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梅雨01

梅雨01

春の月ありしところに梅雨の月 高野素十
梅雨晴や蜩鳴くと書く日記 梅雨晴 正岡子規
梅雨晴や蜩鳴いて松の風 梅雨晴 正岡子規
梅雨晴の朝日に松の雫かな 梅雨晴 正岡子規
降るものにして日和は梅雨のまうけもの 梅雨晴 正岡子規
梅雨晴れんとして上野の鳶の低く舞ふ 梅雨晴 正岡子規
梅雨晴や上野の鳶はいつも鳴く 梅雨晴 正岡子規
梅雨晴や太鼓打ち出す芝居小屋 梅雨晴 正岡子規
梅雨晴れて某日夕立来るかな 梅雨晴 正岡子規
梅雨晴れて水無月の風窓に吹く 梅雨晴 正岡子規
五月雨晴や大仏の頭あらはるゝ 梅雨晴 正岡子規
梅雨晴や窓を開けば上野山 梅雨晴 正岡子規
梅雨晴やふじひつかゝる蜘の網 梅雨晴 正岡子規
入梅晴やあつい天気にとりかゝる 梅雨晴 正岡子規
梅雨晴や朝日にけぶる杉の杜 梅雨晴 正岡子規
梅雨晴やかびにならずふじの雪 梅雨晴 正岡子規
入梅晴や風にもどりし夏柳 梅雨晴 正岡子規
梅雨晴やけさ天窓の煤のいろ 梅雨晴 正岡子規
梅雨晴の風に戻りし柳哉 梅雨晴 正岡子規
入梅晴やあかるい雲にこのあつさ 梅雨晴 正岡子規
梅雨晴にさはるものなし一本木 梅雨晴 正岡子規
入梅晴の朝より高し雲の峰 梅雨晴 正岡子規
梅雨晴やところところに蟻の道 梅雨晴 正岡子規
夕飯のきまらぬ梅雨の日頃かな 梅雨 正岡子規
都にも梅雨ありされど酒もあり 梅雨 正岡子規
玉川に布見ぬ梅雨の日数哉 梅雨 正岡子規
梅雨淋し障子の外を烏とぶ 梅雨 正岡子規
一梅雨を羽黒にこもるひじり哉 梅雨 正岡子規
長靴のたけに余るや梅雨の泥 梅雨 正岡子規
春の月ありしところに梅雨の月 高野素十「雪片」
木天蓼の葉の白みゆく梅雨の月 片山由美子 風待月
中空に梅雨の月とはいへず澄み 深見けん二 日月
梅雨の富士梅雨の深さにそびえたる 阿部ひろし
ふんばれる両脚の指梅雨厠 高澤良一 暮津
荒梅雨にぶっくさ云ひても始まらぬ 高澤良一 暮津
ポッチャンと跳ねしは梅雨の稚魚でした 高澤良一 暮津
梅雨の湯舟に銀座カンカン娘の唄 高澤良一 暮津
梅雨水輪クサガメ鼻を没しけり 高澤良一 暮津
梅雨晴間うどん粉病をやむ植木 高澤良一 暮津
自動点滅街灯梅雨の灯を点す 高澤良一 暮津
梅雨深む湿生花園に草蓮玉(クサレダマ) 高澤良一 暮津
白き制服東海道線梅雨車中 高澤良一 暮津
じはじはと梅雨に入りけりバナナに斑 高澤良一 暮津
梅雨を来て匂ひに匂ふ塵芥車 高澤良一 暮津
だんご虫愛づる姫君梅雨の庭(孫美雨) 高澤良一 暮津
徒然に十薬引けば梅雨近む 高澤良一 暮津
梅雨蜩湯治話が長くなり 高澤良一 石鏡
はおるもの一枚足せと梅雨予報 高澤良一 石鏡
青梅雨のくどきチラシにくどき彩 高澤良一 石鏡
目の粗きフェンスを潜り梅雨雀 高澤良一 石鏡
しょぼくれし灯に床延べる梅雨疊 高澤良一 石鏡
ドーナツ盤拾ふノイズは黴雨(ついり)程 高澤良一 石鏡
梅雨の月くらりと色を濃くしたる 黒田杏子
箸は立てスプーンを寝かせ梅雨に入る 森田智子
梅雨に入る大事なものに鈴をつけ 森田智子
起きてゐて果物を食べ梅雨の夜 山西雅子
梅雨の夜の林の上の空赤く 山西雅子
梅雨の燈を母にもらひて採点す 井上弘美
千人の着席の音梅雨深し 奥坂まや
梅雨の駅貨車の全長動き出づ 西村和子
あはうみも梅雨の濁りを免れず 西村和子
猫と語る楸邨の声梅雨ふかし 中嶋秀子
三界や梅雨の襖のふくらめり 寺井谷子
あばれ梅雨死者にみづかき生えてゐし 熊谷愛子
執念のそろそろ抜けて梅雨鯰 飯島晴子
炭坑の太尾のサイレン梅雨に入る 三好潤子
病棟をつなぐ下水路梅雨茫茫 三好潤子
梅雨くらき家姑の覗き窓 橋本美代子
梅雨半日もの言はざりし声の嗄れ 佐野美智
芭蕉虚子波郷全集戻り梅雨 山田みづえ
梅雨の坂酔どれ黒人ポスト抱く 山田みづえ
青梅雨抜けてきた魚でしよう 画廊の隅 伊丹公子
梅雨の雲逃げてをり追ひかけてをり 大橋敦子
梅雨深くいまはの一語「ありがたう」 菖蒲あや
梅雨未明なきがらに縫ふもの白し 神尾久美子
今日よりは一人の膳よ梅雨灯 星野 椿
梅雨畳蟻の魂のみ走る 蓬田紀枝子
梅雨近し車窓はなべて景重く 坊城 中子
日傘とも梅雨の傘とも荷の増えて 坊城 中子
梅雨の雑踏よりチェーホフ祭に加はる 伊藤 敬子
ふうの木の家と呼ばれて梅雨籠 手塚 美佐
こゑいくつ汀に梅雨の風車 柚木 紀子
禅寺や声をつつしむ梅雨雀 渡辺 恭子
沖つ浪赤松に梅雨あがるらし 遠山 陽子
梅雨の葬君降りし駅吾も降り 岡本眸
地にまろぶ甕の口より梅雨の声 赤松[ケイ]子
梳る必死の指に梅雨晴間 石橋秀野
朝鮮へ書く梅雨の降り激ぎちけり 鈴木しづ子
駒込のことさらの梅雨曇りかな 小坂 順子
梅雨かなし竃の前に掌などつき 北原志満子
マグマ湯の赫くあふれて梅雨の月 横山 房子
降神も昇神も梅雨荒るる中 横山 房子
梅雨に濡れそぼちてゐるは物悲し 高木 晴子
トラックの酸素の瓶に梅雨はげし 横山 房子
最上川幾世流れて梅雨濁る 文挾夫佐恵
ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき 桂 信子
夜よりも昼のはかなき梅雨の寡婦 桂 信子
胸に手を置きたる妻を梅雨に残す 久保龍 『火口の蝶』
車内いま学生満てり男梅雨 重松沙代 『糸桜』
点滴のきりもなや梅雨はてもなや 波多野蟻杖 『風祭』
配置替への辞令一枚梅雨に入る 芦沢一醒 『花枇杷』
呼吸のみの昏睡の妻梅雨長し 磯崎兼久 『孤雲』
青梅雨の島で冬虫夏草得し 上原瑞子 『燈台草』
梅雨けぶる如庵の露地の苔に満つ 須賀遊子 『保津川』
聖牛三段構へで梅雨に入る 須賀遊子 『保津川』
命わけあひて生くべし梅雨の底 田中菅子 『紅梅町』
鞍馬山梅雨の台風逸れにけり 佐久間俊子 『むさし野』
梅雨寒し正座の父の動かざり 西形佐太郎 『てんご』
足型にくぼみぬ梅雨の蚕屋ざうり 西形佐太郎 『てんご』
入院の荷嵩をなぶる男梅雨 二神節子 『砥部』
挿し萱の梅雨の水梁笄めく 仲安俊雄 『冬耕』
大樹の幹くろぐろ梅雨の長きかな 仲田志げ子 『埋火』
梅雨鴉泊る家なく去る故郷 金子晃典 『望郷独語』
避難せる豚が溺るる梅雨豪雨 菅沼義忠 『早苗饗』
縋られて共によろめく梅雨長し 櫛田と志子 『繭玉』
梅雨の月まどかなりしよ暁水忌 濱本暁生 『因幡』
老い母を叱り侘しむ梅雨晴間 宮崎とき女 『雪椿』
病み疲れ母ひた眠る梅雨の冷 宮崎とき女 『雪椿』
梅雨月夜点滴に四肢冷えにけり 菅田静歩 『大花野』
電球の続けて切れし梅雨の底 浜田みずき 『石蕗の花』
梅雨晴のさゐさゐと風出でにけり 長澤母子草 『禅寺丸』
一木如来白毫ひかる梅雨の堂 佐藤斗星 『七草の籠』
梅雨はげし読みて波乱の母の手記 佐藤俊子 『雪の本丸』
寡黙なる南部潜りに男梅雨 佐藤俊子 『雪の本丸』
長梅雨の文選工は眼より老ゆ 沢藤紫星 『活字架』
針落しそよろと撫づる梅雨畳 谿昭哉 『航跡』
長き坂梅雨ひぐらしの声移る 谿昭哉 『航跡』
荒梅雨の天寿と云はれても口惜し 杉本寛 『杉の実』
子雉子翔ちしほか青梅雨の音なさず 白松達夫 『初松籟』
出羽三山闇を一つに梅雨月夜 大石昌代 『清見潟』
身をよせ合ひ梅雨鴉めく兄・弟 後藤一朗 『雪間』
梳るかづらの黒さ梅雨ひとしほ 上山茂子 『父似』
撫でてみる父の遺愛の梅雨机 梅里全子 『祝矢』
楽しきときの影伴れ梅雨を戻りけり 勝又寿々子 『春障子』
悪女にもなれず髪梳く梅雨の底 梅里全子 『祝矢』
梅雨満月薬貰ひの子と仰ぐ 佐々木とく子 『土恋』
長梅雨の子を哀します瞑りぐせ 勝又寿々子 『春障子』
人逝きて長命嘆く梅雨の母 玉村夜音女 『さんご玉』
酔ひ泣きの父に夜の梅雨深むかな 石橋林石 『石工日日』
殉職の終始を梅雨の土砂降りに 松田雄姿 『矢筈』
梅雨の炉に居眠れる父怖れけり 石橋林石 『石工日日』
社に遺す一人の穴すぐ梅雨が埋めむ 荒井正隆 『父嶽』
ふる里は月を大きく梅雨鯰 斎藤梅子
灯るごと梅雨の郭公鳴き出だす 石田波郷
草のさき出でて吹かるる梅雨出水 山上樹実雄
夢の淵どよもしゐたる梅雨出水 藤本安騎生
梅雨晴間焼むすびなど匂はせて 星野麥丘人
飛騨の子の花いちもんめ梅雨晴間 松崎鉄之介
梅雨晴の飛瀑芯までかがやけり 野澤節子
梅雨の闇小さき星は塗りこめて 福永耕二
またたきは黙契のごと梅雨の星 丸山哲郎
きびなごの酢味噌うましや旱梅雨 角川源義
山の膚艶ますばかり梅雨旱 相馬遷子
わが庭に椎の闇あり梅雨の月 山口青邨
青梅雨の深みにはまる思ひかな 石川桂郎
塩倉にうねる太梁送り梅雨 飯島晴子
書架の書の一つ逆しまはしり梅雨 林翔
男梅雨侮りをれば寝ねがたし 山田みづえ
荒梅雨の鵜の目あをあを飼はれたり 宮田正和
鐘撞いて僧が傘さす送り梅雨 森澄雄
荒梅雨や山家の煙這ひまはる 前田普羅
抱く吾子も梅雨の重みといふべしや 飯田龍太
ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき 桂信子
地下鉄の迷路や梅雨の傘提げて 舘岡沙緻
御神馬も羽目板を蹴り梅雨長し 鍵和田[ゆう]子
梅雨の夜の金の折鶴父に呉れよ 中村草田男
鯉こくや梅雨の傘立あふれたり 石川桂郎
水郷の水の暗さも梅雨に入る 井沢正江
童謡かなしき梅雨となりにけり 相馬遷子
樹も草もしづかにて梅雨はじまりぬ 日野草城
とびからす病者に啼いて梅雨寒し 石橋秀野
世を隔て人を隔てゝ梅雨に入る 高野素十
梅雨に入るいく日も雨降りし後 山口波津女
枕木を叩くつるはし梅雨に入る 細見綾子
漏刻といふ垂直の梅雨深し 小川双々子
大仙となり昇天す梅雨微塵 石原八束
青梅雨に女人高野や鐘打てと 石 昌子
町川へ汐の差し込むはしり梅雨 佐藤脩一
霧舐る梅雨の信濃の鳥けもの 井澤子光
梅雨ふかきちりめんじやこのご飯かな 和田耕三郎
海蛇の長き一息梅雨に入る リンズィー、ドゥーグル・J
梅雨鴉つばさわすれてあるきけり 森川光郎
梅雨終りまだ終らざるもの謳ふ 松村多美
深吉野の闇とどろかす梅雨出水 藤本安騎生
廃墟に梅雨首なき使徒の掌が祷る 津田清子
止どまれば吾も梅雨の木歩まねば 舘岡沙緻
母の忌はとはに青梅雨青葉闇 高橋睦郎
松は武骨に荒梅雨に濡るるのみ 阪本謙二
たてがみの獅子よ青梅雨淋しけれ 斎藤梅子
一葉の路地は肩幅梅雨つづく 轡田幸子
大いなる梅雨の関東平野かな 遠藤若狭男
幼子に抽斗一つ貸して梅雨 市村究一郎
人に雨降ればもとより梅雨山河 鈴木鷹夫 風の祭
青梅雨を眠りて夢に母の乳 鈴木鷹夫 風の祭
ぎしと梅雨箱階段の三段目 鈴木鷹夫 千年
蛍光燈に一本の紐梅雨の昼 鈴木鷹夫 春の門
梅雨の地震過ぐ暗がりに鼠捕 鈴木鷹夫 渚通り
サイフォンの泡の向うに梅雨の街 鈴木鷹夫 渚通り
梅雨畳踏めば鶏鳴裏手より 鈴木鷹夫 渚通り
咲き満つる葵の花や梅雨に入る 花葵 正岡子規
梅雨に入る椎の木陰の葵哉 入梅 正岡子規
刈り残す二畝の麦や梅雨に入る 入梅 正岡子規
真ッ白な蛍ぶくろも梅雨の黙 酒井龍也
やぶれがさむらがり生ひぬ梅雨の中 水原秋桜子
梅雨鯰古地図にのれる屏風岩 足立 紅
川底の水を濁して梅雨鯰 呂 春
水槽の蓋跳ねとばす梅雨鯰 永井やゑ
棲み心地よき濁りやう梅雨鯰 早乙女 信
梅雨晴や仏足石にリラ銀貨 白井恭郎
梅雨晴に長持唄を歌ひけり 古賀正昭
梅雨晴れの馬や筋肉ぶるぶるるん 福富健男
突堤の喇叭が吃る梅雨晴間 石井保定
鳶舞ふて梅雨の晴間の退院日 宮本繁雄
梅雨晴れへ大きな敷布干しひろぐ 中野登美子
梅雨晴や近江いづこも水の音 山口英子
梅雨晴るる水かけられて神笑う 大村錦子
梅雨晴や魚拓ひらひら海を乞ふ 高村洋子
突堤で波と語らむ梅雨晴間 鈴木淑生
デモ隊に年寄り多し梅雨晴間 田沼和美
下校の子傘を竹刀に梅雨晴間 横尾春子
絵手紙の赤白の花梅雨晴間 中家ノブヱ
梅雨晴のどこから家事に手をつけむ 葵 かける
山車蔵のかんぬき固し戻り梅雨 安原久雄
降りそそぐ雨くろぐろと送り梅雨 清水孝男
病窓は三尺足らず旱梅雨 北川登志子
長梅雨や読経焼けせし大柱 山口 清
掘られたる土が声あぐ旱梅雨 佐田寿恵女
荒梅雨にひゞく修験の大鼓かな 増田かこ
百円で閻魔のお告げ旱梅雨 吉岡千都子
眼鏡さがす父につき合う梅雨本番 高寄たづ子
青梅雨の真っ只中の日本かな 竹内成子
衣川白波立てて男梅雨 角田よし子
幻のごと落ち梅雨の俄滝 岩崎緑雨
一食を一書に変へて梅雨ごもり 宮倉浅子
梅雨晴間薬草箪笥に残りし香 濱田未過去
梅雨の朝酸素分子も緑なり 榎本泰子
文字化けを拾い読みする梅雨の夜 佐々木寿万子
荒梅雨の圧す清道祝ひ歌 長 帰白
梅雨篭の布巾真白く晒しけり 中丸シゲ子
梅雨晴間大江戸包む夕日かな 矢野春行士
一雷の加はりいよよ男梅雨 五十嵐哲也
綺羅星にすつかり忘れ憂き梅雨を 葛岡伊佐緒
いま充電中梅雨の家に聞くシヨパン 黒澤さち
鐘楼の闇を纏ひし梅雨の寺 市東松風子
青梅雨や山羊に大きな座りだこ つじ花梨
百年の染みの天井梅雨灯す 高井邦子
乗換を聞きとれずあり梅雨じめり 野田みづほ
結願の笈摺匂ふ梅雨の堂 和泉千花
留守電に在りし日の声梅雨しとど 佐藤清子
夫と居て梅雨の晴間を惜しみけり 久田洋子
梅雨荒れの浮き桟橋に波遊び 赤松しづ
梅雨の庫裏白き鼻緒の利休下駄 友正義子
梅雨篭り版木刀の錆落し 後藤喜禄
梅雨深く壁に帽子の混み合えり 中谷耕子
曲がりては曲がりては梅雨太河かな 高田誠司
手に馴染む梅雨の髪梳くお六櫛 大榎よし子
梅雨の象無聊の鼻を地に垂らす 松岡麦三
遊び田に人の背丈の梅雨の草 曽我部松太郎
梅雨の葬僧の衣の華やげり 中西美代
軍艦のやうな靴ある梅雨の土間 砂山節子
雨だれに半音もあり梅雨最中 鈴木隆二
われながら下手の長糸梅雨篭 矢部淑子
男梅雨しぶきのとどく城の壁 あべの郷音
仮名文字の筆遅々として梅雨深し 國岡錫子
梅雨の森抜ける微熱の身をもちて 井越芳子
梅雨も楽し花の絵柄の傘まはし 嶋崎いね
梅雨篭り一手が解けぬ詰将棋 小野寺裕子
梅雨の街テールランプの氾濫す 西村草生
荒梅雨を勢水とす博多つ子 曽根久美子
梅雨見舞ひ管さす人に抱かるる 遠藤まめ
蛇皮のバッグざらつく梅雨曇り 立川京子
医者のいふ諸悪が好きで梅雨ごもり 佐治朱港
素振りする梅雨の晴間の男傘 大川つとむ
青梅雨の洗ひ上げたるグラスかな 神谷美枝子
青梅雨や天守泰けき灯をともす 大南テイ子
梅雨暑く泣きぐせつきし二度わらし 土居伸哉
梅雨に来るブリキの兵隊足が無い 末吉 發
仏事終へ重さは言はず梅雨の雲 田仲暁美
梅雨の傘として一日持ち歩く 広川里子
乗客のけだるき目元梅雨最中 石井政子
梅雨深し適塾昼の灯を点す 安部 桂
梅雨篭り厨ごもりとなりにけり 三枝静代
青梅雨のあを冷えてくる石畳 竹花美代恵
死してなほ形相梅雨の雀蜂 小林洋介
梅雨の机上ペン一本が不逞なり 大山安太郎
願かけの縄の百条梅雨じめり 蓮井崇男
梅雨深しみどりの卵孵りさう 吉田晶二
梅雨灯す女の好きな絵らふそく 林 えり子
青梅雨の庭に来ている山頭火 山重百合子
くさや焼く匂ひほとほと梅雨であり 岡田菫也
傘さして梅雨の裏道和尚来る 山田山三
幸福の木ばかり伸びて梅雨篭り 山口素子
ものの怪の海牛梅雨を現じけり 黒田櫻の園
男梅雨城一角を抜けきたる 赤松シゲ子
酒倉のジヤズコンサート梅雨の星 野田鴒女
梅雨月夜あなたも青い蚊に生まれ 中西ひろ美
ばり~と干傘たゝみ梅雨の果 原石鼎
梅雨が明けたら思いきり人を愛せ 松本勇二
梅雨寒く鏡裡のわが瞳われを見る 柴田白葉女
茶香炉の焔つぎたす梅雨の寒 猪股洋子
一本の真青なる竹梅雨に入る 納 譲二
語り部の遠野の話梅雨に入る 土井桂子
梅雨に入る杉直幹の男振り 増子京子
日帰りのタイムトンネル梅雨に入る 赤松有馬守破天龍正義
子と心通はざる朝梅雨に入る 森田理子
海蛇の長き一息梅雨に入る ドゥーグル
循環のバスがらがらや梅雨に入る 小堺遠佳
梅雨に入る硯の海に目をやりて 井上トシ子
薬草の乾ききらずに梅雨に入る 米山きみ子
雑草の匂ふ風あり梅雨に入る 広沢美都子
孫と入る一番風呂や梅雨に入る 上村シマ
沓脱ぎに欠くをんなもの梅雨に入る 山崎重雄
働かぬ腕太らせて梅雨に入る 鈴木松子
めんぱ屋の渋塗る匂ひ梅雨に入る 海野みち子
階段に坐る少女や梅雨に入る 西田 弘
梅雨に入るこんなに重いランドセル 杉岡ゆたか
梅雨雀何か追い詰めたる羽音 高澤良一 鳩信
梅雨どきの眼ごろごろ使ひ過ぎ 高澤良一 鳩信
梅雨鴉けふは出ばって近所の樹 高澤良一 鳩信
栴檀の葉のこまごまと梅雨に入る 高澤良一 鳩信
梅雨の検診今度は何と身構えぬ 高澤良一 鳩信
鎌倉石げっそり減りて梅雨近む 高澤良一 鳩信
一通り聞きて入院梅雨海鼠 高澤良一 鳩信
梅雨といふ辟易月に入りにけり 高澤良一 鳩信
振り塩の穴の目詰り梅雨長引く 高澤良一 素抱
生りものの容歪みて梅雨の果 高澤良一 素抱
睡りて着く駅ここは何處梅雨都心 高澤良一 素抱
マンションの物干竿の梅雨布団 高澤良一 素抱
梅雨のとある日とんだ薬の副作用 高澤良一 素抱
土石流家を根こそぎ梅雨末期 高澤良一 素抱
九州を襲へる梅雨の総雨量 高澤良一 素抱
何もかも錆つく梅雨の蜑部落 高澤良一 素抱
梅雨どきの湾岸道路灯の連鎖 高澤良一 素抱
梅雨の都心光芒放つ川向う 高澤良一 素抱
蕎麦ボーロおやおやこれは梅雨湿り 高澤良一 素抱
梅雨の本ブックエンドに挟まれて 高澤良一 素抱
旅支度少しづゝ梅雨深む中 高澤良一 素抱
とある日の梅雨の合間のコップ拭き 高澤良一 素抱
梅雨雀フェンスを上り下りしをり 高澤良一 素抱
梅雨嫌ふ食卓塩の赤き蓋 高澤良一 素抱
ドンガバチョの声優梅雨に隠れけり 高澤良一 素抱
こんにちわ上がりましたネ梅雨のあめ 高澤良一 素抱
気まぐれ梅雨降ってきたかと取り込みもの 高澤良一 素抱
ドライフラワー束ごと挿して梅雨の壺 高澤良一 素抱
醤油壜押さえに梅雨の置手紙 高澤良一 素抱
栓抜の在りかは何處だ梅雨留守居 高澤良一 素抱
徒然に梅雨の抽斗開けてみぬ 高澤良一 素抱
梅雨晴れの或る日選んで靴を干す 高澤良一 素抱
椨雫砂地をうがつ男梅雨 高澤良一 素抱
封じ手の白石梅雨の本因坊 高澤良一 素抱
赤蟻に上がり込まれて梅雨の家 高澤良一 素抱
梅雨どきの何處を見据えて金魚の目 高澤良一 素抱
掃除機に追はれて梅雨の部屋を退く 高澤良一 素抱
物音をはばかり起きれば梅雨雀 高澤良一 素抱
表札の町名古きまゝ梅雨へ 高澤良一 素抱
居直ってじだらくな梅雨迎えんか 高澤良一 素抱
寝そべりてクイズを解ける梅雨畳 高澤良一 素抱
午後からの梅雨のやっつけ仕事かな 高澤良一 素抱
横濱の梅雨が降るなり崎陽軒 高澤良一 素抱
梅雨に入る机上に硝子の舟細工 高澤良一 素抱
梅雨の航連れ添う鴎宜候(ようそろ)と 高澤良一 素抱
梅雨の航救命ヴイの赤きこと 高澤良一 素抱
釣人のにべ無き応(いら)えボソと梅雨 高澤良一 素抱
草河豚のころんと転がる梅雨渚 高澤良一 素抱
空缶に梅雨ねずっぽの顎の張り 高澤良一 素抱
釣人に野暮な問い掛け梅雨を云ひ 高澤良一 素抱
高槇垣亭々と梅雨降り込めり 高澤良一 素抱
梅雨払ふ笠置しづ子のよいわんわ 高澤良一 素抱
原色のボディスーツに梅雨ダイバー 高澤良一 素抱
礁のうへ梅雨まみれなる鵜ノ足貝 高澤良一 素抱
梅雨礁濡れて優しきヨメガサガイ 高澤良一 素抱
ペチュニアの長咲き梅雨はまだ明けず 高澤良一 素抱
佃煮の蝗の貌もつくづく梅雨 高澤良一 素抱
降りざまの模糊として梅雨疑ひなし 高澤良一 素抱
老眼と乱視ごちゃまぜ梅雨をみる 高澤良一 素抱
梅雨湿り芋銭の河童百図かな 高澤良一 素抱
大正菓子ゼリービインズ抓み梅雨 高澤良一 素抱
梅雨のラジオ早口にしてくだくだし 高澤良一 素抱
病廊に外来患者あふれ梅雨 高澤良一 素抱
商品のお出かけメイトは梅雨の杖 高澤良一 素抱
診察室二十番出て梅雨の街 高澤良一 素抱
水垢の亀にも年季梅雨に入る 高澤良一 素抱
横浜駅西口梅雨のアンブレラ 高澤良一 素抱
梅雨の渋滞テールランプの赤赤赤 高澤良一 素抱
川幅をゆったりと持し梅雨大河 高澤良一 素抱
梅雨の遊覧バスゆく東京ど真ん中 高澤良一 素抱
梅雨の玻璃阿弥陀籤めく雨滴かな 高澤良一 素抱
男梅雨おろかに肥ゆる椨大樹 高澤良一 素抱
荒雫梅雨ならではの泰山木 高澤良一 随笑
捩花の翩翻梅雨の中休み 高澤良一 随笑
ほつりんと剃り残されし梅雨の髯 高澤良一 随笑
亀虫の匂ひ持ち込む梅雨の家 高澤良一 随笑
紙を切る音のそりそり梅雨一間 高澤良一 随笑
もぎ立ての梅を漬けませ梅雨晴間 高澤良一 随笑
目次に目あそばせ梅雨の日の机上 高澤良一 随笑
伸びをする雀の居りて梅雨晴間 高澤良一 随笑
ぴしゃぴしゃと梅雨の五反田アスファルト 高澤良一 随笑
傘の柄の?(クエッションマーク)梅雨車中 高澤良一 宿好
柄の大きかうもり傘より梅雨雫 高澤良一 宿好
江ノ電はごとごとと来る梅雨枕木 高澤良一 宿好
男梅雨吉良の仁吉の一節を 高澤良一 寒暑
通院日梅雨のむしむし始まりぬ 高澤良一 寒暑
映画館出て馬車路の蒸し蒸し梅雨 高澤良一 寒暑
梅雨晴間ぷらんぷらんと母散歩 高澤良一 寒暑
梅雨家居飲食(おんじき)の手間かけ申す 高澤良一 寒暑
梅雨最中二三日かけ根ン仕事 高澤良一 寒暑
使ひ古る座右の辞書と梅雨に入る 高澤良一 寒暑
身の内の退屈の蟲鳴き出す梅雨 高澤良一 寒暑
梅雨家居あれもこれもと妻頼み 高澤良一 寒暑
梅雨晴間憩ふ社にだんご虫 高澤良一 寒暑
通行人臆せぬ貌の梅雨雀 高澤良一 寒暑
熊シデの花序のもっさり梅雨社 高澤良一 寒暑
梅雨雀乗りて屋外瓦斯ボンベ 高澤良一 寒暑
俤梅雨「人生劇場」高らかに 高澤良一 寒暑
梅雨なんぞ吹き飛ばす唄皆の衆 高澤良一 寒暑
梅雨どきの鰐が御用となるニュース 高澤良一 寒暑
山寺の磴に遊んで梅雨雀 高澤良一 寒暑
黴させぬ仕掛けくさぐさ梅雨食品 高澤良一 寒暑
五合庵老走り根に迫る梅雨 高澤良一 寒暑
梅雨毛虫掃討作戦開始せり 高澤良一 寒暑
梅雨籠りあうむの与太を飛ばしをり 高澤良一 ぱらりとせ
悪たれる鴉を相手梅雨晴間 高澤良一 ぱらりとせ
梅雨大扉入るや洞なす大仏殿 高澤良一 ぱらりとせ
移動せり梅雨の黒雲バッファロー 高澤良一 ぱらりとせ
梅雨の浪へこと凹みてたゆたへり 高澤良一 ぱらりとせ
植込みを打ち始めたる男梅雨 高澤良一 さざなみやつこ
青梅雨に集へる信徒魚族めく 高澤良一 さざなみやつこ
梅雨晴間壁に凭るるぬひぐるみ 高澤良一 さざなみやつこ
教会の三人掛の梅雨木椅子 高澤良一 さざなみやつこ
ぶるぶると行手をよぎる梅雨雀 高澤良一 ももすずめ
梅雨晴間小包ぽんと届きけり 高澤良一 ももすずめ
函強く振つてとり出す梅雨の本 高澤良一 ももすずめ
梅雨の月上つてをりぬ家間近 高澤良一 ももすずめ
梅雨到来告げて編集後記かな 高澤良一 ももすずめ
濡るゝ枝掴み直して梅雨鴉 高澤良一 ももすずめ
見つめゐる梅雨のシグナルレツドかな 高澤良一 ももすずめ
梅雨湿りゴヤの巨人の黒髪も 高澤良一 ももすずめ
高枝より喧嘩売るごと梅雨鴉 高澤良一 ももすずめ
鯉跳ねてどうんと梅雨の水面打つ 高澤良一 ももすずめ
梅雨に入る欅昂然椨憮然 高澤良一 ももすずめ
梅の幹くろぐろと梅雨待ちゐたり 高澤良一 ねずみのこまくら
梅雨籠りあうむにこゑを奪はるる 高澤良一 ねずみのこまくら
これもこれもこれも土産よ梅雨畳 高澤良一 ねずみのこまくら
病むわれに声撒きちらし梅雨鴉 高澤良一 ねずみのこまくら
想起ただ岸辺を倒せ梅雨の星 攝津幸彦 未刊句集
北舟子亡し梅雨浜に魚の骨 星川木葛子
鱒二亡き荻窪に梅雨まだ明けず 河野友人
照雄の忌ひねもす男梅雨にして 槫沼けい一
梅雨傘や林田紀音男逝きたると 桂 信子
桂月忌梅雨じめりゐる両の掌よ 斎藤青火
栄西忌修す寿福寺梅雨寒し 小宮東苑
堂仰ぐのみに返して梅雨遍路 村上梅泉
おのずから定まる序あり梅雨遍路 吉野しず子
南無の背の墨痕滲み梅雨遍路 中村冬星
水俣や梅雨の向日葵頚強く 岩下ゆう二
神杉の根を踏み虞る梅雨豊前 井口荘子




梅雨深し鯛飯を食ふ伊予の宿 和田 珠
立江寺の阿波の青石青き梅雨 松崎鉄之介
荒梅雨の斜めにとぶや秋芳洞 佐藤栄美
青梅雨に大和三山みなけぶる 鷹羽狩行
梅雨昏し生田の森も池の面も 松崎亭村
梅雨傘を挿してぞ宝塚へ行く 後藤比奈夫
阿古屋塚梅雨の学童馳せ通る 小坂順子
梅雨深き真珠の潮に潮仏 木村蕪城
青梅雨や磴千余段鳳来寺 高村俊子
青梅雨や檜葉のかをりの掛川城 吉野美智子
身ぬちまで青梅雨となり千光寺 日下部宵三
荒梅雨や仏壇吊るす輪中村 澤田正子
梅雨晴や鵜の渡りゐる輪島崎 前田普羅
称名滝天に沖して男梅雨 小林俊彦
庄川の大梅雨にごり青田まで 室生砺川
梅雨水輪生れどほしの北陸路 大野林火
梅雨の月入笠山に見て赤し 相馬遷子
麦草峠梅雨茫々の行方かな 高崎りつ子
高空に八ヶ岳が雲脱ぐ梅雨の月 相馬遷子
三輪神は一木づくり梅雨の燭 角川源義
青梅雨のガレ場あらはに蛭ケ岳 小野宏文
梅雨曇り甍古りたる鶴見町 殿村菟絲子
両国は梅雨の夕べの水明り 青柳志解樹
青山のファッシヨン通りはしり梅雨 蓮尾あきら
高欄に梅雨の灯ともす日本橋 武田孝子
芦野路や山襞馳せる梅雨の霧 屋代孤月
日光の梅雨にぐつすり眠り猫 右城暮石
荒梅雨や勝常薬師胸厚き 渡辺みち女
飛島の潮目の濃しや梅雨晴間 竹川貢代
泥湯にて浮く泥首に梅雨湧ける 磯貝碧蹄館
武隈の松の鱗も梅雨じめり 山口耕堂
傘突いて仙台城趾梅雨深し 小林康治
吹き上げて八幡平の男梅雨 雨部雨峡
梅雨の月光をましぬ瑠璃光院 山口青邨
磯の香と梅雨晴の日と俄かなる 藤田湘子
梅雨晴の雷とどろけり天草採 島本紫芋子
大島と久に相見て梅雨晴れぬ 松本たかし
梅雨晴れのわたくし雨や雲ちぎれ 松尾芭蕉
梅雨晴間とるに程よく草のびて 遠藤はつ
梅雨長しわが窓に窓相向ふ 岡田貞峰
二階より顔出せば梅雨はじまれり 千代田葛彦
梅雨の川荒れて家ぬちの音を断つ 馬場移公子
青梅雨やひとの妻子と壁隔て 福永耕二
梅雨の瀬の簗駈けのばる最上川 水原秋桜子
梅雨の犬で氏も素性もなかりけり 安住敦
かれひ突く舟横揺りにはしり梅雨 桂樟蹊子
今宵また梅雨の炬燵に火を入るる 橋爪巨籟
一枚の梅雨の瓦の雨跳ぬる 倉田紘文
咲きのぼる梅雨の晴間の葵かな 成美
梅雨晴の抽んでてゐる男苗 猪又信之
梅雨晴間鏡の脇に素顔置く 小熊礼子
うつくしき嘘は何色梅雨地獄 市川彳水
戻り梅雨杉の山より杉の靄 本田平八郎
梅雨雷響け父の日などいらん 森下王酔
梅雨一と日二食三浴俳四・五句 宮本由太加
梅雨の猫ふぐり確かめ貰ひけり 杉山とみ子
ワイパーのくきんくきんと青梅雨や 多加谷時子
荒梅雨や鉄の刄鉄を切り落す 手塚酔月
荒梅雨や檻のパンダは拗ねて寝る 菅野綾子
梅雨の夜の隣家が別の音を出す 國保継男
梅雨の木のごとくに妻の脚立ちぬ 城取信平
ことのほか明るき佐渡や梅雨に入る 関根糸子
晩鐘や村は平に梅雨に入る 鹿島貞子
梅雨に入る列島坐骨神経痛 秋山石声子
荒梅雨のその荒星が祭らるる 相生垣瓜人
草呼べばうしろに梅雨が来てゐたり 藤田湘子 てんてん
巴長杏四五顆机に梅雨そそぐ 森澄雄「花眼」
わが病わが診て重し梅雨の薔薇 相馬遷子「山河」
桶底の泥のごときが梅雨鯰 由山滋子「かつらぎ選集」
捕はれて憂世を嗤ふ梅雨鯰 下平しづ子(雨月)
風狂の髭の老いたる梅雨鯰 羽田岳水(燕巣)
ふる里は月を大きく梅雨鯰 斎藤梅子「濤聲」
鷭の脚しづかに動く梅雨のひま 室生とみ子「とみ子発句集」
傘の柄で水位を計る梅雨出水 堺邦子(圓)
夢の淵どよもしゐたる梅雨出水 藤本安騎生「夢の淵」
退院も一つの別れ梅雨晴間 須藤かね子(甘藍)
ハイウエーに牛迷い込む梅雨晴間 金子展子(渦)
小鳥籠吊して梅雨の晴間かな 安田てつを(古志)
梅雨晴やバット百本並べ干す 猪狩行々子(桔槹)
梅雨晴や身仕度の海女よく喋る 安部竹影(南風)
聖路加のビルに日のさす梅雨晴間 青木政江(酸漿)
病者睡て足裏くろし梅雨晴間 石田波郷「惜命」
行人のわれもひとりよ梅雨の晴 小川濤美子(風花)
梅雨晴やをとこのやうに髪切つて 立花須恵「鶴俳句選集」
焼跡へ梅雨晴の空ひた押しに 中村草田男「来し方行方」
飛騨の子の花いちもんめ梅雨晴間 松崎鉄之介「鉄線」
梅雨晴の眩惑するに任せけり 相生垣瓜人「微茫集」
梅雨晴れや手枕の骨鳴るままに 横光利一「横光利一全句集」
荒海も今日は静かに梅雨ぐもり 池内たけし(欅)
病妻の素直がかなし戻り梅雨 舞原余史「鶴俳句選集」
戻り梅雨みな横顔の磨崖仏 金田一一子(薫風)
妻にのみ憤りをり返り梅雨 石田波郷「春嵐」
前任者そのままの椅子送り梅雨 執木龍(狩)
ひらひらと翔けて鷹鳴く戻り梅雨 堀口星眠(橡)
梅雨日照り畠に分け合ふ缶ジユース 八木幸男(蘇鉄)
きびなごの酢味噌うましや旱梅雨 角川源義「西行の日」
百姓に泣けとばかりに梅雨旱 石塚友二(馬醉木)
荒梅雨にしよぼたれ鴉一羽かな 外園威雨(冬野)
透析に自我も漉される梅雨晴間 三宅富次郎(ぬかるみ)
青梅雨や森に喪服の五六人 栗山政子(俳壇)
吾が生みし骨を拾ひぬ梅雨深し 平田君代「辻が花」
生涯無名梅雨の重さの四十肩 名取思郷(あすか)
荒梅雨の雲奔り去る分水嶺 吉田鐵城「分水嶺」
工事幕突如と張らる梅雨最中 久岡正子(水明)
馬の息身近かに梅雨の深まりぬ 越桐三枝子「雉俳句集」
たちまちに英彦山かくす男梅雨 吉藤春美「雪中花」
藁の船祀り船宿梅雨に入る 河合寿子(繪硝子)
梅雨青し柩の人はわが師なる 鈴木節子(門)
梅雨が明けたら思いきり人を愛せ 松本勇二「海程句集」
かく降りて男梅雨とはいさぎよし 澤村芳翠(ホトトギス)
梅雨鴉つばさわすれてあるきけり 森川光郎「桔槹句集」
神代より瑪瑙も梅雨も青き国 河野頼人「木の実」
浴槽に肩まで浸かり梅雨滂沱 西宮舞(狩)
梅雨の底打ちのめされてより力 毛塚静枝(濱)
梅雨の星齢といふも茫々と 廣瀬直人「遍照」
くるぶしをかさかさ鳴らす母の梅雨 宇多喜代子「りらの木」
切り貼りの障子も梅雨の寂光院 藤岡筑邨「城ある町」
守り来し虚子の御墓梅雨の燭 星野椿「マーガレット」
梅雨の闇小さき星は塗りこめて 福永耕二「鳥語」
二階より顔出せば梅雨はじまれり 千代田葛彦「旅人木」
梅雨の家老女を赤松が照らす 金子兜太「両神」
荒梅雨の尸焼く音憚らず 飯島晴子「八頭」
熔接の白光へ顔梅雨のドック 古沢太穂「火雲」
青梅雨や流木に知るものの果 能村登四郎「芒種」
梅雨霧を見てゐていつか包まるる 稲畑汀子「障子明り」
塩田をあるきて啼けり梅雨鴉 横山白虹「海堡」
わが梅雨の臍を水平に寝かしやる 森澄雄「花眼」
ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき 桂信子「女身」
梅雨深し暁いまだ戸を漏れず 石橋辰之助「妻子」
抱く吾子も梅雨の重みといふべしや 飯田龍太「百戸の谿」
木草らも挙りて梅雨に赴けり 相生垣瓜人「微茫集」
梅雨の家子連狼来て荒す 安住敦「柿の木坂雑唱」
梅雨の夜の金の折鶴父に呉れよ 中村草田男「来し方行方」
革命歌梅雨の風見がまはりだす 加藤楸邨「起伏」
梅雨ふかし戦没の子や恋もせで 及川貞「夕焼」
青梅雨のわが病室へ通ひ妻 石田波郷「酒中花以後」
梅雨の崖富者は高きに住めりけり 西島麦南「西島麦南全句集」
昼三味のどこかに梅雨の木挽町 大橋越央子「野梅」
青梅雨の金色世界来て拝む 水原秋櫻子「帰心」
佐渡見えず見ゆる弥彦の梅雨の雲 池内たけし(欅)
家一つ沈むばかりや梅雨の沼 田村木国「秋郊」
梅雨の人パチンコ盤の裏に居る 阿波野青畝「紅葉の賀」
大梅雨の茫茫と沼らしきもの 高野素十「野花集」
北海の梅雨の港にかゝり船 高浜虚子「六百五十句」
妻とあればいづこも家郷梅雨青し 山口誓子「遠星」
さつぱりと梅雨の厨の乾きをる 阿部みどり女「微風」
高浪もうつりて梅雨の掛け鏡 飯田蛇笏「白嶽」
またたきは黙契のごと梅雨の星 丸山哲郎「羞明」
むささびや杉にともれる梅雨の星 水原秋櫻子「磐梯」
うしろ手砂へ突く九十九里梅雨の星 古沢太穂「捲かるる鴎」
砂浜に墓群かたまる梅雨の月 安達潔(藍生)
翡翠に梅雨月ひかりはじめけり 飯田龍太「百戸の谿」
破れ寺やころげ込むべし梅雨の月 村松紅花「破れ寺や」
捨てに捨て捨つに安らふ梅雨半月 数長藤代(鴫)
梅雨月の赤き光輪母病めり 斎藤愼爾「斎藤愼爾集」
わが庭に椎の闇あり梅雨の月 山口青邨「雑草園」
寺の子にむさゝび鳴いて梅雨の月 田村木国「山行」
溢れつつ梅雨の明けたるおもちや箱 西村操(渦)
坐像立像一千一体梅雨上る 砂山節子「五月の海」
大泣きの顔はれやかに梅雨あがる 大林美智子(渦)
雲はうて梅雨あけの嶺遠からぬ 飯田蛇笏「春蘭」
海蛇の長き一息梅雨に入る D・J・リンズィー「むつごろう」
とびからす病者に啼いて梅雨寒し 石橋秀野「桜濃く」
白線は道路を逸れず梅雨に入る 細谷ふみを(鷹)
梅雨に入る前の一荒れ熊野灘 中湯喜陽(かつらぎ)
二コライの鐘の音色も梅雨に入る 茂木連葉子「洗ひ馬」
奥信濃蒼茫として梅雨に入る 渡部抱朴子「地籟」
二夜三夜傘さげ会へば梅雨めきぬ 石田波郷「風切」
梅雨めくや人にまさをき旅路あり 相馬遷子「山国」
樹も草もしづかにて梅雨はじまりぬ 日野草城「旦暮」
梅雨晴間とは水底のものにまで 後藤比奈夫 めんない千鳥
欠伸して梅雨の茸を増やしけり ふけとしこ 鎌の刃
瑠璃色の虫の交めり梅雨晴間 ふけとしこ 鎌の刃
窯埃払へば皿に梅雨の影 ふけとしこ 鎌の刃
梅雨晴れて杓に重たき釉の澱 ふけとしこ 鎌の刃
誰も来ぬ梅雨の畳を拭きにけり ふけとしこ 鎌の刃
梅雨の月いびつに赫し野が抱へ 山本つぼみ
梅雨茫茫わが影さらす水たまり 山本つぼみ
反故を焚く火の一さかり旱梅雨 百瀬美津
梅雨終りまだ終らざるもの詠ふ 松村多美
梅雨未明目覚めの早き小鳥たち 松村多美
粥吹いておのれいたはる梅雨の中 澤村昭代
さりげなく梅雨封じ込む旅鞄 小泉八重子
発掘の端へはしへと梅雨蛙 小泉八重子
深梅雨の膝に竹籠回し編む 川崎慶子
半眼で人見るけもの梅雨深し 川崎慶子
梅雨の月折れたる影が磴登る 金久美智子
梅雨の月満ちたれば星添ひにけり 金久美智子
梅雨晴間人も鴉も相似たり 市野沢弘子
青梅雨の究まるものに鯉の老 高橋睦郎 稽古
旅机火ともして草木梅雨に入る 高橋睦郎 稽古
ぽしやぽしやな梅雨満月の雫かな 矢島渚男 延年
梅雨に入りぬ孔子一行も過ぎて 矢島渚男 延年
沢蟹が廊下に居りぬ梅雨深し 矢島渚男 延年
死人梅雨人形の寺なまぐさし 矢島渚男 延年
水子坂梅雨に錆びたる風車 矢島渚男 延年
ドロの木の白々梅雨の十三湖 矢島渚男 延年
梅雨蒸れの津軽飢餓谷涙谷 矢島渚男 延年
梅雨深し鯨が陸を歩きし日 矢島渚男 梟
男梅雨遂に生きゐるもの流す 中戸川朝人 尋声
岩の貌木の瘤の貌梅雨ながし 中戸川朝人 尋声
光点に極小のわれ梅雨の壺 中戸川朝人 尋声
梅雨の底架かりて能の水衣 中戸川朝人 尋声
梅雨に入る重き荷提げし掌の皺み 中戸川朝人 尋声
梅雨の底古フィルムは朱に敏し 中戸川朝人 尋声
梅雨あけの一等三角点に出づ 中戸川朝人 尋声
梅雨の井戸祖先のこゑを返しくる 中戸川朝人 尋声
シテの踏む留拍手より梅雨に入る 中戸川朝人 尋声
うそふきの口のとがりも梅雨あがる 中戸川朝人 星辰
貝杓子使ふ白粥梅雨の底 中戸川朝人 星辰
大塔の写る水舐め梅雨の犬 中戸川朝人 星辰
那智黒をいよいよ黒く男梅雨 中戸川朝人 星辰
録音のはじめ盲導鈴梅雨に入る 中戸川朝人 残心
深爪の足のさみしさ梅雨月夜 中戸川朝人 残心
捨鋳砂はや梅雨のもの流れ出す 中戸川朝人 残心
梅雨の風邪今年も植字場より流行る 中戸川朝人 残心
熱われの息のみ白し梅雨に入る 中戸川朝人 残心
木々なべてうしろ向きなる梅雨の森 片山由美子 風待月
長梅雨の壁を映して壁鏡 片山由美子 水精
青梅雨の昼の浴槽あふれしむ 正木ゆう子 悠
梅雨の月蕗の河原を照らしけり 長谷川櫂 蓬莱
花店のガラス戸のなか梅雨深し 長谷川櫂 蓬莱
梅雨の傘たためば水の抜け落つる 長谷川櫂 天球
鯉の水揺らして重き梅雨の傘 長谷川櫂 古志
荒梅雨の叉手網白し山の池 長谷川櫂 古志
荒梅雨や杉箸で切る胡麻豆腐 長谷川櫂 古志
梅雨の階そびゆおかれし松葉杖 宮坂静生 雹
梅雨の母たたみに針をこぼしけり 宮坂静生 雹
洲から洲へ梅雨の雀のしのび翔び 宮坂静生 春の鹿
梅雨の炉の火を欲しがりて真山家 宮坂静生 春の鹿
親鸞に寝嵩なからん梅雨の山 宮坂静生 春の鹿
越後人梅雨の畦草焚きいぶし 宮坂静生 春の鹿
月の出の荒々しくも梅雨鯰 宮坂静生 春の鹿
青梅雨や瞼つまんで剃られたる 宮坂静生 樹下
砂川へふたたび塒の梅雨穴 宮坂静生 樹下
山鳩よ梅雨の牧舎の煙出 宮坂静生 山開
梅雨汐のにほひに酔へり古歌の島 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
荒梅雨や珠抱く貝のごと睡り 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
梅雨欅わが分身のうづくまる 鍵和田[ゆう]子 浮標
絵の魚のみな憂ひ貌梅雨ふかむ 鍵和田[ゆう]子 浮標
野積み鉢に梅雨溜りゆき夫恋ひや 鍵和田[ゆう]子 未来図
鯉切らる梅雨の荒さが鎮魂歌 鍵和田[ゆう]子 未来図
辞職告ぐ声潔し梅雨の底 鍵和田[ゆう]子 未来図
梅雨晴れの法衣透きゆく長廊下 鍵和田[ゆう]子 未来図
梅雨の壁鼻もて余す伎楽面 鍵和田[ゆう]子 未来図
山崩す音や円座の梅雨湿り 鍵和田[ゆう]子 未来図
御神馬も羽目板を蹴り梅雨長し 鍵和田[ゆう]子 未来図
梅雨の月ひととき滲む夫帰らぬ 鍵和田[ゆう]子 未来図
梅雨の墓朴の瑞枝に羞ぢらひぬ 大石悦子 百花
梅雨鯰みづうみを出る川一つ 大石悦子 百花
鯛の目吸ふ若狭の梅雨も終りなり 大石悦子 聞香
戻り梅雨湯葉の一椀賜りぬ 大石悦子 群萌
梅雨湿るくぐり戸に釘さしありぬ 大石悦子 群萌
梅雨深し泣きても妻はあまえの座 大石悦子 群萌
海地獄梅雨の濁りとならず澄む 茨木和生 往馬
梅雨曇り金属地帯の灯を消すな 穴井太 原郷樹林
梅雨深しことに甘えるサランラップ 穴井太 原郷樹林
梅雨晴間かゆくなる木とほほえむ樹 穴井太 原郷樹林
梅雨ながし労働会館草の中 穴井太 原郷樹林
梅雨に灯ともす拳のような定時制 穴井太 天籟雑唱
荒樫のうつぜんとして梅雨に入る 穴井太 天籟雑唱
人の死が続けり梅雨の墨匂う 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
梅雨深し教師が好む梅干飴 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
山茶花梅雨死後百日の表札に 平井さち子 鷹日和
白州石磊々と打つ暴れ梅雨 平井さち子 鷹日和
葬の列撓め容れたる梅雨テント 平井さち子 鷹日和
てるてる坊主梅雨窶れして蜑の村 平井さち子 鷹日和
梅雨茅家いぶしてほつこり炉火の尉 平井さち子 鷹日和
死の前のいま長き老華僑に梅雨 平井さち子 紅き栞
勝鬨橋閉ぢ目をかたく梅雨に入る 平井さち子 紅き栞
梅雨のれん白に白置く浄め塩 平井さち子 紅き栞
浜荻や蘆やともあれ伊勢も梅雨 平井さち子 紅き栞
赤児に梅雨たつたひとりで生まれ来て 平井さち子 紅き栞
梅雨の鷺山照り降りどのみち鷺さわぐ 平井さち子 完流
梅雨もなか肘から振つて魚に塩 平井さち子 完流
不安濃し飛機より低き梅雨日輪 平井さち子 完流
かく静かな梅雨の日もあり被爆時も 平井さち子 完流
菜さして貧しからねど梅雨灯 平井さち子 完流
梅雨の扉に起伏まどかな子のおもて 平井さち子 完流
神輿蔵日吉の神輿梅雨ごもる 川崎展宏 冬
梅雨の雀つゆのすゞめと鳴きにけり 川崎展宏 冬
墨刷いて多摩の横山戻り梅雨 川崎展宏
青梅雨の帽子が帽子掛けにある 川崎展宏
鎖ごと抱きかゝへけり梅雨の犬 川崎展宏
昆布巻や梅雨もをはりに近き頃 川崎展宏
干菓子あり隣近所の梅雨の屋根 川崎展宏
炎帝の錦旗北上梅雨鬱王 川崎展宏
梅雨の月傘をさす人ささぬ人 川崎展宏
大壺に 青梅雨の声 みな蔵う 伊丹公子 山珊瑚
荒梅雨の後の空白 火を作る 伊丹公子 時間紀行
青梅雨抜けてきた魚でしよう 画廊の隅 伊丹公子 陶器の天使
梅雨の金魚 花散るように下降して 伊丹公子 陶器の天使
青梅雨や向日葵の葉の大雫 大熊輝一 土の香
梅雨止まず減反届印にじみ 大熊輝一 土の香
夢にゐて母を殺めし梅雨晴間 石寒太 夢の浮橋
「眞」といふ一字の滲み梅雨に入る 石寒太 翔
あらぢんのらむぷの灯る梅雨の丘 石寒太 翔
梅雨蝶のしだいに低く墓の中 石寒太 炎環
約束のひとつ果せし梅雨晴間 石寒太 炎環
梅雨の海ヤコブの梯子までは遠し 成瀬櫻桃子 素心
梅雨ながし家鴨おのれの声に倦み 成瀬櫻桃子 風色
そらんずるモーゼ十戒梅雨の闇 成瀬櫻桃子 風色
智恵うすき子とオバQに梅雨青し 成瀬櫻桃子 風色
梅雨寒しジェンナーは子をいとしめる 成瀬櫻桃子 風色
まつ白き紙を配りぬ梅雨の卓 山田弘子 初期作品
裁布のはなやぐひと間梅雨深し 山田弘子 初期作品
埋立ての始まつてをり梅雨の浜 山田弘子 初期作品
大屋根を人の歩める梅雨晴間 山田弘子 懐
梅雨一樹一樹の暗さ歩きゆく 山田弘子 こぶし坂
邂逅や梅雨荒れしこと晴れしこと 山田弘子 こぶし坂
梅雨の夜の日記のすこし長くなる 山田弘子 こぶし坂
筆硯に親しむことも梅雨籠 山田弘子 こぶし坂
脱ぎ捨てし背広に梅雨の重さあり 山田弘子 螢川
梅雨に倦むごと牧牛の反芻す 山田弘子 螢川
梅雨晴の沖に広さの戻りつつ 山田弘子 螢川
朝より男梅雨とはかくばかり 深見けん二 日月
梅雨の川濁れるままに日の当り 深見けん二 日月
君までも逝かれいよいよ梅雨深し 深見けん二 日月
青梅雨を歩きへんろとして発ちぬ 黒田杏子 花下草上
歩きへんろの鈴過ぎし梅雨葎 黒田杏子 花下草上
梅雨の月ひとりの旅は浦伝ひ 黒田杏子 花下草上
御厨人窟に梅雨の螢を放つべし 黒田杏子 花下草上
がじゆまるの岬に至る梅雨遍路 黒田杏子 花下草上
荒梅雨のたましい圧縮し了りぬ 池田澄子 たましいの話
常に健気に基礎代謝かな戻り梅雨 池田澄子 たましいの話
大いなる海原がこい梅雨の国 池田澄子 たましいの話
梅雨の雷太鼓のごとし関ヶ原 大峯あきら 宇宙塵
戻り梅雨箱より本の出でざりき 小島健 木の実
蟹汁を啜りて梅雨をたのしめり 小島健 木の実
梅雨の月雲うすければそこに見え 岩田由美 夏安
梅雨の月夜深きほどにくつきりと 岩田由美 夏安
また別の窓より仰ぎ梅雨の月 岩田由美 夏安
生きてゐる限りいくさは梅雨に来る 玉城一香
兵の声こもりてずつと梅雨の壕 玉城一香
梅雨あけや玻璃戸にのこる子の指紋 玉城一香
筍梅雨地球の孤独深めけり 脇本星浪
こいさんの恋の愚かに梅雨出水 赤尾恵以
戻り梅雨またも日記の日がとんで 角光雄
梅雨萩や青畝先生現はるる 九鬼あきゑ
のろま人形首ぐらと梅雨どしゃぶりに 諸角せつ子
梅雨晴間猫左手をよく使ひ 本庄登志彦
梅雨に入る不動の鯉となりにけり 本庄登志彦
燈の向けるギリシャ黒壺梅雨に入る 中戸川朝人
荒梅雨を来て句座の椅子軋ませる 小出秋光
本流より支流を好む梅雨鯰 相原左義長
梅雨見舞い最後にご健吟下さい 相原左義長
コロリ往生したいしたいと梅雨に入る 相原左義長
荒梅雨の鵜の目あをあを飼はれたり 宮田正和
畦際を濁すゐもりよ梅雨晴間 阿部ひろし
空ベッド梅雨の物売来て濡らす 肥田埜勝美
蕾いま紅のちからを生みし梅 雨宮抱星
旱梅雨剥げし絵に生く裸婦の唇 雨宮抱星
妻や逝く黴雨の詩嚢を敲きくれ 富田潮児
梅雨荒れや二つに割れし川瀬石 富田潮児
梅雨鴉一揆のごとく群れ騒ぐ 溝延宝
口あけて鳴かずじまひの梅雨鴉 小林青波
梅雨鴉啼いて吉凶変りけり 藤井澄子
梅雨鴉子を呼ぶ声の濡れてゐず 森ふみ子
梅雨鴉足踏ん張つて番所跡 岩田金子
素うどんに葱たつぷりと送り梅雨 水原春郎
鉄路越す傘の幾夜ぞかへり梅雨 絵馬 寿
送り梅雨羽黒詣をたたきけり 宮津昭彦
女傘させばまばゆき戻り梅雨 俵木陶光
一日のどしや降りに梅雨終りけり 佐藤 忠
梅雨きのこひとの油断を見てゐたる 藤田湘子
青梅雨の湯あがりをまだ灯さず 岡本 眸
青梅雨や流木に知るものの果 能村登四郎
青梅雨の雲しりぞけつ白鷺城 水原秋櫻子
梅雨かなし竈の前に掌などつき 北原志満子
梅雨貧し花でも真赤に画いてやれ 岡部六弥太
ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき 桂信子
他人の血貰ひて吾が目赤き梅雨 大高弘達
若者の音量で聴く梅雨のジャズ 勝田公子
梅雨の灯に非力な鬼は図形引く 山本春穂
無頼派俳人一人減りたる男梅雨 舘岡沙緻
縫ふことも読むことも倦み梅雨籠 丸山みどり
一瞬に霄るる視界も男梅雨 藤浦昭代
灯るごと梅雨の郭公鳴き出だす 石田波郷
抱く吾子も梅雨の重みといふべしや 飯田龍太
落書の顔の大きく梅雨の塀 高浜虚子
梅雨の海静かに岩をぬらしけり 前田普羅
梅雨晴や草より垂るゝ蜥蜴の尾 酒井黙禅
梅雨晴や小村ありける峠口 水原秋桜子
昼過ぎの授業にも似て梅雨晴間 田口茉於
梅雨の月埴輪の口がぽと言ひぬ 辻 直美
薄墨の雲飛ぶ尾瀬の梅雨月夜 岡田日郎
わが庭に椎の闇あり梅雨の月 山口青邨
梅雨さむし山霧軒にささと降り 長谷川素逝
薬草の大きな袋梅雨に入る 坂井あかり
鹿の斑のかそけき梅雨に入りにけり 野中亮介
父母の忌に続く妻の忌梅雨に入る 北村聖火
十葉の花まづ梅雨に入りにけり 久保田万太郎
わが病わが診て重し梅雨の薔薇 相馬遷子
み吉野の筍梅雨を思ひけり 藤田あけ烏
梅雨くらく真菰を打ちて風走る 水原秋櫻子
梅雨の土かがやきて這ふ蛆一つ 沢木欣一
辛子黄に梅雨上りけり心太 永井東門居
by 575fudemakase | 2016-06-20 19:54 | 夏の季語


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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