巷
巷
*けもの篇引けば巷の秋の暮 原裕 『青垣』
うららなる春の巷に昼火事の小さきけむりの靡かふを見つ 扇畑忠雄
カンナ立ち廃兵いまだ巷にあり 長谷川かな女 花寂び
キヤンプ来て蜑が巷にたちまじる 佐野まもる 海郷
キリストに向日葵あげて巷の中 山口青邨
コーヒー奢って 刑事立ち去る 夏至の巷 伊丹三樹彦
ここに来て秋深きこと巷にも 高浜年尾
ここ過ぎて火の巷あり鬼薊 河原枇杷男
コップ酒秋行く巷のどこか見て 加倉井秋を
この秋や巷に住みて座敷掃く 原石鼎 花影
サルヴィヤの白き花群巷より死界へ通ふ陥穽隠す 富小路禎子
スキー買へば巷にも雪降りそめつ 堀口星眠 営巣期
ちる花のひとひらに大き巷あり 瀧春一 菜園
チンドン屋縁蔭いざ発つ巷入り 中村草田男
つとめ日々鉾の巷にかゝはらず 岸風三楼 往来
また巷路つばくら低きとまりやう 中村草田男
ミサの鐘すでに朝寝の巷より 阿波野青畝
愛の羽根巷は雨となりにけり 風間啓二
遺作展階降りて長き巷抜け 三橋敏雄
一片の鮭なき巷寒雷す 渡辺水巴
一片の鮭無き巷寒雷す 渡邊水巴
一穢なき巷の空を鳥渡る 生嶋千代女
烏貝日の没る方を巷としぬ 加倉井秋を
駅を出て巷の秋や暮れきらぬ 植松紫魚
円山を出て行く年の巷かな 比叡 野村泊月
炎昼や死を伝へむと巷に佇つ 角川源義
煙あがるなにか恰しき巷あるき 伊丹三樹彦
燕去り藻ぬけの殻の巷かな 波多野爽波 鋪道の花
縁談や巷に風邪の猛りつつ 中村草田男
苑の鴨鳴くや巷の音かすか 山口青邨
黄塵に巷消えさり受難節 井沢正江
黄塵の巷の日向人を見ず 川島彷徨子 榛の木
黄落の巷学童と騎馬巡査 松崎鉄之介
何もって本復巷は花の頃 高澤良一 鳩信
夏雲高し壕舎巷をつくりゆく 大野林火 早桃 太白集
火曜日の巷をかへり家に汗す 三橋敏雄
花いばらどこの巷も夕茜 『定本石橋秀野句文集』
花見舟とほき巷の風が見ゆ 大野林火
花見船とほき巷の風が見ゆ 大野林火 海門 昭和七年以前
花冷のゆるび来たりぬ夜の巷 岩田由美 夏安
牙白き巷漂う水母人 橋閒石
牙白き巷漂よう水母人 橋閒石 風景
海の風巷にこもり雪しまく 川島彷徨子 榛の木
外套を眼ぐや巷のなげかひも 軽部烏頭子
崖ふちの穂草巷の雨あがる 木村蕪城 寒泉
街路樹の夏や巷には木だまなし 米沢吾亦紅 童顔
学園を出でて巷の残暑かな 有泉七種
鰹一本井戸無き不自由な巷居 長谷川かな女
帰燕けふ蜑が巷を覆ひけり 佐野まもる 海郷
紀元節とほき巷をよぎる行進 石田波郷
窮巷に影さへ見えず初雀 松浜
強海贏の茣蓙のうなれる巷かな 山口誓子
曲巷に日覆かさなる暑さかな 松瀬青々
極月の竃火みゆる巷かな 飯田蛇笏 山廬集
極月や魚のぬめりの夜の巷 榎本愛子
極月や晴をつゞけて巷ある 松根東洋城
金魚玉まこと戦後の巷ゆがむ 伊丹三樹彦
軽き用持ちて薄暑の巷にあり 成瀬正とし 星月夜
軒落ちし雪窮巷を塞ぎけり 河東碧梧桐
孤児林檎喰む頃巷淋しくなる 有馬朗人 母国拾遺
枯柳午後の巷となりにけり 松藤夏山 夏山句集
後の月高くなりたる巷かな 楠目橙黄子 橙圃
巷なるうぐひすのこゑ灸にほふ 日野草城
巷に酔う乳をむさぼり火傷の漁夫 隈治人
巷に不信と木枯いろの雀とび 飴山實 おりいぶ
巷の坂に帆を遠くおく日記買ふ 斉藤夏風
巷の子の凧は工煙より高し 伊丹三樹彦
巷の灯低目にうけて手套嵌む 木村蕪城 寒泉
巷は結婚季庭に蓑虫ぶら下る 山口青邨
巷への道白く東風の扉につづく 大野林火 早桃 太白集
巷ゆく酔歌は卒業生とみし 能村登四郎
巷より女人灼け来ぬ花氷 徳永山冬子
巷風に髪の乱れし雛の日 鍵和田[ゆう]子 未来図
江東の凧の巷に育ちける 京極杞陽 くくたち下巻
港にかもめ巷には新社員 伊藤俊二
行春の巷のひゞき芭蕉に芽 沢木欣一
行年の窓の下なる巷かな 比叡 野村泊月
告別や巷は雪も古り易く 北野民夫
妻ごめに歳晩の巷遠きかな 松崎鉄之介
菜洗ふや巷の雨の膝に来る 木村蕪城
山つ神春の巷に灰をそゝぐ 軽部烏帽子 [しどみ]の花
山墓の石も巷も露の秋 石塚友二 光塵
刺せば血が出る 巷に 原に 薔薇の季節 伊丹三樹彦
獅子舞の脚の歩いて巷まで 甲斐 つる子
獅子舞は巷に世阿弥五百年 久米正雄 返り花
七尺と巷の説や関角力 吉分太魯
若き水夫巷の暦提げ帰る 米沢吾亦紅 童顔
酒欲しや雪の巷の夕づけば 石塚友二 磯風
秋や巷の緊急避難場所とかや 三橋敏雄
秋曇の巷蛸の重さも想ひ棄て 渡邊白泉
十薬を摘みに来る姉巷に老い 山口青邨
従ふや灼けの極みに巷あり 油布五線
春あさく巷の女ながら摘むものか 室生犀星 犀星發句集
春の埃空や巷に馬匂ふ 秋元不死男
春愁は巷の音も聞いてゐて 細見綾子
春塵の巷にありて機屋かな 五十崎古郷句集
春塵の巷落第を告げに行く 大野林火
春倉皇巷の中に一村社 中村草田男
初鰹夜の巷に置く身かな 石田波郷
初湯出て窮巷ながら空青し 碧童
初鵙の巷に太き眉上げし 原裕
小躍りの鴉ら 何しろ 芥の巷 伊丹三樹彦
笑みかく私服に一瞥三・一五の巷を去る 古沢太穂 古沢太穂句集
心定まらず巷に雁の列見上げ 鈴木真砂女 夏帯
酔へとこそ遅日の巷在りにけり 田澤二郎
雛の日や巷に荷馬の無垢なる目 野澤節子 黄 瀬
青物に涼しき月の巷かな 尾崎紅葉
雪雲へ炊煙あげてかわく巷 飴山實 おりいぶ
雪催ふ巷ゆ干鰯得てかへる 石塚友二
先達は医師也けりさくら巷 馬場存義
窓外は交民巷や柳散る 原田青児
総彦は死にき巷に降る木の葉 石塚友二
息つめて颱風めきし巷過ぐ 松崎鉄之介
大阪の巷に旅愁蚊喰鳥 高浜年尾
大試験をへて巷の人となる 岸風三楼 往来
大試験巷の音を遠くしぬ 岸風三楼
大文字の消えて巷に暮らしの火 吉田汀史
短日の人織る巷時計鳴る 柴田白葉女
昼冴えて巷の立木とぼしかり 大野林火 冬青集 雨夜抄
泥鰌汁巷はしとど土用雨 三谷昭 獣身
転宅や巷に蜜柑出盛りて 村山古郷
杜鵑花咲き巷に埃立ちやすし 長谷川浪々子
都電に乗る梅雨の巷のしたしさに 中村草田男
冬の夜の巷に鶴を飼ひなれし 犀星
冬田越しに巷つくれる灯かな 富田木歩
冬帽を巷に消ゆるために被る 木村淳一郎
冬満月古りし巷をくらくせり 有働亨 汐路
禿山を駈けくだりしは寒暮の巷 伊丹三樹彦
波郷忌の巷塵よどむ小名木川 松倉ゆずる
白鳥の来し日巷に暦売り 遠所るり実
薄氷の何も映さぬ巷かな 山田みづえ まるめろ
風邪はやる巷を通ひ小吏たり 森川暁水 黴
風邪はやる巷を白く霜そめぬ 森川暁水 黴
風邪流行る巷より人けふも来る 山口波津女 良人
兵器廠門前の坂巷へ墜つ 細谷源二 鐵
砲車過ぐる巷の塵や日の盛り 河東碧梧桐
茂吉逝きスターリン死す巷にて酒のむわれに何も起らず 椎名恒治
木枯や酒恋しくて巷へ出る 成瀬正とし 星月夜
柚子買へり巷に風の滲みる夜は 中村苑子
洋傘を引き来し巷照りいだす 三橋敏雄
養父入や巷にしげき恋はなし 幽山 六百番誹諧発句合
柩車はしる秋の巷の灼けゐたる 瀧春一 菜園
梟と名告り素通りする巷 沼尻巳津子
蓖麻は実に巷をゆきて糞す馬 下村槐太 光背
藪をもて巷と距つ露涼し 山口青邨
蜆桶巷の埃浮かべけり 鈴木真砂女
蝸牛やただ嫋々と巷の歌 石田波郷
鮟鱇に巷の影のぶら下がる 上谷昌憲
鵙の巷二人の盲腕で寄り 飴山實 おりいぶ
以上
by 575fudemakase
| 2019-03-17 09:38
| 無季

俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase
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▽ある季語の例句を調べる▽
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
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[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
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[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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