【逞し】

【逞し】

うしろより見る逞しき牛洗ふ 保坂加津夫

これを食とする満人と畑の向日葵逞しく 荻原井泉水

さし寄りて泰山木の花逞し 日野草城

パラボラアンテナ腕逞しく梅雨曇 山口青邨

ピカソ虚子ともに逞しその忌なり 林翔

ひそやかな冬芽と逞しき冬芽 稲畑汀子

マッチの軸頭そろえて冬逞し 金子兜太 少年/生長

メーデーの主婦の群列逞しき 和田博雄「冬夜の駅」

ラムネ呑む少年逞しのどぼとけ 酒向えみ子

遺児として逞しく生ひ年礼に 柏原絢

一畝の芋逞しく蜑住める 長山順子

夏菊の逞しくして親しめず 相生垣瓜人 明治草

夏川の逞しさもて汚れけり 岡本眸

夏痩といへど筆陣逞しき 阿波野青畝

蚊帳釣草逞しうなる四月かな 大須賀乙字

竿灯や四肢逞しき若者ら 佐々木ちてき

九時鳴りて月逞しくこほるあり 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく

桑負ひて若く逞し老農婦 相馬遷子

鶏頭の見上ぐるばかり逞しき 相馬遷子 雪嶺

枯るるものに向日葵の実の逞しさ 瀧春一 菜園

笹鳴きや柄の逞しき肥柄杓 鷹羽狩行

山ぼうし咲き利賀村は山逞し 野村仙水

山蟻のくびれし胴の逞しき 山口八重乃

山独活の土つくままに逞しき 坊城としあつ

山独活の土つくまゝに逞しき 坊城としあつ

車前草の穂も逞しく夏送る 高澤良一 素抱

秋草も相競ひつつ逞しき 相生垣瓜人 負暄

初電車娘の逞しき膝頭 吉江十志

新馬鈴薯や三児の母は逞しき 西山くにお

相槌の子の逞しや鍛冶祭 河内きよし

太股の逞しかりしばつたかな 野中 亮介

太腿の逞しかりしばつたかな 野中亮介

大寒や老農死して指逞し 相馬遷子 雪嶺

注連飾の逞しき縒男の子産め 鷹羽狩行

注連縄の逞しき縒男の子産め 鷹羽狩行 誕生

道の辺の馬逞しや寒に入る 相馬遷子 山國

日光街道走り代馬逞しき 臼田亜浪

薄物や背ナ逞しき僧来たる 原田廸地子(青海波)

飯をくふ顎骨は逞しきかな 片山桃史 北方兵團

腹這ひの西洋朝顔蔓逞し 高澤良一 暮津

盆の上に枝楪の逞しき 長谷川かな女

麻はかぼそく花咲く煙草逞しや 滝春一

明日といふ逞しきもの榾火燃ゆ 脇本星浪

夜桜や幹黒々と逞しき 石崎鬼門

夕顔の根の逞しくなりゐたり 高澤良一 暮津

老獪に八重葎より逞しき 三輪田育夫

囀や土偶に逞しき乳房 染谷佳之子

糶馬の逞し梶原乗せるべく 山口青邨

蜑の糞逞し島の枯れし端に 岸田稚魚 負け犬

逞しきいとどの腿に及ばざり 高澤良一 暮津

逞しき花の支度や杉の間 怒風

逞しき蝦夷のどぐいも枯れ初めぬ 石塚友二

逞しき芽立最も馬力葉椎 石塚友二 磊[カイ]集

逞しき樫の走り根達磨市 柿沼 茂

逞しき師の迎ふるに進学す 西岡正保

逞しき春草牛の舌といふ 高野素十

逞しき少女の膝に卯波果つ 高林文夫

逞しき松も眠るや春の雨 桃隣

逞しき冬こそ来つれ彼の漢 栗生純夫 科野路

逞しき浜木綿暮れしより鯖火 阿波野青畝

逞しき蕗のたうなり土蜂すぐ 角川源義

逞しき噴煙のもと種を蒔く 相馬遷子 山河

逞しき木に元日の虚空あり 飯田龍太

逞しき葉のさまうたて桐の花 黒柳召波

逞しや会式にまかる舟の僧 河野静雲 閻魔

逞しや左千夫の国の*ひつじ稲 岩田諒

以上