湯の町

湯の町

寒柝や地蔵の多き湯の町に 鍵和田[ゆう]子 浮標

妻と行きて毛野の湯の町雪ぞ降る 石塚友二 光塵

笹鳴や熱海湯の町坂の町 高瀬竟二

新涼の湯の町坂の句碑訪ね 三澤菊恵

水の町湯の町湯沢夏の霧 横田昌子

声高に湯の町をゆく褞袍かな 渋沢渋亭

早乙女が通り湯の町まだ覚めず 進藤芽風

大綿や湯の町に建つ芝居小屋 矢崎てる女

湯の町にお多福多し蜜柑咲く 富川三枝子

湯の町にこけしと燈火親しうす 阿波野青畝

湯の町にもう早梅の匂ひあり 星野椿

湯の町にゆくりなかりし千鳥かな 軽部烏帽子 [しどみ]の花

湯の町に春呼ぶ雨の降る日かな 大隈草生

湯の町のあんまの小庭糸瓜苗 石田踏青

湯の町のけだるさ残り朝紅葉 今田述

湯の町のこの朝にきて菖蒲売 森澄雄

湯の町のだらだら坂の柿落葉 高木晴子 晴居

湯の町のにぎはひと別御開帳 加藤三七子

湯の町のはづれ湯が落つ葛の雨 岡田日郎

湯の町の一つの露地の梅のおごり 安住敦

湯の町の橋ばかりなる蜻蛉かな(銀山温泉) 細川加賀 『玉虫』

湯の町の坂落ち合へり夜の秋 冨田みのる

湯の町の春の宵とは殊の外 星野椿

湯の町の小学校や冬休 高田風人子

湯の町の辻に猫ゐる良夜かな 山本洋子

湯の町の爪先上り螢飛ぶ 橋閒石 雪

湯の町の燈火なだるゝ年の坂 上田五千石『風景』補遺

湯の町の番傘にきく霙かな 鈴木興治

湯の町の片側暗し十日月 桂信子 草影

湯の町の飽かなき月に女郎蜘蛛 高澤良一 寒暑

湯の町の明けて三日の川床鳴る 高澤良一 寒暑

湯の町の目貫短し雪を掻く 阿波野青畝

湯の町の夜空にしるく雪の由布 兼田雅文

湯の町の裏山に会ふ年木樵 茂里正治

湯の町の裏川大根洗ひをり 森田公司

湯の町は人待ち顔の寒暮なる 大高芭瑠子

湯の町は端より暮るる鳳仙花 川崎展宏

湯の町へつづく畑の紅き梅 大野林火 月魄集 昭和五十五年

湯の町へ練り出す菖蒲神輿かな 前田時余

湯の町や一段ごとの夏景色(伊香保四句) 鷹羽狩行

湯の町や冬雨あがる宵の靄 西島麦南

湯の町を同じ丹前かたまり来 中林勉

百日紅散る湯の町の薬師堂 増田善昭

螢、ここからが湯の町大橋小橋 種田山頭火 自画像 落穂集

以上