人気ブログランキング | 話題のタグを見る

涼し その3

涼し その3

目立たざる涼しき服を夜も着て 後藤夜半 底紅
目立つなく装ふ人とゐて涼し 岡本まち子
相許せどなほ文もせず居る涼し 中塚一碧樓
省略を尽くし円空仏涼し 林田市郎(蕗)
真如堂灯明揺れもせず涼し 伊藤和義
真黒き釣鐘を見て昼涼し 桂信子 草樹
眼を病めばものみな暈を被て涼し 伊藤いと子
眼差の涼しき闘志なつかしき 稲畑 汀子
着きてすぐ海鞘もてなさる日涼し 野澤節子 黄 炎
着く汽車に犬は涼しき貌を立て 辻田克巳
瞬いて涼し弦楽四重奏 川崎展宏
瞳が涼し蓬髪無言の山男 福田蓼汀 秋風挽歌
石が食卓涼しく一ツ釜に食ふ 石橋林石 『石工日日』
石仏の眉を彫り出す音涼し 岸原清行「海境」
石抱て樵夫の眠る涼しさよ 涼し 正岡子規
石段を登り漁村の寺涼し 高浜虚子
石畳径ひろひに髪涼し 石川桂郎 高蘆
石筍の親子が並ぶ洞涼し 森田峠 避暑散歩
砂浜に雑魚うちあけて月涼し 正岡子規
砂浜に雑魚打あけて月涼し 涼し 正岡子規
砂浜の太極拳や松涼し 武田久子
磨かれて火取母涼し駆込寺 小林道子 『下萌』
磯枕涼しといふもおろか也 尾崎紅葉
祝がれゐて鶴を象る皿涼し 中戸川朝人
祝福の涼しき声に和してをり 稲畑廣太郎
神垣の巖となりて浪涼し 尾崎紅葉
神山を涼しき杣の抜けてゆく 大峯あきら 鳥道
神招ぶ所作のちよぼ口涼しうなゐ巫女 平井さち子 完流
神楽笛ここ涼し音の佃堀 古沢太穂
神鏡のわれを捉へて涼しけれ(羽黒山) 上村占魚 『一火』
神鳴の雲をふまへて星涼し 涼し 正岡子規
祭服の涼しき白や起工式 稲畑廣太郎
祭馬涼しき木蔭もらひけり 大石悦子 百花
禁煙禁煙大杉並木涼し 石川桂郎 四温
禅寺に何もなきこそ涼しけれ 涼し 正岡子規
禅門の戒の一字や露涼し 正田稲洋
秋くさをいさゝかまじへ草涼し 久保田万太郎 草の丈
秋は涼しき店のいろくづ水たらす 臼田亜浪 旅人
秩父困民党士の墓にゐて涼し 石寒太 翔
稚児の手の墨ぞ涼しき松の寺
空海につなぐ法灯涼しけれ 鈴木舜子
空涼しネオン疲るるさまもなく 岩崎照子
空港の灯は赤と青芝涼し 田中蘇冬
空港の雨の涼しさ殊のほか 森田峠 避暑散歩
空瓶の中を母くる青田涼し 堀之内勝衣
空言の恋の坩堝にゐて涼し 西川良子
窓あけて寝さめ凉しや檐の雲 涼し 正岡子規
窓あけて寝ざめ涼しや檐の雲 正岡子規
窓に並べて万年青も涼し旧病棟 石川桂郎 高蘆
窓をひらいて少女被弾す涼しい未来 阿部完市 絵本の空
窓涼し今は一つの舟も見ず 五十嵐播水 埠頭
窯元の老主帷子涼しげに 真柄嘉子
立ちてまた座して涼しき若狭仏 楠戸まさる
立ちよれば木の下涼し道祖神 涼し 正岡子規
端坐跌坐兀坐いづれが涼しかろ 中原道夫
競られゐて暑き鮟鱇飛魚は涼し 野澤節子 黄 炎
竹も木もわかなくなりて暮涼し 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
竹よ竹何なければぞ涼しけれ 広瀬惟然
竹人形いづれ涼しき立ち姿 湯沢あや子(屋根)
竹人形ひとり言さへ涼しくて 渡辺恭子
竹寺の涼しきものに時の鐘 鷹羽狩行
竹寺の竹の一輪ざし涼し 杉 良介
竹島に灯のつき波の音涼し 栗田せつ子
竹林の空を掃くとき涼しかり 田の上豊作
竹林をはみだせる竹涼しけれ 大木あまり 雲の塔
笑はせて終る法話や堂涼し 平間たけし
笑ひさうな骨格標本風涼し 上田 春日
笑み涼し何を夢見て赤ん坊 高澤良一 素抱
笙涼し遥かに蓮の葉分船 蓼太「蓼太句集三編」
笛の音の涼しう更くる野道哉 涼し 正岡子規
笛吹いて涼し壁画の飛天仏 木暮剛平「飛天」
笛方の涼しき袖を水鏡 小原芳子
笛方の遠まなざしの涼しさよ 片山由美子 天弓
笠あふつ柱涼しや風の色 史邦
笠かろくかぶりつれ日の涼しさよ 久保田万太郎 流寓抄以後
笠深く鸚鵡小町の出の涼し 加藤三七子「無言詣」
笠置いて木かげ涼しき日の匂ひ 中川宋淵 詩龕
第一鎖骨の涼しさ乙女ら珠洲へ行く 磯貝碧蹄館
第三の石門涼し雲の上 涼し 正岡子規
笹舟の巌をかはすとき涼し 菅原鬨也
筑波見ゆると有馬総長涼しかり 今瀬剛一
箔置くに涼しき息を使ひけり 吉田紫乃
箱庭のとはの空家の涼しさよ 京極杞陽「但馬住」
箸涼しなまぐさぬきのきうりもみ 久保田万太郎 流寓抄
簾して涼しや宿のはひり口 荷兮「曠野」
籠に盛りてどの花となく涼しさよ 高濱年尾 年尾句集
米を研ぐ水の涼しさいくたびも 蓬田紀枝子
米を磨ぐ水の涼しさいくたびも 蓬田紀枝子
粧ふといふは涼しく見せること 木内悠起子
精進の器の涼し青高野 村越化石
糸からくり大きな所作の音涼し 高澤良一 ぱらりとせ
糸すゝき涼しき夜の花瓶かな 長谷川かな女 雨 月
紋どころ涼しき日覆三船祭 福田章史
紙カップまづまろばして風涼し 久保田万太郎 流寓抄
紙コップ飛ぶ涼しさや舟遊び 吉屋信子
紙ナプキン折目涼しき樹下の卓 渡邊千枝子
素志言志篠つく雨のあと涼し 池田澄子 たましいの話
素木仏涼しきまでに痩せたまふ 太田 昌子
紡錘形に鳩の彫刻楽涼し 中戸川朝人 残心
紫禁城高野の僧に会ひて涼し 杉本寛
紫蘇揉んでひとりの夕餉涼しけれ 石田あき子 見舞籠
紫陽花の灯を消し思ひ涼しくす 古賀まり子 緑の野
細格子連ね茶屋街雨涼し 都筑智子
組紐の媼涼しき糸さばき 山口貴志子
経の声かすかに涼し杉木立 涼し 正岡子規
経の声はるかにすゞし杉木立 涼し 正岡子規
経の声聞えてすゞし杉木立 涼し 正岡子規
経糸涼し一本通るくるみ染 猿橋統流子 『丹波太郎』
結ひあげて涼しき髷となりにけり 久保田万太郎 草の丈
結納の二人へ母は涼しき髪 都筑智子
結跏趺坐生死の外の涼しさか 橋本榮治 麦生
絵天井涼しき高さありにけり 池田弥寿
絵扇の涼しき人と対ひけり 小坂 順子
絵硝子の藍の涼しき神学部 石田克子
絶えずしも稻妻うつる水涼し 稲妻 正岡子規
網さげて涼しさうなる雫哉 涼し 正岡子規
緑涼し沙彌がくみ来る出ながれ茶 河野静雲 閻魔
縁涼しかくもちひさき足の痕 瀧春一 菜園
縁涼し浮べるごとく人坐る 五十嵐播水 埠頭
美入手を貨せばひかれて老涼し
美食家の歯音涼しうモモスズメ 高澤良一 燕音
群星にうもれしわれの一人涼し 原石鼎 花影以後
義によって命涼しき硯かな 立花北枝
義仲を思へば涼しき草の丈 小林貴子
義民祭る蝋涙涼しげすぐ濁り 香西照雄 対話
老いてこゝに斯く在る不思議唯涼し
老の手にまはるろくろが涼しいぞ 後藤夜半
老人に会うて涼しくなりにけり 今井杏太郎
老人の紫煙涼しき東巴文字 森田かずや
老優の齢涼しくありにけり 市村季子
老居士と朝茶一喫露涼し 上林白草居
老杉にむささびの穴湖涼し 西本一都 景色
老杉の間涼しかり波の音 石寒太 翔
耳飾り樹下に涼しき婆の耳 上野さち子
聖堂に夫と並べば星涼し 中川やよひ
聖堂の畳涼しき津和野かな 長谷川明子
聖戦とは人殺すこと星涼しきに 小佐田哲男
聖絵硝子涼しゆかりはさだめへと 平井さち子 完流
聞てゐて涼しや闇の雨三更 涼し 正岡子規
聴ゆるは涼しき天鼓群青忌 伊丹さち子
肌たたき命涼しみゐたるかな 村越化石
背にうけて朝日すゝしや山の上 涼し 正岡子規
胎動を告げる瞳涼し星月夜 嶋村悦子
胡瓜喰らひ息の涼しき貧家族 澤木欣一
胸の手の涼しく明けて鯛の海 野澤節子
胸板に夜風涼しみゐる患者 高澤良一 鳩信
能もなき教師とならんあら涼し 夏目漱石(1867-1916)
脩竹千竿灯漏れて碁の音涼し
脱ぐ笠の涼し泊りにつく同者 井上井月
脳下垂体涼し水音聞きをれば 正木ゆう子 静かな水
腕時計外せるのみにやや涼し 白岩 三郎
腰かくる石さめざれど夕涼し 松藤夏山 夏山句集
腰かけて中に涼しき階子かな 浜田酒堂
腰蓑の雫も涼し沖膾 沖膾 正岡子規
腰長や鶴脛ぬれて海涼し 松尾芭蕉
腹涼し袋の風を少しつゝ 涼し 正岡子規
膝と膝に月がさしたる涼しさよ 河東碧梧桐
膝に手を置けば涼しきさるすべり 鈴木鷹夫 大津絵
膝抱いて蘆のまろ屋の涼しさよ
膳の上初めて涼し新豆腐 数藤五城
自ら風の涼しき余生かな 虚子
自動車のぱたんとしまる峡涼し 京極杞陽 くくたち上巻
自在鉤涼し土間より風の沙汰 櫛原希伊子
舞ふ獅子の白衣に蹤きて蝶涼し 伊藤いと子
舞台裏見えて涼しき野外劇 伊東白楊
舟からは松家からは島すゝし 涼し 正岡子規
舟に乗る一人は涼し鳰の海 涼し 正岡子規
舟を置く箱庭療法涼しとも 伊藤杜夫
舟屋見ゆ蕪村の海の涼しさに 浅井青陽子
舟涼し吹かれて居れば吹きにけり 立花北枝
航涼し水漬かんばかり北斗星 五十嵐播水「石蕗の花」
航涼し河水濁りすでになく 中田みづほ
船でゆく寺や離宮や風涼し 伊藤いと子
船と船通話して居る灯涼し 高濱虚子
船に寝れば鷺落ちて来る涼しさよ 涼し 正岡子規
船の灯の遠ざかりゆく涼しさよ 五十嵐播水 埠頭
船揺れて瓶花傾く涼しさよ
船旅の涼しく老いし二人かな 小山徳夫
船涼し左右に迎ふる対馬壱岐 高浜虚子
船涼し已が煙に包まれて
船霊を山に上げたる涼しさよ 鳥居おさむ
良寛の頤細き涼しさよ 村松紅花
芋の露ひぐれて涼し海の村 田中裕明 櫻姫譚
芝庭の広さわからぬ闇涼し 高木晴子 花 季
芭蕉布を織りゐる音として涼し 山崎ひさを「青山抄」
芭蕉葉にかくれて涼し夏の月 松藤夏山 夏山句集
芭蕉隆く露走り来る涼しさよ 小林康治 玄霜
花と実の中垣涼し梨子の窓 上島鬼貫
花の実の中垣涼し梨子の窓 鬼貫
花の絵のあるコーランや星涼し 明隅礼子
花巻駅賢治のれんを掛けて涼し 岩本六宿
花捨ててむしろ涼しき硝子花器 朝倉和江
花木槿足腰立てば涼しもよ 林原耒井 蜩
花菊芋日傘に保母の瞳が涼し 宮坂静生 青胡桃
苔を敷き往生極楽院涼し 轡田 進
苔涼し平泉先生の白緒下駄 桂樟蹊子
若水に鰹のをどる涼しさよ 其角
茄子売の言少なけれ顔涼し 羽部洞然
茄子紺に恵那山昏るる涼しさよ 西本一都
茅の輪に日向ながらの雨涼し 内藤鳴雪
茴香に涼しき雲の通ひけり 岸秋溪子
茶のこころ夏は涼しくあれとのみ 西本一都
茶の稽古いとなまれゐて寺涼し 上村占魚 球磨
茶を運ぶうなじ涼しき少女かな 安藤重子
茶屋涼しひとり残りてする昼寝 高濱年尾 年尾句集
草ぐきに鰓さしきたる涼しさよ 斎藤梅子
草屋根の勾配涼し伊香郡 杉山青風
草山に涼しく向かひゆく五感 武藤和子(阿蘇)
草庵の砂糖涼しき苺かな 増田龍雨 龍雨句集
草枕涼し三千の姫小松 涼し 正岡子規
草涼し夢は輓馬の音に覚め 河野多希女 こころの鷹
草涼し蜘蛛は眠りの糸を吐く 庄司圭吾
草清水草にもつるる涼しさよ 西本一都 景色
草臥(くたぶれ)はどふも涼しい月よなふ 広瀬惟然
草負ふて背中にすゞし朝の露 涼し 正岡子規
荻窪に茣蓙屋があればこそ涼し 筑紫磐井 花鳥諷詠
菩提樹に寄る心身の涼しさよ 市来あつ子
菩提樹下誘はれて涼し珈琲どき 桂樟蹊子
萩涼し林火師夫人九十五 中戸川朝人 尋声
萱馬のたてがみ涼し波が越す 伊藤いと子
落ちてゆくゆとりもありて滝涼し 津田清子
葉から葉へつたふて涼し竹の雨 羽幸
著莪の花涼しさを知るはじめなり 細見綾子 花寂び
葛切の井の涼しさを掬ふごとし 大野林火
葛切や齢涼しく父は老い 橋本榮治 麦生
葛水や馬も涼しき木下蔭 石井露月「露月句集」
葛飾の野風涼しや素堂の忌 甲田苔水
蒟蒻の刺身涼しき夫の忌 丹羽 雪
蒲活けてあり涼しさの乱れなし 宮津昭彦
蓮一葉抽く稲原の朝涼し 金尾梅の門 古志の歌
蓮喰うて先づ寂しさよ涼しさよ 佐々木六戈 百韻反故 初學
蓼の葉の虫枯れて鳴る涼しけれ 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
蓼科の夜はしんしんと星涼し 鳥羽とほる
蔵座敷二十一畳半涼し 佐藤斗星 『七草の籠』
蔵座敷五尺時計の音涼し 白澤よし子
蔵涼し千両箱の黒びかり 山田紀子
蔵涼し紅屋の裔の鈴木姓 森田峠 避暑散歩
蕗の葉のひるがへりつゝ道涼し 石橋辰之助 山暦
薄羽蜉蝣酒断ちてより灯の涼し 小松崎爽青
薩摩路や涼しき色の潮だまり 後藤是山
藍地着て鬱金の帯の背の涼し 二神節子 『砥部』
藍蔵のなか何もなき涼しさよ 長谷川櫂 天球
藤の実の如く垂れなば涼しからむ 高澤良一 ぱらりとせ
藤村の泊りし宿の涼しさに 遠藤風琴
藻に触れてゆく水が見え朝涼し 大串章
蘆昏れて菱昏れて星涼しかり 茂恵一郎「雪座」
虎杖の箸を涼しくまゐらせり 松山足羽
虚子もなし風生もなし涼しさよ 小澤實(1956-)
虚子坐像涼し闘志は秘めしまま 千原叡子
虫たべに来て鳥涼し高山寺 宇佐美魚目 天地存問
虫涼し天象星を列ねたり 大木格次郎
蚊嫌ひの母に戸ざして夜雨涼し 富田木歩
蚊帳吊らぬ涼しさ語り更かしけり 金尾梅の門 古志の歌
蛇皮線に涼しき喉や水牛車 森 高子
蛇笏忌の雲飲食を涼しくす 河野友人
蜘の巣の露に涼しき入日哉 涼し 正岡子規
蜜豆の寒天の稜の涼しさよ 山口青邨
蜻蛉の羽ね涼しげに生れけり 高橋淡路女 梶の葉
蝉の聲あつし蜩やゝ涼し 蜩 正岡子規
蝉涼しわがよる机大いなる 杉田久女
蝉涼し一路直ちに山門へ 露月句集 石井露月
蝉涼し仏足石に供へ米 冨田みのる
蝉涼し八雲山風吹き通ふ 鈴鹿野風呂 浜木綿
蝉涼し妙義荒尾根空を馳せ 河野南畦 湖の森
蝉涼し少年隊伍もて来たる 岸風三楼 往来
蝉涼し山の泉のひとゝころ 上村占魚 鮎
蝉涼し折々風に鳴きほそり 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
蝉涼し朴の広葉に風の吹く 碧梧桐
蝉涼し水踏んて来た藁草履 尾崎紅葉
蝉涼し汝の殻をぬぎしより 杉田久女
蝉涼し流れにそむき梳れる 太田鴻村 穂国
蝉涼し睡魔払ひに下り立てば 清原枴童 枴童句集
蝉涼し絵馬の天人身を横に 松本たかし「野守」
蝉涼し絶えず刈藻のながれくる 瀧春一 菜園
蝉涼し翁も触れし老杉に 小松崎爽青
蝉涼し蟹ははさみをたたみ去る 阿部みどり女
蝉涼し足らぬねむりをねむりつぐ 秋櫻子
蝉涼し蹴鞠は刻を惜むなく 岸風三楼 往来
蝉遠く切支丹浄土涼しけれ 小林康治 玄霜
蝦夷涼し放馬は駈くること一生 中山砂光子 『納沙布』
蝦夷菊に日向ながらの雨涼し 内藤鳴雪+
蝶涼しトラピスチヌの牧草地 西本一都
蝶涼し一言主の嶺を駈くる 阿波野青畝
蟷螂のまつろ涼しく吹かれている 片山花御史
蟹の穴塞ぎみぬ夕べ涼しくて 中島月笠 月笠句集
蟻一つ居ぬ下界と見えて不二涼し 涼し 正岡子規
蠍座の涼しく揺るる沖は恐し 山本歩禅
行く先は九品のひとつ露涼し 新井竜才
行く涼し谷の向ひの人もゆく 原石鼎
行けは熱し休めば涼し蝉の声 蝉 正岡子規
行けばあつしやめれば涼し蝉の声 蝉 正岡子規
行けば誰か居さうで涼し福木道 玉城一香
行水や戸板の上の涼しさに 素牛 俳諧撰集「藤の実」
行水をこぼすや草の露涼し 行水 正岡子規
行違ひあれど逢ひ得し樹下涼し 高木晴子 花 季
街ゆけり独りを涼しと思ひつつ 山田みづえ 草譜
衣更へて命涼しく老いにけり 前田 白露
表札の舞妓涼しき名を並べ 岬雪夫
衰へを涼しさにして半跏趺坐 直江裕子(京鹿子)
袖涼し島ちらばつて十八里 涼し 正岡子規
袖涼し嶋ちらばつて十八里
袴はく足もと涼し昔ぶり 涼し 正岡子規
装束を改むる間の笛涼し 今井千鶴子
裏まれて居る涼しさの夜半の霧 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
裏口は涼し寂しと深空あり 中尾寿美子
裏寝覚表寝覚と水涼し 西本一都 景色
裏見せて涼しき滝の心かな 芭蕉「宗祗戻」
裸火を神の灯と置く涼しさよ 林翔 和紙
裾さばき涼しきマラヤ娘たち 成瀬桜桃子 風色
褒められしやうに涼しき林火の忌 中戸川朝人
西域の青衣涼しく本生図 広岡仁 『休診医』
西日さし涼しき風も亦入りて 波多野爽波 鋪道の花
西谷に西寺涼し観世音 杉本寛
西郷窟一塵もなき涼しさよ 堀口星眠
要やゝ綻びし扇涼しけれ 小林康治 四季貧窮
見えてゐるその辺の灯の涼しけれ 上村占魚 球磨
見えてゐる星見えて来る星涼し 稲畑汀子
見えぬ眼の闇を涼しと涼みをり 村越化石
見むとし見れば石の涼しさ湧き漂よふ 加藤知世子 花寂び
見ゆるごと摩崖名号誦し涼し 中戸川朝人 尋声
見るからに涼しき島に住むからに 夏目漱石 明治三十七年
見下して涼しき距離に門谷村 鈴木鷹夫 大津絵
見下せば月にすゝしや四千軒 涼し 正岡子規
観ずれば涼しき夢のうき世哉 涼し 正岡子規
観音のこゑの涼しき口説かな 石毛喜裕
解きし握手の手を振る別れ涼しくも 稲垣きくの 黄 瀬
解し合ふ言葉少なにゐて涼し 高木晴子 花 季
言葉待ちつつ涼しさの中にゐる 廣瀬直人「朝の川」
誕生日わが名二音の涼しかり 内田美紗 誕生日
誘ひ合ふて厠にゆく子月涼し 佐野青陽人 天の川
語らずにゐる涼しさや簟 岡安迷子
語り部を待てり涼しき座を空けて 中山明代「茅花流し」
読みほけて涼しと思ふ夜のくさめ 林原耒井 蜩
護摩の火と向き合ふ正座眉涼し 森青山
谷の祠涼しく朽ちて居たりけり 尾崎迷堂 孤輪
谷よりの風竹籠の目の涼し ふけとしこ 鎌の刃
谷底に見あげて涼し雲の峯 雲の峯 正岡子規
谿の螢峰ほととぎす歌碑涼し 加藤知世子 花寂び
象潟や涼しき潮に千松嶋 松根東洋城
豪快な山雨すぐ止む涼しさよ 檜 紀代
豹涼し肩が歩めば背がつづき 林 徹
貧乏癌よ「掠めること火の如く」死も涼し 橋本夢道 無類の妻
責め三味のきびしく涼し老瞽女 西本一都 景色
貴船川涼し涼しと奥宮へ 富田よしえ
貸馬の瞳の涼しさのかなしさよ 風生
賭場出てプール邊に佇つ月涼し 吉良比呂武
贋作の乾山を置く涼しさよ 大石悦子「耶々」
赤ん坊と一つ毛布に月涼し 岸本尚毅 舜
赤子つむる一文字二つこそ涼し 蓬田紀枝子「青山椒」
赤子に汽車見せて涼しむ麻畑 野澤節子 黄 炎
赤子涼しきあくびを豹の皮の上 野澤節子「花季」
起工式待つ昂りの涼しさよ 稲畑廣太郎
足音をきゝ振り向かず椅子涼し 高木晴子 花 季
足高に涼しき蟹のあゆみかな 木因
跡もなく灰となりたるもの涼し 長谷川櫂 虚空
踏まれざる草原にして露涼し 鈴木紅果(ホトトギス)
踏めば鳴る回廊涼し時国家 上田博子
躍る水鎮もる水に苔涼し 吉年虹二
躍る落ちる奔る流れる渓涼し 矢島渚男 延年
身にまとふ反古捨てさらば涼しからむ 塘柊風
身ふたつになりし涼しさほほゑみて 橋本鶏二 年輪
身ほとりに夜風山風涼し過ぎ 高木晴子 花 季
身を拭けば毛穴涼しき虹の風 大熊輝一 土の香
身辺に母がちらちらして涼し 耕二
車前草も人のくすりに谷涼し 宇佐美魚目 秋収冬蔵
車窓涼し驚異の潤目欠伸の穴 香西照雄 素心
車輪梅井の涼しさに匂ふかな 河野南畦 湖の森
軍刀利さん涼し涼しと登りけり 飯島晴子
軸涼し墨一刷きの瀑布なる 伊藤宮子
輝く日涼しき水に城映る 高木晴子 花 季
迎火の灰わが死後も露涼し 松村蒼石 雁
近道を覚えて涼し宇陀郡 大石悦子 群萌
迷ふても迷ふても野の涼しさよ 涼し 正岡子規
追風にまろびて涼し沖津波 水原秋桜子
逃がしやる鮒掌に涼しけれ 中田剛 珠樹以後
透きとほる流れの涼し鯉もまた 西井静子
逢へばまた厚きてのひら涼しくて 野上けいじ
遊亀展の白寿の画業涼しけれ 伊東宏晃
道々の涼しさ告げよ土用東風 来山「今宮草」
道もその道に叶ふてもの涼し 千代尼
道明寺喰でも涼し備後砂 湖春
道涼し芦の風また蒲の風 峠
遠きほど*えりの定かや波涼し 梅原黄鶴子
遠き世の涼しさ残す袴襞 林翔 和紙
遠ざかるこゑの涼しき秋をの忌 湯原民子
遠つ祖ここらや漕げる松涼し 臼田亞浪 定本亜浪句集
遠の灯の名ををしへられ居て涼し 竹下しづの女 [はやて]
遠嶺星涼し父母ゐる昂りに 鍵和田[ゆう]子 未来図
遠泳後の入江涼しき舵の音 中拓夫 愛鷹
遠泳終ふ入江涼しき舵の音 中拓夫
遺墨にも月日涼しく流れけり 辻口静夫
遺影ふと励ましの目を涼しき灯 高木晴子
遺影涼し林中を牛の斑が移り 子郷
部屋涼し奏楽起り着席す
配られて水色の飴涼しさう 都筑智子
酒盛の椰子葉囲ひに灯の涼し 桂樟蹊子
酒蔵の裏涼しくて朝の市 沢木欣一
酔て猶眼涼しやさくら人 高井几董




酔語悔いをり終電車涼しくて 細川加賀 『傷痕』
酸つぱさが涼しさとなり杏食ふ 川野一雨「新山暦俳句歳時記」
醜男の蜂子皇子の山涼し(羽黒山) 細川加賀 『生身魂』
重心の涼しきパンダ坐りかな 後藤比奈夫 めんない千鳥
野に下れば白髯を吹く風涼し 夏目漱石 明治三十七年
野の卓を囲めば楡の風涼し 山田弘子 懐
野も山もぬれて涼しき夜明かな 涼し 正岡子規
野村万蔵蹴つて袴の涼しけれ 大木あまり 火球
金・銀で酬ゆる恩の涼しかり 筑紫磐井 婆伽梵
金婚や金の小匙の涼しかり 田中英子
金山の坑口滅ぶもの涼し 高橋六一
金山の発破をり~月涼し 河野静雲 閻魔
金持は涼しき家に住みにけり 涼し 正岡子規
金泥で書く波羅蜜の涼しさよ 筑紫磐井「筑紫磐井集」
金網の中に涼しき佛かな 会津八一
金色の涼しき法の光かな
金花佐久ゆめの万葉仮名涼し 山田みづえ 木語
金華山沖を涼しく北航す 高野素十
金輪際起たぬつもりの山羊涼し 鈴木鷹夫 風の祭
金銀の光涼しき薬かな 川端茅舎
針とぶといふレコードも涼しけれ 田中裕明 先生から手紙
針山を涼しく風の通りけり 松山足羽
針荒き雑巾寄進寺涼し 赤松[けい]子 白毫
鈍(にび)いろの振つて涼しき鬼の鈴 山田みづえ 草譜以後
鈴は己れに涼しく振つて塵芥車 加藤知世子 花寂び
鈴振つて内侍来ぬ間の涼しさよ 筑紫磐井 野干
鈴振つて古道涼しむその錆音 加藤知世子 花寂び
鉢植ゑの竹に夕風涼しかり 石川桂郎 四温
鉾の灯の高きは涼し揺れにける 岸風三楼 往来
鉾揺れて涼しき雲のとべる空 高濱年尾 年尾句集
銀砂子撒ける蓮池(れんち)のいと涼し 高澤良一 随笑
銀食器買ふにスコール過ぎ涼し 影島智子
銘石を構へて涼し松の風 林 青峰
銭湯のふるき煙突月涼し 森 敬司
銭湯のタイル流るゝ泡涼し 高澤良一 暮津
鋸音涼し鋸の気性を殺さずに 磯貝碧蹄館 握手
鍋を磨きて涼しくなりぬ包の中 加藤知世子
鍛冶が家の隣は涼し馬頭尊 涼し 正岡子規
鎌倉や老の涼しき肋骨 殿村莵絲子 雨 月
鐘涼し十囲の木に道尽きて 涼し 正岡子規
鐘銘撫づれば涼しき韻てのひらに 羽部洞然
長い手を延ばして涼し夏神楽 素檗「素檗句集」
長江も黄河も渡り汽車涼し 市場敏司
長生きして涼しく使ふ象牙箸(岳父) 高澤良一 暮津
門あらず木立涼しき家ときく 富田木歩
閉ざされし塔光年の星涼し 原 和子
開拓史語り涼しき眸なりけり 山田弘子 螢川
閣涼し金碧はげて笙の声 涼し 正岡子規
閨を出でて限に春の星涼し 会津八一
闇の涼しさ手さぐりたしかに火縄つめる 加藤知世子 花寂び
闇涼し富士の気配をぬりつぶし 威瀬正とし
闇涼し川の向ふの笑ひ声 涼し 正岡子規
闇涼し漁火島の灯より混み 石井とし夫
闇涼し灯影ちらつく枕ばし 涼し 正岡子規
闇涼し草の根を行く水の音 露月
闇涼し蒼き舞台のまはる時 篠原鳳作 海の旅
闇空に富士をまさぐる眼ぞ涼し 林原耒井 蜩
降って湧く涼しき風を待ちゐたり 高澤良一 寒暑
降りかけのしばらく涼し夜語りに 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
降りたつやからりと涼し女満別 中村勢津子
降る松笠茅舎の墓に涼しき音 羽部洞然
陣屋涼し昔を語る絵などある 高濱年尾 年尾句集
陰の身に馴れて涼しく銭使ふ 長谷川双魚 風形
陶土に生る涼しき渦の轆轤工 鈴木鷹夫 渚通り
陶工のいのち涼しきあやめかな 鈴木桜子(曲水)
隔意なき醫療に戻る涼しさよ 下村ひろし 西陲集
隧道にうしろから吹く風すゝし 涼し 正岡子規
隧道のはるかに人の声すゞし 涼し 正岡子規
隧道のはるかに人の影すゞし 涼し 正岡子規
雀遊び師の句涼しく彫られけり 大串章
集落は明智の家紋露涼し 伊東宏晃
雨だれの間遠となりし涼しさよ 片山由美子 雨の歌
雨なくて稻妻うつる水涼し 稲妻 正岡子規
雨に鎖してわづかに涼し壁のもと 富田木歩
雨の輪の消しあふことの涼しかり 西本一都 景色
雨を詠むことを涼しきこととして 保坂伸秋
雨涼し白衣ながらも肩の幅 阿部みどり女 笹鳴
雪渓の風の抜け口おお涼し 高澤良一 宿好
雪見にと聞て涼しき夕かな 涼し 正岡子規
雪見にと読て涼しき夕かな 涼し 正岡子規
雲にぬれて関山こせば袖涼し 涼し 正岡子規
雲水のなべて早足寺涼し 中嶌テル子
雲水の涼しうなりし首の下 松澤昭 宅居
雲涼し人の言ふこと聞いてゐず 細見綾子 花寂び
雲涼し窟をながるる菊池川 吉武月二郎句集
雲表といふことばあり空涼し 西本一都 景色
雲裂けて星みだれ飛ぶ涼しさよ 会津八一
雲風に行方任する涼しさよ 高澤良一 素抱
雷涼し一間暮らしの夜は書屋 皆吉爽雨
電動鋸すきとほる刃の涼しさよ 長谷川櫂 天球
電卓を御破算にしてゼロ涼し 松倉ゆずる
震災に耐へし芦屋の松涼し 稲畑 汀子
霧噴いて灯影涼しや植木市 三宅孤軒「孤軒句集」
霧涼しなき母の名を人に言ふ 橋本鶏二
露といふとびつくものの涼しけれ 西本一都 景色
露涼しくて化野と言ふところ 下村梅子
露涼しついで詣りの野の仏 荒武 蕾
露涼しとてかよひ路のあらはなる 田中裕明 花間一壺
露涼しひとりに猛き山の草 中村汀女
露涼し上着をぬぎて誰も手に 久保田万太郎 流寓抄
露涼し人また涼しかりしかな 倉田紘文
露涼し今日一日の始まりぬ 佐藤輝子
露涼し伝へて翁一宿地 大橋敦子
露涼し佐用媛石の泣くといふ 下村梅子
露涼し何も願はず合掌す 渡辺恭子
露涼し夜の風紋を刻みつつ 岸田稚魚 筍流し
露涼し太陽の面まだ平ら 川端茅舎
露涼し富士は裾野の捨草鞋 青木重行
露涼し寝墓に彫りし聖十字 景山筍吉
露涼し山家に小さき魚籠吊られ 大串章「百鳥」
露涼し幾重離りて山の色 松村蒼石 露
露涼し形あるもの皆生ける 村上鬼城
露涼し戦信敷居の上に来る 加倉井秋を
露涼し掌ほどの畠づくり 上村占魚 鮎
露涼し敷きたる如き吉字草 朝野白山
露涼し方十尺の書斎跡 下村ひろし 西陲集
露涼し日輪は地を離れつゝ 西島麥南
露涼し月毛の馬のとほるなり 岡井省二
露涼し朝ひとときの畑仕事 津田柿冷
露涼し朝富士の縞豪放に 富安風生
露涼し木末に消ゆるはゝき星 石井露月
露涼し棚田向き合ふ柳生村 猪狩和代
露涼し氷室の山に夏桜 涼し 正岡子規
露涼し洗はぬ顔の妻や子や 日野草城
露涼し白樺の葉はハート型 西本一都 景色
露涼し答へし齢驚かれ 赤松[ケイ]子
露涼し自在鉤影なす青畳 石川桂郎「含羞」
露涼し芝生につきし栗鼠の径 神田九思男
露涼し葉うらの瓜に朝日影 比叡 野村泊月
露涼し虚子の横川の日を偲ぶ 徳澤彰子
露涼し蚊帳吊草は花つけて 小杉余子 余子句選
露涼し足神さまへ竹の径 つじ加代子
露涼し鎌にかけたる葛の蔓 飯田蛇笏 霊芝
露涼し騎馬の少女の黒づくめ 堤 高嶺
露芋に夕立前の露涼し 露 正岡子規
青い山の上にも山、くもれるを涼しとする 荻原井泉水
青春かく涼しかりしか楡大樹 鍵和田釉子
青桐が見え三面鏡涼し 柴田白葉女 花寂び 以後
青檜葉の一本涼し朱唇仏 宮田正和
青物に涼しき月の巷かな 尾崎紅葉
青畳人間よりも猫涼し 鈴木鷹夫 風の祭
青畳涼し一書の重さの影 野澤節子 黄 瀬
青竹の涼しき音を振りこぼす 佐藤美恵子
青笊に湯呑が盛られ土工涼し 香西照雄 対話
青葉木菟姉亡き家の涼し過ぐ 羽部洞然
非在また涼しきものか花はちす 伊丹さち子
面影もほのかに涼し二日月 鬼貫
面舵に船傾きて星涼し 高浜虚子
靴脱いで久闊の露涼しけれ 田中裕明 櫻姫譚
音に抜く涼しさ宵の洋酒瓶 河野南畦 『風の岬』
音速の涼しさ運ぶ梓川 佐藤美恵子
須磨の浦や松に涼しき裸蜑 涼し 正岡子規
須磨涼しどの旅籠屋に宿とらん 涼し 正岡子規
須磨涼し今も昔の文のごと 阿波野青畝
須磨涼し唐人どもの夕餉時 涼し 正岡子規
頭の中の涼しきものをはたらかす 村越化石
頭家出る獅子に切火の涼しさよ 伊藤いと子
頭照りつつ己れ涼しき羅漢たち 柴田白葉女 『朝の木』
頼朝塚苔被てむしろ涼しげに 向井冨美子
顔せは汗にまみれてゐて涼し
顔にふるる芭蕉涼しや籐の寝椅子 夏目漱石「漱石全集」
顔入れて馬も涼しや花卯木 普羅
風さけて入り日涼しき菖蒲の日 千代女「真蹟」
風のない涼しさよしんと葉波立ち 室生犀星 犀星発句集
風の道ありて涼しく人来る 倉田紘文「光 陰」
風三楼忌来る真開山の風涼し 池田秀水
風吹いて来て家中涼しゅう 高澤良一 寒暑
風吹てちらちら波の涼しさよ 涼し 正岡子規
風吹て涼しき蝉の初音哉 蝉 正岡子規
風太郎涼しむ上野の山のかぜ 高澤良一 素抱
風涼しく詩の舟少しおくれたり 涼し 正岡子規
風涼し下品下生といふからに 行方克己 昆虫記
風涼し中に鬚なき一人かな 涼し 正岡子規
風涼し墓になりても母に侍す 西本一都
風涼し大樹ふところ空にして 雨宮抱星
風涼し忍者屋敷のからくり戸 田淵定人
風涼し折鶴蘭の刎ねちがひ 西本一都 景色
風涼し机の上の湖月抄 井上井月(1822-86)
風涼し架上絶叫せし虚空 羽部洞然
風涼し母の白髪の飛ぶばかり 細川加賀 生身魂
風涼し池のほとりの丸太椅子 清水悦子
風涼し滝のしふきを吹き送る 涼し 正岡子規
風涼し生地(せいち)へかへる浪の音 立花北枝
風涼し神の声なき声と聞く 桑田青虎
風涼し神父の黒衣経てきたる 村上喜代子 『雪降れ降れ』
風涼し細格子より農兵節 長田良輔
風涼し銀河をこぼれ飛ぶ蛍 野見山朱鳥
風涼し雀にまがふ一市民 中村草田男
風涼し髭なきは我一人哉 涼し 正岡子規
風涼し黒子も父の遺せしもの 猪俣千代子 堆 朱
風生と死の話して涼しさよ 高浜虚子(1874-1959)
風知草涼しき声でもの言はな 鈴木栄子
風神と背中合はせの涼しさよ 行方克己 昆虫記
風穴の涼しさの手の夫に触る 敦賀皓子
風立ちて三条河原星涼し 多摩 茜
風色や枸杞垣煽つ宵涼し 富田木歩
風蘭に露はなけれと露涼し 風蘭 正岡子規
風鈴に涼しき風の姿かな 涼し 正岡子規
風鈴のほのかにすゝし竹の奥 涼し 正岡子規
風鈴のもつるるほどに涼しけれ 中村汀女「汀女句集」
風鈴の垣根涼しく曲りけり 阿部みどり女 笹鳴
風鐸の下涼しさを賜れり 毛塚静枝
風鐸鳴る関八州の涼しさに 松本 旭
飛ばしたる笠揉む濤や崖涼し 比叡 野村泊月
飛ぶ種の大きな翼涼しけれ 田中裕明 先生から手紙
飛機整備引継ぐ真夜の月涼し 柴田黒猿
飛行機涼し日本の四囲青海に 安田杜峰 『蛍草』
飛騨涼し北指して川流れをり 大野林火「白幡南町」
飛騨涼し川に沿ひゆく人力車 杉江茂義
食べ終る豆腐の水に燈が涼し 鈴木鷹夫 大津絵
食を断ち水絶ちホ句を絶ち涼し 後藤比奈夫 めんない千鳥
食前酒本音伏せ置く涼しさよ 中尾杏子
飲食もて悼むならひや露涼し 齋藤玄 『雁道』
飲食もて悼む慣ひや露涼し 斎藤玄
饒舌も夜の水音も涼しかり 稲垣きくの 黄 瀬
香り花散る仏跡の露涼し 菅田静歩 『大花野』
香冷えの仏眼逢ひしのち涼し 中尾寿美子
馬の首叩いて森の涼しけれ 大木あまり 火球
馬子歌のはるかに涼し木下道 涼し 正岡子規
馬車涼し極星高く北に来ぬ 福田蓼汀 山火
駅の灯の涼しき果を思ひけり 中川宋淵 遍界録 古雲抄
骨壺は涼しきがごと墓に入る 川崎展宏
骨涼し母のけはひのひとかたまり 落合水尾
高原といふ円さあり露涼し 林糺苑
高原涼し靄の刻すぎ朝日の萱 古沢太穂 古沢太穂句集
高架下涼しはらはら鳩こぼれ 高井北杜
高館や風の涼しとのみ云へで 大橋敦子
髪つめて涼しき妻の車椅子 鈴木喜八郎
髪少しつめて涼しく結ひにけり 高橋淡路女 梶の葉
髻のくづれ涼しき勝名乗 肥田葉子
鬼は熱し餓鬼は涼しと悟らずに 涼し 正岡子規
鬼歯朶や涼し涼しと土間にゐて 鍵和田[ゆう]子 浮標
魂迎ふ闇を涼しき草の音 鷲谷七菜子 花寂び
魚偏に豊と書きし涼しさよ 片山由美子 風待月
魚釣らで涼しさ釣りぬ舟かへす 野村喜舟 小石川
鯉が蹤き鯉にわがつき水涼し 皆吉爽雨 泉声
鯉に指つつかせ涼し生家なり 安江緑翠 『枯野の家』
鯉の水涼しく動きどうしかな
鯉の粗鯉に与へて朝涼し 茨木和生 往馬
鯉の餌の浮く間あらせず水涼し 赤松[けい]子 白毫
鯉涼し水を忘れしごとく居る 森澄雄 所生
鯉涼し藤樹書院の門川に 山方美智子
鯛の腹洗ふ簓の水涼し 浜田みずき 『石蕗の花』
鰻選る涼しき小屋のなまぐさき 百合山羽公 寒雁
鱒あかり鱒くらがりと池涼し 亀井糸游
鱒ゆらとその向き変へるとき涼し 高澤良一 宿好
鳥の名を当てずつぽうに滝涼し ふけとしこ 伝言
鳥啼て木を伐る山の奥涼し 涼し 正岡子規
鳶の笛讃へて涼し岬泊り 鈴木鷹夫 渚通り
鳶涼しくて日高川板のごとし 友岡子郷 遠方
鴉むれて夕日すゝしき野川哉 涼し 正岡子規
鴛鴦涼し明神岳の影曳きて 原 柯城
鴨涼し后の宮へ舟御輿 中川志帆(万象)
鵠は白く鴉は黒き涼しさよ 芥川龍之介 我鬼窟句抄
鶴舞へり松風奏で涼しさに 山口青邨
鶴飛ぶらさぞうれしうも涼しうも 広瀬惟然
鷺の立つ中洲の草や川涼し 涼し 正岡子規
鷺涼しお水送りの川筋に 森田峠 逆瀬川以後
鷺涼し鏡花の町を訪ふべきとき 文挟夫佐恵 黄 瀬
鸚鵡涼し常磐津師匠盲ひゐて 石原八束 空の渚
鹿の斑のさくら色して涼しけれ 和田耕三郎
鹿涼し満ちくる潮に脚濡らし 野澤節子 『八朶集』
麦飯をぼろぼろ食ひて涼しけれ 前田普羅
麻の香のくるも涼しや寺の庭 立花北枝
麻服涼しげ慇懃無礼の口髯も 赤城さかえ句集
黄帷子残りしいのち涼しくす 立花豊子
黄金(くがね)の如生きよ一字金輪佛(いちじきんりんさん)涼し 辻桃子
黄金の如生きよ一字金輪佛涼し 辻桃子 花
黒く涼し聖女の祈り汗し見ゆ 小林康治 玄霜
黒もまた涼しき色よ夏帽子 野坂 安意
黒を着て涼しき心お盆なり 井上 雪
黒曜の瞳のほころびしとき涼し 大橋敦子
黒檻の涼しく眼そらしけり 上村占魚 鮎
黒海上空涼しく雲の漂へり 上野さち子
黒白を以て眼なり涼し 桑原三郎
黒神殿御燈奥へ奥へ涼し 石川桂郎 四温
黒髪の涼しく眼そらしけり 上村占魚 『鮎』
黒髪庵涼しや路地の奥まりに 石黒哲夫
鼓虫のはやも涼しき鑑真忌 森澄雄
鼻すじの涼しおばこの国訛 坊城としあつ
鼻の穴涼しく睡る女かな 日野草城
鼻ばしらずらりと涼し弓道部 鳥居美智子
鼻筋の涼しく通りさやうなら 今瀬剛一
龍胆の濃くて涼しさ濃かりけり 木村滄雨

以上
by 575fudemakase | 2016-08-10 09:35 | 夏の季語


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

カテゴリ

全体
無季
春の季語
夏の季語
秋の季語
冬の季語
新年の季語
句集評など
句評など
自作
その他
ねずみのこまくら句会
ブログ
自作j
自作y
未分類

以前の記事

2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
more...

フォロー中のブログ

ふらんす堂編集日記 By...
魚屋三代目日記
My style

メモ帳

▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

検索

タグ

最新の記事

外山滋彦著「俳句的」の指摘し..
at 2024-03-28 07:13
山本覚馬
at 2024-03-28 05:53
【桜餅】といえばどっち派?全..
at 2024-03-27 05:17
あまおう」と「とちお...
at 2024-03-24 03:42
一茶 生きもの句帖 小学館文..
at 2024-03-18 13:28
シュリンクフレーションという..
at 2024-03-13 05:15
ザッピングzapping?き..
at 2024-03-11 01:51
書道 書・筆・墨・硯の俳句
at 2024-03-08 10:04
しょどう
at 2024-03-08 09:38
すずり
at 2024-03-08 09:35
筆の俳句
at 2024-03-08 09:26
墨の俳句
at 2024-03-08 09:04
書の俳句
at 2024-03-07 18:12
佐々木敏光句集 富士山麓・秋..
at 2024-03-07 05:49
山口昭男著 波多野爽波の百句..
at 2024-02-26 02:57
ザッピングzapping?
at 2024-02-24 00:32
私の俳句入門 大野林火編 有..
at 2024-02-21 01:39
茨木和生著 右城暮石の百句 ..
at 2024-02-20 03:20
季寄せを兼ねた 俳句手帖「春..
at 2024-02-11 18:17
我が家の梅 2024/02/..
at 2024-02-06 13:51

外部リンク

記事ランキング