【病院】

【病院】

いのち生く為病院の冬籠 石塚友二 玉縄以後

うまごやし病院のにほひここになく 及川 貞

サルビヤの火が消え霜の避病院 平井照敏 猫町

タンポポを踏み病院へ老いに行く 遠山陽子

ちるさくら病院船はわだなかに 三橋鷹女

トランプや病院更けて石蕗の雨 杉田久女

どんぐり拾ふ病院の許可時間 細見綾子

ひとつれだちて病院の夏景色 田中裕明 櫻姫譚

ビヤガーデン死の病院をそこに見て 山口誓子

ビル風に涼んでゐたり病院裏 高澤良一 暮津

ベッドより別の病院見て師走 里見善三郎

まだ宵を病院の火蛾すぐ打たる 及川貞 夕焼

まだ宵を病院の灯蛾すぐ打たる 及川貞 榧の實

みかへりて去る病院のぎすの崖 下村槐太 天涯

ゆるくゆるく過ぐる病院の一日よ忘れいし生命の速度を思う 高安国世

ルカ病院の雀がとんで紫苑濃き 加賀美子麓

わが師走即ち一児病院に 石塚友二 光塵

安倍童子と病院前にころびしは 阿部完市 純白諸事

胃洗うて病院桐の秋濶し 飯田蛇笏 山廬集

胃洗ふて病院桐の秋濶し 飯田蛇笏

稲青し窓枠額として絵なり(香里病院に西東三鬼氏を訪ふ) 河野南畦 『黒い夏』

衛戌病院いで来て春の少女たり 岸風三楼 往来

遠く白く母の病院雁渡し 鈴木鷹夫 渚通り

音強く日傘をひらき病院出る 橋本美代子

夏うれふ病院の樹々みな黝し 飯田蛇笏 白嶽

夏休みペット病院満員に 塙 きく

夏山の病院高し松の中 夏山 正岡子規

海市見に子供病院看護婦長 折井眞琴

寒波来し病院にあり骨撮す 田川飛旅子

患者皆着膨れ病院狭くする 高澤良一 随笑

眼の病院探せば春の山、山、山 石井小嵐峰

棄てギプス病院の秋深まれり 山口誓子

久方の麻生病院院長風邪 塚本邦雄 甘露

急性腎炎のため慶応病院へ入院す 田川飛旅子

泣くもあり泣かねば冬の月を見る 八束(十二月十一日十八時九分妻に病院の一室にて逝く)

栗実りをり病院のうしろにて 飯田龍太

原爆病院その初夢は聞かでもと 平畑静塔

吾子と菊壁を病院のものたらしめず 篠原梵

御降りの病院の道林貫く 石田波郷

向日葵の花頭 むきむき 脳病院 伊丹三樹彦

三ッ星や冬の病院煙出て 岩田昌寿 地の塩

散るために病院に来し沙羅の花 朝倉和江

子と並び寝てゐるや杏時置き落つ(金沢内田病院にて太郎出産) 細見綾子

子等を夢見て病院淋し石蕗の雨 杉田久女

死ぬために病院へゆく蝶の昼 吉田汀史

死ぬために病院へ行く蝶の昼 吉田汀史

手毬の子消えて脳病院の塀 静塔

秋の蝶病院のどの屋根越え来し 橋本多佳子

秋袷日日病院へ通ひけり 杉田久女

秋雨の病院見てゐき職失せき 岩田昌寿 地の塩

終へぬ稿もてあましつつ厄日来る(九月三日清瀬市東京病院に入るときまる) 角川源義 『西行の日』

宿世断つ神等去出の海渡りけり(家人を病院において隠岐に渡る) 石原八束 『黒凍みの道』

春逝くを病院の出口まで見て 和田悟朗

春雪の病院の籬低くなりぬ 石田波郷

春泥を砂利でまぎらし病院建つ 津田清子

初詣せず病院に詰め通す 石井 保

初秋刀魚病院食に出されたり 高浜年尾

樟若葉ももいろ脳病院の樹なり 山口青邨

人を送つて病院の門を出ると海風 栗林一石路

水無月のまだ昏れきらぬ病院食 鈴木真砂女 紫木蓮

聖病院夏の夜あけに子を賜ふ 山口誓子

青梅の頃と病院にて話す(夫入院) 細見綾子

窓どつと殖ゆ夕凍ての病院は 飯田龍太

草じらみ脳病院と塀ひと重 渡邊白泉

其の上(かみ)の病院船は氷菓いろ 高澤良一 寒暑

大方は病院で死ぬ花見の衆 伊丹三樹彦

朝ぐもり不法人居に似たるかな(六月二十四日、清瀬の国立療養所東京病院御赦免となる。されど肝炎にをかされゐたり) 角川源義『西行の日』以後

天才は病院にをり黒蜥蜴 鳥居真理子

冬瓜汁病院食に何處か似て 高澤良一 寒暑

冬長し病院にゐて家にゐて 右城暮石 句集外 昭和五十三年

冬日向渡り歩いて病院へ 高澤良一 宿好

東京の病院に一夜明易し 阿部みどり女 『石蕗』

豆飯来病院食は摂らざりき 石田波郷

乳しぼり捨てゝ吹雪となりゐたり(淀橋病院にて三句) 『定本石橋秀野句文集』

年の市抜けて子の病む病院に 石塚友二 光塵

脳病院まづ一反を耕せり 須佐薫子

脳病院五時の鐘鴨る竹瓮かな 宮坂静生 山開

脳病院梅雨びしよ濡れの氷降ろす 岸田稚魚 負け犬

梅雨の馬いななく脳病院の裏 西東三鬼

白く旗なす病院教會爆心地 三橋敏雄

白粥の病院食の寒さかな 石塚友二 玉縄以後

白夜なるハンセン氏病院灯りをり 石原八束 白夜の旅人

氷の月公病院の畑照らす 西東三鬼

氷岳の見える病院 コップの無色 伊丹公子 アーギライト

病院がわが家のごとし瓜刻み 石田あき子 見舞籠

病院がわが家の秋の夕かな 久保田万太郎 流寓抄以後

病院が栖となりぬ年の暮 石田波郷

病院で過ごす予定のお正月 星野 椿

病院で絹を燃やしてくるしみ居り 阿部完市

病院とスーパー近しちちろ鳴く 横田安子

病院とヒマラヤ杉と冬深む 金田咲子

病院にとぶ蝙蝠は誰が化身 山口誓子

病院に一夜寝て秋の彼岸かな 村山古郷

病院に花舗ありすでに菊の秋 水原秋櫻子 餘生

病院に急ぎてをれば寒からず 岩田昌寿 地の塩

病院に居る安けさの秋の雨 村山古郷

病院に妻のこしきて萱黄なり 大野林火 早桃 太白集

病院に妻の戻れる二日かな 高村寿山

病院に所属蝙蝠暮れて飛ぶ 橋本美代子

病院に精しい犬ら枯芝に 中島昂

病院に聖堂ありてイースター 高浜年尾

病院に漸く馴れぬ雪柳 村山古郷

病院に追儺なし蕎麦さげ見舞ふ 及川貞 夕焼

病院に通ひなれたり麦の秋 阿部みどり女

病院に母を置きざり夕若葉 八木林之助

病院に煉瓦の花壇小鳥来る 花田由子

病院に擔架かきゝし雪おとす 横山白虹

病院のアナウンス嬢咳き込んで 谷村千恵子

病院のうしろにさくら逃げられず 山崎聰

病院のエレベーターに乗るビール 紅谷順子

病院のかへりをあそび獺祭忌 大石悦子 百花

病院のかゆの中から時計が出る 阿部青鞋

病院のガラス春雲後続なし 橋本多佳子

病院のチャイムが告ぐる晩夏かな 細見綾子

病院のともれる窓は黄に涼し 山口青邨

病院のベッドに去年や今年なる 石塚友二 玉縄以後

病院のベッドに吾や小つごもり 石塚友二 玉縄以後

病院のもとより暗き梅雨廊下 波多野爽波 鋪道の花

病院のユーカリにほふ春の闇 中村草田男

病院の一菜にして木の芽和 高浜年尾

病院の影のび耕す人帰る 金子兜太

病院の影出て遊ぶ花辛夷 飯田龍太

病院の奥へ氷塊引きずり込む 西東三鬼

病院の屋上に出て花火見る 岸田稚魚 紅葉山

病院の屋上濡れてクリスマス 岸田稚魚

病院の夏雨つよく花卉にふる 飯田蛇笏 白嶽

病院の岩窪の霰夜光る 西東三鬼

病院の帰りカツ買ふ四月馬鹿 沢木欣一

病院の空気を吸って石蕗の花 森田智子

病院の空地のありて土筆萌え 高浜年尾

病院の月日は巡る七夕も 高浜年尾

病院の妻の正月我が正月 右城暮石 句集外 昭和三十六年

病院の自動車の美き赤痢かな 日野草城

病院の出口はふたつ蛇の衣 沢田正博

病院の出口はや暮れ焼芋屋 中村明子

病院の出窓々々の枇杷の雨 高浜年尾

病院の深部より生ゆ夜の煙突 藤本春緒

病院の真上の二月澄みにけり 金田咲子

病院の人踏まぬ雪消えはじむ 右城暮石 声と声

病院の正面淋し秋灯 京極杞陽 くくたち上巻

病院の聖樹金銀モール垂る 山口誓子

病院の西日の窓の並びたる 五十嵐播水

病院の静かに混める花曇 中村汀女

病院の窓あたゝかな人影うごく 種田山頭火 自画像 層雲集

病院の窓に顔ある暮春かな 池田秀水

病院の窓の小春を楽しめり 高浜年尾

病院の窓一羽の秋の鳥が占め 岸田稚魚 紅葉山

病院の足場組むクリスマス前夜 橋閒石 無刻

病院の大部屋に生く良夜かな 三浦勲 『生きる』

病院の第一夜経て社日かな 村山古郷

病院の中庭暗め秋の猫 西東三鬼

病院の長き廊下の寒さかな 岡村柿紅

病院の庭は武蔵野緋連雀 村山古郷

病院の庭広ければ小鳥来る 今井杏太郎

病院の冬の夜いつか時刻過ぎ 高浜年尾

病院の燈も年の尾に近づきつ 山口誓子

病院の匂ひ抱ける薔薇のにほひ 橋本多佳子

病院の背の立つて川涸れにけり 中戸川朝人 星辰

病院の梅雨の貯水池あをみどろ 飯田蛇笏 白嶽

病院の売店で買ふ花の種 吉成葉留子

病院の壁にぎっしり無精卵 守谷茂泰

病院の壁に囚はれ祭囃子 橋本多佳子

病院の変らぬ日々や梅雨あける 鳥沢まさ江

病院の母との間の雪ぎつしり 猿橋統流子 『丹波太郎』

病院の味みなうすししもつけ草 阿部みどり女

病院の門を出づれば冬の月 寺田寅彦

病院の薬臭霧に層をなす 三好潤子

病院の夕は冬も水うてり 横山白虹

病院の夕餉は早し木瓜は実に 柳沢健一郎

病院の裏奔流と黄鶺鴒 飯田龍太

病院の廊下鏡の夜半の夏 中村汀女

病院の六十年史子連れの油虫 橋本多佳子

病院の廣場の南風に郵便車 飯田蛇笏 白嶽

病院の枳殻の垣の花咲きぬ 横山白虹

病院の煖房に菌あたたまる 辻田克巳

病院の驟雨に濡るる老パイプ 山口誓子

病院は軍艦に似て終戦日 高澤良一 素抱

病院は緑陰ナースは白き風 高澤良一 随笑

病院へゆく糸瓜忌をこころかな 細川加賀 『玉虫』

病院へゆく素手さげて十二月 石原舟月

病院へ愛一すじの鮃煮て 塚崎なみ枝

病院へ寄らでかへりぬ汗にまみれ 瀧春一 菜園

病院へ帰る刻来る銭葵 佐藤鬼房

病院へ行く道いつも汗を拭く 横光利一

病院へ妻が行く日や天道虫 雨滴集 星野麥丘人

病院へ植田のすべて水澄めり 右城暮石 句集外 昭和二十七年

病院も寺も一と谷戸雁渡る 龍男

病院より帰りて土用鰻食ふ 村山古郷

病院より枯野来しかど臭は脱けず 山口誓子

病院をよぎる登校児鳥渡る 石田波郷

病院を出でみるこの世むし暑し 徳武和美 『梅の香をり』

病院を出る木枯の左より 岸田稚魚 紅葉山

病院を出る老人や春の雨 岸田稚魚

病院を数歩出でたるさくら狩 高浜年尾

病院を抜け出してみる初もみぢ 高澤良一 石鏡

病院を抜け来し患者合歓あふぐ 高澤良一 石鏡

病院を訪ふたのしみも子等の秋 松村蒼石 寒鶯抄

病院を夕ベ戻りて竹の秋 星野麥丘人

病院一の弱虫患者黄水仙 石田波郷

病院一の弱蟲患者黄水仙 石田波郷

病院機軍医の視野の雲となる 伊丹三樹彦

病院機枯野に貨車を見失ふ 伊丹三樹彦

病院食に生粋の芥菜をつけよ 鮫島康子

病院食もそもそ食べて夏七日 鈴木真砂女 紫木蓮

病院食茄子も胡瓜も色冴えず 鈴木真砂女 紫木蓮

病院食好きなカツ出て春の昼 村山古郷

病院船海豚に花は棄てらるる 平畑静塔

病院船港に入りぬ鳶の秋 椎橋清翠

病院船酷熱看護婦らめまひ 長谷川素逝 砲車

病院船静けき月の海ゆける 河合凱夫 藤の実

病院船晩餐の僧いや哄ふ 平畑静塔

病院船牧牛のごとき笛を鳴らし 平畑静塔

病院船夕ざればかの鷹群れたち 佐藤鬼房

片壁が残る病院跡炎天 大野林火 早桃 太白集

母となり出づる病院春日傘 溝上青甕

望遠鏡と遊ぶ波郷や冬雲雀(東京病院) 細川加賀 『傷痕』

枕元にさしてくれてうちの萩もと思う萩(富山中央病院) 荻原井泉水

綿虫の浮遊病院の屋根越せず 榾本多佳子

綿虫の浮游病院の屋根越せず 橋本多佳子

木造病院の長台風にころぶ 平畑静塔

癒ゆるなし軍病院の落花以後 肥田埜勝美

来信は梅の青梅(おうめ)の病院より 高澤良一 素抱

雷鳴や脳病院に容赦なく 森田智子

涼しげや病なくて何と病院に 正岡子規 涼し

冷やかに病院草履地をふめば 飯田蛇笏 春蘭

冷房の病院を出て影小さし 高瀬星子

捩花や病院に父捨て来たる 大屋達治 龍宮

旱害に遠く消耗病院あり 藤木清子

稻の香に人居らずなりぬ避病院 稲 正岡子規

藺を刈るや土手越に見る避病院 内田百間

蝙蝠がゆきて病院燈がともる 橋本多佳子

以上