小島健 第四句集 「山河健在」を読んで
小島健 第四句集 「山河健在」を読んで
(2020年6月15日 角川書店)
小生の共鳴句を最初に挙げて見たい
昭和の日空壜吹けばボーと鳴る
鉄鍋を鮑這ひ出づやるまいぞ
直立の八月またも来りけり
春の蠅少し歩けば憎からず
蜂の子を食べて銀河を帰りけり
夕雨に消ゆるしはぶき官庁街
一瀑の一刀となり冬の山
大勢でお墓たづねてあたたかし
ペリカンの水噛みこぼす大暑かな
稲の穂のふくらみ指が覚えをり
螳螂は腹を重たく飛びにけり
初つばめ地に生ゆるもの柔らかく
白魚の眼玉最も泳ぎけり
茸山だんだん鼻の利いてきぬ
次いで、【音】【酒】【色】【はっきりした色】に纏わる句を索いてみた。
【音】
夕星や鯨ぶつかる音したり
蔵王堂の鐘の音より花吹雪
山中の音にはじまる初時雨
行く年の水音いつか身を離れ
夕ぐれは別の水音花菖蒲
街音の混じりてゐたり作り滝
鐘の音にこぼるる山の零余子かな
秋冷の川音来る石鼎庵
羽音なき虫を遊ばせ枇杷の花
行く年や草の中より水の音
【酒】
更けてよりそろと吉野の濁り酒
春宵の金箔浮かぶ加賀の酒
昼酒の長くなりたり走り蕎麦
雨脚は太きがよろし冷し酒
猿酒を飲んで山賊踊りかな
年酒酌む李白も杜甫も来りけり
春めくや立飲み酒場早や灯り
【色】
立春やゆつくり夜の色となり
風音に暮色はじまる芹の水
紅梅や空を流るる水のいろ
鳴き交はす鍋鶴暮色早めけり
【はっきりした色】
はまぐりの肉の中より白き蟹
猪鍋や黒々と山のしかかり
海牛の角紫に春立てり
先がけの綿虫青き瀞の上
青空にずぶと踏み込み蓮根掘
いづくにも和紙の白さやお正月
立山を浮かせる青田一揆の碑
黒蟻の畳を這へる葬りかな
青大将捕へし網のうねりかな
夕風のあをく流れて糸瓜棚
ざりがにの骸を白く秋の風
青墨を磨つて残暑に抗へり
崖氷柱厚きところの青まさり
あたたかや白く癒えたる鯉の傷
初桜真白き名刺交はしたり
あをあをと山のかぶさる洗ひ鯉
稲の花空は朝より青きまま
そして尚 佳作は尽きない。詩語としての言葉を畳みに畳み最少表現で
詩心を獲得している。
日本の屋根美しき初詣
夕されば常のこゑなり初鴉
目隠しの眼がさまよへり福笑ひ
白鳥のこゑを汚して餌を欲りぬ
豆餅をふうふう吹いて妻の国
道行きのごとく三寒四温かな
薄紙の中の紅菓子春の雪
やはらかき土に踏み込む梅見かな
流木を焚く火の色や鳥帰る
男らは手ぶらが好きよ野に遊ぶ
午後からのしづかな雨や菜飯食べ
今日巡る花の山見て蕨飯
花どきの枕頭にあり山家集
今年竹伸びきはまりて一つ星
月光に張り付いてゐる守宮かな
鳥につき渚歩めり秋初め
父と見しサーカスありぬ草の花
甲斐と諏訪結ぶあたりの冬霞
冬ざれの影を持たざる川原石
冬眠のさぞ美しき蛇の舌
猪食つてにはかに真闇来りけり
流れ着くものをまたいで都鳥
石蕗の花明りを辿り曾良の墓
水仙のかたまつてゐる日差しかな
慈雨滲みて眠り足りたる春の山
龍太大人手製の箒春日さす
水底に日を入れてより蜷の道
年々に花の匂ひを濃くしたり
春雨や灯の揃ひたる神楽坂
浮苗をなほす大股夕日影
今年竹激しき雨を喜びぬ
駄菓子屋の日除いつもの婆がをり
あらくさの蔓の遊べる梅雨月夜
草笛に浅間山は雲を脱ぎにけり
白樺の薪山積みに大夏炉
舟虫にその距離確と測られぬ
川波の飛沫にこゑや夏料理
月の出や棘ある草をやはらかく
天高し少し猥らに地曳唄
南無零余子こぼれて土に還りけり
島々は津波に痩せて昼の虫
重なりし鳥の足あと秋の浜
浜菊の茎の強さを恃みとす
波郷忌といへば綿虫深大寺
捨てられぬ本動かして年の暮
あららぎを含めば飛騨に雪来るか
雪になる雨を聞きをり蕪蒸
ふつくらと豆煮あがりぬ夜の雪
若布刈舟長棹とんと岩を突き
刈竿を若布の上に舟帰る
大仏の胸の広さよ松の芯
鷭の子のまたも浮葉を踏み外す
追はれたる鶏の突つ込む麦畑
青蜥蜴石を冷たくしてゐたり
(蔵を冷たくは飯島晴子であった…)
日の中に蜥蜴の喉の皴ふるふ
しばらくは夕日を吊し釣忍
次々と着地の田鶴のはづみけり
鶴涙の塒を月ののぼりけり
花街の灯の入りばなを初時雨
(大正だね)
まつさきに鳥ごゑ暮れて冬至かな
雪山へ響く新嘗祭の笙
雪の嶺々奥のもつとも輝けり
岳父逝く
雪晴の中へ柩の浮きにけり
龍太忌の日の強くさす竹箒
春暁や鴉のあとを雀鳴き
雀らのこゑよくまろび春障子
生者には晩年のあり蜆汁
玉虫のごと褒めらるる死後ありや
雷の落ちたる後の真の闇
なつかしきこと多くなり夜の秋
兄妹のほどよき距離よ鳳仙花
新涼や知らぬ赤子を妻あやし
寝そびれて芭蕉の雨を聞いてをり
野に山に兎走らす今日の月
客待ちの貸馬肥ゆる草千里
冬瓜汁淡きまじはりこそよけれ
薄き斑を日にあたたむる冬の鹿
大鍋の鱈汁噴けり日本海
除雪車の吹雪を照射して進む
揚雲雀空の奥にも空のあり
野遊びの終ひは大き月上げぬ
夏燕明るき雨をかいくぐり
鏡中に夕立の来る祇園かな
蚊帳吊草裂けば涼しく匂ふなり
緑蔭を影新しく出でにけり
ややありて砂のこぼるる蟻地獄
秋深し子らの名前を寝言妻
綿虫の次第に松を遠くせり
初鴨や山湖にはかに緊まりたる
日溜りを広げてをりぬ落葉搔
(高澤良一)
以上
by 575fudemakase
| 2020-07-04 17:30
| 句集評など

俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase
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次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
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尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
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[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
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[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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