街角

街角

あまたの街角街娼争い蜜柑乾く 金子兜太

うすやみに街角月を得し師走 飯田蛇笏 白嶽

キリコの「街角」青葦原の直中も 金子兜太

つばめ帰り街角の夕日ひそけしや 内藤吐天 鳴海抄

トレネが ダミアが唄った街角 誰かが待つ 伊丹三樹彦

マリヤなりしや冬の星座の街角に 三谷昭 獣身

医師探す知らぬ街角冴返る 加藤知世子 黄 炎

一と声もなく街角に金魚売る 石山佇牛

鰯雲いづこの街角のたそがれにも 有馬朗人 母国拾遺

炎天の街角に犬立ちもどる 原田種茅 径

夏の街角馬臭と曲がるときかなし 北原志満子

夏の街角馬臭と曲るときかなし 北原志満子

解氷期街角の暾におどろきぬ 飯田蛇笏 旅ゆく諷詠

街角が海サルビアに風遊び 坂根白風子 『彩雲』

街角といふ寂しさも露けき夜 高橋謙次郎

街角にかならず山や柊挿す 古舘曹人 砂の音

街角にサンタ来てゐる神の留守 大塚とめ子

街角にたつわたしも 失業のかげをひいて 吉岡禅寺洞

街角にもの言ふ鸚鵡と眸め合ふ寂しく充ちてわが私生活 島田修二

街角に金魚一途の小皺ため 古舘曹人 能登の蛙

街角に撃滅の字句巨き春 伊丹三樹彦

街角に触れて消えたる夜番かな 石田波郷

街角に地図ひろげ持ちあたゝかし 美馬風史

街角に冬の日溜りありにけり 稲畑汀子

街角に病室ありてひと睡る 渡邊白泉

街角のいま静かなる立夏かな 千葉皓史

街角のどこからも見ゆ炎暑の城 廣瀬直人 帰路

街角の花屋に咲ける吾亦紅 富樫美津子

街角の靴音白とわかるまで 菅原さだを

街角の三月十日老婆立つ 西東三鬼

街角の産院なれば寒月浴び 中村草田男

街角の秋めく風につまづきぬ 福海一幹

街角の少し暗きに踊り痴れ 稲畑汀子

街角の喪の家に来て酔ひはじむ 佐藤鬼房

街角の灯のまばゆけれ寒念仏 加藤三七子

街角の風を売るなり風車 三好達治

街角は人待つところ柳散る 鈴木真砂女 都鳥

曲っても曲っても街角の梅雨 橋閒石

死で終る童話街角夕焼けり 石寒太 翔

柴負うて街角まがる妻ならずや 佐藤鬼房

秋雨の此の街角も往きなれて 高木晴子

春の夜の街角に会ふ役者かな 松崎鉄之介

春風はどの街角も曲り来る 三須虹秋

初夏の街角に立つ鹿のごと 小檜山繁子

初荷衆街角の風に声あげた 原田種茅 径

初秋風いわき平の街角に 細見綾子

女には悪友あらず街角で別れて雲雀のテリーヌ食ぶ 青井史

身一つの旅街角にさくらんぼ 菖蒲あや

人の汗見る鏡中の街角で 対馬康子 吾亦紅

石鹸玉蘆花公園の街角に 田川飛旅子

雪の香や街角に出し花売女 飯田蛇笏 雪峡

千人針職工の妻街角に 細谷源二 鐵

霜夜の街角誰か待ち伏せ居るごとし 宮坂静生 青胡桃

他人のような妻と街角のあじさい色 橋閒石 風景

冬日貴し日暮れて蒼暗の街角街路 金子兜太

冬木立この街角も窓も水色 金子兜太

独りで曲る白い街角パリー祭 飯田孤石

日ぐれの保護色になり ひそと街角 湖光子

日脚伸ぶ古妻待つと街角に 草間時彦 中年

白鳥を追う城門も無き街角 対馬康子 吾亦紅

晩夏の街角衝動的に石がある 高野ムツオ 陽炎の家

晩夏の毛布空とぶ街角浮浪者蒸れ 金子兜太

夜霧濃し街角一つ違へしや 山崎ひさを

立ち話弾む街角秋日和 由井節子

蜩の街角はあり人は亡し 加藤秋邨

以上