故郷
故郷
*はったいや故郷間遠になるばかり 谷口みどり
あたふたと故郷に帰るいつも悲しいことばかり(父の死) 橋本夢道
あの山のうしろが故郷八つ頭 佐藤鬼房
あるだけの故郷となり風の盆 安田直子
うまごやし故郷遠き少年工 松田多朗
オホーツクの花野に近く故郷あり 副島いみ子
おやじらはおれを見捨てて故郷にあり しようり大
かたかごや我に故郷のあるごとく 寺澤慶信
かなかなにかなかな応へ故郷去る 香西照雄
きりたんぽ少年工に故郷遠し 堀田政弘 『父の日』
くぼみ眼の鴉を愛し 似非故郷 三橋鷹女
くらく高く岳枯れ故郷せまきかな 加藤亮 『山幾重』
ここは故郷春の怒濤に胸張つて 鈴木真砂女 居待月
ここ故郷裸女いさらゐの下かげ瑠璃 中村草田男
この月の下故郷に父母在す 今井文和
これを故郷と云ふ朧夜の更けにけり 中島月笠 月笠句集
さつま汁妻と故郷を異にして 右城暮石
さはらねば赤蜂美しき故郷 永田耕衣
さみだれの傘さしもどる故郷かな 橋本鶏二 年輪
しがらみの一茶の故郷籾殻焼く 大高霧海
しぐるるや遺影故郷の山の景 松崎鉄之介
じつにたくさん手でする仕事雪故郷 中尾寿美子
すこやかに故郷の楡の枯れにけり 阿部みどり女 『雪嶺』
すれ違ふ故郷訛り弁慶草 大沢知々夫
そらまめの莢の猛々しく故郷 櫂未知子 蒙古斑
そら豆がおはぐろつけし故郷かな 細見綾子
そら豆の空の彼方に故郷死す 小檜山繁子「流水」
たちまちに藪蚊寄り来る故郷塚 藤本安騎生
だばどぼだばどぼ駄馬ゆくぼくゆく故郷の村道 高柳重信
たんぽゝの黄しるく故郷遠きかな 岸風三楼 往来
たんぽぽの光輪故郷踏み処なし 伊丹三樹彦
たんぽぽを敷いて故郷の山近し 阿部みどり女
タ冷えの小枝密集する故郷 廣瀬直人
ちちははの在せし故郷桐の花 大塚和子
ちらと日が見えて故郷の夏立てり 津沢マサ子
つくつくと故郷萬里の年の暮 正岡子規 年の暮
つばくらめ故郷に仕立下ろし着て 猪俣千代子 秘 色
つわぶきは故郷の花母の花 坪内稔典
でんしやからしきりにこぼす故郷 松本照子
とかくして又故郷の年籠り 一茶
どこにありても南風は故郷の風 飯田龍太
どこをもって故郷となさむ枯木に日 川上梨屋
どこをもて故郷となさむ朧月 中村苑子
としの雲故郷に居ても物ぞ旅 惟然
どの流木も故郷消して着く新宿 鷹島牧二
とはの故郷夜明は鶏の脚凍り 小檜山繁子
なつかしき父の故郷月もよし 高浜年尾
にわとりを殺めて剥ぎし掌の記憶遠き故郷に夕日が当たる 三枝昂之
はらわたに昼顔ひらく故郷かな 橋かんせき
ひそと去る夜を故郷の野火赤し 橋閒石
ひどいものを食つて故郷の人は皆死なず笑つているよう 橋本夢道
ふた本の榎しぐるる月日かな(故郷西ケ原に戻る) 岸田稚魚 『負け犬』
ほきほきと食ふ故郷の胡瓜ならずや 松崎鉄之介
まくなぎを抜けて故郷すぐそこに 富永 小谷
まひまひや故郷をめぐり来たる水 今瀬剛一
みずすまし故郷の夕日裏返す 平井久美子
みな遠き故郷持ちて粽食ふ 村越化石
むべ熟す母故郷に永あそび 近藤馬込子
もう降りることなき故郷麦青む 橋本 紅
もう訪はぬ故郷と思ふ雁渡し 西川 五郎
ラムネの玉ころんと故郷透明に 成瀬櫻桃子 素心
ラムネ玉鳴らして故郷去りがたし 日笠靖子
わが夏帽どこまで転べども故郷 寺山修司
わが客地子の故郷榛咲きにけり 林翔
わが故郷異国となりし雁渡る 斎藤徳治郎
わが故郷藪漕ぎに次ぐ藪を漕ぎ 穴井太 天籟雑唱
わが前の白紙いつまで虫の故郷 成田千空 地霊
虻を連れ廻る腰部によき故郷 永田耕衣
袷古りぬ妻と故郷を同じうし 佐野青陽人 天の川
衣被嫁かずば故郷無きに似て つじ加代子
一枝の椿を見むと故郷に 原 石鼎
一石路の「鎌の柄談議」君の故郷の貧乏稲田 橋本夢道 良妻愚母
稲架の上に乳房ならびに故郷の山 富安風生
芋煮会故郷に茂吉出羽ヶ嶽 百合山羽公 樂土以後
芋虫や故郷に似たる草嵐 小松崎爽青
鰯雲故郷に似たる堪へがたし 徳永山冬子
鰯雲故郷の竃火いま燃ゆらん 金子兜太
鰯雲故郷の竈火(かまどび)いま燃ゆらん 金子兜太(1919-)
鰯雲故郷の竈火いま燃ゆらん 金子兜太
咽喉に障りし鰻の毛骨故郷の秋 中村草田男
引き裂かる故郷の蝶曼陀羅野 小檜山繁子
雨故郷千年沼のぬなはかな 小川芋銭
雲の峰故郷のかたに立つ日哉 会津八一
雲海の高さに目覚め故郷たり 竹内秋暮
雲青嶺母あるかぎりわが故郷 福永耕二
雲白し蝉満開の故郷の杉 福田甲子雄
沖もわが故郷ぞ小鳥湧き立つは 寺山修司 花粉航海
屋根を越す冬木四五本の故郷よ 北原志満子
下車一人故郷の小駅先づ郭公 星野魯仁光
下町は父母の故郷一葉忌 伊東宏晃
夏の湖いつもさかさに故郷うつす 宮坂静生 青胡桃
夏井戸や故郷の少女は海知らず 寺山修司 花粉航海
夏帽や故郷を望む舟の中 赤木格堂
夏木立故郷近くなりにけり 夏木立 正岡子規
夏埃立ちては故郷の地へ落つる 中村草田男
嫁ぎたるここも故郷盆の月 小山陽子
火種貰ひ問はるるままに故郷のこと 大野林火 方円集 昭和五十三年
花アカシヤ故郷の名の白石区 松崎鉄之介
花いばら故郷の路に似たるかな 蕪 村
花しきみ遺髪うづめし故郷塚 上村占魚
花しきみ道髪うづめし故郷塚 上村占魚
花に逝き遺句集故郷の句に終る 大野林火 月魄集 昭和五十六年
花茨故郷の路に似たるかな 蕪村
花火果て故郷の闇深かりし 佐藤なか
花街の雨の冬草故郷かな 長谷川双魚
花山葵田故郷いまさら美しく 笠原蜻蛉子
花盛故郷や今衣がへ 花盛 正岡子規
荷ずれ傷つきて故郷の梨届く 前橋春菜
霞む一微塵に故郷哭き現われ 永田耕衣
蚊柱の二タ間の農家開け放ち(故郷丹波芦田村) 細見綾子
蚊柱や豊作の山川暮れて故郷の母娘不和の家 橋本夢道
蚊帳へくる故郷の町の薄あかり 中村草田男
蚊帳吊し中に故郷の夜のあり 小林景峰
懐手故郷の町も久しぶり 福田蓼汀 山火
海の彼方は故郷のたぐひぞ蛍籠 中村草田男
海苔を噛みて故郷人と談りけり 会津八一
絵タイルの舟に故郷恋ふ夏の果 後藤房枝 『蕗童子』
絵葉書の象の悲しみ知る故郷 武馬久仁裕
柿光る 故郷近づく肱出せば 伊丹三樹彦
柿食うて移民に遠き故郷あり 目黒白水
郭公やわれに故郷かへすべし 小檜山繁子
葛の花次第にかなし故郷のうた 加藤知世子
竃火に根雪かがやきだす故郷 飴山實 おりいぶ
寒の水飲みて故郷の家を去る 越田美奈子
寒影や父若くして故郷(くに)を捨つ 佐藤鬼房
寒雀故郷に棲みて幸ありや 相馬遷子
寒肥や骨は故郷に埋めんと 関 梅春
寒蜆故郷の砂を吐きにけり 野坂 民子
干し干瓢故郷の山河ひらひらす 島みえ
幹うつて落葉は迅し故郷なし 千代田葛彦
鑑真の故郷にゐて夜長かな 有馬朗人 立志
閑古鳥故郷に満てる他人の顔 山田みづえ
棄ててきし故郷おもへり盆の月 成瀬櫻桃子 風色
棄てて来し故郷おもへり盆の月 成瀬桜桃子 風色
帰り来し故郷の山河虎落笛 星野立子
汽車待てば汽車来る故郷麦畑 橋本美代子
汽罐車の火夫に故郷の夜の稲架 大野林火
記念館待たるる故郷冬霞 稲畑廣太郎
鬼灯の朱色葉ごもる母の故郷 鍵和田[ゆう]子 武蔵野
鬼灯を揉んで幼なくする故郷 野村仙水
亀裂走る炎天の街は我が故郷 有馬朗人 母国
義士祭を忌むわが故郷枯れにけり 島村久枝 『矢作古川』
蟻地獄にかがむ故郷の時間かな(丹波七句) 細見綾子
菊の香や故郷遠き国ながら 夏目漱石 明治二十八年
菊咲けり故郷に帰らんかと思ふ 福田蓼汀 山火
桔梗眼前にそのいろの故郷かな 飯田龍太
脚病めば故郷遠し啄木忌 遠藤梧逸
牛の子のたどたどしさに秋の風(故郷の丹波青垣町にて二句) 細見綾子
牛乳に草の匂ひや初秋風(故郷の丹波青垣町にて) 細見綾子
胸に棲みつく鴎いま冬母の故郷 鍵和田[ゆう]子 浮標
極楽と地獄の話施餓鬼寺(故郷の丹波青垣町にて七句) 細見綾子
極楽は近きがごとし施餓鬼寺(故郷の丹波青垣町にて七句) 細見綾子
玉虫もその木もはるかなる故郷 清水澄子
玉虫厨子いずこの山も故郷かな 和田悟朗
菌など干して祖母ある故郷かな 比叡 野村泊月
金鳳華咲き故郷の道そつくり 右城暮石 句集外 昭和四十九年
銀河濃し故郷の海匂ひ来る 角南旦山
空蝉を食卓に置く山故郷(丹波にて) 細見綾子
屈原の故郷奥に石楠花燃ゆ 松崎鉄之介
君も清瀬が第二の故郷花しどめ 石田波郷
薫風もたのむ故郷もなきごとし 中村汀女
傾城に鳴くは故郷の雁ならん 夏目漱石 明治四十年
傾城の故郷や思ふ柏餅 正岡子規 柏餅
茎立や故郷すでに他郷にて 樋笠文
迎火や墓は故郷家は旅 迎火 正岡子規
迎春花故郷恋しくありし日々 三木朱城
血縁の絶えし故郷の桐の花 長田等
月に来ませ故郷の鮎を振舞はむ 会津八一
月の眼を借らば故郷の水の色 亀世
犬吠えて故郷荒れぬ柿紅葉 紅葉 正岡子規
見かぎりし故郷の山の桜哉 一茶 ■享和三年癸亥(四十一歳)
原野(ぬぷ)はわが心の故郷榛の花 金箱戈止夫
源五郎故郷の貌をしてあゆむ ほんだゆき
故郷(くに)めく町山水めきし井戸清水 中村草田男
故郷ありねずみ花火の地べたあり 百合山羽公 樂土以後
故郷あり祇園太鼓の胴張って 百合山羽公 寒雁
故郷がある 墓がある 咲く蓮の彼方 伊丹三樹彦
故郷がけんちん汁に混み合へり 松浦敬親
故郷かな椎に礫を打てば散る 飯田龍太
故郷すでに海市の中や母老いし 柴田佐知子
故郷せまし無事の笹舟いづこより 三橋敏雄
故郷という鉄格子青葉木菟 田仲了司
故郷といふさまざまな喪が悴んで 佐藤鬼房
故郷とはひそかに泣かす花わさび 丸山佳子
故郷とは硫黄でぬめる冬日和 佐藤鬼房
故郷なり終夜群れをる誘蛾燈 江里昭彦
故郷につながれている蟻地獄 川端妙子
故郷にまだ店ありき心太 大西よしき
故郷にわが植ゑおきし柳哉 正岡子規 柳
故郷に一人残りて展墓かな 神田美代子
故郷に猿の出没かまい時 原田孵子
故郷に縁者の絶えし盆の月 橋本蝸角
故郷に住みて無名や梅雨の月 相馬遷子 雪嶺
故郷に住み古りてこそ初墓参 下村ひろし 西陲集
故郷に生涯老いて粥試し 植村よし子
故郷に桃咲く家や知らぬ人 正岡子規 桃の花
故郷に肺を養ふ冬こもり 正岡子規 冬籠
故郷に墓のみ待てり枇杷の花 福田蓼汀
故郷に母亡く山河枯ふかむ 佐々木かつの
故郷に来て過客なり柏餅 東 智恵子
故郷のここにも雪の富士見橋 内藤廣
故郷のたよりうれしき袷哉 袷 正岡子規
故郷のなき晩年や寒昴 塩田晴江
故郷のひたすら灼ける父母の墓 山県よしゑ
故郷の鮎くひに行く休暇哉 鮎 正岡子規
故郷の闇あをあをと夜鷹鳴く 恩田 洋子
故郷の稲架の向うは日本海 小櫃 きよ
故郷の遠ざかるごと春去りぬ 早稲田良子
故郷の家大きく貧し落葉積む 松本澄江
故郷の海の色濃き鱸かな 黒瀬輝子
故郷の海見下して春菜摘む 川村ひろし
故郷の海苔ひび恋へり枯落葉松 後藤房枝 『蕗童子』
故郷の柿どれも烏のつつきし痕 細見綾子
故郷の寒さを語り給へとよ 寒さ 正岡子規
故郷の菊はいくさに踏まれけん 菊 正岡子規
故郷の菊十月も咲きにけり 船山
故郷の吉良へ土産の栗おこは 島村久枝 『矢作古川』
故郷の巨燵を思ふ峠かな 正岡子規 炬燵
故郷の栗を待たずに逝かれけり 岩田由美 夏安
故郷の栗大小にいびつなる 細見綾子
故郷の月の明るき寒稽古 福田蓼汀 山火
故郷の山しづかなる師走かな 吉田冬葉
故郷の山の明るき初手水 小西敬次郎
故郷の山深くして蝉時雨 山本仟一
故郷の山未だ覚めず霞草 川野一雨
故郷の秋わびしさよ帰り花 会津八一
故郷の秋天濃しや土手上崖の上 香西照雄 素心
故郷の春夕焼に染む屋並 清原和子
故郷の神に願ひて厄落し 稲垣 由江
故郷の人と話したのも夢か 種田山頭火 自画像 落穂集
故郷の水の味昼千鳥なく 中塚一碧樓
故郷の水の味晝千鳥なく 中塚一碧樓
故郷の雪間の道を帰り来し 羽生 大雪
故郷の川に洗わる女郎花 高山たんぼ
故郷の蒼白の文字と水の空 阿部完市 証
故郷の霜の味見よ赤かぶら 正岡子規 霜
故郷の大根うまき亥の子かな 正岡子規
故郷の大根うまき亥子かな 正岡子規
故郷の棚田の荒れて水鶏鳴く 高橋正彦
故郷の虫の浄土に枕並べ 成宮紫水
故郷の電車今も西日に頭振る 平畑静塔
故郷の土蹴つて鳴らして踊下駄 大野林火 飛花集 昭和四十四年
故郷の冬へおくる金がない大きい日ぐれの国旗であつた 橋本夢道 無禮なる妻抄
故郷の冬空にもどつて来た 尾崎放哉
故郷の匂ひ運び来秋の風 郡司しま子
故郷の日やけの茄子を送り来し 細見綾子
故郷の畑に散りけり芥子の花 芥子の花 正岡子規
故郷の風の匂へる古団扇 青柳薫也
故郷の文をほどけば頭巾かな 東皐
故郷の便り一行さくらんぼ 望月由紀子(帆船)
故郷の母と姉との初便 高浜虚子
故郷の方に雲立つ柳かな 橋閒石 雪
故郷の味を守りて胡瓜もみ 倉田静子
故郷の目に見えてたヾ桜散る
故郷の餅焼きつ流浪の夜のごとし 大串章
故郷の野良打つ音して鍬形虫 ひらきたはじむ
故郷の淋しき秋を忘るゝな 秋 正岡子規
故郷の話ふくらむ雑煮椀 工藤たみ江
故郷の艀舟嬉しき夏帽子 会津八一
故郷の訛に戻り初電話 松本幸代
故郷まで吹き抜けの空いかのぼり 橋本喜夫
故郷も今はかり寝や渡り鳥 去来
故郷も今は仮寝や渡り鳥 去来
故郷も父母もなき手毬唄 菖蒲あや 路 地
故郷も隣長屋かむしの声 基角
故郷も隣長屋か虫の声 其角 (柴雫と伊勢を語りて)
故郷やいたはりて剥く桃の肌 佐野美智
故郷やどちらを見ても山笑ふ 山笑う 正岡子規
故郷やよるもさはるも茨の花 一茶
故郷や暗きより湧く泉ゆゑ 小檜山繁子「流水」
故郷や臼も竃も注連飾 田中寒楼
故郷や瓜も冷して手紙書く 長谷川零余子
故郷や芽花ぬきしは十余年 芽花 正岡子規
故郷や茅花ぬきしは十余年 正岡子規
故郷や菊の籬の草の山 尾崎迷堂 孤輪
故郷や菊芳しく父母在す 寺田寅彦
故郷や近よる人を切る芒 一茶 ■文政三年庚辰(五十八歳)
故郷や祭も過ぎて柿の味 柿 正岡子規
故郷や酒はあしくとそばの花 蕪村 秋之部 ■ 雲裡房、つくしへ旅だつとて我に同行をすゝめけるに、えゆかざりければ
故郷や秋稍寒く梨の味 抱琴
故郷や上がり框にへぼ南瓜 二宮貢作
故郷や即女も非女もおみなえし 安井浩司 氾人
故郷や知らぬ男の畠打つ 正岡子規 畑打
故郷や道狹うして粟垂るゝ 粟 正岡子規
故郷や道狹くして粟垂るゝ 粟 正岡子規
故郷や菱に水澄む城下町 池田蝶子 『草絵』
故郷や蕪引く頃墓參 正岡子規 蕪引く
故郷や母がいまさば蓬餅 正岡子規
故郷や玻璃にぶつかる銀やんま 中沢城子
故郷や蝌蚪もむじなも死に絶えて 筑紫磐井 花鳥諷詠
故郷より山歯朶の束年の暮 細見綾子
故郷より虹の輪くぐり友の来る 斉藤洋子
故郷をいでて久しききゆうりもみ 中川夢想子
故郷をすつかり忘れ残る鴨 猪瀬 幸
故郷をよしなくおもふ日の帰燕 佐野まもる 海郷
故郷を去つて蓴を喰ふかな 会津八一
故郷を七度あとに秋の風 会津八一
故郷を水色のサングラス越し 伊藤トキノ
故郷を白くしたるは雪女郎 稲畑廣太郎
故郷を百度捨てし鳳仙花 杉田桂
故郷を訪ひて遊子や夏罰 山田弘子 こぶし坂
故郷を立ちいでたるも一むかし 正岡子規
故郷遠く一番星は蜘蛛の囲に 今瀬剛一
故郷遠く住むも植田の辺なりけり 松田雄姿 『矢筈』
故郷遠く土筆に囲まれ立ちてわれ 村越化石 山國抄
故郷遠し線路の上の青ガエル 寺山修司
故郷寒しうつくしき雨垂れの砂 榎本冬一郎 眼光
故郷去る 夏山に墓一つ増やし 伊丹三樹彦
故郷去る 秋山に墓一つ増やし 伊丹三樹彦
故郷去るや眼に一瞥す紙鳶 原石鼎 花影
故郷去る三日の暮雪ちらつく中 田中鬼骨
故郷去る秋山に墓一つ増やし 伊丹三樹彦
故郷去る十三日の月の宵 下村梅子
故郷近く夏橙を船に売る 夏蜜柑 正岡子規
故郷近し義手のバンドを緊める音 小沢潮路
故郷言はず石切り死して草の花 大野林火 飛花集 昭和四十七年
故郷向く独身寮の枯辛夷 百合山羽公 寒雁
故郷捨てて捨てられしごと春炬燵 鳥居美智子
故郷喪失洗い髪のまま寝ては 対馬康子 愛国
故郷離れざるものわれと寒鴉 矢島渚男 釆薇
故郷涼し遠立山が堰く日の出 古沢太穂 捲かるる鴎
枯故郷吉良さま今も在すごと 島村久枝 『矢作古川』
枯露柿の甘さ故郷ある限り 西川五郎
胡桃割るこきんと故郷鍵あいて 林 翔
胡麻の花西日の中で牛梳かる(故郷丹波芦田村) 細見綾子
五年みぬ故郷のさまや桃の花 維駒
吾を容るる故郷や月の一本道 青柳志解樹(1929-)
語りつつ杜氏故郷のことにふれ 後藤比奈夫
鯉ほどの唐黍をもぎ故郷なり 成田千空
光るは仏壇 空蝉囲いの故郷である 伊丹三樹彦
光度の弱い裸灯の下に芋麦飯食う故郷の親子 橋本夢道
更衣故郷のたより届きけり 更衣 正岡子規
港で編む毛糸続きは故郷で編む 大串章
荒縄で蟹さげ身内なき故郷 橋閒石
行年を故郷人と酌みかはす
香水や母と故郷を異なれり 寺山修司
国なまり故郷千里の風かをる 薫風 正岡子規
国境に立てば故郷恋ふ冬茜 加藤一水
黒牛のねまれる土に栗落つる(故郷の丹波青垣町にて) 細見綾子
骨壺の弟を抱え母と故郷の海見ゆる峠となる 橋本夢道
今死ねば野分ばかりの故郷よ 東川紀志男
今住むは曽祖母の故郷青葉木菟 豊田 晃
今朝秋の故郷人やどどと老ゆ 所山花
今日の瀬の鮎居ずなりし故郷哉 石井露月
魂迎へ故郷失ひゐたりけり 米沢吾亦紅 童顔
左右へとぶ蛙や歩歩に去る故郷 三橋敏雄
左右へとぶ蛙や歩々に去る故郷 三橋敏雄
差し入れの菊嗅げば生れ故郷の雲がある 橋本夢道 無禮なる妻抄
沙を混へ故郷めく地や豆の花 中村草田男
採氷や湖の端より売る故郷 対馬康子 愛国
細雪降る日の故郷の幾小径 村越化石 山國抄
桜貝耳に忘れてゆく故郷 二村典子
鮭と鯡と故郷語る武庫の月 月 正岡子規
鯖火焚くひとの子とゐて故郷なり 榎本冬一郎
三人の故郷の遠き蒲団かな 余子
山へ延びる電線ばかり瓜食ふ子(故郷丹沢芦田村) 細見綾子
山帰来のとげの長蔓引き寄せる(故郷にて山帰来の葉に包み餅を作るとて) 細見綾子
山裾の桑畑にまづ秋の風(故郷の丹波青垣町にて二句) 細見綾子
山独活掘り故郷いよいよ捨て難し 加藤亮 『山幾重』
山碧く冷えてころりと死ぬ故郷 飯田龍太
山椒の芽噛んで故郷遠くせり 佐藤正治 『山川草木』
残る雪故郷の人に逢はで去る 橋閒石
残雪や故郷を離るる薬売 青柳志解樹
四万六千日の陸橋故郷なし 八木荘一
子に逢ひに来し故郷の草青む 橋閒石 雪
子を産みに故郷の稲架棒根づくごと 宮坂静生 青胡桃
思ひ出のめぐり故郷の芥子若葉 小林 むつ子
思ひ切れと汽笛濃霧の故郷を発つ 滝本魚顔女 『絵踏』
施餓鬼すみ扇子使ひて戻りくる(故郷の丹波青垣町にて七句) 細見綾子
施餓鬼まゐり昔かたびら着たりける(故郷の丹波青垣町にて七句) 細見綾子
施餓鬼寺朝より熱き茶を煮立て(故郷の丹波青垣町にて七句) 細見綾子
死ぬときは故郷といふ雀の子 菅原さだを
紫蘇とびとび 墓石とびとび 故郷の丘 伊丹三樹彦
脂くさき故郷が見ゆ土用干 佐藤鬼房
歯車のように歩むスカンポ伸びた故郷 福富健男
事なき日故郷の雪を懐ひけり 会津八一
自然薯来る故郷の山の土付けて 大塚とめ子
鴫焼きに偲ぶや故郷の死者生者 石崎素秋(俳句饗宴)
七種や故郷にはらから既になし 五味真琴
七種や故郷遠からず近からず 中村苑子
失ひしものばかり見え故郷の冬 本田末子
芝焼いて転勤者の子ら故郷なし 近藤一鴻
斜線でくもる故郷と児の描く初島と 阿部完市 絵本の空
煮凝や故郷あらば北が欲し 岡本眸
手に蜜柑故郷日和授かれり 村越化石
手漉紙光る故郷の春にゐて 杉本寛
手袋に故郷の山河温めいる 高橋和伸
秋雨や白粥吹いて故郷に病む 山口青邨
秋燕となり電線に休むかな(故郷の丹波青垣町にて二句) 細見綾子
秋十とせかへつて江戸を指す故郷 芭蕉
秋十とせ却つて江戸を指す故郷 松尾芭蕉
秋十年却って江戸を指す故郷 松尾芭蕉
秋十年却つて江戸を指す故郷 芭蕉
秋出水「カルメン故郷に帰る」頃 攝津幸彦 鹿々集
秋風や故郷さして歸る人 秋風 正岡子規
終点が故郷晩秋磯の香も 古舘曹人
蹴り伏せて野菊水色なる故郷 永田耕衣
重心を低くして故郷にいる 一井真理子
宿団扇持ち故郷なき映画館 宮武寒々 朱卓
春の窓ふいて故郷に別れを告ぐ 大高翔
春の風草深くても故郷なり 小林一茶
春暁の故郷の厠生木の香 宮坂静生 青胡桃
春山を越えて土減る故郷かな 三橋敏雄
春蝉や墓域がわれを待つ故郷 座光寺亭人
春浅き故郷に泥鰌手捕らむか 有働亨 汐路
春服や親達にのみ故郷あり 中村草田男
春帽子畳に投げて故郷かな 佐藤さよ子
春蘭や株ごとに持つ野の故郷 遠藤 はつ
春炬燵酔へば釣らるる故郷訛 槫沼けい一
盾の如海苔干す故郷敵とする 平畑静塔
初郭公吾子住むゆゑに故郷といふ 平井さち子 鷹日和
初声に明け故郷の藁庇 桑原晴子
初声の千鳥を故郷に来て聞ける 石橋海人
初便り復員の学徒故郷に在り 山口青邨
初便り復員学徒故郷にあり 山口青邨
初夢に故郷を見て涙かな 一茶
除虫菊女中に白き故郷あり 攝津幸彦 鹿々集
小尺蠖ひとつ芭蕉の故郷塚 百合山羽公 樂土以後
小春日や故郷かくも美しき 相馬遷子
松茸食いたし故郷から来た青酢橘 橋本夢道 無類の妻
照影も殊に故郷の花の蔭 中村汀女
振り向けば石屋呆ける故郷かな 攝津幸彦
新聞で見るや故郷の初しくれ 時雨 正岡子規
真冬の故郷正座してものおもはする 飯田龍太
身に入むや流離のはての故郷に 八牧美喜子
人の世を故郷とせむ楸邨忌 小檜山繁子
水かぎろへる辺りより故郷 長谷川双魚 風形
水を打つ故郷再び離るべく 中村汀女
水草生ふこの川をもて故郷とす 山口青邨
水虫の足裏で息し行く故郷 永田耕衣
水洟の水色膝に落つ故郷 永田耕衣
水蟲の足裏で息し行く故郷 永田耕衣
数へ日や故郷の海老生きて着く 伊東宏晃
菅原葭原馬は故郷の青墓なり 阿部完市 軽のやまめ
雀おどし夜も鳴る故郷去りがたし 上山茂子 『父似』
成道会われ故郷を出し日なり 白井米子 『青浄土』
星ひとつづつふえて故郷の秋夜かな(丹波) 細見綾子
生きゐしかばうごく故郷の栗の虫 松村蒼石 雁
生れたるのみの故郷盆の月 大橋敦子
西行忌棄つべき故郷われになし 成瀬桜桃子 風色
青故郷法事一つに繋がりて 高澤良一 さざなみやつこ
青芝のこぞる尖りが僕責む故郷 楠本憲吉 方壺集
青蔦重畳城ある故郷慕ふかな 中村草田男
青田風故郷に忘られたる者に 金子晃典 『望郷独語』
青年を掠める 一白鷺の重油故郷 赤尾兜子 歳華集
青梅の雫したたる故郷塚 近藤文子
青葡萄夕爾の故郷いまだ見ず 樋笠文
青葉嶺の見ゆる限りは吾が故郷 横田清桜子
惜春や父の故郷に似しときけば 星野立子
斥候の故郷望む岡見かな 岡見 正岡子規
石蕗の花故郷の道はさびしき道 村山古郷
籍寄せしここが故郷ぞ小鳥来る 白井米子 『青浄土』
赤のまま赤人も居し故郷かな 阿波野青畝
赤足袋のこはぜとめ山国が故郷 細見綾子
赤帯の遠き田植の水故郷 秋元不死男
赤土に道つけてすすき小家かな(故郷丹波芦田村) 細見綾子
雪におもへ富士にむかはゞ故郷の絵 園女
雪に思へ富士に向はば故郷の絵 園女 俳諧撰集玉藻集
雪を割る故郷捨てし顔ばかり 後藤一朗 『雪間』
雪囲ひ洩る灯ちらちら故郷恋ふか 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
雪解の故郷出る人みんな逃ぐるさま 修司
雪降り出す瞼閉づれば故郷の山 櫛原希伊子
雪女出さうな沢もあり故郷 佐藤宣子
雪嶺を据ゑ一故旧なき故郷 林 翔
蝉の穴覗く故郷を見尽くして 中村 苑子
川かすむ故郷の道に出でにけり 会津八一
川西の故郷も見へて朝寒み 一茶 ■享和三年癸亥(四十一歳)
川涸れた故郷 ゴロンと ゴツンと石 伊丹三樹彦
泉湧き故郷の月濡れて出づ 佐藤正治 『山川草木』
洗ひ顔の河砂利故郷の柿若葉 香西照雄 素心
線香花火の火の玉落つる故郷なし 稲野博明
線路沿ひ枯れて故郷を遠くせり 大串章
前橋は母の故郷霜夜明け 星野立子
曾良故郷塚湖風の三味線草 西本一都 景色
素通りの故郷の山河時雨れをり 山田弘子
双手浸す故郷の水や蝉の声 佐野青陽人 天の川
喪に帰るのみの故郷や弥生富士 中村苑子
早く来てよき場所占む施餓鬼婆々(故郷の丹波青垣町にて七句) 細見綾子
早稲熟れてゐる故郷に力あり 乾 燕子
早春の波寄せ故郷唱もなし 藤後左右
早春や遠故郷のすみれ色 村越化石
窓を開け幾夜故郷の春の月 中村汀女
草まくら故郷の人の盆会かな 加藤曉台
草枕故郷の人の盆曾かな 暁臺
草木瓜や故郷のごとき療養所 石田波郷
草餅や故郷出し友の噂もなし 寺山修司
霜晴の那須野那須嶽故郷去る 深見けん二
霜柱踏めば故郷くづれけり 木村敏男
霜眩しかりそめなりし地を故郷 橋閒石 無刻
息とめて青柚子しぼる雲の故郷 飯田孤石
他郷また故郷となりぬリラの花 金箱戈止夫
帯ゆるく締めて故郷の居待月 鈴木真砂女
苔の花咲いて鬱然たる故郷 中村苑子
大寒のー戸もかくれなき故郷 飯田龍太
大寒の一戸もかくれなき故郷 飯田龍太
大根葉の雪やさながら故郷には 土芳
大川を渡れば故郷稲の花 沼尻ふく
大文字やいくとせ故郷にも行かず 村山古郷
大粒の雨ふる青田母の故郷 成田千空
大粒の雨降る青田母の故郷 成田千空
沢蟹の寒暮を歩きゐる故郷 飯田龍太
茸にほへばつつましき故郷あり 飯田龍太
誰を訪はむ故郷を蔽ひ降る雪に 榎本冬一郎 眼光
誰彼に逢うて蓮の実とぶ故郷 伊藤京子
炭斗や妹の故郷の大ふくべ 阿波野青畝
短夜や明日は故郷に薫る風 寺田寅彦
築三の故郷の丘の桐の花 鷹羽狩行
竹馬のうしろ昏れゐし故郷かな 土佐ノ竜雅洞
竹伐るや盂蘭盆近き日の故郷 村野鶴諒子
昼の汽車音のころがる枯故郷 飯田龍太
虫鳴いて裏地のやうな故郷かな 大石雄鬼
猪垣の裾の山萩咲きはじむ(故郷の丹波青垣町にて) 細見綾子
朝市や故郷の青梅選び買ふ 小泉はつゑ
長男がまもる故郷の餅届く 早乙女成子
鳥かぶとすつくと故郷遥かなり 大野悠子
鳥となり瞰たし故郷の初景色 林昌華
鳥の巣や既に故郷の路にあり 石井露月
鳥の列穢として見ずや故郷恋へば 細谷源二 砂金帯
鳥雲に水の近江を故郷とし 桜坡子
鳥居出て故郷のごとし穂麦風 香西照雄
坪林檎太宰の故郷この奥二里 中村草田男
天の川故郷の空に傾きぬ 内藤鳴雪
添え乳していま燃え落ちる故郷の橋 小泉八重子
添乳していま燃え落ちる故郷の橋 小泉八重子
電線の雨のしづくの秋燕(故郷の丹波青垣町にて二句) 細見綾子
渡鳥誰か故郷を愛せざる 山口青邨
土筆呆け行かねば故郷遠きかな 奈良文夫
冬の森灯がつく妻の故郷よ 有馬朗人 母国
冬囲ふ故郷の誰にも会はず 角川春樹
冬雲が翳抱く故郷 乳房さがす 伊丹三樹彦
冬山の深いところに棲む故郷 十河宣洋
凍豆腐故郷の山河まなうらに 阿部みどり女
唐黍を焼く風ありて故郷かな 岸本マチ子
東京はわが故郷よ獅子ばやし 永井東門居
東京を故郷と決めて落葉焚く 白川宗道
東風の塵胸に吹きつけくる故郷 原裕 葦牙
桃ひらく故郷千代紙より稚く 植村通草
頭にふるる炎天の風故郷なり 原裕 『葦牙』
峠から故郷に来し紅葉かな 稲垣暁星子
禿山に ダダダ 故郷の工場音 伊丹三樹彦
汝が故郷とく見よとてや西日展ぶ 中村草田男
汝が故郷はなしと故郷の青葉木菟 滝本魚顔女 『絵踏』
二月空故郷竹林艶なりき 村山古郷
二荒嶺に秋雪父母の無き故郷 加藤親夫
日あたる故郷釣の餌箱のみみず跳ね 三橋敏雄
日と畦豆映れる水や故郷めく 中村草田男
日向ぼこ溶けて流れて故郷無し 浜崎敬治
日本が故郷栗の林に栗満ちて 阿部完市 無帽
濡れて来る猫いっぴきの枯れ故郷 河合凱夫 飛礫
葱坊主どこふり向きても故郷 寺山修司
葱坊主どこをふり向きても故郷 寺山修司
猫柳故郷にありし空の色 山田紀子
年~に桜すくなき故郷かな 藤森素檗
年とれば故郷こひしいつくつくぼうし 種田山頭火
年行くと故郷さして急ぎ足 行く年 正岡子規
馬の子の故郷離るる秋の雨 一茶
敗け独楽に故郷の日暮れ来てゐたり 山内佗助
梅は実に故郷の釣瓶いまもきしむ 成瀬桜桃子 風色
梅雨鴉泊る家なく去る故郷 金子晃典 『望郷独語』
白菊や対岸は父亡き故郷 永田耕衣
白朮火やふと故郷の炉のにほひ 藤崎実
麦の風故郷近くなりにけり 正岡子規 麦
麦秋の故郷に帰る遺骨かな 河野静雲
麦秋や誰か故郷をハーモニカ すずき波浪
麦秋を俯向き通る故郷かな 永田耕衣
麦飯匂へばしきりに故郷なつかしく 種田山頭火
麦藁の上に憩ひて故郷かな 池内たけし
麦藁帽振れば故郷寄せて来る 相原左義長「地金」
函館も故郷の一つ鰯雲 西本一都
畑より西瓜貰ふも故郷かな 中田多喜子
飯饐えて踏切の鳴る故郷かな 藤澤正英(鷹)
晩稲田の色濃き雨に故郷あり 宮津昭彦
緋の蕪の三河島菜に誇つて曰く 子規 (根岸の草庵に故郷の緋蕪をおくられて)
眉ひらく故郷三十二度とけふ 「方寸虚実」石塚友二
百姓の生きのすがた終身囚の如く老いこけて笑わぬ故郷 橋本夢道
病むわれに祇園会遠し故郷遠し 村山古郷
病めば故郷恋ふ日や薔薇花終へぬ 村山古郷
病得て今は故郷に虫の秋 鶴田栄秋
不知火を故郷に持てり枇杷をむく 栗木麦生
夫若く故郷出でし日多喜二の忌 石田あき子 見舞籠
父の日や夫に父あり故郷あり 小坂京子
父母ありて故郷の腰強き餅 元吉竹瓶子 『甲子』
父母と戻る故郷ながら秋の星 中島月笠 月笠句集
父母亡くて何ぞ故郷やつくつくし 池田弥寿
風の故郷が見えるいちにち茣蓙にいて 阿部完市
風の故郷が見える一日茣蓙にいて 阿部完市 絵本の空
風吹いて故郷明るし真赤な父 阿部完市 絵本の空
復帰者のここが故郷めき踊るなり 白井米子 『青浄土』
仏壇にカステラ 故郷の根深汁 伊丹三樹彦
分骨や一夜を故郷の天の川 池田蝶子 『草絵』
焚火離れて故郷を後にせり 平石和美
母ありてこそ故郷の盆をしに 豊田長世
母の渦子の渦鳴門故郷の渦 橋本夢道
母遺し雪降りかくす故郷発つ 福田蓼汀 山火
母逝きてより初凪の故郷見ず 柏田洋征
母恋ふと故郷のごと山枯るる 角川源義
放浪子酒下げ故郷の新年会 千保霞舟
法師子の故郷かたる焚火かな 伊藤虚舟
泡盛や故郷違ふ男らに 青木満子
亡き夫とここが故郷いぬふぐり 木村房枝
亡母遠し故郷遠し鰯雲 清水朱美
吠えて牛は巨き目をして母に叱られて故郷の痩せ 橋本夢道
北窓を開き故郷を恋う話 浦川哲子
墨染に故郷の秋の深からめ 中川宋淵 遍界録 古雲抄
朴ひらく故郷の山の名を知らず 岩田由美
盆花や麓にひらく青故郷 角川源義
盆菓子に手を出し 所在ない故郷 伊丹三樹彦
盆過ぎて但馬へ峠越えをせし(故郷の丹波青垣町にて) 細見綾子
盆荒の故郷をしかと見届けし 大牧 広
盆団子の白き故郷の客となる 有働 亨
妹と母うち解けぬ故郷の牛の大きい静かな目 橋本夢道
幕ノ内ニナツテ故郷ニ歸リケリ 正岡子規 相撲取
名月や故郷に似し山の嶺 池田トク
名月や故郷遠き影法師 夏目漱石
明易き故郷泊り水匂ふ 田中英子
綿虫が目に入る泪 喪の故郷 伊丹三樹彦
綿虫の顔についたる故郷塚 岡井省二 有時
孟宗を七夕竹として故郷 福永耕二
木の実降る故郷なき瞳のただよひに 鷲谷七菜子 銃身
木の実独楽故郷の匂ひして廻る 笹瀬節子
木の実落つ音まえうしろ 故郷である 伊丹三樹彦
木枯や故郷の火事を見る夜かな 寺田寅彦
木槿残暑川底の荒れて岩の背骨(故郷丹波芦田村二句) 細見綾子
木槿残暑日にさらされし顔ばかり(故郷丹波芦田村二句) 細見綾子
目薄くなりて故郷の梅に住む
夜と昼といづれが故郷夏祭 長谷川双魚 『ひとつとや』
夜日に故郷の土の白さよ暑さ厚く 中村草田男
野鼠の走るを遠目枯故郷 伊藤京子
柳青しここは故郷比叡も見ゆ 村山古郷
柳葉魚焼く学徒の唄に故郷あり 桂樟蹊子
柳葉魚焼く学徒や唄に故郷あり 桂樟蹊子
友増えて子には故郷祭来る 松田雄姿 『矢筈』
友等働く故郷や明るい栗の花 飴山實 おりいぶ
夕映えに出て葱抜いて故郷かな 飯田龍太
夕青嶺澄むを故郷として友は 松崎鉄之介
夕凪や人は故郷を捨てて佇つ 小澤克己
揚羽たかし川が故郷を貫くゆえ 寺山修司 『われに五月を』
雷走る葉煙草の野や父の故郷 鍵和田[ゆう]子 未来図
落花生畑の月も故郷なる 行方克己 知音
落葉道吾にも故郷ありしかな 市野沢弘子
藍刈やこゝも故郷に似たる哉 正岡子規 藍刈る
李白の故郷望む岸辺に花薄荷 松崎鉄之介
梨むくや故郷をあとに舟くだる 飯田蛇笏 山廬集
梨むくや故郷をあとの舟の中 東洋城千句
梨咲いて住み古れば吾が故郷とも 足立靖子 『梨花』
裏伊吹見せざる霧も故郷なる 百合山羽公 樂土以後
流あれば故郷めけよと柳挿す 佐藤念腹
旅に寝て故郷の春を惜みけり 春武
旅寐九年故郷の月ぞあり難き 月 正岡子規
両眼にみどり涼しき故郷の田 柴田白葉女
涼しさに胸をひろぐる施餓鬼寺(故郷の丹波青垣町にて七句) 細見綾子
陵は早稲の香りの故郷かな 石橋秀野
瑠璃蜥蜴故郷焼けて海残りぬ 中村草田男
老いても子に従わぬ母の頑固の故郷の秋茄子 橋本夢道
藁塚のもたれあふなどああ故郷 佐野まもる
蕨飯うまし故郷抜けられず 加藤亮 『山幾重』
厠出て故郷もっとも青きかな 橋閒石
厠出て故郷もつとも青きかな 橋閒石 卯
曼珠沙華もろ手をあげて故郷なり 鈴木真砂女
廬火に根雪かがやきだす故郷 飴山實 『おりいぶ』
恙なき故郷の山河初景色 岡野洞之
竈火に根雪かがやきだす故郷 飴山實 おりいぶ
脛毛濃く 泳ぐ 展墓で来た故郷 伊丹三樹彦
芒痩せて故郷の山曇る日々 橋閒石 雪
葭切に空瓶流れつく故郷 藤田湘子
葭切に故郷またも杭を打つ 滝佳杖
薔薇咲かせ遊学の外故郷出でず 松崎鉄之介
藺田青き師の故郷の忌に参ず 伊東宏晃
藺苗抜くいたづら鴉故郷のいろ 和田照海
蚯蚓鳴き故郷の夜道今も同じ 福田蓼汀
蠅いとふ身を故郷に晝寢かな 蕪村 夏之部 ■ 畫賛
螢飛ぶ故郷の夜道鞄提げ 福田蓼汀 山火
蟇歩く故郷出づる人に似し 太田土男 『西那須野』
襤褸買ひの陽をまるめ込む枯故郷 成田千空 地霊
雹噛んで臼歯なほ在り故郷かな 三橋敏雄
鰊焼くけむり故郷の匂ひ来る 谷 和子
鰤雑煮父母の故郷に縁なしや 茘枝
以上
by 575fudemakase
| 2019-05-01 03:54
| 無季
俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase

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