伊藤白潮句集「ちろりに過ぐる」を読んで
伊藤白潮句集「ちろりに過ぐる」を読んで
角川書店 第五句集 2004・9・29
共鳴句を挙げる。
氷に上る魚に阿吽の*ひがさし来 *ひ=日+敦
鬼貫の貧に倣へや蕗の薹
飛梅や集に四季別年次別
末黒野を午前も午後も通りけり
花菜漬もらふてのひら厚く出し
蓮如忌の梅の遅速を誰しも言ふ
桜守大百姓の裔の裔
魍魎の類ひを招く桜闇
山分けにされ三人の蕨束
みぎなりたみち夕蛙くくくくく
代掻機水田上がるに手間どれり
逃水を割り込ませゐる車間距離
霾るへ薄目縄文土偶かな
接木して晩節全うするごとし
彼岸ばらひ手を出して雨確かむる
菊根分その他一切妻任せ
野火放つ大胆にかつ細心に
一雨来て末黒一枚叩きをり
まんさくや谷に日裏と日表と
四国遍路行 七句
四国二番出て田の肥の匂ひくる
横風が来て倒しけり遍路杖
きりぎしが遍路の脚をすくまする
水温む定時定刻なきくらし
種物屋前昼長けてをりしかな
八方に人病ませ春立ちにけり
梅日向一筆箋を多用せり
翁眉野火に焦がして戻りけり
書斎派の夜は居酒屋派春一番
司馬さんこと福田定一の忌なりけり
さくら餅一個強制されてをり
逃水も女も追ふに値ひせり
芽吹山とまどひ色といふべしや
モンローと呼ぶ恋猫にすり寄られ
竹の子の着く糯米を底荷とし
雹害をふむふむと聞く他はなし
腰浮かしがち花火見の船の席
ががんぼに膝慕はれて老いきれず
全くの一物仕立五月富士
夏スキーヤーの長身はにかめり
ががんぼの一肢をのこす歎異抄
肉体年齢に嘘なし昼寝覚
両隣より香水の挟みうち
実梅など拾ひ愚図愚図してゐたる
赤がちに涼し密教曼荼羅図
才覚もなく陶枕に覚めにけり
食べてから書けり唐もろこしの礼
佐渡行 三句
白靴を在島三日履き古す
螢袋しろきは院のうらみかな
ファスナーが噛む夏痩と申すべく
薄暑わが着る気に入りの鰹縞
思ひきり泣くハンカチはやはり白
簗箒へなへな集む草芥
酒に蝮封じ一件落着す
羽抜鶏とも気ごころを通じ合ふ
多少難ある手花火の一袋
影法師つぎつぎ納涼映写幕
やませ寒用なく汐木拾ふのみ
海鞘食べて縄文貌をとり戻す
船頭のはなしの中の青大将
落し文ふたつのどれに返事しよ
湯治棟六月ただにごろ寝せる
道陸神大手ひろぐる青田風
山開き神事朝日にまみれ終ふ
夏牡蠣を啜り生きの緒つながむか
ひりひりす一茶の国の夏かぶら
首の根にぶつかって来し蝉は啞
十全に梅雨明けにけり川景色
夏座敷黒潮太鼓てふを据ゑ
月蝕の黒き波寄す九十九里
相聞の香をたたしむる掌のほたる
螢見の同行増やすつもりなし
方十里領有したりはたた神
広報の隅まで読んで涼新た
にはとりの尻の押さるる葛嵐
菜虫とるドナドナドナと歌ひつつ
身に入みて覗く智恵子の通信簿
怠けよといふ旧盆の山のこゑ
この国のかたちに曲がる唐辛子
種などを採っておめおめ存らふる
中国行 十句
秋蠅の離れぬものを並べ売る
湖魚食べて毛沢東を語り秋
左右より秋山の裾なだれ入る
落胤のやうに去にけり秋の蛇
ひやひややかみさんの剃るぼんのくぼ
大言も壮語もなくて夜食の灯
極道の収めどきなり衣被
四国行 八句
川風を受くる踊らぬ阿呆とし
澄む水に影を増やせりオショロコマ
九州行 五句
金印の島の素風をはだへにす
乾く音たてて盆供の買はれけり
合掌の隙間色なき風通す
悼 樋口幸子さん 二句
病み果ての白骨の嵩鳩吹けり
もろもろを省き秋野の骨納め
序文屋と弔辞屋を兼ぬ暑の名残り
をとめごの手首のしづむ新豆腐
種を採る病む誰彼のためにかな
病室の四時(しいじ)を秋の蚊遣香
冷まじく男の水仕終らする
病む人に見す全天の鰯雲
勇猛心失くしてはゐずちゃんちゃんこ
酒なくば無口の波郷忌も近し
三寒の二温に終る身養ひ
年嵩の咳こぼしけりフラメンコ
佐渡
しぐれ虹くぐれぬほどの低さなり
萬斎を見て煤逃げの終りとす
鬼やらふこゑの素直に出てをりし
枯菊を焚く来し方の嘘の数
狐火の横一列の崩れ出す
綿虫の妻争ひといふべかり
ぼろ市に全巻揃ふ立志伝
咽喉もとに置くくつさめの不発弾
顰蹙といふ字めんだう湯冷めせる
海鼠よなまこ言ひ分あらば申せかし
冬眠の蛇や邪推の深からむ
くつさめの後の一語の鮮らしき
水洟を啜って艶歌世代たり
大くさめしゃらくせいとも聞こえたる
一石を投じて去ぬる冬の水
鮟鱇の開き直りを包丁す
五体枯れ切らず息災ともいへず
声高になる佐渡よりの初電話
去年今年ぐらつく一歯持ち越せり
みどりごも定員のうち初渡舟
寝ねを積む漂流物のやうにかな
以上
角川書店 第五句集 2004・9・29
共鳴句を挙げる。
氷に上る魚に阿吽の*ひがさし来 *ひ=日+敦
鬼貫の貧に倣へや蕗の薹
飛梅や集に四季別年次別
末黒野を午前も午後も通りけり
花菜漬もらふてのひら厚く出し
蓮如忌の梅の遅速を誰しも言ふ
桜守大百姓の裔の裔
魍魎の類ひを招く桜闇
山分けにされ三人の蕨束
みぎなりたみち夕蛙くくくくく
代掻機水田上がるに手間どれり
逃水を割り込ませゐる車間距離
霾るへ薄目縄文土偶かな
接木して晩節全うするごとし
彼岸ばらひ手を出して雨確かむる
菊根分その他一切妻任せ
野火放つ大胆にかつ細心に
一雨来て末黒一枚叩きをり
まんさくや谷に日裏と日表と
四国遍路行 七句
四国二番出て田の肥の匂ひくる
横風が来て倒しけり遍路杖
きりぎしが遍路の脚をすくまする
水温む定時定刻なきくらし
種物屋前昼長けてをりしかな
八方に人病ませ春立ちにけり
梅日向一筆箋を多用せり
翁眉野火に焦がして戻りけり
書斎派の夜は居酒屋派春一番
司馬さんこと福田定一の忌なりけり
さくら餅一個強制されてをり
逃水も女も追ふに値ひせり
芽吹山とまどひ色といふべしや
モンローと呼ぶ恋猫にすり寄られ
竹の子の着く糯米を底荷とし
雹害をふむふむと聞く他はなし
腰浮かしがち花火見の船の席
ががんぼに膝慕はれて老いきれず
全くの一物仕立五月富士
夏スキーヤーの長身はにかめり
ががんぼの一肢をのこす歎異抄
肉体年齢に嘘なし昼寝覚
両隣より香水の挟みうち
実梅など拾ひ愚図愚図してゐたる
赤がちに涼し密教曼荼羅図
才覚もなく陶枕に覚めにけり
食べてから書けり唐もろこしの礼
佐渡行 三句
白靴を在島三日履き古す
螢袋しろきは院のうらみかな
ファスナーが噛む夏痩と申すべく
薄暑わが着る気に入りの鰹縞
思ひきり泣くハンカチはやはり白
簗箒へなへな集む草芥
酒に蝮封じ一件落着す
羽抜鶏とも気ごころを通じ合ふ
多少難ある手花火の一袋
影法師つぎつぎ納涼映写幕
やませ寒用なく汐木拾ふのみ
海鞘食べて縄文貌をとり戻す
船頭のはなしの中の青大将
落し文ふたつのどれに返事しよ
湯治棟六月ただにごろ寝せる
道陸神大手ひろぐる青田風
山開き神事朝日にまみれ終ふ
夏牡蠣を啜り生きの緒つながむか
ひりひりす一茶の国の夏かぶら
首の根にぶつかって来し蝉は啞
十全に梅雨明けにけり川景色
夏座敷黒潮太鼓てふを据ゑ
月蝕の黒き波寄す九十九里
相聞の香をたたしむる掌のほたる
螢見の同行増やすつもりなし
方十里領有したりはたた神
広報の隅まで読んで涼新た
にはとりの尻の押さるる葛嵐
菜虫とるドナドナドナと歌ひつつ
身に入みて覗く智恵子の通信簿
怠けよといふ旧盆の山のこゑ
この国のかたちに曲がる唐辛子
種などを採っておめおめ存らふる
中国行 十句
秋蠅の離れぬものを並べ売る
湖魚食べて毛沢東を語り秋
左右より秋山の裾なだれ入る
落胤のやうに去にけり秋の蛇
ひやひややかみさんの剃るぼんのくぼ
大言も壮語もなくて夜食の灯
極道の収めどきなり衣被
四国行 八句
川風を受くる踊らぬ阿呆とし
澄む水に影を増やせりオショロコマ
九州行 五句
金印の島の素風をはだへにす
乾く音たてて盆供の買はれけり
合掌の隙間色なき風通す
悼 樋口幸子さん 二句
病み果ての白骨の嵩鳩吹けり
もろもろを省き秋野の骨納め
序文屋と弔辞屋を兼ぬ暑の名残り
をとめごの手首のしづむ新豆腐
種を採る病む誰彼のためにかな
病室の四時(しいじ)を秋の蚊遣香
冷まじく男の水仕終らする
病む人に見す全天の鰯雲
勇猛心失くしてはゐずちゃんちゃんこ
酒なくば無口の波郷忌も近し
三寒の二温に終る身養ひ
年嵩の咳こぼしけりフラメンコ
佐渡
しぐれ虹くぐれぬほどの低さなり
萬斎を見て煤逃げの終りとす
鬼やらふこゑの素直に出てをりし
枯菊を焚く来し方の嘘の数
狐火の横一列の崩れ出す
綿虫の妻争ひといふべかり
ぼろ市に全巻揃ふ立志伝
咽喉もとに置くくつさめの不発弾
顰蹙といふ字めんだう湯冷めせる
海鼠よなまこ言ひ分あらば申せかし
冬眠の蛇や邪推の深からむ
くつさめの後の一語の鮮らしき
水洟を啜って艶歌世代たり
大くさめしゃらくせいとも聞こえたる
一石を投じて去ぬる冬の水
鮟鱇の開き直りを包丁す
五体枯れ切らず息災ともいへず
声高になる佐渡よりの初電話
去年今年ぐらつく一歯持ち越せり
みどりごも定員のうち初渡舟
寝ねを積む漂流物のやうにかな
以上
by 575fudemakase
| 2015-02-18 17:21
| 句集評など

俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase
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▽ある季語の例句を調べる▽
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
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《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
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[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
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[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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