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涅槃会

涅槃会

例句を挙げる。

あちこちに涅槃間近かの蕗の薹 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
あふのけになりて獅子泣く涅槃かな 野村喜舟
あゆみきし涅槃の雪のくらさかな 田中裕明 花間一壺
いかに嘆く涅槃に貝の来てをれば 茨木和生 往馬
いつ死ぬもよしなどさぶし涅槃寺 中山純子 沙 羅以後
いろいろの藻が流れつき涅槃像 岸本尚毅 舜
えいえいと担ぎ出したる涅槃絵図 伊藤伊那男
おん母の一日過ごす涅槃寺 細川加賀 生身魂
お涅槃に女童の白指ふれたりし 飯田蛇笏
お涅槃に近づいてゆく廊下かな 岸本尚毅 舜
お涅槃のかたきまぶたや雪明り 前田普羅
お涅槃のただ大皿を飾るのみ 岸本尚毅 舜
お涅槃のなほ薄目してゐたまへり 東條素香
お涅槃の山道ながくながくあり 岸本尚毅 舜
お涅槃の日の青空を鳶ながす 高澤良一 随笑
お涅槃の満月寒きお山かな 吉武月二郎句集
お涅槃の甕を覗けば青みどろ 岸本尚毅
お涅槃の長き廊下を走り拭き 百瀬ひろし
お涅槃やぼろぼろの茎ちらばりて 宮坂静生 樹下
お涅槃や大風鳴りつ素湯の味 渡邊水巴
お涅槃や山笹深く日の移り 中島月笠 月笠句集
お涅槃や椿は赤き血を貰ひ 櫛原希伊子
お涅槃や讃むる言葉の悲しくて 尾崎迷堂 孤輪
お障子の人見硝子や涅槃寺 河野静雲 閻魔
お風入れ涅槃図ごわと畳まるる 高澤良一 さざなみやっこ
かけ通す涅槃図のあり冬の寺 阿部みどり女 笹鳴
かなしめば見ゆるかなしみ涅槃像 金田志津枝
かの雛僧成人しをり涅槃像 河野静雲 閻魔
かへりみて涅槃図の月あをかりし 行方克巳
くちびるに雨粒ひとつ花涅槃 白澤良子
こども等に涅槃の絵解きはじまりぬ 島田鶴堂
この堂のうす闇に涅槃し給へり 小林康治 『虚實』
こゝろゆく極彩色や涅槃像 炭 太祇 太祇句選
ざぶざぶと涅槃の空があふれ出す 白澤良子
それぞれの命みて来し涅槃の日 能村登四郎
ちちははを思へと涅槃し給へる 細川加賀 『玉虫』
ともしびの揺れてぐらりと涅槃絵図 片山由美子
どこにでも虻来て涅槃騒がしき 佐々木六戈 百韻反故 初學
なあるほどこれは大きな涅槃像 夏目漱石 明治三十年
なつかしの濁世の雨や涅槃像 阿波野青畝(1899-1992)
なよ竹は風の意のまま涅槃寺 鍵和田[ゆう]子 浮標
はし近く涅槃かけたる野寺かな 附鳳
ひとり来て大勢で見し涅槃の図 加倉井秋を 午後の窓
ぼろぼろに世界なるまで涅槃像 百合山羽公 寒雁
まことにも獅子の愁や涅槃像 野村喜舟 小石川
まだ哭いてゐる涅槃図を巻きにけり 木村淳一郎
まつしろに降りまつくらや涅槃雪 斎藤慎爾
まつ赤なる涅槃日和の墓つばき 飯田蛇笏 春蘭
まなざしと目付の違ひ涅槃像 藤田湘子 てんてん
まひるまの涅槃図へ朱を入れたりき 夏石番矢
ま青なる空に月ある涅槃かな 岸風三楼 往来
みどりごの指萌えてゐる涅槃雪 齋藤玄 『狩眼』
ものの影みな涅槃なる月夜かな 渡邊水巴
ものゝ影みな涅槃なる月夜かな 渡辺水巴 白日
やどかりの半身浸す涅槃かな 進藤一考
わが干支の牛も侍りぬ涅槃像 銀漢 吉岡禅寺洞
わだつみの波も騒げり涅槃像 五十嵐播水 播水句集
ピエタより煌やかなる涅槃圖や 相生垣瓜人
フラスコに指がうつりて涅槃なり 永田耕衣 真風
一の字に遠目に涅槃したまへる 阿波野青畝
一休は何とおよるぞ涅槃の日 高井几董
一日を海見てあそぶ涅槃の日 石嶌岳
一椀のうどん即ち涅槃非時 高濱年尾
一湾の涅槃ぐもりといふべきか 鷹羽狩行
二股のすずしろ涅槃し給へる 高澤良一 ぱらりとせ
亡き吾子を背に負ふごときおもひして涅槃の像の前にかがみぬ 木俣修
京野菜とりどり供へ涅槃像 長安悦子
人々の眼のなまなまし涅槃見る 飯田蛇笏 山廬集
人の音ありて飯食ふ涅槃かな 雑草 長谷川零餘子
人体に蝶のあつまる涅槃かな 柿本多映
人獣大きさ違ふ涅槃図絵 能村研三 鷹の木 以後
仏壇の燭消してより涅槃雪 田中英子
仏弟子も口ゆがめ泣く涅槃の図 斎藤道子
伽陀洩るる涅槃明りの寺障子 つじ加代子
何処やらに蒲団を着たる涅槃像 岡井省二
傘立に藍の山河や涅槃寺 辻桃子
傘開く音のどすんと涅槃寺 高澤良一 寒暑
傾城の拝んで笑ふ涅槃哉 松岡青蘿
僧あまた炉辺に眠れる涅槃通夜 森白象
優曇華や涅槃よりどの書に埋もる 河野南畦 湖の森
光明の遍ねかりける涅槃かな 三輪未央
凍る湖かけて涅槃の雪つもる 木村蕪城 寒泉
初鳩や空にひろがる涅槃の手 磯貝碧蹄館
北斎の海に雪降る涅槃かな 春樹
北枕真北に涅槃図絵垂らす 赤松[けい]子 白毫
即仏を夢見る如し涅槃像 塩谷華園
咲くまで知らぬ櫻千本涅槃變 竹中宏
咳一つして涅槃図の中に入る 秋澤猛
哭くものは哭かしめ涅槃し給へり 野中 亮介
哭けるものみな口あけて涅槃像 岸風三樓
善通寺涅槃櫻と知りてのち 黒田杏子 花下草上
土不蹈ゆたかに涅槃し給へり 川端茅舎
土筆煮えて皿に小さし涅槃かな 小檜山繁子
地獄絵のあと涅槃図にひざまづく 石野 冬青
地玉子の血の緒のふとき涅槃かな 佐川広治
坐る余地まだ涅槃図の中にあり 静塔
墨客に大涅槃図の掛かりあり 福井啓子
墨擦つて涅槃の雪となりにけり 永方裕子
声もたぬ涅槃の鯉と遊びけり 斎藤玄 雁道
夕映をほしいままなる涅槃寺 岩田由美 夏安
夕月のとくかかりたり宵涅槃 平松措丈
大いなる人の逝くさま涅槃像 河野静雲
大いなる涅槃の釣瓶落としかな 築田圭子
大欅とりまく雑木涅槃かな 平井照敏 天上大風
大濁りせる涅槃会の河口かな 茨木和生 野迫川
大空に雲を敷き詰め涅槃の日 高澤良一 素抱
天寿とはいへざるお顔涅槃像 茨木和生 往馬
天水に映る天界涅槃寺 毛塚静枝
太柱二本かくれぬ涅槃像 野村喜舟 小石川
女の香のわが香をきいてゐる涅槃 三橋鷹女
姉川も妹川も涅槃雪 山本洋子
嬰児には見えず涅槃の通り雨 徳弘純 非望
寄せものに紅が刷かれぬ涅槃像 宮坂静生 山開
寒さあまりて横むきの涅槃見る 金田咲子 全身
寺を出て涅槃の絵図の鳥に会ふ 岩岡中正
寺町や猫と涅槃の恋無常 横井也有 蘿葉集
小さき鯉集ひ易くて涅槃寺 鍵和田[ゆう]子 浮標
就中月の大きな涅槃図絵 福井圭児
展げゆく涅槃図後へすざりつつ 原田青児
山かひは皆昃り来し涅槃像 萩原麦草 麦嵐
山中の涅槃団子としての色 小林牧羊
山中や泉を寝かせ涅槃雪 村越化石 山國抄
山寺の松のみどりの涅槃かな 野村喜舟 小石川
山寺や涅槃図かけて僧一人 星野立子
山寺や誰も参らぬ涅槃像 三浦樗良 (ちょら)(1729-1780)
山巓よ眠る鯨を涅槃とす 久保純夫 聖樹
山襞を出でくる涅槃詣かな 矢島渚男 梟
山越えてゆく白雲も涅槃かな 岡澤康司
山鳥の嘆く尾曳ける涅槃像 後藤夜半 底紅
岩に臥て まこと涅槃似 花の山 伊丹三樹彦 覊旅句集三部作 磁針彷徨
川が先づ見ゆる涅槃図解きにけり 山本洋子
巻き了へて涅槃図のなか遙かにす 正木ゆう子 静かな水
師の柩囲む涅槃図さながらに 布施玉枝
常磐木の青まさる日の涅槃講 高澤良一 随笑
干支の申ささげし蓮や涅槃像 小原菁々子
幾何を泳がば鯉の涅槃かな 齋藤玄 『雁道』
幾春の絵の具や兀し涅槃像 松岡青蘿
幾許を泳がば鯉の涅槃かな 斎藤玄 雁道
座る余地まだ涅槃図の中にあり 平畑静塔(1905-97)
建長寺ご坊雲集お涅槃会 高澤良一 随笑
御忌よりも多し涅槃の櫁(しきみ)売 京-春澄 元禄百人一句
御手のある方に阿難や涅槃像 京極杞陽
御枕赤きに涅槃し給へる 吉井莫生
御涅槃のあと追ふ魚のいのちかな 鳳 朗
御涅槃のかたきまぶたや雪明り 普羅
御灯のうへした暗し涅槃像 芝不器男
御表具に袈裟の折目や涅槃像 菅原師竹
恋に狂ひゐしか涅槃にゐぬ猫は 羽部洞然
恋猫を涅槃の闇が封じけり 矢野聖峰
悲しさの極みの怒り涅槃絵図 大野崇文
慟哭といふ炎むらあり涅槃像 古市絵未
慟哭の涙は描かず涅槃像 三村純也
慟哭の群像今し涅槃かな 和田悟朗 法隆寺伝承
折りにくき膝を折りけり涅槃図に 波多野爽波 『一筆』
拓本の仏像を見る涅槃かな 松本正一
掌に顔を隠して涅槃泣く 古屋秀雄
掌の窪に在ればあるなり涅槃空 斎藤玄 狩眼
擁きあふわれら涅槃図よりこぼれ 恩田侑布子
斎の火を落せし庫裡の涅槃闇 野澤節子 遠い橋
断崖のごとくに涅槃図を仰ぐ 中岡毅雄
旅人に涅槃会の雨一雫 沢木欣一 赤富士
旅人の笠ぬぎをがむ涅槃像 高橋淡路女 梶の葉
日うしなへるものゝあはれや涅槃像 河野静雲 閻魔
日と月を高きに涅槃したまへる 楠戸まさる
日もあやに釈迦が涅槃に入るところ 相生垣瓜人 明治草抄
日月の高さひとしく涅槃絵図 山崎幻児
日照るとき魚介交り来涅槃像 阿波野青畝
昔から婆なる尼や涅槃寺 菅原師竹句集
春の雪阿修羅ともはた涅槃とも 行方克己 昆虫記
春眠の如くに涅槃したまへる 行方克巳
昨日見せざりし涅槃図今日掛かる 森田峠 避暑散歩
昼めしのことを考へ涅槃像 川崎展宏
昼燭す涅槃の幅や東福寺 露石
景徳院勝頼御廟涅槃雪 池田秀水
晴(めのたま)や陸稲涅槃の雨上り 折笠美秋 虎嘯記
暮れどきの草まつさをに涅槃の日 鷲谷七菜子
月のほかものさわがしき涅槃像 後藤夜半
月よりも明るき雲や涅槃像 牧野春駒
月界にひびきて涅槃後夜の鐘 野澤節子 遠い橋
月雲にかくるゝ世なる涅槃かな 尾崎迷堂 孤輪
朝よりも昼の寒くて涅槃雪 岩田由美 夏安
木の枝に鳥ならび鳴く涅槃かな 雑草 長谷川零餘子
朱の多き涅槃図かかり湖の寺 森澄雄 空艪
来し方の野に雪降れり涅槃寺 野見山朱鳥
東山三十六峰涅槃雪 浅見志津香
枯園に日は和なれや大涅槃 石塚友二 光塵
枯蓮や却て春の仏涅槃 尾崎迷堂 孤輪
柔らかき手もて涅槃の撫されけり 岸風三樓
桜ふぶきのずつと向うに涅槃の犬 林藤尾
梁といふ強きものある涅槃寺 大牧広
梅雨寒の地下に拝がむ涅槃像 大久保太市
榧の木に春の日脚や涅槃寺 末久松城
横たはり給ふまことや涅槃像 尾崎迷堂 孤輪
横たはる様は涅槃の自然生(じねんじょう) 高澤良一 随笑
歌留多の釈迦坊主揃ひや涅槃講 九石 選集「板東太郎」
正面に落日うけて涅槃像 妻木 松瀬青々
武者先生涅槃し給ひ花の雨 石塚友二
歳旦の砂丘涅槃のごとくにも 中島南北
死慾も生くるあかしや涅槃婆 八幡城太郎
水くだり風のぼりゆく涅槃の日 鳥居おさむ
水よりも雲のつめたき涅槃の日 茨木和生 木の國
水潮の涅槃の海に泳ぎゐる 茨木和生 三輪崎
池底に根を張るものや涅槃寺 丸山景子
沙羅の葉に月の雫す涅槃像 吉富無韻
泉州の潮の香沁みし涅槃絵図 山本いさ夫
泣顔のくしや~誰や涅槃像 野村喜舟 小石川
泳ぐやうにもがきマラソン涅槃雪 仙田洋子 橋のあなたに
海蜷のぞくぞく上がり来る涅槃 大串章
涅槃したまふ中空を飛び交ふ蜂 中田剛 珠樹以後
涅槃し給いなお説くことばあるごとし 宇咲冬男
涅槃すみ山に一本夕日道 村越化石 山國抄
涅槃なり狐色して山並び 村越化石 山國抄
涅槃に泪もろもろの御弟子かな 椎本才麿
涅槃の図口かげ深きへかがみけり 臼田亜浪 旅人
涅槃の図白きは象の歎けるなり 山口誓子
涅槃の座たまはば吾は寝てしまふ 橋本美代子
涅槃の日蝶も海峡渡るかな 加藤かけい
涅槃の日鰻ぬるりと籠の中 飯田龍太 遅速
涅槃までつひに一花もほころびず 能村登四郎
涅槃より亀も田螺も鳴くらむか 大石悦子 百花
涅槃より今年の朧はじまりし 森澄雄 所生
涅槃より衆生ほとほと死にたる図 皆吉爽雨
涅槃を拝む虫喰へる畳の広き 梅林句屑 喜谷六花
涅槃仏しづかに御手のありどころ 静雲
涅槃仏にともしびを置き僧去れり 松村蒼石 雁
涅槃会に佳人のまじる日の翳り 桂信子 遠い橋
涅槃会に来てもめでたし嵯峨の釈迦 太 祗
涅槃会に蟻の塔見る野寺かな 蕉雨亭
涅槃会のあつまりて齢にぎやかに 長谷川双魚 風形
涅槃会のけふ永らへて父おはす 大石悦子 群萌
涅槃会のこゑの湖とぶゆり鴎 森 澄雄
涅槃会のやさしき雨となりにけり 鈴木栄子
涅槃会の僧を待ちゐる緋毛氈 吉野義子
涅槃会の嘆のさまざま地を叩き 長谷川久々子
涅槃会の子供はもはら食べにけり 細川加賀 生身魂
涅槃会の散華みづみづしき樒 大橋敦子 手 鞠
涅槃会の映りてゐたる堂の床 岩淵喜代子 螢袋に灯をともす
涅槃会の昼過ぎて山瞭らかに 日美清史




涅槃会の松の枝々まろき雪 瀧澤伊代次
涅槃会の椿見てより反逆す 河野多希女 両手は湖
涅槃会の樹を肉桂と思ひをる 岡井省二
涅槃会の毬藻沈めて手水鉢 青木重行
涅槃会の水に穴あく鯉の口 敏雄
涅槃会の沓音巡る御仏殿 高澤良一 随笑
涅槃会の波のもみあふ船溜り 片山由美子 水精
涅槃会の海鵜はしらせ岬暮るる 河野南畦 湖の森
涅槃会の燠白じろと果てにけり 川村祥子
涅槃会の猫の開けたる夜の襖 綾部仁喜 樸簡
涅槃会の腹の底より楞厳神呪(りょうごんしゅう) 高澤良一 随笑
涅槃会の闇に積みあげ皿小鉢 井上 雪
涅槃会の風の峠を越えにけり 山田弘子 懐
涅槃会やあめつちふかく塵とべる 平田繭子
涅槃会やいろはうた説き法を説く 大橋敦子
涅槃会やおくれてひとつ飛ぶ小蝶 蓼太
涅槃会やさながら赤き日の光 言水
涅槃会やされども雁は生別れ 横井也有 蘿葉集
涅槃会やものの重なる影法師 麦水
涅槃会やわが大足の裏白き 大屋達治 龍宮
涅槃会や伏鉦一つあれば足る 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
涅槃会や何処の内儀かもふ日傘 井月の句集 井上井月
涅槃会や嘘を月夜となりにけり 蕪村
涅槃会や囀の音の降れる中 小杉余子 余子句選
涅槃会や大僧上の坐胼胝 山本孝仙
涅槃会や大雄宝殿開放つ 野村喜舟 小石川
涅槃会や寿齢の延びてきし代にて 徳永山冬子
涅槃会や松に雪降る清涼寺 青木月斗
涅槃会や死なねば逢へぬ人の数 小松崎爽青
涅槃会や波のもみあふ船溜り 片山由美子 水精
涅槃会や皺手合する数珠の音 松尾芭蕉
涅槃会や礼いひありく十五日 炭 太祇 太祇句選後篇
涅槃会や花木の精も舞ひ出でし 伊東宏晃
涅槃会や蚯蚓ちぎれし鍬の先 正岡子規
涅槃会や誰が乗り捨ての茜雲 上田五千石(1933-97)
涅槃会や身は寺入の穀つぶし 加舎白雄
涅槃会や雪清浄の法の山 大橋敦子 手 鞠
涅槃会や雲下りくる音羽山 暁台
涅槃会や飛ぶ鳥を見て飛ばぬ鳥 藤田湘子 てんてん
涅槃会を寺ごと拝む野にありて 津田清子
涅槃像あなんの顔のとはに哭く 銀漢 吉岡禅寺洞
涅槃像いばんや人間絹枕 安昌 選集「板東太郎」
涅槃像おろがむ齢いたりけり 柴田白葉女 『月の笛』
涅槃像ぎりぎりに丘断たれたり 鍵和田[ゆう]子 浮標
涅槃像に手合はすことの外知らず 細見綾子
涅槃像バナゝがあげてありにけり 河野静雲 閻魔
涅槃像ブロッコリーを供へある 岸本尚毅 舜
涅槃像上へ上へとやがて雲 川崎展宏
涅槃像勁き視線も罪なるか 河野多希女 両手は湖
涅槃像女人は袖に涙かな 高橋淡路女 梶の葉
涅槃像尼に抱かれて拝みけり 村上蚋魚
涅槃像後は釈迦の立ち仏 左次 二 月 月別句集「韻塞」
涅槃像歎きの色を帯びにけり 牧野春駒
涅槃像水欲りたまふおんけしき 栗生純夫 科野路
涅槃像猫も目つぶり哭きにける 岸風三楼 往来
涅槃像真似てこのまま覚めずとも 沢村越石
涅槃像色刷りなれば児が覗く 川崎展宏
涅槃像見かけて鳴くや山鴉 正岡子規
涅槃像金泥は目にあたたかし 加古宗也
涅槃像鳥獣わらふ如く哭く 川崎展宏
涅槃像黄河の沙の降る日かも 藤田湘子 てんてん
涅槃像鼠の尿もあはれなり 正岡子規
涅槃其時岩は裂け地は凹みたり 松瀬青々
涅槃参らぬ婆は鴉に鳴かれけり 久米正雄 返り花
涅槃哭く尾のあるものは尾を抱へ 檜紀代
涅槃図が死ね死ね我れを責めゐたり 河野多希女 両手は湖
涅槃図にしのびよりしは水明り 野中秋光
涅槃図につかふ天井までの丈 岩淵喜代子 螢袋に灯をともす
涅槃図になき海に出て遊ぶなり 原田喬
涅槃図にならひし手脚縛さるる 加藤知世子 花 季
涅槃図にひくく坐りてをみなわれ 岩崎照子
涅槃図にひとり経あげ沙弥去れり 大橋敦子 手 鞠
涅槃図にまやぶにんとぞ読まれける 後藤夜半 翠黛
涅槃図に一*ちゅう加へ僧去りぬ 山田弘子 こぶし坂
涅槃図に一匹まじる腹の虫 星永文夫
涅槃図に不参の猫よ身を売るな 有馬朗人 母国
涅槃図に五月蠅ひとつの参じたり 大橋敦子 勾 玉以後
涅槃図に今なら細身割り込める 小内春邑子
涅槃図に佇ちて空腹すべもなし 行方克己 昆虫記
涅槃図に侍れるときも鴛鴦の沓 後藤夜半 底紅
涅槃図に充つ泣き声や年の果 宮坂静生 春の鹿
涅槃図に入りて哭きたき日のありぬ 伊東みのり
涅槃図に入り昏昏と眠りたし 倉橋羊村
涅槃図に入れぬ亀の鳴きにけり 山本白雲
涅槃図に加へてみたきあめふらし 大木あまり 火球
涅槃図に嘆きすぎゐるもの賤し 後藤比奈夫
涅槃図に坐り加はる旅を来し 赤松[けい]子 白毫
涅槃図に坐り直して魅入る人 高澤良一 随笑
涅槃図に声満ち裏側の空白よ 成瀬櫻桃子 素心
涅槃図に天人鬼神なくもがな 後藤比奈夫 めんない千鳥
涅槃図に小さき涙描かれず 菅原章風
涅槃図に居ぬ猫鳴きて燭揺るる 田中英子
涅槃図に幼きものは描かれずに 森澄雄 空艪
涅槃図に日本人の顔あらず 茨木和生 野迫川
涅槃図に望の月あり照しけり 鈴木栄子
涅槃図に束の間ありし夕日かな 敦
涅槃図に泣きしねずみと野路に会ふ 野見山朱鳥
涅槃図に泣き声を描き忘れけり 宮坂静生
涅槃図に洩れて障子の外の猫 村越化石
涅槃図に煉炭の香のまぎれなし 辻桃子
涅槃図に猫ゐることを意にするな 鈴木栄子
涅槃図に立てば濁世の遠ざかる 辻本青塔
涅槃図に竹藪の日の動きをり 山本洋子
涅槃図に蚯蚓が泣いてをりにけり 行方克己 昆虫記
涅槃図に蟠(わらぢむし)とも草履とも 小澤實
涅槃図に話しかけゐる嫗かな 高橋玉洋
涅槃図に跳ねて加はる赤蛙 夏井いつき
涅槃図に顔寄せ俳句亡者かな 藤田湘子 てんてん
涅槃図に鵯の鋭声のつきあたり 石嶌岳
涅槃図に鶴すべりをる樹もあらむ 大屋達治 繍鸞
涅槃図のあなうら若き麻耶夫人 細川加賀 『玉虫』
涅槃図のいやしきは口あけて泣く 殿村菟絲子 『晩緑』
涅槃図のごとく集ひて風生忌 松本澄江
涅槃図のそとは驟雨の日本海 原田喬
涅槃図のたるみを見せず増上寺 高澤良一 素抱
涅槃図のふはりとこの世煽りたる 赤松[ケイ]子
涅槃図のみんな出て来い酒を呑め 工藤克巳
涅槃図の一人みづみづしくありぬ 綾部仁喜 寒木
涅槃図の中や向きあふもののなし 小川軽舟
涅槃図の中流れゐる微風かな 鈴木鷹夫
涅槃図の丹のさびしさも尼の寺 肥田埜恵子
涅槃図の人ことごとく大頭 藤田湘子
涅槃図の人参大根なべて哭く 岡田史乃
涅槃図の余白の我を思ふべし 橋本榮治 麦生
涅槃図の余白は風の哭くところ 土生重次
涅槃図の余白を金に埋めつくす 石嶌岳
涅槃図の冷えの伝はる膝がしら 近藤 暁代
涅槃図の前ゆつくりと猫あゆむ 佐藤 木鶏
涅槃図の前をこの世の猫通る 松本澄江
涅槃図の前勿体なの大嚏 大橋敦子 勾 玉以後
涅槃図の剥落も又なげきかな 吉田美佐子
涅槃図の嘆きに燭の揺らぎけり 栗原憲司
涅槃図の嘆きの丈を掛けにけり 山岡 季郷
涅槃図の嘆きの端に加はりし 井田すみ子
涅槃図の嘆きの蟻の高あゆみ 村上梅泉
涅槃図の寺旅人を泊めにけり 黒田杏子 木の椅子
涅槃図の悲しみ褪せてをらざりし 藤崎久を
涅槃図の月が最後に捲かれけり 市堀 玉宗
涅槃図の月たかだかとありしかな 茂里正治
涅槃図の月の暗さのただならず 山田弘子 懐
涅槃図の月は光を失ひぬ 中 憲子
涅槃図の月は無くとも沙羅双樹 阿部慧月
涅槃図の月もまどかに菊月夜 大島民郎
涅槃図の有象無象のやさしさよ 行方克巳
涅槃図の樹かげに小さきははの荷ぞ 関戸靖子
涅槃図の泣くにほどよき暗さかな 平子 公一
涅槃図の泣顔どれもこれも佳き 藤田湘子 てんてん
涅槃図の猫の嘆きのしづかなり 大石悦子 百花
涅槃図の猿も涙をこぼしけり 佐川広治
涅槃図の獣に続き吾等在り 高木石子
涅槃図の獣のなげき子にうつる 佐野良太 樫
涅槃図の白を余して慟哭す 相良哀楽
涅槃図の百足虫の足と毛虫の毛 斎藤朗笛
涅槃図の端に落つこちさうな亀 河内きよし
涅槃図の絵解きなかなか蛇に来ず 茨木和生 野迫川
涅槃図の絵解の竿も伝はりぬ 後藤夜半 底紅
涅槃図の若草色の大地かな 村中[トウ]子
涅槃図の虫魚の歎きとは如何に 大橋敦子 匂 玉
涅槃図の表裏に隙間なかりけり 館岡沙緻
涅槃図の裏に人ゐる気配する 加倉井秋を 午後の窓
涅槃図の裏よりとどく母のこゑ 原裕 新治
涅槃図の裾の巻きぐせ兎泣く 田上さき子
涅槃図の裾人間の塵立ちぬ 丸山景子
涅槃図の貝いかにして来たりけむ 小澤實 砧
涅槃図の釈迦を若しと拝しけり 肥田埜勝美
涅槃図の雲硬しとも柔しとも 藤田湘子 てんてん
涅槃図の頭に敷く肘の痛からむ 木田千女
涅槃図の鬼の金冠粗なりけり 稲荷島人
涅槃図はひろびろと目のとどかざる 山本歩禅
涅槃図は黄金光にひびわれぬ 阿波野青畝
涅槃図へあと一躙寄れば入る 毛塚静枝
涅槃図へ潮の匂ひの手を合はす 斎藤梅子
涅槃図へ鳴る遠州の庭の滝 大島民郎
涅槃図やけむりの如き貌ばかり 関戸靖子
涅槃図やこの世をゆたかなる彩に 手塚美佐 昔の香
涅槃図やしづかにおろす旅鞄 黒田杏子 木の椅子
涅槃図や有情のなかの蚯蚓ン氏 河野静雲 閻魔
涅槃図や横に置かれし油壺 竹内悦子
涅槃図や身を皺にして象泣ける 橋本榮治 麦生
涅槃図や逆髪一人のみならず 森田峠
涅槃図をあふるる月のひかりかな 黒田杏子 花下草上
涅槃図をかけたる寺の閏月 萩原麦草 麦嵐
涅槃図をたたむ一つの棒にして 大郷耕花
涅槃図をはみ出て跳ねる雨蛙 田中水桜
涅槃図を仰げりマスクかけしまま 長谷川かな女 花 季
涅槃図を労作として又見たり 相生垣瓜人 明治草抄
涅槃図を去り直ぐ蜑の頬かむり 石井とし夫
涅槃図を咫尺に拝す仔細かな 大橋敦子 手 鞠
涅槃図を展けばそこにサタンの瞳 古市絵未
涅槃図を巻き慟哭を消してゆく 松村幸一
涅槃図を巻くや短き掌が残る 衣川次郎
涅槃図を抜けし田面のとりけもの 関戸靖子
涅槃図を抜けて一人の鍬を振る 濱本 八郎
涅槃図を抜け恋猫となりゐたる 北見さとる
涅槃図を拝みて婆のひとり言 菖蒲あや あ や
涅槃図を捲くや寝釈迦の捲かるるや 大石悦子 百花
涅槃図を捲ける難儀に来合はせし 大石悦子 百花
涅槃図を見てきたような乳房かな 久保純夫 熊野集 以後
涅槃図を見て幼児が象を指す 浜端順子
涅槃図を見て来し吾も横たへる 杉山岳陽
涅槃図を見にゆけばもう仕舞はれし 辻桃子
涅槃図を見尽してより顔昏るる 畠山譲二
涅槃図を見尽すことの難しや 池田秀水
涅槃図を過ぐしとやかに寺の猫 猪俣千代子 秘 色
涅槃圖にまやぶにんとぞ読まれける 後藤夜半
涅槃圖に花の明かりを足しにけり 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
涅槃圖に象と蛇との泣くを見む 相生垣瓜人
涅槃圖も三月十日に焼きしこと 八木林之介 青霞集
涅槃圖を二人がかりで懸け了へぬ 高澤良一 ももすずめ
涅槃圖を出て囀りの外れの木 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
涅槃圖を旅の二人が繰りひろげ 橋本鶏二
涅槃堂出てうつし世の日向あり 鈴木貞雄
涅槃夜の雨にしづみし無明界 河野南畦 湖の森
涅槃寺までの泥濘地獄かな 池田秀水
涅槃寺田螺のねむる田につづく つじ加代子
涅槃寺障子細目に雪の松 星野立子
涅槃嶽のもつとも裾の大瀑布 橋本鶏二
涅槃忌の供米に遊ぶ雀かな 大橋敦子 勾 玉以後
涅槃絵のとりけものらの裾に侍す 上田五千石
涅槃絵の棚曳き雲の悲しさよ 尾崎迷堂 孤輪
涅槃絵の釈迦法外に秀でけり 相生垣瓜人
涅槃絵も恐らく真を写しけむ 相生垣瓜人 明治草抄
涅槃絵や離れて物を煮るにほひ 中山純子 沙羅
涅槃絵や難陀(なんだ)文殊はどの坊主 中村史邦
涅槃絵を覗きし鵙の声ならん 徳弘純 非望
涅槃絵図十大弟子の名は知らず 寺田圭子
涅槃絵図灯りてわが身はみだせり 白澤良子
涅槃衣も衣箪笥や虫払 喜谷六花
涅槃通夜この世の吾に影法師 三好潤子
涅槃鐘鳴る時菜種莢に入る 久米正雄 返り花
涅槃雪ふりかぶりつつ古稀となる 中村敏子
涅槃雪女性ま白き芯に燃ゆ 高澤晶子
涅槃雪日のいろ見えて暮れんとす 永田耕一郎 雪明
涅槃雪渚に蒼くつもりけり 山本洋子
涅槃雪玄奘も筆休めけむ 有馬朗人 耳順
涅槃雪筑紫の涯に父の墓 佐野美智
涅槃雪踏み最澄の山に在り 山田松寿
涅槃風ふもとの自転車ぬすまれし 安井浩司 中止観
涅槃風廃墟にできし砂の類 中村草田男
涅槃餅モザイクのごと供へあり 堀口星眠 樹の雫
涅槃高野に亡母の一灯加へけり 影島智子
涙痕のごと蝶を描き涅槃の図 皆吉爽雨
湖をもて耳をふたぎぬ涅槃像 岡井省二
滑車つけて大涅槃像つり上ぐる 河野静雲 閻魔
火のかたちこゑのかたちや涅槃通夜 黒田杏子 花下草上
火の花を咲かす涅槃の大炉かな 影島智子
火袋に生きて白蛾も涅槃衆 野澤節子 遠い橋
灸寺そびらに涅槃かゝりけり 野村喜舟 小石川
炉に覚めし蛾や涅槃図に入りゆかず 吉野義子
焼寺に全きものは涅槃かな 筝子
照り敷きて雲上のごと涅槃雪 井沢正江 湖の伝説
燈明に草木の色や涅槃像 碧雲居句集 大谷碧雲居
爐の灰をならしてひとり涅槃寺 佐川広治
父の香の沓と涅槃の墨硯 野村雨城
父想ひ和す涅槃経寒けれど 堀口星眠 営巣期
物臭さの屋根に雪積む涅槃かな 市掘玉宗
犬猫に見える涅槃の闇の庭 中山純子 沙羅
獣に青き獅子あり涅槃像 後藤夜半 翠黛
現し世の櫛落ちてをり涅槃寺 木田千女
現代という危うさよ涅槃像 和田悟朗 法隆寺伝承
生みたての玉子の届く涅槃の日 福川悠子
生臭き息を憚る涅槃絵図 浜渦美好
田螺寺げん~寺の涅槃かな 野村喜舟 小石川
白き糞みどりの糞や涅槃の日 依光陽子
白一衣まとふ雲逝く涅槃空 林昌華
白孔雀涅槃の翅をひらきけり 渡辺恭子
白象の牙上げて哭く涅槃絵図 松本圭二
白象を笑ひ嘆かせ涅槃図絵 赤松子
百獣に白象やさし涅槃像 河野静雲
百草も揃はぬころや涅槃像 乙由
真如堂には月のよき涅槃像 後藤比奈夫 めんない千鳥
神垣やおもひもかけず涅槃像 芭 蕉
童女ゐて頬杖をして涅槃像 後藤夜半(1895-1976)
竹の葉のさしちがひ居る涅槃かな 永田耕衣 真風
竹林に遊ぶ涅槃に遅れをとり 後藤綾子
紅戈の蟹も来て居る涅槃像 河野静雲 閻魔
細筆を買うて戻るや涅槃雪 鷹羽狩行
緋の色の他は薄れて涅槃絵図 田所節子
繕ひもならぬ涅槃図巻きしまゝ 森田峠 避暑散歩
美しきひとの案内や涅槃像 藤田湘子 てんてん
美しき印度の月の涅槃かな 阿波野青畝
美しき涅槃の雪に女ゆく 大峯あきら
翅ぶものを見ず涅槃会の寺を出て 津田清子 二人称
老の眼に仰ぐ高さや涅槃像 河野静雲 閻魔
老婆には聞えて涅槃像のこゑ 鷹羽狩行
老海女のつぶやき潜る涅槃かな 本谷久邇彦
老眼の更にかすみて涅槃像 武井耕天
耆婆が脈とりて思へる涅槃かな 松瀬青々
耕人をはるかに涅槃し給へり 中川欣一
肋あらわ天地傷む涅槃なれ 和田悟朗 法隆寺伝承
胸を地にきゞす鳴くなり涅槃像 松瀬青々
花に啼絵になく鳥や涅槃像 横井也有 蘿葉集
花の蔭およるとばかり涅槃かな 谷口桃園
花涅槃ははのやうなる月出でぬ 白澤良子
草木より人のまぶしき涅槃かな 三森鉄治
萩の芽をいざなふ雨や涅槃像 榎本冬一郎 眼光
葦の間の水をまぶしむ涅槃寺 斉藤夏風
蕎麦殻に風通しやる涅槃かな 宮坂静生 山開
薄暗き野寺に惚れる涅槃かな 秋元不死男
薬師寺の明日の涅槃会遇ひたけれ 赤松[ケイ]子
薺咲く框で涅槃をがまれる 梅林句屑 喜谷六花
藪騒を聴きに来しなり涅槃寺 大石悦子 百花
虫たちの消え入りさうな涅槃の図 宮口喜代子
蛇の円かなる座や涅槃像 後藤夜半 翠黛
蛇を恐れぬ涅槃図の蛙かな 松尾隆信
蝕みし虫も殻なり涅槃像 風来
行人にしばらくは舞ひ雪涅槃 岸田稚魚 『萩供養』
裂く鯉の目には涅槃の見ゆる筈 齋藤玄 『雁道』
見えぬもの波がつなぎて涅槃の日 手塚美佐
見て来たるごとき涅槃の絵解きかな 八染藍子
説き終へて満ちける御ン唇涅槃仏 林昌華
諸鳥の地に嘆かへり涅槃像 秋櫻子
護国寺の涅槃年々拝みけり 野村喜舟 小石川
象よりも大きく涅槃し給へり 有馬籌子
貝殻に溜れる雨も涅槃かな 細見綾子 存問
貧乏はいそいそ涅槃図をひろげ 長谷川双魚 風形
貧相に描かれし蛇涅槃絵図 茨木和生 往馬
赤子が乗りてこはれる箱や涅槃寺 田中裕明 櫻姫譚
越の田のゆるびはじめの涅槃寺 鷲谷七菜子 花寂び
足なへのころびし浄土涅槃雪 井沢正江 以後
足もとに猫のすり寄る涅槃寺 片山由美子 水精
身を出して田螺がゐたり涅槃の日 茨木和生 三輪崎
身投げ哭く僧は阿難よ涅槃像 河野静雲 閻魔
近よれど声なき嘆き涅槃像 佐野良太 樫
近海に鯛睦みゐる涅槃像 永田耕衣
遠目にはひと色なりし涅槃絵図 澤井悠紀子
酩酊に似たり涅槃をひた歎き 誓子
釈迦の国金ンを貴び涅槃像 比奈夫
釈迦銭や涅槃に帰る手向種(たむけぐさ) 椎本才麿
里の子の猫加へけり涅槃像 夏目漱石 明治二十九年
野菜涅槃図葱の高足侍りけり 高澤良一 燕音
金岡の画いて消えたる涅槃かな 野村喜舟 小石川
金色に涅槃し給ふくらさあり 下村非文
金色の失せつつ涅槃し給へり 北澤瑞史
鐘打つて婆ら吐き出す涅槃寺 関戸靖子
門前の花菜の雨や涅槃像 飯田蛇笏 山廬集
階段に泥足乾く涅槃哉 竹冷句鈔 角田竹冷
雪代のあふれあふるる涅槃像 黒田杏子 花下草上
雪歇まず昨日涅槃の晨より 月尚
雪涅槃となりにける身のほとりかな 稚魚
露をのむ瑠璃鳥や涅槃の楢林 永田耕衣
青鬼の背中が泣いて涅槃絵図 規子
頭より大鯉およぐ涅槃かな 山上樹実雄
風入れの涅槃図六畳領しけり 関森勝夫
香焚けば翳のぼりつめ涅槃像 裕
馬鹿長き箱涅槃図を蔵すてふ 能村登四郎 寒九
高張りの一つひとつに涅槃の灯 影島智子
高濤のもんどり打ちし涅槃かな 古舘曹人
魚ねむる涅槃月夜の藻を抱き 秋沢流火
鯉跳ねて昼腥さき涅槃寺 中村祐子
鯛料る只今ばかり涅槃かな 斎藤玄 無畔
鰯雲沖かけて燃ゆ涅槃図絵 柴田白葉女 『月の笛』
鳥型を空の涅槃に押しつけて 齋藤玄 『雁道』
鳥獣にはじめて泪涅槃絵図 井沢正江 一身
鳥獣の我等侍りし涅槃かな 上野泰
鳥雲に入りて涅槃図にめぐりあふ 小檜山繁子
鴨は雫雑木に移す涅槃かな 大木あまり 山の夢
鶴の里涅槃の月を上げにけり 冨田みのる
黙といふもの涅槃図に描かれをり 河内静魚
鼾すなり涅槃の寺の裏門に 子規句集 虚子・碧梧桐選
あくびして目覚め給へよおん寝釈迦 木田千女
あばらもて尊者歎かふ寝釈迦かな 赤松[けい]子 白毫
おん唇のもの言ひのこす寝釈迦かな 鍵和田釉子
おん顔の三十路人なる寝釈迦かな 草田男
かりそめの御手枕の寝釈迦かな 高橋淡路女 淡路女百句
かんばせのゆたかに在す寝釈迦かな 吉武月二郎句集
しろ~と寝釈迦の顔の胡粉かな 虚子
ながれゆくかたちととのひ寝釈迦(ニルバーナ) 柚木紀子
はりつけにあらず寝釈迦は寝給へり 及川貞 夕焼
ひぢ見せて仮寝し給ふ寝釈迦かな 鈴木栄子
ひとしきり雪の降りたる寝釈迦かな 角川春樹
まんなかにごろりとおはす寝釈迦かな 日野草城
むらさきの寝釈迦の前に薬掘る 池田世津子
一人寄りどつと寝釈迦へにじり寄り 藤田湘子 黒
哀しき象せまく跪坐して寝釈迦かな 及川貞 夕焼
嘆かひのもの樹に倚れる寝釈迦かな 岸風三楼 往来
堂暗く寝釈迦を雲と見たるのみ 依光陽子
夕焼のいよいよ暗き寝釈迦かな 岸本尚毅 舜
大いなる身をはばからず寝釈迦かな 長谷川櫂 虚空
大寝釈迦新涼の松を枕上み 下村ひろし 西陲集
大津絵の蕭条として寝釈迦かな 相生垣瓜人 微茫集
大顔をむけたまふなる寝釈迦かな 後藤夜半 翠黛
天井の闇の降りくる寝釈迦かな 蓼汀
寝釈迦さまの添ひ寝を怖れ戻りけり 嶋野國夫
寝釈迦には見ゆる獣の泪かな 後藤比奈夫
寝釈迦のうえを流れて 紅梅 辛夷の昼 伊丹公子 時間紀行
寝釈迦より小さく象の座りおり 成瀬正とし
寝釈迦見て上半身のまた痩せし 鈴木栄子
寝釈迦見るさきゆく僧の坐りけり 星野立子
小うるさい花が咲とて寝釈迦哉 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
巻きぐせの寝釈迦の上を真一文字 原田青児
彫みある寝釈迦のまとひたまふもの 後藤夜半 翠黛
御素足の幼かりける寝釈迦かな 鈴木貞雄
手まくらの金ことに照る寝釈迦かな 皆吉爽雨 泉声
新月のビルマに在りて寝釈迦かな 久米正雄 返り花
日のさして今おろかなる寝釈迦かな 永田耕衣(1900-97)
日照るとき金を横たふ寝釈迦かな 阿波野青畝
格子より見えて小さき寝釈迦かな 岩田由美
橡の実落つ寝釈迦北枕でありぬ 小堀葵
武蔵野の風の中なる寝釈迦かな 村上 光子
浮世絵のくろき漢の寝釈迦かな 後藤夜半 翠黛
涅槃図を捲くや寝釈迦の捲かるるや 大石悦子 百花
滴りを寝釈迦聴き澄みゐたりけり 鈴木しげを
燭ゆれて寝釈迦まばたきしたまへり 岡本無漏子
白々と寝釈迦の顔の胡粉かな 高浜虚子
白描の寝釈迦をろがむ夕明り 赤松[けい]子 白毫
稜線の寝釈迦にぞ見え母は亡し 大橋敦子
童が目守る大き頭りの寝釈迦さま 松村蒼石 雁
等身の金ンの寝釈迦に燭一つ 近藤一鴻
経師屋に撫でられてゐる寝釈迦かな 阿波野青畝(1899-1992)
美しく爪切られたる寝釈迦かな 木倉フミヱ
葉桜や寝釈迦台座を落ちさうな 宮坂静生 春の鹿
薇がほどけるまでの寝釈迦かな 間石
蟻の居て寝釈迦の如く蝉死して 京極杞陽「但馬住」
蠅たからせてゐるや寝釈迦の如く父 八木三日女 紅 茸
衆生らに香盤廻る寝釈迦かな 吉波泡生
衆目にさらす寝釈迦の扁平足 品川鈴子
豊かなる乳見え給ふ寝釈迦哉 篠原鳳作
象よりも大きく画きし寝釈迦かな 野村喜舟
金堂の櫺子ぞくらき寝釈迦かな 水原秋櫻子
銀杏黄葉寝釈迦を暗く拝しけり 小出文子
雪しぐれ寝釈迦と濁世ともにして 諸角せつ子
雲海に浮いて寝釈迦の在します 円仏 美咲
靴脱いで右繞三匝寝釈迦仏 町田しげき
額押し当て寝釈迦の蹠有難し 町田しげき
馴れし眼になほ昏々と寝釈迦かな 大石悦子 聞香
麦の秋島にも寝釈迦おはしけり 佐野まもる 海郷

以上
by 575fudemakase | 2015-03-15 00:43 | 春の季語


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


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《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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