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蚊 の俳句

蚊 の俳句

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蚊 補遺

あふがれて蚊柱ゆがむ軒端哉 正岡子規 蚊柱
あぶれ蚊もやぶれかぶれとなりたらむ 相生垣瓜人 負暄
あぶれ蚊や屍の門は街に向く 角川源義
いまだ天下を取らず蚤と蚊に病みし 正岡子規 蚤
うかと来て喰ひ殺されな庵の蚊に 正岡子規 蚊
うすうすと蚊柱動く松の月 正岡子規 蚊柱
うたかたが生れた消えたと蚊柱や 中村草田男
うつくしやまだ蚊の居らぬ今年竹 正岡子規 若竹
うつそみに蚊の湧く水の晦(くら)かりき 大野林火 海門 昭和十三年
うつらうつら蚊の声耳の根を去らず 正岡子規 蚊
かくし子の父や蚊の声来り去る 西東三鬼
けふはひとに会はで過ぎにき蚊の声す 大野林火 早桃 太白集
けふ河童忌山中の蚊に食はれけり 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
この庭に蚊の居ることは確かにて 稲畑汀子
こんな蚊が明恵上人を螫しにけむ 阿波野青畝
さがしゐし蚊取香出づかくれ部屋 能村登四郎
さし汐の時の軒端や蚊遺焚く 飯田蛇笏
さびしい手が藪蚊を打つ 種田山頭火 自画像 落穂集
すき腹を鳴いて蚊がでるあくび哉 尾崎放哉 大学時代
すさまじく蚊がなく夜の痩せたからだが一つ 尾崎放哉 小豆島時代
すばらしい乳房だ蚊が居る 尾崎放哉 小豆島時代
ただむきの蚊のあとがふと恥ぢらひぬ 加藤秋邨
ただ蒼し蚊の目無数の歳月は 佐藤鬼房
だんだらの蚊など出る也昼の鐘 正岡子規 蚊
とめどなく嵯峨野の藪蚊打ちしこと 岸田稚魚 筍流し
ねむりつつ平手で打ちし蚊と耳あはれ 篠原梵 年々去来の花 中空
のこる蚊を追ふ校正の朱筆以て 山口誓子
はしり蚊に妻子は遠し酒の中 小林康治 四季貧窮
はつしと蚊を、おのれの血を打つ 荻原井泉水
ぱくと蚊を呑む蝦蟇お嬢さんの留守 西東三鬼
ひでり蚊のはげしきかゆさ身を走り 松崎鉄之介
ひとりで蚊にくはれてゐる 種田山頭火 草木塔
ひるの蚊を打ち得ぬまでになりにけり 石橋秀野
まぐれ蚊を追ひ壁に当つ影法師 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
まこと蚊が一匹居らず羨し 右城暮石 句集外 昭和三十七年
まざまざとわが血の匂ひ蚊を打つて 能村登四郎
まだ生きて糠蚊びつしり海の宿 佐藤鬼房
みづうみの更けししじまや蚊の婦と 森澄雄
よき宿といはれうなづき蚊を払ふ 星野立子
りいと鳴く初蚊や壁の新しく 秋元不死男
わが龍女草庵の蚊に刺されしと 佐藤鬼房
わきかへる藪蚊の中や家一つ 正岡子規 蚊
ナイターのかちまけ知らず蚊遺香 水原秋櫻子 餘生
モツアルト写しにぞ鳴く藪蚊哉 永田耕衣
リレー追ひして蚊を掴む日吉館 右城暮石 散歩圏
一つづゝ殺せども蚊のへらざりき 正岡子規 蚊
一人つめたくいつ迄藪蚊出る事か 尾崎放哉 須磨寺時代
一匹の蚊の浮み出し朝茶の湯 清崎敏郎
一心に物書く男に昼の蚊が鳴けり 尾崎放哉 大正時代
三たび起きて蚊を焼く老となりにけり 村上鬼城
三井の蚊の叡山の蚊を追ひかくる 正岡子規 蚊
下闇や一塊まりの蚊のうなり 正岡子規 木下闇
中腰になりて蚊を打つ男かな 渡邊白泉
佃煮に出来るほどなる大藪蚊 右城暮石 句集外 昭和四十六年
住み慣れしかど馴染まなく蚊の家路 石塚友二 方寸虚実
佛飯ほの白く蚊がなき寄るばかり 尾崎放哉 須磨寺時代
傾城の在所をきけば藪蚊哉 正岡子規 蚊
僧若し頭に木槿から来た蚊 金子兜太
兄妹に蚊香は一夜渦巻けり 石田波郷
先人を食ひし如くに蚊は喰ひぬ 相生垣瓜人 負暄
入相を藪蚊は藪に帰りけり 正岡子規 蚊
公然と螫す蚊のありて歎かるる 相生垣瓜人 負暄
初蚊なり血を吸はせつつ眺めつつ 林翔
初蚊出てまた書架に殖ゆ病句集 大野林火 飛花集 昭和四十四年
初蚊出てわが水割に溺るるよ 安住敦
初蚊鳴く媼の胸乳晴れわたり 飯島晴子
別れ蚊や瓜割の井に立ちつくす 石川桂郎 高蘆
刺しにくる脚に毛のある丹波の蚊 大野林火 方円集 昭和五十三年
十二月十七日を鳴く蚊過ぐ 秋元不死男
南風鳴りの褥尋め来し蚊の姥よ 角川源義
同行に妙楽寺藪初蚊出す 上田五千石 風景
名の寺の藪蚊女色に参じたり 上田五千石『天路』補遺
名物の蚊の長いきや神無月 正岡子規 神無月
君に侑む酒に儷しや蚊の屍 正岡子規 蚊
吸はねばならぬ血を吸うて殺された蚊で 種田山頭火 自画像 落穂集
吾の血に飽きし藪蚊の蹣跚や 相生垣瓜人 明治草
吾も見き吉井勇の嘴太蚊 右城暮石 虻峠
命なり病衣に鳴らす走り蚊は 小林康治 玄霜
哀れ蚊にからかはれてもをりにけり 相生垣瓜人 負暄
哀れ蚊に不敵なる蚊の雜りゐし 相生垣瓜人 負暄
哀れ蚊やねむりぐすりも気安めに 石川桂郎 高蘆
哀れ蚊を憐みて後憎みけり 相生垣瓜人 明治草
商談や門司の蚊が刺す肘曲げて 村山故郷
地震曇りひるをねてゐて蚊に鳴かる 大野林火 海門 昭和七年以前
執念、いま殺した蚊ではない蚊のさしにくる 荻原井泉水
塩壺の吐きし我鬼忌の蚊なりけり 飴山實 辛酉小雪
墓の前去らぬかぎりは昼蚊さす 古舘曹人 能登の蛙
墓原や昼の蚊群れて足をさす 正岡子規 蚊
墓拝む間を籔蚊の命哉 正岡子規 蚊
壁の明るさ蚊はそれ~の影落したれ 種田山頭火 自画像 層雲集
壁の蚊に乗りし雄の蚊ぶら下る 野見山朱鳥 曼珠沙華
夏も末蚊が鉄柵の間にとび 山口誓子
夕ぬかるみひかひかと蚊がゐたりけり 大野林火 海門 昭和七年以前
夕暮や閨灯ともさぬ蚊の狂ひ 正岡子規 蚊
夕澄みて東山あり蚊柱に 日野草城
夕空の夜空にかはる五月の蚊 日野草城
夕立の来て蚊柱を崩しけり 正岡子規 蚊柱
夕風に蚊の流れ行く座敷哉 正岡子規 蚊
夜さり寝ず校合せりし蚊も失せぬ 石塚友二 方寸虚実
夜の蚊に水牛の肌つやつやす 金子兜太
夜ふかく饗宴の酒をすふ蚊かな 飯田蛇笏 山廬集
夜一夜蚊にくはれけり試験前 正岡子規 蚊
夜学して蚊にくはれけり試験前 正岡子規 蚊
夜明けの蚊水牛に人間の子ども 金子兜太
大き蚊と女中ぶあいそ山の宿 百合山羽公 樂土
大き蚊に喰ひつかれをり盆疲れ 百合山羽公 樂土
大木魚われに蚊を吐くいかにせん 山口青邨
大風のあとを蚊の出る山家哉 正岡子規 蚊
女嫌さこそ人螫すは雌の蚊よ 山口青邨
孑孑の藪蚊見送る別れ哉 正岡子規 孑孑
孑孑の蚊になる頃や何学士 正岡子規 孑孑
孑孑の龍とならず蚊と落ちぶれし 正岡子規 孑孑
孝女伝など漁師町蚊遺りの香 佐藤鬼房
宗長を食ひし蚊と見てたたきけり 阿波野青畝
客多き日曜日なり蚊生るる 細見綾子
宵の月蚊をやくひまに隠れけり 正岡子規 蚊
寝て聞けば遠き昔を鳴く蚊かな 尾崎放哉 大学時代
寺の蚊のすぐ来てさしぬ帰るべし 星野立子
寺の蚊の痩せて参詣の人を刺す 正岡子規 蚊
小さい蚊の青い夏がきている 荻原井泉水
小さき蚊のゐて刺す耳のうしろかな 右城暮石 散歩圏
屍のごとき素壺るいるい蚊の声す 角川源義
山の夜のねむさも過ぎぬ蚊の姥と 森澄雄
川端に住ンで流すや蚊を焼く火 村上鬼城
師を看取り蚊に喰はれゐる弟子五人 松崎鉄之介
弟よ河はなくとも初蚊鳴く 飯島晴子
待つ夜半を蚊になぶられて端居哉 正岡子規 蚊
後手後手にまはりてゐたる初蚊かな 飯島晴子
志比谷の蟆子も蘆原の蚊も厳し 阿波野青畝
念仏のとぎれけり蚊をたゝく音 正岡子規 蚊
念仏や蚊にさゝれたる足の裏 正岡子規 蚊
惘として在れば刺すなり昼蚊さへ 林翔 和紙
我宿は椎の木深く蚊の多き 正岡子規 蚊
我顔を蚊にくはせたる思ひかな 正岡子規 蚊
戦時の窟人間くさき蚊が棲むよ 鷹羽狩行
打たれよいところ捜しあててとまる蚊か 荻原井泉水
打ちし蚊の磔刑のごとく壁にあり 篠原梵 年々去来の花 中空
打ちすつる藪蚊乾坤一握に 古舘曹人 能登の蛙
摩周湖の神秘なる蚊に喰はれけり 稲畑汀子
撃ちし蚊にみどりも紅も亦黄もなし 中村草田男
数ふべし蚊に食はれたるその痕も 相生垣瓜人 負暄
方違の水一握に蚊の声す 角川源義
旅衾露の蚊を撲ちくさめ落つ 角川源義
日中の蚊のあとかゆき花石榴 右城暮石 句集外 昭和十五年
日本人墓地守る 藪蚊に草刈鎌 伊丹三樹彦
日焼乗らぬ腕にて非情蚊のこゑす 野澤節子 未明音
是非もなや足を蚊のさす写し物 正岡子規 蚊
昼の蚊たたいて古新聞よんで 尾崎放哉 須磨寺時代
昼の蚊に水牛の眼の大きさよ 金子兜太
昼の蚊のこゑの卑しき藪の中 飯田龍太
昼の蚊の何かささやく死者生者 角川源義
昼の蚊の廻向し居れば我をさす 正岡子規 蚊
昼の蚊の曳くこゑ弁財天のこゑ 鷹羽狩行
昼の蚊の来てはとまるや種が島 正岡子規 蚊
昼の蚊やぐつとくひ入る一思ひ 正岡子規 蚊
昼の蚊や円休寺借屋と申して 正岡子規 蚊
昼の蚊や納戸に在すかくれ神 能村登四郎
昼の蚊を払ひ庵主のごとく坐す 鷹羽狩行
昼寝僧の肩に沈み裾へ浮く蚊かな 原石鼎 花影
昼蚊鳴く汽船会社に青い本 秋元不死男
晝の雲消え去つて蜻蛉蚊の如し 正岡子規 蜻蛉
暁やまだ血にあかぬ蚊のうなり 正岡子規 蚊
暑さにも蚊にも負けしを認めけり 相生垣瓜人 負暄
書を読むや蚊にさゝれたる足の裏 正岡子規 蚊
朝の蚊の声泥の声水牛に 金子兜太
朝の蚊を逐ひつつ病めり父の日も 日野草城
朝皃の蚊に食はれ立つ雨のあと 右城暮石 句集外 昭和九年
朝風に蚤蚊の跡をさましけり 河東碧梧桐
木枯の作る風蚊踏みて行く 高浜年尾
木槿まだ蕾にて蚊に螫されけり 右城暮石 句集外 昭和十六年
本堂の隅にかたまる藪蚊哉 正岡子規 蚊
本堂の隅に蚊のなく真昼かな 正岡子規 蚊
本還る挟まつて蚊の縞押葉 秋元不死男
来寄る蚊や夢の青山高樹町 石塚友二 磯風
松白帆されど蚊も居り蝿も居る 正岡子規 蚊
枕せば蚊ごゑ横引くひとの家 橋本多佳子
枝柿を貰ふふはふはと蚊のたてり 大野林火 方円集 昭和五十二年
棲みすてし庵や藪蚊人したひ 山口青邨
椎の花餅を搗く蚊のこぼしけり 阿波野青畝
楽茶碗作る手を蚊の刺しにくる 阿波野青畝
殘る蚊の痩せてあはれや施餓鬼棚 正岡子規 施餓鬼
母の忌の蚊の姥より来雨滴声 角川源義
母も子の机に坐る蚊遺香 山口誓子
氏祭これより根岸蚊の多き 正岡子規 蚊
水捨る草むらを蚊の鳴て出る 正岡子規 蚊
水無月の蚊の生れ出づ笹の葉に 右城暮石 句集外 昭和十六年
水郷や家くゞらする蚊を焼く火 村上鬼城
沖館は潮の香もなし藪蚊どの 佐藤鬼房
泉屋の壓(ママ)に蚊の鳴く夕哉 正岡子規 蚊
泉掬ぶ顔ひややかに鳴く蚊かな 飯田蛇笏 山廬集
波音の大王岬の蚊と生れ 波多野爽波
洞窟にあり生きのこる蚊とともに 山口誓子
浄閑寺昔の声で蚊が鳴けり 岡本眸
海女たちを刺して大きな安乗の蚊 高野素十
涼しうて蚊にくはれたる乳房かな 日野草城
涼しくてまこと蚊鈎のごときひと 飯田龍太
湧く風よ山羊のメケメケ蚊のドドンパ 渡邊白泉
濁流や重き手を上げ藪蚊打つ 西東三鬼
灯ともすや蚊の声さわぐ石燈籠 正岡子規 蚊
灯ともせば蚊の騒ぎ立つ祠かな 正岡子規 蚊
灯れば蚊のくる花柿の葉かげより 杉田久女
爽やかな芭蕉葉よ蚊が手に止る 細見綾子 桃は八重
物のけの消えて屏風に蚊の声す 正岡子規 蚊
物書きさして蚊を焼く夜半の気狂はし 正岡子規 蚊
王城さん嵯峨の藪蚊は大きかろ 日野草城
男のみかたまり痛き蚊に刺さる 右城暮石 句集外 昭和四十六年
病める子に蚊ばしら崩す風あれよ 能村登四郎
病人の蚊にうち負し団哉 正岡子規 蚊
病人の起きて蚊を焼く夜半哉 正岡子規 蚊
病床に心いらちて蚊を叩く 正岡子規 蚊
痛き蚊に刺さる石仏群の中 右城暮石 句集外 昭和四十六年
癩の血を吸ひし蚊われに近づき来 草間時彦 中年
白日の夢の内外藪蚊棲む 原裕 青垣
白髪殖ゆうすうすと蚊の水に死し 秋元不死男
百足屋も白蚊絣も昔かな 石川桂郎 高蘆
皆来れ日本の者は蚊も蚤も 正岡子規 蚊
盆もせぬ藪蚊地蔵を信心す 百合山羽公 樂土
眠れねば眠らずに居り蚊姥と 石田波郷
石階に蚊を肉厚の掌もて打つ 佐藤鬼房
磨かれて板襖蚊をそらすかな 石川桂郎 高蘆
神が蚊に螫せよ食へよと命じけむ 相生垣瓜人 負暄
禅寺の大き黒蟻大藪蚊 右城暮石 句集外 昭和五十五年
稚魚放つほとり蚊のこゑ紗のごとし 飯田龍太
空腹を蚊にくはれてゐる 種田山頭火 草木塔
空臑に蚊や微び次ぎ焦ち読む 石塚友二 方寸虚実
簑かけて座敷にも蚊の宿り哉 正岡子規 蚊
籾を焼くけむり地を這ふ蚊焼打 能村登四郎
紫陽花のあたり蚊の出てゐたりけり 右城暮石 句集外 昭和二年
絨毯にひそみてをりし蚊に刺さる 右城暮石 天水
網戸の隙を通過せし蚊ぞ敬はむ 林翔
縁先の夕方時の蚊の唸り 高浜年尾
縷のごとく初蚊の声のひきにけり 富安風生
縷のごとく女人のこゑや蚊ふすべす 飯田蛇笏 山響集
纒ふ蚊の一つを遂に屠り得し 日野草城
老い伯母に蚊が鳴く生家すでに廃家 金子兜太
老い先を思ひゐて蚊に食はれけり 相生垣瓜人 負暄
老躯をも痩躯をも蚊は選ばざる 相生垣瓜人 明治草抄
老骨や藪蚊いつぴき打ちし音 百合山羽公 樂土以後
肘ついて蚊の一こゑを聞きながす 阿波野青畝
臼杵鬱金の佛頭に逢ひ蚊にあひぬ 岡井省二 前後
苔の蚊の縞はつきりと見せてゐる 右城暮石 句集外 昭和十三年
茄子もぐや天地の秘事をさゝやく蚊 杉田久女
草の戸や君に逢ふ夜を蚊の多き 正岡子規 蚊
草の戸や蚊の餌に足らぬ吾一人 正岡子規 蚊
草以忌の焼香の闇蚊に食はれ 松崎鉄之介
草庵の客や藪蚊に慕はるる 相生垣瓜人 負暄
蒼茫とわれも暮れつつ五月の蚊 日野草城
蕗折れば昼の蚊さわぎ蟇出でぬ 正岡子規 蚊
藪蚊さす雑草園の蚊より執 山口青邨
藪蚊とて形見のひとつ粕谷村 角川源義
藪蚊には呑まれけり又食はれけり 相生垣瓜人 負暄
藪蚊には頻にぐさと刺されけり 相生垣瓜人 明治草
藪蚊より注射の針ぞ辣しかる 相生垣瓜人 明治草
藪蚊刺す八つ谷原の長命寺 山田みづえ 草譜
藪蚊等は我を好餌となしをれり 相生垣瓜人 負暄
蚊か蝿か蚤か蝨か孑孑か 正岡子規 蚊
蚊が一つまつすぐ耳へ来つつあり 篠原梵 年々去来の花 雨
蚊が行くや欧洲現勢壁の地図 石塚友二 方寸虚実
蚊さされに草汁つけて老いんとす(奈良、右城暮石氏居) 細見綾子
蚊たたいて子規遺墨集一瞥す 阿波野青畝
蚊とんぼの必死に交む一夜きり 山口誓子
蚊とんぼの袖にとりつく滝見かな 飯田蛇笏 山廬集
蚊にくはれ政党論を草しけり 正岡子規 蚊
蚊に刺さるラジオ聴かざる宵にして 山口誓子
蚊に暮れし草家草家の傾ぎざま 臼田亜郎 定本亜浪句集
蚊に食はる生き長らへし罰ならむ 相生垣瓜人 負暄
蚊に食はれ藪蚊に食はれ血が減りぬ 相生垣瓜人 負暄
蚊に餌をわが血を遣りぬ悔むまじ 林翔
蚊に馴れて能く寝る室の遊女哉 正岡子規 蚊
蚊のあとのほてるしもつけ月夜かな 大野林火 方円集 昭和五十三年
蚊のくるや本箱のすき壁のやれ 正岡子規 蚊
蚊のことの九月四日の日記あり 高野素十
蚊のこゑと活字はかなむ夕焼に 野澤節子 未明音
蚊のこゑをまのあたり齢かさねけり 松村蒼石 雪
蚊のつばさひろし湖畔のドアもひろし 永田耕衣
蚊のとまる顱頂をたたき庭案内 山口青邨
蚊のむれて碁打二人を喰ひけり 正岡子規 蚊
蚊の中におはすがごとし閻魔王 阿波野青畝
蚊の中に問ひつ答へつ人二人 正岡子規 蚊
蚊の中に孀めしくふ一人かな 正岡子規 蚊
蚊の口もまじりて赤き汗疣哉 正岡子規 汗
蚊の墓の人後麦草佇つごとし 角川源義
蚊の声す照射の留守の人もなし 正岡子規 照射
蚊の声す飯食喞つ妻の方 小林康治 四季貧窮
蚊の声にらんぷの暗き宿屋哉 正岡子規 蚊
蚊の声に猫が鼠をとりに行く 飯田龍太
蚊の声に雨雲かゝる小村哉 正岡子規 蚊
蚊の声に馴れて遊女の眠り哉 正岡子規 蚊
蚊の声のうろつく五臓六腑かな 金子兜太
蚊の声のする冷し飴すすりけり 岸田稚魚 紅葉山
蚊の声のひそかなるとき悔いにけり 中村草田男
蚊の声の一隅燈す一夜庵 原裕 青垣
蚊の声の中に子の泣く伏屋哉 正岡子規 蚊
蚊の声の夕焼は濃くなりまさり 大野林火 早桃 太白集
蚊の声の微塵にみやまなるこゆり 川端茅舎
蚊の声の糸引く声が鉄壁へ 西東三鬼
蚊の声は床のあやめに群れにけり 正岡子規 蚊
蚊の声もよわる小道の夜明哉 正岡子規 蚊
蚊の声やうつゝにあふぐ灯の一つ 西島麦南 人音
蚊の声やうつゝに叩く写し物 正岡子規 蚊
蚊の声やひと日机辺に縛されて 石塚友二 磊[カイ]集
蚊の声やをろち神楽の大道具 角川源義
蚊の声や和泉が城は青田なり 角川源義
蚊の声や墨東綺譚青挿絵 大野林火 飛花集 昭和四十七年
蚊の声や夜更くる程に太りける 正岡子規 蚊
蚊の声や夜深くのぞく掛け鏡 飯田蛇笏 霊芝
蚊の声や徂徠先生の墓懐かし 石川桂郎 四温
蚊の声や死に日にあへぬ顔いくつ 秋元不死男
蚊の声や西院の川原の業ぐるま 角川源義
蚊の声や遠流の一夜岬神と 角川源義
蚊の声や青嶺の裾の寝棺墓 角川源義
蚊の声を分て出たりひきかへる 正岡子規 蟇
蚊の声を掴みたるあともの言はず 鷹羽狩行
蚊の夕ベ人間水牛より寂し 金子兜太
蚊の多きこと茅屋の活気なり 百合山羽公 樂土
蚊の多きひまな手多き団哉 正岡子規 団扇
蚊の多き一新講の宿屋哉 正岡子規 蚊




蚊の多き根岸の庵や小説家 正岡子規 蚊
蚊の姥の名こそよけれと見おくりぬ 飯島晴子
蚊の姥の生きるも死ぬも孤りかな 安住敦
蚊の姥の竹生島より来りしか 燕雀 星野麥丘人
蚊の姥やけうときものに遺訓など 上田五千石『天路』補遺
蚊の居らぬ月見て沖の楫枕 正岡子規 蚊
蚊の影や讌(うたげ)はてたる白襖 西島麦南 人音
蚊の微光元義の歌ぞかかりける 永田耕衣
蚊の柱ちりもおほせず二日月 阿波野青畝
蚊の死んで本のあはひに哀れ也 正岡子規 蚊
蚊の汝は知るや男の香女の香 山口青邨
蚊の狂ふたそかれ時の化粧哉 正岡子規 蚊
蚊の細声牛の太声誕生日 西東三鬼
蚊の聲の一切経を蔵したり 古舘曹人 砂の音
蚊の落つる音の嬉しき油団哉 前田普羅 普羅句集
蚊はしらの川わたりゆくゆふへ哉 正岡子規 蚊柱
蚊ばしらや眉のほとりの空あかり 飯田蛇笏 山廬集
蚊も居らず出水のあとの淋しさよ 正岡子規 蚊
蚊も蟻も憎みて吾を螫すらしも 相生垣瓜人 明治草
蚊をうちし手のかしは手となりてひびく 篠原梵 年々去来の花 雨
蚊をかたき風を身方のすゝみ哉 正岡子規 蚊
蚊をたゝくいそがはしさよ写し物 正岡子規 蚊
蚊をとらふ眼が金屏の剥落に 古舘曹人 能登の蛙
蚊を叩き「墨汁一滴」よごしたり 阿波野青畝
蚊を叩く音も更けたる夜学哉 正岡子規 蚊
蚊を呑んで大やもり眼をしばたゝく 日野草城
蚊を家に引き込む野良衣よごれては 松崎鉄之介
蚊を打ちしてのひら白く夏をはる 桂信子 月光抄
蚊を打つてぴしりとひびく人の肌 日野草城
蚊を打つて大きな音をさせにけり 村上鬼城
蚊を打つて弱気になりし坊泊り 岸田稚魚 筍流し
蚊を打つて我鬼忌の厠ひゞきけり 飴山實 少長集
蚊を打つて軍書の上に血を印す 正岡子規 蚊
蚊を打つや今切の波は音もなし 岸田稚魚 雁渡し
蚊を打つや今切の波音もなし 岸田稚魚 負け犬
蚊を打てば巌百尺の響あり 古舘曹人 砂の音
蚊を払ふ顔のまともを見られけり 中村汀女
蚊を摶つて三鬼の肉(しし)が闇鳴らす 秋元不死男
蚊を摶つて頬やはらかく癒えしかな 石田波郷
蚊を焼くや寝顔に蝋を落しけり 正岡子規 蚊
蚊を燃くや君か寝顔のうつゝなき 正岡子規 蚊
蚊を連れて和邇神の森入りて出づ 角川源義
蚊一つを訴ふるなり月の客 前田普羅 能登蒼し
蚊不死の見たくない山ばかりなり 飯島晴子
蚊出初め雅やかに一二匹ゐる 細見綾子 桃は八重
蚊子はも我が鉄蹠を咬み得たり 相生垣瓜人 明治草
蚊捨てにてくてくゆけば蛇が覘く 金子兜太
蚊攻めの学僧怒りがちなる皺眼 金子兜太
蚊柱がまだ立つてラインの館 後藤比奈夫
蚊柱にたどりつきたるわが媼 飯島晴子
蚊柱に夕空水のごときかな 日野草城
蚊柱のわれを否みて傾ける 中村汀女
蚊柱の下にかしまし三百人 正岡子規 蚊柱
蚊柱の中に相撲とる童かな 正岡子規 蚊柱
蚊柱の二タ間の農家開け放ち(故郷丹波芦田村) 細見綾子
蚊柱の別れて消ゆる槻の闇 石橋秀野
蚊柱の奥なほ暮れぬ高嶺あり 飯田龍太
蚊柱の見事立ちけり池の上 正岡子規 蚊柱
蚊柱やくづれては又くづれては 正岡子規 蚊柱
蚊柱やふとしきたてゝ宮造り 正岡子規 蚊柱
蚊柱やほつれほつれてふしの山 正岡子規 蚊柱
蚊柱や丁稚ものよむ椽の先 正岡子規 蚊柱
蚊柱や不幸に丈のありとせば 鷹羽狩行
蚊柱や吹きおろされてまたあがる 村上鬼城
蚊柱や吹浚はれて余所にあり 阿波野青畝
蚊柱や夕栄広き須磨の浦 正岡子規 蚊柱
蚊柱や子の一日終ふ母の背に 岸田稚魚 雁渡し
蚊柱や楠の幹にも立ならひ 正岡子規 蚊柱
蚊柱や死ねばしまらく尊まれ 上田五千石『天路』補遺
蚊柱や漁村尽くつぶれたり 正岡子規 蚊柱
蚊柱や鐘楼の方に草深し 河東碧梧桐
蚊母樹の実に妙音を掘り出さぼやな 阿波野青畝
蚊絣の紺のにほへる釣忍 石川桂郎 四温
蚊蚋の類も吾の虚を突けり 相生垣瓜人 明治草
蚊蛯を知己といひつつ老母微笑 山田みづえ 木語
蚊起きあがる倒れし馬の起きる様 中村草田男
蚊遺して暁起きのささのゆき 水原秋櫻子 殉教
蚊遺時浅沼に鳴く魚のあり 中川一碧樓
蚊遺香赤き箱より出しけり 山口青邨
蚊鳴き出づ梅雨を怖るる汝を思へば 大野林火 白幡南町 昭和三十年
蚤と蚊に一夜やせたる思ひ哉 正岡子規 蚤
蚤ならぬ蚊ならぬ虫も戒めむ 相生垣瓜人 微茫集
蝿を打ち蚊を焼き病む身罪深し 正岡子規 蝿
螫しまとふ十月の蚊を憤る 日野草城
螫す力弱まりし蚊や膝に飼ふ 石塚友二 方寸虚実
螫す蚊より螫さるる我の劣るらし 相生垣瓜人 負暄
螫す蚊痛し花いつまでも百日紅 右城暮石 声と声
蟻の螫す痛さ藪蚊の螫す痛さ 相生垣瓜人 負暄
蠅を打ち蚊を打ち我を打つ 種田山頭火 草木塔
蠅を打ち蚊を打ち生を衛りけり 相生垣瓜人 負暄
蠅叩もて蚊を叩くより憎く 山口青邨
血に古き血はなし山の蚊を打つて 鷹羽狩行
血に飢ゑて源流に棲む藪蚊なり 津田清子
血ふくれて畳する蚊のにくさ哉 正岡子規 蚊
血ぶくれて蚊のはひありく夜明哉 正岡子規 蚊
衣とりし壁にとまりし昼蚊かな 原石鼎 花影
衣を売るや蚊群の一蚊憑きまとふ 細谷源二 砂金帯
西方といえども藪蚊隠れ哉 永田耕衣
親の血を吸てとぶ蚊のにくさ哉 正岡子規 蚊
解らぬ句の草田男にくし蚊のにくし 松崎鉄之介
貌暮れぬ風さはり蚊の声さはり 日野草城
走り蚊や上り榧の焜炉の火 村山故郷
走り蚊や擁きて胸の奥温む 小林康治 玄霜
走り蚊や明日は忘るる小悪事 草間時彦 中年
走り蚊や胸に棘なす一昇進 草間時彦 中年
走り蚊を打ちそこねたる音らしき 岸田稚魚 紅葉山
足の蚊を焼くや足の毛を焼きにけり 正岡子規 蚊
足利市隈なき花火蚊が太し 平畑静塔
蹠を蚊に食はれ何か言ひ足らぬ 加藤秋邨
遁れては瓶花にひそむ蚊をにくめり 臼田亜郎 定本亜浪句集
遁れゆきかへり来る蚊を殺したり 山口誓子
遊ぶかに蚊のとびわたり濃きミルク 中村草田男
里長や蝿の牛部屋蚊の木部屋 正岡子規 蝿
鈍の吾鋭の藪蚊に食はれけり 相生垣瓜人 負暄
鈍重な女の愛や蚊を連れて 西東三鬼
鎌倉に蚊が出て櫻月夜かな 石塚友二 磯風
闇の底に沈みゆく心鳴く蚊かな 臼田亜郎 定本亜浪句集
露の掌に血の美しや蚊は空し 川端茅舎
露の蚊の声を憎まずして殺す 川端茅舎
露の蚊やつぶせば我が血すひゐしよ 川端茅舎
青い蚊の髭もつてゐてつままるる 臼田亜郎 定本亜浪句集
風来の藪蚊にぐさと刺されけり 相生垣瓜人 負暄
風蚊のぐん~変る東風強し 高浜年尾
飛蚊症ではなかった 印度蜻蛉群 伊丹三樹彦
飢ゑし蚊に朝の血与ふ庭掃除 林翔
首塚や蜻蛉の如き藪蚊飛ぶ 正岡子規 蚊
鮓の香を慕うて出たる昼蚊かな 日野草城
鮫も蚊も人を食ふべく定めらる 相生垣瓜人 負暄
鼾声雷ノ如シ蚊にくはれ居る酔倒れ 正岡子規 蚊

蚊 続補遺

*かやに蚊のふたつ三つ夜は明に鳧 馬場存義
あさ顔の握りしめるや蚊の命 為有
あぢさゐやよれば蚊の鳴花のうら 加藤曉台
あぶれ蚊のほめかぬ壁を便りかな 上島鬼貫
あまた蚊の血にふくれ居る座禅哉 炭太祇
いちご取手に蚊の飛や草の上 杜若
いんぎんに蠅は行けり蚊の夕 井上士朗
うき人に蚊の口見せる腕かな 黒柳召波
うち明て蚊に留守まもる涼哉 梢風尼
おどり子は橘に蚊の舎りかな 桑夫 江戸名物鹿子
かぎりなや蚊までもそだつ海の上 小西来山
かつしかの蚊に寝かねつゝ椎の月 夏目成美
くやしくも蚤蚊にふるや称名寺 鈴木道彦
こゝろよやけふの浴に蚊が迯る 小西来山
しぐれ見る窓へ蚊一ツ入にけり 桜井梅室
すむ人を蚊はわめき出す小家哉 尚白
そろ~と蚊もなき出る持仏かな 句空
ひるの蚊の顔に鳴り行広間かな 炭太祇
ほとゝぎす蚊の死に行山路かな 朱拙
ほとゝぎす蚊は初声より扣かるゝ 琴風
わびぬれば蚊の入かやもたのむ也 夏目成美
七ツ毛の蚊にくるしむや足疾鬼 其角
三日月や窓の障子の蚊の歩み 子珊
三日月や蚊の散曇るといふ間 一笑(金沢)
三月に蚊の声まじる閏哉 浪化
人につく蚊の羽はにくし星の橋 野坡
人待て加茂川わたる昼蚊かな 五明
六月や白い蚊のたつ蓬はら 鈴木道彦
出そめし蚊を見て居れば喰ひけり 鈴木道彦
別れ蚊のつよくさしけり捨坊主 高桑闌更
又かしまし蚊の声明て木挽町 露言 坂東太郎
古里や蚊に匂ひける栢のから 井原西鶴
吸せつゝ蚊を吹やりぬ書の窓 三宅嘯山
命也月見る我をくふ蚊まで 松窓乙二
喰ふた蚊のあちらの舟へ退にけり 三宅嘯山
夏の月蚊を疵にして五百両 其角
夕ぐれは蚊に浮世めく住居かな 成田蒼虬
夜あけたる李白かこしにたもの蚊 大江丸 はいかい袋
子が泣や蚊をうち蚤を探る夜半 長翠
子やなかん其子の母も蚊の喰ン 嵐蘭
宵の蚊も枕をわたる八声かな 其角
宵越のとうふ明りや蚊のさわぐ 小林一茶
小庇や盥とられて蚊の迷ひ 鈴木道彦
尻べたの蚊を打芋の葉風かな 建部巣兆
山の井を覗けば答ふ藪蚊哉 桃隣
山の蚊の觜とがる茂りかな 許六
山里の蚊は昼中に喰ひけり 去来
年越た蚊の出初けりはるの雨 三宅嘯山
広袖は蚊の世話になる夕まろび 為有
後に飽く蚊にもなぐさむ端居かな 上島鬼貫
後の世や蚊をやくときにおもはるゝ 成美 成美家集
御影像の蚊を追払ふ泪かな 田川鳳朗
恋のためにあらず蚊にやるひざがしら 去来
我にあまる罪や妻子を蚊の喰ふ 露印
我につらし起て蚊をやく君が顔 高井几董
我ひとり喰て浅茅に鳴蚊かな 桜井梅室
手拍子にうたれたる蚊の命哉 小春
打て来る蚊の尋常に名乗けり 三宅嘯山
旅に病て蚊の臑見るも心ぼそ 望月宋屋
日の入や蚊の湧かへる若楓 浪化
早舩に漕すてられて鳴蚊哉 田川鳳朗
明がたや蓮見に出て蚊に喰れ 桃隣
星の夜の寐られぬ罪や蚊がはいる 小西来山
昼の蚊に線香さびし草の庵 〔ブン〕村
昼の蚊や机の下のかくし酒 桜井梅室
暮の蚊の馬に啼よる戸口かな 長翠
月代をさはぎたてけり蚊のうなり 苔蘇
朝日さす紙帳の中や蚊の迷ひ 丈草
未覚ぬ戸あり蚊のたつ山かづら 三宅嘯山
杉たつる門に蚊の鳴しぐれ哉 高井几董
植込の蚊に罵レる女かな 黒柳召波
楽しいか打手の下の蚊のこゝろ 加藤曉台
橘の一ッニッは蚊もせゝれ 其角
欄干に独蚊しばくきせるかな 乙訓
油火に蚊とはいはずよ夏の虫 加舎白雄
烏ゆく蚊はいづくより昏の声 其角
独寝や夜わたる男蚊の声侘し 智月尼
瓜の葉に蚊のほそり出る夕月よ 野径
畫出るは其殺された幽霊蚊 小西来山
白壁に昼の蚊眠るすがた哉 一笑(金沢)
白桃や葛飾に蚊の啼き初むる 朽木 犬古今
碁の過て蚊の口かくぞ閙しき 及肩
祖母さまを蚊に喰はすなよ月の影 乙訓
竹の子に出るや藪蚊の小紋がた 許六
竹伐つて蚊の声遠き夕べかな 白雄 白雄句集
竹切て蚊の声遠き夕かな 加舎白雄
笛吹の蚊にくはれけり口の端 許六
絮の飛日暮なりしか柳の蚊 寥松
芒から蚊の出る宿に泊りけり 建部巣兆
芦が屋が蚊にはなるまじすみだ川 寥松 八朶園句纂
苗の色蚊のなき里のやうす哉 松窓乙二
茶のたてや蚊ふすべによるかり枕 含粘
草の戸の草に住蚊も有ときけ 炭太祇
草枕蚊に施行とて喰せけり 兀峰
菅薦の三苻に寐る人蚊や追し 望月宋屋
蕗の葉に鳴出る蚊や黴雨晴 洒堂
藻の花に涼しき夢や蚊蜻蛉 塵生
蚊にさめてねぶとつぶせるかりね哉 一笑(金沢)
蚊に施行ひくや捨子の丸はだか 魚日
蚊に起てお皃さびしや弥勒仏 松窓乙二
蚊のありつなかりつ月の船路哉 炭太祇
蚊のうせて夜の奇麗な木の間哉 田川鳳朗
蚊のくらふ肱も気味よきこけ寐哉 寥松
蚊のこゑや床よりおろす書物箱 文鳥
蚊のすねも達者に見ゆる夏のうち 杉風
蚊ののらぬ所までいざ涼み舟 惟然
蚊のひとつ来初る宵の曇り哉 猿雖
蚊のむれて栂の一木の曇けり 小春
蚊のよはく芦の村穂のたつ夜哉 乙訓
蚊の中に泣鬼見せつ眼の光り 鈴木道彦
蚊の声にかはる夜もありきり~す 露川
蚊の声にはいりかねたる湯殿哉 露川
蚊の声に猪の迯入深山哉 寂芝
蚊の声のしらむに寂し軒の雨 水間沾徳
蚊の声のむら竹洩るゝ烟りかな 高桑闌更
蚊の声の中にいさかふ夫婦かな 李由
蚊の声の有所までくもりけり 紫白女
蚊の声の目口を過るうき世哉 黒柳召波
蚊の声の鼻へ鳴入寐ざめ哉 一笑(金沢)
蚊の声は打も消さぬよ雨の音 炭太祇
蚊の声もうつ心なき四月かな 高桑闌更
蚊の声も人にそばゆる川辺哉 路通
蚊の声やもち搗内の一夜酒 土芳
蚊の声や太皷櫓のくづれ口 許六
蚊の声や片明るきに湯殿口 雪芝
蚊の声や酒うる舟に付て来る 望月宋屋
蚊の声をちらしかけたり郭公 路健
蚊の声をはたけば痛し耳のたぶ 史邦
蚊の有に胯るふりや稚がほ 炭太祇
蚊の痩て鎧のうへにとまりけり 一笑(津島)
蚊の眉に霜は置ずやあらち山 尚白
蚊の羽根や人に渡せるほしのはし 野坡
蚊の觜の糸筋に血の通ひけり 三宅嘯山
蚊の食ふもの~しゝや古五輪 一笑(金沢)
蚊の鳴に目に見ぬ鳥も声そふか 諷竹
蚊はおろか螢もはいる壁の穴 桜井梅室
蚊は名乗けり蚤虫はぬす人のゆかり 其角
蚊は行や酔人の足に朝日さし 井上士朗
蚊ばしらの際ほの~と三日の月 牧童
蚊ばしらやかさゝぎ寐つく天の河 野坡
蚊ばしらや棗の花の散るあたり 加藤暁台
蚊ひとつに夕ぐれをしるさくらかな 卓池
蚊ひとつに青空ちかきゆふべかな 松窓乙二
蚊ふすべの中にこゑあり念佛講 小西来山
蚊も喰はで慈悲心鳥の鳴音哉 高桑闌更
蚊も蝿もみなつき流せ御祓川 其角
蚊やくらふ足かきながら高鼾 卯七
蚊をうてば我血も共にあやしけり 三宅嘯山
蚊をひとつ我さかむけに招きけり 尚白
蚊をひとつ打ころしけり経の中 句空
蚊をやくや褒[じ]が閨の私語 宝井其角
蚊をやくや褒似が閨の私語 其角
蚊をよけて親の鼾や郭公 上島鬼貫
蚊を打や枕にしたる本の重 其角
蚊一つに寐られぬ弥生三十日哉 重五
蚊一つに身をくれかねて宵寐哉 松岡青蘿
蚊処や住む身となれば臂まくら 寥松
蚊柱にゆめのうき橋かゝる也 宝井其角
蚊柱に夢の浮はしかゝる也 其角
蚊柱は夕がほ棚のひかへかな 釣壺
蚊柱もころぶ時あり夕あらし 魯九
蚊柱や蜘蛛の工のうら手より 高井几董
蚊柱や通つて見れば通らるゝ 成田蒼虬
蚊柱や鵲寐付あまの河 野坡
血を分ケし身とは思はず蚊のにくさ 丈草
象潟や汐焼跡は蚊のけぶり 不玉
足提て蚊の行違ふ月夜かな 非群
軒裏に去年の蚊動く桃の花 上島鬼貫
通し給へ蚊蝿の如き僧一人 小林一茶
鉄のうしにとりつく藪蚊かな 孤屋
閑静をほめて昼蚊にさゝれけり 桜井梅室
関の戸に蚊を建出すや筥根山 許六
餅ひとつ鬼が蚊をのむ鈴鹿哉 句空
鬼灯の立ながら蚊に吸れけり 三宅嘯山
鬼灯や蚊に食はれじとから衣 百寿 類題発句集
魂棚や蚊は血ぶくれて飛びありく 上島鬼貫
鵜ぶね見や蚊にたち歩行蓬原 野坡
鶏をつゝみまはして啼蚊哉 桃先
鶏啼て卵吸ふ蚊はなかりけり 其角
鶯や夏は蚊の居る藪ながら 馬場存義
鼻にいり咽に鳴蚊の夕哉 尚白

以上
by 575fudemakase | 2016-06-02 07:00 | 夏の季語


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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