春潮
春潮
例句を挙げる。
あるときは春潮の鴎眞一文字 飯田蛇笏
うつむいて春潮をきく一途なる 阿部みどり女
もやひ綱捲く春潮をしたたらせ 道川虹洋
ゆるやかにのびて春潮鵜を放つ 橋本鶏二
わだの神春潮を観る磴賜ふ 西本一都 景色
仏壇や春潮を羽つよき鳥 宇佐美魚目 秋収冬蔵
傘さして春潮を見る芝生かな 楠目橙黄子 橙圃
傘させば春潮傘の内にあり 中村汀女
入り込んで春潮せめぎ合ふところ 行方克巳
囀や春潮ふかく礁めざめ 加藤楸邨
岬よく伸びて春潮たゆたへり 荒川 曉浪
島かけて満つ春潮を掌に掬ふ 右城暮石 上下
島蔭の春潮青きところかな 小杉余子 余子句選
巌の門を春潮の紋過ぎゆけり 鈴木貞雄
巌まろく老い春潮を乗せ遊ぶ 岸風三楼
幾尾根を越え春潮へ至る旅 稲畑汀子 春光
思ひあまるごと春潮のふくれ来る 菖蒲あや
思ひゐるのみ春潮の渦力 石田勝彦 秋興
恣意棄てに来し春潮のクリスタル 松本千鶴子
掌に掬う春潮のまだ冷きを 大嶽青坡
旅館洩る灯に春潮のふくらむも 三好潤子
春潮が寄す水神の石畳 松井利彦
春潮が湧く大盃に金蒔くに 古舘曹人 能登の蛙
春潮といふには沖に暗さあり 池田秀水
春潮といふには越の海荒し 下村梅子
春潮といへば必ず門司を思ふ 高濱虚子
春潮と人魚の像と睦み合ふ 天岡宇津彦
春潮にうち傾ける白帆かな 播水
春潮にたとひ艪櫂は重くとも 高浜虚子
春潮にまどろむ肘をつい外す 稲垣きくの 黄 瀬
春潮にをりをり差せる風の翳 高澤良一 ぱらりとせ
春潮に一艇一艇打たれ鳴る 高澤良一 さざなみやっこ
春潮に乗りてすぐ著く平戸かな 稲畑汀子
春潮に乗り捨舟や島の昼 高濱年尾 年尾句集
春潮に人気なき艇揺れてをり 赤尾恵以
春潮に向けて護符置く海女の小屋 長浜聰子
春潮に対し一亭椅子二脚 岸風三楼 往来
春潮に巌は浮沈を愉しめり 上田五千石(1933-97)
春潮に巨巌の隙を窓と呼ぶ 上田五千石 森林
春潮に指をぬらして人弔ふ 橋本多佳子
春潮に教へ子の住む島一つ 村松紅花
春潮に昼を眠れる舟かかる 五十嵐播水 埠頭
春潮に梳りをるものを刈る 風生
春潮に水葬了へし汽笛鳴る 千代田葛彦 旅人木
春潮に流るる藻あり矢の如く 杉田久女
春潮に浮びて険し城ケ島 秋櫻子
春潮に海女の足掻きの見えずなる 誓子
春潮に真珠筏のある目覚め 稲畑汀子 春光
春潮に窓の硝子戸罅うかす 川島彷徨子 榛の木
春潮に縺るゝ纜の一ところ 五十嵐播水 播水句集
春潮に耳だこできて潮まねき 能村研三
春潮に舵とりてうら若き眉 稲垣きくの 黄 瀬
春潮に船ぬるペンキこぼれつつ 五十嵐播水 埠頭
春潮に船傾くとみし疲れ 稲垣きくの 黄 瀬
春潮に船脚深き徐行船 右城暮石 声と声
春潮に船逆らふも亦良からん 高濱年尾 年尾句集
春潮に豊玉媛の鳥居立つ 下村梅子
春潮に身ををどらせし鴎かな 伊藤 清子
春潮に近く住みつつ行きも見ず 山口波津女 良人
春潮に音あるか玻璃開きみる 高木晴子 花 季
春潮に飽かなく莨すひをはる 横山白虹
春潮に鵜のおとなしき裏日本 秋沢猛
春潮のあらぶるきけば丘こゆる蝶のつばさもまだつよからず 坪野哲久
春潮のかけのぼらんとする崖に 山口青邨
春潮のくもり己れの眼のくもり 阿部みどり女
春潮のけづれる岩のかたちかな 楠目橙黄子 橙圃
春潮のひびきて白き月の暈 東早苗
春潮のひびける島の宮柱 深見けん二
春潮のまぶしさ飽かずまぶしめる 中村汀女
春潮のテープちぎれてなほも手をふり 山頭火
春潮の上に天刑のほろぶ島 赤松[けい]子 白毫
春潮の上に月光の量を増す 飯田龍太
春潮の今一帆を得て碧し 中村星堂
春潮の光点となり海女潜く 文挟夫佐恵 雨 月
春潮の入るを拒める島の川 右城暮石 声と声
春潮の匂ふばかりに流るる日 今井つる女
春潮の右手をさへぎる巌かな 上村占魚 球磨
春潮の幾重にも夜に入らむとす 桂信子
春潮の広がり広がり桂浜 高澤良一 寒暑
春潮の底とどろきの淋しさよ 松本たかし
春潮の引力渚に忘れ貝 阿部みどり女
春潮の彼處に怒り此處に笑む 松本たかし
春潮の摶つとき巌の線をどる 水原秋櫻子
春潮の果なる島を近づけて 汀子
春潮の橋をわたれば御境内 五十嵐播水 埠頭
春潮の水平線を引き寄せし 西村和子 窓
春潮の汐先の色ふくみたる 行方克巳
春潮の泡網の如くなりて消ゆ 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
春潮の浮べし島の弁財天 吉屋信子
春潮の淡路の里輪ひたし見ゆ 皆吉爽雨
春潮の満ちくる波の小刻みに 上野泰 佐介
春潮の満ちて濡らせし島の道 暮石
春潮の滝なす中を渦移り 鈴鹿野風呂 浜木綿
春潮の瀬戸の大橋茜さす 富田たけ
春潮の独語きらめく窟の奥 古舘曹人 能登の蛙
春潮の白浪沖へ沖へ立つ 高木晴子 花 季
春潮の穂の生れ伸び消ゆるまで 後藤夜半
春潮の紺緊りゆく岬の日 柴田白葉女 牡 丹
春潮の綺羅にとけゆく黒き船 俵木陶光
春潮の荒らぶ鉱山町けぶるなり 石原八束 空の渚
春潮の重さの網をたぐるなり 石田勝彦 秋興
春潮の音くるぶしに響く夜 米沢恵子
春潮の鰈軽しと漁夫云へり 青葉三角草
春潮の鳴り落つ七盛塚の暮れ 石原八束 空の渚
春潮は裂け巌々は相擁す 橋本鶏二
春潮へ大きくレイを抛げにけり 佐川広治
春潮へ富士置かぬ日の続きをり 星野椿
春潮へ開けて大きな舟屋口 白井新一
春潮やあとかたもなく夜は去りし 大久保和子
春潮やきりぎしにこそ墓は建つ 佐藤三保子
春潮やのべつ鳥くる海晏寺 冬葉第一句集 吉田冬葉
春潮やひねたる蜜柑子等と喰ふ 岸田劉生
春潮やわが総身に船の汽笛(ふえ) 山口誓子(1901-94)
春潮やコーヒーミルク渦を巻く 吉原文音
春潮や七盛塚はいつ訪はむ 石原八束 空の渚
春潮や七里流れし平戸島 松藤夏山 夏山句集
春潮や三ケ月型に海女もぐる 知世子
春潮や働き蜂は余恋なく 永井龍男
春潮や南海補陀落山の下 尾崎迷堂 孤輪
春潮や君抱きしめる母になる しらいししずみ
春潮や和寇の子孫汝と我 高浜虚子
春潮や墨うすき文ふところに 宇佐美魚目
春潮や大きな崖の暮れかかる 岸本尚毅 鶏頭
春潮や岩頭聖母御細身 今瀬剛一
春潮や手をむらさきに雲丹を剥く 皆川盤水
春潮や朝の食堂とゝのひし 渡邊水巴 富士
春潮や海女の厨の酢の香して 大野林火
春潮や猫の額の漁師畑 堀之内和子
春潮や生簀曳きゆくポッポ船 篠原鳳作
春潮や石はこぶ船の他にあらず 瀧春一 菜園
春潮や紅殻ぬりの島社 西本一都
春潮や藁の戸を吊る鵜獲小屋 古舘曹人 樹下石上
春潮や蟹のランプに暮光垂れ 石原八束 空の渚
春潮や解き剖かるゝいくさふね 佐野まもる 海郷
春潮や逗子鎌倉の間に村 永井東門居
春潮や過去がほどける夢つれて 宮崎敦子
春潮や鵜をぶちまけて大きうねり 瀧春一 菜園
春潮をうちはじめたる告別譜 五十嵐播水 埠頭
春潮をへだてて飢ゑる民族よ 小泉八重子
春潮を入れて競艇場休み 星野恒彦
春潮を堰く岩門あり鵜戸といふ 藤田湘子 黒
春潮を家の畳に立ち眺む 山口誓子 遠星
春潮を引きよせ山は峙てり 池内友次郎 結婚まで
春潮を渡り来て乗る俥かな 島村元句集
春潮を潜きては鵜の乱れゆく 金箱戈止夫
春潮を灯の中にきく下関 石原八束 空の渚
春潮を眼下に源平いくさ跡 籔田 郁子
春潮を胸のたかさと思ふとき 石田郷子
春潮を見て来し胸や子を眠らす 綾子
春潮を見る頬杖を巖につき 富安風生
春潮を観る黒髪を身に絡み 石原八束
春潮を通はす鯛の生洲かな 大場白水郎 散木集
春潮を遠くに聞くは夜半の夢 八束
春潮満つ暾は岬鼻を廻り込み 日比孝子
朱欒叩けば春潮の音すなり 飯田龍太 山の影
桶に汲み春潮のなほたぎつなり 八木絵馬
椿落ち春潮ここに美しき 富安風生
*よう帝の御座船浮ぶ春の潮 寺田寅彦
いつとなく解けし纜春の潮 杉田久女
この国の押して漕ぐ櫂春の潮 中戸川朝人
ひたひたと春の潮打つ鳥居哉 河東碧梧桐
やどり木に春の潮満つ河口かな 安東次男 昨
入り船を待つ人々に春の潮 五十嵐播水 埠頭
八幡船押しあぐる春の潮かな 中勘助
岩舐めて引く力なき春の潮 小林康治 『存念』
島の子が鯨が来るぞと春の潮 前川紅楼
島尻に水尾引きそめぬ春の潮 上崎暮潮
巌が根をめぐりては逢ふ春の潮 比叡 野村泊月
手摺なき運河の柵や春の潮 上野泰 春潮
拱いて少年水夫春の潮 島村元句集
春の潮ねぢれて岩をのぼるなり 湯浅桃邑
春の潮ほんとは淋しい阿呆鳥 上原勝子
春の潮わが青春に寮歌あり 和田あきを
春の潮上げてゐるやら引いてゐるやら 高澤良一 素抱
春の潮先帝祭も近づきぬ 高濱虚子
春の潮大いに鳴つてをりにけり 楠目橙黄子 橙圃
春の潮巌にまたがるとき白し 岸風三楼 往来
春の潮押して引かるるだるま船 村上辰良
春の潮柄杓で汲んで舟洗ふ 沢木欣一
春の潮死ぬに力を貸しにけり 正木ゆう子
春の潮琉球藍を湛へたり 荒井正隆
春の潮異国の貝を置きて去る 斉藤節
春の潮船ゆきあひし箇所疼く 津田清子
春の潮赤き小貝をひた~と 四明句集 中川四明
春の潮踊るさまもて岩を越す 真砂女
春の潮麗日松に滴りぬ 内藤吐天 鳴海抄
曉や北斗を浸す春の潮 松瀬青々
橋桁に膨み上る春の潮 川口利夫
水尾のあと縢られてゆく春の潮 鈴木貞雄
水門やうたゝ小舟に春の潮 蘇山人俳句集 羅蘇山人
海人の櫂もてば鳴る春の潮 堀口星眠
海女がひらく脚にすがる子春の潮 原コウ子
渦の瀬を容れつつ春の潮あをし 篠原梵 雨
渦二百渦三百の春の潮 倉田紘文
爪置いて逃げたる蟹や春の潮 鈴木真砂女 生簀籠
狩人の眼窩に熱し春の潮 金箱戈止夫
生簀舟春の潮にのりそろひ 五十嵐播水 埠頭
癩の手を振らしむ別れ春の潮 赤松[けい]子 白毫
石段にのる事二尺春の潮 松瀬青々
紀の国の渚は長し春の潮 高浜年尾
聚ふたのしさ春の潮待ち鴎にも 加倉井秋を 『真名井』
舟屋の舟にひたひた音す春の潮 伴叩骨
花店の十歩にしぶく春の潮 飯田龍太
虚空蔵足裏に春の潮満つ 小形さとる
見下ろすや小さき湊の春の潮 小澤碧童 碧童句集
見送るや春の潮のひたひたに 夏目漱石 明治二十九年
越えかねて岩をめぐりぬ春の潮 伊丹 丈蘭
近けれど旅三時間春の潮 中村汀女
遠引いて春の潮の音もなし 皆川白陀
難破船しばらく春の潮湛ふ 津田清子
内海へ春は潮目もくきやかに 高澤良一 ぱらりとせ
以上
例句を挙げる。
あるときは春潮の鴎眞一文字 飯田蛇笏
うつむいて春潮をきく一途なる 阿部みどり女
もやひ綱捲く春潮をしたたらせ 道川虹洋
ゆるやかにのびて春潮鵜を放つ 橋本鶏二
わだの神春潮を観る磴賜ふ 西本一都 景色
仏壇や春潮を羽つよき鳥 宇佐美魚目 秋収冬蔵
傘さして春潮を見る芝生かな 楠目橙黄子 橙圃
傘させば春潮傘の内にあり 中村汀女
入り込んで春潮せめぎ合ふところ 行方克巳
囀や春潮ふかく礁めざめ 加藤楸邨
岬よく伸びて春潮たゆたへり 荒川 曉浪
島かけて満つ春潮を掌に掬ふ 右城暮石 上下
島蔭の春潮青きところかな 小杉余子 余子句選
巌の門を春潮の紋過ぎゆけり 鈴木貞雄
巌まろく老い春潮を乗せ遊ぶ 岸風三楼
幾尾根を越え春潮へ至る旅 稲畑汀子 春光
思ひあまるごと春潮のふくれ来る 菖蒲あや
思ひゐるのみ春潮の渦力 石田勝彦 秋興
恣意棄てに来し春潮のクリスタル 松本千鶴子
掌に掬う春潮のまだ冷きを 大嶽青坡
旅館洩る灯に春潮のふくらむも 三好潤子
春潮が寄す水神の石畳 松井利彦
春潮が湧く大盃に金蒔くに 古舘曹人 能登の蛙
春潮といふには沖に暗さあり 池田秀水
春潮といふには越の海荒し 下村梅子
春潮といへば必ず門司を思ふ 高濱虚子
春潮と人魚の像と睦み合ふ 天岡宇津彦
春潮にうち傾ける白帆かな 播水
春潮にたとひ艪櫂は重くとも 高浜虚子
春潮にまどろむ肘をつい外す 稲垣きくの 黄 瀬
春潮にをりをり差せる風の翳 高澤良一 ぱらりとせ
春潮に一艇一艇打たれ鳴る 高澤良一 さざなみやっこ
春潮に乗りてすぐ著く平戸かな 稲畑汀子
春潮に乗り捨舟や島の昼 高濱年尾 年尾句集
春潮に人気なき艇揺れてをり 赤尾恵以
春潮に向けて護符置く海女の小屋 長浜聰子
春潮に対し一亭椅子二脚 岸風三楼 往来
春潮に巌は浮沈を愉しめり 上田五千石(1933-97)
春潮に巨巌の隙を窓と呼ぶ 上田五千石 森林
春潮に指をぬらして人弔ふ 橋本多佳子
春潮に教へ子の住む島一つ 村松紅花
春潮に昼を眠れる舟かかる 五十嵐播水 埠頭
春潮に梳りをるものを刈る 風生
春潮に水葬了へし汽笛鳴る 千代田葛彦 旅人木
春潮に流るる藻あり矢の如く 杉田久女
春潮に浮びて険し城ケ島 秋櫻子
春潮に海女の足掻きの見えずなる 誓子
春潮に真珠筏のある目覚め 稲畑汀子 春光
春潮に窓の硝子戸罅うかす 川島彷徨子 榛の木
春潮に縺るゝ纜の一ところ 五十嵐播水 播水句集
春潮に耳だこできて潮まねき 能村研三
春潮に舵とりてうら若き眉 稲垣きくの 黄 瀬
春潮に船ぬるペンキこぼれつつ 五十嵐播水 埠頭
春潮に船傾くとみし疲れ 稲垣きくの 黄 瀬
春潮に船脚深き徐行船 右城暮石 声と声
春潮に船逆らふも亦良からん 高濱年尾 年尾句集
春潮に豊玉媛の鳥居立つ 下村梅子
春潮に身ををどらせし鴎かな 伊藤 清子
春潮に近く住みつつ行きも見ず 山口波津女 良人
春潮に音あるか玻璃開きみる 高木晴子 花 季
春潮に飽かなく莨すひをはる 横山白虹
春潮に鵜のおとなしき裏日本 秋沢猛
春潮のあらぶるきけば丘こゆる蝶のつばさもまだつよからず 坪野哲久
春潮のかけのぼらんとする崖に 山口青邨
春潮のくもり己れの眼のくもり 阿部みどり女
春潮のけづれる岩のかたちかな 楠目橙黄子 橙圃
春潮のひびきて白き月の暈 東早苗
春潮のひびける島の宮柱 深見けん二
春潮のまぶしさ飽かずまぶしめる 中村汀女
春潮のテープちぎれてなほも手をふり 山頭火
春潮の上に天刑のほろぶ島 赤松[けい]子 白毫
春潮の上に月光の量を増す 飯田龍太
春潮の今一帆を得て碧し 中村星堂
春潮の光点となり海女潜く 文挟夫佐恵 雨 月
春潮の入るを拒める島の川 右城暮石 声と声
春潮の匂ふばかりに流るる日 今井つる女
春潮の右手をさへぎる巌かな 上村占魚 球磨
春潮の幾重にも夜に入らむとす 桂信子
春潮の広がり広がり桂浜 高澤良一 寒暑
春潮の底とどろきの淋しさよ 松本たかし
春潮の引力渚に忘れ貝 阿部みどり女
春潮の彼處に怒り此處に笑む 松本たかし
春潮の摶つとき巌の線をどる 水原秋櫻子
春潮の果なる島を近づけて 汀子
春潮の橋をわたれば御境内 五十嵐播水 埠頭
春潮の水平線を引き寄せし 西村和子 窓
春潮の汐先の色ふくみたる 行方克巳
春潮の泡網の如くなりて消ゆ 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
春潮の浮べし島の弁財天 吉屋信子
春潮の淡路の里輪ひたし見ゆ 皆吉爽雨
春潮の満ちくる波の小刻みに 上野泰 佐介
春潮の満ちて濡らせし島の道 暮石
春潮の滝なす中を渦移り 鈴鹿野風呂 浜木綿
春潮の瀬戸の大橋茜さす 富田たけ
春潮の独語きらめく窟の奥 古舘曹人 能登の蛙
春潮の白浪沖へ沖へ立つ 高木晴子 花 季
春潮の穂の生れ伸び消ゆるまで 後藤夜半
春潮の紺緊りゆく岬の日 柴田白葉女 牡 丹
春潮の綺羅にとけゆく黒き船 俵木陶光
春潮の荒らぶ鉱山町けぶるなり 石原八束 空の渚
春潮の重さの網をたぐるなり 石田勝彦 秋興
春潮の音くるぶしに響く夜 米沢恵子
春潮の鰈軽しと漁夫云へり 青葉三角草
春潮の鳴り落つ七盛塚の暮れ 石原八束 空の渚
春潮は裂け巌々は相擁す 橋本鶏二
春潮へ大きくレイを抛げにけり 佐川広治
春潮へ富士置かぬ日の続きをり 星野椿
春潮へ開けて大きな舟屋口 白井新一
春潮やあとかたもなく夜は去りし 大久保和子
春潮やきりぎしにこそ墓は建つ 佐藤三保子
春潮やのべつ鳥くる海晏寺 冬葉第一句集 吉田冬葉
春潮やひねたる蜜柑子等と喰ふ 岸田劉生
春潮やわが総身に船の汽笛(ふえ) 山口誓子(1901-94)
春潮やコーヒーミルク渦を巻く 吉原文音
春潮や七盛塚はいつ訪はむ 石原八束 空の渚
春潮や七里流れし平戸島 松藤夏山 夏山句集
春潮や三ケ月型に海女もぐる 知世子
春潮や働き蜂は余恋なく 永井龍男
春潮や南海補陀落山の下 尾崎迷堂 孤輪
春潮や君抱きしめる母になる しらいししずみ
春潮や和寇の子孫汝と我 高浜虚子
春潮や墨うすき文ふところに 宇佐美魚目
春潮や大きな崖の暮れかかる 岸本尚毅 鶏頭
春潮や岩頭聖母御細身 今瀬剛一
春潮や手をむらさきに雲丹を剥く 皆川盤水
春潮や朝の食堂とゝのひし 渡邊水巴 富士
春潮や海女の厨の酢の香して 大野林火
春潮や猫の額の漁師畑 堀之内和子
春潮や生簀曳きゆくポッポ船 篠原鳳作
春潮や石はこぶ船の他にあらず 瀧春一 菜園
春潮や紅殻ぬりの島社 西本一都
春潮や藁の戸を吊る鵜獲小屋 古舘曹人 樹下石上
春潮や蟹のランプに暮光垂れ 石原八束 空の渚
春潮や解き剖かるゝいくさふね 佐野まもる 海郷
春潮や逗子鎌倉の間に村 永井東門居
春潮や過去がほどける夢つれて 宮崎敦子
春潮や鵜をぶちまけて大きうねり 瀧春一 菜園
春潮をうちはじめたる告別譜 五十嵐播水 埠頭
春潮をへだてて飢ゑる民族よ 小泉八重子
春潮を入れて競艇場休み 星野恒彦
春潮を堰く岩門あり鵜戸といふ 藤田湘子 黒
春潮を家の畳に立ち眺む 山口誓子 遠星
春潮を引きよせ山は峙てり 池内友次郎 結婚まで
春潮を渡り来て乗る俥かな 島村元句集
春潮を潜きては鵜の乱れゆく 金箱戈止夫
春潮を灯の中にきく下関 石原八束 空の渚
春潮を眼下に源平いくさ跡 籔田 郁子
春潮を胸のたかさと思ふとき 石田郷子
春潮を見て来し胸や子を眠らす 綾子
春潮を見る頬杖を巖につき 富安風生
春潮を観る黒髪を身に絡み 石原八束
春潮を通はす鯛の生洲かな 大場白水郎 散木集
春潮を遠くに聞くは夜半の夢 八束
春潮満つ暾は岬鼻を廻り込み 日比孝子
朱欒叩けば春潮の音すなり 飯田龍太 山の影
桶に汲み春潮のなほたぎつなり 八木絵馬
椿落ち春潮ここに美しき 富安風生
*よう帝の御座船浮ぶ春の潮 寺田寅彦
いつとなく解けし纜春の潮 杉田久女
この国の押して漕ぐ櫂春の潮 中戸川朝人
ひたひたと春の潮打つ鳥居哉 河東碧梧桐
やどり木に春の潮満つ河口かな 安東次男 昨
入り船を待つ人々に春の潮 五十嵐播水 埠頭
八幡船押しあぐる春の潮かな 中勘助
岩舐めて引く力なき春の潮 小林康治 『存念』
島の子が鯨が来るぞと春の潮 前川紅楼
島尻に水尾引きそめぬ春の潮 上崎暮潮
巌が根をめぐりては逢ふ春の潮 比叡 野村泊月
手摺なき運河の柵や春の潮 上野泰 春潮
拱いて少年水夫春の潮 島村元句集
春の潮ねぢれて岩をのぼるなり 湯浅桃邑
春の潮ほんとは淋しい阿呆鳥 上原勝子
春の潮わが青春に寮歌あり 和田あきを
春の潮上げてゐるやら引いてゐるやら 高澤良一 素抱
春の潮先帝祭も近づきぬ 高濱虚子
春の潮大いに鳴つてをりにけり 楠目橙黄子 橙圃
春の潮巌にまたがるとき白し 岸風三楼 往来
春の潮押して引かるるだるま船 村上辰良
春の潮柄杓で汲んで舟洗ふ 沢木欣一
春の潮死ぬに力を貸しにけり 正木ゆう子
春の潮琉球藍を湛へたり 荒井正隆
春の潮異国の貝を置きて去る 斉藤節
春の潮船ゆきあひし箇所疼く 津田清子
春の潮赤き小貝をひた~と 四明句集 中川四明
春の潮踊るさまもて岩を越す 真砂女
春の潮麗日松に滴りぬ 内藤吐天 鳴海抄
曉や北斗を浸す春の潮 松瀬青々
橋桁に膨み上る春の潮 川口利夫
水尾のあと縢られてゆく春の潮 鈴木貞雄
水門やうたゝ小舟に春の潮 蘇山人俳句集 羅蘇山人
海人の櫂もてば鳴る春の潮 堀口星眠
海女がひらく脚にすがる子春の潮 原コウ子
渦の瀬を容れつつ春の潮あをし 篠原梵 雨
渦二百渦三百の春の潮 倉田紘文
爪置いて逃げたる蟹や春の潮 鈴木真砂女 生簀籠
狩人の眼窩に熱し春の潮 金箱戈止夫
生簀舟春の潮にのりそろひ 五十嵐播水 埠頭
癩の手を振らしむ別れ春の潮 赤松[けい]子 白毫
石段にのる事二尺春の潮 松瀬青々
紀の国の渚は長し春の潮 高浜年尾
聚ふたのしさ春の潮待ち鴎にも 加倉井秋を 『真名井』
舟屋の舟にひたひた音す春の潮 伴叩骨
花店の十歩にしぶく春の潮 飯田龍太
虚空蔵足裏に春の潮満つ 小形さとる
見下ろすや小さき湊の春の潮 小澤碧童 碧童句集
見送るや春の潮のひたひたに 夏目漱石 明治二十九年
越えかねて岩をめぐりぬ春の潮 伊丹 丈蘭
近けれど旅三時間春の潮 中村汀女
遠引いて春の潮の音もなし 皆川白陀
難破船しばらく春の潮湛ふ 津田清子
内海へ春は潮目もくきやかに 高澤良一 ぱらりとせ
以上
by 575fudemakase
| 2015-04-05 00:05
| 春の季語
俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase

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[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
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いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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