茂
茂
例句を挙げる。
あと継ぎのなき百姓の草茂る 小野三子
あやめ草加茂の仮橋いま幾日 嵐雪
あんこだま夜の茂りを見てくふも 八木林之介 青霞集
いたどりの茂れるさまも裾野かな 深川正一郎
うぶすなの昔の榎茂れども 臼田亞浪 定本亜浪句集
うぶすなの樹々の茂りのしづかかな 長谷川双魚 風形
おれは茂りおまえは熟る惑星の地表に秋の水あふれたり 永田和宏
かきつばた咲きけり草は茂りそめ 増田龍雨 龍雨句集
かくれみの茂りつくして盆が来し 斉藤夏風
かちととぶ髪切虫や茂中 虚子
かんがえて茂りに入れば豚が叱る 赤城さかえ句集
ぎぼうしや花押しのけて葉の茂り 淡 水
この国に恋の茂兵衛やほととぎす 松瀬青々(1869-1937)
この庭の柿より茂りはじまりぬ 立子
さからはず十薬をさへ茂らしむ 富安風生
しげしげと鏡の眉の茂りかな 高澤良一 随笑
しづかにも病者の彼方茂りたる 飯田龍太
しんしんと夜の光の草茂る 川端茅舎
たうたうと滝の落ちこむ茂りかな 士朗
ただ茂るほかなき庭に雨つづく 稲畑汀子
たぢろぎぬつのる茂りのたしかさに 及川 貞
てぐすむしゐるかと仰ぐ茂りかな 銀漢 吉岡禅寺洞
とある木の幹に日のさす茂りかな 久保田万太郎 流寓抄
どことなく庭手入してある茂り 高浜年尾
はむ鳥のはしばみならす茂りかな 幽斎
ひと茂り入日の路に当りけり 芥川龍之介 蕩々帖〔その二〕
まくなぎや盗みて植ゑし額茂り 石川桂郎 高蘆
まぼろしの曽良の古道草茂る 手塚美佐 昔の香
ややあれば茂り離るる風の筋 汀女
ゆさゆさと茂り動けば幹見ゆる 高浜虚子
ゆさ~と茂り動けば幹見ゆる 高浜虚子
ゆらぎつつ葉の湧きやまず萩茂る 亀井糸游
よろこびの淡くなりたり蕗茂る 本宮銑太郎
わづかの茂りに人がゐて強き陽の中 シヤツと雑草 栗林一石路
ゴッホに弟蔦茂る墓ふれあひて 小池文子 巴里蕭条
ソロモン産ポトス茂みをつくりけり 高澤良一 ぱらりとせ
ホテル建つ噂どこへか草茂る 清水寥人
ポプラ茂りて江楼頽るまゝ高き 楠目橙黄子 橙圃
マロニエの群の茂り葉怒りつづく 小池文子 巴里蕭条
一つ葉の一叢茂るしづかかな 長谷川双魚 『ひとつとや』
一と月の留守の茂りに帰り来ぬ 上野泰 佐介
一人を缺きて茂れるままにせよ 佐々木六戈 百韻反故 初學
一画は買収されて草茂る 小川ユキ子
一門は皆四位五位の茂りかな 子規句集 虚子・碧梧桐選
丘茂り遥かの晩鴉きくさびし 原田種茅 径
二幹の重なつてゐる茂りかな 高浜虚子
人ありてとはぶきしたる茂哉 篠崎霞山
人のけふわが明日草の茂りけり 久保田万太郎 流寓抄
仁王にもよりそふ蔦の茂りかな 園女
伊香保根や茂りを下る温泉〔の〕煙 一茶 ■寛政四年壬子(三十歳)
伐折羅見て葱あをあをと茂るかな 林火
低山の茂り寂しく炎えにけり 瀧春一 菜園
何も彼も茂るにまかせ庵せる 砂長かほる
何を待つともなく草の茂るなり 広瀬直人
俯して見る湖中の島の茂りかな 比叡 野村泊月
倒れ木の先があがりて茂り居る 比叡 野村泊月
元湯とて一軒のみの茂りかな 実花
光りあふ二つの山の茂りかな 去来
光茂が膠兀(は)げたる火桶かな 黒柳召波 春泥句集
初伊勢や羊歯茂りして蜑の墓 飯塚風像
刺青の裸体茂りを出て来たり 六角耕
十字架に旭の光る茂り哉 寺田寅彦
十字架や野茨空しく生ひ茂る 寺田寅彦
去る家の朝顔どっと生ひ茂る 百合山羽公 寒雁
参道の深き茂りや法鼓鳴る 大室達恵
古池の小隅明るき茂り哉 竹冷句鈔 角田竹冷
古池の小隈あかるき茂かな 角田竹冷
句碑の辺の茂りに茂り七七忌 阿部みどり女
召されゆく茂兵衛にこれの桜鯛 佐野まもる 海郷
君が世や茂りの下の那蘇仏 一茶 ■寛政五年癸丑(三十一歳)
喉元を水のとほれる茂りかな 金田咲子
喜代門に今も茂りて椰子一樹 高木晴子 花 季
園茂み傘に飛びつく青蛙 正岡子規
城茂る終戦の日もかくありき 佐野まもる
墓原や墓低くして草茂る 正岡子規
夏の月牛蒡畠の茂りかな 山本村家
夏焼けて雲くづれゆく茂かな 富田木歩
夏草そこまで茂り母といる 橋本夢道 無禮なる妻抄
夏草の溝越え茂る街汗す 横光利一
夏蝶や歯朶の茂みにくゞり入り 小杉余子 余子句選
夏馬ぼくぼく我を絵に見る茂り哉 夏馬ぼくぼく我を絵に見る心哉 松尾芭蕉
夕映えや茂みの漏るる川の跡 丈草
夕栄(ゆうばえ)や茂みにもるる川の跡 内藤丈草
夕焼けて雲くづれゆく茂かな 富田木歩
夜嵐の嬉しき麻の茂りかな 赤木格堂
夢の茂みに煙草をおとさないで下さい 松本恭子 世紀末の竟宴 テーマによる競詠集
大いなる神の茂りとしてありぬ 杉浦 東雲
大仏のゆるがぬ樟の茂りかな 浅井一志
大工と杣夫茂みに来て樹を言い争う 赤城さかえ
大枝を引きずり去りて茂かな 杉田久女
大蕗の茂るこの地もアイヌの名 西村梛子
大蛇の二日目につく茂り哉 一茶 ■享和三年癸亥(四十一歳)
大鈴を下げて稲荷の茂りかな 猪股清吉
大阪の煤によごれて芦茂る 富安風生
夭折のかほありありと草茂り 中田剛 竟日
奔流の貫いている茂りかな 赤尾冨美子
子守爺いままでゐたる茂かな 飯島晴子
孔孟の国の実生の楷茂り 福田蓼汀 秋風挽歌
家貧に茂りもあへす麦門冬 尾崎紅葉
寒菊や茂る葉末のはだれ雪 炭 太祇 太祇句選後篇
寝惜むや月に茂りの見えくれば 佐野良太 樫
寸土も見せぬ茂りの間を川の幅 中村草田男
小判草照りこぞりては茂りゆく 新村千博
小雨降る池の小径や草茂る 枌 御許
尚奥へ寂光院は茂り中 堤俳一佳
屋根の上に草茂り居り薬草園 桂 信子
山峡をいでざる人の茂りかな 長谷川双魚 風形
山羊の仔のおどろきやすく草茂る 西本一都
山茂る耶馬臺國を謎のまま 上村占魚 『天上の宴』
山鳥の入りし茂みや花岩韮 石塚友二
岨畑の尽きし茂みや雉子啼ける 麓 美奈
嵐山藪の茂りや風の筋 芭蕉
川*(せんきゅう)のたまさか匂ふ茂りかな 服部嵐雪
川莉のたまさか匂ふ茂りかな 服部嵐雪
左手に蝉山茂る速球投手 攝津幸彦
帆舟来てつなぎし柳茂りけり 水原秋櫻子
幻の添水見えける茂りかな 泉鏡花
庄内の米蔵ならぶ大茂り 和田祥子
店のなか茂らせて売る萩芒 宮津昭彦
庭茂りすぎしといふも一風情 安原葉
庭茂り月のせせらぎ想はしめ 太田鴻村 穂国
引潮に酸模の茂り人の声 河野多希女
弾痕の幹ある首里の茂りかな 岩崎照子
形骸の旧三高を茂らしめ 平畑静塔(1905-97)
御用箱ちまたの葵茂りけり 椎本才麿
御舟山おも梶の葉の茂りかな 井原西鶴
忽ちに茂り降りぬく雨となり 大場白水郎 散木集
我見しより久しきひよんの茂かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
教會の塔聳えたる茂り哉 寺田寅彦
文に師の下痢の酒断ち葛茂る 石川桂郎 高蘆
旅に出て父見し山河茂り合ひ 星野立子
日の脚の道付きかへる茂りかな 千代尼
旧道や人も通らず草茂る 子規
明日香路や何かいはれのある茂 島田紅帆
昏々と眠り半身茂るかな 鳴戸奈菜
昼も臥て若き日遠し草茂る 日野草城
昼中は枝の曲れる茂りかな 芥川龍之介 蕩々帖〔その二〕
昼深う枝さしかはす茂りかな 芥川龍之介 蕩々帖〔その二〕
昼見ても夜見ても葛茂りをり 岸本尚毅 舜
曾遊の友と憩ひし茂りかな 寺田寅彦
月山の深き茂りやワイン蔵 北見さとる
朗読は茂りのそばにはじまりし 中田剛 珠樹
木草らも漸く茂りあぐみけり 相生垣瓜人
木草等もやうやく茂りあぐみけり 相生垣瓜人
本堂へ白き道ある茂りかな 田中 美代子
本陣の定紋残し草茂る 木村蕪城 寒泉
松茂る黄檗山の氷かな 岸本尚毅 鶏頭
松虫や兎の道の茂りあふ 野狂
枝々の茂みに柚子の色づける 鈴木豊子
柏槇の茂み宿りの雨の鵙 高澤良一 素抱
栃茂り光芒あをき奥の滝 岡田貞峰
校庭に十薬茂るわが戦後 桑原三郎 花表
梅の葉を込めての上の茂かな 野村喜舟 小石川
梅雨茂る迅速老をつつみけり 松村蒼石 雪
梶の葉の茂りより来し童女かな 岡井省二
椨茂り象潟は日を密にせる 小松崎爽青
楽隊はぐれ茂みの冷たい毬拾う 小泉八重子
横山外科炎暑の街に蔦茂り 山口波津女 良人
樫茂りね見えぬ峰雲がその彼方 栗生純夫 科野路
樫茂る念力巌の如くなり 藤田尚平
樫茂る手垢だらけの解剖書 林徹
樹の茂みかう見て見ゆる鳥巣かな 尾崎迷堂 孤輪
橋わたり青葉茂れるあたりにまりや 阿部完市 春日朝歌
水やさし茂りの岸を浸しつつ 八木林之介 青霞集
氷り屋の旗をつき出す茂り哉 妻木 松瀬青々
沈黙の茂り蔓草奔放に 滝春一
沼古りし芦の茂や四手小屋 子規句集 虚子・碧梧桐選
法師蝉茂り疲れし老柳 百合山羽公 寒雁
津の柳茂り極めぬ雲の峯 野村喜舟 小石川
涼しさや塵なき風の茂り吹く 大谷句佛 我は我
混浴の真上の大き茂みかな 高澤良一 素抱
混浴や漁樵声出す茂より 青畝
湖暗く蕗の茂りの水浸きたり 松村蒼石 雪
滝案内茂の中に入らんとす 野村喜舟 小石川
滝水の流れを更へて葛茂る 河野南畦 湖の森
濁り江や茂葉うつして花あやめ 飯田蛇笏 山廬集
火炎樹の広き茂りや祈りの刻 杉本寛
灯ともせば雨音わたる茂りかな 角川源義
炊煙を洩さぬ祖谷の茂りかな 館 容子
牡丹散つて葉茂し風に揺れ止まず 楠目橙黄子 橙圃
牧場の中に大樹の茂りかな 比叡 野村泊月
牧牛は遥かに散りて草茂る 滝 峻石
猟犬の荻の茂みにかくれけり 蘇山人俳句集 羅蘇山人
玉鉾の里の茂りや浮世杖 調和 選集「板東太郎」
畑もの雨に茂つて母が住む歪んだ戸口 人間を彫る 大橋裸木
療養所古びて茂る花臭木 松崎鉄之介
癒えてなほ癒えざるものや茂りくる 笹本千賀子
盲人が遠き方見てゐる茂り 長谷川双魚 風形
眼球の傷つくほどや葛茂る 波多野爽波 『一筆』以後
石桃の茂り没して忘られし 百合山羽公 寒雁
石段の一筋長き茂りかな 夏目漱石 明治四十四年
石炭を隠し茂りぬ夏の山 長谷川かな女 雨 月
神々と春日茂りてつづら山 上島鬼貫
祭神日本武尊山根より羊歯生ひ茂り 中塚一碧樓
秋しらぬ茂りも憎しからす麦 榎本其角
秋近き梶の茂りや天の川 松瀬青々
秋青き茂りや被爆中心地 石塚友二
竜の鬚茂りぬ花のひそみより 上川井梨葉
笹の葉に飴を並る茂り哉 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
篠の露袴に掛けし茂り哉 松尾芭蕉
篠懸の葉が茂つて人々が蒼ざめて躍つて 中塚一碧樓
精神科茂りの中に静もれり 小久保水虎洞
続々と離農してゆき草茂る 村中千穂子
緋の褪せしように生きるや草茂る 長谷川かな女 牡 丹
縁の下しずかに茂る鉈に鎌 鳴戸奈菜
羊歯茂る熊野ふるみち岩谷みち 野沢節子
耳塚といふは二つの茂りかな 小野素雨
聖堂の門に槐の茂りかな 渡辺香墨
背戸寒し茂郷が庭の梅紅葉 会津八一
自伝、虞美人草(コクリコ)の追体験に茂る 加藤郁乎
自愛てふことばあたため樫茂る 鈴木太郎
芦茂るくらきふところ匂はせて 山上樹実雄
芭蕉茂りて一青柿をつつみたり 松村蒼石 雁
芭蕉越えて戻らぬ峠葛茂る 品川鈴子
花水にうつしかへたる茂り哉 榎本其角
芽出しより二葉に茂る柿の実(さね) 内藤丈草
苔茂るオランダ塀の上の瀬戸 石原八束 空の渚
苗代に日々茂り行く柳かな 柑子句集 籾山柑子
茂みなほ黒く朝の海に沿ふ 篠原梵 雨
茂みに入る鳥は虔しむ姿して 八木林之助
茂みより一羽飛び出す葉っぱいろ 高澤良一 さざなみやっこ
茂みより出て従いてゆく仔馬かな 比叡 野村泊月
茂みより茂みへ消える山の葬 小島花枝
茂りあふ蕗より夜風星は高し 下村槐太 天涯
茂りけり乞食が森の下竈 調和 選集「板東太郎」
茂りに入りて微笑冷めたき白日傘 島村はじめ
茂りに入る鳥は虔む姿して 林之助
茂り中氷白玉たうべけり 道芝 久保田万太郎
茂り合ふ草に旱の埃かな 尾崎紅葉
茂り山伐り山狭霧棚引けり 瀧井孝作
茂り木をつながり落つる雨滴かな 汽笛 勝峯晋風
茂り藻の別れ馴れたり舟の道 増田龍雨 龍雨句集
茂るさへ淋しきものを枯葎 太祇
茂るだけしげり老柳荘親し 宮下れい香
茂るだけ茂れば手入れそのあとに 稲畑汀子
茂るとはさらさら見えず萩若葉 千原草之
茂る夢咲く夢も見る砂漠の木 津田清子
茂る白楊そびらに父の眠り在す 阿部みどり女
茂る葉の中にまぎれず顔と顔 蝶夢
茂助田に愛すともなき蓮かな 高井几董
茂助田に石灰ふるや雲の峯 寺田寅彦
茂山の洞の仏やたづねしは 尾崎迷堂 孤輪
茂山やさては家ある柿若葉 蕪村
茂索忌にまづ始まれる師走かな 吉屋信子
茂索忌の膝を日向にまかせけり 永井龍男
茄子茂る曇天を風吹きすさび 岸本尚毅 選集「氷」
草山の谷間に槇の茂りかな 比叡 野村泊月
草花を圧する木々の茂かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
草茂みベースボールの道白し 正岡子規
草茂り木茂り加茂の御形かな 癖三酔句集 岡本癖三酔
草茂り草の類ひの木の茂り 後藤夜半 底紅
草茂るいらだちやすく日々を住む 上村占魚 鮎
草茂るくらがりを水よろこべり 櫛原希伊子
草茂るばかり湖中の孤つ島 河東碧梧桐
草茂るゆきて飛鳥のむかしみち 相馬黄枝
草茂る中洲や雨後の水の嵩 石塚友二 光塵
草茂る古りゆくままにコロツセオ 鈴木愛子
草茂る寺門に仰ぐ武田菱 木村蕪城 寒泉
草茂る尋ねあぐみてとゞまれば 加藤覚範
草茂る忠魂碑跡母校なる 広瀬一朗
草茂る産湯浴びしはこの辺り 佐伯志保
草茂る空の煉瓦の貯水槽 小山今朝泉
草茂る空鬱々と古墳群 中川糸遊
草茂る舟小屋葛の蔓も延び 村上冬燕
草茂る要塞砲を毀たれて 誓子
草茂る鄙野に生きるもの親し 稲畑汀子
菅笠や草の茂りの坊主持 水田正秀
菖蒲刀砥水の沼に茂りけり 調古 選集「板東太郎」
菩提樹の茂りの下の夫小さし 石田あき子 見舞籠
萩芒縁まで茂る燈籠哉 小澤碧童 碧童句集
萬葉のむかしより草茂りけり 久保田万太郎 流寓抄以後
落ち落つや萬仭瀧得て茂よそ 松根東洋城
葉茂りて紫陽花淋し鞠のあと 雑草 長谷川零餘子
葎のみ茂り戦跡崖残す 北野民夫
葎茂る港埠の貨車は扉を閉さず 秋元不死男
葛村の茂平次寄進露の磴(室生寺) 飴山實 『辛酉小雪』
蓬薊これより草の茂るかな 尾崎迷堂 孤輪
蓮の香や深くも籠る葉の茂 炭 太祇 太祇句選
蓮茂る中へ舳をすゝめけり 比叡 野村泊月
蔦茂り壁の時計の恐しや 池内友次郎
蔦茂る宇津の山辺へ沢づたひ 小野宏文
蕗の葉も老い交りたり草茂る 高濱虚子
蕗茂り妊るひとの歩き来る 長谷川かな女
蕗茂る木曾にも隠れ切支丹 杉本寛
蕗茂る畑を均して地鎮祭 岩下幸子
蕨手の長けし茂りとぞ思ふ 中原道夫
薬掘り茂れるほどには根の穫れず 肱岡恵子
藍茂り初めし濃みどり薄みどり 上崎暮潮
藜茂り焼けたるものをかくすさま 岸風三楼 往来
藪際や水仙の葉のやゝ茂り 温亭句集(篠原温亭遺稿) 篠原温亭、島田青峰編
蘆茂り岬に遺るアイヌ砦 太田ミノル
蘆茂るくらきふところ匂はせて 樹実雄
虎杖や蝦夷用水の辺に茂り 高濱年尾
蛇穴を出てサフランの茂りかな 癖三酔句集 岡本癖三酔
蛙鳴くかくれ水あり草茂る 大場白水郎 散木集
蜀魂門は胡桃の茂りかな 木導 四 月 月別句集「韻塞」
蜩や茂みの中は古き池 野村喜舟 小石川
裏口柿に茂られて夕日こぼれてゐる シヤツと雑草 栗林一石路
親しき家もにくきも茂りゆたかなり 飯田龍太
試歩の足汚るるたのし草茂る 山口一枝
赤きトラクター茂草反し憩ひをり 相馬遷子 山国
躍り入る蜥蜴に深き茂かな 岩田由美
身のなかを身の丈に草茂るかな 河原枇杷男 定本烏宙論
軍神は茂みに佇てり忠魂碑 高澤良一 寒暑
道草の茂りそめたる幟かな 五十崎古郷句集
里の風里の茂りに来て染まる 保坂リエ
金魚屋の小茂りゆかし郡山 松瀬青々
鉄材の積まれしままに草茂る 佐藤 由比古
隠亡が茂りよごさず鶏飼へり 長谷川双魚 風形
離農者のふゆる奥蝦夷蕗茂る 小島梅雨
雨しぶき雨と打ち合ふ草茂り 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
雨となり硝子器に茂るみどり児 阿部娘子
雨の坂こんにやくぬきん出て茂る 高井北杜
雨音を消す若竹の茂りあひ 野澤節子 『存身』
雲を根に富士は杉形の茂りかな 芭蕉
青葉茂れるに押し出て土の肉 和知喜八 同齢
静かにも病者の彼方茂りたる 龍太
静脈の樹が茂り合う美術館 吉田健治
駅長の釣場なりけり蕗茂る 長谷川かな女 雨 月
高々と朴の広葉や茂り中 松根東洋城
高茂り憎し埋るる素志もあり 香西照雄 対話
鮎の瀬や茂りに潜む月を見し 雑草 長谷川零餘子
鶏こゝと遠く風立つ茂かな 富田木歩
鷹の糞見つゝ夏山茂きかな 加舎白雄
麦湯冷やす手桶置きたる茂りかな 龍胆 長谷川かな女
麻茂り伏屋の軒を見せじとす 富安風生
以上
例句を挙げる。
あと継ぎのなき百姓の草茂る 小野三子
あやめ草加茂の仮橋いま幾日 嵐雪
あんこだま夜の茂りを見てくふも 八木林之介 青霞集
いたどりの茂れるさまも裾野かな 深川正一郎
うぶすなの昔の榎茂れども 臼田亞浪 定本亜浪句集
うぶすなの樹々の茂りのしづかかな 長谷川双魚 風形
おれは茂りおまえは熟る惑星の地表に秋の水あふれたり 永田和宏
かきつばた咲きけり草は茂りそめ 増田龍雨 龍雨句集
かくれみの茂りつくして盆が来し 斉藤夏風
かちととぶ髪切虫や茂中 虚子
かんがえて茂りに入れば豚が叱る 赤城さかえ句集
ぎぼうしや花押しのけて葉の茂り 淡 水
この国に恋の茂兵衛やほととぎす 松瀬青々(1869-1937)
この庭の柿より茂りはじまりぬ 立子
さからはず十薬をさへ茂らしむ 富安風生
しげしげと鏡の眉の茂りかな 高澤良一 随笑
しづかにも病者の彼方茂りたる 飯田龍太
しんしんと夜の光の草茂る 川端茅舎
たうたうと滝の落ちこむ茂りかな 士朗
ただ茂るほかなき庭に雨つづく 稲畑汀子
たぢろぎぬつのる茂りのたしかさに 及川 貞
てぐすむしゐるかと仰ぐ茂りかな 銀漢 吉岡禅寺洞
とある木の幹に日のさす茂りかな 久保田万太郎 流寓抄
どことなく庭手入してある茂り 高浜年尾
はむ鳥のはしばみならす茂りかな 幽斎
ひと茂り入日の路に当りけり 芥川龍之介 蕩々帖〔その二〕
まくなぎや盗みて植ゑし額茂り 石川桂郎 高蘆
まぼろしの曽良の古道草茂る 手塚美佐 昔の香
ややあれば茂り離るる風の筋 汀女
ゆさゆさと茂り動けば幹見ゆる 高浜虚子
ゆさ~と茂り動けば幹見ゆる 高浜虚子
ゆらぎつつ葉の湧きやまず萩茂る 亀井糸游
よろこびの淡くなりたり蕗茂る 本宮銑太郎
わづかの茂りに人がゐて強き陽の中 シヤツと雑草 栗林一石路
ゴッホに弟蔦茂る墓ふれあひて 小池文子 巴里蕭条
ソロモン産ポトス茂みをつくりけり 高澤良一 ぱらりとせ
ホテル建つ噂どこへか草茂る 清水寥人
ポプラ茂りて江楼頽るまゝ高き 楠目橙黄子 橙圃
マロニエの群の茂り葉怒りつづく 小池文子 巴里蕭条
一つ葉の一叢茂るしづかかな 長谷川双魚 『ひとつとや』
一と月の留守の茂りに帰り来ぬ 上野泰 佐介
一人を缺きて茂れるままにせよ 佐々木六戈 百韻反故 初學
一画は買収されて草茂る 小川ユキ子
一門は皆四位五位の茂りかな 子規句集 虚子・碧梧桐選
丘茂り遥かの晩鴉きくさびし 原田種茅 径
二幹の重なつてゐる茂りかな 高浜虚子
人ありてとはぶきしたる茂哉 篠崎霞山
人のけふわが明日草の茂りけり 久保田万太郎 流寓抄
仁王にもよりそふ蔦の茂りかな 園女
伊香保根や茂りを下る温泉〔の〕煙 一茶 ■寛政四年壬子(三十歳)
伐折羅見て葱あをあをと茂るかな 林火
低山の茂り寂しく炎えにけり 瀧春一 菜園
何も彼も茂るにまかせ庵せる 砂長かほる
何を待つともなく草の茂るなり 広瀬直人
俯して見る湖中の島の茂りかな 比叡 野村泊月
倒れ木の先があがりて茂り居る 比叡 野村泊月
元湯とて一軒のみの茂りかな 実花
光りあふ二つの山の茂りかな 去来
光茂が膠兀(は)げたる火桶かな 黒柳召波 春泥句集
初伊勢や羊歯茂りして蜑の墓 飯塚風像
刺青の裸体茂りを出て来たり 六角耕
十字架に旭の光る茂り哉 寺田寅彦
十字架や野茨空しく生ひ茂る 寺田寅彦
去る家の朝顔どっと生ひ茂る 百合山羽公 寒雁
参道の深き茂りや法鼓鳴る 大室達恵
古池の小隅明るき茂り哉 竹冷句鈔 角田竹冷
古池の小隈あかるき茂かな 角田竹冷
句碑の辺の茂りに茂り七七忌 阿部みどり女
召されゆく茂兵衛にこれの桜鯛 佐野まもる 海郷
君が世や茂りの下の那蘇仏 一茶 ■寛政五年癸丑(三十一歳)
喉元を水のとほれる茂りかな 金田咲子
喜代門に今も茂りて椰子一樹 高木晴子 花 季
園茂み傘に飛びつく青蛙 正岡子規
城茂る終戦の日もかくありき 佐野まもる
墓原や墓低くして草茂る 正岡子規
夏の月牛蒡畠の茂りかな 山本村家
夏焼けて雲くづれゆく茂かな 富田木歩
夏草そこまで茂り母といる 橋本夢道 無禮なる妻抄
夏草の溝越え茂る街汗す 横光利一
夏蝶や歯朶の茂みにくゞり入り 小杉余子 余子句選
夏馬ぼくぼく我を絵に見る茂り哉 夏馬ぼくぼく我を絵に見る心哉 松尾芭蕉
夕映えや茂みの漏るる川の跡 丈草
夕栄(ゆうばえ)や茂みにもるる川の跡 内藤丈草
夕焼けて雲くづれゆく茂かな 富田木歩
夜嵐の嬉しき麻の茂りかな 赤木格堂
夢の茂みに煙草をおとさないで下さい 松本恭子 世紀末の竟宴 テーマによる競詠集
大いなる神の茂りとしてありぬ 杉浦 東雲
大仏のゆるがぬ樟の茂りかな 浅井一志
大工と杣夫茂みに来て樹を言い争う 赤城さかえ
大枝を引きずり去りて茂かな 杉田久女
大蕗の茂るこの地もアイヌの名 西村梛子
大蛇の二日目につく茂り哉 一茶 ■享和三年癸亥(四十一歳)
大鈴を下げて稲荷の茂りかな 猪股清吉
大阪の煤によごれて芦茂る 富安風生
夭折のかほありありと草茂り 中田剛 竟日
奔流の貫いている茂りかな 赤尾冨美子
子守爺いままでゐたる茂かな 飯島晴子
孔孟の国の実生の楷茂り 福田蓼汀 秋風挽歌
家貧に茂りもあへす麦門冬 尾崎紅葉
寒菊や茂る葉末のはだれ雪 炭 太祇 太祇句選後篇
寝惜むや月に茂りの見えくれば 佐野良太 樫
寸土も見せぬ茂りの間を川の幅 中村草田男
小判草照りこぞりては茂りゆく 新村千博
小雨降る池の小径や草茂る 枌 御許
尚奥へ寂光院は茂り中 堤俳一佳
屋根の上に草茂り居り薬草園 桂 信子
山峡をいでざる人の茂りかな 長谷川双魚 風形
山羊の仔のおどろきやすく草茂る 西本一都
山茂る耶馬臺國を謎のまま 上村占魚 『天上の宴』
山鳥の入りし茂みや花岩韮 石塚友二
岨畑の尽きし茂みや雉子啼ける 麓 美奈
嵐山藪の茂りや風の筋 芭蕉
川*(せんきゅう)のたまさか匂ふ茂りかな 服部嵐雪
川莉のたまさか匂ふ茂りかな 服部嵐雪
左手に蝉山茂る速球投手 攝津幸彦
帆舟来てつなぎし柳茂りけり 水原秋櫻子
幻の添水見えける茂りかな 泉鏡花
庄内の米蔵ならぶ大茂り 和田祥子
店のなか茂らせて売る萩芒 宮津昭彦
庭茂りすぎしといふも一風情 安原葉
庭茂り月のせせらぎ想はしめ 太田鴻村 穂国
引潮に酸模の茂り人の声 河野多希女
弾痕の幹ある首里の茂りかな 岩崎照子
形骸の旧三高を茂らしめ 平畑静塔(1905-97)
御用箱ちまたの葵茂りけり 椎本才麿
御舟山おも梶の葉の茂りかな 井原西鶴
忽ちに茂り降りぬく雨となり 大場白水郎 散木集
我見しより久しきひよんの茂かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
教會の塔聳えたる茂り哉 寺田寅彦
文に師の下痢の酒断ち葛茂る 石川桂郎 高蘆
旅に出て父見し山河茂り合ひ 星野立子
日の脚の道付きかへる茂りかな 千代尼
旧道や人も通らず草茂る 子規
明日香路や何かいはれのある茂 島田紅帆
昏々と眠り半身茂るかな 鳴戸奈菜
昼も臥て若き日遠し草茂る 日野草城
昼中は枝の曲れる茂りかな 芥川龍之介 蕩々帖〔その二〕
昼深う枝さしかはす茂りかな 芥川龍之介 蕩々帖〔その二〕
昼見ても夜見ても葛茂りをり 岸本尚毅 舜
曾遊の友と憩ひし茂りかな 寺田寅彦
月山の深き茂りやワイン蔵 北見さとる
朗読は茂りのそばにはじまりし 中田剛 珠樹
木草らも漸く茂りあぐみけり 相生垣瓜人
木草等もやうやく茂りあぐみけり 相生垣瓜人
本堂へ白き道ある茂りかな 田中 美代子
本陣の定紋残し草茂る 木村蕪城 寒泉
松茂る黄檗山の氷かな 岸本尚毅 鶏頭
松虫や兎の道の茂りあふ 野狂
枝々の茂みに柚子の色づける 鈴木豊子
柏槇の茂み宿りの雨の鵙 高澤良一 素抱
栃茂り光芒あをき奥の滝 岡田貞峰
校庭に十薬茂るわが戦後 桑原三郎 花表
梅の葉を込めての上の茂かな 野村喜舟 小石川
梅雨茂る迅速老をつつみけり 松村蒼石 雪
梶の葉の茂りより来し童女かな 岡井省二
椨茂り象潟は日を密にせる 小松崎爽青
楽隊はぐれ茂みの冷たい毬拾う 小泉八重子
横山外科炎暑の街に蔦茂り 山口波津女 良人
樫茂りね見えぬ峰雲がその彼方 栗生純夫 科野路
樫茂る念力巌の如くなり 藤田尚平
樫茂る手垢だらけの解剖書 林徹
樹の茂みかう見て見ゆる鳥巣かな 尾崎迷堂 孤輪
橋わたり青葉茂れるあたりにまりや 阿部完市 春日朝歌
水やさし茂りの岸を浸しつつ 八木林之介 青霞集
氷り屋の旗をつき出す茂り哉 妻木 松瀬青々
沈黙の茂り蔓草奔放に 滝春一
沼古りし芦の茂や四手小屋 子規句集 虚子・碧梧桐選
法師蝉茂り疲れし老柳 百合山羽公 寒雁
津の柳茂り極めぬ雲の峯 野村喜舟 小石川
涼しさや塵なき風の茂り吹く 大谷句佛 我は我
混浴の真上の大き茂みかな 高澤良一 素抱
混浴や漁樵声出す茂より 青畝
湖暗く蕗の茂りの水浸きたり 松村蒼石 雪
滝案内茂の中に入らんとす 野村喜舟 小石川
滝水の流れを更へて葛茂る 河野南畦 湖の森
濁り江や茂葉うつして花あやめ 飯田蛇笏 山廬集
火炎樹の広き茂りや祈りの刻 杉本寛
灯ともせば雨音わたる茂りかな 角川源義
炊煙を洩さぬ祖谷の茂りかな 館 容子
牡丹散つて葉茂し風に揺れ止まず 楠目橙黄子 橙圃
牧場の中に大樹の茂りかな 比叡 野村泊月
牧牛は遥かに散りて草茂る 滝 峻石
猟犬の荻の茂みにかくれけり 蘇山人俳句集 羅蘇山人
玉鉾の里の茂りや浮世杖 調和 選集「板東太郎」
畑もの雨に茂つて母が住む歪んだ戸口 人間を彫る 大橋裸木
療養所古びて茂る花臭木 松崎鉄之介
癒えてなほ癒えざるものや茂りくる 笹本千賀子
盲人が遠き方見てゐる茂り 長谷川双魚 風形
眼球の傷つくほどや葛茂る 波多野爽波 『一筆』以後
石桃の茂り没して忘られし 百合山羽公 寒雁
石段の一筋長き茂りかな 夏目漱石 明治四十四年
石炭を隠し茂りぬ夏の山 長谷川かな女 雨 月
神々と春日茂りてつづら山 上島鬼貫
祭神日本武尊山根より羊歯生ひ茂り 中塚一碧樓
秋しらぬ茂りも憎しからす麦 榎本其角
秋近き梶の茂りや天の川 松瀬青々
秋青き茂りや被爆中心地 石塚友二
竜の鬚茂りぬ花のひそみより 上川井梨葉
笹の葉に飴を並る茂り哉 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
篠の露袴に掛けし茂り哉 松尾芭蕉
篠懸の葉が茂つて人々が蒼ざめて躍つて 中塚一碧樓
精神科茂りの中に静もれり 小久保水虎洞
続々と離農してゆき草茂る 村中千穂子
緋の褪せしように生きるや草茂る 長谷川かな女 牡 丹
縁の下しずかに茂る鉈に鎌 鳴戸奈菜
羊歯茂る熊野ふるみち岩谷みち 野沢節子
耳塚といふは二つの茂りかな 小野素雨
聖堂の門に槐の茂りかな 渡辺香墨
背戸寒し茂郷が庭の梅紅葉 会津八一
自伝、虞美人草(コクリコ)の追体験に茂る 加藤郁乎
自愛てふことばあたため樫茂る 鈴木太郎
芦茂るくらきふところ匂はせて 山上樹実雄
芭蕉茂りて一青柿をつつみたり 松村蒼石 雁
芭蕉越えて戻らぬ峠葛茂る 品川鈴子
花水にうつしかへたる茂り哉 榎本其角
芽出しより二葉に茂る柿の実(さね) 内藤丈草
苔茂るオランダ塀の上の瀬戸 石原八束 空の渚
苗代に日々茂り行く柳かな 柑子句集 籾山柑子
茂みなほ黒く朝の海に沿ふ 篠原梵 雨
茂みに入る鳥は虔しむ姿して 八木林之助
茂みより一羽飛び出す葉っぱいろ 高澤良一 さざなみやっこ
茂みより出て従いてゆく仔馬かな 比叡 野村泊月
茂みより茂みへ消える山の葬 小島花枝
茂りあふ蕗より夜風星は高し 下村槐太 天涯
茂りけり乞食が森の下竈 調和 選集「板東太郎」
茂りに入りて微笑冷めたき白日傘 島村はじめ
茂りに入る鳥は虔む姿して 林之助
茂り中氷白玉たうべけり 道芝 久保田万太郎
茂り合ふ草に旱の埃かな 尾崎紅葉
茂り山伐り山狭霧棚引けり 瀧井孝作
茂り木をつながり落つる雨滴かな 汽笛 勝峯晋風
茂り藻の別れ馴れたり舟の道 増田龍雨 龍雨句集
茂るさへ淋しきものを枯葎 太祇
茂るだけしげり老柳荘親し 宮下れい香
茂るだけ茂れば手入れそのあとに 稲畑汀子
茂るとはさらさら見えず萩若葉 千原草之
茂る夢咲く夢も見る砂漠の木 津田清子
茂る白楊そびらに父の眠り在す 阿部みどり女
茂る葉の中にまぎれず顔と顔 蝶夢
茂助田に愛すともなき蓮かな 高井几董
茂助田に石灰ふるや雲の峯 寺田寅彦
茂山の洞の仏やたづねしは 尾崎迷堂 孤輪
茂山やさては家ある柿若葉 蕪村
茂索忌にまづ始まれる師走かな 吉屋信子
茂索忌の膝を日向にまかせけり 永井龍男
茄子茂る曇天を風吹きすさび 岸本尚毅 選集「氷」
草山の谷間に槇の茂りかな 比叡 野村泊月
草花を圧する木々の茂かな 子規句集 虚子・碧梧桐選
草茂みベースボールの道白し 正岡子規
草茂り木茂り加茂の御形かな 癖三酔句集 岡本癖三酔
草茂り草の類ひの木の茂り 後藤夜半 底紅
草茂るいらだちやすく日々を住む 上村占魚 鮎
草茂るくらがりを水よろこべり 櫛原希伊子
草茂るばかり湖中の孤つ島 河東碧梧桐
草茂るゆきて飛鳥のむかしみち 相馬黄枝
草茂る中洲や雨後の水の嵩 石塚友二 光塵
草茂る古りゆくままにコロツセオ 鈴木愛子
草茂る寺門に仰ぐ武田菱 木村蕪城 寒泉
草茂る尋ねあぐみてとゞまれば 加藤覚範
草茂る忠魂碑跡母校なる 広瀬一朗
草茂る産湯浴びしはこの辺り 佐伯志保
草茂る空の煉瓦の貯水槽 小山今朝泉
草茂る空鬱々と古墳群 中川糸遊
草茂る舟小屋葛の蔓も延び 村上冬燕
草茂る要塞砲を毀たれて 誓子
草茂る鄙野に生きるもの親し 稲畑汀子
菅笠や草の茂りの坊主持 水田正秀
菖蒲刀砥水の沼に茂りけり 調古 選集「板東太郎」
菩提樹の茂りの下の夫小さし 石田あき子 見舞籠
萩芒縁まで茂る燈籠哉 小澤碧童 碧童句集
萬葉のむかしより草茂りけり 久保田万太郎 流寓抄以後
落ち落つや萬仭瀧得て茂よそ 松根東洋城
葉茂りて紫陽花淋し鞠のあと 雑草 長谷川零餘子
葎のみ茂り戦跡崖残す 北野民夫
葎茂る港埠の貨車は扉を閉さず 秋元不死男
葛村の茂平次寄進露の磴(室生寺) 飴山實 『辛酉小雪』
蓬薊これより草の茂るかな 尾崎迷堂 孤輪
蓮の香や深くも籠る葉の茂 炭 太祇 太祇句選
蓮茂る中へ舳をすゝめけり 比叡 野村泊月
蔦茂り壁の時計の恐しや 池内友次郎
蔦茂る宇津の山辺へ沢づたひ 小野宏文
蕗の葉も老い交りたり草茂る 高濱虚子
蕗茂り妊るひとの歩き来る 長谷川かな女
蕗茂る木曾にも隠れ切支丹 杉本寛
蕗茂る畑を均して地鎮祭 岩下幸子
蕨手の長けし茂りとぞ思ふ 中原道夫
薬掘り茂れるほどには根の穫れず 肱岡恵子
藍茂り初めし濃みどり薄みどり 上崎暮潮
藜茂り焼けたるものをかくすさま 岸風三楼 往来
藪際や水仙の葉のやゝ茂り 温亭句集(篠原温亭遺稿) 篠原温亭、島田青峰編
蘆茂り岬に遺るアイヌ砦 太田ミノル
蘆茂るくらきふところ匂はせて 樹実雄
虎杖や蝦夷用水の辺に茂り 高濱年尾
蛇穴を出てサフランの茂りかな 癖三酔句集 岡本癖三酔
蛙鳴くかくれ水あり草茂る 大場白水郎 散木集
蜀魂門は胡桃の茂りかな 木導 四 月 月別句集「韻塞」
蜩や茂みの中は古き池 野村喜舟 小石川
裏口柿に茂られて夕日こぼれてゐる シヤツと雑草 栗林一石路
親しき家もにくきも茂りゆたかなり 飯田龍太
試歩の足汚るるたのし草茂る 山口一枝
赤きトラクター茂草反し憩ひをり 相馬遷子 山国
躍り入る蜥蜴に深き茂かな 岩田由美
身のなかを身の丈に草茂るかな 河原枇杷男 定本烏宙論
軍神は茂みに佇てり忠魂碑 高澤良一 寒暑
道草の茂りそめたる幟かな 五十崎古郷句集
里の風里の茂りに来て染まる 保坂リエ
金魚屋の小茂りゆかし郡山 松瀬青々
鉄材の積まれしままに草茂る 佐藤 由比古
隠亡が茂りよごさず鶏飼へり 長谷川双魚 風形
離農者のふゆる奥蝦夷蕗茂る 小島梅雨
雨しぶき雨と打ち合ふ草茂り 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
雨となり硝子器に茂るみどり児 阿部娘子
雨の坂こんにやくぬきん出て茂る 高井北杜
雨音を消す若竹の茂りあひ 野澤節子 『存身』
雲を根に富士は杉形の茂りかな 芭蕉
青葉茂れるに押し出て土の肉 和知喜八 同齢
静かにも病者の彼方茂りたる 龍太
静脈の樹が茂り合う美術館 吉田健治
駅長の釣場なりけり蕗茂る 長谷川かな女 雨 月
高々と朴の広葉や茂り中 松根東洋城
高茂り憎し埋るる素志もあり 香西照雄 対話
鮎の瀬や茂りに潜む月を見し 雑草 長谷川零餘子
鶏こゝと遠く風立つ茂かな 富田木歩
鷹の糞見つゝ夏山茂きかな 加舎白雄
麦湯冷やす手桶置きたる茂りかな 龍胆 長谷川かな女
麻茂り伏屋の軒を見せじとす 富安風生
以上
by 575fudemakase
| 2014-06-12 00:49
| 夏の季語
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by 575fudemakase

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全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
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[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
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