港町

港町

あの強き西日沈めば港町 高田風人子

ある窓の聖樹の影も港町 福田蓼汀 秋風挽歌

きさらぎの昼火事ありし港町 原田青児

ギヤマンの藍に夏来る港町 坂根白風子 『彩雲』

クリスマス来る港町渦なす灯 柴田白葉女 『月の笛』

サリーなびかせ来る港町銀杏散る 松崎鉄之介

つばくらめ坂の名あまた港町 松崎鉄之介

つばくろや男ばかりの港町 濱田のぶ子

どこまでも薔薇整然と港町 岩田由美 夏安

のどを焼く酒や残暑の港町 有馬朗人 天為

ハロウィンの南瓜パレード港町 古賀まり子

やはらかく蝙蝠あげぬ港町 秋沢 猛

ユトリロ風晩春ねむい港町 佐藤鬼房

リラ咲けば誰も旅人港町 古賀まり子

雨一過みよ港町初夏の景 中村汀女

雨降りて南吹くなり港町 高浜虚子

炎天の影もちあるく港町 八尾とおる

歌枕多くて港町日永 菅原玲子

芽ぐみゐる幹のうしろの港町 木下夕爾

寒月や猫の夜会の港町 大屋 達治

居酒屋にをればしぐれて港町 高田風人子

銀河から船現はるる港町 豊長みのる

元日の上々天気港町 高田風人子

港町ダチユラに荒き夕の雨 柴田美枝子(かびれ)

港町のっぺらぼうに雪が降る 穴井太 土語

港町まるごとメリークリスマス 甲田美代子

港町隠岐風蘭を軒なみに 草村素子

港町海の機嫌の霰過ぐ 猪俣千代子 秘 色

山の霧下り来て包む港町 飯田京畔

山門の下秋深き港町 山口青邨

秋つばめ盆地に港町一番地 穴井太 原郷樹林

秋雨に全く夜の港町 高田風人子

秋晴の今夕月の港町 高田風人子

十字架にまず風光る港町 源鬼彦

十六夜の車を拾ふ港町 佐藤鬼房

春灯の山へのびゆき港町 高浜年尾

石蕗の崖負うてや港町書店 高田風人子

朝霧や消え残る灯の港町 寺田寅彦

辻に犬あそびて月の港町 高田風人子

鶴もねむる北半球の港町 岸本マチ子

鍋焼の提灯赤き港町 岡安迷子

納まりし東風に灯ともり港町 高田風人子

眉ほどの月と覚えし港町 高田風人子

父の世の外套はやる港町 古賀まり子

風車売れて日高き港町 市場えつ子

豊橋に港町あり初荷船 岡田耿陽

蜜豆や手にとるごとく港町 岬雪夫

椋鳥渡る出船送りし港町 西村公鳳

明月に小雨降りけり港町 田中貢太郎 貢太郎俳句集

夜々ははや凩めきて港町 高田風人子

夕方のリラの匂へる港町 後藤比奈夫

恋猫に物影深き港町 飯島晴子

棕櫚の辺の冬日の欄干港町 木村蕪城 寒泉

以上