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●形容 の俳句

●形容 の俳句

小綺麗 婀娜 派手 ハイカラ 不様 不格好 貧相 野暮 がさつ 無粋 無造作 淫ら 颯と さっさと とっとと きびきび てきぱき はきはき しゃきしゃき すいすい そそくさ せかせか もたもた のろのろ やおら じっくり 難題 多難 くだくだし ややこし シンプル 簡単 平明 平易 朝飯前 身上 持ち味 重宝 徒ら 駄目 台無し

派手 の俳句


小綺麗

在祭帰郷の次男ら小綺麗に 奈良文夫
小綺麗に卯の花咲て仕廻けり 園女

婀娜

花*さんざし人避けゐれば婀娜めける 河野多希女
信貴詣梅散り婀娜を側近に 宮武寒々 朱卓
青蘆活け婀娜の死霊を偲びけり 飯田蛇笏 山響集
唐門に消えんばかりの雪の婀娜(あだ) 川端茅舎
夜光虫のむ息吐けば婀娜熱く 河野多希女 納め髪
婀娜をつれ軍靴をはきて夜寒かな 飯田蛇笏 雪峡

ハイカラ

なかなかにハイカラ好きで甚平着 清崎敏郎
ハイカラで明治生まれでセロリ好き(義父は慶應ボーイにて初期アイスホッケー選手なれば) 高澤良一 暮津
ハイカラな日傘と出合ふ軽井沢 高澤良一 燕音
ハイカラな瑠璃首立てゝ鴨巡る 高澤良一 石鏡
ハイカラはいきに同じや煖炉燃ゆ 星野立子
ハイカラ乞食森の二日に甲羅干す 平畑静塔
バラの卓夏菊の卓ハイカラな 高野素十
横濱のハイカラ橋に冬の虹(ベイブリッジ) 高澤良一 石鏡
襟高(ハイカラ)が華府の猛暑を身ぶりせり 筑紫磐井 婆伽梵
大輪の白朝顔はハイカラよ 京極杞陽 くくたち上巻
天道虫ハイカラな星七つかな 高澤良一 ももすずめ

不格好

ふくらんで風除く鵯の不格好 高澤良一 宿好

貧相

柿芽吹く貧相の木を改めず 百合山羽公
試着せし毛皮に靴の貧相に 高崎登喜子
貧相な花菜に遠野巡り果つ 高澤良一 宿好
貧相な山茱萸これはこれで好き 飯島晴子
貧相な春の横雲わが先に 飯島晴子
貧相な辛夷日が落ち風が出で 高澤良一 宿好
貧相な薔薇の咲きたる土用かな 鈴木真砂女
貧相に描かれし蛇涅槃絵図 茨木和生 往馬
頬被りして貧相をおぎなへる 上田五千石『琥珀』補遺
椋鳥の横貌ちょっと貧相な 高澤良一 石鏡

野暮

いたづらに力んでみせる蝉は野暮 高澤良一 寒暑
衣更へても女教師のどこか野暮 樋笠文
羽蟻降り教師野暮歌の眼をとぢて 能村登四郎
五十年野暮を涼しと過し来し 後藤比奈夫
江戸學はいふなれば野暮、ささ氷食へ 筑紫磐井 花鳥諷詠
色合ひも野暮な櫟の芽吹きかな 高澤良一 ぱらりとせ
通り野暮あいそつかしに抱一忌 加藤郁乎
釣人に野暮な問い掛け梅雨を云ひ 高澤良一 素抱
答案をくぶストーヴの野暮な蓋 楠節子
般若は野暮天を得てゴムを永遠にする 加藤郁乎
夜顔の実のたんと生り何と野暮 高澤良一 暮津
野暮ったき枇杷の咲き出す頃もよき 高澤良一 宿好
野暮の出る江戸研究や土用干 加藤郁乎 江戸桜
野暮の粋のとささやかれ返り花 檜紀代
野暮言ふな力を入れぬ負相撲 筑紫磐井 婆伽梵
野暮天につける薬とゐのこづち 中原道夫
野暮天のソメイヨシノといふ勿れ 高澤良一 燕音
曼珠沙花野暮な親父の墓の前 正岡子規 曼珠沙華
螢とぶ電柱といふ野暮なもの 鷹羽狩行

がさつ

いばらの葉がさつくを夏山の裾 細見綾子
がさつかせ茂みの虫を捕る雀 高澤良一 暮津
がさつくや膳棚までもむら落葉 鈴木道彦
雁来べくなるやがさつく手嶋蓙 鈴木道彦
靴出せばちちろがさつと 席ゆずる 西田三千代
雪渓の一つがさつに風の谷 高澤良一 素抱
猪の夜たゞがさつく落葉哉 正岡子規 落葉
朝寒やねればがさつく藁布団 芥川龍之介
目につくもの皆がさついて冬は来ぬ 高澤良一 宿好
臍むずとがさつきたりし秋茄子 岡井省二 前後

無粋

秋晴や背広無粋にあらはるる 後藤信雄

無造作

夏霧の髪無造作に勿来越え 岡本眸
解くときはいと無造作に雪囲ひ 古沼徹
柿の蔕無造作も斯く極まれば 高澤良一 素抱
桜餅籠無造作に新しき
散り了へし竹林の雨無造作に 岡本眸
秋草を無造作に活け日曜日 橋本瑞枝
猪の目のかわいて無造作な男女 瀬間 陽子
的射し矢抜くは無造作冬の鶏 北野民夫
冬畳とりすがる死の無造作なり 寺田京子
剥げ盆や無造作に山うどを盛り 中山純子 沙 羅以後
無造作に夏帯を解く何か落つ 野村久雄
無造作に夏布団敷く妻なしに 松崎鉄之介
無造作に祈る畳屋針供養 秋山夏樹
無造作に見えて確かに種を蒔く 椎野ひろし
無造作に辞儀而うして卒業奏 山口誓子
無造作に重ねし炭が炉火となり 山口誓子
無造作に重ね盛装白木槿 香西照雄
無造作に小僧ねて居る暑さかな 鞍風 其便
無造作に焼そば売られ夏日来る 加藤正尚
無造作に枢持ち去る霜の華 岸田稚魚 負け犬
無造作に僧出て萩を刈られけり 弟子 星野麥丘人
無造作に束ねて軽し洗ひ髪 吉崎ふみ
無造作に束の破魔矢や巫女溜 立花杢公
無造作に腸置かれ狩場小屋 池田由起
無造作に土筆を踏みて田に入る 本田 和男
無造作に燈台守は鱸提げ 景山筍吉
無造作に白きマフラー草城忌 岩井秀子
無造作に苗代おどし立てて去る 原田青児
無造作に万歳楽の鼓かな 子規
無造作に羊毛刈られてしまひけり 千葉 仁
無造作に蕨折る手を愛すなり 金田咲子
無造作に柩持ち去る霜の華 岸田稚魚
落ち襁褓春無造作に草に闌け 友岡子郷 遠方
緑陰へ丸太のベンチ無造作に 相原左義長「地金」
藪椿無造作に挿し人格論 椎橋清翠


淫ら

あぢさゐの 風出でてより淫らなる 櫻井邦彦
さくら咲き淫らなるまで満てりけり 草間時彦 中年
もくれんの開ききりたるやや淫ら 辻田克巳
淫らな唄雪降る青年集会所 草間時彦 中年
淫らな野球する野球人しびとばな 西川徹郎 家族の肖像
海の中淫ら男に泳ぎ着き 山口誓子
金粉の淫らならざる牡丹かな 阿波野青畝
五月闇躓くことは淫らなり 出口 善子
熟れ桃に西日の貌の淫らなる 飯田蛇笏
壬生狂言淫らなことをちとしたり 細川加賀
草餅はみどり淫らに供さるる 櫂未知子 蒙古斑
大きくて淫らがましき牡丹雪 殿村莵絲子 雨 月
誰のことを淫らに生くと柿主が 中塚一碧樓
梅も散りぬ煙草好きにて淫ら者 中塚一碧樓
梅咲いて喉を淫らに通う汽車 西川徹郎 家族の肖像
蝿二匹淫らに飛んで岩巨き 四ツ谷龍
壁爐燃えこころ淫らなるにも非ず 飯田蛇笏 山響集
霧の中淫らなるものゝ啼きつるゝ 久米正雄 返り花
蜃気楼市の淫らをみせにけり 龍岡晋

颯と

サイダーや萱山颯と吹き白み 董糸
一と枝の雪颯と落ちて森静か 久米正雄 返り花
牡丹守颯と牡丹を剪り去りぬ 飯島晴子
海松ふさの颯と大なり浪がしら 泉鏡花
寒雲と会ひ颯颯とオリオン過ぐ 山口誓子
三井寺に颯と湖水の時雨哉 時雨 正岡子規
山国の朝日は颯と青胡桃 藤田湘子 てんてん
松籟は颯と風花とばしけり 阿波野青畝
雪吊に白山颯とかがやけり 阿波野青畝
戦へば癩民の塚颯と撃つ 平畑静塔
線香花火颯としやしやりとつかまつる 山上樹実雄「四時抄」
草噛みし記憶の颯と春の鳶 藤田湘子
東風颯と調べかはりぬ琵琶の湖 三宅嘯山
湯壺へ颯と紅葉颪といふべかり 高澤良一 寒暑
風颯と雨月いよいよ確かなり 高澤良一 燕音
風颯と鷺の見へ来る青田哉 三宅嘯山
夜学生口紅颯とひきにけり 岩永佐保
恋猫に颯とたてがみのやうなもの いのうえかつこ
老僧の自転車颯と合歓の里 赤澤新子
颯と過ぐタカラジエンヌ花のみち 野村美智代
颯と消え少女や霧にすつと立つ 小池文子 巴里蕭条
颯と打つ夜網の音や春の川 夏目漱石 明治三十一年
颯と来信辛夷一片風に立ち 友岡子郷 遠方
颯颯と生者ばかりが菊をもつ 和田悟朗
颯颯と祓はるる厄初詣 奈良文夫

さっさと

あれは人焼く煙さ 鴉さっさと立つ 伊丹三樹彦
さつさと大根の種子まいて行つてしまつた 尾崎放哉 小豆島時代
どんと踏んでさつさと行けり春の雷 川崎展宏 冬
芦摘むとさつさと水に入りゆく 石田郷子
寒月を一寸仰いでさつさと行く 加倉井秋を
橋は雨のさつさと降に花火哉 寥松
橋を風屋さつさとわたる私ヘ 阿部完市 にもつは絵馬
芹摘むとさつさと水に入りゆく 石田郷子
形代の妻はさつさと流れけり 湯浅康右
五倍子をさつさと夕日通り過ぎ 岸田稚魚
三の酉来てはさつさと帰るなり 石田郷子
山雰のさつさと抜る坐敷哉 一茶 ■文化十年癸酉(五十一歳)
生前葬さつさとすませ大昼寝 長谷川櫂 虚空
送火にさつさと歸り給ひけり 正岡子規 送り火
虹太くこの世さつさと見限るか 小出秋光
夫がき蜂がくすたこらさつさとすさるべし 加藤知世子
風の丘さっさと梅を見てまわる 池田澄子 たましいの話
老衲のさつさと椿掃きにけり 清原枴童 枴童句集
甃の落葉さつさとしざり掃き 河野静雲 閻魔

とっとと

つつじ山とつとと下りて汗ばみぬ 上村占魚
寒鴉真顔とつとと田畦行く 中村汀女
鶏頭のとっとと昏れてしまひけり 高澤良一 暮津
子供神輿とつとと行けり父母の前 奈良文夫
二の酉のとつとと昏れてきし人出 兜木総一
棕櫚の花とつとと牛の寄つてくる 飯島晴子

きびきび

きびきびと応ふる寒に入りにけり 松本たかし
きびきびと解剖学者地虫出づ 黒田杏子 花下草上
きびきびと枯れゆくすべて手放して 岡本眸
きびきびと蛇籠づたひの薄暑かな 飯島晴子
きびきびと冬の朝日や横光忌 清水基吉
きびきびと万物寒に入りにけり 富安風生
ころころときびきびと母竜の玉 村上喜代子
やんまの眼きびきび仕事したきかな 村越化石
岳麓の朝日きびきび山吹に 高澤良一 ももすずめ
桔梗の露きびきびとありにけり 川端茅舎
厳寒や心きまればきびきびと 中村汀女
源流の梅きびきびと歩き出す 古舘曹人 樹下石上
絞り結ふ小手きびきびと小春凪 稲垣きくの 牡 丹
山中の冷えきびきびと神の顔 宇佐美魚目 秋収冬蔵
渋柿のきびきび落ちし嵐哉 巌谷小波
水仙をきびきび活けて一礼す 中村苑子
染め上げし藍きびきびと冬落暉 池上不二子
朝の職人きびきびうごき百日草 植村通草
唐辛子干す手きびきび坑夫の妻 加藤知世子 花寂び
優しかる蝶もきびきび振舞へり 相生垣瓜人 明治草
落款の朱のきびきびと冬の薔薇 池上不二子

てきぱき

てきぱきと桃の花枝の分れたる 八木林之介 青霞集
てきぱきと頭使ひて暑を払ふ 高澤良一 寒暑
夏帽をかぶり気軽くてきぱきと 成瀬正とし 星月夜
火鉢に火起こす役目をてきぱきと 高澤良一 寒暑
桐の木やてきぱき散てつんと立 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
作務衣にて望の仕度もてきぱきと 能村登四郎
暑に徹るこゑてきぱきとヘルパーさん 高澤良一 暮津

はきはき

はきはきと喉使ひぬ竜の玉 河合照子
はきはきと十一月の雨蛙 日野草城
はきはきと答へてをりぬ花八つ手 高澤良一 ぱらりとせ
はきはきと物言ふごとし山毛欅芽吹き 高澤良一 燕音
はきはきと物言ふ子供春立ちぬ 山田みづえ
山彦のはきはきとして青吉野 大石悦子
若僧の素足はきはき動きけり 好 泰子
初嵐はきはきとほる女ごゑ 鷲谷七菜子 一盞
忘年の雲はきはきと山越ゆる 石田晶子
連翹に空のはきはきしてきたる 後藤比奈夫
露けさの言の葉のまたはきはきと 岡井省二 夏炉

しゃきしゃき

しやきしやきと婆が働く大根焚 西村和子
黍甘ししやきしやき話す友の母 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
朝食は素顔しゃきしゃき独活を食ぶ 勝尾佐知子

すいすい

すいすいとのびて緑や梅の枝 長谷川櫂 天球
すいすいと水の奔れば菖蒲また 高澤良一 暮津
すいすいと雪飛ぶ仔牛耳張つて 石田勝彦 秋興
すいすいと草そよぎをり蛇苺 阿部みどり女
すいすいと竹の落葉のよぎる空 成瀬正とし 星月夜
すいすいと電線よろこび野へ蝌蚪ヘ 秋元不死男
すかんぽのみなすいすいと明るき野 加藤三七子
つと誘ひあとすいすいと道をしへ 鷹羽狩行
姥の爪芋茎すいすいむけてゆく 阿波野青畝
夏萩やすいすい夕日通り抜け 大野林火
鴨すいすい日曜画家の視野よぎり 高澤良一 石鏡
刈草のすいすい風にとぶを負ひ 高野素十
詰襟や風すいすいと黍の幹 宮坂静生 山開
枯草の中やすいすい土筆 正岡子規 土筆
手に提て螢すいすい光りけり 松瀬青々
初夢の海すいすいと渡りけり 鈴木真砂女 紫木蓮
暑の引きし頭すいすい働かす 高澤良一 寒暑
水中眼鏡女すいすい近寄り来 清水基吉
潮の香の風すいすいと目貼剥ぐ 田中田吉
白足袋はすいすいと行くものなりし 林翔
風花は桑のしもとにすいすいと 阿波野青畝
片蔭断つごと氷挽く肘すいすい出る 宮津昭彦
麻の中雨すいすいと見ゆるかな 高浜虚子
揚雲雀すいすい天の自動ドア 黒坂綾子 『黙契の虹』
螢火のすいすいとまたふんはりと 岸田稚魚

そそくさ

そそくさうきうき野良連の花見連 平畑静塔
そそくさと柿四つに切り剥きはじむ 岸田稚魚 紅葉山
そそくさと蛇穴に入る海蔵寺 高澤良一 ももすずめ
そそくさと水飲んで去る猫の恋 原裕 正午
そそくさと打ちてすみしよ鍬始 赤松[けい]子 白毫
そそくさと踏む蛇塚の凍土かな 大木孝子
そそくさと日の逃げてゆく氷かな 岸田稚魚
そそくさと麦踏み石を斫りにゆく 西本一都 景色
そそくさと彼岸婆とし出で行けり 石塚友二 磊[カイ]集
そそくさと便り書く春の火燵かな 村山古郷
そそくさと輪を画いて消え蠅生る 川崎展宏
そそくさに帰つてしまふ火事見舞 松澤 昭
めんどりのそそくさとして注連飾る 河村正浩
寒牡丹染井麟海そそくさと 日野草城
清水でそそくさ顔洗ひざま来し乳母ぞ 中村草田男
船問うてそそくさゆきぬ老遍路 五十嵐播水 埠頭
長子来てそそくさ帰る既望かな 小松初枝
登高に来てそそくさと降りてゆく 能村登四郎
百姓のそそくさ結び菰粽 百合山羽公 樂土

せかせか

せかせかとたゝけば崩る門の雪 正岡子規 雪
せかせかと背をこごめゆく海霧の街 角川源義
勤め人茅の輪せかせか潜りけり 高澤良一 暮津
耕のせかせかするよ道境ひ 飯田蛇笏 山廬集
波郷忌のせかせか参り許されよ 八木林之介 青霞集
裏山はせかせかと暮る餅配 茨木和生
蜥蜴そろそろ蟻はせかせか庭の昼 高澤良一 暮津

もたもた

疾うに葉を落とす木もたもたしてゐる木 高澤良一 石鏡
重陽の改札口にもたもたす 伊規須富夫
着膨れのもたもた脱いで診察室 高澤良一 宿好
法師蝉出だしもたもたして居りぬ 高澤良一 寒暑
霧の中バスはもたもた蔵王嶺へ 高澤良一 素抱
雉子親子やつさもたもた横切れり 後藤綾子

のろのろ

あひびきがのろのろ歩く蓮の花 日野草城
のろのろと起立する子や大西日 横山節哉
のろのろと春をよこぎる乳母車 柿本多映
のろのろと来し颱風の忽ち去る 右城暮石 上下
嘘の壷抱いてのろのろ蝸牛 小泉八重子
運動会のろのろ颱風海にあり 百合山羽公 樂土
炎天や動く歩道ののろのろと 鈴木康夫
啓蟄ののろのろ虫も四散せり 百合山羽公 樂土以後
穴守へのろのろ舟や初大師 長谷川かな女
穴撰みしてやのろのろ野らの蛇 一茶
真言の奥へのろのろ蟾蜍 穴井太 天籟雑唱
雪じめりしてのろのろと畦火かな 草間時彦
川上る馬鹿貝乗せし舟のろのろ 長谷川かな女 花寂び
風祭駅過ぎてのろのろ山ざくら 中原道夫 巴芹
流燈へ浮上のろのろ老カレヒ 秋元不死男

やおら

やおら起つ右が軸足そぞろ寒 高澤良一 素抱
やおら起つ緑蔭老人 笑み忘れず 伊丹三樹彦
やおら佇ち老人を撫す枯柳 永田耕衣
烏賊医長やおら脈拍とりにけり 高澤良一 鳩信
嘉儀候(かぎそろ)よやおら初日の梅心 鬼貫
大寒ややおら銀屏風起ちあがる 佃 悦夫
恋猫のやおらふりむく夜の坂 石崎素秋
恋猫のやおら振り向く夜の坂 石崎素秋
鰡はもう跳ばなくなりぬやおら寒 高澤良一 燕音

じっくり

いちじくの葉広じつくり安房に入る 宮坂静生 樹下
じっくりと骨の髄まで残暑光 高澤良一 寒暑
じつくりと時代に遅れ登山小屋 仲 寒蝉
じつくりと川見せてより鵜を馴らす 松田湖堂
じっくりと聞く耳持てり生身魂 高澤良一 暮津
じっくりと厠窓より初景色 高澤良一 石鏡
われら無口じっくり静寂垂れて雲 山岡敬典
夏蝶の地にじつくりと翅廻す 飯島晴子
菊咲いてじつくりと地を守りけり 平井照敏
空蝉をあつめじつくり老いゆくと 飯島晴子
虎杖の朝です墓がじつくり 北原白秋
紅梅をじつくりくぐる同行者 飯島晴子
田を植ゑし夜はじつくりと古茶をのむ 萩原麦草 麦嵐
夕立後じつくりと濡て鳥帰る 北原白秋


難題

軽口や難題かくるほととぎす 丸之 選集「板東太郎」
難題の解けず南京豆を噛む 富田潮児
難題をもたらせるごと宵の雪 高澤良一 随笑
難題を課してたのしむ紅葉忌 山口青邨
難題を突きつけらるるごと大暑 高澤良一 寒暑
難題を負ふごと蟻の歩の遅し 高澤良一 素抱

多難

芍薬やのこされし身の多事多難 渡辺金作

くだくだし

くだくだしき木犀の香に突っ込みぬ 高澤良一 石鏡
梅雨のラジオ早口にしてくだくだし 高澤良一 素抱
夢にまで出てくる蝉のくだくだし 高澤良一 暮津

ややこし

はこべらやこころごろごろややこしや 池田澄子 たましいの話
ややこしいお人ははづし泥鰌鍋 内田美紗 魚眼石
ややこしきインベンションを弾初に 満田春日
ややこしきこと棚上げの朧かな 手塚美佐 昔の香
ややこしきは皆先送り年を越す 高澤良一 随笑
ややこしきは棚上げにして吊忍 高澤良一 素抱
ややこしき坂の熱海の寒桜 高澤良一 さざなみやつこ
ややこしき名を苗札に書きにけり 細川加賀 生身魂
ややこしくなる前の蔓白南風に 高澤良一 ぱらりとせ
射干や私道くねくねしてややこし 高澤良一 素抱
神々の名のややこしき初神楽 大倉祥男
苗札にややこしき名を書きにけり 細川加賀
縫初にしてややこしき綻びや 佐山文子

シンプル

クリスマスツリー電飾シンプルに 高澤良一 石鏡
シンプルがベスト皐月の装身具 高澤良一 暮津
夏着数枚年金暮しはシンプルに 高澤良一 暮津

簡単

お化け屋敷呼び込み婆の簡単服(アッパッパ) 加藤晴美
ねむごろに苔を掃きをる簡単著 清崎敏郎
まんさく咲きしか想いは簡単になる 金子皆子
闇汁の闇簡単に完璧に 鳥羽富美子
引継もいと簡単に楠の蝉 高澤良一 寒暑
雨音や茶店簡単に秋冷 峠 素子
鴬や昼餉支度は簡単に 星野立子
海苔舟の簡単にして美しき 高田風人子
簡単なかすみ網かけ荘の番 城谷文城
簡単なり冬の虹たつ百姓家 森下草城子
簡単な芋の煮っころがしが夜食 高澤良一 寒暑
簡単な食事ストーブ蓄音機 京極杞陽 くくたち上巻
簡単な体・簡単服の中 櫂 未知子
簡単な筈があれこれ年用意 稲畑汀子
簡単な夫婦にあらず火取虫 永井龍男
簡単な文字を忘れて夏衣 川崎展宏
簡単にさうとも言へず春の海 杉野一博
簡単にスキーに行くと云はれても 稲畑汀子
簡単にすませ煤湯も暮れぬうち 中村曜子
簡単に見えてだうして松手入 高澤良一 暮津
簡単に好きだよなんて青みかん 板垣道代
簡単に黒い顔せり漁夫の妻 高見鷺城
簡単に出来て一皿菊膾 松本すみ子
簡単に春火桶置き座ごしらへ 高浜年尾
簡単に新茶おくると便りかな
簡単に人をくくりて白玉好き 高澤良一 素抱
簡単に生きる金魚を見本とす 高澤良一 素抱
簡単に挿木で殖えしものばかり 藤木呂九艸
簡単に則を越えけり春の猫 山田 弘子
簡単に追ひ出せさうな蟻地獄 伊藤凉志
簡単に了はらぬ年よ除夜も雪 高澤良一 暮津
金柑を煮る簡単な昼のそら あざ蓉子
袖囲ひして簡単を聴きゐたり 山田みづえ 木語
大陸は簡単服を吹いてゐる あざ蓉子
男来て青梅を買う簡単なり 森下草城子
鳥威し簡単にして旅に立つ 高野素十
店支度至極簡単夏祭 高澤良一 素抱
刀自の肌つまめば戻る簡単着 平畑静塔
島人の盆の晴着は簡単着 清崎敏郎
島人の盆の晴著は簡単著 清崎敏郎
麦の秋簡単服を着てゐたり 中尾寿美子
百合一輪からだ燃ゆるは簡単に 寺田京子
浜の涼簡単服の婆ふくらむ 上田五千石 森林
片思ひならば簡単オキザリス 津高里永子
蓑虫の蓑はおほかた簡単着 高澤良一 随笑

平明

究極の色は平明柿若葉 倉橋羊村(波)
薄氷の平明のむごたらしさよ 永田耕衣 物質
平明の蝶ねむり居り青薄 原石鼎 花影以後
平明や「花」でをはりし虚子俳話 川崎展宏
平明を佳しとせし師よ年尾の忌 浅井青陽子

平易

而して淡泊平易獺祭忌 川崎展宏

朝飯前

世の中の朝飯前や蓮清し 正岡子規 蓮
天牛の朝飯前の力かな 高澤良一 鳩信

身上

うすむらさき身上として寒あやめ 大橋敦子
阿波女踊り手付きが身上よ 高澤良一 寒暑
滑稽が身上なりしいちじゆくよ 栗林千津
熊手買ふ気っぷのよさが身上ぞ 高澤良一 燕音
七ツ倉持つ身上や御帳綴 杉山飛雨
松の花松に身上つぶすてふ 飯島晴子
身上のすべて二階に天の川 永井龍男
身上の雪吊にあり松にあり 岡本高明
身上の白を保ちて牡丹かな 鷹羽狩行
身上を捨てぬ古雛闇にゐる 赤尾恵以
素早さは栗鼠の身上青木の実 田中水桜
草の戸や身上見する葱坊主 野村喜舟 小石川
単純をわが身上に去年今年 稲畑汀子
目立たぬを身上とせり葛の花 関森勝夫

持ち味

さんしゆゆの持ち味曇れば曇る形(なり) 高澤良一 素抱
一枚の葉の持ち味や桜餅 龍野 龍
持ち味といふ色に出て蓼の花 鷹羽狩行

重宝

越冬や紅絹座ぶとんを重宝に 岡本眸
古扇なんどといへず重宝し 深見けん二 日月
紫蘇一本植ゑて何かと重宝な 坊城としあつ
重宝と松に落たる椿かな 如行
福引にあたりしものを重宝す 富安風生
福引に当りしものを重宝す 富安風生
冷麦茶ありて重宝しておりぬ 高澤良一 随笑
棕梠の葉の重宝したり蝿叩 小澤碧童

徒ら

顧て徒らなりし冬のごと 相生垣瓜人 微茫集
溝川や蛭徒らに石を吸ふ 中山白峰
書肆もたぬ秋の町徒らに長し 橋閒石
水引の穂をこきそを徒らに見をりけり 梅林句屑 喜谷六花
徒らに顔の大なる毛見が来る 内田百間
徒らに古塔ぞ聳ゆ秋の雲 臼田亜浪 旅人
徒らに啼いて身じろぐ冬の鹿 芝田教子
徒らに炬燵熱うす独居かな 高橋淡路女 梶の葉
崩れ簗水徒らに激しをり 高浜虚子
崩簗水徒らに激しをり
蜥蜴現る徒ら心頭を擡げ 高澤良一 寒暑

駄目

あれも駄目これも駄目な日柳の芽 加藤覚範
ビールなら頂くワイン駄目だけど 山田弘子
ペチュニアは雨にからきし駄目な花 高澤良一 暮津
みんな駄目寝ても妻子がかぶさり来る 石橋辰之助
もう駄目といふほど聞くチューリップ 玉村潤子
雨に風加はり花を駄目にする 高澤良一 ももすずめ
花粉金粉ぶつかけられて駄目になる 阿部完市 証
玉手箱開けては駄目よ初鏡 橋本敏子
歳旦吟それらしく詠む其処が駄目 高澤良一 随笑
散髪屋覗く冬帽「こりゃ駄目だ」 高澤良一 石鏡
初夢の途中駄目だと思ひけり 高澤良一 随笑
赤ん坊の昼寝妨げ駄目爺 石塚友二
日当りが佳すぎても駄目シクラメン 高澤良一 ももすずめ
日々落ちてかつらぎ庵の柿は駄目 阿波野青畝
梅に鶯きていて薬缶駄目になる 池田澄子 たましいの話
平成の駄目を見てをる雛かな 藤田湘子 てんてん
林檎は駄目柿はなんとか衰ふ歯 高澤良一 石鏡
鬱金香さういう叱り方は駄目 田口 武
臘梅を老梅と書く花屋は駄目 藤田湘子

台無し

おしくらまんぢゆう服台無しにしてをりぬ 高澤良一 さざなみやつこ
酔芙蓉台無しにする雨ならめ 高澤良一 暮津
浮かぬ空模様十五夜台無しに 高澤良一 石鏡


以上

by 575fudemakase | 2019-10-29 07:32 | 無季


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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