漁村

漁村

さむければ漁村の柳枯にけり 井上士朗

なまくさき漁村の月の踊かな 正岡子規 踊

バスが行く漁村岩蓴も少し干し 高浜虚子

バスが行く漁村石蓴も少し干し 高浜虚子

伊勢の海漁村は春の灯をともす 山口青邨

磯山の襞に葱植ゑ半漁村 古畑丁津緒

稲光り漁村に照りて生臭し 三好潤子

飲み水を運ぶ月夜の漁村かな 河東碧梧桐

影冴て月の漁村の汐干哉 中川乙由

火やほしき漁村の雪に鳴く千鳥 正岡子規 雪

蚊柱や漁村尽くつぶれたり 蚊柱 正岡子規

海よりも漁村明るし年の暮 加藤憲曠

海苔麁朶に遊ぶ漁村の燕哉 燕 正岡子規

柿熟るる漁村の朝の静もりに 小川濤美子

寒燈三つ四つ 猫が掠めただけの漁村 伊丹三樹彦

岩礁と芒の中の一漁村 水原秋櫻子 殉教

鬼打木淋しき漁村通りけり 松根東洋城

休暇果つ島の漁村に灯のみえて 秋光泉児

漁村 昼寝 風に鳴るのは小判草 伊丹三樹彦

漁村から岬へのぼる梅見かな 野村喜舟 小石川

漁村の灯やがて芦の火あちこちに 阿波野青畝

漁村の入口は桟橋 父を待つ 伊丹三樹彦

漁村暗し沖なる鯖火街のごと 内海月漁「ホ誌雑詠選集」

漁夫の来し北見も果の一漁村 伊藤凍魚

枯蘆に蠣殻捨てし漁村かな 青嵐

江をわたる漁村の犬や芦の角 炭 太祇 太祇句選

今晩は今晩は秋の夜の漁村 山口誓子

砂丘いくつ梅の漁村をいくつ越えし 猿橋統流子

菜の花の漁村海も夜も同質に 桜井博道 海上

冴え返る日をなまぐさの漁村かな 小杉余子 余子句選

鮭漁の頃の賑はひ一漁村 鈴木貞二

七月や漁村をありく貴女紳士 七月 正岡子規

秋燈の漁村それより旅の帰路 松崎鉄之介

春曉の郵袋の一漁村分 猿橋統流子

初凪や安房浜荻といふ漁村 鈴木真砂女

初富士の抱擁したる小漁村 たかし

松立つて漁村の銀杏落葉かな 河東碧梧桐

人さわぐ漁村の市や夕紅葉 紅葉 正岡子規

青葉木菟樹なき漁村の方に鳴き 山口誓子

石段を登り漁村の寺涼し 高浜虚子

選挙ビラ漁村にあまり羽抜鶏 中本柑風

粗朶垣に漁村の梅は咲きにけり 野村喜舟 小石川

霜の月漁村は地に沈みけり 一音

朝顔や漁村の娘の耳ものききたげ 中村草田男

潮風に赤らむ柿の漁村かな 尾崎放哉 大学時代

鳥居ある漁村の砂に木槿かな 河東碧梧桐

唐泊ただの漁村よ天の川 阿波野青畝

灯も見えず闇の漁村のむら千鳥 正岡子規 千鳥

道ばたや漁村の娘蓬摘む 正岡子規 蓬

猫叱る老婆 漁村の迷路の奥 伊丹三樹彦

白魚やむさき漁村の注ぎ川 東洋城千句

白帆ばかり見ゆや漁村の冬木立 正岡子規 冬木立

麦秋や農を兼ねたる一漁村 松藤夏山 夏山句集

比良八荒漁村の閼伽は湖に汲む 友永佳津朗

枇杷熟れて漁村故なく貧しかり 青木重行

浜に出る漁村の迷路凧目じるし 右城暮石 句集外 昭和三十八年

墓原路とてもなく夕の漁村に下りる 尾崎放哉

放生会漁村の扉関しけり 三宅嘯山

末枯れの漁村真澄の絵図の色 武藤鉦二

味噌玉親しげ湾曲漁村に燕の矢 竹鼻瑠璃男

木槿咲いて船出來上る漁村哉 正岡子規 木槿

夜半にして風鈴鳴りぬ貧漁村 斎藤 玄

野分して漁村寂たり大碇 幸田露伴 竹芝集

誘蛾燈漁村の虫は海より来 林直人

夕榮や漁村の秋の靜かなり 秋 正岡子規

蓮如忌の松籟濃ゆき漁村あり 大峯あきら 鳥道

篝焚く二タ峰も漁村祭りかな 河東碧梧桐

簑の毛は晴れて漁村の霞哉 霞 正岡子規

葭切や潮の早瀬に一漁村 水原秋櫻子

以上