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安倍元気 第三句集 「一座」を読んで

安倍元気 第三句集 「一座」を読んで
(平成22年5月5日 社団法人日本伝統俳句協会)

先づは当集の白眉として挙げて置きたい作品を紹介してみたい。


お伊勢よりはや神楽衆来たりけり
島の灯のあらかた消えて夜光虫
陶枕や真逆様に落ちる夢
どの浦の精霊舟ぞ破れもせで
遠目にも菰あたらしく冬の墓
天上に大風後の月はやし
蠅を追ふほかに看取りのすべはなく
昼月やまた一発の猿おどし
白鳥の翼に透けて骨の影
歳晩や銀鱈に味噌まつたりと
でこ貼るや雪見障子に糊のはね
春粧の麻布十番あたりかな
うしろから東踊の戻りらし
海猫のすね鳴きしたる葛嵐
海舟の書と幽霊が寺宝かな
炎天の下天照大御神
秋はむらさき萩草牡丹式部の実
川船や欅紅葉の下より出
白隠の白寿図かけて朝寝かな
山門は隠元の書や鳥雲に
掛けあるは嫦娥(じやうが)の幅や月の寺
冬波や貝殻節がきれぎれに
ももいろの志野に春意のおのづから
草鎌の印や本山永平寺
夏籠や蹠に板の間のつめた
昼寝より覚めれば父も母もゐず
大根一蕪一芋の畝二列


【青森・津軽・弘前】
笛の子がちよと手を挙げてねぷた過ぐ
鍛冶町をまがれば戻りねぷたかな
下北の遠く見えくる枯野かな
凧売のはすむかひなり暦売
がさ市の十両てふは藪かうじ
音頭取る婆三人や十三湊
李麗仙ねぷた囃子に腰うかせ
蹴りながら帯をほどくやねぷたの夜
下北へ下北へ鮭颪かな
ねぷた笛ふきつつ横目遣ひけり


【土地の言葉】
土地もんの踊でねえべ手さ違ふ
ここさ来て坐れと藪蚊はらひつつ
湯湯婆のこのごつごつがよござんす
聞いちうに言いちうにとて新酒酌む


次いで 更に佳什を拾うと以下の多様な作品群に出逢うのである。


枯蘆をゆく一漕ぎに一揺れし
くつさめにひよいと潜くや鳰
己が分ざぶとあふるる初湯かな
永き日や八重山蕎麦(ソーキ)の骨をぽくと噛み
花筵風にあふられつつ畳む
お遍路といへばいへないこともなく
おほいなる穴掘つて春惜しみけり
笹粽越後の乳母のハナより来
浜明けて跣足で踏める花火屑
東京の人が来てゐる胡瓜漬
しみじみとアイスキヤンデー棒一本
いまはもうへくそかづらの木と言はむ
水の面のびいどろめきて冬支度
祠までさへぎるもののなき冬野
千代紙の継ぎ当ててあり歌留多箱
とんとんと揃へ百人一首かな
板きれにどんこと書きて梅の市
鉾杉の上に鳶やお中日
やはらかく草に棘ある卯月かな
梅雨入の葛根湯ぞ濃くとかし
睡蓮の切れたるところ水湧けり
踊見の二階の衆の居ずなりぬ
もどり来てその踊子のことばかり
大石を探すことより芋煮会
女衆は芋剥き我ら火を熾こす
座を移し投扇興のはじまれる
虚子の忌のどどーんどどーんと大太鼓
二三日乗込鮒のことしきり
蘆花書院卯月ぐもりの手暗がり
岩魚焼く林檎の割木たんと積み
月夜見尊の杜よ蟻地獄
耳奥に虫鳴く雨月物語
啼けば目を遣ればまたまた白鳥来
干し広げたる鯖節も冬の色
三等は亀の子たはし暮の市
大根焚蓮華王院までにほひ
お使ひの蛇にも供へ凍豆腐
おつもりはじやつぱ汁なる句座始
種ものの知らせやいまだ祖父宛で
塩焚いてひとり浜ひるがほの中
目高の子ほていあふひの根をくぐり
金椀(かなまり)に新茶まゐらす飛鳥仏
水音のすれば葭切そこらぢゆう
新じやがを掘りあげてさて昼とせん
潟よりの風や日除をふくらませ
夏安居の河童の甲羅ちふを見せ
盆棚やご先祖はみな命(みこと)にて
ちよちよんげは夜這の唄ぞ天の川
紅東男爵そして里の芋
いつの世の力士の碑かや草紅葉
磯近き宿に目覚めて鶏皮(そぞろさむ)
商ふは千振その他束ちさく
この径を来れば熊除け威銃
すうと開く書院障子や花八つ手
木の実降る山の容のかはらねど
消えさうな炉火とはいへどありがたき
ちやんちやんこ掛けてあるなり父の椅子
夫婦して炬燵にあれば余生かな
柚子湯でて荷風日記のそのくだり
冬山やもう敷いてある宿蒲団
とつつきの蜜柑山より登り出す
お初穂や蜜柑一箱酒一斗
春窮の坂東五郎一座来る
万巻の書を読み蕗の薹を摘み
聖絵に春の日傘のお上人
蜂光る戦死の墓のみな大き
桜蘂はらひ昼餉の座となせり
対岸も梅雨の出水を見に出をる
俵むぎ菅江真澄の墓に揺れ
秋田・花輪
雨ながら祭屋台のきんきらきん
熊笹に来て夕立のはげしかり
鴨丸煮南瓜タルトに新ワイン
呼び込みがぽつぺん吹くやくんちの日
母留守の布巾かけあるふかし藷
火をとめてなほふつふつときりたんぽ
しよつつるやこの人数に鍋ちひさ
お雑煮の餅の数など聞きに来る
持ち替へてちりめん山椒戎笹
ぞろぞろと戻るや野火に酔うた顔
怠ればたちまち流れあめんばう
天高く次の列車は二時間後
聞いちうに言いちうにとて新酒酌む
水桶に茸さらして坊厨
捧ぐるや新穀新酒餅秋果
待宵の銘仙にしてひんやりと
まだあるぞあるぞあるぞと藷掘れる
鮭紅く鱈子筋子も紅く市
クリスマスリースの鈴に雪重た

(高澤良一)

以上

by 575fudemakase | 2020-07-10 09:24 | 句集評など


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


by 575fudemakase

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(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
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例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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