種物 の俳句
種物 の俳句
種物
例句を挙げる。
くらがりに声のしなやか種物屋 伊藤敬子
ながき日や俥とめさす種物屋 軽部烏帽子 [しどみ]の花
九官鳥のゐる種物屋さがしけり 銀漢 吉岡禅寺洞
二三人陽中に覗く種物屋 赤尾恵似
二三段並べてそれが種物屋 藤田湘子 黒
今もある屯田通り種物屋 佐々木あきら
先代の顔となりたる種物屋 能村研三
光る海遠くに見えて種物屋 土井三乙
天領の街道沿ひの種物屋 大峯あきら 鳥道
女房の心得顔なり種物屋 吉岡禅寺洞
女房の江戸絵顔なり種物屋 銀漢 吉岡禅寺洞
川筋に父の世よりの種物屋 伊藤白潮
市役所に用あり種物屋も覗く 和田智子
店ぢゆうが抽斗ばかり種物屋 疋田英子
忘れじの種物捜す嫗かな 服部雨亭
手の切れるやうな紙幣あり種物屋 大木あまり 火球
日盛や誰も応へぬ種物屋 藤田あけ烏 赤松
根尾谷のみどりがかりし種物屋 猪俣千代子 秘 色
物日なる石段狭し種物屋 西山泊雲 泊雲句集
狭き町の両側に在り種物屋 高浜虚子
看板の何も出て居ず種物屋 加倉井秋を
種物の事方丈と挨拶す 露月句集 石井露月
種物の袋の中の袋かな 橋田憲明
種物の袋の花絵なぜ大きい 岡田史乃
種物屋して古里にをると聞く 豊原月右
種物屋稲荷の鳥居寄進せり 米沢吾亦紅 童顔
種物屋隠元豆はうすぼこり 高野素十
空に蒔く種もあるべし種物屋 大串章
茄子苗を雨に打たせて種物屋 大野宵村
藍問屋廃れし町の種物屋 上崎暮潮
通り抜け自由にさせぬ種物屋 森田峠 三角屋根
道路より土間低うして種物屋 玉川鴦鳴
開け放つ五間間口や種物屋 塩沢はじめ
鴨川の岐れてよりの種物屋 金久美智子
初午や物種売に日の当る 蕪村
庭に出て物種蒔くや病み上り 正岡子規
抽斗のみな軽く開き物種屋 小沢初江
物種に社翁の雨や霽れに鳧 安藤橡面坊
物種のおろしどころへ指の穴 中里二庵
物種の袋ぬらしつ春のあめ 蕪村 春之部 ■ 西の京にばけもの栖て、久しくあれ果たる家有けり、今は其のさたなくて
物種の袋は函に小昼餉の茶 石塚友二 光塵
物種をにぎれば生命(いのち)ひしめける 日野草城(1901-56)
物種を入れたる瓢爐邊にあり 高濱虚子
物種を皿に入れまくら辺に置きて 安東次男 裏山
観世音を見て物種を買ひにけり 雑草 長谷川零餘子
もの種や八十八夜はまだ遠し 高野素十
あをあをとあかあかと絵や種袋 浜 秋邨
いつまでも種であれよと種袋 池田澄子
うっすらと空気をふくみ種袋 津川絵理子
ひとつづつ振つて見て買ふ種袋 石丸しずえ
ぼんやりと次男の耳よ種袋 宮坂静生 山開
みえねども指紋あまたや種袋 小宅容義
みちのくは道に棚出し種袋 飴山實 辛酉小雪
一ト年の鶏頭まきつや種袋 妻木 松瀬青々
亡きひとの字でありけり種袋 南 美智子
人参の絵が濡れてゐる種袋 阿部菁女
佛壇のひきだしからも種袋 廣江八重櫻
働きし大きな手なり種袋 今井つる女
出さざりし文のごとくに種袋 片山由美子 水精 以後
戀をはるもうからつぽの種袋 田中裕明 先生から手紙
手拭ひを縫ひ合せたる種袋 本宮哲郎
抽出の奥より去年の種袋 松井百枝
掃きよする土にはりつき種袋 軽部烏帽子 [しどみ]の花
文机に三日置きたる種袋 関戸靖子
春寒や壁にかかりて種袋 田中冬二 行人
月照らしテラスのうへの種袋 多田裕計
母人の仮名書うれし種袋 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
流れ入りて水廻り居り種袋 温亭句集 篠原温亭
父よりの古封筒を種袋 坪井洋司
種袋あげし濁りのすぐ澄めり 小川 木橋
種袋がさがさ音のして安堵 坂口夢塔
種袋よりこぼれたる常闇よ 久保純夫 熊野集 以後
種袋一つ一つに母の文字 大政光子
種袋切つていのちを与へけり 石川文子
種袋匂ひの花も一つ欲し 村越化石
種袋大切に置く畦まぶし 金子星零子
種袋大口あけて陽炎へり 前田普羅
種袋太陽を描き如露を描き 後藤夜半 底紅
種袋抑ふる石に蝌蚪のよる 中戸川朝人
種袋振つて臓器の音がする 小内春邑子
種袋振り回しつゝ喋々と 高澤良一 ぱらりとせ
種袋振ればはるかに花のこゑ 高橋悦男
種袋振れば吾にも聞かせよと 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
種袋昭和の音と違ひけり 脇本星浪
種袋母のひらがなおもしろし 井出寒子
種袋沈めり泡を離さずに 宮田正和
種袋海あをあをと膨れ来る 野中亮介
種袋神仏一処の棚に吊り 小川斉東語
種袋秩父の谷のまだ冥く 小原樗才
種袋花の命を手に乗せて 渕沢信子
種袋蒔く前夜まで書に挾む 桜井博道
種袋負うて人来る与謝峠 茂里正治
種袋負ひ絶壁の下をゆく 飯田龍太
種袋風もてあそぶ庭のうち 山口青邨
縁先や後の月夜の種袋 清原枴童 枴童句集
耳に先づ聞かせて嬉し種袋 村越化石
花の如花種袋土に挿し 上野泰 春潮
鏡の向うに送りとどけし種袋 杉野一博
種売に彼岸の御堂峨々とたつ 百合山羽公 寒雁
種売に狐日和のおもしろし 古舘曹人 樹下石上
種売のとり出す種の多からず 中村汀女
種売のをりをりみやる雲の沖 三田きえ子
紅花の種売りをらぬ尾花沢 飴山實 辛酉小雪
あこがるる夕顔白花種子の冷え きくちつねこ
いづかたへ消えたるひかり花種蒔き 齋藤愼爾
うす紙に花種嬰の深ねむり 長谷川双魚 風形
三鬼忌の風に花種とばされぬ 石田あき子 見舞籠
丘にそよがせん花種これとこれ 依田明倫
住みつくか否か花種蒔きにけり 殿村菟絲子 『旅雁』
供華とする花種ばかり買うて来し 日比大石
出奔の花種混じりをるといふ 櫂未知子 蒙古斑
夢に彩ありぬ花種蒔きし夜の 中村明子
夢多くまた花種を買ひ過ぎし 清水忠彦
大騒ぎして花種を少し蒔く 種市清子
天津日の下に花種蒔きにけり 塩谷渓石
夫が袂の花種いくつ蒔きにけり 石田あき子 見舞籠
妻しづかなれば花種蒔きてをり 東 義人
妻の喪にありて花種蒔きにけり 平松百合男
嫁ぐ子と花種選りぬ春立つ日 伊藤京子
子に蒔かせたる花種の名を忘れ 安住敦
子は娶り妻は花種蒔いてをり 松村武雄
寂びしさに終の花種海へ蒔く 渡辺恭子
山國や花種を掌に御所言葉 田中英子
抽斗に花種ある夜の微熱かな 齊藤慎爾
数珠の手に花種を蒔く尼ぜかな 飯田蛇笏
札立てゝ花種蒔くや箱の中 温亭句集 篠原温亭
母と花種天窓が飛翔さそふ 友岡子郷 遠方
父の亡きふるさとなれば花種蒔く 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
瞬にして播く花種の飛びどほし 斎藤玄 雁道
箱蒔きの花種うんともすんともや 高澤良一 ぱらりとせ
綿菓子と花種子を買ひ一人なり 櫛原希伊子
花の如花種袋土に挿し 上野泰 春潮
花種のかそけき音を送りけり 都筑智子
花種の心許なき軽さ買ふ 岡矢 笥
花種の明るき音を振りにけり 小島健 木の実
花種の残りを水に流しけり 菅原鬨也
花種の袋をえらび夢えらぶ 円谷よし子
花種の袋をチョッキのポケットに 加倉井秋を 午後の窓
花種も売って門前そば屋かな 星野高士
花種をけふの余白に蒔かむとす 和田祥子
花種をまきて庭畑靄だちぬ 飯田蛇笏 春蘭
花種をゴム風船に託しけり 太田土男
花種を指にちやほやさせて蒔く 檜紀代
花種を播きたるむこう巫女のこと 久保純夫 水渉記
花種を蒔いてみつめるただの土 桂信子 黄 瀬
花種を蒔きしその夜は饒舌に 吉川康子
花種を蒔きたる土のすぐ馴染む 加倉井秋を 『胡桃』
花種を蒔きつつ色々なこと思ふ 加倉井秋を 午後の窓
花種を蒔きてこころは沖にあり 鷲谷七菜子
花種を蒔くことだけは自分でやる 加倉井秋を
花種を蒔くこともなく忌に籠る 平山 愛子
花種を蒔くや余命に真向ひて 朝倉和江
花種を蒔くや垣外柩ゆく 村越化石
花種を蒔くや妬心を宥むべく 塩原英子
花種を蒔くや指さきまで女身 櫛原希伊子
花種を蒔く低き鉢高き鉢 森田峠
花種を蒔く古妻や児等左右 西山泊雲 泊雲句集
花種を蒔く幼年の土くれに 対馬康子 吾亦紅
花種を蒔こか天皇誕生日 青葉三角草
花種を郵便局で貰ひけり 角川春樹
花種子を播くは別離の近きゆゑ 佐藤鬼房
花種子を蒔きたぷたぷと濁る家 永末恵子 発色
花種用喇叭印の燐寸箱 池田澄子
花種蒔いて人を追ひぬくことはせず 鈴木真砂女
花種蒔いて老母の月日ふくらます 中村明子
花種蒔くみんな出て来い出て来いと 森川恭衣
花種蒔く呟きて世を忘れつゝ 堀口星眠
花種蒔く土の眠りを覚ましつつ 古賀まり子 緑の野
花種蒔く母よ小遣い呉れし手つき 林 昌華
花種買い蓄財すこし減らしけり 武田和郎
花種買ふ運河かがよひをりしかば 石田波郷
蒔かざりし花種も萌え喪の家族 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
蒔くための花種を置く机かな 大峯あきら
霜柱花種を差し上げてをり 太田土男
風よりもかろき花種蒔きにけり 若林一童
飛ぶやうな花種を蒔く回復期 朝倉和江
種袋裏に記しある発芽率 高澤良一 暮津
アサガオと鉛筆書きの種袋 高澤良一 暮津
ぐりぐりの夕顔の種蒔きにけり 高澤良一 ももすずめ
蒔きものを烏ほじくる正受庵 高澤良一 燕音
コスモスの種を蒔きをり細目して 高澤良一 石鏡
朝顔の種蒔く臍を下にして 高澤良一 ももすずめ
ながき日や俥とめさす種物屋 軽部烏帽子 [しどみ]の花
九官鳥のゐる種物屋さがしけり 銀漢 吉岡禅寺洞
二三人陽中に覗く種物屋 赤尾恵似
二三段並べてそれが種物屋 藤田湘子 黒
今もある屯田通り種物屋 佐々木あきら
先代の顔となりたる種物屋 能村研三
光る海遠くに見えて種物屋 土井三乙
天領の街道沿ひの種物屋 大峯あきら 鳥道
女房の心得顔なり種物屋 吉岡禅寺洞
女房の江戸絵顔なり種物屋 銀漢 吉岡禅寺洞
川筋に父の世よりの種物屋 伊藤白潮
市役所に用あり種物屋も覗く 和田智子
店ぢゆうが抽斗ばかり種物屋 疋田英子
忘れじの種物捜す嫗かな 服部雨亭
手の切れるやうな紙幣あり種物屋 大木あまり 火球
日盛や誰も応へぬ種物屋 藤田あけ烏 赤松
根尾谷のみどりがかりし種物屋 猪俣千代子 秘 色
物日なる石段狭し種物屋 西山泊雲 泊雲句集
狭き町の両側に在り種物屋 高浜虚子
看板の何も出て居ず種物屋 加倉井秋を
種物の事方丈と挨拶す 露月句集 石井露月
種物の袋の中の袋かな 橋田憲明
種物の袋の花絵なぜ大きい 岡田史乃
種物屋して古里にをると聞く 豊原月右
種物屋稲荷の鳥居寄進せり 米沢吾亦紅 童顔
種物屋隠元豆はうすぼこり 高野素十
空に蒔く種もあるべし種物屋 大串章
茄子苗を雨に打たせて種物屋 大野宵村
藍問屋廃れし町の種物屋 上崎暮潮
通り抜け自由にさせぬ種物屋 森田峠 三角屋根
道路より土間低うして種物屋 玉川鴦鳴
開け放つ五間間口や種物屋 塩沢はじめ
鴨川の岐れてよりの種物屋 金久美智子
初午や物種売に日の当る 蕪村
庭に出て物種蒔くや病み上り 正岡子規
抽斗のみな軽く開き物種屋 小沢初江
物種に社翁の雨や霽れに鳧 安藤橡面坊
物種のおろしどころへ指の穴 中里二庵
物種の袋ぬらしつ春のあめ 蕪村 春之部 ■ 西の京にばけもの栖て、久しくあれ果たる家有けり、今は其のさたなくて
物種の袋は函に小昼餉の茶 石塚友二 光塵
物種をにぎれば生命(いのち)ひしめける 日野草城(1901-56)
物種を入れたる瓢爐邊にあり 高濱虚子
物種を皿に入れまくら辺に置きて 安東次男 裏山
観世音を見て物種を買ひにけり 雑草 長谷川零餘子
もの種や八十八夜はまだ遠し 高野素十
あをあをとあかあかと絵や種袋 浜 秋邨
いつまでも種であれよと種袋 池田澄子
うっすらと空気をふくみ種袋 津川絵理子
ひとつづつ振つて見て買ふ種袋 石丸しずえ
ぼんやりと次男の耳よ種袋 宮坂静生 山開
みえねども指紋あまたや種袋 小宅容義
みちのくは道に棚出し種袋 飴山實 辛酉小雪
一ト年の鶏頭まきつや種袋 妻木 松瀬青々
亡きひとの字でありけり種袋 南 美智子
人参の絵が濡れてゐる種袋 阿部菁女
佛壇のひきだしからも種袋 廣江八重櫻
働きし大きな手なり種袋 今井つる女
出さざりし文のごとくに種袋 片山由美子 水精 以後
戀をはるもうからつぽの種袋 田中裕明 先生から手紙
手拭ひを縫ひ合せたる種袋 本宮哲郎
抽出の奥より去年の種袋 松井百枝
掃きよする土にはりつき種袋 軽部烏帽子 [しどみ]の花
文机に三日置きたる種袋 関戸靖子
春寒や壁にかかりて種袋 田中冬二 行人
月照らしテラスのうへの種袋 多田裕計
母人の仮名書うれし種袋 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
流れ入りて水廻り居り種袋 温亭句集 篠原温亭
父よりの古封筒を種袋 坪井洋司
種袋あげし濁りのすぐ澄めり 小川 木橋
種袋がさがさ音のして安堵 坂口夢塔
種袋よりこぼれたる常闇よ 久保純夫 熊野集 以後
種袋一つ一つに母の文字 大政光子
種袋切つていのちを与へけり 石川文子
種袋匂ひの花も一つ欲し 村越化石
種袋大切に置く畦まぶし 金子星零子
種袋大口あけて陽炎へり 前田普羅
種袋太陽を描き如露を描き 後藤夜半 底紅
種袋抑ふる石に蝌蚪のよる 中戸川朝人
種袋振つて臓器の音がする 小内春邑子
種袋振り回しつゝ喋々と 高澤良一 ぱらりとせ
種袋振ればはるかに花のこゑ 高橋悦男
種袋振れば吾にも聞かせよと 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
種袋昭和の音と違ひけり 脇本星浪
種袋母のひらがなおもしろし 井出寒子
種袋沈めり泡を離さずに 宮田正和
種袋海あをあをと膨れ来る 野中亮介
種袋神仏一処の棚に吊り 小川斉東語
種袋秩父の谷のまだ冥く 小原樗才
種袋花の命を手に乗せて 渕沢信子
種袋蒔く前夜まで書に挾む 桜井博道
種袋負うて人来る与謝峠 茂里正治
種袋負ひ絶壁の下をゆく 飯田龍太
種袋風もてあそぶ庭のうち 山口青邨
縁先や後の月夜の種袋 清原枴童 枴童句集
耳に先づ聞かせて嬉し種袋 村越化石
花の如花種袋土に挿し 上野泰 春潮
鏡の向うに送りとどけし種袋 杉野一博
種売に彼岸の御堂峨々とたつ 百合山羽公 寒雁
種売に狐日和のおもしろし 古舘曹人 樹下石上
種売のとり出す種の多からず 中村汀女
種売のをりをりみやる雲の沖 三田きえ子
紅花の種売りをらぬ尾花沢 飴山實 辛酉小雪
あこがるる夕顔白花種子の冷え きくちつねこ
いづかたへ消えたるひかり花種蒔き 齋藤愼爾
うす紙に花種嬰の深ねむり 長谷川双魚 風形
三鬼忌の風に花種とばされぬ 石田あき子 見舞籠
丘にそよがせん花種これとこれ 依田明倫
住みつくか否か花種蒔きにけり 殿村菟絲子 『旅雁』
供華とする花種ばかり買うて来し 日比大石
出奔の花種混じりをるといふ 櫂未知子 蒙古斑
夢に彩ありぬ花種蒔きし夜の 中村明子
夢多くまた花種を買ひ過ぎし 清水忠彦
大騒ぎして花種を少し蒔く 種市清子
天津日の下に花種蒔きにけり 塩谷渓石
夫が袂の花種いくつ蒔きにけり 石田あき子 見舞籠
妻しづかなれば花種蒔きてをり 東 義人
妻の喪にありて花種蒔きにけり 平松百合男
嫁ぐ子と花種選りぬ春立つ日 伊藤京子
子に蒔かせたる花種の名を忘れ 安住敦
子は娶り妻は花種蒔いてをり 松村武雄
寂びしさに終の花種海へ蒔く 渡辺恭子
山國や花種を掌に御所言葉 田中英子
抽斗に花種ある夜の微熱かな 齊藤慎爾
数珠の手に花種を蒔く尼ぜかな 飯田蛇笏
札立てゝ花種蒔くや箱の中 温亭句集 篠原温亭
母と花種天窓が飛翔さそふ 友岡子郷 遠方
父の亡きふるさとなれば花種蒔く 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
瞬にして播く花種の飛びどほし 斎藤玄 雁道
箱蒔きの花種うんともすんともや 高澤良一 ぱらりとせ
綿菓子と花種子を買ひ一人なり 櫛原希伊子
花の如花種袋土に挿し 上野泰 春潮
花種のかそけき音を送りけり 都筑智子
花種の心許なき軽さ買ふ 岡矢 笥
花種の明るき音を振りにけり 小島健 木の実
花種の残りを水に流しけり 菅原鬨也
花種の袋をえらび夢えらぶ 円谷よし子
花種の袋をチョッキのポケットに 加倉井秋を 午後の窓
花種も売って門前そば屋かな 星野高士
花種をけふの余白に蒔かむとす 和田祥子
花種をまきて庭畑靄だちぬ 飯田蛇笏 春蘭
花種をゴム風船に託しけり 太田土男
花種を指にちやほやさせて蒔く 檜紀代
花種を播きたるむこう巫女のこと 久保純夫 水渉記
花種を蒔いてみつめるただの土 桂信子 黄 瀬
花種を蒔きしその夜は饒舌に 吉川康子
花種を蒔きたる土のすぐ馴染む 加倉井秋を 『胡桃』
花種を蒔きつつ色々なこと思ふ 加倉井秋を 午後の窓
花種を蒔きてこころは沖にあり 鷲谷七菜子
花種を蒔くことだけは自分でやる 加倉井秋を
花種を蒔くこともなく忌に籠る 平山 愛子
花種を蒔くや余命に真向ひて 朝倉和江
花種を蒔くや垣外柩ゆく 村越化石
花種を蒔くや妬心を宥むべく 塩原英子
花種を蒔くや指さきまで女身 櫛原希伊子
花種を蒔く低き鉢高き鉢 森田峠
花種を蒔く古妻や児等左右 西山泊雲 泊雲句集
花種を蒔く幼年の土くれに 対馬康子 吾亦紅
花種を蒔こか天皇誕生日 青葉三角草
花種を郵便局で貰ひけり 角川春樹
花種子を播くは別離の近きゆゑ 佐藤鬼房
花種子を蒔きたぷたぷと濁る家 永末恵子 発色
花種用喇叭印の燐寸箱 池田澄子
花種蒔いて人を追ひぬくことはせず 鈴木真砂女
花種蒔いて老母の月日ふくらます 中村明子
花種蒔くみんな出て来い出て来いと 森川恭衣
花種蒔く呟きて世を忘れつゝ 堀口星眠
花種蒔く土の眠りを覚ましつつ 古賀まり子 緑の野
花種蒔く母よ小遣い呉れし手つき 林 昌華
花種買い蓄財すこし減らしけり 武田和郎
花種買ふ運河かがよひをりしかば 石田波郷
蒔かざりし花種も萌え喪の家族 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
蒔くための花種を置く机かな 大峯あきら
霜柱花種を差し上げてをり 太田土男
風よりもかろき花種蒔きにけり 若林一童
飛ぶやうな花種を蒔く回復期 朝倉和江
種袋裏に記しある発芽率 高澤良一 暮津
アサガオと鉛筆書きの種袋 高澤良一 暮津
ぐりぐりの夕顔の種蒔きにけり 高澤良一 ももすずめ
蒔きものを烏ほじくる正受庵 高澤良一 燕音
コスモスの種を蒔きをり細目して 高澤良一 石鏡
朝顔の種蒔く臍を下にして 高澤良一 ももすずめ
種物 補遺
おしろいの濃花種花青楼趾 能村登四郎
そのつるや西瓜上戸の花の種 沾圃
ツルゲエネフよりこぼれ落ち花の種 有馬朗人 知命
ほどこしの手つき花種まく手つき 鷹羽狩行
ぼろ市や瓢箪の種売る男 有馬朗人 立志
みちのくは道に棚出し種袋 飴山實
もの種や八十八夜まだ遠し 高野素十
もの種を買ひぬ燕ひるがへり 高野素十
一つ二つもの種まいて旅立たん 高野素十
一面の楔形文字や花の種 有馬朗人 知命
宇陀大納言の種売る店の花八ッ手 松崎鉄之介
夏深し懐紙につつむ花の種 飯田龍太
火の山に真向ひて播く花の種 有馬朗人 天為
花の種いつくしまむに重さなし 鷹羽狩行 てんてん
花の種こぼしこぼして山尖る 橋閒石 荒栲
花の種蒔けばその夜の夢に花 鷹羽狩行
花の種心もとなく蒔きこぼす 山口青邨
花の種土のうすさにはや見えね 中村汀女
花の如花種袋土に挿し 上野泰 春潮
花種と乾酪と雨の日曜日 藤田湘子 てんてん
花種の袋そのまま二三日 燕雀 星野麥丘人
花種の袋の文字のアメリカ語 亭午 星野麥丘人
花種の大方を蒔き余したる 伊藤白潮
花種をまきて庭畑靄だちぬ 飯田蛇笏 春蘭
花種を蒔かぬといへば蔑まれ 燕雀 星野麥丘人
花種を蒔きてこころは沖にあり 鷲谷七菜子 一盞
花種を蒔きなどもしつ書かでけり 石塚友二 曠日
花種を蒔き常の日を新たにす 岡本眸
花種を蒔くに天意をうかがへる 上田五千石『天路』補遺
花種を蒔く気のそぞろうすれゆき 上田五千石『琥珀』補遺
花種を蒔く子にイカル来て鳴けり 飯田龍太
花種蒔いて人を追ひぬくことはせず 鈴木真砂女
花種蒔く土の中より土の声 鷹羽狩行
絵の上に墨の太文字種袋 清崎敏郎
乾きたる音たしかめて種袋 右城暮石 句集外 昭和四十二年
間口大事奥行大事種物屋 後藤比奈夫
幾粒か花種のこる種袋 能村登四郎
旧約の書にはさみある種袋 有馬朗人 天為
鏡餅あり種袋どさとあり 飯田龍太
月花の種や難波津浅香山 望月宋屋
紅花の種売りをらぬ尾花沢 飴山實
此風雅世にひろまれと花の種 惟然
山萩や神女のこぼす花の種 尚白
山畑や物種栽る五月晴 正岡子規 五月晴
子に蒔かせたる花種の名を忘れ 安住敦
志学以後抽斗に秘め花の種 有馬朗人 立志
種袋とも種蒔きし袋とも 後藤比奈夫
種袋太陽を描き如露を描き 後藤夜半 底紅
種袋沈みて少し窮屈に 波多野爽波
種袋東林院と読まれたる 後藤比奈夫
種袋負ひ絶壁の下をゆく 飯田龍太
種袋風もてあそぶ庭のうち 山口青邨
種売に狐日和のおもしろし 古舘曹人 樹下石上
種売に彼岸の御堂峨々とたつ 百合山羽公 寒雁
種売のとり出す種の多からず 中村汀女
種売れる店の小暗し雁木道 松崎鉄之介
種物の歯形にくさよ霜ふくべ 北鯤
種物をひさぐ地べたに膝立てて 清崎敏郎
種物を取つてしまへる園淋し 山口青邨
種物屋にて種子買はず話込む 能村登四郎
種物屋らしくも土間の使はるる 後藤比奈夫
種物屋出て方角に迷ひけり 能村登四郎
秋風やしかと零るる花の種 松村蒼石 寒鶯抄
春泥や遠く来て買ふ花の種 水原秋櫻子 餘生
春来たる色ぱちぱちと種物屋 山田みづえ まるめろ
瞬にして播く花種の飛びどほし 斎藤玄 雁道
初霜やきのふ蒔きたる紅粉花の種 山口青邨
振つてみて音それぞれの種袋 伊藤白潮
針箱や日輪秘めし花の種 有馬朗人 知命
人の手は指と掌花種蒔く 岡本眸
数珠の手に花種を蒔く尼ぜかな 飯田蛇笏 家郷の霧
雀色どきの山音種袋 岡井省二 鹿野
川筋に父の世よりの種物屋 伊藤白潮
痩畑や物種栽うる五月晴 正岡子規 五月晴
庭に出でゝ物種蒔くや病上り 正岡子規 種蒔
天平の寺の護符あり種物屋 藤田湘子 神楽
冬眠をさめし地にたつ種袋 飯田蛇笏 家郷の霧
斑雪嶺の翳ればかげる種物屋 岡本眸
苗札やいつ間違へし花の種 中村苑子
物種のいづれ小さき光蒔く 上田五千石 風景
物種のひとつびとつのいのちかな 日野草城
物種の器に気さすひがん哉 三宅嘯山
物種の袋は函に小昼餉の茶 石塚友二 光塵
物種よ小松にまじるけしの花 曲翠
物種を蒔く吝嗇の指づかひ 上田五千石『琥珀』補遺
物種蒔くとうに潮どき失ひて 上田五千石『琥珀』補遺
物種蒔く常住の土得たるかに 上田五千石 風景
墓近く花種袋夜明けゐる 飯田龍太
宝石にまぎれ何時より花の種 有馬朗人 知命
本庄や秋のはじめの種物屋 星野麥丘人
明日は知らず菜の花種となる確さ 岸田稚魚 雁渡し
蕣や千代萬代の花の種 正岡子規 朝顔
by 575fudemakase
| 2017-04-30 03:17
| 春の季語
俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase
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▽ある季語の例句を調べる▽
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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