童女.赤ん坊.稚児等類語関連語
童女.赤ん坊.稚児等類語関連語
童子 小児 児童 わらべ わらは わらわ わつぱ わっぱ 洟垂れ 洟たれ 愛児 坊や 女児 小僧 童女
稚児 幼児 男児 女児 幼童 乳児 産児 嬰児 みどりご みどり子 新生児 キッド キツド 早生児
ちびっ子 ちびつ子 ちびつこ ちびっこ 小わっぱ 小わつぱ 小童 水子 幼子 水子 小僮 豎子
幼年 乳飲み子 幼女 赤ん坊 赤子 赤ちゃん 赤ちゃん
*さふらんや童女ドイツ語愛らしく 渋谷 道
CDからこぼれ落ちた夕餉の笛吹童子 松岡月虹舎
あばれ稚児土筆握りて帰り来し 文挟夫佐恵
アマリリス跣の童女はだしの音 橋本多佳子
アマリゝス跣の童女はだしの音 橋本多佳子
あらせいとう髪切つて母童女めく 佐藤まさ子
ありありと童子山水初暦 斉藤夏風
いなご取る過疎の児童の五六人 蕪木啓子
うつむく母あおむく赤子稲光 三鬼
うつむく母あふむく赤子稲光 西東三鬼
うらゝかの幼子ころび泣きにけり 高橋淡路女 梶の葉
おしろいや風吹きつどふ赤子の頭 波多野爽波
おしろひの剥げたる稚児も花まつり 百合山羽公
おめきつゝはやづぶ濡れの梅雨童子 小林康治 四季貧窮
お祭の赤子まるごと手渡さる 池田澄子
お神楽の鬼に赤子を抱かせけり 亀井雉子男
ガーベラや夫婦で開く小児歯科 八幡より子
かくまでに父似の男児夏怒濤 宇多喜代子 象
かげろひて通る信濃のわらべ唄 長谷川双魚 風形
かなかなや諸仏の中の水子仏 斉藤夏風
かへりきて冬めくわが家童女あり 飯田蛇笏 雪峡
かまきりにひかりの国の露童子 井上鶏平
かまくらの童女こけしの眉をもつ 中島花楠
かまくらへ城と童女と雪明り 河野多希女 月沙漠
かまくらや今日は嬶座のわらべたち 堤 京子
かまくらや童女童話のごと座り 衣川 砂生
かもじ草童女に紅き未来あれ 由利ゆきえ
カンナの黄禁忌の稚児の肩車 吉田紫乃
キッド観てひとり師走の涙かな 岸田稚魚
きつねのかみそり赤子を抱きし男立つ 八牧美喜子
きな粉餅木の葉を皿に童子仏 中山純子
きらきらと稚児隼の渡るなり 黒田杏子
きりぎりす赤子の呼吸見てをりぬ 日原 傅
きりもなく椿落つるよわらべ唄 櫛原希伊子
きんぽうげ酒買ひ童子つまづくな 林 薫
くぐりたる楓に染まる稚児の列 白井 爽風
くさめくさめ平氏をはやす京わらべ 筑紫磐井 野干
くるまれし島の赤子に緑立つ 山本洋子
ケーブルに赤子万緑従へり 野澤節子 黄 炎
けんぽ梨狸をさそふわらべ唄 加藤知世子 花 季
ここが一石路の友の安宿、赤ん坊茸蜂の子肴で飲む 橋本夢道 良妻愚母
こゝに眠る幼年の核、日を王水に游がし 加藤郁乎
コスモスににらみをきかす赤ん坊 夏井いつき
この稚児のあみだ被りよ筑摩鍋 長崎片帆
この路地の柿鈴なりにわらべ歌 古賀まり子 緑の野
さくらんぼの花簪や童子仏 斎藤てつ子
さばしりて巌濡らす水子持鯊 山崎柿郷
さるすべり担がれてくる稚児ふたり 中田剛 珠樹
ジードの書嬰児の湯婆替えてまた 三谷昭 獣身
しんしんと赤子ねむらせ雪見舟 田中裕明 先生から手紙
すかんぽの紅よ童女の眸のなか 新谷ひろし
すかんぽやはや汗匂ふわが童子 千代田葛彦 旅人木
スケートに幼女を送る空すこし 林田紀音夫
スケートヘ幼女を送る空すこし 林田紀音夫
すでに秋童女が愛す片目の犬 菖蒲あや 路 地
すみに澄む旱の海上にみどりご 八木原祐計
その父のむっつりと見る赤ん坊 阿部青鞋
その夜から落葉始まる赤子は「あー」 対馬康子 愛国
だく乳児の手をもにぎりて春炬燵 飯田蛇笏 雪峡
たゞ一つ童子の墓や鶏頭花 高桑化羊
たんぽゝや紅腿引の里わらべ 久米正雄 返り花
たんぽぽや童女の前に稚き 内藤吐天 鳴海抄
ちらと笑む赤子の昼寝通り雨 秋元不死男
つき立ての餅に赤子や年の暮 服部嵐雪
つき立の餅に赤子や年の暮 服部嵐雪
てっぺんに山羊と赤ん坊甘藷を掘る 右城暮石 上下
てふてふが不思議でならぬ赤子の眸 渡辺恭子
どこかで花火どこかで赤子笑う闇 原子公平
なまはげの赤子の尻を撫でにけり 石島 岳
にぎりしめにぎりしめし掌に何もなき (赤ん坊) 篠原鳳作
にのうでの嬰児のうぶ毛暑を兆す 長谷川双魚 風形
ねむたさの稚児の手ぬくし雪こんこん 橋本多佳子
はうれん草一把さげ赤ん坊の父 中山純子
バス囃す小わっぱどもや独活の花 富安風生
バス囃す小わつぱどもや独活の花 富安風生
はにかみし白山童子かはごろも 田中裕明 櫻姫譚
ひかりと鳥ガチガチぶつかり愛児泣く 谷 佳紀
ひざまづく童女の髪や菊供養 水原秋桜子
ひそくさと小僧小春の障子外 西山泊雲 泊雲
ひつそりと遠火事あくびする赤子 西東三鬼
ヒマラヤの水で洗うは 童女の髪 岩崎 勇
ひよどりや赤子の頬を吸時に 榎本其角
ひら仮名のかなかな啼かせ幼年のかはたれどきの海彦いづこ 辺見じゅん
ひる蛭と嬰児に還り行く我は 永田耕衣 物質
ふくれゐし童女が笑ふ葱坊主 加藤知世子 花 季
ふにやふにやの赤子おどろくいなびかり 仙田洋子 雲は王冠以後
ふらこゝや童男童女館の御子 尾崎迷堂 孤輪
ぶらんこの太陽へわが童女放つ 林田紀音夫
ふるさとは風に吹かるるわらべ唄 伊藤信吉
ほととぎす朝は童女も草を負ふ 水原秋櫻子
ほととぎす童女仏の顔なせる 佐野良太 樫
ほのと幼子ひぐらしの東大寺 原田喬
ほほづきの朱赤ん坊目あけゐる 中山純子
まくなぎの真只中に童女かな 遠藤七狼
まだ名無き赤子にのぼる山の月 大峯あきら
まつすぐに人見る男児五月雛 中村草田男
マフラーを落とし童女に呼ばれけり 亀割 潔
ままごとのわらべのしたる懐手 飴山實 『花浴び』
マリヤには遠し枯野に赤子置く 八木三日女 紅 茸
まんさくや赤子のやうな日が昇り 鷲谷七菜子
みづ山を背に*いもりつる童女かな 飯田蛇笏 霊芝
みどりごに貝ほどの舌山笑ふ 辻美奈子
みどりごに大き産着や淑気満つ 辻美奈子
みどりごに名のつくまへの白障子 青木文恵
みどりごに毛糸編む幸もらひけり 平野 伸子
みどりごに腕つかまるる冷房車 佐々木元嗣
みどりごのあやつり歩き貝割菜 文挟夫佐恵
みどりごのいまだ見ぬ雪降るを待つ 佐野美智
みどりごのかろさぬくとさきちきちとぶ 伊藤いと子
みどりごのこぶしのなかも花ぐもる 齋藤玄 『舎木』『飛雪』
みどりごのこぶしもねむるかたつむり 三嶋 隆英
みどりごのてのひらさくらじめりかな 野中 亮介
みどりごの寒き山茶花掃くべかり 斎藤玄
みどりごの顔いつぱいのくさめかな 佐々木良子
みどりごの顔そこにある昼寝覚 山下 広
みどりごの指萌えてゐる涅槃雪 斎藤玄
みどりごの目に小鳥来し別れかな 相馬遷子 山河
みどりごは泣きつつ目ざむひえびえと北半球にあさがほひらき 高野公彦
みどりごは焼野にめつむり羽毛を降らす 夏石番矢
みどりごも七草爪といふことを 西村和子
みどりごをイエスの前に昼寝さす 有馬朗人 知命
みどりごをつつみにくるよかげろふは 斎藤玄
みどりごをつつみに来るよかげろふは 斎藤玄
みどりごを花弁包みにクリスマス 中戸川朝人
みな晝寝嬰児が噴水のごとさめて 細谷源二
みんみんや帯の解けたる一童子 石田あき子 見舞籠
むら時雨山から小僧ないて来ぬ 一茶 ■文化八年辛未(四十九歳)
めまとひは童女の澄める目を好む 品川鈴子
もがり笛一つ目小僧呼んでをり 上村占魚 『自門』
ものいはず童子遠くの梅を指す 夏目漱石 明治三十二年
ゆきずりの嬰児あやして冬田道 中込誠子
ゆきのした稚児咲きはやも別れかな 河野多希女 納め髪
よく泣いてゐる赤ん坊の雛まつり 細川加賀
よく聞こゆ芋煮あそびのわらべ唄 下田稔
よそさまの赤子のぞきぬ春の雪 石川桂郎 四温
よるべなく童女のこゑの日々寒し 飯田蛇笏
よろこんで名月を蹴る赤子かな 仙田洋子
りんどうに集まり消える嬰児たち 高野ムツオ 蟲の王
れんげ野の幼児漂うたいらな昼 増田まさみ
ロープウェイに赤子泣く声山滴る 八幡より子
わがみどりご声たしかなり蛙の夜 林翔 和紙
わが童女桜見にきて眠りけり 長谷川春草
わが名づく赤子つよかれ初霜に 長谷川かな女 花寂び
わつぱ飯肩かけのまゝ外套のまゝ 殿村菟絲子
わらはべのまかげせりけりくらべ馬 後藤夜半 翠黛
わらべうた路地よりきこえ宵天神 宮下翠舟
わらべらに寝ねどき過ぎぬクリスマス 山口誓子
わらべらに天かがやきて花祭 飯田蛇笏
わらべらに天かゞやきて花祭 飯田蛇笏
わらべらに天かがやきて花祭 飯田蛇笏 雪峡
わらべらに堂塔高き甘茶かな 五十崎古郷句集
わらべらの花野にわれも入りゆけり 岸田稚魚
わらべらも添へて門火の麦藁火 木津柳芽 白鷺抄
わらべ唄かなで精霊流しかな 佐川広治
わらべ唄地蔵にひびき明けの春 堤 久子
わらべ七人山椒魚の水あふれ 若森京子
わらべ水蜜桃をすするうなじを伸べ 梅林句屑 喜谷六花
わらべ達皮は味ないぞ真桑瓜 上島鬼貫
わらわらと影踏む童子桃岬 中村苑子
わらわらと束ねし供華や雪の中 斎藤玄 玄
われ蝌蚪となり幼子の手の中に 松村蒼石 雪
ゐざりゐる凍雲嬰児火と泣けり 川口重美
阿蘇杉の湿り童女の七夕竹 桜井博道 海上
暗い昔の砂を幼女の手に移す 林田紀音夫
椅子あたたか幼児の足の地にとどかず 皆吉司
医師招く苺の花のような女児 対馬康子 吾亦紅
医師来れば障子の穴に風邪童子 三嶋 隆英
磯わらべ青海苔きざみ遊ぶなり 岡本松浜
一つとりしえびがにを手にいきみゐる小童よ勁く大きく育てよ 五島美代子
一歳の稚児が礼して年新た 都筑智子
一誌終ふ花の夕ベの草童子 斉藤夏風
一人遊ぶ童女冬木に傷つけて 猿橋統流子
一船に稚児のあふれて天満祭 ほんだゆき
一天にはかにかきくもる赤ん坊 阿部青鞋
一日で汗疹となりし赤ん坊 瀧澤伊代次
稲の黄に出てすぐねむる赤子かな 六角文夫
芋腹をたゝいて歓喜童子かな 茅舎
芋腹をたたいて歓喜童子かな 川端茅舎
芋腹をたゝいて歓喜童子かな 川端茅舎
芋腹をたたいて歓喜童子かな 川端茅舎(1897-1941)
芋腹を叩いて歓喜童子かな 川端茅舎
羽目板のひとつ目小僧春永し 柿本多映
雨やまぬ童女の寝墓楡散るも 堀口星眠 営巣期
雨蛙のまぶた金色嬰児も不思議 金子皆子
雨季長し乾かぬものの中の赤子 八幡城太郎
雨乞や雨宝童子を撫でまはし 石島 岳
渦潮に入りゆく嬰児抱きつづけ 長田等
瓜の姫茄子の童子と冷しけり 田中裕明 先生から手紙
瓜一ツだけば鳴きやむ赤子かな 正岡子規
雲海や稚児の礫の朝焼けて 加藤知世子 黄 炎
雲雀野や赤子に骨のありどころ 飯田龍太
嬰児が来て家が湧きたつさくらんぼ 柴田白葉女
嬰児さへ重し水禍の腕疲れ 鈴木斐佐代
嬰児だいてさきはひはずむ初月夜 飯田蛇笏
嬰児だいて邯鄲きかな花圃の中 飯田蛇笏 春蘭
嬰児どこも絹の感触さくら咲く 猪俣千代子 堆 朱
嬰児には見えず涅槃の通り雨 徳弘純 非望
嬰児にもあるためいきや花エリカ 岡田史乃
嬰児の一髪なびき二月尽 和田悟朗
嬰児の確かな血筋瓜の花 佐倉あさ子
嬰児の甘き香りや冬の蝿 川元安子
嬰児の重みずつしり銀河奔るなり 上野さち子
嬰児の頭の淋しく赭し花の中 中村 和弘
嬰児ひとり寝せられ風のねこじやらし 林翔
嬰児まつげを長くしねむる流氷来 岸田稚魚
嬰児を抱いて五月の海になる ほんだゆき
嬰児眼を空へ見開く誰にも花 斉藤夏風
嬰児泣き松の八月強靭に 林田紀音夫
嬰児診るや昼寝起こされし口むすび 相馬遷子 山国
嬰児昼寝絵馬の金時犬張子 福田蓼汀 秋風挽歌
嬰児湯を濁さずぽぽと花杏 長谷川双魚
嬰児薄眼苗一列はその睫毛 高野ムツオ 陽炎の家
嬰児抱き母の苦しさをさしあげる 高屋窓秋
嬰児眠る桃の雫の泪溜め 上野さち子
嬰児籠に寝息うかがふ蚕飼季 池元道雄
嬰児翅生みゆりかごの父を責める 林田紀音夫
永日や新生児室楽流れ 佐藤美恵子
英霊迎ふ童子稲城より駆けり 岸風三楼 往来
延年の能舞ふ稚児や雪もよに 加藤三七子
炎天につよく生まれて甲斐わらべ 筑紫磐井 未定稿Σ
炎天の田の母を呼ぶ嬰児の目 福田甲子雄
縁側に赤子と芋茎置いてゆく 原田喬
遠景はいつも幼年いわし雲 対馬康子 愛国
遠天や童女着せかへられにけり 攝津幸彦
遠方に赤子のつむり蓮見舟 磯貝碧蹄館
押しくら饅頭これは湖底の水子たち 高野ムツオ 雲雀の血
牡丹の芽に跼み無性に乳児みまほし 長谷川かな女 花 季
牡蠣小屋の暗きに赤子目をひらき 岸田稚魚
温泉に地元の赤子年の暮 森田智子
化粧して稚児がさくらを浴びてをり 佐川広治
化粧せぬ童女もうつる初鏡 山口波津女
夏の月侍らすのみの童女かな 久米正雄 返り花
夏花摘童女はもたれあひて眠る 田中裕明 花間一壺
夏空があつまつてこの嬰児の瞳 平井照敏
夏氷童女の掌にてとけやます 橋本多佳子
夏鶯赤子の眼つよかりき 原田喬
家中の昼寝を赤子覚ましけり 前原早智子
寡黙の国童子童女に草いちご 西東三鬼
暇なき小僧の起ちゐや御命講 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
火山灰寒し赤子泣く茶屋地獄茶屋 石原八束 空の渚
花しきみあぐら童子が笛吹く図 古沢太穂
花は/蜂吹く/八人童子の/嵐かな 林桂 銀の蝉
花杏嬰児の欠伸つづけざま 西村公鳳
花下の母「さくらさくら」をみどりごに 林翔
花蕎麦や畑中にある童子堂 落合千鶴
花桐の日暮より来し童女かな 岸田稚魚 『萩供養』
花御堂天童稚児のめぐりめぐる 福田蓼汀 山火
花御堂幼童の釈迦甘露受く 松井利彦
花合歓も見えぬものみて嬰児の目 和知喜八 同齢
花祭稚児の口みな一文字 明石志園
花祭稚児白象の鼻を撫づ 岸 正儀子
花菜畑の広さに呑まれ稚児まるし 長谷川秋子
花種を蒔く幼年の土くれに 対馬康子 吾亦紅
花菖蒲赤子たちまち蚊に刺され 岸本尚毅
花吹雪駈けゆくわらべ立つわらべ 及川貞
花椎の風かげり幼児の欠伸さそふ 原田種茅 径
花満ちてしわくちやに泣く赤子かな 仙田洋子 雲は王冠以後
茄子苗や童女も土をひとすくひ 和田祥子
蚊遣火や赤子煮え居る鍋の中 正岡子規
蚊柱に抱きとられし赤子かな 黒田杏子
蚊帳吊草寺領に童女が尿とばす 磯貝碧蹄館 握手
壊死の地表樹の手足萌え声の嬰児 八木三日女
海の底でぼくらは眠るつぶつぶと幼児のやうな夢を吐き出し 森本平
海女となるさだめの童女泳ぎをり 大島民郎
海棠や稚児に出す子に浴さす 蝶衣句稿青垣山 高田蝶衣
芥子は実に小便小僧立ち通し 大和田としを
開帳や大き過ぎたる稚児ひとり 広田恵美子
階下よりしやぼん玉揚ぐ小児病棟 長田等
貝割菜育て老い行く八瀬童子 高木青二郎
咳ひとつ赤子のしたる夜寒かな 芥川龍之介
柿若葉くちはた濡れて稚児よろし(あめ五粒ほどを購ひて) 『定本石橋秀野句文集』
柿若葉嬰児明るき方のみ見る 鎌田容克
柿潰えはじむ童女の墓の前 藤岡筑邨
覚めてまたねむる赤子や未草 中田剛 珠樹以後
顎引いて睡り空母を消す嬰児 五十嵐研三
樫の實や郵便箱に赤子の名 吉田汀史
橿鳥や赤子生れし禰宜の家 山本洋子
梶の葉の茂りより来し童女かな 岡井省二
乾鮭に喝を与ふる小僧かな 高浜虚子
寒の闇ほめくや赤子泣く度に 西東三鬼
寒ンの少しゆるんだ星が、うちに赤ん坊がいて戻る 渡辺砂吐流
寒月光こぶしをひらく赤ん坊 三橋鷹女
寒施行童子月夜となりしかな 杉山十四男
寒雀おろおろ赤子火の泣声 西東三鬼
寒雀らも赤ん坊を見に来るよ 山崎ひさを
寒燈明滅小僧すよすよと眠りけり
寒満月こぶしをひらく赤ん坊 三橋鷹女
寒明けや嬰児のふぐりいさぎよき 渡辺立男
丸顔の祇園囃子の京わらべ 長谷川浪々子
眼が見ゆる赤子にさくら吹雪かな 山本洋子
岩ぶよぶよ嬰児ぶよぶよ地球抱く 野ざらし延男
岩室涼し石を重ねてわらべ墓 河野南畦 湖の森
顔振つて童女駆けゆく桜ごち 岡本眸
気の長きわらべが祭牛を御す 沢村越石
鬼やんまに逃げられし顔童子仏 加藤知世子 花 季
鬼やんま見しこと幼子に話す 原田喬
鬼女になり童女にもなり梅雨茫々 野澤節子
鬼打木倒して童子逃れけり 安藤橡面坊
鬼灯の花や赤子に老いきざし 宮坂静生
戯れてあはれ麗らの喪の童女 清水基吉 寒蕭々
祇園会の稚児親たちにかしづかれ 玉木里春
蟻地獄童女が二人風の中 皆吉司
菊の香をまとひて男児生まれけり 今泉貞鳳
菊花展幼児花に指ふれし 百合山羽公 寒雁
脚も上げ母呼ぶ赤子緑蔭に 香西照雄 素心
泣きじやくる赤ん坊薊の花になれ 篠原鳳作
泣きながら生まるる赤子達へ雪 櫂未知子 蒙古斑
泣く稚児の声がとびつく油照り 加茂松風子
泣く乳児や三角に立つ切り西瓜 所 山花
泣初の赤ん坊母へ戻しけり 岡部六弥太
泣癖のわが幼年を背に揺すり激しく尿る若き叔母上 高柳重信
魚屋の小僧薬屋の小僧に蝉とらせ 上野泰 春潮
魚船捲く裸アイヌに童子と山羊 石原八束 空の渚
京わらべ三尺帯に扇子かな 『定本石橋秀野句文集』
峡も奥柚子の明るさ赤ん坊 篠田悦子
狂ひ泣く童女光れり藪からし 原裕
鏡中童女と隣るすずしさ髪刈るよ 磯貝碧蹄館
玉虫がとんで笛吹き童子仏 和知喜八 同齢
芹の水童女の声が透ききこゆ 柴田白葉女 『月の笛』
金冠の珱珞稚児の眼まで垂れ 山口誓子 不動
金魚も小便小僧も冬眠に 阿部みどり女
金雀枝や嬰児は漬物石と同じ重さ 柴田白葉女
銀杏ちる童男童女ひざまづき 川端茅舎
銀杏散る童男童女ひざまづき 川端茅舎
銀行の鈍光浴びる粘る赤子 徳弘純 非望
狗尾草いたづら好きの童女かな 浦田 宏
櫛さして寝し幼子や星祭 佐野青陽人 天の川
熊野径饑童子のついてきし 辻桃子 ねむ 以後
栗・あけび指して童女に迎へらる 加藤知世子 花 季
桑の実を喰ふは鴉と山童子 鈴木保彦
鍬入れてじやがいも童子覚ましゆく 西村 梛子
群青の秋見ていたり赤ん坊 津沢マサ子 華蝕の海
係累に加はる赤子祭笛 蓬田紀枝子
傾城のわらべがましき手鞠かな 万容
兄弟の弟赤子夏布団 蓬田紀枝子
啓蟄や赤子を乗せし台秤 栗林千津
啓蟄や幼児のごとく足ならし みどり女
啓蟄や旅始めての赤ん坊 栗林千津
茎立や抱けば泣きやむ赤ん坊 増田三果樹
蛍籠小児病棟消灯す 中沢三省
鶏乗り童子山駆けて万作が咲く 金子皆子
鶏頭やおゝと赤子の感嘆詞 矢島渚男
月の浦厚着童女のうなづくのみ 佐藤鬼房
月十四日今宵三十九の童部(わらべ) 松尾芭蕉
月上る赤子が伸びをするように 高野ムツオ 蟲の王
月明の花の童子と遊ぶべし 角川春樹 夢殿
月明へ手の指こぞり群れの嬰児 林田紀音夫
見えてゐて童女の首と凧の糸 金田咲子 全身 以後
軒氷柱曲げるわるさを風童子 村越化石
遣羽子や君稚児髷の黒目勝 夏目漱石
元日の白息を見す赤子かな 岸田稚魚
元日や乳に酔ひたる赤ん坊 小川軽舟
枯むぐら赤子の声と思いけり 橋石 和栲
枯るる中けぶるがごとく童女来る 時彦
枯芦に黄昏色の童女ゆく 阿部みどり女
枯野ゆく幼子絶えず言葉欲り 馬場移公子
湖岸より赤子の声や御神渡り 磯貝碧蹄館
胡床居の童女の茣蓙にゆすらうめ 秋元不死男
虎杖さげしわらべ早し木がくれす 梅林句屑 喜谷六花
虎落笛水子かへせと繰りかへす 保坂敏子
鼓動ごとみどりごを抱き明易し 仙田洋子
五月礼讃天へ手を挙ぐ童子像 大橋敦子
吾子病めりこれやこゝなる独楽童子 石塚友二
御会式の夜を赫あかと湯気童子 磯貝碧蹄館
御所人形の稚児輪ふくらむ牡丹の芽 長谷川かな女 花寂び
乞食の嬰児貌薔薇色や初詣 正雄
光ぶつかり麦稈修羅の朝童子 内山寒雨
光りしは雁の童子か雁帰る 山田みづえ 手甲
厚氷割つたる歓喜童子かな 川崎展宏
厚朴咲くや児童遊園の砂照りつ 原田種茅 径
向日葵の空へ赤ん坊浮かせおく 齋藤玄 『舎木』『飛雪』
向日葵や朝より我を追ふ童女 堀口星眠 営巣期
攻め上がつたる饅頭の黴童子 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
昂ぶりてのぼる峯雲赤子泣き 大野林火
洪水や嬰児の声が遥かにあり 薺 次郎
紅失せて童女の寝顔初明り 平畑静塔
紅梅の散るやわらべの帋つゝみ 炭 太祇 太祇句選
紅夫せて童女の寝顔初明り 平畑静塔
紅葉山の忽然生みし童女かな 芝不器男
紅蜀葵上目づかひに峡童女 岸田稚魚
紅蜀葵上目づかひに山童女 岸田稚魚 筍流し
行列の稚児が泣き出す練供養 塩崎 緑
合歓昏れて地べたに遊ぶ麻痺童子 齋藤玄 『玄』
合歓咲くや湯浴の赤子掌をひらき 羽部洞然
豪雨の壁に涙の嬰児拳出す 林田紀音夫
轟々と白昼の砂ひとりの幼児 林田紀音夫
黒岳の稚児百合の実ぞ深紅なる 西本一都 景色
今朝秋の童女の声が鈴のやう 菖蒲あや 路 地
混み合う銭湯に嬰児と職工の俺は若い 橋本夢道
混血幼児みな昼寝して照紅葉 及川貞
左義長に杜の奥より童女来て 茨木和生
砂丘冬妻にひとりの乳児匂ふ 原裕 葦牙
砂糖黍かじりし頃の童女髪 杉田久女
座り込む莚はみ出て合歓に乳児 沢木欣一 塩田
妻よ一職工も抱けば嬰児がやわらかい 橋本夢道
祭なか父似母似と赤子抱く 矢島渚男 梟
祭稚児抱き下ろさるゝ足そろへ 桜坡子
祭半纏着たる童子をさらひたし 品川鈴子
菜の花や海石一つが乳児の墓 中拓夫
冴え返る小便小僧の反り身かな 塩田俊子
昨夜の鉾稚児いただきて練りきたる 源義
桜ちる南八男児死せんのみ 夏目漱石 明治二十八年
笹鳴や幼子がわが門にゐて 原田喬
雑草の夏や嬰児の墓如何に 鈴木六林男 谷間の旗
雑踏に童女の手套踏まれづめ 品川鈴子
皐月闇口あけて来る赤ん坊 坪内 稔典
鯖火燃ゆ青面童子寄るところ 宇佐美魚目
晒井の水を童女は渡り行く 前田普羅 新訂普羅句集
三寒四温赤ん坊泣いて肥るのみ 岡部六弥太
三月の沖へ捧げて赤ん坊 山本 源
三日はや小童が足袋破れ初む 石塚友二 光塵
三日月は星のわらべのすべり台 山崎ふじ子
三伏の赤子の耳目かがやきぬ 田中裕明 山信
参歳の童子の騎虎図夜の秋 磯貝碧蹄館
山間に男児ありけり五月鯉 今泉貞鳳
山祇の金剛童子照紅葉 西崎白星
山高く生まれし蝶と童女かな 藤本安騎生
山桜女児出生をみそなわす 宇多喜代子
山山の静止する日や赤ん坊 津沢マサ子
山車を曳く童児童女に秋の風 伊藤いと子
山粧う八瀬童子が謀りごと 仁平勝 東京物語
山吹に触れなんとして赤子の手 田中裕明 櫻姫譚
山茶花や稚児が得度の朝の鈴 青堂
山茶花や童女も淡海言葉にて 草間時彦 櫻山
産児室泣けば吾子かや夜半の夏 野田きみ代
産声や唇紅させる葉月稚児 長谷川かな女 牡 丹
四万六千日赤子に熱きたなごころ 辻美奈子
姉のごとくに揚羽は居れど泣く赤子 高柳重信
子規の句碑が霙童子となりにけり 江里昭彦
師の死顔花に遊べる童女めく 和田耕三郎
指ほどの燭炎え露座の童子仏 成田千空 地霊
指吸う嬰児の軒近くきた霊柩車 林田紀音夫
指吸ひつつ仮眠男児や夏一途 原裕 葦牙
枝垂桃揺らしつつ女児欲しといへり 伊藤いと子
枝豆をつまむ幼児と晩酌す 矢島渚男
死に顔が童女に変はる雪明り 笹本千賀子
死人もゐて紙の雪降る児童劇 星野昌彦
私と小僧川の町ゆき川底にいたる 阿部完市 春日朝歌
紙砧子守わらべの立つ戸より 及川貞
紫陽花が赤ちゃん食べて、ほら、揺れる 坪内稔典
賜りし赤子の声や実千両 森川梅代
歯朶青く童女笑顔を夜更けまで 飯田龍太
次に落つる椿がわかる一童女 和田耕三郎
耳につく童女の鈴の野辺送り 林田紀音夫
耳痛き幼児の記憶朝の蜘蛛 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
耳童子天空を駆け来たりしか 高野ムツオ 鳥柱
自転車に籠冬の朝日へ小僧さんたち 古沢太穂 古沢太穂句集
七夕や昔むかしのわらべ歌 野村 きく
七夕や童女抱けばすぐねむり 菖蒲あや 路 地
湿衣の男児なお擁きしめ春はゆく 赤尾兜子
煮凝へ赤ちゃんが来て沈みます 坪内稔典
煮炊して留守守る童女鳳仙花 富安風生
社会鍋童女にかへす礼篤し 内藤 達
蛇と赤子の歩く天気かな 柿本多映
若き主婦の毛橇に幼児湖の眼で 細谷源二
若やぐや息の童子も今朝は春 水哉 選集「板東太郎」
若竹の風を見て居る嬰児の瞳 長谷川かな女 牡 丹
手も足もしまはれ赤子の睦月かな 蓬田紀枝子
手をついて童女が迎ふ雪解宿 中戸川朝人
手を放し稚児を歩ます菊花展 右城暮石 上下
手一杯菊芋摘みて童女めく 山根きぬえ
手花火のために童女が夜を待ち待つ 山口波津女
手毬唄赤子の泣いて終りけり 関戸靖子
首すわり初めし赤子に松落葉 岸本尚毅 選集「氷」
首夏の濤嬰児ぴんぴん喜ぶよ 辻田克巳
首据わる赤子に秋の畝傍山 宮坂静生
首据わる赤子へ秋の畝傍山 宮坂静生(1937-)
秋つばめ包(パオ)のひとつに赤ん坊 黒田杏子
秋の涯で手渡している白き嬰児 細谷源二
秋の蝶火焔童子を炎えたたす 磯貝碧蹄館
秋の日の仁王は高き幼児なり 和田悟朗
秋の暮鴉赤子のこゑして止む 田中灯京
秋もはや日輪すずし嬰児を抱く 飯田蛇笏 春蘭
秋燕や嬰児籠に泣く赤ん坊 村上しゅら
秋寒の比叡の小僧や吾を待つ 高木晴子 花 季
秋深き隣に旅の赤子泣く 佐藤鬼房 「何處へ」以降
秋声も曾て童子に説かれけり 相生垣瓜人 微茫集
秋櫻童女の情こまやかに 相馬遷子
秋聲も曽て童子に説かれけり 相生垣瓜人
終戦記念日ひるのお粥を赤ん坊と 原コウ子
終日の雨まなうらに鬼形の幼女 林田紀音夫
十二支の宝冠を揺り渡御の稚児 西本一都 景色
柔肌の童女のみ蚊に食はれゐて 山口波津女
渋谷十二時わたしは顔のない水子 高野ムツオ 蟲の王
淑気満つ源氏嬰児いだく絵も 堀口星眠 青葉木菟
祝ぎ歌のごと赤子泣く初列車 所 山花
春の霜幼子黙す別れかな 相馬遷子 山国
春の霧赤子から湯気立つごとし 大串章
春の夜を手足を使ひ赤子泣く 森澄雄 所生
春の雷ひびく赤子の六腑かな 飯田龍太 山の木
春の簗藪を鳴らして童子現る 大串章
春は嬰児をみがきあげては抱き歩む 柴田白葉女
春や童女即童貞の喉ちんこ 三橋敏雄 長濤
春暁や男児得たることまこと 大石悦子
春荒に泣くや水子の風ぐるま 千代田葛彦
春雪や乳児の全身笑ひにて 加藤知世子 黄 炎
春待つや厨の妻のわらべ唄 今泉貞鳳
春暖の赤子のこぶし雨意の松 宇佐美魚目 秋収冬蔵
春昼の指サツクぬき赤子のぞく 古沢太穂 古沢太穂句集
春昼の盥に満ちて嬰児の四肢 山崎ひさを
春昼や劉生描く童女像 永井龍男
春泥に低まりゆくや稚児の塚 長谷川かな女 雨 月
春風や頭ふれあう水子たち 江里昭彦 ロマンチック・ラブ・イデオ口ギー
春満月水子も夢を見る頃ぞ 保坂敏子
春来る童子の群れて来る如く 相生垣瓜人
春立つとわらはも知るやかざり縄 松尾芭蕉
春炬燵湯気の赤子を裏返す 塚原いま乃
初泣きの嬰児そのまゝ初笑ひ 大久保九山人
初泣の赤子不動となりにけり 野中亮介
初鶏や稚児がいふこと皆新らし 加藤知世子
初産の赤子父似や金魚草 阿部恵子
初時雨赤子に肩を叩かれて 岸田稚魚
初写真紅き幼児を膝に載す 佐久間かよ
初秋や名札を足に新生児 斎藤志津子
初春や秤の上の赤ん坊 清水文栄
初雪やひじり小僧の笈の色 ばせを 芭蕉庵小文庫
初雪や聖小僧が笈の色 松尾芭蕉
初蝶は嬰児の聲に飛びにけり 池内友次郎
初電車嬰児誰れにも手を伸べて 河野南畦
初東風や波を遊ばす稚児柱 黒崎かずこ
初湯せる赤子もつべきものを持ち 本宮鼎三
初湯出てももいろ童女走りくる 白岩 三郎
初湯出て赤子の拳ほどけけり 藤田郁子
初能の稚児神妙に大地踏み 太田権六
初富士や石段下りて稚児ケ淵 茅舎
初弥撒や快男児太郎無口なり 小原洋一
女わらべのことに執念もぐら打 岡入万寿子
女児すでに肩肘まろく初泣す 橋詰沙尋
女児の指話芙蓉は翅をたたみけり 栗林千津
女児生れて鹿子絞りに鰯雲 辻田克巳
女児誕生クレソンに水ゆきわたり 山口都茂女
女児得たりしづかなしづかな鰯雲 椎橋清翠
女郎花寺に嬰児の声すなり 高野一荷
除夜の鐘小児病棟異常なし 水原春郎
除夜の鐘赤ん坊にあたらしき敷布 中山純子
傷なめて童子さへ霜を踏んで行く 岩田昌寿 地の塩
宵鉾の稚児うつとりと面輪かな 比叡 野村泊月
宵鉾の灯りて稚児を上げにけり 比叡 野村泊月
小わつぱのちさき争ひ空つ風 上村占魚 鮎
小わつぱの舟に棹さす浮巣かな 富安風生
小わらはの物は買ひよきわかなかな 召波
小熊座に毛糸づくめの乳児抱き出づ 加藤知世子
小児病棟前にほつそり雪だるま 須磨佳雪
小僧ゆく小雲ゆくなり県境 阿部完市 春日朝歌
小僧等に法問させて年忘れ 蕪村
小僧来たり上野は谷中の初桜 山口素堂
小童の高野下りや草の花 角田竹冷
床蹴り泣く稚児にほぐれて月見草 加藤知世子 花寂び
松下童子に問へば桑の実を食うて夫る 尾崎紅葉
菖蒲園です 赤子は はなびらになってしまう 伊丹公子
菖蒲湯や乳房ありけり童女のような 長谷川かな女 花寂び
鐘楼より稚児我を嬲る花野哉 西山泊雲 泊雲句集
城跡に児童館ありチユーリツプ 吉屋信子
色なき風命名まへのみどりごに 辻美奈子
色鳥は仁和寺の稚児に来りけり 尾崎迷堂 孤輪
触れがたしげんげ田に寝る四童女 渋谷道
新甘藷を一本置けり童子仏 中山純子
新月に牧笛をふくわらべかな 飯田蛇笏 山廬集
新月に牧笛を吹くわらべかな 飯田蛇笏 霊芝
新生児あまた並びて神還る 辻美奈子
新生児の手首に名札小鳥来る 中川靖子
新生児室に白一色の新春来る 斉藤夏風
新生児室白妙に春立つ日 町田しげき
新生児二十三人ゐて淑気 都筑智子
新生児白一色の夏衣 山田登美子
新籾の山になだるる小童 飯田蛇笏 雪峡
新涼のシーツの上の赤子かな 佐々木リサ
新涼の泣く力こそ赤ん坊 廣瀬直人
新涼や木の香ほのぼの童子仏 山岸 治子
深山も鱒も赤子のように抱く 対馬康子 吾亦紅
神のごとく嬰児金魚に畏れけり 下村槐太 天涯
神の留守あたたかといふ童女かな 田中裕明 櫻姫譚
神楽稚児泣くよりつよきかむばせを 西本一都
辛夷咲く空へ嬰児の掌を開く 有馬朗人 母国
震災忌るると縋りて稚児地蔵 松村蒼石
人形に倣ふといへど鉾の稚児 夜半
吹けど吹けどふくらまぬ毬裸の稚児 古沢太穂 古沢太穂句集
水に泛き苺小僧の右往左往 手代木唖々子
水温む赤子に話しかけられて 岸田稚魚
水子の手結んでひらく春の闇 高野ムツオ 雲雀の血
水子らがゆすり搖れるよ赤まんま 坪内稔典
水仙は童女の覚めしごとくなり 角川照子
水仙へ目を開けてゐる赤子かな 中田剛
水槽のうすくらがりに乳児透く 林田紀音夫
睡りつつ他界を覗く嬰児かな 藤原月彦
睡蓮の芯にあそべる露童子 朝倉和江
数珠玉や赤子抱かせてもらひたる 関戸靖子
雛の日の小児病棟覗きにゆく 細川加賀
雛祭無口の童女輝けり 秋山好見
雛罌粟咲く ロワール河畔の赤ん坊泣く 伊丹公子
杉花粉涙童子となりにけり 石嶌岳
星ながれ胡座のなかに赤ん坊 中田剛 珠樹以後
星一つづつ凍り乳児がぽつりと「パパ」 八木三日女 紅 茸
晴着来て幼女はなやぐ小正月 矢部宮居
正月の山の指笛童子かな 皆川白陀
生れてすぐ雷鳴にあう女児にして 鈴木六林男
生意気になりし炭屋の小僧かな 榊原鼓天
生意気小僧忘れてゆきし破魔矢かな 八木林之介 青霞集
生涯に水子一人や桜桃忌 黒木 胖
生活に潰れた判赤ん坊の届けに押す 橋本夢道
聖夜眠る幼子いとし父サンタ 今泉貞鳳
声高き童女の湯浴みどりさす 金子 潮
声立てぬ赤子の欠伸雁帰る 秋元不死男
西瓜赤き三角童女の胸隠る 野沢節子
西鶴忌たひらに眠る赤ん坊 小林貴子
青き踏む嬰児嬰児の重さにて 塩川雄三
青トマトすくすく伸びし童女の背 相馬 遷子
青衣童女われによりそひ流燈会 山口青邨
青東風に花ひらくごと赤子覚め 井上純郎
青梅が闇にびつしり泣く嬰児 三鬼
青葉月嬰児泣くバスが疾走す 松村蒼石 雪
青露や遺影茅舎は善童子 福田蓼汀 秋風挽歌
石楠花に伏苓を掘る童子かな 飯田蛇笏 霊芝
積る雪見て童女とはもう言へず 加倉井秋を
赤ちゃんが赤ちゃんを呼ぶ闇の楠 坪内稔典
赤ちゃんが赤ん坊噛み河明り 坪内稔典
赤ちゃんが藻のように揺れ朝の家 坪内稔典
赤ちゃんが天河に沈むさくら散る 坪内稔典
赤ちゃんは音楽が好き蓮華草 岩根真由美
赤ん坊いびつに泣いて小鳥来る 北見さとる
赤ん坊おどろき易し初鴉 瀧澤伊代次
赤ん坊が泣き竹藪に春の月 細川加賀
赤ん坊が寝息を立つる養花天 富安風生
赤ん坊しづかにあれば浮塵子かな 岸本尚毅 舜
赤ん坊だけが今夜も電車にゐる 中烏健二
赤ん坊つめたき葱をつかみをり 岸本尚毅 舜
赤ん坊と一つ毛布に月涼し 岸本尚毅 舜
赤ん坊と同じ日のいろ賀状飛ぶ 磯貝碧蹄館 握手
赤ん坊と無言の刻や星増ゆる 八木三日女 赤い地図
赤ん坊にかがやく厚き田の氷 中川志帆
赤ん坊にこの世の初の雪景色 大内史現
赤ん坊にゴム靴にほふ父帰る 篠原鳳作
赤ん坊にも四万六千日の風 松岡洋太
赤ん坊に指握られて薔藪とゐる 栗林千津
赤ん坊に指先噛ます二日かな 加藤かな文
赤ん坊に少年の相栗の花 沢木欣一
赤ん坊に食べさせてやり大根焚 関戸靖子
赤ん坊に太陽が来る髯が来る 斉藤三樹雄
赤ん坊のたましひの色オレンジ実る 中山純子
赤ん坊のつむじより風広島忌 嶋田麻紀
赤ん坊の冠つけし祭かな 細川加賀 『玉虫』
赤ん坊の泣き声がする蝉の穴 斎藤愼爾
赤ん坊の手が驚きて夜番過ぐ 田川飛旅子
赤ん坊の手のいそがしき山ざくら 大嶽青児
赤ん坊の手のつかみたる破魔矢かな 細川加賀 『玉虫』
赤ん坊の掌の中からも桃の花 長谷川櫂
赤ん坊の笑顔に笑窪ある四温 篠崎みや子
赤ん坊の尻持ち上ぐる冬座敷 波多野爽波 『一筆』
赤ん坊の寝顔へそっと戸をしめる 住宅顕信 未完成
赤ん坊の昼寝妨げ駄目爺 石塚友二
赤ん坊の爪の伸びるも雁の頃 大木あまり 火球
赤ん坊の頭の上は冬紅葉 岸本尚毅
赤ん坊の百人笑う水あかり 坪内稔典
赤ん坊の眠りつづける落花かな 加倉井秋を
赤ん坊の毛の立つてゐる椿かな 田中裕明 櫻姫譚
赤ん坊の目がぱつちりと祭笛 細川加賀 『玉虫』
赤ん坊の腕の太りて帰燕かな 岩田由美
赤ん坊の嚏がとんで野水仙 石田勝彦 秋興
赤ん坊の捩れて泣けり黍嵐 雨宮きぬよ
赤ん坊の蹠(あうら)まつかに泣きじやくる 篠原鳳作
赤ん坊の蹠あつし雷の下 楸邨
赤ん坊の蹠つめたくさくら散る 齋藤玄 『舎木』『飛雪』
赤ん坊の蹠まつかに泣きじゃくる 篠原鳳作
赤ん坊の顱頂の雲垢や秋分来 田川飛旅子 花文字
赤ん坊ひよいとかかへて紅葉山 夏井いつき
赤ん坊を移しては掃く風の二タ間 篠原鳳作
赤ん坊を移して掃く風の二タ間 篠原鳳作
赤ん坊を泣かしおくべく青きたゝみ 篠原鳳作
赤ん坊を泣かしをくべく青きたたみ 篠原鳳作
赤ん坊を尻から浸す海旱り 飴山 實
赤ん坊を抱いていでたる恵方かな 細川加賀 『玉虫』
赤ん坊を盥に入れて冬の海 磯貝碧蹄館
赤ん坊寒き書斎に来てをりぬ 岸本尚毅 舜
赤ん坊泣かしおくべく青きたゝみ 篠原鳳作 海の旅
赤ん坊春の日輪蹴り上ぐる 齋藤玄 『舎木』『飛雪』
赤ん坊寝てばかり雪の笹みどり 中山純子
赤ん坊二倍の乳を吐きにけり 阿部青鞋
赤ん坊這ふにまかせて初景色 波多野爽波 『一筆』以後
赤ん坊髪生えてうまれ来しぞ夜明け 中塚一碧楼
赤ん坊武者人形の間に眠る 滝沢伊代次
赤ん坊捩れてしまふ黍嵐 雨宮きぬよ
赤子(ぼうや)!赤子!君なら雲に乗れるかも 大井恒行
赤子いま立てり地球よ動くなよ 出口善子
赤子が乗りてこはれる箱や涅槃寺 田中裕明 櫻姫譚
赤子つむる一文字二つこそ涼し 蓬田紀枝子
赤子てふあつきもの抱く菊の雨 橋本榮治 越在
赤子と母へ撒水車くる一路あり 磯貝碧蹄館
赤子にも晩年はあり枇杷の花 高野ムツオ 蟲の王
赤子に汽車見せて涼しむ麻畑 野澤節子 黄 炎
赤子のやうな寝釈迦に山の春時雨 瀧 春一
赤子泣き家に暖気をこもらする 川島彷徨子 榛の木
赤子泣く家の大きな鏡餅 鷲谷七菜子
赤子泣く家を覗きて雪女郎 石嶌岳
赤子泣く柿の山家のただ中に 赤松[ケイ]子
赤子泣く乗合船の暑さかな 会津八一
赤子泣く真宗寺や冬の月
赤子泣く声の際まで桑解かれ 波多野爽波
赤子見て出づ門や赫つと秋晴れて 中塚一碧樓
赤子見に水溜り跳ぶ栗の花 細見綾子
赤子見ゆ苗代寒の鞍馬村 大峯あきら 鳥道
赤子寝て練炭はぜる音つづく 川島彷徨子 榛の木
赤子生みバンビの夢を見て汗す 八木三日女 紅 茸
赤子地に降せば歩む菊日和 伊丹さち子
赤子置く布団あたたか桃の花 中田剛 珠樹
赤子抱き干潟を進みくる男 沢木欣一
赤子抱く菩薩にしだれ桜かな 川村紫陽
赤子抱けば僧も祖父なり雁来紅 田中英子
赤子眠りて繭臭き灯に染まる 廣瀬直人
赤子眠るままに夕影桔梗白し 宮津昭彦
赤子目覚め泣きそむ飛び入る親燕 香西照雄 素心
赤子立つ夏の山肌割れるかな 和田悟朗
赤子涼しきあくびを豹の皮の上 野沢節子
赤子哭くたび雪嶺聳え立つ 徳岡蓼花
赤子炬燵寝漬菜くらがりよりにほふ 藤岡筑邨
切株に嬰児拓地のうろこ雲 津田清子 礼 拝
折檻のあはれ柔毛の寒童子 小林康治 四季貧窮
雪がこひ童女の声の走り過ぐ 大串章
雪に雪降り積む白さ乳児眠る 長田等
雪の香に炉辺の嬰児を抱きて出ぬ 飯田蛇笏
雪の朝童子茶臼を敲くなり 黒柳召波 春泥句集
雪の土に日の斑の踊り童子墓 鷲谷七菜子 雨 月
雪の日や隣家の童子欠木履 黒柳召波 春泥句集
雪衣(ヤッケ)着し夫婦夫は嬰児抱く 滝 春一
雪空垂れて兵士のように乳児立つ 林田紀音夫
雪渓に泣いて日高の赤ん坊 斉藤夏風
雪蹴つて水菜畑をゆく童女 飯田龍太
雪女郎水子の寺へ立寄れり 高橋克郎
雪掻に童女も混る赤シャベル 稲葉三恵子
雪掻の嬰児籠育ちの人ばかり 斉藤夏風
雪吊の門前町に赤子抱く 大峯あきら 鳥道
雪童女雪にまろびて父母もなし 小林康治 四季貧窮
雪片のかかるよ赤子家に迎ふ 太田土男
雪柳童女のほとのけむるごと 岸田稚魚
千燈明をともすわらべの露の秋 銀漢 吉岡禅寺洞
戦どこかに深夜水のむ嬰児立つ 赤尾兜子
浅蜊売童女の声が引き戻す 菖蒲あや
潜水服を着て降りん赤ん坊は生まれたろうか 橋本夢道
銭湯で嬰児よまた資本主義社会に育ちゆけ 橋本夢道
銭湯に嬰児を抱え俺の手がでかすぎる 橋本夢道
僧もする稚児の化粧や花祭 石田雨圃子
早々と小児病棟聖夜の灯 松岡巨籟
早梅やくちびる朱き童女仏 沢木欣一
窓にさすつきかげに寒さつのりつつ泣くみどりごに妻はいらだつ 大河原惇行
草いきれさめず童子は降りてこず 田中裕明 花間一壺
草の庵童子は炭を敲く也 太祇
草木瓜や幼女の尿またゝく間 殿村莵絲子 雨 月
草矢吹き俳諧童子となる峠 宮田和子
蒼かりき童女の日焼けざるところ 岸田稚魚
蒼空の切り傷となる幼児の頸 増田まさみ
霜きびし山のわらべの喇叭鳴る 飯田蛇笏 春蘭
霜に駈けて林檎童子と炭童子 加藤知世子
霜の昼あまりしづかに行く童子 中川宋淵 詩龕
霜の夜や赤子に似たる猫の声 正岡子規
霜月の眼を燃やしいる山童子 長谷川かな女 牡 丹
霜除す芭蕉大人童子かな 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
霜除の家に赤子の生れけり 上野泰子
霜晴れの赤子泣く扉によな颪す 石原八束 空の渚
霜夜みどりご主に似姿の熟睡や 大高弘達
霜晨や富士見る幼女うちふるへ 渡邊水巴 富士
息とめて赤子は落花浴びてをり 加藤楸邨
息白く幼子の智恵まとひつく 松村蒼石 春霰
足許のたそがれ幼児ごと掬う 林田紀音夫
孫と寝て朝孫童子と落葉焚く 及川貞 夕焼
村を発つ幼女は花のアノラック 成田千空
太陽と赤ん坊のものひらり~ 篠原鳳作
待宵の縁に毬つく童女かな 宮下翠舟
待宵やひとの赤子のうすまぶた 星野麥丘人
袋から童子のごとく赤蕪 原田喬
大きな火星へ汚れ童子等焚火上ぐ 川口重美
大花野幼子の背に陽の翼 吉原文音
大塊の紀州梅干二度童子 関口比良男
大釜の甘茶をのぞく童子かな 松村蒼石 寒鶯抄
大釜を雪に舁ききぬ湯屋童子 有森 一雄
大寒の赤子動かぬ家の中 飯田龍太 忘音
大綿や善財童子くらがりに 辻桃子
鷹鳩と化して童女をとりかこむ 大串 章
滝ひびく百日詣りの赤ん坊へ 林晴美
滝浴びの童子の言葉谿に澄む 河野南畦
滝冱てて制多迦童子ころびをり 阿波野青畝
滝冱てて製多迦童子ころびをり 阿波野青畝
卓上赤子祖父に眉似て春燈 磯貝碧蹄館
啄木鳥や針山が見え赤子見え 大峯あきら 鳥道
茸狩りのわらべこだまに憑かれけり 西島麦南
凧童子去り青麦の丘残す 石塚友二 光塵
奪ひ合うて花にまぶるる小僧かな ぜぜ少年-杏雨 俳諧撰集「藤の実」
棚経の小僧十二三なるが来る 原紫川
谷橋に盆花わかつ童女見ゆ 飯田蛇笏 春蘭
淡雪や伏せ眼とも見え童子仏 河野南畦 湖の森
端的にいわば一生はぐにゃぐにゃの赤子のからだ罅入るまでか 小高賢
暖かし赤子は泣いて世に生る 保坂リエ
暖房のよく利いてゐる赤子かな 橋本榮治 越在
地の果ての光の網よみどりごよ 夏石番矢
地下道の嬰児の声にわれ汗す 原田種茅 径
地蔵盆木の根に赤子置かれある 黛 執
池童子二ン月緑さしにけり 永田耕衣 葱室
稚児うまれ円座一途に古びけり 小林康治 四季貧窮
稚児が描く恋猫の貌人間に 加藤知世子 黄 炎
稚児が淵濤の曳きゆく落椿 北見さとる
稚児つひに抱かれて雨の練供養 判治遼子
稚児の口真一文字に花神楽(花神楽十二句) 橋本榮治 麦生
稚児の列かくれ現れ雲珠櫻 石井喜世女
稚児みなの帯は絞りの花祭 成田耕作
稚児よりも僧うつくしき花会式 角川春樹
稚児を抱く胸のぬくもり仏生会 市川 和美
稚児育つ夏や杉の香ことさらに 原コウ子
稚児加持も大開帳の一行事 爲成菖蒲園
稚児群るる水清冽に岩菲咲く 伊東宏晃
稚児行列柊の花こぼしゆく 甲斐ゆき子
稚児達に晝風呂わきぬ花の寺 原石鼎
稚児達の立並びけり杜若 比叡 野村泊月
稚児隼の帰巣や秋雲より一気 奈良文夫
稚児百合の丈のあはれに揃ひけり 吉田万里子
稚児舞の畦行く茅花ながしかな 石田阿畏子
稚児舞の大地踏み鳴る六花かな 野沢節子 八朶集
稚児溜みなおとなしく桜持ち 福田蓼汀 秋風挽歌
稚児輪結ふて葵祭を見し記憶 田辺ひで女
竹馬のわらはに蹤くは女のわらは 青篁
竹伐の初めに稚児の言葉あり 山下花石
竹伐の法師や稚児に従ひて 田中王城
竹林を童子と覗く春夕ベ 西東三鬼
宙跳んで白息揃ふ稚児の舞 橋本榮治
虫の音の終りつぶさや稚児抱いて 松村蒼石
張子の御影女わらべや御忌に逢ふ 昌夏 選集「板東太郎」
朝はまづ赤ん坊のこゑ鮎の宿 細川加賀
蝶食うべ二度童子となりにけり 柿本多映
蝶々の金伽羅童子制多迦も 佐々木六戈 百韻反故 初學
跳ぶ幼女水かげろふの向岸 佐藤鬼房 鳥食
長泣きの童女に未草ひらく 柿本多映
鳥もトト魚もトト白粉の花に座る幼児 長谷川かな女 花 季
鳥追のもうひと囃し幼子に 塩原 傅
追羽子や君稚児髷の黒眼がち 夏目漱石 明治三十二年
漬菜踏む赤子の首のぐらぐらと 宮坂静生
柘榴裂け吾は晴天童子なり 古館曹人
爪紅や童女の世界夕焼けつつ 岡本まち子
吊り革を握つて十三夜の嬰児 細井啓司
鶴を見る洟垂小僧馬車の上 野見山朱鳥
底冷えや幼児別れに仰ぐのみ 香西照雄
泥髪の川狩童子吾子もをり 根岸善雄
摘草の童女の籠に鈴の音 大串 章
笛吹童子時雨の夜は何をなす 鈴木六林男 王国
天なるや童女の声の虫の声 耕衣
天河の氷が匂う日なかの赤ん坊 坪内稔典
天花粉つけて赤ん坊できあがる 坊城俊樹
天向いて眠る赤子や畑打 大峯あきら
天高き四方へ嬰児の睫向く 池内友次郎
天上に颶風童女を載せ駱駝 片山桃史 北方兵團
田遊びの稚児に寝られてしまひけり 椎名書子
途ふさぐ稲や赤子や遠刈田 橋本榮治 麦生
土産屋の童女含羞むちやんちやんこ 穂坂日出子
土手のさくら大きな声で赤子泣く 柴田白葉女
土筆小僧馬が通ると声をだす 磯貝碧蹄館
冬あたたかし花束の赤子抱き 辻美奈子
冬うらら綿の生まるる赤子の掌 須田奈津子
冬ざくら小僧が運ぶ経机 梶山千鶴子
冬の雁湯上り童女まるはだか 伊藤 通明
冬の星赤子ぐつたりしたるまま 岸本尚毅 鶏頭
冬の霧舟に嬰児のこゑおこる 加藤楸邨
冬の靄口を離れぬわらべ唄 山田一男
冬座敷一つ目小僧のお面かな 八木林之介 青霞集
冬支度山から小僧降りてきて 菊池ふじ子
冬蝶と仮寝してゐる幼女かな 齋藤愼爾
冬萌や赤子の好きな肩車 真山 尹
冬夕焼をいま記憶する赤ん坊 中村明子
唐黍は熟れ赤ん坊這ひまはる 瀧春一 菜園
唐辛子男児の傷結ひて放つ 中村草田男
島たんぽぽ童女ころりと忘らるる 友岡子郷
投げやりに寝て赤ん坊や秋暑し 石塚友二 光塵
桃に来て昼湯は母と乳児ばかり 小池文子
桃の花未だ会はざる赤ん坊 上野さち子
桃の木や童子童女が鈴なりに 中村苑子
桃咲くと風の中なる一童子 原裕 『青垣』
湯あがりのみどりご重し夕木槿 羽部佐代子
湯に立ちて赤子のあゆむ山桜 長谷川櫂
湯上りの赤子の上を大やんま 大串章
湯浴する嬰児のこぶし室の花 渡辺白峰
燈籠にねびたる稚児やあはれなる 飯田蛇笏 山廬集
当今(たうぎん)の昔赤子や冬霞 三橋敏雄 畳の上
童(わらはべ)の声しるべなり神送り 含粘 俳諧撰集「藤の実」
童子いでて夜来の栗を拾ひ鳧 会津八一
童子にも受験苦三寒四温かな 草間時彦
童子の眼蒼むやませが滲み通る 高野ムツオ 鳥柱
童子の眼碧むやませが滲み通る 高野ムツオ
童子めく大ひしくひぞ吾に来よ 小島千架子
童子々々からたちの花が咲いたよ 北原白秋
童子寝る凩に母うばはれずに 橋本多佳子
童子追ふ家鴨の嘴や社若 野村喜舟
童子童女みんな花野に寝落ちたる 柿本多映
童子二人担へば重し芭蕉の葉 西山泊雲 泊雲句集
童子仏春雪の帽ややあみだ 川村紫陽
童子来よ蚕屋の障子の目貼り剥ぎ 長谷川かな女 雨 月
童女いて木の芽濃くなる谿の家 和知喜八 同齢
童女いまも曼珠沙華から逃げている 鎌倉佐弓
童女かがみ尿ほとばしる麦の秋 西東三鬼
童女とて愁ひ顔よき濃山吹 倉橋羊村
童女との間青麦をもてうづむ 千代田葛彦 旅人木
童女と同じ響きさかんに銀杏割る 加藤知世子
童女には森の悪者懸巣鳴く 堀口星眠
童女の死春満月へ魚翔んで 栗林千津
童女の手ちさしつめたし枯山河 草間時彦 櫻山
童女の服干されつぱなし霧湧くに 林翔 和紙
童女の墓は童女の童丈綿虫飛ぶ 磯貝碧蹄館 握手
童女らの泳ぎ場あさし葛の花 白澤よし子
童女われに拾ひてくれぬ冬至柚子 石田あき子 見舞籠
童女ゐて青花けふが摘みはじめ 下田稔
童女ゐて頬杖をして涅槃像 後藤夜半
童女泣きやすし夕日の葱坊主 柴田白葉女
童女見しよりの郷愁花圃燃えつつ 大島民郎
童女素足砂色小波四段ほど 香西照雄 対話
童女走り春星のみな走りゐる 橋本多佳子
童女地に描く曲線桃ふふむ 軽部烏頭子
童女摘むげんげに吾が摘み足せり 塩川雄三
童女桃子はおしゃべり童女あらせいとう 村山古郷
童女二人お出でお出でして春の嵐 長谷川かな女 花寂び
童女来て白紙をねだる暮春かな 加倉井秋を
童女来る獄舎の丘に春の雲 宮武寒々 朱卓
童女来る弥撒のべールを雪除けに 下村ひろし
独楽童子ふところに手をあたためつ 黒川 龍吾
鈍行の膝に童女や夕花野 加藤耕子
鍋雫雨の筑摩の祭稚児 伊藤柏翠
縄跳の波がくり出す幾童女 野中亮介
南瓜くれし童女にやらん轡蟲 中勘助
二タ月の嬰児賀客として迎ふ 伊藤いと子
二月堂春の燭足す堂童子 吉原文音
二月来るぶつかりあへる風童子 村越化石
二度童子狐のかんざし挿してくる 柿本多映
二度童子飛び散つたるや吾亦紅 森田緑郎
二童子の長けしを祝う夏葎 和田悟朗
二童女を一つの墓に吾亦紅 遠藤梧逸
賑はひを外れて水子に除夜詣 山田節子
虹の輪をくぐる白雲童子かな 野澤節子
日と薔薇とみどりご神も在すごとし 佐野美智
日の差して赤子の匂ふ冬桜 古見史子
日の射してゐる空瓶や二度童子 西口昌伸
日の暮の畳に柿と赤ん坊 原田喬
日雇女児といく 鋪道の きいろな日暮れ 吉岡禅寺洞
日向に赤子独航船が海に咲いた 瀬戸 密
日向水子にも遣はせ吾もつかふ 岡田万堂
日焼童子洗ふやうらがへしうらがへし 橋本多佳子
日焼童女の弾みや雲中供養仏 加藤知世子 花寂び
日照草爆死わらべの碑のほとり 下村ひろし 西陲集
日短く運ぶ童子の火が強し 飯田龍太
日読童女を誓ひて樹つる筑紫鉾 高柳重信
日曜の蝋の童女も草隠れ 林田紀音夫
乳すこし吐きし赤子や寒牡丹 大峯あきら
乳児の瞳に形なすものさくら草 加藤知世子
乳児の力ぐいぐい闇に菊の香あり 加藤知世子
乳児泣きつつ金柑握り匂はしむ 加藤楸邨
乳児寝たり歩く形に足袋ぬいで 加藤知世子
乳児抱かれプールの中にあくびせる 山口波津女
乳児目覚めをり風鈴の音の中 長田等
乳臭き幼児もまへに西瓜割る 百合山羽公 故園
乳足りて嬰児の小ごゑ実南天 橋本郁子
尿噴く赤子も長閑か潮噴く貝 香西照雄 素心
葱坊主赤子に涙ありあまる 本宮鼎三
熱帯夜赤子怒りて泣きとほす 下田昭
年玉を宿のわらべに老遍路 壺井久子
年酒酌む赤子のつむり撫でながら 皆川盤水
農小僧経て来し月日花いばら 皆川白陀
芭蕉林童子出没してありぬ 喜舟
馬鈴薯収穫童子童女らころころと 栗生純夫 科野路
背のびして童女が愛す露の馬 柴田白葉女 牡 丹
背の赤子聖夜のベールにぎりしめ 吉田汀史
背負はれゆく乳児のにほひ蚕掃く 石原舟月
梅の陽と北風に嬰児のもの晒す 鈴木六林男 第三突堤
梅雨さむく嬰児哭けるはいつしんに 岸風三楼 往来
梅雨の花幼児の声草のごとし 飯田龍太
梅雨ふかし機上赤子の泣きやめず 吉野義子
梅寒の瀬音を奪ふわらべ声 河野南畦 湖の森
蝿生れ赤子の涙吸いにくる 中村和弘
泊夫藍や童女ドイツ語愛らしく 渋谷道
白襖幼児笑へば亡母来る 飯田龍太
白絹につつむみどりご夕桜 加倉井秋を
白菜やつむじ二つの赤ん坊 石口光子
白菜を赤子のやうに抱いてくる 野木桃花
白人の女児はなやげる十夜講 岸田潮二
白痴童女わらへり露の玉まろび 成瀬桜桃子
白桃を睨み幼子ひとり立つ 原田喬
白粉のはげし稚児かな草の餅 大谷句佛 我は我
白木槿嬰児も空を見ることあり 綾子 (太郎生る)
白薔薇と成る黄蕾や赤子いかに 香西照雄
粕焼いて深雪の底の白髪童子 西村公鳳
薄氷か紙の水子か紙漉場 百合山羽公 寒雁
麦こがし頬張る越後童女かな 佐川広治
麦ほこりかかる童子の眠りかな 芥川龍之介
麦刈を眺めて山の童女たち 飯田龍太
麦秋や乳児に噛まれし乳の創 橋本多佳子
麦秋や乳児に噛まれて乳の創 橋本多佳子
麦埃かぶる童子の眠りかな(洛陽) 芥川龍之介 蕩々帖〔その一〕
箱いつぱい青梅小僧母より来 有働 亨
箱庭や赤子を賞でに少女集ひ 香西照雄
鉢金魚幼児キンギョとなつてしまう 長谷川かな女 花 季
髪黒と嬰児まどろむひつじ草 文挟夫佐恵 遠い橋
髪切虫母恋童女負ひなだめ 堀口星眠 営巣期
半眼に眠り病余の寒童子 石塚友二 光塵
帆に遠く赤子をおろす蓬かな 飴山 實
斑猫や童女にゆるき湯治下駄 川崎 俊子
晩秋へ掴めるほどの童女の尻 中山純子
飛ばさるる赤子のものや青あらし 仙田洋子
微笑童子円光童子福壽草 平木智恵子
微笑童子現る睡蓮のひらくとき 文挟夫佐恵 雨 月
髭武者が嬰児(やや)抱く桃の如きとや 筑紫磐井 婆伽梵
菱採りのわらべ手掻きの盥舟 下村ひろし
筆始幼子にして大書せり 渡邉秋男
百の幼女ほしがる桃とそして銀 阿部完市 春日朝歌
百合を得て謡れる裸形童子かな 五十崎古郷句集
百千鳥つつかれて泣く赤子かな 仙田洋子 雲は王冠
百千鳥赤子のころの吾子わすれ 仙田洋子
百日紅ひらひらと女児うまれけり 平井照敏 天上大風
百年は生きよみどりご春の月 仙田 洋子
氷柱噛んで童女の頃の歯音たつ 加藤知世子
漂ひて水子詣りの白日傘 荒井正隆
苗障子はづし赤子を見るごとく 大串章
浜下りや赤子も濡らす足の裏 新崎米子
貧農の水子を喰ひに蛭泳ぐ 角川春樹
夫病む部屋の乳児が伸びする雪明り 加藤知世子 黄 炎
普請場の小僧が虹を見つけけり 永井龍男
父したふ長靴童子蝶生る 堀口星眠 営巣期
父の手を離さぬ幼女秋の海 西尾一
父の梢に涙のみどりごがそよぐ 林田紀音夫
父母の杉より花粉童子かな 磯貝碧蹄館
撫子や狂へば老も聖童女 福田蓼汀
風が澄む谿の一番星の赤子 関田誓炎
風になつた幼女ポプラにまぎれ泣く 林田紀音夫
風の梢にねむる幼女の鈴かかる 林田紀音夫
風花や赤子の指の夢に舞ふ かたぎり夏実
風花や乳児が指さすニュースカー 加藤知世子 黄 炎
風薫る四肢の先まで乳児の意志 林翔 和紙
風薫る赤子に余るバスタオル 河合澄子
風車嬰児の笑ひくるしくなる 原田種茅 径
風邪ひいて赤子のかほでなくなりぬ 田中裕明 先生から手紙
風邪籠りし一ト日の終り赤子泣き 宮津昭彦
風船が膨れ童女の顔かくす 品川鈴子
風童子鶴のまはりを翔けめぐる 大串章 百鳥
風呂敷に包んで愛す赤ん坊 山崎十死生
福寿草妻まる顔に女児生むか 柴崎左田男
並び寝の新産児にも豆撒けり 下村ひろし 西陲集
片輸童女午睡す蝶は翅休め 成瀬桜桃子 風色
片輪童女と蝶に恵みし日ざしかな 成瀬桜桃子 風色
片輪童女に友なし蝶と語りをり 成瀬桜桃子
片輪童女の描く絵を蝶がのぞきに来 成瀬桜桃子
鞭うちて野火と走れる童子あり 福田蓼汀 山火
母に戻す火の玉小僧半夏生 文挟夫佐恵
母の日や童女のごとき母連れて 恩田秀子
母の背に眠る稚児あり花祭 柏谷さち子
母の背の稚児山伏や花供養 内藤十夜
母の亡き故の上手か独楽童子 大橋敦子
母子寮に足汚れたる嬰児の死 三谷昭 獣身
簿水子祭の扇かざしけり 後藤夜半 翠黛
峰雲や赤子を立たす膝の上 山本洋子
抱き上げし赤子もの言ふ花楓 下村ひろし
泡の言葉のみどりご鉄の夜気びつしり 林田紀音夫
砲弾の風靡に嬰児泣いてゐる 齋藤玄 『舎木』『飛雪』
蜂は縞ゆるめずにとぶ童女の墓 飯島晴子
豊年の星座ぎつしり赤子泣く 鈴木六林男
鳳仙花童女の機嫌すぐ変り 益本三知子
坊やもおいでと出た梅若葉の寺 北原白秋
鉾の稚児貴人のさまに振る舞へり 大槻制子
鉾の稚児帝のごとく抱かれけり 古舘曹人
鉾の稚児馥郁として過ぎにけり 能村登四郎 冬の音楽
鉾祭注連縄を断つ稚児の太刀 外園善行
鉾稚児のあくびのあとのうすなみだ 細川加賀 生身魂
頬赤い山無花果を童子仏 和知喜八
北国の正月を待つわらべ唄 今村青魚
北風をゆきつぶら童子を拾ひくる 栗林千津
北風吹くや一つ目小僧蹤(つ)いてくる 角川春樹(1942-)
埋めたての水子を掘りに雪をんな 木内彰志
繭となる童女山には冬が来て 柴田白葉女
繭玉や赤子見てまた山畑へ 岸野曜二
満月や盥の湯を蹴る赤子の足 横山芦石
蔓引くや馬鈴薯童子連なりて 坂本香寿子
味噌を売る会津童女よ雁渡し 佐川広治
蜜柑すゝる嬰児を抱き母も飢ゆ 岸風三楼 往来
眠りつつ驚く赤子卯浪立つ 和田耕三郎
眠る嬰児水あげてゐる薔薇のごとし 飯田龍太
無花果の樹蔭の童女秋暑の日 飯田蛇笏 椿花集
無花果の葉ずれ歓ぶ赤ん坊 柿本多映
無花果やわらべ心に剥かぬまま 乗本真澄
無垢童子穂麦盗人と追はれける 石塚友二 光塵
無心なる童女ひそかに息づくごと一顆の桃の山原明かる 大野とくよ
霧に立ち敢へて愛児を抱かざりし 瀧春一 菜園
霧氷林嬰児が泣きて華やげり 大類孝子
名月をにぎにぎしたる赤子哉 一茶
綿入れを被てゐる水子地蔵かな 谷口和子
毛帽子の幼子の瞳に青空あり 有働亨 汐路
網戸ごしの葉ずれ映して赤ん坊 伊藤淳子
木の下に赤子寝せあり鷹舞ヘリ 中村草田男
木の股の童子よ「春」は馬で来る 林原耒井 蜩
木の実拾ふ眉鮮やかな童女たち 斉藤夏風
木洩日が南風ちりばめて乳児そだつ 赤城さかえ
木枯のごつんごつんと赤ん坊 斎藤愼爾 冬の智慧 以後
木枯のしんがりにつく童子かな 石嶌岳
木槿夕雨こんなところに赤ん坊 飯島晴子
目覚めよき赤子を抱けば小鳥来る 小野 喬樹
門前の小便小僧苗代寒 原裕 青垣
門前の童子を盆の菓子に呼ぶ 赤松[ケイ]子
夜の秋やたやすく眠る旅童女 岡本まち子
夜学まぶし道より低き赤子の声 香西照雄
野に遊ぶ七夕童子びしよ濡れに 原裕 『王城句帖』
野は枯色ところどころに赤ん坊 栗林千津
野を急ぎ大団円であったか童女 畑中 憲
野分に瞳あげそのまま嬰児睡り落つ 上野さち子
野遊や赤子は草に寝かされて 坂本香寿子
弥陀の前童子独楽打つ富貴の里 松本 進
薮柑子幼児に母に道けはし 阿部みどり女
友禅のをんなのごとき小袖着て嬰児は瓶の底にしづみぬ 木下利玄
柚湯出て童女ねむれる頬赤し 水原秋桜子
夕空のさくらは重し赤子泣き 大井雅人 龍岡村
夕立や童女に蒼き釉 和田悟朗
幼子が嬰児を見てゐる夜の秋 水浜青大
幼子と話す亥の子の赤火鉢 長谷川かな女
幼子に言葉の殖えて小鳥来る 高野 教子
幼子に叱られ詫びて冬ぬくし 岡本眸
幼子のいつか手を曳き夜の秋 飯田龍太
幼子のかたことばなし十三夜 今井千鶴子
幼子のひとりの消えし蝌蚪のくに 坂井三輪
幼子のひとりは背負ひ秋の浜 飯田龍太
幼子のまづ手足よりの昼寝かな 谷口桂子
幼子の遠くは飛ばぬ雪礫 仲佐方二
幼子の絵文をのぞく雪女郎 飯田龍太
幼子の金魚に化けたる夢見たり 谷活東
幼子の靴を増やして三が日 篠原ノリ子
幼子の高さで見つむ蜻蛉かな 谷口桂子
幼子の子犬とまろぶ春の土 藤井寿江子
幼子の死に雲ふかし落葉降る 飯田蛇笏 椿花集
幼子の手の腥き春の空 飯島晴子
幼子の少女となれる花の鬱 百瀬美津
幼子の触れて驚く含羞草 山根きぬえ
幼子の声の大きくばつた飛ぶ 町田一雄
幼子の素足アジアの秋の風 高澤晶子
幼子の墓の水濃き夏蚕村 飯島晴子
幼子の満面つばめ帰りけり 原田喬
幼子の泪すぐ消ゆ春の虹 大串章
幼子はいつも小走り夏座敷 谷口桂子
幼子も雨を見てをり寒桜 原田喬
幼子や花火戻りを背に寐たる 高橋淡路女
幼子や青きを踏みし足の裏 正岡子規
幼子よ地に水氷るこれが冬 肥田埜勝美
幼子を受け止め春の土柔く 稲畑廣太郎
幼子を春の日だまりごと抱く 市川よしか
幼子を預る一ト日冬霞 関口栄子
幼児きて部屋を野となす黒ぶどう 寺田京子
幼児に労はられをり菖蒲葺き 小松崎爽青
幼児のごと赤富士のごと冬来たる 橋石 和栲
幼児の持つておもたき桐一葉 川崎展宏
幼児の丈で奇岩をくゞる秋のくらさ 八木三日女 赤い地図
幼児の知恵づく日々や鳳仙花 高嶋富子
幼児はいたく笑ひね夜の淵にありて白桃食べをへしとき 佐藤通雅
幼児も富士見おぼえる若菜摘み 岩淵喜代子
幼児席ある大寺の鬼やらひ 中里泰子
幼児脱ぎ緋の濃き下着スィートピイ 香西照雄 素心
幼女にも乳当てつきし水着かな 今泉貞鳳
幼女も病むさびしさに遭い今日終る 鈴木六林男
幼女早や内股あるき雪催 秋元不死男
幼童の接吻街裏東風が占め 北野民夫
幼年が虹を見ており立ち止り 鈴木六林男 悪霊
幼年のわれに祖父あり鶏合せ 佐藤鬼房
幼年や隠して植えるたばこぐさ 安井浩司 阿父学
幼年時代濃くなつて早稲匂ふかな 栗林千津
葉桜に爆ぜているのは赤ん坊 大口元通
葉桜の下にて赤子見せ合うて 橋本美智代
抑抑神ノ肴ハ赤子・牡丹雪 夏石番矢 真空律
裸見せぬ秋暑毛深の幼児ら 林翔
裸木のうしろ暮れゆく風小僧 小川恭生
来客の赤子あやして合格子 松岡和子
雷雨やむ鼻のつめたき幼児抱く 松村蒼石 春霰
雷雲や赤ん坊の髪ほうほうと 蓬田紀枝子
落葉せる西行櫻稚児櫻 会津八一
落葉風に追はるる歓喜童女かな 石原八束 空の渚
乱の夜の嬰児しずかに星を統ぶ 須藤 徹
立秋の赤子背負ひて田に染まる 直人
劉生が描きし童女とこれの桃 内藤吐天
流灯を積みある中の童女の名 伊東 肇
両の手に砂糖黍ばい焼け童子 磯貝碧蹄館
涼しさやみどりごの振る鈴の音 上田圭子
涼しさや瓜にかきたる稚児のかほ 筑紫磐井 野干
涼風にみどりごの息つまるばかり 山本歩禅
良夜かな赤子の寝息麩(ふ)のごとく 飯田龍太 今昔
緑の羽根黄口童子に呼ばれ買ふ 百合山羽公 寒雁
緑蔭に赤子一粒おかれたり 沢木欣一 往還
緑蔭の赤子の欠伸母にうつりぬ 大野林火
林檎咲く野しろいしろいわらべ唄 豊田都峰
冷麦すゝるよ嬰児の日を経し子の蹠 磯貝碧蹄館 握手
冷麦や赤子泣かせて平然と 田中裕明
鈴虫と童女しばらく見つめあひ 大串章
麗かや水辺の童女ふつと消ゆ 佐藤鬼房
練供養稚児には長き時間かな 佐伯ツヤ子
練供養稚児も浄土へ渡りゆく 出口巡一路
練稚児のたまりの枝垂ざくらかな 鈴木しげを
練稚児の冠かたむく遅日かな 長谷川かな女 牡 丹
練稚児の真日浴びて着く花御堂 下田稔
蓮の香の北国の闇赤子猛る 大峯あきら
蓮華摘む劉生童児童女かも 石塚友二
蓮枯れて赤子をくくりつけし胸 柚木紀子
連翹やみどりごは尿高くあげ 朝倉 和江
連翹や嬰児はじめて雲に会ふ 神尾季羊
露ながら玉菜かゝへて童子哉 中川宋淵 詩龕
露の花圃赤子のガラ~よくひびき 瀧春一 菜園
露の玉つまんで見たるわらべ哉 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳)
露天湯に赤子の鼓動雲の峰 飯田龍太 遅速
老鴬や臥して童女の心なる 乾 燕子
老眼に潤める木の芽童子仏 石川桂郎 含羞
鷲草の舞ふや童女の泪川 堀口星眠 営巣期
蕨飯朝より宿の赤子泣く 河野南畦 湖の森
凩に木の股童子泣く夜かな 大須賀乙字(1881-1920)
曼珠沙華稚児の歩みを危うす 加藤知世子 黄 炎
囃されて赤子の一歩秋澄める 村井 光子
囀りや赤子の喉へ乳奔り 森田智子
恍惚と童女腹匐ふ籾莚 山口誓子 構橋
撥釣瓶修二会気負へる湯屋童子 桂 樟蹊子
晝の露赤子の腹のまろまろと 田中裕明 先生から手紙
朧夜の猫が水子の声を出す 飯田龍太
欷歔(ききょ)童子まろびて出でぬ別れ霜 康治
欷歔童子まろびて出でぬ別れ霜 小林康治 四季貧窮
洟かんでしまふ小僧の夏書かな 阿波野青畝
洟たれ児立てり綿入盲縞 西村公鳳
洟垂れの子が売れ残る寒さ哉
涅槃図を見て幼児が象を指す 浜端順子
涅槃西風夜を海老寝の二度童子 小野冬芽
瘧病(わらはやみ)童病(わらはやみ)とぞ滴れり 佐々木六戈 百韻反故 吾亦紅
癩童子なりや夏樹に顔隠す 平畑静塔
睨めあげる童女の頭を撫で雛の日 赤城さかえ
簀戸の中赤ん坊這ひ這ひするが見ゆ 山口青邨
簪の揺れほろほろと軛の童女 林田紀音夫
罌粟ひらく赤子舌出す軽さにて 藤岡筑邨
翅たたみ眠るみどりご流れ星 遠山陽子
茗荷の子童女の尻を見てゐたる 河野南畦 『元禄の夢』
萍や赤子かすかに笑ひをり 岸本尚毅 鶏頭
葭切や童女とあらふ皿すこし 堀口星眠 営巣期
蓼の紅火のつくごとく嬰児泣く 阿部みどり女
蓼紅し泣けばこと足るわが童女 岡田 貞峰
藪柑子目をおさへゐる童女見ゆ 長谷川双魚
藪入の小僧丁稚ら今いづこ 石塚友二
蛬鳴やつゞいて赤子なく 一茶 ■文政六年癸未(六十一歳)
蜑小屋に赤子が泣けり夜の根釣 戸川稲村
蜩やガラスの中に泣く赤子 柿本多映
蜩や幼児は好きな救急車 長谷川かな女 花 季
蝸牛と童女のあはひ密とせり 岸田稚魚
蝌蚪が尾をふれあふ嬰児背にねむり 斉藤夏風
蝌蚪に足出てやはらかき童女たち 長谷川双魚
螢追ふ月の童子となつてゐし 根岸善雄
蟋蟀や乳児が寝返り打つて力む 澄雄
蟷螂の眠りをねむる赤子かな 田中裕明 櫻姫譚
鐵臭いわが掌の嬰児かかる社会を知らず 橋本夢道
饅頭や足の黴たる童子ども 永田耕衣 闌位
驢馬曳いて日焼童女が河渡る 佐川広治
鮑(ハウ)先生赤子の寒き耳を診る 田中裕明 櫻姫譚
鮟鱇や鼠小僧を泊めし家 長谷川かな女
鯰浮く赤子の寝がほ近ければ 吉本伊智朗
鴉の咳ごとに嬰児の首洗う 赤尾兜子
鵙高音西京の童子来りけり 村山古郷
鶫来るふもとの村の赤子かな 大峯あきら
鵯のまど童子太子の像をがむ 及川貞 榧の實
鶲呼ぶ老女童女に風の日矢 原 裕
黴の家もつとも赤子のこゑ透る 岸田稚魚
以上
by 575fudemakase
| 2020-11-03 11:09
| その他

俳句の四方山話 季語の例句 句集評など
by 575fudemakase
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▽ある季語の例句を調べる▽
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。
尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。
《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)
例1 残暑 の例句を調べる
検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語
例2 盆唄 の例句を調べる
検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語
以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。
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