郊外

郊外

寒き野を都に入や葱売 几董 (郊外)

郊外に酒屋の蔵や冬木だち 黒柳召波

郊外に出て一月の風の富士 高澤良一 寒暑

郊外の家居に冬めく山野あり 飯田蛇笏 家郷の霧

残る雪鶴郊外に下りて居り 河東碧梧桐

酒が醸す詩ありき心の郊外に 楠本憲吉

秋光るこの郊外を知りたる日 京極杞陽 くくたち上巻

静なるかしの木はらや冬の月 蕪村 (郊外)

天渺々笑ひたくなりし花野かな 水巴 (大震直後より半歳大阪郊外豊中村の延寿荘に仮寓す(のうち))

麦秋の郊外に出づ人を悼み 山口青邨

麦秋の痩せ敦煌の郊外に 稲畑汀子

椋鳥撒いて北京郊外もやひけり 松崎鉄之介

緑の森ぬらして雨の移転以後(横浜郊外・大倉山へ移転二句) 河野南畦 『風の岬』

啼きつれて群れ眞鶴の頬の紅(薩摩出水郊外荒崎にて) 上村占魚 『萩山』

螢籠電車郊外を走りをり 大野林火 早桃 太白集

驢馬鳴いて北京郊外昼寝どき 大野林火 月魄集 昭和五十五年

以上