鵜
鵜
例句を挙げる。
あはれ鵜を使いて見せよ鵜匠たち 長谷川零余子
あゆみ出て秋鵜つぶやく日南かな 飯田蛇笏 霊芝
いさぎよし鵜の胸分けの夜の水 太祇
いつも鵜のゐる石もなしけさの雪 言水
うす闇に雲ゆく見ゆる鵜川かな 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
うつくしき雨おちて来し鵜舟かな 萩原麦草 麦嵐
うるか給ぶ烏帽子解くなき鵜の匠 石川桂郎 高蘆
おそろしや闇に乱るる鵜の篝 正岡子規
おもしろうてやがてかなしき鵜舟哉 松尾芭蕉
おもしろやふりむく鵜あり行鵜あり 松岡青蘿
お水送り鵜の瀬の雪に法螺ひびく 中村芳雪女
かうかうと身しぼる叱咤鵜の匠 橋本多佳子
かもめより海鵜さみしき城ヶ島 丸山哲郎
かわきたる舟に水吐くあら鵜かな 萩原麦草 麦嵐
かをかをと疲れ鵜鵜綱ひきずつて 橋本多佳子
きりぎしの囮鵜鳴かず海霧の中 町田しげき
くぐる鵜の伊良胡岬にまむかへり 栗生純夫 科野路
けだものとなりて餌を趁ふ荒鵜かな 佐野青陽人 天の川
こぼつ火を浴ぶはやり鵜の嘴しづく 兼間靖子
こめかみで耐える鵜篝五つの闇 稲葉直
さし入りて西日さみしき鵜籠かな 石原舟月 山鵲
さみだるゝ鵜に伴ありぬ山の湖 渡辺水巴 白日
しのゝめや鵜をのがれたる魚淺し 蕪村 夏之部 ■ 春泥舎會、東寺山吹にて有けるに
しまき晴れ海鵜さみしき鳥となる 古賀まり子
しまひ鵜やあまゆるごとく順を待つ 素子
すくむ鵜に燃くず折るるかゞり哉 井上井月
すくむ鵜のなほ哀れなり夜半の鐘 井上井月
すさまじくみだれて水にちる火の子鵜の執念の青き首見ゆ 太田水穂
すて舟にひとり濡れゐる荒鵜かな 中勘助
たぐらるゝ荒鵜は右往左往かな 埜村成行
たぐられていよよ荒鵜となりにけり 吉田鴻司
ただ水の行くのみ鵜川夜が明けて 山口誓子 紅日
たちまちに海鵜の礁の吹雪かすむ 河野多希女 こころの鷹
つかまへて篝火に鵜をかざしゐる 三森鉄治
つかれ鵜のこゑごゑ鵜匠きゝわけて 橋本多佳子
つかれ鵜の腮に月のしづくかな 大江丸
つながれし鵜舟ゆるるや昼の月 水木 鈴子
てつぺんに火の地獄ある荒鵜かな 細川加賀 生身魂
とびとびの巌を鵜よりも遠目して 古館曹人
ながれ出て舳のふりかわる鵜舟かな 飯田蛇笏 霊芝
ながれ藻にみよし影澄む鵜舟かな 飯田蛇笏 霊芝
なみつるるこれの鵜籠に朝ぐもり 飯田蛇笏 春蘭
はぐれ鵜を噛むささくれのしぐれ波 老川敏彦
はげ松の鵜は濡れ鳴海へだてけり 宮武寒々 朱卓
はしり出て藻を刈る雨に鳴く鵜かな 飯田蛇笏
ひいき鵜は又もからみで浮にけり 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
ひえびえと鵜の川透きて蚊帳はじめ 長谷川双魚 風形
ひえびえと鵜川の月の巌かな 飯田蛇笏 山廬集
ひえ~と鵜川の月の巌かな 飯田蛇笏 霊芝
ひと潜り波やりすごし鵜の浮かみ 戸井田厚
ひろがれるさきの鵜舟の篝屑 鈴鹿野風呂 浜木綿
ふなばたの湿り鵜舟の出を待てり 高澤良一 ぱらりとせ
ほう~と山に応ふる鵜声かな 楠目橙黄子 橙圃
ほう~と瀬を落つ鵜舟大揺れに 佐野青陽人 天の川
まだうつらうつらしてゐる籠鵜かな 明石洋子
みだれたる秋鵜の羽のしづくかな 飯田蛇笏 霊芝
むかしから川鵜はくらやみであり 阿部完市
やうやくに紛ふかたなき鵜舟の灯 吉屋信子
やませ崖海猫はごめどち鵜はうどち 文挟夫佐恵 遠い橋
ゆきも帰りも飛ばない岩の鵜妻の名呼ぶ 磯貝碧蹄館 握手
ゆく春の月に鵜の鳴く宿りかな 飯田蛇笏 霊芝
ゆふだちの月に成ぬる鵜川かな 炭 太祇 太祇句選後篇
ゆふべ見し鵜川を天守よりのぞく 岸風三樓
ゆるやかにのびて春潮鵜を放つ 橋本鶏二
よく呑みし鵜のはばたかず手繰られて 京極杞陽 くくたち下巻
よそ目には手荒きさまに鵜を馴らす 小島延介
よべの漁つとめたる鵜の翡翠の目 森田昇
よろよろと尉のつかへる秋鵜かな 飯田蛇笏 山廬集
よろ~と尉のつかへる秋鵜かな 飯田蛇笏 霊芝
わさび田の奥行き見せて鵜鳴く 藤岡筑邨
わたる鵜の羽のきしる日ぞ芦の秋 加藤しげる
わだなかや鵜の鳥群るゝ島二つ 水原秋櫻子
わびしさに沖の鵜を指し野辺送り 佐野まもる 海郷
われに触れ腰簑さやぐ鵜の匠 石川桂郎 高蘆
をだまきの花に雨ふる鵜宿訪ふ 宮下翠舟
一つ鵜の波間がくれの春浅き 大場白水郎 散木集
一ッ葉の芽吹くや奥に鵜の羽音 石川桂郎 高蘆
一冬の囮鵜瞼縫はれけり 岡野風痕子
一礁に一鵜の冬も深まりぬ 加倉井秋を 『欸乃』
一語らひ三和土濡らして鵜よ眠たげ 石川桂郎 高蘆
一語らひ声もらしつつ夜の鵜籠 野澤節子 黄 炎
一里先きの鵜舟明りやビール上ぐ 佐野青陽人 天の川
一雨のありたることも初嵐 鵜川 易子
三伏の月の穢に鳴く荒鵜かな 飯田蛇笏(1885-1962)
上り鵜の最後の一羽鳴きにけり 鈴木六林男 王国
上ミ鵜飼闇に鵜舟の一火過ぐ 近藤一鴻
上手ほど罪おそろしき鵜縄哉 多少
下り来る鵜舟の篝まだ小さく 高木晴子 晴居
下流より見る鵜篝は太古の火 松井利彦
世わたりや鵜縄の上も十二筋 松岡青蘿
両翼に鵜の海安乗中学校 猿橋統流子
並ぶ鵜のみづかき黒し月の舷 吉野義子
並ぶ鵜の黒の端正寒日和 吉年虹二
並べある鵜籠をわたる蝶々かな 松藤夏山 夏山句集
二羽のみの昼の鵜飼や鵜は激す 藤田 宏
二羽のゐて鵜の嘴あはす嘴甘きか 橋本多佳子
五月闇蓑に火のつく鵜舟かな 許六
五月雨や拾うた鯉も鵜の嘴目 浜田酒堂
五橋てふ酒をたゝへて鵜舟かな 飴山實 『次の花』
仕舞鵜の俄に啼きてなき止みぬ 関戸靖子
仕舞鵜は仰山に魚喰はされぬ 関戸靖子
伊勢荻や鵜の進む夜の風の音 馬仏 五 月 月別句集「韻塞」
伊師浜の鵜捕切戸の磯小菊 石原八束
低翔の鵜にしぶき立つ初日かな 益田ただし
住み着きしは天保年間とぞ凍み鵜 高澤良一 鳩信
何か目指す鵜は照り海の春吹雪 加藤知世子 花寂び
個個にして鵜籠の内やなまぐさし 石川桂郎 高蘆
兄鵜弟鵜それ~の名に並ぶなり 鈴鹿野風呂 浜木綿
六月の波照りに鳴く荒鵜かな 松村蒼石 露
六本の鵜縄一本怠け縄 今瀬剛一
円陣をつくり燃えくる鵜舟かな 京極杞陽 くくたち下巻
冬うらら海鵜の声の三河かな 岩井久美恵
冬ぬくき島に来にけり海鵜見る 星野立子
冬の崖すでに鵜川の音いそぐ 松井利彦
冬の波よりはらはらと鵜となりて 村松紅花
冬濤に鵜にこそ似たれ志賀の蜑 下村梅子
冬風に下駄も結べる鵜籠かな 飯田蛇笏 霊芝
凍つるまで鵜の瀬の水のひびきかな 桂 信子
凍らんとしては首上ぐ荒鵜かな 佐野青陽人 天の川
凧合せ戦はずして鵜ぞわたる 軽部烏帽子 [しどみ]の花
切火して鵜舟々々の送らるる 京極杞陽
列立て火影行鵜や夜の水 炭 太祇 太祇句選
初凪の岩の鵜ひとついつ翔つや 長谷川久代
初凪や四羽の鵜のとり礁の上 白泉
初凪や鴉は陸に鵜は海に 鈴木真砂女 夕螢
初凪や鵜のたむろして生簀籠 宵灯
初日さす方よりとぶは伊勢の鵜か 杉本寛
初東風や波に呑まれて浮く海鵜 鈴木真砂女 夕螢
初潮に鵜の黒耀の絶ゆるなし 遠山壷中
初潮や鵜戸の神岩たたなはり 下村梅子
初茜海鵜は海面離れずに 千田一路
利尻暮れ海鵜一羽の黒礁 高澤良一 素抱
北陸線鵜の礁鵜の礁暗くなる 森 澄雄
十二鵜の玉の緒つなぐ鵜縄かな 渡辺恭子
千の鵜の一塊となる夕ごころ 浦井文江
千余年いま鵜の川の闇涼し 石川桂郎 高蘆
午過ぎの磧に干せる鵜縄かな 飯田蛇笏 霊芝
卓々と声張る鵜群暮雪急 村上冬燕
南無鵜川盆花ながれかはしけり 飯田蛇笏
南風に向きて南風を聞くなり礁の鵜 岩間民子
卯の花や鵜縄にぬるゝ家の内 松瀬青々
原油まみれの海鵜地球の墓標とも 堀葦男
只一つ鵜の守るのみの沖の石 鈴鹿野風呂 浜木綿
叱られて又疲れ鵜の入りにけり 一茶
吐ききつて闇にも涼し鵜の整列 加藤知世子 花寂び
吐ぬ鵜のほむらにもゆる篝かな 其角
向うむきの鵜並び文書く師へ妻へ 磯貝碧蹄館 握手
向き変ふるとき鵜篝の岸照らす 岸風三樓
哀しみの眼は鵜にもあり吾を見る 三好潤子
啼き帰る鵜にヒリウスの光る雪 渡辺水巴 白日
啼く鵜あり白崩崖際の鵜捕鳥屋 石原八束 黒凍みの道
嘴に鑪かけられ新鵜かな 棚山波朗
地図よりも暗く鵜が覚め日本海 猪俣千代子 堆 朱
城山の真下の闇を鵜舟過ぐ 松井利彦
声かけて鵜縄をさばく早瀬かな 涼菟
夏帯に彼の鵜篝を描きたり 後藤夜半 翠黛
夏木立川鵜にはかにとびつれし 岡井省二
夏潮や遠き一鵜を恋ふ目して 小林康治 『華髪』
夏痩せの羽根ぼろぼろの鵜なりけり 沢木欣一 遍歴
夕の鵜縁台に身をおきしとき 木津柳芽 白鷺抄
夕影を待てるがごとき鵜籠かな 後藤夜半
夕焼の手足洗ひて鵜川びと 渡辺 昭
夜に入るも鵜川みどりの奔りけり 近藤一鴻
夜は別の貌して鵜縄つかひをり つじ加代子
夜は鵜に晝の眠りは海亀に 田中裕明 先生から手紙
夜やいつの長良の鵜舟會て見し 蕪村遺稿 夏
夜半過ぎて鵜の灯あはれになりにけり 中川宋淵 詩龕
夜明りに渦とけむすぶ鵜川かな 飯田蛇笏 山廬集
大虹の照り映ゆる輪を鵜がくゞる 渡邊水巴 富士
大雨のひと洗ひせし鵜川かな 井上弘美
姉いつか鵜の鳥孕む海辺の家 金子兜太 早春展墓
宇治川の風手枕に鵜舟待つ 北見さとる
宝石の指を浸して鵜舟待つ 長田等
客船に白鵜は近く浮き涼し 大場白水郎 散木集
寒き鵜を砂丘行く身のあてどとす 佐野美智
寒の鵜の嘴ふりむけてしたたる日 木村蕪城
寒の鵜の無眼旋回夜学生 原田喬
寒月が鵜川の底の石照らす 栗田やすし
寒潮に鵜を指す舟の温泉客かな 宮武寒々 朱卓
寒潮の鵜が守る沖の一つ巌 石塚友二 光塵
寒潮をくぐりて鵜の眼青深む 星野恒彦
寒濤の鵜をひそめたる閑けさよ 永井龍男
寒風へ首差し伸べて川鵜たつ 加藤耕子
寧楽に水送りし鵜の瀬春終る 角川源義 『西行の日』
小寒の鵜の肩先のなにもなし 金田咲子 全身 以後
少年は男鵜綱を捌く時 中村明子
山の月鵜舟の細身照らすなり 吉野義子
山の端の月や鵜舟の片明り 井上井月
岩の一点鵜ならましかば青北風に 林原耒井 蜩
岩海苔を掻くや身近に鵜を浮かせ 鈴木真砂女 夕螢
岩百合や鵜の嘴も沖を見て 永田耕一郎 海絣
岩礁の海鵜胸張る野分雲 東 天虹
岩礁の鵜の目緑に冬半ば 柴崎左田男
岩襖鵜翔けるところ寝るところ 林原耒井 蜩
峰つくる雲や鵜川の水の筋 碧童句集 小澤碧童
崖の鵜が見えて勤労感謝の日 日美清史
巌が根をこがしてはゆく鵜船かな 原石鼎 花影以後
巌の鵜の闇より黒し初日待つ 清水貴久子
巌壁の裾翔くる鵜の一羽のみ 水原秋桜子
川で消す鵜篝鉄も燃えゐるを 松井利彦
川よりも低き鵜塚や返り花 神蔵 器
川上の空まづ焦げて鵜舟かな 籾山梓月
川波の眩しき昼の鵜川かな 井上喬風
川端に鵜籠洗ふも年用意 藤井智子
川風や鵜縄つくらふ小手の上に 高井几董
巣にこもる鵜をはるかにし鴨帰る 松村蒼石 寒鶯抄
巣立鵜に草の匂ひの風吹けり 中川幸子
巣立鵜の並び止れる高枝かな 岡安迷子
帰りきし鵜舟を洗ふ星月夜 松岡英士
帰り来し鵜よ鵜の島を飛びめぐる 右城暮石 上下
帰り鵜やいまし全島日矢の中 岸田稚魚『負け犬』
年の瀬や比目?鵜の物思ひ 其角
年逝くと来たれば海に鵜の潜く 金箱戈止夫
底見へて鵜川あさまし夜の水 炭 太祇 太祇句選後篇
影さして舟の鵜籠や蘆枯るゝ 飯田蛇笏 霊芝
徒食して昼殺伐と鵜の仲間 津田清子 礼 拝
思ふべきかな/沖の/捨鵜と/母の雨 高柳重信
急流の縞と鵜舟の炎かな 京極杞陽 くくたち下巻
急流を潜りつづけて鵜は荒む 津田清子 礼 拝
性荒き鵜を馴らす日々遅々とあり 稲畑汀子
恍惚と舟へ上るに鵜の序列 平出公象
憩ふ鵜も沖へ嘴向け五月来ぬ 野澤節子 花 季
懶け鵜の手綱一すぢゆるみがち 田中秋琴女
我魂と人や見るらめ鵜の篝 賜馬
戻り鵜を発止発止と氷雨打つ 倉橋羊村
手のぬれて田植の合羽鵜のごとし 古舘曹人 砂の音
揚り鵜のかざす双羽にちるさくら 瀧春一 菜園
断崖に鵜の群憩ふ磯開き 川辺房子
新月や水くぐる鵜に檜縄 宇佐美魚目 秋収冬蔵
日の暮の暗き鵜籠を覗き見る 岩田由美
日輪へ羽摶きて鵜の雛育ち 石井とし夫
早瀬ゆく鵜舟に闇のまとひつく 柴田奈美
早稲の香に羽がひ締めたる鵜綱干す 細見綾子 黄 炎
明け易き片山影を鵜舟かな 柚味噌(木母遺稿) 安田木母、秋田握月編
春の水にうたゝ鵜繩の稽古哉 蕪村 春之部 ■ 野望
春寒し鵜を荒海へ残し去る 阿部みどり女 『雪嶺』
春潮や藁の戸を吊る鵜獲小屋 古舘曹人 樹下石上
春潮や鵜をぶちまけて大きうねり 瀧春一 菜園
春潮を堰く岩門あり鵜戸といふ 藤田湘子 黒
春潮を潜きては鵜の乱れゆく 金箱戈止夫
春眠の夢をついばむ鵜かな 金尾梅の門 古志の歌
春雪のこの降る雪に鵜をわたす 佐野まもる 海郷
昼の鵜の嘴争ひもすぐ終る 辻田克巳
昼の鵜の現に鳴か籠のうち 松岡青蘿
昼の鵜の黒きみづかきみたりけり 加藤三七子
昼の鵜や鵜匠頭の指ついばみ 西東三鬼
昼は渚をひたすら歩み鵜と会いぬ 金子兜太
昼寝鵜のさめたるまるき目なりけり 細川加賀 生身魂
昼月や白木の鵜舟白緒結ひ 吉野義子
時雨鵜よ握れば温きひとの手よ 奈良文夫
暁や鵜籠に眠る鵜の労れ 子規句集 虚子・碧梧桐選
暦日や鵜の糞白きめくら岩 磯貝碧蹄館 握手
曇天に時に湧きたつ鵜なりけり 細見綾子
月光のしたゝりかゝる鵜籠かな 飯田蛇笏
月光の仄と一鵜の病みゐたる 斎藤梅子
月出て手縄もつるゝ鵜舟かな 鳴鳳
月刎ぬる鵜舟の棹の素早さに 赤松[けい]子 白毫
月明の鵜匠の家の鵜も眠る 長田等
月見草花を鮮に鵜舟並む 石原舟月
月見草鵜が敏感になりにけり 近藤一鴻
月読の国の鵜舟となりにけり 岡井省二
有明の水すみわたる鵜川かな 赤木格堂
朝凪に首だけ漂う鵜を見ている 尾田明子
朝市に鵜傷の鮎の並びけり 小林葭竹
朝月や鵜川しろ~横たはり 沢村芳翠
朝来ると山小屋叩く星鵜 伊藤いと子
朝河鹿孤つ鵜が風迎へをり 佐野良太 樫
朝霧や水をはなるる鵜の雫 毛* 八 月 月別句集「韻塞」
杉の鵜が竹の鵜を呼ぶ日暮かな 臼田亞浪 定本亜浪句集
松落葉(ざら)さらひ除けて鵜捕師通りけり 石原八束 黒凍みの道
松風に干し重ねたる鵜籠かな 山西雅子
松風の吹くや鵜川の朝ぼらけ 井月の句集 井上井月
枯るるもの枯れて鵜の島鴨の島 大木あまり 火球
枯れはげし海鵜の城の断崖は 羽部洞然
枯れるほど鵜の来てねるや松の色 野澤凡兆
柳鮠吐いて淋しき鵜舟かな 萩原麦草 麦嵐
梅雨晴や鵜の渡りゐる輪島崎 前田普羅 能登蒼し
椋鳥に襲はれさけぶ海鵜かな 大場白水郎 散木集
椿落つ鵜の瀬の雪を窪ませて 田中佐知子
業馴て水無瀬にたてる歩鵜哉 加舎白雄
檻の鵜も鵜籠も秋の風の中 島谷征良
櫂さして置きならべある鵜籠かな 五十嵐播水 埠頭
櫂をもて荷ひ運びの鵜籠かな 松藤夏山 夏山句集
欲深き婆の鵜の目を忘れめや 筑紫磐井 婆伽梵
殺生の鵜川に沁みて能の笛 長田等
殿原の名古屋皃なる鵜川かな 蕪村 夏之部 ■ 春泥舎會、東寺山吹にて有けるに
水くれて三十日に近き鵜川哉 加舎白雄
水くゞる鵜のいさましさあはれなり 森鴎外
水中の暴風雨や鵜の魔入り乱れ 佐野青陽人 天の川
水叩き叩き翔つ鵜や沖縄忌 奈良文夫
水底の鵜のさま見えて哀れなり 臼田ふるさと
水送り鵜の瀬の神事詣でけり 橋爪梅子
汐がすみ鵜の舞ひ島をはるけくす 太田鴻村 穂国
汐干舟動きそめたり鵜が来たる 小島 昌勝
沈みては浮きては海鵜年惜しむ 東海林照女
沖つ岩鵜がゐて泳ぎつかれたり 佐野良太 樫
沖なるや鵜のとまりたる汐干岩 秋櫻子
沖の鵜の睦みて翔たず春の暮 下村ひろし 西陲集
河の鵜に秋風波を照らすなり 西村公鳳
河鹿鳴いて鵜川の闇の極まりぬ 内藤吐天
河鹿鳴くやさしさにして鵜網引く 加藤知世子 花寂び
波うづめつくせる海を鵜が一羽 右城暮石 上下
波にのり波にのり鵜のさびしさは 山口誓子(1901-94)
波照りて昃りて岩の鵜はさみし 横山房子
波皺に鵜の現はるゝ初日かな 白水郎
洗はれしごと仕舞鵜が並びけり 萩原麦草 麦嵐
洞ふかく鳴く虫ありて神在す ひろし (宮崎県鵜戸神宮)
流浪して鵜の嘴も減りゆくか 小檜山繁子
浪の穂にうかぶも一羽秋の鵜は 佐野まもる 海郷
海の鵜に十一月の日は移る 小宅容義
海底にゆらぐ夏日や鵜戸の宮 米谷静二
海鵜翔ち何も無かりし沖の岩 河野南畦
涅槃会の海鵜はしらせ岬暮るる 河野南畦 湖の森
渦すりて鵜かいくたびも霞みけり 佐野まもる 海郷
渦潮に浮けるを鵜としあはれむや 稲垣きくの 牡 丹
渦潮に生きる鵜なれば気も荒し 稲垣きくの 牡 丹
渦潮に鵜と視るひまもなく紛る 稲垣きくの 牡 丹
漁の他鵜と鵜つながる何もなし 津田清子 礼 拝
漓江連綿鵜になれぬ人がみえます 阿部完市
潜きても鵜縄のうちの自由とは 稲岡長
潜り出て鮎を得ざりし鵜の顔よ 西東三鬼
潜る鵜の水晶島は結氷す 古館曹人
潮の彩かはるとみるは鵜の群るゝ 佐野まもる 海郷
潮濃くて鵜は眠からむ春蜜柑 中拓夫
澪標の一本となる海鵜かな 香川修廣
濁水が鳴る一瞬の鵜舟過ぎ 石川桂郎 高蘆
濡れ鵜まぶし漆黒まといたき齢 八木三日女 赤い地図
瀬にかづく鵜のかくれなしちるさくら 瀧春一 菜園
瀬に乗りて鵜篝が火を撒き散らす 松井利彦
瀬に据ゑて鵜舟の枯れの始まりぬ 関戸靖子
火の波に透きて潜れる荒鵜かな 野見山朱鳥
火の目して鵜は首綱の二十年 楸邨
火の粉にも面テそむけず鵜を捌く 古田藍水
火の粉吐き突つ立つ鵜匠はたらく鵜 西東三鬼
火屑浴び絖のごとくに荒瀬の鵜 宮武寒々 朱卓
灯を消して闇ひろがりし鵜川かな 森光 兎喜恵
烈日に病めば啼く鵜や花葵 西島麦南 人音
烏瓜の花よ鵜の巣の三番子 細見綾子
烏羽玉の闇の色なるあら鵜哉 正岡子規
焚き添ふる鵜篝薪を以て叩く 高濱年尾 年尾句集
父祖よりの鵜籠を継ぎて匠老ゆ つじ加代子
牽かるるもまた安からむ手縄の鵜 橋本多佳子
独り来て鵜に近々と海苔あらふ 佐野まもる 海郷
猛り鵜のむんずと水を掴みたり 岸田稚魚 『萩供養』
玄海の鉾やあふれて岩の鵜が 古舘曹人 能登の蛙
甘え鵜に鵜匠や鬚のやさしかり 石川桂郎 高蘆
甜瓜船次ぎ~下り鵜に遠く 大場白水郎 散木集
生きる場を局限され鵜つつき合ふ 津田清子 礼 拝
疲れ鵜に川が束ねてありしかな 関戸靖子
疲れ鵜に水面の篝奈落なる 奥抜良人
疲れ鵜に水面を均らす夜空かな 渋谷道
疲れ鵜のあやまたず乗る己が籠 下田稔
疲れ鵜のいつまで仰ぐ天の闇 関戸靖子
疲れ鵜のせうことなしの羽ひろげ 鷹羽狩行 七草
疲れ鵜のなほ船ばたに気を配り 今泉貞鳳
疲れ鵜のひたひた歩く足音かな 中村明子
疲れ鵜のまたふなべりを踏みはづし 杉原史耕
疲れ鵜の互に嘴をかみ合はす 伊藤敬子
疲れ鵜の嘴こじあけて餌を与ふ 棚山波朗
疲れ鵜の川見てゐしが振り向きぬ 関戸靖子
疲れ鵜の引上ざまに羽ばたける 鈴鹿野風呂 浜木綿
疲れ鵜の投げ餌を落とす舳先かな 後藤ひさし
疲れ鵜の漆黒を大抱へにし 細見綾子 黄 炎
疲れ鵜の瑠璃の泪目なせりけり 石川桂郎 高蘆
疲れ鵜の眼のある時は媚に似て 永井龍男
疲れ鵜の石にのりたり石となり 遠藤信子
疲れ鵜の石も濡らさず籠に入る 中村明子
疲れ鵜の舷打つて上げらるる 細川加賀 生身魂
疲れ鵜の首はもつべき長さかな 今瀬剛一
疲れ鵜の鵜縄たるむをゆるさざる 岸田稚魚 『萩供養』
疲れ鵜の鵜縄ゆるめば啼きにけり 鷲谷七菜子 天鼓
疲れ鵜は籠に一声吐きにけり 佐藤美恵子
疲れ鵜を労はる己が指噛ませ 栗田やすし
疲れ鵜を据ゑて春潮ゆきかへり 西村公鳳
疲れ鵜を見分け聴きわけ綱さばき 加倉井秋を 『真名井』
疲鵜にいつまで水の修羅場かな 木村寿秀
疲鵜に指をかませて鵜匠かな 長谷川素逝
疲鵜のひらきてはとづ眼かな 岡田耿陽
疲鵜の細きうなじを並べけり 素逝
白日に据ゑて烟れる鵜籠かな 中島月笠 月笠句集
白浪の絶ゆるときなし鵜の影絵 横山白虹
白雨去り鵜縄いよいよ緊りけり 近藤一鴻
百の鵜の荒磯を占むる現あり 佐野まもる 海郷
盲鵜の法師のごとき寒暮かな 近藤一鴻
真鶴の岬も秋めく鵜の聲は(真鶴半島) 河野南畦 『硝子の船』
眠り鵜のよべの疲れを残しける 冨田みのる
眠る鵜に鵜籠置場の軒浅し 石川桂郎 高蘆
石蕗咲きて鵜戸はひねもす怒濤音 大橋敦子 匂 玉
石見ゆる闇に鵜のかげ走りけり 近藤一鴻
磯の鵜や春一番の波しぶき 弘
磯の鵜を車窓にかぞへ初詣 中山純子
磯岩に飛び岩の鵜も余寒かな 河東碧梧桐
礁のうへ梅雨まみれなる鵜ノ足貝 高澤良一 素抱
秋の日や雌といへども荒鵜にて 鈴木真砂女 夕螢
秋の水鵜の脚へ来て急ぎけり 竹貫示虹
秋の鵜の吐きてか細き鮎ばかり 樋笠文
秋晴や鵜の島ほとり湖の波 高橋淡路女 梶の葉
秋深く痩せたる川の鵜を見せず 石川桂郎 四温
秋潮の穏かなれば鵜も寧し 鈴木真砂女 夕螢
秋草に疲れきし鵜の身を寄せぬ 加藤楸邨
秋風に安房の海鵜も潜きをらむ 鈴木真砂女 夕螢
秋風に羽拡げても繋がれ鵜 小松崎爽青
秋風や思はぬ方に鵜の浮かび 鈴木真砂女 夕螢
稲妻に舁荷の鵜共騒ぎけり 乙字俳句集 大須賀乙字
稼ぎ鵜の一つが翔たす遊び鴨 石塚友二 光塵
突堤の突端の鵜の寒さかな 蓬田紀枝子
突堤や荒鵜も人も春たけなは 栗生純夫 科野路
立上る土用波より鵜現れ 橋本鶏二
竹割つて鵜籠つくろふ十二月 栗田やすし
箸持ちて鵜籠を覗く宵月夜 朱廸 五 月 月別句集「韻塞」
篝屑落つるさ中を鵜はくぐる 鈴鹿野風呂 浜木綿
篝火に憑かれて狂ふ荒鵜かな 佐野青陽人 天の川
篝火に早瀬の荒鵜浮かび起ち 高井北杜
篝火に羽根張つてゐる濡鵜哉 小澤碧童 碧童句集
篝火の尽きざる焔鵜を搾取して 津田清子 礼 拝
篝火の火屑にをどる鵜ののんど 椎橋清翠
篝火の金粉こぼす鵜のまはり 平畑静塔
篝火や引き上げらるる鵜のたけり 碧童
篝火や荒鵜を叱る眼の光 子規句集 虚子・碧梧桐選
篝火や鵜縄沈みて底浅く 雑草 長谷川零餘子
篝焚く左手鵜縄のいとまかな 大谷句佛 我は我
篝足す鵜をホホホホとなだめては 伊藤敬子
籠の蓋嘴打ちやまぬ荒鵜かな 岡田耿陽
籠の鵜に鵜飼休みの雨しぶく 西村梛子
籠の鵜の咽喉をふるはせつゞけをり 森田峠 避暑散歩
籠の鵜の鳴けば手間どる舟用意 森田峠 避暑散歩
紅葉散るや鵜が啼ける東山 楠目橙黄子 橙圃
細道に篝こぼるる鵜舟かな 許六
絶壁にはりつく海鵜雪はげし 新谷氷照
緩みて張りてもこがねなす鵜綱 上井正司
縄さばきつゝ鵜篝を焚き継げり 上條 筑子
繋がるる鵜舟細身よ月見草 冨田みのる
繋りゐて鵜舟は鵜舟同士なる 大橋はじめ
群ら返る椋鳥の奇襲に鵜も立てり 大場白水郎 散木集
群るる鵜に乱礁の環の鏡なす 橋本鶏二 年輪
羽干し鵜の岩礁垂氷よろひけり 井口 秀二
羽根ひろぐ岩礁の鵜の黒十字 秋元不死男
羽根拡げ鵜飼終りし鵜が甘ゆ 右城暮石 上下
翅開き荒鵜冬来る崖歩む 西村公鳳
翔る鵜に立春の海とどろけり 長谷川史郊
翠巒や鵜川しぶきてしづかなり 伊藤敬子
翼張りて翔つにはあらぬ鵜なりけり 鈴木鶉衣
腹式呼吸を海へ鵜がする淋しくなし 磯貝碧蹄館 握手
舟梁に細きぬれ身やあら鵜共 炭 太祇 太祇句選
舟梁の月に荒鵜を納めけり 雑草 長谷川零餘子
舟行の水脈の乱れの荒鵜かな 『定本石橋秀野句文集』
舳を並めて山影乱す鵜舟かな 雑草 長谷川零餘子
舷に十二羽の鵜の並ぶ時 鈴鹿野風呂 浜木綿
舷を叩いて鵜舟遠ざかる 楠目橙黄子 橙圃
花茨やとなり鵜の宿なまぐさく 野村喜舟 小石川
若狭井へ送る鵜の瀬の雪解水 重田青戸
若芦やながされている鵜の一つ 小川鴻翔
茫々と野焼を待てり鵜殿葭 能村登四郎 菊塵
茶の花や鵜の目は水を湛へたる(岐阜) 殿村菟絲子 『菟絲』
草の線荒鵜そこまで飛びのぼらず 林原耒井 蜩
荒き鵜のひつぱる鵜舟さかのぼり 細川加賀 生身魂
荒れ鵜群れ海の底まで雪降れり(尻屋崎付近二句) 河野南畦 『硝子の船』
荒東風や松葉をかぶる鵜獲小屋 古舘曹人 樹下石上
荒梅雨の鵜の目あをあを飼はれたり 宮田正和
荒鵜のうしろに海の横たはる 原裕 葦牙
荒鵜の屎水のごとくに萩けがる 飯田蛇笏 春蘭
荒鵜の目冬海ばかり見て炎ゆる 野澤節子 黄 炎
荒鵜の目瑠璃深めつつ春逝かす 北見さとる
葬の火の渚につづく鵜舟かな 内藤丈草
蓑笠も荒鵜つかひや川おろし 李由 五 月 月別句集「韻塞」
藤太・藤次嘴を打ち合ふ鵜のごとし 筑紫磐井 野干
藪蔭の嵯峨は鵜の寝る小家哉 竹冷句鈔 角田竹冷
蚊帳ちかく鵜の鳴いて梅雨残る 金尾梅の門 古志の歌
蜉蝣や鵜の瀬に深きひとところ 石川桂郎 高蘆
血まなこの荒鵜に爆ぜる篝かな 高井北杜
衣かつぐ誰そ草やみや鵜舟去る 飯田蛇笏 山廬集
西行谷見えて川鵜のとぶ秋ぞ 岡井省二
見えを切る徒鵜飼の鵜掌に載つて 三好潤子
見張鵜らうなじを長く雲は夏 富安風生
見物の火にはぐれたる歩行鵜かな 去来 五 月 月別句集「韻塞」
見習ひ鵜艫の昏きにあはれなり 大谷句佛 我は我
親迎ふ雛鵜の逸り見上げけり 臼田亜浪 旅人
観衆の前の鵜観衆を知りてゐし 細見綾子 伎藝天
詩も波も寄せてはかへす鵜はとばずも 磯貝碧蹄館 握手
誰住て樒流るゝ鵜川哉 蕪村 夏之部 ■ 春泥舎會、東寺山吹にて有けるに
豆も咲き鵜宿門べの蕃茄生る 飯田蛇笏 春蘭
責暗し鵜縄返って群烏 調和 選集「板東太郎」
贄の鵜へ目覚の神楽さや~と 大森積翠
贄の鵜を放つ暁闇気多の海 吉村春潮
赤き火の闇より現るる鵜舟かな 坂井建
走馬燈はやし鵜篝暗くなる 内藤吐天 鳴海抄
踊舟二度も通りて鵜舟来る 田村了咲
身つくらふ鵜に山暮れて来りけり 龍胆 長谷川かな女
身を正し礁の海鵜羽を干す 真田風来
載せ石の灼けて籠の鵜老いゆくか 伊藤いと子
送水文ひらりと鵜の瀬の渕に消ゆ 生田弥栄子
通し鵜と十二鵜縄と疲れけり 石川桂郎 高蘆
遅れ飛ぶ鵜の目を海の青として 古館曹人
遊び鵜のまはり末枯初めにけり 岸田稚魚 『萩供養』
遊舟に灯が点く鵜川暮れざるに 松井利彦
遊船のたてこむ中の鵜舟かな 比叡 野村泊月
道のべに痢して鳴く鵜や冬の風 飯田蛇笏 山廬集
都に友あり夕焼鵜追ひ越す汽車 香西照雄 対話
酒にある月の出汐の鵜舟かな 尾崎紅葉
鉄線花と鵜とぐんぐんと近づきたる 金子兜太 詩經國風
錦帯橋映れる水に鵜を馴らす 上符秀翠
鍛冶の火も筋に曇る鵜舟かな ぶん村 五 月 月別句集「韻塞」
長き橋渡りて風の都鳥 鵜川 易子
闇中に山ぞ峙つ鵜川かな 河東碧梧桐
阿修羅の鵜女体とききしあはれさよ 渡辺桂子
陽炎となるか川鵜の棒立ちに 大木あまり 火球
離れ鵜の水輪の消えし頃浮かぶ 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
離れ鵜の眼に篝火の濁りかな 沼尻巳津子
雨の夜の一つとなりし鵜船かな 雑草 長谷川零餘子
雨の日の鵜舟の屯ろ宿の下 鈴鹿野風呂 浜木綿
雨後荒れの人寄せつけぬ鵜川かな 今泉貞鳳
雨足の近づいてくる海の鵜よ 鈴木六林男
雪吹くや群をはなれし鵜二三羽 臼田亞浪 定本亜浪句集
雪空や檻の海鵜は遠く見る 阿部みどり女
雪空や襤の海鵜は遠くを見る 阿部みどり女
雪解川鵜舟だまりに来てやさし 北見さとる
雫して鵜は首綱の二十年 加藤楸邨
雲こめて帰る鵜遠しさみだるゝ 渡辺水巴 白日
青北風や翼ひろげて鵜の歩く 山口草堂
面白うてやがて悲しき鵜舟哉 芭 蕉
音もなく来し鵜船かな篝濃し 八木三日女 赤い地図
頭より鵜籠の中へ放たれし 伊藤敬子
頸たたき荒鵜なだめる鵜匠にて 中村明子
頸のべて痩鵜の寒き姿かな 大場白水郎 散木集
頸ほそき朝の青鵜に麦茶沸く つじ加代子
頸細く鵜や房州の逆さ寒ん 猪俣千代子 秘 色
風吹て篝のくらき鵜川かな 子規
風景の裂け目見ている川鵜かな 小堤香珠
風花やかたらひの鵜の白灯 殿村莵絲子 花寂び 以後
飢鵜の篝かき消す早瀬かな 李康
首のばしておとなしくくゝらるる鵜かな 冬の土宮林菫哉
首立て鵜のむれのぼる早瀬哉 浪化 (1671-1703)
首結ひに枷の荒鵜の瀬越し舟 野澤節子 黄 炎
首長く海鵜につづき冬の鳩 阿部みどり女 月下美人
高きより先をあらそひ鵜舟の火 長田等
高潮の穂中投げては鵜を馴らす 加藤知世子 花寂び
魚呑みて鵜の起ち上る寒怒濤 山田晴彦
鮎吐きし鵜のしばらくは嘴あけて 北見さとる
鮎食うて生臭き口鵜舟待つ 野澤節子 黄 炎
鳥屋の鵜の雨の匂ひに身を跼む 加藤耕子
鴨のうしろ鵜の首が立つ寒さかな 蓬田紀枝子
鵙鳴いて鵜川は幽き瀬をもてり 長谷川双魚 風形
鵜かがりのおとろへてひくけむりかな 飯田蛇笏 春蘭
鵜かがりの散りて音あり秋の川 永井龍男
鵜かゞりのおとろへて曳くけむりかな 飯田蛇笏
鵜がとんで堺の空の薄暑かな 高濱年尾 年尾句集
鵜がのぼる屋根の日向や芦の花 吉田冬葉
鵜が占めて寒波にをどるブイひとつ 佐野まもる 海郷
鵜が寄りて濡身をさらに濡らしあふ 藤井亘
鵜が帰り来て寒潮の力づく 内藤吐天 鳴海抄
鵜が渡る岬の下の梅雨にごり 前田普羅 新訂普羅句集
鵜が羽を散らしたる磯春の雪 中拓夫
鵜が翔ける大石狩の夕焼空 飯田蛇笏 雪峡
鵜が見えずなり強風が日緘す 横山房子
鵜さばきの手綱馬上にある思ひ 狩行
鵜じまひの一扁舟となり舫ふ 野澤節子 黄 炎
鵜じまひの鵜の火を落す川迅し 西村公鳳
鵜たいまつ消えて淦汲む音すなり 星野立子
鵜つかひの舷叩く谺かな 大谷句佛 我は我
鵜つかひや忍冬咲いて昼の宿 河東碧梧桐
鵜づかひの手に鵜が逸りかちわたる 柳芽
鵜づかひの昼寝の床や蠅の声 史邦 俳諧撰集「有磯海」
鵜とともにこころは水をくぐり行 鬼貫
鵜と禊ぐ水とて幣を立てし桶 辻口静夫
鵜のかがり消えて長良に灯の一つ 士朗
鵜のかほをして小平太の捕らへらる 筑紫磐井 野干
鵜のかゞり消て暁の水寒し 松岡青蘿
鵜のくぐる水の底まで黄落期 きくちつねこ
鵜のつらに篝こぼれて憐れなり 荷兮
鵜のやさしさ鵜匠の腰の蓑を噛む 誓子
鵜の一つ恵方迥かに浮き沈み 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
鵜の下りる寒潮紺を張るところ 皆吉爽雨
鵜の中のさびしきは羽ひろげをり 林 翔
鵜の乱舞見て来て咳の募りけり 大島民郎
鵜の休みゐる間に鵜匠淦汲める 桑田青虎
鵜の修羅のはじまりて水深まりし 長谷川双魚 『ひとつとや』
鵜の側を竹皮迅くながれたり 萩原麦草 麦嵐
鵜の匠鵜と同族の黒衣装 野澤節子 黄 炎
鵜の去つて潮ぐもりに榛の花 鳥居美智子
鵜の嘴にて鮎渾身の青一跳ね 加藤知世子 花寂び
鵜の嘴に山女がひかりちるさくら 瀧春一 菜園
鵜の嘴に水玉をどる早瀬かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
鵜の嘴に躍れる鮎の篝映え 鈴鹿野風呂 浜木綿
鵜の嘴に魚とり直す早瀬かな 加舎白雄
鵜の嘴の鮎を一呑みする長さ 山下美典
鵜の団欒めいめい霧にくるまるのみ 細谷源二
鵜の墓の昏きに一樹寒椿 松井慶太郎
鵜の宿に母家離れ家葉鶏頭 吾妻規子
鵜の宿の下に遊船かゝりけり 比叡 野村泊月
鵜の宿の庭ひろ~と葵かな 高浜虚子
鵜の宿の灯して雨に聡くをり 神谷美和
鵜の小屋に燈明一つ年は逝く 松井慶太郎
鵜の尾岬四月の海霧の押しのぼる 阿部みどり女
鵜の尾岬澪之助なき山暮春 阿部みどり女
鵜の山の巣に愛鳥日来りけり 岩崎照子
鵜の岩に鵜のかげみえず冬の海 久保田万太郎 流寓抄
鵜の岩に鵜のをらざりし旱かな 鮫島春潮子
鵜の岩に鵜のをらぬなり土用浪 楠目橙黄子 橙圃
鵜の岩をとりまく波のおぼろかな 加藤三七子
鵜の岩を鵜のはなれつぎ雷きざす 金尾梅の門
鵜の岬に寄せ合ふ渦の鳴ると見ゆ 佐野まもる 海郷
鵜の崖に鵜の影もなし葉月潮 蕪城
鵜の嶋に流燈こぞる夜の雨 飯田蛇笏 春蘭
鵜の嶋のやまつばき咲く雨の中 飯田蛇笏 春蘭
鵜の川を焦がしてやまぬ薪能 伊藤敬子
鵜の息に冷えまさる水青々と 佐野青陽人 天の川
鵜の森のあはれにも亦騒がしく 高浜虚子
鵜の海の一月の風豪華なり 原田喬
鵜の潜く波みて昏れし二日かな 稲垣きくの 黄 瀬
鵜の濡羽照りて過ぎけり冬椿 桂樟蹊子
鵜の瀬まで春の時雨の手松明 長谷川久々子
鵜の瀬訪ひその夜は酒を温むる 森田 峠
鵜の瀬講より誘ひ受く御水取 黒田櫻の園
鵜の真似をして濡れている少年よ 久保純夫 熊野集
鵜の瞼針で縫ふとは哀れなり 伊藤柏翠
鵜の礁に鵜がきていつも冬初め 永井一穂
鵜の礁初東雲に見えわたり 富安風生
鵜の篝夜の殺生の明々と 橋本多佳子
鵜の糞の白き梢や冬の山 素牛 俳諧撰集「藤の実」
鵜の糞を售り校舎成る麦の秋 宮武寒々 朱卓
鵜の群の栖み枯らす松の冬日かな 大場白水郎 散木集
鵜の羽がながれて鵜飼はじまりし 萩原麦草 麦嵐
鵜の翼大きく張りし桜かな 岸本尚毅 選集「氷」
鵜の舟の淀に溜りて瀬を下る 京極杞陽 くくたち下巻
鵜の舟をまはす篝を外に垂れ 京極杞陽 くくたち下巻
鵜の觜をのがれのがれて鮎さびる 一茶
鵜の面(かほ)に川波かかる火影哉 高桑闌更 (らんこう)(1726-1798)
鵜の面に川波かかる火影かな 闌更
鵜の顔に暁の風吹きつけぬ 船山
鵜の顔の沈みて雨がふりにけり 萩原麦草 麦嵐
鵜の飛ぶは悲しき眺め浪の華 久國兆元
鵜の飛翔つねに沖指す大南風 内藤吐天 鳴海抄
鵜の首の蛇とも見えて恐ろしき 正岡子規
鵜の首や昃れば濃き寒の潮 石田波郷
鵜の鳥の友鳥はゐずひた翔ぶも 八木林之介 青霞集
鵜の鳥をさきには見たりラムネ飲む 相生垣瓜人 微茫集
鵜はかならずわが前にをり冬の灘 原田喬
鵜はどれも瞼をもてり春怒濤 原田喬
鵜は下りて梅雨の濁りに浮びけり 前田普羅 能登蒼し
鵜は出でぬ水の暗より火の暗へ 平井照敏 天上大風
鵜は籠に鵜篝の鋼火の曲げて 石川桂郎 高蘆
鵜は育つ渦を女々しきものとせず 古館曹人
鵜は舟に鴉は山に冬日かな 飯田蛇笏 霊芝
鵜は蛇の如く泳ぎて末枯るる 岸本尚毅 舜
鵜よごれの島をめぐりて鮑つく 鈴鹿野風呂 浜木綿
鵜をさばくひまの会釈をくれにけり 皆吉爽雨
鵜をつかふ此の世ならざる人のごと 京極杞陽
鵜をはなち見まもる老にちるさくら 瀧春一 菜園
鵜を抱きて鵜匠の話つづきけり 内田二三子
鵜を撫して鵜匠の鬚や暮の秋 石川桂郎 四温
鵜を統べて長良鵜匠は連理の族 松井利彦
鵜を追ふに秋風吹きたまる 細見綾子 花寂び
鵜を馴らす鮎解禁の近き瀬に 松尾緑富
鵜供養の鵜飼装束そぞろ寒 岩島妙子
鵜匠とは鵜に似せたるや似てをるや 稲岡長
鵜匠や鵜を遊する草の花 一茶 ■文化七年庚午(四十八歳)
鵜川とて市民共有ボート漕ぐ 百合山羽公 寒雁
鵜川原に滅罪の石積みありし 松井利彦
鵜戸の宮極彩色の小春かな 大橋敦子 匂 玉
鵜捕り場に待宵草の吹かれをり 町田しげき
鵜捕部の鵜に喜捨小鮒二三匹 松元桃村
鵜搦みの橋まぢかくて篝褪す 宮武寒々 朱卓
鵜松明川面の闇を切りすすむ 鷲谷七菜子
鵜殿まで土手半みちや秋の風 高濱年尾 年尾句集
鵜篝に水面の仔細移りつゝ 稲畑汀子
鵜篝に滝作し落つる灯虫あり 京極杞陽 くくたち下巻
鵜篝に瀧作し落つる灯蟲あり 京極杞陽
鵜篝に照らし出されし川楊 京極杞陽 くくたち下巻
鵜篝に虚仮の世間ぞ面白き 筑紫磐井 婆伽梵
鵜篝のおとろへて曳くけむりかな 飯田蛇笏
鵜篝のはるか上まで灯のなき山 横山白虹
鵜篝のひとつ点るや隠れ里 小林葭竹
鵜篝のほめき覚えて尾ける舟 鈴鹿野風呂 浜木綿
鵜篝のわが前に来て火の粉ふく 塚原幾久
鵜篝の今年最後の火が過ぐる 長田等
鵜篝の岩隠れたるあたりかな 京極杞陽 くくたち上巻
鵜篝の早瀬を過ぐる大炎上 山口誓子(1901-94)
鵜篝の流れ流るゝ焔かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
鵜篝の火を毟る水流れつつ 石川桂郎 高蘆
鵜篝の火入れは修羅の始めとも 杉山青風
鵜篝の火屑瀬水にしばし消えず 内藤吐天
鵜篝の火種そだてつ夕河原 原 柯城
鵜篝の炎狂ひて擦れ違ふ 殿村菟絲子
鵜篝の煙隠れの焔かな 京極杞陽 くくたち下巻
鵜篝の百の緋文字をしたたらす 加藤耕子
鵜篝の美しき修羅滑りくる 正木ゆう子
鵜篝の芯より火の粉はしり出づ 岸貞男
鵜篝の走れば水も燃え激つ 殿村菟絲子
鵜篝の靡けて映る巾ひろく 京極杞陽
鵜篝の麾けて映る巾ひろく 京極杞陽 くくたち下巻
鵜篝は靡きてすゝむ幡なして 山口誓子 方位
鵜篝も鵜ごゑもうつつ総がらみ 西村公鳳
鵜篝や月の山蔭山蔭に 鈴木花蓑句集
鵜篝や殺生図絵のかぐはしく 桂子
鵜篝や鵜の羽ばたきのしぶき浴ぶ 今牧茘枝
鵜篝よ我が船端は怺へつつ 沼尻巳津子
鵜篝をいでてながるる火の粉かな 京極杞陽 くくたち上巻
鵜篝を待つ間よ何を考へし 細見綾子 黄 炎
鵜篝を荒鵜は逃ぐるとも見ゆる 細川加賀 生身魂
鵜篝消す一気火の音水の音 中村明子
鵜籠の鵜コウと声あげ祓はるる 河本好恵
鵜籠舁きひと大股に土手を来る 加藤耕子
鵜籠負うて岨ゆくひとにちるさくら 瀧春一 菜園
鵜縄さばきに双子あゆます水ほとり 文挟夫佐恵 遠い橋
鵜縄無く鵜匠は竿を振り躍る 大場白水郎 散木集
鵜翔けるや磧の空を出づるなし 原田種茅 径
鵜舟から日暮広がるやうす哉 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
鵜舟くる火明りの峰をかさねつゝ 皆吉爽雨
鵜舟にてぷえるとりこの生れかな 松澤昭 面白
鵜舟に在りわが身の火の粉うちはらひ 橋本多佳子
鵜舟の床こたびも美酒と朗友と 中村草田男
鵜舟去る寶満宮の暗闇に 橋本鶏二
鵜舟待つ橋の袂に時計店 川崎展宏
鵜舟待つ残照の膝忘れをり 石川桂郎 高蘆
鵜舟曳く身を折り曲げて雇われて 西東三鬼
鵜舟漕ぐ水窮まれば照射哉 蕪村 夏之部 ■ 春泥舎會、東寺山吹にて有けるに
鵜遣ひの呼びかへす鵜にちるさくら 瀧春一 菜園
鵜遣も鵜も寝し岐阜や蚊帳に入る 佐野青陽人 天の川
鵜飛び大焚火とはなりにけり 久米正雄 返り花
鵜飼の鵜アクアラングの足で立つ 山口誓子
鵜飼果つ余燼の艫に人か鵜か 皆吉爽雨 泉声
鵜馴しややがて鵜川となる水に 高濱年尾
鵜馴らしややがて鵜川となる水に 高濱虚子
鶏頭にかつぎ据ゑたる鵜籠かな 比叡 野村泊月
黒く灼く樹頭を占むるみな鵜なり 宮津昭彦
黒どりの海鵜があそぶ若布刈り 佐野まもる 海郷
以上
例句を挙げる。
あはれ鵜を使いて見せよ鵜匠たち 長谷川零余子
あゆみ出て秋鵜つぶやく日南かな 飯田蛇笏 霊芝
いさぎよし鵜の胸分けの夜の水 太祇
いつも鵜のゐる石もなしけさの雪 言水
うす闇に雲ゆく見ゆる鵜川かな 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
うつくしき雨おちて来し鵜舟かな 萩原麦草 麦嵐
うるか給ぶ烏帽子解くなき鵜の匠 石川桂郎 高蘆
おそろしや闇に乱るる鵜の篝 正岡子規
おもしろうてやがてかなしき鵜舟哉 松尾芭蕉
おもしろやふりむく鵜あり行鵜あり 松岡青蘿
お水送り鵜の瀬の雪に法螺ひびく 中村芳雪女
かうかうと身しぼる叱咤鵜の匠 橋本多佳子
かもめより海鵜さみしき城ヶ島 丸山哲郎
かわきたる舟に水吐くあら鵜かな 萩原麦草 麦嵐
かをかをと疲れ鵜鵜綱ひきずつて 橋本多佳子
きりぎしの囮鵜鳴かず海霧の中 町田しげき
くぐる鵜の伊良胡岬にまむかへり 栗生純夫 科野路
けだものとなりて餌を趁ふ荒鵜かな 佐野青陽人 天の川
こぼつ火を浴ぶはやり鵜の嘴しづく 兼間靖子
こめかみで耐える鵜篝五つの闇 稲葉直
さし入りて西日さみしき鵜籠かな 石原舟月 山鵲
さみだるゝ鵜に伴ありぬ山の湖 渡辺水巴 白日
しのゝめや鵜をのがれたる魚淺し 蕪村 夏之部 ■ 春泥舎會、東寺山吹にて有けるに
しまき晴れ海鵜さみしき鳥となる 古賀まり子
しまひ鵜やあまゆるごとく順を待つ 素子
すくむ鵜に燃くず折るるかゞり哉 井上井月
すくむ鵜のなほ哀れなり夜半の鐘 井上井月
すさまじくみだれて水にちる火の子鵜の執念の青き首見ゆ 太田水穂
すて舟にひとり濡れゐる荒鵜かな 中勘助
たぐらるゝ荒鵜は右往左往かな 埜村成行
たぐられていよよ荒鵜となりにけり 吉田鴻司
ただ水の行くのみ鵜川夜が明けて 山口誓子 紅日
たちまちに海鵜の礁の吹雪かすむ 河野多希女 こころの鷹
つかまへて篝火に鵜をかざしゐる 三森鉄治
つかれ鵜のこゑごゑ鵜匠きゝわけて 橋本多佳子
つかれ鵜の腮に月のしづくかな 大江丸
つながれし鵜舟ゆるるや昼の月 水木 鈴子
てつぺんに火の地獄ある荒鵜かな 細川加賀 生身魂
とびとびの巌を鵜よりも遠目して 古館曹人
ながれ出て舳のふりかわる鵜舟かな 飯田蛇笏 霊芝
ながれ藻にみよし影澄む鵜舟かな 飯田蛇笏 霊芝
なみつるるこれの鵜籠に朝ぐもり 飯田蛇笏 春蘭
はぐれ鵜を噛むささくれのしぐれ波 老川敏彦
はげ松の鵜は濡れ鳴海へだてけり 宮武寒々 朱卓
はしり出て藻を刈る雨に鳴く鵜かな 飯田蛇笏
ひいき鵜は又もからみで浮にけり 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
ひえびえと鵜の川透きて蚊帳はじめ 長谷川双魚 風形
ひえびえと鵜川の月の巌かな 飯田蛇笏 山廬集
ひえ~と鵜川の月の巌かな 飯田蛇笏 霊芝
ひと潜り波やりすごし鵜の浮かみ 戸井田厚
ひろがれるさきの鵜舟の篝屑 鈴鹿野風呂 浜木綿
ふなばたの湿り鵜舟の出を待てり 高澤良一 ぱらりとせ
ほう~と山に応ふる鵜声かな 楠目橙黄子 橙圃
ほう~と瀬を落つ鵜舟大揺れに 佐野青陽人 天の川
まだうつらうつらしてゐる籠鵜かな 明石洋子
みだれたる秋鵜の羽のしづくかな 飯田蛇笏 霊芝
むかしから川鵜はくらやみであり 阿部完市
やうやくに紛ふかたなき鵜舟の灯 吉屋信子
やませ崖海猫はごめどち鵜はうどち 文挟夫佐恵 遠い橋
ゆきも帰りも飛ばない岩の鵜妻の名呼ぶ 磯貝碧蹄館 握手
ゆく春の月に鵜の鳴く宿りかな 飯田蛇笏 霊芝
ゆふだちの月に成ぬる鵜川かな 炭 太祇 太祇句選後篇
ゆふべ見し鵜川を天守よりのぞく 岸風三樓
ゆるやかにのびて春潮鵜を放つ 橋本鶏二
よく呑みし鵜のはばたかず手繰られて 京極杞陽 くくたち下巻
よそ目には手荒きさまに鵜を馴らす 小島延介
よべの漁つとめたる鵜の翡翠の目 森田昇
よろよろと尉のつかへる秋鵜かな 飯田蛇笏 山廬集
よろ~と尉のつかへる秋鵜かな 飯田蛇笏 霊芝
わさび田の奥行き見せて鵜鳴く 藤岡筑邨
わたる鵜の羽のきしる日ぞ芦の秋 加藤しげる
わだなかや鵜の鳥群るゝ島二つ 水原秋櫻子
わびしさに沖の鵜を指し野辺送り 佐野まもる 海郷
われに触れ腰簑さやぐ鵜の匠 石川桂郎 高蘆
をだまきの花に雨ふる鵜宿訪ふ 宮下翠舟
一つ鵜の波間がくれの春浅き 大場白水郎 散木集
一ッ葉の芽吹くや奥に鵜の羽音 石川桂郎 高蘆
一冬の囮鵜瞼縫はれけり 岡野風痕子
一礁に一鵜の冬も深まりぬ 加倉井秋を 『欸乃』
一語らひ三和土濡らして鵜よ眠たげ 石川桂郎 高蘆
一語らひ声もらしつつ夜の鵜籠 野澤節子 黄 炎
一里先きの鵜舟明りやビール上ぐ 佐野青陽人 天の川
一雨のありたることも初嵐 鵜川 易子
三伏の月の穢に鳴く荒鵜かな 飯田蛇笏(1885-1962)
上り鵜の最後の一羽鳴きにけり 鈴木六林男 王国
上ミ鵜飼闇に鵜舟の一火過ぐ 近藤一鴻
上手ほど罪おそろしき鵜縄哉 多少
下り来る鵜舟の篝まだ小さく 高木晴子 晴居
下流より見る鵜篝は太古の火 松井利彦
世わたりや鵜縄の上も十二筋 松岡青蘿
両翼に鵜の海安乗中学校 猿橋統流子
並ぶ鵜のみづかき黒し月の舷 吉野義子
並ぶ鵜の黒の端正寒日和 吉年虹二
並べある鵜籠をわたる蝶々かな 松藤夏山 夏山句集
二羽のみの昼の鵜飼や鵜は激す 藤田 宏
二羽のゐて鵜の嘴あはす嘴甘きか 橋本多佳子
五月闇蓑に火のつく鵜舟かな 許六
五月雨や拾うた鯉も鵜の嘴目 浜田酒堂
五橋てふ酒をたゝへて鵜舟かな 飴山實 『次の花』
仕舞鵜の俄に啼きてなき止みぬ 関戸靖子
仕舞鵜は仰山に魚喰はされぬ 関戸靖子
伊勢荻や鵜の進む夜の風の音 馬仏 五 月 月別句集「韻塞」
伊師浜の鵜捕切戸の磯小菊 石原八束
低翔の鵜にしぶき立つ初日かな 益田ただし
住み着きしは天保年間とぞ凍み鵜 高澤良一 鳩信
何か目指す鵜は照り海の春吹雪 加藤知世子 花寂び
個個にして鵜籠の内やなまぐさし 石川桂郎 高蘆
兄鵜弟鵜それ~の名に並ぶなり 鈴鹿野風呂 浜木綿
六月の波照りに鳴く荒鵜かな 松村蒼石 露
六本の鵜縄一本怠け縄 今瀬剛一
円陣をつくり燃えくる鵜舟かな 京極杞陽 くくたち下巻
冬うらら海鵜の声の三河かな 岩井久美恵
冬ぬくき島に来にけり海鵜見る 星野立子
冬の崖すでに鵜川の音いそぐ 松井利彦
冬の波よりはらはらと鵜となりて 村松紅花
冬濤に鵜にこそ似たれ志賀の蜑 下村梅子
冬風に下駄も結べる鵜籠かな 飯田蛇笏 霊芝
凍つるまで鵜の瀬の水のひびきかな 桂 信子
凍らんとしては首上ぐ荒鵜かな 佐野青陽人 天の川
凧合せ戦はずして鵜ぞわたる 軽部烏帽子 [しどみ]の花
切火して鵜舟々々の送らるる 京極杞陽
列立て火影行鵜や夜の水 炭 太祇 太祇句選
初凪の岩の鵜ひとついつ翔つや 長谷川久代
初凪や四羽の鵜のとり礁の上 白泉
初凪や鴉は陸に鵜は海に 鈴木真砂女 夕螢
初凪や鵜のたむろして生簀籠 宵灯
初日さす方よりとぶは伊勢の鵜か 杉本寛
初東風や波に呑まれて浮く海鵜 鈴木真砂女 夕螢
初潮に鵜の黒耀の絶ゆるなし 遠山壷中
初潮や鵜戸の神岩たたなはり 下村梅子
初茜海鵜は海面離れずに 千田一路
利尻暮れ海鵜一羽の黒礁 高澤良一 素抱
北陸線鵜の礁鵜の礁暗くなる 森 澄雄
十二鵜の玉の緒つなぐ鵜縄かな 渡辺恭子
千の鵜の一塊となる夕ごころ 浦井文江
千余年いま鵜の川の闇涼し 石川桂郎 高蘆
午過ぎの磧に干せる鵜縄かな 飯田蛇笏 霊芝
卓々と声張る鵜群暮雪急 村上冬燕
南無鵜川盆花ながれかはしけり 飯田蛇笏
南風に向きて南風を聞くなり礁の鵜 岩間民子
卯の花や鵜縄にぬるゝ家の内 松瀬青々
原油まみれの海鵜地球の墓標とも 堀葦男
只一つ鵜の守るのみの沖の石 鈴鹿野風呂 浜木綿
叱られて又疲れ鵜の入りにけり 一茶
吐ききつて闇にも涼し鵜の整列 加藤知世子 花寂び
吐ぬ鵜のほむらにもゆる篝かな 其角
向うむきの鵜並び文書く師へ妻へ 磯貝碧蹄館 握手
向き変ふるとき鵜篝の岸照らす 岸風三樓
哀しみの眼は鵜にもあり吾を見る 三好潤子
啼き帰る鵜にヒリウスの光る雪 渡辺水巴 白日
啼く鵜あり白崩崖際の鵜捕鳥屋 石原八束 黒凍みの道
嘴に鑪かけられ新鵜かな 棚山波朗
地図よりも暗く鵜が覚め日本海 猪俣千代子 堆 朱
城山の真下の闇を鵜舟過ぐ 松井利彦
声かけて鵜縄をさばく早瀬かな 涼菟
夏帯に彼の鵜篝を描きたり 後藤夜半 翠黛
夏木立川鵜にはかにとびつれし 岡井省二
夏潮や遠き一鵜を恋ふ目して 小林康治 『華髪』
夏痩せの羽根ぼろぼろの鵜なりけり 沢木欣一 遍歴
夕の鵜縁台に身をおきしとき 木津柳芽 白鷺抄
夕影を待てるがごとき鵜籠かな 後藤夜半
夕焼の手足洗ひて鵜川びと 渡辺 昭
夜に入るも鵜川みどりの奔りけり 近藤一鴻
夜は別の貌して鵜縄つかひをり つじ加代子
夜は鵜に晝の眠りは海亀に 田中裕明 先生から手紙
夜やいつの長良の鵜舟會て見し 蕪村遺稿 夏
夜半過ぎて鵜の灯あはれになりにけり 中川宋淵 詩龕
夜明りに渦とけむすぶ鵜川かな 飯田蛇笏 山廬集
大虹の照り映ゆる輪を鵜がくゞる 渡邊水巴 富士
大雨のひと洗ひせし鵜川かな 井上弘美
姉いつか鵜の鳥孕む海辺の家 金子兜太 早春展墓
宇治川の風手枕に鵜舟待つ 北見さとる
宝石の指を浸して鵜舟待つ 長田等
客船に白鵜は近く浮き涼し 大場白水郎 散木集
寒き鵜を砂丘行く身のあてどとす 佐野美智
寒の鵜の嘴ふりむけてしたたる日 木村蕪城
寒の鵜の無眼旋回夜学生 原田喬
寒月が鵜川の底の石照らす 栗田やすし
寒潮に鵜を指す舟の温泉客かな 宮武寒々 朱卓
寒潮の鵜が守る沖の一つ巌 石塚友二 光塵
寒潮をくぐりて鵜の眼青深む 星野恒彦
寒濤の鵜をひそめたる閑けさよ 永井龍男
寒風へ首差し伸べて川鵜たつ 加藤耕子
寧楽に水送りし鵜の瀬春終る 角川源義 『西行の日』
小寒の鵜の肩先のなにもなし 金田咲子 全身 以後
少年は男鵜綱を捌く時 中村明子
山の月鵜舟の細身照らすなり 吉野義子
山の端の月や鵜舟の片明り 井上井月
岩の一点鵜ならましかば青北風に 林原耒井 蜩
岩海苔を掻くや身近に鵜を浮かせ 鈴木真砂女 夕螢
岩百合や鵜の嘴も沖を見て 永田耕一郎 海絣
岩礁の海鵜胸張る野分雲 東 天虹
岩礁の鵜の目緑に冬半ば 柴崎左田男
岩襖鵜翔けるところ寝るところ 林原耒井 蜩
峰つくる雲や鵜川の水の筋 碧童句集 小澤碧童
崖の鵜が見えて勤労感謝の日 日美清史
巌が根をこがしてはゆく鵜船かな 原石鼎 花影以後
巌の鵜の闇より黒し初日待つ 清水貴久子
巌壁の裾翔くる鵜の一羽のみ 水原秋桜子
川で消す鵜篝鉄も燃えゐるを 松井利彦
川よりも低き鵜塚や返り花 神蔵 器
川上の空まづ焦げて鵜舟かな 籾山梓月
川波の眩しき昼の鵜川かな 井上喬風
川端に鵜籠洗ふも年用意 藤井智子
川風や鵜縄つくらふ小手の上に 高井几董
巣にこもる鵜をはるかにし鴨帰る 松村蒼石 寒鶯抄
巣立鵜に草の匂ひの風吹けり 中川幸子
巣立鵜の並び止れる高枝かな 岡安迷子
帰りきし鵜舟を洗ふ星月夜 松岡英士
帰り来し鵜よ鵜の島を飛びめぐる 右城暮石 上下
帰り鵜やいまし全島日矢の中 岸田稚魚『負け犬』
年の瀬や比目?鵜の物思ひ 其角
年逝くと来たれば海に鵜の潜く 金箱戈止夫
底見へて鵜川あさまし夜の水 炭 太祇 太祇句選後篇
影さして舟の鵜籠や蘆枯るゝ 飯田蛇笏 霊芝
徒食して昼殺伐と鵜の仲間 津田清子 礼 拝
思ふべきかな/沖の/捨鵜と/母の雨 高柳重信
急流の縞と鵜舟の炎かな 京極杞陽 くくたち下巻
急流を潜りつづけて鵜は荒む 津田清子 礼 拝
性荒き鵜を馴らす日々遅々とあり 稲畑汀子
恍惚と舟へ上るに鵜の序列 平出公象
憩ふ鵜も沖へ嘴向け五月来ぬ 野澤節子 花 季
懶け鵜の手綱一すぢゆるみがち 田中秋琴女
我魂と人や見るらめ鵜の篝 賜馬
戻り鵜を発止発止と氷雨打つ 倉橋羊村
手のぬれて田植の合羽鵜のごとし 古舘曹人 砂の音
揚り鵜のかざす双羽にちるさくら 瀧春一 菜園
断崖に鵜の群憩ふ磯開き 川辺房子
新月や水くぐる鵜に檜縄 宇佐美魚目 秋収冬蔵
日の暮の暗き鵜籠を覗き見る 岩田由美
日輪へ羽摶きて鵜の雛育ち 石井とし夫
早瀬ゆく鵜舟に闇のまとひつく 柴田奈美
早稲の香に羽がひ締めたる鵜綱干す 細見綾子 黄 炎
明け易き片山影を鵜舟かな 柚味噌(木母遺稿) 安田木母、秋田握月編
春の水にうたゝ鵜繩の稽古哉 蕪村 春之部 ■ 野望
春寒し鵜を荒海へ残し去る 阿部みどり女 『雪嶺』
春潮や藁の戸を吊る鵜獲小屋 古舘曹人 樹下石上
春潮や鵜をぶちまけて大きうねり 瀧春一 菜園
春潮を堰く岩門あり鵜戸といふ 藤田湘子 黒
春潮を潜きては鵜の乱れゆく 金箱戈止夫
春眠の夢をついばむ鵜かな 金尾梅の門 古志の歌
春雪のこの降る雪に鵜をわたす 佐野まもる 海郷
昼の鵜の嘴争ひもすぐ終る 辻田克巳
昼の鵜の現に鳴か籠のうち 松岡青蘿
昼の鵜の黒きみづかきみたりけり 加藤三七子
昼の鵜や鵜匠頭の指ついばみ 西東三鬼
昼は渚をひたすら歩み鵜と会いぬ 金子兜太
昼寝鵜のさめたるまるき目なりけり 細川加賀 生身魂
昼月や白木の鵜舟白緒結ひ 吉野義子
時雨鵜よ握れば温きひとの手よ 奈良文夫
暁や鵜籠に眠る鵜の労れ 子規句集 虚子・碧梧桐選
暦日や鵜の糞白きめくら岩 磯貝碧蹄館 握手
曇天に時に湧きたつ鵜なりけり 細見綾子
月光のしたゝりかゝる鵜籠かな 飯田蛇笏
月光の仄と一鵜の病みゐたる 斎藤梅子
月出て手縄もつるゝ鵜舟かな 鳴鳳
月刎ぬる鵜舟の棹の素早さに 赤松[けい]子 白毫
月明の鵜匠の家の鵜も眠る 長田等
月見草花を鮮に鵜舟並む 石原舟月
月見草鵜が敏感になりにけり 近藤一鴻
月読の国の鵜舟となりにけり 岡井省二
有明の水すみわたる鵜川かな 赤木格堂
朝凪に首だけ漂う鵜を見ている 尾田明子
朝市に鵜傷の鮎の並びけり 小林葭竹
朝月や鵜川しろ~横たはり 沢村芳翠
朝来ると山小屋叩く星鵜 伊藤いと子
朝河鹿孤つ鵜が風迎へをり 佐野良太 樫
朝霧や水をはなるる鵜の雫 毛* 八 月 月別句集「韻塞」
杉の鵜が竹の鵜を呼ぶ日暮かな 臼田亞浪 定本亜浪句集
松落葉(ざら)さらひ除けて鵜捕師通りけり 石原八束 黒凍みの道
松風に干し重ねたる鵜籠かな 山西雅子
松風の吹くや鵜川の朝ぼらけ 井月の句集 井上井月
枯るるもの枯れて鵜の島鴨の島 大木あまり 火球
枯れはげし海鵜の城の断崖は 羽部洞然
枯れるほど鵜の来てねるや松の色 野澤凡兆
柳鮠吐いて淋しき鵜舟かな 萩原麦草 麦嵐
梅雨晴や鵜の渡りゐる輪島崎 前田普羅 能登蒼し
椋鳥に襲はれさけぶ海鵜かな 大場白水郎 散木集
椿落つ鵜の瀬の雪を窪ませて 田中佐知子
業馴て水無瀬にたてる歩鵜哉 加舎白雄
檻の鵜も鵜籠も秋の風の中 島谷征良
櫂さして置きならべある鵜籠かな 五十嵐播水 埠頭
櫂をもて荷ひ運びの鵜籠かな 松藤夏山 夏山句集
欲深き婆の鵜の目を忘れめや 筑紫磐井 婆伽梵
殺生の鵜川に沁みて能の笛 長田等
殿原の名古屋皃なる鵜川かな 蕪村 夏之部 ■ 春泥舎會、東寺山吹にて有けるに
水くれて三十日に近き鵜川哉 加舎白雄
水くゞる鵜のいさましさあはれなり 森鴎外
水中の暴風雨や鵜の魔入り乱れ 佐野青陽人 天の川
水叩き叩き翔つ鵜や沖縄忌 奈良文夫
水底の鵜のさま見えて哀れなり 臼田ふるさと
水送り鵜の瀬の神事詣でけり 橋爪梅子
汐がすみ鵜の舞ひ島をはるけくす 太田鴻村 穂国
汐干舟動きそめたり鵜が来たる 小島 昌勝
沈みては浮きては海鵜年惜しむ 東海林照女
沖つ岩鵜がゐて泳ぎつかれたり 佐野良太 樫
沖なるや鵜のとまりたる汐干岩 秋櫻子
沖の鵜の睦みて翔たず春の暮 下村ひろし 西陲集
河の鵜に秋風波を照らすなり 西村公鳳
河鹿鳴いて鵜川の闇の極まりぬ 内藤吐天
河鹿鳴くやさしさにして鵜網引く 加藤知世子 花寂び
波うづめつくせる海を鵜が一羽 右城暮石 上下
波にのり波にのり鵜のさびしさは 山口誓子(1901-94)
波照りて昃りて岩の鵜はさみし 横山房子
波皺に鵜の現はるゝ初日かな 白水郎
洗はれしごと仕舞鵜が並びけり 萩原麦草 麦嵐
洞ふかく鳴く虫ありて神在す ひろし (宮崎県鵜戸神宮)
流浪して鵜の嘴も減りゆくか 小檜山繁子
浪の穂にうかぶも一羽秋の鵜は 佐野まもる 海郷
海の鵜に十一月の日は移る 小宅容義
海底にゆらぐ夏日や鵜戸の宮 米谷静二
海鵜翔ち何も無かりし沖の岩 河野南畦
涅槃会の海鵜はしらせ岬暮るる 河野南畦 湖の森
渦すりて鵜かいくたびも霞みけり 佐野まもる 海郷
渦潮に浮けるを鵜としあはれむや 稲垣きくの 牡 丹
渦潮に生きる鵜なれば気も荒し 稲垣きくの 牡 丹
渦潮に鵜と視るひまもなく紛る 稲垣きくの 牡 丹
漁の他鵜と鵜つながる何もなし 津田清子 礼 拝
漓江連綿鵜になれぬ人がみえます 阿部完市
潜きても鵜縄のうちの自由とは 稲岡長
潜り出て鮎を得ざりし鵜の顔よ 西東三鬼
潜る鵜の水晶島は結氷す 古館曹人
潮の彩かはるとみるは鵜の群るゝ 佐野まもる 海郷
潮濃くて鵜は眠からむ春蜜柑 中拓夫
澪標の一本となる海鵜かな 香川修廣
濁水が鳴る一瞬の鵜舟過ぎ 石川桂郎 高蘆
濡れ鵜まぶし漆黒まといたき齢 八木三日女 赤い地図
瀬にかづく鵜のかくれなしちるさくら 瀧春一 菜園
瀬に乗りて鵜篝が火を撒き散らす 松井利彦
瀬に据ゑて鵜舟の枯れの始まりぬ 関戸靖子
火の波に透きて潜れる荒鵜かな 野見山朱鳥
火の目して鵜は首綱の二十年 楸邨
火の粉にも面テそむけず鵜を捌く 古田藍水
火の粉吐き突つ立つ鵜匠はたらく鵜 西東三鬼
火屑浴び絖のごとくに荒瀬の鵜 宮武寒々 朱卓
灯を消して闇ひろがりし鵜川かな 森光 兎喜恵
烈日に病めば啼く鵜や花葵 西島麦南 人音
烏瓜の花よ鵜の巣の三番子 細見綾子
烏羽玉の闇の色なるあら鵜哉 正岡子規
焚き添ふる鵜篝薪を以て叩く 高濱年尾 年尾句集
父祖よりの鵜籠を継ぎて匠老ゆ つじ加代子
牽かるるもまた安からむ手縄の鵜 橋本多佳子
独り来て鵜に近々と海苔あらふ 佐野まもる 海郷
猛り鵜のむんずと水を掴みたり 岸田稚魚 『萩供養』
玄海の鉾やあふれて岩の鵜が 古舘曹人 能登の蛙
甘え鵜に鵜匠や鬚のやさしかり 石川桂郎 高蘆
甜瓜船次ぎ~下り鵜に遠く 大場白水郎 散木集
生きる場を局限され鵜つつき合ふ 津田清子 礼 拝
疲れ鵜に川が束ねてありしかな 関戸靖子
疲れ鵜に水面の篝奈落なる 奥抜良人
疲れ鵜に水面を均らす夜空かな 渋谷道
疲れ鵜のあやまたず乗る己が籠 下田稔
疲れ鵜のいつまで仰ぐ天の闇 関戸靖子
疲れ鵜のせうことなしの羽ひろげ 鷹羽狩行 七草
疲れ鵜のなほ船ばたに気を配り 今泉貞鳳
疲れ鵜のひたひた歩く足音かな 中村明子
疲れ鵜のまたふなべりを踏みはづし 杉原史耕
疲れ鵜の互に嘴をかみ合はす 伊藤敬子
疲れ鵜の嘴こじあけて餌を与ふ 棚山波朗
疲れ鵜の川見てゐしが振り向きぬ 関戸靖子
疲れ鵜の引上ざまに羽ばたける 鈴鹿野風呂 浜木綿
疲れ鵜の投げ餌を落とす舳先かな 後藤ひさし
疲れ鵜の漆黒を大抱へにし 細見綾子 黄 炎
疲れ鵜の瑠璃の泪目なせりけり 石川桂郎 高蘆
疲れ鵜の眼のある時は媚に似て 永井龍男
疲れ鵜の石にのりたり石となり 遠藤信子
疲れ鵜の石も濡らさず籠に入る 中村明子
疲れ鵜の舷打つて上げらるる 細川加賀 生身魂
疲れ鵜の首はもつべき長さかな 今瀬剛一
疲れ鵜の鵜縄たるむをゆるさざる 岸田稚魚 『萩供養』
疲れ鵜の鵜縄ゆるめば啼きにけり 鷲谷七菜子 天鼓
疲れ鵜は籠に一声吐きにけり 佐藤美恵子
疲れ鵜を労はる己が指噛ませ 栗田やすし
疲れ鵜を据ゑて春潮ゆきかへり 西村公鳳
疲れ鵜を見分け聴きわけ綱さばき 加倉井秋を 『真名井』
疲鵜にいつまで水の修羅場かな 木村寿秀
疲鵜に指をかませて鵜匠かな 長谷川素逝
疲鵜のひらきてはとづ眼かな 岡田耿陽
疲鵜の細きうなじを並べけり 素逝
白日に据ゑて烟れる鵜籠かな 中島月笠 月笠句集
白浪の絶ゆるときなし鵜の影絵 横山白虹
白雨去り鵜縄いよいよ緊りけり 近藤一鴻
百の鵜の荒磯を占むる現あり 佐野まもる 海郷
盲鵜の法師のごとき寒暮かな 近藤一鴻
真鶴の岬も秋めく鵜の聲は(真鶴半島) 河野南畦 『硝子の船』
眠り鵜のよべの疲れを残しける 冨田みのる
眠る鵜に鵜籠置場の軒浅し 石川桂郎 高蘆
石蕗咲きて鵜戸はひねもす怒濤音 大橋敦子 匂 玉
石見ゆる闇に鵜のかげ走りけり 近藤一鴻
磯の鵜や春一番の波しぶき 弘
磯の鵜を車窓にかぞへ初詣 中山純子
磯岩に飛び岩の鵜も余寒かな 河東碧梧桐
礁のうへ梅雨まみれなる鵜ノ足貝 高澤良一 素抱
秋の日や雌といへども荒鵜にて 鈴木真砂女 夕螢
秋の水鵜の脚へ来て急ぎけり 竹貫示虹
秋の鵜の吐きてか細き鮎ばかり 樋笠文
秋晴や鵜の島ほとり湖の波 高橋淡路女 梶の葉
秋深く痩せたる川の鵜を見せず 石川桂郎 四温
秋潮の穏かなれば鵜も寧し 鈴木真砂女 夕螢
秋草に疲れきし鵜の身を寄せぬ 加藤楸邨
秋風に安房の海鵜も潜きをらむ 鈴木真砂女 夕螢
秋風に羽拡げても繋がれ鵜 小松崎爽青
秋風や思はぬ方に鵜の浮かび 鈴木真砂女 夕螢
稲妻に舁荷の鵜共騒ぎけり 乙字俳句集 大須賀乙字
稼ぎ鵜の一つが翔たす遊び鴨 石塚友二 光塵
突堤の突端の鵜の寒さかな 蓬田紀枝子
突堤や荒鵜も人も春たけなは 栗生純夫 科野路
立上る土用波より鵜現れ 橋本鶏二
竹割つて鵜籠つくろふ十二月 栗田やすし
箸持ちて鵜籠を覗く宵月夜 朱廸 五 月 月別句集「韻塞」
篝屑落つるさ中を鵜はくぐる 鈴鹿野風呂 浜木綿
篝火に憑かれて狂ふ荒鵜かな 佐野青陽人 天の川
篝火に早瀬の荒鵜浮かび起ち 高井北杜
篝火に羽根張つてゐる濡鵜哉 小澤碧童 碧童句集
篝火の尽きざる焔鵜を搾取して 津田清子 礼 拝
篝火の火屑にをどる鵜ののんど 椎橋清翠
篝火の金粉こぼす鵜のまはり 平畑静塔
篝火や引き上げらるる鵜のたけり 碧童
篝火や荒鵜を叱る眼の光 子規句集 虚子・碧梧桐選
篝火や鵜縄沈みて底浅く 雑草 長谷川零餘子
篝焚く左手鵜縄のいとまかな 大谷句佛 我は我
篝足す鵜をホホホホとなだめては 伊藤敬子
籠の蓋嘴打ちやまぬ荒鵜かな 岡田耿陽
籠の鵜に鵜飼休みの雨しぶく 西村梛子
籠の鵜の咽喉をふるはせつゞけをり 森田峠 避暑散歩
籠の鵜の鳴けば手間どる舟用意 森田峠 避暑散歩
紅葉散るや鵜が啼ける東山 楠目橙黄子 橙圃
細道に篝こぼるる鵜舟かな 許六
絶壁にはりつく海鵜雪はげし 新谷氷照
緩みて張りてもこがねなす鵜綱 上井正司
縄さばきつゝ鵜篝を焚き継げり 上條 筑子
繋がるる鵜舟細身よ月見草 冨田みのる
繋りゐて鵜舟は鵜舟同士なる 大橋はじめ
群ら返る椋鳥の奇襲に鵜も立てり 大場白水郎 散木集
群るる鵜に乱礁の環の鏡なす 橋本鶏二 年輪
羽干し鵜の岩礁垂氷よろひけり 井口 秀二
羽根ひろぐ岩礁の鵜の黒十字 秋元不死男
羽根拡げ鵜飼終りし鵜が甘ゆ 右城暮石 上下
翅開き荒鵜冬来る崖歩む 西村公鳳
翔る鵜に立春の海とどろけり 長谷川史郊
翠巒や鵜川しぶきてしづかなり 伊藤敬子
翼張りて翔つにはあらぬ鵜なりけり 鈴木鶉衣
腹式呼吸を海へ鵜がする淋しくなし 磯貝碧蹄館 握手
舟梁に細きぬれ身やあら鵜共 炭 太祇 太祇句選
舟梁の月に荒鵜を納めけり 雑草 長谷川零餘子
舟行の水脈の乱れの荒鵜かな 『定本石橋秀野句文集』
舳を並めて山影乱す鵜舟かな 雑草 長谷川零餘子
舷に十二羽の鵜の並ぶ時 鈴鹿野風呂 浜木綿
舷を叩いて鵜舟遠ざかる 楠目橙黄子 橙圃
花茨やとなり鵜の宿なまぐさく 野村喜舟 小石川
若狭井へ送る鵜の瀬の雪解水 重田青戸
若芦やながされている鵜の一つ 小川鴻翔
茫々と野焼を待てり鵜殿葭 能村登四郎 菊塵
茶の花や鵜の目は水を湛へたる(岐阜) 殿村菟絲子 『菟絲』
草の線荒鵜そこまで飛びのぼらず 林原耒井 蜩
荒き鵜のひつぱる鵜舟さかのぼり 細川加賀 生身魂
荒れ鵜群れ海の底まで雪降れり(尻屋崎付近二句) 河野南畦 『硝子の船』
荒東風や松葉をかぶる鵜獲小屋 古舘曹人 樹下石上
荒梅雨の鵜の目あをあを飼はれたり 宮田正和
荒鵜のうしろに海の横たはる 原裕 葦牙
荒鵜の屎水のごとくに萩けがる 飯田蛇笏 春蘭
荒鵜の目冬海ばかり見て炎ゆる 野澤節子 黄 炎
荒鵜の目瑠璃深めつつ春逝かす 北見さとる
葬の火の渚につづく鵜舟かな 内藤丈草
蓑笠も荒鵜つかひや川おろし 李由 五 月 月別句集「韻塞」
藤太・藤次嘴を打ち合ふ鵜のごとし 筑紫磐井 野干
藪蔭の嵯峨は鵜の寝る小家哉 竹冷句鈔 角田竹冷
蚊帳ちかく鵜の鳴いて梅雨残る 金尾梅の門 古志の歌
蜉蝣や鵜の瀬に深きひとところ 石川桂郎 高蘆
血まなこの荒鵜に爆ぜる篝かな 高井北杜
衣かつぐ誰そ草やみや鵜舟去る 飯田蛇笏 山廬集
西行谷見えて川鵜のとぶ秋ぞ 岡井省二
見えを切る徒鵜飼の鵜掌に載つて 三好潤子
見張鵜らうなじを長く雲は夏 富安風生
見物の火にはぐれたる歩行鵜かな 去来 五 月 月別句集「韻塞」
見習ひ鵜艫の昏きにあはれなり 大谷句佛 我は我
親迎ふ雛鵜の逸り見上げけり 臼田亜浪 旅人
観衆の前の鵜観衆を知りてゐし 細見綾子 伎藝天
詩も波も寄せてはかへす鵜はとばずも 磯貝碧蹄館 握手
誰住て樒流るゝ鵜川哉 蕪村 夏之部 ■ 春泥舎會、東寺山吹にて有けるに
豆も咲き鵜宿門べの蕃茄生る 飯田蛇笏 春蘭
責暗し鵜縄返って群烏 調和 選集「板東太郎」
贄の鵜へ目覚の神楽さや~と 大森積翠
贄の鵜を放つ暁闇気多の海 吉村春潮
赤き火の闇より現るる鵜舟かな 坂井建
走馬燈はやし鵜篝暗くなる 内藤吐天 鳴海抄
踊舟二度も通りて鵜舟来る 田村了咲
身つくらふ鵜に山暮れて来りけり 龍胆 長谷川かな女
身を正し礁の海鵜羽を干す 真田風来
載せ石の灼けて籠の鵜老いゆくか 伊藤いと子
送水文ひらりと鵜の瀬の渕に消ゆ 生田弥栄子
通し鵜と十二鵜縄と疲れけり 石川桂郎 高蘆
遅れ飛ぶ鵜の目を海の青として 古館曹人
遊び鵜のまはり末枯初めにけり 岸田稚魚 『萩供養』
遊舟に灯が点く鵜川暮れざるに 松井利彦
遊船のたてこむ中の鵜舟かな 比叡 野村泊月
道のべに痢して鳴く鵜や冬の風 飯田蛇笏 山廬集
都に友あり夕焼鵜追ひ越す汽車 香西照雄 対話
酒にある月の出汐の鵜舟かな 尾崎紅葉
鉄線花と鵜とぐんぐんと近づきたる 金子兜太 詩經國風
錦帯橋映れる水に鵜を馴らす 上符秀翠
鍛冶の火も筋に曇る鵜舟かな ぶん村 五 月 月別句集「韻塞」
長き橋渡りて風の都鳥 鵜川 易子
闇中に山ぞ峙つ鵜川かな 河東碧梧桐
阿修羅の鵜女体とききしあはれさよ 渡辺桂子
陽炎となるか川鵜の棒立ちに 大木あまり 火球
離れ鵜の水輪の消えし頃浮かぶ 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
離れ鵜の眼に篝火の濁りかな 沼尻巳津子
雨の夜の一つとなりし鵜船かな 雑草 長谷川零餘子
雨の日の鵜舟の屯ろ宿の下 鈴鹿野風呂 浜木綿
雨後荒れの人寄せつけぬ鵜川かな 今泉貞鳳
雨足の近づいてくる海の鵜よ 鈴木六林男
雪吹くや群をはなれし鵜二三羽 臼田亞浪 定本亜浪句集
雪空や檻の海鵜は遠く見る 阿部みどり女
雪空や襤の海鵜は遠くを見る 阿部みどり女
雪解川鵜舟だまりに来てやさし 北見さとる
雫して鵜は首綱の二十年 加藤楸邨
雲こめて帰る鵜遠しさみだるゝ 渡辺水巴 白日
青北風や翼ひろげて鵜の歩く 山口草堂
面白うてやがて悲しき鵜舟哉 芭 蕉
音もなく来し鵜船かな篝濃し 八木三日女 赤い地図
頭より鵜籠の中へ放たれし 伊藤敬子
頸たたき荒鵜なだめる鵜匠にて 中村明子
頸のべて痩鵜の寒き姿かな 大場白水郎 散木集
頸ほそき朝の青鵜に麦茶沸く つじ加代子
頸細く鵜や房州の逆さ寒ん 猪俣千代子 秘 色
風吹て篝のくらき鵜川かな 子規
風景の裂け目見ている川鵜かな 小堤香珠
風花やかたらひの鵜の白灯 殿村莵絲子 花寂び 以後
飢鵜の篝かき消す早瀬かな 李康
首のばしておとなしくくゝらるる鵜かな 冬の土宮林菫哉
首立て鵜のむれのぼる早瀬哉 浪化 (1671-1703)
首結ひに枷の荒鵜の瀬越し舟 野澤節子 黄 炎
首長く海鵜につづき冬の鳩 阿部みどり女 月下美人
高きより先をあらそひ鵜舟の火 長田等
高潮の穂中投げては鵜を馴らす 加藤知世子 花寂び
魚呑みて鵜の起ち上る寒怒濤 山田晴彦
鮎吐きし鵜のしばらくは嘴あけて 北見さとる
鮎食うて生臭き口鵜舟待つ 野澤節子 黄 炎
鳥屋の鵜の雨の匂ひに身を跼む 加藤耕子
鴨のうしろ鵜の首が立つ寒さかな 蓬田紀枝子
鵙鳴いて鵜川は幽き瀬をもてり 長谷川双魚 風形
鵜かがりのおとろへてひくけむりかな 飯田蛇笏 春蘭
鵜かがりの散りて音あり秋の川 永井龍男
鵜かゞりのおとろへて曳くけむりかな 飯田蛇笏
鵜がとんで堺の空の薄暑かな 高濱年尾 年尾句集
鵜がのぼる屋根の日向や芦の花 吉田冬葉
鵜が占めて寒波にをどるブイひとつ 佐野まもる 海郷
鵜が寄りて濡身をさらに濡らしあふ 藤井亘
鵜が帰り来て寒潮の力づく 内藤吐天 鳴海抄
鵜が渡る岬の下の梅雨にごり 前田普羅 新訂普羅句集
鵜が羽を散らしたる磯春の雪 中拓夫
鵜が翔ける大石狩の夕焼空 飯田蛇笏 雪峡
鵜が見えずなり強風が日緘す 横山房子
鵜さばきの手綱馬上にある思ひ 狩行
鵜じまひの一扁舟となり舫ふ 野澤節子 黄 炎
鵜じまひの鵜の火を落す川迅し 西村公鳳
鵜たいまつ消えて淦汲む音すなり 星野立子
鵜つかひの舷叩く谺かな 大谷句佛 我は我
鵜つかひや忍冬咲いて昼の宿 河東碧梧桐
鵜づかひの手に鵜が逸りかちわたる 柳芽
鵜づかひの昼寝の床や蠅の声 史邦 俳諧撰集「有磯海」
鵜とともにこころは水をくぐり行 鬼貫
鵜と禊ぐ水とて幣を立てし桶 辻口静夫
鵜のかがり消えて長良に灯の一つ 士朗
鵜のかほをして小平太の捕らへらる 筑紫磐井 野干
鵜のかゞり消て暁の水寒し 松岡青蘿
鵜のくぐる水の底まで黄落期 きくちつねこ
鵜のつらに篝こぼれて憐れなり 荷兮
鵜のやさしさ鵜匠の腰の蓑を噛む 誓子
鵜の一つ恵方迥かに浮き沈み 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
鵜の下りる寒潮紺を張るところ 皆吉爽雨
鵜の中のさびしきは羽ひろげをり 林 翔
鵜の乱舞見て来て咳の募りけり 大島民郎
鵜の休みゐる間に鵜匠淦汲める 桑田青虎
鵜の修羅のはじまりて水深まりし 長谷川双魚 『ひとつとや』
鵜の側を竹皮迅くながれたり 萩原麦草 麦嵐
鵜の匠鵜と同族の黒衣装 野澤節子 黄 炎
鵜の去つて潮ぐもりに榛の花 鳥居美智子
鵜の嘴にて鮎渾身の青一跳ね 加藤知世子 花寂び
鵜の嘴に山女がひかりちるさくら 瀧春一 菜園
鵜の嘴に水玉をどる早瀬かな 碧雲居句集 大谷碧雲居
鵜の嘴に躍れる鮎の篝映え 鈴鹿野風呂 浜木綿
鵜の嘴に魚とり直す早瀬かな 加舎白雄
鵜の嘴の鮎を一呑みする長さ 山下美典
鵜の団欒めいめい霧にくるまるのみ 細谷源二
鵜の墓の昏きに一樹寒椿 松井慶太郎
鵜の宿に母家離れ家葉鶏頭 吾妻規子
鵜の宿の下に遊船かゝりけり 比叡 野村泊月
鵜の宿の庭ひろ~と葵かな 高浜虚子
鵜の宿の灯して雨に聡くをり 神谷美和
鵜の小屋に燈明一つ年は逝く 松井慶太郎
鵜の尾岬四月の海霧の押しのぼる 阿部みどり女
鵜の尾岬澪之助なき山暮春 阿部みどり女
鵜の山の巣に愛鳥日来りけり 岩崎照子
鵜の岩に鵜のかげみえず冬の海 久保田万太郎 流寓抄
鵜の岩に鵜のをらざりし旱かな 鮫島春潮子
鵜の岩に鵜のをらぬなり土用浪 楠目橙黄子 橙圃
鵜の岩をとりまく波のおぼろかな 加藤三七子
鵜の岩を鵜のはなれつぎ雷きざす 金尾梅の門
鵜の岬に寄せ合ふ渦の鳴ると見ゆ 佐野まもる 海郷
鵜の崖に鵜の影もなし葉月潮 蕪城
鵜の嶋に流燈こぞる夜の雨 飯田蛇笏 春蘭
鵜の嶋のやまつばき咲く雨の中 飯田蛇笏 春蘭
鵜の川を焦がしてやまぬ薪能 伊藤敬子
鵜の息に冷えまさる水青々と 佐野青陽人 天の川
鵜の森のあはれにも亦騒がしく 高浜虚子
鵜の海の一月の風豪華なり 原田喬
鵜の潜く波みて昏れし二日かな 稲垣きくの 黄 瀬
鵜の濡羽照りて過ぎけり冬椿 桂樟蹊子
鵜の瀬まで春の時雨の手松明 長谷川久々子
鵜の瀬訪ひその夜は酒を温むる 森田 峠
鵜の瀬講より誘ひ受く御水取 黒田櫻の園
鵜の真似をして濡れている少年よ 久保純夫 熊野集
鵜の瞼針で縫ふとは哀れなり 伊藤柏翠
鵜の礁に鵜がきていつも冬初め 永井一穂
鵜の礁初東雲に見えわたり 富安風生
鵜の篝夜の殺生の明々と 橋本多佳子
鵜の糞の白き梢や冬の山 素牛 俳諧撰集「藤の実」
鵜の糞を售り校舎成る麦の秋 宮武寒々 朱卓
鵜の群の栖み枯らす松の冬日かな 大場白水郎 散木集
鵜の羽がながれて鵜飼はじまりし 萩原麦草 麦嵐
鵜の翼大きく張りし桜かな 岸本尚毅 選集「氷」
鵜の舟の淀に溜りて瀬を下る 京極杞陽 くくたち下巻
鵜の舟をまはす篝を外に垂れ 京極杞陽 くくたち下巻
鵜の觜をのがれのがれて鮎さびる 一茶
鵜の面(かほ)に川波かかる火影哉 高桑闌更 (らんこう)(1726-1798)
鵜の面に川波かかる火影かな 闌更
鵜の顔に暁の風吹きつけぬ 船山
鵜の顔の沈みて雨がふりにけり 萩原麦草 麦嵐
鵜の飛ぶは悲しき眺め浪の華 久國兆元
鵜の飛翔つねに沖指す大南風 内藤吐天 鳴海抄
鵜の首の蛇とも見えて恐ろしき 正岡子規
鵜の首や昃れば濃き寒の潮 石田波郷
鵜の鳥の友鳥はゐずひた翔ぶも 八木林之介 青霞集
鵜の鳥をさきには見たりラムネ飲む 相生垣瓜人 微茫集
鵜はかならずわが前にをり冬の灘 原田喬
鵜はどれも瞼をもてり春怒濤 原田喬
鵜は下りて梅雨の濁りに浮びけり 前田普羅 能登蒼し
鵜は出でぬ水の暗より火の暗へ 平井照敏 天上大風
鵜は籠に鵜篝の鋼火の曲げて 石川桂郎 高蘆
鵜は育つ渦を女々しきものとせず 古館曹人
鵜は舟に鴉は山に冬日かな 飯田蛇笏 霊芝
鵜は蛇の如く泳ぎて末枯るる 岸本尚毅 舜
鵜よごれの島をめぐりて鮑つく 鈴鹿野風呂 浜木綿
鵜をさばくひまの会釈をくれにけり 皆吉爽雨
鵜をつかふ此の世ならざる人のごと 京極杞陽
鵜をはなち見まもる老にちるさくら 瀧春一 菜園
鵜を抱きて鵜匠の話つづきけり 内田二三子
鵜を撫して鵜匠の鬚や暮の秋 石川桂郎 四温
鵜を統べて長良鵜匠は連理の族 松井利彦
鵜を追ふに秋風吹きたまる 細見綾子 花寂び
鵜を馴らす鮎解禁の近き瀬に 松尾緑富
鵜供養の鵜飼装束そぞろ寒 岩島妙子
鵜匠とは鵜に似せたるや似てをるや 稲岡長
鵜匠や鵜を遊する草の花 一茶 ■文化七年庚午(四十八歳)
鵜川とて市民共有ボート漕ぐ 百合山羽公 寒雁
鵜川原に滅罪の石積みありし 松井利彦
鵜戸の宮極彩色の小春かな 大橋敦子 匂 玉
鵜捕り場に待宵草の吹かれをり 町田しげき
鵜捕部の鵜に喜捨小鮒二三匹 松元桃村
鵜搦みの橋まぢかくて篝褪す 宮武寒々 朱卓
鵜松明川面の闇を切りすすむ 鷲谷七菜子
鵜殿まで土手半みちや秋の風 高濱年尾 年尾句集
鵜篝に水面の仔細移りつゝ 稲畑汀子
鵜篝に滝作し落つる灯虫あり 京極杞陽 くくたち下巻
鵜篝に瀧作し落つる灯蟲あり 京極杞陽
鵜篝に照らし出されし川楊 京極杞陽 くくたち下巻
鵜篝に虚仮の世間ぞ面白き 筑紫磐井 婆伽梵
鵜篝のおとろへて曳くけむりかな 飯田蛇笏
鵜篝のはるか上まで灯のなき山 横山白虹
鵜篝のひとつ点るや隠れ里 小林葭竹
鵜篝のほめき覚えて尾ける舟 鈴鹿野風呂 浜木綿
鵜篝のわが前に来て火の粉ふく 塚原幾久
鵜篝の今年最後の火が過ぐる 長田等
鵜篝の岩隠れたるあたりかな 京極杞陽 くくたち上巻
鵜篝の早瀬を過ぐる大炎上 山口誓子(1901-94)
鵜篝の流れ流るゝ焔かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
鵜篝の火を毟る水流れつつ 石川桂郎 高蘆
鵜篝の火入れは修羅の始めとも 杉山青風
鵜篝の火屑瀬水にしばし消えず 内藤吐天
鵜篝の火種そだてつ夕河原 原 柯城
鵜篝の炎狂ひて擦れ違ふ 殿村菟絲子
鵜篝の煙隠れの焔かな 京極杞陽 くくたち下巻
鵜篝の百の緋文字をしたたらす 加藤耕子
鵜篝の美しき修羅滑りくる 正木ゆう子
鵜篝の芯より火の粉はしり出づ 岸貞男
鵜篝の走れば水も燃え激つ 殿村菟絲子
鵜篝の靡けて映る巾ひろく 京極杞陽
鵜篝の麾けて映る巾ひろく 京極杞陽 くくたち下巻
鵜篝は靡きてすゝむ幡なして 山口誓子 方位
鵜篝も鵜ごゑもうつつ総がらみ 西村公鳳
鵜篝や月の山蔭山蔭に 鈴木花蓑句集
鵜篝や殺生図絵のかぐはしく 桂子
鵜篝や鵜の羽ばたきのしぶき浴ぶ 今牧茘枝
鵜篝よ我が船端は怺へつつ 沼尻巳津子
鵜篝をいでてながるる火の粉かな 京極杞陽 くくたち上巻
鵜篝を待つ間よ何を考へし 細見綾子 黄 炎
鵜篝を荒鵜は逃ぐるとも見ゆる 細川加賀 生身魂
鵜篝消す一気火の音水の音 中村明子
鵜籠の鵜コウと声あげ祓はるる 河本好恵
鵜籠舁きひと大股に土手を来る 加藤耕子
鵜籠負うて岨ゆくひとにちるさくら 瀧春一 菜園
鵜縄さばきに双子あゆます水ほとり 文挟夫佐恵 遠い橋
鵜縄無く鵜匠は竿を振り躍る 大場白水郎 散木集
鵜翔けるや磧の空を出づるなし 原田種茅 径
鵜舟から日暮広がるやうす哉 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
鵜舟くる火明りの峰をかさねつゝ 皆吉爽雨
鵜舟にてぷえるとりこの生れかな 松澤昭 面白
鵜舟に在りわが身の火の粉うちはらひ 橋本多佳子
鵜舟の床こたびも美酒と朗友と 中村草田男
鵜舟去る寶満宮の暗闇に 橋本鶏二
鵜舟待つ橋の袂に時計店 川崎展宏
鵜舟待つ残照の膝忘れをり 石川桂郎 高蘆
鵜舟曳く身を折り曲げて雇われて 西東三鬼
鵜舟漕ぐ水窮まれば照射哉 蕪村 夏之部 ■ 春泥舎會、東寺山吹にて有けるに
鵜遣ひの呼びかへす鵜にちるさくら 瀧春一 菜園
鵜遣も鵜も寝し岐阜や蚊帳に入る 佐野青陽人 天の川
鵜飛び大焚火とはなりにけり 久米正雄 返り花
鵜飼の鵜アクアラングの足で立つ 山口誓子
鵜飼果つ余燼の艫に人か鵜か 皆吉爽雨 泉声
鵜馴しややがて鵜川となる水に 高濱年尾
鵜馴らしややがて鵜川となる水に 高濱虚子
鶏頭にかつぎ据ゑたる鵜籠かな 比叡 野村泊月
黒く灼く樹頭を占むるみな鵜なり 宮津昭彦
黒どりの海鵜があそぶ若布刈り 佐野まもる 海郷
以上
by 575fudemakase
| 2014-06-14 00:36
| 夏の季語
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by 575fudemakase

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尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
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グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
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いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
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[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
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いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
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[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
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