立春
立春
例句を挙げる。
*ほうぼうを提げ立春の畦通る 中拓夫
あはれげもいとど春立つ朝千鳥 上島鬼貫
いつの傷手の甲にあり春立てり 阿部みどり女
お水送りすぎて若狭に春来る 笠井フキ子
かかる夜の雨に春立つ谷明り 石鼎
かもめ舞う立春の空耀えり 青木規子
かゝる夜の雨に春立つ谷明り 原石鼎
こころの眼すこし見開き春立つ日 木村 風師
さゞ波は立春の譜をひろげたり 渡邊水巴
すきとほる赤立春の沼落暉 石井とし夫
ところ雪もたらして春立ちにけり 鈴木しげを
はきはきと物言ふ子供春立ちぬ 山田みづえ 草譜以後
ほとほとと春来る鬼か風音か 山田みづえ 木語
まづ生きるは息をすること春立ちぬ 岸田稚魚 『紅葉山』
むらぎもの心に遠く春立ちぬ 林火
やすり目や鞘に苔むすははぎの春 立允 選集「板東太郎」
よきことの待ちゐる思ひ春立ちぬ 桑田詠子
をみならに春立ち急ぐ飾窓 林原耒井 蜩
エルサレム巡礼満ちて春来る 神戸賀壽朗
オリオンの真下春立つ雪の宿 前田普羅 新訂普羅句集
カレンダーの巻ぐせ未だ春立てり 嶋田麻紀
カレンダーの赤き小文字立春と 成瀬正とし 星月夜
スキツプのおさげが揺れて春立てり 永峰久比古
ペンギンの手はつなぎたし春来たる 丸山 工
ポリバケツに入れ立春の卵購ふ 柳瀬茂樹
ヴィオロンの音色連れ去り春立ちぬ 稲畑廣太郎
一つ得て更に期すもの春立てり 毛塚静枝
一女わが娘と生れぬ春立つ日 石塚友二 光塵
一息に春来ぬまはりくどさかな 高澤良一 素抱
一鍬に泥鰌光れり春立つ日 野中ちよこ
七輪の口が真赤に春来る 河野静雲 閻魔
万燈のまたゝき合ひて春立てり 沢木欣一
丹頂の気高く舞ひて春立てり 墓田いさを
九十九の祖母と語るや春立つ夜 河野静雲
五器の香や春立つけふの餅機嫌 上島鬼貫
人中に春立つ金髪乙女ゆき 野沢節子
休耕田春来る水の音ひびく 町田敏子
何事もなくて春立つあしたかな 士朗
凧の絵も何かあはれや春立てる 百合山羽公 故園
勾玉のはだらの青に春立ちぬ 龍男
包丁のリズム整ひ春立ちぬ 東浦佳子
卵一つ立春の藪動乱す 原田喬
吃立の槇真顔なる立春以後 河野多希女 こころの鷹
名ばかりの春立つ風に頬裂かる 近藤紅泉
名を知りて後星の春立ちにけり 山口誓子
君が代や野中であたま民の春 立花北枝
和歌山県天から海から春来るよ 右城暮石 上下
喘息のポンプの音も春来る 河野静雲 閻魔
囀の木曾山深く春来たり 癖三酔句集 岡本癖三酔
回生の肺の画伯や春立つ日 河野静雲
土橋一つ渡る春来てゐたりしよ 村越化石
壺据ゑて窓に立春の竹のいろ 秋櫻子
大内山立春の雨御空より 渡邊水巴
大和路や春立つ山の雲かすみ 飯田蛇笏 霊芝
大法鼓鼕々立春大吉と 真下喜太郎
大雪を朗報のごと春立てる 百合山羽公 寒雁
天地広し立春なにに礙べき 井原西鶴
天深く春立つものの芽を見たり 加藤楸邨
嫁ぐ子と花種選りぬ春立つ日 伊藤京子
子供らに雪ふれ妻に春来たれ 京極杞陽 くくたち下巻
宵風雷の如し屋根の春立ち 内田百間
家畜等の膚色しかと春来たり 石橋辰之助 山暦
小江戸に春来て鹿皮白鞣し 加倉井秋を
小祠の切子硝子や春立てる 辻桃子
屋上に満たして春来る伊予言葉 加倉井秋を 『真名井』
山鴉春立つ空に乱れけり 百間
峰二つ塔ふたつ春立ちにけり 服部鹿頭矢
川下へ光る川面や春立ちぬ 高浜年尾
川口の洲に乗る潮に春立てり 内田百間
帯きものきもの黄八丈春立ちて 及川貞 夕焼
年寄れど娘は娘父の春 立子
年金の本読みゐたり春立つ日 高澤良一 宿好
幾度も春立つ暦見上げたる 阿部みどり女 『陽炎』
庭に来て春立つ雀やや細る 小松崎爽青
忘るなき春立つ峡の瀬音かな 飯田蛇笏 山廬集
戞然と春立つ鼓打たれけり 渡部抱朴子
手拭を首にひつかけ春来る 河野静雲 閻魔
揚幕の朱色結紐春立ちぬ 都筑智子
撫ればこそ猟虎(らっこ)の皮も和国の春 立詠 選集「板東太郎」
敷網の海坂まろし春立つ日 古田種子
斉唱の息のゆたかに春立てり 丹羽 啓子
新生児室白妙に春立つ日 町田しげき
日まみれの梢立春過ぎてゐし 高澤良一 ぱらりとせ
明日よりは春立つと云ふ静かな夜 高木晴子 晴居
春来しを知れり来ぬともつぶやかず 林原耒井 蜩
春来つつあり喫泉の噴き強し 館岡沙緻
春来つゝ大き金星胸の前 岸風三樓
春来とも友達言葉の友失ふ 及川貞
春来と言ふ背にある壁にもたれたり 細見綾子 花 季
春来ぬと風憂かりけりヒヤシンス 水原秋櫻子
春来り虚空に向ふ合掌は 阿部みどり女
春来るか孤児ら踊りの足つきなど 古沢太穂 古沢太穂句集
春来るとことぶれ神も藁の色 能村登四郎
春来ると湖畔に馬を曳き出だす 岸 風三楼
春来ると鈴懸しろき雲を乗す 岸風三樓
春来ると間ごとの灯ともしたり 上村占魚 『玄妙』
春来る童子の群れて来る如く 相生垣瓜人(1898-1985)
春来れば路傍の石も光あり 高浜虚子
春来川染めて温泉宿の初竈 宮武寒々 朱卓
春立ちし国々の上の浅間山 前田普羅 春寒浅間山
春立ちし大時計鳴りつづきをり 上野泰 春潮
春立ちし宵のみづぐみ鴎鳴く 金尾梅の門 古志の歌
春立ちし明るさの声発すべし 細見綾子(1907-97)
春立ちし畷凍えて暮れゆけり 百合山羽公 故園
春立ちてまだ九日の野山哉 松尾芭蕉
春立ちて三日嵐に鉄を鋳る 草田男
春立ちぬ日向放髪の乙女らに 加倉井秋を
春立ちぬ柩となりし木の株も 河原枇杷男 定本烏宙論
春立ち旗雲光ると雖神経霧ひ黄昏るる 日夏耿之介 婆羅門俳諧
春立つてゐる山の木の懸巣かな 岡井省二
春立つて十日の酒をこぼし合ふ 石田波郷
春立つとまづは水にも思ふべし 細見綾子 花寂び
春立つとわらはも知るや飾り縄 芭蕉
春立つとカトレヤ丸が銅鑼鳴らす 原田青児
春立つと剥製屋より太い煙 田川飛旅子 『植樹祭』
春立つと古き言葉の韻よし 後藤夜半 底紅
春立つと庭が掃かるる日かげかな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
春立つと影が勝手に動き出す 萩山栄一
春立つと拭ふ地球儀みづいろに 青邨
春立つと色紙を買へり決戦下 渡邊水巴 富士
春立つは衣の棚の霞かな 貞徳
春立つやあかつき闇のほぐれつゝ 久保田万太郎 流寓抄以後
春立つやおしめかけほす垣の上 小澤碧童 碧童句集
春立つやそゞろ心の火桶抱く 高濱年尾 年尾句集
春立つやちゝはゝに送る物すこし 相馬遷子 山国
春立つやとりあげ婆として逝きぬ 谷口智行
春立つやにほんめでたき門の松 徳元
春立つや一便殖えし島渡舟 徳永玄子
春立つや一匙で足る末期の水 高橋悦男
春立つや一生涯の女運 加藤郁乎(1929-)
春立つや五日に足らぬ米来る 千代田葛彦 旅人木
春立つや六枚屏風六歌仙 高浜虚子
春立つや刻めば溢るる掌の豆腐 池田順子
春立つや合掌の指ひた反らす 井上雪
春立つや四十三年人の飯 小林一茶 (1763-1827)
春立つや坂下見ゆる垣のひま 室生犀星
春立つや大野雨ふる朝ぼらけ 月舟俳句集 原月舟
春立つや子規より手紙漱石へ 榎本好宏
春立つや家鷲づかみクレーンの手 川元安子
春立つや山びこなごむ峡つゞき 飯田蛇笏 霊芝
春立つや川幅太るひとところ 館岡沙緻
春立つや愚の上に又愚にかへる 一茶
春立つや新年ふるき米五升 芭蕉
春立つや日月二池を小さく掘り 山崎斌 竹青柿紅
春立つや暦に赤き日曜日 吉屋信子
春立つや月眉形と見たるより 綾子
春立つや枝の先まで水明り 加藤岳雄
春立つや歯朶にとゞまる神矢の根 許六
春立つや水のくらさが我がくらさ 永島靖子
春立つや水響きゐる甲斐の国 石嶌岳
春立つや沼にほひくる夜の門 金尾梅の門 古志の歌
春立つや濁りさしたる藺田の水 有働木母寺
春立つや無表情にゆく車椅子 高橋達子
春立つや犀の鼻角根太りて 内田百間
春立つや糸巻残すカタン糸 永井龍男
春立つや草山ながら烽火台 柑子句集 籾山柑子
春立つや誰も人よりさきへ起き 鬼貫
春立つや醪に櫂の夢うつつ 宮坂静生
春立つや障子へだてしうけこたへ 久保田万太郎 流寓抄以後
春立つや雀の足もあたゝまり 椎本才麿
春立つや雪ふる夜の隅田川 角川春樹
春立つや雪嶺はまだ夢の白 大串章
春立つや飢ゑ生きいきと曉けに覚め 冨田みのる
春立つや鳥の羽かかる古葎 山口草堂
春立つ夜腰より睡さ襲ひくる 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
春立つ日人参を煮て芋を煮て 毛塚静枝
春立つ日寄進の幕の染り来し 比叡 野村泊月
春立つ風鳩がくはへしモールにも 阿部みどり女
春立てりまづ髭剃らむ然る後 石塚友二
春立てり三人の子のじゃんけんぽん 木附沢麦青
春立てり野の白壁の暗き方 千代田葛彦 旅人木
春立てる空に閾のあるごとし 高澤良一 随笑
春立といふより見ゆる壁の穴 一茶
春立やうめの根本にむめを種うる 日夏耿之介 婆羅門俳諧
春立や二軒つなぎの片住居 一茶 ■文政三年庚辰(五十八歳)
春立や四十三年人の飯 一茶 ■文化元年甲子(四十二歳)
春立や坂下見ゆる垣のひま 室生犀星 犀星發句集
春立や弥太良改一茶坊 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
春立や愚の上に又愚にかへる 一茶 ■文政六年癸未(六十一歳)
春立や新年ふるき米五升 芭蕉
春立や星の中から松の色 上島鬼貫
春立や菰もかぶらず五十年 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
春立や蒲團清らに雨を聴く 石井露月
春立や蜂のはひゐる土の割れ 室生犀星 犀星発句集
春立や見古したれど筑波山 一茶 ■文化元年甲子(四十二歳)
春立や誰も人よりさきへ起き 上島鬼貫
曲折を経つつあるなり春来ると 相生垣瓜人 微茫集
書を校す朱筆春立つ思あり 柴田宵曲
服地裁つ妻に夢あり春来つつ 伊東宏晃
朝の茶のかんばしく春立ちにけり 日野草城
未明音かなでてゆまり春立ちぬ 赤松[ケイ]子
本郷に波郷の月や春立ちぬ 塚越秋琴
林*けいに春立つ雲のしろみけり 飯田蛇笏 霊芝
枯枝にかこまれて春立ちにけり 石川桂郎 四温
枯枝や血走りて春来りけり 石塚友二 光塵
楢山の風紅いろに春立ちぬ 岸田稚魚 筍流し
標には「浪漫街道」春立てり 渡辺真映
横ざまに薙ぎて春立つ霜柱 井沢正江 火襷
横須賀の山に春来とやって来ぬ 高澤良一 素抱
機糸の色の束より春立てり 清水節子
母の杖母の草履に春来れど 阿部みどり女
水甕の氷まんまる春立てり 伊藤 ふみ
汚れなき立春までの掛暦 手塚美佐 昔の香
汝が指の繃帯に春立ちにけり 辻桃子
洗ひては汚しては春来つつあり 清水径子
浅間嶺は紫磨黄金に春立ちぬ 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
淋しさの似合はぬ人に春立ちぬ 河野扶美
淡々と立春の姪来りけり 八木林之介 青霞集
湯帰りの立春の日を浴びにけり 温亭句集 篠原温亭
湾立春勇躍緒につく糞尿船 磯貝碧蹄館 握手
潮境くっきりと春立ちにけり 木内怜子
点るごと立春の豆石の上 原裕 出雲
焼寺も春来て萩のわか葉哉 高井几董
煤たれて春立つ窓に幾吹雪 前田普羅 新訂普羅句集
犬みごもりわれ病めば春立つらむか 及川貞 榧の實
狐貌して来し立春の青菜売 長谷川かな女 花寂び
畳目の大きく見えて春立つ日 八田和子
瘤多き木に立春の日影さす 百合山羽公 故園
白銀の世界留めて春立ちぬ 稲畑廣太郎
目刺の背青し立春という一語 雅人
眼帯の内側にいて春立ちぬ 森田智子
矮鶏が鳴く春立つ山を前にして 阿部みどり女 『陽炎』
石楠花や貴船の神に春来り 尾崎迷堂 孤輪
砂浴びの鶏の身震ひ春立てり 田中俊尾
礁に焚く芥の炎春立つ夕 松村蒼石 雪
空に春立つ色見ゆる仰ぎけり 高木晴子 花 季
立ちて又燻り続けむ春立ちぬ 相生垣瓜人 明治草抄
立春といふに雪降り孫生る 皆川白陀
立春にはげまされたる心かな 国弘賢治
立春のいつか過ぎをる机かな 高澤良一 ぱらりとせ
立春のおもひこつんと貝にゆく 宇佐美魚目 天地存問
立春のかゞやき丘にあまねかり 高浜年尾
立春のこだま隧道抜けてくる 田山諷子
立春のその後の寒さ言ひ合へる 石塚友二
立春のどこも動かず仔鹿立つ 秋元不死男
立春のはたのひろものさものかな 間石
立春のはら~雨に妻外出 高田風人子
立春のぶつかり合ひて水急ぐ 会田保
立春のまだ垂れつけぬ白だんご 中山純子 沙羅
立春のチヤイコフスキーの夕べかな 山田みづえ 草譜以後
立春のリビング・ルームに鳥影さす 高澤良一 宿好
立春の一気に上がる昇降機 岩岡中正
立春の一語を以て押し切られ 高澤良一 素抱
立春の上御一人に脱帽す 渡邊水巴 富士
立春の今日あれをしてこれをして 宇多喜代子 象
立春の佛蘭西麺麭の虚かな 小澤實 砧
立春の光をこぼす巫女の剣 加藤耕子
立春の八百万神覚ます風 高澤良一 素抱
立春の半島へ発つ踊子号 高澤良一 随笑
立春の卵に尖る箸ならぶ 百合山羽公 寒雁
立春の卵立ちたる夫婦かな 小宮山政子
立春の園芸店は旗立てて 佐々木平一
立春の夜を馳すバスは光の函 高澤良一 さざなみやっこ
立春の夢に刃物の林立す 柿本多映
立春の大き月あげ田端駅 館岡沙緻
立春の大地をもたげもぐらもち 長谷川素逝 暦日
立春の大手まんぢゆう少し冷たき 内田百間
立春の子を授かりし予感かな 藤原比呂子
立春の屋上に在るにわたずみ 寺井谷子
立春の山羊はこちらを向いて啼く 岸風三楼 往来
立春の庭に捨てられ鬼の面 原コウ子
立春の息添へて呑む葛湯かな 村越化石 山國抄
立春の慈姑の味を称へけり 野村喜舟 小石川
立春の日ざしありつゝうすれつゝ 稲畑汀子
立春の日ざしかげるに鵯のこゑ 石川桂郎 四温
立春の日に当たりたく庭に出づ 高澤良一 宿好
立春の日の輪月の輪雲の中 宋淵
立春の日の雨彩のある如く 千原草之
立春の日を一杯に老かなし 阿部みどり女 『石蕗』
立春の日射しへ雪を抛り上ぐ 大滝時司
立春の日差雪嶺の肌燃やす 岡田日郎
立春の星すみずみに雑木山 藺草慶子
立春の昼月繊き池浚ふ 加倉井秋を 午後の窓
立春の暁の時計鳴りにけり 前田普羅 新訂普羅句集
立春の月の早くもあがりけり 安住 教
立春の月忌の花を椿とし 遠入 たつみ
立春の月放ちたる深さかな 小林康治 『叢林』
立春の朝日にぬれて産屋かな 太田鴻村 穂国
立春の朝霧しづる枯枝かな 臼田亞浪 定本亜浪句集
立春の松風星を呼びゐたり 伊藤京子
立春の枯枝をつゝむ雪となり 林原耒井 蜩
立春の森に三日月ほまち仕事 加倉井秋を 『真名井』
立春の水仏壇にこぼれけり 原田喬
立春の海よりの風海見えず 桂信子 花寂び 以後
立春の海洋視つゝ高炉燃え 萩原麦草 麦嵐
立春の海玲瓏と明けそめし 道川虹洋
立春の現に吾妹観世音 下村槐太 天涯 下村槐太全句集
立春の白身の魚うす塩に 平井照敏 天上大風
立春の破禮句を付けし卵賣 筑紫磐井 婆伽梵
立春の窖出づる窩主買 西島麦南 人音
立春の竹一幹の目覚めかな 野澤節子 『八朶集』
立春の篁の穂の南駒ケ嶽 木村蕪城 寒泉
立春の籠目をぬけて幼な貝 宇佐美魚目 天地存問
立春の米こぼれをり葛西橋 石田波郷(1913-69)
立春の米屋の米の山と川 辻田克巳
立春の翌日の虹君知るや 阿部みどり女
立春の肉屋の前を通りけり 高澤良一 宿好
立春の臍の上向き加減かな 栗原利代子
立春の蛇口全開菜を洗ふ 半田順子
立春の身の内種火点りけり 阿久沢双樹
立春の道日当つて海が見ゆ 茂里正治
立春の遺影しづかに起ちくるか 柿本多映
立春の野を焼かばやと頬かむり 下村梅子
立春の間近き室戸岬かな 龍太
立春の陽の遠くある旅路かな 飯田龍太
立春の隣りも隣り襁褓干す 萩原麦草 麦嵐
立春の雨うちけぶる槻の鵯 西島麦南 人音
立春の雨やむ群ら嶺雲を野に 飯田蛇笏
立春の雨美しき並木かな 薗田 秀子
立春の雪とこそ知れ踏みにけり 林原耒井 蜩
立春の雪の深さよ手鞠唄 石橋秀野
立春の風ひそみけり低叢に 岸田稚魚 筍流し
立春の馬嘶くもよし雨中の陽 飯田蛇笏 山廬集
立春の鯉海峡をゆくごとし 鳥居美智子
立春の鳩群れて羽根飛ばし合ふ 金箱戈止夫
立春の鳶しばしあり殿づくり 青畝
立春の鳶暫しあり殿づくり 阿波野青畝
立春の鴉や曲る羽ひろげ 百合山羽公 寒雁
立春の鶏絵馬堂へ歩み入る 佐野美智
立春も昃れば信濃山ばかり 福田蓼汀 秋風挽歌
立春やあけたてあらき障子うち 石橋秀野
立春やこの日生れて春郎とは 水原 春郎
立春やひざのほこりを持ち歩く 細見綾子
立春やむつきの籠も影据ゑて 百合山羽公 故園
立春やペガサスはわが額星 鷹羽狩行
立春や一抹の雪能登にあり 前田普羅 能登蒼し
立春や人太陽系に住めり 斎藤空華 空華句集
立春や傀儡人形愁嘆場 辻桃子
立春や厚朴にそゝぎて大雨やむ 飯田蛇笏
立春や又一人来て橋に佇つ 阿部みどり女
立春や娘の膝まろき夜の畳 畠山譲二
立春や寝ね覆はるる酒の酔 三橋敏雄 畳の上
立春や川ちいさきに星あそび 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
立春や己励ます声掛けて 冨田みのる
立春や戦捷の書肆人あふれ 渡邊水巴 富士
立春や日表を踏む古き縁 小澤碧童 碧童句集
立春や昨日のままの薄氷 殿村菟絲子 『菟絲』
立春や月の兎は耳立てゝ 星野椿
立春や木の幹に聞く地の響き 大櫛静波
立春や朴にそゝぎて大雨やむ 飯田蛇笏 霊芝
立春や梵鐘へ貼る札の数 飯田蛇笏 山廬集
立春や流されてくる島の声 清水径子
立春や焼印確と工具箱 小野田明子
立春や百姓詣る三輪の神 五十嵐播水 播水句集
立春や目の前に階段のあり 佐藤和枝
立春や縦横に散る雀どち 小池文子 巴里蕭条
立春や耕人になく廬の犢 飯田蛇笏 山廬集
立春や苔のにほひの鯉出でぬ 鳥居おさむ
立春や野に立つ棒を水つたひ 苑子
立春や雪に届きし遺稿集 阿部みどり女 月下美人
立春や雪踏み通ふ月明り 金尾梅の門 古志の歌
立春や香煙とゞく絵天井 野村喜舟 小石川
立春や黄身の崩れし目玉焼 穂坂日出子
立春をきのふに鴨の青夜空 佐野まもる 海郷
立春を五分遅らす長電話 有馬英子
立春大吉と書きし太筆太しと見るも老いらく 荻原井泉水
立春大吉と貼られ御手洗溢れをり 館岡沙緻
立春大吉初句集てふもの重き 水原 春郎
立春大吉朝刊にわが名あり 山田弘子
立春大吉朱ヶの大木魚 河野静雲 閻魔
立春大吉舟屋の前に赤き泛子 池上樵人
立春大吉護符あたらしく金魚小屋 原 好郎
立春大吉遠浪のちらちらす 臼田亜浪 旅人
立春大吉野良はきのふと変りなし 百合山羽公 寒雁
立春大吉鵯が右顧し左顧し過ぐ 原コウ子
立春満喫茶一服や樓眺 松根東洋城
糸尻を切つて即ち春立てり 伊藤敬子
結ひ上げし髪にさす陽も春立ちぬ 大谷句佛 我は我
縁談の成る出はいりや春立ちて 及川貞 榧の實
美しく晴れにけり春立ちにけり 星野立子
羽根布団とは軽きもの春立ちぬ 岸田稚魚
翔る鵜に立春の海とどろけり 長谷川史郊
翼なきものには櫂を春立てり 原和子
舞ひ落ちる羽毛に庭の春立ちぬ 原コウ子
若者の日照雨に濡るゝ春来たり 石橋辰之助 山暦
茶箪笥へ射す日が折れて春立ちぬ 菖蒲あや あ や
草稿に朱筆一点春立てり 加藤耕子
萩筆の軽妙ことに春立つ日 古賀まり子 緑の野
落人村春来て電柱一本増ゆ 加倉井秋を 『隠愛』
落葉焚いて春立つ庭や知恩院 虚子
蓑虫のうごかぬままに春立ちし 宇佐美魚目 天地存問
蓬萌ゆ春来われにも女の子ある 森川暁水
薄雲の山越しに澄み春立てり 内田百間
藍を生み立春の雨夜をあがる 上村占魚 『天上の宴』
許されぬ外が恋しく明日立春 阿部みどり女
貌見ゆるまで鳶近く春来る田 西村公鳳
蹌踉と遷子亡き春立つらしも 和田 祥子
近火消えたる宵闇に春立つらし 内田百間
遊ぶ如ざぼん机上に春立てり 殿村菟絲子 『樹下』
遊具みなペンキ塗りたて春立ちぬ 高久フミ
遠野物語より春立ちにけり 山田弘子
部屋に吊した襁褓に灯つき今日立春 飴山 實
金泥の無地の衝立春寒し 松藤夏山 夏山句集
門々の下駄の泥より春立ぬ 一茶 ■文化七年庚午(四十八歳)
雛飾ることの喜びに春来たり 青峰集 島田青峰
雨の中に立春大吉の光りあり 高浜虚子
雨音も身近なものに春立つ日 福井圭児
雪ながら春来と椎の幹濡れぬ 篠田悌二郎
雪に病む妻へ春立つ粟おこし 飴山實 『おりいぶ』
雪五度立春大吉の家にあり 前田普羅 新訂普羅句集
雪原の中に春立つ産屋はも 依田明倫
雪国の春来て乾く桑の土 松村蒼石 雪
雪嶺とわれ立春の日を頒つ 相馬遷子 雪嶺
雪新たそれに春立つ日射しけり 林原耒井 蜩
雲に目をやりて立春大吉なり 石嶌岳
雲の散歩わたしの散歩春立ちぬ 石井百合
霜除の*ほう鬆(ほうしょう)と春立ちにけり 茅舎
音でよみ訓でよむ春立ちにけり 筑紫磐井 花鳥諷詠
頼らるる子の瞳八十春立てり つじ加代子
首にある言葉を空へ春立つ日 二村典子
魚Bの1/2を買う立春 坪内稔典
鳥海山春立つ天の明けそめし 沼澤 石次
鳥飛んで鳥の如くに春立つ日 今井竜蝦
鳩の眼のくりくりけふは春立つ日 高澤良一 宿好
鳩笛や駄菓子屋にも春来てゐたり 坂本米子
鳳凰も羽ばたけば春立ちにけり 阿波野青畝
鶏の面かむる老人春立てり 平井照敏 天上大風
また春が来たことは来た鰐の顎 池田澄子
また春が来て胸襟を風が吹く 宇多喜代子
もうそろそろ春が来るかと遠めがね 高澤良一 素抱
一椀の珈琲のぬくみ春くるゝ 『定本石橋秀野句文集』
冬よりも小さき春の来るらし 相生垣瓜人 微茫集
坐りゐるみんなに春の来りけり 大木あまり 火球
塩辛にひしほに春の来にし夜ぞ 臼田亞浪 定本亜浪句集
大地冷ゆ星には春が来てをりぬ 高木晴子 花 季
孤高なる岳は空より春が来る 小島左京
宿題の次にひたひた春が来る 櫂未知子 貴族
掌の上(へ)に反るセロファンの魚春が来た 川口重美
春が来てゐる一本のいつもの木 高橋謙次郎
春が来て電柱の体鳴りこもる 三鬼
春が来て黄の番号を丸太に描く 大屋達治 繍鸞
春が来るちひろの絵本開くやうに 福本五都美
春が来る水は跳ね跳ねつるべ井戸 中山純子 茜
春が来る野や夕刊を配り余し 平畑静塔
春の夜や瓢なでても人の来る 一茶
杉山の周りにばかり春が来ぬ 蓬田紀枝子
碧眼に菩薩の春の来りけり 堀口星眠 営巣期
竜の髭噛む猫春の来るを知る 長谷川かな女 花 季
老人に混じりてうたふ春が来た 北村保
蒲団から頭を出せば春が来た 佐藤紅緑(1874-1949)
蜜蜂の函や小家の春くるゝ 妻木 松瀬青々
雪山に春が来てをり美しや 高木晴子 晴居
鱈の海濁るは春の来つつあり 福永耕二
半島の山に春来とやって来ぬ 高澤良一 素抱
安房へ船立春を経て海大人し 高澤良一 石鏡
立春の洋上に我解き放つ 高澤良一 石鏡
立春を相変はらずの坊主山 高澤良一 石鏡
春が来る港鴎のモニュメント 高澤良一 石鏡
以上
例句を挙げる。
*ほうぼうを提げ立春の畦通る 中拓夫
あはれげもいとど春立つ朝千鳥 上島鬼貫
いつの傷手の甲にあり春立てり 阿部みどり女
お水送りすぎて若狭に春来る 笠井フキ子
かかる夜の雨に春立つ谷明り 石鼎
かもめ舞う立春の空耀えり 青木規子
かゝる夜の雨に春立つ谷明り 原石鼎
こころの眼すこし見開き春立つ日 木村 風師
さゞ波は立春の譜をひろげたり 渡邊水巴
すきとほる赤立春の沼落暉 石井とし夫
ところ雪もたらして春立ちにけり 鈴木しげを
はきはきと物言ふ子供春立ちぬ 山田みづえ 草譜以後
ほとほとと春来る鬼か風音か 山田みづえ 木語
まづ生きるは息をすること春立ちぬ 岸田稚魚 『紅葉山』
むらぎもの心に遠く春立ちぬ 林火
やすり目や鞘に苔むすははぎの春 立允 選集「板東太郎」
よきことの待ちゐる思ひ春立ちぬ 桑田詠子
をみならに春立ち急ぐ飾窓 林原耒井 蜩
エルサレム巡礼満ちて春来る 神戸賀壽朗
オリオンの真下春立つ雪の宿 前田普羅 新訂普羅句集
カレンダーの巻ぐせ未だ春立てり 嶋田麻紀
カレンダーの赤き小文字立春と 成瀬正とし 星月夜
スキツプのおさげが揺れて春立てり 永峰久比古
ペンギンの手はつなぎたし春来たる 丸山 工
ポリバケツに入れ立春の卵購ふ 柳瀬茂樹
ヴィオロンの音色連れ去り春立ちぬ 稲畑廣太郎
一つ得て更に期すもの春立てり 毛塚静枝
一女わが娘と生れぬ春立つ日 石塚友二 光塵
一息に春来ぬまはりくどさかな 高澤良一 素抱
一鍬に泥鰌光れり春立つ日 野中ちよこ
七輪の口が真赤に春来る 河野静雲 閻魔
万燈のまたゝき合ひて春立てり 沢木欣一
丹頂の気高く舞ひて春立てり 墓田いさを
九十九の祖母と語るや春立つ夜 河野静雲
五器の香や春立つけふの餅機嫌 上島鬼貫
人中に春立つ金髪乙女ゆき 野沢節子
休耕田春来る水の音ひびく 町田敏子
何事もなくて春立つあしたかな 士朗
凧の絵も何かあはれや春立てる 百合山羽公 故園
勾玉のはだらの青に春立ちぬ 龍男
包丁のリズム整ひ春立ちぬ 東浦佳子
卵一つ立春の藪動乱す 原田喬
吃立の槇真顔なる立春以後 河野多希女 こころの鷹
名ばかりの春立つ風に頬裂かる 近藤紅泉
名を知りて後星の春立ちにけり 山口誓子
君が代や野中であたま民の春 立花北枝
和歌山県天から海から春来るよ 右城暮石 上下
喘息のポンプの音も春来る 河野静雲 閻魔
囀の木曾山深く春来たり 癖三酔句集 岡本癖三酔
回生の肺の画伯や春立つ日 河野静雲
土橋一つ渡る春来てゐたりしよ 村越化石
壺据ゑて窓に立春の竹のいろ 秋櫻子
大内山立春の雨御空より 渡邊水巴
大和路や春立つ山の雲かすみ 飯田蛇笏 霊芝
大法鼓鼕々立春大吉と 真下喜太郎
大雪を朗報のごと春立てる 百合山羽公 寒雁
天地広し立春なにに礙べき 井原西鶴
天深く春立つものの芽を見たり 加藤楸邨
嫁ぐ子と花種選りぬ春立つ日 伊藤京子
子供らに雪ふれ妻に春来たれ 京極杞陽 くくたち下巻
宵風雷の如し屋根の春立ち 内田百間
家畜等の膚色しかと春来たり 石橋辰之助 山暦
小江戸に春来て鹿皮白鞣し 加倉井秋を
小祠の切子硝子や春立てる 辻桃子
屋上に満たして春来る伊予言葉 加倉井秋を 『真名井』
山鴉春立つ空に乱れけり 百間
峰二つ塔ふたつ春立ちにけり 服部鹿頭矢
川下へ光る川面や春立ちぬ 高浜年尾
川口の洲に乗る潮に春立てり 内田百間
帯きものきもの黄八丈春立ちて 及川貞 夕焼
年寄れど娘は娘父の春 立子
年金の本読みゐたり春立つ日 高澤良一 宿好
幾度も春立つ暦見上げたる 阿部みどり女 『陽炎』
庭に来て春立つ雀やや細る 小松崎爽青
忘るなき春立つ峡の瀬音かな 飯田蛇笏 山廬集
戞然と春立つ鼓打たれけり 渡部抱朴子
手拭を首にひつかけ春来る 河野静雲 閻魔
揚幕の朱色結紐春立ちぬ 都筑智子
撫ればこそ猟虎(らっこ)の皮も和国の春 立詠 選集「板東太郎」
敷網の海坂まろし春立つ日 古田種子
斉唱の息のゆたかに春立てり 丹羽 啓子
新生児室白妙に春立つ日 町田しげき
日まみれの梢立春過ぎてゐし 高澤良一 ぱらりとせ
明日よりは春立つと云ふ静かな夜 高木晴子 晴居
春来しを知れり来ぬともつぶやかず 林原耒井 蜩
春来つつあり喫泉の噴き強し 館岡沙緻
春来つゝ大き金星胸の前 岸風三樓
春来とも友達言葉の友失ふ 及川貞
春来と言ふ背にある壁にもたれたり 細見綾子 花 季
春来ぬと風憂かりけりヒヤシンス 水原秋櫻子
春来り虚空に向ふ合掌は 阿部みどり女
春来るか孤児ら踊りの足つきなど 古沢太穂 古沢太穂句集
春来るとことぶれ神も藁の色 能村登四郎
春来ると湖畔に馬を曳き出だす 岸 風三楼
春来ると鈴懸しろき雲を乗す 岸風三樓
春来ると間ごとの灯ともしたり 上村占魚 『玄妙』
春来る童子の群れて来る如く 相生垣瓜人(1898-1985)
春来れば路傍の石も光あり 高浜虚子
春来川染めて温泉宿の初竈 宮武寒々 朱卓
春立ちし国々の上の浅間山 前田普羅 春寒浅間山
春立ちし大時計鳴りつづきをり 上野泰 春潮
春立ちし宵のみづぐみ鴎鳴く 金尾梅の門 古志の歌
春立ちし明るさの声発すべし 細見綾子(1907-97)
春立ちし畷凍えて暮れゆけり 百合山羽公 故園
春立ちてまだ九日の野山哉 松尾芭蕉
春立ちて三日嵐に鉄を鋳る 草田男
春立ちぬ日向放髪の乙女らに 加倉井秋を
春立ちぬ柩となりし木の株も 河原枇杷男 定本烏宙論
春立ち旗雲光ると雖神経霧ひ黄昏るる 日夏耿之介 婆羅門俳諧
春立つてゐる山の木の懸巣かな 岡井省二
春立つて十日の酒をこぼし合ふ 石田波郷
春立つとまづは水にも思ふべし 細見綾子 花寂び
春立つとわらはも知るや飾り縄 芭蕉
春立つとカトレヤ丸が銅鑼鳴らす 原田青児
春立つと剥製屋より太い煙 田川飛旅子 『植樹祭』
春立つと古き言葉の韻よし 後藤夜半 底紅
春立つと庭が掃かるる日かげかな 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
春立つと影が勝手に動き出す 萩山栄一
春立つと拭ふ地球儀みづいろに 青邨
春立つと色紙を買へり決戦下 渡邊水巴 富士
春立つは衣の棚の霞かな 貞徳
春立つやあかつき闇のほぐれつゝ 久保田万太郎 流寓抄以後
春立つやおしめかけほす垣の上 小澤碧童 碧童句集
春立つやそゞろ心の火桶抱く 高濱年尾 年尾句集
春立つやちゝはゝに送る物すこし 相馬遷子 山国
春立つやとりあげ婆として逝きぬ 谷口智行
春立つやにほんめでたき門の松 徳元
春立つや一便殖えし島渡舟 徳永玄子
春立つや一匙で足る末期の水 高橋悦男
春立つや一生涯の女運 加藤郁乎(1929-)
春立つや五日に足らぬ米来る 千代田葛彦 旅人木
春立つや六枚屏風六歌仙 高浜虚子
春立つや刻めば溢るる掌の豆腐 池田順子
春立つや合掌の指ひた反らす 井上雪
春立つや四十三年人の飯 小林一茶 (1763-1827)
春立つや坂下見ゆる垣のひま 室生犀星
春立つや大野雨ふる朝ぼらけ 月舟俳句集 原月舟
春立つや子規より手紙漱石へ 榎本好宏
春立つや家鷲づかみクレーンの手 川元安子
春立つや山びこなごむ峡つゞき 飯田蛇笏 霊芝
春立つや川幅太るひとところ 館岡沙緻
春立つや愚の上に又愚にかへる 一茶
春立つや新年ふるき米五升 芭蕉
春立つや日月二池を小さく掘り 山崎斌 竹青柿紅
春立つや暦に赤き日曜日 吉屋信子
春立つや月眉形と見たるより 綾子
春立つや枝の先まで水明り 加藤岳雄
春立つや歯朶にとゞまる神矢の根 許六
春立つや水のくらさが我がくらさ 永島靖子
春立つや水響きゐる甲斐の国 石嶌岳
春立つや沼にほひくる夜の門 金尾梅の門 古志の歌
春立つや濁りさしたる藺田の水 有働木母寺
春立つや無表情にゆく車椅子 高橋達子
春立つや犀の鼻角根太りて 内田百間
春立つや糸巻残すカタン糸 永井龍男
春立つや草山ながら烽火台 柑子句集 籾山柑子
春立つや誰も人よりさきへ起き 鬼貫
春立つや醪に櫂の夢うつつ 宮坂静生
春立つや障子へだてしうけこたへ 久保田万太郎 流寓抄以後
春立つや雀の足もあたゝまり 椎本才麿
春立つや雪ふる夜の隅田川 角川春樹
春立つや雪嶺はまだ夢の白 大串章
春立つや飢ゑ生きいきと曉けに覚め 冨田みのる
春立つや鳥の羽かかる古葎 山口草堂
春立つ夜腰より睡さ襲ひくる 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
春立つ日人参を煮て芋を煮て 毛塚静枝
春立つ日寄進の幕の染り来し 比叡 野村泊月
春立つ風鳩がくはへしモールにも 阿部みどり女
春立てりまづ髭剃らむ然る後 石塚友二
春立てり三人の子のじゃんけんぽん 木附沢麦青
春立てり野の白壁の暗き方 千代田葛彦 旅人木
春立てる空に閾のあるごとし 高澤良一 随笑
春立といふより見ゆる壁の穴 一茶
春立やうめの根本にむめを種うる 日夏耿之介 婆羅門俳諧
春立や二軒つなぎの片住居 一茶 ■文政三年庚辰(五十八歳)
春立や四十三年人の飯 一茶 ■文化元年甲子(四十二歳)
春立や坂下見ゆる垣のひま 室生犀星 犀星發句集
春立や弥太良改一茶坊 一茶 ■文政元年戊寅(五十六歳)
春立や愚の上に又愚にかへる 一茶 ■文政六年癸未(六十一歳)
春立や新年ふるき米五升 芭蕉
春立や星の中から松の色 上島鬼貫
春立や菰もかぶらず五十年 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
春立や蒲團清らに雨を聴く 石井露月
春立や蜂のはひゐる土の割れ 室生犀星 犀星発句集
春立や見古したれど筑波山 一茶 ■文化元年甲子(四十二歳)
春立や誰も人よりさきへ起き 上島鬼貫
曲折を経つつあるなり春来ると 相生垣瓜人 微茫集
書を校す朱筆春立つ思あり 柴田宵曲
服地裁つ妻に夢あり春来つつ 伊東宏晃
朝の茶のかんばしく春立ちにけり 日野草城
未明音かなでてゆまり春立ちぬ 赤松[ケイ]子
本郷に波郷の月や春立ちぬ 塚越秋琴
林*けいに春立つ雲のしろみけり 飯田蛇笏 霊芝
枯枝にかこまれて春立ちにけり 石川桂郎 四温
枯枝や血走りて春来りけり 石塚友二 光塵
楢山の風紅いろに春立ちぬ 岸田稚魚 筍流し
標には「浪漫街道」春立てり 渡辺真映
横ざまに薙ぎて春立つ霜柱 井沢正江 火襷
横須賀の山に春来とやって来ぬ 高澤良一 素抱
機糸の色の束より春立てり 清水節子
母の杖母の草履に春来れど 阿部みどり女
水甕の氷まんまる春立てり 伊藤 ふみ
汚れなき立春までの掛暦 手塚美佐 昔の香
汝が指の繃帯に春立ちにけり 辻桃子
洗ひては汚しては春来つつあり 清水径子
浅間嶺は紫磨黄金に春立ちぬ 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
淋しさの似合はぬ人に春立ちぬ 河野扶美
淡々と立春の姪来りけり 八木林之介 青霞集
湯帰りの立春の日を浴びにけり 温亭句集 篠原温亭
湾立春勇躍緒につく糞尿船 磯貝碧蹄館 握手
潮境くっきりと春立ちにけり 木内怜子
点るごと立春の豆石の上 原裕 出雲
焼寺も春来て萩のわか葉哉 高井几董
煤たれて春立つ窓に幾吹雪 前田普羅 新訂普羅句集
犬みごもりわれ病めば春立つらむか 及川貞 榧の實
狐貌して来し立春の青菜売 長谷川かな女 花寂び
畳目の大きく見えて春立つ日 八田和子
瘤多き木に立春の日影さす 百合山羽公 故園
白銀の世界留めて春立ちぬ 稲畑廣太郎
目刺の背青し立春という一語 雅人
眼帯の内側にいて春立ちぬ 森田智子
矮鶏が鳴く春立つ山を前にして 阿部みどり女 『陽炎』
石楠花や貴船の神に春来り 尾崎迷堂 孤輪
砂浴びの鶏の身震ひ春立てり 田中俊尾
礁に焚く芥の炎春立つ夕 松村蒼石 雪
空に春立つ色見ゆる仰ぎけり 高木晴子 花 季
立ちて又燻り続けむ春立ちぬ 相生垣瓜人 明治草抄
立春といふに雪降り孫生る 皆川白陀
立春にはげまされたる心かな 国弘賢治
立春のいつか過ぎをる机かな 高澤良一 ぱらりとせ
立春のおもひこつんと貝にゆく 宇佐美魚目 天地存問
立春のかゞやき丘にあまねかり 高浜年尾
立春のこだま隧道抜けてくる 田山諷子
立春のその後の寒さ言ひ合へる 石塚友二
立春のどこも動かず仔鹿立つ 秋元不死男
立春のはたのひろものさものかな 間石
立春のはら~雨に妻外出 高田風人子
立春のぶつかり合ひて水急ぐ 会田保
立春のまだ垂れつけぬ白だんご 中山純子 沙羅
立春のチヤイコフスキーの夕べかな 山田みづえ 草譜以後
立春のリビング・ルームに鳥影さす 高澤良一 宿好
立春の一気に上がる昇降機 岩岡中正
立春の一語を以て押し切られ 高澤良一 素抱
立春の上御一人に脱帽す 渡邊水巴 富士
立春の今日あれをしてこれをして 宇多喜代子 象
立春の佛蘭西麺麭の虚かな 小澤實 砧
立春の光をこぼす巫女の剣 加藤耕子
立春の八百万神覚ます風 高澤良一 素抱
立春の半島へ発つ踊子号 高澤良一 随笑
立春の卵に尖る箸ならぶ 百合山羽公 寒雁
立春の卵立ちたる夫婦かな 小宮山政子
立春の園芸店は旗立てて 佐々木平一
立春の夜を馳すバスは光の函 高澤良一 さざなみやっこ
立春の夢に刃物の林立す 柿本多映
立春の大き月あげ田端駅 館岡沙緻
立春の大地をもたげもぐらもち 長谷川素逝 暦日
立春の大手まんぢゆう少し冷たき 内田百間
立春の子を授かりし予感かな 藤原比呂子
立春の屋上に在るにわたずみ 寺井谷子
立春の山羊はこちらを向いて啼く 岸風三楼 往来
立春の庭に捨てられ鬼の面 原コウ子
立春の息添へて呑む葛湯かな 村越化石 山國抄
立春の慈姑の味を称へけり 野村喜舟 小石川
立春の日ざしありつゝうすれつゝ 稲畑汀子
立春の日ざしかげるに鵯のこゑ 石川桂郎 四温
立春の日に当たりたく庭に出づ 高澤良一 宿好
立春の日の輪月の輪雲の中 宋淵
立春の日の雨彩のある如く 千原草之
立春の日を一杯に老かなし 阿部みどり女 『石蕗』
立春の日射しへ雪を抛り上ぐ 大滝時司
立春の日差雪嶺の肌燃やす 岡田日郎
立春の星すみずみに雑木山 藺草慶子
立春の昼月繊き池浚ふ 加倉井秋を 午後の窓
立春の暁の時計鳴りにけり 前田普羅 新訂普羅句集
立春の月の早くもあがりけり 安住 教
立春の月忌の花を椿とし 遠入 たつみ
立春の月放ちたる深さかな 小林康治 『叢林』
立春の朝日にぬれて産屋かな 太田鴻村 穂国
立春の朝霧しづる枯枝かな 臼田亞浪 定本亜浪句集
立春の松風星を呼びゐたり 伊藤京子
立春の枯枝をつゝむ雪となり 林原耒井 蜩
立春の森に三日月ほまち仕事 加倉井秋を 『真名井』
立春の水仏壇にこぼれけり 原田喬
立春の海よりの風海見えず 桂信子 花寂び 以後
立春の海洋視つゝ高炉燃え 萩原麦草 麦嵐
立春の海玲瓏と明けそめし 道川虹洋
立春の現に吾妹観世音 下村槐太 天涯 下村槐太全句集
立春の白身の魚うす塩に 平井照敏 天上大風
立春の破禮句を付けし卵賣 筑紫磐井 婆伽梵
立春の窖出づる窩主買 西島麦南 人音
立春の竹一幹の目覚めかな 野澤節子 『八朶集』
立春の篁の穂の南駒ケ嶽 木村蕪城 寒泉
立春の籠目をぬけて幼な貝 宇佐美魚目 天地存問
立春の米こぼれをり葛西橋 石田波郷(1913-69)
立春の米屋の米の山と川 辻田克巳
立春の翌日の虹君知るや 阿部みどり女
立春の肉屋の前を通りけり 高澤良一 宿好
立春の臍の上向き加減かな 栗原利代子
立春の蛇口全開菜を洗ふ 半田順子
立春の身の内種火点りけり 阿久沢双樹
立春の道日当つて海が見ゆ 茂里正治
立春の遺影しづかに起ちくるか 柿本多映
立春の野を焼かばやと頬かむり 下村梅子
立春の間近き室戸岬かな 龍太
立春の陽の遠くある旅路かな 飯田龍太
立春の隣りも隣り襁褓干す 萩原麦草 麦嵐
立春の雨うちけぶる槻の鵯 西島麦南 人音
立春の雨やむ群ら嶺雲を野に 飯田蛇笏
立春の雨美しき並木かな 薗田 秀子
立春の雪とこそ知れ踏みにけり 林原耒井 蜩
立春の雪の深さよ手鞠唄 石橋秀野
立春の風ひそみけり低叢に 岸田稚魚 筍流し
立春の馬嘶くもよし雨中の陽 飯田蛇笏 山廬集
立春の鯉海峡をゆくごとし 鳥居美智子
立春の鳩群れて羽根飛ばし合ふ 金箱戈止夫
立春の鳶しばしあり殿づくり 青畝
立春の鳶暫しあり殿づくり 阿波野青畝
立春の鴉や曲る羽ひろげ 百合山羽公 寒雁
立春の鶏絵馬堂へ歩み入る 佐野美智
立春も昃れば信濃山ばかり 福田蓼汀 秋風挽歌
立春やあけたてあらき障子うち 石橋秀野
立春やこの日生れて春郎とは 水原 春郎
立春やひざのほこりを持ち歩く 細見綾子
立春やむつきの籠も影据ゑて 百合山羽公 故園
立春やペガサスはわが額星 鷹羽狩行
立春や一抹の雪能登にあり 前田普羅 能登蒼し
立春や人太陽系に住めり 斎藤空華 空華句集
立春や傀儡人形愁嘆場 辻桃子
立春や厚朴にそゝぎて大雨やむ 飯田蛇笏
立春や又一人来て橋に佇つ 阿部みどり女
立春や娘の膝まろき夜の畳 畠山譲二
立春や寝ね覆はるる酒の酔 三橋敏雄 畳の上
立春や川ちいさきに星あそび 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
立春や己励ます声掛けて 冨田みのる
立春や戦捷の書肆人あふれ 渡邊水巴 富士
立春や日表を踏む古き縁 小澤碧童 碧童句集
立春や昨日のままの薄氷 殿村菟絲子 『菟絲』
立春や月の兎は耳立てゝ 星野椿
立春や木の幹に聞く地の響き 大櫛静波
立春や朴にそゝぎて大雨やむ 飯田蛇笏 霊芝
立春や梵鐘へ貼る札の数 飯田蛇笏 山廬集
立春や流されてくる島の声 清水径子
立春や焼印確と工具箱 小野田明子
立春や百姓詣る三輪の神 五十嵐播水 播水句集
立春や目の前に階段のあり 佐藤和枝
立春や縦横に散る雀どち 小池文子 巴里蕭条
立春や耕人になく廬の犢 飯田蛇笏 山廬集
立春や苔のにほひの鯉出でぬ 鳥居おさむ
立春や野に立つ棒を水つたひ 苑子
立春や雪に届きし遺稿集 阿部みどり女 月下美人
立春や雪踏み通ふ月明り 金尾梅の門 古志の歌
立春や香煙とゞく絵天井 野村喜舟 小石川
立春や黄身の崩れし目玉焼 穂坂日出子
立春をきのふに鴨の青夜空 佐野まもる 海郷
立春を五分遅らす長電話 有馬英子
立春大吉と書きし太筆太しと見るも老いらく 荻原井泉水
立春大吉と貼られ御手洗溢れをり 館岡沙緻
立春大吉初句集てふもの重き 水原 春郎
立春大吉朝刊にわが名あり 山田弘子
立春大吉朱ヶの大木魚 河野静雲 閻魔
立春大吉舟屋の前に赤き泛子 池上樵人
立春大吉護符あたらしく金魚小屋 原 好郎
立春大吉遠浪のちらちらす 臼田亜浪 旅人
立春大吉野良はきのふと変りなし 百合山羽公 寒雁
立春大吉鵯が右顧し左顧し過ぐ 原コウ子
立春満喫茶一服や樓眺 松根東洋城
糸尻を切つて即ち春立てり 伊藤敬子
結ひ上げし髪にさす陽も春立ちぬ 大谷句佛 我は我
縁談の成る出はいりや春立ちて 及川貞 榧の實
美しく晴れにけり春立ちにけり 星野立子
羽根布団とは軽きもの春立ちぬ 岸田稚魚
翔る鵜に立春の海とどろけり 長谷川史郊
翼なきものには櫂を春立てり 原和子
舞ひ落ちる羽毛に庭の春立ちぬ 原コウ子
若者の日照雨に濡るゝ春来たり 石橋辰之助 山暦
茶箪笥へ射す日が折れて春立ちぬ 菖蒲あや あ や
草稿に朱筆一点春立てり 加藤耕子
萩筆の軽妙ことに春立つ日 古賀まり子 緑の野
落人村春来て電柱一本増ゆ 加倉井秋を 『隠愛』
落葉焚いて春立つ庭や知恩院 虚子
蓑虫のうごかぬままに春立ちし 宇佐美魚目 天地存問
蓬萌ゆ春来われにも女の子ある 森川暁水
薄雲の山越しに澄み春立てり 内田百間
藍を生み立春の雨夜をあがる 上村占魚 『天上の宴』
許されぬ外が恋しく明日立春 阿部みどり女
貌見ゆるまで鳶近く春来る田 西村公鳳
蹌踉と遷子亡き春立つらしも 和田 祥子
近火消えたる宵闇に春立つらし 内田百間
遊ぶ如ざぼん机上に春立てり 殿村菟絲子 『樹下』
遊具みなペンキ塗りたて春立ちぬ 高久フミ
遠野物語より春立ちにけり 山田弘子
部屋に吊した襁褓に灯つき今日立春 飴山 實
金泥の無地の衝立春寒し 松藤夏山 夏山句集
門々の下駄の泥より春立ぬ 一茶 ■文化七年庚午(四十八歳)
雛飾ることの喜びに春来たり 青峰集 島田青峰
雨の中に立春大吉の光りあり 高浜虚子
雨音も身近なものに春立つ日 福井圭児
雪ながら春来と椎の幹濡れぬ 篠田悌二郎
雪に病む妻へ春立つ粟おこし 飴山實 『おりいぶ』
雪五度立春大吉の家にあり 前田普羅 新訂普羅句集
雪原の中に春立つ産屋はも 依田明倫
雪国の春来て乾く桑の土 松村蒼石 雪
雪嶺とわれ立春の日を頒つ 相馬遷子 雪嶺
雪新たそれに春立つ日射しけり 林原耒井 蜩
雲に目をやりて立春大吉なり 石嶌岳
雲の散歩わたしの散歩春立ちぬ 石井百合
霜除の*ほう鬆(ほうしょう)と春立ちにけり 茅舎
音でよみ訓でよむ春立ちにけり 筑紫磐井 花鳥諷詠
頼らるる子の瞳八十春立てり つじ加代子
首にある言葉を空へ春立つ日 二村典子
魚Bの1/2を買う立春 坪内稔典
鳥海山春立つ天の明けそめし 沼澤 石次
鳥飛んで鳥の如くに春立つ日 今井竜蝦
鳩の眼のくりくりけふは春立つ日 高澤良一 宿好
鳩笛や駄菓子屋にも春来てゐたり 坂本米子
鳳凰も羽ばたけば春立ちにけり 阿波野青畝
鶏の面かむる老人春立てり 平井照敏 天上大風
また春が来たことは来た鰐の顎 池田澄子
また春が来て胸襟を風が吹く 宇多喜代子
もうそろそろ春が来るかと遠めがね 高澤良一 素抱
一椀の珈琲のぬくみ春くるゝ 『定本石橋秀野句文集』
冬よりも小さき春の来るらし 相生垣瓜人 微茫集
坐りゐるみんなに春の来りけり 大木あまり 火球
塩辛にひしほに春の来にし夜ぞ 臼田亞浪 定本亜浪句集
大地冷ゆ星には春が来てをりぬ 高木晴子 花 季
孤高なる岳は空より春が来る 小島左京
宿題の次にひたひた春が来る 櫂未知子 貴族
掌の上(へ)に反るセロファンの魚春が来た 川口重美
春が来てゐる一本のいつもの木 高橋謙次郎
春が来て電柱の体鳴りこもる 三鬼
春が来て黄の番号を丸太に描く 大屋達治 繍鸞
春が来るちひろの絵本開くやうに 福本五都美
春が来る水は跳ね跳ねつるべ井戸 中山純子 茜
春が来る野や夕刊を配り余し 平畑静塔
春の夜や瓢なでても人の来る 一茶
杉山の周りにばかり春が来ぬ 蓬田紀枝子
碧眼に菩薩の春の来りけり 堀口星眠 営巣期
竜の髭噛む猫春の来るを知る 長谷川かな女 花 季
老人に混じりてうたふ春が来た 北村保
蒲団から頭を出せば春が来た 佐藤紅緑(1874-1949)
蜜蜂の函や小家の春くるゝ 妻木 松瀬青々
雪山に春が来てをり美しや 高木晴子 晴居
鱈の海濁るは春の来つつあり 福永耕二
半島の山に春来とやって来ぬ 高澤良一 素抱
安房へ船立春を経て海大人し 高澤良一 石鏡
立春の洋上に我解き放つ 高澤良一 石鏡
立春を相変はらずの坊主山 高澤良一 石鏡
春が来る港鴎のモニュメント 高澤良一 石鏡
以上
by 575fudemakase
| 2015-02-04 00:54
| 春の季語
俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase
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ふらんす堂編集日記 By...魚屋三代目日記
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▽ある季語の例句を調べる▽
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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