春一番 の俳句
春一番 の俳句
春一番
例句を挙げる。
およぎ見ゆ春一番の野の欅 皆吉爽雨 泉声
かうしてはおられぬ性分春一番 高澤良一 素抱
まつさきに花舗の戸叩く春一番 満田玲子
ものを言って春一番に吹き飛ばされ 前田吐実男
バスを待つ春一番を背なにして 小泉はつゑ
ラヴチエアのラヴおそろしき春一番 加藤山査子
句敵の句が口に出て春一番 嶋田麻紀
呼ぶ声も吹き散る島の春一番 中村苑子
呼鈴は空耳なりし春一番 田中湖葉
和解せし顔はゆがめり春一番 佐藤文子
声散つて春一番の雀たち 清水基吉
山峡に星を片寄せ春一番 戸恒東人
島の鳥船に来てをり春一番 中戸川朝人
巻貝の奥に目覚めし春一番 佐藤成之
揺れ熄まぬ春一番の椿山 石田あき子 見舞籠
新聞に石のせて売る春一番 棚山波朗
春一番うめきもだゆる波の面 壇一雄
春一番からくり時計踊りだす 長谷 英夫
春一番どすんと屋根にぶつかりぬ 滝沢伊代次
春一番はたりと止みて夕方に 岩田由美
春一番ひきゐし狆を抱きあぐる 及川貞
春一番ひとつの出会ひ消へゆけり 田波富布
春一番やみて野に落つ月黄なり 亀井糸游
春一番を来し顔なればまとまらず 伊藤白潮
春一番プール底より鴉たつ 藤野基一
春一番二番とつづき週終る 杉本寛
春一番二番三番涅槃西風 清水基吉
春一番人犬鴉田に出でぬ 秋澤猛
春一番仏間ひととき魂あそぶ 井上雪
春一番何かが変はる変はらねば 市ヶ谷洋子
春一番借りし予言書積み置けば 堀口星眠 営巣期
春一番写楽の顔で吹かれをり 日下部宵三
春一番函屋は紙の香のなかに 張田裕恵
春一番友の肺野の影如何に 堀口星眠 営巣期
春一番吹きいる朝覚めきらぬ體の部分が生卵を飲む 今井恵子
春一番吹きをさまりて夜の卓 角川春樹
春一番地鶏の卵まだぬくき 小林紀代子
春一番奥の歯に蓄む貝の芯 角川源義
春一番婚後同居の荷物着く 小林勇二
春一番山を過ぎゆく山の音 藤原滋章
春一番島に神父のおくれ着く 中尾杏子
春一番帆船無風の壜の中 河村 昇
春一番心の隅に火を点ず 相馬遷子 山河
春一番揃つて禅僧剃髪式 舘 柳歩
春一番木々は根を締めおのれを鳴らす 楠本憲吉
春一番来し顔なればまとまらず 伊藤白潮
春一番柩ぐらりとかつぎ出す 宮下翠舟
春一番校庭走る砂けむり 鈴木洋子
春一番梢明りを濃くし去る 月鈴子
春一番椿の首を狩りに来る 川崎益太郎
春一番歌ひ出したる地球かな 仙田洋子 雲は王冠
春一番武蔵野の池波あげて 秋櫻子
春一番死神もまた矢を放つ 古賀まり子 緑の野以後
春一番深入りしたる晩年よ 殿村菟絲子 『晩緑』
春一番火伏の神の札を受く 田代登志
春一番煎薬の火を細めたり 石川桂郎 四温
春一番牛の匂の急患者 三谷和子
春一番犬亡き小舎を飛ばしけり 熊田 鹿石
春一番狂へりわが胃また狂ふ 相馬遷子 山河
春一番玩具の猿が鼓打つ 影島智子
春一番珊瑚の海をゆさぶりて 稲荷島人
春一番田の真中に熔岩坐り 川村紫陽
春一番真夜に落せる雷ひとつ つる子
春一番真間の古江の浪立てる 石井桐陰
春一番砂ざらざらと家を責め 福田甲子雄
春一番空想二転三転す 北村美都子
春一番窓のガラスが右に鳴り 前田保子
春一番端山吹きをり死者の飯 堀口星眠 営巣期
春一番競馬新聞空を行く 水原春郎
春一番縁の下より矮鶏のとき 半谷智乗
春一番聖母は御子を抱き給ふ 堀口星眠
春一番藁塚押し力だめしかな 太田土男
春一番藪つぎつぎに鳥放つ 高井北杜
春一番角を踏ん張る栄螺殻 百合山羽公 寒雁
春一番言霊のごと駆け抜けし 原 裕
春一番貝殻館の貝ざわめく きくちつねこ
春一番越中の野に墓と蔵と 石原透
春一番透明にしてつよき酒 小澤實
春一番通る大敷網の海 芳野正王
春一番過ぎし凪なり壱岐対馬 龍頭美紀子
春一番過ぎて身痩せし蟹を食ふ 西村公鳳
春一番道草の子を追ひたつる 上田 春日
春一番野壺めざめて方と円 百合山羽公 寒雁
春一番関東平野ゆきどまり 岡田史乃
春一番雷門をくぐりけり 村岡 悠
春一番電話の父の「いま成田」 辻美奈子
春一番霧島山を袈裟切りに 遠井俊二
春一番鞄の軽き日なりけり 蘭草 慶子
春一番顔あげて濤押し戻す 原裕 葦牙
春一番髪を攫つて鞭となす 佐藤美恵子
春一番髪逆立てゝ峡をゆく 青砂
春一番鶏駈け鶏にぶつかれり 達弥
春一番黒猫縁に耳立てゝ 正風子
春二番一番よりも激しかり 牧野寥々
春二番三番友ら病みにけり 堀口星眠 営巣期
春二番三番四番五番馬鹿 三橋敏雄 畳の上
春二番退院の母背負はれて 古賀まり子 緑の野以後
松に鳴り樫に響けり春一番 川村紫陽
死ぬがよいそれがいたはり春一番 鳥居おさむ
洗ひ機に人参踊り春一番 小出秋光
畦越ゆる春一番の水ゆたか 下鉢清子
白波の浮燈台や春一番 岡本静子
石蓴打ち上げて通りし春一番 暮石
磯の鵜や春一番の波しぶき 弘
紅梅の春一番にとぶ火かも 皆吉爽雨
美酒を得て春一番を忘じけり 岸本尚毅 舜
胸ぐらに母受けとむる春一番 岸田稚魚 筍流し
若者に古着が流行る春一番 有馬朗人
葬儀屋を花であしらう春一番 仁平勝 東京物語
農機具の納屋の戸敲く春一番 井内簾水
郵便帽の下に目と耳春一番 磯貝碧蹄館
酒呑んで春三番を過ごしけり 宮田正和
鉛筆に力あまれり春一番 米澤吾亦紅
鐘楼の幣踊らせて春一番 安斉君子
間歇泉春一番をつらぬけり 穐好樹菟男
雀らも春一番にのりて迅し 皆吉爽雨
雑貨屋に吊るもの多し春一番 檜 紀代
風呂敷で運ぶ地球儀春一番 池田澄子
鰻焼く春一番の白波に 岸本尚毅 鶏頭
鳩のせて春一番の隅田川 藤岡筑邨
春一が蒲団落としてゆきにけり 高澤良一 さざなみやつこ
春一番 補遺
おんおんと春三番の疾風雲 石塚友二 磊[カイ]集
ひとところ水の凹みや春一番 桂信子 「草影」以後
ふるさとの春一番を知らざりし 右城暮石 散歩圏 補遺 頑張れよ
不意討にして真向の春一番 岸田稚魚 紅葉山
乙訓を春一番の走りぬけ 阿波野青畝
再会を果す春一番のあと 後藤比奈夫
凶暴の春一番を人ゆるす 山口青邨
匕首めくことば投げるひとあり春二番 楠本憲吉 方壺集
夜の内に春一番の通りたり 右城暮石 天水
屋上苑春一番の雨溜る 右城暮石 句集外 昭和四十二年
春一も春二も通過座禅草 阿波野青畝
春一や列島藻塩まぶれとす 阿波野青畝
春一番 万国旗靡くわ もつれるわ 伊丹三樹彦
春一番、松の雪鶴となつて飛び去る 荻原井泉水
春一番ありしと一人言ひ張れり 右城暮石 散歩圏
春一番が吹くこども家の内に吹かれたり 中川一碧樓
春一番とはいえ 何ぞ 寝乱れ髪 伊丹三樹彦
春一番なだめ塵紙交換車 百合山羽公 樂土以後
春一番は海のかたよりうちの竹林 荻原井泉水
春一番を来し顔なればまとまらず 伊藤白潮
春一番大*えいの背をもてあます 赤尾兜子 玄玄
春一番奥の歯に蓄む貝の芯 角川源義
春一番対馬の句碑を祝ぎにけり 阿波野青畝
春一番小蟹は渚走りけり 藤田湘子 神楽
春一番心の隅に火を点ず 相馬遷子 山河
春一番懺悔室には余韻ほど 鷹羽狩行
春一番戸を開けきりの閻魔堂 右城暮石 天水
春一番武蔵野の池波あげて 水原秋櫻子 緑雲
春一番煎薬の火を細めたり 石川桂郎 四温
春一番牡丹の菰を掻つさらふ 安住敦
春一番狂へりわが胃また狂ふ 相馬遷子 山河
春一番猫の鞘当ててふ声も 林翔
春一番目刺買ふ間を待たされて 安住敦
春一番禁猟の鴨平気なり 百合山羽公 樂土以後
春一番筑紫乙女は幻めく 楠本憲吉 孤客
春一番老の強気を叱しけり 能村登四郎
春一番虚子の生れし日なりけり 藤田湘子 神楽
春一番見かけ倒しも藝のうち 佐藤鬼房
春一番角を踏ん張る栄螺殻 百合山羽公 寒雁
春一番言霊のごと駈け抜けし 原裕 青垣
春一番野壺めざめて方と円 百合山羽公 寒雁
春一番鏡の池の日をとばす 山口青邨
春一番顔あげて濤押し戻す 原裕 葦牙
春一番髪に真砂填め磯魚焼く 角川源義
春一番黒加へ鯉勢はしめ 大野林火 月魄集 昭和五十六年
春二番三番四番五番馬鹿 三橋敏雄
更ラ舟に春一番の砂すこし 岡本眸
月丸し春一番のあとに出て 阿波野青畝
朔太郎春一番の砂ざらざら 平畑静塔
歩道橋春一番の水溜る 右城暮石 句集外 昭和五十二年
浅草は 風鐸さわぐ 春一番 伊丹三樹彦
湯豆腐の葱やや固き春一番 鈴木真砂女 都鳥
熊のいない山のあなたの春一番 金子兜太
石蓴打ち上げて通りし春一番 右城暮石 虻峠
竹は竹どうし寄りあひ春一番 鷹羽狩行
竹山は寺の持ち山春二番 亭午 星野麥丘人
胸ぐらに母受けとむる春一番 岸田稚魚 筍流し
若者に古着が流行る春一番 有馬朗人 耳順
蛸壺の小貝をよろひ春一番 鷹羽狩行
雨雲を掃き朝翔けの春二番 佐藤鬼房
風神の春一番をほどきけり 上田五千石『田園』補遺
飲むか戻るか春一番に艶めく灯 楠本憲吉 方壺集
[追記]
上例に見られるように、春一番の傍題に〝春一〟があるがその使用例は少ない。
辛うじて阿波野青畝の二句が観察されるのみ。もっと作例されるべきだ。
春一も春二も通過座禅草 阿波野青畝
春一や列島藻塩まぶれとす 阿波野青畝
小生句〈春一が蒲団落としてゆきにけり〉は、近所の悪ガキ 春一がしょうがないことに
布団を落としまくっていると興じた。
他で面白いのは、三橋敏雄の〈春二番三番四番五番馬鹿 〉。
敢えて、総領の甚六に当たる〝春一〟を外しているところであろう。
上田敏訳 カール・ブッセの「山のあなた」の一節を引用し嘯いた兜太句
〈熊のいない山のあなたの春一番〉も劣らず面白い。
山のあなたの 空遠く「幸」住むと 人のいふ 噫われひとと 尋めゆきて涙さしぐみ かへりきぬ………………
以上
春一番
例句を挙げる。
およぎ見ゆ春一番の野の欅 皆吉爽雨 泉声
かうしてはおられぬ性分春一番 高澤良一 素抱
まつさきに花舗の戸叩く春一番 満田玲子
ものを言って春一番に吹き飛ばされ 前田吐実男
バスを待つ春一番を背なにして 小泉はつゑ
ラヴチエアのラヴおそろしき春一番 加藤山査子
句敵の句が口に出て春一番 嶋田麻紀
呼ぶ声も吹き散る島の春一番 中村苑子
呼鈴は空耳なりし春一番 田中湖葉
和解せし顔はゆがめり春一番 佐藤文子
声散つて春一番の雀たち 清水基吉
山峡に星を片寄せ春一番 戸恒東人
島の鳥船に来てをり春一番 中戸川朝人
巻貝の奥に目覚めし春一番 佐藤成之
揺れ熄まぬ春一番の椿山 石田あき子 見舞籠
新聞に石のせて売る春一番 棚山波朗
春一番うめきもだゆる波の面 壇一雄
春一番からくり時計踊りだす 長谷 英夫
春一番どすんと屋根にぶつかりぬ 滝沢伊代次
春一番はたりと止みて夕方に 岩田由美
春一番ひきゐし狆を抱きあぐる 及川貞
春一番ひとつの出会ひ消へゆけり 田波富布
春一番やみて野に落つ月黄なり 亀井糸游
春一番を来し顔なればまとまらず 伊藤白潮
春一番プール底より鴉たつ 藤野基一
春一番二番とつづき週終る 杉本寛
春一番二番三番涅槃西風 清水基吉
春一番人犬鴉田に出でぬ 秋澤猛
春一番仏間ひととき魂あそぶ 井上雪
春一番何かが変はる変はらねば 市ヶ谷洋子
春一番借りし予言書積み置けば 堀口星眠 営巣期
春一番写楽の顔で吹かれをり 日下部宵三
春一番函屋は紙の香のなかに 張田裕恵
春一番友の肺野の影如何に 堀口星眠 営巣期
春一番吹きいる朝覚めきらぬ體の部分が生卵を飲む 今井恵子
春一番吹きをさまりて夜の卓 角川春樹
春一番地鶏の卵まだぬくき 小林紀代子
春一番奥の歯に蓄む貝の芯 角川源義
春一番婚後同居の荷物着く 小林勇二
春一番山を過ぎゆく山の音 藤原滋章
春一番島に神父のおくれ着く 中尾杏子
春一番帆船無風の壜の中 河村 昇
春一番心の隅に火を点ず 相馬遷子 山河
春一番揃つて禅僧剃髪式 舘 柳歩
春一番木々は根を締めおのれを鳴らす 楠本憲吉
春一番来し顔なればまとまらず 伊藤白潮
春一番柩ぐらりとかつぎ出す 宮下翠舟
春一番校庭走る砂けむり 鈴木洋子
春一番梢明りを濃くし去る 月鈴子
春一番椿の首を狩りに来る 川崎益太郎
春一番歌ひ出したる地球かな 仙田洋子 雲は王冠
春一番武蔵野の池波あげて 秋櫻子
春一番死神もまた矢を放つ 古賀まり子 緑の野以後
春一番深入りしたる晩年よ 殿村菟絲子 『晩緑』
春一番火伏の神の札を受く 田代登志
春一番煎薬の火を細めたり 石川桂郎 四温
春一番牛の匂の急患者 三谷和子
春一番犬亡き小舎を飛ばしけり 熊田 鹿石
春一番狂へりわが胃また狂ふ 相馬遷子 山河
春一番玩具の猿が鼓打つ 影島智子
春一番珊瑚の海をゆさぶりて 稲荷島人
春一番田の真中に熔岩坐り 川村紫陽
春一番真夜に落せる雷ひとつ つる子
春一番真間の古江の浪立てる 石井桐陰
春一番砂ざらざらと家を責め 福田甲子雄
春一番空想二転三転す 北村美都子
春一番窓のガラスが右に鳴り 前田保子
春一番端山吹きをり死者の飯 堀口星眠 営巣期
春一番競馬新聞空を行く 水原春郎
春一番縁の下より矮鶏のとき 半谷智乗
春一番聖母は御子を抱き給ふ 堀口星眠
春一番藁塚押し力だめしかな 太田土男
春一番藪つぎつぎに鳥放つ 高井北杜
春一番角を踏ん張る栄螺殻 百合山羽公 寒雁
春一番言霊のごと駆け抜けし 原 裕
春一番貝殻館の貝ざわめく きくちつねこ
春一番越中の野に墓と蔵と 石原透
春一番透明にしてつよき酒 小澤實
春一番通る大敷網の海 芳野正王
春一番過ぎし凪なり壱岐対馬 龍頭美紀子
春一番過ぎて身痩せし蟹を食ふ 西村公鳳
春一番道草の子を追ひたつる 上田 春日
春一番野壺めざめて方と円 百合山羽公 寒雁
春一番関東平野ゆきどまり 岡田史乃
春一番雷門をくぐりけり 村岡 悠
春一番電話の父の「いま成田」 辻美奈子
春一番霧島山を袈裟切りに 遠井俊二
春一番鞄の軽き日なりけり 蘭草 慶子
春一番顔あげて濤押し戻す 原裕 葦牙
春一番髪を攫つて鞭となす 佐藤美恵子
春一番髪逆立てゝ峡をゆく 青砂
春一番鶏駈け鶏にぶつかれり 達弥
春一番黒猫縁に耳立てゝ 正風子
春二番一番よりも激しかり 牧野寥々
春二番三番友ら病みにけり 堀口星眠 営巣期
春二番三番四番五番馬鹿 三橋敏雄 畳の上
春二番退院の母背負はれて 古賀まり子 緑の野以後
松に鳴り樫に響けり春一番 川村紫陽
死ぬがよいそれがいたはり春一番 鳥居おさむ
洗ひ機に人参踊り春一番 小出秋光
畦越ゆる春一番の水ゆたか 下鉢清子
白波の浮燈台や春一番 岡本静子
石蓴打ち上げて通りし春一番 暮石
磯の鵜や春一番の波しぶき 弘
紅梅の春一番にとぶ火かも 皆吉爽雨
美酒を得て春一番を忘じけり 岸本尚毅 舜
胸ぐらに母受けとむる春一番 岸田稚魚 筍流し
若者に古着が流行る春一番 有馬朗人
葬儀屋を花であしらう春一番 仁平勝 東京物語
農機具の納屋の戸敲く春一番 井内簾水
郵便帽の下に目と耳春一番 磯貝碧蹄館
酒呑んで春三番を過ごしけり 宮田正和
鉛筆に力あまれり春一番 米澤吾亦紅
鐘楼の幣踊らせて春一番 安斉君子
間歇泉春一番をつらぬけり 穐好樹菟男
雀らも春一番にのりて迅し 皆吉爽雨
雑貨屋に吊るもの多し春一番 檜 紀代
風呂敷で運ぶ地球儀春一番 池田澄子
鰻焼く春一番の白波に 岸本尚毅 鶏頭
鳩のせて春一番の隅田川 藤岡筑邨
春一が蒲団落としてゆきにけり 高澤良一 さざなみやつこ
春一番 補遺
おんおんと春三番の疾風雲 石塚友二 磊[カイ]集
ひとところ水の凹みや春一番 桂信子 「草影」以後
ふるさとの春一番を知らざりし 右城暮石 散歩圏 補遺 頑張れよ
不意討にして真向の春一番 岸田稚魚 紅葉山
乙訓を春一番の走りぬけ 阿波野青畝
再会を果す春一番のあと 後藤比奈夫
凶暴の春一番を人ゆるす 山口青邨
匕首めくことば投げるひとあり春二番 楠本憲吉 方壺集
夜の内に春一番の通りたり 右城暮石 天水
屋上苑春一番の雨溜る 右城暮石 句集外 昭和四十二年
春一も春二も通過座禅草 阿波野青畝
春一や列島藻塩まぶれとす 阿波野青畝
春一番 万国旗靡くわ もつれるわ 伊丹三樹彦
春一番、松の雪鶴となつて飛び去る 荻原井泉水
春一番ありしと一人言ひ張れり 右城暮石 散歩圏
春一番が吹くこども家の内に吹かれたり 中川一碧樓
春一番とはいえ 何ぞ 寝乱れ髪 伊丹三樹彦
春一番なだめ塵紙交換車 百合山羽公 樂土以後
春一番は海のかたよりうちの竹林 荻原井泉水
春一番を来し顔なればまとまらず 伊藤白潮
春一番大*えいの背をもてあます 赤尾兜子 玄玄
春一番奥の歯に蓄む貝の芯 角川源義
春一番対馬の句碑を祝ぎにけり 阿波野青畝
春一番小蟹は渚走りけり 藤田湘子 神楽
春一番心の隅に火を点ず 相馬遷子 山河
春一番懺悔室には余韻ほど 鷹羽狩行
春一番戸を開けきりの閻魔堂 右城暮石 天水
春一番武蔵野の池波あげて 水原秋櫻子 緑雲
春一番煎薬の火を細めたり 石川桂郎 四温
春一番牡丹の菰を掻つさらふ 安住敦
春一番狂へりわが胃また狂ふ 相馬遷子 山河
春一番猫の鞘当ててふ声も 林翔
春一番目刺買ふ間を待たされて 安住敦
春一番禁猟の鴨平気なり 百合山羽公 樂土以後
春一番筑紫乙女は幻めく 楠本憲吉 孤客
春一番老の強気を叱しけり 能村登四郎
春一番虚子の生れし日なりけり 藤田湘子 神楽
春一番見かけ倒しも藝のうち 佐藤鬼房
春一番角を踏ん張る栄螺殻 百合山羽公 寒雁
春一番言霊のごと駈け抜けし 原裕 青垣
春一番野壺めざめて方と円 百合山羽公 寒雁
春一番鏡の池の日をとばす 山口青邨
春一番顔あげて濤押し戻す 原裕 葦牙
春一番髪に真砂填め磯魚焼く 角川源義
春一番黒加へ鯉勢はしめ 大野林火 月魄集 昭和五十六年
春二番三番四番五番馬鹿 三橋敏雄
更ラ舟に春一番の砂すこし 岡本眸
月丸し春一番のあとに出て 阿波野青畝
朔太郎春一番の砂ざらざら 平畑静塔
歩道橋春一番の水溜る 右城暮石 句集外 昭和五十二年
浅草は 風鐸さわぐ 春一番 伊丹三樹彦
湯豆腐の葱やや固き春一番 鈴木真砂女 都鳥
熊のいない山のあなたの春一番 金子兜太
石蓴打ち上げて通りし春一番 右城暮石 虻峠
竹は竹どうし寄りあひ春一番 鷹羽狩行
竹山は寺の持ち山春二番 亭午 星野麥丘人
胸ぐらに母受けとむる春一番 岸田稚魚 筍流し
若者に古着が流行る春一番 有馬朗人 耳順
蛸壺の小貝をよろひ春一番 鷹羽狩行
雨雲を掃き朝翔けの春二番 佐藤鬼房
風神の春一番をほどきけり 上田五千石『田園』補遺
飲むか戻るか春一番に艶めく灯 楠本憲吉 方壺集
[追記]
上例に見られるように、春一番の傍題に〝春一〟があるがその使用例は少ない。
辛うじて阿波野青畝の二句が観察されるのみ。もっと作例されるべきだ。
春一も春二も通過座禅草 阿波野青畝
春一や列島藻塩まぶれとす 阿波野青畝
小生句〈春一が蒲団落としてゆきにけり〉は、近所の悪ガキ 春一がしょうがないことに
布団を落としまくっていると興じた。
他で面白いのは、三橋敏雄の〈春二番三番四番五番馬鹿 〉。
敢えて、総領の甚六に当たる〝春一〟を外しているところであろう。
上田敏訳 カール・ブッセの「山のあなた」の一節を引用し嘯いた兜太句
〈熊のいない山のあなたの春一番〉も劣らず面白い。
山のあなたの 空遠く「幸」住むと 人のいふ 噫われひとと 尋めゆきて涙さしぐみ かへりきぬ………………
以上
by 575fudemakase
| 2016-03-14 03:47
| 春の季語
俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase
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▽ある季語の例句を調べる▽
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
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次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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我が家の吊り鉢風景 |
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寺前八幡神社のぎんなん |
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美しい秋の風景 |
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最近の嘱目句あれこれ10月 .. |
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小沢信男 俳句世がたり 岩波.. |
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山本健吉「ことばの歳事記」(.. |
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【やませ 山背】 |
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最近の嘱目句あれこれ11 .. |
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俳句結社 童子(2024年9.. |
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一徹 |
at 2024-09-02 13:26 |