の花と妹ぎり 渡邊水巴
卯月寒生涯湖の蜆掻く 西本一都 景色
卯月曇ペンキを厚く霧笛室 堀野信子
卯月来ぬましろき紙に書くことば 三橋鷹女
卯月来ぬ吾にてのひらほどの幸 ほんだゆき
卯月波父の老いざま見ておくぞ 藤田湘子
卯月波白磁のごとく砕けたり 皆川盤水
卯月浪この子を抱き飽きにけり 遠山陽子
卯月浪父の老いざま見ておくぞ 藤田湘子
卯月浪白磁のごとく砕けたり 皆川盤水
卯月潮午後を高まる流刑島 大橋敦子 勾 玉以後
卯月紀伊国日中・仮寝寝耳に水 高柳重信
卯月野にうち捨てられし手塩皿 柿本多映
卯月野に笑つて沈む明日の陽 佐藤鬼房
卯月野のほとけの親にあひに来し 西島麦南
卯月野の法隆寺なり詣でけり 尾崎迷堂 孤輪
卯月野やげんげん褪せて水光る 青木月斗
卯月野や茜消えなば母も消ゆ 中村苑子
卯月風まるた飛ばぬもかなしけれ 林原耒井 蜩
吉野葛ときてふたりの卯月寒 築城 京
国境に雪を降らせし卯月かな 長谷川かな女 花寂び
大釜に卯月八日の蕎麦滾る 蓬田紀枝子
大鳴門卯月曇の渦を見ず 桑田青虎
妹の忌の濤音高き卯月かな 角川春樹
尼寺や卯月八日の白躑躅 飯田蛇笏 山廬集
山落ちて野を行く水の卯月かな 尾崎迷堂 孤輪
島近し卯月ぐもりの日は殊に 稲畑汀子
師をしたふこゝろに生くる卯月かな 飯田蛇笏
引くときの滅法愉し卯月波 辻桃子
弥生卯月と遅遅たり籠に白よもぎ 金子兜太 詩經國風
影沼に吾が影寄れる卯月かな 飯島晴子
彼方なる卯月の浪となりにけり 清水基吉 寒蕭々
御番衆の交代したる卯月哉 四明句集 中川四明
文弱のそしりに堪ふる卯月かな 西島麦南 人音
日はながし卯月の空もきのふけふ 千代尼
時しも卯月潮の早瀬の矢の如し 水原秋櫻子
本阿彌光悦卯月は如何なもの着しや 藤田湘子
松影は卯月こよなきしづけさよ 右城暮石 声と声
枯山水卯月あかりの木々やさし 河野南畦 湖の森
椎茸の山へ卯月の水を引く 阿部みどり女 『光陰』
横川まで卯月曇の尾根づたひ 中井余花朗
歌枕卯月曇に松ななめ 木村蕪城
母似の子卯月曇りの蹠して 栗林千津
水底の草も花さく卯月かな 梅室
水底は卯月明りや鴎の死 中村苑子
汐入りの汐さす卯月ぐもりかな 石原八束 空の渚
浮灯台ゆらりと卯月波の上 村田豊三郎
淡海にも立ちて卯月の波かしら 飴山實 『花浴び』
満ち潮に藻の立つ卯月曇かな 船越淑子
溜池に蛙闘ふ卯月かな 夏目漱石
潜戸のわづかな軋み卯月尽 徳田千鶴子
潮に濡れし肩の乾がたう卯月の日 林原耒井 蜩
濁り川突きささりゐる卯月浪 中戸川朝人
火を焚いて依りどころなき卯月かな 橋石 和栲
烏賊干して卯月曇の船隠し 石本秋翠
父につよく呼ばれし夢の卯月浪 竹中宏 饕餮
牛蒡たく匂ひに卯月曇かな 青木月斗
生くことも死もままならず卯月空 阿部みどり女 『石蕗』
生まれ家の柱のとよむ卯月かな 柿本多映
生涯の佳き日給はる苑卯月 高木晴子 花 季
磧はしる水筋多き卯月かな 龍胆 長谷川かな女
立山の卯月の谺返しくる 萩原麦草 麦嵐
艇おろす卯月曇の水の上 和田祥子
良寛堂卯月半ばの雀来て 高澤良一 寒暑
茫々と湖上卯月の青曇り 野澤節子 『存身』
草刈の帯の赤きも卯月かな 野村喜舟 小石川
虚無僧の四五人卯月曇りかな 渡辺町子
虫退治の紙切れ貼りし卯月古家 長谷川かな女 花寂び
蚊の居るとつぶやきそめし卯月かな 高浜虚子
蝋涙や卯月曇の女人堂 櫛原希伊子
豆腐佳し今宵卯月の月ありや 斎藤空華 空華句集
越の田個々卯月青空みな容れて 河野南畦 湖の森
過去帳に卯月の仏殖えにけり 野村喜舟 小石川
遙かなる国を訪ひ得し卯月かな 高木晴子 花 季
酒のあと蕎麦の冷たき卯月かな 野村喜舟
酒置いて畳はなやぐ卯月かな 林 徹
酢を提げて卯月の山の陰をゆく 橋石 和栲
鑑真像帰る卯月の月明に 冨田みのる
門々に卯月八日の花を挿す 瀧春一 菜園
雨つややか卯月あかりの野に出でし 河野南畦
骨肉の情うとく読む卯月かな 西島麦南 人音
鶏のはるかを呼べる卯月かな 山本洋子
黄楊の花卯月ぐもりのつづきけり 五十崎古郷句集
水虎鳴く卯の花月の夜明けかな 飯田蛇笏 霊芝
決めかねし卯の花月の旅衣 山田閏子
鮨二つの間を持ち逝ける卯の花月 長谷川かな女 花 季


以上
by 575fudemakase | 2014-05-01 11:03 | 夏の季語 | Trackback


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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《方法1》 残暑 の例句を調べる
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次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
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[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

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