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拙句 月別俳句抄 3月

拙句 月別俳句抄 3月

俳句 時候・天文・地理・生活・行事・動物・植物

■時候 /
仲春 /三月 /如月 /啓蟄 /鷹化して鳩と為る /彼岸 /三月尽 /
■ 天文
春の雪 /春の霙 /春の霰 /春の霜 /初雷 /春雷 /東風 /涅槃西風 /春嵐 /春塵 /霾 /斑雪 /雪の果 /鳥曇 /貝寄風 /暖か /春雨 /霞 /陽炎 /
■ 地理
春の山 /山笑ふ /水温む /春の水 /春田 /春の川 /春泥 /春の土 /流氷 /春の野 /
■ 生活

雛市 /桃の節句 /雛流し /雛 /白酒 /菱餅 /鶏合 /闘牛 /農具市 /納税期 /春の服 /春ショール /雪割り /大試験 /入学 /試験 /鮎汲 /上り簗 /春鮒釣 /春場所 /春分の日 /春障子 /北窓開く /雪囲解く /炉塞 /炬燵塞ぐ /春煖炉 /春炬燵 /春火鉢 /耕し /田打 /畑打 /種物 /苗床 /花種蒔く /芋植う /馬鈴薯植う /球根植う /根分 /菊根分 /挿木 /苗札 /桑解く /田楽 /青饅 /菜飯 /目刺 /白子干 /干鱈 /蒸鰈 /干鰈 /剪定 /接木 /苗木植う /苗木市 /厩出し /垣繕ふ /屋根替 /卒業 /春闘 /春興 /踏青 /野遊 /摘草 /磯開 /

■ 行事
御水取 /西行忌 /涅槃 /彼岸詣 /開張 /利休忌 /受難節 /
■ 動物
蟻穴を出づ /蜥蜴穴を出づ /蛇穴を出づ /海猫渡る /白鳥帰る /蜷 /田螺 /蜆 /烏貝 /若鮎 /鳥帰る /引鶴 /引鴨 /春の鴨 /帰る雁 /初蝶 /雉 /鷽 /雲雀 /燕 /鰆 /鰊 /鱒 /飯蛸 /
■ 植物
春椎茸 /蓴生ふ /水草生 /畦青む /雪間草 /彼岸桜 /枝垂桜 /ものの芽 /草の芽 /牡丹の芽 /芍薬の芽 /桔梗の芽 /菖蒲の芽 /芦の角 /荻の角 /真菰の芽 /種芋 /菊の苗 /木の芽 /芽柳 /楓の芽 /桑の芽 /薔薇の芽 /楤の芽 /山椒の芽 /枸杞 /椿 /茎立 /独活 /アスパラガス /胡葱 /野蒜 /韮 /嫁菜 /蓬 /母子草 /父子草 /土筆 /蕨 /薇 /芹 /三葉芹 /防風 /菫 /蒲公英 /紫雲英 /苜蓿 / 蘩蔞 /薺の花 /酸葉 /虎杖 /茅花 /春蘭 /黄水仙 /喇叭水仙 /土佐みづき /木五倍子の花 /ミモザの花 /貝母の花 /山葵 /
■ 季語「三月」



◆時候

仲春 /
逆巻きて土佐仲春の波襖

三月 /
三月の空を忘れて野蒜摘    随笑
三月の鳶岬鼻を司る    素抱
三月菜真上の鳶がつと流れ    素抱
人参は三月のいろ煮て和えて    素抱
灌木を三月の栗鼠生剥ぎに    素抱

如月 /
きさらぎのどの顔も皆勝れ見ゆ    石鏡
きさらぎの鋭さを増す木々の空    燕音
きさらぎの書棚に旅の苞の石    寒暑
きさらぎの暦を切って落しけり    寒暑
きさらぎも半ばつるりと虚子の貌    ぱらりとせ
悼みごと重ねて睦月如月と    随笑
如月の簡に過ぎたる見舞状    暮津
如月の己が影法師壁に折れ    石鏡
如月の浸して豆の縞模様    燕音

啓蟄 /
そっとして置いてくれよとだんご虫    鳩信
だんご虫愛づる姫君梅雨の庭(孫美雨)    暮津
だんご虫交む姿も又団子    素抱
だんご虫殖ゆる景気の悪き世に    鳩信
だんご虫節々返す薄暑光    素抱
だんご虫転けて宙掻く脚清ら    寒暑
でも好きとだんご虫掌に這はせゐる    石鏡
掘り出され団子決め込む団子虫    ももすずめ
掘り返して団子虫やら蚯蚓やら    さざなみやつこ
啓蟄のかさぶた剥がす男の子    石鏡
啓蟄のどんでん返し啖ひけり    素抱
啓蟄の亀現る苔のにほひして    素抱
啓蟄の好きな活字といやな活字    燕音
啓蟄の三脚を取り敢えず置く    寒暑
啓蟄の水蹴破りてドイツ鯉    さざなみやつこ
啓蟄の石押し退けて何ぞをる    さざなみやつこ
啓蟄の足のぶつかる古机    ももすずめ
啓蟄の茶鼠のコピー再製紙    ももすずめ
啓蟄やずいと近寄るぶちの鯉    ももすずめ
啓蟄や元の地番を覚えゐて    素抱
啓蟄や耳掻き棒の塗剥げて    素抱
啓蟄や消炭いろの鯉直進    さざなみやつこ
雑兵のごとく駆け出すわらじ虫    寒暑
刺客篇読む地虫鳴く夜の底(史記)    石鏡
寺の名が即ち地名地虫鳴く    石鏡
足出して生けるしるしをだんご虫    宿好
団子虫出づれば春とおもうべな    素抱
団子虫団子いびつに陽炎へり    ぱらりとせ
団子虫蛞蝓同居鉢の底    暮津
地虫鳴く皆もやもやを持ちて生く    寒暑

鷹化して鳩と為る /
鷹化して鳩となるとは莫迦げたる 高澤良一 随笑

彼岸 /
預けおく彼岸団子を帰るさに さざなみやつこ


◆天文

春の雪 /
小競り合ひしながら春の雪落ち来    随笑
きっぱりと春雪あがる挿木畑    ぱらりとせ

春雷 /
春雷のごろごろ遊びやがて了ゆ

東風 /
東風吹く中あみだくじめく小坪の路地
身の幅の小坪の小径東風と抜け
水鳥の鼻筋東風を吹き分けに
東風吹かば匂ひ起こせる水仙花
道巾も程よき東風の切通し
片鱗の春も見えぬといふに東風
天神の絵馬にもいろいろありて東風
夜に入りて一息つける土用東風 寒暑
村中(なか)に入りて納まる鰆東風 寒暑
江ノ島の裸弁天東風吹けり 寒暑
行く方を定めず東風の吹ける道 随笑
強東風に鳶の平行移動せり 鳩信
東風吹いてちりめんじゃこの水揚場 鳩信
利尻富士呆と仰げば頬撫づ東風
火の島を真っ向にして椿東風
天神の絵馬にいろいろありて東風
蚕豆の正東風に吹かれ勁き茎 さざなみやっこ
梅東風に弁財天の膝吹かれ ももすずめ
強東風や焦げ目の残る芦の節 ねずみのこまくら
黒潮の潮目立たせて鰆東風
湾内の空中に鳶鰆東風
強東風に鳶の平行移動せり
東風吹いてちりめんじゃこの水揚場
本島と十あまり東風の離れ島
きささげの葉陰伝ひに土用東風
句に生気吹き込む鰆東風吹けり
行く方を定めず東風の吹ける道
夜に入りて一息つける土用東風
土用東風起つや短編繰るごとく
きっかけを待ちゐしごとく鰆東風
村中(なか)に入りて納まる鰆東風
江ノ島の裸弁天東風吹けり

涅槃西風 /
さんしゅゆの古木ぐらつく涅槃吹    随笑
浦浪の頭をもたげくる涅槃吹    さざなみやつこ
粗樫の葉に吹きつのる涅槃西風    宿好

春嵐 /
ひょうたんの苗をこかして春疾風    暮津
猿払の貝殻置場春荒れひゅう    素抱
春荒れがつっかけ来りて家が鳴る    石鏡
春荒れにとんび揉まれてひようと鳴く    さざなみやつこ
春荒れに転倒せらるか大事に (佐野美智さん)   素抱
春荒れの吹っかけ来たる真夜の雨    石鏡
春荒れの叩きつけてはひっぺがす    石鏡
春疾風それに倍する花吹雪    暮津
春疾風聞きゐる我が身がらんどう    石鏡
吹っかけてつんのめる小木春荒れに    石鏡
大風のドンと家摶ち春一途    随笑
流鏑馬や鼻づら切りて春疾風    鳩信

春塵 /
春塵の分厚く赤茶け煤仁王 (杉本寺)   鳩信
子規堂の電燈の笠春埃    寒暑

霾 /
身勝手な戦の行方つちふれり 素抱

斑雪 /
斑雪山遠くに置きて水芭蕉
げっそりと山毛欅の根方の斑雪

鳥曇 /
鳥曇り小さき意地を張りづめに
人足に定年ありて鳥曇(四十五歳で口取りに)
亀気長に眺めゐるそら鳥曇
砲門のにょきにょき横須賀鳥曇り

暖か /
あたたかや寺門に並める通用門    さざなみやつこ
これ食うて茶をのめと◯(まる)あたたかや (仙厓円相図)   ねずみのこまくら
そら豆をつまめば指の温みほど    ぱらりとせ
ダチュラ咲き当地至つて温暖な    さざなみやつこ
やまももの巨木なるほど温暖な    さざなみやつこ
海渡りさくら咲かせに一暖雨    ぱらりとせ
恰幅よき蘇鉄に朝の一暖雨    ぱらりとせ
三椏の暖雨まみれに岐るゝ枝    さざなみやつこ
七抱大楠たっぷり暖雨吸ふ (河津七抱大楠の唯一の現存木)   ぱらりとせ
心臓の温み掌移し賓頭廬さま    素抱
暖かし妻の臍めきドアの鍵穴    暮津
暖くなりて砂場の砂いじり    宿好
暖雨去りうぐひす餅のやうな島    ねずみのこまくら
毛むくじゃら歯朶打つ暖雨生々し    素抱
来し闇もドアのノブも暖かく    さざなみやつこ
履物に妻の温みや後の月    石鏡
訛り暖かガイドは礼文高校出    素抱

春雨 /
宇和島の旅の中日の春の雨    寒暑
四万十の橋四万十の春の雨    寒暑
手さぐりに春の夜の雨まかりけり    鳩信
春雨にぐにゃりと曲る土讃線    寒暑
春雨にまみるゝ銅像鍵谷カナ    寒暑
春雨に濡るる石手寺石手川    寒暑
春雨のほろっと零るゝところをみる    ぱらりとせ
春驟雨船端叩く川蝦漁    寒暑
生きもののごとくに春の雨水輪    素抱
総領事ハリス出府圖春の雨    鳩信
土佐鶴に鱶の湯晒し春の雨    寒暑
突き立てしシャベルにしとど春の雨    素抱

霞 /
紅霞さみどり霞桃りんご
俳人は霞を啖ひ大昼寝
霞む中目をしばたかせ何たぐる
遠ざかる船を呑み込む春霞
花霞それに花眼も加はりて
御大(おんたい)逝く俳壇明けて初霞(昭和俳人次々鬼籍に入れば)
霞ケ城二人ばかりの菊師と遇ふ
脛当の如きもありて稲塚に(霞ケ城菊人形)
潜水艦溶け横須賀の昼霞
真ん中を川ながれをり昼霞
渡良瀬川花菜霞となりにけり
昼霞野州田沼の田の涯(はたて)
里山の海へ続ける春霞
老眼の霞み目懈し花さんしゆゆ
浦人の供えし霞草鮮(あたら)し
昼霞天然ガス積む船の影
樟脳は霞となりて箪笥内
朝霧に一木のごと霞む人
突き進む船首礼文は霞みづめ 素抱
海上に利尻全容霞切れ 素抱
紫雲出山(しうでさん)瀬戸に霞をもたらせり 寒暑
霞む中坊ちゃんは居ず道後の湯 寒暑
渡り来ししまなみ十橋昼霞 寒暑
瀬戸内海所を変へて昼霞 寒暑
銭湯の霞む富士見て頭に手拭 寒暑
湯上がりのふぐりのあたり初霞 寒暑
春霞富士はうたたね決め込めり 随笑
このところ霞む記憶と山茱萸と 随笑
福島は桃桃桃の花霞 宿好
千里眼年神霞む野に立てり 宿好
午からは頭も霞む夏期講座 燕音
あなたなる安土の麦の青霞 燕音
烏瓜不思議や不思議霞み咲き 鳩信
それはそれで趣ありぬ霞草 鳩信
湖離る鴨のこころも昼霞 鳩信
霞立つ方に礼文のうすぼんやり
利尻より礼文にかけて棚霞
霞む中ふなばたよぎる利尻富士
うち霞む富士三月の雑木のうへ
三月は不二を遠目の霞み月
山茱萸の霞み始むにもう一刻
俳壇の六十余州横霞 さざなみやっこ
霞立つふるさとに入る遠忌かな ねずみのこまくら
逆流ここ霞む心臓指さして
所見とて霞む心臓覗く昼
霞む中心臓僧巾弁の所作
横臥してオペ待つ心臓の昼霞
桃霞盆地の端よりせり出して
高遠の浮かび上れり花霞
新宿のあたり初冬の雨霞
昼からは頭も霞む夏期講座
目のせいか折角の花霞みけり
霞む方遠州灘と誰か云ふ
寺聞けば霞む山指し穴太人
人の来何処かへ去る新霞
新霞立ちあらはれて竹生島
芦の上近江の國の新霞
海道の松の高みに湯屋霞
桑青く赤石山脈暑に霞む
見渡せば楊霞みて衣川
初ものの筑波をつつむ八重霞
診察待つ暖房に目が霞み来し
花霞十字架小さき丘に立ち
霞網打つたるやうに鳥渡る
木ささげに遠野一円雨霞
見えてくる佐渡の全幅霞越し
霞むべく破墨溌墨山水圖
霞立つ邑々唐土勝景図
瀬戸内の島々霞む釣日和
霞みつつ肉眼に見ゆ鷲羽山
昼霞丸亀城はあの辺り
こんぴらの石段千余春霞
水軍の瀬戸の八百島霞みけり
瀬戸内の三千余島昼霞
花どきの水軍の島打霞み
サイクロード霞む島見て十の橋
魚島の霞みつ現れつ燧灘
瀬戸霞み大観の絵の朦朧体
尾道の辺り桃いろ昼霞
銭湯の霞む富士見る頭に手拭
忌を修す筑波嶺までの昼霞
墨堤の何處までつづく花霞
春は霞む景より山水長巻図
夕月にさんしゅう霞み始めけり
長湯して頭にかかる初霞
うち眺む大浴場の初霞
山宿の大浴場の初霞
初霞一際山の混むところ
関東平野奥まるところ初霞

陽炎 /
のらくらと陽炎主宰月旦評    燕音
大道芸なべて陽炎ふ自由席    寒暑
団子虫団子いびつに陽炎へり    ぱらりとせ
陽炎ふて発てる機体の秒刻み    寒暑
陽炎を掻き分け掻き分け釜石線    宿好

◆地理

春の山 /
デッキより遠望上総の春の山    石鏡
漉油(こしあぶら)採りにそろそろ春の山    随笑

山笑ふ /
もうそろそろ山が笑ふと胡桃の木 ねずみのこまくら

水温む /
アロワナの腹部をくぐりぬるむ水    ぱらりとせ
そんなことしなくても水温みけり    素抱
だいぶ水ぬるんで来たり鼈塚    ももすずめ
ダンディーな鴨の襟首水温む    寒暑
マナティの身じろげる水ぬるみそむ (伝説の人魚 海牛目海牛科)   さざなみやつこ
山椒魚の手足を置ける水温む    さざなみやつこ
耳たぶに岸辺の日差し水ぬるむ    寒暑
水温みゆく源は羽づくろひ    石鏡
水温む沼辺に顔を持ってゆく    宿好
水温む池に棒切れ浮いてをり    宿好
水鳥の羽打ちの遠く水ぬるむ    随笑
停年がもう目の前に水温む    宿好

春の水 /
かりそめに春水の翳生れては消ゆ    素抱
さきざきに鳴りてことごと春の水    ぱらりとせ
ちょろちょろとちょろっと春の水ながる    ぱらりとせ
とどこおる処はっきり春の水    寒暑
ひかりつゝくびれてながる春の水    さざなみやつこ
春の水窪みに落ちて翳生めり    素抱
春の水鳴るか鳴らぬか身を屈め    寒暑
春の水黙ってゐても春の水    燕音
春水といふこゑ大きめに出でて    石鏡
春水といふ輝きに不足なし    寒暑
春水に河馬のうたた寝四六時中    寒暑
春水に小鷺の臑の惚れ惚れと    石鏡
春水の日向に出でて網目状    鳩信
小さき段差ありて水鳴る春うたた    寒暑
水音(みおと)またおろそかにせず春の水    寒暑
川いっぱい使って春の水ながる    鳩信
草の中鳴りをひそめて春の水    ぱらりとせ
庭土に滲み込むまでの春の水    素抱
白鷺の一考つづく春の水    寒暑
蕗を先づ湯がいて春の水仕事    随笑
鳴る處見つけて春の水鳴れり    ぱらりとせ

春田 /
白鷺の朝餉は何や春田道 随笑
白鷺の首を吹かれて春田べり


流氷 /
流氷を見にゆく話立ち消えに

春の川 /
春の川渡りとよもす東横線 石鏡

春泥 /
春泥をぶつぶつ云ひつ脱しけり    ぱらりとせ
春泥をぬぐひて詣づぼたもち寺    ねずみのこまくら

春の土 /
すってんと転んで掴む春の土    宿好
ワラビーの前脚春の土突きて    さざなみやつこ
蟻喰いのそはそは春の土を嗅ぎ    寒暑
鉢小物持出し春の土いじり    宿好

◆生活

桃の節句 /
お節句に間に合ふやうに桃の咲く    随笑
晴天三日節句を待たず桃ひらく    素抱
桃どちのけふは節句と云ひ交し    素抱

雛流し /
細れ波ひひな流されゆくわいな    素抱
雛流しぽつんと来たる鹹き雨 (三浦半島 芦名 淡島様)   素抱
雛流し催す宮の五百椿    素抱
雛流し神事おだやかなる口上    素抱
雛流し椿の宮の直下より    素抱

雛 /
お茶の間を彩どるものに雛あられ    暮津
さしあたり雛の調度を並べみん    寒暑
せっせっせ雛罌粟咲いてぱらりとせ    ぱらりとせ
はるかにて雛あられめく淡紅梅    鳩信
もう一彩むらさき欲しき雛あられ    素抱
欠航にて安房の雛罌粟摘がふい    石鏡
玄関に飾られ小物雛ばかり    随笑
後先を考えず咲く雛罌粟は    寒暑
細れ波ひひな流されゆくわいな    素抱
紙雛に倒れ易くて金屏風    素抱
酒尽きてほろ酔気分でみる雛    素抱
初孫のぬっと顔出す雛の前    素抱
小物いろいろ殖えし雛を飾るかな    素抱
雛あさりぽちょんと波に擲てり    素抱
雛かざる干潟色なる夕日中    さざなみやつこ
雛の日の入日雑木にさし込める    さざなみやつこ
雛芥子の真昼うたたね夢ノ介    鳩信
雛見つむ雛より細き目つきして    随笑
雛祭浅蜊は管を足にして    素抱
雛飾る妻は件の手付きして    寒暑
雛飾る孫二人目の春なりけり    石鏡
雛飾る日より日差しのやはらぎて    随笑
雛壇に享保男雛のしゃちこばる    随笑
雛壇のありし辺りをかい撫でぬ    素抱
雛段に午前の日差しさし込みぬ    さざなみやつこ
雛調度牛車(ぎっしゃ)より誰が降りにけむ    ぱらりとせ
雛罌粟のごとき欠伸を内房線    ぱらりとせ
雛罌粟の莟の考え深げなる    寒暑
只横に竝べてひひな飾りけり    石鏡
男っ気世帯大内雛飾る    ぱらりとせ
陶雛の肩の釉薬明りかな    さざなみやつこ
独りごちつゝ置きゆける雛道具    随笑
内裏雛目の付くところに骨董屋    随笑
箸置きの陶のひひなも飾りけり    寒暑
表具師の家の黄瀬戸の坐り雛    さざなみやつこ
略式も略式雛飾りけり    素抱

闘牛 /
つっかけて受けてごつんと牛角力    寒暑
横綱牛幸左衛門に祝儀花    寒暑
横綱牛藤七相手をじろと睨め    寒暑
牛合せ勝者の赤毛引き回され    寒暑
牛合はせ済めば田植が待ちゐたり    寒暑
牛合はせ三才牛の尾にリボン    寒暑
山古志の牛の角突き一番手    寒暑
赤牛が一枚上手牛角力    寒暑
其の上(かみ)の牛の角突き二十ケ村    寒暑
豆虎の怪力見せん牛角力    寒暑
繁蔵を伊之助窺ふ牛角力    寒暑

納税期 /
納税期鴨は汽水に遊びをり 随笑

春の服 /
春服に鶴のマークのクルー嬢 寒暑

春ショール /
連れ立ちて仲見世をゆく春ショール 宿好

雪割り /
雪割れの雪を山毛欅の根受け止めて 高澤良一 宿好

大試験 /
降る雪に命運託す大試験
ことし又雪恒例の大試験

入学 /
大ぶりに進学塾の七夕竹 高澤良一 寒暑

試験 /
志望校八つまで書ける受験絵馬    暮津
末つ子の受験に励む太郎月    さざなみやつこ

春場所 /
春場所のとんだ所ではりま投げ    素抱
春場所の土を噛んだるはたき込み    素抱

春分の日 /
バスといふ函に揺られてお中日 素抱
宇和島の旅の中日の春の雨 寒暑
連休の中日の毛虫退治かな 随笑

雪囲解く /
雪囲ひ取れし許りの宿に泊つ
雪囲せる家に泊りもろみ酒

春炬燵 /
あたるてふ言葉ほのぼの春炬燵

耕し /
耕しの畑の四方に桃低し
耕しの空の展けて岩木山
遅桜畑半分耕して

田打 /
陸中の粗鋤田打ち夜の雨

種物 /
土買うて下見がてらに種物屋


花種蒔く /
つれづれや花種蒔きて半日了ゆ

芋植う /
芋植うも利発なリスにしてやられ


球根植う /
球根植う深さ物差し持ち出して
球根植う等間隔にがまたやっかい
水仙の球根植えて水ぞんぶん
球根植う間合をいとも厳密に
水仙の球根植えてあとは待つ
水仙の球根植うる深き鉢
予期せぬ彩球根植えのチューリップ

根分 /
デージーの根分けそろそろよき時分

挿木 /
きっぱりと春雪あがる挿木畑 ぱらりとせ

苗札 /
よべ雨のありて痘痕の苗札よ    素抱
苗札もびしょびしょに水遣りにけり    宿好

田楽 /
火恋し田楽辻子(でんがくずし)の路なりに(田楽辻子は田楽師が住んでいた小路の意)
田楽辻子(ずし)風に躍るは狗尾草
蔦塀に沿ひゆく田楽辻子のみち

青饅 /
青饅にはっと気付ける親不孝 さざなみやつこ

菜飯 /
菜飯食ぶ子にまづまづの志望校 ねずみのこまくら

目刺 /
雨の鬱晴らさんとして目刺し焼く
棒にふる来し方思ひ焦げ目刺

白子干 /
この浜に残る一軒白子干
造り手のめっきり減りぬ白子干

干鱈 /
数え日の干鱈むしりて熱き酒
干鱈など水に戻してとる昼餉 素抱
炎昼の干鱈の茶漬かっ込めり 寒暑
お茶漬けの干鱈がいいぞけふの昼
もうれつに風吹く岬の痩せ干鱈
真夏日の干鱈茶漬の箸を執る


蒸鰈 /
貴人(あてびと)のごとく箸付け蒸鰈 随笑

剪定 /
梅林に鋏と鋸(のこ)の剪定音    宿好
梅林の剪定済めば鴉が来    宿好
剪定の音の小さくはっきりと    素抱
剪定の枝荒くくりして段畠    素抱

接木 /
柿接木居坐る雲の雨ぶくみ    ねずみのこまくら
接木用芍薬莟持ちにけり

苗木植う /
継ぎ目あとしかと桜の苗木かな 高澤良一 素抱
ユリの木植え街もモダンに人もモダンに 高澤良一 石鏡

苗木市 /
植木市立つや神社を間借りして    暮津
植木市薔薇前にして施肥講釈    暮津
増上寺総門前の植木市    宿好
苗木売る市立つ即ち散財す    暮津

垣繕ふ /
垣繕うことも根気の続くうち    寒暑

屋根替 /
葺替職人上と下とで押し問答    寒暑

卒業 /
キューピーといふ名の先生卒業期    随笑
菊花展卒業式のごとくなり    燕音
アンパンマンは卒業とある夏見舞
卒業式あるらし花の武道館

春興 /
春興や橋の上から見遣る景 素抱
春興の駕籠に揺られて象頭山 寒暑
春興や橋の上から見遣る景
春興やとぼけて下着売場に入る
春興の手にとりてみる加美代飴
春興の金比羅参りの膝笑ふ
春興の駕籠に揺られて象頭山

踏青 /
心臓にも運動療法青き踏む    鳩信
青き踏む一遍遊行の地なりけり    ねずみのこまくら
相模野の青き踏み来て手ぶらかな    宿好
踏青の三時となれば風冷え来    宿好

野遊 /
野遊びにクロワッサンのやうな雲    ぱらりとせ
野遊びに女はあてにせずおこう    素抱
野遊びの帰り支度か服叩き    石鏡
野遊びの服を叩いて起ち上がり    ぱらりとせ
野遊びにこの頃婆のリュックかな
山裾に野遊び組と芹摘と
野遊びのこゑだるまさん転んだと
野遊びのこゑ高らかに谷谺
野遊びのおむすびの海苔パリリッと

摘草 /
摘草の籠はとみれば野かんぞう    石鏡
摘草の人のくっつき離れたり    素抱
芳草に摘草の指ぐと拭ひ
黙々と摘草辺り暮るるまで
それではとシャベル借り受け摘草す
摘草の七つ道具を見せ呉れぬ

◆行事

御水取 /
お水取ホカロン売り込む茶屋親爺    寒暑
お水取近づく空を風の行(ぎょう)    寒暑
お水取肩の火の粉を払ひ呉れ    寒暑
お水取今や遅しと茶粥腹    寒暑
お水取済みし夜空に星秀づ    寒暑
お水取済みし落ち着き奈良の町    寒暑
お水取済みて馬醉木に和む鹿    寒暑
お水取耳で観(み)ること覚えけり    寒暑
お水取諸注意を先づ奈良県警    寒暑
お水取上堂松明天華とす    寒暑
お水取底冷え頬に肩に背に    寒暑
お水取矢来を焦がす粗火の粉    寒暑
お水取恋々として刻を待つ    寒暑
くらやみのなかの相伝お水取    寒暑
営むといふこと切やお水取    寒暑
行僧のいっしょうけんめいお水取    寒暑
劫初の火劫初の水のお水取    寒暑
松明の今何本目お水取    寒暑
水取といふ営みのとこしなへ    寒暑
声つぶる僧の声明お水取    寒暑
千年の口伝が生きてお水取    寒暑
仏都奈良馬醉木が咲けばお水取    寒暑

西行忌 /
このところ頓と出むかず西行忌
人は皆足より弱る西行忌

涅槃 /
お風入れ涅槃図ごわと畳まるる    さざなみやつこ
お涅槃の日の青空を鳶ながす    随笑
さんしゅゆの古木ぐらつく涅槃吹    随笑
浦浪の頭をもたげくる涅槃吹    さざなみやつこ
横たはる様は涅槃の自然生(じねんじょう)    随笑
建長寺ご坊雲集お涅槃会    随笑
傘開く音のどすんと涅槃寺    寒暑
常磐木の青まさる日の涅槃講    随笑
粗樫の葉に吹きつのる涅槃西風    宿好
大空に雲を敷き詰め涅槃の日    素抱
二股のすずしろ涅槃し給へる (伊藤若冲 野菜涅槃図)   ぱらりとせ
野菜涅槃図葱の高足侍りけり    燕音
涅槃会の沓音巡る御仏殿    随笑
涅槃会の腹の底より楞厳神呪(りょうごんしゅう)    随笑
涅槃図に坐り直して魅入る人    随笑
涅槃図のたるみを見せず増上寺    素抱
涅槃圖を二人がかりで懸け了へぬ    ももすずめ

彼岸詣 /
預けおく彼岸団子を帰るさに さざなみやつこ

開張 /
開帳寺門前臨時郵便局    ぱらりとせ
香煙を掬ふ手ぬっと御開帳    ぱらりとせ
出開帳頭(つむり)の間のご本尊    ぱらりとせ
出開帳力む仁王の脇抜けて (善光寺)   ぱらりとせ
人混みよりわが身抜き取る出開帳    ぱらりとせ

◆動物

蟻穴を出づ /
穴出づる蟻を石もて塞ぐ孫    素抱
穴出でし蟻目をこする沓脱ぎ石    寒暑

蛇穴を出づ /
蛇穴を出づる珍事に行き會はせ

白鳥 /
白鳥の来る村の地理電話にて 高澤良一 石
皆若く白鳥撮りのテレビクルー 高澤良一 素抱
白鳥の放送中継風の音 高澤良一 素抱
白鳥の録音係こゑ拾ふ 高澤良一 素抱
湖に脚をハの字に白鳥降る 高澤良一 素抱
白鳥の羽毛転べり湖畔みち 高澤良一 素抱
湖に天使の階段白鳥来 高澤良一 素抱
白鳥のあれゆく浜頓別のそら 高澤良一 素抱
押麦を白鳥に撒く男かな 高澤良一 素抱
白鳥の青空目がけ翔つ十字 高澤良一 寒暑
白鳥をかぞふる頭搖れゐたり 高澤良一 寒暑
白鳥が来るやうになり本埜村 高澤良一 寒暑
白鳥の飛来足掛け十五年 高澤良一 寒暑
白鳥のために屑菜を切り遣れり 高澤良一 寒暑

蜷 /
くさぐさの覚書めく蜷の道    寒暑
一布衣として蜷の道あゆむなり    素抱
御天道様蜷の道たること證す (和島村)   寒暑
行先の皆目判らぬ蜷の道    寒暑
判じ物めくなり蜷の今日の道    随笑
蜷の道筋書き見えぬコントに似    随笑
蜷の道思へば遠くへ来たもんだ    素抱
蜷の道当てありさうで無ささうで    素抱

田螺 /
さんさんと日が差し田螺の桃源郷    寒暑
ひつじ田を田螺のあるく鬼無里晴れ    ねずみのこまくら
ボヘミアン田螺の唄が聞こえ来ぬ    ぱらりとせ
水面這ふ虫に田螺の大雁塔    随笑
日の下に田螺の大愚どぢゃうの愚    ぱらりとせ
泡吐いて能事終れり大田螺    ぱらりとせ

蜆 /
明易の湖の蜆の話しごゑ
寒蜆少し音を上げ煮らるるか
爼に煮らるるまへの寒蜆
木曾川蜆愛知浅蜊が店頭に
老眼にも効き目のありや土用蜆
蜆は朝鰻は午後と漁仕分け 随笑
はげちょろの蜆の尻のすまし汁 宿好
蜆盛り歳末商戦始まれり 燕音
沈黙の臓器に佳けれ寒蜆
はつなつの光返しぬ蜆殻
石山に遊びごころの蜆汁
万病に効くと言ひ添え寒蜆
寒蜆ぽちょんと鍋に零しけり

蜆蝶/
しじみ蝶あちらと思へばまたこちら    素抱
しじみ蝶ちょろちょろ舞ひ出す木洩れ日に    暮津
しじみ蝶一つは寂し二つゐる    寒暑
しじみ蝶遣らずの雨に飛ぶほかなし    石鏡
しじみ蝶股間を抜けてゆきにけり    石鏡
しじみ蝶降り立つほどに石露けし    石鏡
しじみ蝶止まるまで見て草っぱら    寒暑
しじみ蝶庭の何處かに飛んでゐる    寒暑
しじみ蝶日向の端から端へ飛び    石鏡
しじみ蝶捕らむとすれば擦り抜けて    素抱
しじみ蝶躍り越ゆものある限り    石鏡
会葬の人に蹤きゆくしじみ蝶    素抱
限りある処を往き来蜆蝶    暮津
視野に入り視野を出でゆくしじみ蝶    寒暑
石ころを除け飛ぶ庭の蜆蝶    素抱
石掴みころんと倒るしじみ蝶    寒暑
前後しててんてこ舞のしじみ蝶    素抱
地に沿ひて石ころ色のしじみ蝶    寒暑
萩を打つ雨に慌てゝ蜆蝶    暮津
百花園至る所に蜆蝶    暮津
蜆蝶あちらではたはたこちらではたはた    暮津
蜆蝶せせり疲れの無きものか    暮津
蜆蝶せせる一日始まりぬ    暮津
蜆蝶はたはた舞へば書き割りめく    暮津

烏貝 /
夏潮のひたひた打てる烏貝
掻き落とす泛子玉につく烏貝
橋脚の烏貝吹く秋の風

鳥帰る /
些少の借り皆持ち合はせ鳥雲に    石鏡
足型に三種類あり鳥雲に    寒暑
鳥雲にインターネット日和かな    ぱらりとせ
鳥雲に人は葬り葬られ    素抱
鳥雲に性懲りもなく戦すか    素抱
鳥雲に直武描きし人體圖 (「解体新書」挿絵画家 小野田直武)   宿好
鳥雲に年金のこと生活(たつき)のこと    宿好
鳥雲に隣の家の宗旨かな    素抱
鳥帰る電気自動車走る世も    随笑

春の鴨 /
漣なす光のさゆらぎ春の鴨
胸張って視野に入りくる春の鴨 寒暑
尻立てゝ餌を捕る春の鴨霧中
陣解きててんでんばらばら春の鴨
岸に寄り岸を離れて春の鴨
丸池や八方に向く春の鴨
感心は対岸にあり春の鴨

雉 /
うらうらと雉子歩まんか汝の忌日 (三浦勲氏一周忌 富士岳麓 本門寺)   随笑
裾野駈く雉子に妻あり夫あり (三浦夫妻同墳に眠れば)   随笑
雉のこゑ天気予報をくつがへし    さざなみやつこ
雉子の目のやうな水輪を冬泉    ぱらりとせ
雉子蛤に手を拱いてゐるばかり    素抱

初蝶 /
入れ替りくる初蝶に目移りす
初蝶のとまどひせるも須臾の間
初蝶のそこそこそこと指すに飛ぶ
初蝶の今来たこの道返りゃんせ
初蝶のいとたをやかに舞ひ出しぬ 宿好
道草をしてゐる其処に初蝶来 宿好
初蝶来風裏返し裏返し
初蝶をエイゼンシュタイン流に撮れ ぱらりとせ
初蝶の飛ぶか飛ぶかと日を送り

鷽 /
湯島の鷽亀戸の鷽戴き来
納め鷽大の側には大の鷽
木鷽皆こち向き木鷽納め箱
鷽鷽と目を水平に使ひけり
湯島天神背高木鷽の梅文様
葛餅と木鷽の包み提げて帰途
新紙幣(さつ)にて木彫の鷽の初穂料
携帯の懐中鷽も売られをり
鷽の目が集まってをり納め箱
納め鷽大小よくも並べたり
華やぎは赤と緑の木彫り鷽
懐に滑り込ませて木彫鷽
いまさっきまでゐし鷽の神隠れ
鷽縁起読み継ぐ藤の雨の中

雲雀 /
雲雀落ち尽し河口の高曇り    ねずみのこまくら
隔たりて同じ雲雀を見てゐたり    さざなみやつこ
昼過ぎの雲雀のこゑの中弛み    さざなみやつこ
天空へ喉のすりへるまで雲雀    寒暑
田雲雀の揚りどうしに喉乾く    随笑
揚雲雀花菜明りの輪唱に    燕音

燕 /
「燕」てふ列車走れり燕の世    宿好
くらがりより燕飛び出す仏具店    燕音
ここからは歩いてゆかう初燕    素抱
つばくらの運ぶ藁しべ一文字    素抱
つばくらの眼を借り天橋立図    寒暑
つばくらめカレーの市民の頭上越え (西洋美術館)   寒暑
つばくらめこゑの徹れる看護婦来て    ねずみのこまくら
つばくらめ描く構図を大胆に    暮津
つばくろは鏝絵の速さ内子町    寒暑
ようこそと宿の燕がとんぼ切る    随笑
亜浪生家跡つばくろの真かがやき    ねずみのこまくら
一茶之地燕いたぶる風出たり    燕音
燕くる挿し絵のごとき街に橋    暮津
燕くる畑毛温泉湯はぬるめ    随笑
燕の巣年経るままに本門寺    随笑
燕の糞掃きて湯宿の番頭さん    随笑
燕ゆく方が海なり逗子銀座    暮津
燕来と先に云はれてしまひけり    随笑
燕来ぬ海の玄関横浜に    さざなみやつこ
遠刈田郵便局に入る燕    素抱
乙鳥に乙鳥いろの朝鮮人参(にんじん)小屋 (塩田平)   ぱらりとせ
乙鳥飛び海道筋の大社 (三嶋大社)   随笑
観音の胸元よぎる初燕    素抱
久里浜は燕の黒の似合ふ町    素抱
峡燕群れていちにち暮れにけり    随笑
峡燕上昇煙雨かい潜り    素抱
金比羅参り燕出入りのいっぷく茶屋    寒暑
軽雷をものともせざり峡燕    素抱
軒燕入り直せるところなり    随笑
後生掛の燕挙げをり地獄谷    石鏡
甲斐駒岳(かいこま)を前にのけぞる乙鳥    さざなみやつこ
山峡の燕巣造りこれからよ    素抱
山巓の霧を切り裂きつばくらめ    随笑
自炊棟その間を飛ぶ岩燕    石鏡
出雲崎燕街道貫けり    寒暑
初燕内子の雨に降られけり    寒暑
親鳥とおもふ頭が見え燕の巣    ぱらりとせ
逗子駅前ああやっぱりと燕見き    石鏡
其の上(かみ)の金の荷揚げ路燕抜け    寒暑
大潮の日と聞く燕ふりあふぎ    ぱらりとせ
大道芸立見燕が頭を掠め (野毛大道祭)   石鏡
長良川朝風乙鳥吹き上げて    ぱらりとせ
泥運ぶ燕律儀に栢山村 (尊徳生地)   鳩信
湯本駅川原燕が飛び交へり    暮津
同じ日の一つとてなし初燕    素抱
目にあまる程の飛び方初燕    随笑
弥次喜多の湯とや燕に軒を貸し(湯本)    石鏡
夕燕揚げて時報は「箱根山」    石鏡
旅の衆朝が来たよと峡燕    随笑

鱒 /
紅鱒棲む急流にして谺せり 高澤良一 石鏡


◆植物

春椎茸 /
春子盗る猿は「さうさな十五頭」 ぱらりとせ

蓴生ふ /
両脚の見えで水輪や蓴生ふ 徳永山冬子
大藪をしぼれる水や蓴生ふ 笠原古畦
対岸の登四郎の句碑蓴生う 細井紫幸
水面へ光り押し上げ蓴生ふ 諸田宏陽子
空の青水の青得て蓴生う 景山 薫
蓴生う富士の伏流水ぞんぶん 若林つる子
蓴生う月にうるみて河童の碑 岡崎真也
蓴生ひ芹立ち蝌蚪は形を了ふ 石塚友二
蓴生ふところさざ波立つところ 高崎武義
蓴生ふる水の高さや山の池 高濱虚子
蓴生ふ月にうるみて河童の碑 岡崎真也
蓴生ふ池のみかさやはるの雨 蕪村
蓴生ふ池のみかさや春の雨 蕪村
蓴生ふ沼のひかりに漕ぎにけり 西島麦南 人音
蓴生ふ金毛閣に遊山せり 岡井省二
雨脚の見えで水輪や蓴生ふ 徳永山冬

水草生 /
があがあと家鴨が鳴いて水草生ふ    素抱
湧水にミシマバイカモ波打てり (柿田川)   随笑

畦青む /
横柄な遠野鴉に畦青む    宿好
畦青み雪嶺しざり秩父別(ちっぷべつ)    素抱
田起しの小田の畦草なまなまと    宿好

雪間草 /
緩急の山の日差しに雪間草 燕音

彼岸桜 /
震えゐる彼岸桜の花小振り
彼岸桜一枝しごきて風の鳴る

枝垂桜 /
しだれ桜青葉に青葉累ねけり
垂涎の仙台枝垂桜得ぬ
高みに咲く枝垂桜を遠まきに
風任せ山の枝垂桜(しだれ)は手を入れず
大藁屋枝垂桜も膨らみて
枝垂桜けふの日色をうち交へ

ものの芽 /
ものの芽どきその辺歩いてくるといふ    燕音
ものの芽に丸み帯ぶもの尖るもの    素抱
ものの芽に少し冷たき雨ありぬ    素抱
ものの芽に大きくなりぬ雨の音    さざなみやつこ
ものの芽も盛岡弁ももそもそと    宿好
家々の立つる物音ものの芽に    ぱらりとせ
豆の芽のどれも万歳してゐたる    石鏡
面白うなりて社の万(よろず)の芽    随笑

草の芽 /
むづむづと浦島草の芽を出せる

牡丹の芽 /
疾風が起こせる寒の牡丹の芽
嫩葉萌ゆ牡丹の芽から幾日目
くすみゐる木(ボク)の先っぽ牡丹の芽
ふむふむと云ひつつ巡る牡丹の芽
牡丹の芽安住敦の気骨かな
牡丹の芽日毎に真っ赤その内降る

芍薬の芽 /
目立ちたがる芍薬赤芽雨催ひ ねずみのこまくら

菊の苗 /
育苗のチラシが付いて菊苗売
菊苗を選りつゝ去年の苗のこと
菊苗を抱えくる帰途富むごとし
菊苗の鉢を殖やして冬籠
夜盗虫菊苗食むこと今明らか
菊苗に夜盗虫(やとう)を退治する薬
菊苗売一つおまけに持ってけと
菊苗にも不易と流行あり菊展
菊苗のビニール小鉢抓み選る
大股に菊をまたぎて菊苗選る
菊苗売る見本の鉢を横に添え
厚物の菊苗風采佳かりけり
菊苗の冬越し支度晴れた日に
菊苗を庭一番の日向に置き 寒暑
晴れ舞台てふ菊苗の色を聞く 燕音
尊王といふ菊苗の畏くも 燕音
その菊苗だるまにしても大丈夫と 燕音
菊苗の様子見にゆくちゃんちゃんこ
菊苗の面倒みたかと妻のこゑ
菊苗買ふ管物いっぽん交え呉れ
難しく事考えず菊苗買ふ
買手つく菊の苗より虻立たせ ぱらりとせ
見事なる一本菊の苗見本
酒仙てふその名がよくて菊苗買う
菊の辺に跼んで菊の苗選び

木の芽 /
いつ見ても欅の芽吹きへんてこりん    石鏡
ずん抜けて杜の欅の片芽吹き    随笑
つつかけに銭湯を出づ芽出し雨    ねずみのこまくら
とろとろと木の芽明りの甘茶仏    石鏡
にはとこのふためき出づる木の芽道    さざなみやつこ
にはとこの出臍のごとき芽の並び    さざなみやつこ
はきはきと物言ふごとし山毛欅芽吹き    燕音
へそ曲り柿の古木も芽吹かんと    随笑
やみくもに連翹の芽をつけたがる    宿好
羽ばたいて桜の芽立ち促せる    鳩信
横須賀の海に張り出す木の芽山    石鏡
芽吹かんと樹皮を寄る辺の洞(うろ)欅    ぱらりとせ
芽吹きそむ山毛欅の英気にあやかれと    燕音
芽吹きそむ山毛欅の樹相の相似たる    燕音
芽吹くなら欅パパッとパパッとな    宿好
芽吹く山見てゐて画法朦朧体    宿好
柿芽吹き蟹の鋏のやうな芽を    ぱらりとせ
既にして接骨木の芽の出臍程    随笑
起請文累々芽吹く杜にて (生島足島神社)   ぱらりとせ
鬼くるみぼっつり芽吹く千曲川    燕音
襟立てて越後湯沢の木の芽どき    燕音
警策音飛んで瑞鹿山芽吹き    ももすずめ
見頃なる花とは別に芽吹く木々    鳩信
見習ひのガイド訥々木の芽どき    ぱらりとせ
広前に欅芽吹きの金色相    素抱
濠柳芽吹き毎日新聞社    随笑
豪雪の爪跡芽木に残りけり    燕音
黒ずめる連翹の芽に雨つめた    ももすずめ
山巻いて有象無象の雑木の芽    随笑
似通った彩して芽吹くみな雑木    随笑
重厚な山毛欅の樹相も芽吹き前    燕音
色合ひも野暮な櫟の芽吹きかな    ぱらりとせ
榛の木の芽吹きまだまだ天塩川    素抱
榛芽吹き神居古潭(かむいこたん)の川景色    素抱
接骨木の芽と手を添へて申さるる    鳩信
接骨木の芽のもし囁くなら平語    石鏡
接骨木の芽の付き方は唯杜撰    宿好
先づこんなところ欅の芽吹きとは    暮津
庭木芽吹く頃となりをり下女詰所    鳩信
洞欅ぽやっぽやっと芽吹きけり    随笑
匂ひ立つ芽木突風の過ぎし闇    ねずみのこまくら
覗き込む真水の音の木の芽谿    燕音
白樺の芽吹き朝日に呟くごと    燕音
付け足しにそこらの小木も芽吹山    ぱらりとせ
富士山の湧水芽吹き促すよ    随笑
朴芽吹き谷川の水段(きだ)為して    燕音
凡庸な芽吹きの色でありにけり    燕音
漫然と欅は芽吹き初めにけり    宿好
未完なる塔にしぶけり欅の芽    ぱらりとせ
木の芽風吹きつさらしに猿の面(つら) (上林温泉)   ももすずめ
木々芽吹きトビケラも羽化忙しき    随笑
里山の見馴れたる景芽吹けるか    石鏡

芽柳 /
ここに来て天気足踏み柳の芽 素抱
二重橋交番脇の柳の芽 素抱
西湖微風やうやう柳の芽の噴ける 鳩信
人並みの確定申告柳の芽
柳の芽お濠に面すホテル群
芽柳越し絵になるやうな二重橋
鳩バスの一団ようこそ柳の芽
芽柳の皇居に懸かる橋幾つ
西湖微風やうやう柳の芽に及ぶ
柳の芽木橋渡れば城中へ
芽柳や鉛筆描きのお堀端
と或る蔵玩具をひさぐ柳の芽
芽柳に雨も絣の内子町

楓の芽 /
雪中に赤らむ冬木の楓の芽

楤の芽 /
まんずまんず寄ってたんせとタラの芽売る    宿好
厳しく鹿爪らしくたらんぼの芽    ぱらりとせ

山椒の芽 /
山椒の芽午後から降らなきゃいいのにねぇ 燕音
山椒の芽あはてふためく馬鹿陽気


枸杞 /
虚子嫌ひ枸杞煎ずれば治るべし

椿 /
あほむくもうつむくもよし山椿    宿好
おぼろ夜の湯の梯子して椿の湯    寒暑
この坂道これあるかなの椿かな    燕音
これと云ひ見るものの無く藪椿    素抱
しつとりとリップスティックてふ椿    さざなみやつこ
パッと明るくショウタイムてふ紅椿 (椿展)   さざなみやつこ
ほんたうの処濁して椿餅    随笑
一飛鳥椿林をすり抜けて    さざなみやつこ
夏椿落花こんなに雨止まず    素抱
階(きざはし)攀ず足許を見て椿見て    宿好
建長寺裏のぼたぼた椿かな    素抱
五ツ六ツいやもうひとつつばき咲く (男鹿 椿)   ももすずめ
江之島の活辯天か玉椿    素抱
紅椿はすかいに道ついてをり    石鏡
山椿人目があればはばかられ    石鏡
自生して太平洋に向く椿    随笑
乗合船椿の浦を後にして    素抱
新たなる垂線を引き椿落つ    暮津
雛流し催す宮の五百椿    素抱
雛流し椿の宮の直下より    素抱
早咲きの椿椿と口揃え    宿好
只一つ大分離れて落椿    石鏡
昼夜落つ良弁椿堂の脇    寒暑
喋々と鳥語椿の林なす    宿好
鳥ごゑのときに絶えたり椿園    宿好
椿落ち傾くままに雨明り    宿好
椿落ち載り損ねたる石畳    暮津
椿落つ小坪の蟹の横這い径    暮津
椿林展け正面相模灘    鳩信
盗み見をしてゐるやうな藪椿    石鏡
鳶のこゑ島の椿を真っ赤にす    宿好
日月のあかあか椿白椿    宿好
波打てる鎌倉石に落椿    鳩信
法窟の椿ころがる其処彼処    さざなみやつこ
岬なればこその日溜り藪つばき    鳩信
毛糸帽椿の花粉付けて来し    宿好
弥次馬のやうに転がる椿見て    ももすずめ
洋椿和椿椿園巡る (茅ヶ崎市氷室椿庭園)   宿好
落椿展観幕府滅亡史    素抱
老画伯然たるお人椿見て    宿好
怺へ性足らぬ椿のまた堕つる    ももすずめ
秉(へい)さんは椿落つるを篤と見て    随笑
藪つばきなど見て秋谷一丁目    素抱
藪つばき他所者を見る目付して    ねずみのこまくら
藪椿こんなところで径途切れ    素抱
蕾みては百の小坊主夏椿    宿好

茎立 /
茎立やこの頃多き物忘れ    暮津
茎立や素なる生活(たつき)にいつか慣れ    暮津
茎立や妙にあかるきゆふまぐれ    さざなみやつこ
鍵一つ掛けて出づ家茎立てり    さざなみやつこ

胡葱 /
胡葱の味噌汁投票済ませ来て

独活 /
独活あれば独活摘むやっぱり女かな 寒暑
独活どんと届き朝夕独活料理
独活あれば独活摘むやっぱり女かな
もくもくと泥湯の川原独活咲けり
山独活に東京者の舌づつみ 燕音
曳売のぶつきらぼうに独活を見せ ねずみのこまくら
ご門前独活の大束並べ売る
やたら咲き蝦夷猪独活やら蝦夷丹生やら
山独活のかほり絶品いのち伸ぶ
どこまでも霧どこまでも独活の径
たちこめる霧に憮然と独活の彳つ
独活料理サクと爼響かせて
すいと寄り独活に目敏き女かな
薹の立つ独活を女のしげしげと

アスパラガス /
アスパラガス長けて緑の棒畠 ももすずめ
地中よりアスパラガスの顔出せり

野蒜 /
ぶっつりと切れて南無三のびる玉    さざなみやつこ
甘んじて小さき野蒜も引きにけり    石鏡
三月の空を忘れて野蒜摘    随笑
農道のほとりひょろりと野蒜の花    素抱
野蒜摘ちよいちよい摘み処変へにけり    ももすずめ
蝌蚪探す野蒜摘みには飽きたと見え    寒暑

韮 /
韮の花とまどひがちに雨降れる さざなみやつこ

嫁菜 /
辿りゆく嫁菜嫁菜の河原みち
御獄駅厠の脇の嫁菜かな
二タ筋に川を挟みて嫁菜道
萩を吹きなほ余る風嫁菜を吹き
乗鞍の嫁菜一色濃きとおもふ
嫁菜咲きここ山道の待避箇所 素抱
坂がかり円空堂へ嫁菜みち 素抱
踏み込んでこれは一際濃き嫁菜
嫁菜冷ゆ川はこれより暮れんとす
花びらの並びよろしき嫁菜かな
遊歩道目元ぱっちり嫁菜かな
日本の嫁菜見直す河原みち
嫁菜道連れ立つ遠野の女学生

蓬 /
あかがねの雨樋秋の蓬春邸    素抱
一人酌む酒は蓬莱宿夜長    素抱
山火果つ白きは蓬の灰ならむ    ぱらりとせ
数え日の蓬莱島に亀眠り    随笑
寸足らず東尋坊の夏蓬    宿好
蓬萌え太鼓の胴のやうな道    ぱらりとせ


母子草 /
万遍なく日の当りをる母子草

父子草 /
見栄えせぬものの一つに父子草


土筆 /
軽々と土筆頭を振る昼の風    燕音
上段に土筆の挿し絵四月号    寒暑
爪弾くつくしの頭よりぱと煙    ももすずめ
土筆(つぐす)生えコンセイサマの石ほとり    宿好
土筆の吐く煙に妻の怯みもす    暮津
土筆ぽかんとしてゐるうちに命日過ぐ    宿好
土筆打ちたたき出したる青煙    燕音
土筆摘む音のつくづく真昼かな    燕音
土筆土筆ガウディーの塔ここに建つ    宿好
呆けをる土筆と待てる釜石線    宿好
夕風に首をすくめて土筆どち    寒暑
淋しさや土筆摘んでも摘んでもや    燕音

蕨 /
峠路の句碑の錆つく夏わらび
真清水にわらびの塩抜き湯治宿
横浜と答ふ蕨を干す婆に
山の名はどうでもよろしわらび狩
山家の昼ひっそりとして干しわらび
わらび干す婆に又もや合へる村
真清水に蕨の塩抜き湯治宿 素抱
干しわらび乗りて会津のわっぱ飯 素抱
葉蕨の山下りてくる在所者 寒暑
蕨手のによつきり南洋リュゥビンタイ さざなみやっこ
春子掻きわらびを干して山住い
この山のこごみは長けてわらび採


薇 /
山麓の霧にぜんまい臈長けて
ぜんまいにうすうすと錆天日干し
ぜんまいに雪の峰々立て込みぬ 燕音
奥山のぜんまい色をして夕雲
旧覆堂脇に続々ぜんまい生ふ


芹 /
じゅくじゅくと沈む足許芹を摘む    暮津
ぽちょぽちょと水 の流るる芹田かな    素抱
柿田川根芹に直にあたる水    随笑
寒芹をこづき湧水馳せゆけり    ぱらりとせ
芹の水女のそれと跳ぶこゑす    寒暑
芹の水覗き込むにも先づ足場    石鏡
芹引けばたらたらたらと水一縷    石鏡
芹摘の一人ひょっこり頭を擡げ    石鏡
芹摘の中腰に耐え切れずして起つ    素抱
芹摘みにこゑを掛ければ佳い返事    寒暑
芹摘みの一人二人と目に入り来    寒暑
芹摘みの何處か難しさうな人    寒暑
芹摘む婆一つ大きく伸びをして    随笑
芹摘める二人話の届く距離    随笑
根芹まで最短距離の畦をゆく    暮津
手つかずの芹の森あり川向ふ    ももすずめ
春光を芹に振り撒きゆける水    随笑
水くびれひろがり流れ芹の森    随笑
足許を先づは築きて田芹摘    随笑
摘むのは芹ですかえゝまあたんぽぽも    さざなみやつこ
晩酌に摘む芹これだけあれば佳し    石鏡
湧水に芹も強(こわ)げな茎のいろ    随笑


三葉芹 /
三つ葉などちょっと散らして夏料理

防風 /
沖は今何の漁季か浜大根
浜大根何處から降りても小網代湾
浜昼顔防風など見て小一時間
防風の咲き残りゐる浜閑散
今時は何が釣れるや浜大根
海鳴れり浜防風のごつき実に
径ここに尽き捨網と浜大根
防風の花を掠めて砂の音
浜大根節くれ立てる豆の莢 素抱
この先に径無ささうで浜大根 素抱
週末の海ひろびろと浜大根 随笑
浜防風咲く辺の小石拾ひけり 燕音
半島のかかと辺りの防風摘む ぱらりとせ
浜防風咲く辺の小石拾ひけり
オホーツクの波けむり浴み浜防風
浜大根一郎丸は朽ちにけり
打ちまじり吹かれ荒磯の浜大根
浜大根岬の青空広がって
浜大根浜ゑんだうに昼の風
浜大根ひねもす風に嬲らるる

菫 /
すみれ草一茶の墓の裏も見て    燕音
針通神の薄目にすみれぐさ    ももすずめ
庭の土痩せて菫のいぢけ咲き    随笑
同じ路とりて菫の咲く端山    宿好
年々にたちつぼすみれ淡きかな    宿好
風ながら日当たる径の壺すみれ    素抱
門前の小僧のタチツボスミレかな    燕音
幼子に菫のいろを言はせをり    宿好

蒲公英 /
たんぽぽに村内放送よく通る    宿好
たんぽぽの絮の一つを壊しみる    随笑
たんぽぽや一枚脱がねば目が出さう    随笑
云うてみてトウカイタンポポ佳き名なり    随笑
雲間より射す日たんぽぽ甦り    素抱
摘むのは芹ですかえゝまあたんぽぽも    さざなみやつこ
絮たんぽぽ肺活量は人並み以下    宿好

紫雲英 /
げんげ田の甘きかぜ来る鼻の先    随笑
見そめたるごとくげんげの辺に跼む    随笑
朝の気にげんげも英気養はん    随笑

苜蓿 /
うまごやしスキーヒュッテを取り囲み    素抱
クローバを分けくるダックスフンドかな    さざなみやつこ
若者の手をとりあるく白詰草    素抱
赤詰草白詰草に勝る丘    寒暑
白つめくさいちめん水上バス乗り場    燕音
白詰草五月の風を順送り    暮津
白詰草真っこと冷たかりけるよ    素抱
蜜月の真っ只中の白詰草 (八景島 シーパラダイス)   素抱
遊船の波切り進む白詰草    素抱
苜蓿に憩へるハーレーダヴィトソン    寒暑

蘩蔞 /
はこべらの花へ目を遣る一目づゝ    素抱
犬ふぐり一寸離れて牛はこべ    随笑
大地より温泉(ゆ)の湧く鼓動はこべ草    寒暑
土いじりするりと抜けてはこべの根    宿好
八十路の母はこべら提げて立話    随笑

薺の花 /
ぺんぺん草奏づる風が出て来たり    素抱
ぺんぺん草田畦を埋む七回忌    寒暑
鉛筆でつついて示すぺんぺん草    寒暑
花なづなぺんぺん草の名を厭ひ    素抱
花なづな畦の弾力蹠にす    寒暑
犬の尿ぺんぺん草の枯れし穂に    石鏡
合いの手に潮騒浜の三味線草    宿好
咲きさうな処に咲きぬ三味線草    鳩信
次の村ぺんぺん草の畦往けば    寒暑
小粋とは物は云ひやうぺんぺん草    燕音
退屈でぺんぺん草の撥こづく    随笑
田の隅にぺんぺん草の丈を得て    燕音

酸葉 /
すかんぽや女はとかくがやがやと    石鏡
遠野の子手っこつないですかんぽ道    宿好
午報告ぐ酸葉に雀の鉄砲に    随笑

虎杖 /
虎杖の山深ければ人の丈    素抱
虎杖の汐傷みして五能線    寒暑
虎杖をへし折りゆけり鬼無里の子    燕音
後生掛の湯治棟見ゆ虎杖越し    石鏡
山麓の溶岩隠り虎杖摘    さざなみやつこ
湯治小屋錆び虎杖のその向う (大深温泉)   寒暑
硫黄の香虎杖黄葉したりけり    随笑

茅花 /
茅花どき旅の一つもせよと云ふ    寒暑
茅花茅花と茅花の戦ぐやうに云ふ    暮津
茅花咲き自由乗降区間なり    ぱらりとせ


黄水仙 /
人一倍大き球根黄水仙
ピカピカの喇叭携え黄水仙


土佐みづき /
芽立ちては黄の嘴掲げ土佐水木
昼の虻吸ひこまれゆく土佐水木 寒暑
土佐水木枝は木臘の光ゲ持ちて 宿好
山茱萸の色を引き継ぎ土佐水木
土佐水木枝は和臘の光ゲ持ちて
枯れざまのこれは土佐水木の冬芽
土佐水木陰陽の陽好みけり
昼の虻吸ひこまれゆく土佐水木
垂れ花に虻ぶらさがる土佐水木
妻との旅すぐにまとまる土佐水木

喇叭水仙 /
喇叭水仙荒くれ風に向き咲ける
喇叭水仙汝が吹かねば来ぬ春ぞ
喇叭水仙羅馬は意中の都にて
アポロンのラッパ手喇叭水仙は ぱらりとせ
喇叭秘め喇叭水仙莟めるよ ももすずめ
突き出して喇叭水仙黄のラッパ
風上ミに向ひて喇叭水仙花
春を告ぐ喇叭水仙高らかに

木五倍子の花 /
雲行きの怪しき山の花きぶし
一寸だけ春めく山の花きぶし 寒暑
これも咲く裡かと見上ぐ花きぶし 随笑
雨脚の忽ち千筋花きぶし 燕音
花きぶし祇園囃子を奏づごと
谿底にいささか遅れ花きぶし
花きぶしするする鉄塔渉る山
送電線谷を跨ぎて花きぶし
見下ろしの墓所真新らし花きぶし
江ノ電の裏径ゆけば花きぶし
力づくの世に寸詰まり花きぶし
滑りざま土むきだしに花きぶし
変哲なき山路木五倍子の花に逢ふ
さみどりの垂線垂らす花きぶし
花きぶし潜り入山致しけり
白緑に疲れのみゆる花きぶし
花きぶし山に紛れて仕舞ひけり
芽吹き出す山の一時花きぶし
朝比奈道しぶとく咲いて花きぶし
きぶし咲く頃と訪ひしもこの程度
花きぶし芽吹きの彩に紛れけり
木のベンチ誰が置き去りの花きぶし
花きぶし山に祭りのあるごとし
花きぶしヨット奔らす風が吹き
花きぶしキリンの首のその上に
花きぶし山間明るくしたりけり


ミモザの花 /
見積の話しながら花ミモザ
結構なミモザと云ひて仰ぎをり
行きずりのこれある哉の花ミモザ
花ミモザ羅馬軍団現れよ 寒暑
花ミモザ黄み掻き立てて咲けるなり 宿好
裏路地に洒落た洋館花ミモザ
咲く前のミモザにこゑを為さざるこゑ
花ミモザライオン色に太陽は ぱらりとせ
渡来してコアラの國の花ミモザ
花ミモザ風泳がしてゐたりけり
指さして話途中の花ミモザ
ようこそとコアラの國の花ミモザ
動物園オセアニア区のミモザ咲く
ミモザ咲く空輝きて羅馬軍
花ミモザ浜辺の春にさきんだち

貝母の花 /
愚図ついて降る日曇る日貝母咲く
武士(もののふ)の肝見るごとし花貝母 素抱
老人の指図けむたし花貝母 素抱
女共とやかく云へる花貝母 随笑
判らぬはこの手の花よ花貝母 随笑
何考えゐるやら貝母の胆の裡
雀斑は内に秘めおく貝母かな
何と手の混める貝母の花の裡 さざなみやっこ
気になるはこの手の花よ花貝母

山葵 /
わさび沢わさび養ふ水鳴れり (和山温泉)   燕音
わさび田の小流れ夕日返しけり    ぱらりとせ
わさび田の水を束ねる處あり    ぱらりとせ
わさび田をはすかひに馳す水ありぬ    さざなみやつこ
わさび田を素通る水の垣間見ゆ    ぱらりとせ
音もなく葉わさび潜る水の暮れ    ぱらりとせ
山葵の旬水入れ替はり立ち替はり    ぱらりとせ
山葵田の小石に当る水の音    ぱらりとせ
青竜の如き山葵の擦り下ろし    石鏡
土産さて静岡駅の山葵漬    石鏡

菊の苗 /
育苗のチラシが付いて菊苗売
菊苗を選りつゝ去年の苗のこと
迷はず買ふ寒菊の苗意気軒昂
寒菊の苗買ふ彩の取り合はせ
寒菊の苗鉢に雨小半日
菊苗を抱えくる帰途富むごとし
菊苗の鉢を殖やして冬籠
夜盗虫菊苗食むこと今明らか
菊苗に夜盗虫(やとう)を退治する薬
菊苗売一つおまけに持ってけと
菊苗にも不易と流行あり菊展
菊苗のビニール小鉢抓み選る
大股に菊をまたぎて菊苗選る
菊苗売る見本の鉢を横に添え
厚物の菊苗風采佳かりけり
菊苗の冬越し支度晴れた日に
菊苗を庭一番の日向に置き 寒暑
晴れ舞台てふ菊苗の色を聞く 燕音
尊王といふ菊苗の畏くも 燕音
その菊苗だるまにしても大丈夫と 燕音
菊苗の様子見にゆくちゃんちゃんこ
菊苗の面倒みたかと妻のこゑ
菊苗買ふ管物いっぽん交え呉れ
難しく事考えず菊苗買ふ
買手つく菊の苗より虻立たせ ぱらりとせ
見事なる一本菊の苗見本
酒仙てふその名がよくて菊苗買う
菊の辺に跼んで菊の苗選び

木の芽 /
いつ見ても欅の芽吹きへんてこりん    石鏡
ずん抜けて杜の欅の片芽吹き    随笑
チューリップの芽立ち囀り初むやうに    宿好
つつかけに銭湯を出づ芽出し雨    ねずみのこまくら
とろとろと木の芽明りの甘茶仏    石鏡
にはとこのふためき出づる木の芽道    さざなみやつこ
にはとこの出臍のごとき芽の並び    さざなみやつこ
はきはきと物言ふごとし山毛欅芽吹き    燕音
へそ曲り柿の古木も芽吹かんと    随笑
やみくもに連翹の芽をつけたがる    宿好
羽ばたいて桜の芽立ち促せる    鳩信
横須賀の海に張り出す木の芽山    石鏡
芽吹かんと樹皮を寄る辺の洞(うろ)欅    ぱらりとせ
芽吹きそむ山毛欅の英気にあやかれと    燕音
芽吹きそむ山毛欅の樹相の相似たる    燕音
芽吹くなら欅パパッとパパッとな    宿好
芽吹く山見てゐて画法朦朧体    宿好
柿芽吹き蟹の鋏のやうな芽を    ぱらりとせ
既にして接骨木の芽の出臍程    随笑
起請文累々芽吹く杜にて (生島足島神社)   ぱらりとせ
鬼くるみぼっつり芽吹く千曲川    燕音
襟立てて越後湯沢の木の芽どき    燕音
警策音飛んで瑞鹿山芽吹き    ももすずめ
見頃なる花とは別に芽吹く木々    鳩信
見習ひのガイド訥々木の芽どき    ぱらりとせ
広前に欅芽吹きの金色相    素抱
濠柳芽吹き毎日新聞社    随笑
豪雪の爪跡芽木に残りけり    燕音
黒ずめる連翹の芽に雨つめた    ももすずめ
山巻いて有象無象の雑木の芽    随笑
似通った彩して芽吹くみな雑木    随笑
重厚な山毛欅の樹相も芽吹き前    燕音
色合ひも野暮な櫟の芽吹きかな    ぱらりとせ
榛の木の芽吹きまだまだ天塩川    素抱
榛芽吹き神居古潭(かむいこたん)の川景色    素抱
接骨木の芽と手を添へて申さるる    鳩信
接骨木の芽のもし囁くなら平語    石鏡
接骨木の芽の付き方は唯杜撰    宿好
先づこんなところ欅の芽吹きとは    暮津
庭木芽吹く頃となりをり下女詰所    鳩信
洞欅ぽやっぽやっと芽吹きけり    随笑
匂ひ立つ芽木突風の過ぎし闇    ねずみのこまくら
覗き込む真水の音の木の芽谿    燕音
白樺の芽吹き朝日に呟くごと    燕音
付け足しにそこらの小木も芽吹山    ぱらりとせ
富士山の湧水芽吹き促すよ    随笑
朴芽吹き谷川の水段(きだ)為して    燕音
凡庸な芽吹きの色でありにけり    燕音
漫然と欅は芽吹き初めにけり    宿好
未完なる塔にしぶけり欅の芽    ぱらりとせ
木の芽風吹きつさらしに猿の面(つら) (上林温泉)   ももすずめ
木々芽吹きトビケラも羽化忙しき    随笑
里山の見馴れたる景芽吹けるか    石鏡

椿 /
あほむくもうつむくもよし山椿    宿好
おぼろ夜の湯の梯子して椿の湯    寒暑
この坂道これあるかなの椿かな    燕音
これと云ひ見るものの無く藪椿    素抱
しつとりとリップスティックてふ椿    さざなみやつこ
パッと明るくショウタイムてふ紅椿 (椿展)   さざなみやつこ
ほんたうの処濁して椿餅    随笑
一飛鳥椿林をすり抜けて    さざなみやつこ
夏椿落花こんなに雨止まず    素抱
階(きざはし)攀ず足許を見て椿見て    宿好
建長寺裏のぼたぼた椿かな    素抱
五ツ六ツいやもうひとつつばき咲く (男鹿 椿)   ももすずめ
江之島の活辯天か玉椿    素抱
紅椿はすかいに道ついてをり    石鏡
山椿人目があればはばかられ    石鏡
自生して太平洋に向く椿    随笑
乗合船椿の浦を後にして    素抱
新たなる垂線を引き椿落つ    暮津
雛流し催す宮の五百椿    素抱
雛流し椿の宮の直下より    素抱
早咲きの椿椿と口揃え    宿好
只一つ大分離れて落椿    石鏡
昼夜落つ良弁椿堂の脇    寒暑
喋々と鳥語椿の林なす    宿好
鳥ごゑのときに絶えたり椿園    宿好
椿落ち傾くままに雨明り    宿好
椿落ち載り損ねたる石畳    暮津
椿落つ小坪の蟹の横這い径    暮津
椿林展け正面相模灘    鳩信
盗み見をしてゐるやうな藪椿    石鏡
鳶のこゑ島の椿を真っ赤にす    宿好
日月のあかあか椿白椿    宿好
波打てる鎌倉石に落椿    鳩信
法窟の椿ころがる其処彼処    さざなみやつこ
岬なればこその日溜り藪つばき    鳩信
毛糸帽椿の花粉付けて来し    宿好
弥次馬のやうに転がる椿見て    ももすずめ
洋椿和椿椿園巡る (茅ヶ崎市氷室椿庭園)   宿好
落椿展観幕府滅亡史    素抱
老画伯然たるお人椿見て    宿好
怺へ性足らぬ椿のまた堕つる    ももすずめ
秉(へい)さんは椿落つるを篤と見て    随笑
藪つばきなど見て秋谷一丁目    素抱
藪つばき他所者を見る目付して    ねずみのこまくら
藪椿こんなところで径途切れ    素抱
蕾みては百の小坊主夏椿    宿好

茎立 /
茎立やこの頃多き物忘れ    暮津
茎立や素なる生活(たつき)にいつか慣れ    暮津
茎立や妙にあかるきゆふまぐれ    さざなみやつこ
鍵一つ掛けて出づ家茎立てり    さざなみやつこ

胡葱 /
胡葱の味噌汁投票済ませ来て

独活 /
独活あれば独活摘むやっぱり女かな 寒暑
独活どんと届き朝夕独活料理
もくもくと泥湯の川原独活咲けり
山独活に東京者の舌づつみ 燕音
曳売のぶつきらぼうに独活を見せ ねずみのこまくら
ご門前独活の大束並べ売る
やたら咲き蝦夷猪独活やら蝦夷丹生やら
山独活のかほり絶品いのち伸ぶ
どこまでも霧どこまでも独活の径
たちこめる霧に憮然と独活の彳つ
独活料理サクと爼響かせて
すいと寄り独活に目敏き女かな
薹の立つ独活を女のしげしげと

アスパラガス /
アスパラガス長けて緑の棒畠 ももすずめ
地中よりアスパラガスの顔出せり

野蒜 /
ぶっつりと切れて南無三のびる玉    さざなみやつこ
甘んじて小さき野蒜も引きにけり    石鏡
三月の空を忘れて野蒜摘    随笑
農道のほとりひょろりと野蒜の花    素抱
野蒜摘ちよいちよい摘み処変へにけり    ももすずめ
蝌蚪探す野蒜摘みには飽きたと見え    寒暑

韮 /
韮の花とまどひがちに雨降れる さざなみやつこ

嫁菜 /
辿りゆく嫁菜嫁菜の河原みち
御獄駅厠の脇の嫁菜かな
二タ筋に川を挟みて嫁菜道
萩を吹きなほ余る風嫁菜を吹き
乗鞍の嫁菜一色濃きとおもふ
坂がかり円空堂へ嫁菜みち
嫁菜咲きここ山道の待避箇所 素抱
坂がかり円空堂へ嫁菜みち 素抱
踏み込んでこれは一際濃き嫁菜
嫁菜冷ゆ川はこれより暮れんとす
花びらの並びよろしき嫁菜かな
遊歩道目元ぱっちり嫁菜かな
日本の嫁菜見直す河原みち
嫁菜道連れ立つ遠野の女学生

蓬 /
あかがねの雨樋秋の蓬春邸    素抱
一人酌む酒は蓬莱宿夜長    素抱
山火果つ白きは蓬の灰ならむ    ぱらりとせ
数え日の蓬莱島に亀眠り    随笑
寸足らず東尋坊の夏蓬    宿好
蓬萌え太鼓の胴のやうな道    ぱらりとせ

母子草 /
万遍なく日の当りをる母子草

父子草 /
見栄えせぬものの一つに父子草


土筆 /
軽々と土筆頭を振る昼の風    燕音
上段に土筆の挿し絵四月号    寒暑
爪弾くつくしの頭よりぱと煙    ももすずめ
土筆(つぐす)生えコンセイサマの石ほとり    宿好
土筆の吐く煙に妻の怯みもす    暮津
土筆ぽかんとしてゐるうちに命日過ぐ    宿好
土筆打ちたたき出したる青煙    燕音
土筆摘む音のつくづく真昼かな    燕音
土筆土筆ガウディーの塔ここに建つ    宿好
呆けをる土筆と待てる釜石線    宿好
夕風に首をすくめて土筆どち    寒暑
淋しさや土筆摘んでも摘んでもや    燕音

蕨 /
峠路の句碑の錆つく夏わらび
真清水にわらびの塩抜き湯治宿
横浜と答ふ蕨を干す婆に
山の名はどうでもよろしわらび狩
山家の昼ひっそりとして干しわらび
わらび干す婆に又もや合へる村
真清水に蕨の塩抜き湯治宿 素抱
干しわらび乗りて会津のわっぱ飯 素抱
葉蕨の山下りてくる在所者 寒暑
蕨手のによつきり南洋リュゥビンタイ さざなみやっこ
春子掻きわらびを干して山住い
この山のこごみは長けてわらび採


薇 /
山麓の霧にぜんまい臈長けて
ぜんまいにうすうすと錆天日干し
ぜんまいに雪の峰々立て込みぬ 燕音
奥山のぜんまい色をして夕雲
旧覆堂脇に続々ぜんまい生ふ


芹 /
じゅくじゅくと沈む足許芹を摘む    暮津
ぽちょぽちょと水 の流るる芹田かな    素抱
柿田川根芹に直にあたる水    随笑
寒芹をこづき湧水馳せゆけり    ぱらりとせ
芹の水女のそれと跳ぶこゑす    寒暑
芹の水覗き込むにも先づ足場    石鏡
芹引けばたらたらたらと水一縷    石鏡
芹摘の一人ひょっこり頭を擡げ    石鏡
芹摘の中腰に耐え切れずして起つ    素抱
芹摘みにこゑを掛ければ佳い返事    寒暑
芹摘みの一人二人と目に入り来    寒暑
芹摘みの何處か難しさうな人    寒暑
芹摘む婆一つ大きく伸びをして    随笑
芹摘める二人話の届く距離    随笑
根芹まで最短距離の畦をゆく    暮津
手つかずの芹の森あり川向ふ    ももすずめ
春光を芹に振り撒きゆける水    随笑
水くびれひろがり流れ芹の森    随笑
足許を先づは築きて田芹摘    随笑
摘むのは芹ですかえゝまあたんぽぽも    さざなみやつこ
晩酌に摘む芹これだけあれば佳し    石鏡
湧水に芹も強(こわ)げな茎のいろ    随笑


三葉芹 /
三つ葉などちょっと散らして夏料理

防風 /
沖は今何の漁季か浜大根
浜大根何處から降りても小網代湾
浜昼顔防風など見て小一時間
防風の咲き残りゐる浜閑散
今時は何が釣れるや浜大根
海鳴れり浜防風のごつき実に
径ここに尽き捨網と浜大根
防風の花を掠めて砂の音
浜大根節くれ立てる豆の莢 素抱
この先に径無ささうで浜大根 素抱
週末の海ひろびろと浜大根 随笑
浜防風咲く辺の小石拾ひけり 燕音
半島のかかと辺りの防風摘む ぱらりとせ
浜防風咲く辺の小石拾ひけり
オホーツクの波けむり浴み浜防風
浜大根一郎丸は朽ちにけり
打ちまじり吹かれ荒磯の浜大根
浜大根岬の青空広がって
浜大根浜ゑんだうに昼の風
浜大根ひねもす風に嬲らるる

◆季語「三月」

灌木を三月の栗鼠生剥ぎに 素抱
三月の鳶岬鼻を司る 素抱
三月菜真上の鳶がつと流れ 素抱
人参は三月のいろ煮て和えて 素抱
三月の空を忘れて野蒜摘 随笑
三月の白雲にして生々し
山上を三月の雲いちもくさん
三月の片雲飛べり海縁
三月の雨騒がしき目覚かな
三月の樹頭覗ける高架駅
三月の雲を見てゐる窓ほとり
三月の青空広かれども寒し
うち霞む富士三月の雑木のうへ
三月の海いちだんと広やかに
三月の空ゆく雲もなかりけり
三月来だうといふことなき木々に
三月は不二を遠目の霞み月
紅うるむ三月の枝水平に
貝殻の交じる磯畑三月菜
股引干す陽気は三月下旬並み
養生も三月になりぬ万年青の実
二月より三月心底冷ゆる日は
猫猛る三月の闇浅きかな
三月のこゑ聞き枇杷の袋掛
三月に入ると聞くさへ気忙しく
三月のぽかぽか陽気蒲団干す


以上


by 575fudemakase | 2020-12-19 10:07 | 自作


俳句の四方山話 季語の例句 句集評など


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▽ある季語の例句を調べる▽

《方法1》 残暑 の例句を調べる
先ず、右欄の「カテゴリ」の「秋の季語」をクリックし、表示する。
表示された一番下の 「▽ このカテゴリの記事をすべて表示」をクリック、
全部を表示下さい。(全表示に多少時間がかかります)
次いで、表示された内容につき、「ページ内検索」を行ないます。
(「ページ内検索」は最上部右のいくつかのアイコンの内から虫眼鏡マークを探し出して下さい)
探し出せたら、「残暑」と入力します。「残暑 の俳句」が見つかったら、そこをクリックすれば
例句が表示されます。

尚、スマホ等でこれを行なうには、全ての操作の前に、最上部右のアイコンをクリックし
「pc版サイトを見る」にチェック印を入れ実行下さい。


《方法2》以下はこのサイトから全く離れて、グーグル又は ヤフーの検索サイトから
調べる方法です。
グーグル(Google)又は ヤフー(Yahoo)の検索ボックスに見出し季語を入力し、
その例句を検索することができます。(大方はこれで調べられますが、駄目な場合は上記、《方法1》を採用ください)

例1 残暑 の例句を調べる

検索ボックスに 「残暑の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「残暑 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【残暑】残る暑さ 秋暑し 秋暑 【】=見出し季語

例2 盆唄 の例句を調べる

検索ボックスに 「踊の俳句」 と入力し検索ボタンを押す
いくつかのサイトが表示されますが、「踊 の俳句:575筆まか勢」のサイトを
クリックし表示ください。
[参考] 【踊】踊子 踊浴衣 踊笠 念仏踊 阿波踊 踊唄 盆唄 盆踊 エイサー 【】=見出し季語

以上 当システムを使いこなすには、見出し季語をシッカリ認識している必要があります。

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