燕 の俳句
燕 の俳句
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燕 補遺2
あまつばめ俄然河原の広がりて 飯島晴子
ある晴れた日に乙鳥かへりけり 安住敦
いちはやくかうぢや乙鳥孵りたり 岸田稚魚 筍流し
いつまでもつばくろの声親しき山 廣瀬直人 帰路
いろいろな影の道ありつばくらめ 斎藤玄 雁道
かすめしはつばめ見おろす海に現れぬ 篠原梵 年々去来の花 雨
げんげ田を鋤けとつばめにせかされて 長谷川素逝 村
こころにも影落しゆくつばくらめ 秋元不死男
ことばつばくらのリズム捉えがたし 荻原井泉水
この三日波大らけく夕つばめ 上村占魚 鮎
さゝ流れ澄める野のみち初つばめ 及川貞 榧の實
さゝ流れ澄める野みちや初つばめ 及川貞 夕焼
したたかに黒き幹ありつばくらめ 桂信子 草影
しなやかに飛びちがひざま路地つばめ 岸田稚魚 筍流し
つき当るまで一息に乙鳥 政岡子規 燕
つばくらが織り返すゆゑきみを恋ふ 渡邊白泉
つばくらに斬られし天の継ぎ合はされ 上野泰
つばくらに水のやうなる朝来たる 上村占魚 鮎
つばくらに水音高く濯ぎけり 日野草城
つばくらのふえくる数の下にをり 石田勝彦 秋興以後
つばくらの飛び返す時きゝと鳴く 高浜年尾
つばくらはいつでもはたと湧いてゐし 岡井省二 明野
つばくらめあまりに高く旅かなし 山口青邨
つばくらめこぞりこぞれる松の芯 森澄雄
つばくらめこゑの忙しくなつてゐし 岸田稚魚 紅葉山
つばくらめひと田にひとり山田植 森澄雄
つばくらめふるさともたぬわれらに来ぬ 松崎鉄之介
つばくらめ坂の名あまた港町 松崎鉄之介
つばくらめ天に人の字描き別れ 上野泰
つばくらめ天地秤りつつ飛べり 上野泰
つばくらめ女男の嶺とて美しき 角川源義
つばくらめ帽簷雨後の山碧む 角川源義
つばくらめ往き来す涙雨のごとし 金子兜太
つばくらめ斯くまで竝ぶことのあり 中村草田男
つばくらめ望楼の泥落ちつづけ 加藤秋邨
つばくらめ来たり庭園射る如く 石橋秀野
つばくらめ水天瀬戸に照しあふ 古舘曹人 樹下石上
つばくらめ父を忘れて吾子伸びよ 石田波郷
つばくらめ飛び交ひ霜は花咲けり 前田普羅 春寒浅間山
つばくらや丹波の川は水ゆたか 角川源義
つばくらや嫁してよりせぬ腕時計 岡本眸
つばくらや庇々に雨くばり 上田五千石『琥珀』補遺
つばくらや我が家ならねば逐はるべく 三橋鷹女
つばくらや湖は満水にして傾く 荻原井泉水
つばくらや生きてまみゆる君が幸 古沢太穂 古沢太穂句集
つばくらや若布したたる岬部落 角川源義
つばくらや還暦翁は泰然と 日野草城
つばくらや雪月山は威を張れり 角川源義
つばくろに泛ぶ巨陽も銚子沖 飯田龍太
つばくろのきらめくすぢははすかひに<万寿山> 篠原梵 年々去来の花 中北支の四〇日
つばくろのこゑ滅法や屋台倉 岸田稚魚 筍流し
つばくろの別るる水の澄みゆけり 廣瀬直人
つばくろの大き梁残りけり 齋藤玄 飛雪
つばくろの影の巴の櫺子窓 岸田稚魚 筍流し
つばくろの昏るるむらさき田を植ゑて 森澄雄
つばくろの甘語十字に雲の信濃 飯田龍太
つばくろの芦の空ゆき花御堂 百合山羽公 春園
つばくろの適度の高さ人造湖 鷹羽狩行
つばくろは涼しき潮見て休む 廣瀬直人
つばくろや人が笛吹く生くるため 秋元不死男
つばくろや国境左右に関の神 角川源義
つばくろや曇る勾玉掌の上 角川源義
つばくろを目馴れそめたる夕明り 飯田龍太
つばめきて青空たかき軒端かな 上村占魚 鮎
つばめきらりと皇族写真色褪せたり 飯田龍太
つばめとぶ町に入りきしわが電車 大野林火 海門 昭和七年以前
つばめと見るも滝水の末は水田を行く 荻原井泉水
つばめには縦横の天競馬場 平畑静塔
つばめの子いま賑はしき堤かな 飴山實 句集外
つばめの尾裂けり汽笛の不意打に 上田五千石『田園』補遺
つばめの歌結尾一音はじけたり 中村草田男
つばめむれ柑園霽れて仔山羊鳴く 飯田蛇笏 春蘭
つばめ来と村の鍛冶屋が鎌をうつ 長谷川素逝 村
つばめ来る二三里先に山の町 飯田龍太
つばめ追ふこころの少しづつ狂ふ 山田みづえ 忘
つばめ野には下りず咲き伸す立葵 飯田蛇笏 山響集
つばめ飛び篠も今年のそよぎぶり 大野林火 方円集 昭和四十九年
つばめ~泥が好きなる燕かな 細見綾子 桃は八重
とまるより妖しき光りつばくらめ 飯田蛇笏 家郷の霧
なが雨のある日のつばめ飛び溜り 長谷川素逝 暦日
ぬかるみに下りたるつばめ瀟洒たり 飯田蛇笏 心像
ひとは征きわれ隠岐にありつばくらめ 加藤秋邨
ひらり高う嫩葉食みしか乙鳥 渡邊水巴 白日
ひるがへることなく一羽初つばめ 及川貞 夕焼
ひるがへるつばめよ病めば心鋭き 大野林火 海門 昭和十年
ふるさとの枇杷は固しやつばめ来る 鈴木真砂女 卯浪
また巷路つばくら低きとまりやう 中村草田男
まはらざるムーランルージユつばくらめ 山口青邨
みちのくは草屋ばかりやつばくらめ 山口青邨
もうむくろに今日ぼろぼろの雲とつばめ 古沢太穂 火雲
ゆふつばめしきりにかへし恋ごころ 伊丹三樹彦
われら越すつばめつぎつぎに海現れぬ 大野林火 早桃 太白集
バスを待つ隠岐の巡査につばくらめ 加藤秋邨
リーチ来る先駆のつばめ登窯 平畑静塔
一邨につばめ迎春花(いんちゅうほわ)に猫 金子兜太
下野につばめ孵りて芦の上 岸田稚魚 紅葉山
乙鳥とまることありや虚子の句碑 山口青邨
乙鳥のよぎるや渡船場蒼く暮る 角川源義
乙鳥の朝から翔る暑さかな 渡邊水巴 白日
乙鳥はまぶしき鳥となりにけり 中村草田男
乙鳥も湖を飛ぶなり佛生会 森澄雄
九十九里の霧に下りいてつばくらめ 古沢太穂 古沢太穂句集
乱雲を切る弧狂はずあまつばめ 相馬遷子 雪嶺
人去りし芝原になく夕つばめ 大野林火 冬青集 雨夜抄
人生の有明つばくらのごとき父なりし 荻原井泉水
俎の明るき顔のつばくらめ 岡本眸
個展の絵到底難解初つばめ 及川貞 夕焼
光りしは蘭亭巡るつばくらめ 山田みづえ まるめろ
初つばめ庭師をかすめ川目指す 廣瀬直人
初つばめ茶飲仲間も恋のうち 飯田龍太
匂ひての佳き反りの太刀島つばめ 能村登四郎
十二階に来てつばくろの真かがやき 大野林火 月魄集 距和五十七年
十年はまたたきに消えつばめ来る 上田五千石 天路
千曲川日を高くしてつばくらめ 岸田稚魚 紅葉山
喋りては濡れ羽をのしてつばくらめ 飯田蛇笏 心像
国道のつばくろに子がにこにこと 山口誓子
土師邑の泥ゆたかなり初つばめ 山田みづえ 草譜
土砂降りを来て胸白き軒つばめ 鷹羽狩行
城壁につばめの影のあまたひらめく 篠原梵 年々去来の花 雨
壁ぬりの小手先すかすつばめ哉 政岡子規 燕
夕つばめのれんくぐるに一と羽撃摶ち 岸田稚魚
夕焼のつばくろに酒なみなみと 飯田龍太
大戸あくればひとすじの朝日つばくら 尾崎放哉 大正時代
大橋の長さをはかる乙鳥哉 政岡子規 燕
天地をせましとつばめ引き返へし 上野泰
女よく笑ふ電話やつばくらめ 中村苑子
子つばめの翔ちて今もつ空の幅 古沢太穂 捲かるる鴎
子の茶碗つばめ西日をきりかへす 石橋秀野
学舎に古りし棟ありつばくらめ 石塚友二 光塵
屋根替の簷をつばくろ出ては入る 長谷川素逝 村
山つばめ婚儀句会と隣り会ひ 飯田龍太
山つばめ色増す月に戯れて 飯田龍太
山つばめ鳴きて野にそふ山閑か 飯田蛇笏 椿花集
山中の帆に高西風のつばくらめ 飯田蛇笏 山響集
山赫くわが夢寐(むび)にありつばくらめ 金子兜太
巡礼、つばめ、これより札所近江路となる 荻原井泉水
床ずれや天に寝返るつばくらめ 秋元不死男
施餓鬼川つばめすゞしくかへしくる 百合山羽公 春園
春すでに高嶺未婚のつばくらめ 飯田龍太
昼の河岸つばめばかりに汐みちて 大野林火 冬青集 雨夜抄
暮れまぎれゆくつばくらと法隆寺 加藤秋邨
曉つばめ棺の吾子はさめゐるか 角川源義
月白の峯のつばくらとなりてとぶ 岡井省二 鹿野
月鉾や空に賑ふ乙鳥 政岡子規 祗園会
朝つばめ海の蒼さを貪ぼれり 大野林火 海門 昭和十年
朝日よりつばくらめのみ濡れ来たる 齋藤玄 飛雪
朝霧飛びかう二羽のつばめの二羽にして 荻原井泉水
梅の実の青し乙鳥軒になく 右城暮石 句集外 昭和三年
橿原の腰赤つばめ大粒に 山田みづえ まるめろ
母子の幸子つばめともにかぞへゐつ 大野林火 冬雁 昭和二十一年
永平寺出て雲水のつばくらめ 森澄雄
汝もわが弔辞に哭くやつばくらめ 古舘曹人 砂の音
沓掛のつばめ早起き朝菜摘み 前田普羅 春寒浅間山
没年に年譜は閉ぢぬつばくらめ 上田五千石『天路』補遺
浅草の本堂めぐる乙鳥哉 政岡子規 燕
海つばめかぎりなく湧く遠礁 能村登四郎
渡り来て秩父も奥のつばくらめ 石塚友二 光塵
澄みわたる天より湧きて初つばめ 相馬遷子 雪嶺
濡れくぐる巌門海のつばくらめ 能村登四郎
灌仏につばめのかへす園のみゆ 百合山羽公 春園
火山湖のたかねおろしに初つばめ 飯田蛇笏 春蘭
火山湖のみどりにあそぶ初つばめ 飯田蛇笏 春蘭
灯台の一尺の影つばめ来る 鷹羽狩行
炎天のつばくらばかりいきいきと 石塚友二 玉縄以後
生家いま桶屋が住みてつばくらめ 岸田稚魚
田を植ゑて日本の規矩をつばくらめ 森澄雄
田楽の軒を出入のつばくらめ 森澄雄
町空のつばくらめのみ新しや 中村草田男
白樺の雨につばめの巣がにほふ 飯田龍太
穀倉の高床抜ける朝つばめ 能村登四郎
素通りと決めつばくろに外されし 岸田稚魚 筍流し
群つばめ飛騨の駄菓子の甘々棒 岸田稚魚 筍流し
老人の背後潤ふつばくらめ 飯田龍太
聲もなく全くとべるつばくらめ 三橋敏雄
胸曇るつばくろばかり仰ぎけり 藤田湘子 途上
艪を竿に替へれば港つばくらめ 鈴木真砂女 生簀籠
茜雲刻々濃しや夕つばめ 伊丹三樹彦
荷車にわが荷嵩なし夕つばめ 赤尾兜子 稚年記
薄墨の空を離れずつばめ鳴く 廣瀬直人 帰路
薄荷酒に口のすゞしさつばくらめ 日野草城
薬局を出て天心のつばくらめ 渡邊白泉
藍倉の窓つばくろの一度きり(徳島へ) 細見綾子
街を出て藁屋根一つ初つばめ 林翔 和紙
街深く入江入り込み夕つばめ 松崎鉄之介
街道に一鞭くれて初つばめ 上田五千石『田園』補遺
誰も傘ささずつばくろ低く飛び 橋閒石 朱明
身を翩せば雨、つばめ風となる 荻原井泉水
転校生我につばくらめ存在す 加藤秋邨
遺著扱き見るつばくろの声の下 飯田龍太
酒弱の若きつばめや玉子酒 日野草城
野に住めば流人のおもひ初つばめ 飯田龍太
雪国の綺羅の人波初つばめ 松村蒼石 寒鶯抄
雲に雲巴蜀は遠くつばくらめ 加藤秋邨
電線と旧知のつばめ来たりけり 鷹羽狩行
電線のあるうちは来よつばくらめ 鷹羽狩行
風きつてあした峡間の初つばめ 飯田蛇笏 家郷の霧
飼ふとにはあらねつばくら深廂 日野草城
馬の尾やひらりとかはす乙鳥 政岡子規 燕
駅ビルで済ます夕餉や初つばめ 岡本眸
高つばめ雲吹きけぶる熊野越 鷲谷七菜子 花寂び
魔法瓶抱く三食つばめ来て 石川桂郎 高蘆
鳰叫び乙鳥ひるがへり嵐めく 富安風生
麦秋となるつばくろの閃光す 廣瀬直人 帰路
燕 続補遺
(殺生石)燕の羽先あぶなし石の角 露川
あそぶともゆくともしらぬ燕かな 去来
あふ坂の関に待合燕かな 中川乙由
いたづらに燕巣かけそ阿弥陀笠 乙訓
かち杵をこすりて通る燕かな 釣壺
さしあたり親の恩みる燕哉 一笑(金沢)
ためす子に白根みせたか行乙鳥 鈴木道彦
ちぎり置つばめとあそべ庭の猫 園女
ちらさずにつばめ飛たり花の上 祐甫
つつと行燕にたらぬ町屋哉 白雪
つと入りて一言いふか燕 米姑 新類題発句集
つばくらにしばしあづくる舎り哉 園女
つばくらに残す築地や撞木町 建部巣兆
つばくらに蹴もどされてやつりの船 千奈
つばくらに門であひけり杜若 木導
つばくらのいたり来たりに日は永し 諷竹
つばくらのうかべてすべる柳哉 角上
つばくらのもどりみやげか草のつゆ 紫白女
つばくらのゐなじむ空や郭公 蘆本
つばくらの一さし舞や杉の門 凉菟
つばくらの普請仕廻は子持かな 中川乙由
つばくらの虱うつるなほとゝぎす 素覧
つばくらの身をりん~と往来哉 三宅嘯山
つばくらの道吹わけよ柳原 蘆本
つばくらは土で家する木曽路哉 猿雖
つばくらめ音に遊ぶなら月に寐じ 寥松
つばくらもうたがひのなき法花哉 句空
つばくらもけぶたがる也窓のくち 壺中
つばくらやあれも妻子を置所 三宅嘯山
つばくらや古き揚屋の捨ばしら 蓼太 蓼太句集二編
つばくらや夜の鮓買の驚かす 高井几董
つばくらや子をおもふ身の隙もなし 舎羅
つばくらや庭はめでたき臼に杵 支考
つばくらや得意を廻る油売 許六
つばくらや水の輪違はるの雨 露川
つばくらや水縄はりにあつちこち 秋之坊
つばくらや経書堂を出つ入つ 存義 古来庵発句集
つばくらや雨にをりたつ馬の沓 左次
つばくらをかなしめる鳥と夜は思ふ 寥松
つばめ子の咽にさしこむ朝日かな 卓池
つまいりの軒に休らふ燕かな 荷兮
つら~にいそがぬ旅の燕かな 牧童
はしり帆の帆綱かいくゝるつばめ哉 白雄
はつあきをもてなす物や燕の羽 惟然
ほそ~とごみ焼門のつばめ哉 怒誰
ほそ~と塵焚門の燕哉 丈草
むら燕牛の胯ぐら潜リけり 高井几董
乗懸に休みて門の燕かな 毛〔ガン〕
乙鳥の巣に鼠鳴よさむかな 桜井梅室
乙鳥の煤にもならぬ小皃かな 井上士朗
乙鳥の行空見する紫苑かな 鈴木道彦
乙鳥も其志は浪の上 鵬斎 発句題叢
乙鳥やかろき巣を引いかのぼり 其角
乙鳥や御油赤坂の二世帯 許六
乙鳥や轍の小魚つかみゆく 高井几董
乙鳥や雪に撓みし梁の上 高井几董
乙鳥や馬の荷おろす埃の中 桜井梅室
乙鳥や魚うる家の縄すだれ 完来
乙鳥来てあゆみそめるや舟の脚 千代尼
人住て燕すみなす深山かな 白雄
何事を触てまはるぞむら燕 凉菟
傘にねぐらかさうやぬれ燕 其角
傘に塒かさうよぬれ燕 宝井其角
出つ入つ娵の名立ぞつばくらめ 臥高
勢は馬場引かへす乙鳥哉 千奈
古き戸に影うつり行燕かな 黒柳召波
古寺や仏にとまる村つばめ 許六
吉日を知るや鼠も燕も 中川乙由
味噌買の天窓をなづるつばめ哉 諷竹
塩木つむ中を燕の往来哉 井上士朗
夕燕我には翌のあてはなき 小林一茶
大津絵に糞落しゆく燕かな 与謝蕪村
奥山や雪ある門へ来る乙鳥 桜井梅室
子を持て遊女に見せる燕かな 木導
子母銭や置て巣立る軒乙鳥 加藤曉台
家はまだ見かけぬ岨の乙鳥かな 桜井梅室
家もたぬ燕かやさし顔の様 園女
寐ごゝろも燕持児や門の花 建部巣兆
小家ふたつ柳しだれて燕かな 東皐
就中ふるさといそぐ燕かな 一笑(金沢)
尾も羽根も削り立てたる乙鳥かな 素丸 素丸発句集
尾花ふむ乙鳥よ浪も蹴あきてか 鈴木道彦
居りとげぬ身とや彼地に行燕 露川
屋の内を巣だちして見る燕哉 十丈
山のはにつばめをかへす入日哉 其角
山の邊や風より下を行燕 小西来山
岩角に顔をならぶる燕哉 りん女
川つばめ*さで網さす邪魔と見ゆるかな 其角
巣を守る燕のはらの白さかな 炭太祇
巣を立て湖水に泥む燕哉 尚白
巣乙鳥のきげんそこねる嵐かな 松窓乙二
巣乙鳥の下に火をたく雨夜かな 白雄
帆柱を便に渡るつばめかな 中川乙由
帰には橋の下行つばめかな 桃先
幢の仏間へ這入乙鳥哉 黒柳召波
広ひ家の望もなしやつばくらめ 三宅嘯山
座頭立て辻にみだるゝ燕かな 土芳
旅かけて子もち燕や春の花 素行
朝戸繰る人とわかるゝつばめ哉 寥松
村深し燕つるむ門むしろ 高井几董
来るとはや往来数ある燕かな 炭太祇
柳にはふかでおのれあらしの夕燕 嵐雪
桃の木にくるふてあそぶ燕かな 素覧
残月に心もなくて飛つばめ 松窓乙二
殿顔も女姿の燕哉 りん女
水に見る己が自在やつばくらめ 三宅嘯山
水に連れて流るるやうな燕かな 椎本才麿
水はやし塵は玄鳥の落すまで 野坡
江戸留主のくゞりを出る燕かな 〔ブン〕村
江戸留守のくゞりを出る燕かな [ブン]村 正風彦根躰
海づらの虹をけしたる燕かな 宝井其角
濡て干す公事の標木に燕哉 朱拙
燕が来たら机の置どころ 中川乙由
燕にすさめられてや庭の桃 其角
燕についてはいるや箱まはし 支考
燕にゆかしがられむ縄簾 支考
燕に底見られけり麦の奥 中川乙由
燕に肝のつぶれた便宜かな 凉菟
燕のかへり道ありほらの雨 嵐雪
燕のまよふた皃や舟やかた 三宅嘯山
燕の下はらさはる早苗かな 木導
燕の乗かためたる柳かな 正秀
燕の墓をめぐるや人の透 曲翠
燕の幅して通るかすみ哉 林紅
燕の湯だての中や幾戻り 怒風
燕の瀬田を越ては戻りけり 三宅嘯山
燕の皃みな嵯峨の念仏哉 土芳
燕の舌はまはるや酒ばやし 中川乙由
燕の舞あつむるや池の魚 風国
燕の足もよごさぬ来がけ哉 吏全
燕の逆寄にするひばりかな 寂芝
燕の面なぬらしそ浪がしら 加藤曉台
燕は夫婦遊ぶや片男波 中川乙由
燕も御寺の鼓かへりうて 其角
燕も百度の連や黒羽織 中川乙由
燕やあら血の上も只は居ず 三宅嘯山
燕や何を忘て中がへり 中川乙由
燕や八町づゝのはしの間 貞佐 桑々畔発句集
燕や小袖をあらふ橋の下 紫白女
燕や我にも分し膝のちり 土芳
燕や流のこりし家二軒 高井几董
燕や田をおりかへす馬のあと 野童
燕や笑ふて通る花の上 朱拙
燕や茶師はさび行宇治の里 許六
燕や赤土道のはねあがり 惟然
燕より先へ柳に客ふたり 中川乙由
燕よ往ンだ古巣をたばひ置 正秀
燕子が菖にまよふ家路かな 千奈
燕子の巣のうちせばきさゝめごと 園女
燕来てなき人問ん此彼岸 炭太祇
猫のこひ燕来ぬ間のよいじまひ 桃先
玄鳥やけふはきのふになり安き 長翠
玄鳥よそこは貴人の這入口 五明
町半や座頭をよげて飛つばめ 許六
痩せ~と成るや燕の旅衣 卯七
簾に入て美人に馴る燕かな 嵐雪
簾に入りて美人に馴るゝ燕かな 嵐雪 玄峰集
糸による情はしらで乙鳥つり 三浦樗良
紛らかす江戸の軒端やつばくらめ 三宅嘯山
繩臍の穴へちら~つばめ哉 風国
舎りして笘とはならぬ燕かな 千代尼
舞まふて花薗をみん燕哉 半残
花の酔さましに来たか夕つばめ 加藤曉台
花盛りつばめ乱て八重無尽 土芳
茶の水にちりな落しそ里燕 其角
草の戸や*つばめに貸せば明はなし 寥松
蔵並ぶ裏は燕のかよひ道 凡兆
藍瓶に羽が染たい歟飛つばめ 完来
藪中の裏戸おぼえし燕かな 桜井梅室
蜃の息はつばめの台かな 越人
蝋燭の火に皃出すや巣の燕 野紅
行水のやつはしわたる燕かな 呂丸
袖つばめ舞たり蓮の小盞 暁雲 虚栗
見渡して久しがほなる燕かな 支考
觜の泥あらはせむ夕燕 木因
足無事に御寺よごすや村燕 知足
軒燕八声の鶏を聞おらめ 白雄
逆ひつゝ乗つゝ風の燕かな 三宅嘯山
造作をのぞいて戻るつばめ哉 魯九
酒旗につばめ吹るゝ夕かな 黒柳召波
里の子が燕握る早苗かな 支考
針捨て帰るは迯る燕かな 旦藁
錫杖にふり出す軒のつばめかな 井上士朗
鍬光る野にさまよふや初燕 桜井梅室
鎌倉の海道をのす燕かな 尚白
関札の上にやすらふ乙鳥かな 許六
階子からとぶさに及ぶつばめ哉 其角
雨ぬるゝ壁に喰つく燕かな 一笑(金沢)
雨の昼横町さがる燕かな 乙訓
雨やどりばかりに寄し乙鳥哉 鳳朗
雨燕うつくし風を舞ふ柳 椎本才麿
青柳に追出されたる燕哉 句空
馬かりて燕追行わかれかな 北枝
馬のみゝすぼめて通すつばめかな 桜井梅室
麦粕にあふたれありくつばめかな 支考
黄昏にたてだされたる燕哉 鼠弾
以上
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燕 補遺2
あまつばめ俄然河原の広がりて 飯島晴子
ある晴れた日に乙鳥かへりけり 安住敦
いちはやくかうぢや乙鳥孵りたり 岸田稚魚 筍流し
いつまでもつばくろの声親しき山 廣瀬直人 帰路
いろいろな影の道ありつばくらめ 斎藤玄 雁道
かすめしはつばめ見おろす海に現れぬ 篠原梵 年々去来の花 雨
げんげ田を鋤けとつばめにせかされて 長谷川素逝 村
こころにも影落しゆくつばくらめ 秋元不死男
ことばつばくらのリズム捉えがたし 荻原井泉水
この三日波大らけく夕つばめ 上村占魚 鮎
さゝ流れ澄める野のみち初つばめ 及川貞 榧の實
さゝ流れ澄める野みちや初つばめ 及川貞 夕焼
したたかに黒き幹ありつばくらめ 桂信子 草影
しなやかに飛びちがひざま路地つばめ 岸田稚魚 筍流し
つき当るまで一息に乙鳥 政岡子規 燕
つばくらが織り返すゆゑきみを恋ふ 渡邊白泉
つばくらに斬られし天の継ぎ合はされ 上野泰
つばくらに水のやうなる朝来たる 上村占魚 鮎
つばくらに水音高く濯ぎけり 日野草城
つばくらのふえくる数の下にをり 石田勝彦 秋興以後
つばくらの飛び返す時きゝと鳴く 高浜年尾
つばくらはいつでもはたと湧いてゐし 岡井省二 明野
つばくらめあまりに高く旅かなし 山口青邨
つばくらめこぞりこぞれる松の芯 森澄雄
つばくらめこゑの忙しくなつてゐし 岸田稚魚 紅葉山
つばくらめひと田にひとり山田植 森澄雄
つばくらめふるさともたぬわれらに来ぬ 松崎鉄之介
つばくらめ坂の名あまた港町 松崎鉄之介
つばくらめ天に人の字描き別れ 上野泰
つばくらめ天地秤りつつ飛べり 上野泰
つばくらめ女男の嶺とて美しき 角川源義
つばくらめ帽簷雨後の山碧む 角川源義
つばくらめ往き来す涙雨のごとし 金子兜太
つばくらめ斯くまで竝ぶことのあり 中村草田男
つばくらめ望楼の泥落ちつづけ 加藤秋邨
つばくらめ来たり庭園射る如く 石橋秀野
つばくらめ水天瀬戸に照しあふ 古舘曹人 樹下石上
つばくらめ父を忘れて吾子伸びよ 石田波郷
つばくらめ飛び交ひ霜は花咲けり 前田普羅 春寒浅間山
つばくらや丹波の川は水ゆたか 角川源義
つばくらや嫁してよりせぬ腕時計 岡本眸
つばくらや庇々に雨くばり 上田五千石『琥珀』補遺
つばくらや我が家ならねば逐はるべく 三橋鷹女
つばくらや湖は満水にして傾く 荻原井泉水
つばくらや生きてまみゆる君が幸 古沢太穂 古沢太穂句集
つばくらや若布したたる岬部落 角川源義
つばくらや還暦翁は泰然と 日野草城
つばくらや雪月山は威を張れり 角川源義
つばくろに泛ぶ巨陽も銚子沖 飯田龍太
つばくろのきらめくすぢははすかひに<万寿山> 篠原梵 年々去来の花 中北支の四〇日
つばくろのこゑ滅法や屋台倉 岸田稚魚 筍流し
つばくろの別るる水の澄みゆけり 廣瀬直人
つばくろの大き梁残りけり 齋藤玄 飛雪
つばくろの影の巴の櫺子窓 岸田稚魚 筍流し
つばくろの昏るるむらさき田を植ゑて 森澄雄
つばくろの甘語十字に雲の信濃 飯田龍太
つばくろの芦の空ゆき花御堂 百合山羽公 春園
つばくろの適度の高さ人造湖 鷹羽狩行
つばくろは涼しき潮見て休む 廣瀬直人
つばくろや人が笛吹く生くるため 秋元不死男
つばくろや国境左右に関の神 角川源義
つばくろや曇る勾玉掌の上 角川源義
つばくろを目馴れそめたる夕明り 飯田龍太
つばめきて青空たかき軒端かな 上村占魚 鮎
つばめきらりと皇族写真色褪せたり 飯田龍太
つばめとぶ町に入りきしわが電車 大野林火 海門 昭和七年以前
つばめと見るも滝水の末は水田を行く 荻原井泉水
つばめには縦横の天競馬場 平畑静塔
つばめの子いま賑はしき堤かな 飴山實 句集外
つばめの尾裂けり汽笛の不意打に 上田五千石『田園』補遺
つばめの歌結尾一音はじけたり 中村草田男
つばめむれ柑園霽れて仔山羊鳴く 飯田蛇笏 春蘭
つばめ来と村の鍛冶屋が鎌をうつ 長谷川素逝 村
つばめ来る二三里先に山の町 飯田龍太
つばめ追ふこころの少しづつ狂ふ 山田みづえ 忘
つばめ野には下りず咲き伸す立葵 飯田蛇笏 山響集
つばめ飛び篠も今年のそよぎぶり 大野林火 方円集 昭和四十九年
つばめ~泥が好きなる燕かな 細見綾子 桃は八重
とまるより妖しき光りつばくらめ 飯田蛇笏 家郷の霧
なが雨のある日のつばめ飛び溜り 長谷川素逝 暦日
ぬかるみに下りたるつばめ瀟洒たり 飯田蛇笏 心像
ひとは征きわれ隠岐にありつばくらめ 加藤秋邨
ひらり高う嫩葉食みしか乙鳥 渡邊水巴 白日
ひるがへることなく一羽初つばめ 及川貞 夕焼
ひるがへるつばめよ病めば心鋭き 大野林火 海門 昭和十年
ふるさとの枇杷は固しやつばめ来る 鈴木真砂女 卯浪
また巷路つばくら低きとまりやう 中村草田男
まはらざるムーランルージユつばくらめ 山口青邨
みちのくは草屋ばかりやつばくらめ 山口青邨
もうむくろに今日ぼろぼろの雲とつばめ 古沢太穂 火雲
ゆふつばめしきりにかへし恋ごころ 伊丹三樹彦
われら越すつばめつぎつぎに海現れぬ 大野林火 早桃 太白集
バスを待つ隠岐の巡査につばくらめ 加藤秋邨
リーチ来る先駆のつばめ登窯 平畑静塔
一邨につばめ迎春花(いんちゅうほわ)に猫 金子兜太
下野につばめ孵りて芦の上 岸田稚魚 紅葉山
乙鳥とまることありや虚子の句碑 山口青邨
乙鳥のよぎるや渡船場蒼く暮る 角川源義
乙鳥の朝から翔る暑さかな 渡邊水巴 白日
乙鳥はまぶしき鳥となりにけり 中村草田男
乙鳥も湖を飛ぶなり佛生会 森澄雄
九十九里の霧に下りいてつばくらめ 古沢太穂 古沢太穂句集
乱雲を切る弧狂はずあまつばめ 相馬遷子 雪嶺
人去りし芝原になく夕つばめ 大野林火 冬青集 雨夜抄
人生の有明つばくらのごとき父なりし 荻原井泉水
俎の明るき顔のつばくらめ 岡本眸
個展の絵到底難解初つばめ 及川貞 夕焼
光りしは蘭亭巡るつばくらめ 山田みづえ まるめろ
初つばめ庭師をかすめ川目指す 廣瀬直人
初つばめ茶飲仲間も恋のうち 飯田龍太
匂ひての佳き反りの太刀島つばめ 能村登四郎
十二階に来てつばくろの真かがやき 大野林火 月魄集 距和五十七年
十年はまたたきに消えつばめ来る 上田五千石 天路
千曲川日を高くしてつばくらめ 岸田稚魚 紅葉山
喋りては濡れ羽をのしてつばくらめ 飯田蛇笏 心像
国道のつばくろに子がにこにこと 山口誓子
土師邑の泥ゆたかなり初つばめ 山田みづえ 草譜
土砂降りを来て胸白き軒つばめ 鷹羽狩行
城壁につばめの影のあまたひらめく 篠原梵 年々去来の花 雨
壁ぬりの小手先すかすつばめ哉 政岡子規 燕
夕つばめのれんくぐるに一と羽撃摶ち 岸田稚魚
夕焼のつばくろに酒なみなみと 飯田龍太
大戸あくればひとすじの朝日つばくら 尾崎放哉 大正時代
大橋の長さをはかる乙鳥哉 政岡子規 燕
天地をせましとつばめ引き返へし 上野泰
女よく笑ふ電話やつばくらめ 中村苑子
子つばめの翔ちて今もつ空の幅 古沢太穂 捲かるる鴎
子の茶碗つばめ西日をきりかへす 石橋秀野
学舎に古りし棟ありつばくらめ 石塚友二 光塵
屋根替の簷をつばくろ出ては入る 長谷川素逝 村
山つばめ婚儀句会と隣り会ひ 飯田龍太
山つばめ色増す月に戯れて 飯田龍太
山つばめ鳴きて野にそふ山閑か 飯田蛇笏 椿花集
山中の帆に高西風のつばくらめ 飯田蛇笏 山響集
山赫くわが夢寐(むび)にありつばくらめ 金子兜太
巡礼、つばめ、これより札所近江路となる 荻原井泉水
床ずれや天に寝返るつばくらめ 秋元不死男
施餓鬼川つばめすゞしくかへしくる 百合山羽公 春園
春すでに高嶺未婚のつばくらめ 飯田龍太
昼の河岸つばめばかりに汐みちて 大野林火 冬青集 雨夜抄
暮れまぎれゆくつばくらと法隆寺 加藤秋邨
曉つばめ棺の吾子はさめゐるか 角川源義
月白の峯のつばくらとなりてとぶ 岡井省二 鹿野
月鉾や空に賑ふ乙鳥 政岡子規 祗園会
朝つばめ海の蒼さを貪ぼれり 大野林火 海門 昭和十年
朝日よりつばくらめのみ濡れ来たる 齋藤玄 飛雪
朝霧飛びかう二羽のつばめの二羽にして 荻原井泉水
梅の実の青し乙鳥軒になく 右城暮石 句集外 昭和三年
橿原の腰赤つばめ大粒に 山田みづえ まるめろ
母子の幸子つばめともにかぞへゐつ 大野林火 冬雁 昭和二十一年
永平寺出て雲水のつばくらめ 森澄雄
汝もわが弔辞に哭くやつばくらめ 古舘曹人 砂の音
沓掛のつばめ早起き朝菜摘み 前田普羅 春寒浅間山
没年に年譜は閉ぢぬつばくらめ 上田五千石『天路』補遺
浅草の本堂めぐる乙鳥哉 政岡子規 燕
海つばめかぎりなく湧く遠礁 能村登四郎
渡り来て秩父も奥のつばくらめ 石塚友二 光塵
澄みわたる天より湧きて初つばめ 相馬遷子 雪嶺
濡れくぐる巌門海のつばくらめ 能村登四郎
灌仏につばめのかへす園のみゆ 百合山羽公 春園
火山湖のたかねおろしに初つばめ 飯田蛇笏 春蘭
火山湖のみどりにあそぶ初つばめ 飯田蛇笏 春蘭
灯台の一尺の影つばめ来る 鷹羽狩行
炎天のつばくらばかりいきいきと 石塚友二 玉縄以後
生家いま桶屋が住みてつばくらめ 岸田稚魚
田を植ゑて日本の規矩をつばくらめ 森澄雄
田楽の軒を出入のつばくらめ 森澄雄
町空のつばくらめのみ新しや 中村草田男
白樺の雨につばめの巣がにほふ 飯田龍太
穀倉の高床抜ける朝つばめ 能村登四郎
素通りと決めつばくろに外されし 岸田稚魚 筍流し
群つばめ飛騨の駄菓子の甘々棒 岸田稚魚 筍流し
老人の背後潤ふつばくらめ 飯田龍太
聲もなく全くとべるつばくらめ 三橋敏雄
胸曇るつばくろばかり仰ぎけり 藤田湘子 途上
艪を竿に替へれば港つばくらめ 鈴木真砂女 生簀籠
茜雲刻々濃しや夕つばめ 伊丹三樹彦
荷車にわが荷嵩なし夕つばめ 赤尾兜子 稚年記
薄墨の空を離れずつばめ鳴く 廣瀬直人 帰路
薄荷酒に口のすゞしさつばくらめ 日野草城
薬局を出て天心のつばくらめ 渡邊白泉
藍倉の窓つばくろの一度きり(徳島へ) 細見綾子
街を出て藁屋根一つ初つばめ 林翔 和紙
街深く入江入り込み夕つばめ 松崎鉄之介
街道に一鞭くれて初つばめ 上田五千石『田園』補遺
誰も傘ささずつばくろ低く飛び 橋閒石 朱明
身を翩せば雨、つばめ風となる 荻原井泉水
転校生我につばくらめ存在す 加藤秋邨
遺著扱き見るつばくろの声の下 飯田龍太
酒弱の若きつばめや玉子酒 日野草城
野に住めば流人のおもひ初つばめ 飯田龍太
雪国の綺羅の人波初つばめ 松村蒼石 寒鶯抄
雲に雲巴蜀は遠くつばくらめ 加藤秋邨
電線と旧知のつばめ来たりけり 鷹羽狩行
電線のあるうちは来よつばくらめ 鷹羽狩行
風きつてあした峡間の初つばめ 飯田蛇笏 家郷の霧
飼ふとにはあらねつばくら深廂 日野草城
馬の尾やひらりとかはす乙鳥 政岡子規 燕
駅ビルで済ます夕餉や初つばめ 岡本眸
高つばめ雲吹きけぶる熊野越 鷲谷七菜子 花寂び
魔法瓶抱く三食つばめ来て 石川桂郎 高蘆
鳰叫び乙鳥ひるがへり嵐めく 富安風生
麦秋となるつばくろの閃光す 廣瀬直人 帰路
燕 続補遺
(殺生石)燕の羽先あぶなし石の角 露川
あそぶともゆくともしらぬ燕かな 去来
あふ坂の関に待合燕かな 中川乙由
いたづらに燕巣かけそ阿弥陀笠 乙訓
かち杵をこすりて通る燕かな 釣壺
さしあたり親の恩みる燕哉 一笑(金沢)
ためす子に白根みせたか行乙鳥 鈴木道彦
ちぎり置つばめとあそべ庭の猫 園女
ちらさずにつばめ飛たり花の上 祐甫
つつと行燕にたらぬ町屋哉 白雪
つと入りて一言いふか燕 米姑 新類題発句集
つばくらにしばしあづくる舎り哉 園女
つばくらに残す築地や撞木町 建部巣兆
つばくらに蹴もどされてやつりの船 千奈
つばくらに門であひけり杜若 木導
つばくらのいたり来たりに日は永し 諷竹
つばくらのうかべてすべる柳哉 角上
つばくらのもどりみやげか草のつゆ 紫白女
つばくらのゐなじむ空や郭公 蘆本
つばくらの一さし舞や杉の門 凉菟
つばくらの普請仕廻は子持かな 中川乙由
つばくらの虱うつるなほとゝぎす 素覧
つばくらの身をりん~と往来哉 三宅嘯山
つばくらの道吹わけよ柳原 蘆本
つばくらは土で家する木曽路哉 猿雖
つばくらめ音に遊ぶなら月に寐じ 寥松
つばくらもうたがひのなき法花哉 句空
つばくらもけぶたがる也窓のくち 壺中
つばくらやあれも妻子を置所 三宅嘯山
つばくらや古き揚屋の捨ばしら 蓼太 蓼太句集二編
つばくらや夜の鮓買の驚かす 高井几董
つばくらや子をおもふ身の隙もなし 舎羅
つばくらや庭はめでたき臼に杵 支考
つばくらや得意を廻る油売 許六
つばくらや水の輪違はるの雨 露川
つばくらや水縄はりにあつちこち 秋之坊
つばくらや経書堂を出つ入つ 存義 古来庵発句集
つばくらや雨にをりたつ馬の沓 左次
つばくらをかなしめる鳥と夜は思ふ 寥松
つばめ子の咽にさしこむ朝日かな 卓池
つまいりの軒に休らふ燕かな 荷兮
つら~にいそがぬ旅の燕かな 牧童
はしり帆の帆綱かいくゝるつばめ哉 白雄
はつあきをもてなす物や燕の羽 惟然
ほそ~とごみ焼門のつばめ哉 怒誰
ほそ~と塵焚門の燕哉 丈草
むら燕牛の胯ぐら潜リけり 高井几董
乗懸に休みて門の燕かな 毛〔ガン〕
乙鳥の巣に鼠鳴よさむかな 桜井梅室
乙鳥の煤にもならぬ小皃かな 井上士朗
乙鳥の行空見する紫苑かな 鈴木道彦
乙鳥も其志は浪の上 鵬斎 発句題叢
乙鳥やかろき巣を引いかのぼり 其角
乙鳥や御油赤坂の二世帯 許六
乙鳥や轍の小魚つかみゆく 高井几董
乙鳥や雪に撓みし梁の上 高井几董
乙鳥や馬の荷おろす埃の中 桜井梅室
乙鳥や魚うる家の縄すだれ 完来
乙鳥来てあゆみそめるや舟の脚 千代尼
人住て燕すみなす深山かな 白雄
何事を触てまはるぞむら燕 凉菟
傘にねぐらかさうやぬれ燕 其角
傘に塒かさうよぬれ燕 宝井其角
出つ入つ娵の名立ぞつばくらめ 臥高
勢は馬場引かへす乙鳥哉 千奈
古き戸に影うつり行燕かな 黒柳召波
古寺や仏にとまる村つばめ 許六
吉日を知るや鼠も燕も 中川乙由
味噌買の天窓をなづるつばめ哉 諷竹
塩木つむ中を燕の往来哉 井上士朗
夕燕我には翌のあてはなき 小林一茶
大津絵に糞落しゆく燕かな 与謝蕪村
奥山や雪ある門へ来る乙鳥 桜井梅室
子を持て遊女に見せる燕かな 木導
子母銭や置て巣立る軒乙鳥 加藤曉台
家はまだ見かけぬ岨の乙鳥かな 桜井梅室
家もたぬ燕かやさし顔の様 園女
寐ごゝろも燕持児や門の花 建部巣兆
小家ふたつ柳しだれて燕かな 東皐
就中ふるさといそぐ燕かな 一笑(金沢)
尾も羽根も削り立てたる乙鳥かな 素丸 素丸発句集
尾花ふむ乙鳥よ浪も蹴あきてか 鈴木道彦
居りとげぬ身とや彼地に行燕 露川
屋の内を巣だちして見る燕哉 十丈
山のはにつばめをかへす入日哉 其角
山の邊や風より下を行燕 小西来山
岩角に顔をならぶる燕哉 りん女
川つばめ*さで網さす邪魔と見ゆるかな 其角
巣を守る燕のはらの白さかな 炭太祇
巣を立て湖水に泥む燕哉 尚白
巣乙鳥のきげんそこねる嵐かな 松窓乙二
巣乙鳥の下に火をたく雨夜かな 白雄
帆柱を便に渡るつばめかな 中川乙由
帰には橋の下行つばめかな 桃先
幢の仏間へ這入乙鳥哉 黒柳召波
広ひ家の望もなしやつばくらめ 三宅嘯山
座頭立て辻にみだるゝ燕かな 土芳
旅かけて子もち燕や春の花 素行
朝戸繰る人とわかるゝつばめ哉 寥松
村深し燕つるむ門むしろ 高井几董
来るとはや往来数ある燕かな 炭太祇
柳にはふかでおのれあらしの夕燕 嵐雪
桃の木にくるふてあそぶ燕かな 素覧
残月に心もなくて飛つばめ 松窓乙二
殿顔も女姿の燕哉 りん女
水に見る己が自在やつばくらめ 三宅嘯山
水に連れて流るるやうな燕かな 椎本才麿
水はやし塵は玄鳥の落すまで 野坡
江戸留主のくゞりを出る燕かな 〔ブン〕村
江戸留守のくゞりを出る燕かな [ブン]村 正風彦根躰
海づらの虹をけしたる燕かな 宝井其角
濡て干す公事の標木に燕哉 朱拙
燕が来たら机の置どころ 中川乙由
燕にすさめられてや庭の桃 其角
燕についてはいるや箱まはし 支考
燕にゆかしがられむ縄簾 支考
燕に底見られけり麦の奥 中川乙由
燕に肝のつぶれた便宜かな 凉菟
燕のかへり道ありほらの雨 嵐雪
燕のまよふた皃や舟やかた 三宅嘯山
燕の下はらさはる早苗かな 木導
燕の乗かためたる柳かな 正秀
燕の墓をめぐるや人の透 曲翠
燕の幅して通るかすみ哉 林紅
燕の湯だての中や幾戻り 怒風
燕の瀬田を越ては戻りけり 三宅嘯山
燕の皃みな嵯峨の念仏哉 土芳
燕の舌はまはるや酒ばやし 中川乙由
燕の舞あつむるや池の魚 風国
燕の足もよごさぬ来がけ哉 吏全
燕の逆寄にするひばりかな 寂芝
燕の面なぬらしそ浪がしら 加藤曉台
燕は夫婦遊ぶや片男波 中川乙由
燕も御寺の鼓かへりうて 其角
燕も百度の連や黒羽織 中川乙由
燕やあら血の上も只は居ず 三宅嘯山
燕や何を忘て中がへり 中川乙由
燕や八町づゝのはしの間 貞佐 桑々畔発句集
燕や小袖をあらふ橋の下 紫白女
燕や我にも分し膝のちり 土芳
燕や流のこりし家二軒 高井几董
燕や田をおりかへす馬のあと 野童
燕や笑ふて通る花の上 朱拙
燕や茶師はさび行宇治の里 許六
燕や赤土道のはねあがり 惟然
燕より先へ柳に客ふたり 中川乙由
燕よ往ンだ古巣をたばひ置 正秀
燕子が菖にまよふ家路かな 千奈
燕子の巣のうちせばきさゝめごと 園女
燕来てなき人問ん此彼岸 炭太祇
猫のこひ燕来ぬ間のよいじまひ 桃先
玄鳥やけふはきのふになり安き 長翠
玄鳥よそこは貴人の這入口 五明
町半や座頭をよげて飛つばめ 許六
痩せ~と成るや燕の旅衣 卯七
簾に入て美人に馴る燕かな 嵐雪
簾に入りて美人に馴るゝ燕かな 嵐雪 玄峰集
糸による情はしらで乙鳥つり 三浦樗良
紛らかす江戸の軒端やつばくらめ 三宅嘯山
繩臍の穴へちら~つばめ哉 風国
舎りして笘とはならぬ燕かな 千代尼
舞まふて花薗をみん燕哉 半残
花の酔さましに来たか夕つばめ 加藤曉台
花盛りつばめ乱て八重無尽 土芳
茶の水にちりな落しそ里燕 其角
草の戸や*つばめに貸せば明はなし 寥松
蔵並ぶ裏は燕のかよひ道 凡兆
藍瓶に羽が染たい歟飛つばめ 完来
藪中の裏戸おぼえし燕かな 桜井梅室
蜃の息はつばめの台かな 越人
蝋燭の火に皃出すや巣の燕 野紅
行水のやつはしわたる燕かな 呂丸
袖つばめ舞たり蓮の小盞 暁雲 虚栗
見渡して久しがほなる燕かな 支考
觜の泥あらはせむ夕燕 木因
足無事に御寺よごすや村燕 知足
軒燕八声の鶏を聞おらめ 白雄
逆ひつゝ乗つゝ風の燕かな 三宅嘯山
造作をのぞいて戻るつばめ哉 魯九
酒旗につばめ吹るゝ夕かな 黒柳召波
里の子が燕握る早苗かな 支考
針捨て帰るは迯る燕かな 旦藁
錫杖にふり出す軒のつばめかな 井上士朗
鍬光る野にさまよふや初燕 桜井梅室
鎌倉の海道をのす燕かな 尚白
関札の上にやすらふ乙鳥かな 許六
階子からとぶさに及ぶつばめ哉 其角
雨ぬるゝ壁に喰つく燕かな 一笑(金沢)
雨の昼横町さがる燕かな 乙訓
雨やどりばかりに寄し乙鳥哉 鳳朗
雨燕うつくし風を舞ふ柳 椎本才麿
青柳に追出されたる燕哉 句空
馬かりて燕追行わかれかな 北枝
馬のみゝすぼめて通すつばめかな 桜井梅室
麦粕にあふたれありくつばめかな 支考
黄昏にたてだされたる燕哉 鼠弾
以上
by 575fudemakase
| 2016-04-09 10:54
| 春の季語
俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase
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▽ある季語の例句を調べる▽
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
《方法1》 残暑 の例句を調べる
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《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
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[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
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いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
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[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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at 2024-09-08 09:32 |
一徹 |
at 2024-09-02 13:26 |