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2019年 4月 ねずみのこまくら句会の諸句

2019年 4月 ねずみのこまくら句会の諸句


 恋の雉子啼く渾身の羽広げ

(自然に叙述するなら、「恋の雉子渾身の羽広げ啼く」だろう)

 勿忘草中庭に植え転勤す

 無言劇のピエロに桜散りやまず

(無言劇 vs パントマイム)

 抱つこさる嬰もおめかし入学式

 風のさくら光のさくら咲き満ちて

 撫で牛の鼻ひんやりと花の冷え

(「花の冷え」の合わせが常套。)

 病む犬の襁褓を替ふる万愚節

 飛んできし帽子を載せて花筏

 白鳳の塔よりこぼる雀の子

 背戸のある暮らしが好きで蕨摘む

 天へ咲き人に咲きたる桜かな

(この句の評価は難しい。選者の俳句感が問われよう。句は選者に褌を締めて掛かって来いと言っている)

 長閑かり都電で巡る花の時

 潮干潟両肌脱ぎて現はるる

(少しオーバーと思ったが…)

 断捨離へアクセルを踏む竹の秋

 大宇多の家並を往き来つばくらめ

(大峯顕一門に既に掲句のような一句ありそうと踏むが…)

 総代の撞く彼岸会の誘いひ鐘

 水陽炎鼻緒を直しくれし人

 水影の日輪を鴨乱しけり

 森閑たる鑑真廟域囀れり

 春闌くる何かは為んと何もせず

(表現がどこかモタモタしている: 春闌くる何かは為んずと思へども。古語の「為んず」(せんず。意味は「…しようとする」))

 出石蕎麦皿積み上げて春惜しむ

 借景の富士も朧や朝寝坊

 蔀戸の弥陀に連翹明かりかな

(の vs 越し)

 次々とすずめ轍の落花浴

(表現がどこかモタモタしている:「落花浴」は言葉として熟しているだろうか?)

 四月馬鹿エレベーターの骨の透け

 山笑う遠くまできて泉汲む

 山寺の猫の弔ひ花ぐもり

 雑草とふ名の草の無し万愚節

(雑草 vs 荒草(あらくさ):文学的に荒草とやりたい。エープリルフールとやらずに古臭く万愚節とやったのも是又文学的)

 耕しの一服たのし缶コーヒー

 駒返る草峠路に開拓碑

 丘陵の風の育む新茶摘む

 祇王の名負ひて流るる花の川

(祇王の名負ひて…川。 …をどう埋めるかが勝負処。)

 鴨帰る束の間の影水に置き

 学僧の袖の膨らむ桜まじ

 花散るや坂ゆるゆると塔の見ゆ

(リズム的には、花散るや vs 花の散る)

 花びらをはなれがたきかな雨雫

(リズムが悪い:「雨雫花びら離れ難きとも」では少し改善される)

 花びらに降る雨粒の重さかな

(もう少し叙法に工夫がいるのでは?花びらに降る雨重し重しとも)

 花の雨隣人の死を人づてに

 乙艫の散歩がてらの汐干狩

(力を入れず叙した佳品)

 牡丹の芽なぜか気になる人のごとし

(この直喩、牡丹の芽は人の様だと言っている。かなり遠くにあるものを引っ張り出したので、一読後に多少の無理感が漂ったが、幾度も読み返すと此れも有りであると思えた。私の初案は次の通り。

「牡丹の芽なぜか気になる人と見え」「牡丹の芽なぜか気になる人なのか」純粋写生である)

 黄砂にも千年杉の不動なり

(黄砂にも千年の杉不動なり)

 炎なき独りの煮炊き花の冷

(「煮炊き」と言うと直ぐ火気を連想するが、この場合、単なる炊事と言う意味だろう。高齢になって火器の扱いを恐れる思いが込められている。)

 園児らの届く高さに甘茶仏

 雲雀東風舎利を納むる玄奘塔

 一人とて力それなり耕やせり

(「一人とて」に、夫(または妻)に先立たれた者を偲ぶ思いが籠もるようでスッと採れた。以前は二人して何とか完結する耕しであったのだろう。同一作者と思われる「耕しの一服たのし缶コーヒー」と云う句も、小品ながら軽快でいい。)

 ログハウスのテラスのランチ榛の花

(片仮名を並べた効果が出たように思う)

 やはらかき肌のぬくもり花の雨

 べからずの立て札多し花の山

(この「べからず」には、私も何度か体験している。冒頭から「べからず」を出したのが効いている。)

 ふと消ゆる命なるかな鳥雲に

 春の雨先を急がぬ旅なれど 

(なれど vs にして)

 はくれんの輪郭翳るとのぐもり

 はくれむの百の合掌朝日かげ

 つばくらめ艇庫を抜けて海へ出る

(よく見る景ではあるが気持良い句である)

 スイートピー風と戯れ蝶となる

 ジーンズの両腿に穴磯遊び

彼岸会の本堂に和す正信偈

 かるがもの胸で押しゆく花筏

 いかなごの光る糶場の流し水

 いかなごのくぎ煮の香り街に春

 雨一日濡れて巣籠る鸛(コウノトリ)

(鸛の姿態が彷彿)

まだ蕾む桜へ息のかかるほど

(グッドタイミングな季節感が出ている)

花のひと日灯ともし頃ともなりぬ

亀鳴かば我はどこから壊るるか

(思わず「おおっ」と思った一句である)



以上


by 575fudemakase | 2019-04-21 18:03 | ねずみのこまくら句会


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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