葡萄 の俳句
葡萄 の俳句
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葡萄 補遺
いつとなく葡萄の国も冬の空 飯田龍太
おぼろなり彫りし葡萄は金にして 山口青邨
かの寺は甲斐善光寺葡萄摘 山口青邨
かぶりつきぬ白桃葡萄梨に 原石鼎 花影以後
くるみ大樹葡萄仕込みの倉の戸口 松崎鉄之介
くゞり摘む葡萄の雨をふりかぶり 杉田久女
この部屋も葡萄をおきて芳しき 山口青邨
こゝに立つ受難キリスト葡萄摘 山口青邨
すでに秋葡萄の葉先うら返り 野見山朱鳥 天馬
そびゆるは甲斐善光寺葡萄園 木村蕪城 一位
ともしびのなき部屋葡萄夜を光る 山口青邨
はじめ火があり百たたき葡萄の木 佐藤鬼房
はじめ響きて手車葡萄園を出づ 藤田湘子
ひとところ甘露の洩れ日葡萄園 鷹羽狩行
ぶだうの房海松のごとくなり皿に 篠原梵 年々去来の花 皿
ぶだうを皿に水露となるすこやかさ(夫誕生日) 細見綾子
ぶだう園ぶだうの熟れか日の熟れか 細見綾子
ぶだう園針金に蝶からみ遊ぶ(磐田市、飴山実氏居二句) 細見綾子
ぶだう山からからと土師笑ひけむ 岡井省二 有時
ぶだう棚波うち囲む嬰児の窓 飯田龍太
ぶだう畑びいどろの日に人は老ゆ 細見綾子
ぶだう畑枯れて地表の和むかな 細見綾子
ぶだう種吐き出してゐる一人一人 細見綾子
ぶだう食ぶ一粒づつに夜の深み 鷹羽狩行
ほしいまゝに葡萄取らしむ葡萄園 正岡子規 葡萄
むくろ鳥たちの空なり黒葡萄 飯島晴子
むらさきふかめ葡萄みづから霧まとふ 野澤節子 未明音
もらひたる葡萄を振つて別るなる 高野素十
われに母健か葡萄軒に垂れ 木村蕪城 寒泉
アスマンのワインを醸す葡萄摘む 山口青邨
イヴのもの一枚落ちて葡萄園 鷹羽狩行
キリストは葡萄の木なり秋深く 星野麥丘人 2004年
ナリ初メシ自家ノ葡萄ヲ侑メケリ 正岡子規 葡萄
ビール苦く葡萄酒渋し薔薇の花 正岡子規 薔薇
フレームは白枠葡萄青籠る 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
マスカット剪るや光りの房減らし 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
マスカット女にばかりすすめけり 星野麥丘人 2003年
マスカツト*もぐ手に熱き息かかる 野澤節子 未明音
マスカツト白髪の父と房頒つ 野澤節子 未明音
ミネルヴァのふくろふの眼して葡萄食ふ 有馬朗人 母国
リアリズムとは何ぞ葡萄酸つぱけれ 西東三鬼
レマン湖のひかりに熟れて葡萄畑 鷹羽狩行
一房の葡萄をもつて欣々と 山口青邨
一日が終るぶだう種塵となる(丹波にて三句) 細見綾子
一樽の葡萄盗みぬ今悔いぬ 高野素十
一滴も見せずに神父葡萄吸ふ 鷹羽狩行
一窓のみ葡萄粒々光頒つ 香西照雄 対話
一籠の葡萄をさげて園主来る 山口青邨
一粒の葡萄の曇り愛しゐる 細見綾子
一粒も欠けざる葡萄選び買ふ 右城暮石 上下
一粒を欠きて葡萄の全しや 鷹羽狩行
一粒を食べて欠きたる葡萄の房 橋本多佳子
三尺の庭を掩ふや葡萄棚 正岡子規 葡萄
不器用な我が手つきかな葡萄食ふ 右城暮石 虻峠
不安なし葡萄の熟るゝ香の中に 相馬遷子 山国
主婦ぶりの子の居葡萄の房そだつ 及川貞 夕焼
乳足り子を地におき葡萄採りいそぐ 橋本多佳子
乾燥し切つて夜に入る葡萄園 右城暮石 句集外 昭和三十六年
亀甲の粒ぎつしりと黒葡萄 川端茅舎
亡父の声 亡母の顔 葡萄減らすたび 伊丹三樹彦
人の死へ緊りに緊り葡萄山 三橋鷹女
人の眼を遁れし葡萄甘味満つ 右城暮石 声と声
人息に粒くもるなり黒葡萄 能村登四郎
伽藍のせ葡萄畑はまつさをに 山口青邨
佛壇の葡萄を落す鼠哉 正岡子規 葡萄
倒まに這ひ行く兒や葡萄棚 正岡子規 葡萄
傾いて月まどかなり葡萄棚 日野草城
全山を葡萄の棚が青くする 山口誓子
冬の葡萄杭一本づつ運ぶ 廣瀬直人 帰路
処女の指葡萄摘む粉を散らさじと 伊丹三樹彦
出されたる種なしぶだう食べつゞけ 高浜年尾
初旅の靄にしづめる葡萄郷 山口青邨
初霜に横たへて積む葡萄杭 廣瀬直人
北国の短か葡萄よ汽車走る 山口誓子
南加いま葡萄を終り棉を摘む 山口青邨
南風の波遠し海獣葡萄鏡 水原秋櫻子 緑雲
原爆も種無し葡萄も人の知慧 石塚友二 磊[カイ]集
収穫や葡萄の垂るる地の明るさ 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
古きワイン窖(あなぐら)にあり葡萄熟る 山口青邨
吹キ下ス妙義ノ霧ヤ葡萄園 正岡子規 葡萄
善光寺門前葡萄摘みをはる 山口青邨
嘆く日のみな一杖の葡萄の木 秋元不死男
噴井の水遁げをり葡萄作りの留守 橋本多佳子
団体に疲れし鋏ぶだう狩 百合山羽公 樂土
垂訓ここにも チャペルヘ潜る葡萄棚 伊丹三樹彦
墓地や 葡萄畑や シャンソニエへは迷路 伊丹三樹彦
夏夜更かすわれは葡萄の木汝はその枝 下村槐太 光背
夏夜更かす吾は葡萄の木汝はその枝 下村槐太 天涯
夕さりて厨子閉められぬ葡萄の木 岡井省二 有時
夕氷葡萄酒色となりにけり 川端茅舎
大池の上七月の葡萄山 岡井省二 猩々
大演習葡萄もみづる丘のさき 山口誓子
大葡萄園に流るる水浅し 上野泰
大阪を通過して来し葡萄狩 右城暮石 上下
天を往く灯のすみやかに葡萄垂る 日野草城
天辺や腋毛ゆたかの葡萄摘み 平畑静塔
太陽を醸してかくは黒葡萄 野澤節子 八朶集以後
妙筆や葡萄の丘を抜けてゆく 飯島晴子
妻となる娘野葡萄実るらし 飴山實 おりいぶ
始めての吾が触白粉ふく葡萄 山口誓子
子規没後百年の黒葡萄かな 星野麥丘人 2002年
寂しさに葡萄の房を握りけり 日野草城
富士まとも簷の葡萄の末枯に 木村蕪城 一位
小粒ぶだう一粒一粒がたのしいとは(丹波にて三句) 細見綾子
小説を好むあるじや葡萄棚 正岡子規 葡萄
小説を讀む窓さきや葡萄棚 正岡子規 葡萄
山の日の中天に来し葡萄園 山口青邨
山の雨晴れゆくさまや葡萄園 山口青邨
山は火を噴く浅間ぶだうは濃紫 鈴木真砂女 夏帯
山上に葡萄一房房たわる 金子兜太
山垣へ葡萄瑠璃光蕩揺す 木村蕪城 寒泉
山腹に熱る葡萄をよよと吸ふ 伊丹三樹彦
山腹のいづこも暑し黒葡萄 廣瀬直人 帰路
山門に葡萄酒醸す樽を置き 山口青邨
山雨来る雲の中なり葡萄摘 水原秋櫻子 餘生
峡も奥霧深ければ葡萄よし 山口青邨
市中に生れる葡萄も内に満ち 山口誓子
師弟古り葡萄一房つまみ合ふ 岡本眸
徒ち遍路ぶだう畑に憩ひをり 岡井省二 鯛の鯛
微かなる径よりはひる葡萄園 飯島晴子
恋愛詩誦し葡萄の珠ふくむ 日野草城
悔多く足裏につきしぶだう種(丹波にて三句) 細見綾子
惜しげなく葡萄つぶさる手を染めて 松崎鉄之介
手ぐられて葡萄の紅葉うらがへし 前田普羅 飛騨紬
手にさげて一房の葡萄愛でにける 山口青邨
手を振れば臍出る童葡萄熟れ 林翔 和紙
手摩れ葡萄訓すに或る瞳かがやくごと 香西照雄 対話
持ち馴れぬ重さ信濃の葡萄籠 鷹羽狩行
持主も知らず山路の葡萄園 正岡子規 葡萄
敵手と食ふ血の厚肉と黒葡萄 能村登四郎
新葡萄皓歯も同じ乙女達 百合山羽公 寒雁
日の斑より葡萄のにほひ葡萄園 鷹羽狩行
日脚伸ぶ見えて衾のぶだう山 岡井省二 山色
早生栗の粒葡萄より彫深し 百合山羽公 寒雁
星がまたとんでぶだうのえぐみかな 岡井省二 鯛の鯛
春めくや藁堆の数置くぶだう山 岡井省二 鹿野
暦日を冬へ葡萄園人手かけず 上田五千石『琥珀』補遺
月さしてむらさき煙る葡萄かな 日野草城
月さして葡萄の房ぞ垂り揃ふ 日野草城
月を病む女の しろき掌の 葡萄 富澤赤黄男
月盈つる夜毎の葡萄含みけり 橋閒石 雪
朝の日を葉蔭に誘ひ葡萄熟る 伊丹三樹彦
朝の脈とりし医師食ふ黒葡萄 赤尾兜子 玄玄
朝刊を大きくひらき葡萄食ふ 石田波郷
木の間月葡萄剥く間も止まらず 富安風生
朱唇ぬれて葡萄うまきかいとし子よ 杉田久女
朱硯に葡萄のからの散亂す 正岡子規 葡萄
杯擧ぐるはレンブラント作葡萄祭 山口青邨
柱にも葡萄を彫りしおぼろかな 山口青邨
根を攻めし雑草も枯れ葡萄園 津田清子 礼拝
桃を得て葡萄を望む患者哉 正岡子規 葡萄
梨に飽きて葡萄を好む病哉 正岡子規 葡萄
梳る女部屋にあり葡萄熟れ 山口青邨
棒麺麭に赤葡萄酒の四日かな 燕雀 星野麥丘人
棚といふ棚もみぢして葡萄郷 鷹羽狩行
棚軽くなりて葡萄は枯を編む 上田五千石『琥珀』補遺
機関車の煤降る葡萄枯れし軒 木村蕪城 寒泉
歓迎の門は鉄骨ぶだう園 百合山羽公 樂土
止乎(やみね)止乎とをとこごゑ葡萄山 岡井省二 鯨と犀
毎日は葡萄も喰はず水藥 正岡子規 葡萄
水晶や葡萄のあとの紅葉冷え 百合山羽公 樂土
水栓に当てゝ葡萄の粒ぎつしり 右城暮石 声と声
水満てし白き器に葡萄かな 川端茅舎
汽車を吐く笹子トンネル葡萄園 山口青邨
洋梨蠢き葡萄膨らむ佐伯の眼 林翔 和紙
深入りしすぎ振りかへる葡萄山 石川桂郎 四温
湯の谿に葡萄紅葉の下に鳴る 木村蕪城 一位
瀬の音のくだくる葡萄の房々に 山口青邨
火酒を売り葡萄酒を売り峠茶屋 高野素十
灰皿に種無し葡萄吸ひし殻 右城暮石 句集外 昭和五十八年
熟葡萄濃きともしびと隔らず 廣瀬直人
爆音や青き葡萄に影うまれ 加藤秋邨
猟鳥の死に切りし眼の葡萄色 右城暮石 上下
琅*かんの簷の葡萄に寿 木村蕪城 寒泉
甕たのし葡萄の美酒がわき澄める 杉田久女
病み果ての葡萄酒ふくむ春の雪 鷲谷七菜子 黄炎
登りつゝ葡萄の棚の高さあり 清崎敏郎
百房の黒き葡萄の銘茂吉 三橋敏雄
真つ青な葡萄の房の垂れはじむ 廣瀬直人
真直に少女の視線葡萄園 飯島晴子
石狩乙女皿にもてくる黒葡萄 松崎鉄之介
秋のかぜ葡萄畑の石を吹く 三橋敏雄
秋日透くぶだう天ぷらおもしろし(山梨、放光寺) 細見綾子
秋果籠に梨も葡萄もみな古典 山口青邨
稚葡萄軒端にまろき月を得し 山口青邨
種を吐く葡萄と同じ皿の上 山口誓子
笑はざりしひと日の終り葡萄食ふ 西東三鬼
紅葉して雲より赤し葡萄園 石塚友二 光塵
紫のぶだうを置いて雨の音(清川とみ子さん居) 細見綾子
紫の玉累々と葡萄哉 正岡子規 葡萄
終の葡萄ひと房添へて患者食 石川桂郎 四温
翅おとした一塊の葡萄山 三橋鷹女
胡旋女の衣の紫に葡萄樹下 松崎鉄之介
胸の籠いまは満ち満つ葡萄摘 山口青邨
能登路なる海ぎはの丘ぶだう熟れ 細見綾子
臙脂色にすべて終りし葡萄園 右城暮石 句集外 昭和三十四年
色惜しみつつ夜明けつつ黒葡萄 廣瀬直人
芳醇の葡萄巨峰を巨砲と婆が 山口青邨
荊棘のアーチ野葡萄彩りて 川端茅舎
葉は虫にくはれなからも葡萄哉 正岡子規 葡萄
葉二枚つきし葡萄の一房を 高野素十
葉洩日に碧玉透けし葡萄かな 杉田久女
葡萄あまししづかに友の死をいかる 西東三鬼
葡萄これより紫ならんと露にぬれ 山口青邨
葡萄のせて掌といふ平らなもの 岡本眸
葡萄の下吾が身長のまま歩く 山口誓子
葡萄の房切るたび鋏の鉄にほふ 橋本多佳子
葡萄の種かたみに吐きて過去に触る 伊丹三樹彦
葡萄の美酒夜光の杯や唐の月 正岡子規 月
葡萄の色染みし手桶に山の霧 松崎鉄之介
葡萄の葉散りはじめたる雨寒し 廣瀬直人 帰路
葡萄はこぶ大きな桶のみな古び 高野素十
葡萄は風に染まり尻毛を抜かれ抜かれ 橋閒石 風景
葡萄を食ふ明るき窓を持つそれほどのしあはせに男 中川一碧樓
葡萄一粒一粒の 弾力と雲 富澤赤黄男
葡萄仕込み立ち槽木目乾き切る 松崎鉄之介
葡萄仕込む立ち槽の陰乙女の唄 松崎鉄之介
葡萄全粒 たかが一行の喰えない詩 伊丹三樹彦
葡萄口に飽かずはこびて癒えそめぬ 石田波郷
葡萄吸ふまなこみひらきみひらきて 上田五千石『風景』補遺
葡萄園とざす母屋に灯りて 山口青邨
葡萄園に夏を肥えたる京三と 西東三鬼
葡萄園に葡萄をつくり姙みてし 西東三鬼
葡萄園の夏や見えざる汽車きこえ 西東三鬼
葡萄園の女と男の童菓子を食む 西東三鬼
葡萄園ひとつの痣に日の当る 飯島晴子
葡萄園より出てきたる雨合羽 石田勝彦 秋興以後
葡萄園を来し泥靴を憚らず 安住敦
葡萄園出て碧落に身を涵す 木村蕪城 寒泉
葡萄園坂がかり来て墳墓あり 木村蕪城 寒泉
葡萄園夜は切り込むいなびかり 百合山羽公 寒雁
葡萄園山に喰ひ入り富士かすむ 臼田亜郎 亜浪句集
葡萄園手足を熱く出で来る 飯島晴子
葡萄園稔りの影を引きめぐらせ 右城暮石 句集外 昭和三十三年
葡萄園荒らせる鵯が声たてず 右城暮石 散歩圏
葡萄垂らして葡萄畑急傾斜 山口誓子
葡萄垂りダグラス月の天に浮く 日野草城
葡萄垂るあまたの房の廂より 山口青邨
葡萄垂る野鼠のため栗鼠のため 津田清子
葡萄垂る駒が初雪はるかにし 山口青邨
葡萄垂れさがる如くに教へたし 平畑静塔
葡萄垂れ天上をゆく強き櫂 飯島晴子
葡萄小屋ただよふごとく棚紅葉 山口青邨
葡萄小屋棚にしづみて炊煙を 山口青邨
葡萄山からくらくらと残暑光 廣瀬直人
葡萄山くだる天秤棒鳴りづめ 伊丹三樹彦
葡萄山では ジプシー移り 鳥威 伊丹三樹彦
葡萄山では 葡萄喰う 鴉とも仲間 伊丹三樹彦
葡萄山入道雲の照るに耐ふ 廣瀬直人
葡萄峠は向うここでは木天蓼漬ける 金子兜太
葡萄愛づその紫色をば愛づるなり 相生垣瓜人 負暄
葡萄房今を喰らひてなかばなる 岡井省二 前後
葡萄手入アルプの嶺はけふ霞む 山口青邨
葡萄投げて我儘つのる病婦かな 杉田久女
葡萄摘み神にささぐる酒つくる 大野林火 冬雁 昭和二十二年
葡萄摘み終りて支へ木の太さ 鷹羽狩行
葡萄摘む咽喉かくさず乙女たち 草間時彦 中年
葡萄摘む子の眼鼻立トルコ系 津田清子
葡萄摘む笹子峠は天気よし 山口青邨
葡萄摘始まり桶ころがして行く 山口青邨
葡萄摘日川の橋のけふにぎやか 山口青邨
葡萄摘終りし谷のうすもみじ 山口青邨
葡萄暗し顔よせ粧る夕鏡 杉田久女
葡萄曇色一斉の感涙世に絶えて 香西照雄 対話
葡萄枯れすがしや一葉のこるなき 水原秋櫻子 霜林
葡萄棚の濃き影ぶどう採りしあと 桂信子 晩春
葡萄棚ふかく麦うつ小家かな 飯田蛇笏 山廬集
葡萄棚わづかな茜にも寒し 廣瀬直人 帰路
葡萄棚一痩骨で生徒支ヘ 香西照雄 対話
葡萄棚暮れて稚き葡萄暮れ 山口青邨
葡萄棚洩るゝ日影の微塵かな 川端茅舎
葡萄棚谷わたり来てわがかぶる 山口青邨
葡萄樹下処女身に充つ酸さ甘さ 橋本多佳子
葡萄樹下奔馬のごとき洩れ日あり 佐藤鬼房
葡萄照りこほろぎ露にひゞきけり 日野草城
葡萄熟る弓張月の夜空あり 廣瀬直人
葡萄熟れとしよりの日のつどひ見す 大野林火 雪華 昭和三十三年
葡萄狩る源平藤橘借り鋏 百合山羽公 樂土
葡萄狩粒の撰り食ひ許されず 右城暮石 虻峠
葡萄畑吾等も鵙も葡萄食ぶ 山口誓子
葡萄畑高まりゆきて山門を 山口青邨
葡萄祭山深き駅賑はひて 山口青邨
葡萄種子吐きばうばうと沼に入る 佐藤鬼房
葡萄籠提げて灯までの闇ゆたか 野澤節子 花季
葡萄酒の壜はあげ底緑の風 平井照敏 天上大風
葡萄酒の徳利にいけん杜若 正岡子規 杜若
葡萄酒の蜂の広告や一頁 正岡子規 蜂
葡萄酒はロゼでジヤケツは真赤なる 石田勝彦 雙杵
葡萄酒は赤注ぎ給へ節分会 燕雀 星野麥丘人
葡萄酒や沈む冬日は野にゆだね 橋閒石 朱明
葡萄酒を饗す葡萄を籠に盛り 平畑静塔
葡萄醸す浅間颪に抱き桶す 松崎鉄之介
葡萄青葉漣なせり遠ドナウ 林翔 和紙
葡萄食ふ一粒づつにもの言ひて 加藤秋邨
葡萄食ふ一語一語の如くにて 中村草田男
葡萄食む子に光背の没日炎ゆ 佐藤鬼房
蔭となり日向となりて葡萄熟る 伊丹三樹彦
藁屋みな櫺子窓あり葡萄垂れ 木村蕪城 寒泉
虫くひの葉にかくれたる葡萄哉 正岡子規 葡萄
虫絶えず來る小窓や葡萄棚 正岡子規 葡萄
虹立つや雫絶えたる葡萄棚 橋閒石 雪
蝶蜂の翅落ちつけず葡萄園 右城暮石 句集外 昭和三十九年
蟲飛ぶや葡萄畠の薄月夜 正岡子規 葡萄
裁ちもののごとく葡萄に鋏入れ 鷹羽狩行
裾に人一山葡萄棚覆ふ 石川桂郎 四温
西方の海を讃めたるぶだう山 岡井省二 猩々
西日さす天皇の碑に葡萄熟る 飯田蛇笏 家郷の霧
西洋の田舍に似たり葡萄園 正岡子規 葡萄
見目悪しき葡萄甘しや病臥我 高田風人子
谷わたり丘こえ葡萄棚紅葉 山口青邨
谷わたる葡萄畑や幾夕立 山口青邨
赤葡萄酒白楊林は銀の葉裏 金子兜太
路地照れり葡萄の種を吐きて恥づ 石田波郷
車窓近づきて過ぎ行く葡萄園 右城暮石 句集外 昭和三十四年
轢死者の直前葡萄透きとおる 赤尾兜子 虚像
遠ざかる葡萄畑よ掛けし椅子よ 山口誓子
鄙に住む牧師か家や葡萄棚 正岡子規 葡萄
野ぶだうに声あり暗きより帰る 佐藤鬼房
野ぶだうに日向の風や峰の茶屋 雨滴集 星野麥丘人
野葡萄にしがみつかれて竹屈す 阿波野青畝
野葡萄に鶏遊ぶ小家かな 正岡子規 野葡萄
野葡萄の花食ひ鳥となりおとうと 佐藤鬼房
野葡萄の酸つぱし顔が歪むほど 右城暮石 散歩圏
野葡萄の野をついてくる顔ひとつ 飯島晴子
野葡萄へ汽笛鳴らして帰りけり 飴山實 おりいぶ
野葡萄も引いて入れたき炭俵 百合山羽公 樂土
野葡萄や旱の影す秋篠川 佐藤鬼房
野葡萄や死ぬまで続くわが戦後 佐藤鬼房
野葡萄負へり鉱山の匂の男たち 林翔 和紙
針金に靴下干してぶだう園(磐田市、飴山実氏居二句) 細見綾子
銀婚を忘ぜし夫婦葡萄食ふ 相馬遷子 雪嶺
錆葡萄笛吹川のうす光り 百合山羽公 樂土
隕石やもぞ~として葡萄の木 岡井省二 鯨と犀
障りなく葡萄の園に雪敷けり 上田五千石 森林
雨あがる至福に満ちて葡萄の香 相馬遷子 山河
雨に剪つて一と葉つけたる葡萄かな 飯田蛇笏 山廬集
雨月なる卓にみどりのマスカツト 波多野爽波 鋪道の花
雨溟濛葡萄の房の濃むらさき 山口青邨
雪の来しアルプス天に葡萄園 山口青邨
雪の鳥飛んで行きつく葡萄の木 細見綾子
雪を敷きこれが葡萄園これが梨園 山口誓子
雪敷きて葡萄畑は田とひとつ 木村蕪城 寒泉
雲白く葡萄つめたし背きあへず 野澤節子 未明音
露とけて韋駄天走り葡萄蔓 前田普羅 飛騨紬
露の扉を処女ぞ開けぬ葡萄園 石田波郷
青き実も蔭のうちなる葡萄棚 鷹羽狩行
青ぶだうの中に一粒青錆びて 細見綾子
頤あり夕べのぶだう食うべけり 岡井省二 鯛の鯛
顛落や 宙を搦めて葡萄蔓 三橋鷹女
颱風一過頭を寄せてぶだう食む 細見綾子
馬上の少年に鶏鳴の葡萄園 飯田龍太
鳥威銀になびけり葡萄山 山口青邨
鶴すぎしさゞ波雲や葡萄吸ふ 渡邊水巴 白日
黄落も一樹百畳ぶだう園 百合山羽公 樂土
黒い手をいつぱい放ち葡萄の丘 飯島晴子
黒ぶだう垂らし鉄条銹びにけり 阿波野青畝
黒キマデニ紫深キ葡萄カナ 正岡子規 葡萄
黒葡萄山の妖気に身がくだつ 三橋鷹女
黒葡萄長者伝説はじまりぬ 飯島晴子
以上葡萄 補遺
いつとなく葡萄の国も冬の空 飯田龍太
おぼろなり彫りし葡萄は金にして 山口青邨
かの寺は甲斐善光寺葡萄摘 山口青邨
かぶりつきぬ白桃葡萄梨に 原石鼎 花影以後
くるみ大樹葡萄仕込みの倉の戸口 松崎鉄之介
くゞり摘む葡萄の雨をふりかぶり 杉田久女
この部屋も葡萄をおきて芳しき 山口青邨
こゝに立つ受難キリスト葡萄摘 山口青邨
すでに秋葡萄の葉先うら返り 野見山朱鳥 天馬
そびゆるは甲斐善光寺葡萄園 木村蕪城 一位
ともしびのなき部屋葡萄夜を光る 山口青邨
はじめ火があり百たたき葡萄の木 佐藤鬼房
はじめ響きて手車葡萄園を出づ 藤田湘子
ひとところ甘露の洩れ日葡萄園 鷹羽狩行
ぶだうの房海松のごとくなり皿に 篠原梵 年々去来の花 皿
ぶだうを皿に水露となるすこやかさ(夫誕生日) 細見綾子
ぶだう園ぶだうの熟れか日の熟れか 細見綾子
ぶだう園針金に蝶からみ遊ぶ(磐田市、飴山実氏居二句) 細見綾子
ぶだう山からからと土師笑ひけむ 岡井省二 有時
ぶだう棚波うち囲む嬰児の窓 飯田龍太
ぶだう畑びいどろの日に人は老ゆ 細見綾子
ぶだう畑枯れて地表の和むかな 細見綾子
ぶだう種吐き出してゐる一人一人 細見綾子
ぶだう食ぶ一粒づつに夜の深み 鷹羽狩行
ほしいまゝに葡萄取らしむ葡萄園 正岡子規 葡萄
むくろ鳥たちの空なり黒葡萄 飯島晴子
むらさきふかめ葡萄みづから霧まとふ 野澤節子 未明音
もらひたる葡萄を振つて別るなる 高野素十
われに母健か葡萄軒に垂れ 木村蕪城 寒泉
アスマンのワインを醸す葡萄摘む 山口青邨
イヴのもの一枚落ちて葡萄園 鷹羽狩行
キリストは葡萄の木なり秋深く 星野麥丘人 2004年
ナリ初メシ自家ノ葡萄ヲ侑メケリ 正岡子規 葡萄
ビール苦く葡萄酒渋し薔薇の花 正岡子規 薔薇
フレームは白枠葡萄青籠る 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
マスカット剪るや光りの房減らし 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
マスカット女にばかりすすめけり 星野麥丘人 2003年
マスカツト*もぐ手に熱き息かかる 野澤節子 未明音
マスカツト白髪の父と房頒つ 野澤節子 未明音
ミネルヴァのふくろふの眼して葡萄食ふ 有馬朗人 母国
リアリズムとは何ぞ葡萄酸つぱけれ 西東三鬼
レマン湖のひかりに熟れて葡萄畑 鷹羽狩行
一房の葡萄をもつて欣々と 山口青邨
一日が終るぶだう種塵となる(丹波にて三句) 細見綾子
一樽の葡萄盗みぬ今悔いぬ 高野素十
一滴も見せずに神父葡萄吸ふ 鷹羽狩行
一窓のみ葡萄粒々光頒つ 香西照雄 対話
一籠の葡萄をさげて園主来る 山口青邨
一粒の葡萄の曇り愛しゐる 細見綾子
一粒も欠けざる葡萄選び買ふ 右城暮石 上下
一粒を欠きて葡萄の全しや 鷹羽狩行
一粒を食べて欠きたる葡萄の房 橋本多佳子
三尺の庭を掩ふや葡萄棚 正岡子規 葡萄
不器用な我が手つきかな葡萄食ふ 右城暮石 虻峠
不安なし葡萄の熟るゝ香の中に 相馬遷子 山国
主婦ぶりの子の居葡萄の房そだつ 及川貞 夕焼
乳足り子を地におき葡萄採りいそぐ 橋本多佳子
乾燥し切つて夜に入る葡萄園 右城暮石 句集外 昭和三十六年
亀甲の粒ぎつしりと黒葡萄 川端茅舎
亡父の声 亡母の顔 葡萄減らすたび 伊丹三樹彦
人の死へ緊りに緊り葡萄山 三橋鷹女
人の眼を遁れし葡萄甘味満つ 右城暮石 声と声
人息に粒くもるなり黒葡萄 能村登四郎
伽藍のせ葡萄畑はまつさをに 山口青邨
佛壇の葡萄を落す鼠哉 正岡子規 葡萄
倒まに這ひ行く兒や葡萄棚 正岡子規 葡萄
傾いて月まどかなり葡萄棚 日野草城
全山を葡萄の棚が青くする 山口誓子
冬の葡萄杭一本づつ運ぶ 廣瀬直人 帰路
処女の指葡萄摘む粉を散らさじと 伊丹三樹彦
出されたる種なしぶだう食べつゞけ 高浜年尾
初旅の靄にしづめる葡萄郷 山口青邨
初霜に横たへて積む葡萄杭 廣瀬直人
北国の短か葡萄よ汽車走る 山口誓子
南加いま葡萄を終り棉を摘む 山口青邨
南風の波遠し海獣葡萄鏡 水原秋櫻子 緑雲
原爆も種無し葡萄も人の知慧 石塚友二 磊[カイ]集
収穫や葡萄の垂るる地の明るさ 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
古きワイン窖(あなぐら)にあり葡萄熟る 山口青邨
吹キ下ス妙義ノ霧ヤ葡萄園 正岡子規 葡萄
善光寺門前葡萄摘みをはる 山口青邨
嘆く日のみな一杖の葡萄の木 秋元不死男
噴井の水遁げをり葡萄作りの留守 橋本多佳子
団体に疲れし鋏ぶだう狩 百合山羽公 樂土
垂訓ここにも チャペルヘ潜る葡萄棚 伊丹三樹彦
墓地や 葡萄畑や シャンソニエへは迷路 伊丹三樹彦
夏夜更かすわれは葡萄の木汝はその枝 下村槐太 光背
夏夜更かす吾は葡萄の木汝はその枝 下村槐太 天涯
夕さりて厨子閉められぬ葡萄の木 岡井省二 有時
夕氷葡萄酒色となりにけり 川端茅舎
大池の上七月の葡萄山 岡井省二 猩々
大演習葡萄もみづる丘のさき 山口誓子
大葡萄園に流るる水浅し 上野泰
大阪を通過して来し葡萄狩 右城暮石 上下
天を往く灯のすみやかに葡萄垂る 日野草城
天辺や腋毛ゆたかの葡萄摘み 平畑静塔
太陽を醸してかくは黒葡萄 野澤節子 八朶集以後
妙筆や葡萄の丘を抜けてゆく 飯島晴子
妻となる娘野葡萄実るらし 飴山實 おりいぶ
始めての吾が触白粉ふく葡萄 山口誓子
子規没後百年の黒葡萄かな 星野麥丘人 2002年
寂しさに葡萄の房を握りけり 日野草城
富士まとも簷の葡萄の末枯に 木村蕪城 一位
小粒ぶだう一粒一粒がたのしいとは(丹波にて三句) 細見綾子
小説を好むあるじや葡萄棚 正岡子規 葡萄
小説を讀む窓さきや葡萄棚 正岡子規 葡萄
山の日の中天に来し葡萄園 山口青邨
山の雨晴れゆくさまや葡萄園 山口青邨
山は火を噴く浅間ぶだうは濃紫 鈴木真砂女 夏帯
山上に葡萄一房房たわる 金子兜太
山垣へ葡萄瑠璃光蕩揺す 木村蕪城 寒泉
山腹に熱る葡萄をよよと吸ふ 伊丹三樹彦
山腹のいづこも暑し黒葡萄 廣瀬直人 帰路
山門に葡萄酒醸す樽を置き 山口青邨
山雨来る雲の中なり葡萄摘 水原秋櫻子 餘生
峡も奥霧深ければ葡萄よし 山口青邨
市中に生れる葡萄も内に満ち 山口誓子
師弟古り葡萄一房つまみ合ふ 岡本眸
徒ち遍路ぶだう畑に憩ひをり 岡井省二 鯛の鯛
微かなる径よりはひる葡萄園 飯島晴子
恋愛詩誦し葡萄の珠ふくむ 日野草城
悔多く足裏につきしぶだう種(丹波にて三句) 細見綾子
惜しげなく葡萄つぶさる手を染めて 松崎鉄之介
手ぐられて葡萄の紅葉うらがへし 前田普羅 飛騨紬
手にさげて一房の葡萄愛でにける 山口青邨
手を振れば臍出る童葡萄熟れ 林翔 和紙
手摩れ葡萄訓すに或る瞳かがやくごと 香西照雄 対話
持ち馴れぬ重さ信濃の葡萄籠 鷹羽狩行
持主も知らず山路の葡萄園 正岡子規 葡萄
敵手と食ふ血の厚肉と黒葡萄 能村登四郎
新葡萄皓歯も同じ乙女達 百合山羽公 寒雁
日の斑より葡萄のにほひ葡萄園 鷹羽狩行
日脚伸ぶ見えて衾のぶだう山 岡井省二 山色
早生栗の粒葡萄より彫深し 百合山羽公 寒雁
星がまたとんでぶだうのえぐみかな 岡井省二 鯛の鯛
春めくや藁堆の数置くぶだう山 岡井省二 鹿野
暦日を冬へ葡萄園人手かけず 上田五千石『琥珀』補遺
月さしてむらさき煙る葡萄かな 日野草城
月さして葡萄の房ぞ垂り揃ふ 日野草城
月を病む女の しろき掌の 葡萄 富澤赤黄男
月盈つる夜毎の葡萄含みけり 橋閒石 雪
朝の日を葉蔭に誘ひ葡萄熟る 伊丹三樹彦
朝の脈とりし医師食ふ黒葡萄 赤尾兜子 玄玄
朝刊を大きくひらき葡萄食ふ 石田波郷
木の間月葡萄剥く間も止まらず 富安風生
朱唇ぬれて葡萄うまきかいとし子よ 杉田久女
朱硯に葡萄のからの散亂す 正岡子規 葡萄
杯擧ぐるはレンブラント作葡萄祭 山口青邨
柱にも葡萄を彫りしおぼろかな 山口青邨
根を攻めし雑草も枯れ葡萄園 津田清子 礼拝
桃を得て葡萄を望む患者哉 正岡子規 葡萄
梨に飽きて葡萄を好む病哉 正岡子規 葡萄
梳る女部屋にあり葡萄熟れ 山口青邨
棒麺麭に赤葡萄酒の四日かな 燕雀 星野麥丘人
棚といふ棚もみぢして葡萄郷 鷹羽狩行
棚軽くなりて葡萄は枯を編む 上田五千石『琥珀』補遺
機関車の煤降る葡萄枯れし軒 木村蕪城 寒泉
歓迎の門は鉄骨ぶだう園 百合山羽公 樂土
止乎(やみね)止乎とをとこごゑ葡萄山 岡井省二 鯨と犀
毎日は葡萄も喰はず水藥 正岡子規 葡萄
水晶や葡萄のあとの紅葉冷え 百合山羽公 樂土
水栓に当てゝ葡萄の粒ぎつしり 右城暮石 声と声
水満てし白き器に葡萄かな 川端茅舎
汽車を吐く笹子トンネル葡萄園 山口青邨
洋梨蠢き葡萄膨らむ佐伯の眼 林翔 和紙
深入りしすぎ振りかへる葡萄山 石川桂郎 四温
湯の谿に葡萄紅葉の下に鳴る 木村蕪城 一位
瀬の音のくだくる葡萄の房々に 山口青邨
火酒を売り葡萄酒を売り峠茶屋 高野素十
灰皿に種無し葡萄吸ひし殻 右城暮石 句集外 昭和五十八年
熟葡萄濃きともしびと隔らず 廣瀬直人
爆音や青き葡萄に影うまれ 加藤秋邨
猟鳥の死に切りし眼の葡萄色 右城暮石 上下
琅*かんの簷の葡萄に寿 木村蕪城 寒泉
甕たのし葡萄の美酒がわき澄める 杉田久女
病み果ての葡萄酒ふくむ春の雪 鷲谷七菜子 黄炎
登りつゝ葡萄の棚の高さあり 清崎敏郎
百房の黒き葡萄の銘茂吉 三橋敏雄
真つ青な葡萄の房の垂れはじむ 廣瀬直人
真直に少女の視線葡萄園 飯島晴子
石狩乙女皿にもてくる黒葡萄 松崎鉄之介
秋のかぜ葡萄畑の石を吹く 三橋敏雄
秋日透くぶだう天ぷらおもしろし(山梨、放光寺) 細見綾子
秋果籠に梨も葡萄もみな古典 山口青邨
稚葡萄軒端にまろき月を得し 山口青邨
種を吐く葡萄と同じ皿の上 山口誓子
笑はざりしひと日の終り葡萄食ふ 西東三鬼
紅葉して雲より赤し葡萄園 石塚友二 光塵
紫のぶだうを置いて雨の音(清川とみ子さん居) 細見綾子
紫の玉累々と葡萄哉 正岡子規 葡萄
終の葡萄ひと房添へて患者食 石川桂郎 四温
翅おとした一塊の葡萄山 三橋鷹女
胡旋女の衣の紫に葡萄樹下 松崎鉄之介
胸の籠いまは満ち満つ葡萄摘 山口青邨
能登路なる海ぎはの丘ぶだう熟れ 細見綾子
臙脂色にすべて終りし葡萄園 右城暮石 句集外 昭和三十四年
色惜しみつつ夜明けつつ黒葡萄 廣瀬直人
芳醇の葡萄巨峰を巨砲と婆が 山口青邨
荊棘のアーチ野葡萄彩りて 川端茅舎
葉は虫にくはれなからも葡萄哉 正岡子規 葡萄
葉二枚つきし葡萄の一房を 高野素十
葉洩日に碧玉透けし葡萄かな 杉田久女
葡萄あまししづかに友の死をいかる 西東三鬼
葡萄これより紫ならんと露にぬれ 山口青邨
葡萄のせて掌といふ平らなもの 岡本眸
葡萄の下吾が身長のまま歩く 山口誓子
葡萄の房切るたび鋏の鉄にほふ 橋本多佳子
葡萄の種かたみに吐きて過去に触る 伊丹三樹彦
葡萄の美酒夜光の杯や唐の月 正岡子規 月
葡萄の色染みし手桶に山の霧 松崎鉄之介
葡萄の葉散りはじめたる雨寒し 廣瀬直人 帰路
葡萄はこぶ大きな桶のみな古び 高野素十
葡萄は風に染まり尻毛を抜かれ抜かれ 橋閒石 風景
葡萄を食ふ明るき窓を持つそれほどのしあはせに男 中川一碧樓
葡萄一粒一粒の 弾力と雲 富澤赤黄男
葡萄仕込み立ち槽木目乾き切る 松崎鉄之介
葡萄仕込む立ち槽の陰乙女の唄 松崎鉄之介
葡萄全粒 たかが一行の喰えない詩 伊丹三樹彦
葡萄口に飽かずはこびて癒えそめぬ 石田波郷
葡萄吸ふまなこみひらきみひらきて 上田五千石『風景』補遺
葡萄園とざす母屋に灯りて 山口青邨
葡萄園に夏を肥えたる京三と 西東三鬼
葡萄園に葡萄をつくり姙みてし 西東三鬼
葡萄園の夏や見えざる汽車きこえ 西東三鬼
葡萄園の女と男の童菓子を食む 西東三鬼
葡萄園ひとつの痣に日の当る 飯島晴子
葡萄園より出てきたる雨合羽 石田勝彦 秋興以後
葡萄園を来し泥靴を憚らず 安住敦
葡萄園出て碧落に身を涵す 木村蕪城 寒泉
葡萄園坂がかり来て墳墓あり 木村蕪城 寒泉
葡萄園夜は切り込むいなびかり 百合山羽公 寒雁
葡萄園山に喰ひ入り富士かすむ 臼田亜郎 亜浪句集
葡萄園手足を熱く出で来る 飯島晴子
葡萄園稔りの影を引きめぐらせ 右城暮石 句集外 昭和三十三年
葡萄園荒らせる鵯が声たてず 右城暮石 散歩圏
葡萄垂らして葡萄畑急傾斜 山口誓子
葡萄垂りダグラス月の天に浮く 日野草城
葡萄垂るあまたの房の廂より 山口青邨
葡萄垂る野鼠のため栗鼠のため 津田清子
葡萄垂る駒が初雪はるかにし 山口青邨
葡萄垂れさがる如くに教へたし 平畑静塔
葡萄垂れ天上をゆく強き櫂 飯島晴子
葡萄小屋ただよふごとく棚紅葉 山口青邨
葡萄小屋棚にしづみて炊煙を 山口青邨
葡萄山からくらくらと残暑光 廣瀬直人
葡萄山くだる天秤棒鳴りづめ 伊丹三樹彦
葡萄山では ジプシー移り 鳥威 伊丹三樹彦
葡萄山では 葡萄喰う 鴉とも仲間 伊丹三樹彦
葡萄山入道雲の照るに耐ふ 廣瀬直人
葡萄峠は向うここでは木天蓼漬ける 金子兜太
葡萄愛づその紫色をば愛づるなり 相生垣瓜人 負暄
葡萄房今を喰らひてなかばなる 岡井省二 前後
葡萄手入アルプの嶺はけふ霞む 山口青邨
葡萄投げて我儘つのる病婦かな 杉田久女
葡萄摘み神にささぐる酒つくる 大野林火 冬雁 昭和二十二年
葡萄摘み終りて支へ木の太さ 鷹羽狩行
葡萄摘む咽喉かくさず乙女たち 草間時彦 中年
葡萄摘む子の眼鼻立トルコ系 津田清子
葡萄摘む笹子峠は天気よし 山口青邨
葡萄摘始まり桶ころがして行く 山口青邨
葡萄摘日川の橋のけふにぎやか 山口青邨
葡萄摘終りし谷のうすもみじ 山口青邨
葡萄暗し顔よせ粧る夕鏡 杉田久女
葡萄曇色一斉の感涙世に絶えて 香西照雄 対話
葡萄枯れすがしや一葉のこるなき 水原秋櫻子 霜林
葡萄棚の濃き影ぶどう採りしあと 桂信子 晩春
葡萄棚ふかく麦うつ小家かな 飯田蛇笏 山廬集
葡萄棚わづかな茜にも寒し 廣瀬直人 帰路
葡萄棚一痩骨で生徒支ヘ 香西照雄 対話
葡萄棚暮れて稚き葡萄暮れ 山口青邨
葡萄棚洩るゝ日影の微塵かな 川端茅舎
葡萄棚谷わたり来てわがかぶる 山口青邨
葡萄樹下処女身に充つ酸さ甘さ 橋本多佳子
葡萄樹下奔馬のごとき洩れ日あり 佐藤鬼房
葡萄照りこほろぎ露にひゞきけり 日野草城
葡萄熟る弓張月の夜空あり 廣瀬直人
葡萄熟れとしよりの日のつどひ見す 大野林火 雪華 昭和三十三年
葡萄狩る源平藤橘借り鋏 百合山羽公 樂土
葡萄狩粒の撰り食ひ許されず 右城暮石 虻峠
葡萄畑吾等も鵙も葡萄食ぶ 山口誓子
葡萄畑高まりゆきて山門を 山口青邨
葡萄祭山深き駅賑はひて 山口青邨
葡萄種子吐きばうばうと沼に入る 佐藤鬼房
葡萄籠提げて灯までの闇ゆたか 野澤節子 花季
葡萄酒の壜はあげ底緑の風 平井照敏 天上大風
葡萄酒の徳利にいけん杜若 正岡子規 杜若
葡萄酒の蜂の広告や一頁 正岡子規 蜂
葡萄酒はロゼでジヤケツは真赤なる 石田勝彦 雙杵
葡萄酒は赤注ぎ給へ節分会 燕雀 星野麥丘人
葡萄酒や沈む冬日は野にゆだね 橋閒石 朱明
葡萄酒を饗す葡萄を籠に盛り 平畑静塔
葡萄醸す浅間颪に抱き桶す 松崎鉄之介
葡萄青葉漣なせり遠ドナウ 林翔 和紙
葡萄食ふ一粒づつにもの言ひて 加藤秋邨
葡萄食ふ一語一語の如くにて 中村草田男
葡萄食む子に光背の没日炎ゆ 佐藤鬼房
蔭となり日向となりて葡萄熟る 伊丹三樹彦
藁屋みな櫺子窓あり葡萄垂れ 木村蕪城 寒泉
虫くひの葉にかくれたる葡萄哉 正岡子規 葡萄
虫絶えず來る小窓や葡萄棚 正岡子規 葡萄
虹立つや雫絶えたる葡萄棚 橋閒石 雪
蝶蜂の翅落ちつけず葡萄園 右城暮石 句集外 昭和三十九年
蟲飛ぶや葡萄畠の薄月夜 正岡子規 葡萄
裁ちもののごとく葡萄に鋏入れ 鷹羽狩行
裾に人一山葡萄棚覆ふ 石川桂郎 四温
西方の海を讃めたるぶだう山 岡井省二 猩々
西日さす天皇の碑に葡萄熟る 飯田蛇笏 家郷の霧
西洋の田舍に似たり葡萄園 正岡子規 葡萄
見目悪しき葡萄甘しや病臥我 高田風人子
谷わたり丘こえ葡萄棚紅葉 山口青邨
谷わたる葡萄畑や幾夕立 山口青邨
赤葡萄酒白楊林は銀の葉裏 金子兜太
路地照れり葡萄の種を吐きて恥づ 石田波郷
車窓近づきて過ぎ行く葡萄園 右城暮石 句集外 昭和三十四年
轢死者の直前葡萄透きとおる 赤尾兜子 虚像
遠ざかる葡萄畑よ掛けし椅子よ 山口誓子
鄙に住む牧師か家や葡萄棚 正岡子規 葡萄
野ぶだうに声あり暗きより帰る 佐藤鬼房
野ぶだうに日向の風や峰の茶屋 雨滴集 星野麥丘人
野葡萄にしがみつかれて竹屈す 阿波野青畝
野葡萄に鶏遊ぶ小家かな 正岡子規 野葡萄
野葡萄の花食ひ鳥となりおとうと 佐藤鬼房
野葡萄の酸つぱし顔が歪むほど 右城暮石 散歩圏
野葡萄の野をついてくる顔ひとつ 飯島晴子
野葡萄へ汽笛鳴らして帰りけり 飴山實 おりいぶ
野葡萄も引いて入れたき炭俵 百合山羽公 樂土
野葡萄や旱の影す秋篠川 佐藤鬼房
野葡萄や死ぬまで続くわが戦後 佐藤鬼房
野葡萄負へり鉱山の匂の男たち 林翔 和紙
針金に靴下干してぶだう園(磐田市、飴山実氏居二句) 細見綾子
銀婚を忘ぜし夫婦葡萄食ふ 相馬遷子 雪嶺
錆葡萄笛吹川のうす光り 百合山羽公 樂土
隕石やもぞ~として葡萄の木 岡井省二 鯨と犀
障りなく葡萄の園に雪敷けり 上田五千石 森林
雨あがる至福に満ちて葡萄の香 相馬遷子 山河
雨に剪つて一と葉つけたる葡萄かな 飯田蛇笏 山廬集
雨月なる卓にみどりのマスカツト 波多野爽波 鋪道の花
雨溟濛葡萄の房の濃むらさき 山口青邨
雪の来しアルプス天に葡萄園 山口青邨
雪の鳥飛んで行きつく葡萄の木 細見綾子
雪を敷きこれが葡萄園これが梨園 山口誓子
雪敷きて葡萄畑は田とひとつ 木村蕪城 寒泉
雲白く葡萄つめたし背きあへず 野澤節子 未明音
露とけて韋駄天走り葡萄蔓 前田普羅 飛騨紬
露の扉を処女ぞ開けぬ葡萄園 石田波郷
青き実も蔭のうちなる葡萄棚 鷹羽狩行
青ぶだうの中に一粒青錆びて 細見綾子
頤あり夕べのぶだう食うべけり 岡井省二 鯛の鯛
顛落や 宙を搦めて葡萄蔓 三橋鷹女
颱風一過頭を寄せてぶだう食む 細見綾子
馬上の少年に鶏鳴の葡萄園 飯田龍太
鳥威銀になびけり葡萄山 山口青邨
鶴すぎしさゞ波雲や葡萄吸ふ 渡邊水巴 白日
黄落も一樹百畳ぶだう園 百合山羽公 樂土
黒い手をいつぱい放ち葡萄の丘 飯島晴子
黒ぶだう垂らし鉄条銹びにけり 阿波野青畝
黒キマデニ紫深キ葡萄カナ 正岡子規 葡萄
黒葡萄山の妖気に身がくだつ 三橋鷹女
黒葡萄長者伝説はじまりぬ 飯島晴子
以上
葡萄 の例句(←ここをクリック)
http://fudemaka57.exblog.jp/23174549/
【参考 野葡萄】(←ここをクリック)
http://fudemaka57.exblog.jp/23282927/
【参考 山葡萄】(←ここをクリック)
http://fudemaka57.exblog.jp/23282925/
葡萄 補遺
いつとなく葡萄の国も冬の空 飯田龍太
おぼろなり彫りし葡萄は金にして 山口青邨
かの寺は甲斐善光寺葡萄摘 山口青邨
かぶりつきぬ白桃葡萄梨に 原石鼎 花影以後
くるみ大樹葡萄仕込みの倉の戸口 松崎鉄之介
くゞり摘む葡萄の雨をふりかぶり 杉田久女
この部屋も葡萄をおきて芳しき 山口青邨
こゝに立つ受難キリスト葡萄摘 山口青邨
すでに秋葡萄の葉先うら返り 野見山朱鳥 天馬
そびゆるは甲斐善光寺葡萄園 木村蕪城 一位
ともしびのなき部屋葡萄夜を光る 山口青邨
はじめ火があり百たたき葡萄の木 佐藤鬼房
はじめ響きて手車葡萄園を出づ 藤田湘子
ひとところ甘露の洩れ日葡萄園 鷹羽狩行
ぶだうの房海松のごとくなり皿に 篠原梵 年々去来の花 皿
ぶだうを皿に水露となるすこやかさ(夫誕生日) 細見綾子
ぶだう園ぶだうの熟れか日の熟れか 細見綾子
ぶだう園針金に蝶からみ遊ぶ(磐田市、飴山実氏居二句) 細見綾子
ぶだう山からからと土師笑ひけむ 岡井省二 有時
ぶだう棚波うち囲む嬰児の窓 飯田龍太
ぶだう畑びいどろの日に人は老ゆ 細見綾子
ぶだう畑枯れて地表の和むかな 細見綾子
ぶだう種吐き出してゐる一人一人 細見綾子
ぶだう食ぶ一粒づつに夜の深み 鷹羽狩行
ほしいまゝに葡萄取らしむ葡萄園 正岡子規 葡萄
むくろ鳥たちの空なり黒葡萄 飯島晴子
むらさきふかめ葡萄みづから霧まとふ 野澤節子 未明音
もらひたる葡萄を振つて別るなる 高野素十
われに母健か葡萄軒に垂れ 木村蕪城 寒泉
アスマンのワインを醸す葡萄摘む 山口青邨
イヴのもの一枚落ちて葡萄園 鷹羽狩行
キリストは葡萄の木なり秋深く 星野麥丘人 2004年
ナリ初メシ自家ノ葡萄ヲ侑メケリ 正岡子規 葡萄
ビール苦く葡萄酒渋し薔薇の花 正岡子規 薔薇
フレームは白枠葡萄青籠る 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
マスカット剪るや光りの房減らし 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
マスカット女にばかりすすめけり 星野麥丘人 2003年
マスカツト*もぐ手に熱き息かかる 野澤節子 未明音
マスカツト白髪の父と房頒つ 野澤節子 未明音
ミネルヴァのふくろふの眼して葡萄食ふ 有馬朗人 母国
リアリズムとは何ぞ葡萄酸つぱけれ 西東三鬼
レマン湖のひかりに熟れて葡萄畑 鷹羽狩行
一房の葡萄をもつて欣々と 山口青邨
一日が終るぶだう種塵となる(丹波にて三句) 細見綾子
一樽の葡萄盗みぬ今悔いぬ 高野素十
一滴も見せずに神父葡萄吸ふ 鷹羽狩行
一窓のみ葡萄粒々光頒つ 香西照雄 対話
一籠の葡萄をさげて園主来る 山口青邨
一粒の葡萄の曇り愛しゐる 細見綾子
一粒も欠けざる葡萄選び買ふ 右城暮石 上下
一粒を欠きて葡萄の全しや 鷹羽狩行
一粒を食べて欠きたる葡萄の房 橋本多佳子
三尺の庭を掩ふや葡萄棚 正岡子規 葡萄
不器用な我が手つきかな葡萄食ふ 右城暮石 虻峠
不安なし葡萄の熟るゝ香の中に 相馬遷子 山国
主婦ぶりの子の居葡萄の房そだつ 及川貞 夕焼
乳足り子を地におき葡萄採りいそぐ 橋本多佳子
乾燥し切つて夜に入る葡萄園 右城暮石 句集外 昭和三十六年
亀甲の粒ぎつしりと黒葡萄 川端茅舎
亡父の声 亡母の顔 葡萄減らすたび 伊丹三樹彦
人の死へ緊りに緊り葡萄山 三橋鷹女
人の眼を遁れし葡萄甘味満つ 右城暮石 声と声
人息に粒くもるなり黒葡萄 能村登四郎
伽藍のせ葡萄畑はまつさをに 山口青邨
佛壇の葡萄を落す鼠哉 正岡子規 葡萄
倒まに這ひ行く兒や葡萄棚 正岡子規 葡萄
傾いて月まどかなり葡萄棚 日野草城
全山を葡萄の棚が青くする 山口誓子
冬の葡萄杭一本づつ運ぶ 廣瀬直人 帰路
処女の指葡萄摘む粉を散らさじと 伊丹三樹彦
出されたる種なしぶだう食べつゞけ 高浜年尾
初旅の靄にしづめる葡萄郷 山口青邨
初霜に横たへて積む葡萄杭 廣瀬直人
北国の短か葡萄よ汽車走る 山口誓子
南加いま葡萄を終り棉を摘む 山口青邨
南風の波遠し海獣葡萄鏡 水原秋櫻子 緑雲
原爆も種無し葡萄も人の知慧 石塚友二 磊[カイ]集
収穫や葡萄の垂るる地の明るさ 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
古きワイン窖(あなぐら)にあり葡萄熟る 山口青邨
吹キ下ス妙義ノ霧ヤ葡萄園 正岡子規 葡萄
善光寺門前葡萄摘みをはる 山口青邨
嘆く日のみな一杖の葡萄の木 秋元不死男
噴井の水遁げをり葡萄作りの留守 橋本多佳子
団体に疲れし鋏ぶだう狩 百合山羽公 樂土
垂訓ここにも チャペルヘ潜る葡萄棚 伊丹三樹彦
墓地や 葡萄畑や シャンソニエへは迷路 伊丹三樹彦
夏夜更かすわれは葡萄の木汝はその枝 下村槐太 光背
夏夜更かす吾は葡萄の木汝はその枝 下村槐太 天涯
夕さりて厨子閉められぬ葡萄の木 岡井省二 有時
夕氷葡萄酒色となりにけり 川端茅舎
大池の上七月の葡萄山 岡井省二 猩々
大演習葡萄もみづる丘のさき 山口誓子
大葡萄園に流るる水浅し 上野泰
大阪を通過して来し葡萄狩 右城暮石 上下
天を往く灯のすみやかに葡萄垂る 日野草城
天辺や腋毛ゆたかの葡萄摘み 平畑静塔
太陽を醸してかくは黒葡萄 野澤節子 八朶集以後
妙筆や葡萄の丘を抜けてゆく 飯島晴子
妻となる娘野葡萄実るらし 飴山實 おりいぶ
始めての吾が触白粉ふく葡萄 山口誓子
子規没後百年の黒葡萄かな 星野麥丘人 2002年
寂しさに葡萄の房を握りけり 日野草城
富士まとも簷の葡萄の末枯に 木村蕪城 一位
小粒ぶだう一粒一粒がたのしいとは(丹波にて三句) 細見綾子
小説を好むあるじや葡萄棚 正岡子規 葡萄
小説を讀む窓さきや葡萄棚 正岡子規 葡萄
山の日の中天に来し葡萄園 山口青邨
山の雨晴れゆくさまや葡萄園 山口青邨
山は火を噴く浅間ぶだうは濃紫 鈴木真砂女 夏帯
山上に葡萄一房房たわる 金子兜太
山垣へ葡萄瑠璃光蕩揺す 木村蕪城 寒泉
山腹に熱る葡萄をよよと吸ふ 伊丹三樹彦
山腹のいづこも暑し黒葡萄 廣瀬直人 帰路
山門に葡萄酒醸す樽を置き 山口青邨
山雨来る雲の中なり葡萄摘 水原秋櫻子 餘生
峡も奥霧深ければ葡萄よし 山口青邨
市中に生れる葡萄も内に満ち 山口誓子
師弟古り葡萄一房つまみ合ふ 岡本眸
徒ち遍路ぶだう畑に憩ひをり 岡井省二 鯛の鯛
微かなる径よりはひる葡萄園 飯島晴子
恋愛詩誦し葡萄の珠ふくむ 日野草城
悔多く足裏につきしぶだう種(丹波にて三句) 細見綾子
惜しげなく葡萄つぶさる手を染めて 松崎鉄之介
手ぐられて葡萄の紅葉うらがへし 前田普羅 飛騨紬
手にさげて一房の葡萄愛でにける 山口青邨
手を振れば臍出る童葡萄熟れ 林翔 和紙
手摩れ葡萄訓すに或る瞳かがやくごと 香西照雄 対話
持ち馴れぬ重さ信濃の葡萄籠 鷹羽狩行
持主も知らず山路の葡萄園 正岡子規 葡萄
敵手と食ふ血の厚肉と黒葡萄 能村登四郎
新葡萄皓歯も同じ乙女達 百合山羽公 寒雁
日の斑より葡萄のにほひ葡萄園 鷹羽狩行
日脚伸ぶ見えて衾のぶだう山 岡井省二 山色
早生栗の粒葡萄より彫深し 百合山羽公 寒雁
星がまたとんでぶだうのえぐみかな 岡井省二 鯛の鯛
春めくや藁堆の数置くぶだう山 岡井省二 鹿野
暦日を冬へ葡萄園人手かけず 上田五千石『琥珀』補遺
月さしてむらさき煙る葡萄かな 日野草城
月さして葡萄の房ぞ垂り揃ふ 日野草城
月を病む女の しろき掌の 葡萄 富澤赤黄男
月盈つる夜毎の葡萄含みけり 橋閒石 雪
朝の日を葉蔭に誘ひ葡萄熟る 伊丹三樹彦
朝の脈とりし医師食ふ黒葡萄 赤尾兜子 玄玄
朝刊を大きくひらき葡萄食ふ 石田波郷
木の間月葡萄剥く間も止まらず 富安風生
朱唇ぬれて葡萄うまきかいとし子よ 杉田久女
朱硯に葡萄のからの散亂す 正岡子規 葡萄
杯擧ぐるはレンブラント作葡萄祭 山口青邨
柱にも葡萄を彫りしおぼろかな 山口青邨
根を攻めし雑草も枯れ葡萄園 津田清子 礼拝
桃を得て葡萄を望む患者哉 正岡子規 葡萄
梨に飽きて葡萄を好む病哉 正岡子規 葡萄
梳る女部屋にあり葡萄熟れ 山口青邨
棒麺麭に赤葡萄酒の四日かな 燕雀 星野麥丘人
棚といふ棚もみぢして葡萄郷 鷹羽狩行
棚軽くなりて葡萄は枯を編む 上田五千石『琥珀』補遺
機関車の煤降る葡萄枯れし軒 木村蕪城 寒泉
歓迎の門は鉄骨ぶだう園 百合山羽公 樂土
止乎(やみね)止乎とをとこごゑ葡萄山 岡井省二 鯨と犀
毎日は葡萄も喰はず水藥 正岡子規 葡萄
水晶や葡萄のあとの紅葉冷え 百合山羽公 樂土
水栓に当てゝ葡萄の粒ぎつしり 右城暮石 声と声
水満てし白き器に葡萄かな 川端茅舎
汽車を吐く笹子トンネル葡萄園 山口青邨
洋梨蠢き葡萄膨らむ佐伯の眼 林翔 和紙
深入りしすぎ振りかへる葡萄山 石川桂郎 四温
湯の谿に葡萄紅葉の下に鳴る 木村蕪城 一位
瀬の音のくだくる葡萄の房々に 山口青邨
火酒を売り葡萄酒を売り峠茶屋 高野素十
灰皿に種無し葡萄吸ひし殻 右城暮石 句集外 昭和五十八年
熟葡萄濃きともしびと隔らず 廣瀬直人
爆音や青き葡萄に影うまれ 加藤秋邨
猟鳥の死に切りし眼の葡萄色 右城暮石 上下
琅*かんの簷の葡萄に寿 木村蕪城 寒泉
甕たのし葡萄の美酒がわき澄める 杉田久女
病み果ての葡萄酒ふくむ春の雪 鷲谷七菜子 黄炎
登りつゝ葡萄の棚の高さあり 清崎敏郎
百房の黒き葡萄の銘茂吉 三橋敏雄
真つ青な葡萄の房の垂れはじむ 廣瀬直人
真直に少女の視線葡萄園 飯島晴子
石狩乙女皿にもてくる黒葡萄 松崎鉄之介
秋のかぜ葡萄畑の石を吹く 三橋敏雄
秋日透くぶだう天ぷらおもしろし(山梨、放光寺) 細見綾子
秋果籠に梨も葡萄もみな古典 山口青邨
稚葡萄軒端にまろき月を得し 山口青邨
種を吐く葡萄と同じ皿の上 山口誓子
笑はざりしひと日の終り葡萄食ふ 西東三鬼
紅葉して雲より赤し葡萄園 石塚友二 光塵
紫のぶだうを置いて雨の音(清川とみ子さん居) 細見綾子
紫の玉累々と葡萄哉 正岡子規 葡萄
終の葡萄ひと房添へて患者食 石川桂郎 四温
翅おとした一塊の葡萄山 三橋鷹女
胡旋女の衣の紫に葡萄樹下 松崎鉄之介
胸の籠いまは満ち満つ葡萄摘 山口青邨
能登路なる海ぎはの丘ぶだう熟れ 細見綾子
臙脂色にすべて終りし葡萄園 右城暮石 句集外 昭和三十四年
色惜しみつつ夜明けつつ黒葡萄 廣瀬直人
芳醇の葡萄巨峰を巨砲と婆が 山口青邨
荊棘のアーチ野葡萄彩りて 川端茅舎
葉は虫にくはれなからも葡萄哉 正岡子規 葡萄
葉二枚つきし葡萄の一房を 高野素十
葉洩日に碧玉透けし葡萄かな 杉田久女
葡萄あまししづかに友の死をいかる 西東三鬼
葡萄これより紫ならんと露にぬれ 山口青邨
葡萄のせて掌といふ平らなもの 岡本眸
葡萄の下吾が身長のまま歩く 山口誓子
葡萄の房切るたび鋏の鉄にほふ 橋本多佳子
葡萄の種かたみに吐きて過去に触る 伊丹三樹彦
葡萄の美酒夜光の杯や唐の月 正岡子規 月
葡萄の色染みし手桶に山の霧 松崎鉄之介
葡萄の葉散りはじめたる雨寒し 廣瀬直人 帰路
葡萄はこぶ大きな桶のみな古び 高野素十
葡萄は風に染まり尻毛を抜かれ抜かれ 橋閒石 風景
葡萄を食ふ明るき窓を持つそれほどのしあはせに男 中川一碧樓
葡萄一粒一粒の 弾力と雲 富澤赤黄男
葡萄仕込み立ち槽木目乾き切る 松崎鉄之介
葡萄仕込む立ち槽の陰乙女の唄 松崎鉄之介
葡萄全粒 たかが一行の喰えない詩 伊丹三樹彦
葡萄口に飽かずはこびて癒えそめぬ 石田波郷
葡萄吸ふまなこみひらきみひらきて 上田五千石『風景』補遺
葡萄園とざす母屋に灯りて 山口青邨
葡萄園に夏を肥えたる京三と 西東三鬼
葡萄園に葡萄をつくり姙みてし 西東三鬼
葡萄園の夏や見えざる汽車きこえ 西東三鬼
葡萄園の女と男の童菓子を食む 西東三鬼
葡萄園ひとつの痣に日の当る 飯島晴子
葡萄園より出てきたる雨合羽 石田勝彦 秋興以後
葡萄園を来し泥靴を憚らず 安住敦
葡萄園出て碧落に身を涵す 木村蕪城 寒泉
葡萄園坂がかり来て墳墓あり 木村蕪城 寒泉
葡萄園夜は切り込むいなびかり 百合山羽公 寒雁
葡萄園山に喰ひ入り富士かすむ 臼田亜郎 亜浪句集
葡萄園手足を熱く出で来る 飯島晴子
葡萄園稔りの影を引きめぐらせ 右城暮石 句集外 昭和三十三年
葡萄園荒らせる鵯が声たてず 右城暮石 散歩圏
葡萄垂らして葡萄畑急傾斜 山口誓子
葡萄垂りダグラス月の天に浮く 日野草城
葡萄垂るあまたの房の廂より 山口青邨
葡萄垂る野鼠のため栗鼠のため 津田清子
葡萄垂る駒が初雪はるかにし 山口青邨
葡萄垂れさがる如くに教へたし 平畑静塔
葡萄垂れ天上をゆく強き櫂 飯島晴子
葡萄小屋ただよふごとく棚紅葉 山口青邨
葡萄小屋棚にしづみて炊煙を 山口青邨
葡萄山からくらくらと残暑光 廣瀬直人
葡萄山くだる天秤棒鳴りづめ 伊丹三樹彦
葡萄山では ジプシー移り 鳥威 伊丹三樹彦
葡萄山では 葡萄喰う 鴉とも仲間 伊丹三樹彦
葡萄山入道雲の照るに耐ふ 廣瀬直人
葡萄峠は向うここでは木天蓼漬ける 金子兜太
葡萄愛づその紫色をば愛づるなり 相生垣瓜人 負暄
葡萄房今を喰らひてなかばなる 岡井省二 前後
葡萄手入アルプの嶺はけふ霞む 山口青邨
葡萄投げて我儘つのる病婦かな 杉田久女
葡萄摘み神にささぐる酒つくる 大野林火 冬雁 昭和二十二年
葡萄摘み終りて支へ木の太さ 鷹羽狩行
葡萄摘む咽喉かくさず乙女たち 草間時彦 中年
葡萄摘む子の眼鼻立トルコ系 津田清子
葡萄摘む笹子峠は天気よし 山口青邨
葡萄摘始まり桶ころがして行く 山口青邨
葡萄摘日川の橋のけふにぎやか 山口青邨
葡萄摘終りし谷のうすもみじ 山口青邨
葡萄暗し顔よせ粧る夕鏡 杉田久女
葡萄曇色一斉の感涙世に絶えて 香西照雄 対話
葡萄枯れすがしや一葉のこるなき 水原秋櫻子 霜林
葡萄棚の濃き影ぶどう採りしあと 桂信子 晩春
葡萄棚ふかく麦うつ小家かな 飯田蛇笏 山廬集
葡萄棚わづかな茜にも寒し 廣瀬直人 帰路
葡萄棚一痩骨で生徒支ヘ 香西照雄 対話
葡萄棚暮れて稚き葡萄暮れ 山口青邨
葡萄棚洩るゝ日影の微塵かな 川端茅舎
葡萄棚谷わたり来てわがかぶる 山口青邨
葡萄樹下処女身に充つ酸さ甘さ 橋本多佳子
葡萄樹下奔馬のごとき洩れ日あり 佐藤鬼房
葡萄照りこほろぎ露にひゞきけり 日野草城
葡萄熟る弓張月の夜空あり 廣瀬直人
葡萄熟れとしよりの日のつどひ見す 大野林火 雪華 昭和三十三年
葡萄狩る源平藤橘借り鋏 百合山羽公 樂土
葡萄狩粒の撰り食ひ許されず 右城暮石 虻峠
葡萄畑吾等も鵙も葡萄食ぶ 山口誓子
葡萄畑高まりゆきて山門を 山口青邨
葡萄祭山深き駅賑はひて 山口青邨
葡萄種子吐きばうばうと沼に入る 佐藤鬼房
葡萄籠提げて灯までの闇ゆたか 野澤節子 花季
葡萄酒の壜はあげ底緑の風 平井照敏 天上大風
葡萄酒の徳利にいけん杜若 正岡子規 杜若
葡萄酒の蜂の広告や一頁 正岡子規 蜂
葡萄酒はロゼでジヤケツは真赤なる 石田勝彦 雙杵
葡萄酒は赤注ぎ給へ節分会 燕雀 星野麥丘人
葡萄酒や沈む冬日は野にゆだね 橋閒石 朱明
葡萄酒を饗す葡萄を籠に盛り 平畑静塔
葡萄醸す浅間颪に抱き桶す 松崎鉄之介
葡萄青葉漣なせり遠ドナウ 林翔 和紙
葡萄食ふ一粒づつにもの言ひて 加藤秋邨
葡萄食ふ一語一語の如くにて 中村草田男
葡萄食む子に光背の没日炎ゆ 佐藤鬼房
蔭となり日向となりて葡萄熟る 伊丹三樹彦
藁屋みな櫺子窓あり葡萄垂れ 木村蕪城 寒泉
虫くひの葉にかくれたる葡萄哉 正岡子規 葡萄
虫絶えず來る小窓や葡萄棚 正岡子規 葡萄
虹立つや雫絶えたる葡萄棚 橋閒石 雪
蝶蜂の翅落ちつけず葡萄園 右城暮石 句集外 昭和三十九年
蟲飛ぶや葡萄畠の薄月夜 正岡子規 葡萄
裁ちもののごとく葡萄に鋏入れ 鷹羽狩行
裾に人一山葡萄棚覆ふ 石川桂郎 四温
西方の海を讃めたるぶだう山 岡井省二 猩々
西日さす天皇の碑に葡萄熟る 飯田蛇笏 家郷の霧
西洋の田舍に似たり葡萄園 正岡子規 葡萄
見目悪しき葡萄甘しや病臥我 高田風人子
谷わたり丘こえ葡萄棚紅葉 山口青邨
谷わたる葡萄畑や幾夕立 山口青邨
赤葡萄酒白楊林は銀の葉裏 金子兜太
路地照れり葡萄の種を吐きて恥づ 石田波郷
車窓近づきて過ぎ行く葡萄園 右城暮石 句集外 昭和三十四年
轢死者の直前葡萄透きとおる 赤尾兜子 虚像
遠ざかる葡萄畑よ掛けし椅子よ 山口誓子
鄙に住む牧師か家や葡萄棚 正岡子規 葡萄
野ぶだうに声あり暗きより帰る 佐藤鬼房
野ぶだうに日向の風や峰の茶屋 雨滴集 星野麥丘人
野葡萄にしがみつかれて竹屈す 阿波野青畝
野葡萄に鶏遊ぶ小家かな 正岡子規 野葡萄
野葡萄の花食ひ鳥となりおとうと 佐藤鬼房
野葡萄の酸つぱし顔が歪むほど 右城暮石 散歩圏
野葡萄の野をついてくる顔ひとつ 飯島晴子
野葡萄へ汽笛鳴らして帰りけり 飴山實 おりいぶ
野葡萄も引いて入れたき炭俵 百合山羽公 樂土
野葡萄や旱の影す秋篠川 佐藤鬼房
野葡萄や死ぬまで続くわが戦後 佐藤鬼房
野葡萄負へり鉱山の匂の男たち 林翔 和紙
針金に靴下干してぶだう園(磐田市、飴山実氏居二句) 細見綾子
銀婚を忘ぜし夫婦葡萄食ふ 相馬遷子 雪嶺
錆葡萄笛吹川のうす光り 百合山羽公 樂土
隕石やもぞ~として葡萄の木 岡井省二 鯨と犀
障りなく葡萄の園に雪敷けり 上田五千石 森林
雨あがる至福に満ちて葡萄の香 相馬遷子 山河
雨に剪つて一と葉つけたる葡萄かな 飯田蛇笏 山廬集
雨月なる卓にみどりのマスカツト 波多野爽波 鋪道の花
雨溟濛葡萄の房の濃むらさき 山口青邨
雪の来しアルプス天に葡萄園 山口青邨
雪の鳥飛んで行きつく葡萄の木 細見綾子
雪を敷きこれが葡萄園これが梨園 山口誓子
雪敷きて葡萄畑は田とひとつ 木村蕪城 寒泉
雲白く葡萄つめたし背きあへず 野澤節子 未明音
露とけて韋駄天走り葡萄蔓 前田普羅 飛騨紬
露の扉を処女ぞ開けぬ葡萄園 石田波郷
青き実も蔭のうちなる葡萄棚 鷹羽狩行
青ぶだうの中に一粒青錆びて 細見綾子
頤あり夕べのぶだう食うべけり 岡井省二 鯛の鯛
顛落や 宙を搦めて葡萄蔓 三橋鷹女
颱風一過頭を寄せてぶだう食む 細見綾子
馬上の少年に鶏鳴の葡萄園 飯田龍太
鳥威銀になびけり葡萄山 山口青邨
鶴すぎしさゞ波雲や葡萄吸ふ 渡邊水巴 白日
黄落も一樹百畳ぶだう園 百合山羽公 樂土
黒い手をいつぱい放ち葡萄の丘 飯島晴子
黒ぶだう垂らし鉄条銹びにけり 阿波野青畝
黒キマデニ紫深キ葡萄カナ 正岡子規 葡萄
黒葡萄山の妖気に身がくだつ 三橋鷹女
黒葡萄長者伝説はじまりぬ 飯島晴子
以上葡萄 補遺
いつとなく葡萄の国も冬の空 飯田龍太
おぼろなり彫りし葡萄は金にして 山口青邨
かの寺は甲斐善光寺葡萄摘 山口青邨
かぶりつきぬ白桃葡萄梨に 原石鼎 花影以後
くるみ大樹葡萄仕込みの倉の戸口 松崎鉄之介
くゞり摘む葡萄の雨をふりかぶり 杉田久女
この部屋も葡萄をおきて芳しき 山口青邨
こゝに立つ受難キリスト葡萄摘 山口青邨
すでに秋葡萄の葉先うら返り 野見山朱鳥 天馬
そびゆるは甲斐善光寺葡萄園 木村蕪城 一位
ともしびのなき部屋葡萄夜を光る 山口青邨
はじめ火があり百たたき葡萄の木 佐藤鬼房
はじめ響きて手車葡萄園を出づ 藤田湘子
ひとところ甘露の洩れ日葡萄園 鷹羽狩行
ぶだうの房海松のごとくなり皿に 篠原梵 年々去来の花 皿
ぶだうを皿に水露となるすこやかさ(夫誕生日) 細見綾子
ぶだう園ぶだうの熟れか日の熟れか 細見綾子
ぶだう園針金に蝶からみ遊ぶ(磐田市、飴山実氏居二句) 細見綾子
ぶだう山からからと土師笑ひけむ 岡井省二 有時
ぶだう棚波うち囲む嬰児の窓 飯田龍太
ぶだう畑びいどろの日に人は老ゆ 細見綾子
ぶだう畑枯れて地表の和むかな 細見綾子
ぶだう種吐き出してゐる一人一人 細見綾子
ぶだう食ぶ一粒づつに夜の深み 鷹羽狩行
ほしいまゝに葡萄取らしむ葡萄園 正岡子規 葡萄
むくろ鳥たちの空なり黒葡萄 飯島晴子
むらさきふかめ葡萄みづから霧まとふ 野澤節子 未明音
もらひたる葡萄を振つて別るなる 高野素十
われに母健か葡萄軒に垂れ 木村蕪城 寒泉
アスマンのワインを醸す葡萄摘む 山口青邨
イヴのもの一枚落ちて葡萄園 鷹羽狩行
キリストは葡萄の木なり秋深く 星野麥丘人 2004年
ナリ初メシ自家ノ葡萄ヲ侑メケリ 正岡子規 葡萄
ビール苦く葡萄酒渋し薔薇の花 正岡子規 薔薇
フレームは白枠葡萄青籠る 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
マスカット剪るや光りの房減らし 大野林火 潺潺集 昭和四十一年
マスカット女にばかりすすめけり 星野麥丘人 2003年
マスカツト*もぐ手に熱き息かかる 野澤節子 未明音
マスカツト白髪の父と房頒つ 野澤節子 未明音
ミネルヴァのふくろふの眼して葡萄食ふ 有馬朗人 母国
リアリズムとは何ぞ葡萄酸つぱけれ 西東三鬼
レマン湖のひかりに熟れて葡萄畑 鷹羽狩行
一房の葡萄をもつて欣々と 山口青邨
一日が終るぶだう種塵となる(丹波にて三句) 細見綾子
一樽の葡萄盗みぬ今悔いぬ 高野素十
一滴も見せずに神父葡萄吸ふ 鷹羽狩行
一窓のみ葡萄粒々光頒つ 香西照雄 対話
一籠の葡萄をさげて園主来る 山口青邨
一粒の葡萄の曇り愛しゐる 細見綾子
一粒も欠けざる葡萄選び買ふ 右城暮石 上下
一粒を欠きて葡萄の全しや 鷹羽狩行
一粒を食べて欠きたる葡萄の房 橋本多佳子
三尺の庭を掩ふや葡萄棚 正岡子規 葡萄
不器用な我が手つきかな葡萄食ふ 右城暮石 虻峠
不安なし葡萄の熟るゝ香の中に 相馬遷子 山国
主婦ぶりの子の居葡萄の房そだつ 及川貞 夕焼
乳足り子を地におき葡萄採りいそぐ 橋本多佳子
乾燥し切つて夜に入る葡萄園 右城暮石 句集外 昭和三十六年
亀甲の粒ぎつしりと黒葡萄 川端茅舎
亡父の声 亡母の顔 葡萄減らすたび 伊丹三樹彦
人の死へ緊りに緊り葡萄山 三橋鷹女
人の眼を遁れし葡萄甘味満つ 右城暮石 声と声
人息に粒くもるなり黒葡萄 能村登四郎
伽藍のせ葡萄畑はまつさをに 山口青邨
佛壇の葡萄を落す鼠哉 正岡子規 葡萄
倒まに這ひ行く兒や葡萄棚 正岡子規 葡萄
傾いて月まどかなり葡萄棚 日野草城
全山を葡萄の棚が青くする 山口誓子
冬の葡萄杭一本づつ運ぶ 廣瀬直人 帰路
処女の指葡萄摘む粉を散らさじと 伊丹三樹彦
出されたる種なしぶだう食べつゞけ 高浜年尾
初旅の靄にしづめる葡萄郷 山口青邨
初霜に横たへて積む葡萄杭 廣瀬直人
北国の短か葡萄よ汽車走る 山口誓子
南加いま葡萄を終り棉を摘む 山口青邨
南風の波遠し海獣葡萄鏡 水原秋櫻子 緑雲
原爆も種無し葡萄も人の知慧 石塚友二 磊[カイ]集
収穫や葡萄の垂るる地の明るさ 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
古きワイン窖(あなぐら)にあり葡萄熟る 山口青邨
吹キ下ス妙義ノ霧ヤ葡萄園 正岡子規 葡萄
善光寺門前葡萄摘みをはる 山口青邨
嘆く日のみな一杖の葡萄の木 秋元不死男
噴井の水遁げをり葡萄作りの留守 橋本多佳子
団体に疲れし鋏ぶだう狩 百合山羽公 樂土
垂訓ここにも チャペルヘ潜る葡萄棚 伊丹三樹彦
墓地や 葡萄畑や シャンソニエへは迷路 伊丹三樹彦
夏夜更かすわれは葡萄の木汝はその枝 下村槐太 光背
夏夜更かす吾は葡萄の木汝はその枝 下村槐太 天涯
夕さりて厨子閉められぬ葡萄の木 岡井省二 有時
夕氷葡萄酒色となりにけり 川端茅舎
大池の上七月の葡萄山 岡井省二 猩々
大演習葡萄もみづる丘のさき 山口誓子
大葡萄園に流るる水浅し 上野泰
大阪を通過して来し葡萄狩 右城暮石 上下
天を往く灯のすみやかに葡萄垂る 日野草城
天辺や腋毛ゆたかの葡萄摘み 平畑静塔
太陽を醸してかくは黒葡萄 野澤節子 八朶集以後
妙筆や葡萄の丘を抜けてゆく 飯島晴子
妻となる娘野葡萄実るらし 飴山實 おりいぶ
始めての吾が触白粉ふく葡萄 山口誓子
子規没後百年の黒葡萄かな 星野麥丘人 2002年
寂しさに葡萄の房を握りけり 日野草城
富士まとも簷の葡萄の末枯に 木村蕪城 一位
小粒ぶだう一粒一粒がたのしいとは(丹波にて三句) 細見綾子
小説を好むあるじや葡萄棚 正岡子規 葡萄
小説を讀む窓さきや葡萄棚 正岡子規 葡萄
山の日の中天に来し葡萄園 山口青邨
山の雨晴れゆくさまや葡萄園 山口青邨
山は火を噴く浅間ぶだうは濃紫 鈴木真砂女 夏帯
山上に葡萄一房房たわる 金子兜太
山垣へ葡萄瑠璃光蕩揺す 木村蕪城 寒泉
山腹に熱る葡萄をよよと吸ふ 伊丹三樹彦
山腹のいづこも暑し黒葡萄 廣瀬直人 帰路
山門に葡萄酒醸す樽を置き 山口青邨
山雨来る雲の中なり葡萄摘 水原秋櫻子 餘生
峡も奥霧深ければ葡萄よし 山口青邨
市中に生れる葡萄も内に満ち 山口誓子
師弟古り葡萄一房つまみ合ふ 岡本眸
徒ち遍路ぶだう畑に憩ひをり 岡井省二 鯛の鯛
微かなる径よりはひる葡萄園 飯島晴子
恋愛詩誦し葡萄の珠ふくむ 日野草城
悔多く足裏につきしぶだう種(丹波にて三句) 細見綾子
惜しげなく葡萄つぶさる手を染めて 松崎鉄之介
手ぐられて葡萄の紅葉うらがへし 前田普羅 飛騨紬
手にさげて一房の葡萄愛でにける 山口青邨
手を振れば臍出る童葡萄熟れ 林翔 和紙
手摩れ葡萄訓すに或る瞳かがやくごと 香西照雄 対話
持ち馴れぬ重さ信濃の葡萄籠 鷹羽狩行
持主も知らず山路の葡萄園 正岡子規 葡萄
敵手と食ふ血の厚肉と黒葡萄 能村登四郎
新葡萄皓歯も同じ乙女達 百合山羽公 寒雁
日の斑より葡萄のにほひ葡萄園 鷹羽狩行
日脚伸ぶ見えて衾のぶだう山 岡井省二 山色
早生栗の粒葡萄より彫深し 百合山羽公 寒雁
星がまたとんでぶだうのえぐみかな 岡井省二 鯛の鯛
春めくや藁堆の数置くぶだう山 岡井省二 鹿野
暦日を冬へ葡萄園人手かけず 上田五千石『琥珀』補遺
月さしてむらさき煙る葡萄かな 日野草城
月さして葡萄の房ぞ垂り揃ふ 日野草城
月を病む女の しろき掌の 葡萄 富澤赤黄男
月盈つる夜毎の葡萄含みけり 橋閒石 雪
朝の日を葉蔭に誘ひ葡萄熟る 伊丹三樹彦
朝の脈とりし医師食ふ黒葡萄 赤尾兜子 玄玄
朝刊を大きくひらき葡萄食ふ 石田波郷
木の間月葡萄剥く間も止まらず 富安風生
朱唇ぬれて葡萄うまきかいとし子よ 杉田久女
朱硯に葡萄のからの散亂す 正岡子規 葡萄
杯擧ぐるはレンブラント作葡萄祭 山口青邨
柱にも葡萄を彫りしおぼろかな 山口青邨
根を攻めし雑草も枯れ葡萄園 津田清子 礼拝
桃を得て葡萄を望む患者哉 正岡子規 葡萄
梨に飽きて葡萄を好む病哉 正岡子規 葡萄
梳る女部屋にあり葡萄熟れ 山口青邨
棒麺麭に赤葡萄酒の四日かな 燕雀 星野麥丘人
棚といふ棚もみぢして葡萄郷 鷹羽狩行
棚軽くなりて葡萄は枯を編む 上田五千石『琥珀』補遺
機関車の煤降る葡萄枯れし軒 木村蕪城 寒泉
歓迎の門は鉄骨ぶだう園 百合山羽公 樂土
止乎(やみね)止乎とをとこごゑ葡萄山 岡井省二 鯨と犀
毎日は葡萄も喰はず水藥 正岡子規 葡萄
水晶や葡萄のあとの紅葉冷え 百合山羽公 樂土
水栓に当てゝ葡萄の粒ぎつしり 右城暮石 声と声
水満てし白き器に葡萄かな 川端茅舎
汽車を吐く笹子トンネル葡萄園 山口青邨
洋梨蠢き葡萄膨らむ佐伯の眼 林翔 和紙
深入りしすぎ振りかへる葡萄山 石川桂郎 四温
湯の谿に葡萄紅葉の下に鳴る 木村蕪城 一位
瀬の音のくだくる葡萄の房々に 山口青邨
火酒を売り葡萄酒を売り峠茶屋 高野素十
灰皿に種無し葡萄吸ひし殻 右城暮石 句集外 昭和五十八年
熟葡萄濃きともしびと隔らず 廣瀬直人
爆音や青き葡萄に影うまれ 加藤秋邨
猟鳥の死に切りし眼の葡萄色 右城暮石 上下
琅*かんの簷の葡萄に寿 木村蕪城 寒泉
甕たのし葡萄の美酒がわき澄める 杉田久女
病み果ての葡萄酒ふくむ春の雪 鷲谷七菜子 黄炎
登りつゝ葡萄の棚の高さあり 清崎敏郎
百房の黒き葡萄の銘茂吉 三橋敏雄
真つ青な葡萄の房の垂れはじむ 廣瀬直人
真直に少女の視線葡萄園 飯島晴子
石狩乙女皿にもてくる黒葡萄 松崎鉄之介
秋のかぜ葡萄畑の石を吹く 三橋敏雄
秋日透くぶだう天ぷらおもしろし(山梨、放光寺) 細見綾子
秋果籠に梨も葡萄もみな古典 山口青邨
稚葡萄軒端にまろき月を得し 山口青邨
種を吐く葡萄と同じ皿の上 山口誓子
笑はざりしひと日の終り葡萄食ふ 西東三鬼
紅葉して雲より赤し葡萄園 石塚友二 光塵
紫のぶだうを置いて雨の音(清川とみ子さん居) 細見綾子
紫の玉累々と葡萄哉 正岡子規 葡萄
終の葡萄ひと房添へて患者食 石川桂郎 四温
翅おとした一塊の葡萄山 三橋鷹女
胡旋女の衣の紫に葡萄樹下 松崎鉄之介
胸の籠いまは満ち満つ葡萄摘 山口青邨
能登路なる海ぎはの丘ぶだう熟れ 細見綾子
臙脂色にすべて終りし葡萄園 右城暮石 句集外 昭和三十四年
色惜しみつつ夜明けつつ黒葡萄 廣瀬直人
芳醇の葡萄巨峰を巨砲と婆が 山口青邨
荊棘のアーチ野葡萄彩りて 川端茅舎
葉は虫にくはれなからも葡萄哉 正岡子規 葡萄
葉二枚つきし葡萄の一房を 高野素十
葉洩日に碧玉透けし葡萄かな 杉田久女
葡萄あまししづかに友の死をいかる 西東三鬼
葡萄これより紫ならんと露にぬれ 山口青邨
葡萄のせて掌といふ平らなもの 岡本眸
葡萄の下吾が身長のまま歩く 山口誓子
葡萄の房切るたび鋏の鉄にほふ 橋本多佳子
葡萄の種かたみに吐きて過去に触る 伊丹三樹彦
葡萄の美酒夜光の杯や唐の月 正岡子規 月
葡萄の色染みし手桶に山の霧 松崎鉄之介
葡萄の葉散りはじめたる雨寒し 廣瀬直人 帰路
葡萄はこぶ大きな桶のみな古び 高野素十
葡萄は風に染まり尻毛を抜かれ抜かれ 橋閒石 風景
葡萄を食ふ明るき窓を持つそれほどのしあはせに男 中川一碧樓
葡萄一粒一粒の 弾力と雲 富澤赤黄男
葡萄仕込み立ち槽木目乾き切る 松崎鉄之介
葡萄仕込む立ち槽の陰乙女の唄 松崎鉄之介
葡萄全粒 たかが一行の喰えない詩 伊丹三樹彦
葡萄口に飽かずはこびて癒えそめぬ 石田波郷
葡萄吸ふまなこみひらきみひらきて 上田五千石『風景』補遺
葡萄園とざす母屋に灯りて 山口青邨
葡萄園に夏を肥えたる京三と 西東三鬼
葡萄園に葡萄をつくり姙みてし 西東三鬼
葡萄園の夏や見えざる汽車きこえ 西東三鬼
葡萄園の女と男の童菓子を食む 西東三鬼
葡萄園ひとつの痣に日の当る 飯島晴子
葡萄園より出てきたる雨合羽 石田勝彦 秋興以後
葡萄園を来し泥靴を憚らず 安住敦
葡萄園出て碧落に身を涵す 木村蕪城 寒泉
葡萄園坂がかり来て墳墓あり 木村蕪城 寒泉
葡萄園夜は切り込むいなびかり 百合山羽公 寒雁
葡萄園山に喰ひ入り富士かすむ 臼田亜郎 亜浪句集
葡萄園手足を熱く出で来る 飯島晴子
葡萄園稔りの影を引きめぐらせ 右城暮石 句集外 昭和三十三年
葡萄園荒らせる鵯が声たてず 右城暮石 散歩圏
葡萄垂らして葡萄畑急傾斜 山口誓子
葡萄垂りダグラス月の天に浮く 日野草城
葡萄垂るあまたの房の廂より 山口青邨
葡萄垂る野鼠のため栗鼠のため 津田清子
葡萄垂る駒が初雪はるかにし 山口青邨
葡萄垂れさがる如くに教へたし 平畑静塔
葡萄垂れ天上をゆく強き櫂 飯島晴子
葡萄小屋ただよふごとく棚紅葉 山口青邨
葡萄小屋棚にしづみて炊煙を 山口青邨
葡萄山からくらくらと残暑光 廣瀬直人
葡萄山くだる天秤棒鳴りづめ 伊丹三樹彦
葡萄山では ジプシー移り 鳥威 伊丹三樹彦
葡萄山では 葡萄喰う 鴉とも仲間 伊丹三樹彦
葡萄山入道雲の照るに耐ふ 廣瀬直人
葡萄峠は向うここでは木天蓼漬ける 金子兜太
葡萄愛づその紫色をば愛づるなり 相生垣瓜人 負暄
葡萄房今を喰らひてなかばなる 岡井省二 前後
葡萄手入アルプの嶺はけふ霞む 山口青邨
葡萄投げて我儘つのる病婦かな 杉田久女
葡萄摘み神にささぐる酒つくる 大野林火 冬雁 昭和二十二年
葡萄摘み終りて支へ木の太さ 鷹羽狩行
葡萄摘む咽喉かくさず乙女たち 草間時彦 中年
葡萄摘む子の眼鼻立トルコ系 津田清子
葡萄摘む笹子峠は天気よし 山口青邨
葡萄摘始まり桶ころがして行く 山口青邨
葡萄摘日川の橋のけふにぎやか 山口青邨
葡萄摘終りし谷のうすもみじ 山口青邨
葡萄暗し顔よせ粧る夕鏡 杉田久女
葡萄曇色一斉の感涙世に絶えて 香西照雄 対話
葡萄枯れすがしや一葉のこるなき 水原秋櫻子 霜林
葡萄棚の濃き影ぶどう採りしあと 桂信子 晩春
葡萄棚ふかく麦うつ小家かな 飯田蛇笏 山廬集
葡萄棚わづかな茜にも寒し 廣瀬直人 帰路
葡萄棚一痩骨で生徒支ヘ 香西照雄 対話
葡萄棚暮れて稚き葡萄暮れ 山口青邨
葡萄棚洩るゝ日影の微塵かな 川端茅舎
葡萄棚谷わたり来てわがかぶる 山口青邨
葡萄樹下処女身に充つ酸さ甘さ 橋本多佳子
葡萄樹下奔馬のごとき洩れ日あり 佐藤鬼房
葡萄照りこほろぎ露にひゞきけり 日野草城
葡萄熟る弓張月の夜空あり 廣瀬直人
葡萄熟れとしよりの日のつどひ見す 大野林火 雪華 昭和三十三年
葡萄狩る源平藤橘借り鋏 百合山羽公 樂土
葡萄狩粒の撰り食ひ許されず 右城暮石 虻峠
葡萄畑吾等も鵙も葡萄食ぶ 山口誓子
葡萄畑高まりゆきて山門を 山口青邨
葡萄祭山深き駅賑はひて 山口青邨
葡萄種子吐きばうばうと沼に入る 佐藤鬼房
葡萄籠提げて灯までの闇ゆたか 野澤節子 花季
葡萄酒の壜はあげ底緑の風 平井照敏 天上大風
葡萄酒の徳利にいけん杜若 正岡子規 杜若
葡萄酒の蜂の広告や一頁 正岡子規 蜂
葡萄酒はロゼでジヤケツは真赤なる 石田勝彦 雙杵
葡萄酒は赤注ぎ給へ節分会 燕雀 星野麥丘人
葡萄酒や沈む冬日は野にゆだね 橋閒石 朱明
葡萄酒を饗す葡萄を籠に盛り 平畑静塔
葡萄醸す浅間颪に抱き桶す 松崎鉄之介
葡萄青葉漣なせり遠ドナウ 林翔 和紙
葡萄食ふ一粒づつにもの言ひて 加藤秋邨
葡萄食ふ一語一語の如くにて 中村草田男
葡萄食む子に光背の没日炎ゆ 佐藤鬼房
蔭となり日向となりて葡萄熟る 伊丹三樹彦
藁屋みな櫺子窓あり葡萄垂れ 木村蕪城 寒泉
虫くひの葉にかくれたる葡萄哉 正岡子規 葡萄
虫絶えず來る小窓や葡萄棚 正岡子規 葡萄
虹立つや雫絶えたる葡萄棚 橋閒石 雪
蝶蜂の翅落ちつけず葡萄園 右城暮石 句集外 昭和三十九年
蟲飛ぶや葡萄畠の薄月夜 正岡子規 葡萄
裁ちもののごとく葡萄に鋏入れ 鷹羽狩行
裾に人一山葡萄棚覆ふ 石川桂郎 四温
西方の海を讃めたるぶだう山 岡井省二 猩々
西日さす天皇の碑に葡萄熟る 飯田蛇笏 家郷の霧
西洋の田舍に似たり葡萄園 正岡子規 葡萄
見目悪しき葡萄甘しや病臥我 高田風人子
谷わたり丘こえ葡萄棚紅葉 山口青邨
谷わたる葡萄畑や幾夕立 山口青邨
赤葡萄酒白楊林は銀の葉裏 金子兜太
路地照れり葡萄の種を吐きて恥づ 石田波郷
車窓近づきて過ぎ行く葡萄園 右城暮石 句集外 昭和三十四年
轢死者の直前葡萄透きとおる 赤尾兜子 虚像
遠ざかる葡萄畑よ掛けし椅子よ 山口誓子
鄙に住む牧師か家や葡萄棚 正岡子規 葡萄
野ぶだうに声あり暗きより帰る 佐藤鬼房
野ぶだうに日向の風や峰の茶屋 雨滴集 星野麥丘人
野葡萄にしがみつかれて竹屈す 阿波野青畝
野葡萄に鶏遊ぶ小家かな 正岡子規 野葡萄
野葡萄の花食ひ鳥となりおとうと 佐藤鬼房
野葡萄の酸つぱし顔が歪むほど 右城暮石 散歩圏
野葡萄の野をついてくる顔ひとつ 飯島晴子
野葡萄へ汽笛鳴らして帰りけり 飴山實 おりいぶ
野葡萄も引いて入れたき炭俵 百合山羽公 樂土
野葡萄や旱の影す秋篠川 佐藤鬼房
野葡萄や死ぬまで続くわが戦後 佐藤鬼房
野葡萄負へり鉱山の匂の男たち 林翔 和紙
針金に靴下干してぶだう園(磐田市、飴山実氏居二句) 細見綾子
銀婚を忘ぜし夫婦葡萄食ふ 相馬遷子 雪嶺
錆葡萄笛吹川のうす光り 百合山羽公 樂土
隕石やもぞ~として葡萄の木 岡井省二 鯨と犀
障りなく葡萄の園に雪敷けり 上田五千石 森林
雨あがる至福に満ちて葡萄の香 相馬遷子 山河
雨に剪つて一と葉つけたる葡萄かな 飯田蛇笏 山廬集
雨月なる卓にみどりのマスカツト 波多野爽波 鋪道の花
雨溟濛葡萄の房の濃むらさき 山口青邨
雪の来しアルプス天に葡萄園 山口青邨
雪の鳥飛んで行きつく葡萄の木 細見綾子
雪を敷きこれが葡萄園これが梨園 山口誓子
雪敷きて葡萄畑は田とひとつ 木村蕪城 寒泉
雲白く葡萄つめたし背きあへず 野澤節子 未明音
露とけて韋駄天走り葡萄蔓 前田普羅 飛騨紬
露の扉を処女ぞ開けぬ葡萄園 石田波郷
青き実も蔭のうちなる葡萄棚 鷹羽狩行
青ぶだうの中に一粒青錆びて 細見綾子
頤あり夕べのぶだう食うべけり 岡井省二 鯛の鯛
顛落や 宙を搦めて葡萄蔓 三橋鷹女
颱風一過頭を寄せてぶだう食む 細見綾子
馬上の少年に鶏鳴の葡萄園 飯田龍太
鳥威銀になびけり葡萄山 山口青邨
鶴すぎしさゞ波雲や葡萄吸ふ 渡邊水巴 白日
黄落も一樹百畳ぶだう園 百合山羽公 樂土
黒い手をいつぱい放ち葡萄の丘 飯島晴子
黒ぶだう垂らし鉄条銹びにけり 阿波野青畝
黒キマデニ紫深キ葡萄カナ 正岡子規 葡萄
黒葡萄山の妖気に身がくだつ 三橋鷹女
黒葡萄長者伝説はじまりぬ 飯島晴子
以上
by 575fudemakase
| 2016-09-29 14:29
| 秋の季語
俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase
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▽ある季語の例句を調べる▽
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
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いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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