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高田風人子句集「四季の巡りに」を読んで

高田風人子句集「四季の巡りに」を読んで

       ふらんす堂 2016年9月25日


先づ 次句を佳作として挙げたい。


昔より熱海は湯町小正月

人知れず林中のこの赤椿

舟虫は人より先に生まれけむ

斯くて汝はいそぎんちゃくとして生まれ

短夜や朝に間のある手を胸に

健康は歩くことから木の芽山

花埃風神機嫌斜めなり

曼珠沙華この世あの世と人は言ふ

懐手解きて頷きくれにけり

その話秋風に聞き頷けし

犬ふぐり一国を成す程にかな

ここからの景色が好きで春の山

明易や又よその犬吠えてをり

コスモスや三連休の一日目

老舗らし鶯餅を買うてみし

乾杯はわが為といふ春の宵

春風に歩き通してしまひけり

どくだみと名札のありてはびこれる

蓮の実の飛びたるとまだ飛ばざると

急に声落としてふたり障子の間

当然や低きへ流れ春の水

描きをる人を見てその薔薇を見て

次の世の子供達かな園薄暑

下着からすっかり替へて梅雨に処す

昔からここは時計屋町師走

冬日あるのみ我が町のさびれやう

追ひかけて来ての御慶やうれしけれ

電柱の影にバス待つ日の盛り

泡見つつ注いでもらひしビールかな

祭神は明治天皇菊花展

差し当り欲しき物なし街師走

新緑や煉瓦を敷きて道となし

青柿と言へる程にぞ育ちゐし

この頃は励めと聞こえ法師蝉

貝割菜土のしめりも程良くて

一列に揃ひて葱や畝高く

赤椿お日さまに葉はてらてらと

ふらここの子や父のゐて母のゐて

一息といふは無理なり生ビール

後ろ手をつき涼風に空眺め

竜の玉昭和の御代は長かりき

花散るやひとひらの又ひとひらの

街薄暑パン屋はパンを茶舗は茶を

法師蝉鳴き継ぎ人は生まれ継ぎ


次いで特徴的なことを申せば、肝心な処での適切な言葉の斡旋があると云う点。

これは長丁場での経験が物を云う処で、後進がおいそれと追い付けるものではなかろう。次句の棒線部分に注目されたい。


薔薇を見るはじめてお会ひせし人と

春風や海はじめてと言う人と

根釣人二人一人は又上げし

風死すの言葉通りや汗を拭く

老いに鞭打ちてか然り炎天下

買物は午前が楽や街師走

孑孒の同じ仕草の浮き沈み

いふなればすべて私道や蜷の道

幹にある瘤の気になる夏木かな

敗荷やはや茎折れしものも多々

全くの大冬晴に朝の富士

人様の絵馬を読みもし初詣

こぼれをり見上げてやはり葛の花

三椏の三つにまじめに分かれ咲く

若布干しあり今日のものまだ濡れて


又次の句群は、一本調子の叙述の勢いを以って読者を絡めとりにくる。


蜘蛛の囲に人がかかりし騒ぎやう

冬浪や我を引きずり込みさうに

春寒や合点のいかぬ事多く

逝かれしと梅に病むとは聞きゐしが

これもこれもこれもさうなり蝉の穴

あらと見てゐるうちにふえ春の雪

思っても言へぬことあり春寒し

芦枯れてをりそれなりに景を成し

食後にと気を使ひくれさくらんぼ

何思ひをるにやなめくじり這ふ

破蓮や枯れゆくものに音のなく

青柿のひそかにいだく志

かみころしたるはあくびや懐手

生身魂とは言はれたくなく励む

朴落葉そんな季節に今年もや


次いで、加齢、老いを詠った句には 老いの率直があり好感をいだく次第です。


花万朶日本に生まれ古稀も過ぎ

老いぬれば寝るが健康明易し

さなきだに師逝き友逝き冬に入る

老いぬれば杖も身の内小六月

惜春や他人事ならず焼香す

老いに鞭打ちてか然り炎天下

歩きつつ掌を閉じ開き寒の内

老人の飛ばされ歩く野分かな

花散るやあの世とは聞くばかりにて

底紅やまだまだ生きたくぞと思ふ

生身魂とは言はれたくなく励む

赤き血は吾のもの秋蚊打ち得たり


最後に、夏木には篤と執心された御様子です


大夏木君子少なくなりにけり

大夏木しづかに諭されをる如し

一木やどこかに法師蝉のゐて

幹にある瘤の気になる夏木かな



以上 13年間の作品でした。

以上の作品を享けてこちらも大いに発奮せねばと思いました。

                      (高澤良一)


by 575fudemakase | 2020-04-16 06:56 | 句集評など


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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