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炎天

炎天

例句を挙げる。

あおむけの蟹炎天を掻きむしり 小宅容義
あのひとが欲しい炎天下の瓜よ 大西泰世 椿事
あはあはと富士容あり炎天下 富安風生
あひづちも遅れがちなる炎天下 町野けい子
あやふきを炎天の亀しかけたり 緒方 敬
いきいきとして炎天の草の露 上野泰 佐介
いさぎよし炎天重き担ぎ荷は 右城暮石 声と声
いつとなく若くなくなり炎天下 池田澄子
いはれなき懣り炎天の坂あるさヘ 千代田葛彦 旅人木
うつむいて炎天の草を刈る風がうごかない 橋本夢道 無禮なる妻抄
かつと炎天街路樹稚し横浜市 田川飛旅子 花文字
かの日炎天マーチがすぎし死のアーチ 高柳重信
からす来て炎天の巌落着きぬ 河野南畦 湖の森
きらきらと炎天光るものこぼす 原田一郎
くさめして炎天老うる齢ならず 冨田みのる
こひびともかもめも炎天のこんじき 夏井いつき
こんじきの棺炎天の湖わたる 飴山實 『おりいぶ』
しのび鳴く虫炎天の野にひろく 瀧春一 菜園
しんかんと炎天ザイル垂るるのみ 三谷昭 獣身
しゞみ蝶紫失せて炎天下 高木晴子 花 季
すぐ他人なり炎天に別れしひと 三好潤子
そよそよと白髪やしなふ炎天下 野澤節子 『八朶集』
つきまとう炎天の蠅われになにある 石橋辰之助
てむかひしゆゑ炎天に撲ちたふされ 長谷川素逝 砲車
とらわれの蟹炎天を掻きむしり 小宅容義
とりあへずこちらの方へ炎天下 高澤良一 素抱
どくだみの花炎天の水に咲く 松村蒼石 寒鶯抄
どこまでも炎天ひとに縋られず 辻田克巳
なつかしき炎天に頭をあげてゆく 原裕 葦牙
にんげんに祭り雀に真炎天 高澤良一 随笑
ねむり子を抱き炎天を追ひ行けり 文挟夫佐恵 黄 瀬
はぐれ猿来て炎天の鏡立つ 原裕 青垣
はらからと喪服を灼かる炎天下 高澤良一 素抱
はりつめし炎天先駆する柩車 原裕 葦牙
ひそかにてすでに炎天となりゆくも 相馬遷子 山國
ひたすらに炎天を行き伊良湖岬 比叡 野村泊月
ふりむかばわれ炎天の魚とならむ 奥坂まや
みすぼらしき尾や炎天に牛尿る 榎本冬一郎 眼光
みちのくに春色おそし牧の草 炎天
むしろ旗より炎天のデモ縮む 古舘曹人 能登の蛙
わが行手より炎天の火の匂ひ 野見山朱鳥
アイシャドウ濃く炎天の一帆追ふ・・・ジャワ 高澤良一 ねずみのこまくら
コウモリをさし炎天に殺意湧く 川口重美
シャツ干せば炎天の富士も夫もあはれ 殿村莵絲子 遠い橋
ターバンを巻くも巻かぬも炎天下 山本歩禅
ダリの絵の時計脈打つ炎天下 橋本榮治 麦生
トラック遠く走り炎天しづまれる 右城暮石 上下
ニコライの鐘降るごとし炎天下 望月百代
バスに跳ねる炎天の尾や明治村 原裕 葦牙
バス停めて祈りの時刻炎天下 桑田青虎
バーベキュー男が焼けり炎天下 斉藤葉子
ピカソ館出て炎天を登りゆく 佐川広治
ピラミッド下りるは怖し炎天下 嶋田摩耶子
ワイシャツ干す炎天の他触れさせず 橋本美代子
一人ゆく潔きかな炎天下 深見けん二
一塵もなき炎天でありにけり 村松紅花
一睡もせず炎天がはじまれり 右城暮石 声と声
九十九の渦を炎天に逆立たしむ 橋本夢道 無禮なる妻抄
予後の身に炎天といふ試金石 杉山青風
仏壇を負う男炎天の山脈見えぬ 和田悟朗
何も降らぬ鳩の楽土の炎天下 百合山羽公 寒雁
佛像に飽き炎天の石跨ぐ 渋谷道
作務衣の紐三つ目結うて炎天へ 高澤良一 随笑
其 中 一 人 と し て 炎 天 山頭火
円覚寺炎天へ鐘撞きにけり 佐野青陽人 天の川
出し店の雫滴々炎天下 右城暮石 声と声
切れ目なき炎天どこまでが戦後 清水衣子
刮目の新炎天を人は避く 百合山羽公 寒雁
午後二時の炎天くらし簾の外に 相馬遷子 山河
厚朴の葉のひまに炎天青くふかし 瀧春一 菜園
原爆忌へ一歩つまづく炎天下 小林康治 玄霜
口すこし裂けしと思ふ炎天下 井沢正江 湖の伝説
古き代は見えず炎天の大河のみ 林翔 和紙
古き帆を張り炎天の風恃む 津田清子 礼 拝
同齢なりしと炎天に死をつぶやけり 猿橋統流子
君みうしなふ炎天のチーズ市 皆吉司
君ら征きしはまぼろし炎天のまぼろし 小枝秀穂女
吸殻を炎天の影の手が拾ふ 秋元不死男(1901-77)
吾が影をわが支へとし炎天下 ほんだゆき
哭かむまで炎天の澄みまさりけり 小林康治 四季貧窮
回転扉ひらりひらりと黒炎天 澁谷道
土煙炎天に立て羊追ふ 下村梅子
地下街を出て炎天に翅音あり 奥坂まや
地獄劇息詰めて見る真炎天 町田しげき
城もまた三界火宅炎天下 成瀬正とし 星月夜
埒もなし炎天に蔓ひきまはす 中田剛 珠樹以後
域の内暗し炎天の世をへだて 吉屋信子
塩ふける梅干を炎天の簀に曝らし八月六日原爆記念日の昼 太田青丘
墓地炎天雑草浅草区をうずむ 石橋辰之助
夢殿の八角の影真炎天 猿橋統流子
夢殿を出て炎天に捉へらる 北野民夫
大道芸炎天に置く銭の箱 柏原眠雨
妻恋し炎天の岩石もて撃ち 中村草田男(1901-83)
妻遥かにて炎天を分ち合ふ 橋本榮治 越在
子のグリコーつもらうて炎天下 日野草城
完璧な炎天となり吾を入れず 野中 亮介
宿敵をいかんともせず炎天下 大口元通
寸鉄のヘヤピンを挿し炎天へ 鷹羽狩行 誕生
屋上の気球炎天の海遠望 長谷川かな女 花 季
屋根師らの尻の小さし真炎天 高井北杜
屋根貧しき涯炎天の接収港 古沢太穂 古沢太穂句集
山中の氷らぬ池や浮寐鳥 石動炎天
山荘の炎天茅渟の海へ伸ぶ 高濱年尾 年尾句集
山頂や三百六十度の炎天 高橋悦男
己が首持てる石像炎天に 岩崎照子
師の逝きて炎天の端に残さるる 毛塚静枝
師を送り来て炎天のよるべなし 原 柯城
帯売ると来て炎天をかなしめり 三橋鷹女
幸福肌にあり炎天の子供達 飯田龍太 童眸
影さへも亡び炎天の幾礎石 林翔 和紙
往生の道炎天を貫けり 伊藤通明
心もどる炎天の松見あげては 木村蕪城 寒泉
心太くふ炎天の人の餓 西島麥南
心棒に狂ひを生ず真炎天 高澤良一 随笑
心炎天の花掴み病みこけてゐる 人間を彫る 大橋裸木
扉さびし炎天・ほとけそして錠 渋谷道
手がかりとせむ炎天にふくらむ波 右城暮石 声と声
打って出るおもひ強かり炎天に 高澤良一 寒暑
抱き合ふ榾の中より大炎 天野 菊枝
捨て台詞吐き炎天へ鴉翔つ 柴田奈美
放牛のまわりに烏炎天下 田川飛旅子 花文字
旅なればこの炎天も歩くなり 星野立子
日もすがら焦土のけむる炎天下(疎開先の飯能より事務連絡にてたびたび上京、帰途は所沢附近にてしばしばグラマン戦闘機の襲撃にあふ七月下旬より炎天続く-竹槍と爆撃機との愚かなる戦争) 石原八束 『秋風琴』
日日いらだたし炎天の一角に喇叭鳴る 金子兜太 少年/生長
日本人の髪は黒くて……炎天下 櫂未知子 貴族
日蝕の別の炎天とはなりぬ 今井杏太郎
明日死ぬ妻が明日の炎天嘆くなり 齋藤玄 『玄』
映画出でホセとまぎるゝ炎天下 川口重美
書展出て炎天のうす墨の色 高瀬哲夫
果実の言葉炎天をゆく少女らより 熊谷愛子
梅桜炎天ひくく光りけり 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
梅雨晴の白百合多き山路かな 石動炎天
棘もつ木伐つて炎天くつがへす 水沼三郎
棟木上ぐ鬨炎天の真洞かな 石塚友二 光塵
槍穂高色を違へて炎天下 粟津松彩子
歩おとろふ父に炎天容赦なし 毛塚静枝
歯を抜いて炎天の真中が冥し 千代田葛彦 旅人木
死して炎天悪妻にして悪母なり 齋藤玄 『玄』
死して鎧ふ巨き炎天の墓石なり 林翔 和紙
死ぬ日まで炎天の野を蝶舞へり 豊長みのる
死のときのひとりのごとし炎天ゆく 的野雄
殺意にも似し炎天の気貴さよ 斎藤空華 空華句集
水に流すには非ず炎天水を流す 橋石 和栲
水脈の果て炎天の墓碑を置きて去る 金子兜太 少年/生長
水鏡して炎天はいづこにも(善通寺・御影の池) 原裕 『青垣』
水飲むや口中くらき炎天下 土田日露支
氷挽く泡だちてゐる炎天に 中田剛 珠樹
求職の列炎天に蔭もたず 船越斗波
汗し働く基地の炎天生々し 小林康治 四季貧窮
波追うて波の重なる炎天下 星野椿
泥染の泥の炎天はじまれり 隈元いさむ
活火山炎天にあり石を投ぐ 秋篠光広
浮游する炎天の群に降るべきか 林翔 和紙
海に船見えず炎天身に痛し 杉本寛
涯しなき青田炎天白濁す 相馬遷子 山國
涸れつくし母炎天の礫めく 小林康治 玄霜
湯地獄の底轟きて真炎天 西村公鳳
濯ぎ石炎天をのせはじめけり 大岳水一路
瀕死の病婦に彼等あたえしもの炎天 赤城さかえ句集
火を焚いて故意に炎天濁しけり 栗生純夫 科野路
炎天が婆の命を剥ぎとりぬ 瀧澤伊代次
炎天が曲げし農夫の背と思ふ 後藤比奈夫 金泥
炎天が校庭広くしてをりぬ 前内木耳
炎天こそすなはち永遠の草田男忌 鍵和田[ゆう]子
炎天といのちの間にもの置かず 斎藤玄
炎天といふしづけさに在所あり 古川ウヰ子
炎天となるおん墓のうらおもて(深大寺) 細川加賀 『傷痕』
炎天となる一隅の雲たぎち 能村登四郎 枯野の沖
炎天となる赤縞の日除かな 久米正雄 返り花
炎天なれば蜘蛛の餌の食ひのこりもよ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
炎天に 跫音きえて 哄笑はのこる 富澤赤黄男
炎天にあがりて消えぬ箕のほこり 芥川龍之介
炎天にあるきだしをり舌出して 加藤秋邨 野哭
炎天にあるき神つくうねり笠 内藤丈草
炎天にいつまでも見え見送れる 荒川 曉浪
炎天にいま逢ひそれも過去のごとし 目迫秩父
炎天にうすかげろふは一縷の詩 石原八束 空の渚
炎天におとろへし火をまた焚ける 原裕 葦牙
炎天にきりんの首の漂へり 野木桃花
炎天にそよぎをる彼の一樹かな 高浜虚子
炎天にたはむれあせし牛の舌 原裕 葦牙
炎天にちよと出てすぐに戻り来し 高濱年尾 年尾句集
炎天につかへてメロン作りかな 篠原鳳作(1905-36)
炎天につよく生まれて甲斐わらべ 筑紫磐井 未定稿Σ
炎天になめらかなりき松の幹 沢木欣一
炎天にはじけ出されし訃報かな 岸田稚魚
炎天にはたと打つたる根つ木かな 芥川龍之介 我鬼窟句抄
炎天にひるがえらむとす葉の勁さ 石橋辰之助
炎天にふるへてゐたる蝶の舌 吉田汀史
炎天にぶつかつてゆくひろびたひ 松澤昭 面白
炎天にもってゆかれし大飛球 高澤良一 随笑
炎天にわん~と鉦鳴らし行く 久米正雄 返り花
炎天にテントを組むは死にたるか 藤田湘子
炎天にモスク剥落とめどなし 上野さち子
炎天に一樹の影の地を移る 桂信子 遠い橋
炎天に上りて消えぬ箕の埃(大正十年八月) 芥川龍之介 蕩々帖〔その一〕
炎天に乱打されをる太鼓かな 相生垣瓜人 明治草抄
炎天に乾びきつたる怒りあり 仙田洋子 雲は王冠
炎天に何もなし人生きて群れ 殿村菟絲子 『旅雁』
炎天に何置く台の引出され 石田勝彦 秋興
炎天に出づ名曲に潤ひて 上田五千石 田園
炎天に出でてわが身のあたらしき 相馬遷子 雪嶺
炎天に出んとて咳をこぼしけり 森 総彦
炎天に即して松のいさぎよし 山本歩禅
炎天に吊らるる背骨ひとつらね 辻美奈子
炎天に吾が生き墓石自若たり 橋本夢道 『無類の妻』以後
炎天に哭けとこそあり捨て寝墓 小林康治 玄霜
炎天に嘆き一すぢ昇り消ゆ 文挟夫佐恵 黄 瀬
炎天に四人目の孫名も面倒なり「東」とす 橋本夢道 良妻愚母
炎天に墓を晒して鬼舞へり(千葉県広済寺) 野澤節子 『駿河蘭』
炎天に夢呆けの貌ありにけり 仙田洋子 雲は王冠
炎天に大軋りして埠頭貨車 五十嵐播水 埠頭
炎天に尻うち据ゑて栄螺割る 矢島渚男(1935-)
炎天に山風の香や吉野口 桂信子 遠い橋
炎天に待つ群衆の皆跼む 野見山朱鳥
炎天に心おくれて憩ひける 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
炎天に怒りおさへてまた老ふも 大野林火
炎天に抱く卒塔婆の木の香かな 中里 篠
炎天に揺れゐて草のしづかかな 長谷川双魚 風形
炎天に旅人憶良の山指さる 八木林之介 青霞集
炎天に槍投げてをる草田男忌 角川春樹
炎天に気の触る雀など居らず 高澤良一 随笑
炎天に水強くあり北信濃 長谷川双魚 風形
炎天に池を置き去る鰻番 百合山羽公 寒雁
炎天に汽笛なりて沖ふと近し 宮津昭彦
炎天に消ゆる雲あり鳶高く 高濱虚子
炎天に深谷ありぬ鞍馬寺 小澤實
炎天に火を焚いて来し眼あり 石川日出子
炎天に火山を置けりきりぎりす 相馬遷子 山国
炎天に焔となりて燃え去りし 細見綾子(1907-97)
炎天に焚きたる火より猫走る 下村槐太 天涯
炎天に無聊のわれを投じたる 藤崎久を
炎天に焦げ叫び伏したゞアラー(ダハラン二句) 殿村菟絲子 『牡丹』
炎天に煌と城壁草田男忌 見市六冬
炎天に燕湧き翔ち伊良湖岬 比叡 野村泊月
炎天に父の聲母の聲まじる 八木林之介 青霞集
炎天に犬身振ひの骨の音 沢木欣一 地聲
炎天に獄衣干しけり監獄署 寺田寅彦
炎天に瑞の太枝を引きずりゆく 千代田葛彦 旅人木
炎天に生木を焚きてゐたりけり 川村研治
炎天に目のしたたかな油賣り 筑紫磐井 未定稿Σ
炎天に眠る峡谷(キャニオン)無韻なり 仙田洋子 雲は王冠
炎天に眩むや髄細りたり 林翔 和紙
炎天に眼なほ在り捨て鰈 金箱戈止夫
炎天に穴一の穴の日かげかな 村上鬼城
炎天に窪む石あり塩くれ場 大野徳樹
炎天に立つ師も弟子も遠くして 能村登四郎 有為の山
炎天に笠もかむらず毒蛇捕り 篠原鳳作
炎天に筵たたけば盆が来る 飯田龍太
炎天に繋がれて金の牛となる 三橋鷹女
炎天に耳の動くはさみしけれ 小島千架子
炎天に耳鳴りのごと乗る木馬 対馬康子 愛国
炎天に聲を拡げて物売れり 相生垣瓜人
炎天に肥煮る釜のたぎり哉 中勘助
炎天に肩落し消ゆ誓子はも 岸田稚魚
炎天に莚たたけば盆が来る 飯田龍太
炎天に菊を養ふあるじかな 子規句集 虚子・碧梧桐選
炎天に蒼い氷河のある向日葵 富澤赤黄男
炎天に蓮池青き焔むら立ち 深川正一郎
炎天に蓼食ふ虫の機嫌かな 一茶
炎天に訣る洋傘の絹の艶 津田清子
炎天に誰も見てゐぬ雀影 高澤良一 寒暑
炎天に谺す深井汲みにけり 松井葵紅
炎天に道を余して引き返す 古館曹人
炎天に鉄のたたずむ自噴井 赤城さかえ句集
炎天に鎮まりて赤煉瓦館 右城暮石 上下
炎天に雁来紅の沸き上る 相生垣瓜人
炎天に雄鶏の胸硬く死せり 渋谷道
炎天に電柱一本づつ退屈 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
炎天に鰈が生きて片眼かな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
炎天に鰯いきいき売りすすむ 古沢太穂 古沢太穂句集
炎天に鹿沼麻緑蔭に鹿沼土 西本一都 景色
炎天に麦屑を焼く焔かな 大谷句佛 我は我
炎天に黒き喪章の蝶とべり 日野草城
炎天に鼻を歪めて来りけり 京極杞陽 くくたち上巻
炎天のあらがふ蔓に肱張りて 中田剛 珠樹以後
炎天のいつか夕ばむ川面かな 久米正雄 返り花
炎天のいづこか昏き喪明けなる 有働亨 汐路
炎天のいづこか笑ふ閻魔寺 殿村菟絲子 『樹下』
炎天のうしろこゑなきひとりごと 石原八束 空の渚
炎天のうしろ思へり孔雀鳴く 松山足羽
炎天のうすきまなざし稲の穂や 中拓夫 愛鷹
炎天のうたごえおこる鐵骨の中 栗林一石路
炎天のかすみをのぼる山の鳥 飯田龍太(1920-)
炎天のくるぶしに田がやはらかし 榎本冬一郎 眼光
炎天のこぼしてゆきし日照雨かな 藤松遊子
炎天のごと物足らぬ生死かな 永田耕衣 人生
炎天のしじまに光る塩湖あり 仙田洋子 雲は王冠
炎天のしづまり返り川流る 右城暮石 上下
炎天のすでに秋めく己が影 高橋悦男
炎天のその崖見るが一大事 斎藤空華 空華句集
炎天のたいせつにある木たくさん 松澤昭 面白
炎天のつばくらばかりいきいきと 石塚友二
炎天のとかげのわれを知る呼吸 秋山牧車
炎天のところどころに湿める家 長谷川双魚 風形
炎天のどこかつまづき三時過ぐ 橋本榮治 越在
炎天のどこかほつれし祭あと 相馬遷子 山河
炎天のどこにも触れず戻り来ぬ 神蔵器
炎天のどの角度より逃がれんや 椎橋清翠
炎天のにわとり雌をおさへけり 冬の土宮林菫哉
炎天のはしばしを海打ちにけり 落合水尾
炎天のひとつの墓に心寄す 行方克巳
炎天のひとりに立ちし埃かな 藤木倶子
炎天のほどをはだけて憩ひるも 冬の土宮林菫哉
炎天のむなしさ己が影を追ひ 福田蓼汀 秋風挽歌
炎天のわが影ぞ濃き喜雨亭忌 能村登四郎
炎天のわづかなる風土管を抜け 榎本冬一郎 眼光
炎天のをとこがをとこ翳らせて 鳥居おさむ
炎天のイブは片目をつむるかな 仙田洋子 雲は王冠
炎天のガスタンク抱きたき勝利 古沢太穂 古沢太穂句集
炎天のキヤラメル工場迷彩のこす 田川飛旅子 花文字
炎天のパパイヤよりぞ睡魔かな 高橋馬相 秋山越
炎天のポストは橋のむかふ側 鈴木しづ子
炎天のポストヘ無心状である 山頭火
炎天のポプラ逆立つ鱒の水 木村蕪城 寒泉
炎天のレールの襞へ油たらす 古沢太穂 古沢太穂句集
炎天の一戸一戸の患者訪ふ 瀧澤伊代次
炎天の一揖に人を葬りしや 小林康治 『潺湲集』
炎天の一枚に照り子を送る 原コウ子
炎天の一樹一影地にきざむ 那須乙郎
炎天の一点として飛べるなり 小澤實(1956-)
炎天の一片の紙人間(ひと)の上に 文挟夫佐恵
炎天の一隅松となりて立つ 加藤楸邨
炎天の七里ケ浜のエロスたち 今泉貞鳳
炎天の三輪山に入る鳥一つ 原田喬
炎天の下さはやかに蛭泳ぐ 原石鼎
炎天の下に睡蓮花を閉づ 高濱年尾 年尾句集
炎天の下りて上る墓地のみち 京極杞陽 くくたち下巻
炎天の中こぎゆくや車曳 井上井月
炎天の中の空より声かへる 岡井省二
炎天の中ほどを日のすすみゐる 長谷川双魚 『ひとつとや』
炎天の中空を雲押し来り 解夏草 柴浅茅
炎天の乾飯食める雀かな 金尾梅の門 古志の歌
炎天の伊吹立ちくる板艾 宇佐美魚目 天地存問
炎天の光へ水をさげてゆく 橋本夢道
炎天の八方砂丘なだれ合ふ 山口草堂
炎天の割れるものならわれしやんせ 冬の土宮林菫哉
炎天の卒ほがらかに號令す 筑紫磐井 婆伽梵
炎天の原型として象あゆむ 奥坂まや
炎天の号外細部読み難き 中村草田男
炎天の号外裏面なかりけり 小川軽舟
炎天の嚢中の銭うらがなし 三谷昭 獣身
炎天の土の栖は影もたず 石原舟月
炎天の地に救ひなき死馬の体 飯田蛇笏 椿花集
炎天の地蔵の頭撫でて過ぐ 青柳志解樹(1929-)
炎天の地軸に立てて杖はこぶ 皆吉爽雨
炎天の坂に輓馬の頸力む 田川飛旅子 花文字
炎天の坂や怒を力とし 西東三鬼(1900-62)
炎天の埃洗へば白髪ふゆ 皆川白陀
炎天の墓しんしんと酒を吸ふ 谷川季誌子
炎天の墓を思い出にわが生身 松村蒼石 雁
炎天の墓を電車が迅く過ぐ 細見綾子 黄 炎
炎天の大仏へ妻と胎内の涼しさに 橋本夢道 無類の妻
炎天の大器の縁の欠けてをり 櫂未知子 蒙古斑
炎天の大榕樹下の市をなす 千代田葛彦 旅人木
炎天の奥へ奥へと歩むなる 相生垣瓜人 微茫集
炎天の女体アパートヘ一筋道 野澤節子 牡 丹
炎天の妻子遠しといまはいわず 栗林一石路
炎天の孤松ぞやがて鳴りいづる 瀧春一 菜園
炎天の室戸怒濤の鬼薊 橋本夢道 無類の妻
炎天の室津は道に塩噴ける 品川鈴子
炎天の富士となりつつありしかな 大峯あきら
炎天の屋根に影ひく煙りかな 金尾梅の門 古志の歌
炎天の屋根塗れり蟇とつくばひて 石塚友二
炎天の山が黙つてゐたりけり 細川加賀 生身魂
炎天の山に対へば山幽らし 飯田蛇笏
炎天の山河を蔽ふ宙の濤 飯田蛇笏 椿花集
炎天の山荘に老郵便夫 上野泰 春潮
炎天の岩にまたがり待ちに待つ 西東三鬼(1900-62)
炎天の峠こえくる一人かな 石井露月
炎天の島このほかに港なし 右城暮石 上下
炎天の島より放つ荼毘の船 小野寺濱女
炎天の巌の裸子やはらかし 飯田龍太 百戸の谿
炎天の巨石や落つる刻を待つ 細川加賀 『傷痕』
炎天の市にとゞろと法鼓かな 清原枴童 枴童句集
炎天の師の墓に影預けけり 毛塚静枝
炎天の平たき町を通りけり 今井杏太郎
炎天の底の蟻等ばかりの世となり 尾崎放哉
炎天の底びかるまで斧を研ぐ 榎本冬一郎 眼光
炎天の底濁るかにくもりけり 久保田万太郎 草の丈
炎天の弧にも爆痕ある如し 下村ひろし 西陲集
炎天の影ことごとく殲滅す 筑紫磐井 婆伽梵
炎天の影なき橋を渡りけり 石原舟月 山鵲
炎天の影もちあるく港町 八尾とおる
炎天の影を恃まず一樹立つ 橋本榮治 越在
炎天の影を離さず霊柩車 有働 亨
炎天の影先立ててわが蹤けり 石塚友二
炎天の心音たしかむ被爆の地 小林道夫
炎天の戸口に音すひとりづつ 飯田龍太 麓の人
炎天の振子に縋る悪の翳 石原八束 空の渚
炎天の撫牛なでて安らなり 三宅句生
炎天の散り葉に触りて覚めにけり 原田種茅 径
炎天の旅孔雀の尾持ち歩く 右城暮石
炎天の旗竿に旗なかりけり 池田秀水
炎天の日々あらたなり阿修羅像 中田剛 珠樹以後
炎天の日の入り込まぬ蝉の穴 青葉三角草
炎天の日暮れてをりし躙口 神尾久美子 桐の木
炎天の暗さ負目の蝶かがよふ 原裕 葦牙
炎天の未来の刻を地に経る 斎藤空華 空華句集
炎天の杜の中うつろありけり 佐野良太 樫
炎天の来し方遠くけぶりをり 豊長みのる
炎天の杭なり海を恋ひにけり 千代田葛彦 旅人木
炎天の板ひらひらと家が建つ 八木三日女 紅 茸
炎天の梨棚がめりめりさがりくる 冬の土宮林菫哉
炎天の梯子昏きにかつぎ入る 橋本多佳子
炎天の樟を越えつつ兜虫 鈴木 元
炎天の樹下りんりんと山蛙 石原舟月
炎天の欅生死を見下ろせり 渡辺桂子
炎天の水くぼませて簗を打つ 星野 秀則
炎天の沙吸ひ入れて壺眠る 小檜山繁子
炎天の洗面器空子が寝入れば 古沢太穂 古沢太穂句集
炎天の浜に火焚けば蟹隠る 内藤吐天 鳴海抄
炎天の浜白泡を長く保つ 右城暮石 上下
炎天の海、底岩の彩たゞよふ 右城暮石 上下
炎天の海見たき日の白帽子 伊藤京子
炎天の海高まりて島遠し 内田百間
炎天の深ささみしむ胸反らし 村越化石 山國抄
炎天の湖ひとところ夜のごとし 加藤知世子 黄 炎
炎天の湖遠し夫立てば立つ 殿村莵絲子 遠い橋
炎天の澄みたるものに弥勒仏 松山足羽
炎天の濤に照られて月消ゆる 吉武月二郎句集
炎天の火の山こゆる道あはれ 水原秋櫻子
炎天の火を消す水の荒びかな 平井照敏 天上大風
炎天の火ロ金輪際を行く 野見山朱鳥
炎天の焚火まつたく音をなさず 藤岡筑邨
炎天の焚火埃りの荒々し 栗生純夫 科野路
炎天の熊笹の道いゆくなり 比叡 野村泊月
炎天の熱気持ち込む市営バス 高澤良一 寒暑
炎天の犬捕り低く唄ひ出す 西東三鬼
炎天の現実女靴みがき 石橋辰之助
炎天の甃(いし)そり返るロゴス見き 加藤郁乎 球体感覚
炎天の田の母を呼ぶ嬰児の目 福田甲子雄
炎天の田の隅に吊り盆燈籠 小林康治 玄霜
炎天の白皚々の塩湖かな 森田峠 逆瀬川
炎天の目となつて来る葵紋 東野庭子
炎天の真ン中に太陽のあり 粟津松彩子
炎天の真水掛け合ふ海女親子 井上雪
炎天の石ころがれりこんにちは 石原八束 空の渚
炎天の石の剛直安土城 橋本榮治 麦生
炎天の石の時間のゆっくりと 高橋信之
炎天の石仏にわが貌さがす 原裕 葦牙
炎天の石光る我が眼一ぱいに 臼田亞浪 定本亜浪句集
炎天の石動かせて挺子しなふ 宮田正和




炎天の石柱に手を触れんとす 高室有子
炎天の石灰馬が掲示を嗅ぐ 田川飛旅子 花文字
炎天の砂利に小鳩は首なき影 安東次男 裏山
炎天の空にきえたる蝶々かな 冬葉第一句集 吉田冬葉
炎天の空へ伸び立つ藤の蔓 青山 冬至
炎天の空へ吾妻の女体恋ふ 中村草田男(1901-83)
炎天の空美しや高野山 高浜虚子(1874-1959)
炎天の署名小鳥の籠さげて 大木あまり 雲の塔
炎天の群蝶を喰ふ大鴉 石原八束 空の渚
炎天の羽音や銀のごとかなし 川口重美
炎天の老婆に無事を祝福され 瀧 春一
炎天の老婆氷塊さげ傾ぐ 野澤節子 花 季
炎天の肩車より父を統ぶ 行方克巳
炎天の胸の扉あけて我を見る 石原八束 空の渚
炎天の能楽堂草擦る音か 中田剛 珠樹
炎天の自然発火やいくところ 鈴鹿野風呂 浜木綿
炎天の船ゐぬ港通りけり 福田甲子雄
炎天の船笛何ぞ荒涼たる 榎本冬一郎 眼光
炎天の艪音こきこき遠ざかる 下村ひろし 西陲集
炎天の色は冷めたし凌霄花 瀧 春一
炎天の色やあく迄深緑 子規句集 虚子・碧梧桐選
炎天の芋畑の母に兵隊の子が逢ひに来てゐる 人間を彫る 大橋裸木
炎天の芯の暗さやくすり噛む 神蔵器
炎天の花が散るなり百日紅 温亭句集 篠原温亭
炎天の花火に故山応へけり 百合山羽公 寒雁
炎天の花火涼夜を約束す 百合山羽公 寒雁
炎天の草に沈める鉄の棒 田畑保英
炎天の草負うて人ころびたり 萩原麦草 麦嵐
炎天の荷車にさす油かな 野村喜舟
炎天の菊を縛して花見せず 右城暮石 上下
炎天の葉知慧灼けり壕に佇つ 鈴木しづ子
炎天の葛くぐりゆく水のこゑ 宇佐美魚目 秋収冬蔵
炎天の葬列につく手を垂れて 石原透
炎天の蓮裏返るまで吹かず 石塚友二 光塵
炎天の薄雲とほる肺の陰画 成田千空 地霊
炎天の蝶黄塵に吹かれけり 臼田亞浪 定本亜浪句集
炎天の蟻迅き地のあるばかり 皆吉爽雨
炎天の街へ呼びかけ献血車 北村かね子
炎天の街角に犬立ちもどる 原田種茅 径
炎天の表紙の裏のピラミッド 有馬朗人 母国
炎天の袋かがやく林檎畠 田川飛旅子 花文字
炎天の裏側は風吹いてをり 今井杏太郎
炎天の裸木リヤ王の白さなり 平井照敏 天上大風
炎天の認定被爆者席二百 鈴木貞雄
炎天の谿深く舞ふ一葉あり 飯田龍太
炎天の貌を小さく戻りけり 木村敏男
炎天の身に方寸の飾りなし 赤尾冨美子
炎天の軸とし立てり孤寥の白 小松崎爽青
炎天の農夫の頭石に負けず 榎本冬一郎 眼光
炎天の道のはるかを修道女 和田耕三郎
炎天の道行く泉あれば飲み 相馬遷子 雪嶺
炎天の道贖罪のごとく行く 伊藤柏翠
炎天の遠き帆やわがこころの帆 山口誓子(1901-94)
炎天の遠揺れ犬の精悍に 河野南畦 湖の森
炎天の遠目にしかと琴抱へ 木村蕪城 寒泉
炎天の邑にいく筋も道絡む 西村公鳳
炎天の郷土にあたま晒しをり 石塚友二 光塵
炎天の酒徒が見送る磧越ゆ 木村蕪城
炎天の酔顔頷く旧師の前 木村蕪城
炎天の野に近くとぶ鴉かな 上村占魚 鮎
炎天の金輪際をゆく鳥か 千代田葛彦
炎天の鎖をひいて疾走す 石原八束 空の渚
炎天の隙間を風の来たりけり 上田五千石 森林
炎天の雨樋修理に友死せり 中条久三夫
炎天の雲のゆきたる岩照りぬ 石橋辰之助 山暦
炎天の顔見えてゐて顔見えぬ 鳥居おさむ
炎天の風のきこゆる油田帯 石原舟月
炎天の香なり臭木の香にあらず 相生垣瓜人
炎天の馬あれつのる峠かな 横光利一
炎天の馬くさめせり瓦斯行きて 田川飛旅子 花文字
炎天の馬の背中は急流か 渡辺誠一郎
炎天の駅みえてゐる草の丈 鈴木しづ子
炎天の高みの黝む緑樹帯 飯田蛇笏 椿花集
炎天の鬱たる嶺々は尖がくる 飯田蛇笏 春蘭
炎天の鴉散らばる恐山 滝沢伊代次
炎天の鶏まつ毛なきまばたきを 川口重美
炎天の鷹の声なり紛れなし 石塚友二
炎天の鹿に母なる眸あり 飯田龍太 遅速
炎天の黄河ゆるゆる曲り来る 石 寒太
炎天の黒人霊歌けむらへり 石原八束 空の渚
炎天はときに富嶽を蔵すかに 中田剛 珠樹
炎天はまぶし目を伏せ旅疲れ 高濱年尾 年尾句集
炎天は影よりほかになかりけり 仙田洋子 雲は王冠
炎天は打楽器ひびき合ふごとし 奥坂まや
炎天は晴男の意地一周忌 関森勝夫
炎天は蒼し廃墟に貌よごれ(敗戦) 石原八束 『秋風琴』
炎天ふかく濃き青空を見定めぬ 野澤節子 黄 瀬
炎天へ一歩の蟇の指ひらく 殿村菟絲子 『晩緑』
炎天へ出て恋ひはじむ伎芸天 鳥居おさむ
炎天へ出る身構へのひと呼吸 阿部美恵子
炎天へ出揃いチェホフ忌の家族 徳弘純 麦のほとり 以後
炎天へ妻着て出づるジャワ更紗 高澤良一 ぱらりとせ
炎天へ打つて出るべく茶漬飯 川崎展宏(1927-)
炎天へ朝から震う糞尿車 大西やすし
炎天へ炭車影ごと突つ放す 小川雅英
炎天へ無頼の青田もりあがる 相馬遷子 山国
炎天へ産まるるときはたれも泣く 辻美奈子
炎天へ立ちてはならぬ葡萄蔓 廣瀬直人
炎天へ花かゝげそめやぶからし 高橋馬相 秋山越
炎天へ蜥蜴みづから色失ふ 藤田湘子 途上
炎天へ蝙蝠傘を挿入す あざ蓉子(1947-)
炎天へ遠き部屋にて水を煮る 和田悟朗
炎天へ遠山をおく竹の幹 桂信子 黄 瀬
炎天へ鉄のベンチを引きずり来る 渋谷道
炎天も幾度か眼に余りけり 相生垣瓜人 微茫集
炎天も老いもがらんとしてをりぬ 滝青佳
炎天も色を失へり 相生垣瓜人 明治草抄
炎天や「うごけば寒い」吾が墓石 橋本夢道 『無類の妻』以後
炎天やいくたび人の死に逢ひし 斎藤空華 空華句集
炎天やいつまでのこる法隆寺 佐野青陽人 天の川
炎天やおもて起して甑岳(こしきだけ) 細川加賀 『玉虫』
炎天やかばんの中の受信音 八木浩二
炎天やきらり~と水車 五十嵐播水 播水句集
炎天やくらきところを家といふ 本宮鼎三
炎天やこの道のみは歩まねば 貞弘衛
炎天やしかとふまへし火口丘(北アルプス) 河野南畦 『花と流氷』以前
炎天やただ行くといふ意志あるのみ 下村梅子
炎天やつぼみとがらす月見草 太田鴻村 穂国
炎天やなお抗わず税負う屋根 古沢太穂 古沢太穂句集
炎天やのめりて悪もなさぬなり 小林康治 玄霜
炎天やのめりて登る廃伽藍 小林康治 玄霜
炎天やひかりとぼしき車馬のかげ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
炎天やひしと蔦這ふ石館 徳永山冬子
炎天やひそかに鹿に囲まれし 中田剛 珠樹以後
炎天やひとりとなつて風の声 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
炎天やむくろの蝉のうらがえり 古沢太穂 古沢太穂句集
炎天やゑた村の上に鳶の鳴く 寺田寅彦
炎天やをすめすの綱大まぐはひ 沢木欣一 沖縄吟遊集
炎天やケセラ辻潤の背徳歌 石原八束 操守
炎天やピカソゲルニカ残しけり 文挟夫佐恵
炎天やマキンタラワのおらびごゑ 角川源義 『口ダンの首』
炎天や一念一歩山深し 古舘曹人 能登の蛙
炎天や一重瞼が恋しくて 錦織 鞠
炎天や世にへつらはず商へる 牧野まこと
炎天や人が小さくなつてゆく 飛島田[れい]無公
炎天や内がわ曇る焼酎壜 田川飛旅子 花文字
炎天や切れても動く蜥蜴の尾 芥川龍之介
炎天や別れてすぐに人恋ふる 稲田眸子
炎天や前世のやうに異国を過ぎ 桑原三郎 晝夜
炎天や動かしてみる己が影 満田春日
炎天や十一歩中放屁七つ 永田耕衣(1900-97)
炎天や厩の軒の古草鞋 寺田寅彦
炎天や口から釘を出しては打つ 加倉井秋を 午後の窓
炎天や口をつぐみし石地蔵 成瀬桜桃子
炎天や吹かれ通しの末枝の葉 西山泊雲 泊雲句集
炎天や命あるもの二三翔ぶ 滝青佳
炎天や地に分配の塩こぼれ 沢木欣一 塩田
炎天や大樹になりたきイブの裔 仙田洋子 雲は王冠
炎天や天火取りたる陰陽師 村上鬼城
炎天や子の手にぎりて何めざす 石原八束 空の渚
炎天や家に冷たき薬壺 妻木 松瀬青々
炎天や小路を廻る薬賣り 井上井月
炎天や屋台の丈の屋台蔵 藤田あけ烏 赤松
炎天や屋根なす浪の大室戸 橋本夢道 無類の妻
炎天や山寨の鼓おどろおどろ 会津八一
炎天や幌馬車一つ黒きのみ 阿部みどり女
炎天や恋ゆき死なばよかるらむ 小林康治 玄霜
炎天や我が毛穴より我が涙 磯貝碧蹄館 握手
炎天や投げつけし如き人の影 中島月笠 月笠句集
炎天や摩崖仏驚破崖を墜つ 石原八束 空の渚
炎天や昆虫としてただあゆむ 木下夕爾(1914-65)
炎天や棒高跳びの棒倒る 山根 真矢
炎天や森の青々樅梢 東洋城千句
炎天や死にし血生き血よりも濃し 右城暮石 上下
炎天や死ねば離るゝ影法師 西島麦南
炎天や水に磧に橋の影 野村喜舟 小石川
炎天や水を打たざる那覇の町 篠原鳳作
炎天や海にこもれる海の音 三橋敏雄
炎天や渡頭の舟の枯れ~に 野村喜舟 小石川
炎天や牧場ともなき大起伏 佐藤鯉城
炎天や犬は背かず吾に蹤く 石田あき子 見舞籠
炎天や瓦をすべる兜蟲 室生犀星(1889-1962)
炎天や生き物に眼が二つづつ 林徹
炎天や田の口細き水零れ 松村蒼石 雪
炎天や病臥の下をただ大地 斎藤玄 雁道
炎天や相語りゐる雲と雲 木下夕爾
炎天や秋蚕の為の桑の出来 高濱年尾 年尾句集
炎天や空にも地にも花槐 佐野良太 樫
炎天や笑ひしこゑのすぐになし 橋本多佳子
炎天や笠頼母しき鰻掻き 柑子句集 籾山柑子
炎天や精を切らさず一飛燕 百合山羽公 寒雁
炎天や縄で氷を提げてきし 中田剛 珠樹以後
炎天や耳を削がれし気球たち 磯貝碧蹄館 握手
炎天や肩より匂ふナフタリン 宮津昭彦
炎天や胸に二トロのペンダント 文挟夫佐恵
炎天や葵咲かせて異人墓地 太田鴻村 穂国
炎天や藤村顔の犬寝ておりぬ馬籠坂 橋本夢道 良妻愚母
炎天や藺の花ひらく水の上 石原舟月 山鵲
炎天や蛙が鳴けば水思ふ 佐野良太 樫
炎天や蛙鳴きゐる寺の中 増田龍雨 龍雨句集
炎天や蜥蜴のごとき息づかひ 小島千架子
炎天や行くもかへるも熔岩のみち 藤後左右
炎天や裏町通る薬売 寺田寅彦
炎天や誰が子はだしの放し飼 尾崎紅葉
炎天や貝殻山を踏みしだき 中田剛 珠樹以後
炎天や道路工事の異国人 井上 幹
炎天や金策つきし鞄置く 倉橋弘躬
炎天や釘打つ音の頭に刺さり 臼田亞浪 定本亜浪句集
炎天や鉄線の弧は橋を釣る 佐野良太 樫
炎天や鋲のつらなる鉄の船 土生重次
炎天や鍋釜持たぬ野猿の顔 橋本夢道 『無類の妻』以後
炎天や鎌を背にして海女あるく 橋本鶏二
炎天や長城嶺を直下せり 加藤秋邨 沙漠の鶴
炎天や開かずの踏切てふに待つ 西村英子
炎天や雫たらして岩兀と 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
炎天や青田の中に村ひそむ 相馬遷子
炎天や顔遠くして杉に立つ 桜井博道 海上
炎天や鰻つかめば鳴くきこゆ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
炎天や鳶交る声谺して 佐野青陽人 天の川
炎天や鴉があるく森の底 橋本鶏二
炎天や麹町なし水巴なし 斎藤空華 空華句集
炎天ゆく手提の中に鏡持ち 津田清子 礼 拝
炎天ゆく水に齢を近づけて 河合凱夫
炎天より僧ひとり乗り岐阜羽島 森澄雄(1919-)
炎天より幼な燕の聲したたる 相馬遷子 雪嶺
炎天より金魚の貌をして戻る 山田冬馬
炎天をあるきて己れ光らしめ 長谷川双魚 『ひとつとや』
炎天をいただいて乞ひ歩く 種田山頭火 草木塔
炎天をいよいよ青しきりぎりす 岡本松濱
炎天をぐわらんぐわらんと鐘樓かな 会津八一
炎天をこのみて歩く布衣の肩 小林康治 『虚實』
炎天をさ迷ひをれる微風あり 相生垣瓜人
炎天をすぎゆく風のうすみどり 長谷川双魚 『ひとつとや』
炎天をふわりと歩き転生す 大西泰世
炎天をゆきて戻りて掌がさみし 長谷川双魚 風形
炎天をゆき目ン玉をおとしけり 藤岡筑邨
炎天をゆくや彼の地に眼ひらきて 小檜山繁子
炎天をゆくわが息の聞かれけり 岸田稚魚 『花盗人』
炎天をゆく明眸を失はず 鈴木貞雄
炎天をゆく死者に会ふ姿して 岸田稚魚
炎天をゆく胎内の闇浮べ 坂巻純子
炎天をゆく食はむため生きむため 遠藤若狭男
炎天をマリオネットのごと歩し来 高澤良一 随笑
炎天を一人悲しく歩きけり 高橋淡路女 梶の葉
炎天を一枚の鴉落ち来る 相生垣瓜人 微茫集
炎天を一歩す心きまりけり 高木晴子 花 季
炎天を三半規管に従ひて 高澤良一 素抱
炎天を味方につけぬ勝投手 高澤良一 燕音
炎天を墓の波郷は立ちてをり 齋藤玄 『玄』
炎天を大きな腹でくる路地の妻女と目で挨拶 橋本夢道 無礼なる妻
炎天を帰りみぢんに葱きざむ 吉野義子
炎天を愉しみゐるは雀のみ 高澤良一 随笑
炎天を憩ひの場とす服役し 津田清子 礼 拝
炎天を断つ叡山の杉襖 矢島渚男 天衣
炎天を来しよこがほで押し黙る 江崎紀和子
炎天を来し人に何もてなさん 稲畑汀子 汀子句集
炎天を来し人小さきドアに消ゆ 遠藤梧逸
炎天を来てアポロンの喉ぼとけ 小澤克己
炎天を来てクーラーに冷やさるゝ 石塚友二
炎天を来てスーパーの深海魚 守屋房子
炎天を来てビルといふ影の箱 塙告冬
炎天を来て地獄絵に見入るなり 佐藤美恵子
炎天を来て大阪に紛れ込む 右城暮石 上下
炎天を来て押売の声つまづく 軽部烏頭子
炎天を来て水音の如意輪寺 加古宗也
炎天を来て炎天を振りむく子 金田咲子 全身
炎天を来て無類の妻の目の涼しさ 橋本夢道 無類の妻
炎天を来て燦然と美人たり 久米正雄(三汀)(1891-1952)
炎天を来て砂浜を更にゆく 山口波津女 良人
炎天を来て紛れなき金閣寺 久野洋子
炎天を来て苔臭き茶をすする 瀧春一 菜園
炎天を槍のごとくに涼気過ぐ 飯田蛇笏
炎天を歩きまはりて妻なき如 榎本冬一郎 眼光
炎天を泣きぬれてゆく蟻のあり 三橋鷹女(1899-1972)
炎天を真つ黒な傘さしてをり 久米正雄 返り花
炎天を真直に来てふり向かず 石川文子
炎天を瞶むや刻のうしろより 斎藤空華 空華句集
炎天を耕し寡黙深めけり 川村紫陽
炎天を蠍色にて立ちにけり 平井照敏 天上大風
炎天を行くやうしろは死者ばかり 石塚友二
炎天を行くや身の内暗くなり 中口飛朗子
炎天を行く食はむため生きむため 遠藤若狭男
炎天を負ひて二百五十歩かな 小出治重
炎天を遠く遠く来て豚の前 西東三鬼
炎天を避けきし蜂の逐ひ難し 百合山羽公 寒雁
炎天を鉄鉢と為す茄子の花 永田耕衣 殺佛
炎天を領せし加賀の國一揆 筑紫磐井 婆伽梵
炎天を駆けて降園時間なり 対馬康子 吾亦紅
炎天を駆ける天馬に鞍を置け 野見山朱鳥(1917-70)
炎天を黒衣まとひて神の使徒 林 友次郎
炎天ヘズボンの折り目踏み出せり 奈良文夫
炎天下おなじ家から人が出る 永末恵子
炎天下おのが影より羽音して 鎌倉佐弓 潤
炎天下かくれもなくて船世帯 高橋淡路女
炎天下とほき一樹の吹かれをり 伊東宏晃
炎天下ひとつの屋根の焦げており 和田悟朗
炎天下また爆音下クレーン動く 岩田昌寿 地の塩
炎天下亡き友の母あゆみ来る 大串章
炎天下仕立ておろしの喪服着て 高木あけみ
炎天下剣のごとく城光り 成瀬正とし 星月夜
炎天下吃りし君のなまめきぬ 和田耕三郎
炎天下吸ひし煙草の苦かつた 成瀬正とし 星月夜
炎天下大きな犬と出会いけり 中田 美子
炎天下島に尉ゐて太鼓打つ 佐川広治
炎天下廃磔像に悴むか 小林康治 玄霜
炎天下急ぐ気のなく歩きをり 高浜年尾
炎天下歯ぢからといふ力失せ 斎藤玄 雁道
炎天下歯塚は玉のごとくなり 成瀬正とし 星月夜
炎天下死者には影も声もなし 福田蓼汀 秋風挽歌
炎天下渚のごときひとの腕 和田耕三郎
炎天下焔のごとく城立てり 成瀬正とし 星月夜
炎天下無言で父に叱らるる 和田耕三郎
炎天下甘ずつぱくて少女の瞳 和田耕三郎
炎天下生ける者には黒き影 山畑緑郎
炎天下痛み快楽にすりかはる 和田耕三郎
炎天下磨滅鉄蓋濃紫 香西照雄 対話
炎天下穴に沈めり穴堀りつゝ 川口重美
炎天下蟻地獄には風吹かず 長谷川素逝 暦日
炎天下貌失なひて戻りけり 中村苑子
炎天下起重機少し傾いて 田中裕明 山信
炎天墓地磨かれたるはかなしめり 川口重美
炎天広場群衆はみな遠くあり(北京二句) 河野南畦 『元禄の夢』
炎天来て肋截るべく告げられぬ 上野さち子
炎天無心どの墓もわれをふりむかず 栗林一石路
炎天焦土人群れやすく散りやすく 成田千空 地霊
炎天翔ぶ翼に無数の鋲かゞやき 横山白虹
炎天行かすかにきしむ鳩の羽 香西照雄 素心
炎天行く真つ赤なものを身に纏ひ 右城暮石 声と声
炎天見る武人埴輪の面持ちに 高澤良一 さざなみやっこ
炎天青く子の顔遠く旅にある シヤツと雑草 栗林一石路
無人の境行くが如くに炎天行く 右城暮石 上下
熱もつてゐる炎天を来し一書 辻美奈子
父倒る炎天透けて音もたず 毛塚静枝
父母の墓炎天の真只中に 石橋辰之助
父母の墓遠く炎天に水こぼす 原コウ子
物言はぬ額炎天の笑ひ受く 原裕 葦牙
犀星碑まで炎天の土不踏 吉田紫乃
犬撫でて炎天けもの臭くせり 川村紫陽
猫、炎天の獲物へと近付けり 永井龍男
獨房の窓に炎天青く妻を追う 栗林一石路
獨立の大記念塔炎天下 保田白帆子
璃瑠蜥蜴棲む炎天の巌幽し 内藤吐天 鳴海抄
瓜売の売り仕舞ひけり炎天下 小杉余子 余子句選
甘蔗丈けて炎天の道つづきけり 千代田葛彦 旅人木
生きてゐてがらんどうなり炎天下 中村苑子
生きて渇く蟹よ炎天の蟹売よ 川辺きぬ子
生くるべし炎天を航く車椅子 花田春兆
白い声発す喪のごとき炎天に 桜井博道 海上
白炎天鉾の切尖深く許し 橋本多佳子(1899-1963)
白馬 ごみ車をひいていく 炎天の野が遠い 吉岡禅寺洞
目をぎゅっとつむって開いて炎天へ 高澤良一 随笑
目隠しをされた駱駝が炎天下 小西 昭夫
目鼻なき大炎天の正午なり 鳴戸奈菜
真炎天雀憶せず足許へ 高澤良一 素抱
眠る子を背に炎天の河馬の前 山崎ひさを
眼が裂けてをる炎天の鴎かな 石田勝彦
碑まぶしく読み炎天を去りがたき 八木林之介 青霞集
磐石に炎天の香ありにけり 伊丹さち子
祭絵馬より炎天の溢れ出づ 後藤比奈夫 花匂ひ
積砂利の中冷めきつて炎天に 野澤節子 黄 瀬
空知川見えては光る炎天に 栗林一石路
窖にこころ横たふ炎天下 石塚友二 方寸虚実
笑ひ声消ゆことはやし炎天に 宮津昭彦
米ぐらの倉庫は閉つていても雀炎天にあつまる 橋本夢道 無禮なる妻抄
網走も炎天の下箒草 高濱年尾 年尾句集
縛られ地蔵縛られつづく真炎天 毛塚静枝
罷り出ておろおろするな真炎天 高澤良一 素抱
老眼に炎天濁りあるごとし 高浜虚子
耳より声出す炎天の曳かれ牛 加藤三陽
肉声の集まる炎天下の墓標 実籾繁
胸なめゐし猫炎天に啼き上げし 川口重美
胸の上炎天までを一樹なし 斎藤空華 空華句集
自動ドアはじかれ出でて炎天下 渡辺 立男
自称ゴッホ橋に絵を売る炎天下 行沢雨晴
舟べりにゐて炎天の暗くあり 藤田あけ烏 赤松
船半ば塗られ炎天の海動かぬ 佐野美智
草取はせず炎天を唯眺め 高澤良一 寒暑
葉を巻いて炎天の虫栖みにけり 千代田葛彦 旅人木
葛の蔓つるに絡みて炎天へ 文挟夫佐恵 雨 月
蓮の風立ちて炎天醒めて来し 鈴木花蓑句集
薄紅葉して炎天は昨日のこと 原裕 葦牙
虫瘤の意気壮んなり真炎天 高澤良一 宿好
蛇が殺されて居る炎天をまたいで通る 尾崎放哉
蛙のむくろ腹見せて炎天の池の真つ青 人間を彫る 大橋裸木
蜂の巣を見つけ炎天子がわめく 細見綾子 花寂び
蜜と乳賜ふカンナの白炎天 加藤耕子
螺子ひとつ買ふのみに出づ真炎天 栄水朝夫
蟻一疋どちみても炎天の土 シヤツと雑草 栗林一石路
行乞の真上炎天うごかざり 小池芳子
解剖室の水流されて炎天へ 田沼文雄
言葉たくみに炎天を遁れ来し 原裕 葦牙
診察は束の間炎天また戻る 高澤良一 随笑
詩想・微風まとひつくのみ青炎天 香西照雄 素心
豚炎天に哭き八方の釘ゆるむ 細谷源二
貧農が炎天干の胡麻むしろ 石原舟月 山鵲
赤い旗振る炎天の貨車押せり 萩原麦草 麦嵐
身の丈の業負いてゆく炎天下 西島清子
軽子職なし炎天仰ぐ遠花火 小林康治 玄霜
軽装がベスト炎天あるく旅 高澤良一 随笑
透視了へ炎天の鉄骨錆びたり 千代田葛彦 旅人木
通院の炎天の道ゆく他なし 高澤良一 随笑
逢ふによしなく炎天の風に煽られて歩く 人間を彫る 大橋裸木
遊牧の民が火を焚く炎天下 佐川広治
過ぎ去りし炎天かかえこむ産後 対馬康子 純情
遠颱風炎天の奥軋み鳴り 相馬遷子 雪嶺
邃く暗し炎天死後もかくあらむ 小林康治 玄霜
野ざらしに見ゆ炎天の蟹港 福田甲子雄
金策や炎天に顔突き出して 石橋辰之助
釘抜くや炎天に穴ひとつ増える 宮津昭彦
銭かぞふ男炎天濁しけり 下田稔
銭落ちし音炎天のどこか破れ 藤田湘子 雲の流域
長城を踏み炎天を忘れをり 平野謹三
隠岐からの船炎天に牛おろす 各務里人
離農家族炎天に犬をのこし去る 細谷源二 砂金帯
雲過ぎる炎天さらに奥ありて 山崎為人
電柱の一列炎天はじまれり 徳永山冬子
電線の影あるのみの炎天を 京極杞陽
靄晴れて暑き空なり百合の花 石動炎天
青栗をゆする炎天のかぜ冷えぬ 瀧春一 菜園
青萱の石にみだるる炎天下 飯田蛇笏 椿花集
靴のみは無傷炎天下の轢死 田川飛旅子 『山法師』
頭にふるる炎天の風故郷なり 原裕 葦牙
風のある炎天に出づ主義に生く 津田清子 礼 拝
風見鶏時折動く炎天下 山県よしゑ
飴うりが飴うりに炎天に笛をふく 橋本夢道 無禮なる妻抄
高原を馬馳け吾子馳け青炎天 伊藤敬子
高山もこの炎天の下に臥す 相馬遷子 山國
高野山よりお使ひや炎天下 高木晴子 花 季
髪染めて偽りの身を炎天に 御崎敏江
鬼に随き炎天の道あるばかり 岸田稚魚 『萩供養』
鮑とる萬葉の濱炎天下 八木林之介 青霞集
鮒を蘭にさして通れり炎天に 細見綾子 花 季
鯛泳ぐとも炎天の彩褪せず 原裕 葦牙
鳥なんぞになり炎天に消えなむか 岸田稚魚(1918-88)
鳥の眼で飲む炎天の水飲場 有馬朗人 母国
鳥棲まず風が果ゆく黒炎天 河野南畦 湖の森
鳩に襲はる愉しさ炎天の一少女 磯貝碧蹄館
鳴門炎天激怒しおこる貧乏渦 橋本夢道 無禮なる妻抄
鳶鳴きし炎天の気の一とところ 中村草田男
鶴嘴の地固め唄や炎天下 石塚友二 光塵
黒眼鏡かけ炎天の墨絵かな 上野泰 佐介
齢おもふたび炎天のあたらしき 長谷川双魚 風形


以上
by 575fudemakase | 2014-07-24 00:45 | 夏の季語


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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