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晩夏

晩夏

あかあかと夢に綿打つ晩夏かな 小檜山繁子
あの鶏の卵巣は駅晩夏です 西川徹郎 家族の肖像
うすうすと晩夏の髭の汗ばめる 原裕 葦牙
うす靄をこめて菜園夏ふかむ 飯田蛇笏 春蘭
うちつけて卵の頭蓋割る晩夏 皆吉司(1962-)
ぎらぎらと晩夏の芒手にさはる 松村蒼石 雪
くらくらと晩夏を壊れゆく蝶か 寺井谷子
けもの径消えざうざうと晩夏光 小松崎爽青
さびれたる釜石港や晩夏光 稲川英子(あすなろ)
しばたたくかんむりづるも晩夏なり 小澤實
すっかりとうちとけゐたる晩夏光 上野好子
すでに敷くわれが臥処に灯の晩夏 下村槐太 光背
すでに晩夏草ぬきんでて昏れる山 桂信子 黄 瀬
それ~の花に晩夏の色ありぬ 高木晴子 花 季
ぞうぞうと晩夏さすらうスズメ蜂 上原勝子
ぞりぞりと晩夏の魚の鱗剥ぐ 高澤良一 暮津
どれも口美し晩夏のジヤズ一団 金子兜太「蜿蜿」
なめらかな晩夏のプール人と泡 荒川敏雄
ひた寄せて遠引く潮も晩夏なる 能村登四郎
ひとり身にいきなりともる晩夏の灯 桂信子 黄 炎
ひと夜寝てひと夜の晩夏まぎれなし 石橋辰之助 山暦
まなうらのかりそめの樹樹晩夏となり 金子皆子
みなゐなくなりてふたりの晩夏かな 岸原秀美
むかし汝に贈りし聖書晩夏光 三谷昭 獣身
ゆがみつつ晩夏の気球降されぬ 石田あき子 見舞籠
よく働く影が晩夏の地に強し 寺井谷子
わが住む灯これより晩夏夕千鳥 神尾久美子 掌
わが噴煙描き晩夏の髭伸ばす 中島斌雄
わが晩夏広き汀に遊びけり 原田青児
わが骨のねずみ鳴きする晩夏なり 穴井太 天籟雑唱
イヤリング重たき青の晩夏かな 原コウ子
カーヴひとつ終はれば見えてくる晩夏 櫂未知子 貴族
ゴーギャンみて音失ヘり晩夏の街 小檜山繁子
サロマ湖や晩夏の光ゲのみちてをり 中村哲子
サンダルは晩夏の海を漂うもの 倉持祐浩
シヤガールの青の晩夏も終りけり 粟津松彩子
シヨウウィンドウに反る人形や晩夏光 小谷伸子
シンバルの出番の一打晩夏光 下田静子
ジーパンの捩れて乾く風晩夏 倉岡けい
ステーキはミディアム湖の晩夏光 小池龍渓子
スプーンに貌が歪んでいる 晩夏 中内かず子
スペインの終着駅の晩夏かな 角川春樹「海鼠の日」
ダイビング少年 矢となる 夏ふかい町 伊丹公子 アーギライト
トラックより人這ひいづる晩夏かな 岩田昌寿 地の塩
トランペット晩夏真赤にまつくらに 小檜山繁子
ドナーカード書かずに持ちている晩夏 三沢容一
バシと鳴るグローブ晩夏の工場裏 西東三鬼
ペペロンチーノ舌に晩夏のあかるさよ 藤野 武
メリーゴーラウンド百鞍すべて晩夏の人 小澤實 砧
レグホンと光る晩夏を漂いぬ 津沢マサ子
一人から目を離さずにいる晩夏 森田智子
一人また一人ビル出て晩夏かな 植松紫魚
一夜晩夏のとどろく波を頭にして寝る 古沢太穂 古沢太穂句集
一杯のソルティドッグ晩夏光 藤田弥生
一滴の重さ晩夏の畳に寝て 高野ムツオ 陽炎の家
一舟も見えず真昼の瀞晩夏 岡田佐久子
三行の旅信届けば卓晩夏 山田弘子 螢川
三行の旅信届けば草晩夏 山田弘子
乱反射して縞馬と晩夏逍遥 諸角せつ子
乳色の川の流るる晩夏かな 井上康明
亭々と晩夏を送るホルトの木 高澤良一 素抱
人に木に刻ゆつたりとすぎ晩夏 斎藤 梅子
人のあと踏んで晩夏の砂鳴けり 橋本榮治 越在
人の影毀れやすくて晩夏という 小堀葵
人の羽化はじまる晩夏図書館より 高野ムツオ 陽炎の家
人はローン蝸牛は殻を負ひ晩夏 高澤良一 素抱
人よりも山おとろへて晩夏かな 片山由美子 水精 以後
人形に月のさしゐる晩夏かな 宮武寒々 朱卓
人待つに馴れてはをらず晩夏光 牧石剛明
人散ってしまう速さで知る晩夏 対馬康子 純情
仕損じ花器捨てにゆく 晩夏ふかい野に 伊丹公子 陶器の天使
伊予晩夏右横書に庁舎の名 北野民夫
休暇果てむ晩夏の樹液手に粘り 林翔 和紙
信濃真秀ろば馬総身の晩夏光 宮坂静生 青胡桃
全員が舌もっている晩夏かな あざ蓉子
分母には晩夏の朱を置きなされ 田吉明
切株に坐してふくいくたる晩夏 伊藤通明
刻むもの晩夏の青き香を流す 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
力負ふ黒きいとども出て晩夏 村越化石 山國抄
動く歩道に家族の詰まる晩夏光 大石雄鬼
半生や晩夏の葦のうち乱れ 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
受難の図晩夏の花はかをりなき 堀口星眠 火山灰の道
口開けて鴉のありく晩夏かな あらたに梢
名を呼べばすぐ来る馬や晩夏光 務台石子
向日葵の種ぎつしりと晩夏光 内藤吐天 鳴海抄
吹き寄せの皿撰びをり樹下晩夏 宮坂静生 樹下
吾が抱きてよその子馴つき夏ふかし 木津柳芽 白鷺抄
啄に似たる一椀晩夏光 原勲
喪服より黒き晩夏の鋪道かな 高澤良一 素抱
喫茶店より駅が見ゆ晩夏見ゆ 青木重行
四高跡蚤の市立つ晩夏かな 高村俊子
回覧板届けに晩夏の腰痛持 高澤良一 暮津
土に座りて月の匂いのする晩夏 藤野 武
地球儀を抛り晩夏の芥とす 木村蕪城
城濠を晩夏の蓮埋め盡す 下村ひろし 西陲集
塩壺に塩ある晩夏母逝けり 佐川広治
塩釜や晩夏の帽を脇ばさむ 岩田昌寿 地の塩
墓碑銘は空の一文字晩夏光 横島正子
声あげて山離れゆく晩夏の川 福田甲子雄
声嗄れし俳優つどふ晩夏の木 水上孤城
声洩らす 仮面の晩夏 博物館 伊丹公子
夏ふかく何の蘂降る熊野径 山崎秋穂
夏ふかしおのが匂ひと晝をねむる 藤木清子
夏ふかしきのふの柳かげありや 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
夏ふかしたかき畦より蓮巻葉 木津柳芽 白鷺抄
夏ふかし星いつか出ていつか消え 飯田龍太 遅速
夕日影蟹も晩夏の眼なりけり 村越化石 山國抄
夢殿を巡り残して古都晩夏 山田弘子 こぶし坂
大きな目に晩夏湛えて ミュール・ディア 伊丹公子 アーギライト
大丸太積み上ぐ埠頭蝦夷晩夏 斉藤輝子
大樹海晩夏の湖を散らしたり 河野南畦 湖の森
大水槽に鮫泳ぎゐる晩夏なり 辻美奈子
大灘のひたすらひかる晩夏かな 日美清史
大阪へ五時間でつく晩夏かな 鈴木しづ子
大阪城晩夏の日影水底まで 猿橋統流子
天誅の志士語り継ぐ晩夏の碑 磯野充伯
太刀魚の刃渡り長き晩夏かな 大岳水一路
太陽に雀突つ込む晩夏かな 攝津幸彦 鹿々集
妬ましきとは美しき晩夏の蝿 八田木枯
妬心はげしく生きしをみなのひたぶるをこほしみ来たり晩夏葛城 中西洋子
婦人科の晩夏からくり時計かな 津波古江津子
子と会へていつまで淋しはや晩夏 溝口青於
子の脛の傷あたらしき晩夏かな 菖蒲あや「あや」
子等睡る晩夏祷りの保姆わかし 堀口星眠 営巣期
存在と時間とジンと晩夏光 角川春樹
孤狼として死ぬほかはなし病む晩夏 佐藤 鬼房
孫ほどの女医に諭され晩夏光 永田清子
宙飛んで晩夏かゞやく山すゞめ 石塚友二
定置網晩夏の海に囲まるる 清水 仁
宿古りぬ千鳥啼く夜の婢の溜り 晩夏
寺の庭通してもらふ晩夏かな 大岳水一路
寺田屋の触れて晩夏の刀傷 伊藤いと子
少年の頭上過ぎゆく晩夏の雲 永方裕子
屋上園妻の手が冷え晩夏なり 細川加賀
山の馬車晩夏の家族のれば満つ 宮坂静生 雹
山間を雲ゆく晩夏の孫六湯 高澤良一 素抱
崖に立つ母の羽交の晩夏光 徳弘純 非望
川まがりすでに晩夏の波の襞 柴田白葉女 『夕浪』
川晩夏宿裏ばかりみて流る 平井さち子 鷹日和
巣の蜂の晩夏ひたすらなる何ぞ 篠田悌二郎 風雪前
庭のものみな丈高く晩夏かな 五十嵐八重子
影槍をかぶり攀ぢゐて晩夏なり 岡田 貞峰
復元石器鈍く光れる晩夏かな 高澤良一 素抱
忘れいし晩夏は納屋のかたちせり 津沢マサ子 風のトルソー
忘れめや晩夏にはかにはじまるを 中山純子 沙 羅以後
怠けゐる晩夏の肩に指圧効く 高澤良一 素抱
悔いばかり棒となつてる晩夏かな 岸本マチ子
愚陀仏や為山の棕櫚に晩夏の風 相原左義長
愛は永遠などと晩夏のゴミ袋 高野ムツオ 鳥柱
愛シテル鸚鵡繰り返して晩夏 柴田奈美
愛犬の立ち居定まる晩夏かな 増子道子
我が手なほ白き晩夏や職を得ず 本島高弓
扉を押せば晩夏明るき雲よりなし 野澤節子「未明音」
手を振りて別る晩夏の小汽船 沢木欣一
手付かずのダイナマイトを抱く晩夏 櫂未知子 貴族
折れ尽きて晩夏の沼を去る根かな 対馬康子 吾亦紅
指呼にして国後かなし晩夏光 小松崎爽青
断定語ばかり晩夏の若き卓 倉橋羊村
昇坑湯に晩夏の瞼閉づるかな 仁尾正文「山泉」
明け初むる晩夏の湖に蜆舟 佐手恒子
明け方の雲みな高き晩夏かな 原田青児
時は過ぎまがりくねって晩夏の木 穴井太 原郷樹林
晩夏(おそなつ)をたとへて云へば座礁船 高澤良一 暮津
晩夏かないろいろ捨ててまだ残る 小檜山繁子
晩夏かな口をつぐみし木の仲間 穴井太 原郷樹林
晩夏かな汐路に入りしロシア船 市村哲也
晩夏かな海を忘れてゐる乳房 小林邦子
晩夏だと思ふはるかだとも思ふ 藤井正幸
晩夏とはのけぞる喉の女かな 熊谷愛子
晩夏とは擦れ違いたる馬の胴 津沢マサ子
晩夏なりぶなまたぶなの旅にあり 堀口星眠 青葉木菟
晩夏なりわが影落葉松へ入り失ふ 田中英子
晩夏なりダダ詩人には留守だと言え 相原左義長
晩夏なり壁土ねつてゐる所 細見綾子 黄 炎
晩夏なり掌を試し見の虫めがね 池田澄子
晩夏なり瓦に雨の痕黒く 石嶌岳
晩夏なり男鹿の烏の青き嘴かな 金子皆子
晩夏なり白鷺を追ふ首のべて 神尾久美子 桐の木
晩夏なり終りは迅き砂時計 和田 尚
晩夏なり荒草は木の硬さにて 馬場移公子
晩夏なり陸を離れて沈む石 柿本多映
晩夏なる机にやたらもの積まれ 高澤良一 暮津
晩夏なる露店にギリシャ悲劇集 石寒太 炎環
晩夏なる青き巻貝拾ひては 豊田都峰
晩夏にてガラスの犬・鶏・山羊睦ぶ 能村登四郎 枯野の沖
晩夏の地震あたかもデッキにゐるやうな 高澤良一 暮津
晩夏の地震母は二階の揺れを言ふ 高澤良一 暮津
晩夏の旅家鴨のごとく妻子率て 北野民夫
晩夏の月のぼる医院の裏階段 穴井太 鶏と鳩と夕焼と
晩夏の木その一本は父であり 森田智子
晩夏の水流れて空と一重なす 岩田昌寿 地の塩
晩夏の海は内股にこそ流れける 津沢マサ子 楕円の昼
晩夏の灯こぼす場末の遊技店 千野みち子
晩夏の田頸さしのべて鷺佇てる 松村蒼石 寒鶯抄
晩夏の蛾娼婦かげひく街燈に 西島麥南
晩夏の街角衝動的に石がある 高野ムツオ 陽炎の家
晩夏の踏切一人で抜けて昆虫的 高野ムツオ 陽炎の家
晩夏の風藪に勁しよ志度寺は 北野民夫
晩夏はや煮詰め過ぎたる豆腐汁 高澤良一 素抱
晩夏ひかるミシン一台再婚す 榎本冬一郎 眼光
晩夏へまず羽毛のようにオートバイ 高野ムツオ 陽炎の家
晩夏また道が尋ねて来るおきな 永田耕衣 殺佛
晩夏一峯水提げて仰ぎゐる 友岡子郷 春隣
晩夏一峰あまりに青し悼むかな 金子兜太 詩經國風
晩夏一日書回のへりに住み飽きつ 金子弘幸
晩夏一週涼しむらさき締る茄子 大熊輝一 土の香
晩夏光からまつ林中から荒れ 宮坂静生 樹下
晩夏光ごりごりあるく礫道 石原舟月
晩夏光ふるき畳に足まげて 岸風三樓
晩夏光まさしく母子の目鼻だち 柴田白葉女 『月の笛』
晩夏光もの言ふごとに言葉褪せ 西村和子 夏帽子
晩夏光サンダル白くデッキ踏む 冨田みのる
晩夏光タウンページに探しもの 内田美紗 魚眼石
晩夏光ナイフとなりて家を出づ 角川春樹(1942-)
晩夏光バットの函に詩を誌す 中村草田男「火の島」
晩夏光ポン菓子ぽんと爆発す 内田美紗 魚眼石
晩夏光ランプの火屋をきしませ拭く 内藤吐天 鳴海抄
晩夏光僧の跪拝のもつともに 猪俣千代子 秘 色
晩夏光刃物そこらにある怖れ 大野林火「冬雁」
晩夏光君を忘れて橋の上 塩見 恵介
晩夏光四十路にて喰ふ他人の飯 菅田静歩 『大花野』
晩夏光夫に剃刀錆びやすし 嶋田麻紀
晩夏光島の生活の丸見えに 松本三千夫
晩夏光巌頭あれば巌頭に 石田嶺穹子
晩夏光椅子を立っても誰も来ず 北原志満子
晩夏光横切る鶏の首立てて 籠倉貞子
晩夏光正座をくずす折失す 永末恵子 留守
晩夏光浴びてひもじき貯油タンク 松倉ゆずる
晩夏光牛の瞳に収まりぬ 西谷孝
晩夏光牝牛生涯つの持てぬ 鍵和田[ゆう]子 未来図
晩夏光犬の残せる敷藁に 原田青児
晩夏光生きる限りの身養生 野沢節子
晩夏光畳の上にジャズ流れ 横山房子
晩夏光真名井の滝は七彩に 坂田苳子
晩夏光石を砕けば石の花 木村敏男「遠望」
晩夏光穂高の襞の雪よごれ 石原八束
晩夏光立ったまま木は眠っている 高桑婦美子
晩夏光自画像の目に射られけり 渡辺立男
晩夏光舵手の眼鏡の強き反射 内藤吐天 鳴海抄
晩夏光足やむ友を遠近に 松村蒼石 雁
晩夏光風の事典を繰りにけり 井上弘美
晩夏光駅長の椅子新しき 黒川允子
晩夏地下鉄翅毟られし者を乗せ 高野ムツオ 鳥柱
晩夏少年抱けば甲虫の皮膚感 高野ムツオ 陽炎の家
晩夏憂しシヤガールの絵の隅に鳥 望月百代「夏日」
晩夏掃く大地に立てて竹箒 対馬康子 愛国
晩夏撫づ腕ながしとも淋しとも 村越化石 山國抄
晩夏晩年角川文庫蠅叩き 坪内稔典
晩夏書く太字に己れ恃むかな 村越化石 山國抄
晩夏来る遠浅にある乳房二個 吉田透思朗
晩夏湖畔咲く花なべて供華とせん 福田蓼汀 秋風挽歌
晩夏臥し暗流に身を運ばるる 小檜山繁子
晩夏船上足のきれいなとりたちよ 椎名弘郎
晩夏薄暮旅にたづさふ書を選ぶ 川口重美
晩夏訪はるロシヤ菓子など大きなもの 友岡子郷 遠方
晩夏起居鈴蘭の実を挿しなどす 木村蕪城 一位
晩夏身のまぎれやすくて座し易し 千賀静子 『種壷』
月低く黄なり晩夏の小漁港 下村ひろし 西陲集
木崎より青木湖晩夏汽車喘ぐ 石橋辰之助 山暦
木洩日の翳りの色の晩夏かな 坂井建
本栖湖や晩夏の雨の嚇し降り 宮坂静生 春の鹿
杉の秀に晩夏の雲のとどまれる 河野南畦 湖の森
杭を打ち打ちて始まる湖の晩夏 柿本多映
枕辺にゆれ落葉松の影晩夏 堀口星眠 営巣期
林中の石みな病める晩夏かな 木下夕爾「遠雷」
林檎園消毒白く夏ふかし 原田青児
根の国をまがるあたりの晩夏かな 岸本マチ子
桐下駄に母の指跡しむ晩夏 中尾杏子
椎晩夏太幹の香は父のごとし 千代田葛彦 旅人木
椰子大樹美少女の泣く晩夏かな 佐川広治
椿林を黒き蝶とぶ晩夏光 西村公鳳
模糊として口の開け閉て晩夏の鯉 高澤良一 暮津
樹下に来て拭ふ晩夏の汗すこし 井沢正江 一身
機関車の率ゐて行きし晩夏かな 朝吹英和
死にがたし生き耐へがたし晩夏光 三橋鷹女
死にたしや晩夏苦しさぬけきれず 溝口青於
死にも触れ晩夏のホテルの夕食会 関森勝夫
死ぬならば自裁晩夏の曼珠沙華 橋本榮治 麦生
死は何色まさか琅かん色まして晩夏光 楠本憲吉
死は晩夏も黒マント着て角を曲る 有働亨 汐路
死は生の完成という師の晩夏 平田栄一
段ボール一箱ぶんの晩夏かな 櫂未知子 貴族
母眠る晩夏の皿の一枚か 高野ムツオ 鳥柱
水あれば夕焼ひたる晩夏かな 木下夕爾
水は痩せ雲うづくまる晩夏かな 矢島渚男 延年
水地獄愁雲晩夏の山閉す 福田蓼汀 秋風挽歌
水槽のかつお回遊晩夏光 野川直子
水汲めば水が晩夏のひかり撥ね 山本つぼみ
水脈しるく曳きて晩夏のひかりとす 藤田湘子(1926-)
汐さして青葦沈みゆく晩夏 大井雅人
決断す晩夏の窓を開け放つ 大高 翔
汽車動き晩夏の空の動き出す 上島顕司
沼晩夏無数の風の走りをり 宮坂静生 雹
波が波追ひかけてゐる海晩夏 山内久美子(南風)
波はみな渚に果つる晩夏かな 友岡子郷「雲の賦」
浜晩夏いくつもひとで打ち上げて 西上禎子
浪晩夏破船を洗ふばかりにて 中島斌男
海の上に空のつてゐる晩夏かな 小川軽舟
海の底晩夏糸吐く紅珊瑚 坂根白風子 『彩雲』
海の弔みんなにやさしかつた晩夏 宇多喜代子
海の紺くろきがまでに夏ふかむ 佐野まもる 海郷
海の船河に来てゐる晩夏かな 原田青児
海晩夏流木躍りくるにあふ 田村了咲
消印のうすれし封書晩夏かな 伊藤敬子
深呼吸するや晩夏の空気入 内田美紗 魚眼石
深谷にいつの晩夏も幼な声 佐藤鬼房 「何處へ」以降
清兵衛のふくべ吊らるる晩夏かな 入倉朱王
湖を二つめぐりし晩夏かな 瀧澤伊代次
湖心より晩夏の鷺となりて翔つ 木村蕪城
湾岸道路分岐繰り返して晩夏 山根 真矢
漱石の脳沈みゐる晩夏かな 有馬朗人
瀬を越えて木影地を這ふ晩夏かな 飯田龍太 山の木
火の匂ひ海にながるる晩夏かな 大木あまり 雲の塔
火をあげて晩夏の山のいなびかり 百合山羽公「故園」
火山灰払ひ耕二の町に来て晩夏 能村研三
灯ともして晩夏の声を高めたる 野澤節子 黄 炎
無防備に横たわる彼晩夏光 高澤晶子(1951-)
焼茄子黄檗寺の晩夏かな 伊藤観魚
熊を彫る鑿は一丁晩夏光 北野民夫
熔岩の裾海に入る晩夏かな 廣瀬直人「遍照」
燭更けて卓に晩夏の虫ぞ降る 石塚友二 光塵
爆音下鶏馳せ晩夏極まれり 大野林火
牛晩夏地に憩はんとひざまづく 中島斌雄
牢名主めく患者ゐて部屋晩夏 高澤良一 鳩信
玉子茹でて妻よ晩夏の誕生日 原田青児
生前や生後や晩夏の川流れ 柿本多映
産むといふ遊びをしたき晩夏かな 櫂未知子 蒙古斑以後
男来て晩夏へ放つブーメラン 坪内稔典
画仙紙買ふ仙丈岳の雲晩夏 宮坂静生 雹
疲れ来てすがる晩夏の仏かな 加藤楸邨「沙漠の鶴」
登校生の眼の正しさよ駅晩夏 石橋辰之助 山暦
白は黄に花を譲りて野の晩夏 吉村ひさ志「ホトトギス名句集」
白帆沖へ追ひつめられし晩夏光 倉橋羊村
白樺の林明るき晩夏かな 成瀬正俊
白波のだだだと砕け島晩夏 本多令佳
白粥を吹きくれる妻晩夏光 目迫秩父
目を寄せて覗く晩夏の閻魔かな 橋本榮治 越在
目を立てて動かぬ蟹や晩夏光 小松崎爽青
真黒なソ連船泊つ晩夏かな 志城 柏
真黒に嵩む晩夏の茄子貰ふ 百合山羽公 寒雁
眠りは起き永き晩夏をついばめり 穴井太 土語
眠れねば晩夏夜あけの冷さなど 中村草田男
砂丘晩夏この淋しさに海は鳴る 豊長みのる
祈りとは膝美しく折る晩夏 攝津幸彦「陸々集」
移りても一室晩夏木の瘤見え 友岡子郷 遠方
穂高下り晩夏の街のよそよそし 松澤昭 神立
空っぽのバケツをいまは晩夏とす 津沢マサ子 華蝕の海
竜骨や鬼のあそびの晩夏の子 河野南畦 湖の森
笙の譜のうす紙たたむ晩夏かな 山本洋子
篠懸の大人(たいじん)然として晩夏 高澤良一 素抱
篠枯れて狼毛の山河となれり晩夏 金子兜太 暗緑地誌
紅くして黒き晩夏の日が沈む 山口誓子 青女
紙ガラスの主の手より入る晩夏光 関 保子
紹興酒晩夏の酔ひのよるべなく 高澤良一 石鏡
綯ひあげし網目のなかの湖晩夏 河野南畦 湖の森
縁に垂らすわが足大いなる晩夏 桂信子 黄 炎
美しき腕立て伏せの晩夏かな あざ蓉子
羚羊の皮がつめたき晩夏の炉 大島民郎
背表紙の金文字薄れ晩夏光 小副川康子
臨界被曝耳元熱くなる晩夏 倉本 岬
船の波湖岸に音となる晩夏 大井雅人「柚子」
花*ささげ血塗る晩夏の空ふかし 堀口星眠 営巣期
草むしる汁顔にとび晩夏かな 細見綾子 黄 瀬
草庵に五柳の景色晩夏光 小澤克己
華やかに木魚を叩きたく晩夏 櫂未知子 蒙古斑
葉を閉ぢてかたばみ睡る晩夏かな 樋笠文
蒼然と晩夏のひばりあがりけり 三橋敏雄 眞神
蕗の葉に落暉晩夏の刻の影 下村槐太 天涯
虚空あるばかり晩夏の都府楼址 田中芙美子
蝦夷晩夏旅の若者脛長し 北野民夫
蝶にのみ風あるごとし晩夏光 横山白虹「横山白虹全句集」
蟻が曳くものに翅ある晩夏かな 大岳水一路
血を流しゆけば幼き晩夏の海 津沢マサ子 楕円の昼
裏八ケ岳の晩夏うぐひす叢に 宮坂静生 雹
裏山に音立ちのぼる晩夏かな 原裕
裏比良に朱の帯を織る晩夏かな 山本洋子
襟裳岬礁鏤めて晩夏なり 堀口星眠 営巣期
見かへればまた波あがる晩夏かな 大町糺
話しつつ人遠ざかる晩夏かな 高井恵子
読書百遍にしておのずから晩夏の山 橋石 和栲
誰が剥がす刻ぞ晩夏の徹夜稿 楠本憲吉
谷戸を吹く蓮田の風も晩夏かな 皆川白陀
象牙の箸浸しあるなり晩夏の水 高澤良一 暮津
赤き月草は晩夏の香を放つ 阿部?人(しょうじん)
赤腹鳥に従ひあゆむ晩夏なり 堀口星眠 営巣期
走らねば晩夏の沼が蹤けてくる 柿木 多映
踏んでゆく砂たよりなき晩夏かな 大隈草生
身を惜む細き晩夏の樹によりて 原コウ子
輝きてそそぐ水あり晩夏の海 安東次男 裏山
辣韮を齧るや晩夏確かなり 高澤良一 寒暑
逃れえずここも鏡に晩夏の日 野澤節子 黄 瀬
逆光のなかに晩夏の湖は照り喪ひしなにに対ふともなし 武川忠一
造船所土錆色の晩夏かな 福島貞雄(湾)
逢ひたくて逢へば気おくれして晩夏 後藤綾子
週刊誌積み上げ晩夏の美容院 中村和子
遊泳の人の黒点晩夏の海 高澤良一 暮津
遠き灯の百足色なす晩夏かな 飯田龍太
遠くにて水の輝く晩夏かな 高柳重信「山川蝉夫句集」
遠くを見るゴリラに園の晩夏かな 高澤良一 素抱
酒を呑む隣に水を飲む晩夏 高澤晶子 純愛
野や杜や晩夏ひゞかふ声もなし 篠田悌二郎 風雪前
金管のごときひぐらしの声も絶え晩夏茫たりわれとわが子ら 石川不二子
金魚提灯ともす其所だけが晩夏の町 長谷川かな女 花寂び
鈴屋の七つの鈴に触れ晩夏 宮坂静生 春の鹿
銀の鈴鳴るよ晩夏の空とほく 仙田洋子 橋のあなたに
鍵かけて耳鼻科へ通ふ晩夏かな 原田青児
鏡中に晩夏の雨光はしりたり 榎本冬一郎 眼光
鏡台を捨てて新居にくる晩夏 対馬康子 吾亦紅
鐘を打ち晩夏の雲の湧くを待つ 桂信子 黄 瀬
鐘一打一打に峡の夏ふかき 新谷五月
長き髪手に持ちて梳き晩夏光 大橋敦子
闇よりも山大いなる晩夏かな 飯田龍太「遅速」
阿蘇晩夏牛が歩めば火山灰埃 奈良文夫
降り囲む晩夏の雨の父母が墓 石塚友二
陰の石拝む晩夏の笑ひごゑ 宮田正和
雑草が乳の汁もつ晩夏かな 細見綾子 黄 瀬
雲の影移るテラスの晩夏かな 木下夕爾
雲の頭に晩夏の茜泉暮る 川村紫陽
電灯が消えて晩夏の父母うごく 仁平勝 東京物語
露地晩夏風にマッチの焔先反り 神尾久美子 掌
静脈を光体流れゐる晩夏 柿木 多映
韻きあふものよ晩夏の雲と水 桂信子 黄 瀬
風の薄蝶を襲えり晩夏の天 田川飛旅子 花文字
風晩夏遊具動くも動かぬも 山田弘子 こぶし坂
飛島の賽の河原の晩夏かな 加藤宵村
飛行雲残して行けり晩夏光 天野すて女
高原晩夏肉体はこぶ蝮とおれ 金子兜太
髪の先手に持ちて梳き晩夏光 大橋敦子 手 鞠
髪刈つて晩夏さとき身黄昏へ 藤田湘子(1926-)
髪梳けばひとり芝居めき晩夏 中原昭子
髪梳けば少女となりぬ晩夏の子 木村敏男
鬼舞の朱に爛れて晩夏光 町田しげき
魂やはた肉体や晩夏仏 和田悟朗 法隆寺伝承
魚のごと森を出てゆく晩夏かな 柿本多映
魚名調べの図書館 ドアの音も晩夏 伊丹公子 陶器の天使
鮎鮓や多摩の晩夏もひまな茶屋 飯田蛇笏 山廬集
鳥籠を風吹き抜けて晩夏かな 片山由美子 天弓
鴎の白少し疲れし晩夏かな 石川文子
鴎翔ぶ晩夏の腋の真赤なり 小檜山繁子
鵞鳥の餌草に撒きやる晩夏かな 宮坂静生 樹下
鷹の羽根栞に拾ふ岬晩夏 鈴木鷹夫 渚通り
鹿島鎗晩夏校門に家並絶ゆ 石橋辰之助 山暦
麝香草頭上晩夏の雲溜り 堀口星眠 営巣期
麦刈つて晩夏さとき身黄昏へ 藤田湘子
黄蝶静かに咲いてしまった晩夏 金子皆子

以上l
by 575fudemakase | 2016-08-13 14:58 | 夏の季語


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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