地下街

地下街

オカリナの少年雪の夜の地下街 石寒太 翔

ガラス箱のあおい魚族となる地下街 飯塚明子

はつなつの地下街にゐて酢の匂ひ 石寒太 炎環

ひしめく地下街 どの貌にも目鼻がない 杉原明雄

ぼんたんを抱え地下街迷路なり 遠藤郁子

一駅分地下街歩く無月かな 能村研三

夏の昼地下街に来て魚になる 谷口亜岐夫

肩の上の穂絮や地下街にてわかる 加藤秋邨

食べものの地下街子規忌過ぎゆくも 秋元不死男

赤い海星焦げる日傘の舞う地下街 久保純夫

地下街で稲荷あつらえ桜狩 高澤良一 石鏡

地下街にミニ丼食ふべ一葉忌 元池静子

地下街にメロンの匂ふ植樹祭 秋元不死男

地下街に円柱あまたあり真夏 皆吉司

地下街に降り来て春の一日果つ 右城暮石 句集外 昭和四十二年

地下街に十字路のあり社会鍋 藤陵紫泡

地下街に川の流れて虫売らる 杉本寛

地下街に鮮魚鮮菜文化の日 鷹羽狩行

地下街に灯る小祠一の午 三谷蘭の秋

地下街に来ると答へしクリスマス 右城暮石 散歩圏

地下街に冷ゆる両脚縛し眠る 右城暮石 句集外 昭和三十一年

地下街の禽鋪ことなく秋出水 宮武寒々 朱卓

地下街の香を抜けきたり秋の暮 八木林之介 青霞集

地下街の大人の迷子 桜草 伊丹三樹彦

地下街の柱の孤独去年今年 戸板幽詩

地下街の灯を出て来たる春の昼 右城暮石 句集外 昭和三十八年

地下街の日暮混み合ふ青目刺 神崎 忠

地下街の没日の色の金魚かな 秋元倫

地下街の列柱五月来たりけり 奥坂 まや

地下街は何處へも通ず松の内 高澤良一 寒暑

地下街へ続く階段蝿生まる 橋高辰男

地下街も海も混沌春の雪 長谷川櫂 古志

地下街も旅をゆくみち秋の暮 皆吉爽雨 泉声

地下街やはしりの牡蠣の身をゆるめ 宮津昭彦

地下街を行く水のあり晶子の忌 松原良介

地下街を出て雨降れり冬の雨 右城暮石 句集外 昭和二十三年

地下街を出て炎天に翅音あり 奥坂まや

地下街を出て木枯に突き当たる 岸原清行

地下街を地下に落葉の街を行く 金箱戈止夫

地下街路青ざめはてし苺売り 金子兜太

奈良県になき地下街よクリスマス 右城暮石 上下

閉店の地下街に止む造り滝 小松世史子

母に売られて白い地下街飾る私 阿部完市 絵本の空

以上