2015年 6月 ねずみのこまくら句会の諸句(コメント付)
2015年 6月 ねずみのこまくら句会の諸句(コメント付)
予選でザッと句を抜いてみたら、下記の如くとなった。
3田園に水迸る夏の来ぬ
5真紅の薔薇選ぶレースの黒手套
10梅雨寒や余白ばかりの日程表
13掃く人に木を剪る人に新樹光
何でもない光景だが、斬新な光景である
18山寺の社務所に匂ふ蚊遣香
山寺の社務所は確かに閑散としていますネ。人肌に蚊が寄って来そうなところ。
20万緑や齢忘るる師との旅
俳句をやってて良かったが聞こえて来そうな一句
21密教の百坊支へ山新樹
山岳の空気感が手に取るようです
24薫風や十分待てば次のバス
七五の叙述の軽さもときに俳句にとって必要。所詮レトリックなんていう
ものはあざといもの。
26三伏の初伏大山詣でかな
27茅花の穂風がつまんでゆきにけり
28卯波寄す浜に砂鉄の鱗紋
32夏ひばり麦より立ちて麦の色
42田植先ず泥田に立つを教へられ
観光客かなんかではなかろうか?泥田にたつことすら難しい
52泥鯰水が大きく動きけり
カイボリ等やったことある経験者なら納得と言ったところ
58花菖蒲端然としてしどけなく
確かに花菖蒲は遠望すれば端然、しかしながら、近寄って見れば、仔細は
しどけなくであろう。この矛盾が同居しているところがミソ。
59塗香して善男善女となり涼し
61紫陽花の先ず下闇を育てをり
〝先ず下闇を育て〟が俳句の手練手管だ
70鷭の子の親の水輪にもどりけり
80青葉雨病児の描ける電車かな
94鯵刺の離宮の池に眞つしぐら
95蟻地獄に蟻を落して逃ぐる子等
正に傍観を決め込む子供たちを描いた
97奇兵隊決起の寺の大山蟻
98本を閉づ眼鏡を措けば夏暁たり
100宮址失せ茅花流しの野となれり
108姉妹都市駅前アメリカ花水木
垂れ幔幕か何かに提携する米国の都市名か何かが書いてあるのだろう。
110亡き夫の雲隠れとも青葉木菟
119ザリガニを捕らえんとする半ズボン
127生まれたる蜻蛉の影の地に濃かり
132鶯の声ゆるぎなく藪の奥
鶯の居る位置が藪であるからこそ〝ゆるぎなく〟なのであろう。
133新緑やはるか向こうの開口部
辞書で開口部を牽くと 建築用語もしくは人体用語とある。当句の場合、むろん建築用語だろう。建物の一部位。
138また同じやうな本買ひ梅雨じめり
142さくらんぼ病みて百八十度の世界
入院なんて一度もしたことないと言う人の百八十度なのであろう
そう言えば 師林火に 病みて知る母娘の世界とかなんとか言う句あったような?
144尺取や身ほとりひとりづつ逝きぬ
146無口なるふたりの前のラムネ壜
148天日を浴び総身の滝の銀
152青田風蛇は頭を持ち上げて
頭のところ、頭(かしら)とルビを振ったほうがよいと思う
153明易し言の葉もたぬ夢の母
無言だとか言葉だとか言っちゃったら元も子もない。言の葉という字ヅラの効用を思うべきだ。
156クサフグの放卵射精暮れなづむ
草河豚を句にするだけで相当なお方。ゲテモノを句材にするとは…
かってクサフグを味噌汁に入れて食したことがあるがこれまた相当な
味であった。
158読みさしの書をつみあげて旱とす
一寸ひねった旱の叙法である
161万緑や師の健脚につきし日も
165ナイターのファウルボールが星の間
なるほど 現代的な把握だ。
167ミステリのクライマックス紙魚歩く
古本愛好者にはありそうな光景
168新緑をバネに翔つ鳥尿(しと)一滴
尿(しと)一滴は自然な行為、即ちよく見る光景、それに対し
バネに翔つ鳥は俳句的表現だ。
172鯵刺の脚に潮の満ちて来し
185ちちははと夫ゐる気配田草取る
ちちははと夫ゐる気配とは要するに人気(ひとけ)のこと。
ここで作者はその人気を〝ちちははと夫〟に限定するのだ。
187牛蛙鳴けど姿を追ひもせず
姿を追ひもせずが作者の主張するところ。そんな齢とおもわせるところがうまい
190尺取の尺とる山の案内板
197筍を割ってまるまる桃太郎
桃から生まれた桃太郎。竹から生まれたかぐや姫。さて掲句はそれをゴッチャにしたか?
202豆ご飯ふっくり炊けて独りの餉
203青梅のまた落つる音母が家
生家の最晩年が如実
207アマリリス本音を表沙汰にして
アマリリスに、作者自身のその時の心の裡をぶっつけたか?
209若葉映ゆスケッチブックまだ真白
216ちゃんづけで呼ばる神鶏えごの花
これで神鶏もずいぶんと俗っぽくなる
221欅一樹広き影置く涼しさよ
223花栗を鼻が探してゐたるかな
これを漫画で描いたなら、小さな花栗を巨大な鼻が嗅ぎ回っている構図。
226一鳥も啼かず大滝響き落つ
228雨脚の見えぬ高階梅雨見つむ
以上
予選でザッと句を抜いてみたら、下記の如くとなった。
3田園に水迸る夏の来ぬ
5真紅の薔薇選ぶレースの黒手套
10梅雨寒や余白ばかりの日程表
13掃く人に木を剪る人に新樹光
何でもない光景だが、斬新な光景である
18山寺の社務所に匂ふ蚊遣香
山寺の社務所は確かに閑散としていますネ。人肌に蚊が寄って来そうなところ。
20万緑や齢忘るる師との旅
俳句をやってて良かったが聞こえて来そうな一句
21密教の百坊支へ山新樹
山岳の空気感が手に取るようです
24薫風や十分待てば次のバス
七五の叙述の軽さもときに俳句にとって必要。所詮レトリックなんていう
ものはあざといもの。
26三伏の初伏大山詣でかな
27茅花の穂風がつまんでゆきにけり
28卯波寄す浜に砂鉄の鱗紋
32夏ひばり麦より立ちて麦の色
42田植先ず泥田に立つを教へられ
観光客かなんかではなかろうか?泥田にたつことすら難しい
52泥鯰水が大きく動きけり
カイボリ等やったことある経験者なら納得と言ったところ
58花菖蒲端然としてしどけなく
確かに花菖蒲は遠望すれば端然、しかしながら、近寄って見れば、仔細は
しどけなくであろう。この矛盾が同居しているところがミソ。
59塗香して善男善女となり涼し
61紫陽花の先ず下闇を育てをり
〝先ず下闇を育て〟が俳句の手練手管だ
70鷭の子の親の水輪にもどりけり
80青葉雨病児の描ける電車かな
94鯵刺の離宮の池に眞つしぐら
95蟻地獄に蟻を落して逃ぐる子等
正に傍観を決め込む子供たちを描いた
97奇兵隊決起の寺の大山蟻
98本を閉づ眼鏡を措けば夏暁たり
100宮址失せ茅花流しの野となれり
108姉妹都市駅前アメリカ花水木
垂れ幔幕か何かに提携する米国の都市名か何かが書いてあるのだろう。
110亡き夫の雲隠れとも青葉木菟
119ザリガニを捕らえんとする半ズボン
127生まれたる蜻蛉の影の地に濃かり
132鶯の声ゆるぎなく藪の奥
鶯の居る位置が藪であるからこそ〝ゆるぎなく〟なのであろう。
133新緑やはるか向こうの開口部
辞書で開口部を牽くと 建築用語もしくは人体用語とある。当句の場合、むろん建築用語だろう。建物の一部位。
138また同じやうな本買ひ梅雨じめり
142さくらんぼ病みて百八十度の世界
入院なんて一度もしたことないと言う人の百八十度なのであろう
そう言えば 師林火に 病みて知る母娘の世界とかなんとか言う句あったような?
144尺取や身ほとりひとりづつ逝きぬ
146無口なるふたりの前のラムネ壜
148天日を浴び総身の滝の銀
152青田風蛇は頭を持ち上げて
頭のところ、頭(かしら)とルビを振ったほうがよいと思う
153明易し言の葉もたぬ夢の母
無言だとか言葉だとか言っちゃったら元も子もない。言の葉という字ヅラの効用を思うべきだ。
156クサフグの放卵射精暮れなづむ
草河豚を句にするだけで相当なお方。ゲテモノを句材にするとは…
かってクサフグを味噌汁に入れて食したことがあるがこれまた相当な
味であった。
158読みさしの書をつみあげて旱とす
一寸ひねった旱の叙法である
161万緑や師の健脚につきし日も
165ナイターのファウルボールが星の間
なるほど 現代的な把握だ。
167ミステリのクライマックス紙魚歩く
古本愛好者にはありそうな光景
168新緑をバネに翔つ鳥尿(しと)一滴
尿(しと)一滴は自然な行為、即ちよく見る光景、それに対し
バネに翔つ鳥は俳句的表現だ。
172鯵刺の脚に潮の満ちて来し
185ちちははと夫ゐる気配田草取る
ちちははと夫ゐる気配とは要するに人気(ひとけ)のこと。
ここで作者はその人気を〝ちちははと夫〟に限定するのだ。
187牛蛙鳴けど姿を追ひもせず
姿を追ひもせずが作者の主張するところ。そんな齢とおもわせるところがうまい
190尺取の尺とる山の案内板
197筍を割ってまるまる桃太郎
桃から生まれた桃太郎。竹から生まれたかぐや姫。さて掲句はそれをゴッチャにしたか?
202豆ご飯ふっくり炊けて独りの餉
203青梅のまた落つる音母が家
生家の最晩年が如実
207アマリリス本音を表沙汰にして
アマリリスに、作者自身のその時の心の裡をぶっつけたか?
209若葉映ゆスケッチブックまだ真白
216ちゃんづけで呼ばる神鶏えごの花
これで神鶏もずいぶんと俗っぽくなる
221欅一樹広き影置く涼しさよ
223花栗を鼻が探してゐたるかな
これを漫画で描いたなら、小さな花栗を巨大な鼻が嗅ぎ回っている構図。
226一鳥も啼かず大滝響き落つ
228雨脚の見えぬ高階梅雨見つむ
以上
by 575fudemakase
| 2015-06-24 03:18
| 句評など
俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase
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▽ある季語の例句を調べる▽
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
《方法1》 残暑 の例句を調べる
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次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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