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2015年 7月 ねずみのこまくら句会の諸句(コメント付)

2015年 7月 ねずみのこまくら句会の諸句(コメント付)

予選でザッと句を抜いてみたら、下記の如くとなった。

3天明の飢饉の碑文楊梅落つ
楊梅落つのあの殺伐は飢饉のそれだ
5頭の中を浚つてほしき青嵐
「頭の中を」ではなく「頭の中も」の方がよいと思う。
溝浚いという季語があるが、当句はこれに青嵐という季語を加えて二つの季語を盛り込んだ欲張った仕立ての俳句
6ねぢ花に捩じる力の溢れをり
「捩じる力」という通常は視覚的には見えない抽象概念を、当句は 「見える」化した。
7二番子の孵りて忙し親つばめ
8等間隔隊列なして群れ川鵜
11葉隠れに目つむる飼はれ木葉木莵
12黒蝶の臭木の花に無我夢中
確かにあの縺れようは無我夢中
15骨董市亜米利加ガラスの香水瓶
17雀の子尻尾立て立て餌をねだる
尻尾立て立てがよい見立てだ
18年寄の出番なかりし庭花火
なにやかや期待されない老人というシロモノの感慨が出ていていい。
20荒梅雨や薄ぼんやりと駅灯る
こうゆう梅雨の詠み方があってもいい
21今生の見納めのやう夏至没日
22秀吉の残念石や梅雨しとど
残念石という語彙についつい引き込まれる
26桜の実聖天堂に燭ひとつ
32夏座敷渓谷の風通り抜け
34明易や勿体なくて寝て居れぬ
七五は老人の通念であろう
36巌伝ふ栗鼠万緑の谷に消ゆ
42十日振り晴れて墓参や百日紅 (松崎先生)
44蛍飛び闇新しくなりにけり
46吊り忍福助足袋を売りし店
「忍」という漢字と「福助」という漢字が微妙に呼び合ふ
52儀仗兵一糸乱れずリラの風
ハイカラな一景
53行々子小止みの雨に葦移り
55七夕や短冊の字の踊りゐし
まさか風に短冊の文字が躍った訳でもあるまい。
バタバタと書いてソソクサと吊るした様がありあり。
56耳と眼を塞ぎ唄ふ児雷激し
たしかに児童はこんなことをする。めんこいことだ。
57梅酒壜氷砂糖の角の取れ
「角の取れ」とはこなれた文体だ
61枝折戸が好き竹節虫と蝸牛
竹節虫は七節虫とも書く。句意はなるほどである。小生にも次句がある。
七節蟲の単なる棒が歩き出す
63御田植祭見目良き子らの手を泥に
64つくづく見る仏法僧の長睫毛
66隣り合ふ金魚田金魚色違へ
67群れ泳ぐ金魚に水の盛り上がり
金魚でなく鯉でもよいがそれぞれに趣があろう
68熱湯に布巾を浸す梅雨の底
昔の人はよくこんなことをしたものだ
70山百合や峡かけのぼる日照雨
雨脚という言葉があるが当句はそれを感じさせてくれる
72蚊の姥と脚の弱さを嘆き合う
「脚の弱さ」というところ一寸間延びする。「足弱」とやりたいところだが、表現どうつづめるか?
73掛香や男机のインテリア
74また一人海へ入りゆく遠泳子
「また」がうまい
76溶接の火花の蒼き初伏かな
79かけつぎ屋足踏みミシンの音涼し
かけつぎ屋 または かけはぎ屋とも言うらしい。
昭和の言葉である。平成の俳人には通じない
83昼寝児の一歳にして大の字に
七五につき、ごもっともと言いたい
84骨董市古伊万里皿を歩く蟻
市古伊万里の絵柄というものがあって活きてくるのだろう
91大巌に根を張る松の繁りかな
95森深く入れば水の香銀龍草
96これはこれは越境茗荷に子が幾つ(隣家より)
まるで良寛さんがお作りになった句のよう
97プール疲れに瞼くっつく一年生
「瞼くっつく」とは一年生の姿態をよく観察し尽くした一句
98植田道遅れがちなる路線バス
99アロハ着る勇気なきまま一生涯
どの老人もこんなところ
103冷奴忘れるという術もあり
ときに、「冷奴」にこんな思いを寄せることもあろう
104働き蜂ぐるぐる回る花の上
よくこんな仕草目にみる
106桜桃忌独り降り立つ津軽線
108全身を振りて金魚の子の逃ぐる
110一匹となりし金魚の悠々と
この「悠々と」には、金魚に仮託された作者の独自の思いというものが感じられる
111聖堂の方より来たる夏の蝶
一種、擬人化の一句。聖堂の方より来たのは聖人さんか何かであろう
112蛍狩りちょっとこの世を抜け出して
表現が一寸大仰と言われる方もあろうが、これはこれで一つの見方ではあろう
120梔子のおほかたは色保てざる
まァこまかいところを見ていること!
126駐在所椎の落ち葉の吹き溜まり
私の知っている駐在所は楊梅の実がボトボト落ちているような所か当句のようなところ
127扇風機子の来る度に仕舞はるる
親心 ジジババ心というものであろう
131つくばいの水飲む山雀・四十雀
140猛暑急このうへショートケーキなんぞ
短歌の下部がちょん切られたようなシロモノ。
このぶった切れた文体が頗る面白い
142をさな児に如何に伝へむ金魚の死
143焼き茄子に息子所望の自前味噌
世の常を描いた一句
146轟々と時には透けて滝の落つ
濁る滝、澄む滝 時間の経移をよく観察している
147とうすみとんぼ瀞の碧(みどり)に紛れけり
148脱毛の尼ともならで衣更ふ
抗ガン剤か何かのんでおられるのかこの自嘲は読み手として痛切なるものを感じる。ご自愛願うこと切である。
153古茶淹れて事なきひと日良しとせり
小品としてまとまっている
160満開をいつも強ひられ水中花
こんな見方もあるのだ!
163夏掛けにそっとしておく男かな
まあ面白いところを詠んだ
164梅雨深しセールスマンの黒鞄
言いたいことを隠して反応を見ているような一句。
読み手の解釈を試されているような一句。
笑うセールスマンの喪黒福造を連想した
167叱られてすぐにケロリと日焼けの子
文体少しおかしい。正確には
叱られしことをケロリと日焼けの子 だろう
172大空を翻したる夏燕
五七が多少ユニーク
173子らに描く大き花マル雲の峰
177かき氷むくむく育つ沖の雲
かき氷の山盛りと雲の山盛り。相似形を二つ並べた
179初蝉のつぎの声待つ建長寺
固有名詞建長寺が効いている。「つぎの声待つ」が又いい
189夏河原径あるやうなないやうな
確かにこんな感じ

以上
by 575fudemakase | 2015-07-18 06:26 | その他


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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