梟 の俳句
梟 の俳句
梟
例句を挙げる。
あだし野や松ふく風もゆく鳥も 稲垣きくの 黄 瀬
あはれ夷振り髯の八十神八十梟帥 高柳重信
ある夜来て梟啼きぬ幟竿 正岡子規
うぶすなへ桜芽をふく真中を 阿部みどり女 笹鳴
くらしにこまる人が笛ふく梅雨の日ごと 細谷源二 砂金帯
こし強き蕎麦打てば鳴く梟か 岡部名保子
ことしまた梟啼きぬわたくしの生まれるまへの若葉の闇に 前登志夫
これ着ると梟が啼くめくら縞 飯島晴子(1921-2000)
さすが鶯梟などは飛び込まず 正岡子規
さびしさの絶対量を問ふふくろふ 夏井いつき
とまり木の梟二つ寄り合はず 森田峠 逆瀬川以後
とんでもなき縞梟の胸の内 高澤良一 随笑
ぬくきもの食べ春待ちの梟鳴く 村越化石 山國抄
はきだめの榎芽をふく日和哉 正岡子規
はつ空や烟草ふく輪の中の比叡 言水
はな紙に足ふく人やかきつばた 暁台
ふくろふが啼く胞衣塚を過ぎたれば 黒田杏子
ふくろふに真紅の手毬つかれをり 加藤秋邨 怒濤
ふくろふに聞け快楽のことならば 夏井いつき
ふくろふのはばたく闇をいまも持つ 小浜杜子男
ふくろふの口ごもり鳴ける良夜かな 水原秋桜子
ふくろふの嘴垂直の寝りぐせ 武藤ともお
ふくろふの声の大きく夫の留守 矢口由起枝
ふくろふの声ふところに孤独かな 高屋窓秋
ふくろふの孵りしことを小声にて 小澤實
ふくろふの我見てあらむ木下ゆく 篠原梵 雨
ふくろふの振るつたことをいふごとし 高澤良一 さざなみやっこ
ふくろふの日永に耐へる瞼かな 和田知子
ふくろふの森をかへたる気配かな 西山小鼓子
ふくろふの滝のこだまに出て怒る 松村蒼石 雪
ふくろふの目蓋開けて吾を見る 高澤良一 さざなみやっこ
ふくろふの眉たれ蟻のいでにける 永田耕衣 傲霜
ふくろふの眼ひらく音や雪の檻 山田みづえ 忘
ふくろふはふくろふでわたしはわたしでねむれない 種田山頭火(1882-1940)
ふくろふは貞操帯を知つてゐる 中烏健二
ふくろふは鳴かでもあれや梅雨夕べ 五十崎古郷句集
ふくろふも聞耳頭巾欲る夜かな 白岩 三郎
ふくろふや並みてかがやく洋酒壜 朝倉和江
ふくろふや織子のひとり島育ち 橋本榮治 越在
ふくろふを見においでよとこどもかな 佐々木六戈 百韻反故
ほうほうと梟の夜の磨崖佛 嶋田 つる女
わが眼いつぱいに梟の目玉かな 佐野涼
オレンジの汁ほとばしり梟鳴く 鈴木有紗
ホーと呼べばふうと応へて小夜梟 寺田寅彦
一つ火を待つ梟と息合はせ 北村仁子
一灯があれば梟よりゆたか 清水径子
二方に梟の啼く月なり 北原白秋
人が人焼くや梟の淋しさで 齋藤愼爾
伸びちぢみするは<時間>の相にて島梟は樹の上に鳴く 岡部桂一郎
元朝の梟鳴くなり瑞泉寺 皆川白陀
八咫鏡梟に皺ありにけり 各務耐子
剥製と見しふくろふが啼きにけり 市場基巳
北風ふく夜ラジオは遺児に唄はする 岸風三楼 往来
南風ふく波止場に雲のたゞよへり 上村占魚 鮎
口拭ふ梟の羹旨かつし 松瀬青々
古椀うかむ池ふく風や萩のつゆ 飯田蛇笏 山廬集
地の音を聴くふくろふに遠き雷 久保田月鈴子
塩田の頃の大釜菜飯ふく 高瀬 初乗
壕ねぶたしほつほと修羅になく梟 中勘助
声かけて縞梟にそむかるる 関口加代子
夕焼の中に危ふく人の立つ 爽波
夜さくらに梟を追ふ礫かな 是宕
夜といふ名の梟と旅に出る 高山雍子
夜は梟必ずや鳴く山ざくら 西村公鳳
大きな眼二つ画けば梟哉 青木月斗
大接心梟ももの思へとや 橋本榮治 麦生
大日如来胎に梟鳴かせをり 熊谷愛子
大風呂の貝ふく迄や大根引 几董
委細面談梟の待つ夜かな 森田緑郎
姥巫女が梟抱いて通りけり 泉鏡花
子の節に戻れば月に鳴く梟 太田鴻村 穂国
山の宿梟啼いてめし遅し 高濱虚子
山番の戸の籠に飼ふ梟かな 癖三酔句集 岡本癖三酔
己を視むと梟の顔廻す 大島雄作
待宵や梟老いて飼はれたる 山岸治子
後生楽な縞ふくろふの貌のぞく 高澤良一 さざなみやっこ
我に棲む梟やときに啼く昼も 河原枇杷男 定本烏宙論
文鎮の梟の貌夜も更けた 高澤良一 随笑
新涼や円く黄色の梟の眼 阿部みどり女
旅おえてまた梟に近く寝る 宇多喜代子 象
日脚伸ぶ卓に就職情報誌 山本ふく子
明け近き梟の聲や散る櫻 内田百間
昼深し身に飼ふ梟の又啼くも 河原枇杷男
暗算の少年に棲んでいる梟 本田博子
月山のふところ深き梟か 山田みづえ
月見草梟の森すぐそこに 川端茅舎
木の股に据れる月や梟鳴く 西山泊雲 泊雲句集
杜かへて鳴く梟や午まつり 藤原如水
梟があげて満月二つあり 和知喜八 同齢
梟がふはりと闇を動かしぬ 米澤吾亦紅
梟がほうと苗代寒の宵 野田歌生
梟が啼いて安心母にあり 山尾玉藻
梟が啼きゐて桜月夜かな 草間時彦 櫻山
梟が啼く胞衣塚を過ぎたれば 黒田杏子
梟が来ては古戸に目をつける 廣江八重櫻
梟が笑ふ目つきや辻角力 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
梟が鳴けりこの世に疎外感 奥坂まや
梟されてもの憂きは断頭以後の長き耳鳴り 高柳重信
梟といへば不思議なことばかり 安田鈴彦
梟となり天の川渡りけり 加藤楸邨
梟と名告り素通りする巷 沼尻巳津子
梟にあはぬ目鏡や朧月 榎本其角
梟にかかはる秘密大事にす 鈴木節子
梟にはぐらかされて帰るのみ 高澤良一 随笑
梟に人事不省の響きあり 櫂未知子 蒙古斑
梟に似て黙す一家晝を在り 安斎櫻[カイ]子
梟に向き合へば雪降りけり 細田恵子
梟に夢を託して眠る森 村越化石
梟に待たれて月の濃くなりぬ 渡邊千枝子
梟に旅人といふ名をもらひ 上田日差子
梟に月くもり出づ奥椎葉 羽田岳水
梟に森夜ぶかくも来りつれ 竹下しづの女 [はやて]
梟に水のはげしき山の闇 鷲谷七菜子 花寂び
梟に熟睡のときのついに来ず 宇多喜代子
梟に白装束の夜の富士 有働亨
梟に見えしかわれに見えぬ死後 三田きえ子
梟に近くねむりし吉野かな 後長耕浦
梟に雪山星を加へけり 山下竹揺
梟のあはれは薄目うすなさけ 稲垣きくの 牡 丹
梟のころがせる月みづうみへ 熊谷愛子
梟のこゑ裏返る余寒かな 吉田紫乃
梟のごとく夜の雪見つめをり 三森鉄治
梟のしばらくは闇それからも闇 あざ蓉子
梟のしらみおとすな花の陰 立花北枝
梟のつらも仏のわかれかな 加舎白雄
梟のねむたき貌の吹かれける 軽部烏頭子
梟のひと声のみの古墳山 岩井治子
梟のふはりと来たり樅の月 松永鬼子坊
梟のふはりと殺気流れけり 佐々木草馬
梟のまどろむる貌昼に見し 伊藤敬子
梟のまばたきひとつ貰ひしよ 中尾寿美子
梟のむく~氷る支度哉 一茶
梟のもしやの聲を山深く 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
梟のやをら目を開く一の星 北川英子
梟の中身たましひぎつしりと 小嶋萬棒
梟の半眼ひとのけうときか 稲垣きくの 牡 丹
梟の口を開きて声もなく 岸本尚毅 舜
梟の啼いてしまへば風の音 小出秋光
梟の声まねびつつ寝に起ちぬ 福田蓼汀 山火
梟の夜も寐るらん秋の雨 古白遺稿 藤野古白
梟の夢にも船の大鏡 夏石番矢 神々のフーガ
梟の子が瞬きをくり返す 卯之木智子
梟の子を拾ひきし夫婦かな 黒田杏子 一木一草
梟の座うつりせしと大月夜 阿波野青畝
梟の愕く舌を見てしまふ 小田島亮悦
梟の憤りし貌ぞ観られゐる 加藤楸邨
梟の憤りし貌の観られたる 加藤楸邨
梟の月夜や甕の中までも 大峯あきら 鳥道
梟の木になりきつて童話村 柴田朱美
梟の来ぬ夜も長し猿の声 立花北枝
梟の次のまばたきまで待つか 糸大八
梟の次の声待ち書を膝に 千代田葛彦 旅人木
梟の正しくこちを向きにけり 如月真菜
梟の父よと呼びし一度かな 永田耕一郎
梟の目(ま)じろぎ出でぬ年木樵 芝不器男
梟の目じろぎいでぬ年木樵 芝不器男
梟の目に射られたる除夜詣 大森三保子
梟の目玉見に行く星の中 矢島渚男
梟の真に受けし貌そこにあり 高澤良一 宿好
梟の眼うごく時計の夜長かな 龍岡晋
梟の眼が熱を帯びてゐる 夏井いつき
梟の眼に冬の日午なり 子規句集 虚子・碧梧桐選
梟の空でわらふや鉢叩 妻木 松瀬青々
梟の笑顔めくなり涅槃西風 杉本雷造
梟の笛吹いて梟より淋し 矢島渚男 船のやうに
梟の置物模糊と昼寝覚 高澤良一 寒暑
梟の聲にみだれし螢かな 泉鏡花
梟の見えぬ目欲しや疎む日は 稲垣きくの 牡 丹
梟の視界は深紅かもしれぬ 杉良介
梟の谺のこもる月の杜 つじ加代子
梟の貌立て直す真暗がり 高澤良一 ぱらりとせ
梟の金色の目は雪呼ぶ目 清水緑子
梟の闇に乳の香はげしかり 森ちづる
梟の闇を点せり嵯峨豆腐 西村公鳳
梟の預かっている夜の番地 乾鉄片子
梟の顔あげてゐる夕かな 三橋敏雄 まぼろしの鱶
梟の顔の回転また回転 森田峠
梟の魔法仕掛けのこゑ出せり 高澤良一 ぱらりとせ
梟の鳴く奥能登のまくらがり 羽田 岳水
梟の鳴く月夜かな闇夜かな 青木重行
梟はぜんまいじかけかもしれず 平子 公一
梟はセロのどの弦弾けば鳴く 川代くにを
梟は子供らが寝てしまつて啼く 加倉井秋を 『胡桃』
梟は山の深息子をあやす 矢島渚男 采薇
梟は聞いてる星の爆ぜる音 齋藤愼爾
梟も大僧正も居るには居る 林朋子
梟も死なねば凍ぬ梢かな 加舎白雄
梟も面癖直せ春の雨 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
梟やけはひは風の冥かりき 小池文子 巴里蕭条
梟やたけき皇后の夜半の御所 竹下しづの女 [はやて]
梟やときにみづうみうしほの香 中田剛 珠樹
梟やわが享年を推しはかる 宇多喜代子 象
梟やハリハリ漬を噛み居れば 皆川白陀
梟や住めば都と譬ふれど 石昌子
梟や出てはもどれぬ夢の村 上田五千石 琥珀
梟や口真似すれば杜の中 寺田寅彦
梟や唾のみくだす童の目 加藤楸邨
梟や坊主頭に変身す 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
梟や夢の奈落に落ちしこと 齋藤愼爾
梟や大鋸屑に炎のとりつきて 中田剛 珠樹以後
梟や干菜で足蒸す夜頃なり 富田木歩
梟や干葉で足蒸す夜頃なり 木歩句集 富田木歩
梟や底光りせる皿秤 中田剛 珠樹以後
梟や愛を語るにこともなげ 二村典子
梟や我が書の傷みともおもひ 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
梟や振り子時計の少なくなり 皆吉司
梟や昔むかしの星隕ちて 齋藤愼爾
梟や昼とは別のひとつの世 山崎あきら
梟や時の向かうに影の国 齋藤愼爾
梟や机の下も風棲める 木下夕爾(1914-65)
梟や松の瘤には昼居ける 尾崎迷堂 孤輪
梟や柱に古ぶ火伏札 高橋悦男
梟や桐畑中の家低き 金尾梅の門 古志の歌
梟や森の寝息の漏るるごと 無田真理子
梟や樹々月光を奪ひ合ひ 田中ひなげし
梟や火箸を深く灰に挿し 江頭信子
梟や燠にちらりと炎立ち 鷲谷七菜子
梟や産後の膳を燈のもとに 中山純子 沙羅
梟や白湯一杯を寝る前に 木倉フミヱ
梟や石の鳥居に月照れば 野村喜舟 小石川
梟や竹の木偶泣く裏に啼く 吉田紫乃
梟や米櫃に母米満たす 榎本好宏
梟や聞耳立つる三千騎 正岡子規
梟や肩さむしとて寝がえるに 古沢太穂 古沢太穂句集
梟や記紀の山々とはの闇 齋藤愼爾
梟や闇のはじめは白に似て 齋藤愼爾
梟よ尾花の谷の月明に鳴きし昔を皆とりかへせ 与謝野晶子
梟よ蚊屋なき家と沙汰するな 一茶 ■文化七年庚午(四十八歳)
梟をなぶるや寺の昼狐 正岡子規
梟をみにゆき一人帰り来ず 宇多喜代子
梟を師とせるおもひなくもがな 高澤良一 随笑
梟を見にゆき一人帰り来ず 宇多喜代子
梟を飼ふ高層を生きるため 櫂未知子 貴族
梟啼くあべこべの世が近づくぞ 原徹
梟声やこなしの花もたそがれて 相馬遷子
梟好きピカソの遊びごころの壺 高澤良一 随笑
梟時計鳴くこと忘れ星月夜 室生幸太郎
梟淋し人の如くに瞑る時 原石鼎
梟笛吹かうよ深みゆく秋を 川井玉枝
梟飼ふをどり子の寝に冬の星 宮武寒々 朱卓
梟首なり西瓜提灯日数経て 坂井建
梟首を見たる絵本や秋暑し 野村喜舟
梟鳴き夜目に大きくなりし杜 長谷川かな女 花 季
梟鳴く夜や炉火細く夫を待つ 原山 はね子
梟鳴く暗い量感窯場の火 三谷昭 獣身
梟鳴て明星森にかくれけり 寺田寅彦
森林鉄道ふくろふの木を通過せり 蓬田節子
横たはる脳死のわれか梟か 芳田照代
止まらぬ月ぞ梟ほうと言ふ(高山泊り) 殿村菟絲子 『菟絲』
泥炭地晝も夜も来る飢え梟 細谷源二
泪眼をほそめて花の梟かな 飯田蛇笏 雪峡
海を知る梟またも眼をつむる 二村典子
海女部落遠かりしとや汗をふく 高木晴子 花 季
涸磧梟師は長影をひき 宇多喜代子
灰かぐらそれからおもむろに梟 千代田葛彦 旅人木
煤おとし夜は梟の顔なりや 村越化石 山國抄
熔岩山に梟鳴ける良夜哉 篠原鳳作
物体として梟の昼の顔 田波富布
玄関の梟の額にまづ年賀 加藤楸邨
病棟の十時は深夜梟鳴く 磯村翠風
目つむりて梟に顔なくなりし 山田閏子
目覚めいて師の梟の鳴くを待つ 和知喜八
真夜中に梟鳴きぬ梅雨の入 原石鼎 花影以後
石に置く灯や梟啼く音羽山 宮武寒々 朱卓
稲妻や梟の臥ところまで 李遊
稲淵の梟よ日の柞(ははそ)山 藤田あけ烏 赤松
穂麦の上行く「一梟首」速度狂 香西照雄 対話
紙衣着て梟の貌となりきりぬ 加藤楸邨
紫蘇の葉や裏ふく風の朝夕べ 飯田蛇笏 山廬集
絵蝋燭梟がまた買いにくる 澤木美子
縞ふくろふかすかにゆれてゐる如し 飯島晴子
老梟となりゆくもよし波枕 佐藤鬼房
老眼と言い梟の前にいる 澁谷道
耳に入れて来た梟の声を出す 大木石子
背後懼れざる炎日の梟の目 千代田葛彦 旅人木
胸に夜々梟が棲み呆と鳴く 三谷昭 獣身
草笛をふく川幅の老詩人 橋石 和栲
蔵座敷梟に灯を洩らすまじ 櫛原希伊子
血を盗つてたつぷり盗つて梟来 筑紫磐井 花鳥諷詠
行く年や梟に似たるたいこもち 白水郎句集 大場白水郎
襟立てて梟の領域を通る 宇多喜代子 象
谷に鳴く梟の上の夜道かな 尾崎迷堂 孤輪
辻堂に梟立ち込む月夜かな 内藤丈草
遠く梟残業の火は窓に充ち 田川飛旅子 花文字
鉄皿に葉巻のけむり梟の夜 飯田蛇笏
雪降り来るか梟の目瞑れば 橋本榮治 逆旅
頭の中に梟のゐて点滴中 赤尾恵以
顔も目もすべて梟まろまろと 森田峠
顔剃らせゐて梟のことおもふ 橋 石
顔立てて梟勿体ぶった様 高澤良一 随笑
飢はるか白ふくろふの夢の中 柚木紀子
飼はれたる梟にまた冬の夜 門奈明子
駈けて痴れて梟の眼となる魔女 河野多希女 納め髪
魔女ならず白梟のとぶおどろ 依田明倫
鴨待てば梟の鳴きはじめたる 森田峠 避暑散歩
鷹女ならず白梟のとぶおどろ 依田明倫
麦の穂に新月の梟鳴くきこゆ 冬の土宮林菫哉
黒谷の夜を鳴き交はす梟かな 五十嵐播水 播水句集
鼬罠かけて梟に啼かれけり 鈴木薊子
吸ひ込まるふくろふの目のレモン色 高澤良一 ぱらりとせ
わが眼いつぱいに梟の目玉かな 佐野涼
オレンジの汁ほとばしり梟鳴く 鈴木有紗
ホーと呼べばふうと応へて小夜梟 寺田寅彦
一つ火を待つ梟と息合はせ 北村仁子
一灯があれば梟よりゆたか 清水径子
二方に梟の啼く月なり 北原白秋
人が人焼くや梟の淋しさで 齋藤愼爾
伸びちぢみするは<時間>の相にて島梟は樹の上に鳴く 岡部桂一郎
元朝の梟鳴くなり瑞泉寺 皆川白陀
八咫鏡梟に皺ありにけり 各務耐子
剥製と見しふくろふが啼きにけり 市場基巳
北風ふく夜ラジオは遺児に唄はする 岸風三楼 往来
南風ふく波止場に雲のたゞよへり 上村占魚 鮎
口拭ふ梟の羹旨かつし 松瀬青々
古椀うかむ池ふく風や萩のつゆ 飯田蛇笏 山廬集
地の音を聴くふくろふに遠き雷 久保田月鈴子
塩田の頃の大釜菜飯ふく 高瀬 初乗
壕ねぶたしほつほと修羅になく梟 中勘助
声かけて縞梟にそむかるる 関口加代子
夕焼の中に危ふく人の立つ 爽波
夜さくらに梟を追ふ礫かな 是宕
夜といふ名の梟と旅に出る 高山雍子
夜は梟必ずや鳴く山ざくら 西村公鳳
大きな眼二つ画けば梟哉 青木月斗
大接心梟ももの思へとや 橋本榮治 麦生
大日如来胎に梟鳴かせをり 熊谷愛子
大風呂の貝ふく迄や大根引 几董
委細面談梟の待つ夜かな 森田緑郎
姥巫女が梟抱いて通りけり 泉鏡花
子の節に戻れば月に鳴く梟 太田鴻村 穂国
山の宿梟啼いてめし遅し 高濱虚子
山番の戸の籠に飼ふ梟かな 癖三酔句集 岡本癖三酔
己を視むと梟の顔廻す 大島雄作
待宵や梟老いて飼はれたる 山岸治子
後生楽な縞ふくろふの貌のぞく 高澤良一 さざなみやっこ
我に棲む梟やときに啼く昼も 河原枇杷男 定本烏宙論
文鎮の梟の貌夜も更けた 高澤良一 随笑
新涼や円く黄色の梟の眼 阿部みどり女
旅おえてまた梟に近く寝る 宇多喜代子 象
日脚伸ぶ卓に就職情報誌 山本ふく子
明け近き梟の聲や散る櫻 内田百間
昼深し身に飼ふ梟の又啼くも 河原枇杷男
暗算の少年に棲んでいる梟 本田博子
月山のふところ深き梟か 山田みづえ
月見草梟の森すぐそこに 川端茅舎
木の股に据れる月や梟鳴く 西山泊雲 泊雲句集
杜かへて鳴く梟や午まつり 藤原如水
梟があげて満月二つあり 和知喜八 同齢
梟がふはりと闇を動かしぬ 米澤吾亦紅
梟がほうと苗代寒の宵 野田歌生
梟が啼いて安心母にあり 山尾玉藻
梟が啼きゐて桜月夜かな 草間時彦 櫻山
梟が啼く胞衣塚を過ぎたれば 黒田杏子
梟が来ては古戸に目をつける 廣江八重櫻
梟が笑ふ目つきや辻角力 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
梟が鳴けりこの世に疎外感 奥坂まや
梟されてもの憂きは断頭以後の長き耳鳴り 高柳重信
梟といへば不思議なことばかり 安田鈴彦
梟となり天の川渡りけり 加藤楸邨
梟と名告り素通りする巷 沼尻巳津子
梟にあはぬ目鏡や朧月 榎本其角
梟にかかはる秘密大事にす 鈴木節子
梟にはぐらかされて帰るのみ 高澤良一 随笑
梟に人事不省の響きあり 櫂未知子 蒙古斑
梟に似て黙す一家晝を在り 安斎櫻[カイ]子
梟に向き合へば雪降りけり 細田恵子
梟に夢を託して眠る森 村越化石
梟に待たれて月の濃くなりぬ 渡邊千枝子
梟に旅人といふ名をもらひ 上田日差子
梟に月くもり出づ奥椎葉 羽田岳水
梟に森夜ぶかくも来りつれ 竹下しづの女 [はやて]
梟に水のはげしき山の闇 鷲谷七菜子 花寂び
梟に熟睡のときのついに来ず 宇多喜代子
梟に白装束の夜の富士 有働亨
梟に見えしかわれに見えぬ死後 三田きえ子
梟に近くねむりし吉野かな 後長耕浦
梟に雪山星を加へけり 山下竹揺
梟のあはれは薄目うすなさけ 稲垣きくの 牡 丹
梟のころがせる月みづうみへ 熊谷愛子
梟のこゑ裏返る余寒かな 吉田紫乃
梟のごとく夜の雪見つめをり 三森鉄治
梟のしばらくは闇それからも闇 あざ蓉子
梟のしらみおとすな花の陰 立花北枝
梟のつらも仏のわかれかな 加舎白雄
梟のねむたき貌の吹かれける 軽部烏頭子
梟のひと声のみの古墳山 岩井治子
梟のふはりと来たり樅の月 松永鬼子坊
梟のふはりと殺気流れけり 佐々木草馬
梟のまどろむる貌昼に見し 伊藤敬子
梟のまばたきひとつ貰ひしよ 中尾寿美子
梟のむく~氷る支度哉 一茶
梟のもしやの聲を山深く 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
梟のやをら目を開く一の星 北川英子
梟の中身たましひぎつしりと 小嶋萬棒
梟の半眼ひとのけうときか 稲垣きくの 牡 丹
梟の口を開きて声もなく 岸本尚毅 舜
梟の啼いてしまへば風の音 小出秋光
梟の声まねびつつ寝に起ちぬ 福田蓼汀 山火
梟の夜も寐るらん秋の雨 古白遺稿 藤野古白
梟の夢にも船の大鏡 夏石番矢 神々のフーガ
梟の子が瞬きをくり返す 卯之木智子
梟の子を拾ひきし夫婦かな 黒田杏子 一木一草
梟の座うつりせしと大月夜 阿波野青畝
梟の愕く舌を見てしまふ 小田島亮悦
梟の憤りし貌ぞ観られゐる 加藤楸邨
梟の憤りし貌の観られたる 加藤楸邨
梟の月夜や甕の中までも 大峯あきら 鳥道
梟の木になりきつて童話村 柴田朱美
梟の来ぬ夜も長し猿の声 立花北枝
梟の次のまばたきまで待つか 糸大八
梟の次の声待ち書を膝に 千代田葛彦 旅人木
梟の正しくこちを向きにけり 如月真菜
梟の父よと呼びし一度かな 永田耕一郎
梟の目(ま)じろぎ出でぬ年木樵 芝不器男
梟の目じろぎいでぬ年木樵 芝不器男
梟の目に射られたる除夜詣 大森三保子
梟の目玉見に行く星の中 矢島渚男
梟の真に受けし貌そこにあり 高澤良一 宿好
梟の眼うごく時計の夜長かな 龍岡晋
梟の眼が熱を帯びてゐる 夏井いつき
梟の眼に冬の日午なり 子規句集 虚子・碧梧桐選
梟の空でわらふや鉢叩 妻木 松瀬青々
梟の笑顔めくなり涅槃西風 杉本雷造
梟の笛吹いて梟より淋し 矢島渚男 船のやうに
梟の置物模糊と昼寝覚 高澤良一 寒暑
梟の聲にみだれし螢かな 泉鏡花
梟の見えぬ目欲しや疎む日は 稲垣きくの 牡 丹
梟の視界は深紅かもしれぬ 杉良介
梟の谺のこもる月の杜 つじ加代子
梟の貌立て直す真暗がり 高澤良一 ぱらりとせ
梟の金色の目は雪呼ぶ目 清水緑子
梟の闇に乳の香はげしかり 森ちづる
梟の闇を点せり嵯峨豆腐 西村公鳳
梟の預かっている夜の番地 乾鉄片子
梟の顔あげてゐる夕かな 三橋敏雄 まぼろしの鱶
梟の顔の回転また回転 森田峠
梟の魔法仕掛けのこゑ出せり 高澤良一 ぱらりとせ
梟の鳴く奥能登のまくらがり 羽田 岳水
梟の鳴く月夜かな闇夜かな 青木重行
梟はぜんまいじかけかもしれず 平子 公一
梟はセロのどの弦弾けば鳴く 川代くにを
梟は子供らが寝てしまつて啼く 加倉井秋を 『胡桃』
梟は山の深息子をあやす 矢島渚男 采薇
梟は聞いてる星の爆ぜる音 齋藤愼爾
梟も大僧正も居るには居る 林朋子
梟も死なねば凍ぬ梢かな 加舎白雄
梟も面癖直せ春の雨 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
梟やけはひは風の冥かりき 小池文子 巴里蕭条
梟やたけき皇后の夜半の御所 竹下しづの女 [はやて]
梟やときにみづうみうしほの香 中田剛 珠樹
梟やわが享年を推しはかる 宇多喜代子 象
梟やハリハリ漬を噛み居れば 皆川白陀
梟や住めば都と譬ふれど 石昌子
梟や出てはもどれぬ夢の村 上田五千石 琥珀
梟や口真似すれば杜の中 寺田寅彦
梟や唾のみくだす童の目 加藤楸邨
梟や坊主頭に変身す 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
梟や夢の奈落に落ちしこと 齋藤愼爾
梟や大鋸屑に炎のとりつきて 中田剛 珠樹以後
梟や干菜で足蒸す夜頃なり 富田木歩
梟や干葉で足蒸す夜頃なり 木歩句集 富田木歩
梟や底光りせる皿秤 中田剛 珠樹以後
梟や愛を語るにこともなげ 二村典子
梟や我が書の傷みともおもひ 佐々木六戈 百韻反故 冬の皺
梟や振り子時計の少なくなり 皆吉司
梟や昔むかしの星隕ちて 齋藤愼爾
梟や昼とは別のひとつの世 山崎あきら
梟や時の向かうに影の国 齋藤愼爾
梟や机の下も風棲める 木下夕爾(1914-65)
梟や松の瘤には昼居ける 尾崎迷堂 孤輪
梟や柱に古ぶ火伏札 高橋悦男
梟や桐畑中の家低き 金尾梅の門 古志の歌
梟や森の寝息の漏るるごと 無田真理子
梟や樹々月光を奪ひ合ひ 田中ひなげし
梟や火箸を深く灰に挿し 江頭信子
梟や燠にちらりと炎立ち 鷲谷七菜子
梟や産後の膳を燈のもとに 中山純子 沙羅
梟や白湯一杯を寝る前に 木倉フミヱ
梟や石の鳥居に月照れば 野村喜舟 小石川
梟や竹の木偶泣く裏に啼く 吉田紫乃
梟や米櫃に母米満たす 榎本好宏
梟や聞耳立つる三千騎 正岡子規
梟や肩さむしとて寝がえるに 古沢太穂 古沢太穂句集
梟や記紀の山々とはの闇 齋藤愼爾
梟や闇のはじめは白に似て 齋藤愼爾
梟よ尾花の谷の月明に鳴きし昔を皆とりかへせ 与謝野晶子
梟よ蚊屋なき家と沙汰するな 一茶 ■文化七年庚午(四十八歳)
梟をなぶるや寺の昼狐 正岡子規
梟をみにゆき一人帰り来ず 宇多喜代子
梟を師とせるおもひなくもがな 高澤良一 随笑
梟を見にゆき一人帰り来ず 宇多喜代子
梟を飼ふ高層を生きるため 櫂未知子 貴族
梟啼くあべこべの世が近づくぞ 原徹
梟声やこなしの花もたそがれて 相馬遷子
梟好きピカソの遊びごころの壺 高澤良一 随笑
梟時計鳴くこと忘れ星月夜 室生幸太郎
梟淋し人の如くに瞑る時 原石鼎
梟笛吹かうよ深みゆく秋を 川井玉枝
梟飼ふをどり子の寝に冬の星 宮武寒々 朱卓
梟首なり西瓜提灯日数経て 坂井建
梟首を見たる絵本や秋暑し 野村喜舟
梟鳴き夜目に大きくなりし杜 長谷川かな女 花 季
梟鳴く夜や炉火細く夫を待つ 原山 はね子
梟鳴く暗い量感窯場の火 三谷昭 獣身
梟鳴て明星森にかくれけり 寺田寅彦
森林鉄道ふくろふの木を通過せり 蓬田節子
横たはる脳死のわれか梟か 芳田照代
止まらぬ月ぞ梟ほうと言ふ(高山泊り) 殿村菟絲子 『菟絲』
泥炭地晝も夜も来る飢え梟 細谷源二
泪眼をほそめて花の梟かな 飯田蛇笏 雪峡
海を知る梟またも眼をつむる 二村典子
海女部落遠かりしとや汗をふく 高木晴子 花 季
涸磧梟師は長影をひき 宇多喜代子
灰かぐらそれからおもむろに梟 千代田葛彦 旅人木
煤おとし夜は梟の顔なりや 村越化石 山國抄
熔岩山に梟鳴ける良夜哉 篠原鳳作
物体として梟の昼の顔 田波富布
玄関の梟の額にまづ年賀 加藤楸邨
病棟の十時は深夜梟鳴く 磯村翠風
目つむりて梟に顔なくなりし 山田閏子
目覚めいて師の梟の鳴くを待つ 和知喜八
真夜中に梟鳴きぬ梅雨の入 原石鼎 花影以後
石に置く灯や梟啼く音羽山 宮武寒々 朱卓
稲妻や梟の臥ところまで 李遊
稲淵の梟よ日の柞(ははそ)山 藤田あけ烏 赤松
穂麦の上行く「一梟首」速度狂 香西照雄 対話
紙衣着て梟の貌となりきりぬ 加藤楸邨
紫蘇の葉や裏ふく風の朝夕べ 飯田蛇笏 山廬集
絵蝋燭梟がまた買いにくる 澤木美子
縞ふくろふかすかにゆれてゐる如し 飯島晴子
老梟となりゆくもよし波枕 佐藤鬼房
老眼と言い梟の前にいる 澁谷道
耳に入れて来た梟の声を出す 大木石子
背後懼れざる炎日の梟の目 千代田葛彦 旅人木
胸に夜々梟が棲み呆と鳴く 三谷昭 獣身
草笛をふく川幅の老詩人 橋石 和栲
蔵座敷梟に灯を洩らすまじ 櫛原希伊子
血を盗つてたつぷり盗つて梟来 筑紫磐井 花鳥諷詠
行く年や梟に似たるたいこもち 白水郎句集 大場白水郎
襟立てて梟の領域を通る 宇多喜代子 象
谷に鳴く梟の上の夜道かな 尾崎迷堂 孤輪
辻堂に梟立ち込む月夜かな 内藤丈草
遠く梟残業の火は窓に充ち 田川飛旅子 花文字
鉄皿に葉巻のけむり梟の夜 飯田蛇笏
雪降り来るか梟の目瞑れば 橋本榮治 逆旅
頭の中に梟のゐて点滴中 赤尾恵以
顔も目もすべて梟まろまろと 森田峠
顔剃らせゐて梟のことおもふ 橋 石
顔立てて梟勿体ぶった様 高澤良一 随笑
飢はるか白ふくろふの夢の中 柚木紀子
飼はれたる梟にまた冬の夜 門奈明子
駈けて痴れて梟の眼となる魔女 河野多希女 納め髪
魔女ならず白梟のとぶおどろ 依田明倫
鴨待てば梟の鳴きはじめたる 森田峠 避暑散歩
鷹女ならず白梟のとぶおどろ 依田明倫
麦の穂に新月の梟鳴くきこゆ 冬の土宮林菫哉
黒谷の夜を鳴き交はす梟かな 五十嵐播水 播水句集
鼬罠かけて梟に啼かれけり 鈴木薊子
吸ひ込まるふくろふの目のレモン色 高澤良一 ぱらりとせ
もんもんのもんを破れず縞梟 高澤良一 石鏡
梟 補遺
「ほう」の外梟を呼ぶ声知らず 加藤秋邨
ある夜来て梟啼きぬ幟竿 正岡子規 幟
かたむいた月のふくろふとして 種田山頭火
これ着ると梟が啼くめくら縞 飯島晴子
さすが鶯梟などは飛び込まず 正岡子規 鶯
ふくろふないてここが私の生れたところ 種田山頭火 自画像 落穂集
ふくろふに真紅の手毬つかれをり 加藤秋邨
ふくろふのくごもり鳴ける良夜かな 水原秋櫻子 葛飾
ふくろふの声ふところに孤独かな 高屋窓秋
ふくろふの我見てあらむ木下ゆく 篠原梵 年々去来の花 雨
ふくろふの滝のこだまに出て怒る 松村蒼石 雪
ふくろふの眉たれ蟻のいでにける 永田耕衣
ふくろふの眼ひらく音や雪の檻 山田みづえ 忘
ふくろふはふくろふでわたしはわたしでねむれない 種田山頭火
ふくろふやまだ片付かぬ植木市 水原秋櫻子 餘生
ふくろふや音してゐたる山の晝 岡井省二 前後
ほう~と梟近き門火かな 川端茅舎
むくつけき梟とたゞ歩きをり 岡井省二 猩々
ミネルヴァのふくろふの眼して葡萄食ふ 有馬朗人 母国
二月なほ梟に縞あるごとく 岡井省二 猩々
会へば物呉るる漢は梟か 藤田湘子 てんてん
八十梟帥(やそたける)ならずや焚火囲めるは 津田清子
墨磨つて梟の夜と知らざりき 岡井省二 前後
夜に入りて近き尿や梟なく 日野草城
夜ひとつ福を惜しめと梟は 岡井省二 大日
夢は西ふくろふの木は北にあり 藤田湘子 てんてん
天守閣上閣下の群梟秋晴るる 松本たかし
天灼けて縞梟を抱きをり 岡井省二 猩々
婆々いはく梟なけば秋の雨 正岡子規 秋雨
寝そびれて梟の声をきくや夜々 日野草城
寶貝梟貝もありぬべし 岡井省二 猩々
岩苔暗く梟山伏ゆきし崖 赤尾兜子 歳華集
必ずよ袖のごとくに梟は 岡井省二 猩々
恋のふくろふの逢へたらしい声も更けた 種田山頭火 自画像 落穂集
恋猫のふくろふ貌の難儀かな 藤田湘子 てんてん
明易き梟に覚め庭を掃く 川端茅舎
春浅し昼梟のひと声も 石田勝彦 百千
月見草梟の森すぐそこに 川端茅舎
朱欒切る梟帥(たける)を斬るに似たらむか 相生垣瓜人 負暄
梟が啼きゐて桜月夜かな 草間時彦 櫻山
梟が啼けば荒野へ還るわれ 藤田湘子 神楽
梟が宿つてをるぞ蛸薬師 岡井省二 大日
梟が鳴き白川に砂流る 岡井省二 鯨と犀
梟となり天の川渡りけり 加藤秋邨
梟とむささび北条余類かな 百合山羽公 樂土以後
梟にはつきり横を向かれたる 後藤比奈夫
梟にものいふ夢をみたりけり 星野麥丘人 2001年
梟に拳を皓く握りけり 飯島晴子
梟に水のはげしき山の闇 鷲谷七菜子 花寂び
梟に誘はれ犬の明け易き 川端茅舎
梟に雪ふり出して縞目なす 森澄雄
梟のくまぐまからだなりにけり 岡井省二 鯛の鯛
梟のこゑつゞきをる龍樹かな 岡井省二 鯛の鯛
梟のをかしきところまともかな 岡井省二 猩々
梟の喰ひ残したる白鼠 岡井省二 鯨と犀
梟の嘴なきまでにふくらめる 鷹羽狩行
梟の声まねびつつ寝に起ちぬ 福田蓼汀 山火
梟の夕べ薄目に露の山 鷲谷七菜子 花寂び
梟の夜の呟きを鳴くといふ 林翔
梟の夜を日についで都かな 岡井省二 鯨と犀
梟の座うつりせしと大月夜 阿波野青畝
梟の影花にあり燈を消さむ 水原秋櫻子 蘆雁以後
梟の忘れものかも昼の月 石田勝彦 秋興以後
梟の思ひかけずよ枯木立 正岡子規 枯木
梟の性持ちはじむ老い芒 平井照敏
梟の憤りし貌ぞ観られゐる 加藤秋邨
梟の来る木がありて来ぬ梟 山口青邨
梟の棲む幹つやつやと母負いたし 橋閒石 風景
梟の目の節穴の冬がすみ 橋閒石俳句選集 『和栲』以後(Ⅱ)
梟の目もまた物を言ひにけり 後藤比奈夫
梟の目実にしづかなものを見る 加藤秋邨
梟の目玉除けばみな凍てぬ 加藤秋邨
梟の眼に冬の日午なり 正岡子規 冬の日
梟の眼の金色に冬来たり 右城暮石 句集外 昭和十二年
梟の眼玉も見えず杉の月 正岡子規 月
梟の瞳の宙にある梅雨の闇 飯田龍太
梟の瞼つむりてまなこ生く 森澄雄
梟の答へがかへりくる枕 能村登四郎
梟の糞から~と朝の山 岡井省二 鯨と犀
梟の糞の乾びも初昔 岡井省二 大日
梟の縮まり膨らみ日は暮るる 三橋敏雄
梟の耳がなければ虚空かな 岡井省二 鯨と犀
梟の胴長なりし年賀かな 岡井省二 鯛の鯛
梟の面てとなりぬ山櫻 岡井省二 猩々
梟の顔あげてゐる夕かな 三橋敏雄
梟の顔あげてゐる夕ベかな 三橋敏雄
梟は大顎となり朝にあり 岡井省二 猩々
梟は張目すれどもの見えず 阿波野青畝
梟は手毬にもたれ寝まりをる 岡井省二 大日
梟は月面われは月明で 岡井省二 鯨と犀
梟は果報な鳥よけふの月 正岡子規 今日の月
梟は連理の枝に鞠となる 阿波野青畝
梟もなついてくれば児の如し 阿波野青畝
梟やひとつ火の気は誰が煙草 三橋敏雄
梟やオリオン星座あきらかに 石橋秀野
梟や出てはもどれぬ夢の村 上田五千石 琥珀
梟や唾のみくだす童の目 加藤秋邨
梟や杉見あぐれば十日月 正岡子規 梟
梟や燠にちらりと炎立ち 鷲谷七菜子 一盞
梟や男はキヤーと叫ばざる 三橋敏雄
梟や百万遍の数珠の音 亭午 星野麥丘人
梟や聞耳立つる三千騎 正岡子規 梟
梟や肩さむしとて寝がえるに 古沢太穂 古沢太穂句集
梟や花火のあとの薄曇り 正岡子規 花火
梟や霜林に出し旭が真赤 森澄雄
梟よいづれさみしき旅中吟 上田五千石 風景
梟よいのち乞ひなどもはやせぬ 佐藤鬼房
梟より涼しき細目湖底の魚 加藤秋邨
梟をなぶるや寺の晝狐 正岡子規 梟
梟を土に置き瞳をまたたかす 右城暮石 句集外 昭和十二年
梟を愛語とも聴く独りの夜 林翔
梟を抱かせてもらふ六勝寺 岡井省二 鯨と犀
梟を衣としたる寒九かな 岡井省二 鯛の鯛
梟声上手に真似る顔さびし 能村登四郎
梟棚もてなされゐるごとくにて 岡井省二 前後
梟淋し人の如くに瞑る時 原石鼎 花影
梟面の人黙りいる麦秋愛(は)し 金子兜太
梟鳴き汽車待つしじまの女の背 伊丹三樹彦
梟鳴くや月に背いて長尿 日野草城
梟鳴く素通り運になれて来て 能村登四郎
櫻山梟の子が落ちてゐて 岡井省二 鯨と犀
泪眼をほそめて花の梟かな 飯田蛇笏 雪峡
炎天がかすむと穴掘梟は 岡井省二 鯨と犀
炎天がすは梟として存す 岡井省二 鯨と犀
炎天より降り来たりし籠梟 岡井省二 大日
玄関の梟の額にまづ年賀 加藤秋邨
白ふくろふ羽総振ひして呉れし 飯島晴子
眞晝いま梟に眉あるならば 岡井省二 前後
真夜中に梟鳴きぬ梅雨の入 原石鼎 花影以後
瞼閉ぢ梟おもふ顔したり 加藤秋邨
神の座の祖母片盲ひ梟森 佐藤鬼房
秋の小鳥梟の目を笑ひけり 正岡子規 秋の鳥
穂麦の上行く「一梟首」速度狂 香西照雄 対話
空身にてふくろふの山昼とほる 藤田湘子 てんてん
竝び立つ幣に宿るか梟神 能村登四郎
紅き日の巣の枝を切る梟雄か 佐藤鬼房
縞ふくろふかすかにゆれてゐる如し 飯島晴子
縞ふくろふのことほぎとなりゐたり 岡井省二 猩々
老梟となりゆくもよし波枕 佐藤鬼房
詰のこと必ず知れる梟よ 岡井省二 猩々
透き間なく咲いて真晝の櫻かな 佐藤鬼房
野芹摘む一梟雄を瞼にし 佐藤鬼房
鉄皿に葉巻のけむり梟の夜 飯田蛇笏 家郷の霧
雲霧とゐるか鞍馬の梟は 藤田湘子 神楽
顔剃らせいて梟のこと思う 橋閒石 微光
首回らす梟はよそならず 岡井省二 猩々
梟 続補遺
こがらしや日の梟の地に羽うつ 高桑闌更
はるのよのうそひめ恋ふる梟歟 加藤曉台
ふくろふの声不精さよおぼろ月 露川
ふくろふの猶ふくるゝや青あらし 諷竹
ふくろふの腹立なほる霙かな 寥松
ふくろふも立のく花の夜明哉 浪化
下露やこれは夜啼梟の毛 鈴木道彦
夜は花に梟啼てひがし山 成田蒼虬
月花の梟と申道心者 支考
杜宇あてた明石もすごし梟 卯七
梟とたづねかねてやわたり鳥 支考
梟にあはぬ目鏡や朧月 其角
梟にせしめらるゝなほとゝぎす 諷竹
梟の*瞼にこづむ雪びさし りん女
梟のしらみおとすな花の陰 北枝
梟のつらも仏のわかれかな 加舎白雄
梟の声とがりけりおぼろ月 野紅
梟の宵のたくみや今朝の雪 中川乙由
梟の小坊主おどすあふちかな 釣壺
梟の来ぬ夜も長し猿の声 北枝
梟の梢をかえて啼夜かな 長翠
梟の烏を追ふやさつきやみ 三宅嘯山
梟の目ざまし時か冬木立 車庸
梟の看坊がほや冬の梅 露川
梟の腹肥シてや冬ごもり 露川
梟の興ざめがほやかへり花 諷竹
梟の身は火うちなき紙子かな 馬場存義
梟の身をまかせたるしぐれかな 夏目成美
梟の鳴やむ岨の若菜かな 曲翠
梟は琵琶ひく鳥や朧月 中川乙由
梟も柏かれての体たらく 鈴木道彦
梟も死なねば凍ぬ梢かな 加舎白雄
梟やおのれ闇くて見ぬ日影 其角
梟やぬく~として春の皃 乙訓
梟や夜の花見のだまり物 浪化
梟や夜ひと目見出す星むかえ 壺中
梟や月でつりあふみそさゞい 野坡
梟よ松なき市の夕あらし 其角
梟を布袋のやうにわたり鳥 中川乙由
梟一羽鏡に寒し年ごもり 支考
梟啼て跡もさらなる青田哉 桃隣
梟啼て鮠の背を見る浅瀬哉 斜嶺
辻堂に梟立込月夜かな 丈草
鉢たゝき昼は梟にころも哉 支考
以上
by 575fudemakase
| 2017-01-23 03:37
| 冬の季語
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